以下、図面とともに、本発明による光学シャッタの実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
図1は、本発明による光学シャッタの一実施形態の構成を示す側面図である。図2は、図1に示した光学シャッタにおける光学ブロックを構成する4個のブロックを分解して示す側面図である。また、図3は、図1に示した光学シャッタの構成(立体構造)を示す斜視図である。なお、以下の各図においては、説明の便宜のため、必要に応じてxyz直交座標系を示している。
本実施形態における光学シャッタ1Aは、所定波長の光をON/OFF制御の対象光とし、所定の軸を光透過軸Axとして構成された光学素子であり、光学ブロック10と、第1波長選択フィルタ23と、第2波長選択フィルタ24とを備えて構成されている。光学ブロック10は、ON/OFF制御の対象光の波長を含む波長領域の光を透過させる材料によって形成され、対象光が光透過軸Axの方向に沿って透過するように構成される。なお、図1において、光透過軸Axの方向は、z軸の正の方向と一致している。
第1波長選択フィルタ23は、所定の光透過波長特性(波長選択特性)を有する干渉フィルタによって構成され、光学ブロック10の内部に設定された第1フィルタ面13に設けられている。第1フィルタ面13は、その法線が光透過軸Axに対して第1角度αをなすように設定されている。
第2波長選択フィルタ24は、所定の光透過波長特性を有する干渉フィルタによって構成され、第1波長選択フィルタ23に対して光透過軸Axの後方側に位置するとともに、光学ブロック10の内部に設定された第2フィルタ面14に設けられている。第2フィルタ面14は、その法線が光透過軸Axに対して第2角度βをなすとともに、第1フィルタ面13に対して非平行で角度α+βをなすように設定されている。
ここで、第1、第2波長選択フィルタ23、24が配置される第1、第2フィルタ面13、14の光透過軸Axに対する傾斜角度を示す第1、第2角度α、βは、いずれも0°以上の角度(α≧0°、β≧0°)として設定され、また、第1、第2角度α、βの少なくとも一方は正の角度として設定される。また、第1、第2角度α、βの両方が正の角度に設定されている場合、その傾斜方向は逆方向(図1の例では、x軸の正の方向、負の方向)である。また、このとき、第1、第2フィルタ面13、14のなす角度(第1、第2波長選択フィルタ23、24のなす角度)は、条件α+β>0°を満たしている。
図2は、図1に示した光学シャッタについて、その具体的な一構成例を示している。本構成例では、第2フィルタ面14の第2角度βは、第1フィルタ面13の第1角度αと一致する(β=α>0°)ように設定されている。また、このとき、第1、第2フィルタ面13、14のなす角度は、α+β=2αとなっている。
光学ブロック10における前方側の面である光入射面11は、光透過軸Axに対して垂直な平面となるように形成されており、光入射面11上には、所定波長の対象光に対する反射防止膜21が形成されている。また、光学ブロック10における後方側の面である光出射面12も同様に、光透過軸Axに対して垂直な平面となるように形成されており、光出射面12上には、所定波長の対象光に対する反射防止膜22が形成されている。このとき、光学ブロック10の光入射面11と、光出射面12とは、互いに平行な平面となっている。なお、光入射面11、光出射面12上における反射防止膜21、22などの反射制御膜については、不要であれば設けない構成としても良い。
本構成例における光学ブロック10は、具体的には、図2にその構成をz軸方向に分解して示すように、光透過軸Axの前方側(光入射面11側)から順に、入射側ブロック30、第1フィルタブロック35、第2フィルタブロック40、及び出射側ブロック45の4個のブロックを組み合わせて構成されている。これらの4個のブロック30、35、40、45は、それぞれ、互いに対向するとともに非平行な第1面及び第2面を有するように同一材料で形成された同一形状のブロックである。
これらのブロック30、35、40、45において、各ブロックの第1面は、その法線が光透過軸Axと一致して、光透過軸Axに対して垂直な平面となるように形成されている。また、各ブロックの第2面は、その法線が光透過軸Axに対して角度αをなすように形成されている。このとき、ブロックの第2面は、光透過軸Axに垂直な平面に対して角度αで傾斜した平面となっている。
入射側ブロック30の第1面31は光入射面11となっており、第1面31上には反射防止膜21が形成されている。入射側ブロック30の第2面32は第1フィルタブロック35の第2面37と接続されており、その接続面は、光学ブロック10の内部に設定された第1フィルタ面13となっている。図2においては、第1フィルタブロック35の第2面37上に、第1波長選択フィルタ23が形成されている。また、第1フィルタブロック35の第1面36は第2フィルタブロック40の第1面41と接続されている。
第2フィルタブロック40の第2面42は出射側ブロック45の第2面47と接続されており、その接続面は、光学ブロック10の内部に設定された第2フィルタ面14となっている。図2においては、第2フィルタブロック40の第2面42上に、第2波長選択フィルタ24が形成されている。出射側ブロック45の第1面46は光出射面12となっており、第1面46上には反射防止膜22が形成されている。また、このような構成において、第1、第2波長選択フィルタ23、24は、例えば、同一の波長選択特性(光透過波長特性)を有するバンドパスフィルタによって構成される。
このような構成の光学シャッタ1Aでは、第1波長選択フィルタ23及び第2波長選択フィルタ24が一体に設けられた光学ブロック10での光透過軸Axと、光学ブロック10に対する対象光の光入射軸との相対角度θを変更することで、光学ブロック10での対象光の透過のON/OFFを切り替えることができる。
例えば、対象光の波長をλとし、光透過軸Axと光入射軸とが一致している(相対角度θ=0°)ときに、第1、第2波長選択フィルタ23、24が、ともに波長λの対象光を透過するように、各波長選択フィルタでの光透過波長特性を設定する。このとき、光学シャッタ1Aは、対象光の透過についてON状態(開状態)にある。これに対して、対象光の透過のON/OFF切り替えのための相対角度(切替角度)θを、光透過軸Axと光入射軸とが相対角度θをなすときに、光学シャッタ1Aが対象光の透過についてOFF状態(閉状態)となるように適切に設定する。これにより、図1〜図3に示した構成の光学素子は、光学シャッタとして機能するようになる。なお、相対角度θの変更と、対象光の透過のON状態/OFF状態の切り替えとの関係については、上記した関係とは逆に設定されていても良い。また、対象光の透過のOFF状態については、光の透過率が0%である必要はなく、光学系の機能に影響が生じない程度の透過率で、光が透過することは許容される。
図4は、図1〜図3に示した光学シャッタ1Aにおけるシャッタ動作について示す図である。ここで、図1では、光学ブロック10での光透過軸Axと、光学ブロック10に対する波長λの対象光の光入射軸とが一致して、対象光が光学シャッタ1Aを透過するON状態を示したが、図4においては、光透過軸(一点鎖線)Axと、光入射軸(実線矢印)とが角度θをなすように相対角度が変更されて、対象光が光学シャッタ1Aを不透過となったOFF状態を示している。
このとき、第1、第2フィルタ面13、14の光透過軸Axに対する傾斜方向が逆方向になっているため、第1波長選択フィルタ23が配置されている第1フィルタ面13の法線と、対象光の光入射軸とのなす角度はφ=α+θとなり、一方、第2波長選択フィルタ24が配置されている第2フィルタ面14の法線と、対象光の光入射軸とのなす角度はφ=β−θとなる。そして、このように光透過軸Axと光入射軸との相対角度θを切り替えたときの第1、第2波長選択フィルタ23、24それぞれでの光透過波長特性の変化により、光学シャッタ1Aにおける対象光の透過のON/OFFが切り替えられる。
本実施形態による光学シャッタ1Aの効果について説明する。
図1〜図4に示した光学シャッタ1Aでは、所定波長λの対象光を透過させる光学材料からなる光学ブロック10と、光学ブロック10に対して一体に設けられた2個の波長選択用の干渉フィルタである第1波長選択フィルタ23、第2波長選択フィルタ24とによって、光学シャッタ1Aを構成している。この光学シャッタ1Aでは、光学ブロック10での所定の軸(例えば光学ブロック10の中心軸、あるいは対称軸等)が、光透過軸Axとして設定される。また、第1、第2波長選択フィルタ23、24の光学ブロック10に対する配置構成について、法線が光透過軸Axに対して第1角度αをなす第1フィルタ面13に第1波長選択フィルタ23を配置し、また、法線が光透過軸Axに対して第2角度βをなすとともに、第1フィルタ面13に対して非平行で角度α+βをなす第2フィルタ面14に第2波長選択フィルタ24を配置する構成としている。
ここで、波長選択フィルタ23、24が設置された光学ブロック10での光透過軸Axと、光学ブロック10に対する対象光の光入射軸との相対角度θを変更すると、波長選択フィルタ23、24それぞれでの光透過波長特性が変化する。そして、上記したように、第1、第2波長選択フィルタ23、24が非平行に配置されている構成では、詳しくは後述するように、第1波長選択フィルタ23での光透過特性と、第2波長選択フィルタ24での光透過特性とが、相対角度θの変更に対して異なる波長条件で変化する。
したがって、このような第1波長選択フィルタ(第1干渉フィルタ)23、第2波長選択フィルタ(第2干渉フィルタ)24のそれぞれでの光透過特性の変化を適切に組み合わせることにより、素子全体での光透過波長特性を好適に制御して、光学シャッタ1Aでの対象光の透過のON/OFF切り替えを好適に実現することが可能となる。
特に、上記構成の光学シャッタ1Aでは、1個の波長選択フィルタでの光透過特性の変化ではなく、2個の波長選択フィルタ23、24のそれぞれでの光透過特性の変化の組合せを利用して、対象光のON/OFF制御を行っている。このような構成では、対象光の透過のON/OFFを切り替えるために必要となる光透過軸Axと光入射軸との相対角度θの変更量を小さくすることができ、これにより、高速での対象光のON/OFF制御、及び光学シャッタ1Aの長期信頼性の確保が可能となる。また、上記構成の光学シャッタ1Aでは、構成部品の小型化も可能であり、例えばロボットアームに取り付けられた加工レーザヘッド内への光学シャッタの設置等、様々な用途への応用が期待される。
また、上記構成の光学シャッタ1Aでは、第1、第2波長選択フィルタ23、24を、光学ブロック10によって一体化する構成としている。このような構成では、第1、第2波長選択フィルタを個別に設置する構成等と比べて構造体としての剛性が高くなり、光学素子としての信頼性が向上する。
すなわち、上記実施形態の光学シャッタ1Aでは、2個の波長選択フィルタ23、24を非平行に配置することで、対象光の透過のON/OFF制御を実現している。このような構成では、例えば、第1、第2波長選択フィルタ23、24での透過波長帯を一致させることで、対象光が透過するON状態とし、また、相対角度θを変更して第1、第2波長選択フィルタ23、24での透過波長帯を不一致とさせることで、対象光が不透過となるOFF状態とする。このような対象光の透過のON/OFFの切替動作(相対角度θの変更動作)において、2個の波長選択フィルタ23、24の傾斜角度が所定の値から外れると、結果としてシャッタのON/OFF機能が失われることとなる。
特に、上記の光学シャッタ1Aでは、小さい相対角度θの変更量で、対象光の透過の高速でのON/OFF制御を可能としている。したがって、波長選択フィルタ23、24の傾斜角度が変化してしまう剛性の低い構造体では、光学シャッタ1Aとしての長期的な信頼性を確保することができない。これに対して、上記の光学シャッタ1Aでは、2個の波長選択フィルタ23、24を光学ブロック10において一体化して固定することで、両者の相対的な位置が変化しない剛性が高い構造体を構成している。また、このような構成では、光学シャッタ1Aの作製時において光学ブロック10を組み上げることで、波長選択フィルタ23、24の非平行な配置を固定するため、光学シャッタ1Aを対象光の光路上に配置する際に、フィルタのアライメントを行う必要がない。
光学ブロック10としては、好ましくは、所定波長λの対象光を透過するガラスブロックが用いられる。ガラスブロックの材料としては、例えば、合成石英、溶融石英、BK7等の光学ガラス材料、プラスチック等のソリッドな有機材料、サファイア、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム等のセラミクス材料などが挙げられる。一般には、光学ブロック10の材料については、ソリッドで波長選択フィルタ23、24を一体に保持可能であって、対象光の波長λを含む目的波長域に対して透明な材料であれば良い。
光学シャッタ1Aにおける第1、第2波長選択フィルタ23、24については、具体的には例えば、光学シャッタ1Aにおいて、第1波長選択フィルタ23及び第2波長選択フィルタ24が、同一の波長選択特性(光透過波長特性)を有するバンドパスフィルタである構成を用いることができる。このように、同一特性のバンドパスフィルタを第1、第2波長選択フィルタ23、24として用いることにより、光学シャッタ1Aを好適かつ容易に構成、作製することができる。
また、第1、第2波長選択フィルタ23、24としては、互いに異なる波長選択特性を有する干渉フィルタを用いても良い。また、干渉フィルタとしては、所定の波長域の光を透過するバンドパスフィルタ以外にも、例えば、ショートパスフィルタ、ロングパスフィルタ等を用いても良い。また、このような干渉フィルタは、例えば誘電体多層膜によって構成することができる。この場合、誘電体多層膜を構成する材料としては、一般的に光学薄膜の成膜に用いられる材料を使用でき、例えば、TiO2、HfO2、Nb2O5、ZrO2、Y2O3、Al2O3、SiO2、MgF2、CaF等が挙げられる。
また、第1、第2波長選択フィルタ23、24が配置されるフィルタ面13、14については、上記実施形態の光学シャッタ1Aでは、第1、第2フィルタ面13、14の両者を、光学ブロック10の内部に設定する構成としている。これらの第1、第2フィルタ面13、14については、一般には、それぞれ、光学ブロック10の表面もしくは内部に設定することができる。例えば、光学シャッタ1Aにおいて、光学ブロック10の光入射面11を第1フィルタ面として設定し、光入射面11上に第1波長選択フィルタ23を配置しても良い。また、光学ブロック10の光出射面12を第2フィルタ面として設定し、光出射面12上に第2波長選択フィルタ24を配置しても良い。
また、第1、第2フィルタ面13、14については、光学シャッタ1Aは、図2に示したように、第2フィルタ面14が、法線が光透過軸Axに対して第2角度β=αをなすとともに、第1フィルタ面13に対して非平行かつ傾斜方向が逆方向で角度2αをなすように設定されている構成を用いることができる。なお、このような第1、第2波長選択フィルタ23、24の設置角度については、各波長選択フィルタでの光透過の波長特性、及び光透過波長特性の変化を利用した対象光の透過のON/OFF動作を考慮して、適切に設定することが好ましい。
また、第1、第2波長選択フィルタ23、24が配置されるフィルタ面13、14がなす角度α+βについては、例えば30°未満で、大き過ぎない角度に設定することが好ましい。すなわち、波長選択フィルタ23、24同士の角度を大きくした場合、対象光の角度変化に対する透過率の減少効果は大きくなるが、一方で、光学シャッタ1Aを光学系に組み込む際の配置角度が非常にシビアになる。また、波長選択フィルタ23、24同士の角度が大きくなると、それらを一体に保持する光学ブロック10が大型化し、光学系における光学シャッタ1Aの占有領域が増大してしまう。第1、第2フィルタ面13、14の傾斜角度α、βについては、これらの点も考慮して適切に設定することが好ましい。
また、光学シャッタ1Aは、第1フィルタ面13及び第2フィルタ面14のうちで少なくとも光透過軸Axの前方側に位置する第1フィルタ面13が、光学ブロック10の内部に位置するように設定されていることが好ましい。このような構成では、角度変更による第1波長選択フィルタ23での光透過波長特性の変化が大きくなり、したがって、対象光のON/OFF制御をより高速に行うことができる。
また、光学シャッタ1Aにおいて、光学ブロック10における光入射面11は、光透過軸Axに対して垂直な平面となるように形成されていることが好ましい。このような構成では、光入射面11において屈折させることなく、対象光を光学ブロック10の内部へと入射させることができる。また、光学ブロック10における光出射面12についても、同様に、光透過軸Axに対して垂直な平面となるように形成しても良い。
また、光学シャッタ1Aは、光学ブロック10における光入射面11及び光出射面12の少なくとも一方に、所定波長の対象光に対する反射防止膜が形成されている構成としても良い。図1においては、光入射面11、光出射面12の両方に、光利用効率を向上するための反射防止膜21、22を形成した構成を示している。なお、このような反射防止膜については、不要であれば設けない構成としても良い。
上記構成の光学シャッタ1Aにおいて、光学ブロック10での光透過軸Axと、対象光の光入射軸との相対角度θの変更については、具体的には例えば、光学ブロック10を駆動して光透過軸の方向を変更することで、光透過軸と光入射軸との相対角度を変更する構成を用いることができる。あるいは、対象光を光学ブロック10へと導光する導光光学系を駆動して光入射軸の方向を変更することで、光透過軸と光入射軸との相対角度を変更する構成を用いることができる。
図5は、ブロック駆動装置を用いた光学シャッタ1Aの構成を示す図である。本構成例では、光学シャッタ1Aの光学ブロック10に対して、ON/OFF制御の対象光を光学ブロック10へと導光する導光光学系50が設けられている。また、光学ブロック10に対して、光学ブロック10を駆動して光透過軸の方向を変更するブロック駆動装置56が設けられ、この駆動装置56によって、光学ブロック10での光透過軸と、対象光の光入射軸との相対角度θを変更する構成となっている。
また、ブロック駆動装置56に対して、例えばコンピュータなどからなる制御装置52が設けられている。制御装置52は、ブロック駆動装置56による光学ブロック10の駆動動作を制御することで、光学シャッタ1Aにおける対象光の透過のON/OFF動作を制御する。また、制御装置52に対し、対象光のON/OFF制御に関する情報の操作者への表示に用いられる表示装置53、及びON/OFF制御について必要な情報、指示等の操作者による入力に用いられる入力装置54が接続されている。
図6は、光学系駆動装置を用いた光学シャッタ1Aの構成を示す図である。本構成例では、対象光を導光する導光光学系50に対して、導光光学系50を駆動して光入射軸の方向を変更する光学系駆動装置57が設けられ、この駆動装置57によって、光学ブロック10での光透過軸と、対象光の光入射軸との相対角度θを変更する構成となっている。また、制御装置52は、光学系駆動装置57による導光光学系50の駆動動作を制御することで、光学シャッタ1Aにおける対象光の透過のON/OFF動作を制御する。また、制御装置52に対し、表示装置53、及び入力装置54が接続されている。
このように、光学シャッタ1Aにおいて、光学ブロック10を駆動するブロック駆動手段であるブロック駆動装置56、または対象光の導光光学系50を駆動する光学系駆動手段である光学系駆動装置57を設けることにより、光透過軸Axと光入射軸との相対角度θの変更、及びそれによる対象光の透過のON/OFF制御を好適に実現することが可能となる。なお、ブロック駆動装置と光学系駆動装置との両者を用い、光学ブロック10と導光光学系50との双方を駆動する構成としても良い。
特に、上記構成の光学シャッタ1Aでは、上述したように、対象光のON/OFF制御に必要な光透過軸と光入射軸との相対角度θの変更量が小さくなるため、駆動装置によって光学ブロック10または導光光学系50を駆動する際の駆動量を小さくすることができる。また、このように光学ブロック10または導光光学系50の駆動量が小さくなることにより、対象光のON/OFF切り替えにおける可動部の摩耗等の発生が抑制され、長期間の使用におけるシャッタの信頼性、耐久性等が向上する。なお、駆動装置56、57の動作制御については、制御装置52を設けずに、操作者の手動操作等によって駆動装置を動作させる構成としても良い。
上記実施形態による光学シャッタ1Aの具体的な構成例、及びその光学特性について説明する。ここでは、対象光の波長をλ=532nm、第1波長選択フィルタ23の傾斜角度をα=10°、第2波長選択フィルタ24の傾斜角度をβ=α=10°、波長選択フィルタ23、24のなす角度をα+β=2α=20°とした場合の光学シャッタ1Aの特性を例として説明する。また、第1、第2波長選択フィルタ23、24としては、同一特性のバンドパスフィルタを用いている。
なお、以下の図7〜図11のグラフに示す光透過波長特性は、いずれもシミュレーション結果によるものである。また、以下において、光学ブロック10での光透過軸Axに対する対象光の光入射軸の傾斜角度θについては、前方側の第1波長選択フィルタ23において、第1フィルタ面13の法線と光入射軸とのなす角度がφ=α+θに変化する方向を角度θの正の方向とし、φ=α−θに変化する方向を角度θの負の方向とする。
図7は、光学シャッタ1Aにおける光透過波長特性を示すグラフである。図7のグラフにおいて、横軸は波長(nm)を示し、縦軸は光の透過率(%)を示している。また、図7において、グラフA1は、光透過軸と光入射軸との相対角度がθ=0.0°の場合の光透過特性を示し、グラフA2は、θ=+0.4°または−0.4°の場合の光透過特性を示し、グラフA3は、θ=+0.8°または−0.8°の場合の光透過特性を示し、グラフA4は、θ=+1.0°または−1.0°の場合の光透過特性を示している。
図7のグラフに示すように、対象光の光入射軸が光学ブロック10での光透過軸(光学ブロック10の中心軸)Axと一致している(もしくは平行である)θ=0.0°の場合には、光学シャッタ1Aは、波長λ=532nmの対象光に対してほぼ100%の透過率を示している。これに対して、光透過軸Axに対する光入射軸の傾斜角度θを大きくしていくと、対象光の透過率は減少し、角度θ=±0.8°の場合において、透過率は1%以下となっている。
このように、上記構成の光学シャッタ1Aによれば、光透過軸Axと光入射軸との相対角度θをわずかに変更することにより、対象光の透過のON/OFFを素早く切り替えることができる。また、このような光学シャッタ1Aでは、光学ブロック10の光入射面11、光出射面12の面積が、そのまま透過のON/OFF制御の有効面積となる。したがって、対象光のビーム径が大きいような場合であっても、同様に、角度θのわずかな変更によって、対象光の透過のON/OFFを切り替えることができる。
図8は、光学シャッタ1Aにおいて、第1、第2波長選択フィルタ23、24として用いられる単一の波長選択フィルタにおける光透過波長特性を示すグラフである。図8において、左端のグラフB1は、光入射軸の傾斜角度(光透過軸と光入射軸との相対角度)がθ=+1.0°の場合の光透過特性を示し、グラフB2は、θ=+0.8°の場合の光透過特性を示し、グラフB3は、θ=+0.4°の場合の光透過特性を示し、中央のグラフB4は、θ=0.0°の場合の光透過特性を示し、グラフB5は、θ=−0.4°の場合の光透過特性を示し、グラフB6は、θ=−0.8°の場合の光透過特性を示し、右端のグラフB7は、θ=−1.0°の場合の光透過特性を示している。
図8のグラフに示すように、光入射軸の傾斜角度θを正の方向に変化させた場合には、波長選択フィルタへの対象光の入射角度φ(図4参照)が増加するため、バンドパスフィルタでの透過波長帯は短波長側にシフトする。一方、光入射軸の傾斜角度θを負の方向に変化させた場合には、対象光の入射角度φが減少するため、バンドパスフィルタでの透過波長帯は長波長側にシフトする。
図9は、第1、第2波長選択フィルタ23、24、及びそれらを含む光学シャッタ1Aの全体における光透過波長特性を示すグラフである。ここでは、光入射軸の傾斜角度θを正の方向に+1.0°に設定した場合の光透過特性を示している。また、図9において、グラフC1は、第1波長選択フィルタ23での光透過特性(フィルタ1)を示し、グラフC2は、第2波長選択フィルタ24での光透過特性(フィルタ2)を示している。また、グラフC3は、第1、第2波長選択フィルタ23、24を含む光学シャッタ1Aの全体での光透過特性(フィルタ1+2)を示している。
図9のグラフに示すように、光入射軸の傾斜角度θを正の方向に変化させたとき、第1波長選択フィルタ23への対象光の入射角度は増加してφ=α+θとなり、その透過波長帯は短波長側にシフトする。一方、このとき、第2波長選択フィルタ24への対象光の入射角度は減少してφ=α−θとなり、その透過波長帯は長波長側にシフトする。したがって、これらの第1、第2波長選択フィルタ23、24での光透過特性が合成された光学シャッタ1Aの全体での光透過特性においては、波長選択フィルタ23、24の一方の透過波長帯を他方の透過波長帯で打ち消すこととなり、その結果、図9のグラフC3に示すように、全体として光学シャッタ1Aでの透過波長帯が消滅する。上記構成の光学シャッタ1Aでは、このような光透過波長特性の変化により、対象光の透過のON/OFFの切り替えが実現される。
また、上記の光学シャッタ1Aでは、第1、第2波長選択フィルタ23、24を光学ブロック10において一体化する構成とすることで、剛性が高いフィルタ構造体を実現しているが、第1、第2波長選択フィルタ23、24を光学ブロック10の内部に配置した場合、それによって、構造的な効果以外にも、下記のような光学的な効果をも得ることができる。
図10は、波長選択フィルタ(第1波長選択フィルタ23または第2波長選択フィルタ24)をガラス製の光学ブロック10の内部に配置した場合における光透過波長特性を示すグラフである。図10において、グラフD1は、光入射軸の傾斜角度がθ=0°の場合の光透過特性を示し、グラフD2は、θ=+5°の場合の光透過特性を示し、グラフD3は、θ=−5°の場合の光透過特性を示している。
また、図11は、波長選択フィルタを空気中に配置した場合における光透過波長特性を示すグラフである。図11において、グラフD6は、光入射軸の傾斜角度がθ=0°の場合の光透過特性を示し、グラフD7は、θ=+5°の場合の光透過特性を示し、グラフD8は、θ=−5°の場合の光透過特性を示している。
図10、図11のグラフに示すように、光入射軸の傾斜角度をθ=±5°の範囲で変化させた場合、波長選択フィルタをガラス中に配置した構成では、透過波長帯は波長528nm〜535nmの範囲で変化している。一方、波長選択フィルタを空気中に配置した構成では、透過波長帯は波長529nm〜534nmの範囲で変化している。すなわち、波長選択フィルタをガラスブロックの内部に配置することで、光入射軸の傾斜角度θの変化に対する透過波長帯のシフト波長量が大きくなる。したがって、第1、第2波長選択フィルタ23、24を光学ブロック10の内部に配置した構成によれば、各波長選択フィルタでの光透過波長特性の変化、及びそれによる対象光の透過のON/OFFの切り替え効果が強調されることとなる。
上記実施形態による光学シャッタ1Aの具体的な構成例、及びその製造方法について、図2を参照して説明する。本構成例では、まず、入射側ブロック30、第1フィルタブロック35、第2フィルタブロック40、及び出射側ブロック45となる同一材料、同一形状の4個の傾斜基板を、傾斜角度α=10°のブロックとして用意する。
4個のブロック(傾斜基板)のうち、第1フィルタブロック35の第2面37上、及び第2フィルタブロック40の第2面42上に、第1、第2波長選択フィルタ23、24となる干渉フィルタを形成する。ここで、図12は、第1、第2波長選択フィルタ23、24として用いられる波長選択フィルタの構成の一例を示す図である。図12では、波長選択フィルタを構成する各層について、その材料、及び物理膜厚(nm)を示している。図12に示す波長選択フィルタでは、基体となるブロック100上に、膜厚60nmのTiO2膜111、及び膜厚94nmのSiO2膜112を7層ずつ形成し、その上に、膜厚120nmのTiO2膜121を1層形成し、さらにその上に、膜厚94nmのSiO2膜131、及び膜厚60nmのTiO2膜132を7層ずつ形成することで、波長選択フィルタを構成している。
また、4個のブロックのうち、入射側ブロック30の第1面31上、及び出射側ブロック45の第1面46上に、光利用効率の向上のための反射防止膜21、22を形成する。ここで、図13は、反射防止膜21、22として用いられる反射防止膜の構成の一例を示す図である。図13では、反射防止膜を構成する各層について、その材料、及び物理膜厚(nm)を示している。図13に示す反射防止膜では、基体となるブロック100上に、膜厚80nmのAl2O3膜151、膜厚136nmのHfO2膜152、及び膜厚98nmのMgF2膜153を1層ずつ形成することで、反射防止膜を構成している。
波長選択フィルタ、及び反射防止膜の形成を終了したら、第1フィルタブロック35の第2面37と、入射側ブロック30の第2面32とを接着する。また、第2フィルタブロック40の第2面42と、出射側ブロック45の第2面47とを接着する。その後、第1フィルタブロック35の第1面36と、第2フィルタブロック40の第1面41とを接着して、図1のように光学ブロック10を組み上げる。ブロックの接着においては、例えば接着剤、あるいはオプティカルコンタクトなどが用いられる。
なお、上記した構成例では、あらかじめ所定の寸法に加工した4個のブロックを用いて光学ブロック10を組み上げる構成について説明したが、このような構成に限らず、例えば、波長選択フィルタ等を成膜してブロックを貼り合わせ、その後に、フィルタの傾斜角度が所定角度になるように、光学ブロックに対して研磨等による加工を行う方法を用いることも可能である。
光学シャッタの構成について、さらに説明する。光学ブロックと、光学ブロックに一体に固定された第1、第2波長選択フィルタとを有する光学シャッタの具体的な構成については、図1に示した構成に限らず、様々な構成を用いることが可能である。図14、図15は、光学シャッタの具体的な構成の他の例について示す図である。なお、各構成例において、第1、第2波長選択フィルタが設けられる第1、第2フィルタ面は互いに非平行であり、また、レンズ面や曲面ではない平面に設定されている。
図14(a)に示す構成例では、断面形状が二等辺三角形の三角プリズムからなる光学ブロック600の光入射面を第1フィルタ面として第1波長選択フィルタ606を設け、光出射面を第2フィルタ面として第2波長選択フィルタ607を設けることで、光学シャッタが構成されている。図14(b)に示す構成例では、断面形状が直角三角形の直角プリズムからなる光学ブロック610の光入射面を第1フィルタ面として第1波長選択フィルタ616を設け、光出射面を第2フィルタ面として第2波長選択フィルタ617を設けることで、光学シャッタが構成されている。
図15(a)に示す構成例では、それぞれ断面形状が直角三角形の直角プリズムからなる前方側の第1ブロック621、後方側の第2ブロック622を組み合わせて光学ブロック620とし、光学ブロック620の内部にあるブロック621、622の接続面を第1フィルタ面として第1波長選択フィルタ626を設け、第2ブロック622の後面である光出射面を第2フィルタ面として第2波長選択フィルタ627を設けることで、光学ブロックが構成されている。
図15(b)に示す構成例では、それぞれ一方の面が平面、他方の面が鋸歯状の面(アレイ面)となっているプリズムアレイ基板からなる前方側の第1ブロック631、後方側の第2ブロック632を、アレイ面を内側にして組み合わせて光学ブロック630とし、第1ブロック631の前面である光入射面を第1フィルタ面として第1波長選択フィルタ636を設け、光学ブロック630の内部にあるブロック631、632の接続面を第2フィルタ面として第2波長選択フィルタ637を設けることで、光学ブロックが構成されている。
なお、図15(a)に示した構成例における光入射面、及び図15(b)に示した構成例における光出射面には、必要があれば反射防止膜を設けても良い。また、図15(b)に示した構成例については、第2ブロック632を設けずに、第1ブロック631のみによって光学ブロック630を構成しても良い。
光学シャッタにおいて、光学ブロックでの光透過軸と、光学ブロックに対する対象光の光入射軸との相対角度を変更するための構成について、さらに説明する。上記構成の光学シャッタ1Aにおける対象光の透過のON/OFF動作については、図5、図6に関して上述したように、光学ブロック10を駆動することで光透過軸の方向を変更する構成、または、対象光を光学ブロック10へと導光する導光光学系を駆動することで光入射軸の方向を変更する構成を用いることができる。
図16は、光学ブロックを駆動して光透過軸の方向を変更することで、対象光の透過のON/OFFを切り替える光学シャッタの構成について示す図である。
図16(a)に示す構成例では、光学シャッタ1Aの光学ブロック10のある一点に回転軸701を設けて支点とするとともに、光学ブロック10に対して圧電素子702を設置している。このような構成では、圧電素子702を矢印703の方向に運動させて、光学ブロック10に対して矢印704で示す回転運動を与えることで、対象光の光入射軸に対する光学ブロック10での光透過軸の方向を変更することができる。
図16(b)に示す構成例では、光学ブロック10を含む光学シャッタ1Aを台座706上に設置している。このような構成では、台座706及び光学シャッタ1Aを矢印707の方向に回転運動させることで、対象光の光入射軸に対する光学ブロック10での光透過軸の方向を変更することができる。このように台座706を回転させる構成は、例えばステッピングモータなどの高速かつ精密な変位が可能な回転駆動機構を用いて実現することができる。
このように光学ブロック10を駆動する構成では、光学シャッタ1Aのサイズによって条件が異なるが、例えば1°以下の角度変化を与える変位は、最小で数μm〜数10μmで良い。この場合、数kHz〜数10kHzで駆動するピエゾアクチュエータであれば、数100μsec〜数10μsecでのON/OFF動作が可能となる。また、このような性能のピエゾアクチュエータは、既存の製品として存在している。
図17〜図20は、それぞれ、対象光の導光光学系を駆動して光入射軸の方向を変更することで、対象光の透過のON/OFFを切り替える光学シャッタの構成について示す図である。
図17(a)、(b)に示す構成例では、光学シャッタ1Aに対する対象光の導光光学系において、反射ミラー801を設置する。そして、この反射ミラー801を矢印802の方向に回転運動させて、対象光に対する反射面の傾き角度を変えることで、矢印803で示すように、光学ブロック10での光透過軸に対する対象光の光入射軸の方向を変更することができる。
このような構成での反射ミラー801の一例として、MEMSミラーがある。MEMSミラーは高速駆動が可能であるため、対象光の光入射軸の方向、角度を高速で変位させることが可能であり、その結果、μsecオーダでの対象光の透過のON/OFF制御が可能となる。具体的には、例えばMEMSミラーを用いた反射ミラー801を数10kHzで駆動させれば、数10μsec〜数μsecでのON/OFF動作が可能である。
図18(a)、(b)に示す構成例では、光学シャッタ1Aに対する対象光の導光光学系において、直角プリズム806を反射部材として設置する。そして、この直角プリズム806を矢印807の方向に回転運動させることで、矢印808で示すように、光学ブロック10での光透過軸に対する対象光の光入射軸の方向を変更することができる。
図19(a)、(b)に示す構成例では、光学シャッタ1Aに対する対象光の導光光学系において、三角プリズム811を対象光の進行方向を変える透過部材として設置する。そして、この三角プリズム811を矢印812の方向に回転運動させることで、矢印813で示すように、光学ブロック10での光透過軸に対する対象光の光入射軸の方向を変更することができる。
図20(a)、(b)に示す構成例では、光学シャッタ1Aに対する対象光の導光光学系において、レンズ形状の光学部品816を透過部材として設置する。そして、この光学部品816を矢印817の方向に移動、または振動運動させることで、矢印818で示すように、光学ブロック10での光透過軸に対する対象光の光入射軸の方向を変更することができる。
ここで、光学シャッタ1Aのサイズについては、例えば図3に示す立体構造において、x軸方向の幅が30mm、y軸方向の幅が30mm、z軸方向の厚さが20mmである。このような光学シャッタは、従来のメカニカルシャッタを置き換えることが可能な光学部品である。この光学シャッタは、光の遮蔽板を開閉する等の機構ではないため、開閉時の遮蔽板のストロークを気にする必要がなく、また、シャッタ口径の自由度が高い。なお、光学シャッタのサイズ等の素子の構成条件については、その具体的な用途等に応じて、上記に限らず適宜に設定して良い。
本発明による光学シャッタは、上記した実施形態及び構成例に限られるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、光学シャッタを構成する第1、第2波長選択フィルタにおける光透過波長特性、及びそれによる光学シャッタの特性等については、上記した構成に限られるものではなく、具体的には様々な構成を用いて良い。また、第1、第2波長選択フィルタを一体に保持する光学ブロックの構成についても、同様に、具体的には様々な構成を用いて良い。