以下、図面を参照しつつ、本発明を実施するための最良の形態について詳述する。なお、この明細書において、「前」とは走行車両の前進方向を、「後」とは後進方向を、「左右」とはそれぞれ前進方向に向かって「左右」を、「上下」とはそれぞれ走行車両の「上下」方向を意味するものとする。図1は、本発明の実施形態に係るクローラ式走行装置を備える走行車両(以下走行車両と称する)の一例を示す左側面図である。図2は、主に車体フレームと懸架装置の構成を示す左側面図である。図3は、後方の斜め上方から見る車体フレームの斜視図である。
図1、図2に示されるように、走行車両1は、車体フレーム10と、前部に備える左右一対の前クローラ式走行装置30と、この左右一対の前クローラ式走行装置30を車体フレーム10に懸架する前懸架装置50と、後部に備える左右一対の後クローラ式走行装置70と、この左右一対の後クローラ式走行装置70を車体フレーム10に懸架する後懸架装置90とを備える。また、走行車両1は、原動機としてのエンジンEと、エンジンEの駆動力によって作動する可変容量ポンプPと、各装置を制御する制御部Cなども備える。
車体フレーム10の上には、本体カバー110を被せる。本体カバー110は、車体フレーム10を覆うものである。本体カバー110は、前クローラ式走行装置30の上方にフロントフェンダ111を備え、後クローラ式走行装置70の上方にリアフェンダ112を備える。前クローラ式走行装置30と後クローラ式走行装置70との間で本体カバー110上には、運転シート113を備える。
運転シート113の前方には、走行車両1の走行操作をするためのステアリング114を備える。ステアリング114は、ステアリングシャフト115と、ステアリングシャフト115の上端に設けられた左右の外方に突出するステアリングバー116と、ステアリングバー116の一端に設けられるアクセルグリップ117などから構成される。
ステアリングシャフト115は、車体フレーム10に対して回動自在に支持される。ステアリングシャフト115の下端には、ステアリングシャフト115の回動角度を検出するステアリングセンサ118を備える。
アクセルグリップ117は、ステアリングバー116に回動自在に支持される。アクセルグリップ117は、アクセルグリップの回動角度を検出する図示せぬアクセルグリップセンサを備える。
運転シート113とステアリング114との間には、左右のステップフロア119を備える。走行車両1は鞍乗型走行車両である。乗員は運転シート113に跨って座り、左右のステップフロア119に足を乗せて乗車する。なお、走行車両としては、鞍乗型走行車両に限定されるものではなく、例えば、ここでは図示しないが、キャビンを備え、乗車時に乗員が座席に腰掛けて着座する走行車両等であってもよい。
次に、車体フレーム10について説明する。なお、車体フレーム10は、左右対称形状であるため、必要に応じて、右側を構成する部材には符号R、左側を構成する部材には符号Lを適宜付す。
図2、図3に示すように、車体フレーム10は、複数の鋼材を溶接などによって結合して構成される。鋼材は円筒状のパイプである。車体フレーム10は、前後に延設された左右一対のメインフレーム11(11R,11L)と、フロントフレーム12と、リアフレーム13と、左右一対のフロントアッパーフレーム14(14R,14L)と、左右一対のリアアッパーフレーム15(15R,15L)と、フロントロアフレーム16と、リアロアフレーム17と、前懸架装置50が取り付けられるフロントサポートフレーム18と、後懸架装置90が取り付けられるリアサポートフレーム19などを備える。
左右のフロントアッパーフレーム14R,14Lとフロントフレーム12とによって、後述する前懸架装置50の揺動アーム52の回動スペースを確保し、前懸架装置50を保護している。また、左右のリアアッパーフレーム15R,15Lとリアフレーム13とによって、後述する後懸架装置90の揺動アーム92の回動スペースを確保し、後懸架装置90を保護している。
フロントサポートフレーム18は、中央に垂下された支持部25を備え、この支持部25に前懸架装置50が取り付く。また、リアサポートフレーム19は、中央に垂下された支持部26を備え、この支持部26に後懸架装置90が取り付く。
なお、車体フレーム10は、上述の構成に限定されるものではない。車体フレーム10は、前懸架装置50および後懸架装置90の取り付けが可能であり、走行車両としての十分な剛性を備えるものであればよい。例えば、車体フレーム10は、円筒状のパイプの替わりに、中空の四角柱部材や断面がL字形状やH字形状の鋼材などから構成されるものであっても良い。
次に、左右一対の後クローラ式走行装置70について説明する。なお、左側および右側の後クローラ式走行装置70は左右対称形状であるため、以下では左側の後クローラ式走行装置70を取り上げて説明を行う。右側の後クローラ式走行装置70の構成については説明を省略する。また、必要に応じて、右側の後クローラ式走行装置には符号R、左側の後クローラ式走行装置には符号Lを適宜付す。図4は後クローラ式走行装置70の左側面図であり、図5は後方から見た後クローラ式走行装置70の主要部拡大図であり、図6は図4のA−A線断面図である。なお、図6において、右側が車両内側、左側が車両外側である。
図4、図5に示すように、後クローラ式走行装置70は、上部に駆動輪71と、下部に2つの従動輪72と、この2つの従動輪72の間に3つのガイドローラ73と、クローラベルト74と、取付フレーム75と、油圧モータ76と、シリンダー77などを備える。クローラベルト74は、天然ゴムや合成ゴムなどからなるゴム製であり、駆動輪71、2つの従動輪72、3つのガイドローラ73との間に巻回されており、それぞれに外接している。取付フレーム75は、略三角形状であり、駆動輪71、従動輪72、ガイドローラ73が回動自在に支持される。
後クローラ式走行装置70の駆動装置としての油圧モータ76は、駆動輪71の車両内側に位置し、油圧モータ76の駆動軸が駆動輪71に連結する。この油圧モータ76によって駆動輪71を回転させる。油圧モータ76は、U字形状のブラケット120に固定されており、このブラケット120に後懸架装置90が連結される。
なお、駆動輪71と油圧モータ76との連結連動は上述の構成に限定されるものではない。例えば、駆動輪71の車両外側に油圧モータ76を配置する構成であってもよく、油圧モータ76の配設位置は適宜設計できる。また、駆動輪71と油圧モータ76との間に変速装置を備え、油圧モータ76の駆動力をこの変速装置を介して駆動輪71に伝達する構成であってもよい。このような構成にすることで、後クローラ式走行装置70を所望の出力で駆動することが容易にできる。
また、後クローラ式走行装置70の駆動装置は、油圧モータ76に限定されるものではない。例えば、油圧モータ76に替わって電動モータによって駆動輪71を回転させる構成であってもよい。なお、後クローラ式走行装置70の駆動装置に油圧モータを用いる場合には、容易に高出力で駆動することができる。また、後クローラ式走行装置70の駆動装置に電動モータを用いる場合には、制御が容易であるとともに、応答性が良くなる。
シリンダー77は、一端にピストンヘッドを有するピストンロッドと、シリンダーライナーなどから構成される。シリンダー77の一端は取付けフレーム75に左右方向を軸として回動自在に支持され、他端はブラケット120に左右方向を軸として回動自在に支持されている。
このシリンダー77は、後クローラ式走行装置70自体の左右方向を軸とした回動を抑制している。後クローラ式走行装置70は、この抑制部材としてのシリンダー77を備えることで、安定して接地することができ、走行性が向上する。また、後クローラ式走行装置70が不整地の凹凸と当接する際、後懸架装置90との連結部へのねじれや衝撃などの負荷をシリンダー77によって低減することができ、耐久性が向上する。なお、後クローラ式走行装置70自体の左右方向を軸とした回動を抑制する抑制部材は、シリンダー77の構成に限定されるものではなく、例えば、スプリングから構成されるものであってもよい。
後クローラ式走行装置70は、2つの従動輪72の間にあるクローラベルト74が地面と接地する。つまり、後クローラ式走行装置70は、底辺が接地部78となる上向き三角形状である。そして、接地部78に対応する箇所には、3つのガイドローラ73が位置している。なお、この三角形状は、駆動輪71が位置する頂点が前方に偏った形状である。後クローラ式走行装置70は、上述のような構成にすることで、クローラベルト74の接地部78をクローラベルト74の周回方向に広くすることができ、安定した走行が可能となる。
また、後クローラ式走行装置70の上部に駆動輪71が位置しており、駆動輪71を回転させる油圧モータ76は駆動輪71と同軸上に配設され、油圧モータ76の車両内方への突出を少なくしている。つまり、油圧モータ76は、駆動輪71に対して、インホイール状に配設されている。したがって、左右の後クローラ式走行装置70R,70L間での車体フレーム10の下方には大きな空間を形成することができる。そして、後述する斜面横断走行時において、油圧モータ76や後懸架装置90の連結部が斜面と当接することを低減できる。
なお、後クローラ式走行装置70の側面視の形状は、三角形状に限定されるものではなく、例えば、四角形状や台形状のクローラ式走行装置であってもよい。
また、後クローラ式走行装置70は、取付フレーム75に対する従動輪72の位置を移動させることでクローラベルト74のテンションを調節する図示せぬテンション調節装置、駆動輪71の回転を止める図示せぬブレーキ装置なども備える。
ここで、図6に示すように、ガイドローラ73は、左右のローラ79A,79Bと、端部にそれぞれ左右のローラ79A,79Bが固設された回動軸80などから構成され、回動軸80が取付フレーム75に回動自在に支持される。そして、ガイドローラ73は、取付フレーム75に回動自在に支持され、左右のローラ79A,79Bにクローラベルト74の内周面81が接触し、クローラベルト74の周回をガイドしている。また、ガイドローラ73が位置する箇所のクローラベルト74が地面と接地する(接地部78)。
なお、ガイドローラ73の支持構成は上述の構成に限定されるものではなく、例えば、左右のローラ79A,79Bがそれぞれ取り付けフレーム75に回動自在に支持される構成であってもよい。また、取付フレーム75に回動自在に支持される支持部材がガイドローラ73を回動自在に支持する構成であってもよい。つまり、ガイドローラ73が支持部材を介して取付フレーム75に連結される構成であってもよい。このような構成にすることで、地面の凹凸に対してガイドローラ73が追随し、クローラベルト74の接地性が向上し、走行性が向上する。
そして、車両内側に位置するローラ79Aは、右側端部(幅方向の車両内側の端部)に、円筒状の延設部82を備える。ローラ79Aの外径と延設部82の外径は同一であり、延設部82はローラ79Aから連続してクローラベルト74の右側端部(幅方向の車両内側の端部)まで延びている。
なお、延設部82は、ガイドローラ73の幅方向端部に形成され、クローラベルト74の幅方向の端部に対応して延びるものであればよく、円筒形状に限定されるものではない。例えば、円柱形状であっても良い。
クローラベルト74の右側端面83(幅方向の車両内側の端面)と外周面84との間には、面取りがなされた面取り部85が形成される。つまり、面取り部85は、ガイドローラ73の延設部82が位置する側のクローラベルト74の幅方向端部に形成される。なお、図5に示すように、面取り部85は、クローラベルト74の全周に渡って連続して形成される。
面取り部85には、突出部としてのスパイク86が取付けられる。したがって、スパイク86は、クローラベルト74の幅方向において、ガイドローラ73の延設部82に対応する位置に取付けられている。スパイク86は、円柱状の鋼材からなり、一端部が円錐状の先細り形状である。また、スパイク86の他端部には、雄螺子が形成されている。スパイク86は、クローラベルト74の面取り部85に埋設されたナット87に雄螺子を羅合することで取り付けられる。つまり、スパイク86は、クローラベルト74に螺子構造によって着脱自在に取り付けられている。
また、スパイク86は、円錐状の一端部が面取り部85から垂直に突出する状態で取付けられる。つまり、スパイク86は、クローラベルト74の面取り部85に、外方へ向けて一端部が突出した状態で取付けられている。なお、図5に示すように、スパイク86は、クローラベルト74の周回方向に略等間隔で複数取り付けられている。
また、スパイク86の先端部と、クローラベルト74の外周面84から車両内側に延びる線との間には、隙間CLを有している。つまり、スパイク86はクローラベルの外周面84より外方に突出しない。
なお、スパイク86のクローラベルト74の面取り部85への取り付けは、上述の構成に限定されるものではなく、例えば、螺子構造が用いられずにスパイク86が直接クローラベルト74に固設される構成であってもよい。また、クローラベルト74が内部に鉄芯を有する場合、上述と同様の螺子構造を用いてこの鉄芯にスパイク86を取り付ける構成であってもよい。なお、スパイク86は、クローラベルト74に着脱自在に取り付けられることが好ましく、例えば、スパイク86が磨耗や破損した際の交換が容易に行え、メンテナンス性が向上する。また、隣接するスパイク86同士の間隔は等間隔に限定されるものではなく、適宜設計できる。
なお、クローラベルト74の外周面84には、クローラベルト74の周回方向に対して略垂直方向に延びる溝構造の図示せぬ複数のラグが形成される。ラグは、クローラベルト74が地面に接地する際、土壌をグリップして推進力を確保するためのものである。なお、ラグの形状や配置パターンなどは特に限定されるものではなく、例えば、クローラベルト74の外周面84から外方に突出する突起部材から構成されるものであってもよい。
また、クローラベルト74の内周面81の幅方向中央部には、内方へ向かって突出した複数の嵌合歯88が形成される。嵌合歯88は、クローラベルト74の周回方向に2列に整列して配置される。嵌合歯88は、ガイドローラ73の左右のローラ79A,79Bの間に位置している。嵌合歯88は、駆動輪71に形成される嵌合歯89と嵌合し、駆動輪71の回動力をクローラベルト74に伝達するためのものである。なお、クローラベルト74に形成される嵌合歯88と駆動輪71に形成される嵌合歯89との構成は、駆動輪71の回動力をクローラベルト74に伝達することができる構成であればよく、特に限定されるものではない。
次に、左右一対の前クローラ式走行装置30について説明する。なお、左側および右側の前クローラ式走行装置30は左右対称形状であるため、以下では左側の前クローラ式走行装置30を取り上げて説明を行う。右側の前クローラ式走行装置30の構成については説明を省略する。また、必要に応じて、右側の後クローラ式走行装置には符号R、左側の後クローラ式走行装置には符号Lを適宜付す。図7は前クローラ式走行装置30の左側面図である。
図7に示すように、前クローラ式走行装置30は、上部に駆動輪31と、下部に2つの従動輪32と、この2つの従動輪32の間に3つのガイドローラ33と、クローラベルト34と、取付フレーム35と、油圧モータ36と、シリンダー37などを備える。ここで、前クローラ式走行装置30は、上述の後クローラ式走行装置70とは側面視の形状が異なるものである。そして、後クローラ式走行装置70と同様に、駆動輪31には嵌合歯49が形成され、ガイドローラ33は図示せぬ延設部を備え、クローラベルト74には嵌合歯48や図示せぬ面取り部が形成され、図示せぬ面取り部には突出部としての図示せぬスパイクが複数取り付けられている。なお、これらの構成を含む後クローラ式走行装置70と同じ構成については説明を省略する。
前クローラ式走行装置30は、2つの従動輪32の間が下方に彎曲した形状である。駆動輪31は、前クローラ式走行装置30における前後方向の中央に位置している。そして、この下方に彎曲した2つの従動輪32の間にあるクローラベルト34が地面と接地する。つまり、前クローラ式走行装置30は、後クローラ式走行装置70より接地部38が周回方向において狭い構成である。また、前方の従動輪32が接地部38より上方に位置している。
前クローラ式走行装置30は、上述のような構成にすることで、地面の上方に隆起した凸部を乗り越える際、凸部にクローラベルト34が引っかかり易くなり、走行が安定する。
なお、前クローラ式走行装置30の側面視の形状は、上述の形状に限定されるものではなく、例えば、四角形状や台形状であってもよく、上述の後クローラ式走行装置70と同じ形状であってもよい。前クローラ式走行装置30と後クローラ式走行装置70とが同じ形状である場合、部品点数が少なくなり、生産性が向上する。
ここで、前後のクローラ式走行装置30,70は、エンジンEの駆動力によって駆動する。エンジンEの駆動力は、車体フレーム10に備えるポンプPに伝達され、さらに図示せぬ比例電磁弁を介して油圧モータ36,76に伝達される。油圧モータ36,76を駆動させることで前後のクローラ式走行装置30,70が駆動し、走行車両1を走行させることができる。そして、前後のクローラ式走行装置30,70の駆動装置としての油圧モータ36,76は、前後のクローラ式走行装置30,70内にそれぞれ備えられている。したがって、車体フレーム10と前後のクローラ式走行装置30,70との間にドライブシャフト等の伝達機構を有する必要はなく、駆動力の伝達構成を簡略化することができ、部品点数が削減され、生産性やメンテナンス性が良い。
なお、前後のクローラ式走行装置30,70への駆動力の伝達は、上述の構成に限定されるものではない。例えば、各クローラ式走行装置30R,30L,70R,70Lに対応した4つの比例電磁弁を設け、この4つの比例電磁弁をそれぞれ制御する構成であってもよい。
また、前後のクローラ式走行装置30,70への駆動力の伝達は、ドライブシャフトを用いて行う構成であっても良い。つまり、前後のクローラ式走行装置30,70は、駆動装置としての油圧モータ36,76を備えず、ドライブシャフトと駆動輪31,71を連結連動させ構成であっても良い。
ここで、不整地での走行を向上するために、前後のクローラ式走行装置30,70は、後述する前後の懸架装置50,90によってそれぞれ上下方向へ大きく揺動可能である。つまり、車体フレーム10と前後のクローラ式走行装置30,70との間における駆動力の伝達は、この上下方向の揺動を阻害することなく行われることが好ましい。したがって、上述のように、前後のクローラ式走行装置30,70は駆動装置としての油圧モータ36,76を備え、柔軟性のある部材、例えばフレキシブルなホースを用いて駆動力を伝達する構成とすることが好ましい。このような構成にすることで、前後のクローラ式走行装置30,70が上下方向に大きく揺動する場合であっても、簡単な構成で駆動力を伝達することができる。
次に、前懸架装置50および後懸架装置90について説明する。なお、前懸架装置50と後懸架装置90とは、前後対称形状であるため、以下では後懸架装置90を取り上げて説明を行い、前懸架装置50の構成については説明を省略する。また、後懸架装置90は左右対称形状であるため、必要に応じて、右側を構成する部材には符号R、左側を構成する部材には符号Lを適宜付す。図8は後懸架装置90を説明する背面図であり、図9は後方の斜め上方から見た牽引アーム91の斜視図であり、図10は前方の斜め上方から見た揺動アーム92の斜視図である。
後懸架装置90は、左右一対の牽引アーム91(91R,91L)と、揺動アーム92と、左右一対の連結アーム93(93R,93L)などを備える(図2、図8参照)。
図9に示すように、回動シャフト97によって、左右の牽引アーム91R,91Lは、前端が車体フレーム10に左右方向を軸として回動自在に支持される。
また、図5に示すように、回動シャフト98Lによって、左の牽引アーム91Lは、後端が後クローラ式走行装置70Lに左右方向を軸として回動自在に支持されている。ここで、回動シャフト98Lはブラケット122Lを介して左側の後クローラ式走行装置70Lの油圧モータ76Lを支持するブラケット120Lに取り付けられる。また、回動シャフト98Lは、左の後クローラ式走行装置70Lの油圧モータ76Lの回動シャフトと同軸上に位置している。なお、右の牽引アーム91Rは、上述の左の牽引アーム91Lと同様に、右側の後クローラ式走行装置70Rの油圧モータ76Rを支持するブラケット120Rに取り付けられる。したがって、左右の牽引アーム91R,91Lは、後端が後クローラ式走行装置70R,70Lにそれぞれ左右方向を軸として回動自在に支持されている。
ここで、牽引アーム91は上述の構成に限定されるものではない。牽引アーム91は、前後方向に延設され、一端が車体フレーム10に左右方向を軸として回動自在に支持され、他端が後クローラ式走行装置70に左右方向を軸として回動自在に支持されるものであればよい。
図10に示すように、揺動アーム92は、左右方向に延設された角柱部材であり、リアサポートフレーム19に垂設された回動シャフト99によって、左右方向の中心で車体フレーム10に前後方向を軸として回動自在に支持されている。
ここで、揺動アーム92は上述の構成に限定されるものではない。揺動アーム92は、左右方向に延設され、左右方向の中心で車体フレーム10に前後方向を軸として回動自在に支持されるものであればよい。
連結アーム93は、スプリング100とシリンダー101などから構成される伸縮自在な棒状の防振装置であり、いわゆるダンパである。そして、連結アーム93は、一端がボールジョイント102を介して揺動アーム92に連結され、他端がボールジョイント103を介して後クローラ式走行装置70に連結されている。
ここで、連結アーム93は上述の構成に限定されるものではない。連結アーム93は、一端が自在継手を介して揺動アーム92に連結され、他端が自在継手を介して後クローラ式走行装置70に連結されるものであればよい。
次に、前懸架装置50および後懸架装置90の動作について説明する。なお、前懸架装置50と後懸架装置90とは、前後対称形状であるため、以下では後懸架装置90を取り上げて説明を行い、前懸架装置50については説明を省略する。
図11は、左右で高低差を有する不整地走行時の後懸架装置90の状態を説明する背面図である。地面G1は、基準面G2と、基準面G2から上方に隆起した凸部を有し、基準面G2と凸部の上面G3との高低差はHである。基準面G2と凸部の上面G3は、それぞれ水平である。また、図12は、斜面の横断走行時の後懸架装置90の状態を説明する概略模式図である。地面G4は、右側が山であり、左側が谷である斜面である。
図11に示すように、左右方向で高低差を有する不整地においては、後懸架装置90によって懸架された左右の後クローラ式走行装置70R,70Lは、上下方向にそれぞれ逆向きに連動して揺動する。これは、左右の後クローラ式走行装置70R,70Lが、車体フレーム10に前後方向に延びた回動シャフト99を軸として回動自在に支持される揺動アーム92を介して連結されているためである。
さらに、後クローラ式走行装置70は、車体フレーム10に対して左右方向へ移動することなく、また、前後方向を軸として回動することなく、上下方向に揺動する。そして、後クローラ式走行装置70の接地部78は、車体フレーム10に対して、常に平行状態に保たれている。つまり、後クローラ式走行装置70は、背面視において、車体フレーム10に対して、上下方向にスライド移動する。これは、左右の後クローラ式走行装置70R,70Lが、一端が車体フレーム10に左右方向に延びた回動シャフト97を軸として回動自在に支持され、他端が後クローラ式走行装置70の左右方向に延びた回動シャフト98を軸として回動自在に支持される牽引アーム91R,91Lにそれぞれ連結しているためである。
したがって、不整地の凹凸の変化に対する後クローラ式走行装置70の上下方向の追従が速く、走行性や乗り心地が良い。
ここで、上述したように、クローラベルト74に取り付けられたスパイク86は、先端部とクローラベルト74の外周面84との間には、隙間CLが形成されている(図6参照)。したがって、平地や左右方向で高低差を有する不整地など、クローラベルト74の外周面84を地面に沿って接地させて走行する場合、スパイク86は地面に接触することがない。したがって、このような走行時において、スパイク86が走行の抵抗となることはなく、走行性が低下することはない。
次に、図12に示すように、斜面の横断走行時には、乗員は車体フレーム10の右側へ体重を移動して荷重を加え、車体フレーム10の左右方向の傾きをなくすように(水平に近づけるように)操作する。
この時、後クローラ式走行装置70の接地部78は車体フレーム10に対して常に平行状態に保たれるため、後クローラ式走行装置70の接地部78の山側部が斜面にエッジとして食い込むことになる。そして、後クローラ式走行装置70をエッジとして斜面に食い込ませることで、斜面に対して後クローラ式走行装置70が引っ掛かり、横滑りしにくくできる。また、左右の後クローラ式走行装置70R,70Lは連動して上下方向逆向きに揺動するため、素早く水平に近づけることができる。したがって、車体フレーム10の左右方向の傾きを小さくできるとともに、後クローラ式走行装置70が横滑りをしにくくなり、斜面横断走行を安定してでき、走行性や操作性や乗り心地が良い。
ここで、左の後クローラ式走行装置70Lは谷側に位置しているため、この左の後クローラ式走行装置70Lには、右の後クローラ式走行装置70Rよりも、谷側へ向かう力(横滑りする方向への力)が加わりやすい。
左の後クローラ式走行装置70Lのガイドローラ73Lは、幅方向の車両内側の端部に、クローラベルト74Lの幅方向の車両内側の端部まで延びる延設部82Lを備える(図6参照)。したがって、この延設部82Lによって、左の後クローラ式走行装置70Lの車両内側の端部(山側部)を斜面に効果的にエッジとして食い込ませることができ、左の後クローラ式走行装置70の横滑り方向への力に対する引っ掛かり効果が増加し、更に横滑りをしにくくすることができる。つまり、上述のような斜面横断走行をする際、この延設部82Lによって、左の後クローラ式走行装置70Lの横滑り防止効果が向上する。
また、左の後クローラ式走行装置70Lの車両内側の端部(山側部)を斜面にエッジとして食い込ませる場合、この延設部82は、クローラベルト74の車両内側の端部が上方へ向かって屈曲して捲れることを防止できる。したがって、クローラベルト74Lの車両内側の端部が傷つくことを防止でき、クローラベルト74Lの耐久性が向上する。これは、延設部82Lがクローラベルト74Lの車両内側の端部まで延びているからである。
さらに、後クローラ式走行装置70は、クローラベルト74に取り付けられたスパイク86を備える。そして、上述のように斜面横断走行をする際、左の後クローラ式走行装置70Lのスパイク86Lは、斜面である地面G4に押し込まれる。したがって、スパイク86Lが斜面に押し込まれることで、左の後クローラ式走行装置70の横滑り方向への力に対する引っ掛かり効果が増加し、更に横滑りをしにくくすることができる。つまり、上述のような斜面横断走行をする際、このスパイク86Lによって、左の後クローラ式走行装置70Lの横滑り防止効果が向上する。
なお、スパイク86Lは、延設部82Lに対応する位置に取付けられているので、この延設部82Lによって押さえつけられて斜面に押し込まれる。したがって、スパイク86Lを確実に斜面に押し込むことができ、横滑り方向への力に対する引っ掛かり効果を奏することができる。
また、スパイク86Lは、先端が円錐状の先細り形状であるので、斜面に押し込まれやすい。したがって、斜面が硬い場合などであってもスパイク86Lを押し込むことができ、横滑り方向への力に対する引っ掛かり効果を奏することができる。
また、スパイク86Lは、クローラベルト74に形成された面取り部85に取り付けられているので、斜面に対して垂直に近い状態で押し込まれる。したがって、スパイク86Lは、斜面に押し込まれやすく、深く押し込むことができる。そして、スパイク86Lが斜面に深く押し込まれることにより、横滑り方向への力に対する引っ掛かり効果が増加し、更に横滑りをしにくくすることができる。
また、スパイク86Lが面取り部85に取り付けられることで、スパイク86Lの先端部とクローラベルト74の外周面84との間に隙間CLを形成しつつ、スパイク86Lの突出高さ(先端と面取り部85との距離)を高くすることができる。したがって、クローラベルト74の外周面84を地面に沿って接地させて走行する場合の走行性を低下させることなく、スパイク86Lの斜面への押し込み量を大きくすることができ、更に横滑り防止効果を向上させることができる。
また、スパイク86Lは面取り部85に取り付けられており、その周囲には走行時に土が溜まりやすい構造、例えば窪みなどが形成されていない。したがって、スパイク86Lの周囲に土が付着し、この付着した土によってスパイク86Lが埋もれてしまうことがない。
なお、スパイク86Lは、斜面横断走行時に地面に押し込まれ、横滑り方向への力に対する引っ掛かりとして作用するため、他の部材よりも磨耗しやすい。しかし、スパイク86Lは、螺子構造によって着脱自在にクローラベルト74に取り付けられる。したがって、走行によって磨耗などしたスパイク86Lを容易に交換することが可能であり、メンテナンス性がよく、クローラベルト74の耐久性が向上する。
なお、斜面の傾斜方向が逆である斜面横断走行、つまり、図12の地面G4が、右側が谷で左側が山となる場合の横断走行については、左右の後クローラ式走行装置70R,70Lが入れ替わるだけであり、その場合の説明は省略する。
ここで、前後のクローラ式走行装置30,70を車体フレーム10に連結する前後の懸架装置50,90は、上述の構成に限定されるものではない。上述したように、斜面横断走行時に、クローラ式走行装置の幅方向端部を斜面にエッジとして食い込ませて走行することができる連結機構であればよい。つまり、クローラ式走行装置を車体フレームに、クローラベルトの接地面が車体フレームに対して平行に維持され、かつ、上下揺動可能または昇降可能に連結することができる構成であればよい。
例えば、上述の後懸架装置90において、揺動アーム92や連結アーム93を備えない構成であってもよい。つまり、牽引アーム91R,91Lのみによって、後クローラ式走行装置70R,70Lを車体フレーム10に懸架し、車体フレーム10と牽引アーム91との間に緩衝装置としてのダンパを連結した構成としてもよい。したがって、左右の後クローラ式走行装置70R,70Lは独立して車体フレーム10に懸架される構成である。このような構成にすることで、後懸架装置が簡易な構成となり、生産性とメンテナンス性が向上する。なお、前懸架装置50についても同様である。
また、後懸架装置90における牽引アーム91は、一端が車体フレーム10に支持され、他端が後クローラ式走行装置70に支持される。しかし、後懸架装置90は、この牽引アーム91に替わって、公知のダブルウィッシュボーン式サスペンションで用いられる上下2組のアーム(アッパーアームとロワアーム)を車体フレーム10と後クローラ式走行装置70との間に設ける構成であってもよい。このような構成にすることで、車体フレーム10と後クローラ式走行装置70との間の連結の強度が高くなる。しかし、このような構成にすることで、後クローラ式走行装置70の上下方向の揺動可能量(上下方向への移動可能量)が小さくなってしまうため、上述の牽引アーム91による構成の方が好ましい。なお、前懸架装置50についても同様である。
また、クローラ式走行装置を上下に昇降可能に連結する構成としては、例えば、ピストンロッドとシリンダーライナーなどから構成されるシリンダーによって、クローラ式走行装置を車体フレームに昇降可能に連結する構成であってもよい。このシリンダーが伸縮することで、クローラ式走行装置を上下に昇降することができる。また、パンタグラフ機構のようなリンク機構によってクローラ式走行装置を車体フレームに昇降可能に連結する構成であってもよい。
また、後クローラ式走行装置70は、上述の構成に限定されるものではない。後クローラ式走行装置70は、ガイドローラ73の幅方向端部に、クローラベルト74の幅方向端部に対応して延びる延設部82を備える構成であれば良い。そして、ガイドローラ73が延設部82を備えることによって、斜面横断走行時に、クローラベルト74の幅方向端部を斜面にエッジとして効果的に食い込ませることができ、横滑り防止効果を向上することができる。また、斜面横断走行の際、クローラベルト74の幅方向端部が傷つくことを防止することができ、耐久性が向上する。
また、後クローラ式走行装置70と同様に、前クローラ式走行装置30は、上述の構成に限定されるものではなく、図示せぬガイドローラの幅方向端部に、クローラベルト34の幅方向端部に対応して延びる図示せぬ延設部を備える構成であれば良く、後クローラ式走行装置70と同様の効果を奏する。ここで、前クローラ式走行装置30は、後クローラ式走行装置70と同様であるため、以下の別の実施形態の例示においては、後クローラ式走行装置70を取り上げて説明し、前クローラ式走行装置30の説明は省略する。そして、前クローラ式走行装置30は、後述する後クローラ式走行装置の別の実施形態と同様の形態であってもよい。
後クローラ式走行装置70の別の実施形態としては、例えば、上述の後クローラ式走行装置70において、面取り部85や突起部としてのスパイク86を備えない構成であっても良い。しかし、横滑り防止効果を向上する観点において、突起部としてのスパイク86を備える構成が好ましい。
また、ガイドローラ73と同様に、従動輪72にも上述の延設部を備える構成としてもよい。クローラ式走行装置の構成によっては、ガイドローラとともに、従動輪の位置に対応するクローラベルトが地面と接地する場合もある。したがって、このような構成の場合には、従動輪にも、ガイドローラと同様の延設部を備える構成が好ましい。
また、図13に示すような後クローラ式走行装置270であってもよい。ここで、図13は別の実施形態の後クローラ式走行装置270の部分断面図であり、図6と同様の部位の部分断面図である。なお、後クローラ式走行装置270は、上述の後クローラ式走行装置70において、ガイドローラ273とクローラベルト274の形態が異なるものであり、それ以外の構成部材は同様の形態である。そして、上述の後クローラ式走行装置70と同様の構成については説明を省略する。
ガイドローラ273は、上述のガイドローラ73と同様に、左右のローラ279A,279Bと回動軸280などを備え、取付フレーム75に回動自在に支持される。車両内側に位置するローラ279Aは、右側端部(幅方向の車両内側の端部)に、円筒状の延設部282Aを備える。そして、延設部282Aはローラ279Aから連続してクローラベルト274の右側端部(幅方向の車両内側の端部)まで延びている。また、車両外側に位置するローラ279Bは、左側端部(幅方向の車両外側の端部)に、円筒状の延設部282Bを備える。そして、延設部282Bはローラ279Bから連続してクローラベルト274の左側端部(幅方向の車両外側の端部)まで延びている。つまり、ガイドローラ273は、幅方向の両側端部に、それぞれ延設部282A,282Bを備える構成である。
クローラベルト274の右側端部(幅方向の車両内側の端部)には、面取り部285Aが形成され、クローラベルト274の左側端部(幅方向の車両外側の端部)には、面取り部285Bが形成される。つまり、ガイドローラ273の両端部に備える延設部282A,282Bに対応して、クローラベルト274の両端部にそれぞれ面取り部285A,285Bが形成される。そして、面取り部285A,285Bには、それぞれ突出部としてのスパイク286A,286Bが取付けられる。したがって、後クローラ式走行装置270は、上述の後クローラ式走行装置70において、幅方向車両外側の端部にも内側端部と同様に延設部、面取り部、スパイクを備える構成である。
このような構成にすることで、図12に示すような斜面横断走行時において、谷側に位置している左の後クローラ式走行装置に加えて、山側に位置している右の後クローラ式走行装置においても、横滑り方向への力に対する引っ掛かり効果が増加し、更に横滑りをしにくくすることができる。
より詳細には、右の後クローラ式走行装置270Rの延設部282Bによって、右の後クローラ式走行装置270Rの車両外側の端部(山側部)を斜面に効果的にエッジとして食い込ませることができ、右の後クローラ式走行装置270Rの横滑り方向への力に対する引っ掛かり効果が増加し、更に横滑りをしにくくすることができる。
また、右の後クローラ式走行装置270Lの車両外側の端部(山側部)を斜面にエッジとして食い込ませる場合、この延設部282Bは、クローラベルト74の車両外側の端部が上方へ向かって屈曲して捲れることを防止しすることができる。
さらに、右の後クローラ式走行装置270Rのスパイク286Bが斜面に押し込まれることで、右の後クローラ式走行装置270Rの横滑り方向への力に対する引っ掛かり効果が増加し、更に横滑りをしにくくすることができる。
そして、斜面横断走行時において、谷側に位置している左の後クローラ式走行装置270Lと山側に位置している右の後クローラ式走行装置270Rとの両方の横滑り防止効果が向上するため、走行車両1は更に走行性が向上する。
また、このような構成にすることで、上述の走行車両1ように左右にクローラ式走行装置を備える車両ではなく、車両の中央にクローラ式走行装置を備える走行車両においても横滑り防止効果の向上ができる。このような走行車両としては、例えば、ここでは図示しないが、走行車両1における左右の後クローラ式走行装置70R,70Lに替わって、後クローラ式走行装置270を1つ備える構成の走行車両である。この走行車両は、走行車両1において、車体フレーム10の後部の左右方向中央に後クローラ式走行装置270を1つ配置する構成であり、3つのクローラ式走行装置によって走行する。なお、この走行車両における後クローラ式走行装置270の懸架装置は特に限定されるものではないが、車体フレームに対して上下に大きく揺動可能に懸架するものが好ましい。例えば、一端が車体フレームに左右方向を軸として回動可能に連結され、他端が後クローラ式走行装置に連結される牽引アームによって後クローラ式走行装置を懸架する構成であってもよい。
そして、この走行車両による斜面横断走行では、斜面の傾斜の向きに応じて、後クローラ式走行装置270の幅方向の右側端部または左側端部(山側に位置する端部)を斜面に効果的にエッジとして食い込ませることができ、後クローラ式走行装置270の横滑り方向への力に対する引っ掛かり効果が増加し、横滑りをしにくくすることができる。
また、図14に示すような後クローラ式走行装置370であってもよい。ここで、図14は更に別の実施形態の後クローラ式走行装置370の部分断面図であり、図6と同様の部位の部分断面図である。なお、後クローラ式走行装置370は、上述の後クローラ式走行装置70において、クローラベルト374の内周面に肉厚部390を備えるものであり、それ以外の構成は同様の形態である。そして、上述の後クローラ式走行装置70と同様の構成については説明を省略する。なお、図14において、ローラ379Aと延設382は2点破線で記載されている。
ガイドローラ373は、上述のガイドローラ73と同様に、左右のローラ379A,379Bと回動軸380などを備え、取付フレーム75に回動自在に支持される。また、車両内側に位置するローラ379Aは、右側端部(幅方向の車両内側の端部)に、円筒状の延設部382を備える。
クローラベルト374は、上述のクローラベルト74と同様に、突出部としてのスパイク386などを備える。スパイク386は、面取り部385に取り付けられ、クローラベルト374の周回方向に略等間隔で複数取り付けられている。
クローラベルト374の内周面には、内方へ向けて突出する肉厚部390を備える。肉厚部390は、複数のスパイク386にそれぞれ対応して形成される。つまり、クローラベルト374の周回方向に複数の肉厚部390が形成されている。また、肉厚部390は、クローラベルト374の幅方向において、面取り部385にも対応した位置に形成される。つまり、肉厚部390は、クローラベルト374の幅方向において、外周面384と面取り部385との稜線と車両内側の端との間に位置している。
このような構成にすることで、図12に示すような斜面横断走行時において、スパイク386を斜面に押し込む際の押し付け力が増加する。したがって、スパイク386を確実に斜面に押し込むことができる。また、スパイク386を斜面により強力に押さえ込むことができ、横滑り方向への力に対する引っ掛かり効果が増大し、横滑り防止効果を更に向上することができる。
なお、図11に示すように、平地や左右方向で高低差を有する不整地など、クローラベルト374の外周面384を地面に沿って接地させて走行する場合、肉厚部390によって、クローラベルト374の面取り部385は外方(図14における下方)へ向けて撓む。この時、スパイク386は面取り部385に取り付けられているため、地面には接触しにくい形態である。また、肉厚部390は、クローラベルト374の幅方向において、面取り部385に対応した位置(外周面384と面取り部385との稜線と車両内側の端との間)に形成される。したがって、クローラベルト374の接地部に対応する部位である、面取り部385の稜線よりも幅方向中央側の外周面384は、肉厚部390の影響を受けない。したがって、肉厚部390を備えることによって、図11に示すような走行時の走行性は低下しにくい。
なお、肉厚部390は、突出部としてのスパイク386に対応して形成されればよく、例えば、クローラベルト374の内周面381の全周に渡って連続して形成されてもよい。このような構成にすることで、スパイク386の間隔を変更した場合であっても、この変更に対応して肉厚部390の位置を変更する必要がない。つまり、スパイク386の間隔を後から任意に変更できるので設計の自由度が向上する。
また、図15に示すような後クローラ式走行装置470であってもよい。ここで、図15は更に別の実施形態の後クローラ式走行装置470の部分断面図であり、図6と同様の部位の部分断面図である。なお、後クローラ式走行装置470は、上述の後クローラ式走行装置70において、延設部482の形態が異なるものであり、それ以外の構成は同様の形態である。そして、上述の後クローラ式走行装置70と同様の構成については説明を省略する。なお、図15において、クローラベルト474は、2点破線で記載されている。
ガイドローラ473は、上述のガイドローラ73と同様に、左右のローラ479A,479Bと回動軸480などを備え、取付フレーム75に回動自在に支持される。また、車両内側に位置するローラ479Aは、右側端部(幅方向の車両内側の端部)に、円筒状の延設部482を備える。
延設部482は、ローラ479Aから連続してクローラベルト474の右側端部(幅方向の車両内側の端部)まで延びている。そして、延設部482は、ローラ479Aよりも外径が大である大径部490を備える。大径部490は、突出部としてのスパイク486に対応して形成される。また、大径部490は、クローラベルト474の幅方向において、面取り部485にも対応した位置に形成される。つまり、大径部490は、クローラベルト474の幅方向において、外周面484と面取り部485との稜線と車両内側の端との間に位置している。
このような構成にすることで、図12に示すような斜面横断走行時において、スパイク486を斜面に押し込む際の押し付け力が増加する。したがって、スパイク486を確実に斜面に押し込むことができる。また、スパイク486を斜面により強力に押さえ込むことができ、横滑り方向への力に対する引っ掛かり効果が増大し、横滑り防止効果を更に向上することができる。
なお、図11に示すように、平地や左右方向で高低差を有する不整地など、クローラベルト474の外周面484を地面に沿って接地させて走行する場合、大径部490によって、クローラベルト474の面取り部485は外方へ向けて撓む。この時、スパイク486は面取り部485に取り付けられているため、地面には接触しにくい形態である。また、大径部490は、クローラベルト474の幅方向において、面取り部485に対応した位置(外周面484と面取り部485との稜線と車両内側の端との間)に形成される。したがって、クローラベルト474の接地部に対応する部位である、面取り部485の稜線よりも幅方向中央側の外周面484は、大径部490の影響を受けない。したがって、大径部490を備えることによって、図11に示すような走行時の走行性は低下しにくい。なお、大径部490は、突出部としてのスパイク486に対応して形成されればよく、例えば、幅方向の車両内側の端部へ向けて拡径する形状であってもよく、延設部482の全体が大径部490となる構成であってもよい。
また、突出部は上述のスパイク86,286,386、486の構成に限定されるものではない。突出部は、延設部に対応し、クローラベルトの外周面から外方へ向けて突出するものであればよい。そして、突出部は、斜面横断走行をする際、斜面に押し込まれ、クローラ式走行装置の横滑り方向への力に対する引っ掛かり効果を増加することができる。
したがって、突出部は、例えば、図16に示すような突起部586であっても良い。ここで、図16は更に別の実施形態の後クローラ式走行装置570の部分断面図であり、図6と同様の部位の部分断面図である。なお、後クローラ式走行装置570は、上述の後クローラ式走行装置70において、突出部(スパイク86)の形態が異なるものであり、それ以外の構成は同様の形態である。そして、上述の後クローラ式走行装置70と同様の構成については説明を省略する。
突出部としての突起部586は、ガイドローラ573に形成された延設部582に対応し、クローラベルト574の面取り部585に、クローラベルト574の周回方向に延びて形成される突起である。突起部586の断面は、面取り部585に対して垂直方向に突出する略三角形状であり、外方に向かって先細り形状である。突起部586は、クローラベルト574の周回方向に略等間隔で複数形成される。突起部586の突出高さ、つまり、面取り部585から突起部586の先端までの高さは、クローラベルト574の周回方向の両側端部ではそれぞれ周回方向の中央へ向けて漸次大となり、中央部では略一定である。
このような構成にすることで、図12に示すような斜面横断走行時において、突起部586が斜面に押し込まれ、横滑り方向への力に対する引っ掛かり効果が増大し、横滑り防止効果を更に向上することができる。また、突起部586は先細り形状であり、また、突起部586の高さが、周回方向において、端部から中央へ向けて漸次大となるため、斜面に押し込まれやすい。
なお、突起部586は、クローラベルト574の全周に渡って連続した形状であってもよいが、突起部586を斜面に押し込みやすくするためには、複数の突起部586を所定の間隔に形成する構成の方か好ましい。
なお、図11に示すように、平地や左右方向で高低差を有する不整地など、クローラベルト574の外周面584を地面に沿って接地させて走行する場合、突起部586の先端とクローラベルト574の外周面584との間には隙間CLが形成されているので、突起部586は地面に接触しない。したがって、図11に示すような走行時において、突起部586が走行の抵抗となることはなく、走行性が低下することはない。
また、突出部は、図17に示すような突起部686であっても良い。ここで、図17は更に別の実施形態の後クローラ式走行装置670の部分断面図であり、図6と同様の部位の部分断面図である。なお、後クローラ式走行装置670は、上述の後クローラ式走行装置70において、突出部(スパイク86)の形態が異なるものであり、それ以外の構成は同様の形態である。そして、上述の後クローラ式走行装置70と同様の構成については説明を省略する。
突出部としての突起部686は、ガイドローラ673の延設部682に対応し、クローラベルト674の右側端部(幅方向の車両内側の端部)に、クローラベルト674の周回方向に延びて形成される突起である。突起部686の断面は、一辺がクローラベルト674の右側端面683(幅方向の車両内側の端面)と同一であり、クローラベルト674の外周面684から外方に向かって突出する略三角形状である。突起部686は、クローラベルト674の周回方向に略等間隔で複数形成される。突起部686の突出高さ、つまり、外周面684から突起部686の先端までで高さは、クローラベルト674の周回方向の両側端部ではそれぞれ周回方向の中央へ向けて漸次大となり、中央部では略一定である。
このような構成にすることで、図12に示すような斜面横断走行時において、突起部686が斜面に押し込まれ、横滑り方向への力に対する引っ掛かり効果が増大し、横滑り防止効果を更に向上することができる。また、突起部686は先細り形状であり、また、突起部686の高さが、周回方向において、端部から中央へ向けて漸次大となるため、斜面に押し込まれやすい。
なお、突起部686は、クローラベルト674の全周に渡って連続した形状であってもよいが、突起部686を斜面に押し込みやすくするためには、複数の突起部686を所定の間隔に形成する構成の方か好ましい。
なお、前後のクローラ式走行装置は、上述の実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲であらゆる形態をとることができる。上述の実施形態を組み合わせた構成としてもよい。例えば、図15に示す後クローラ式走行装置470において、突出部としてのスパイク486に替わって、図16に示す突出部としての突起部586を備える構成としても良い。
このような構成にすると、クローラベルトの周回方向に延びて形成される突起部586であっても、突起部586を斜面に押し込む押し付け力が増加し、確実に斜面へ押し込むことができる。