JP2016016434A - セラミックス複合材およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】機械加工性に優れるセラミックス複合材およびその製造方法を提供すること。【解決手段】セラミックス複合材の製造方法を、粉末状の窒化ホウ素および粉末状の炭素を混合する混合工程と、混合粒子材にアルミニウム溶融材料を含浸させてセラミックス複合材を得る複合材形成工程と、で構成する。【選択図】なし
Description
本発明は窒化ホウ素およびアルミニウムを含むセラミックス複合材およびその製造方法に関する。
アルミナ(Al2O3)や窒化ケイ素(Si3N4)などのセラミックス材は、耐摩耗性や耐熱性等に優れる材料として、従来から種々の用途に供されている。しかしこれらのセラミックス材は、耐摩耗性や耐熱性等に優れる反面、精密加工性や快削性といった機械加工性に劣る問題があった。このため近年では、機械加工性の向上したセラミックス複合材(所謂マシナブルセラミックス、Machinable−ceramics)の開発が進められている(例えば、特許文献1参照)。マシナブルセラミックスは、上述した従来のセラミックス材に比べて優れた機械加工性を示し、その特徴を活かして、半導体製造装置用部品やマイクロマシン用絶縁部品等、微細な機械加工を要求される用途に供されている。
一般的なマシナブルセラミックスは、その構造上の違いから大きく2つに分けることができる。
その一つは、マイカ等の層状化合物粒子をマトリックスとし、当該マトリックス中にジルコニア粒子、アルミナ粒子等のセラミックス粒子を分散させたものである。この種のマシナブルセラミックスは、機械加工性(所謂マシナブル性)に優れるマトリックスに、高強度かつ高硬度の粒子が分散した構造を有する。
もう一つは、Al2O3/BNセラミックス、Si3N4/BNセラミックス等のように、セラミックス粒子をマトリックスとし、当該マトリックスに窒化ホウ素(BN:Boron nitride)やマイカ等の層状化合物粒子を分散させたものである。この種のマシナブルセラミックスは、高強度かつ高硬度のマトリックスに、機械加工性に優れる層状化合物粒子が分散した構造を有する。
上述したように、これらのマシナブルセラミックスは一般的なセラミックス材に比べると機械加工性に優れる。しかしながら近年では、さらに微細な機械加工が施されたセラミックス材が求められており、このため機械加工性のさらに向上したセラミックス複合材の開発が望まれている。
本発明は上記事情を考慮してなされたものであり、機械加工性に優れるセラミックス複合材およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の発明者等は、鋭意研究の結果、アルミニウムを含むマトリックスに粒子状の窒化ホウ素材料を分散させてセラミックス複合材を構成することで、機械加工性に優れるセラミックス複合材が得られることを見出した。さらに、粒子状の炭素材料を窒化ホウ素材料と併用することで、マトリックス中における窒化ホウ素材料の分散性を向上させて、セラミックス複合材の機械加工性をさらに向上させ得ることを見出した。
すなわち、上記課題を解決する本発明のセラミックス複合材の製造方法は、
複数の窒化ホウ素粒子からなる窒化ホウ素材料、および、複数の炭素粒子からなる炭素材料を混合して、混合粒子材を得る混合工程と、
前記混合粒子材にアルミニウム溶融材料を含浸させ、固化させてセラミックス複合材を得る複合材形成工程と、を備える方法である。
複数の窒化ホウ素粒子からなる窒化ホウ素材料、および、複数の炭素粒子からなる炭素材料を混合して、混合粒子材を得る混合工程と、
前記混合粒子材にアルミニウム溶融材料を含浸させ、固化させてセラミックス複合材を得る複合材形成工程と、を備える方法である。
本発明のセラミックス複合材の製造方法は、下記の(1)〜(8)の何れかを備えるのが好ましく、(1)〜(8)の複数を備えるのがより好ましい。なお、下記の各要素は、任意に抽出しかつ組み合わせることが可能である。
(1)さらに、前記セラミックス複合材を不活性雰囲気で加熱する熱処理工程を備える。
(2)前記窒化ホウ素粒子の平均粒子径は1μm以上30μm以下である。
(3)前記熱処理工程における加熱温度は、750℃を超える温度である。
(4)前記炭素粒子の平均粒子径は30μm以下である。
(5)前記複合体形成工程において、加圧成形した前記混合粒子材に前記アルミニウム溶融材料を含浸させる。
(6)前記アルミニウム溶融材料は、溶融状態のアルミニウム−ケイ素合金からなる。
(7)前記混合工程において、前記窒化ホウ素材料および前記炭素材料を分散媒中で混合し、スラリー状の前記混合粒子材を得る。
(8)前記窒化ホウ素材料および前記炭素材料の配合比は、質量比で、1:0.2〜1:5の範囲である。
(1)さらに、前記セラミックス複合材を不活性雰囲気で加熱する熱処理工程を備える。
(2)前記窒化ホウ素粒子の平均粒子径は1μm以上30μm以下である。
(3)前記熱処理工程における加熱温度は、750℃を超える温度である。
(4)前記炭素粒子の平均粒子径は30μm以下である。
(5)前記複合体形成工程において、加圧成形した前記混合粒子材に前記アルミニウム溶融材料を含浸させる。
(6)前記アルミニウム溶融材料は、溶融状態のアルミニウム−ケイ素合金からなる。
(7)前記混合工程において、前記窒化ホウ素材料および前記炭素材料を分散媒中で混合し、スラリー状の前記混合粒子材を得る。
(8)前記窒化ホウ素材料および前記炭素材料の配合比は、質量比で、1:0.2〜1:5の範囲である。
また、上記課題を解決する本発明のセラミックス複合材は、上記の何れかの方法で製造されてなるものである。
本発明のセラミックス複合材の製造方法によると、機械加工性に優れるセラミックス複合材を得ることができる。また、本発明のセラミックス複合材は機械化工性に優れる。
以下に、本発明を実施するための形態を説明する。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「a〜b」は、下限aおよび上限bをその範囲に含む。そして、これらの上限値および下限値、ならびに実施例中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。さらに数値範囲内から任意に選択した数値を上限、下限の数値とすることができる。
〔セラミックス複合材〕
本発明のセラミックス複合材は、窒化ホウ素材料、炭素材料およびアルミニウム溶融材料を材料とする。本発明のセラミックス複合材は、アルミニウムを含有するマトリックスと、当該マトリックスに分散された窒化ホウ素粒子とで構成されていると考えられる。炭素材料粒子状は、窒化ホウ素粒子の分散性を向上させる目的で用いられ、炭素材料はアルミニウム(および/またはアルミニウムとともにアルミニウム溶融材料を構成するその他の元素)と反応して金属間化合物を形成するとともに、アルミニウムとともにマトリックスを構成すると考えられる。
本発明のセラミックス複合材は、窒化ホウ素材料、炭素材料およびアルミニウム溶融材料を材料とする。本発明のセラミックス複合材は、アルミニウムを含有するマトリックスと、当該マトリックスに分散された窒化ホウ素粒子とで構成されていると考えられる。炭素材料粒子状は、窒化ホウ素粒子の分散性を向上させる目的で用いられ、炭素材料はアルミニウム(および/またはアルミニウムとともにアルミニウム溶融材料を構成するその他の元素)と反応して金属間化合物を形成するとともに、アルミニウムとともにマトリックスを構成すると考えられる。
窒化ホウ素材料は、窒化ホウ素粒子(つまり、粒子状をなす窒化ホウ素)の集合体である。窒化ホウ素(BN)は固体潤滑性に優れる材料であり、この固体潤滑性がセラミックス複合材の快削性や精密加工性の向上に寄与すると考えられる。
なお、窒化ホウ素のモース硬度は2程度であり、黒鉛のモース硬度と同程度である。このような窒化ホウ素は柔らかく、薄く剥がれ易い性質を持つ。このため窒化ホウ素は、セラミックス複合材中において亀裂の進展を防ぎ、セラミックス複合材の精密加工性向上に寄与すると考えられる。また、窒化ホウ素は、セラミックス複合材に優れた固体潤滑性を付与することで、セラミックス複合材の快削性向上に寄与すると考えられる。
炭素材料は、複数の炭素粒子の集合体である。本発明のセラミックス複合材およびその製造方法において、炭素粒子は、窒化ホウ素とアルミニウムとの濡れ性を高め、アルミニウムで構成されるマトリックス中において窒化ホウ素粒子を高分散させることを主目的として使用される。
つまり、窒化ホウ素はアルミニウムとの濡れ性に乏しく、比較的低温(例えばアルミニウムの融点である660.3℃付近)では、窒化ホウ素とアルミニウムとは殆ど反応しない。これに対して、炭素とアルミニウムとはアルミニウムの融点付近において4Al+3C→Al4C3の反応が生じる。このため、炭素とアルミニウムとの濡れ性は良いと考えられる。そして、このような炭素粒子を窒化ホウ素粒子に混合し、得られた混合物(混合粒子材)を後述するアルミニウム溶融材料と接触させることで、窒化ホウ素粒子をアルミニウムのマトリックス中に高分散させ得ると考えられる。なお、上述したように炭素はアルミニウムと反応する為、本発明のセラミックス複合材におけるマトリックスは、アルミニウムだけでなく炭素を含むと考えられる。
アルミニウム溶融材料は、アルミニウムおよび/またはアルミニウム合金が溶融してなるものである。つまり、アルミニウム溶融材料は、アルミニウム元素を必須としアルミニウム以外の元素を含み得る。アルミニウム以外の元素としては、ケイ素、鉄、銅、マンガン、マグネシウム、クロム、亜鉛、チタン、バナジウム、ビスマス、鉛、ジルコニウム等を含み得るが、これに限定されない。
本発明のセラミックス複合材の形状は特に限定されず、用途に応じて種々の形状をとり得る。
以下、本発明のセラミックス複合材の製造方法を説明する。なお、本発明のセラミックス複合材は、本発明の製造方法によって製造することができる。
〔セラミックス複合材の製造方法〕
(混合工程)
混合工程は、上記した窒化ホウ素材料と炭素材料とを混合して、混合粒子材を得る工程である。混合工程は、気体中で(つまり乾燥状態で)行なっても良いし、分散媒中で(つまり湿潤状態で)行なっても良いが、窒化ホウ素材料と炭素材料との分散性を考慮すると、分散媒中で行なうのが好ましい。したがって、混合工程で得られる混合粒子材は、窒化ホウ素材料および炭素材料のみで構成されても良いし、分散媒を含んでも良い。
(混合工程)
混合工程は、上記した窒化ホウ素材料と炭素材料とを混合して、混合粒子材を得る工程である。混合工程は、気体中で(つまり乾燥状態で)行なっても良いし、分散媒中で(つまり湿潤状態で)行なっても良いが、窒化ホウ素材料と炭素材料との分散性を考慮すると、分散媒中で行なうのが好ましい。したがって、混合工程で得られる混合粒子材は、窒化ホウ素材料および炭素材料のみで構成されても良いし、分散媒を含んでも良い。
分散媒としては、窒化ホウ素および炭素に対する反応性の低い材料を選択するのが良く、例えば、水を選択するのが好ましい。或いは、メタノールやエタノール、プロパノールに代表される低級アルコールや、これらの少なくとも一種を含む水溶液等を選択しても良い。勿論、分散媒はこれに限定されず、種々のものを使用可能である。
混合工程は、ボールミル等の既知の混合装置を用いて行なえば良く、攪拌子の回転数や混合時間等は、必要とされる窒化ホウ素粒子および炭素粒子の分散状態に応じて適宜設定すれば良い。
(窒化ホウ素材料)
窒化ホウ素としては既知のものを使用でき、例えばその結晶構造は、六方晶、閃亜鉛鉱型構造、ウルツ鉱型構造等、種々の構造をとり得る。
窒化ホウ素としては既知のものを使用でき、例えばその結晶構造は、六方晶、閃亜鉛鉱型構造、ウルツ鉱型構造等、種々の構造をとり得る。
セラミックス複合材の機械加工性向上を考慮すると、窒化ホウ素はセラミックス複合材中に分散するのが良いと考えられる。このため、本発明のセラミックス複合材の製造方法(以下、必要に応じて本発明の製造方法と略する)においては、窒化ホウ素として粒子状のものを用いている。より具体的には、窒化ホウ素粒子として、平均粒子径30μm以下のものを用いるのが好ましく、平均粒子径10μm以下のものを用いるのがより好ましく、平均粒子径5μm以下のものを用いるのがさらに好ましい。
また、窒化ホウ素粒子の分散性をより向上させるためには、窒化ホウ素粒子の粒子径が過小でないのが良いと考えられる。窒化ホウ素粒子の粒子径が過小であれば、窒化ホウ素粒子自体が凝集し易くなり、マトリックスを構成するアルミニウムに対して均一に分散し難くなるためである。具体的には、窒化ホウ素粒子として、平均粒子径1μm以上のものを用いるのが好ましく、平均粒子径1.5μm以上のものを用いるのがより好ましく、平均粒子径2μm以上のものを用いるのがさらに好ましい。後述するように、平均粒径1μm未満の窒化ホウ素粒子を用いと、場合によっては、窒化ホウ素粒子をマトリックス中に均一に分散させ難くなる。
なお本明細書において、平均粒子径とは、レーザー回折・散乱法による粒子径分布測定で得られた体積平均径を指す。
(炭素材料)
炭素粒子の平均粒子径は、窒化ホウ素粒子の平均粒子径同様、過大でないのが良いと考えられる。具体的には、炭素粒子の平均粒子径は、30μm以下であるのが好ましく、10μm以下であるのがより好ましい。また、凝集性を考慮すると、炭素粒子の平均粒子径は過小でないのが好ましい。具体的には炭素粒子の平均粒子径は10nm以上であるのが好ましく、30nm以上であるのがより好ましく、50nm以上であるのがさらに好ましく、100nm以上であるのがなお好ましい。
炭素粒子の平均粒子径は、窒化ホウ素粒子の平均粒子径同様、過大でないのが良いと考えられる。具体的には、炭素粒子の平均粒子径は、30μm以下であるのが好ましく、10μm以下であるのがより好ましい。また、凝集性を考慮すると、炭素粒子の平均粒子径は過小でないのが好ましい。具体的には炭素粒子の平均粒子径は10nm以上であるのが好ましく、30nm以上であるのがより好ましく、50nm以上であるのがさらに好ましく、100nm以上であるのがなお好ましい。
炭素粒子は、炭素を主成分とする粒子状の材料を指し、その形状等は特に限定されない。例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(R)、カーボンナノチューブ、フラーレン、カーボンナノホーン等を炭素粒子として挙げることができる。なお、ここで言う主成分とは全質量の50%以上が炭素元素で占められていることを指す。したがって炭素粒子は、例えば水素等、炭素元素以外の元素を含み得る。
炭素材料の窒化ホウ素材料に対する配合比は、アルミニウムとの濡れ性、セラミックス複合材に要求される機械加工性等に応じて適宜設定できるが、機械加工性を考慮すると窒化ホウ素材料の配合量が多いのが好ましく、アルミニウムとの濡れ性を考慮すると炭素材料の配合量が多いのが好ましい。具体的には、窒化ホウ素材料1質量部に対する炭素材料の配合比は、0.2〜5質量部の範囲であるのが好ましく、0.3〜3質量部の範囲であるのがより好ましく、0.3〜2質量部の範囲であるのがさらに好ましい。
(複合材形成工程)
複合材形成工程においては、上記した混合工程で得られた混合粒子材に、アルミニウム溶融材料を含浸させ、固化させてセラミックス複合材を得る。
複合材形成工程においては、上記した混合工程で得られた混合粒子材に、アルミニウム溶融材料を含浸させ、固化させてセラミックス複合材を得る。
アルミニウム溶融材料として、溶融したアルミニウム合金を用いる場合、アルミニウムの含有量は、アルミニウム合金全体を100質量%としたときに75質量%以上であるのが好ましく、75質量%以上95質量%以下であるのがより好ましい。アルミニウム合金におけるアルミニウムの含有量が上記の範囲内であれば、アルミニウム溶融材料は流動性に優れ、混合粒子材に対する含浸が容易である。また、アルミニウムに対するその他の元素の量が充分に小さく、炭素や、窒化ホウ素の構成元素である窒素およびホウ素と当該その他の元素との反応が充分に抑制される。
例えば、アルミニウム合金としてアルミニウム−ケイ素合金(所謂Al−Si系合金)を用いる場合には、アルミニウムの融点付近でアルミニウム溶融材料を窒化ホウ素および炭素に接触させれば良いと考えられる。
また、アルミニウム溶融材料に対して多くの混合粒子材を加えるためには、アルミニウム溶融材料を含浸させる前に、混合粒子材の密度を高めるのが良いと考えられる。混合粒子材の密度を高める方法としては、プレス成形に代表される既知の加圧成形法を採用できる。つまり、本発明の製造方法における前駆体形成工程は、加圧成形工程を含み得る。
さらに、上述したように、混合工程で得られた混合粒子材は分散媒を含み得る。よって、混合粒子材が分散媒を含む場合には、複合材形成工程で混合粒子材にアルミニウム溶融材料を含浸させる前に、分散媒を除去するのが好ましい。具体的には、アルミニウム溶融材料を含浸させる前の混合粒子材を予め乾燥させる方法が挙げられる。この場合、混合粒子材が固形化する場合がある。このため、必要に応じて、ミキサー等の粉砕器を用いて乾燥後の混合粒子材を再度粒子状にすれば良い。或いは、上記した加圧成形時に混合粒子材を加熱乾燥させても良い。これに限らず、分散媒を除去する方法としては種々の方法を選択し得る。
アルミニウム溶融材料に対する窒化ホウ素の配合比は、セラミックス複合材に要求される機械加工性等に応じて適宜設定できるが、機械加工性を考慮すると、窒化ホウ素材料に対するアルミニウム溶融材料の配合比は少ない方が好ましい。
一方、セラミックス複合材の強度を考慮すると、マトリックスとなるアルミニウム溶融材料の配合比は多い方が良いと考えられる。また、窒化ホウ素材料の配合比が過大でありアルミニウム溶融材料の配合比が過小であればセラミックス複合材が脆くなるため、場合によってはセラミックス複合材の精密加工性を高め難くなる可能性もある。
これらを考慮すると、窒化ホウ素材料に対するアルミニウム溶融材料の配合比は、窒化ホウ素材料1質量部に対して、0.3〜2質量部の範囲であるのが好ましく、0.5〜1.5質量部の範囲であるのがより好ましく、0.8〜1質量部の範囲であるのがさらに好ましい。
なお窒化ホウ素および炭素の配合比は上述したとおりである。整理すると、窒化ホウ素材料を基準とした炭素材料およびアルミニウム溶融材料の量は、質量比で、窒化ホウ素材料:炭素材料:アルミニウム溶融材料=1:0.2:0.3〜1:5:2であるのが好ましい。より好ましくは、窒化ホウ素材料:炭素材料:アルミニウム溶融材料=1:0.3:0.5〜1:3:1.5であるのが良い。さらに好ましくは、窒化ホウ素材料:炭素材料:アルミニウム溶融材料=1:0.3:0.8〜1:2:1であるのが良い。上述したように、炭素材料は窒化ホウ素とアルミニウムとの濡れ性を向上させるために配合するため、アルミニウムの配合量が多くなれば、必要とされる炭素材料の配合量もまた多くなる。
複合材形成工程において、アルミニウム溶融材料は混合粒子材に含浸される。このときアルミニウム溶融材料は、混合粒子材内において、主として窒化ホウ素粒子同士の間隙に入り込む。したがって、前駆体形成工程に用いられる混合粒子材の気孔率が大きければ大きい程、当該混合粒子材に含浸可能なアルミニウム溶融材料の量もまた多くなる。このため、上記の加圧成形工程における混合粒子材の気孔率は、複合材形成工程において当該混合粒子材に含浸させたいアルミニウム溶融材料の量に応じて適宜設定すれば良い。そして、加圧成形工程において混合粒子材に含浸させたいアルミニウム溶融材料の量は、セラミックス複合材の用途、例えばセラミックス複合材に要求される機械加工性等に応じて適宜設定すれば良い。
なお、上述したように炭素はアルミニウムと反応すると考えられ、炭素粒子の少なくとも一部はアルミニウム溶融材料中に溶け込むと考えられる。つまり、本発明のセラミックス複合材において、炭素元素はアルミニウム元素とともにマトリックスを構成すると考えられる。しかし、上記の前駆体形成工程において混合粒子材とアルミニウム溶融材料とを含む反応系の中に炭素粒子が残存する場合には、炭素粒子同士の間隙および炭素粒子と窒化ホウ素粒子との間隙にもアルミニウム溶融材料が入り込む。
以上のように得られた混合粒子材に、アルミニウム溶融材料を含浸させる際の、アルミニウム溶融材料の温度はアルミニウムの融点付近(またはアルミニウム合金の融点付近)であるのが好ましい。アルミニウム合金を用いる場合には、アルミニウム合金に含まれるケイ素等のその他の材料と窒素、ホウ素および炭素との反応を抑制するためである。また、アルミニウム溶融材料を必要以上に高温にしないことで、製造コストを低減できる利点もある。好ましくは、このときのアルミニウム溶融材料の温度はアルミニウムの融点またはアルミニウム合金の融点以上であり、かつ、1000℃以下であるのが好ましい。より好ましくは900℃以下であるのが良く、さらに好ましくは800℃以下であるのが良く、特に好ましくは750℃以下であるのが良い。
なお、アルミニウム溶融材料の含浸は、大気圧下で行なっても良いし、加圧下で行なっても良い。また、大気中で行なっても良いし、アルゴンや窒素等の窒素、ホウ素および炭素に対する不活性ガス中(つまり不活性雰囲気中)で行なっても良い。
(熱処理工程)
熱処理工程においては、上記複合材形成工程で得られたセラミックス複合材を、不活性雰囲気で加熱する工程である。不活性雰囲気は、上記の複合材形成工程における不活性雰囲気と同様である。
熱処理工程においては、上記複合材形成工程で得られたセラミックス複合材を、不活性雰囲気で加熱する工程である。不活性雰囲気は、上記の複合材形成工程における不活性雰囲気と同様である。
熱処理工程をおこなうことで、セラミックス複合材を緻密化および高強度化できると考えられる。緻密化および高強度化したセラミックス複合材は、機械加工性、特に精密加工性が向上すると考えられる。熱処理工程における加熱温度はある程度高い方が好ましく、具体的には750℃を超えるのが良い。また、より好ましくは800℃を超え1100℃未満であるのが良く、特に好ましくは900℃以上1000℃以下であるのが良い。
以下に、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。以下において、特に断らない限り、「部」とは質量部を意味し、「%」とは質量%を意味する。
(実施例)
(混合工程)
窒化ホウ素材料として、平均粒子径0.05μm、平均粒子径0.7μm、および平均粒子径3.0μmの3種の窒化ホウ素材料を準備した。各窒化粒子材料はジクス工業株式会社製であり、それぞれ、ZSA−200(平均粒子径0.05μm)、ZSA−20(平均粒子径0.7μm)、ZSA−5(平均粒子径3.0μm)であった。
(混合工程)
窒化ホウ素材料として、平均粒子径0.05μm、平均粒子径0.7μm、および平均粒子径3.0μmの3種の窒化ホウ素材料を準備した。各窒化粒子材料はジクス工業株式会社製であり、それぞれ、ZSA−200(平均粒子径0.05μm)、ZSA−20(平均粒子径0.7μm)、ZSA−5(平均粒子径3.0μm)であった。
炭素材料として、平均粒子径110nmのカーボンブラックを準備した。この炭素材料は自己分散型カーボンブラック(東海カーボン株式会社製、Aqua−Black(R)162)であった。
各窒化粒子材料30gに、それぞれ蒸留水110gおよび炭素材料50gを加え、ボールミルを用いて24時間混合して、スラリー状をなす3種の混合粒子材を得た。
(複合材形成工程)
〔1〕乾燥工程
上記の混合工程で得たスラリー状の各混合粒子材を、平らな容器に移し、恒温槽で90℃、24時間乾燥させて、固形状の混合粒子材を得た。
〔1〕乾燥工程
上記の混合工程で得たスラリー状の各混合粒子材を、平らな容器に移し、恒温槽で90℃、24時間乾燥させて、固形状の混合粒子材を得た。
〔2〕加圧成形工程
乾燥工程で得た固体状の各混合粒子材を、各々ミキサーで粉砕して粉末にした。その後、粉末状の各混合粒子材を1000kg/2cm2の圧力でプレス成形して、直径40mm厚さ10mmの成形体状の混合粒子材を得た。各々の成形体状の混合粒子材の気孔率は40%程度であった。
乾燥工程で得た固体状の各混合粒子材を、各々ミキサーで粉砕して粉末にした。その後、粉末状の各混合粒子材を1000kg/2cm2の圧力でプレス成形して、直径40mm厚さ10mmの成形体状の混合粒子材を得た。各々の成形体状の混合粒子材の気孔率は40%程度であった。
〔3〕含浸工程
溶湯鍛造法と呼ばれる方法を用いて、成形体状の各混合粒子材に、アルミニウム溶融材料を含浸させた。アルミニウム溶融材料としては、溶融したAl−Si合金を用いた。ここで用いたAl−Si合金は、Al、Si、Fe、Mgを含み、Siの含有量はモル分率で10%程度であった。参考までに、Siの含有量は10質量%であり、Alの含有量は89質量%であり、残りの1質量%はそれ以外の元素からなる。
溶湯鍛造法と呼ばれる方法を用いて、成形体状の各混合粒子材に、アルミニウム溶融材料を含浸させた。アルミニウム溶融材料としては、溶融したAl−Si合金を用いた。ここで用いたAl−Si合金は、Al、Si、Fe、Mgを含み、Siの含有量はモル分率で10%程度であった。参考までに、Siの含有量は10質量%であり、Alの含有量は89質量%であり、残りの1質量%はそれ以外の元素からなる。
このAl−Si合金を加熱し溶融させたものを、上記の成形体状の混合粒子材を入れた成形型に注ぎ、660℃〜750℃程度の温度下で10MPa〜50MPa程度で加圧することで、混合粒子材の気孔(空隙)にアルミニウム溶融材料(つまり溶融したAl−Si合金)を含浸させた。その後、室温にまで自然放冷して、得られたセラミックス複合材を成形型から取り出した。なお、平均粒子径0.05μmの窒化ホウ素材料を用いた混合粒子材、および、平均粒子径0.7μmの窒化ホウ素材料を用いた混合粒子材には、アルミニウム溶融材料は含浸しなかった。一方、平均粒子径3.0μmの窒化ホウ素材料を用いた混合粒子材にはアルミニウム溶融材料が含浸した。したがって、アルミニウム溶融材料が含浸した混合粒子材、つまり、平均粒子径3.0μmの窒化ホウ素粒子を用いたセラミックス複合材のみを、以下の工程に供した。
(熱処理工程)
上記の工程で得られたセラミックス複合材を、1cm〜0.5cm程度に切断した。切断後の各セラミックス複合材を、それぞれ加熱炉に入れ、アルゴン雰囲気下において800℃、900℃、1000℃、1100℃で熱処理した。熱処理に要した時間は3時間程度であった。なお、上記の熱処理温度は加熱炉内の温度であるが、比較的長い時間熱処理しているため、各セラミックス複合材自体の温度も熱処理温度に近似した温度になっているとみなし得る。
上記の工程で得られたセラミックス複合材を、1cm〜0.5cm程度に切断した。切断後の各セラミックス複合材を、それぞれ加熱炉に入れ、アルゴン雰囲気下において800℃、900℃、1000℃、1100℃で熱処理した。熱処理に要した時間は3時間程度であった。なお、上記の熱処理温度は加熱炉内の温度であるが、比較的長い時間熱処理しているため、各セラミックス複合材自体の温度も熱処理温度に近似した温度になっているとみなし得る。
熱処理後、炉内で室温にまで自然放冷して、試験2〜試験5のセラミックス複合材を得た。なお、試験1のセラミックス複合材は、熱処理前のセラミックス複合材である。
試験1〜試験5のセラミックス複合材は、平均粒子径3.0μmの窒化ホウ素材料を用いたものである。そして、試験1のセラミックス複合材は熱処理工程を行なわず加熱しなかったものであり、試験2のセラミックス複合材は、熱処理工程において800℃で加熱したものであり、試験3のセラミックス複合材は熱処理工程において900℃で加熱したものであり、試験4のセラミックス複合材は熱処理工程において1000℃で加熱したものであり、試験5のセラミックス複合材は熱処理工程において1100℃で加熱したものである。
これとは別に、板状のAl−Si合金を準備し、参考試験1のアルミニウム合金材とした。
試験1〜試験5のセラミックス複合材、および、参考試験1のアルミニウム合金材の詳細を表1に示す。また、上記の複合材形成工程でアルミニウム溶融材料が含浸しなかった2つの試験についても表1に併記する。平均粒子径0.05μmの窒化ホウ素材料を用いた混合粒子材を試験6の混合粒子材と呼び、平均粒子径0.7μmの窒化ホウ素材料を用いた混合粒子材を試験7の混合粒子材と呼ぶ。
(評価試験1)アルミニウム溶融材料の含浸評価
上述したように、上記の複合体形成工程において、平均粒子径3.0μmの窒化ホウ素材料を用いた混合粒子材にはアルミニウム溶融材料が含浸したが、平均粒子径0.05μmの窒化ホウ素材料を用いた混合粒子材(つまり試験6の混合粒子材)および平均粒子径0.7μmの窒化ホウ素材料を用いた混合粒子材(つまり試験7の混合粒子材)にはアルミニウム溶融材料が含浸しなかった。これは、窒化ホウ素粒子と炭素粒子との分散状態の差によるものと考えられる。
上述したように、上記の複合体形成工程において、平均粒子径3.0μmの窒化ホウ素材料を用いた混合粒子材にはアルミニウム溶融材料が含浸したが、平均粒子径0.05μmの窒化ホウ素材料を用いた混合粒子材(つまり試験6の混合粒子材)および平均粒子径0.7μmの窒化ホウ素材料を用いた混合粒子材(つまり試験7の混合粒子材)にはアルミニウム溶融材料が含浸しなかった。これは、窒化ホウ素粒子と炭素粒子との分散状態の差によるものと考えられる。
つまり、粒径の小さな窒化ホウ素粒子は同じく粒径の小さな炭素粒子に対して均一に分散させることが難しい。このため、粒径の小さな窒化ホウ素粒子を用いた試験6および試験7においては、混合工程で得られた混合粒子材中において、窒化ホウ素粒子が凝集して炭素粒子が均一に分散していなかったと考えられる。炭素粒子が均一に分散しないと、炭素粒子とアルミニウム溶融材料との接触頻度が低く、炭素によるアルミニウムおよび窒化ホウ素の濡れ性向上効果が十分に発揮されず、結果的に、混合粒子材にアルミニウム溶融材料が含浸しなかったと考えられる。
なお、窒化ホウ素粒子と炭素粒子とが充分に分散した混合粒子材が得られれば、粒径の小さな窒化ホウ素粒子を用いる場合にも混合粒子材にアルミニウム溶融材料が含浸すると考えられる。窒化ホウ素粒子と炭素粒子との分散性を高めるためには、窒化ホウ素粒子と炭素粒子との斥力ポテンシャルを向上させる必要があると考えられる。具体的には、窒化ホウ素粒子および炭素粒子の表面電位の絶対値を上げる方法、窒化ホウ素粒子および炭素粒子の対イオン濃度を下げる方法が挙げられる。例えば、混合工程において用いる分散媒(実施例では水)のpHをコントロールすれば良いと考えられる。
(評価試験2)機械加工性の評価
試験1〜試験5のセラミックス複合材、および、参考試験1のアルミニウム合金材について、電動ドリルで穴あけ加工した。ドリル刃としては、電着ダイヤモンド極細ドリル(株式会社ナカニシ製、軸径φ3.0、先端径φ0.5、粒度320)を使用した。各セラミックス複合材およびアルミニウム合金材について、3回ずつ穴あけ加工を行なった。なお、参考試験1のアルミニウム合金材については、加工途中でドリル刃が折れてしまい、貫通穴は形成されなかった。
試験1〜試験5のセラミックス複合材、および、参考試験1のアルミニウム合金材について、電動ドリルで穴あけ加工した。ドリル刃としては、電着ダイヤモンド極細ドリル(株式会社ナカニシ製、軸径φ3.0、先端径φ0.5、粒度320)を使用した。各セラミックス複合材およびアルミニウム合金材について、3回ずつ穴あけ加工を行なった。なお、参考試験1のアルミニウム合金材については、加工途中でドリル刃が折れてしまい、貫通穴は形成されなかった。
(評価試験2−1)精密加工性の評価
穴あけ加工後の各セラミックス複合材をSEMにて観察し、得られたSEM像を画像解析することによって、穴あけ加工により生じた穴(以下、加工穴と呼ぶ)の面積を算出した。ドリル刃は、各セラミックス複合材の表面に対して略直交するように当接させた。したがって、理想的には、ドリル刃の径と同じ穴径の加工穴が形成される筈である。よって、当該精密加工性の評価においては、加工穴の径が小さく、ドリル刃の径に近い程、セラミックス複合材の精密加工性が良いと判断した。なお、穴あけ加工中にセラミックス複合材にクラックが生じたり、ドリル刃がセラミックス複合材に対してしなったりすることで、加工穴の径は大きくなると考えられる。各セラミックス複合材のSEM像を図1〜図5に示す。また、精密加工性の評価結果を表2〜表4に示す。なお、図1は試験1のセラミックス複合材のSEM像であり、図2は試験2のセラミックス複合材のSEM像であり、図3は試験3のセラミックス複合材のSEM像であり、図4は試験4のセラミックス複合材のSEM像であり、図5は試験5のセラミックス複合材のSEM像である。また、表2はSEM像における加工穴の面積(ピクセル)の実測値を示し、表3および表4は表2に示す実測値を元に分散分析した結果を示す。
穴あけ加工後の各セラミックス複合材をSEMにて観察し、得られたSEM像を画像解析することによって、穴あけ加工により生じた穴(以下、加工穴と呼ぶ)の面積を算出した。ドリル刃は、各セラミックス複合材の表面に対して略直交するように当接させた。したがって、理想的には、ドリル刃の径と同じ穴径の加工穴が形成される筈である。よって、当該精密加工性の評価においては、加工穴の径が小さく、ドリル刃の径に近い程、セラミックス複合材の精密加工性が良いと判断した。なお、穴あけ加工中にセラミックス複合材にクラックが生じたり、ドリル刃がセラミックス複合材に対してしなったりすることで、加工穴の径は大きくなると考えられる。各セラミックス複合材のSEM像を図1〜図5に示す。また、精密加工性の評価結果を表2〜表4に示す。なお、図1は試験1のセラミックス複合材のSEM像であり、図2は試験2のセラミックス複合材のSEM像であり、図3は試験3のセラミックス複合材のSEM像であり、図4は試験4のセラミックス複合材のSEM像であり、図5は試験5のセラミックス複合材のSEM像である。また、表2はSEM像における加工穴の面積(ピクセル)の実測値を示し、表3および表4は表2に示す実測値を元に分散分析した結果を示す。
上述したように、窒化ホウ素粒子を含まない参考試験1のアルミニウム合金材はドリル刃が折れたため精密加工できなかったが、試験1〜試験5のセラミックス複合材は何れも精密加工可能であり、しかも、各セラミックス複合材に形成された加工穴は何れも充分に小さかった。この結果から、窒化ホウ素粒子を含む本発明のセラミックス複合材は精密加工性に優れるといえる。
なお、表4に示す分散分析の結果からは、試験1〜試験5のセラミックス複合材の精密加工性には、有意差はないと判断される。つまり、熱処理工程の有無や熱処理工程における加熱温度は、セラミックス複合材の精密加工性にはあまり大きく影響しない。
但し、表2に示すように、加工穴の面積は、試験4<試験3<試験1<試験2<試験5の順に小さい傾向にある。つまり、各セラミックス複合材の精密加工性は試験4>試験3>試験1>試験2>試験5の順に優れている傾向にある。したがって、熱処理工程を行ない、その際の加熱温度を750℃、つまりアルミニウム溶融材料の温度を超える温度、かつ、1100℃未満にすることで、セラミックス複合材の精密加工性が向上すると言うことが可能である。
(評価試験2−2)快削性の評価
上記の穴あけ加工に用いたドリル刃の摩耗量を測定し、快削性を評価した。ドリル刃の摩耗が少ない程、切削加工が容易である、つまり快削性に優れると判断できる。具体的には、各セラミックス複合材について、加工前後のドリル刃の質量を電子天秤で測定し、加工前後のドリル刃の質量の差を算出した。当該快削性の評価は、各ドリル刃について2回ずつ行なった。また、各セラミック複合材について、穴あけ加工後のドリル刃をSEMで観察した。SEM像を図6〜図10に示す。図6は試験1のセラミックス複合材を穴あけ加工したドリル刃のSEM像であり、図7は試験2のセラミックス複合材を穴あけ加工したドリル刃のSEM像であり、図8は試験3のセラミックス複合材を穴あけ加工したドリル刃のSEM像であり、図9は試験4のセラミックス複合材を穴あけ加工したドリル刃のSEM像であり、図10は試験5のセラミックス複合材を穴あけ加工したドリル刃のSEM像である。各図における左側部分にはドリル刃の全体像を示し、右側部分には先端部の拡大像を示す。さらに、表5は加工前後のドリル刃の質量の実測値を示し、表3および表4は表5に示す実測値を元に分散分析した結果を示す。
上記の穴あけ加工に用いたドリル刃の摩耗量を測定し、快削性を評価した。ドリル刃の摩耗が少ない程、切削加工が容易である、つまり快削性に優れると判断できる。具体的には、各セラミックス複合材について、加工前後のドリル刃の質量を電子天秤で測定し、加工前後のドリル刃の質量の差を算出した。当該快削性の評価は、各ドリル刃について2回ずつ行なった。また、各セラミック複合材について、穴あけ加工後のドリル刃をSEMで観察した。SEM像を図6〜図10に示す。図6は試験1のセラミックス複合材を穴あけ加工したドリル刃のSEM像であり、図7は試験2のセラミックス複合材を穴あけ加工したドリル刃のSEM像であり、図8は試験3のセラミックス複合材を穴あけ加工したドリル刃のSEM像であり、図9は試験4のセラミックス複合材を穴あけ加工したドリル刃のSEM像であり、図10は試験5のセラミックス複合材を穴あけ加工したドリル刃のSEM像である。各図における左側部分にはドリル刃の全体像を示し、右側部分には先端部の拡大像を示す。さらに、表5は加工前後のドリル刃の質量の実測値を示し、表3および表4は表5に示す実測値を元に分散分析した結果を示す。
上述したように、窒化ホウ素粒子を含まない参考試験1のアルミニウム合金材はドリル刃が折れる程に快削性に劣っていたが、試験1〜試験5のセラミックス複合材は何れも精密加工可能であり、しかも、加工前後でのドリル刃の摩耗量も小さかった。この結果から、窒化ホウ素粒子を含む本発明のセラミックス複合材は快削性に優れると言える。
また、表7に示す分散分析の結果から、試験1〜試験5のセラミックス複合材の快削性には有意差があると考えられる。つまり、熱処理工程の有無および加熱温度の違いによって、快削性に有意差が生じると言える。
具体的には、穴あけ加工前後で減少したドリル刃の質量は、試験3<試験4<試験1<試験2<試験5の順で大きかった。換言すると、セラミックス複合材は、試験3>試験4>試験1>試験2>試験5の順で快削性に優れていた。つまり、上述した精密加工性の評価と同様に、熱処理工程を行ない、その際の加熱温度を750℃を超え、かつ、1100℃未満にすることで、セラミックス複合材の快削性もまた向上した。これは、アルミニウムと窒化ホウ素との間の反応に起因すると推測される。
つまり、アルミニウムと窒化ホウ素との反応で生じる化合物は反応温度によって異なると考えられている。例えば、800℃〜1000℃にまで反応温度を上げていくにつれて、3Al+2BN→2AlN+AlB2の反応が進行し、セラミックス複合材におけるAlNの含有量が増加すると考えられる。AlNはファインセラミックス等として知られている材料であり、アルミニウムに比べて硬度は高いが破壊靱性は低い。このようなAlNが増加することでセラミックス複合材の快削性や精密加工性が向上したと推測される。
さらに、アルミニウムと窒化ホウ素との反応温度が1000℃を超えると、6AlB2→5Al+AlB12の反応が進行すると考えられる。つまり、このときセラミックス複合材におけるAl含量が増大し、AlB12が生成することによりBN粒子が大幅に減少すると考えられる。したがって、アルミニウムの増加によりセラミックス複合材の延性が高まり、固体潤滑剤としての窒化ホウ素粒子が減少することで精密加工性や快削性といった機械加工性が低下すると考えられる。
(評価試験3)SEMによる評価
走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いて、試験4のセラミックス複合材の表面および、穴あけ加工後における試験4のセラミックス複合材の表面を撮像した。試験4のセラミックス複合材の表面のSEM像を図11に示す。穴あけ加工後における試験4のセラミックス複合材の表面のSEM像を図12に示す。
走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いて、試験4のセラミックス複合材の表面および、穴あけ加工後における試験4のセラミックス複合材の表面を撮像した。試験4のセラミックス複合材の表面のSEM像を図11に示す。穴あけ加工後における試験4のセラミックス複合材の表面のSEM像を図12に示す。
図11中の灰色の部分はアルミニウムを含有するマトリックスであり、黒い部分は窒化ホウ素である。このように、試験4のセラミックス複合材は、アルミニウムを含有するマトリックス中に窒化ホウ素粒子が分散してなるといえる。また、窒化ホウ素粒子はマトリックス中に均一に分散しているといえる。さらに、図12に示すように加工穴の端面には殆ど乱れがないことから、試験4のセラミックス複合材には加工穴を形成する際にもクラックや脱落がほぼ生じていないと言え、試験4のセラミックス複合材は緻密な構造であるといえる。
(評価試験4)XRD測定
試験1〜試験5のセラミックス複合材、および、参考試験1のアルミニウム合金材について、XRD測定を行なった。X線源としてはCuKα1.54056Åを用い、その他の測定条件は、管電圧40kV、管電流20mA、サンプリング角度0.020°、発散スリット1°、拡散スリット1°、受光スリット0.3mmであった。また、得られた測定結果を基に、シェラーの式より、窒化ホウ素粒子の結晶子サイズを算出した。XRDの測定結果を図13に示し、窒化ホウ素粒子の結晶子サイズを表8に示す。
試験1〜試験5のセラミックス複合材、および、参考試験1のアルミニウム合金材について、XRD測定を行なった。X線源としてはCuKα1.54056Åを用い、その他の測定条件は、管電圧40kV、管電流20mA、サンプリング角度0.020°、発散スリット1°、拡散スリット1°、受光スリット0.3mmであった。また、得られた測定結果を基に、シェラーの式より、窒化ホウ素粒子の結晶子サイズを算出した。XRDの測定結果を図13に示し、窒化ホウ素粒子の結晶子サイズを表8に示す。
図13に示すように、XRDによる分析結果から、試験1〜試験5のセラミックス複合材には窒化ホウ素が含まれていることがわかる。また、試験1〜試験5のセラミックス複合材にはAlも含まれていた。熱処理工程はアルゴンガス中で行なったため、炭素がセラミックス複合材から消失することは考え難い。したがって、この結果から、試験1〜試験5のセラミックス複合材は窒化ホウ素、アルミニウムおよび炭素を含むことが裏付けられる。
また、表8に示すように、加熱温度が1100℃になると、窒化ホウ素粒子の結晶子サイズは急激に増大している。これは、(評価試験2)機械加工性の評価の項でも説明したように、1000℃を超えるとAlB12の生成が始まりホウ素が急激に消費されることと関係すると考えられる。つまりこのとき、ホウ素源となる窒化ホウ素粒子が大量に消費され、窒化ホウ素の結晶構造が大きく変化したと推定される。この結果からも、機械加工性の面からは750℃を超え1100℃未満の温度で加熱処理を行なうのが好ましいと言える。なお、試験3および試験4のセラミックス複合材は機械加工性に特に優れていたことから、熱処理工程における加熱温度は、800℃以上1100℃未満であるのがより好ましく、800℃を超え1100℃未満であるのがさらに好ましく、特に好ましくは900℃以上1000℃以下であるのが良いと言える。
(その他)
本発明は、上記し且つ図面に示した実施形態にのみ限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。また、実施形態に示した各構成要素は、それぞれ任意に抽出し組み合わせて実施できる。
本発明は、上記し且つ図面に示した実施形態にのみ限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。また、実施形態に示した各構成要素は、それぞれ任意に抽出し組み合わせて実施できる。
本発明のセラミックス複合材は、上述した背景技術の欄に記載した半導体製造装置用部やマイクロマシン用絶縁部品に限らず種々の用途に供することができる。本発明のセラミックス複合材は機械加工性に優れるため、精密加工を必要とするにも拘わらず製造ロットが少ない製品(例えば工作機械用の治具等)として特に好ましく用いられる。
Claims (11)
- 複数の窒化ホウ素粒子からなる窒化ホウ素材料、および、複数の炭素粒子からなる炭素材料を混合して、混合粒子材を得る混合工程と、
前記混合粒子材にアルミニウム溶融材料を含浸させてセラミックス複合材を得る複合材形成工程と、を備えるセラミックス複合材の製造方法。 - さらに、前記セラミックス複合材を不活性雰囲気で加熱する熱処理工程を備える請求項1に記載のセラミックス複合材の製造方法。
- 前記窒化ホウ素粒子の平均粒子径は1μm以上30μm以下である請求項1または請求項2に記載のセラミックス複合材の製造方法。
- 前記熱処理工程における加熱温度は、750℃を超える温度である請求項1〜請求項3の何れか一項に記載のセラミックス複合材の製造方法。
- 前記炭素粒子の平均粒子径は30μm以下である請求項1〜請求項4の何れか一項に記載のセラミックス複合材の製造方法。
- 前記複合材形成工程において、加圧成形した前記混合粒子材に前記アルミニウム溶融材料を含浸させる、請求項1〜請求項5の何れか一項に記載のセラミックス複合材の製造方法。
- 前記アルミニウム溶融材料は、溶融状態のアルミニウム−ケイ素合金である請求項1〜請求項6の何れか一項に記載のセラミックス複合材の製造方法。
- 前記混合工程において、前記窒化ホウ素材料および前記炭素材料を分散媒中で混合し、スラリー状の混合粒子材を得る請求項1〜請求項7の何れか一項に記載のセラミックス複合材の製造方法。
- 前記窒化ホウ素材料および前記炭素材料の配合比は、質量比で、1:0.2〜1:5の範囲である請求項1〜請求項8の何れか一項に記載のセラミックス複合材の製造方法。
- 請求項1〜請求項9の何れか一項に記載の製造方法で製造されてなるセラミックス複合材。
- 窒化ホウ素、炭素およびアルミニウムを含み、
前記アルミニウムを含むマトリックス中に粒子状の前記窒化ホウ素が分散されてなるセラミックス複合材。
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DE102017000342A1 (de) | 2016-01-29 | 2017-08-03 | Shimano Inc. | Fahrradantriebsvorrichtung |
-
2014
- 2014-07-09 JP JP2014141171A patent/JP2016016434A/ja active Pending
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