JP6406752B2 - 窒化鉄粉末の製造方法 - Google Patents
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Description
(1)酸化鉄粒子を焼結防止剤で被覆した後、還元熱処理および窒化熱処理を行い、次いで、焼結防止剤を除去する窒化鉄粉末の製造方法。
(2)焼結防止剤がリン酸カルシウムである(1)に記載の窒化鉄粉末の製造方法。
(3)焼結防止剤を溶解させて除去すること(1)又は(2)に記載の窒化鉄粉末の製造方法。
(4)焼結防止剤の構成成分とキレートを形成するキレート剤を用いて焼結防止剤を溶解させて除去する(3)に記載の窒化鉄粉末の製造方法。
酸化鉄粒子は、一般に公知の方法に従って合成することができ、例えば、以下の手順により合成される。まず、塩化鉄、硫酸鉄などの鉄系原料を水に溶解させた後、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ物質を加えて水酸化物の析出物を得る。必要に応じて、粒径を制御するため、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロリドなどの表面修飾剤を添加することができる。その後、水熱反応を行う。具体的には、上記の析出物をオートクレーブなどに入れて反応させることで酸化鉄粒子を得ることができる。反応を行う溶液の温度は、例えば、30〜220℃で、反応中撹拌を施しても良いし、静止させた状態で反応させても良い。反応溶液中での析出物の分散が十分でない場合には、表面修飾剤などにより分散性を改善してもよい。また、攪拌しながら水熱反応させることが、粒径のそろった粒子を得るために好ましい。
このようにして、酸化鉄粒子が分散した懸濁液を得る。
カルシウム源とリン源の比は特に限定されないが、製造効率の観点から、形成するリン酸カルシウムの組成比から大きくかけ離れないほうが好ましい。好ましくは、カルシウムとリンのモル比でCa:Pが1:2〜3:1である。
焼結防止剤を懸濁液中で調製する場合の溶媒としては、水あるいは水/エタノール混合溶媒を用いることが好ましい。撹拌は攪拌機、超音波など任意の方法で行うことができ、pH調整にはアンモニア水や水酸化ナトリウムなどを用いることができる。
pHの調整範囲は6〜12が好ましい。この範囲を外れると、リン酸カルシウムの溶解度が大きくなり、リン酸カルシウムの生成量が少なくなる場合がある。より好ましくは、pHの調整範囲は7〜11である。
焼結防止剤としてリン酸カルシウムを合成する際の原料としては、カルシウム源として、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、水酸化カルシウムなど、リン源としてはリン酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムなどが挙げられる。
酸化鉄粒子に対する焼結防止剤の使用量は、焼結防止が可能となる量を適宜選択すればよい。焼結防止剤としてリン酸カルシウムを使用する場合、酸化鉄粒子に対するリン酸カルシウムの使用量は、質量比で0.1〜5である。0.1未満では酸化鉄粒子が凝集するおそれがあり、5を超えると還元および窒化反応が十分進行しないおそれがある。好ましくは、酸化鉄粒子に対するリン酸カルシウムの使用量は、質量比で0.2〜3である。
このようにして、焼結防止剤で被覆された原料粒子(以下「焼結防止剤被覆原料粒子」ともいう。)を得る。
上記の溶解と遠心分離、洗浄の各操作は、意図しない理由により窒化鉄粒子表面に残留しているリン酸カルシウムを完全に除去するために、複数回行うことができる。洗浄後、遠心分離や乾燥を行うこともできる。乾燥は、例えば、窒素などの不活性雰囲気下、室温〜100℃、0.5〜24時間行うことができる。
このようにして、α”−Fe16N2を主相とした単一粒子で構成される窒化鉄粉末を得る。
なお、必要に応じて、窒化鉄粒子表面を徐酸化して保護酸化被膜を形成したり、チオール類などの有機保護基により表面を修飾してもよい。
本明細書において、「α”−Fe16N2を主相とする」とは、α”−Fe16N2を主相とするが、α”−Fe16N2以外に、本発明の所望の目的、効果を阻害しない範囲で、α−Fe、Fe3O4、FeO、Fe4Nなどが含まれることが許容されることを意味する。
本明細書において、「単一粒子」とは、焼結した粒子を実質的に含まず、かつ被覆層を実質的に含まない粒子を意味する。
本明細書において、「実質的に含まない」および「実質的に有していない」とは、本発明の所望の目的、効果を阻害しない範囲で、不純物の存在が許容されることを意味する。
このようなα”−Fe16N2を主相とした単一粒子で構成される本発明の窒化鉄粉末は、窒化鉄粒子の粒径分布幅が狭くすなわち粒径がそろっているため、磁性材料としての分散性に優れている。また、窒化鉄粉末の粒子表面には、粒子成分以外の成分、例えば、焼結防止剤の被覆層に由来する成分を実質的に有していない。そのため、被覆層を含むことに起因する磁気特性への影響が抑制されるとともに、焼結防止剤の除去後に意図しない理由により窒化鉄粒子表面に残留している成分による磁気特性への影響も実質的に受けない。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
酸化鉄粒子の合成は以下のように行った。まず、塩化鉄(III)六水和物3.244gと酢酸カリウム3.532gとを蒸留水40mlに溶解させた。また、これとは別に、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド1.048gを蒸留水20mlに溶解させた。これらをテフロン容器に入れ、蒸留水を加えて全量を80mlにした溶液を混合し、この容器に撹拌子を入れて30分間撹拌し、水酸化物の析出物を得た。さらにこのテフロン容器をステンレス製容器内に入れて密封した後、300rpmで撹拌しながら、150℃で8時間水熱反応を行った。
水熱反応後の懸濁液から遠心分離により粒子成分を回収した。回収物を蒸留水で洗浄後、遠心分離により粒子成分を回収して酸化鉄粒子を得た。合成した酸化鉄粒子は外観が球状の粒子であり、水系媒体に良分散するものであった。
粒子径測定装置(マルバーン社製、ゼータサイザーナノZS)を用いて、光子相関法により測定した酸化鉄粒子の平均粒径は90nmであった。以下、平均粒径は、光子相関法により測定した値をいう。
次に、合成した酸化鉄ナノ粒子を蒸留水中で分散させて懸濁液とした。この懸濁液と硝酸カルシウム水溶液を混合し撹拌を行った。十分な撹拌を行った後、アンモニア水を用いてpHを塩基性に調整した。ここにリン酸水素二アンモニウム水溶液をゆっくりと滴下することにより、リン酸カルシウムを形成させた。この反応の間、アンモニア水によりpHを約9に調整した。また、カルシウムとリンのモル比はCa:P=1.67:1とし、酸化鉄粒子に対するリン酸カルシウムの使用量は、質量比で2となるように調整した。この懸濁液を20時間撹拌して十分反応を進行させてリン酸カルシウムを形成させ、リン酸カルシウム被覆酸化鉄粒子の懸濁液を得た。この懸濁液から遠心分離により粒子成分を回収し、蒸留水により洗浄の操作を2回繰り返した後、エタノールによる洗浄の操作を行い、乾燥させてリン酸カルシウム被覆酸化鉄粒子を得た。
上記のリン酸カルシウム被覆酸化鉄粒子を、雰囲気炉中で還元熱処理および窒化熱処理を行った。還元熱処理は水素気流中、400〜450℃で、4時間行い、窒化熱処理はアンモニア気流中、130〜150℃で、18〜24時間行った。
還元熱処理および窒化熱処理を行って得られたリン酸カルシウム被覆窒化鉄粒子について粉末X線回折装置(XRD、株式会社リガク製、RINT2550)により測定を行った結果を図2(a)に示す。XRDの回折パターンから、リン酸カルシウムのピークとα”−Fe16N2のピークが確認された。
エタノール100mlにヘキサデカンチオール0.2mlを溶解し、そこにリン酸カルシウム被覆窒化鉄粒子を約2g加えて超音波により分散させた。その後、20時間静置することにより窒化鉄粒子表面にヘキサデカンチオールを修飾した。次に、エタノールを用いたリン酸カルシウム被覆窒化鉄粒子の洗浄と、遠心分離によるリン酸カルシウム被覆窒化鉄粒子の回収操作を行った。
蒸留水200mlにエチレンジアミン四酢酸2gを溶解し、水酸化ナトリウム水溶液を加えることによりpHを9に調整して処理液とした。この処理液に、リン酸カルシウム被覆窒化鉄粒子を入れ、超音波により粒子を分散させながらリン酸カルシウムの溶解を行った。その後、遠心分離によって窒化鉄粒子を回収した。回収した窒化鉄粒子を、再度処理液を用いて上記と同じ操作を2回繰り返した。次に、エタノールを用いた窒化鉄粒子の洗浄と、遠心分離による窒化鉄粒子の回収操作を2回繰り返した後、グローブボックス中で乾燥を行った。乾燥は、窒素雰囲気下の室温で、20時間行った。
<比較例>
比較例のシリカ被覆の場合と比較して、実施例の窒化鉄粒子は、室温での飽和磁化、保磁力ともに有意に優れていた。また、図4および図5のSEM写真の観察結果より、比較例のシリカ被覆窒化鉄粒子は、シリカ自体が凝集性を有しているためか、粒子同士が凝集する傾向が見られたが、実施例の窒化鉄粒子では、そのような凝集傾向は確認されず、比較例のシリカ被覆窒化鉄粒子よりも分散性に優れていた。
Claims (3)
- 酸化鉄粒子を焼結防止剤であるリン酸カルシウムで被覆した後、還元熱処理および窒化熱処理を行い、次いで、リン酸カルシウムを除去することを特徴とする窒化鉄粉末の製造方法。
- 前記リン酸カルシウムを溶解させて除去することを特徴とする請求項1に記載の窒化鉄粉末の製造方法。
- キレート剤を用いて前記リン酸カルシウムを溶解させて除去することを特徴とする請求項2に記載の窒化鉄粉末の製造方法。
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