本実施例では、電力変換装置100の例を説明する。
図1は、本発明の実施例1の電力変換装置100の構成を示す。
電力変換装置100は、リアクトル119と、セル回路600、700、800と、電圧計117と、電流計120とを含む。リアクトル119、セル回路600、700、800は、直列(カスケード)に接続されている。負荷122(Z)は、直列に接続されたセル回路600、700、800に対して、並列に接続される。電力変換装置100は、系統電力116を受け取り、リアクトル119と複数の電力変換用のセル回路600、700、800とを使って直流に変換し、負荷122に直流の電力を供給する装置である。本実施例の電力変換装置100は、一相の交流電源を整流して直流に変換する。電圧計117は、系統電力116の電圧を系統電圧測定値として測定する。電流計120は、リアクトル119を流れる電流を系統電流測定値として測定する。
電力変換装置100は更に、セル回路600、700、800を制御する制御部130を含む。制御部130は、マスターノード200(ノードM)と、スレーブノード300(ノードS1)と、スレーブノード400(ノードS2)と、スレーブノード500(ノードS3)とを含む。全体を制御するマスターノード200は、電圧計117と電流計120による測定値を、ケーブル118、121を介して夫々取得し、セル回路600、700、800の内部電圧を示すセル電圧測定値を、スレーブノード300、400、500を介して夫々取得する。マスターノード200は、取得された複数のセル電圧測定値から、セル回路600、700、800に設定する電圧を示す電圧指令値を計算し、スレーブノード300、400、500へ送信する。各スレーブノードは、対応するセル回路からセル電圧を示すセル電圧情報を取得し、取得されたセル電圧情報と、受信された電圧指令値とに基づいて、対応するセル回路内の素子のON/OFF信号を生成し、対応するセル回路へ出力する。負荷122に掛かる電圧である出力電圧は、セル回路600、700、800のセル電圧測定値の合計に等しい。マスターノード200は、この出力電圧が一定値になるように、複数のセル回路に均等の電圧指令値を算出し、下りフレーム900に含める。
各スレーブノードには300、400、500には夫々、ノード番号信号123、124、125が予め与えられている。ノード番号信号は、予めロータリースイッチやスライドスイッチ等のディップスイッチによって与えられてもよいし、予めスレーブノード内の記憶媒体に格納されてもよい。本実施例では、スレーブノード300、400、500に対し、連続する1、2、3のノード番号が夫々与えられている。
さて、電圧指令値等、スレーブノードを制御するための制御情報を、マスターノード200からスレーブノード300、400、500へ送るための下りフレーム900は、マスターノード200から送信され、ケーブル106、スレーブノード300、ケーブル107、スレーブノード400、ケーブル108、スレーブノード500と経由し、最後にケーブル105を経由し、マスターノード200に戻ってくる。即ち、下りフレーム900は、ノード番号の昇順に全てのスレーブノードを経由する。以後、この下りフレーム900のリング型の伝送路を、下りリングネットワークと呼ぶ。これにより、下りフレーム900は、スレーブノード300、400、500に対し、ブロードキャストで配信される。
一方、セル電圧測定値等、スレーブノードの状態を示す状態情報を、スレーブノード300、400、500からマスターノード200へ送るための上りフレーム910は、マスターノード200から送信され、ケーブル101、スレーブノード500、ケーブル102、スレーブノード400、ケーブル103、スレーブノード300、ケーブル104と経由し、最後にマスターノード200に戻ってくる。即ち、上りフレーム910は、ノード番号の降順に全てのスレーブノードを経由する。以後、この上りフレーム910のリング型の伝送路を、上りリングネットワークと呼ぶ。途中、各スレーブノードが上りフレーム910中の対応するフィールドにセル電圧測定値を設定することで、マスターノード200は各セル回路のセル電圧測定値を取得できる。
ケーブル101、102、103、104、105、106、107、108の夫々は、例えば光ファイバである。この場合、マスターノード200において、電気信号を光信号に変換してケーブル106へ送信すると共に、ケーブル104から受信した光信号を電気信号に変換するインタフェースデバイスが、一つの光トランシーバであってもよい。同様に、マスターノード200において、電気信号を光信号に変換してケーブル101へ送信すると共に、ケーブル105から受信した光信号を電気信号に変換するインタフェースデバイスが、一つの光トランシーバであってもよい。同様に、各スレーブノードにおいて、下りリングネットワーク及び上りリングネットワークに接続されるインタフェースデバイスも、光トランシーバで実現することができる。
このように、上りリングネットワークの伝送方向を下りリングネットワークの伝送方向と逆にすることにより、送信と受信を一つのインタフェースデバイスで実現することができる。これにより、各ノードのインタフェースデバイスのコスト及び寸法を抑えることができる。なお、ケーブル106及び104の組と、ケーブル107及び103の組と、ケーブル108及び102の組と、ケーブル105及び101の組との夫々が、双方向のメタルケーブルであっても良い。これにより、下りリングネットワークと上りリングネットワークは、互いに独立にフレームの送信を行うことができる。
なお、本実施例において、上りリングネットワークが複数のスレーブノードを経由する順序は、下りリングネットワークが複数のスレーブノードを経由する順序と逆になっているが、同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
マスターノード200には、表示装置281が接続されている。表示装置281は、マスターノード200からの指示に従って電力変換装置100の状態等を表示する。なお、表示装置281は、管理者による操作を受け付け、操作に基づく指示をマスターノード200へ送信してもよい。
上記のように、マスターノード200が各部の電圧、電流を元にセル回路を制御することで交流を直流に変換させることができる。
図2は、セル回路600の構成を示す。
セル回路600は例えば、直列に2個接続されたIGBT603、604等のスイッチング素子と、各IGBTに並列に接続された逆流防止のダイオードと、2個のIGBTに並列に接続されたコンデンサ605と、スレーブノード300から光ファイバ110を介してIGBT603、604のON/OFFの指示を受ける光電変換器601(O/E)と、光電変換器601からの指示に従ってIGBT603、604のゲートをON/OFFするドライバ602と、コンデンサ605の電圧を測定する電圧センサ608と、その電圧を光信号にして光ファイバ111を介してスレーブノード300に送出する電光変換器609(E/O)とを含む。このセル回路600は、いわゆる一般的なチョッパ型の電力変換セル(ハーフブリッジ回路)で、IGBT603、604のON/OFFとコンデンサ605の充放電の状態で、交流を直流に変換したり、直流を交流に変換したりすることができる。
セル回路700も同様の構成であり、各IGBTのON/OFFの指示を受けるための光ファイバ112と、コンデンサの電圧を伝えるための光ファイバ113とを介して、スレーブノード400と接続される。セル回路800も同様の構成であり、各IGBTのON/OFFの指示を受けるための光ファイバ114と、コンデンサの電圧を伝えるための光ファイバ115とを介して、スレーブノード500と接続される。また、セル回路600の負極端子606と正極端子607は、セル回路700、800の負極端子、正極端子と直列に接続し、更に系統電力116とリアクトル119に接続される。
さて、光ファイバ110を通ってIGBT603、604のON/OFFを指定する信号は、ON/OFFをそのまま示す2値の信号であってもかまわないが、ここでは、スレーブノード300によりコード化されCRC(Cyclic Redundancy Check)を付加されシリアル化されて送信され、光電変換器601により受信される。コード化は例えば、符号の反転やビットの順序の入れ替え等である。ドライバ602は、受信したコードを復号し、CRCを確認して、IGBT603、604のON/OFFの指示を得る。そしてドライバ602は、この指示に従ってIGBT603、604のゲート信号を出力する。一方、電圧センサ608は、定期的にコンデンサ605の電圧であるセル電圧をデジタル化しCRCを付加して光ファイバ111に出力する。
スレーブノード300は、これを連続して受信し、セル電圧情報として復号するとともにCRCのチェックを行い、セル電圧情報を内部のレジスタに取り込む。マスターノード200が、セル電圧測定値を取得するためのコマンド2の上りフレーム910を送信した場合、スレーブノード300は、この上りフレーム910を受信すると、セル電圧情報に基づくセル電圧測定値を上りフレーム910に乗せて転送する。この処理においてスレーブノード300は例えば、所定時間内にセル回路600から取得されレジスタに保持された複数のセル電圧情報の平均値を、セル電圧測定値として算出してもよい。
各スレーブノードにおいて、下りリングネットワークのケーブルと、上りリングネットワークのケーブルとに接続される光トランシーバと同様、対応するセル回路に接続されるインタフェースデバイスも、一つの光トランシーバで実現することができる。同様に、セル回路において、光電変換器601及び電光変換器609は、一つの光トランシーバで実現することができる。
以下、マスターノード200からスレーブノード300、400、500へ送信される下りフレーム900及び上りフレーム910について説明する。
図3は、下りフレーム900を示す。
下りフレーム900は、コマンド1を含む。コマンド1は、電圧指令値をスレーブノード300、400、500に与えることを示す。フレーム900は、先頭から順に、フレームの先頭を示すプリアンブルフィールドと、コマンドを示すフィールドと、下りフレーム900の送信タイミングを示す送信タイミング情報FSEQ(フレーム識別子)を設定されるFSEQフィールドと、電圧指令値を設定される電圧指令フィールド、フレームの完全性を示すためのCRCフィールドとを含む。マスターノード200は、下りフレーム900のコマンドフィールドに、予め決められたコマンド1を指定する。
本実施例におけるFSEQの値は、下りフレーム900の送信の度に変化する。例えば、FSEQは8ビットで表される下りフレーム900の番号であり、マスターノード200は、開始フレームを示すFSEQの値を0とし、下りフレーム900を送信する度にFSEQの値に1を加え、FSEQの値が上限値(例えば254)に達したら次のFSEQの値を1に戻すように更新する。これによりFSEQの値が0(ビット列がオール0)である下りフレーム900は、最初の下りフレームであることを示し、スレーブノードの初期化に使われることができる。マスターノード200は、最初の下りフレームの送信から所定の時間の経過までのエラーを検出しなくてもよい。なお、FSEQの値が255(ビット列がオール1)である下りフレーム900を、初期化や停止等、特別な下りフレームであることを示してもよい。スレーブノードは、受信した最新のFSEQを受信タイミング情報DSEQ(データ識別子)として記憶する。なお、FSEQは、マスターノード200による下りフレーム900の送信時刻等、下りフレーム900の送信タイミングを示す値であってもよい。
電圧指令フィールドには、電圧指令値が与えられる。例えば電圧計117で測定された系統電圧測定値を、位相を少しずらして電圧指令値とすれば、PWM制御によりセル回路600、700、800に整流動作をさせることができる。
CRCフィールドには、コマンドフィールドから電圧指令フィールドで決まるCRCが与えられている。マスターノード200は、下りフレーム900を受信した時、CRCが不正であれば、その下りフレーム900を無効として扱う。
図4は、上りフレーム910を示す。
上りフレーム910は、コマンド2を含む。コマンド2は、スレーブノード300、400、500からセル測定電圧値を読み出すことを示す。上りフレーム910は、先頭から順に、プリアンブルフィールドと、コマンドフィールドと、スレーブノード毎のデータフィールドと、CRCフィールドとを含む。一つのスレーブノードのデータフィールドは、当該スレーブノードによる下りフレーム900の最新の受信タイミングを示すDSEQを設定されるDSEQフィールドと、当該スレーブノードにより測定されたセル電圧測定値を設定されるセル電圧測定値フィールドとを含む。本実施例では、一つのスレーブノードに対応するデータフィールドの位置は、そのスレーブノードのノード番号に対応する。即ち、コマンドフィールドの後に、スレーブノード300に対応するDSEQ1フィールド及びセル電圧測定値1フィールドが配置され、その後、スレーブノード400に対応するDSEQ2フィールド及びセル電圧測定値2フィールドが配置され、その後、スレーブノード500に対応するDSEQ3フィールド及びセル電圧測定値3フィールドが配置される。マスターノード200は、上りフレーム910のコマンドフィールドに、予め決められたコマンド2を指定する。
DSEQフィールドには、対応するスレーブノードによりDSEQが指定される。DSEQは、各スレーブノードにより最後に受信された下りフレームのFSEQである。ここで、各スレーブノードに予め設定されたノード番号は、データフィールド内のDSEQフィールド及びセル電圧測定値フィールドの位置に対応する。これによって各スレーブノードは、どのDSEQフィールド及びセル電圧測定値フィールドに設定すべきかを決定することができる。
セル電圧測定値フィールドには、対応するスレーブノードによりセル電圧測定値が指定される。例えば、スレーブノード300は、セル回路600から光ファイバ111を介して受け取ったセル測定電圧値を、スレーブノード300に対応するセル電圧測定値1フィールドに設定する。スレーブノード300は、ケーブル103からフレームを受信すると、そのフレームをケーブル104へ送信するが、コマンド2を認識したとき、スレーブノード300のノード番号と一致するDSEQ1フィールド及びセル電圧測定値1フィールドの値だけ入れ替えて送信する。同時に、スレーブノード300は、この受信している上りフレーム910のCRCフィールドより前のデータからCRCを計算して受信CRCとし、送信している上りフレーム910のCRCフィールドより前のデータからCRCを計算して送信CRCとする。もし、受信した上りフレーム910のCRCフィールドの値が受信CRCに等しい場合、スレーブノード300は、送信している上りフレーム910のCRCフィールドの値を送信CRCに入れ替えて送信する。もし、受信した上りフレーム910のCRCフィールドの値が正しくない場合、スレーブノードは、送信している上りフレーム910を無効にする。ここで、スレーブノード300は、送信している上りフレーム910のCRCフィールドの値を不正なものに入れ替える操作を行う。例えば、スレーブノード300は、CRCフィールドの最後の部分を反転したり、数ビットのデータを追加したりすることで、CRCフィールドの値を不正にし、上りフレーム910を無効化することができる。スレーブノード400、500も同様に、記憶しているDSEQと、対応するセル回路のセル電圧測定値とを、上りフレーム910の該当するフィールドに設定して送信する。マスターノード200は、上りフレーム910を受信することで、全てのスレーブノードからセル電圧測定値を取り込むことができる。本実施例では、1個のスレーブノードが1個のセル回路を制御する構成を例に説明しているが、例えば1個のスレーブノードが複数のセル回路に接続され、それら複数のセル回路を制御することもできる。例えば、各スレーブノードは、対応する8個のセル回路からのセル電圧情報を積算した値をセル電圧測定値として、上りフレーム910に設定する。
以下、制御部130について説明する。
図5は、スレーブノードの構成と動作を示す。
スレーブノードは、スレーブノードを制御するCPU330と、三角波のキャリア信号を発生するキャリア信号発生回路310と、CPU330から指示された電圧とキャリア信号とに基づいてPWMパルスを生成するPWMパルス生成回路320と、下り受信部340と、下り送信部350と、上り受信部360と、上り送信部370とを含む。スレーブノードは更に、CPU330のためのプログラム及びデータを格納するメモリを含む。メモリは、下りリングネットワークの送信及び受信のためのバッファや、上りリングネットワークの送信及び受信のためのバッファ等を含んでもよい。
下り受信部340が、下りリングネットワークから下りフレーム900を受信すると、下り送信部350は、その下りフレーム900を下りリングネットワークへ送信する。上り受信部360が、上りリングネットワークから上りフレーム910を受信すると、上り送信部370は、その上りフレーム910にDSEQ及びセル電圧測定値を乗せて上りリングネットワークへ送信する。例えば、スレーブノード300は、ケーブル106から下りフレーム900を受信し、下りフレーム900をケーブル107へ送信する。更にスレーブノード300は、ケーブル103から上りフレーム910を受信し、上りフレーム910をケーブル104へ送信する。CPU330は、受信された下りフレーム900に従って処理を行い、上りフレーム910に乗せるデータを作成する。例えば、下り受信部340及び上り送信部370の組は、光トランシーバであり、下り送信部350及び上り受信部360の組は、光トランシーバである。
下り受信部340は、下りフレーム900を正常に受信したとき、下りフレーム900に含まれるFSEQと電圧指令値をレジスタに記憶する。ステップ941でCPU330は、記憶されたFSEQと電圧指令値をメモリに読み込む。その後、ステップ932でCPU330は、スレーブノード300に予め与えられているノード番号に基づいて、キャリア信号発生回路310の動作タイミングを調整し、電圧指令値をセル電圧測定値に基づき補正することにより補正電圧指令値を算出し、補正電圧指令値をPWMパルス生成回路320に送る。PWMパルス生成回路320は、補正電圧指令値をキャリア信号と比較することによりPWM変調を行い、PWM変調により得られるパルス信号(PWMゲートパルス)をセル回路600へ送信する。即ち、CPU330は、キャリア信号が複数のセル回路間で同時に変化をしないようにキャリア信号の位相をシフトさせ、複数のセル回路に均等に与えられた電圧指令値を、対応するセル回路のセル電圧測定値に基づいて補正する。また、複数のキャリア信号の位相を適切に調整することにより、電力変換装置100の出力電圧をマルチレベルにして高調波成分を低減できる(MMC:モジュラー・マルチレベル変換器)。
その後、ステップ933でCPU330は、セル回路600からセル電圧情報を取り込み、セル電圧情報に基づいてセル電圧測定値を算出してメモリに保存する。その後、ステップ934でCPU330は、記憶されたFSEQをDSEQとして上り送信部370のレジスタに保存し、記憶されたセル電圧測定値を上り送信部370のレジスタに保存する。
上り受信部360が、上りフレーム910を受信すると、上り送信部370は、記憶されたDSEQと、記憶されたセル電圧測定値とを、上りフレーム910内の、対応するフィールドにセットして送信する。このとき、上り送信部370は、上りフレーム910内の、プリアンブルフィールド、コマンドフィールド、他スレーブノードのデータフィールドを変更せず、コマンドフィールドからデータフィールドまでのデータからCRCを生成し直してCRCフィールドにセットして送信する。もし、受信された上りフレーム910のCRCエラーが検出されている場合、上り送信部370は、作成し直して正しくなったCRCを使わないように、最後の4ビットを反転するなどして、CRCフィールドに不正な値をセットし、後段のスレーブノードが正しく不良を判定できるようにする。
このように、複数のスレーブノードの夫々は、下りリングネットワークから下りフレーム900を受信し、受信された下りフレーム900内の送信タイミング情報を受信タイミング情報として記憶し、受信された下りフレーム内の制御情報に基づいて、対応するセル回路の制御を行い、対応するセル回路の状態を取得する。また、複数のスレーブノードの夫々は、上りリングネットワークから上りフレーム910を受信し、対応するセル回路の状態を示す状態情報と、記憶された受信タイミング情報とを、上りフレーム910に含め、上りフレーム910を上りリングネットワークへ送信する。
図6は、マスターノード200の構成と動作を示す。
マスターノード200は、フレームの送受信の指示と電力変換制御のための演算を行う制御プロセッサ210と、ケーブル118を介して電圧計117に接続されている系統電圧ポート220と、ケーブル121を介して電流計120に接続されている系統電流ポート230と、下りリングネットワークへ下りフレーム900を送信する下り送信部240と、下りリングネットワークから下りフレーム900を受信する下り受信部290と、上りリングネットワークへ上りフレーム910を送信する上り送信部250と、上りリングネットワークから上りフレーム910を受信する上り受信部260と、制御プロセッサ210からの指示に基づいて、電力変換装置100の状態を表示装置281に表示させる表示部280とを含む。例えば、下り送信部240及び上り受信部260の組は、光トランシーバであり、下り受信部290及び上り送信部250の組は、光トランシーバである。
系統電圧ポート220は、入力された系統電圧測定値を保持する。系統電流ポート230は、入力された系統電流測定値を保持する。制御プロセッサ210は、系統電圧ポート220及び系統電流ポート230に夫々保持された系統電圧測定値及び系統電流測定値を読み出すことができる。下り送信部240、下り受信部290、上り送信部250、上り受信部260は、制御プロセッサ210によってアクセス可能である。下り送信部240は、下りリングネットワークへ送信する送信ポートを含む。下り受信部290は、下りリングネットワークから受信する受信ポートを含む。上り送信部250は、上りリングネットワークへ送信する送信ポートを含む。上り受信部260は、上りリングネットワークから受信する受信ポートを含む。
さて、制御プロセッサ210は、内部の初期化をした後、下り送信部240に電圧指令値をセットし、下りフレーム900の送信を指示する。これにより下りフレーム900が下り送信部240から出力される。下り送信部240は、下りフレーム900の送信を完了すると、FSEQを更新する。ここで下り送信部240は、最初にFSEQを0に初期化し、その後、制御プロセッサ210により電圧指令値が登録される毎にFSEQの値に1を加え、FSEQの値が254になったら1に戻し、以降、FSEQの値を1から254までの間で巡回させる。下り受信部290は、全てのスレーブノードを経由した下りフレーム900を受信し、その下りフレーム900のCRCが正常か否かを判定し、その下りフレーム900が異常であると判定された場合、制御プロセッサ210へ割込みを出力してもよい。
次に、制御プロセッサ210は、上り送信部250に上りフレーム910の送信を指示する。上り送信部250から送信される上りフレーム910のデータフィールドは、ビット列がオール0の状態である。上りフレーム910がスレーブノードを経由する度に、上りフレーム910内でそのスレーブノードのノード番号に対応する位置に、そのスレーブノードによってDSEQとセル電圧測定値が設定される。上り受信部260は、全てのスレーブノードを経由した上りフレーム910を受信し、受信された上りフレーム910から複数のセル電圧測定値を取得し、内部のレジスタに記憶する。制御プロセッサ210は、上り受信部260に格納された複数のセル電圧測定値に基づいて、次の電圧指令値を求める。上り受信部260は更に、受信された上りフレーム910から複数のDSEQを取得し、内部のレジスタに記憶する。上り受信部260は、エラー検出部270を含む。エラー検出部270は、取得された複数のDSEQがDSEQ条件を満たす場合、全てのスレーブノードが正常であると判定し、取得された複数のDSEQがDSEQ条件を満たさない場合、エラーと判定し、制御プロセッサ210に割込みを出力する。
例えば、マスターノード200から下りフレーム900が送信され、それがスレーブノードを一巡してマスターノード200へ戻ってきてから、マスターノード200から上りフレーム910が送信された場合、FSEQが全てのスレーブノードに行き渡っている状態で、上りフレーム910が全てのスレーブノードを経由する。そのため、全てのスレーブノードが正常であれば、スレーブノードからの全てのDSEQが同じ値になる。ここで、もしノイズによりFSEQを与える下りフレーム900が或るスレーブノードでCRCエラーになった場合、そのスレーブノードのDSEQは、最後に受信されたFSEQとなる。或るスレーブノードのCPUが停止した場合、そのスレーブノードに対応するDSEQは、そのスレーブノードにより最後に受信されたFSEQとなる。ノイズ等により下りフレーム900の受信が失敗し、上りフレーム910内の複数のDSEQの間に差が生じる場合があるため、エラー検出部270は、上りフレーム910内の複数のDSEQの間の差の大きさが予め定められた許容値以下である場合、DSEQ条件を満たすと判定する。この処理においてエラー検出部270は、複数のDSEQの最大値から、複数のDSEQの最小値を減じた値を、複数のDSEQの間の差の大きさとして算出してもよい。エラー検出部270は、上りフレーム910内の複数のDSEQの間の差の大きさが許容値を超える場合、エラーと判定し、制御プロセッサ210に割込みを発生する。
なお、許容値を0に設定し、マスターノード200が、下りフレーム900を受信した後に、上りフレーム910を送信し、上りフレーム910を受信した後に、次の下りフレーム900を送信してもよい。また、エラー検出部270は、上限値の半分程度の基準値を予め設定し、複数のDSEQの間の差が、基準値を超える場合、複数のDSEQの中で基準値より大きいDSEQから上限値を減じて新たなDSEQとし、複数のDSEQの間の差を算出してもよい。これにより、FSEQが上限値から1へ移り変わっても、スレーブノードの異常を判定することができる。また、マスターノード200は、FSEQを所定の上限値まで増加させ、FSEQを所定の下限値まで減少させることを繰り返しても良い。
このように、マスターノード200は、複数のスレーブノードのための制御情報と、制御情報の送信タイミングを示す送信タイミング情報とを生成することと、制御情報と送信タイミング情報とを含む下りフレーム900を生成することと、下りフレーム900を下りリングネットワークへ送信することとを繰り返す。また、マスターノード200は、複数のセル回路の状態を取得するための上りフレーム910を、上りリングネットワークへ送信することを繰り返す。また、マスターノード200は、複数のスレーブノードを経由した上りフレーム910を上りリングネットワークから受信し、上りフレーム910に含まれる複数の受信タイミング情報に基づいて、複数のスレーブノードが正常であるか否かを判定する。
ここでは、エラー検出部270の動作の具体例について説明する。
図7は、各ノードにおけるフレームの転送時刻の一例を示す。
この図における横軸は時刻を示す。また、この図における8個のタイムチャートは、上から順に、マスターノード200による下りリングネットワークへの下りフレーム900の送信(ノードM下り送信)時刻と、スレーブノード300による下りリングネットワークからの下りフレーム900の受信(ノードS1下り受信)時刻と、スレーブノード400による下りリングネットワークからの下りフレーム900の受信(ノードS2下り受信)時刻と、スレーブノード500による下りリングネットワークからの下りフレーム900の受信(ノードS3下り受信)時刻と、マスターノード200による上りリングネットワークからの上りフレーム910の受信(ノードM上り受信)時刻と、スレーブノード300による上りリングネットワークへの上りフレーム910の送信(ノードS1上り送信)時刻と、スレーブノード400による上りリングネットワークへの上りフレーム910の送信(ノードS2上り送信)時刻と、スレーブノード500による上りリングネットワークへの上りフレーム910の送信(ノードS3上り送信)時刻とを示す。
この図においては、下りリングネットワークにおいて、FSEQが7である下りフレーム900が、マスターノード200により送信され、スレーブノード300、スレーブノード400、スレーブノード500と転送され、それぞれにFSEQに7がセットされる。この状態で、上りリングネットワークにおいて、マスターノード200が上りフレーム910を送信すると、各スレーブノードは、DSEQを7として上りフレーム910を送信する。
マスターノード200は、複数のプロセッサを含んでいてもよい。複数のプロセッサが、下り送信部240及び上り送信部250を夫々制御することができる。このような場合、下りフレーム900と上りフレーム910がほぼ同時に送信されることがある。例えば、下りリングネットワークで、FSEQが8である下りフレーム900が、マスターノード200により送信される。スレーブノード500では、この下りフレーム900が届く前に、上りリングネットワークで上りフレーム910が届くため、この上りフレーム910にセットされるDSEQは、最後の受信された値である7がセットされる。その結果、正しく通信できた場合でも、マスターノード200の上り受信部260により受信されたDSEQは、8、7、7となり、同じ値にはならない。
また、各スレーブノードが、複数のプロセッサを含んでいてもよい。例えば、スレーブノードにおいて、下りフレーム900の受信処理を行うプロセッサと、上りフレーム910の送信処理を行うプロセッサとが互いに異なるCPUにより非同期で行われることにより、上りフレーム910にセットされるDSEQがばらつく場合がある。
下りフレーム900の送信周期と上りフレーム910の送信周期とがほぼ等しい場合、受信される上りフレーム910内のDSEQの差は1以下である。下りフレーム900の送信周期が上りフレーム910の送信周期の2倍である場合、受信される上りフレーム910内のDSEQの差は2以下になる。ノイズによる影響や、各フレームの送信周期等を考慮して許容値を決定し、受信される上りフレーム910内のDSEQの差が許容値を超えた時、エラー検出部270は、エラーと判定すればよい。即ち、適切な許容値を設定することにより、マスターノード200は、一つの下りフレーム900の送信に対して一つの上りフレーム910を送信しなくてもよい。また、許容値を増加させると、異常が発生してからエラーと判定されるまでの上りフレーム910の数が多くなる。IGBTの応答時間を考慮し、スレーブノードの異常にIGBTが応答して故障するまでに、スレーブノードを停止させるように、許容値が設定される。例えば、IGBTの応答時間をTrとし、上りフレーム910の送信周期をTuとすると、許容値Nは、Tr/Tuより小さい値に設定される。
下りリングネットワークと上りリングネットワークが非同期で通信を行う場合や、ノイズによりスレーブノードが下りフレーム900の受信に失敗した場合、上りフレーム910内のDSEQがばらつく。マスターノード200が、上りフレーム910内のDSEQの差が許容値以下である場合に正常と判定することにより、このような原因によるDSEQのばらつきを異常と判定することを防ぐことができる。また、IGBTの応答時間を考慮して許容値を設定することにより、スレーブノードの異常によるIGBTの故障を防ぐことができる。
図8は、マスターノード200の制御プロセッサ210の動作を示す。
制御プロセッサ210は、初期化後、ステップ941で上りフレーム910(コマンド2)の送信を上り送信部250に指示し、ステップ942で上り受信部260により受信された上りフレーム910からセル電圧測定値を取得する。その後、制御プロセッサ210は、ステップ943で系統電圧ポート220及び系統電流ポート230から、系統電圧測定値と系統電流測定値を夫々取得し、ステップ944で系統電圧測定値及び系統電流測定値に基づいて制御演算を行うことにより、PWMの電圧指令値を求める。その後、制御プロセッサ210は、ステップ945で下りフレーム900(コマンド1)の送信を下り送信部240に指示することにより、FSEQ及び電圧指令値をスレーブノードへ送信する。その後、制御プロセッサ210は、ステップ941に戻り、電力変換装置100を停止するか異常を検出するまで継続する。マスターノード200の各部は、異常を発見した時、割込みを発生させ、制御プロセッサ210に割込み処理を行わせる。
ステップ942でエラー検出部270がDSEQの異常を検出すると、制御プロセッサ210の割込み要因レジスタにDSEQエラーのフラグをセットし、割込み信号をセットする。それにより制御プロセッサ210は、割込み処理のステップ950にジャンプする。その後、制御プロセッサ210は、割込み要因を判定し、割込み要因がDSEQエラーであれば、ステップ951でエラー停止処理を実行する。制御プロセッサ210は、エラー停止処理として、IGBT等が壊れないような手順で動作を停止させる処理を実行する。制御プロセッサ210は、動作を停止させる処理を終了した後、ステップ952で電力変換装置100内の故障個所を検査し、問題なければ制御部130の再起動を行う。
制御プロセッサ210は、読み出したDSEQが不一致であったことなど、ステップ951で検出された電力変換装置100の状態を、表示部280へ格納する。これに応じて表示部280は、電力変換装置100の状態を、表示装置281に表示させる。表示部280及び表示装置281は、コンピュータであってもよい。管理者は、この表示を見ることにより、制御部130の異常を認識することができ、制御部130の点検や交換等の作業を行うことができる。
なお、DSEQエラーが発生した場合、制御プロセッサ210は、上りフレーム910内の複数のDSEQの中で、最新のDSEQとの差の大きさが許容値を超えるDSEQの位置を選択し、選択された位置に対応するスレーブノードを異常と判定し、制御プロセッサ210への割込みにより、そのスレーブノードのノード番号を制御プロセッサ210へ通知してもよい。これにより、マスターノード200は、異常なスレーブノードを特定することができる。制御プロセッサ210は、表示部280に対し、そのノード番号を表示部280へ格納することにより、そのノード番号を表示装置281に表示させてもよい。これにより、管理者は、この表示を見ることにより、異常なスレーブノードを認識することができ、そのスレーブノードの点検や交換等の作業を行うことができる。
本実施例によれば、マスターノード200が一つの下りフレーム900をブロードキャストで複数のスレーブノードへ送信し、一つの上りフレーム910を用いて下りフレーム900の受信の状態を判定することにより、各スレーブノードが下りフレーム900を受信する度にマスターノード200へACK(Acknowledgement)を送信する必要がない。もし、マスターノードが、複数のスレーブノードの夫々へ制御情報を送信し、複数のスレーブノードの夫々からACKを受信すると、スレーブノードの数が増大するほど、通信回数が増大する。本実施例によれば、マスターノード200が一つの上りフレーム910により、ブロードキャストされた制御情報の受信を確認できると共に、スレーブノードの異常を検出できるため、制御部130の信頼性を保ちつつ、制御の時間間隔を短縮することができる。
また、本実施例によれば、制御部130が下り通信専用のネットワークと、上り通信専用のネットワークを用いることにより、下り通信と上り通信を独立に行うことができる。これにより、本実施例は、1本のネットワークを上り通信と下り通信で共用する場合に比べて、下りフレーム900と上りフレーム910の衝突がなくなると共に、各フレームの長さが短くなるため、フレームの送信の時間間隔を短縮することができる。また、マスターノード200が複数のプロセッサを含む場合や、各スレーブノードが複数のプロセッサを含む場合などにおいて、上り通信の処理と下り通信の処理を同期させる必要がなく、各処理の効率を向上させることができる。
下り通信のためのネットワークと、上り通信のネットワークとの夫々を、リングネットワークにすることにより、マスターノード200は、ブロードキャストで送信したフレームを受信し、正常に送信されたか否かを判定することができる。また、各フレームが全てのノードを経由することにより、全てのスレーブノードが一つの上りフレーム910に状態情報を乗せることができる。
また、本実施例によれば、下りフレーム900に、下りフレーム900の番号を含め、スレーブノードからマスターノード200への上りフレーム910に、各スレーブノードにより最後に受信された下りフレーム900の番号を含めることにより、マスターノード200は、一つの上りフレーム910により、下りリングネットワークの異常を検出することができる。下りリングネットワークは、マスターノード200の下り送信部240と、下りリングネットワーク内のケーブルと、各スレーブノード内の受信バッファ、送信バッファ、CPU330と、マスターノード200の下り受信部290とを含む。
このような制御部130を、電力変換装置100に適用することにより、各セル回路の制御の信頼性を保ちつつ、制御情報の送信の時間間隔を短縮することができる。これにより、各セル回路の動作タイミングの精度を向上させ、電力変換装置100の出力の高調波成分を低減できる。また、制御部103の異常を検出した場合に迅速に対処することにより、制御部103の異常によるセル回路の破壊を防ぐことができる。
本実施例では、制御部の異常による電力変換装置の停止を防ぐために制御部が二重化されている場合について説明する。
図10は、実施例3の電力変換装置100cの構成を示す。
本実施例の電力変換装置100cは、電力変換装置100の要素に加え、制御部130と同様の制御部130bと、制御部130を監視する監視部140と、制御部130bを監視する監視部140bと、監視部140、140bにより制御されるスイッチ160、170、180とを含む。制御部130bは、制御部130の要素と同様の、マスターノード200b(ノードM)と、スレーブノード300b(ノードS1)と、スレーブノード400b(ノードS2)と、スレーブノード500b(ノードS3)とを含む。制御部130の下りリングネットワークと同様、制御部130bの下りリングネットワークは、マスターノード200b、スレーブノード300b、スレーブノード400bと、スレーブノード500bの順にケーブルを介して下りフレーム900を伝送する。制御部130の上りリングネットワークと同様、制御部130bの上りリングネットワークは、マスターノード200b、スレーブノード500b、スレーブノード400bと、スレーブノード300bの順にケーブルを介して上りフレーム910を伝送する。
スレーブノード300とスレーブノード300bは、スイッチ160を介してセル回路600に接続されている。スレーブノード400とスレーブノード400bは、スイッチ170を介してセル回路700に接続されている。スレーブノード500とスレーブノード500bは、スイッチ180を介してセル回路800に接続されている。監視部140、140bは、管理者が電力変換装置100cの監視及び操作を行うための端末装置150に接続されている。監視部140は、端末装置150から入力される情報をマスターノード200へ入力し、マスターノード200から出力される情報を、端末装置150へ出力する。同様に、監視部140bは、端末装置150bから入力される情報をマスターノード200bへ入力し、マスターノード200bから出力される情報を、端末装置150bへ出力する。これにより、端末装置150は、表示装置281と同様、マスターノード200、200bから出力される情報を表示する。
制御部130は、通常運用時に動作するため運用(メイン)系と呼ばれ、制御部130bは、通常運用時に待機し、制御部130の障害時に動作するため待機(サブ)系と呼ばれる。
通常時、監視部140からの指示に従って、スイッチ160はスレーブノード300をセル回路600に接続し、スイッチ170はスレーブノード400をセル回路700に接続し、スイッチ180はスレーブノード500をセル回路800に接続する。これにより、制御部130は、実施例1と同様の動作により、セル回路600、700、800を制御する。監視部140は、マスターノード200とハートビート通信を行うことにより、運用系が正常であるか否かを判定する。
運用系の制御プロセッサ210は、受信した上りフレーム910内のDSEQが異常であると判定した場合、前述のステップ951において、運用系の異常を監視部140へ通知する。監視部140は、マスターノード200からの異常の通知や、マスターノード200との通信の異常等により、運用系の異常を検出すると、運用系を待機系に切り替えることを監視部140bへ指示する。更に監視部140は、運用系の異常を端末装置150へ通知する。端末装置150は、運用系の異常を示す情報を表示する。監視部140bは、スイッチ160、170、180を切り替える。監視部140bからの指示に従って、スイッチ160はスレーブノード300bをセル回路600に接続し、スイッチ170はスレーブノード400bをセル回路700に接続し、スイッチ180はスレーブノード500bをセル回路800に接続する。これにより、制御部130bは、実施例1と同様の動作により、セル回路600、700、800を制御する。
本実施例によれば、運用系のマスターノード200が、受信した上りフレーム910内のDSEQの異常を検出した場合、監視部140、140bが、迅速に運用系を待機系に切り替えることにより、電力変換装置100cの動作を継続させると共に、IGBTの故障を防ぐことができる。端末装置150が監視部140からの通知に基づいて、運用系の異常を示す情報を表示することにより、管理者は、運用系の異常を認識でき、制御部130の異常を認識することができ、運用系の点検や交換等の作業を行うことができる。
なお、一つの監視部が制御部130、130bに接続され、制御部130、130bとの通信に基づいて、スイッチ160、170、180を制御してもよい。また、電力変換装置は、3個以上の制御部を含んでもよい。また、電力変換装置は、実施例2と実施例3を組み合わせであってもよい。
以上説明した各実施例では、説明を簡単にするため、一相の交流電源を整流して直流に変換する電力変換装置の例を示した。系統電力が三相交流である場合、電力変換装置は、各相に対し、直列に接続されたセル回路を含む。三相の変圧器により系統電力の電圧を変換し、この電圧変換装置により三相交流を直流に変換する。また、1個のスレーブノードが複数のセル回路を制御してもよい。そのとき、1個のマスターノード200は、それらのセル回路を制御するスレーブノードと下りリングネットワーク及び上りリングネットワークにより結ばれ、それらのスレーブノードを制御する。
また、電力変換装置100に負荷122を接続せず、制御部130が、系統電力116へ無効電力を供給するようにセル回路を制御することにより、電力変換装置100を、無効電力補償装置として動作させることができる。また、二台の電力変換装置100の直流側同士を接続することにより、これらの電力変換装置100を直流送電装置として動作させることができる。二台の電力変換装置100の交流側の周波数を例えば50Hzと60Hzに夫々設定すれば、これらの電力変換装置100を周波数変換装置として動作させることができる。周波数変換装置の一方をモータに接続して、一方の周波数を制御することにより、この周波数変換装置をモータ制御装置として動作させることができる。このように、制御部130は、電力変換装置100以外に適用することができる。
制御システムとして、制御部130等が用いられてもよい。通信制御部として、マスターノード200等が用いられてもよい。複数の回路制御部として、スレーブノード300、400、500等が用いられてもよい。第一ネットワークとして、制御部130の下りリングネットワーク等が用いられてもよい。第二ネットワークとして、制御部130の上りリングネットワーク等が用いられてもよい。複数の対象回路として、セル回路600、700、800等が用いられてもよい。制御フレームとして、下りフレーム900等が用いられてもよい。状態フレームとして、上りフレーム910等が用いられてもよい。制御情報として、電圧指令値等が用いられてもよい。送信タイミング情報として、FSEQ等が用いられてもよい。受信タイミング情報として、DSEQ等が用いられてもよい。状態情報として、セル電圧測定値等が用いられてもよい。表示装置として、表示装置281、端末装置150等が用いられてもよい。予備通信制御部として、マスターノード200b等が用いられてもよい。予備回路制御部として、スレーブノード300b、400b、500b等が用いられてもよい。第三ネットワークとして、制御部130bの下りリングネットワーク等が用いられてもよい。第四ネットワークとして、制御部130bの上りリングネットワーク等が用いられてもよい。電力変換装置として、電力変換装置100、100c等が用いられてもよい。複数の電力変換回路として、セル回路600、700、800等が用いられてもよい。
このように、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を判り易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現しても良い。また、上記に各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し実行することにより、ソフトウェアで実現されても良い。また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際にはほとんどすべての構成が相互に接続されていると考えてよい。