JP2016010959A - 積層体及び回路基板 - Google Patents
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Abstract
Description
このような回路基板では、通常、高温高湿条件下で、配線部と電子部品との接合力が低下し易いという問題点がある。
これに対して、配線部と電子部品との接合力を向上させる手法としては、電子部品の接合部表面を銀等の金属で被覆したり、接合部表面の表面粗さを0.1μm以上10μm未満とする手法が開示されている(特許文献1参照)。
(i)温度85℃及び相対湿度85%の条件下で240時間経過後において、負荷長さ率の差が−13%以下である。
また、本発明は、前記積層体の前記銀層のうち、粗さ曲線の負荷長さ率が前記条件(i)を満たす表面上に、導電性接合部を介して電子部品が搭載された回路基板を提供する。
本発明は、基材上に銀層を備え、前記銀層が、粗さ曲線の負荷長さ率が下記条件(i)を満たす表面を有する積層体。
(i)温度85℃及び相対湿度85%の条件下で240時間経過後において、負荷長さ率の差が−13%以下である。
前記積層体は、銀層が、上記の高温高湿条件下で所定時間経過後の粗さ曲線の負荷長さ率の変化率が所定の範囲にある表面を有することで、前記表面上において、導電性接合部を介した銀層と電子部品との高い接合力が、高温高湿条件下でも長期間維持される。ここで、「接合力」とは、銀層と電子部品とを一体に接合させる力を意味し、例えば、導電性接着剤を用いて銀層と電子部品とを接着させた場合であれば、導電性接着剤が硬化して形成された接着層が、銀層と電子部品とを接着する力(接着力)が該当する。
本明細書において、粗さ曲線の負荷長さ率が前記条件(i)を満たす銀層表面とは、銀層の電子部品との導電性接合部を形成する面である。
ここに示す積層体1は、基材11上に銀層12を備えたものであり、銀層12は、基材11上で所定の形状にパターニングされている。銀層12の表面(一方の主面)12aは、後述する回路基板において、導電性接合部を介して電子部品を搭載する面である。また、銀層12の裏面(他方の主面)12bは、基材11の表面11aとの接触面である。
なお、積層体1においては、例えば、銀層12は基材11の表面11a全面に積層されていてもよい。
密着層13は、基材11の表面11aの全面に積層され、銀層12は密着層13の表面13aの一部に積層されている。なお、ここでは、基材11の表面11a全面に密着層13が積層されたものを示しているが、積層体2においては、銀層12の裏面12bの全面が密着層13の表面13aと接触していることが好ましい。また、例えば密着層13は、基材11の表面11aの全面ではなく一部のみに積層されていてもよいし、その場合、密着層13はパターニングされていてもよい。
基材11は、目的に応じて任意の形状を選択できるが、プレート状、フィルム状又はシート状であることが好ましく、厚さが10〜10000μmであることが好ましく、50〜5000μmであることがより好ましい。
基材11の材質として具体的には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリシクロオレフィン、ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロン、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリスチレン(PS)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル(PEMA)、ポリメタクリル酸ブチル(PBMA)、ポリアクリル酸メチル(PMA)、ポリアクリル酸エチル(PEA)、ポリアクリル酸ブチル(PBA)、AS樹脂、ABS樹脂、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート(PET)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PET−G)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、ポリウレタン、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)、ポリアリレート、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂等の合成樹脂が例示できる。
また、基材11の材質としては、上記以外にも、ガラス、シリコン等のセラミックス;上質紙、薄葉紙、グラシン紙、硫酸紙等の紙類が例示できる。
また、基材11は、ガラスエポキシ樹脂、ポリマーアロイ等の、二種以上の材質を併用したものでもよい。
なお、基材11が複数層からなる場合には、各層の合計の厚さが、上記の好ましい基材11の厚さとなるようにするとよい。
銀層12は、その露出面のうち、少なくとも導電性接合部を介して電子部品を搭載する部位(図1及び図2では表面12aの所定部位)において、粗さ曲線の負荷長さ率が、前記条件(i)を満たすように構成されていればよい。また、銀層12は、前記負荷長さ率が後述する条件(ii)を満たしていることが好ましい。なお、図1及び図2では、銀層12として、表面12a及び裏面12bを繋ぐ側面があるようなプレート状のものを例示しているが、このような側面を有さずに、基板11の表面11a上又は密着層13の表面13a上から、曲面等を介して表面12aを有するような形状の銀層であってもよい。
Rmr(c)240−Rmr(c)0≦−13 ・・・・(i)−1
(式中、Rmr(c)0は試験前の粗さ曲線の負荷長さ率であり;Rmr(c)240は試験後(240時間経過後)の粗さ曲線の負荷長さ率である。)
(ii)温度85℃及び相対湿度85%の条件下で480時間経過後において、負荷長さ率の差が−13%以下である。
銀層が前記条件(ii)を満たすとは、銀層を温度85℃及び相対湿度85%の条件下で480時間経過させる試験を行ったときに、その表面の粗さ曲線が下記式(ii)−1の関係を満たすことを意味する。
Rmr(c)480−Rmr(c)0≦−13 ・・・・(ii)−1
(式中、Rmr(c)0は試験前の粗さ曲線の負荷長さ率であり;Rmr(c)480は試験後(480時間経過後)の粗さ曲線の負荷長さ率である。)
(i)240時間経過後において、差が−14%以下であることが好ましく、−15%以下であることがより好ましく、−16%以下であることが特に好ましい。
さらに、条件(ii)の好ましい条件を以下に示す。
(ii)480時間経過後において、差が−14%以下であることが好ましく、−15%以下であることがより好ましく、−16%以下であることがさらに好ましく、−17%以下であることが特に好ましい。
本発明において、条件(ii)をも満たす場合には、上記条件(i)及び(ii)の好適値は、任意に組み合わせることができる。
銀層12表面の粗さ曲線の負荷長さ率は、銀層12が温度85℃及び相対湿度85%の条件下で240時間経過した段階で、10以上であることが好ましく、12以上であることがより好ましく、40以下であることが好ましい。
銀層12表面の粗さ曲線の負荷長さ率は、銀層12が温度85℃及び相対湿度85%の条件下で480時間経過した段階で、0.1以上であることが好ましく、0.15以上であることがより好ましく、40以下であることが好ましい。
銀層12の表面形状は、例えば、形状測定レーザマイクロスコープ等の顕微鏡を用いる方法等、公知の方法で測定できる。
密着層13の材質は、基材11の種類に応じて適宜調節すればよく、特に限定されないが、各種樹脂であるか、又はシランカップリング剤を用いて形成されたものが好ましい。
また、密着層13の材質は、一種のみでもよいし、二種以上でもよく、二種以上である場合、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に調節できる。
化合物(3)は、前記一般式(3)で表される。
式中、R11は炭素数1〜5のアルキル基、アルコキシアルキル基又はアルキルカルボニル基である。
R11における前記アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよい。
直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基が例示できる。
環状のアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基が例示できる。
R11における前記アルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状であることが好ましく、炭素数が1〜3であることが好ましい。
R11における前記アルコキシアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状であることが好ましく、炭素数が3以下であることが好ましく、メトキシメチル基又は2−メトキシエチル基であることがより好ましい。
R11における前記アルキルカルボニル基は、直鎖状又は分枝鎖状であることが好ましく、炭素数が3以下であることが好ましく、メチルカルボニル基(アセチル基)又はエチルカルボニル基であることがより好ましい。
R12における前記アルキル基としては、R11における前記アルキル基と同じのものが例示でき、R11と互いに同一でもよいし、異なっていてもよい。
R12における前記アリール基は、単環状であることが好ましく、フェニル基であることがより好ましい。
R13における前記アルキレン基としては、炭素数1〜10のアルキル基から1個の水素原子を除いてなる2価の基が例示でき、前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、n−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、2,2−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、3,3−ジメチルペンチル基、3−エチルペンチル基、2,2,3−トリメチルブチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、トリシクロデシル基が例示できる。
また、R14における前記アルキレン基は、メチレン基であるか、又はメチレン基が2〜5個連結して構成されるが、アルキレン基を構成するこれらメチレン基(−CH2−)のうちの1個以上は、カルボニル基(−C(=O)−)で置換されていてもよい。カルボニル基で置換されるメチレン基の数は、前記アルキレン基中のメチレン基の総数に依存し、特に限定されず、例えば、R14はカルボニル基のみで構成されていてもよいし、カルボニル基であってもよく、1個以上のアルキレン基と1個以上のカルボニル基とが混在したものでもよい。そして、通常は、R14中のカルボニル基の数は、2個以下であることが好ましく、1個であることがより好ましい。
Zにおける前記アリール基としては、R12における前記アリール基と同じものが例示でき、R12と互いに同一でもよいし、異なっていてもよい。
また、m2及びm3はそれぞれ独立に0又は1である。ただし、Zがアミノ基である場合には、m2及びm3の少なくとも一方は1である(m2及びm3が共に0になることはない)。
本発明に係る積層体は、例えば、基材上に銀層を形成する工程を有する製造方法で製造できる。
図3は、図1に示す積層体1の製造方法の一例を説明するための概略断面図である。
積層体1を製造するためには、図3(a)及び図3(b)に示すように、基材11の表面(一方の主面)11a上に銀層12を形成する。
銀層12は、例えば、金属銀の形成材料が配合されてなる銀インク組成物を調製し、これを基材11の表面11a上の所望の箇所に付着させ、必要に応じて乾燥処理や加熱(焼成)処理等の後処理を適宜選択して行うことで形成することが好ましい。加熱処理は、乾燥処理を兼ねて行ってもよい。
また、銀インク組成物を基材11の表面11a上の所定の箇所又は全面に付着させ、必要に応じて乾燥処理や加熱(焼成)処理等の後処理を適宜選択して行うことで銀層(パターニング前の銀層、図示略)を形成した後、エッチング等の公知の手法でこの銀層を所望の形状となるようにパターニングすることで、銀層12を形成できる。
銀インク組成物としては、液状のものが好ましく、金属銀の形成材料が溶解又は均一に分散されたものが好ましい。
前記金属銀の形成材料は、銀原子(銀元素)を有し、分解等の構造変化によって金属銀を生じるものであればよく、銀塩、銀錯体、有機銀化合物等が例示できる。前記銀塩及び銀錯体は、有機基を有する銀化合物及び有機基を有しない銀化合物のいずれでもよい。なかでも金属銀の形成材料は、銀塩又は銀錯体であることが好ましい。
また、金属銀の形成材料は、加熱によって分解し、金属銀を形成するものが好ましい。
金属銀の形成材料を用いることで、前記材料から金属銀が生じ、この金属銀を含む銀層が形成される。
本発明において、金属銀の形成材料は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよく、二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
金属銀の形成材料としては、式「−COOAg」で表される基を有するカルボン酸銀が例示できる。
前記カルボン酸銀は、式「−COOAg」で表される基を有していれば特に限定されない。例えば、式「−COOAg」で表される基の数は1個のみでもよいし、2個以上でもよい。また、カルボン酸銀中の式「−COOAg」で表される基の位置も特に限定されない。
なお、本明細書においては、単なる「カルボン酸銀」との記載は、特に断りの無い限り、「β−ケトカルボン酸銀(1)」及び「カルボン酸銀(4)」だけではなく、これらを包括する、「式「−COOAg」で表される基を有するカルボン酸銀」を意味するものとする。
Yはそれぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、臭素原子又は水素原子であり;R1は炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基又はフェニル基であり;R2は炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基であり;R3は炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基であり;R4及びR5はそれぞれ独立に炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基であり;R6は炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基、水酸基又は式「AgO−」で表される基であり;
Xはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはベンジル基、シアノ基、N−フタロイル−3−アミノプロピル基、2−エトキシビニル基、又は一般式「R7O−」、「R7S−」、「R7−C(=O)−」若しくは「R7−C(=O)−O−」で表される基であり;
R7は、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、チエニル基、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはジフェニル基である。)
β−ケトカルボン酸銀(1)は、前記一般式(1)で表される。
式中、Rは1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基若しくはフェニル基、水酸基、アミノ基、又は一般式「R1−CY2−」、「CY3−」、「R1−CHY−」、「R2O−」、「R5R4N−」、「(R3O)2CY−」若しくは「R6−C(=O)−CY2−」で表される基である。
Rにおける環状の前記アルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、トリシクロデシル基が例示できる。
Rにおける前記アルキニル基としては、エチニル基(−C≡CH)、プロパルギル基(−CH2−C≡CH)等の、Rにおける前記アルキル基の炭素原子間の1個の単結合(C−C)が三重結合(C≡C)に置換された基が例示できる。
置換基である前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数が1〜16である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
RにおけるR2は、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基であり、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
RにおけるR3は、炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基であり、炭素数が1〜16である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
RにおけるR4及びR5は、それぞれ独立に炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基である。すなわち、R4及びR5は、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数が1〜18である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
RにおけるR6は、炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基、水酸基又は式「AgO−」で表される基であり、R6における前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数が1〜19である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
Xにおける炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基としては、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。
Xにおけるフェニル基及びベンジル基は、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよく、好ましい前記置換基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、ニトロ基(−NO2)等が例示でき、置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
R7がチエニル基又はジフェニル基である場合、これらの、Xにおいて隣接する基又は原子(酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、カルボニルオキシ基)との結合位置は、特に限定されない。例えば、チエニル基は、2−チエニル基及び3−チエニル基のいずれでもよい。
カルボン酸銀(4)は、前記一般式(4)で表される。
式中、R8は炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基、カルボキシ基(−COOH)又は式「−C(=O)−OAg」で表される基である。
R8における前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数が1〜19である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。ただし、R8における前記脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜15であることが好ましく、1〜10であることがより好ましい。
なお、本明細書において、「金属銀の形成材料に由来する銀」とは、特に断りの無い限り、銀インク組成物の製造時に配合された金属銀の形成材料中の銀を意味し、配合後に引き続き金属銀の形成材料を構成している銀と、配合後に金属銀の形成材料が分解して生じた分解物中の銀及び銀自体と、の両方を含む概念とする。
前記銀インク組成物は、特に金属銀の形成材料が前記カルボン酸銀である場合、金属銀の形成材料以外に、さらに、炭素数25以下のアミン化合物及び第4級アンモニウム塩、アンモニア、並びに前記アミン化合物又はアンモニアが酸と反応してなるアンモニウム塩からなる群から選択される一種以上の含窒素化合物(以下、単に「含窒素化合物」と略記することがある)が配合されてなるものが好ましい。
以下、炭素数25以下のアミン化合物を「アミン化合物」、炭素数25以下の第4級アンモニウム塩を「第4級アンモニウム塩」、炭素数25以下のアミン化合物が酸と反応してなるアンモニウム塩を「アミン化合物由来のアンモニウム塩」、アンモニアが酸と反応してなるアンモニウム塩を「アンモニア由来のアンモニウム塩」と略記することがある。
前記アミン化合物は、炭素数が1〜25であり、第1級アミン、第2級アミン及び第3級アミンのいずれでもよい。また、前記第4級アンモニウム塩は、炭素数が4〜25である。前記アミン化合物及び第4級アンモニウム塩は、鎖状及び環状のいずれでもよい。また、アミン部位又はアンモニウム塩部位を構成する窒素原子(例えば、第1級アミンのアミノ基(−NH2)を構成する窒素原子)の数は1個でもよいし、2個以上でもよい。
好ましい前記モノアルキルアミンとして、具体的には、n−ブチルアミン、n−へキシルアミン、n−オクチルアミン、n−ドデシルアミン、n−オクタデシルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、3−アミノペンタン、3−メチルブチルアミン、2−アミノオクタン、2−エチルヘキシルアミン、1,2−ジメチル−n−プロピルアミンが例示できる。
前記ヘテロアリール基は、単環状及び多環状のいずれでもよく、その環員数(環骨格を構成する原子の数)も特に限定されないが、3〜12員環であることが好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1個有する単環状のものとしては、フラニル基が例示でき、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1個有する単環状のものとしては、チエニル基が例示でき、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する単環状のものとしては、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、モルホリニル基が例示でき、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する単環状のものとしては、チアゾリル基、チアジアゾリル基、チアゾリジニル基が例示でき、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、窒素原子を1〜5個有する多環状のものとしては、インドリル基、イソインドリル基、インドリジニル基、ベンズイミダゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、インダゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、テトラゾロピリジル基、テトラゾロピリダジニル基、ジヒドロトリアゾロピリダジニル基が例示でき、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1〜3個有する多環状のものとしては、ジチアナフタレニル基、ベンゾチオフェニル基が例示でき、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する多環状のものとしては、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基が例示でき、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する多環状のものとしては、ベンゾチアゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基が例示でき、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
前記ジアミンは炭素数が1〜10であることが好ましく、より好ましいものとしてはエチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタンが例示できる。
好ましい前記ジアルキルアミンとして、具体的には、N−メチル−n−ヘキシルアミン、ジイソブチルアミン、ジ(2−エチルへキシル)アミンが例示できる。
好ましい前記トリアルキルアミンとして、具体的には、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミンが例示できる。
前記ジアルキルモノアリールアミンを構成するアリール基は、前記モノアリールアミンを構成するアリール基と同様であり、炭素数が6〜10であることが好ましい。
前記ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1〜19であることが好ましい。また、ハロゲン化テトラアルキルアンモニウム一分子中の4個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、4個のアルキル基は、すべてが同じでもよいし、すべてが異なっていてもよく、一部だけが異なっていてもよい。
前記ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムを構成するハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が例示できる。
好ましい前記ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムとして、具体的には、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミドが例示できる。
環状アミンであれば、好ましいものとして、ピリジンが例示できる。
また、置換基である前記アリール基及びアルキル基は、さらに1個以上の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよく、このようなハロゲン原子で置換された置換基を有するモノアルキルアミンとしては、2−ブロモベンジルアミンが例示できる。ここで、前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示できる。
また、後述するように、二酸化炭素を供給して銀インク組成物を調製する場合には、二酸化炭素供給時において、銀インク組成物(第二の混合物)中の成分がより均一に分散して、品質が安定することから、前記アミン化合物は分岐鎖状のアルキル基を有するものが好ましい。
本発明において、前記アミン化合物由来のアンモニウム塩は、前記アミン化合物が酸と反応してなるアンモニウム塩であり、前記酸は、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸でもよいし、酢酸等の有機酸でもよく、酸の種類は特に限定されない。
前記アミン化合物由来のアンモニウム塩としては、n−プロピルアミン塩酸塩、N−メチル−n−ヘキシルアミン塩酸塩、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン塩酸塩等が例示できるが、これらに限定されない。
本発明において、前記アンモニア由来のアンモニウム塩は、アンモニアが酸と反応してなるアンモニウム塩であり、ここで酸としては、前記アミン化合物由来のアンモニウム塩の場合と同じものが例示できる。
前記アンモニア由来のアンモニウム塩としては、塩化アンモニウム等が例示できるが、これに限定されない。
そして、前記含窒素化合物としては、前記アミン化合物、第4級アンモニウム塩、アミン化合物由来のアンモニウム塩及びアンモニア由来のアンモニウム塩からなる群から選択される一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
前記含窒素化合物の配合量を上記のように規定することで、銀インク組成物は安定性がより向上し、銀層(金属銀)の品質がより向上する。さらに、高温による加熱処理を行わなくても、より安定して導電層を形成できる。
銀インク組成物は、前記金属銀の形成材料以外に、さらに還元剤が配合されてなるものが好ましい。還元剤を配合することで、前記銀インク組成物は、金属銀をより形成し易くなり、例えば、低温での加熱処理でも十分な導電性を有する銀層(金属銀)を形成できる。
H−C(=O)−R21 ・・・・(5)
(式中、R21は、炭素数20以下のアルキル基、アルコキシ基若しくはN,N−ジアルキルアミノ基、水酸基又はアミノ基である。)
前記還元性化合物は、シュウ酸(HOOC−COOH)、ヒドラジン(H2N−NH2)及び前記一般式(5)で表される化合物(化合物(5))からなる群から選択される一種以上である。すなわち、配合される還元性化合物は、一種のみでよいし、二種以上でもよく、二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
R21における炭素数20以下のアルキル基は、炭素数が1〜20であり、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、前記一般式(1)のRにおける前記アルキル基と同様のものが例示できる。
窒素原子に結合している前記アルキル基は、それぞれ直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、炭素数が1〜19である点以外は、前記一般式(1)のRにおける前記アルキル基と同様のものが例示できる。
銀インク組成物は、前記金属銀の形成材料以外に、さらにアルコールが配合されてなるものが好ましい。
アセチレンアルコール(2)は、前記一般式(2)で表される。
式中、R’及びR’’は、それぞれ独立に炭素数1〜20のアルキル基、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基である。
R’及びR’’における炭素数1〜20のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、環状である場合、単環状及び多環状のいずれでもよい。R’及びR’’における前記アルキル基としては、Rにおける前記アルキル基と同様のものが例示できる。
銀インク組成物における前記その他の成分は、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されず、好ましいものとしては、アルコール以外の溶媒が例示でき、配合成分の種類や量に応じて任意に選択できる。
銀インク組成物における前記その他の成分は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合で、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
銀インク組成物において、配合成分の総量に対する前記その他の成分の配合量の割合は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
各成分の配合時には、すべての成分を添加してからこれらを混合してもよいし、一部の成分を順次添加しながら混合してもよく、すべての成分を順次添加しながら混合してもよい。
混合方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法、ミキサーを使用して混合する方法、超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
また、配合時間(混合時間)も、各配合成分が劣化しない限り特に限定されないが、5分〜5時間であることが好ましい。
銀インク組成物は、さらに二酸化炭素が供給されてなるものでもよい。このような銀インク組成物は高粘度となり、例えば、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、グラビアオフセット印刷法、パッド印刷法等の、インクを厚盛りすることが必要な印刷法への適用に好適である。
そして、本発明においては、例えば、前記金属銀の形成材料及び含窒素化合物が配合されてなる第一の混合物に、二酸化炭素を供給して第二の混合物とし、必要に応じて前記第二の混合物に、さらに、前記還元剤を配合して、銀インク組成物を製造することが好ましい。また、前記アルコール又はその他の成分を配合する場合、これらは、第一の混合物及び第二の混合物のいずれか一方又は両方の製造時に配合でき、目的に応じて任意に選択できる。
そして、二酸化炭素ガスの供給時間は、必要とされる二酸化炭素ガスの供給量や、流量を考慮して適宜調節すればよい。
この時の撹拌方法は、二酸化炭素を用いない上記の銀インク組成物の製造時における前記混合方法の場合と同様でよい。
ドライアイスの使用量は、上記の二酸化炭素ガスの供給量を考慮して調節すればよい。
ドライアイスの添加中及び添加後は、第一の混合物を撹拌することが好ましく、例えば、二酸化炭素を用いない上記の銀インク組成物の製造時と同様の方法で撹拌することが好ましい。このようにすることで、効率的に二酸化炭素を供給できる。
撹拌時の温度は、二酸化炭素ガス供給時と同様でよい。また、撹拌時間は、撹拌温度に応じて適宜調節すればよい。
このときの銀インク組成物は、配合成分が異なる点以外は、二酸化炭素を用いない上記の銀インク組成物と同様の方法で製造できる。そして、得られた銀インク組成物は、配合成分がすべて溶解していてもよいし、一部の成分が溶解せずに分散した状態であってもよいが、配合成分がすべて溶解していることが好ましく、溶解していない成分は均一に分散していることが好ましい。
前記印刷法としては、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、ディップ式印刷法、インクジェット式印刷法、ディスペンサー式印刷法、グラビア印刷法、グラビアオフセット印刷法、パッド印刷法等が例示できる。
前記塗布法としては、スピンコーター、エアーナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ブレードコーター、ロールコーター、ゲートロールコーター、バーコーター、ロッドコーター、グラビアコーター等の各種コーターや、ワイヤーバー等を用いる方法が例示できる。
一段階目の加熱処理において、加熱温度は、銀インク組成物の配合成分の種類に応じて適宜調節すればよいが、60〜110℃であることが好ましく、70〜90℃であることがより好ましい。また、加熱時間は、加熱温度に応じて調節すればよいが、通常は、5秒〜12時間であることが好ましく、30秒〜2時間であることがより好ましい。
二段階目の加熱処理において、加熱温度は、金属銀が良好に形成されるように、銀インク組成物の配合成分の種類に応じて適宜調節すればよいが、60〜280℃であることが好ましく、70〜260℃であることがより好ましい。また、加熱時間は、加熱温度に応じて調節すればよいが、通常は、1分〜12時間であることが好ましく、1分〜10時間であることがより好ましい。
なお、本明細書において「非加湿」とは、上述の「加湿」を行わないこと、すなわち、湿度を人為的に増大させないことを意味し、好ましくは相対湿度を5%未満とすることである。
上述の特に好ましい方法において、二段階目の加湿条件下での加熱処理時の加熱温度は、60〜130℃であることが好ましく、70〜110℃であることがより好ましい。また、加熱時間は、1分〜2時間であることが好ましく、1分〜1時間であることがより好ましく、1分〜30分であることが特に好ましい。
密着層は、例えば、密着層を形成するための組成物(以下、「密着層用組成物」と略記することがある)を調製し、これを基材上に付着させ、必要に応じて後処理を行うことにより形成できる。
前記開始剤は、樹脂の形成材料の種類に応じて、公知のものから適宜選択すればよく、特に限定されない。
前記溶媒は、重合反応を阻害しないものであればよく、シクロヘキサノン、1,2−ジメトキシエタン(ジメチルセロソルブ)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等、公知のものから適宜選択すればよい。前記溶媒は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよく、二種以上を併用する場合で、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
前記溶媒は、シランカップリング剤を著しく劣化させない限り、特に限定されず、好ましいものとしては、エタノール、2−プロパノール(イソプロピルアルコール)等の炭素数が2以上のアルコールが例示できる。前記溶媒は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよく、二種以上を併用する場合で、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
各成分の配合方法及び配合条件は、配合成分が異なる点以外は、銀インク組成物の場合と同様とすることができる。
また、密着層用組成物において、開始剤の配合量は、樹脂の形成材料の配合量に対して0.01〜0.1質量倍であることが好ましく、0.02〜0.08質量倍であることがより好ましい。
また、密着層用組成物において、溶媒の配合量は、樹脂の形成材料の配合量に対して0.1〜3質量倍であることが好ましく、0.5〜1.5質量倍であることがより好ましい。
同様に、シランカップリング剤を用いた密着層用組成物は、シランカップリング剤及び溶媒以外の、その他の成分が配合されてなるものでもよい。
前記樹脂の形成材料及びシランカップリング剤のいずれを用いた場合でも、密着層用組成物における前記その他の成分は、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。そして、前記その他の成分は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合で、その組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
前記樹脂の形成材料及びシランカップリング剤のいずれを用いた場合でも、密着層用組成物において、配合成分の総量に対する前記その他の成分の配合量の割合は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
基材上に密着層を形成する工程の後は、例えば、図3(a)及び図3(b)に示す基材11のような、密着層が形成されていない基材に代えて、密着層が形成された基材を用いること以外は、図3(a)及び図3(b)を参照して説明した、基材上に銀層を形成する工程と同様の方法で、密着層上に銀層を形成できる。
本発明に係る回路基板は、前記積層体の前記銀層のうち、粗さ曲線の負荷長さ率が、前記条件(i)を満たす表面上に、導電性接合部を介して電子部品が搭載され、前記積層体の銀層を配線部とするものである。
前記回路基板は、銀層として、表面の粗さ曲線の負荷長さ率が、前記条件(i)を満たすものを備えたこと以外は、従来のものと同じ積層体を用いて構成できる。また、前記回路基板は、さらに前記負荷長さ率が前記条件(ii)を満たしていることが好ましい。
また、前記電子部品としては、回路基板の用途に応じて任意のものが選択できる。
(F480−F0)/F0×100≧−50 ・・・・(iii)−1
(F480−F0)/F0×100≧−20 ・・・・(iii)−2
(式中、F0は試験前の銀層と電子部品との接合力であり;F480は試験後(480時間経過後)の銀層と電子部品との接合力である。)
<積層体及び回路基板の製造>
(銀インク組成物の製造)
液温が50℃以下となるように、2−エチルヘキシルアミン(後述する2−メチルアセト酢酸銀に対して0.4倍モル量)に2−メチルアセト酢酸銀を添加して、15分間撹拌することにより、液状物を得た。この液状物に、反応液の温度が50℃以下となるように、ギ酸(2−メチルアセト酢酸銀に対して0.8倍モル量)を30分間かけて滴下した。ギ酸の滴下終了後、25℃にて反応液をさらに1.5時間撹拌することにより、銀インク組成物(I−2)を得た。各成分の配合比を表1に示す。表1中、「含窒素化合物(モル比)」とは、カルボン酸銀の配合量1モルあたりの含窒素化合物の配合量(モル数)([含窒素化合物のモル数]/[カルボン酸銀のモル数])を意味する。「還元剤(モル比)」も同様に、カルボン酸銀の配合量1モルあたりの還元剤の配合量(モル数)([還元剤のモル数]/[カルボン酸銀のモル数])を意味する。
表2に示す配合量となるように、紫外線硬化性のポリカーボネート骨格含有ウレタンアクリレート樹脂(日本合成社製「UV3310B」、粘度:40000〜70000(60℃)(mPa・s)、官能基数:2、重量平均分子量:5000、推奨UV照射量:800(mJ/cm2))、シクロヘキサノン(和光純薬社製)、及び光開始剤(BASF社製「イルガキュア127」)を添加し、室温(25℃)で10分間撹拌して、密着層用組成物を調製した。なお、表2中において質量%単位で表示している配合量は、配合成分の総量に対する各配合成分の割合を意味する。
バーコーター(#01)を用いて、上記で得られた密着層用組成物をポリカーボネート(PC)/ABS樹脂アロイからなる基材(厚さ2mm)の一方の主面(表面)上に塗布し、オーブン内で80℃、5分間の条件で乾燥させた後、オゾンレス高圧水銀ランプを用いて乾燥させた塗膜に対して、100mJ/cm2の線量で紫外線を照射し、基材表面に密着層(厚さ3〜4μm)を形成した。
以下の手順により、図4に示す構造を有する回路基板を製造した。
すなわち、前記積層体の銀層表面の所定箇所に導電性接着剤(ヘンケル社製「QMI516IE」)0.07mgを塗布し、電子部品として0Ω1608チップ(両端の端子部表面が金メッキされたもの)の端子部を前記導電性接着剤に接触させ、前記導電性接着剤をその標準硬化条件で硬化させて前記チップを固定することで、前記積層体の銀層上に導電性接着剤から形成された接合層を介して前記チップが搭載された回路基板を得た。このような回路基板を複数個製造し、以下の評価に供した。なお、用いた導電性接着剤の特性を表3に示す。
(負荷長さ率の差の算出)
上記で得られた回路基板を、温度85℃及び相対湿度85%の条件下で静置保存し、保存開始前と、保存開始から240時間後、480時間後及び720時間後において、それぞれ回路基板の銀層表面の粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr(c))を算出し、保存開始前に対する所定時間保存後の負荷長さ率の差を算出した。結果を表4に示す。なお、粗さ曲線の負荷長さ率は、以下の方法で算出した。すなわち、形状測定レーザマイクロスコープ(キーエンス社製「VK−X100」)を用いて、銀層の表面のうち、接合層が形成されていない露出面の形状を、この露出面の上方から測定し(測定モード:表面形状、測定サイズ:2048×1536、測定品質:高精度)、基材の傾き補正を行った後、得られた断面曲線に高域フィルタ(カットオフ値λC:0.08mm)を適用して、粗さ曲線を得た。そして、得られた粗さ曲線のプロファイルから、50×50μmの測定範囲で、粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr(c))を算出した。
以下の手順により、JEITA ET−7409−102に準拠して、図4に示すように、横押しせん断強度試験を行った。図4は、試験に用いた本発明に係る回路基板と、その横押しせん断強度試験を説明するための模式図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
すなわち、上記の保存開始前及び所定時間保存後の回路基板30を用い、回路基板30のチップ14(前記チップ)のうち、両端の端子部14a及び14b間の本体部14c側面に押し治具9の先端部を当接させた。このときの、押し治具9の下面9aの、銀層12の表面12aからの高さ(せん断高さ)hを0.1mmとした。そして、銀層12表面に対して並行で、かつチップ14の本体部14cの長手方向(前記端子部14a及び14bを繋ぐ方向)に対して垂直な方向(矢印A方向)に、せん断速度0.5mm/分で押し治具9を押し込むことにより、チップ14にせん断力を加え、チップ14が積層体3から剥離したときのせん断力(N)を接合力とした。結果を表4に示す。なお、図4において、符号15は、導電性接着剤が硬化して形成された接合(接着)層であり、上述の導電性接合部に該当する。
<積層体及び回路基板の製造、並びに回路基板の評価>
表4に示すように、積層体及びチップの少なくとも一方を変更したこと以外は、実施例1と同じ方法で積層体及び回路基板を製造し、回路基板を評価した。結果を表4に示す。
なお、実施例2で用いたチップは、実施例1で用いたチップにおいて、両端の端子部表面が金メッキに代えてスズメッキされたものである。
また、比較例1及び2で用いた比較用の積層体は、厚さ100μmのSUS304製基材の表面に、厚さ1μmの銀メッキ層を形成したものである。
<積層体及び回路基板の製造、並びに回路基板の評価>
導電性接着剤として、ヘンケル社製「QMI516IE」に代えて、表3に示すAGF社製「CA−110」を用いたこと以外は、実施例1〜2及び比較例1〜2と同じ方法で積層体及び回路基板を製造し、回路基板を評価した。結果を表5に示す。
なお、表5中の比較例3及び4で用いた比較用の積層体は、比較例1及び2で用いたものと同じである。
<積層体及び回路基板の製造、並びに回路基板の評価>
導電性接着剤として、ヘンケル社製「QMI516IE」に代えて、表3に示すAGF社製「CA−100」を用いたこと以外は、実施例1〜2及び比較例1〜2と同じ方法で積層体及び回路基板を製造し、回路基板を評価した。結果を表6に示す。
なお、表6中の比較例5及び6で用いた比較用の積層体は、比較例1及び2で用いたものと同じである。
そして、本発明によれば、接合層(導電性接合部)の種類によらず、また、チップの端子部表面のメッキ(電子部品の接合部)の種類によらず、銀層は高温高湿条件下においても電子部品との高い接合力を維持できることを確認できた。
<積層体及び回路基板の製造、並びに回路基板の評価>
(銀インク組成物の製造)
2−メチルアセト酢酸銀、2−エチルヘキシルアミン(2−メチルアセト酢酸銀に対して2.25倍モル量)、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール(エアープロダクツジャパン社製「サーフィノール61」)(2−メチルアセト酢酸銀に対して0.1倍モル量)を配合し、室温下(25℃)で60分間撹拌することにより、銀インク組成物(I−3)を得た。各成分の配合比を表7に示す。表7中、「含窒素化合物(モル比)」とは、カルボン酸銀の配合量1モルあたりの含窒素化合物の配合量(モル数)([含窒素化合物のモル数]/[カルボン酸銀のモル数])を意味する。「アルコール(モル比)」も同様に、カルボン酸銀の配合量1モルあたりのアルコールの配合量(モル数)([アルコールのモル数]/[カルボン酸銀のモル数])を意味する。
化合物(3)としてN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン((CH3O)3Si(CH2)3NH(CH2)2NH2、信越シリコーン社製「KBM603」)、2−プロパノールを、配合成分の総量に対する配合量の割合がそれぞれ20質量%、80質量%となるように配合し、室温下(25℃)で60分間撹拌することにより、密着層用組成物を得た。
ポリエチレンナフタレート(PEN)製の基材(厚さ0.25mm)上に、アプリケーターを用いて、上記で得られた密着層用組成物を塗布し、オーブンを用いて120℃で10分間加熱処理することにより、基材上に密着層(厚さ0.5〜1μm)を形成した。
以降、実施例1と同じ方法で、銀層(厚さ1μm)を密着層の表面に形成して、積層体及び回路基板を製造し、回路基板を評価した。結果を表8に示す。
<積層体及び回路基板の製造、並びに回路基板の評価>
実施例7と同じ方法で、ポリエチレンナフタレート製の基材(厚さ0.25mm)上に、密着層(厚さ0.5〜1μm)を形成した。
次いで、密着層上にスクリーン印刷法により、銀錯体が配合されてなる銀インク組成物(II−1)(Inktec社製「TEC−IJ−010」、銀濃度15質量%)を塗布した後、これを150℃で1時間、オーブン内で加熱(焼成)処理することにより、導電層として銀層(厚さ1μm)を密着層の表面に形成して、積層体を得た。
次いで、この積層体を用いて、実施例1と同じ方法で回路基板を製造及び評価した。結果を表8に示す。
<積層体及び回路基板の製造、並びに回路基板の評価>
実施例1と同じ方法で、ポリカーボネート/ABS樹脂アロイからなる基材(厚さ2mm)の表面に、密着層(厚さ3〜4μm)を形成した。
次いで、密着層上にスクリーン印刷法により、銀錯体及び銀粒子が配合されてなる銀インク組成物(II−2)(Inktec社製「TEC−PA−010」、銀濃度55質量%、バインダー不使用)を塗布した後、これを80℃で2時間、オーブン内で加熱(焼成)処理することにより、導電層として銀層(厚さ1μm)を密着層の表面に形成して、積層体を得た。
次いで、この積層体を用いて、実施例1と同じ方法で回路基板を製造及び評価した。結果を表8に示す。
<積層体及び回路基板の製造、並びに回路基板の評価>
実施例1と同じ方法で、ポリカーボネート/ABS樹脂アロイからなる基材(厚さ2mm)の表面に、密着層(厚さ3〜4μm)を形成した。
次いで、密着層上にスクリーン印刷法により、銀粒子が配合されてなる銀インク組成物(II−3)(トーヨーケム社製「RA RS 056」、銀濃度66質量%、合成樹脂含有量1〜10質量%)を塗布した後、これを80℃で2時間、オーブン内で加熱(焼成)処理することにより、導電層として銀層(厚さ1μm)を密着層の表面に形成して、積層体を得た。
次いで、この積層体を用いて、実施例1と同じ方法で回路基板を製造及び評価した。結果を表8に示す。
<銀板の評価>
厚さ0.1mmの銀板について、実施例1と同じ方法で、銀層(銀板)表面の粗さ曲線の負荷長さ率とその差を算出した。結果を表8に示す。
これに対し、比較例7〜8の積層体、及び比較例9における銀板は、いずれも銀層表面の粗さ曲線の負荷長さ率が、条件(i)を満たしていなかった。
<積層体及び回路基板の製造、並びに回路基板の評価>
導電性接着剤として、ヘンケル社製「QMI516IE」に代えて、AGF社製「CA−110」を用いたこと以外は、実施例7〜8と同じ方法で積層体及び回路基板を製造し、回路基板を評価した。結果を表9に示す。
実施例1の積層体、比較例7及び8の積層体、並びに比較例9における銀板について、さらに下記方法で評価を行った。
すなわち、実施例1の積層体、並びに比較例7及び8の積層体については、液体窒素を用いて冷却し、破断させることで、図1に示すものと同様な断面を露出させた。また、比較例9における銀板については、ミクロトームを用いて切断することで、断面を露出させた。
次いで、この断面を有する積層体(破断積層体)又は銀板(破断銀板)を、実施例1と同じ条件下(温度85℃及び相対湿度85%の条件下)で静置保存し、保存開始前と、保存開始から240時間後及び480時間後において、銀層の前記断面(すなわち温度85℃及び相対湿度85%の条件下での露出面)の粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr(c))を算出し、保存開始前に対する所定時間保存後の負荷長さ率の差を算出した。結果を表10に示す。なお、粗さ曲線の負荷長さ率は、以下の方法で算出した。すなわち、形状測定レーザマイクロスコープ(キーエンス社製「VK−X100」)を用いて、銀層の前記断面の形状を測定し、得られた断面曲線に高域フィルタ(カットオフ値λC:0.08mm)を適用して、粗さ曲線を得た。そして、得られた粗さ曲線のプロファイルから、粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr(c))を算出した。
導電性接合部を介して電子部品を搭載する面と、前記断面とで、粗さ曲線の負荷長さ率とその変化率は、同様の傾向を示した。すなわち、銀層断面の粗さ曲線の負荷長さ率の変化率が、条件(i)を満たすことで、銀層は高温高湿条件下においても電子部品との高い接合力を維持できることを確認できた。
これに対し、比較例7〜8の積層体、比較例9における銀板は、いずれも銀層表面の粗さ曲線の負荷長さ率が、条件(i)を満たしていなかった。
11 基材
11a 基材の表面
12 銀層
12a 銀層の表面
12b 銀層の裏面
13 密着層
13a 密着層の表面
14 チップ(電子部品)
14a,14b チップの端子部
14c チップの本体部
15 接合層(接着層)
30 回路基板
Claims (2)
- 基材上に銀層を備え、前記銀層が、粗さ曲線の負荷長さ率が下記条件(i)を満たす表面を有する積層体。
(i)温度85℃及び相対湿度85%の条件下で240時間経過後において、負荷長さ率の差が−13%以下である。 - 請求項1に記載の積層体の前記銀層のうち、粗さ曲線の負荷長さ率が前記条件(i)を満たす表面上に、導電性接合部を介して電子部品が搭載されたことを特徴とする回路基板。
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