JP2016013573A - パルスアーク溶接制御方法 - Google Patents

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賢人 高田
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Abstract

【課題】 パルスアーク溶接において、磁気吹きによるビード外観の悪化を抑制する。【解決手段】立上り期間中はベース電流からピーク電流へと上昇する上昇遷移電流を通電し、ピーク期間中はピーク電流を通電し、立下り期間中はピーク電流からベース電流へと下降する下降遷移電流を通電し、ベース期間中はベース電流を通電し、これらの溶接電流の通電を1パルス周期として繰り返す。ベース期間Tb中の溶接電圧Vwの上昇によって磁気吹きの発生を判別したときは、下降遷移電流Iksの下降速度を遅くすることによって立下り期間Tksを長くする。これにより、アークの硬直性が弱くなるベース期間Tbに入る時点でのアーク長を短い状態にすることができるので、磁気吹きが発生してもアークが大きく偏向することを抑制することができ、アーク切れの発生を防止することができる。【選択図】 図1

Description

本発明は、磁気吹きによる溶接状態の不安定を抑制することができるパルスアーク溶接制御方法に関するものである。
消耗電極式パルスアーク溶接は、鉄鋼等の溶接に広く使用されている。このパルスアーク溶接では、立上り期間中はベース電流からピーク電流へと上昇する上昇遷移電流を通電し、ピーク期間中はピーク電流を通電し、立下り期間中はピーク電流からベース電流へと下降する下降遷移電流を通電し、ベース期間中はベース電流を通電し、これらの溶接電流の通電を1パルス周期として繰り返して溶接が行われる。パルスアーク溶接では、1パルス周期1溶滴移行状態となるので、溶滴移行状態が安定しているために、スパッタの発生が少なく、美しいビード外観を得ることができる。以下、このパルスアーク溶接について図面を参照して説明する。
図7は、パルスアーク溶接における一般的な電流・電圧波形図である。同図(A)は溶接電流Iwの時間変化を示し、同図(B)は溶接電圧Vwの時間変化を示す。以下、同図を参照して説明する。
時刻t1〜t2の立上り期間Tu中は、同図(A)に示すように、ベース電流Ibからピーク電流Ipへと上昇する上昇遷移電流Iuが通電し、同図(B)に示すように、ベース電圧Vbからピーク電圧Vpへと上昇する上昇遷移電圧が溶接ワイヤと母材との間に印加する。時刻t2〜t3のピーク期間Tp中は、同図(A)に示すように、溶接ワイヤから溶滴を移行させるために臨界値以上の大電流値のピーク電流Ipが通電し、同図(B)に示すように、アーク長に比例したピーク電圧Vpが印加する。直径1.2mmの鉄鋼ワイヤの臨界値は、280A程度である。
時刻t3〜t4の立下り期間Tk中は、同図(A)に示すように、ピーク電流Ipからベース電流Ibへと下降する下降遷移電流Ikが通電し、同図(B)に示すように、ピーク電圧Vpからベース電圧Vbへと下降する下降遷移電圧が印加する。時刻t4〜t5のベース期間Tb中は、同図(A)に示すように、溶滴を形成しないようにするために臨界値未満の小電流値のベース電流Ibが通電し、同図(B)に示すように、アーク長に比例したベース電圧Vbが印加する。時刻t1〜t5までの期間を1パルス周期Tfとして繰り返して溶接が行われる。アーク長は、ピーク期間Tp中は長くなり、ベース期間Tb中は短くなる。
ところで、良好なパルスアーク溶接を行うためには、平均アーク長を適正値に維持することが重要である。平均アーク長を適正値に維持するために以下のようなアーク長制御(溶接電源の出力制御)が行われる。平均アーク長は、同図(B)で破線で示す溶接電圧平均値Vavと略比例関係にある。このために、溶接電圧平均値Vavを検出し、この検出値が適正な平均アーク長に相当する溶接電圧設定値と等しくなるように同図(A)の破線で示す溶接電流平均値Iavを変化させる出力制御を行う。溶接電圧平均値Vavが溶接電圧設定値よりも大きいときは平均アーク長が適正値よりも長いときであるので、溶接電流平均値Iavを小さくしてワイヤ溶融速度を小さくし平均アーク長が短くなるようにする。他方、溶接電圧平均値Vavが溶接電圧設定値よりも小さいときは平均アーク長が適正値よりも短いときであるので、溶接電流平均値Iavを大きくしてワイヤ溶融速度を大きくし平均アーク長が長くなるようにする。上記の溶接電圧平均値Vavとしては、一般的に溶接電圧Vwをローパスフィルタを通した値(平均値、平滑値)が使用される。また、溶接電流平均値Iavを変化させる手段として、パルス周期Tfを変化させる周波数変調制御が行われている。周波数変調制御では、溶接電圧平均値Vavが溶接電圧設定値と等しくなるようにパルス周期Tfをフィードバック制御(アーク長制御)している。このときに、立上り期間Tu、ピーク期間Tp、立下り期間Tk、ピーク電流Ip及びベース電流Ibは所定値に設定され、ベース期間Tbがフィードバック制御されることでパルス周期Tfが可変される。ピーク期間Tpとピーク電流Ipとの組合せはユニットパルス条件と呼ばれており、1パルス周期1溶滴移行状態になるように設定される。
その他のアーク長制御の方式としては、パルス幅変調制御がある。パルス幅変調制御では、ピーク期間(パルス幅)Tpがフィードバック制御される。このときは、立上り期間Tu、立下り期間Tk、パルス周期Tf、ピーク電流Ip及びベース電流Ibが所定値に設定され、ピーク期間Tpが可変される。
パルスアーク溶接を含む消耗電極式アーク溶接においては、アーク及び母材を通電する溶接電流によってアーク周辺部に磁界が形成されて、この磁界からアークは力を受けて偏向する場合がある。このような状態を、一般的に磁気吹き又はアークブローと呼んでいる。磁気吹きが発生するかは、母材に通電する溶接電流によって形成される磁界の形態によって決まる。溶接している部分が母材の端部から離れているときには、磁界は対称形状に形成されることが多いために、アークは磁界から偏った力を受けることがないので、磁気吹きは発生しにくい。他方、溶接している部分が母材の端部に近いときは、磁界は非対称形状に形成されるために、アークは磁界から偏った力を受けることになり、磁気吹きが発生しやすくなる。したがって、母材の端部の近くとなることが多い溶接開始部分及び溶接終了部分では、磁気吹きが発生しやすい。消耗電極アークの中でも、短絡移行溶接では磁気吹きは発生しにくく、パルスアーク溶接では発生しやすい。これは、短絡移行溶接では、アーク長がパルスアーク溶接に比べて短いために、磁界からの影響を受けにくいためである。他方、パルスアーク溶接では、大電流値のピーク電流Ipが通電しているときは強い磁界が形成され、小電流値のベース電流Ibが通電しているときは弱い磁界が形成されている。パルスアーク溶接では、この磁界の強さの変化が大きいこと、かつ、ベース電流Ibが小さいので磁界から偏った力を受けると直ぐにアークが偏向すること、が原因となって磁気吹きが発生しやすい。したがって、パルスアーク溶接では、磁気吹きによるアークの偏向は、ベース期間Tb中に発生しやすい。
図8は、磁気吹きが発生したときのアーク状態を示す図である。同図(A)に示すように、溶接ワイヤ1と母材2との間に通常のアーク3が発生している。この状態で磁気吹きが発生すると、同図(B)に示すように、アーク3は磁界からの力によって大きく偏向し、アーク長が長くなる。さらに偏向が大きくなると、同図(C)に示すように、アークを維持することができなくなりアーク切れが発生する。パルスアーク溶接では、ピーク期間中は大電流が通電するのでアークの硬直性が強く、磁界からの力が作用してもアークはほとんど偏向しない。他方、ベース期間中は小電流が通電するのでアークの硬直性が弱く、磁界からの力によって大きく偏向する。したがって、磁気吹きが発生してアーク切れが生じるのは、ほとんどベース期間中である。アーク切れが発生しない程度の磁気吹きが稀に発生する場合には、溶接状態への影響はほとんどない。しかし、アーク切れを伴う磁気吹きが多数回発生するときは、アーク発生状態が不安定となり、スパッタの大量発生、ビード不良等が生じる。したがって、パルスアーク溶接においては、磁気吹きによるアーク切れを抑制することは良好な溶接品質を得るために重要である。
図9は、パルスアーク溶接において磁気吹きが発生したときの電流・電圧波形図である。同図(A)は溶接電流Iwの時間変化を示し、同図(B)は溶接電圧Vwの時間変化を示す。以下、同図を参照して説明する。
ベース期間Tb中の時刻t1において、磁気吹きが発生してアークが偏向すると、同図(B)に示すように、アークの偏向に伴ってアーク長が長くなり、ベース電圧Vbが次第に上昇して大きくなる。一方、同図(A)に示すように、ベース電流Ibは定電流制御されているので一定値のままである。時刻t2において、磁気吹きによるアークの偏向がさらに大きくなると、アーク長が非常に長くなるためにアークを維持することができなくなり、アーク切れが発生する。アーク切れが発生すると、同図(A)に示すように、溶接電流Iwは通電しなくなり、同図(B)に示すように、溶接電圧Vwは出力最大電圧の無負荷電圧となる。
図10は、特許文献1に開示された磁気吹きによるアーク切れを防止するための磁気吹き対策制御を示す電流・電圧波形図である。同図(A)は溶接電流Iwの時間変化を示し、同図(B)は溶接電圧Vwの時間変化を示す。同図において時刻t1〜t2のパルス周期中は磁気吹きが発生していない安定した溶接状態のときを示しており、続く時刻t2〜t3のパルス周期中は磁気吹きが発生した溶接状態のときを示している。
ベース期間Tb中の時刻t21において、磁気吹きが発生してアークが偏向したためにアーク長が長くなり、同図(B)に示すように、ベース電圧Vbが通常値から上昇して大きくなる。そして、時刻t22において、ベース電圧Vbの値が、破線で示す予め定めた基準電圧値Vt以上になる。ベース電圧値Vbが上記の基準電圧値Vt以上になったことを判別すると、同図(A)に示すように、ベース電流Ibの値を通常値よりも増加させて200A以上にする。時刻t22〜t23の期間中は、ベース電圧値Vbが上記の基準電圧値Vt以上になっている。この期間中は、同図(A)に示すように、200A以上に増加されたベース電流が通電する。
時刻t22〜t23の期間中は、ベース電流Ibの値が200A以上に増加するので、アークがワイヤ送給方向に発生する性質である硬直性が強くなるために、アークの偏向が正常な状態に戻されることになる。このために、同図(B)に示すように、時刻t23において、ベース電圧値Vbは上記の基準電圧値Vt未満になり、その後は急速に減少して通常値に戻る。したがって、磁気吹きは、時刻t21に発生して、時刻t23の直後に解消される。時刻t23において、同図(A)に示すように、ベース電流Ibの値は通常値に戻る。時刻t23〜t3の残りのベース期間Tb中は、同図(A)に示すように、ベース電流Ibの値は通常値のままであり、同図(B)に示すように、通常値のベース電圧値Vbが印加する。この期間のアークは、磁気吹きが発生していないので、安定した状態にある。
上記において、基準電圧値Vtは、磁気吹きが発生していない状態でのベース電圧値Vbの変動を考慮して、溶接条件に応じて適正値に設定する。例えば、ベース電圧Vbの変動は、ピーク電圧値Vpまで及ぶことはないので、基準電圧値Vtをピーク電圧値Vpに近い値に設定する。また、ベース電圧Vbと基準電圧値Vtとの比較にあたって、ヒステリシスを持たせるようにしても良い。すなわち、ベース電圧Vbが通常値から上昇していくときの基準値を第1基準電圧値Vt1とし、ベース電圧Vbが一旦Vt1以上になりその後に下降するときの基準値を第2基準電圧値Vt2とするものである。このときに、Vt1>Vt2である。また、ベース電圧Vbの上昇率(微分値=dVw/dt)が基準値に達したことによって磁気吹きの発生を判別し、その後にベース電圧Vbの下降率が基準値に達したことによって磁気吹きの解消を判別するようにしても良い。ベース電圧Vbの上昇による従来から行われている種々の磁気吹きの発生の判別方法を使用することができる。上記の増加したベース電流値は、200〜500A程度の範囲で、アークの偏向を修正することができる値に実験によって設定される。
このような磁気吹き対策制御を行うことによって、磁気吹きによるアーク切れを防止することができる。
特開2004−268081号公報
上述した従来技術では、磁気吹きによるアークの偏向を判別してベース電流を200A以上に増加させることによって、アーク切れの発生を防止することができる。しかし、このような方法では、ベース電流を増加させたときに溶接ワイヤの溶融が促進されるために、1パルス周期1溶滴移行状態が崩れることになる。この結果、ビード不良にまで至ることはないが、ビード外観が悪くなるという問題があった。
そこで、本発明では、磁気吹きによるアーク切れの発生を防止し、かつ、ビード外観が悪くなることを抑制することができるパルスアーク溶接制御方法を提供することを目的とする。
上述した課題を解決するために、請求項1の発明は、
溶接ワイヤを送給すると共に、立上り期間中はベース電流からピーク電流へと上昇する上昇遷移電流を通電し、ピーク期間中は前記ピーク電流を通電し、立下り期間中は前記ピーク電流から前記ベース電流へと下降する下降遷移電流を通電し、ベース期間中は前記ベース電流を通電し、これらの溶接電流の通電を1パルス周期として繰り返して溶接するパルスアーク溶接制御方法において、
前記ベース期間中の溶接電圧の上昇によって磁気吹きの発生を判別したときは、前記立下り期間を長くする、
ことを特徴とするパルスアーク溶接制御方法である。
請求項2の発明は、前記下降遷移電流の下降速度を遅くすることによって、前記立下り期間を長くする、
ことを特徴とする請求項1記載のパルスアーク溶接制御方法である。
請求項3の発明は、前記下降遷移電流が予め定めた基準電流値に達したときはその値を所定期間維持することによって、前記立下り期間を長くし、前記基準電流値を前記ピーク電流の値よりも小さく前記ベース電流の値よりも大きな値に設定する、
ことを特徴とする請求項1記載のパルスアーク溶接制御方法である。
請求項4の発明は、前記立下り期間を長くしたときは、前記立下り期間中の前記溶接ワイヤの送給速度を加速する、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のパルスアーク溶接制御方法である。
本発明によれば、アークの硬直性が弱くなるベース期間に入る時点でのアーク長を短い状態にすることができる。このために、磁気吹きが発生してもアークが大きく偏向することを抑制することができ、アーク切れの発生を防止することができる。かつ、立下り期間を長くしても、溶滴移行状態への影響は小さいために、ビード外観が悪くなることもない。
本発明の実施の形態1に係るパルスアーク溶接制御方法を示すタイミングチャートである。 本発明の実施の形態1に係るパルスアーク溶接制御方法を実施するための溶接装置のブロック図である。 本発明の実施の形態2に係るパルスアーク溶接制御方法を示すタイミングチャートである。 本発明の実施の形態2に係るパルスアーク溶接制御方法を実施するための溶接装置のブロック図である。 本発明の実施の形態3に係るパルスアーク溶接制御方法を示すタイミングチャートである。 本発明の実施の形態3に係るパルスアーク溶接制御方法を実施するための溶接装置のブロック図である。 従来技術におけるパルスアーク溶接の電流・電圧波形図である。 従来技術において磁気吹きが発生したときのアーク状態を示す図である。 従来技術の、パルスアーク溶接において磁気吹きが発生したときの電流・電圧波形図である。 従来技術における磁気吹きによるアーク切れを防止するための磁気吹き対策制御を示す電流・電圧波形図である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1に係るパルスアーク溶接制御方法を示す各信号のタイミングチャートである。同図(A)は溶接電流Iwの時間変化を示し、同図(B)は溶接電圧Vwの時間変化を示し、同図(C)は磁気吹き判別信号Adの時間変化を示し、同図(D)は溶接ワイヤの送給速度Fwの時間変化を示す。同図は、上述した図7及び図10と対応しており、同一の動作についての説明は繰り返さない。同図において時刻t1〜t2のパルス周期中に磁気吹きが発生しており、続く時刻t2〜t3のパルス周期中は磁気吹きによるアーク切れを防止する制御を実施している。以下、同図を参照して、磁気吹きによるアーク切れを防止する制御について説明する。
同図(D)に示すように、送給速度Fwは溶接中は予め定めた一定の速度で送給されている。時刻t1〜t2のパルス周期Tfにおいて、立上り期間Tu中は、同図(A)に示すように、ベース電流Ibからピーク電流Ipへと上昇する上昇遷移電流Iuが通電し、同図(B)に示すように、ベース電圧Vbからピーク電圧Vpへと上昇する上昇遷移電圧が溶接ワイヤと母材との間に印加する。続くピーク期間Tp中は、同図(A)に示すように、溶接ワイヤから溶滴を移行させるために臨界値以上の大電流値のピーク電流Ipが通電し、同図(B)に示すように、アーク長に比例したピーク電圧Vpが印加する。続く立下り期間Tk中は、同図(A)に示すように、ピーク電流Ipからベース電流Ibへと下降する下降遷移電流Ikが通電し、同図(B)に示すように、ピーク電圧Vpからベース電圧Vbへと下降する下降遷移電圧が印加する。続くベース期間Tb中は、同図(A)に示すように、溶滴を形成しないようにするために臨界値未満の小電流値のベース電流Ibが通電し、同図(B)に示すように、アーク長に比例したベース電圧Vbが印加する。アーク長は、ピーク期間Tp中は長くなり、ベース期間Tb中は短くなる。
同図は、アーク長制御の方式が周波数変調制御の場合であるので、立上り期間Tu、ピーク期間Tp、立下り期間Tk、ピーク電流Ip及びベース電流Ibは所定値に設定され、ベース期間Tb(パルス周期Tf)は溶接電圧Vwの平均値が予め定めた電圧設定値と等しくなるようにフィードバック制御によって定まる。
ベース期間Tb中の時刻t11において、磁気吹きが発生してアークが偏向したためにアーク長が長くなり、同図(B)に示すように、ベース電圧Vbが通常値から上昇して大きくなる。そして、時刻t12において、ベース電圧Vbの値が、破線で示す予め定めた基準電圧値Vt以上になる。ベース電圧値Vbが上記の基準電圧値Vt以上になったことを判別すると、同図(C)に示すように、磁気吹き判別信号AdがHighレベルに変化する。この磁気吹き判別信号Adは、1回の溶接が終了するまでHighレベルの状態を維持する。磁気吹き判別信号AdがHighレベルに変化してもベース電流Ibは増加させずに通常値を維持する。このために、磁気吹きによるアーク長の偏向が継続するので、ベース電圧Vbは基準電圧値Vtを超えた状態を次のパルス周期Tfまで維持する。
時刻t2〜t3のパルス周期Tfにおいて、立上り期間Tu中は、同図(A)に示すように、ベース電流Ibからピーク電流Ipへと上昇する上昇遷移電流Iuが通電し、同図(B)に示すように、磁気吹きのために通常値よりも大きくなっているベース電圧Vbからピーク電圧Vpへと上昇する上昇遷移電圧が印加する。続くピーク期間Tp中は、同図(A)に示すように、ピーク電流Ipが通電し、同図(B)に示すように、アーク長に比例したピーク電圧Vpが印加する。続く修正立下り期間Tks中は、同図(A)に示すように、ピーク電流Ipからベース電流Ibへと下降する修正下降遷移電流Iksが通電し、同図(B)に示すように、ピーク電圧Vpからベース電圧Vbへと下降する下降遷移電圧が印加する。続くベース期間Tb中は、同図(A)に示すように、ベース電流Ibが通電し、同図(B)に示すように、アーク長に比例したベース電圧Vbが印加する。
立上り期間Tu、ピーク期間Tp、ピーク電流Ip及びベース電流Ibは、時刻t1〜t2のパルス周期Tf中も時刻t2〜t3のパルス周期Tf中も同一値に設定されている。すなわち、これらのパラメータの値は、磁気吹き判別信号Adの状態によらず一定値である。
これに対して、時刻t2〜t3のパルス周期Tf中の修正立下り期間Tksは、時刻t1〜t2のパルス周期Tf中の立下り期間Tkよりも長い期間に設定される。このために、修正下降遷移電流Iksの下降速度は、下降遷移電流Ikの下降速度よりも遅くなる。すなわち、磁気吹き判別信号AdがHighレベルになると、下降遷移電流の下降速度が遅くなるように修正している。
時刻t1〜t2のパルス周期Tf中の立下り期間Tk中は、下降遷移電流Ikがピーク電流Ipからベース電流Ibへと早い下降速度で変化する。しかし、アーク長の変化は溶接ワイヤを溶融させる必要があるので、下降遷移電流Ikの下降速度よりも遅れて変化することになる。このために、ベース期間Tbに入り溶接電流Iwがベース電流Ibに変化しても、アーク長は収束値よりも長い状態をしばらく維持することになる。ベース電流Ibは小電流値であるので、アークの硬直性は弱い。この結果、アーク長が長い状態でアークの硬直性が弱くなるので、磁気吹きによるアークの偏向が生じやすい状態となる。
これに対して、時刻t2〜t3のパルス周期Tf中の修正立下り期間Tks中は、修正下降遷移電流Iksがピーク電流Ipからベース電流Ibへと遅い下降速度で変化する。遅い下降速度とは、修正下降遷移電流Iksの下降速度がアーク長の変化速度よりも遅くなる速度である。このようにすると、ベース期間Tbに入り、アークの硬直性が弱くなるベース電流Ibが通電しても、その時点では既にアーク長が収束値に近い短い状態になっている。このために、磁気吹きが発生しても、アーク長の偏向は小さい状態となり、アーク切れを生じるような状態にはならない。上述したように、時刻t21〜t3の間、ベース電圧Vbが基準電圧値Vtよりも小さい範囲で増加しているのは、小さなアークの偏向が生じているためである。
このように、ベース電圧Vbの上昇によって磁気吹きの発生を判別したときは、立下り期間中の下降遷移電流の下降速度を遅くすることによって、アークの硬直性が弱くなるベース期間Tbに入る時点でのアーク長を短い状態にすることができる。このために、磁気吹きが発生してもアークが大きく偏向することを抑制することができ、アーク切れの発生を防止することができる。しかも、下降遷移電流の下降速度を遅くしても、溶滴移行状態への影響は小さいために、ビード外観が悪くなることもない。但し、下降速度が遅くなると、スパッタ発生量がやや増加する傾向にあるので、磁気吹きが発生しない状態では、下降速度を速くしておく方が良い。したがって、磁気吹きの発生を判別したときに、下降速度を遅くするようにしている。
磁気吹き判別信号Adが一旦Highレベルになると、溶接が終了するまでHighレベルを維持する理由は、磁気吹きの発生しやすい期間はある程度継続するためである。したがって、磁気吹き判別信号AdのHighレベルの状態を一定の期間維持するようにしても良い。
上述した各パラメータの数値例を以下に示す。Tu=0.4ms、Tp=1.2ms、Tk=0.4ms、Tks=1.6ms、Ip=450A、Ib=50Aである。この場合、Ikの下降速度は1000A/msとなり、Iksの下降速度は250A/msとなり、4倍遅くなっている。
図2は、本発明の実施の形態1に係るパルスアーク溶接制御方法を実施するための溶接装置のブロック図である。溶接装置は、主に破線で囲まれた溶接電源PS、ロボット制御装置RC、ロボット(図示は省略)等から構成されている。以下、同図を参照して各ブロックについて説明する。
溶接電源PSは、以下の各ブロックから構成されている。電源主回路MCは、3相200V等の交流商用電源(図示は省略)を入力として、後述する駆動信号Dvに従ってインバータ制御等の出力制御を行い、溶接に適した溶接電圧Vw及び溶接電流Iwを出力する。この電源主回路MCは、図示は省略するが、交流商用電源を整流する1次整流回路、整流された直流を平滑するコンデンサ、平滑された直流を駆動信号Dvに従って高周波交流に変換するインバータ回路、高周波交流を溶接に適した電圧値に降圧するインバータトランス、降圧された高周波交流を整流する2次整流回路を備えている。リアクトルWLは、上記の電源主回路MCの+側出力と溶接トーチ4との間に挿入されており、電源主回路MCの出力を平滑する。送給モータWMは、後述する送給制御信号Fcによって回転駆動される。溶接ワイヤ1は、上記の送給モータWMに結合された送給ロール5の回転によって溶接トーチ4内を通って送給速度Fwで送給されて、母材2との間にアーク3が発生する。送給モータWM及び溶接トーチ4は、ロボットに搭載されている。溶接トーチ4内の給電チップ(図示は省略)と母材2との間に溶接電圧Vwが印加し、溶接電流Iwが通電する。
電圧検出回路VDは、上記の溶接電圧Vwを検出して、電圧検出信号Vdを出力する。電圧平均化回路VAVは、この電圧検出信号Vdを平均化(ローパスフィルタを通す)して、電圧平均信号Vavを出力する。電圧設定回路VRは、所望値の電圧設定信号Vrを出力する。電圧誤差増幅回路EVは、上記の電圧設定信号Vr(+)と上記の電圧平均信号Vav(−)との誤差を増幅して、電圧誤差増幅信号Evを出力する。
V/FコンバータVFは、上記の電圧誤差増幅信号Evに応じた周波数で短時間Highレベルになるトリガ信号であるパルス周期信号Tfを出力する。このパルス周期信号Tfが短時間Highレベルになる周期が1パルス周期となる。
立上り期間設定回路TURは、予め定めた立上り期間設定信号Turを出力する。ピーク期間設定回路TPRは、予め定めたピーク期間設定信号Tprを出力する。立下り期間設定回路TKRは、後述する磁気吹き判別信号Adを入力として、磁気吹き判別信号AdがLowレベルのときは予め定めた立下り期間Tkを立下り期間設定信号Tkrとして出力し、Highレベルのときは予め定めた修正立下り期間Tksを立下り設定信号Tkrとして出力する。上述したように、Tk<Tksである。
ピーク電流設定回路IPRは、予め定めたピーク電流設定信号Iprを出力する。ベース電流設定回路IBRは、予め定めたベース電流設定信号Ibrを出力する。
電流設定回路IRは、上記のパルス周期信号Tf、上記の立上り期間設定信号Tur、上記のピーク期間設定信号Tpr、上記の立下り設定信号Tkr、上記のピーク電流設定信号Ipr及び上記のベース電流設定信号Ibrを入力として、パルス周期信号Tfが短時間Highレベルに変化するごとに、以下の処理を行ない、電流設定信号Irを出力する。
1)立上り期間設定信号Turによって定まる期間中は、ベース電流設定信号Ibrの値からピーク電流設定信号Iprの値へと直線状に上昇する電流設定信号Irを出力する。
2)続けて、ピーク期間設定信号Tprによって定まる期間中は、ピーク電流設定信号Iprを電流設定信号Irとして出力する。
3)続けて、立下り期間設定信号Tkrによって定まる期間中は、ピーク電流設定信号Iprの値からベース電流設定信号Ibrの値へと直線状に下降する電流設定信号Irを出力する。
4)続けて、パルス周期信号Tfが再び短時間Highレベルになるまでの期間中は、ベース電流設定信号Ibrを電流設定信号Irとして出力する。
磁気吹き発生判別回路ADは、上記の電流設定信号Ir、上記のベース電流設定信号Ibr、上記の電圧検出信号Vd及び後述するロボット制御装置RCからの起動信号Onを入力として、電流設定信号Irの値がベース電流設定信号Ibrの値と等しい期間(ベース期間Tb)のときの電圧検出信号Vdの値が予め定めた基準電圧値Vt以上になるとHighレベルにセットされ、その後に起動信号OnがLowレベル(溶接停止)になるとLowレベルにリセットされる磁気吹き判別信号Adを出力する。
電流検出回路IDは、上記の溶接電流Iwを検出して、電流検出信号Idを出力する。電流誤差増幅回路EIは、上記の電流設定信号Ir(+)と上記の電流検出信号Id(−)との誤差を増幅して、電流誤差増幅信号Eiを出力する。駆動回路DVは、この電流誤差増幅信号Ei及び後述するロボット制御装置RCからの起動信号Onを入力として、起動信号OnがHighレベル(溶接開始)のときは電流誤差増幅信号Eiに基いてPWM変調制御を行ない上記の電源主回路MC内のインバータ回路を駆動するための駆動信号Dvを出力し、起動信号OnがLowレベル(溶接停止)のときは駆動信号Dvを出力しない。
送給速度設定回路FRは、所定値の送給速度設定信号Frを出力する。送給制御回路FCは、この送給速度設定信号Fr及び後述するロボット制御装置RCからの起動信号Onを入力として、起動信号OnがHighレベル(溶接開始)のときは溶接ワイヤ1を送給速度設定信号Frの値で送給するための送給制御信号Fcを上記の送給モータWMに出力し、起動信号OnがLowレベルのときは送給を停止するための送給制御信号Fcを上記の送給モータWMに出力する。
ロボット制御装置RCは、予め教示された作業プログラムに従ってロボット(図示は省略)を移動させると共に、溶接開始又は溶接停止を指令する起動信号Onを出力する。
上述した実施の形態1によれば、ベース期間中の溶接電圧の上昇によって磁気吹きの発生を判別したときは、立下り期間を長くする。実施の形態1では、下降遷移電流の下降速度を遅くすることによって、立下り期間を長くしている。これにより、実施の形態1では、アークの硬直性が弱くなるベース期間Tbに入る時点でのアーク長を短い状態にすることができる。このために、磁気吹きが発生してもアークが大きく偏向することを抑制することができ、アーク切れの発生を防止することができる。かつ、立下り期間を長くしても、溶滴移行状態への影響は小さいために、ビード外観が悪くなることもない。
[実施の形態2]
実施の形態2の発明は、下降遷移電流が基準電流値に達したときはその値を所定期間維持することによって、立下り期間を長くし、基準電流値をピーク電流の値よりも小さくベース電流の値よりも大きな値に設定する。
図3は、本発明の実施の形態2に係るパルスアーク溶接制御方法を示す各信号のタイミングチャートである。同図(A)は溶接電流Iwの時間変化を示し、同図(B)は溶接電圧Vwの時間変化を示し、同図(C)は磁気吹き判別信号Adの時間変化を示し、同図(D)は溶接ワイヤの送給速度Fwの時間変化を示す。同図は、上述した図1と対応しており、同一の動作についての説明は繰り返さない。同図において時刻t1〜t2のパルス周期中に磁気吹きが発生しており、続く時刻t2〜t3のパルス周期中は磁気吹きによるアーク切れを防止する制御を実施している。同図は、時刻t2〜t3のパルス周期中の修正立下り期間Tksの動作のみが図1とは異なっている。以下、同図を参照して、この異なる動作について説明する。
時刻t2〜t3のパルス周期Tfにおいて、修正立下り期間Tks中は、同図(A)に示すように、ピーク電流Ipから下降し予め定めた基準電流値Itに達するとその値を所定期間維持し、その後にベース電流Ibに切り換わる修正下降遷移電流Iksが通電する。同図(B)に示すように、下降繊維電圧も電流波形と相似形となる。ここで、Tk<Tksであり、Ib<It<Ipである。
基準電流値Itは、ピーク期間Tp中の長いアーク長の状態でも、アークの硬直性によって磁気吹きによるアークの偏向を抑制することができる電流値に設定される。基準電流値Itは、ピーク電流Ipの20%〜40%程度に設定される。所定期間は、磁気吹きによるアークの偏向の影響を受けにくくなるアーク長まで短くなるのに必要な時間に設定される。修正下降遷移電流Iksの前半部分の下降速度は、下降遷移電流Ikの下降速度と同一値に設定される。
上述した各パラメータの数値例を以下に示す。Tu=0.4ms、Tp=1.2ms、Tk=0.4ms、Tks=1.6ms、所定期間=1.3ms、Ip=450A、Ib=50A、It=150Aである。この場合、Ikの下降速度は1000A/msとなり、Iksの前半部分の下降速度も同一値となる。
時刻t2〜t3のパルス周期Tf中の修正立下り期間Tks中は、ピーク電流Ipから基準電流値Itの状態を所定期間維持した後にベース電流Ibへと切り換わる修正下降遷移電流Iksが通電する。このようにすると、ベース期間Tbに入り、アークの硬直性が弱くなるベース電流Ibが通電しても、その時点では既にアーク長が収束値に近い短い状態になっている。このために、磁気吹きが発生しても、アーク長の偏向は小さい状態となり、アーク切れを生じるような状態にはならない。
このように、ベース電圧Vbの上昇によって磁気吹きの発生を判別したときは、立下り期間中の下降遷移電流を所定期間基準電流値Itに保持することによって、アークの硬直性が弱くなるベース期間Tbに入る時点でのアーク長を短い状態にすることができる。このために、磁気吹きが発生してもアークが大きく偏向することを抑制することができ、アーク切れの発生を防止することができる。しかも、このようにしても溶滴移行状態への影響は小さいために、ビード外観が悪くなることもない。
図4は、本発明の実施の形態2に係るパルスアーク溶接制御方法を実施するための溶接装置のブロック図である。溶接装置は、主に破線で囲まれた溶接電源PS、ロボット制御装置RC、ロボット(図示は省略)等から構成されている。同図は、上述した図2と対応しており、同一ブロックには同一符号を付して、それらの説明は繰り返さない。同図は、図2の電流設定回路IRを第2電流設定回路IR2に置換したものである。以下、同図を参照して、このブロックについて説明する。
第2電流設定回路IR2は、パルス周期信号Tf、立上り期間設定信号Tur、ピーク期間設定信号Tpr、立下り設定信号Tkr、ピーク電流設定信号Ipr、ベース電流設定信号Ibr及び磁気吹き判別信号Adを入力として、パルス周期信号Tfが短時間Highレベルに変化するごとに、以下の処理を行ない、電流設定信号Irを出力する。
1)立上り期間設定信号Turによって定まる期間中は、ベース電流設定信号Ibrの値からピーク電流設定信号Iprの値へと直線状に上昇する電流設定信号Irを出力する。
2)続けて、ピーク期間設定信号Tprによって定まる期間中は、ピーク電流設定信号Iprを電流設定信号Irとして出力する。
3)続けて、立下り期間設定信号Tkrによって定まる期間中は、磁気吹き判別信号AdがLowレベルのときはピーク電流設定信号Iprの値からベース電流設定信号Ibrの値へと直線状に下降する電流設定信号Irを出力し、磁気吹き判別信号AdがHighレベルのときはピーク電流設定信号Iprの値から磁気吹き判別信号AdがLowレベルのときと同一の下降速度で下降し予め定めた基準電流値Itに達するとその値を維持する電流設定信号Irを出力する。
4)続けて、パルス周期信号Tfが再び短時間Highレベルになるまでの期間中は、ベース電流設定信号Ibrを電流設定信号Irとして出力する。
上述した実施の形態2によれば、ベース期間中の溶接電圧の上昇によって磁気吹きの発生を判別したときは、立下り期間を長くする。実施の形態2では、下降遷移電流が予め定めた基準電流値に達したときはその値を所定期間維持することによって、立下り期間を長くしている。これにより、実施の形態2では、アークの硬直性が弱くなるベース期間Tbに入る時点でのアーク長を短い状態にすることができる。このために、磁気吹きが発生してもアークが大きく偏向することを抑制することができ、アーク切れの発生を防止することができる。かつ、立下り期間を長くしても、溶滴移行状態への影響は小さいために、ビード外観が悪くなることもない。また、実施の形態2では、磁気吹きの強さに応じて、基準電流値及び/又は所定期間を変化させることで対応することができ、実施の形態1よりも溶接状態への影響を小さくすることができる。
[実施の形態3]
実施の形態3の発明は、立下り期間を長くしたときは、立下り期間中の溶接ワイヤの送給速度を加速する。すなわち、修正立下り期間Tks中は、送給速度Fwを加速してそれ以外の期間よりも速くする。
図5は、本発明の実施の形態3に係るパルスアーク溶接制御方法を示す各信号のタイミングチャートである。同図(A)は溶接電流Iwの時間変化を示し、同図(B)は溶接電圧Vwの時間変化を示し、同図(C)は磁気吹き判別信号Adの時間変化を示し、同図(D)は溶接ワイヤの送給速度Fwの時間変化を示す。同図は、上述した図1と対応しており、同一の動作についての説明は繰り返さない。同図において時刻t1〜t2のパルス周期中に磁気吹きが発生しており、続く時刻t2〜t3のパルス周期中は磁気吹きによるアーク切れを防止する制御を実施している。同図は、時刻t2〜t3のパルス周期中の修正立下り期間Tks中における送給速度Fwの動作のみが図1とは異なっている。以下、同図を参照して、この異なる動作について説明する。
時刻t2〜t3のパルス周期Tfにおいて、修正立下り期間Tks中は、同図(D)に示すように、送給速度Fwを加速してそれ以外の期間よりも速くしている。時刻t1〜t2のパルス周期Tf中の立下り期間Tk中は、送給速度Fwは加速されずに一定値のままである。すなわち、同図(C)に示す磁気吹き判別信号AdがHighレベルの期間中の立下り期間のみ送給速度Fwを加速している。
上記の送給速度Fwの加速は、それ以外の期間中よりも20〜30%程度速くなるように設定される。加速の値が大きすぎると短絡が発生して、スパッタの発生が多くなるので良くない。修正立下り期間Tks中の送給速度Fwを加速することによって、アーク長を速やかに短くすることを支援している。同図(D)では、修正立下り期間Tks中の送給速度Fwがステップ状に変化する場合を例示したが、ステップ状に加速した後に右肩下がりに減速するようにしても良い。
図6は、本発明の実施の形態3に係るパルスアーク溶接制御方法を実施するための溶接装置のブロック図である。溶接装置は、主に破線で囲まれた溶接電源PS、ロボット制御装置RC、ロボット(図示は省略)等から構成されている。同図は、上述した図2と対応しており、同一ブロックには同一符号を付して、それらの説明は繰り返さない。同図は、修正立下り期間判別回路DTKSを追加し、図2の送給速度設定回路FRを第2送給速度設定回路FR2に置換したものである。以下、同図を参照して、これらのブロックについて説明する。
修正立下り期間判別回路DTKSは、パルス周期信号Tf、立上り期間設定信号Tur、ピーク期間設定信号Tpr、立下り設定信号Tkr及び磁気吹き判別信号Adを入力として、磁気吹き判別信号AdがHighレベルであるときに、パルス周期信号Tfが短時間Highレベルに変化し立上り期間設定信号Tur及びピーク期間設定信号Tprの合算値によって定まる期間が経過した時点でHighレベルにセットされ、それから立下り期間設定信号Tkrによって定まる期間が経過した時点でLowレベルにリセットされる修正立下り期間判別信号Dtksを出力する。すなわち、修正立下り期間判別信号Dtksは、修正立下り期間Tks中のみHighレベルとなる信号である。
第2送給速度設定回路FR2は、上記の修正立下り期間判別信号Dtksを入力として、Dtks=Lowレベルのときは所定値の送給速度設定信号Frを出力し、Dtks=Highレベルのときは上記の所定値よりも大きな値に設定された加速値の送給速度設定信号Frを出力する。
上述した実施の形態3は、実施の形態1を基礎としているが、実施の形態2を基礎とした場合も同様である。
上述した実施の形態3によれば、実施の形態1又は2において立下り期間を長くしたときは、立下り期間中の溶接ワイヤの送給速度を加速する。これにより、実施の形態1及び2の効果に加えて、以下の効果を奏する。実施の形態3では、立下り期間中のアーク長を短くする作用を有するので、実施の形態1及び2における立下り期間を長くする割合を少なくすることができる。このために、溶接状態への影響を実施の形態1及び2よりも小さくすることができる。
上述した実施の形態1〜3に対して、磁気吹きの発生を判別して立下り期間を長くする以前と以後において、立上り期間の開始時点から立下り期間の終了時点までの溶接電流Iwの積分値が一定になるように、ピーク期間Tp及び/又はピーク電流Ipを変化させるようにしても良い。このようにすれば、溶滴移行状態がさらに良好になる。また、上述した実施の形態1〜3では、アーク長制御が周波数変調制御の場合について説明したが、パルス幅変調制御の場合も同様である。
1 溶接ワイヤ
2 母材
3 アーク
4 溶接トーチ
5 送給ロール
AD 磁気吹き判別回路
Ad 磁気吹き判別信号
DTKS 修正立下り期間判別回路
Dtks 修正立下り期間判別信号
DV 駆動回路
Dv 駆動信号
EI 電流誤差増幅回路
Ei 電流誤差増幅信号
EV 電圧誤差増幅回路
Ev 電圧誤差増幅信号
FC 送給制御回路
Fc 送給制御信号
FR 送給速度設定回路
Fr 送給速度設定信号
FR2 第2送給速度設定回路
Fw 送給速度
Iav 溶接電流平均値
Ib ベース電流
IBR ベース電流設定回路
Ibr ベース電流設定信号
ID 電流検出回路
Id 電流検出信号
Ik 下降遷移電流
Iks 修正下降遷移電流
Ip ピーク電流
IPR ピーク電流設定回路
Ipr ピーク電流設定信号
IR 電流設定回路
Ir 電流設定信号
IR2 第2電流設定回路
It 基準電流値
Iu 上昇遷移電流
Iw 溶接電流
MC 電源主回路
On 起動信号
PS 溶接電源
RC ロボット制御装置
Tb ベース期間
Tf パルス周期(信号)
TKR 立下り期間設定回路
Tkr 立下り期間設定信号
Tks 修正立下り期間
Tp ピーク期間
TPR ピーク期間設定回路
Tpr ピーク期間設定信号
Tu 立上り期間
TUR 立上り期間設定回路
Tur 立上り期間設定信号
VAV 電圧平均化回路
Vav 溶接電圧平均値/電圧平均信号
Vb ベース電圧
VD 電圧検出回路
Vd 電圧検出信号
VF V/Fコンバータ
Vp ピーク電圧
VR 電圧設定回路
Vr 電圧設定信号
Vt 基準電圧値
Vw 溶接電圧
WL リアクトル
WM 送給モータ

Claims (4)

  1. 溶接ワイヤを送給すると共に、立上り期間中はベース電流からピーク電流へと上昇する上昇遷移電流を通電し、ピーク期間中は前記ピーク電流を通電し、立下り期間中は前記ピーク電流から前記ベース電流へと下降する下降遷移電流を通電し、ベース期間中は前記ベース電流を通電し、これらの溶接電流の通電を1パルス周期として繰り返して溶接するパルスアーク溶接制御方法において、
    前記ベース期間中の溶接電圧の上昇によって磁気吹きの発生を判別したときは、前記立下り期間を長くする、
    ことを特徴とするパルスアーク溶接制御方法。
  2. 前記下降遷移電流の下降速度を遅くすることによって、前記立下り期間を長くする、
    ことを特徴とする請求項1記載のパルスアーク溶接制御方法。
  3. 前記下降遷移電流が予め定めた基準電流値に達したときはその値を所定期間維持することによって、前記立下り期間を長くし、前記基準電流値を前記ピーク電流の値よりも小さく前記ベース電流の値よりも大きな値に設定する、
    ことを特徴とする請求項1記載のパルスアーク溶接制御方法。
  4. 前記立下り期間を長くしたときは、前記立下り期間中の前記溶接ワイヤの送給速度を加速する、
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のパルスアーク溶接制御方法。
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