JP2016028569A - がん幹細胞集団の調製方法、異種移植片の調製方法、スクリーニング方法、miR−34aの発現量を低下させる方法及びがん幹細胞増殖抑制剤 - Google Patents

がん幹細胞集団の調製方法、異種移植片の調製方法、スクリーニング方法、miR−34aの発現量を低下させる方法及びがん幹細胞増殖抑制剤 Download PDF

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義正 齋藤
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俊朗 佐藤
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英胤 齋藤
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俊英 村松
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Abstract

【課題】難治性がんなどの病態を反映したがん幹細胞集団を効率的に分離・培養することができる方法を提供すること。異種移植片の調製方法、スクリーニング方法、miR−34aの発現量を低下させる方法及びがん幹細胞増殖抑制剤を提供すること。【解決手段】本発明は、がん幹細胞集団の調製方法である。調製方法は、がん幹細胞を含む細胞塊を、前記がん幹細胞の由来種とは異なる非ヒト動物に移植する工程と、該非ヒト動物において異種移植片を形成させる工程と、前記非ヒト動物から前記異種移植片を取り出す工程と、前記異種移植片を、前記がん幹細胞の分裂を促進させる増殖因子を含む無血清3次元培地において培養し、オルガノイドを形成する工程と、を有する。【選択図】図1

Description

本発明は、難病患者などからがん幹細胞集団を調製する方法、異種移植片の調製方法、スクリーニング方法、miR−34aの発現量を低下させる方法及びがん幹細胞増殖抑制剤に関する。
身体における臓器や組織を構成する細胞は、幹細胞を由来として各臓器・組織の機能が維持されている。この幹細胞は、分裂して自分と同じ細胞を作る自己複製能と、別の種類の細胞に分化する多分化能とを有しており、臓器・組織の維持・再生などに重要な役割を果たしている。
このような幹細胞は、腫瘍組織においても重要な役割を果たすことが示唆されている。即ち、自己複製能と多分化能をもつがん幹細胞は、腫瘍組織において様々な性質のがん細胞を供給することで階層性を有した腫瘍組織を構成している。がん幹細胞は、白血病など各種のがん疾患における腫瘍組織で特定されている(非特許文献1)。
現行の化学療法や放射線療法により腫瘍組織を構成するがん細胞の大部分を死滅させたとしても少数のがん幹細胞が残存し、がん幹細胞の自己複製能と多分化能によりがん組織が再生される。また、がんの転移には、その細胞が原発巣から遊離するだけではなく、到達した部位で新しくがんを形成する能力が必要となることから、がん幹細胞は、がんの転移においても重要な役割を果たしている可能性が示唆されている(非特許文献2)。
更に、がん幹細胞は、薬剤耐性を有する細胞が報告されており(非特許文献3)、がん幹細胞のがん治療における重要性が認識されている。
そのため、がん幹細胞は、現行の化学療法や放射線療法に対して治療抵抗性を示す難治性がんにおいて、新たな治療標的として大きな注目を集めている。
Nature Medicine, Vol.3, 1997, p.p. 730−737. Cell Research, Vol.17, 2007 p.p. 3−14. Nature Review Cancer. Vol.5, 2005 p.p. 275−284.
ところで、がん幹細胞を治療標的として研究をするためには、がん幹細胞を高い純度で分離した上で、分化させずに培養されたがん幹細胞集団が必要である。しかし、がんの組織からがん幹細胞を含む細胞塊を摘出してもがん幹細胞以外の細胞が多く含まれる。また、がん幹細胞を含む細胞塊を培養すると、がん幹細胞が分化することによりがん幹細胞の性質が失われてしまう。
即ち、従来、難治性がんなどの病態を反映したがん幹細胞集団を効率的に分離・培養する方法はなかった。
本発明は、難治性がんなどの病態を反映したがん幹細胞集団を効率的に分離・培養することができる方法を提供することを目的とする。また、本発明は、異種移植片の調製方法、スクリーニング方法、miR−34aの発現量を低下させる方法及びがん幹細胞増殖抑制剤を提供することを目的とする。
(1) がん幹細胞集団の調製方法であって、がん幹細胞を含む細胞塊を、前記がん幹細胞の由来種とは異なる非ヒト動物に移植する工程と、該非ヒト動物において異種移植片を形成させる工程と、前記非ヒト動物から前記異種移植片を取り出す工程と、前記異種移植片を、前記がん幹細胞の分裂を促進させる増殖因子を含む無血清3次元培地において培養し、オルガノイドを形成する工程と、を有する方法。
(2) 前記がん幹細胞は、胆管がん由来のがん幹細胞である、(1)に記載の方法。
(3) 前記分裂促進増殖因子は、Wnt分泌タンパク質である、(1)又は(2)に記載の方法。
(4) 前記Wnt分泌タンパク質は、R−スポンジン1である、(3)に記載の方法。
(5) 前記がん幹細胞は、ドライバー遺伝子が変異している幹細胞である、(1)乃至(4)いずれかに記載の方法。
(6) 前記分裂を促進させる増殖因子は、Noggin、HGF、FGF−10、A83−01、Wnt3A、及びY−27632からなる群から選択される1つ以上を含むものでない、
(1)乃至(5)いずれかに記載の方法。
(7) がん幹細胞を含む異種移植片の調製方法であって、
がん幹細胞を含む細胞塊を、前記がん幹細胞の由来種とは異なる非ヒト動物に移植する工程と、
該非ヒト動物において異種移植片を形成させる工程と、を有する方法。
(8) がん幹細胞の増殖調節剤の候補物質のスクリーニング方法であって、
がん幹細胞を含む細胞塊を、前記がん幹細胞の由来種とは異なる非ヒト動物に移植する工程と、
該非ヒト動物において異種移植片を形成させる工程と、
被験物質を、前記異種移植片に投与する工程と、
前記被験物質が投与された前記異種移植片におけるmiR−34aの発現量を測定する工程と、
前記測定結果に基づいて、がん幹細胞の増殖調節剤の候補物質として被験物質を選択する工程と、
を有するスクリーニング方法。
(9) がんの治療剤又は予防剤の候補物質のスクリーニング方法であって、
がん幹細胞を含む細胞塊を、前記がん幹細胞の由来種とは異なる非ヒト動物に移植する工程と、
該非ヒト動物において異種移植片を形成させる工程と、
被験物質を、前記異種移植片に投与する工程と、
前記被験物質が投与された前記異種移植片におけるmiR−34aの発現量を測定する工程と、
前記測定結果に基づいて、がんの治療剤又は予防剤の候補物質として被験物質を選択する工程と、
を有するスクリーニング方法。
(10) 非ヒト動物において形成される異種移植片におけるmiR−34aの発現量を低下させる方法であって、
がん幹細胞を含む細胞塊を、前記がん幹細胞の由来種とは異なる非ヒト動物に移植する工程と、
該非ヒト動物において異種移植片を形成させる工程と、
を有する方法。
(11) miR−34aからなる、がん幹細胞増殖抑制剤。
本発明によれば、難治性がんの病態を反映したがん幹細胞集団を効率的に分離・培養することができるようになる。また、本発明によれば、異種移植片の調製方法、スクリーニング方法、miR−34aの発現量を低下させる方法及びがん幹細胞増殖抑制剤を提供することができる。
胆管がん組織を移植した免疫不全マウス及び免疫不全マウスから摘出した異種移植片を示す図である。 図2で摘出された異種移植片をHE染色したものを示す図である。 作製した胆管がんオルガノイドを観察した図である。 図3で示した胆管がんオルガノイドの切片をHE染色したものを示す図である。 作製した胆管がんオルガノイドの動物種を判別するためのPCRの結果を示す図である。 作製した胆管がんオルガノイドを再度培養した際の経過を示す図である。 図6で示した胆管がんオルガノイドの増殖能を示す図である。 作製した胆管がんオルガノイドについてCK19の発現をウエスタンブロット法により示す図である。 作製した胆管がんオルガノイドについてCK19の発現をウエスタンブロット法により示す図である。 作製した胆管がんオルガノイドの増殖能を示す図である。 作製した胆管がんオルガノイドの観察結果を示す図である。 作製した胆管がんオルガノイドのLgr5の発現を免疫蛍光染色により示す図である。 作製した胆管がんオルガノイドのLgr5の発現をフローサイトメトリーにより示す図である。 作製した胆管がんオルガノイドを移植した免疫不全マウス及びその免疫不全マウスから摘出した異種移植片を示す図である。 図14で示した異種移植片を培養した後の観察結果を示す図である。 作製した胆管がんオルガノイドをエピゲノム解析した結果を示す図である。 作製した胆管がんオルガノイドを遺伝子発現の網羅的解析した結果を示す図である。 CCO1を週1回の間隔で継代し、(a)2か月、(b)9か月、(c)13か月間培養した際の状態についてそれぞれ顕微鏡で観察した画像を示す図である。 CCO1を1〜10回、11〜20回、21〜30回、31〜40回、又は41〜55回に継代したときの、それぞれのスプリット比の平均値を表したグラフである。 CCO1が由来する異種移植片におけるmiR−34aの発現量に対する、各継代時(7回、22回、32回、36回、40回)のCCO1におけるmiR−34aの発現量についてのグラフである。 CCO1が由来する異種移植片における、miR−34aの標的遺伝子(CD44、CDK4、CDK6、MET、MYC、又はSIRT1)の発現量に対する、各継代時(7回、22回、32回、36回、40回)のCCO1における各標的遺伝子の発現量についてのグラフを示す図である。 CCO1が由来する異種移植片における、がん幹細胞マーカー(LGR5、CD133、ALDH1A1)の発現量に対する、各継代時(7回、22回、32回、36回、40回)のCCO1における各がん幹細胞マーカーの発現量についてのグラフを示す図である。 P1−1及びP1−2のプライマーを用いて解析した継代数7、22、32、54のCCO1におけるmiR−34aプロモーター領域のDNAメチル化についてのグラフを示す図である。 1又は3μMの5AZA処理を行った、継代数54のCCO1におけるmiR−34aプロモーター領域のDNAメチル化についてのグラフを示す図である。 5AZA処理を行った継代数54のCCO1と、5AZA処理を行わなかった継代数54のCCO1の、miR−34aの発現量についてのグラフを示す図である。 5AZA処理を行った継代数54のCCO1と、5AZA処理を行わなかった継代数54のCCO1について顕微鏡で観察した画像を示す図である。 CCO1に対して、Lenti−miR−34a GFP、又は、Lenti−miR−34a puromiycinを導入したときの、miR−34aの相対的な発現量を示すグラフである。 CCO1に対して、Lenti−miR−34a puromiycinを導入したときの、CD44、CDK4、CDK6、及びLGR5の発現量の相対的な発現量を示すグラフである。 CCO1に対して、Lenti−miR−34a GFP、又は、Lenti−miR−34a puromiycinを導入したときの、それぞれのオルガノイドについて顕微鏡で観察したときの画像を示す図である。
以下、本発明の実施形態を説明するが、これが本発明を限定するものではない。
<がん幹細胞集団の調製方法>
本発明は、がん幹細胞集団の調製方法であって、がん幹細胞を含む細胞塊を、前記がん幹細胞の由来種とは異なる非ヒト動物に移植する工程と、該非ヒト動物において異種移植片を形成させる工程と、前記非ヒト動物から前記異種移植片を取り出す工程と、前記異種移植片を、前記がん幹細胞の分裂を促進させる増殖因子を含む無血清3次元培地において培養し、オルガノイドを形成する工程と、を有する方法を包含する。
後述のとおり、かかる調製方法に係る異種移植片を形成させる工程においては、自己複製能を有するがん幹細胞は増殖して、がん幹細胞ではないがん細胞は増殖しにくい又は実質的に増殖しない。そのため、異種移植片を形成させる工程において、がん幹細胞を多く含む異種移植片が分離される。そして、オルガノイドを形成する工程において、無血清で培養され、がん幹細胞から分化を誘導する因子がほとんど含まれていないため、がん幹細胞からの分化を促進せずに培養することが可能である。これにより、異種移植片を形成させる工程とオルガノイドを形成させる工程とにより、患者から摘出した細胞塊がわずかであっても、がん幹細胞集団を効率的に分離・培養することができる。即ち、難治性がんなどの由来患者の病態を反映したがん幹細胞集団を効率的に分離・培養することができる。
また、かかる調製方法により分離・培養したがん幹細胞集団は、現行の化学療法や放射線療法に対して治療抵抗性を示す難治性がんなどにおいて新たな治療標的を探索するために有用である。
(移植工程)
本発明における移植工程は、がん幹細胞を含む細胞塊を、がん幹細胞の由来種とは異なる非ヒト動物に移植する工程である。
かかる調製方法に包含される移植する工程において、非ヒト動物に移植する部位は、移植するがん幹細胞の由来や種別、移植される非ヒト動物により適宜設定されてよい。好ましくは、皮下組織内である。
かかる調製方法におけるがん幹細胞集団とは、がん幹細胞を含有している細胞の集合体をいい、その集合形態は特に問わない。例えば、細胞が集積した細胞組織体であるオルガノイドであってよく、当該オルガノイドの一部分から得られた細胞集団であってよい。また、がん幹細胞集団は、腫瘍を形成する能力を有するがん幹細胞の他、腫瘍を形成する能力がないがん細胞(幹細胞ではないがん細胞)や非がん細胞(即ち正常細胞)を含んでいてもよい。
かかる調製方法におけるがん幹細胞とは、継続的に増殖可能な腫瘍の再構築に必要ながん細胞であって、自己複製能及び多分化能を有するがん細胞をいう。自己複製能とは、分裂した2つの娘細胞のどちらか1つ、あるいは、両方の細胞が、細胞系譜上、親細胞と同などの能力及び分化程度を保持している細胞を産出できる能力をいう。多分化能とは、腫瘍を構成する複数種のがん細胞へ分化できる能力をいう。
かかる調製方法における細胞塊は、がん幹細胞を含む、細胞塊である。多くの腫瘍は、腫瘍を構成するがん細胞に不均一性を有し、腫瘍を形成する能力を有するがん幹細胞及び腫瘍を形成する能力がないがん細胞(幹細胞ではないがん細胞)から構成される。そのため、細胞塊は、がん幹細胞ではない(即ち上述のがん幹細胞の性質を有していない)細胞を含んでよい。また、細胞塊は、非がん細胞(即ち正常細胞)を含んでよい。
かかる調製方法において、非ヒト動物は、特に限定されないが、ヒトを除く哺乳動物、例えば、齧歯動物(マウス、ラットなど)、ウサギ、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、ヒトを除く霊長類(サルなど)、ブタなどが挙げられる。非ヒト動物は、トランスジェニック動物であってもよく、遺伝子改変動物であってもよく、クローンであってもよい。マウス、ラット、ウサギ、ブタ、ヤギ、ウシなどが挙げられる。本発明においては、好ましくは、免疫不全の非ヒト動物が用いられ、より好ましくは、免疫不全のマウスが用いられる。
(異種移植片形成工程、及び、異種移植片を取り出す工程)
本発明における異種移植片形成工程は、上述の移植工程後の非ヒト動物において異種移植片を形成させる工程である。
かかる調製方法に包含される異種移植片を形成させる工程において、異種移植片を形成させる期間は、がん幹細胞が増殖して移植片として摘出し得るようになる期間であって非がん幹細胞が死滅する期間が設定されることが好ましい。例えば、好ましくは、1か月から5か月、より好ましくは、2か月〜4か月、より好ましくは3か月の期間が設定されてよい。
本発明における異種移植片を取り出す工程は、上述の異種移植片を形成させた後に非ヒト動物から異種移植片を取り出す工程である。
かかる調製方法に包含される異種移植片を形成させる工程及び異種移植片を取り出す工程は、異種移植片に含まれるがん幹細胞の純度を高めるために複数回(例えば、2〜5回)繰りかえされることが好ましい。
かかる調製方法において、異種移植片(Xenograft)とは、非ヒト動物の体内において培養された、細胞が集積した細胞組織体であって、移植された非ヒト動物とは異なる動物種を由来とする細胞組織体をいう。例えば、ヒトから摘出した細胞塊をマウスに移植してマウスの体内で培養されたヒト由来の細胞組織体を異種移植片という。
本発明における異種移植片は、がん幹細胞の増殖能に優れる。その理由は、異種移植片が、がん幹細胞を含む細胞塊を該がん幹細胞の由来種とは異なる非ヒト動物に移植して形成されることで、がんを抑制するmRNAであるmiR−34aの発現量が減少するためである。また、本発明における異種移植片においてmiR−34aの発現量が減少することで、異種移植片においてCD44、CDK4、CDK6、MET、MYC、SIRT1などのmiR−34a標的遺伝子の発現量が上昇する。特に、がん細胞のマーカーであるCD44の発現量が上昇することから、がん細胞の性質が増強されているものと推測される。
更に、本発明における異種移植片は、がん幹細胞を含む細胞塊を該がん幹細胞の由来種とは異なる非ヒト動物に移植して形成されることで、LGR5、CD133、ALDH1A1などのがん幹細胞マーカーの発現量を上昇させることができ、これにより、その増殖活性が更に増強される。
(オルガノイド形成工程)
本発明におけるオルガノイド形成工程は、異種移植片を、がん幹細胞の分裂を促進させる増殖因子を含む無血清3次元培地において培養し、オルガノイドを形成する工程である。
かかる調製方法における増殖因子は、幹細胞の増殖を促進する物質であればよく、通常、分子量が20,000以下のペプチドで、受容体との結合により低濃度で作用が発揮される因子が挙げられる。例えば、増殖因子には、EGF、Wnt分泌タンパク質(Wnt関連タンパク質)(R−スポンジン1(R−spondin1、Rspo1)、Wnt3Aなど)、Noggin、Nicotinamide、FGF10、HGF、A83−01(TGF−β受容体阻害薬)、Y−27632、Gastrinなどが含まれる。
ただし、本発明における異種移植片は、上述のとおり、がん幹細胞の増殖能に優れるため、オルガノイドを形成する工程における培地は、多数の増殖因子を含まなくてもよい。例えば、Noggin、HGF、FGF−10、A83−01、Wnt3A、及びY−27632からなる群から選択される1つ以上の増殖因子を含まなくてもよい。このように、これらNogginなどの増殖因子を含まないことにより、より幹細胞性を維持できるという利点がある。したがって、オルガノイドを形成する工程における培地は、Noggin、HGF、FGF−10、A83−01、Wnt3A、及びY−27632からなる群から選択される1つ以上の増殖因子を含まないことが好ましい。
かかる調製方法において、無血清3次元培地が用いられる。ここで、無血清培地とは、無調整又は未精製の血清を含まないことをいい、精製された血液由来成分や動物組織由来成分(例えば、増殖因子)が混入している培地は無血清培地に含まれる。3次元培地とは、培養用プレートなどの2次元的な培地ではなく、3次元的な培養を可能とする培地をいい、例えば、マトリジェルなどを用いた培地が用いられてよい。
かかる調製方法により形成されたオルガノイドとは、細胞が集積した細胞組織体をいう。
本発明においては、種々のがん由来のがん幹細胞を用いることが可能であり、がんの種類としては、固形がん(例えば、胆管がん、大腸がん、肺がん、胃がん、食道がん、乳がん、膀胱がん、前立腺がんなど)、血液がん(例えば、骨髄腫、リンパ腫など)などを挙げることができるが、特にこれらに限定されない。本発明においては、好ましくは胆管がん由来のがん幹細胞が用いられる。
このような胆管がん由来のがん幹細胞が用いられた調製方法においては、調製方法により形成されたオルガノイドがCK19などの胆管がんのマーカーを発現し、胆管がん組織の特性を有するものである。そのため、本発明の調製方法は、難治性がんの代表である胆管がんの病態を反映したがん幹細胞集団を効率的に分離・培養することができる。
本発明においては、がん幹細胞の分裂を促進させる増殖因子は、上述のとおり、Wnt分泌タンパク質(Wnt関連タンパク質)を包含する。Wnt分泌タンパク質は、幹細胞の増殖と分化とを調節するWntシグナル伝達経路において、Wntシグナル伝達経路を増強及び維持する正のフィードバック制御タンパク質をいう。例えば、Wnt分泌タンパク質には、Wntファミリータンパク質やRspoファミリーを含んでよい。
このような調製方法は、オルガノイドを形成する工程において、無血清で培養され、がん幹細胞の分裂を促進させる増殖因子は、Wnt分泌タンパク質以外含まれていないことが好ましく、この場合には幹細胞から他の細胞への分化が誘導されず、がん幹細胞のまま培養することが可能である。即ち、難治性がんの病態を反映したがん幹細胞集団を効率的に分離・培養することができる。なお、がん幹細胞の分裂を促進させる増殖因子は、Wnt分泌タンパク質とともに、他の増殖因子を含んでもよい。
本発明においては、オルガノイドを形成する工程におけるWnt分泌タンパク質は、R−スポンジン1を包含する。このような調製方法は、オルガノイドを形成する工程において、無血清で培養され、がん幹細胞の分裂を促進させる増殖因子は、R−スポンジン1以外含まれていないため、幹細胞から他の細胞への分化が誘導されず、がん幹細胞のまま培養することが可能である。即ち、難治性がんの病態を反映したがん幹細胞集団を効率的に分離・培養することができる。なお、Wnt分泌タンパク質は、R−スポンジン1とともに、他の増殖因子を含んでもよい。
本発明のオルガノイドを形成する工程における培養条件は、用いられる培地及び幹細胞により適宜設定される。本発明はまた、本発明の方法で用いられる培地を提供する。
本発明における培地は、動物細胞の培養に用いられる培地を基礎培地として用いて調製することができる。基礎培地としては、BME培地、BGJb培地、CMRL 1066培地、Glasgow MEM培地、Improved MEM Zinc Option培地、IMDM培地、Medium 199培地、Eagle MEM培地、αMEM培地、DMEM培地、ハム培地、RPMI 1640培地、及びFischer’s培地、並びにこれら任意の混合培地などが使用でき、動物細胞の培養に用いることのできる培地であれば特に限定されない。
オルガノイドを形成する工程に用いる培養器は、幹細胞の培養が可能なものであれば特に限定されないが、フラスコ、組織培養用フラスコ、ディッシュ、ペトリデッシュ、組織培養用ディッシュ、マルチディッシュ、マイクロプレート、マイクロウエルプレート、マルチプレート、マルチウエルプレート、マイクロスライド、チャンバースライド、シャーレ、チューブ、トレイ、培養バック、及びローラーボトルが挙げられ得る。
オルガノイドを形成する工程における培養は、継代培養を行ってもよく、行わなくてもよいが、継代培養を行うごとに、スプリット比が増加するため、継代培養は行うことが好ましい。なお、スプリット比とは、細胞を継代する際に1つのwellからいくつのwellに細胞を継代するかの割合を指し、例えば、ある継代において、1つのwellから10のwellに細胞を継代できた場合は、この継代におけるスプリット比は10である。継代培養を行う間隔は、特に限定されず、例えば、1〜20日であってもよい。また、継代を行う回数も特に限定されず、例えば、1〜100回であってもよいが、がん幹細胞をより大量に得るためには、10回以上行うことが好ましく、20回以上行うことがより好ましく、30回以上行うことが更に好ましく、40回以上行うことがより一層好ましく、50回以上行うことが最も好ましい。
オルガノイドを形成する工程における培養は、例えば、スプリット比を指標として、継代の回数を決定してもよく、例えば、スプリット比が1:5〜1:10になるまで継代を行うことが好ましい。
オルガノイドを形成する工程における、培養期間は、継代培養の回数、継代培養を行う間隔、所望のがん幹細胞の量などに応じて適宜設定することができ、例えば、1日〜2年といった幅広い期間で行うことができる。ただし、培養期間が長い方が、がん幹細胞を増殖できることから、30日以上であることが好ましい。他方、所望のがん幹細胞の量が少ない場合は、培養期間は、60日以下であってもよい。
その他の培養条件は、適宜設定できる。例えば、培養温度は、特に限定されるものではないが約30〜40℃、好ましくは約37℃であり得る。CO2濃度は、約1〜10%、好ましくは約2〜5%であり得る。酸素分圧は、1〜10%であり得る。
本発明においては、調製方法におけるがん幹細胞は、ドライバー遺伝子が変異しているものを包含する。ここで、ドライバー遺伝子とは、がんにおける遺伝子変異のうち、がんの発生・進展に強く関わっており、がん細胞の生存が依存しているものをいい、KRAS、TP53、APC、TGFBR2、EGF、EGFR、PIK3CA、SMAD4などを含む遺伝子である。また、変異とは、特定の遺伝子又は当該遺伝子を含む染色体DNAの特定のヌクレオチドが一定の頻度で修飾される(例えば、置換、欠失、付加、反復、逆位、転座など)ことをいう。
以上で述べた本発明の調製方法は、オルガノイドを形成する工程において、多くの増殖因子を必要としないため、無血清で培養することが可能であり、幹細胞から他の細胞への分化が誘導されず、がん幹細胞のまま培養することが可能である。これにより、本発明の調製方法は、難治性がんの病態を反映したがん幹細胞集団を効率的に分離・培養することができる。
<異種移植片の調製方法>
本発明は、がん幹細胞を含む異種移植片の調製方法であって、がん幹細胞を含む細胞塊を、がん幹細胞の由来種とは異なる非ヒト動物に移植する工程と、該非ヒト動物において異種移植片を形成させる工程と、を有する方法を包含する。
本発明の異種移植片の調製方法における、上記移植工程と、異種移植片形成工程とは、それぞれ、上記がん幹細胞集団の調製方法における移植工程、及び異種移植片形成工程と同様の方法を用いることができる。
<がん幹細胞の増殖調節剤の候補物質のスクリーニング方法>
本発明は、がん幹細胞の増殖調節剤の候補物質のスクリーニング方法であって、がん幹細胞を含む細胞塊を、がん幹細胞の由来種とは異なる非ヒト動物に移植する工程と、該非ヒト動物において異種移植片を形成させる工程と、被験物質を、異種移植片に投与する工程と、被験物質が投与された異種移植片におけるmiR−34aの発現量を測定する工程と、測定結果に基づいて、がん幹細胞の増殖調節剤の候補物質として被験物質を選択する工程と、を有するスクリーニング方法を包含する。
上述のとおり、該非ヒト動物において異種移植片を形成させることで、異種移植片におけるmiR−34aの発現量が減り、結果としてがん幹細胞が増殖する。そのため、異種移植片に投与されることでmiR−34aの発現量を更に減少させることが確認された被験物質は、がん幹細胞の増殖の正の調節が可能な候補物質として特定できる。他方、異種移植片に投与されることでmiR−34aの発現量の減少を抑制させることが確認された被験物質は、がん幹細胞の増殖の負の調節が可能な候補物質として特定できる。即ち、本発明のスクリーニング方法により、がん幹細胞の増殖調節剤の候補物質として、被験物質を特定できる。以下に本発明におけるスクリーニング方法の各工程について説明する。なお、「増殖調節」とは、がん幹細胞の増殖に関して、正又は負の調節のいずれかを指す。
(移植工程)
本発明のスクリーニング方法における移植工程は、上述のがん幹細胞集団の調製方法における移植工程と同様の方法を用いることができる。
(異種移植片形成工程)
本発明のスクリーニング方法における異種移植片形成工程は、上述のがん幹細胞集団の調製方法における異種移植片形成工程と同様の方法を用いることができる。
(投与工程)
本発明のスクリーニング方法における投与工程は、被験物質を、異種移植片に投与する工程である。なお、本発明において、「被験物質を異種移植片に投与する」とは、直接的又は間接的に異種移植片に被験物質を投与することを指す。
「直接的に投与」とは、例えば、異種移植片に注射などを用いることで、直接被験物質を異種移植片内に導入することや、あるいは、形成された異種移植片を取り出して培養してオルガノイドを形成する場合(つまり、本発明のスクリーニング方法が、上述のがん幹細胞集団の調製方法におけるオルガノイド形成工程を有する場合)において、培地中に被験物質を添加し、異種移植片を培養させながら直接異種移植片に被験物質を取り込ませることなどを指す。
「間接的に投与」とは、異種移植片に対する被験物質によるmiR−34aの発現量の調整効果が現れる態様で、被験物質を非直接的に投与することを指す。具体的には、「間接的に投与」とは、非ヒト動物における異種移植片以外の組織に注射などにより導入すること、あるいは、非ヒト動物に被験物質を経口投与することなどを指す。
被験物質の異種移植片への投与は、どの時点で行ってもよい。例えば、移植工程において、移植後の異種移植片に直接的又は間接的に投与を行ってもよく、あるいは、移植前の非ヒト動物にあらかじめ投与を行った状態で移植工程を行い、間接的に異種移植片に投与を行ってもよい。また、非ヒト動物に形成された異種移植片を取り出し、オルガノイド形成を行う場合には、該オルガノイド形成工程において直接的に異種移植片に被験物質を取り込ませてもよい。
投与方法は、特に限定されず、異種移植片への投与の際の状態に応じて適宜選択することができるが、例えば、オルガノイド形成工程において被験物質の存在下で異種移植片を培養して投与してもよい。あるいは、投与方法は、非経口投与であってもよい。非経口投与は、例えば、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射などであってもよい。また、投与方法は、経口投与であってもよい。
被験物質は、特に限定されず、天然又は合成の有機又は無機の低分子又は高分子物質などの任意の物質であってよい。
(測定工程)
測定工程は、被験物質が投与された異種移植片におけるmiR−34aの発現量を測定する工程である。
測定方法は、特に限定されず、従来の公知の方法を使用することができ、例えば、被験物質の投与後の異種移植片におけるmiR−34aの発現量を従来の公知の方法で測定することができる。なお、測定対象の「異種移植片」とは、異種移植片形成後の異種移植片自体であってもよく、あるいは、オルガノイド形成工程により形成されたオルガノイドであってもよい。この測定結果に基づいて、後述の選択工程において、候補物質を選択することができる。
また、測定工程において、miR−34a標的遺伝子(CD44、CDK4、CDK6、MET、MYC、SIRT1など)の発現量も併せて測定し、後述の選択工程における被験物質を選択する指標の1つとしてもよい。
(選択工程)
選択工程は、上記測定結果に基づいて、がん幹細胞の増殖調節剤の候補物質として被験物質を選択する工程である。
選択方法は、特に限定されず、従来公知の選択方法により候補物質を選択すればよい。例えば、異種移植片におけるmiR−34aの発現量を比較対象となる他の異種移植片におけるmiR−34aの発現量と比較することで、選択することができる。比較対象の異種移植片の具体例としては、被験物質が投与されていないネガティブコントロールの異種移植片や、あらかじめ、ネガティブコントロールの異種移植片よりmiR−34aの発現量が上昇又は減少していることが確認されている他の異種移植片であってもよい。また、選択は、ネガティブコントロールにおけるmiR−34aの発現量と比較して、被験物質が投与された異種移植片におけるmiR−34aの発現量が上昇又は減少していることを確認することで、被験物質をがん幹細胞の増殖調節剤の候補物質として行うことができる。また、ネガティブコントロールの異種移植片よりmiR−34aの発現量が上昇又は減少していることが確認されている他の異種移植片と比較する場合、該異種移植片と同程度のmiR−34aの発現量であることか、あるいは、他の異種移植片におけるmiR−34aの発現量より更に上昇又は減少していることを確認することで、被験物質をがん幹細胞の増殖調節剤の候補物質として選択を行うことができる。
(その他)
本発明のスクリーニング方法は、上記で述べた以外の工程を更に有してもよく、有さなくてもよい。上記で述べた以外の工程を更に有してもよい工程としては、例えば、がん幹細胞の増殖調節剤の候補物質として選択された被験物質を、単離されたがん幹細胞又はがん幹細胞を有するがんモデル非ヒト動物に投与して、がん幹細胞の増殖調節作用を確認する工程が挙げられる。
<がんの治療剤又は予防剤の候補物質のスクリーニング方法>
本発明は、がんの治療剤又は予防剤の候補物質のスクリーニング方法であって、がん幹細胞を含む細胞塊を、がん幹細胞の由来種とは異なる非ヒト動物に移植する工程と、該非ヒト動物において異種移植片を形成させる工程と、被験物質を、異種移植片に投与する工程と、被験物質が投与された異種移植片におけるmiR−34aの発現量を測定する工程と、測定結果に基づいて、がんの治療剤又は予防剤の候補物質として被験物質を選択する工程と、を有するスクリーニング方法を包含する。
上述のとおり、本発明のスクリーニング方法によると、異種移植片を形成させることで、異種移植片におけるmiR−34aの発現量を減らし、結果としてがん幹細胞が増殖させることができる。ここで、miR−34aは、がん抑制のマーカーである。よって、異種移植片において低下したmiR−34aの発現量を回復させる被験物質は、がんの治療剤又は予防剤の候補物質として、被験物質を特定できる。このように、本発明のスクリーニング方法によると、miR−34aの発現量を低下させた状態を基準として被験物質の選択ができるため、がんの治療剤又は予防剤の候補物質の探索に適している。
疾患の対象となるがんの種類は、特に限定されないが、例えば、固形がん(例えば、胆管がん、大腸がん、肺がん、胃がん、食道がん、乳がん、膀胱がん、前立腺がんなど)、血液がん(例えば、骨髄腫、リンパ腫など)などを挙げることができる。本発明においては、疾患の対象となるがんは、好ましくは胆管がんである。
本発明における移植工程、異種移植片形成工程、投与工程、測定工程は、上述のがん幹細胞の増殖調節剤の候補物質のスクリーニング方法のものと同様の方法を用いることができる。
本発明における選択工程は、測定結果に基づいて、がんの治療剤又は予防剤の候補物質として被験物質を選択する工程である。
選択方法は特に限定されず、従来公知の選択方法により候補物質を選択すればよい。例えば、異種移植片におけるmiR−34aの発現量を比較対象となる他の異種移植片におけるmiR−34aの発現量と比較することで、選択することができる。比較対象の異種移植片の具体例としては、被験物質が投与されていないネガティブコントロールの異種移植片や、あらかじめ、ネガティブコントロールの異種移植片よりmiR−34aの発現量が上昇していることが確認されている他の異種移植片であってもよい。また、選択は、ネガティブコントロールにおけるmiR−34aの発現量と比較して、被験物質が投与された異種移植片におけるmiR−34aの発現量が上昇していることを確認することで、被験物質をがんの治療剤又は予防剤の候補物質として選択することができる。また、ネガティブコントロールの異種移植片よりmiR−34aの発現量が上昇していることが確認されている他の異種移植片と比較する場合、該異種移植片と同程度のmiR−34aの発現量であることか、あるいは、他の異種移植片におけるmiR−34aの発現量より更に上昇していることを確認することで、被験物質をがんの治療剤又は予防剤の候補物質として選択することができる。
本発明のスクリーニング方法は、上記で述べた以外の工程を更に有してもよく、有さなくてもよい。上記で述べた以外の工程を更に有してもよい工程としては、例えば、がんの治療剤又は予防剤の候補物質として選択された被験物質を、単離されたがん幹細胞又はがん幹細胞を有するがんモデル非ヒト動物に投与して、がんの治療又は予防効果を確認する工程が挙げられる。
<異種移植片におけるmiR−34aの発現量を低下させる方法>
本発明は、非ヒト動物において形成される異種移植片におけるmiR−34の発現量を低下させる方法であって、がん幹細胞を含む細胞塊を、がん幹細胞の由来種とは異なる非ヒト動物に移植する工程と、該非ヒト動物において異種移植片を形成させる工程と、を有する方法を包含する。
本発明における移植工程、及び異種移植片形成工程は、上述のがん幹細胞集団の調製方法における移植工程、異種移植片形成工程と同様の方法を用いることができる。
<がん幹細胞増殖促進剤>
本発明は、miR−34aからなる、がん幹細胞増殖抑制剤を包含する。本発明者らは、miR−34aが、がん幹細胞の増殖を抑制可能なことを見出した。
miR−34aは、従来の公知のもののいずれも用いることができ、例えば、ヒト、齧歯動物(マウス、ラットなど)、ウサギ、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、ヒトを除く霊長類(サルなど)、ブタなどの由来のmiR−34aを用いることができる。これらは、導入する対象に応じて、適切なものを選択して用いることができるが、ヒトに投与する場合、ヒト由来のmiR−34aを用いることが好ましい。
増殖を抑制するがん幹細胞は、特に限定されないが、固形がん(例えば、胆管がん、大腸がん、肺がん、胃がん、食道がん、乳がん、膀胱がん、前立腺がんなど)、血液がん(例えば、骨髄腫、リンパ腫など)などの幹細胞を挙げることができる。本発明においては、対象となるがん幹細胞は、好ましくは胆管がんのがん幹細胞である。
以下の実施例などによって本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
<実施例1>
(がん幹細胞を含むオルガノイドの調製方法)
肝内胆管がんの診断を受けた患者(70歳、女性)から外科切除により胆管がん組織を採取した。採取した胆管がん組織を免疫不全マウス(SCIDマウス、C.B17/Icr−scid(scid/scid))の皮下組織内に移植した。胆管がん組織を移植後、約60日経過後、異種移植片の生成を確認して異種移植片を摘出した。
なお、採取した胆管がん組織は、国立がん研究センター中央病院より供与を受けた。
摘出した異種移植片を免疫不全マウス(SCIDマウス、C.B17/Icr−scid(scid/scid))の皮下組織内に再度移植した。異種移植片を移植してから3か月経過後、異種移植片の大きさが2cmを超えた時点で免疫不全マウスを解剖して異種移植片を摘出した。
異種移植片を移植した免疫不全マウス及び免疫不全マウスから摘出した移植片を図1に示す。
摘出した異種移植片の組織をHE染色にて観察した。観察結果を図2(スケールバーは100μm)に示す。図2に示すように、摘出した異種移植片は、元の胆管がん組織と類似する組織像であると認められた。
異種移植片に含まれるがん幹細胞を必要な増殖因子のみを含む無血清培地を用いてマトリジェル(Basement Membrane, Growth Factor Reduced, Phenol−Red Free 10ml(CORNING 356231))中で3次元培養(オルガノイド培養)を行い、胆管がんオルガノイドを作製した。培養に用いた無血清培地の組成を表1に示す。また、無血清培地に含まれる基本培地の組成を表2に示す。
3次元培養により、作製した胆管がんオルガノイドの観察結果を図3に示す。
作製した胆管がんオルガノイドからパラフィン包埋切片を作成し、HE染色にて組織像を観察した。観察結果を図4に示す(スケールバーは100μm)。図4に示されるように、観察した組織像は、単層の細胞が嚢胞状に増殖し、中心部は空洞になっていることが確認された。
ミトコンドリアDNAに対するヒト特異的プライマー及びマウス特異的プライマーを用いてPCRにより動物種を判別した。判別する方法は、Ono K et al. In Vitro Cell Dev Biol Anim. 43: 168−175, 2007に開示される方法に従い行った。動物種の判別は、AGSヒト胃がん細胞株(AGS)、マウス腸管腺腫(Mouse Adenoma)、マウス肝臓(Mouse Liver)をコントロールとして、胆管がん幹細胞オルガノイドの動物種を確認した。それぞれの細胞からDNAを抽出し、動物種を確認した結果を図5に示す。
図5に示されるように、作製した胆管がんオルガノイドには、マウス特異的なプライマー(mouse−specific primer)においてDNAの増殖が確認されず、マウス由来の細胞が混入していないことが確認された。
作製された胆管がんオルガノイドは、20回以上継代しても培養・維持することができた。そのため、本培養条件により、胆管がん由来の幹細胞を含むオルガノイド(組織構造体)を永続的に培養することが可能になった。即ち、難治性がんの代表である肝内胆管がんからがん幹細胞を永続的に培養・維持することに成功した。
<評価1>
(胆管がんオルガノイドの増殖能に関する検討)
作製した胆管がんオルガノイドが増殖していく過程を観察した。観察は、1日ごとに1日〜10日まで観察した。観察した結果を図6に示す。
胆管がんオルガノイドは、日を追うごとに嚢胞状に増殖し、10日目には約1000μmの大きさになっていることが確認された。
作製した胆管がんオルガノイドの増殖能をWSTアッセイにより評価した。胆管がんオルガノイドに、試薬を添加後、マイクロプレートリーダーにより450nmの吸光度を測定した。測定した結果を図7に示す。
図7に示すように、作製した胆管がんオルガノイドが指数関数的に増加していることが確認された。
<評価2>
(胆管がんオルガノイドにおけるCK19発現に関する検討)
作製した胆管がんオルガノイドについて、CK19の発現をウエスタンブロット法により検討した。CK19は、胆管がんのマーカーとして病理診断などに用いられているマーカーである。
ウエスタンブロット法は、CK19の発現について、AGSヒト胃がん細胞株(AGS)、HepG2ヒト肝がん細胞株(HepG2)、HEK293ヒト腎細胞株(HEK293)をコントロールとして、胆管がんオルガノイド(CC Organoido1、CC Organoido2)と比較した。ウエスタンブロット法の結果を、図8に示す。
図8に示すように、作製した胆管がんオルガノイド(CC Organoido1、CC Organoido2)は、CK19を強発現していることが確認された。そのため、作製した胆管がんオルガノイドは、胆管がん組織の特性を有するものであるといえる。
作製した胆管がんオルガノイドについて、CK19の発現及び局在を免疫蛍光染色法により検討した。免疫蛍光染色法の結果を図9(スケールバーは100μm)に示す。赤色がCK19の発現を示し、青色がDAPIによる核の染色である。
図9に示すように、作製した胆管がんオルガノイドは、胆管がんオルガノイドを構成する細胞の細胞質にCK19を強発現していることが確認された。
<実施例2>
(胆管がんオルガノイドに必須な増殖因子に関する検討)
実施例1のオルガノイド培養において、培地は、基本培地に加え、上皮細胞全般の増殖因子であるEGF及びWNTシグナルの活性化因子であるR−spondin 1 (Rspo1)を含む因子を添加している。
本実施例では、どの因子が胆管がん幹細胞の増殖に必須であるかを検討した。
胆管がんオルガノイドの培養について、基本培地にEGFを加えた培地、基本培地にRspo1を加えた培地それぞれを用いてマトリジェル(Basement Membrane, Growth Factor Reduced, Phenol−Red Free 10ml(CORNING 356231))中で3次元培養(オルガノイド培養)を行い、胆管がんオルガノイドの増殖能をWSTアッセイにより検討した。WSTアッセイの結果を図10に示す。また、胆管がんオルガノイドの観察結果を図11に示す。
図10に示すように、基本培地にRspo1を加えた条件において、オルガノイドは活発な増殖能を示した。他方、基本培地にEGFを加え、Rspo1を加えない条件において、オルガノイドはほぼ増殖能を示さなかった。基本培地にRspo1を加えた条件においては、EGFを加えた条件の方がEGFを加えない条件に比べて、高いオルガノイドの増殖傾向を示したが、有意差は認められなかった。
図11に示すように、Rspo1を加えた条件では胆管がんオルガノイドは活発な増殖能を示した。他方、Rspo1を加えない条件では胆管がんオルガノイドは、増殖能を示さなかった。
そのため、本方法により樹立した胆管がんオルガノイドの増殖には、Rspo1が必須であるが、その他の増殖因子は必須ではないことが確認された。
<評価3>
(胆管がんオルガノイドにおけるLgr5陽性幹細胞の存在に関する検討)
実施例1において作製した胆管がんオルガノイドについて、Lgr5の発現を免疫蛍光染色により検討した。Lgr5は、細胞表面分子であって、幹細胞のマーカーとされている(Sato T et al. Nature 459: 262−265, 2009)。
作製した胆管がんオルガノイドのLgr5の発現の免疫蛍光染色による検討結果を図12に示す(スケールバーは50μm)。図12に示すように、作製した胆管がんオルガノイドの細胞表面にLgr5(図中の白色部分)が発現していることを確認した。なお、DAPIによる核の染色も確認された(図中の細胞内の灰色部分)である。
実施例1において作製した胆管がんオルガノイドについて、Lgr5の発現をフローサイトメトリーにより検討した。
作製した胆管がんオルガノイドのLgr5の発現のフローサイトメトリーによる検討結果を図13に示す。
図13に示すように、作製した胆管がんオルガノイドにおいて、Lgr5の発現は上昇していることが確認された。
図13に示される結果は、図4に示したようにLgr5のリガンドであるR−spondinが胆管がん幹細胞オルガノイドの増殖に必須であるという結果を裏付けるものである。即ち、Rspo1が胆管がん幹細胞オルガノイドの細胞表面に発現しているLgr5と結合し、Wntシグナル経路を活性化することで幹細胞の維持に決定的な役割を果たしていると考えられる。
作製した胆管がんオルガノイドに幹細胞が存在していることを確認するため、胆管がんオルガノイドを免疫不全マウス(SCIDマウス(C.B17/Icr−scid(scid/scid)))の皮下組織内に移植した。胆管がんオルガノイドは、免疫不全マウスの背部右側に8x10個、免疫不全マウスの背部左側に3x10個を移植した。
胆管がんオルガノイドを移植した免疫不全マウスは、移植後約2か月経過後に移植した部位に腫瘍を形成した。形成された腫瘍を図14に示す。図14に示すように、形成された腫瘍は、移植した細胞数に比例した大きさの腫瘍であった。
作製した胆管がんオルガノイドを、免疫不全マウスに移植して形成された腫瘍を摘出して、実施例1の培養条件下でオルガノイド培養を行った。
培養の結果を図15に示す(スケールバーは1000μm)。図15に示すように、これまでと同じ条件で胆管がん幹細胞オルガノイドが活発に増殖することを確認した。
Lgr5の発現を検討した、免疫蛍光染色及びフローサイトメトリーの結果からLgr5陽性幹細胞が増殖していることが示された。また、作製した胆管がんオルガノイドを免疫不全マウスに移植した結果から、作製した胆管がんオルガノイドには、幹細胞が含まれることが示された。
<評価4>
(胆管がんオルガノイドにおけるエピゲノム解析)
胆管がん幹細胞オルガノイドにおけるエピゲノムの解析を行うために、ビーズアレイ法によりDNAメチル化の状態を比較解析した。エピゲノムの解析は、実施例2において作製した胆管がんオルガノイド(Organoid)を、免疫不全マウスから摘出した異種移植片(Xenograft)と、2次元培養により樹立された細胞株(serum−cultured cell line)と比較して行った。
エピゲノム解析の結果を、図16に示す。図16はそれぞれの細胞の遺伝子についてpromoter領域、CpG island、CpG island shore (CpG islandの前後2 kb)、CpG island shelf (CpG island shoreの前後2 kb)におけるDNAメチル化の状態をクラスター解析により比較したものである。
実施例1において作製した胆管がんオルガノイドと免疫不全マウスから摘出した異種移植片とは、遺伝子のpromoter領域、CpG island、CpG island shoreのDNAメチル化の状態において、相関係数0.9以上の高い相関を認められた。他方、作製した胆管がんオルガノイドと2次元培養により樹立された細胞株とは、遺伝子のpromoter領域、CpG island、CpG island shoreのDNAメチル化の状態において、相関が認められなかった。
(胆管がんオルガノイドにおける遺伝子発現の網羅的解析)
遺伝子発現の網羅的解析を行うため、マイクロアレイ法により遺伝子の発現プロファイルを比較解析した。遺伝子発現の網羅的解析は、実施例1において作製した胆管がんオルガノイド(Organoid)を、免疫不全マウスから摘出した異種移植片(Xenograft)と、2次元培養により樹立された細胞株(serum−cultured cell line)と比較して行った。
遺伝子発現の網羅的解析の結果を図17に示す。
実施例1において作製した胆管がんオルガノイドと免疫不全マウスから摘出した異種移植片とは、網羅的な遺伝子発現解析において、胆管がん幹細胞オルガノイドと元になった異種移植片において相関係数0.9以上の高い相関を認められた。他方、作製した胆管がんオルガノイドと2次元培養により樹立された細胞株とは、網羅的な遺伝子発現解析において、相関が認められなかった。
エピゲノム解析の結果と遺伝子発現の網羅的解析の結果から、必要な増殖因子のみを含む無血清培地を用いた3次元培養により維持されている胆管がんオルガノイドは従来の血清を含む培地を用いた2次元培養により維持されている細胞株よりも元の組織(異種移植片)のDNAメチル化及び遺伝子発現の特性を反映していることが示された。
<評価5>
(胆管がんオルガノイドにおけるドライバー遺伝子変異に関する検討)
胆管がんオルガノイドにおけるドライバー遺伝子変異を同定するため、次世代シーケンサーによる遺伝子変異解析を行った。ドライバー遺伝子変異とは、がんにおける遺伝子変異のうち、がんの発生・進展に強く関わっており、がん細胞の生存が依存しているものをいう。
遺伝子変異解析は、実施例1において免疫不全マウスから摘出した異種移植片(CC1)と、実施例1において作製した胆管がんオルガノイド(Organoid (CC1))と、実施例1において作製した胆管がんオルガノイドとは異なる症例を由来とする異種移植片(CC2、CC3)と、を対象として行った。実施例1において作製した胆管がんオルガノイドとは異なる症例を由来とする異種移植片(CC2、CC3)は、実施例2においてRspo1のみを増殖因子として加えた条件下のオルガノイド培養で長期間培養できなかった系である。
遺伝子変異解析の結果を表3に示す。表3において、第1列は、遺伝子名(Gene symbol)を示し、第2列〜第4列は、各系の遺伝子変異の有無及び遺伝子変異の種類を示している。第2列〜第4列に示す「WT」は、野生型(遺伝子変異なし)であることを示す。
表3に示すように、表1に今回検討した胆管がん症例におけるアミノ酸変異をまとめた。作製した胆管がんオルガノイドは、KRAS、TP53、APC、TGFBR2及びEGFなどの主要なドライバー遺伝子変異が認められる。他方、実施例2において作製した胆管がんオルガノイドとは異なる症例を由来とする異種移植片(CC2)は、作製した胆管がんオルガノイドに認められたKRAS、TP53、APC、TGFBR2及びEGFの変異のうち、KRAS及びTGFR2の変異が認められなかった。また、実施例2において作製した胆管がんオルガノイドとは異なる症例を由来とする異種移植片(CC3)は、作製した胆管がんオルガノイドに認められたKRAS、TP53、APC、TGFBR2及びEGFの変異のうち、TP53、TGFBR2及びEGFの変異が認められなかった。
幹細胞の維持にはニッシェと呼ばれる微小環境が必要であると考えられているが、胆管がん幹細胞オルガノイドにおいては、これらのドライバー遺伝子変異があるためにニッシェに依存しない増殖が可能になったと考えられる。
今回の実験で分離に成功した胆管がん症例では、KRAS、TP53、APC、TGFBR2、EGFなどの主要なドライバー遺伝子変異を同時に認めていたため、基本培地にRspo1のみを加えた条件のみで長期間培養することが可能になったと考えられる。
<実施例3>
以下の方法により、オルガノイドの形成における異種移植片を形成させる工程の意義に関する検討を行った。具体的には、2症例の肝内胆管がん患者から外科切除により胆管がん組織を採取した。採取した胆管がん組織を免疫不全マウス(SCIDマウス、C.B17/Icr−scid(scid/scid))の皮下組織内に移植した。胆管がん組織を移植後、SPF(specific pathogen free)飼育施設における自由飲水、通常食の自由摂取により飼育を行い、約60日経過後、異種移植片の生成を確認して異種移植片を摘出した。
なお、採取した胆管がん組織は、国立がん研究センター中央病院より供与を受けた。
摘出した異種移植片を免疫不全マウス(SCIDマウス、C.B17/Icr−scid(scid/scid))の皮下組織内に再度移植した。異種移植片を移植してから3か月経過後、異種移植片の大きさが2cmを超えた時点で免疫不全マウスを解剖して異種移植片を摘出した。異種移植片の移植を行い、摘出するまでの工程が異種移植片を形成させる工程に相当する。
異種移植片に含まれるがん幹細胞を必要な増殖因子のみを含む無血清培地を用いてマトリジェル(Basement Membrane, Growth Factor Reduced, Phenol−Red Free 10ml(CORNING 356231))中で3次元培養(オルガノイド培養)を行い、胆管がんオルガノイドを作製した。得られたオルガノイドを以下、「CCO1」という。
また、異種移植片を移植しなかった点と、オルガノイドの調製に使用した培地を変更した点以外はCCO1と同様にしてオルガノイドを調製した。以下、該オルガノイドを「CCO2」という。
CCO1及びCCO2の由来を表4に示す。CCO1及びCCO2のオルガノイド培養に用いた培地の組成を表5に示す。表5中、「○」は、その項目の成分を含有することを示し、「−」は、その項目の成分を含有しないことを示す。
1つの胆管がん由来の幹細胞が、オルガノイドを形成し、増大していく様子をCCO1及びCCO2のそれぞれについて観察したところ、CCO1が非常に強い増殖活性を示しながらオルガノイドが増大していくのに対し、CCO2は培養開始後12日をピークにオルガノイドが縮小していった。また、CCO2の増殖のためには、培養条件としてEGF、R−Spondin1の他、Noggin、HGF、FGF−10、A83−01(TGF−β受容体阻害薬)など、CCO1よりも多くの増殖因子を必要とした。
以上の結果より、CCO1はCCO2に比べ、増殖活性が高く、またより少ない増殖因子で継代及び維持することが可能であることから、異種移植片を形成させる工程を含む本発明の調製方法によれば、より少ない増殖因子で強い増殖能を有するオルガノイドが得られることが示唆された。即ち、異種移植片とオルガノイド培養によるがん幹細胞に対する2重のセレクションを行うことで、より効率良くがん幹細胞を分離及び培養できる可能性が考えられた。
<実施例4>
実施例3で得られたCCO1を用いて、長期間(1年以上)培養を行った後のオルガノイドの変化を検討した。図18はCCO1を週1回継代(パッセージ)し、2か月、9か月、13か月間培養した際の状態を観察したものである。長期間継代培養してもオルガノイドの形態には大きな変化を認めなかったが、オルガノイドの数が増加する傾向が認められた。そこで、各継代回数(1〜10回、11〜20回、21〜30回、31〜40回、41〜55回)における細胞継代時のスプリット比の平均値を比較した。スプリット比とは、細胞を継代する際に、1つのwellからいくつのwellに細胞を継代するかを示したものである。その結果を図19に示す。図19のグラフに示したとおり、継代回数1〜10の培養初期ではスプリット比の平均値は5前後であったが、培養開始後約1年が経過した継代回数41〜55の時点ではスプリット比の平均値は10前後であり、約2倍に増強していることが明らかになった。
以上の結果より、長期間にわたってオルガノイド培養を行うと、その増殖活性が増強することから、オルガノイド培養ががん幹細胞の培養及び維持に適しており、長期間培養を行うことで、がん幹細胞が濃縮され、オルガノイドにおけるがん幹細胞の比率が上昇する可能性が考えられた。
<実施例5>
実施例3で得られたCCO1におけるマイクロRNAの発現変化を解析することで、長期間にわたってオルガノイド培養を行うと増殖活性が増強する理由を検討した。マイクロRNAは長さ20塩基程度の小さな1本鎖RNAであるが、複数の標的遺伝子の発現を制御し、発がんや幹細胞性の維持において重要な役割を果たす。CCO1におけるマイクロRNAの発現変化の網羅的な解析の結果を表6及び図20に示す。図20は、CCO1が由来する異種移植片(図20中の「Xeno」)におけるmiR−34aの発現量に対する、各継代時(7回、22回、32回、36回、40回)におけるCCO1のmiR−34aの発現量を示す。図20に示すとおり、がん抑制マイクロRNAとして報告されているmiR−34aの発現が、CCO1が由来する異種移植片に比べて、オルガノイドであるCCO1において顕著に低下していた。
miR−34aの標的遺伝子としては、CD44、CDK4、CDK6、MET、MYC、SIRT1などが知られている。これらの標的遺伝子についてのCCO1における発現量を、各継代時(7回、22回、32回、36回、40回)において測定した。その結果を、図21に示す。図21に示すとおり、オルガノイドの長期培養に伴い、これらの標的遺伝子の発現は増加していた。このことから、miR−34aの発現の低下(増加)は、これらの標的遺伝子の発現を増加(低下)させていることが考えられた。また、CD44はmiR−34aの標的遺伝子であると同時に、がん幹細胞のマーカーでもあり、オルガノイドの長期培養によってCD44の発現が上昇することで、がん幹細胞としての性質が増強されている可能性が考えられた。
更に、CCO1についてのオルガノイドの長期培養に伴い、各継代時(7回、22回、32回、36回、40回)において、がん幹細胞マーカーであるLGR5、CD133、ALDH1A1などのがん幹細胞マーカーについての発現量を測定した。その結果を、図22に示す。図22に示すとおり、LGR5、CD133、ALDH1A1などのがん幹細胞マーカーの発現が上昇しており、オルガノイドを長期間培養することで、その増殖活性が増強することを裏付ける結果となった。
以上の結果より、miR−34aの発現が、がん幹細胞の維持及び増殖に極めて重要な役割を果たしており、有望な治療標的となることが考えられた。miR−34aの発現を上昇させる低分子化合物や核酸医薬ががん幹細胞に対する新たな治療薬となる可能性がある。
<実施例6>
(胆管がんオルガノイドの長期培養の間のmiR−34aプロモーター領域におけるDNAのメチル化の解析)
miR−34a遺伝子は、染色体座位1p36に位置しており、CpGアイランドのプロモーター領域におけるDNAの高度メチル化は、miR−34aのサイレンシングに関わる原因の1つであることが知られている。そこで、実施例3で得られたCCO1の継代数7、22、32、及び54のものにおけるmiR−34aプロモーター領域のDNAメチル化状態を、バイサルファイトピロシーケンスによって解析した。
まず、それぞれの継代時におけるゲノムDNAを、QIAamp DNA Mini Kit(株式会社キアゲン製)を用いて抽出し、EpiTect Bisulfite Kit(株式会社キアゲン製)を用いてバイサルファイト変換を行った。その後、DNAメチル化レベルを、PyroMark Q24(株式会社キアゲン製)を用いて、ピロシーケンスによって解析した。使用したプライマーの配列は、miR−34aプロモーター領域であるP1−1及びP1−2の2つを用いた。また、ヒトメチル化DNA及び非メチル化DNAについての対照として、EpiTectメチル化対照DNA及び非メチル化対照DNA(株式会社キアゲン製)を使用した。また、DNA脱メチル化アッセイのために、継代数54のCCO1を、1μM又は3μMの5−アザ−2’−デオキシシチジン(5−Aza−CdR、シグマアルドリッチ社製)で処理(以下、「5AZA処理」という場合がある。)した。次いで、24時間後、5−Aza−CdRを含む培地を通常の培地に交換して、上記と同様の方法で、miR−34aプロモーター領域のDNAメチル化状態を解析した。
図23に、P1−1及びP1−2のプライマーを用いて解析した各CCO1における継代時のmiR−34aプロモーター領域のDNAメチル化を示す。図24に、5AZA処理を行ったCCO1に対する、P1−1及びP1−2のプライマーを用いて解析したmiR−34aプロモーター領域のDNAメチル化を示す。図23中、PCは陽性対照を示し、NCは陰性対照を示す。図24中の「5AZA 0」は、5AZA処理を行わなかったコントロールのCCO1を示し、「5AZA 1」は、1μMの5AZA処理を行ったCCO1を示し、「5AZA 3」は、3μMの5AZA処理を行ったCCO1を示す。図24中、PCは陽性対照を示し、NCは陰性対照を示す。
図23に示すとおり、P1−1領域及びP1−2領域におけるDNAメチル化レベルは、継代前の異種移植片(図23中の「Xeno」)においては低いレベル(約20〜40%)であったのに対し、CCO1においては、継代回数が増えるにつれて高まった。また、P1−1領域及びP1−2領域は、継代数54のCCO1では、特に高度にメチル化されていた(約80%)。
また、図24に示すとおり、継代数54のCCO1のP1−1領域及びP1−2領域におけるDNAメチル化レベルは、1μM又は3μMの5AZA処理後に低下したことが示された。
(定量的RT−PCR)
継代数54のCCO1において、3μMの5AZA処理を行ったときのmiR−34aの発現レベルを、定量的RT−PCRによって解析した。定量的RT−PCRには、TaqMan(登録商標)microRNA assay for miR−34a(ライフテクノロジーズ社製)を用いた。発現レベルは、U6 RNAの発現量に基づき標準化した。発現レベルは、18S rRNAの発現量に基づき標準化した。定量分析は、CFX96 Real−Time System(BioRad社製)を用いて行った。その結果を、図25に示す。図25に示すように、5AZA処理を行ったCCO1(5AZA(+))は、5AZA処理を行わなかったCCO1(5AZA(−))より、miR−34aの発現レベルが相対的に高かったことが確認された。
また、5AZA処理を行った継代数54のCCO1と、5AZA処理を行わなかった継代数54のCCO1について、顕微鏡で観察した。その明視野像を図26に示す(スケールバー:1000μm)。図26に示すように、5AZA処理を行うことにより、胆管がん幹細胞は大きいCCO1を形成することができなかった。
以上の結果から、miR−34aにより、がん幹細胞の増殖が抑制する可能性があることが示唆された。
<実施例7>
(レンチウイルスを媒介したmiR−34aの過剰発現)
実施例3で得られたCCO1において、レンチウイルスを媒介してmiR−34aを過剰発現させた。
マーカーとしてのGFPと、ヒトmiR−34a前駆体領域をコードするレンチウイルスベクター(以下、「Lenti−miR−34a GFP」という場合がある。)(System Biosciences社製)を準備した。また、同じくマーカーとしてピューロマイシン耐性レンチウイルスベクター(pLVSIN−CMV Pur)(タカラバイオ株式会社製)にヒトmiR−34a前駆体領域を組み込んだベクター(以下、「Lenti−miR−34a puromiycin」という場合がある。)を作製した。このマーカーにおいて、ヒトmiR−34a前駆体領域は、pLVSIN−CMV Purベクター内のEcoRI部位とNotI部位との間に挿入した。レンチウイルス感染は、Kooら(2012)の方法と同様にして行った。具体的には、以下の手順でレンチウイルス感染を行った。
まず、それぞれのmiR−34a前駆体領域をコードするレンチウイルスベクター、及び、それぞれのコントロールとしてヒトmiR−34a前駆体領域が組み込まれてないベクターを、293FT細胞に、ViraPower lentiviral packaging mix(ライフテクノロジーズ社製)とともにトランスフェクトし、ウイルス濃縮液を得た。CCO1は、62の継代数のものを用い、該CCO1に対してトリプシン処理を行い、細胞を分離した。その後、上述のウイルス濃縮液に100x ポリブレンを混ぜ合わせた。次いで、このウイルス濃縮液を用いてトリプシン処理したCCO1を懸濁し、37℃で、COインキュベーターにおいて2.5時間静置し、ウイルス感染を行った。静置後、5000 rpm、5分の条件で遠心を行い、遠心後の上清を除去した。得られたウイルス感染細胞をマトリゲル(500μL)に懸濁48wellプレートに25μLずつドームを作るメディウムを750μL入れて培養した。
Lenti−miR−34a puromiycinを導入したCCO1については、トランスフェクションから24時間後に、感染したオルガノイドを、ピューロマイシン(1μg/mL)を用いて選別した。それらのmiR−34aの相対的な発現量を、実施例6の定量的RT−PCRと同様の手順により解析した。Lenti−miR−34a GFPについては、2日後の発現量を、Lenti−miR−34a puromiycinについては、感染から3日後と5日後の発現量を解析した。その結果を、図27に示す。図27中、「C」は、コントロールのベクターを示す。図27に示すように、レンチウイルス感染後のmiR−34aがコントロールと比較して顕著に発現していることが確認された。
上記と同様のLenti−miR−34a puromiycinを感染させたCCO1について、感染から3日又は5日後に、CD44、CDK4、CDK6、及びLGR5の発現量を、TaqMan(登録商標)gene expression assay(ライフテクノロジーズ社製)を用いて、定量的RT−PCRによって解析した。その他の定量的RT−PCRは、実施例6と同様の手順で行った。その相対発現量を結果を図28に示す。図28中、白抜きのバーがコントロールを示し、黒で塗りつぶされた色バーが、Lenti−miR−34a puromiycinを示す。図28に示すように、LGR5及びmiR−34aの標的遺伝子(CD44、CDK4及びCDK6)の発現量は、コントロールよりも、miR−34aを過剰発現させたオルガノイドにおいて顕著に低かった。この結果から、レンチウイルスを媒介したmiR−34aの過剰発現が、その標的がん遺伝子の阻害を介して、胆管がん幹細胞の生育を抑制することを示唆された。
上記と同様のLenti−miR−34a GFP又はLenti−miR−34a puromiycinを感染させたCCO1について、その導入をGFP及びピューロマイシン耐性によって確認した後、顕微鏡により観察した。その結果を図29(スケールバー:1000μm)に示す。図29に示すように、オルガノイドの増殖は、コントロールと比較して、Lenti−miR−34a GFP又はLenti−miR−34a puromiycinの感染後において顕著に抑制されたことが確認された。
以上の結果から、miR−34aにより、胆管がん幹細胞の増殖を抑制できることがわかった。

Claims (11)

  1. がん幹細胞集団の調製方法であって、
    がん幹細胞を含む細胞塊を、前記がん幹細胞の由来種とは異なる非ヒト動物に移植する工程と、
    該非ヒト動物において異種移植片を形成させる工程と、
    前記非ヒト動物から前記異種移植片を取り出す工程と、
    前記異種移植片を、前記がん幹細胞の分裂を促進させる増殖因子を含む無血清3次元培地において培養し、オルガノイドを形成する工程と、
    を有する方法。
  2. 前記がん幹細胞は、胆管がん由来のがん幹細胞である、
    請求項1に記載の方法。
  3. 前記分裂を促進させる増殖因子は、Wnt分泌タンパク質である、
    請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記Wnt分泌タンパク質は、R−スポンジン1である、
    請求項3に記載の方法。
  5. 前記がん幹細胞は、ドライバー遺伝子が変異している幹細胞である、
    請求項1乃至4いずれかに記載の方法。
  6. 前記分裂を促進させる増殖因子は、Noggin、HGF、FGF−10、A83−01、Wnt3A、及びY−27632からなる群から選択される1つ以上を含むものでない、
    請求項1乃至5いずれかに記載の方法。
  7. がん幹細胞を含む異種移植片の調製方法であって、
    がん幹細胞を含む細胞塊を、前記がん幹細胞の由来種とは異なる非ヒト動物に移植する工程と、
    該非ヒト動物において異種移植片を形成させる工程と、を有する方法。
  8. がん幹細胞の増殖調節剤の候補物質のスクリーニング方法であって、
    がん幹細胞を含む細胞塊を、前記がん幹細胞の由来種とは異なる非ヒト動物に移植する工程と、
    該非ヒト動物において異種移植片を形成させる工程と、
    被験物質を、前記異種移植片に投与する工程と、
    前記被験物質が投与された前記異種移植片におけるmiR−34aの発現量を測定する工程と、
    前記測定結果に基づいて、がん幹細胞の増殖調節剤の候補物質として被験物質を選択する工程と、
    を有するスクリーニング方法。
  9. がんの治療剤又は予防剤の候補物質のスクリーニング方法であって、
    がん幹細胞を含む細胞塊を、前記がん幹細胞の由来種とは異なる非ヒト動物に移植する工程と、
    該非ヒト動物において異種移植片を形成させる工程と、
    被験物質を、前記異種移植片に投与する工程と、
    前記被験物質が投与された前記異種移植片におけるmiR−34aの発現量を測定する工程と、
    前記測定結果に基づいて、がんの治療剤又は予防剤の候補物質として被験物質を選択する工程と、
    を有するスクリーニング方法。
  10. 非ヒト動物において形成される異種移植片におけるmiR−34aの発現量を低下させる方法であって、
    がん幹細胞を含む細胞塊を、前記がん幹細胞の由来種とは異なる非ヒト動物に移植する工程と、
    該非ヒト動物において異種移植片を形成させる工程と、
    を有する方法。
  11. miR−34aからなる、がん幹細胞増殖抑制剤。
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