JP2016027140A - β−キチンナノファイバーおよびその製造方法 - Google Patents

β−キチンナノファイバーおよびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】キチンミクロフィブリル単位にまで均一に解繊されたβ−キチンナノファイバーを提供する。また、該β−キチンナノファイバーの製造に好適に用いることのできるβ−キチン粉末の製造方法を提供する。
【解決手段】β−キチン含有材料を出発原料とし、(a)アルカリにより脱タンパク処理する工程、(b)酸により脱灰処理する工程、(c)(b)の工程による処理物を乾燥する工程、(d)(c)の工程による乾燥物を乾式粉砕する工程を含み、(a)、(b)、(c)、(d)の順序で処理を行うことにより、β−キチン粉末を製造し、該β−キチン粉末を湿式解繊処理して、ファイバー径が3nm〜20nmで、平均分子量が10kDa以上100kDa未満、または100kDa〜1400kDaであるβ−キチンナノファイバーを得る。
【選択図】図6

Description

本発明は、β−キチンナノファイバーおよびその製造方法に関し、詳しくは、キチンミクロフィブリル単位にまで均一に解繊されたβ−キチンナノファイバー、ならびに、その製造に用いるβ−キチン粉末の製造方法、および該粉末を用いたβ−キチンナノファイバーの製造方法に関する。
キチンは、カニやエビ等の甲殻類、カブトムシ等の甲虫類の外骨格、キノコ等の菌類の細胞壁などに豊富に含まれ、生体親和性および生分解性が高く、人工皮膚、手術用縫合糸として利用されている。
近年、繊維状のキチンを解繊して得られるキチンナノファイバーについて、培養細胞用基材(足場)等として再生医療分野での応用が検討され、また、その保湿効果や皮膚保護効果により、化粧品素材としても注目されている。
キチンからキチンナノファイバーを得る方法も種々検討され、たとえば、イカの腱(本明細書における「中骨」と同義である)等から精製して得られるβ−キチンをpH5以下の酸性液体に浸漬した後、プロペラミキサー、カッターミキサー等の家庭用ミキサー、超音波ホモジナイザー、二軸混練機等の解繊、粉砕装置を用いて解繊処理して、ファイバー径が5nm〜50nm程度のβ−キチンナノファイバーを得る製造方法が開示されている(特許文献1)。
しかし、特許文献1には、キチンナノファイバーの製造に用いる精製β−キチンは、乾燥することにより、キチン繊維が水素結合により強固に凝集することから、乾燥させずに保存することが好ましいと記載され、保存性および取扱い性に優れるβ−キチン粉末(すなわち乾燥状態)の製造については記載されていない。また、特許文献1に記載された製造方法により得られるキチンナノファイバーは、キチンミクロフィブリル単位にまで均一に解繊されているとはいえない。
また、甲殻類由来のキチン含有材料を脱タンパク工程及び脱灰工程に付して精製し、次いで酸性試薬にて処理した後、石臼式磨砕器、高圧ホモジナイザー、凍結粉砕装置などの装置を用いて解繊する、キチンナノファイバーの製造方法が開示されている(特許文献2)。
しかし、甲殻類に含まれるキチンはα−キチンであり、β−キチンに比べて溶媒に対する溶解性が低く、甲殻アレルギーを惹き起こす恐れもある。また、特許文献2においても、乾燥によりキチン繊維が強固に凝固し、取扱い性が悪くなることを防ぐため、各工程を、材料を常に乾燥させずに行うことが好ましいと記載され、精製されたキチンを粉末とすることは記載されていない。さらにまた、特許文献2に記載された製造方法により得られるキチンナノファイバーは、ファイバー径が2nm〜30nm程度において広く分布しており、ナノファイバーのそれぞれのファイバー径は不均一であり、やはりキチンミクロフィブリル単位にまで均一に解繊されているとはいえない。
特許第5152782号公報 特許第5186694号公報
そこで、本発明は、各ファイバー間におけるファイバー径の差が小さく、キチンミクロフィブリル単位にまで均一に解繊されたβ−キチンナノファイバーを提供することを目的とした。
また、上記β−キチンナノファイバーの製造に好適に用いることができ、保存性および取扱い性に優れるβ−キチン粉末を製造する方法を提供し、さらに、該β−キチン粉末を用いて、上記β−キチンナノファイバーを製造する方法を提供することを目的とした。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、β−キチン含有材料を出発原料とし、少なくとも、(a)アルカリにより脱タンパク処理する工程、および(b)酸により脱灰処理する工程を行って精製する工程と、(c)(b)の工程による処理物を乾燥する工程、(d)(c)の工程による乾燥物を乾式粉砕する工程を、(a)、(b)、(c)、(d)の順序で行うことにより、保存性に優れ、湿式解繊を行う際の取り扱い性も良好なβ−キチン粉末を得ることができることを見出した。
さらに、このβ−キチン粉末を湿式解繊処理することにより、キチンミクロフィブリル単位にまで均一に解繊され、水分散性が良好で、水に分散させると容易に膨潤して増粘し、透明性の高いゲルを生成し得る新規なβ−キチンナノファイバーを得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、次の[1]〜[13]に関する。
[1]ファイバー径が3nm〜20nmであり、平均分子量が100kDa〜1400kDaである、β−キチンナノファイバー。
[2]0.05重量%の水分散液における600nmの光の透過率が70%以上である、上記[1]に記載のβ−キチンナノファイバー。
[3]0.69重量%〜0.84重量%の水分散液の25℃における粘度が800mPa・s〜35000mPa・sである、上記[1]に記載のβ−キチンナノファイバー。
[4]ファイバー径が3nm〜20nmであり、平均分子量が10kDa以上100kDa未満である、β−キチンナノファイバー。
[5]0.05重量%の水分散液における600nmの光の透過率が80%以上である、上記[4]に記載のβ−キチンナノファイバー。
[6]0.69重量%〜0.84重量%の水分散液の25℃における粘度が400mPa・s〜10000mPa・sである、上記[4]に記載のβ−キチンナノファイバー。
[7]上記[1]〜[3]のいずれかに記載のβ−キチンナノファイバーを製造するためのβ−キチン粉末の製造方法であって、β−キチン含有材料を出発原料とし、以下の(a)〜(d)の工程を含み、さらに(a)、(b)、(c)、(d)の順序で処理を行うことを特徴とする、β−キチン粉末の製造方法:
(a)アルカリにより脱タンパク処理する工程、
(b)酸により脱灰処理する工程、
(c)(b)の工程による処理物を乾燥する工程、
(d)(c)の工程による乾燥物を乾式粉砕する工程。
[8]β−キチン含有材料がイカの中骨である、上記[7]に記載の製造方法。
[9]上記[7]または[8]に記載の製造方法により得られる、β−キチン粉末。
[10]上記[9]に記載のβ−キチン粉末を湿式解繊処理する工程を含む、上記[1]〜[3]のいずれかに記載のβ−キチンナノファイバーの製造方法。
[11]湿式解繊処理がウォータージェットを用いた解繊処理である、上記[10]に記載の製造方法。
[12]β−キチン含有材料を出発原料とし、以下の(a)〜(d)の工程を含む処理を(a)、(b)、(c)、(d)の順序で行って得られたβ−キチン粉末を、湿式解繊処理する工程を含む、上記[4]〜[6]のいずれかに記載のβ−キチンナノファイバーの製造方法。
(a)アルカリにより脱タンパク処理する工程、
(b)酸により脱灰処理する工程
(c)(b)の工程による処理物を乾燥する工程、
(d)(c)の工程による乾燥物を乾式粉砕する工程。
[13]β−キチン含有材料を出発原料とし、以下の(a)〜(d)の工程を(a)、(b)、(c)、(d)の順序で含む製造方法により製造されるβ−キチン粉末を湿式解繊処理して得られる、β−キチンナノファイバー。
(a)アルカリにより脱タンパク処理する工程、
(b)酸により脱灰処理する工程、
(c)(b)の工程による処理物を乾燥する工程、
(d)(c)の工程による乾燥物を乾式粉砕する工程。
本発明により、キチンミクロフィブリル単位にまで均一に解繊され、水に対する分散性が良好なβ−キチンナノファイバーを提供することができる。
本発明のβ−キチンナノファイバーは、水に分散させると容易に膨潤して増粘し、透明性の高いゲルを生成することができ、機能性食品素材および化粧品素材として有用であり、生体親和性にも優れることから再生医療分野において有用である。
また、本発明により、β−キチンナノファイバーの製造に好適に使用することができ、保存性および取扱い性が良好なβ−キチン粉末を製造することができる。
実施例5の製造方法により得られたβ−キチンナノファイバーについて、走査型電子顕微鏡により観察された画像を示す図である。 実施例5の製造方法により得られたβ−キチンナノファイバーについて、透過型電子顕微鏡により観察された画像を示す図である。 比較例5の製造方法により得られたβ−キチンナノファイバーについて、走査型電子顕微鏡により観察された画像を示す図である。 実施例10−3と比較例6−3の製造方法により得られた各β−キチンナノファイバー分散液について、急速凍結ディープエッチ・レプリカ法および高角度環状暗視野走査透過型電子顕微鏡により観察された画像を示す図である。 実施例10−1と比較例6−1の製造方法により得られた各β−キチンナノファイバー分散液について、急速凍結ディープエッチ・レプリカ法および高角度環状暗視野走査透過型電子顕微鏡により観察された画像を示す図である。 実施例10−3と比較例6−3の製造方法により得られた各β−キチンナノファイバー分散液について、急速凍結ディープエッチ・レプリカ法および高角度環状暗視野走査透過型電子顕微鏡により観察された画像を示す図である。 実施例9−3、10−3、11−1〜12−2の製造方法により得られたβ−キチンナノファイバーについて、平均分子量と粘度との関係を示す図である。
1.β−キチンナノファイバー
本発明のβ−キチンナノファイバーは、キチンミクロフィブリル単位にまで微細かつ均一に解繊され、各ファイバー間におけるファイバー径の差が小さく、3nm〜20nm、好ましくは5nm〜15nm、より好ましくは5nm〜10nmのファイバー径および1μm以上の繊維長を有し、ゲル浸透クロマトグラフィー−高速液体クロマトグラフィー法により測定される平均分子量が、100kDa〜1400kDaであり、好ましくは200kDa〜1400kDa、より好ましくは300kDa〜1350kDa、さらに好ましくは400kDa〜1300kDa、特に好ましくは800kDa〜1300kDaである。
また、本発明のβ−キチンナノファイバーは、より低分子量のものとしても調製することができ、該β−キチンナノファイバーは、3nm〜20nm、好ましくは5nm〜15nm、より好ましくは5nm〜10nmのファイバー径および1μm以上の繊維長を有し、ゲル浸透クロマトグラフィー−高速液体クロマトグラフィー法により測定される平均分子量が、10kDa以上100kDa未満であり、好ましくは20kDa〜99kDaであり、より好ましくは30kDa〜99kDaである。
なお、上記ゲル浸透クロマトグラフィー−高速液体クロマトグラフィー法により測定される本発明のβ−キチンナノファイバーの平均分子量は、通常重量平均分子量として得られる。
本発明のβ−キチンナノファイバーは、微細かつ均一に解繊されているので、水に対する分散性が良好で、水に分散させると容易に膨潤して増粘し、透明性の高いゲルを生成することができる。
たとえば、ゲル浸透クロマトグラフィー−高速液体クロマトグラフィー法により測定される平均分子量が100kDa〜1400kDaである本発明のβ−キチンナノファイバーを、0.05重量%となるように水に分散させた水分散液における600nmの光の透過率は70%以上であり、好ましくは75%以上であり、より好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは85%以上である。なお、本発明において得られる平均分子量が100kDa〜1400kDaのβ−キチンナノファイバーの前記水分散液の光の透過率の最高値としては、99%程度である。
また、ゲル浸透クロマトグラフィー−高速液体クロマトグラフィー法により測定される平均分子量が100kDa〜1400kDaであるβ−キチンナノファイバーの濃度が、0.69重量%〜0.84重量%である水分散液の25℃における粘度は、800mPa・s〜35000mPa・sであり、好ましくは900mPa・s〜25000mPa・s、より好ましくは1000mPa・s〜15000mPa・s、さらに好ましくは1100mPa・s〜12000mPa・s、より一層好ましくは1300mPa・s〜7000mPa・s、特に好ましくは1300mPa・s〜4000mPa・s、最も好ましくは1500mPa・s〜4000mPa・sである。
ゲル浸透クロマトグラフィー−高速液体クロマトグラフィー法により測定される平均分子量が、10kDa以上100kDa未満である低分子量のβ−キチンナノファイバーの場合、0.05重量%となるように水に分散させた水分散液における600nmの光の透過率は80%以上であり、好ましくは85%以上であり、より好ましくは90%以上である。なお、10kDa以上100kDa未満である低分子量のβ−キチンナノファイバーの前記水分散液の光の透過率の最高値としては、99.9%程度である。
また、上記低分子量のβ−キチンナノファイバーの濃度が、0.69重量%〜0.84重量%である水分散液の25℃における粘度は、400mPa・s〜10000mPa・sであり、好ましくは800mPa・s〜6000mPa・sであり、より好ましくは1000mPa・s〜4000mPa・sである。
なお、上記β−キチンナノファイバー分散液の透過率は、医薬部外品原料規格2006「紫外可視吸光度測定法」に準拠して、分光光度計を用い、10mm石英セルにて対照としてイオン交換水を用いて測定される。また、上記β−キチンナノファイバー分散液の粘度は、医薬部外品原料規格2006「粘度測定法 第2法 回転粘度計法」により、B型回転粘度計を用いて25℃で測定される。
2.β−キチン粉末の製造方法
本発明はまた、上記した本発明のβ−キチンナノファイバーの製造に好適に用いることのできるβ−キチン粉末を製造する方法を提供する。
本発明のβ−キチン粉末の製造方法は、β−キチン含有材料を出発原料とし、(a)アルカリにより脱タンパク処理する工程、および(b)酸により脱灰処理する工程を行って精製する工程、(c)(b)の工程による処理物を乾燥する工程、ならびに(d)(c)の工程による乾燥物を乾式粉砕する工程を含む。もちろん、必要に応じて他の工程を含み得る。
β−キチンは、α−キチンとは異なり、天然にはあまり存在せず、イカの中骨やハオリムシに存在することが知られている。
イカの中骨に存在するβ−キチンは、低結晶性で、分子中に水和水が存在するため水で膨潤しやすい。また、イカの中骨は、イカを加工する際に廃棄されることから、これを用いることにより、廃棄物を有効利用することができる。それゆえ、本発明においては、β−キチン含有材料として、イカの中骨を用いることが好ましい。
なお、イカの中骨としては、特に限定されないが、スルメイカ(Todarodes pacificus)、アカイカ(Ommastrephes bartramii (Lesueur))、ヤリイカ(Loligo (Heterololigo) bleekeri)、ジンドウイカ(Loliolus (Nipponololigo) japonica Hoyle)、アメリカオオアカイカ(Dosidicus gigas)、ケンサキイカ(Loligo (Photololigo) edulis Hoyle)、コウイカ(Sepia (Platysepia) esculenta Hoyle)、アオリイカ(Sepioteuthis lessoniana)、シリヤケイカ(Sepiella japonica Sasaki)、ヒメコウイカ(Sepia (Doratosepion) kobiensis Hoyle)、ソデイカ(Thysanoteuthis rhombus)等から採取されたものが、入手しやすく好ましい。
なお、廃棄されたイカの中骨は加工場で冷蔵もしくは冷凍した状態のものが好ましいが、場合によっては天日や熱風により乾燥させたものでも構わない。
本発明において、(a)アルカリにより脱タンパク処理する工程は、通常の方法に従って行うことができる。アルカリとしては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物の水溶液が好ましく用いられ、水酸化ナトリウムの水溶液がより好ましく用いられる。アルカリの水溶液は、通常0.01M〜4.0M、好ましくは0.1M〜3.0M、より好ましくは0.5M〜2.0M程度の濃度で、β−キチン含有材料1kg(湿重量)に対し、1L〜20L、好ましくは5L〜20L程度用いる。
脱タンパク処理は、たとえば、β−キチン含有材料をアルカリ水溶液に浸漬し、通常は約50℃以上、好ましくは約80℃以上、より好ましくは92℃〜93℃(緩やかに沸騰した状態)で行う。β−キチン含有材料を浸漬したアルカリ水溶液は、撹拌を行ってもよい。アルカリによる脱タンパク処理は、通常は1時間〜24時間、好ましくは2時間〜6時間行う。
本発明において、(b)酸により脱灰処理する工程は、通常の方法に従って行うことができる。酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸、酢酸、乳酸、コハク酸、リンゴ酸、ギ酸、ピログルタミン酸、グリコール酸、クエン酸等の有機酸を用いることができ、無機酸を用いることが好ましく、塩酸を用いることがより好ましい。塩酸等の酸の水溶液は、通常0.01M〜6M、より好ましくは0.01M〜3M、さらに好ましくは0.05M〜1.5M、より一層好ましくは0.1M〜1M程度の濃度で、β−キチン含有材料1kg(湿重量)に対し、1L〜20L、好ましくは5L〜20L程度用いる。
脱灰処理は、たとえば、β−キチン含有材料を塩酸等の水溶液に浸漬し、通常は約10℃〜約50℃、好ましくは約10℃〜約30℃、より好ましくは約10℃〜約20℃で行う。β−キチン含有材料を浸漬した塩酸等の水溶液は、撹拌を行ってもよいが、そのまま静置することが好ましい。酸による脱灰処理は、通常は1時間〜120時間、好ましくは1時間〜48時間、より好ましくは1時間〜36時間、さらに好ましくは3時間〜25時間、さらに一層好ましくは5時間〜24時間行う。
ゲル浸透クロマトグラフィー−高速液体クロマトグラフィー法により測定される平均分子量が、700kDa以下程度のβ−キチンナノファイバーの製造に適するβ−キチン粉末を得るには、酸による脱灰処理を、高濃度の強酸を用いて行うことが好ましい。強酸としては、塩酸、硫酸、硝酸等の無機強酸が好ましいが、塩酸を用いることがより好ましい。強酸の濃度としては、3M〜6M程度とするのが好ましく、強酸による処理時間は、3時間〜120時間程度とすることが好ましく、3時間〜48時間程度とすることがより好ましい。
なお、上記の高濃度の強酸による処理は、0.1M〜1M程度の酸による脱灰処理を行った後に行うことがより好ましい。
特に、ゲル浸透クロマトグラフィー−高速液体クロマトグラフィー法により測定される平均分子量が、10kDa以上100kDa未満のβ−キチンナノファイバーの製造に適するβ−キチン粉末を得るには、酸による脱灰処理を、6M程度の濃度の塩酸等強酸を用いて、6時間〜120時間程度行うことが好ましく、6時間〜48時間程度行うことがより好ましく、かかる強酸による処理を、0.1M〜1M程度の酸による脱灰処理を行った後に行うことがより好ましい。
本発明において、(c)(b)の工程による処理物を乾燥する工程は、天日乾燥、風乾、温熱乾燥、真空乾燥等により行うことができるが、温熱乾燥機等を用いて、40℃〜100℃で1時間〜48時間行うことが好ましく、50℃〜70℃で3時間〜24時間行うことがより好ましい。
本発明において、(d)(c)の工程による乾燥物を乾式粉砕する工程は、一般的な乾式粉砕機、たとえばカッターミル粉砕機(株式会社奈良機械製作所製、増幸産業株式会社製、IKA社製等)、ハンマーミル粉砕機(株式会社奈良機械製作所製、株式会社パウレック製、株式会社ダルトン製等)、転動ボールミル粉砕機(ヤマト科学株式会社製、ホソカワミクロン株式会社製等)、乾式気流粉砕機(「サイクロンミル」、日鉄住金ファインテック株式会社製等)、対向気流乾式粉砕機(「ドライバースト」、株式会社スギノマシン製等)等により行うことができるが、ハンマーミル粉砕機または転動ボールミル粉砕機により行うことが、微細な粒子が得られるため、好ましい。乾式粉砕処理は、使用する粉砕機の種類等にもよるが、通常室温で0.5時間〜24時間程度行う。
本発明のβ−キチン粉末の製造方法は、少なくとも上記(a)〜(d)の工程を含み、さらに(a)、(b)、(c)、(d)の順序で処理を行うことを特徴とする。
本発明の製造方法においては、(a)、(b)、(c)、(d)の順序で各工程が含まれる限り、各工程の前後に他の工程が含まれていてもよい。
たとえば、(c)の工程の前に行われるβ−キチン含有材料を精製する工程において、最後に(b)の酸により脱灰処理する工程が行われる限り、(a)のアルカリにより脱タンパク処理する工程および(b)の酸により脱灰処理する工程は、それぞれ2回以上行ってもよい。(c)の工程の前に酸により脱灰処理を行うことにより、得られるβ−キチンが物性的にもろくなり、後の粉砕加工が容易となる。なお、β−キチンの精製度および製造効率を考慮すると、β−キチン含有材料を精製する工程において、(a)の工程および(b)の工程を1回ずつ行う、または、(a)の工程を2回続けて行い、次いで(b)の工程を行う、あるいは、(b)の工程の後に(a)の工程を2回続けて行い、次いで(b)の工程を行って処理することが好ましい。
本発明の製造方法に含まれ得る他の工程としては、洗浄工程、脱色工程等が挙げられ、これらの工程は必要に応じて適宜加えることができる。
洗浄工程は、上記(a)および(b)の工程間、ならびに(b)の工程の後に行うことが好ましく、水を用いて行うことが好ましい。特に、(a)の工程の後に(b)の工程を行う前、または(b)の工程の後に(a)の工程を行う前、および(b)の工程を行った後に(c)の工程を行う前には、複数回、たとえば2回〜5回程度繰り返して行うことが好ましい。
水による洗浄は、水道水を用いて行ってもよく、蒸留水、脱イオン水等の精製水を用いて行ってもよい。また、β−キチン含有原料1kg(湿重量)あたり、1回につき、5L〜20L程度の水で洗浄することが好ましい。
脱色工程は、たとえば、上記(b)の工程の後洗浄し、(c)の工程の前に加えることができる。脱色はいずれの方法で行ってもよく、たとえば、塩素系漂白剤、酸素系漂白剤、還元系漂白剤等の漂白剤を用いて行うことができる。
本発明の上記製造方法により、β−キチン含有材料を出発原料として、精製されたβ−キチンの粉末(以下、「本発明のβ−キチン粉末」ともいう)を得ることができる。
本発明のβ−キチン粉末は、N−アセチル化度がほぼ0.9であって、脱アセチル化はほとんど認められず、ローリー法により定量される残存タンパク質量が1重量%以下、乾式灰化法により定量される残存灰分量が1重量%以下に精製されている。
乾式粉砕工程を、ハンマーミル、転動ボールミル、サイクロンミルを用いて行う場合、または対向気流乾式粉砕により行う場合には、平均粒子径が10μm〜300μm程度の微細なβ−キチン粉末を得ることができるため、後述する湿式解繊処理に際し、水に分散しやすく好ましい。なお、前記平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布計により測定される。
本発明のβ−キチン粉末は、ガラス製容器、プラスチック製容器やプラスチック製の袋体等に収納し、室温で安定に保存することができ、後述する解繊処理にそのまま供することができるため、保存性および取扱い性に優れる。
3.β−キチンナノファイバーの製造
本発明はまた、上記製造方法により得たβ−キチン粉末を湿式解繊処理する工程を含む、β−キチンナノファイバーの製造方法を提供する。
本発明における湿式解繊処理とは、本発明のβ−キチン粉末を水に分散し、または本発明のβ−キチン粉末に水を加えながら行う解繊処理をいい、好ましくは、ウォータージェットを用いた解繊処理が挙げられる。ウォータージェットを用いた解繊処理とは、具体的には、ウォータージェットを用いた超微細化装置を用いて解繊処理を行うことをいう。ウォータージェットとは、高圧水を細いノズルから吐出する技術であり、これを用いた超微細化処理装置では、最高圧392MPa程度の超高圧水を小径ノズルから噴射し、高速水噴流の運動エネルギーを利用して超微細化を行う。ウォータージェットを用いた超微細化装置としては、「スターバースト」(株式会社スギノマシン製)が挙げられる。
本発明においては、上記した本発明の製造方法により得たβ−キチン粉末を水に均一になるように混合攪拌して分散し、好ましくは「スターバースト」(株式会社スギノマシン製)等のウォータージェットを用いた超微細化装置にて、高圧ポンプを介して200MPa以上の高圧に加圧し、440m/sec〜700m/secの高速で前記β−キチン粉末の分散液を衝突させることにより、湿式解繊処理を行う。なお、精製したβ−キチンを乾燥し、乾式粉砕して微粒粉末とした後、上記湿式解繊処理を行うことが、原料の保管や大量生産する上で好ましい。
本発明における上記湿式解繊処理は、湿式解繊処理に供する水分散液中のβ−キチン粉末添加量、すなわちβ−キチン粉末の仕込み量を0.5重量%〜10重量%とし、1回あたり、通常室温にて、1分〜4時間程度行い、2回〜20回繰り返して行うことが好ましい。
なお、得られるβ−キチンナノファイバー分散液の透明性の観点からは、上記の湿式解繊処理は5回〜20回繰り返して行うことがより好ましく、10回程度繰り返して行うことがさらに好ましい。
本発明の上記製造方法により、精製されたβ−キチンはミクロフィブリル単位にまで均一に解繊され、上記の通り、3nm〜20nm、好ましくは5nm〜15nm、より好ましくは5nm〜10nmの均一なファイバー径と、1μm以上の繊維長を有し、ゲル浸透クロマトグラフィー−高速液体クロマトグラフィー法により測定される平均分子量が100kDa〜1400kDaであり、好ましくは200kDa〜1400kDa、より好ましくは300kDa〜1350kDa、さらに好ましくは400kDa〜1300kDa、特に好ましくは800kDa〜1300kDaであるβ−キチンナノファイバーを得ることができる。
また、上記したように、本発明のβ−キチン粉末を製造する際、(b)の酸により脱灰処理する工程を、高濃度の強酸、好ましくは3M〜6M程度の塩酸を用いて行って得られたβ−キチン粉末を、湿式解繊処理することにより、ゲル浸透クロマトグラフィー−高速液体クロマトグラフィー法により測定される平均分子量が700kDa程度以下のβ−キチンナノファイバーを好適に得ることができる。
上記平均分子量が700kDa程度以下のβ−キチンナノファイバーは、(b)の酸により脱灰処理する工程において、0.1M〜1M程度の酸(好ましくは塩酸等)により脱灰処理した後、さらに3M〜6M程度の強酸(好ましくは塩酸等)による処理を行って得られたβ−キチン粉末を湿式解繊処理することにより、より好適に得ることができる。
特に、(b)の酸により脱灰処理する工程を、6M程度の濃度の塩酸等強酸を用いて、6時間〜120時間程度行って得られたβ−キチン粉末を、湿式解繊処理することにより、ゲル浸透クロマトグラフィー−高速液体クロマトグラフィー法により測定される平均分子量が10kDa以上100kDa未満のβ−キチンナノファイバーを好適に得ることができる。
上記平均分子量が10kDa以上100kDa未満のβ−キチンナノファイバーは、(b)の酸により脱灰処理する工程において、0.1M〜1M程度の酸(好ましくは塩酸等)により脱灰処理した後、さらに6M程度の強酸(好ましくは塩酸等)による処理を6時間〜120時間程度行って得られたβ−キチン粉末を湿式解繊処理することにより、より好適に得ることができる。
本発明の製造方法により得られたβ−キチンナノファイバーは、上記の通り、水に良好に分散して容易に膨潤して増粘し、透明性の高いゲルを生成することができる。
さらに本発明について、実施例により詳細に説明する。
[実施例1]β−キチン粉末の製造
三陸産スルメイカ(Todarodes pacificus)から分別した中骨を軽く水切りし(湿重量=2.0kg)、そのまま下記(a)の工程に供し、蒸留水20Lで1回洗浄した後、再度(a)の工程を行って処理した。次いで蒸留水20Lで4回洗浄し、下記(b)の工程を行って処理し、精製した。次いで、蒸留水20Lで4回洗浄後、下記(c)および(d)の工程を行って処理した。
(a)アルカリにより脱タンパク処理する工程:1M水酸化ナトリウム水溶液10Lを加え、92℃〜93℃(緩やかな沸騰状態)で、ときどき撹拌しながら2時間加熱した。
(b)酸により脱灰処理する工程:0.1M塩酸水溶液10Lを加え、15℃で16時間静置した。
(c)乾燥工程:温熱乾燥機にて、65℃で16時間乾燥した。
(d)乾式粉砕工程:転動ボールミル粉砕機(架台;ユニバーサルボールミル 型式:UB32(ヤマト科学株式会社製)、粉砕容器;ポットミル「HD−A−5」(株式会社ニッカトー製))により、室温で12時間乾式粉砕した。
[比較例1]β−キチン粉末の製造
β−キチン含有材料の精製工程において、(b)の工程の後に蒸留水20Lで4回洗浄した後、(a)の工程を行い、蒸留水20Lで1回洗浄し、再度(a)の工程を行って処理した他は、実施例1と同様に処理して、β−キチン粉末を得た。
[比較例2]β−キチン粉末の製造
β−キチン含有材料の精製工程において、(a)の工程の後に蒸留水20Lで3回洗浄した後、(b)の工程を行い、蒸留水20Lで4回洗浄し、再度(a)の工程を行って処理した他は、実施例1と同様に処理して、β−キチン粉末を得た。
実施例1ならびに比較例1および2の製造方法において、(d)の乾式粉砕処理を行う前のβ−キチンの回収率および成分組成を表1および2に示す。
なお、β−キチン中のタンパク質量はローリー法により定量し、牛血清アルブミン相当量として示した。灰分量は乾式灰化法により定量した。
実施例1ならびに比較例1および2の製造方法により得られたβ−キチン粉末の状態を観察し、外観および500μmメッシュの篩を通した際に篩上に残った残渣量を表3に示した。
表1、2に示されるように、実施例1ならびに比較例1および2の製造方法により、残存タンパク質および残存灰分が1重量%以下に精製されたβ−キチンが得られた。しかし、表3に示されるように、実施例1の製造方法では、良好に粉砕されたβ−キチン粉末が得られ、そのほとんどが500μmの篩を通過し、篩上に残存する粉末はわずかであった。
これに対し、比較例1、2の製造方法では、β−キチンの粉砕は不十分であり、乾式粉砕後に、500μmの篩を通らない繊維状物が多く残存した。
[実施例2]β−キチン粉末の製造
三陸産スルメイカ(Todarodes pacificus)から分別した中骨を軽く水切りし(湿重量=2.0kg)、下記(a)の工程を行い、蒸留水20Lで4回洗浄した後、下記(b)の工程を行って処理し、精製した。次いで、蒸留水20Lで4回洗浄後、下記(c)および(d)の工程を行って処理した。
(a)アルカリにより脱タンパク処理する工程:0.1M水酸化ナトリウム水溶液10Lに浸漬し、50℃で2時間ときどき撹拌しながら処理した。
(b)酸により脱灰処理する工程:0.1M塩酸水溶液10Lに浸漬し、25℃で16 時間静置して処理した。
(c)乾燥工程:温熱乾燥機にて65℃で16時間乾燥した。
(d)乾式粉砕工程:カッターミル粉砕機(「MF10.1ベーシック連続ミル/MF
10.1カッター式ヘッド」、IKA社製)にて室温で乾式粉砕した。
[実施例3−1〜3−6]β−キチン粉末の製造
三陸産スルメイカ(Todarodes pacificus)から分別した中骨を軽く水切りし(湿重量
=2.0kg)、下記(a)の工程を行い、蒸留水20Lで4回洗浄した後、下記(b)の工程を行って処理し、精製した。次いで、蒸留水20Lで4回洗浄後、下記(c)および(d)の工程を行って処理した。
(a)アルカリにより脱タンパク処理する工程:2M水酸化ナトリウム水溶液10Lに浸漬し、50℃で2時間ときどき撹拌しながら処理した。
(b)酸により脱灰処理する工程:0.1M塩酸水溶液10Lに浸漬し、25℃で16時間静置して処理した。
(c)乾燥工程:温熱乾燥機にて65℃で16時間乾燥した。
(d)乾式粉砕工程:表4に示す粉砕機を用いて、それぞれ室温で乾式粉砕した。
[実施例4]β−キチン粉末の製造
三陸産アカイカ(Ommastrephes bartramii (Lesueur))から分別した中骨を軽く水切りし(湿重量=2.0kg)、下記(a)の工程を行い、蒸留水20Lで4回洗浄した後、下記(b)の工程を行って処理し、精製した。次いで、蒸留水20Lで4回洗浄後、下記(c)および(d)の工程を行って処理した。
(a)アルカリにより脱タンパク処理する工程:1M水酸化ナトリウム水溶液10Lに浸漬し、90℃で1時間ときどき撹拌しながら処理した。
(b)酸により脱灰処理する工程:1M塩酸水溶液10Lに浸漬し、15℃で16時間静置して処理した。
(c)乾燥工程:温熱乾燥機にて65℃で16時間乾燥した。
(d)乾式粉砕工程:カッターミル粉砕機(「MF10.1ベーシック連続ミル/MF10.1カッター式ヘッド」、IKA社製)にて室温で乾式粉砕した。
実施例2、実施例3−1〜3−5および実施例4の製造方法により得られたβ−キチン粉末について、残存タンパク質量、残存灰分量、平均粒子径、結晶化度およびN−アセチル化度を、それぞれ下記の方法により求め、表5に示した。なお、試薬として市販されているβ−キチン(生化学バイオビジネス株式会社製)、および東南アジア産イカの中骨より調製された市販のβ−キチン(ヤヱガキ醗酵技研株式会社製)をそれぞれ比較例3、4とした。
(1)残存タンパク質量:ローリー法により定量し、牛血清アルブミン相当量として示した。
(2)残存灰分量:乾式灰化法により定量した。
(3)平均粒子径:レーザー回折式粒度分布計(「Microtrac X100」、日機装株式会社製)により測定した。
(4)結晶化度:X線回折装置(「JDX−3530」、日本電子株式会社製)を用いてCuKα線によるX線回折を行い、下記(1)式により求めた。
(5)N−アセチル化度:C/Nコーダー(DKSH社製)による定量的元素分析により求めた。
本発明の製造方法により得られたβ−キチン粉末は、残存タンパク質量および残存灰分量はわずかで高度に精製されており、また、N−アセチル化度は0.9以上で、脱アセチル化はほとんど見られなかった(実施例2、3−1〜3−5、4)。
本発明の実施例3−2または3−3の製造方法では、(d)の工程にてハンマーミル粉砕機または転動ボールミル粉砕機を用いて乾式粉砕を行ったが、得られたβ−キチン粉末において平均粒子径の低下が見られ、特に実施例3−3の製造方法により、β−キチン粉末の平均粒子径および結晶化度の低下が見られた。
すなわち、本発明の製造方法において、乾式粉砕処理の種類によっては、結晶化度および平均粒子径の低下が見られ、解繊処理効率の点でより有利なβ−キチン粉末が得られることが示された。
[実施例5]β−キチンナノファイバーの製造
実施例3−1の製造方法により得られたβ−キチン粉末を、「スターバースト」(株式会社スギノマシン製)にて、仕込み量(前記「スターバースト」に供する水分散液中のβ−キチン粉末添加濃度、以下同じ)=2重量%、室温で10回湿式解繊し、β−キチンナノファイバー分散液を得た。
[実施例6]β−キチンナノファイバーの製造
実施例3−5の製造方法により得られたβ−キチン粉末を、「スターバースト」(株式会社スギノマシン製)にて、仕込み量=2重量%、室温で10回湿式解繊し、β−キチンナノファイバー分散液を得た。
[実施例7]β−キチンナノファイバーの製造
実施例4の製造方法により得られたβ−キチン粉末を、「スターバースト」(株式会社スギノマシン製)にて、仕込み量=2重量%、室温で10回湿式解繊し、β−キチンナノファイバー分散液を得た。
[実施例8]β−キチンナノファイバーの製造
実施例4の製造方法において、(d)の工程で使用したカッターミル粉砕機を対向気流乾式粉砕機(「ドライバースト」、株式会社スギノマシン製)に代えて調製したβ−キチン粉末を、「スターバースト」(株式会社スギノマシン製)にて、仕込み量=2重量%、室温で10回湿式解繊し、β−キチンナノファイバー分散液を得た。
[比較例5]β−キチンナノファイバーの製造
比較例4のβ−キチン粉末を「スターバースト」(株式会社スギノマシン製)にて、仕込み量=2重量%、室温で10回湿式解繊し、β−キチンナノファイバー分散液を得た。
実施例5の製造方法により得られたβ−キチンナノファイバー分散液について、走査型電子顕微鏡および透過型電子顕微鏡観察を行い、観察された画像を図1および2に示した。各電子顕微鏡による観察は、以下の通り行った。同様に、比較例5により製造したβ−キチンナノファイバー分散液の走査型電子顕微鏡による観察結果(ただし、倍率=30000倍)を、図3に示した。
(1)走査型電子顕微鏡観察
(i)使用機種:「JSM-7001F」(日本電子株式会社製)
(ii)試料の調製方法:実施例5および比較例5の製造方法により得られた各β−キチンナノファイバー分散液を遠心分離後、ペレットをt−ブチルアルコールに懸濁して超音波により分散し、再び遠心分離して上清を除去した。前記操作を数回繰り返した後、分散液を−80℃で凍結し、凍結乾燥を行った。前記凍結乾燥物に対して、オスミウムコーターにより、四酸化オスミウム膜(3nm)を試料表面に形成させ、観察用試料とした。
(iii)倍率:60000倍
(2)透過型電子顕微鏡観察
(i)使用機種:「JEM-2100」(日本電子株式会社製)
(ii)試料の調製方法:実施例5の製造方法により得られたβ−キチンナノファイバー分散液を水で0.02重量%に希釈懸濁後、適量をカーボン蒸着マイクログリッド上に点着し、1分後に余分な懸濁液を除去し、2重量%酢酸ウラニル水溶液により5分間染色して、観察用試料を調製した。
(iii)倍率:40000倍
図1に示されるように、実施例5の製造方法により、β−キチンの繊維がほぼ完全に解繊されたナノファイバーが得られた。また、図2から、実施例5の製造方法により得られたβ−キチンナノファイバーは、約5nmのほぼ均一なファイバー径と、1μm以上の長さを有し、ミクロフィブリル単位にまで均一に解繊されていることが認められた。
一方、図3に示されるように、比較例5の製造方法により得られたβ−キチンナノファイバーについては、解繊が不十分であった。
[実施例9−1、9−2、9−3]β−キチンナノファイバーの製造
三陸産スルメイカ(Todarodes pacificus)から分別した中骨を軽く水切りし(湿重量=2.0kg)、下記(b)の工程を行った後洗浄(蒸留水20Lで4回洗浄)し、下記(a)の工程を行い、次いで洗浄(蒸留水20Lで1回)し、再度下記(a)の工程を行って処理し、洗浄(蒸留水20Lで4回)した。次いで、下記(b)の工程を行って処理し、洗浄(蒸留水20Lで4回)後、下記(c)および(d)の工程を行って処理し、β−キチン粉末を得た。
(a)アルカリにより脱タンパク処理する工程:実施例1の製造方法における(a)の工程と同一の条件で行った。
(b)酸により脱灰処理する工程:実施例1の製造方法における(b)の工程と同一条件で行った。
(c)乾燥工程:温熱乾燥機にて65℃で16時間乾燥した。
(d)乾式粉砕工程:微細粉砕機(「サンプルミルTASM−1」、東京アトマイザー製造株式会社製)にて、室温で12時間行った。
次いで、得られたβ−キチン粉末を、「スターバースト」(株式会社スギノマシン製)にて、仕込み量=1重量%、室温で湿式解繊処理をそれぞれ2回、5回および10回繰り返し、β−キチンナノファイバー分散液を得た(実施例9−1、9−2および9−3)。
[実施例10−1、10−2、10−3]β−キチンナノファイバーの製造
実施例1の製造方法により得られたβ−キチン粉末を、「スターバースト」(株式会社スギノマシン製)にて、仕込み量=1重量%、室温で湿式解繊処理をそれぞれ2回、5回および10回繰り返し、β−キチンナノファイバー分散液を得た(実施例10−1、10−2および10−3)。
[比較例6−1、6−2、6−3]β−キチンナノファイバーの製造
比較例1の製造方法により得られたβ−キチン粉末を、「スターバースト」(株式会社スギノマシン製)にて、仕込み量=1重量%、室温で湿式解繊処理をそれぞれ2回、5回および10回繰り返し、β−キチンナノファイバー分散液を得た(比較例6−1、6−2および6−3)。
[比較例7−1、7−2、7−3]β−キチンナノファイバーの製造
比較例2の製造方法により得られたβ−キチン粉末を、「スターバースト」(株式会社スギノマシン製)にて、仕込み量=1重量%、室温で湿式解繊処理をそれぞれ2回、5回および10回繰り返し、β−キチンナノファイバー分散液を得た(比較例7−1、7−2および7−3)。
実施例9−1〜9−3および10−1〜10−3の各製造方法により得られたβ−キチンナノファイバー分散液、ならびに比較例6−1〜6−3、および7−1〜7−3の各製造方法により得られたβ−キチンナノファイバー分散液を約1重量%分散液となるように水で希釈したものについて、外観、β−キチン濃度および粘度を表6に示す。なお、β−キチンナノファイバー分散液のβ−キチン濃度は常圧加熱乾燥法により固形分量として定量し、粘度は、医薬部外品原料規格2006の「粘度測定法 第2法 回転粘度計法」に準拠し、B型回転粘度計「BROOKFIELD DIGITAL VISCOMETER MODEL DV−II」(ブルックフィールド社製)を用いて、25℃、1000mPa・s以下ではs62番スピンドル、1000mPa・s以上ではs64番スピンドル、回転数=50rpmの条件で測定した。
また、上記実施例および比較例の各製造方法により得られたβ−キチンナノファイバー分散液について、600nmの光の透過率を測定し、製造されたβ−キチンナノファイバーの平均分子量を測定した。
なお、600nmの光の透過率は、0.05重量%のβ−キチンナノファイバー分散液について、医薬部外品原料規格2006「紫外可視吸光度測定法」に準拠し、分光光度計(「紫外可視分光光度計V−630 BIO型」、日本分光株式会社製)にて、10mm石英セルを用いてイオン交換水を対照として測定し、平均分子量は、塩化リチウム/N,N−ジメチルアセトアミドを溶媒とし、ゲル浸透クロマトグラフィー−高速液体クロマトグラフィー(GPC−HPLC)法により、下記条件で測定し、標準試料プルランの検量線から得られる相対分子量(重量平均分子量)を解析ソフトにより算出して求めた。
<前処理手順>
β−キチンナノファイバー分散液を、乾燥重量で10mgから1mgになるようにバイアル瓶に秤量し、凍結乾燥機で24時間凍結乾燥した後、定温乾燥機にて105℃で1時間乾燥させた。前記のβ−キチンナノファイバー乾燥試料に対して、N,N−ジメチルアセトアミド(超脱水)を5mg/mLから0.5mg/mLになるように加えて、25℃、1000rpmで24時間振とうした後、塩化リチウムを5(w/v)%となるように加えて、さらに25℃、1000rpmで24時間振とうした。その溶液を孔径0.45μmのシリンジフィルターでろ過した後、GPC−HPLCで分析した。
<GPC分析条件>
カラム:Shodex GPC KD−806M(φ8mm×300mm)+KD−803(φ8mm×300mm )(ガードカラム:KD−G)
移動相:N,N−ジメチルアセトアミド(0.5(w/v)% 塩化リチウム含有)
測定温度:50 ℃
流速:0.5mL/min
注入量:50μL
試料濃度:0.5mg/mL〜5mg/mL
標準試料:プルラン(Shodex Pシリーズ)
<HPLC使用機器>
システムコントローラー;SHIMADZU SCL−10A VP
送液装置;SHIMADZU LC−20AT
脱気装置;SHIMADZU DGU−20A3R
オートサンプラー;SHIMADZU SIL−10AD VP
カラムオーブン;SHIMADZU CTO−10AS VP
検出器;示差屈折率計「Shodex RI−101」
データ処理ソフト;SHIMADZU LabSolutions GPC
β−キチンナノファイバーの0.05重量%分散液における600nmの光の透過率、および平均分子量の測定結果についても、表6に併せて示した。
また、実施例10−1、3および比較例6−1、3の各製造方法により得られたβ−キチンナノファイバー分散液について、下記の通り、急速凍結ディープエッチ・レプリカ法を用い、高角度環状暗視野走査透過型電子顕微鏡による観察を行った。
(1)試料の調製方法:実施例10−1、3および比較例6−1、3の各製造方法により得られたβ−キチンナノファイバー分散液を、メタルコンタクト法で急速凍結した。すなわち、液体ヘリウムで冷却した純銅ブロックの表面に試料を接触させることで凍結し、凍結試料はレプリカ作製を行なうまで液体窒素中で保存した。凍結試料をフリーズフラクチャー装置(「BAF400D」、Balzers社製)の真空チャンバーに入れ、−85℃〜−90℃で凍結割断した後、同じ温度で10分間静置して割断表面を凍結乾燥させることによるエッチング処理を行なった。試料を回転させながら、試料の割断・エッチング表面に対して角度25度に設置した蒸着銃より白金/カーボンを6.5nmの厚さに蒸着してレプリカ膜を作製し(ロータリーシャドウイング法)、続いて角度90度の蒸着銃よりカーボンを27nmの厚さに蒸着してレプリカ膜を補強した。レプリカ膜で被覆された試料を室温の大気中に取り出し、ギ酸もしくはN,N−ジメチルアセトアミド/塩化リチウムに一晩浸すことによってβ−キチンナノファイバーを除去し、水で洗浄した後、白金/カーボン製のレプリカ膜のみを電子顕微鏡用グリッドの上に回収した。
(2)レプリカの観察:高角度環状暗視野走査透過型電子顕微鏡(「Tecnai G2 F20」、FEI社製、加速電圧200kV)を用いて行った。撮影の直接倍率は、56000倍および110000倍である。
実施例10−3および比較例6−3の各製造方法により得られたβ−キチンナノファイバー分散液について、エッチングが浅い場合の観察結果を図4に、実施例10−1、10−3および比較例6−1、6−3の各製造方法により得られたβ−キチンナノファイバー分散液について、エッチングが深い場合の観察結果を図5、6に示した。
表6に示されるように、実施例9−1〜9−3および実施例10−1〜10−3の各製造方法により得られたβ−キチンナノファイバー分散液は、いずれも透明ゲル状で、0.05重量%分散液についての600nmの光の透過率は、いずれも70%を超えており、また、いずれも良好な増粘性を示した。
これに対し、比較例6−1〜6−3および比較例7−1〜7−3の各製造方法により得られたβ−キチンナノファイバー分散液は、いずれも白濁スラリー状であり、0.05重量%分散液についての600nmの光の透過率は、いずれも70%未満であった。また、実施例9−1〜9−3および実施例10−1〜10−3の各製造方法により得られたβ−キチンナノファイバー分散液と同程度のβ−キチン濃度を示すにもかかわらず、前記実施例の製造方法により得られたβ−キチンナノファイバー分散液に比べて低粘度であった。
また、図4〜6に示す急速ディープエッチ・レプリカ法で観察されるβ−キチンナノファイバーのレプリカの画像から、実施例10−1および10−3の各製造方法により得られたβ−キチンナノファイバーは、比較例6−1および6−3の各製造方法により得られたβ−キチンナノファイバーに比べて、著しく解繊が進んでいることが認められた。また湿式解繊処理を10回行った実施例10−3の製造方法により、湿式解繊処理を2回行った実施例10−1の製造方法に比べ、解繊が進行することが認められた。実施例10−1(湿式解繊処理2回)および実施例10−3(湿式解繊処理10回)の製造方法により得られたβ−キチンナノファイバーにより調製したレプリカの平均的なファイバー径は、10nm〜15nmの範囲にあることが認められた。急速ディープエッチ・レプリカ法で観察されるレプリカには平均6nmの白金蒸着がなされており、これからβ−キチンナノファイバーの実際のファイバー径は、十分に10nm以下であると推測される。
一方、比較例6−1および6−3の製造方法により得られたβ−キチンナノファイバー分散液では、ファイバー径が20nmを超えるものが多く、均一に解繊されていないことが認められた。
[実施例11−1、11−2]β−キチンナノファイバーの製造
三陸産スルメイカ(Todarodes pacificus)から分別した中骨を軽く水切りし(湿重量=2.0kg)、そのまま下記(a)の工程に供し、蒸留水20Lで1回洗浄した後、再度(a)の工程を行って処理した。次いで蒸留水20Lで4回洗浄し、下記(b)(1)の工程を行って処理し、次いで蒸留水20Lで4回洗浄後、下記(b)(2)の工程を行って処理し、精製した。次いで、洗浄(蒸留水20Lで4回)後、(c)および(d)の工程を行って処理した。
(a)アルカリにより脱タンパク処理する工程:1M水酸化ナトリウム水溶液10Lを加え、92℃〜93℃(緩やかな沸騰状態)で、ときどき撹拌しながら2時間加熱した。
(b)(1)酸により脱灰処理する工程:0.1M塩酸水溶液10Lを加え、室温で25時間静置した。
(b)(2)酸により脱灰処理する工程:3M塩酸水溶液10Lを加え、室温で3時間(実施例11−1)または48時間(実施例11−2)静置した。
(c)乾燥工程:温熱乾燥機にて、65℃で16時間乾燥した。
(d)乾式粉砕工程:微細粉砕機(「サンプルミルTASM−1」、東京アトマイザー製造株式会社製)にて、室温で12時間行った。
次いで、得られた各β−キチン粉末を、「スターバースト」(株式会社スギノマシン製)にて、仕込み量=1重量%、室温でそれぞれ湿式解繊処理を10回繰り返し、β−キチンナノファイバー分散液を得た。
[実施例12−1、12−2]β−キチンナノファイバーの製造
三陸産スルメイカ(Todarodes pacificus)から分別した中骨を軽く水切りし(湿重量=2.0kg)、そのまま下記(a)の工程に供し、蒸留水20Lで1回洗浄した後、再度(a)の工程を行って処理した。次いで蒸留水20Lで4回洗浄し、下記(b)(1)の工程を行って処理し、次いで蒸留水20Lで4回洗浄後、下記(b)(2)の工程を行って処理し、精製した。次いで、洗浄(蒸留水20Lで4回)後、(c)および(d)の工程を行って処理した。
(a)アルカリにより脱タンパク処理する工程:1M水酸化ナトリウム水溶液10Lを加え、92℃〜93℃(緩やかな沸騰状態)で、ときどき撹拌しながら2時間加熱した。
(b)(1)酸により脱灰処理する工程:0.1M塩酸水溶液10Lを加え、15℃で25時間静置した。
(b)(2)酸により脱灰処理する工程:6M塩酸水溶液10Lを加え、室温で3時間(実施例12−1)または48時間(実施例12−2)静置した。
(c)乾燥工程:温熱乾燥機にて、65℃で16時間乾燥した。
(d)乾式粉砕工程:微細粉砕機(「サンプルミルTASM−1」、東京アトマイザー製造株式会社製)にて、室温で12時間行った。
次いで、得られた各β−キチン粉末を、「スターバースト」(株式会社スギノマシン製)にて、仕込み量=1重量%、室温でそれぞれ湿式解繊処理を10回繰り返し、β−キチンナノファイバー分散液を得た。
実施例11−1、11−2および12−1、12−2の各製造方法により得られたβ−キチンナノファイバー分散液を約1重量%分散液となるように水で希釈したものについて、外観、β−キチン濃度および粘度を表7に示す。なお、β−キチンナノファイバー分散液のβ−キチン濃度は常圧加熱乾燥法により固形分量として定量し、粘度は、医薬部外品原料規格2006の「粘度測定法 第2法 回転粘度計法」に準拠し、B型回転粘度計「BROOKFIELD DIGITAL VISCOMETER MODEL DV−II」(ブルックフィールド社製)を用いて、25℃、s64番スピンドル、回転数=50rpmの条件で測定した。
また、上記実施例の製造方法により得られたβ−キチンナノファイバー分散液について、600nmの光の透過率を測定し、製造されたβ−キチンナノファイバーの平均分子量を測定した。
なお、600nmの光の透過率は、0.05重量%のβ−キチンナノファイバー分散液について、医薬部外品原料規格2006「紫外可視吸光度測定法」に準拠し、分光光度計(「紫外可視分光光度計V−630 BIO型」、日本分光株式会社製)にて、10mm石英セルを用いてイオン交換水を対照として測定した。平均分子量は、上記と同様に、GPC−HPLC法により測定した。
β−キチンナノファイバーの0.05重量%分散液における600nmの光の透過率、および平均分子量の測定結果についても、表7に併せて示した。
表7に示されるように、実施例11−1、11−2および12−1、12−2の各製造方法で得られたβ−キチンナノファイバーは、94kDa〜659kDaと、いずれも比較的低分子量を示した。これら各β−キチンナノファイバーの約1重量%分散液は、いずれも透明ゲル状で、0.05重量%分散液についての600nmの光の透過率は、87.8%〜98.9%と、高い透明性を示した。また、β−キチンナノファイバー分散液におけるβ−キチン濃度を定量したところ、0.79重量%〜0.84重量%であり、前記分散液は、1000mPa・s〜3000mPa・sを超える程度の粘度を示した。
なお、表6に示す実施例9−3および10−3の粘度および平均分子量の測定結果と、表7に示す粘度および平均分子量の測定結果から、平均分子量と粘度の関係を図7に示した。図7より、平均分子量が低下すると粘度も低下する傾向が見られた。
以上詳述したように、本発明により、キチンミクロフィブリル単位にまで均一に解繊され、水に対する分散性が良好なβ−キチンナノファイバーを提供することができる。
本発明のβ−キチンナノファイバーは、水に分散させると容易に膨潤して増粘し、透明性の高いゲルを生成することができるため、機能性食品、化粧品、製剤、再生医療等の分野における応用が期待される。
また、本発明により、上記β−キチンナノファイバーの製造に好適に使用することができ、保存性および取扱い性が良好なβ−キチン粉末の製造方法を提供することができる。
本出願は、わが国で出願された特願2014−133274を基礎としており、その内容は、本明細書にすべて包含されるものである。

Claims (13)

  1. ファイバー径が3nm〜20nmであり、平均分子量が100kDa〜1400kDaである、β−キチンナノファイバー。
  2. 0.05重量%の水分散液における600nmの光の透過率が70%以上である、請求項1に記載のβ−キチンナノファイバー。
  3. 0.69重量%〜0.84重量%の水分散液の25℃における粘度が800mPa・s〜35000mPa・sである、請求項1に記載のβ−キチンナノファイバー。
  4. ファイバー径が3nm〜20nmであり、平均分子量が10kDa以上100kDa未満である、β−キチンナノファイバー。
  5. 0.05重量%の水分散液における600nmの光の透過率が80%以上である、請求項4に記載のβ−キチンナノファイバー。
  6. 0.69重量%〜0.84重量%の水分散液の25℃における粘度が400mPa・s〜10000mPa・sである、請求項4に記載のβ−キチンナノファイバー。
  7. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のβ−キチンナノファイバーを製造するためのβ−キチン粉末の製造方法であって、β−キチン含有材料を出発原料とし、以下の(a)〜(d)の工程を含み、さらに(a)、(b)、(c)、(d)の順序で処理を行うことを特徴とする、製造方法:
    (a)アルカリにより脱タンパク処理する工程、
    (b)酸により脱灰処理する工程、
    (c)(b)の工程による処理物を乾燥する工程、
    (d)(c)の工程による乾燥物を乾式粉砕する工程。
  8. β−キチン含有材料がイカの中骨である、請求項7に記載の製造方法。
  9. 請求項7または8に記載の製造方法により得られる、β−キチン粉末。
  10. 請求項9に記載のβ−キチン粉末を湿式解繊処理する工程を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のβ−キチンナノファイバーの製造方法。
  11. 湿式解繊処理がウォータージェットを用いた解繊処理である、請求項10に記載の製造方法。
  12. β−キチン含有材料を出発原料とし、以下の(a)〜(d)の工程を含む処理を(a)、(b)、(c)、(d)の順序で行って得られたβ−キチン粉末を、湿式解繊処理する工程を含む、請求項4〜6のいずれか1項に記載のβ−キチンナノファイバーの製造方法。
    (a)アルカリにより脱タンパク処理する工程、
    (b)酸により脱灰処理する工程
    (c)(b)の工程による処理物を乾燥する工程、
    (d)(c)の工程による乾燥物を乾式粉砕する工程。
  13. β−キチン含有材料を出発原料とし、以下の(a)〜(d)の工程を(a)、(b)、(c)、(d)の順序で含む製造方法により製造されるβ−キチン粉末を湿式解繊処理して得られる、β−キチンナノファイバー。
    (a)アルカリにより脱タンパク処理する工程、
    (b)酸により脱灰処理する工程、
    (c)(b)の工程による処理物を乾燥する工程、
    (d)(c)の工程による乾燥物を乾式粉砕する工程。
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