JP2016028569A - がん幹細胞集団の調製方法、異種移植片の調製方法、スクリーニング方法、miR−34aの発現量を低下させる方法及びがん幹細胞増殖抑制剤 - Google Patents
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Abstract
Description
現行の化学療法や放射線療法により腫瘍組織を構成するがん細胞の大部分を死滅させたとしても少数のがん幹細胞が残存し、がん幹細胞の自己複製能と多分化能によりがん組織が再生される。また、がんの転移には、その細胞が原発巣から遊離するだけではなく、到達した部位で新しくがんを形成する能力が必要となることから、がん幹細胞は、がんの転移においても重要な役割を果たしている可能性が示唆されている(非特許文献2)。
更に、がん幹細胞は、薬剤耐性を有する細胞が報告されており(非特許文献3)、がん幹細胞のがん治療における重要性が認識されている。
そのため、がん幹細胞は、現行の化学療法や放射線療法に対して治療抵抗性を示す難治性がんにおいて、新たな治療標的として大きな注目を集めている。
即ち、従来、難治性がんなどの病態を反映したがん幹細胞集団を効率的に分離・培養する方法はなかった。
(1)乃至(5)いずれかに記載の方法。
がん幹細胞を含む細胞塊を、前記がん幹細胞の由来種とは異なる非ヒト動物に移植する工程と、
該非ヒト動物において異種移植片を形成させる工程と、を有する方法。
がん幹細胞を含む細胞塊を、前記がん幹細胞の由来種とは異なる非ヒト動物に移植する工程と、
該非ヒト動物において異種移植片を形成させる工程と、
被験物質を、前記異種移植片に投与する工程と、
前記被験物質が投与された前記異種移植片におけるmiR−34aの発現量を測定する工程と、
前記測定結果に基づいて、がん幹細胞の増殖調節剤の候補物質として被験物質を選択する工程と、
を有するスクリーニング方法。
がん幹細胞を含む細胞塊を、前記がん幹細胞の由来種とは異なる非ヒト動物に移植する工程と、
該非ヒト動物において異種移植片を形成させる工程と、
被験物質を、前記異種移植片に投与する工程と、
前記被験物質が投与された前記異種移植片におけるmiR−34aの発現量を測定する工程と、
前記測定結果に基づいて、がんの治療剤又は予防剤の候補物質として被験物質を選択する工程と、
を有するスクリーニング方法。
がん幹細胞を含む細胞塊を、前記がん幹細胞の由来種とは異なる非ヒト動物に移植する工程と、
該非ヒト動物において異種移植片を形成させる工程と、
を有する方法。
本発明は、がん幹細胞集団の調製方法であって、がん幹細胞を含む細胞塊を、前記がん幹細胞の由来種とは異なる非ヒト動物に移植する工程と、該非ヒト動物において異種移植片を形成させる工程と、前記非ヒト動物から前記異種移植片を取り出す工程と、前記異種移植片を、前記がん幹細胞の分裂を促進させる増殖因子を含む無血清3次元培地において培養し、オルガノイドを形成する工程と、を有する方法を包含する。
また、かかる調製方法により分離・培養したがん幹細胞集団は、現行の化学療法や放射線療法に対して治療抵抗性を示す難治性がんなどにおいて新たな治療標的を探索するために有用である。
本発明における移植工程は、がん幹細胞を含む細胞塊を、がん幹細胞の由来種とは異なる非ヒト動物に移植する工程である。
かかる調製方法に包含される移植する工程において、非ヒト動物に移植する部位は、移植するがん幹細胞の由来や種別、移植される非ヒト動物により適宜設定されてよい。好ましくは、皮下組織内である。
本発明における異種移植片形成工程は、上述の移植工程後の非ヒト動物において異種移植片を形成させる工程である。
かかる調製方法に包含される異種移植片を形成させる工程において、異種移植片を形成させる期間は、がん幹細胞が増殖して移植片として摘出し得るようになる期間であって非がん幹細胞が死滅する期間が設定されることが好ましい。例えば、好ましくは、1か月から5か月、より好ましくは、2か月〜4か月、より好ましくは3か月の期間が設定されてよい。
かかる調製方法に包含される異種移植片を形成させる工程及び異種移植片を取り出す工程は、異種移植片に含まれるがん幹細胞の純度を高めるために複数回(例えば、2〜5回)繰りかえされることが好ましい。
本発明におけるオルガノイド形成工程は、異種移植片を、がん幹細胞の分裂を促進させる増殖因子を含む無血清3次元培地において培養し、オルガノイドを形成する工程である。
かかる調製方法における増殖因子は、幹細胞の増殖を促進する物質であればよく、通常、分子量が20,000以下のペプチドで、受容体との結合により低濃度で作用が発揮される因子が挙げられる。例えば、増殖因子には、EGF、Wnt分泌タンパク質(Wnt関連タンパク質)(R−スポンジン1(R−spondin1、Rspo1)、Wnt3Aなど)、Noggin、Nicotinamide、FGF10、HGF、A83−01(TGF−β受容体阻害薬)、Y−27632、Gastrinなどが含まれる。
本発明は、がん幹細胞を含む異種移植片の調製方法であって、がん幹細胞を含む細胞塊を、がん幹細胞の由来種とは異なる非ヒト動物に移植する工程と、該非ヒト動物において異種移植片を形成させる工程と、を有する方法を包含する。
本発明は、がん幹細胞の増殖調節剤の候補物質のスクリーニング方法であって、がん幹細胞を含む細胞塊を、がん幹細胞の由来種とは異なる非ヒト動物に移植する工程と、該非ヒト動物において異種移植片を形成させる工程と、被験物質を、異種移植片に投与する工程と、被験物質が投与された異種移植片におけるmiR−34aの発現量を測定する工程と、測定結果に基づいて、がん幹細胞の増殖調節剤の候補物質として被験物質を選択する工程と、を有するスクリーニング方法を包含する。
本発明のスクリーニング方法における移植工程は、上述のがん幹細胞集団の調製方法における移植工程と同様の方法を用いることができる。
本発明のスクリーニング方法における異種移植片形成工程は、上述のがん幹細胞集団の調製方法における異種移植片形成工程と同様の方法を用いることができる。
本発明のスクリーニング方法における投与工程は、被験物質を、異種移植片に投与する工程である。なお、本発明において、「被験物質を異種移植片に投与する」とは、直接的又は間接的に異種移植片に被験物質を投与することを指す。
測定工程は、被験物質が投与された異種移植片におけるmiR−34aの発現量を測定する工程である。
選択工程は、上記測定結果に基づいて、がん幹細胞の増殖調節剤の候補物質として被験物質を選択する工程である。
本発明のスクリーニング方法は、上記で述べた以外の工程を更に有してもよく、有さなくてもよい。上記で述べた以外の工程を更に有してもよい工程としては、例えば、がん幹細胞の増殖調節剤の候補物質として選択された被験物質を、単離されたがん幹細胞又はがん幹細胞を有するがんモデル非ヒト動物に投与して、がん幹細胞の増殖調節作用を確認する工程が挙げられる。
本発明は、がんの治療剤又は予防剤の候補物質のスクリーニング方法であって、がん幹細胞を含む細胞塊を、がん幹細胞の由来種とは異なる非ヒト動物に移植する工程と、該非ヒト動物において異種移植片を形成させる工程と、被験物質を、異種移植片に投与する工程と、被験物質が投与された異種移植片におけるmiR−34aの発現量を測定する工程と、測定結果に基づいて、がんの治療剤又は予防剤の候補物質として被験物質を選択する工程と、を有するスクリーニング方法を包含する。
本発明は、非ヒト動物において形成される異種移植片におけるmiR−34の発現量を低下させる方法であって、がん幹細胞を含む細胞塊を、がん幹細胞の由来種とは異なる非ヒト動物に移植する工程と、該非ヒト動物において異種移植片を形成させる工程と、を有する方法を包含する。
本発明は、miR−34aからなる、がん幹細胞増殖抑制剤を包含する。本発明者らは、miR−34aが、がん幹細胞の増殖を抑制可能なことを見出した。
(がん幹細胞を含むオルガノイドの調製方法)
肝内胆管がんの診断を受けた患者(70歳、女性)から外科切除により胆管がん組織を採取した。採取した胆管がん組織を免疫不全マウス(SCIDマウス、C.B17/Icr−scid(scid/scid))の皮下組織内に移植した。胆管がん組織を移植後、約60日経過後、異種移植片の生成を確認して異種移植片を摘出した。
なお、採取した胆管がん組織は、国立がん研究センター中央病院より供与を受けた。
異種移植片を移植した免疫不全マウス及び免疫不全マウスから摘出した移植片を図1に示す。
摘出した異種移植片の組織をHE染色にて観察した。観察結果を図2(スケールバーは100μm)に示す。図2に示すように、摘出した異種移植片は、元の胆管がん組織と類似する組織像であると認められた。
図5に示されるように、作製した胆管がんオルガノイドには、マウス特異的なプライマー(mouse−specific primer)においてDNAの増殖が確認されず、マウス由来の細胞が混入していないことが確認された。
(胆管がんオルガノイドの増殖能に関する検討)
作製した胆管がんオルガノイドが増殖していく過程を観察した。観察は、1日ごとに1日〜10日まで観察した。観察した結果を図6に示す。
胆管がんオルガノイドは、日を追うごとに嚢胞状に増殖し、10日目には約1000μmの大きさになっていることが確認された。
図7に示すように、作製した胆管がんオルガノイドが指数関数的に増加していることが確認された。
(胆管がんオルガノイドにおけるCK19発現に関する検討)
作製した胆管がんオルガノイドについて、CK19の発現をウエスタンブロット法により検討した。CK19は、胆管がんのマーカーとして病理診断などに用いられているマーカーである。
ウエスタンブロット法は、CK19の発現について、AGSヒト胃がん細胞株(AGS)、HepG2ヒト肝がん細胞株(HepG2)、HEK293ヒト腎細胞株(HEK293)をコントロールとして、胆管がんオルガノイド(CC Organoido1、CC Organoido2)と比較した。ウエスタンブロット法の結果を、図8に示す。
図8に示すように、作製した胆管がんオルガノイド(CC Organoido1、CC Organoido2)は、CK19を強発現していることが確認された。そのため、作製した胆管がんオルガノイドは、胆管がん組織の特性を有するものであるといえる。
図9に示すように、作製した胆管がんオルガノイドは、胆管がんオルガノイドを構成する細胞の細胞質にCK19を強発現していることが確認された。
(胆管がんオルガノイドに必須な増殖因子に関する検討)
実施例1のオルガノイド培養において、培地は、基本培地に加え、上皮細胞全般の増殖因子であるEGF及びWNTシグナルの活性化因子であるR−spondin 1 (Rspo1)を含む因子を添加している。
本実施例では、どの因子が胆管がん幹細胞の増殖に必須であるかを検討した。
胆管がんオルガノイドの培養について、基本培地にEGFを加えた培地、基本培地にRspo1を加えた培地それぞれを用いてマトリジェル(Basement Membrane, Growth Factor Reduced, Phenol−Red Free 10ml(CORNING 356231))中で3次元培養(オルガノイド培養)を行い、胆管がんオルガノイドの増殖能をWSTアッセイにより検討した。WSTアッセイの結果を図10に示す。また、胆管がんオルガノイドの観察結果を図11に示す。
そのため、本方法により樹立した胆管がんオルガノイドの増殖には、Rspo1が必須であるが、その他の増殖因子は必須ではないことが確認された。
(胆管がんオルガノイドにおけるLgr5陽性幹細胞の存在に関する検討)
実施例1において作製した胆管がんオルガノイドについて、Lgr5の発現を免疫蛍光染色により検討した。Lgr5は、細胞表面分子であって、幹細胞のマーカーとされている(Sato T et al. Nature 459: 262−265, 2009)。
作製した胆管がんオルガノイドのLgr5の発現の免疫蛍光染色による検討結果を図12に示す(スケールバーは50μm)。図12に示すように、作製した胆管がんオルガノイドの細胞表面にLgr5(図中の白色部分)が発現していることを確認した。なお、DAPIによる核の染色も確認された(図中の細胞内の灰色部分)である。
作製した胆管がんオルガノイドのLgr5の発現のフローサイトメトリーによる検討結果を図13に示す。
図13に示すように、作製した胆管がんオルガノイドにおいて、Lgr5の発現は上昇していることが確認された。
図13に示される結果は、図4に示したようにLgr5のリガンドであるR−spondinが胆管がん幹細胞オルガノイドの増殖に必須であるという結果を裏付けるものである。即ち、Rspo1が胆管がん幹細胞オルガノイドの細胞表面に発現しているLgr5と結合し、Wntシグナル経路を活性化することで幹細胞の維持に決定的な役割を果たしていると考えられる。
胆管がんオルガノイドを移植した免疫不全マウスは、移植後約2か月経過後に移植した部位に腫瘍を形成した。形成された腫瘍を図14に示す。図14に示すように、形成された腫瘍は、移植した細胞数に比例した大きさの腫瘍であった。
培養の結果を図15に示す(スケールバーは1000μm)。図15に示すように、これまでと同じ条件で胆管がん幹細胞オルガノイドが活発に増殖することを確認した。
(胆管がんオルガノイドにおけるエピゲノム解析)
胆管がん幹細胞オルガノイドにおけるエピゲノムの解析を行うために、ビーズアレイ法によりDNAメチル化の状態を比較解析した。エピゲノムの解析は、実施例2において作製した胆管がんオルガノイド(Organoid)を、免疫不全マウスから摘出した異種移植片(Xenograft)と、2次元培養により樹立された細胞株(serum−cultured cell line)と比較して行った。
エピゲノム解析の結果を、図16に示す。図16はそれぞれの細胞の遺伝子についてpromoter領域、CpG island、CpG island shore (CpG islandの前後2 kb)、CpG island shelf (CpG island shoreの前後2 kb)におけるDNAメチル化の状態をクラスター解析により比較したものである。
実施例1において作製した胆管がんオルガノイドと免疫不全マウスから摘出した異種移植片とは、遺伝子のpromoter領域、CpG island、CpG island shoreのDNAメチル化の状態において、相関係数0.9以上の高い相関を認められた。他方、作製した胆管がんオルガノイドと2次元培養により樹立された細胞株とは、遺伝子のpromoter領域、CpG island、CpG island shoreのDNAメチル化の状態において、相関が認められなかった。
遺伝子発現の網羅的解析を行うため、マイクロアレイ法により遺伝子の発現プロファイルを比較解析した。遺伝子発現の網羅的解析は、実施例1において作製した胆管がんオルガノイド(Organoid)を、免疫不全マウスから摘出した異種移植片(Xenograft)と、2次元培養により樹立された細胞株(serum−cultured cell line)と比較して行った。
遺伝子発現の網羅的解析の結果を図17に示す。
実施例1において作製した胆管がんオルガノイドと免疫不全マウスから摘出した異種移植片とは、網羅的な遺伝子発現解析において、胆管がん幹細胞オルガノイドと元になった異種移植片において相関係数0.9以上の高い相関を認められた。他方、作製した胆管がんオルガノイドと2次元培養により樹立された細胞株とは、網羅的な遺伝子発現解析において、相関が認められなかった。
(胆管がんオルガノイドにおけるドライバー遺伝子変異に関する検討)
胆管がんオルガノイドにおけるドライバー遺伝子変異を同定するため、次世代シーケンサーによる遺伝子変異解析を行った。ドライバー遺伝子変異とは、がんにおける遺伝子変異のうち、がんの発生・進展に強く関わっており、がん細胞の生存が依存しているものをいう。
遺伝子変異解析は、実施例1において免疫不全マウスから摘出した異種移植片(CC1)と、実施例1において作製した胆管がんオルガノイド(Organoid (CC1))と、実施例1において作製した胆管がんオルガノイドとは異なる症例を由来とする異種移植片(CC2、CC3)と、を対象として行った。実施例1において作製した胆管がんオルガノイドとは異なる症例を由来とする異種移植片(CC2、CC3)は、実施例2においてRspo1のみを増殖因子として加えた条件下のオルガノイド培養で長期間培養できなかった系である。
遺伝子変異解析の結果を表3に示す。表3において、第1列は、遺伝子名(Gene symbol)を示し、第2列〜第4列は、各系の遺伝子変異の有無及び遺伝子変異の種類を示している。第2列〜第4列に示す「WT」は、野生型(遺伝子変異なし)であることを示す。
今回の実験で分離に成功した胆管がん症例では、KRAS、TP53、APC、TGFBR2、EGFなどの主要なドライバー遺伝子変異を同時に認めていたため、基本培地にRspo1のみを加えた条件のみで長期間培養することが可能になったと考えられる。
以下の方法により、オルガノイドの形成における異種移植片を形成させる工程の意義に関する検討を行った。具体的には、2症例の肝内胆管がん患者から外科切除により胆管がん組織を採取した。採取した胆管がん組織を免疫不全マウス(SCIDマウス、C.B17/Icr−scid(scid/scid))の皮下組織内に移植した。胆管がん組織を移植後、SPF(specific pathogen free)飼育施設における自由飲水、通常食の自由摂取により飼育を行い、約60日経過後、異種移植片の生成を確認して異種移植片を摘出した。
なお、採取した胆管がん組織は、国立がん研究センター中央病院より供与を受けた。
実施例3で得られたCCO1を用いて、長期間(1年以上)培養を行った後のオルガノイドの変化を検討した。図18はCCO1を週1回継代(パッセージ)し、2か月、9か月、13か月間培養した際の状態を観察したものである。長期間継代培養してもオルガノイドの形態には大きな変化を認めなかったが、オルガノイドの数が増加する傾向が認められた。そこで、各継代回数(1〜10回、11〜20回、21〜30回、31〜40回、41〜55回)における細胞継代時のスプリット比の平均値を比較した。スプリット比とは、細胞を継代する際に、1つのwellからいくつのwellに細胞を継代するかを示したものである。その結果を図19に示す。図19のグラフに示したとおり、継代回数1〜10の培養初期ではスプリット比の平均値は5前後であったが、培養開始後約1年が経過した継代回数41〜55の時点ではスプリット比の平均値は10前後であり、約2倍に増強していることが明らかになった。
実施例3で得られたCCO1におけるマイクロRNAの発現変化を解析することで、長期間にわたってオルガノイド培養を行うと増殖活性が増強する理由を検討した。マイクロRNAは長さ20塩基程度の小さな1本鎖RNAであるが、複数の標的遺伝子の発現を制御し、発がんや幹細胞性の維持において重要な役割を果たす。CCO1におけるマイクロRNAの発現変化の網羅的な解析の結果を表6及び図20に示す。図20は、CCO1が由来する異種移植片(図20中の「Xeno」)におけるmiR−34aの発現量に対する、各継代時(7回、22回、32回、36回、40回)におけるCCO1のmiR−34aの発現量を示す。図20に示すとおり、がん抑制マイクロRNAとして報告されているmiR−34aの発現が、CCO1が由来する異種移植片に比べて、オルガノイドであるCCO1において顕著に低下していた。
(胆管がんオルガノイドの長期培養の間のmiR−34aプロモーター領域におけるDNAのメチル化の解析)
miR−34a遺伝子は、染色体座位1p36に位置しており、CpGアイランドのプロモーター領域におけるDNAの高度メチル化は、miR−34aのサイレンシングに関わる原因の1つであることが知られている。そこで、実施例3で得られたCCO1の継代数7、22、32、及び54のものにおけるmiR−34aプロモーター領域のDNAメチル化状態を、バイサルファイトピロシーケンスによって解析した。
継代数54のCCO1において、3μMの5AZA処理を行ったときのmiR−34aの発現レベルを、定量的RT−PCRによって解析した。定量的RT−PCRには、TaqMan(登録商標)microRNA assay for miR−34a(ライフテクノロジーズ社製)を用いた。発現レベルは、U6 RNAの発現量に基づき標準化した。発現レベルは、18S rRNAの発現量に基づき標準化した。定量分析は、CFX96 Real−Time System(BioRad社製)を用いて行った。その結果を、図25に示す。図25に示すように、5AZA処理を行ったCCO1(5AZA(+))は、5AZA処理を行わなかったCCO1(5AZA(−))より、miR−34aの発現レベルが相対的に高かったことが確認された。
(レンチウイルスを媒介したmiR−34aの過剰発現)
実施例3で得られたCCO1において、レンチウイルスを媒介してmiR−34aを過剰発現させた。
Claims (11)
- がん幹細胞集団の調製方法であって、
がん幹細胞を含む細胞塊を、前記がん幹細胞の由来種とは異なる非ヒト動物に移植する工程と、
該非ヒト動物において異種移植片を形成させる工程と、
前記非ヒト動物から前記異種移植片を取り出す工程と、
前記異種移植片を、前記がん幹細胞の分裂を促進させる増殖因子を含む無血清3次元培地において培養し、オルガノイドを形成する工程と、
を有する方法。 - 前記がん幹細胞は、胆管がん由来のがん幹細胞である、
請求項1に記載の方法。 - 前記分裂を促進させる増殖因子は、Wnt分泌タンパク質である、
請求項1又は2に記載の方法。 - 前記Wnt分泌タンパク質は、R−スポンジン1である、
請求項3に記載の方法。 - 前記がん幹細胞は、ドライバー遺伝子が変異している幹細胞である、
請求項1乃至4いずれかに記載の方法。 - 前記分裂を促進させる増殖因子は、Noggin、HGF、FGF−10、A83−01、Wnt3A、及びY−27632からなる群から選択される1つ以上を含むものでない、
請求項1乃至5いずれかに記載の方法。 - がん幹細胞を含む異種移植片の調製方法であって、
がん幹細胞を含む細胞塊を、前記がん幹細胞の由来種とは異なる非ヒト動物に移植する工程と、
該非ヒト動物において異種移植片を形成させる工程と、を有する方法。 - がん幹細胞の増殖調節剤の候補物質のスクリーニング方法であって、
がん幹細胞を含む細胞塊を、前記がん幹細胞の由来種とは異なる非ヒト動物に移植する工程と、
該非ヒト動物において異種移植片を形成させる工程と、
被験物質を、前記異種移植片に投与する工程と、
前記被験物質が投与された前記異種移植片におけるmiR−34aの発現量を測定する工程と、
前記測定結果に基づいて、がん幹細胞の増殖調節剤の候補物質として被験物質を選択する工程と、
を有するスクリーニング方法。 - がんの治療剤又は予防剤の候補物質のスクリーニング方法であって、
がん幹細胞を含む細胞塊を、前記がん幹細胞の由来種とは異なる非ヒト動物に移植する工程と、
該非ヒト動物において異種移植片を形成させる工程と、
被験物質を、前記異種移植片に投与する工程と、
前記被験物質が投与された前記異種移植片におけるmiR−34aの発現量を測定する工程と、
前記測定結果に基づいて、がんの治療剤又は予防剤の候補物質として被験物質を選択する工程と、
を有するスクリーニング方法。 - 非ヒト動物において形成される異種移植片におけるmiR−34aの発現量を低下させる方法であって、
がん幹細胞を含む細胞塊を、前記がん幹細胞の由来種とは異なる非ヒト動物に移植する工程と、
該非ヒト動物において異種移植片を形成させる工程と、
を有する方法。 - miR−34aからなる、がん幹細胞増殖抑制剤。
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