JP2016008887A - 潤滑油の劣化検出方法 - Google Patents

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秀樹 古川
横山 景介
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景介 横山
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暢子 奥谷
寿明 小口
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寿明 小口
邦彦 笹尾
Kunihiko Sasao
邦彦 笹尾
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Abstract

【課題】フォトニック結晶を利用して、潤滑油の劣化を検出する方法を提供する。
【解決手段】流体を流通させる流路内にフォトニック結晶を設置し、前記流路内に基準流体となる潤滑油を流通させ、前記フォトニック結晶からの反射光のピーク波長を測定し、前記反射光のピーク波長が安定した後、前記流路内に流通させる流体を前記基準流体から測定対象流体となる潤滑油に切り替え、前記フォトニック結晶からの反射光のピーク波長を測定し、前記反射光のピーク波長が安定した後、前記流路内に流通させる流体を前記測定対象流体から前記基準流体に切り替え、前記フォトニック結晶からの反射光のピーク波長を測定し、各段階で測定した反射光のピーク波長の推移から、測定対象流体中の劣化指標物質の存在を検出することにより、潤滑油の劣化を検出する。
【選択図】図15

Description

本発明は、フォトニック結晶を利用して潤滑油の劣化を検出する方法に関する。
軸受の動作を滑らかにする目的で潤滑油が使用される。潤滑油は、長期間にわたって使用されると軸受の摺動部分から発生した摩耗粉が混入して劣化する。例えば、特許文献1には、潤滑油へのゴミの混入や水の混入による潤滑油の劣化状態を、加速度センサの共振周波数帯信号や高周波信号を用いることにより、検出したゴミの状態、潤滑油の状態を根拠にその寿命を早期に高精度に推定することが記載されている。
特開2005−291738号公報 特開2013−134128号公報
ところで、フォトニック結晶を利用して標的物質を検出する方法がある(例えば、特許文献2)。
本発明は、フォトニック結晶を利用して、潤滑油の劣化を検出する方法を提供することを目的とする。
本発明は、流体を流通させる流路内にフォトニック結晶を設置し、前記流路内に基準流体となる潤滑油を流通させ、前記フォトニック結晶からの反射光のピーク波長に対応した検出値を測定し、前記反射光のピーク波長が安定した後、前記流路内に流通させる流体を前記基準流体から測定対象流体となる潤滑油に切り替え、前記フォトニック結晶からの反射光のピーク波長に対応した検出値を測定し、前記反射光のピーク波長が安定した後、前記流路内に流通させる流体を前記測定対象流体から前記基準流体に切り替え、前記フォトニック結晶からの反射光のピーク波長に対応した検出値を測定し、各段階で測定した反射光のピーク波長に対応した検出値から、測定対象流体中の劣化指標物質の存在を検出する、潤滑油の劣化検出方法である。
本発明によれば、フォトニック結晶からの反射光のピーク波長を測定することにより、ピーク波長の推移からフォトニック結晶表面に接触する流体内に存在する劣化指標物質を検出することができる。
前記測定対象流体を流通させてから前記基準流体に切り替える間は、前記測定対象流体の流路内外への流通を止めることが好ましい。
前記測定対象流体の流路内外への流通を止めることにより、フォトニック結晶表面への劣化指標物質の沈降又は堆積が促進される。
前記劣化指標物質は前記潤滑油に含まれる金属粉であることが好ましい。
潤滑油中に含まれる金属粉を劣化指標物質として検出することにより、潤滑油の劣化度合いを知ることができる。
前記劣化指標物質は前記潤滑油に含まれるカルボキシ基であることが好ましい。
酸化物又はスラッジに含まれるカルボキシ基を劣化指標物質として検出することにより、潤滑油の劣化度合いを知ることができる。
前記測定対象流体は、測定前に加熱し濾過することが好ましい。
測定前の測定対象流体を加熱して濾過することにより、劣化していない潤滑油と同等の反射光のピーク波長及びピーク強度を得ることができ、より精密な分析が可能となる。
本発明によれば、フォトニック結晶を利用して、潤滑油の劣化を検出する方法を提供することができる。
図1は、劣化指標物質検出装置を示す図である。 図2は、金属膜被覆フォトニック結晶の斜視図である。 図3は、金属膜被覆フォトニック結晶の平面図である。 図4は、図3におけるA−A断面を示す図である。 図5は、非平坦部が凸部である場合の図3におけるA−A断面を示す図である。 図6は、フォトニック結晶の作製方法を説明する図である。 図7は、フォトニック結晶の作製方法を説明する図である。 図8は、フォトニック結晶の作製方法を説明する図である。 図9は、フォトニック結晶センサの説明図である。 図10は、フォトニック結晶センサの供給管及び排出管周囲の構成例を示す模式図である。 図11は、フォトニック結晶センサの供給管及び排出管周囲の構成例を示す模式図である。 図12は、劣化指標物質検出装置の光検出部がフォトニック結晶センサに光を照射する例を示す図である。 図13は、劣化指標物質検出装置の光検出部が有する測定プローブの構造を示す図である。 図14は、劣化指標物質検出装置の光検出部の評価条件を示す図である。 図15は、劣化指標物質検出方法の一例を示すフローチャートである。 図16は、センサ基板上に不純物が堆積する様子を説明するイメージ図である。 図17は、図15に示すフローチャートに基づいて潤滑油の劣化を測定する場合のセンサ出力の変化の一例を示すモデル図である。 図18は、経過時間とセンサ出力との関係を示すグラフである。 図19は、カルボキシ基の量を測定して潤滑油の劣化度合いを測定する一例を示すイメージ図である。 図20は、非劣化潤滑油、加熱加速劣化潤滑油(フィルター未処理)、加熱加速劣化潤滑油(フィルター処理済み)それぞれの反射スペクトルを示す図である。 図21は、フィルター処理した劣化潤滑油の測定例を示す図である。 図22は、図21で説明した手順に基づいて測定した実際のデータを示す図である。
本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)を、図面を参照しつつ説明する。
<劣化指標物質検出装置>
図1は、劣化指標物質検出装置を示す図である。劣化指標物質検出装置10は、フォトニック結晶センサ11と、光検出部12と、制御部13とを含む。
(フォトニック結晶センサ)
フォトニック結晶センサ11について説明する。フォトニック結晶センサ11は、金属膜被覆フォトニック結晶21と、台23と、薄板24と、カバー22とを含む。本実施形態においては、フォトニック結晶センサ11は、台23と薄板24とカバー22とによって形成される流路24f内に金属膜被覆フォトニック結晶21を配置した構造である。フォトニック結晶センサ11は、供給管76と、排出管77とを含む。溶液は、供給管76から流路24fに供給される。溶液は、排出管77を通じて流路24fから排出される。供給管76及び排出管77の少なくとも一方には流路24f内への流体の流通を調節するポンプ71が設けられている。ポンプ71は制御部13に接続されている。
(金属膜被覆フォトニック結晶)
図2は、金属膜被覆フォトニック結晶21の斜視図である。図3は、金属膜被覆フォトニック結晶21の平面図である。図4は、図3におけるA−A断面を示す図であり、フォトニック結晶25の表面27と直交する平面でフォトニック結晶25を切ったときの断面を示す。なお、図2〜図4は、模式的に示した図であるため、金属膜被覆フォトニック結晶21を構成する成分の厚さ、大きさ等は実際とは異なる。以下、本実施形態及び後述する他の実施形態においても同様である。図2〜図4に示すように、金属膜被覆フォトニック結晶21は、フォトニック結晶25および金属膜26を含んでいる。金属膜被覆フォトニック結晶21は、フォトニック結晶25の表面27に非平坦部28Aが複数配列された反射面29を金属膜26で被覆した基板である。非平坦部28Aは、表面27に対して窪んだ円柱状の凹部である。なお、金属膜26はなくてもよい。
まず、フォトニック結晶25について説明する。フォトニック結晶は、表面に所定の深さの凹部または所定の高さの凸部が周期的に形成された反射面を有し、この反射面に特定波長の光(平行光)を照射すると、その反射光が得られる構造体である。表面に凸部または凹部が周期的に形成された反射面に光を照射すると、特定波長の反射光が得られる構造体は、フォトニック結晶と呼ばれる。以下において、フォトニック結晶又は金属膜被覆フォトニック結晶を、適宜センサ基板とも称する。
フォトニック結晶は、サブ波長間隔の格子構造を有する構造体であり、周期的に屈折率の異なる表面を有する。周期的に屈折率の異なる構造体は、表面(以後、反射面という)に広領域波長の光が照射されると、構造体の表面状態に依存した特定の波長帯の光を反射または透過する。フォトニック結晶の表面状態は、例えばフォトニック結晶の形状及び材質に依存する。このような反射光または透過光の変化を、例えば光検出センサ等によって読み取ることにより、フォトニック結晶の表面状態の変化を定量化することができる。フォトニック結晶の表面状態の変化としては、表面への物質の吸着、構造変化などが挙げられる。表面に金属薄膜が形成されたフォトニック結晶も、光が照射されると、光の反射率または光の透過率に極値(極大値または極小値)が現れる。この反射率または透過率の極値は、金属の種類、金属の膜厚及びフォトニック結晶の表面形状に依存するものである。この光の反射率または光の透過率を読み取ることにより、フォトニック結晶の表面状態の変化を定量化することができる。金属薄膜については後述する。フォトニック結晶の表面状態の変化を反射光または透過光の変化から定量化するには、次の方法を用いることができる。例えば、極値(極大値または極小値)での反射率もしくは透過率の変化量、または反射率もしくは透過率が極値となる波長のシフト量を求めるなどである。なお、反射率または透過率の極値が複数ある場合には、任意の極値に着目する。そして、着目した極値について変化量を求めるか着目した極値となる波長のシフト量を求めることにより、フォトニック結晶の表面状態の変化を定量することができる。
図2から図4に示すように、フォトニック結晶25は、表面27に非平坦部28Aが周期的に形成された反射面29を有している。この反射面29に光を照射すると、フォトニック結晶25の形状及び材質に依存した特定波長の光が反射される。
本実施形態において、非平坦部28Aは、三角形の格子状に配置されている。また、非平坦部28Aの直径D1は、50nm以上1000nm以下であることが好ましく、より好ましくは、100nm以上500nm以下である。また、非平坦部28Aの中心間の距離C1は、100nm以上2000nm以下であることが好ましく、より好ましくは、200nm以上1000nm以下である。また、非平坦部28Aの深さをH1としたとき、非平坦部28Aのアスペクト比(H1/D1)は、0.1以上10以下であることが好ましく、より好ましくは、0.5以上5.0以下である。なお、非平坦部28Aの寸法は、上記のものに限定されない。
フォトニック結晶25の形状及び寸法は、図2から図4に示した形状に限定されることはない。例えば、矩形もしくは多角形の格子状のパターンが表面に形成されたもの、平行線状パターンもしくは波型形状パターンなどが表面に形成されたもの(詳しくは周期的にパターンなどが形成されたもの)、またはこれらのパターンの組合せであってもよい。
フォトニック結晶25の材質としては、合成樹脂などの有機材料または金属もしくはセラミックなどの無機材料を使用することができる。
合成樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリシクロオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、アクリル、ポリメタクリル酸エステル、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリテトラフルオロエチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトンなどの熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を使用することができる。
セラミックとしては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、イットリアなどのセラミックを好適に使用することができる。
金属としては、鉄鋼材料をはじめとして各種合金が使用可能である。具体的には、ステンレス鋼、チタンまたはチタン合金などが好適である。
上記した各種材料の中でも、光学特性、加工性、標的物質(ターゲットとなる物質)を含有する溶液に対する耐性、標的物質捕捉物質(特異的結合物質)の吸着性および洗浄剤に対する耐性などを考慮すると、ポリシクロオレフィン系合成樹脂またはシリカ系のセラミックがより好ましい。この中でも、ポリシクロオレフィン系合成樹脂は、加工性に優れており最も好適である。
フォトニック結晶25は、上記材料基板の表面に微細な加工を施すことにより作製される。加工方法としては、レーザー加工、熱ナノインプリント、光ナノインプリントまたはフォトマスクとエッチングの組合せなどが使用できる。特に、ポリシクロオレフィン系合成樹脂などの熱可塑性樹脂を材料とする場合には、熱ナノインプリントによる方法が好適である。
次に、金属膜26について説明する。例えば、本実施形態においては、図4に示すように、フォトニック結晶25は、その反射面29が金属膜26で被覆されている。金属膜26は、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)またはアルミニウム(Al)のうちの何れか1種類以上を用いて形成されることが好ましい。本実施形態において、金属膜26はAuで形成されている。Auは、安定性に優れるため、反射面29として好ましい。金属膜26に銀(Ag)またはアルミニウム(Al)のうちの何れか1種類以上を用いる場合、金で表面を被覆することが好ましい。このようにすることで、金の使用量を低減してフォトニック結晶25の製造コストを抑制することができる。
金属膜26の膜厚が小さいと、フォトニック結晶25への入射光の一部は金属膜26を透過することがある。その結果、反射光から得られる情報量の低下、回折光またはフォトニック結晶25の裏面からの反射光など、フォトニック結晶25からの反射光には不要な情報が多く含まれる可能性がある。金属膜26の膜厚を適度に大きくすることにより、フォトニック結晶25からの反射光に含まれる不要な情報を低減して、劣化指標物質の検出精度及び濃度の計測精度を向上させることができる。また、金属膜26の膜厚が適度に小さいと、フォトニック結晶25の表面27に詳細なパターン形状を作製することが容易であるので好ましい。例えば、パターンの角がシャープになって、パターンの寸法を確保することが容易となる。このような観点から、本実施形態において、金属膜26の膜厚は、好ましくは30nm以上1000nm以下であり、より好ましくは150nm以上500nm以下であり、さらに好ましくは200nm以上400nm以下である。波長に対する反射率の変化は、金属膜26の膜厚が200nmを超えるとほぼ同様になるためである。
金属膜26は、スパッタリングまたは蒸着装置などによってフォトニック結晶25の反射面29に形成される。金属膜26の最も外側の表面は、Auとすることが好ましい。金属膜26にAg、PtまたはAlを用いた場合、それぞれの極値における反射光の波長は、Auを金属膜26として用いた場合に対して1.5倍となる。このように、Ag、Pt、Alは、Auよりも1.5倍の感度を有する。Agは酸化されやすいので、フォトニック結晶25の反射面29にAgを形成した後、酸化されにくいAuまたはSiOなどの酸化物薄膜を形成することが好ましい。この場合、例えば、200nmの厚さを有するAgの膜の表面に、5nmの厚さを有するAuの膜を形成することができる。200nmの厚さを有するAgの膜の表面に5nmの厚さを有するAuの膜を形成した場合、200nmの厚さを有するAuの膜に比べて、感度が1.5倍になる。5nmのAuの膜の有無で、感度の変化は見られなかった。AlもAgと同様に酸化されやすいので、フォトニック結晶25の表面27にAlの膜を形成した後、酸化されにくいAuまたはSiOなどの酸化物薄膜を形成することが好ましい。抗体などで修飾するために、Ptも、AuまたはSiOなどの酸化物薄膜を形成することが好ましい。
フォトニック結晶25の反射面29は、3-triethoxysilylpropylamine(APTES)などを用いて改質されることが好ましい。フォトニック結晶25の反射面29に、AuまたはAgの金属膜26を形成させた場合には、APTESではなく、一端にチオール基を有し、他端にアミノ基やカルボキシ基などの官能基を有する炭素鎖を用いてフォトニック結晶25の反射面29を改質することが好ましい。AuまたはAg以外の金属膜26をフォトニック結晶25の反射面29に形成させた場合は、一端に官能基を有するシラン系カップリング剤、例えばAPTESを使用して、フォトニック結晶25の反射面29を改質することが好ましい。
金属膜被覆フォトニック結晶21は、フォトニック結晶25の反射面29を金属膜26で被覆したものであるため、フォトニック結晶25の非平坦部28Aに対応して反射面29に金属膜被覆フォトニック結晶21の非平坦部28Bが周期的に形成されている。非平坦部28Bは、非平坦部28Aと同様、三角形の格子状に配置されている。また、非平坦部28Bの直径D2は、金属膜26の厚さにもよるが、50nm以上1000nm以下であることが好ましく、より好ましくは、100nm以上500nm以下である。また、非平坦部28Bの中心間の距離C2は、非平坦部28Aの中心間の距離C1と同様、100nm以上2000nm以下であることが好ましく、より好ましくは、200nm以上1000nm以下である。また、非平坦部28Bの深さをH2としたとき、非平坦部28Bのアスペクト比(H2/D2)は、0.1以上10以下であることが好ましく、より好ましくは、0.5以上5.0以下である。なお、非平坦部28Bの寸法は、上記のものに限定されない。
図5は、非平坦部が凸部である場合の図3におけるA−A断面を示す図である。上記の説明において、本実施形態に係る非平坦部28A、28Bは、図4で示したような凹部であるとしたが、図5に示すように凸部であってもよい。このとき非平坦部28A、28Bは、表面27に対して突出した円柱状の凸部である。非平坦部28Bの直径D2及び非平坦部28Bの中心間の距離C2は、非平坦部が凹部である場合と同様である。非平坦部28Bの高さをH2としたときの非平坦部28Bのアスペクト比(H2/D2)も、非平坦部が凹部である場合と同様である。
(フォトニック結晶の作製方法)
次に、熱ナノインプリントにより金属膜被覆フォトニック結晶21を作製する工程の一例を説明する。図6、図7及び図8は、フォトニック結晶の作製方法を説明する図である。図6に示すように、熱ナノインプリントでは、ナノメートルレベルの微細構造、またはナノメートルレベルの周期構造のパターンを有する金型DIを用いる。そして、図7に示すように、加熱した金型DIをシート状の樹脂Pに押し付けて、所定圧力で所定時間押圧し、金型DIの表面温度が所定温度になったところで離型し、微細構造及び周期構造をシート状の樹脂Pに転写する。これにより、フォトニック結晶25が得られる。
樹脂Pがシクロオレフィン系ポリマーの場合には、金型DIを160℃程度まで加熱し、約12MPaの圧力で所定時間押圧し、金型DIの表面温度が60℃程度になったところで離型することが好ましい。
フォトニック結晶25を作製した後、図8に示すように、金型DIと接していた表面に、スパッタリングまたは蒸着装置などによって金属膜26を形成して、金属膜被覆フォトニック結晶21が完成する。
なお、フォトニック結晶は、熱ナノインプリントの代わりに光ナノインプリントによっても作製することができる。その場合、図7に示す工程において、加熱した金型DIをシート状の樹脂Pに押し付ける代わりに、金型DIをシート状の樹脂Pに押圧して、樹脂Pに光(例えば、紫外線)を照射して光硬化させる。光ナノインプリントによれば、熱ナノインプリントに比べてより正確に金型のパターンを樹脂に転写することができる。また光ナノインプリントによれば、樹脂をガラス転移点以上に加熱する必要がないので、加熱及び冷却に要する工程サイクルを短縮することができ、加熱及び冷却に起因する樹脂の熱収縮を低減することができる。このため、光ナノインプリントを用いて作製されたフォトニック結晶は、格子間隔、すなわち図3に示す非平坦部28Bの中心間の距離C2の精度を向上させることができる。
(フォトニック結晶センサの作製方法)
次に、図1に示すフォトニック結晶センサ11の作製の一例について説明する。図9は、フォトニック結晶センサ11の説明図である。フォトニック結晶センサ11は、金属膜被覆フォトニック結晶21と、2つの貫通孔23hを有する台23と、開口部24hを有する薄板24と、カバー22とを含む。金属膜被覆フォトニック結晶21は、台23の表面に設置される。その後、薄板24を台23の上に設置する。例えば、本実施形態において、金属膜被覆フォトニック結晶21の幅は、開口部24hの幅よりも小さい。このため、金属膜被覆フォトニック結晶21は、台23と薄板24とにより挟まれ固定される。カバー22は、薄板24の上に設置される。上記の構成により、フォトニック結晶センサ11は、台23、薄板24の開口部24h側の内壁及びカバー22で囲まれて形成される流路24fを有する。開口部24h側の内壁とは、薄板24と開口部24hとの境界面である、薄板24の内壁をいう。これにより、金属膜被覆フォトニック結晶21は、流路24f内に配置される。劣化指標物質を含む流体は、流路24fの内部を流れることで、反射面29が劣化指標物質を捕捉する。なお、流路24fは上記のように形成されなくてもよい。例えば、流路24fは、台23の表面の一部を窪ませて形成されていてもよい。
フォトニック結晶センサ11は、供給管76と、排出管77とを含む。溶液は、供給管76から流路24fに供給される。溶液は、排出管77を通じて流路24fから排出される。
台23およびカバー22の材質などは、特に限定されない。ただし、カバー22および台23の表面の清浄度などを考慮すると、ステンレス鋼、ポリシクロオレフィン系樹脂またはシリカなどを用いて形成されることが好ましい。
2つの貫通孔23hのうち一方は、流路24fに溶液を流入させる供給口である。2つの貫通孔23hのうち他方は、流路24fから溶液を流出させる排出口である。先端にコネクタ79を有する供給管76は、2つの貫通孔23hのうち一方に接続される。先端にコネクタ79を有する排出管77は、2つの貫通孔23hのうち他方に接続される。溶液は、供給管76を介して流路24fに流入し、排出管77を介して流路24fから流出する。また、コネクタ79は、2つの貫通孔23hを塞ぐ。このため、コネクタ79は、溶液が流路24fから漏出する可能性を低減する。なお、貫通孔23h、供給管76及び排出管77はなくてもよい。貫通孔23h、供給管76及び排出管77がない場合でも、例えば、流路24fが円環状に形成されていれば、溶液は流路24f内を循環する。また、貫通孔23hは3つ以上あってもよい。
フォトニック結晶センサ11は、熱ナノインプリント又は光ナノインプリントなどにより均一に作製されている。劣化指標物質検出装置10がより正確に反射光の検出ができるようにするため、フォトニック結晶センサ11に照射される光の入射部位、反射部位を正確に位置決めすることが好ましい。
すなわち、フォトニック結晶センサ11と後で説明する測定プローブとの測定時の位置関係は、測定前後で同一であることが好ましく、同一の部分を測定することが好ましい。したがって、測定プローブとフォトニック結晶センサ11の反射面29との距離は、測定前後で同一であることが好ましく、50μm〜500μmに固定することが好ましい。フォトニック結晶センサ11は、カバー22を含むことで、カバー22がスペーサとして機能し、測定プローブとフォトニック結晶センサ11の反射面29との距離を一定にすることができる。
フォトニック結晶センサ11に、反射面29における特定の位置を表示する、位置決め用のマーカーによってマークを付けるようにしてもよい。マーカーは、フォトリソグラフィー、スパッタリング、蒸着、これらを利用したリフトオフプロセス、インクなどによる印刷またはインプリントによるパターン形成などによって付けることができる。マーカーは、その位置を読み取ることができればフォトニック結晶センサ11の表面(反射面29側)または裏面(反射面29の反対側)のどちらに付けてもよい。また、フォトニック結晶25の測定部分を外してフォトニック結晶25自体にマーカーを付けてもよい。さらに、マーカーをカバー22、台23に付けてもよい。
(流体の流通方法)
図10及び図11は、図1に例示するフォトニック結晶センサ11の供給管76及び排出管77周囲の構成例を示す模式図である。図10に示す状態において、フォトニック結晶センサ11の供給管76は、通路74aを介して供給管75と連通している。供給管75の先端75eは、流路24f内に流入させる流体73が入った容器72内で流体73に浸されている。フォトニック結晶センサ11の排出管77は、通路74bを介して排出管78と連通している。供給管76に設けられたポンプ71を駆動させると流体73が供給管75、通路74a、供給管76を介して流路24f内に流れ、流路24f内を通過して、排出管77、通路74b、排出管78を介して排出管78の先端78eから排出される。
図11は、弁74を回転させて、供給管76と排出管77とを通路74bで連通させ、ポンプ71の働きを止めて、流路24f内外への流体73の流出入を停止させる状態を示している。このように、流路24f内外への流体の流れを止めることにより、流路24f内に存在する劣化指標物質のセンサ基板(金属皮膜フォトニック結晶)21上への沈降、堆積を促進させることができる。
本実施形態に係るフォトニック結晶センサ11において、流体は、供給管76から流路24fに供給される。流体は、排出管77を通じて流路24fから排出される。このようにすることで、流体を運動させるためのポンプ71を流路24fの外部に設置することができる。流路24fは非常に小さいため、ポンプ71が流路24fの外部に設置できると、フォトニック結晶センサ11の組立てが容易となる。したがって、本実施形態に係るフォトニック結晶センサ11は、組立てが容易であり、金属膜被覆フォトニック結晶21に照射された光の反射光の変化をさらに早くしながら、平衡状態に達するまでに必要な流体の量を少なくできる。
本実施形態に係るフォトニック結晶センサ11は、台23、薄板24の開口部24h側の内壁及びカバー22で囲まれて形成される流路24fを有する。このようにすることで、流路24fを薄く形成することができ、反射面29の上部の空間21uを通過する溶液の流速を大きくすることができる。これにより、劣化指標物質が迅速に反射面29に捕捉される。したがって、本実施形態に係るフォトニック結晶センサ11は、金属膜被覆フォトニック結晶21に照射された光の反射光の変化をさらに早くしながら、平衡状態に達するまでに必要な溶液の量を少なくできる。
(光検出部12)
次に、光検出部12について説明する。図1に示す光検出部12は、光源51と、測定プローブ52と、光検出装置53と、第1光ファイバー54と、第2光ファイバー55と、コリメートレンズ56とを含む。光源51と測定プローブ52とは、第1光ファイバー54により光学的に接続されている。測定プローブ52と光検出装置53とは、第2光ファイバー55により光学的に接続されている。必要に応じて、光源51及び光検出装置53などに接続され、光源51の制御及び光検出装置53からの信号を処理する制御装置を設けてもよい。
図12は、光検出部12がフォトニック結晶センサ11に光を照射する例を示す図である。図1に示す第1光ファイバー54は、図1に示す光源51からの光を測定プローブ52に導き、測定プローブ52からフォトニック結晶センサ11が有する金属膜被覆フォトニック結晶21の反射面29へ照射する。コリメートレンズ56は、第1光ファイバー54から出射し、測定プローブ52から照射された光を平行光にしてから、フォトニック結晶25の反射面29へ入射光LIとして照射する。第2光ファイバー55は、金属膜被覆フォトニック結晶21の反射面29で反射した光を反射光LRとして受光し、図1に示す光検出装置53へ導く。コリメートレンズ56の種類は特に限定されないが、例えば、ナノストラクチャーを持つ反射防止フィルムを用いることができる。光検出装置53は、例えば、フォトトランジスタまたはCCD(Charge Coupled Device)などの受光素子を備えた、光を検出するための装置である。測定時には劣化指標物質が基板表面(反射表面)29に付着または基板表面(反射表面)29に浮遊しているが、簡便のため図12では劣化指標物質を省略している。
図13は、図1に示す光検出部12が有する測定プローブ52の構造を示す図である。測定プローブ52は、第1光ファイバー54と第2光ファイバー55とが接合される。そして、測定プローブ52は、第1光ファイバー54の光の出射面61と、第2光ファイバー55の反射光LRの入射面62とが同一の面(入出射面)63上に配置される。このように、測定プローブ52は、第1光ファイバー54と第2光ファイバー55とが、第1光ファイバー54の出射側(出射面61側)と第2光ファイバー55の入射側(入射面62側)とで一体となっている。そして、測定プローブ52は、第1光ファイバー54と第2光ファイバー55とを用いて光を入射し、反射光LRを検出する。
測定プローブ52は、このような構造としているため、フォトニック結晶25の反射面29に照射する入射光LIと、反射面29からの反射光LRとをほぼ同一の位置から出射し、入射させることができる。測定プローブ52を上述したような構造にするとともに、コリメートレンズ56を用いて測定プローブ52からの光を平行光にすることで、光検出部12は、反射面29に平行光の入射光LIを垂直に入射することができる。それとともに、反射面29から垂直に反射した反射光LRを受光することができる。このようにすることで、測定プローブ52は、反射光強度の低下を最小限に抑えることができるとともに、主として反射光LRの0次光成分を検出することができる。これにより、制御部13は、金属膜被覆フォトニック結晶21の反射面29の正確な情報を得ることができるため、劣化指標物質の検出精度及び濃度の計測精度が向上する。なお、反射光LRを検出する手法は、上述したような測定プローブ52に限定されない。例えば、コリメートレンズ56と反射面29との間にハーフミラーを配置し、ハーフミラーによって反射光LRを分離して第2光ファイバー55から光検出装置53に導いてもよい。
次に、光検出部12の評価条件を説明する。図14は、本実施形態に係る劣化指標物質検出装置10の光検出部12の評価条件を示す図である。図14に示すように、光検出部12は、測定プローブ52の入出射面63と金属膜被覆フォトニック結晶21の反射面29との間にコリメートレンズ56を配置する。コリメートレンズ56と反射面29との距離(計測距離)をh、コリメートレンズ56から出射した平行光の反射面29における直径をd1、フォトニック結晶25の反射面29が露出する部分の直径をd2とする。本評価では、hを15mmまたは40mmとし、d1を3.5mm、d2を5mmとした。反射面29に照射される光の光軸ZL及び反射面29で反射された反射光の光軸ZLは、いずれも反射面29に対して直交している。測定プローブ52の直径は200μmである。照射する光は白色光を用いた。反射率は、標準物質(アルミニウム板)の反射光強度に対する比率である。
(制御部13)
次に、図1に示す制御部13について説明する。制御部13は、光検出部12が検出した反射光の極値の波長を求める。制御部13は、それとともに、求めた極値の波長のシフト(波長シフト量)に基づいて、センサ基板表面近傍に存在する劣化指標物質の有無を検出する。ここで、「センサ基板表面近傍」とは、後述する流路24f内におけるセンサ基板21の上方の領域を意味する。制御部13は、例えば、マイクロコンピュータである。波長シフト量と金属膜被覆フォトニック結晶21の反射面29に捕捉された劣化指標物質の濃度とは相関がある。このため、制御部13は、波長シフト量から反射面29に捕捉された劣化指標物質の濃度を求めることができる。また、制御部13は、弁74に接続されている。制御部13は、弁74の内部の通路74bの状態に基づいて、弁74を切り替える。
(劣化指標物質検出方法)
劣化指標物質検出装置10は、センサ基板表面の屈折率差に依存する反射率の差を検出して、劣化指標物質の存在を検出する。したがって、センサ基板表面に屈折率変化をもたらす物質であれば、どのような物質でも検出が可能である。このため、劣化指標物質検出装置10を使用して、潤滑油の劣化を検出することができる。
長期間の軸受の使用によって劣化した潤滑油には、軸受部品の摩耗による金属粉(主に鉄粉)が含まれている。そこで、潤滑油に含まれる金属粉がセンサ基板の表面に接触又はセンサ表面近傍に浮遊することによって生じる屈折率変化を反射率の差として検出することにより、潤滑油の劣化度合いを検出することができる。劣化指標物質検出装置10は、金属粉を含む潤滑油の劣化測定に好適に使用できる。潤滑油としては、例えば鉱油、エステル油、エーテル油などを挙げることができるが、これらに限定されない。
センサ基板の反射光のピーク波長を測定すると、図1に示す光検出装置53は、屈折率の変化に応じたピーク波長の変化に対応した検出値を出力する。この出力は、反射光のピーク波長に対応する。以下において、センサ基板の反射光のピーク波長に対応する検出値を、センサ出力という。本実施形態において、センサ基板の反射光のピーク波長とは、反射光の強度が極小値をとる場合の波長である。センサ出力が大きいほど、反射光のピーク波長は長波長側に移動する。劣化指標物質検出装置10が備えるセンサ基板は、表面に近いほど、センサ出力は大きく、すなわちピーク波長は長波長側になる。鉄粉またはスラッジなどの異物が沈殿してセンサ基板の表面に堆積すると、センサ出力は更に大きく、すなわちピーク波長は長波長側になる。
劣化指標物質検出装置10が、軸受の潤滑油が劣化した際に発生する摩耗粉(主に鉄粉)を劣化指標物質として検出する場合を説明する。
図15は、本実施形態に係る劣化指標物質検出方法の一例を示すフローチャートである。まず、図10及び図11に示す流路24f内に、センサ基板となる金属膜被覆フォトニック結晶21(以下、センサ基板21と称する)をセットする(ステップS11)。次に、劣化していない新しい潤滑油を基準流体として流路24f内に流す(ステップS12)。センサ出力が安定したら、測定対象の潤滑油を流路24f内に流す(ステップS13)。
次に、流路24f内外への潤滑油の流れを止めて、潤滑油内の不純物、例えば鉄粉をセンサ基板21上に堆積させる(ステップS14)。この工程(ステップS14)は、鉄粉の沈降を容易にするためであり、省略してもよい。センサ出力が安定したら、流路24f内に劣化していない新しい潤滑油を基準流体として流す(ステップS15)。
図16は、センサ基板上に不純物31(ここでは鉄粉)が堆積する様子を示す模式図である。劣化していない潤滑油(以下、適宜、非劣化潤滑油と称する)の場合は、潤滑油中に不純物が浮遊していない状態である(状態A)。劣化した潤滑油(以下、適宜、劣化潤滑油と称する)をセンサ基板21が設置されている流路24f内に流し始めると、劣化潤滑油内に含まれる不純物粒子31、本実施形態では鉄粉がセンサ基板21上に堆積し始める(状態B)。更に時間が経過すると、不純物粒子31がセンサ基板21上に層状に堆積する(状態C)。
図17は、図15に示すフローチャートに基づいて潤滑油の劣化を測定する場合のセンサ出力の変化の一例を示す模式図である。図17の横軸は時間を示し、縦軸はセンサ出力を示す。まず、流路24f内にセンサ基板21をセットし、劣化していない新しい潤滑油を基準流体として流路24f内に流す。センサ出力が安定すると、図17の時間Tから時間Tに示すように、センサ出力は、ほぼ一定の値となる。このとき、劣化していない潤滑油には軸受部品の摩耗により生じた鉄粉などの不純物が混入していないので、センサ基板21の表面及びその近傍に付着または接近する粒子は存在しない。
時間Tの時点で、測定対象である一定期間使用した潤滑油を、劣化していない潤滑油の代わりに流路24f内に流し始める。測定対象の潤滑油が軸受部品の摩耗により生じた鉄粉などの不純物を含んでいる場合、潤滑油内に浮遊している不純物粒子31は重力によりセンサ基板21表面に沈降し始める。不純物粒子31のセンサ基板21表面への沈降が進むと、不純物粒子31がセンサ基板21の表面に、層状に堆積し始める。この間、すなわち時間Tから時間Tの間では、センサ基板21上への不純物粒子31の堆積が進むにしたがってセンサ出力が次第に大きくなる。
時間Tの時点でセンサ出力の増大が停止し、ほぼ一定の値をとるようになると、潤滑油内に浮遊していた不純物粒子31は、ほぼすべてセンサ基板21の表面に堆積している。時間Tにおいて、測定対象の潤滑油の代わりに劣化していない新しい潤滑油を流路24f内に流すことによって、センサ基板21上に堆積していた不純物粒子31が洗い流されて、センサ出力は測定対象の潤滑油を流す前の初期状態に戻る。
図17において、縦軸のセンサ出力は、反射光のピーク波長である。したがって、ピーク波長が長波長側に移動するとセンサ出力は増加し、ピーク波長が短波長側に移動するとセンサ出力は減少する。本実施形態では、測定対象である一定期間使用した潤滑油のセンサ出力が、劣化していない潤滑油のセンサ出力よりも大きい場合、測定対象の潤滑油中に劣化指標物質が存在すると判断することができる。センサ出力は、測定対象流体中の劣化指標物質の濃度変化に伴う屈折率の変化に依存するので、基準状態(基準流体におけるセンサ出力)からの変化の度合いが大きいほど、劣化指標物質の濃度が大きいと判断できる。そのため、予め色々な濃度での劣化指標物質とセンサ出力との関係を求めておくことで、潤滑油交換の目安とすることができる。
(潤滑油測定の一例)
劣化指標物質検出装置10及び本実施形態に係る評定物質検出方法を用いて潤滑油の劣化を測定した。劣化していない潤滑油としては鉱油VG32(無添加タービン油、JX日鉱日石エネルギー社製)を使用した。この鉱油VG32に粒径2μm以上3μm以下の鉄粉を1質量%濃度となるように混合させ、劣化した潤滑油として使用した。センサ出力としては反射スペクトルのピーク波長を採用した。測定条件は以下のとおりである。
<測定条件>
基準流体(潤滑油)として、鉱油VG32(無添加タービン油、JX日鉱日石エネルギー社製)を用いた。測定対象流体(潤滑油)として、基準流体に粒径2μm以上3μm以下の鉄粉を加え、鉄粉濃度が1質量%となるよう調製した混合液を用いた。流路内流速は、296μl/minとした。
図18は、上記測定条件で得られた経過時間とセンサ出力との関係を示す図である。図中、区間Pでは、センサ基板21がセットされた流路24f内に鉄粉を混合させていない鉱油VG32(劣化していない潤滑油)を基準流体として流す。区間Pでは、センサ出力は安定してほぼ一定となっている。区間Qにおいて、鉄粉を前述した濃度に調整した鉄粉31入りの潤滑油VG32(劣化している潤滑油)を流路24f内に流す。この例においては、区間Qに続く区間Rにおいて、流路24f内に流入させる潤滑油を止め、流路24f外に流出させる潤滑油も止める。このように流路24f内の流体の流通を止めることで、潤滑油内に浮遊する鉄粉の沈降が促進される。
鉄粉の沈降が進み、鉄粉が次第にセンサ基板21に堆積すると、区間Rにおいて次第に増加していったセンサ出力は、ほぼ安定して一定となる。続く区間Sにおいて鉄粉31を混合させていない鉱油VG32(劣化していない潤滑油)を流路24f内に基準流体として流し始めると、センサ基板21上に堆積していた鉄粉31が洗い流され、それに伴い、センサ出力が鉄粉入りの潤滑油を流す前の初期状態に戻る。
劣化指標物質検出装置10は、センサ基板21表面近傍の物質の屈折率に応じてセンサ基板21表面からのセンサ出力が変化する。屈折率が大きい物質がセンサ基板21表面近傍に存在すると、センサ出力は大きくなる。鉄の屈折率は2.36であり、水の屈折率1.33及び潤滑油(鉱物油の場合)の屈折率1.48よりも大きい。そのため、鉄粉がセンサ基板21表面近傍に存在するとセンサ出力が大きくなると考えられる。
前述した潤滑油及び鉄粉以外でも、センサ基板21表面近傍で屈折率差が得られる物質であれば、液体の劣化度合いの測定は可能である。例えば、鉱油VG32の他には、エステル油及びエーテル油等を測定可能である。潤滑油以外では、水、リン酸緩衝液、エタノール、メタノール、IPA(イソプロパノール)及びスクロース溶液等を測定可能である。不純物又は不純物粒子としては、鉄粉の他に、銅、アルミニウム及び亜鉛等の金属粉(金属粒子)を測定可能である。
(潤滑油測定の変形例1)
潤滑油が劣化すると、潤滑油は酸化するので、潤滑油の酸化が進むとカルボキシ基を持つ分子が潤滑油内に増加する。したがって、測定対象である潤滑油中に存在する金属粉、例えば鉄粉の代わりにカルボキシ基の量を検出することで、潤滑油の劣化の進行度を知ることができる。
変形例1に係る劣化指標物質検出方法は、劣化した潤滑油内に生成される酸化物またはスラッジに含まれるカルボキシ基と、予めセンサ基板21表面上に標識しておいたアミノ基との化学結合を利用して、カルボキシ基を分子内に有する酸化物及びスラッジの少なくとも一方の量を測定する。
図19は、カルボキシ基の量を測定して潤滑油の劣化度合いを測定する一例を示す模式図である。センサ基板21表面には予めアミノ基32を標識しておく(状態A)。アミノ基32を標識する方法としては、アミノ基32を含有する標識試薬33をセンサ基板21表面に塗布又は滴下する方法を利用できる。標識試薬33としては、例えば、11−アミノ−ウンデカンチオール塩酸塩(11-amino-1-undecanethiol hydrochloride、同仁化学研究所製)を使用することができる。アミノ基32で標識されたセンサ基板21表面近傍にカルボキシ基を含む酸化物またはスラッジが接近すると、アミノ基とカルボキシ基との化学反応によりアミノ基32を含む標識試薬33を介してセンサ基板21表面に酸化物またはスラッジ34が付着又は堆積する(状態B)。
カルボキシ基の量を測定する場合も、図15のフローチャートに示した手順に準じて、測定対象の潤滑油に含まれるカルボキシ基の量を測定することができる。この場合もセンサ出力が大きいほど、ピーク波長は長波長側にシフトする。
(潤滑油測定の変形例2)
図15から図18に示す例では、基準流体となる潤滑油として鉱油VG32を使用し、測定対象流体として鉄粉を混合させた潤滑油を使用して、劣化指標物質である鉄粉を検出する場合を例にとって説明した。劣化指標物質検出装置10は、潤滑油として鉱油VG32を使用し、180℃の恒温槽で加熱して、加速劣化させたものを測定対象である潤滑油として使用することができる。本実施形態において、加速劣化させた潤滑油は、全酸化測定装置で測定して、劣化判定の基準値(1mgKOH/g)を超えていることを確認して使用した。劣化判定の基準値は、「潤滑管理マニュアルブック」、潤滑油協会、pp.90の記載を参考にした。
上述したように、加熱により加速劣化させた潤滑油は、そのまま標準物質検出装置で測定しようとしても、スラッジなどの影響によってセンサ出力の信号である反射光が得られず測定できない。そこで、反射光を得るようにするため、加熱により加速劣化させた潤滑油から、ある程度のスラッジを除去する必要がある。スラッジは、濾紙などフィルターを用いた濾過作業により除去することができる。フィルターとしては、例えば、網目寸法0.45μmの濾紙を使用することができる。
図20は、非劣化潤滑油、加熱加速劣化潤滑油(フィルター未処理)、加熱加速劣化潤滑油(フィルター処理済み)それぞれの反射スペクトルを示す図である。横軸は波長(nm)、縦軸は反射率(%)を示す。フィルター未処理の加熱加速劣化潤滑油は、反射光が殆ど確認されていない。フィルター処理済みの加熱加速劣化潤滑油は、非劣化潤滑油(新品潤滑油)に近い反射率ピークが得られている。
フィルター処理した劣化潤滑油の測定例を図21に示す。グラフの横軸は時間、縦軸はセンサ出力であるセンサ基板21からの反射光強度のピーク波長を示している。最初に、センサ基板21がセットされた流路24f内に非劣化潤滑油(この例では新品潤滑油)を基準流体として流す(区間X)。この時点では潤滑油は劣化していないのでスラッジ34は観察されない。図中の符号35は潤滑油の高分子鎖35を示す。
センサ出力が安定したら(状態(1))、流路24f内に流す潤滑油を測定対象流体であるフィルター処理した劣化潤滑油に入れ替える(時間Ta)。この時、非劣化潤滑油と劣化潤滑油との屈折率差に応じてセンサ出力値が減少する(状態(2))。その後、スラッジ34のセンサ基板21への堆積によってセンサ出力値は増加する(区間Y)。センサ出力が安定したら(状態(3))、流路24f内に流す潤滑油を基準流体である非劣化潤滑油に切り替える(時間Tb)。このとき、非劣化潤滑油と劣化潤滑油との屈折率差に応じて、センサ出力値は増加する(状態(4))。その後の区間Zで、センサ基板21上に堆積したスラッジ34が剥離していき、センサ出力値は減少していく(状態(5))。以上の測定結果から、センサ出力値の差を算出することで、潤滑油の劣化を検出することができる。センサ出力値の差、すなわちセンサ基板21の反射光のピーク波長の差は、測定対象流体であるフィルター処理した劣化潤滑油のセンサ出力(状態(3))と、基準流体である非劣化潤滑油のセンサ出力(状態(1))との差とすることが好ましい。この他にも、センサ出力の差が最も大きくなる状態(4)と状態(2)との差を取ってもよい。
図21を用いて説明した、変形例2に係る劣化指標物質検出方法の手順に基づいて測定対象流体を測定した実際のデータを図22に示す。測定条件は以下のとおりである。
<測定条件>
潤滑油として、鉱油VG32(無添加タービン油、JX日鉱日石エネルギー社製)を用いた。180℃の恒温槽で潤滑油を300時間以上加熱することにより、潤滑油を加速劣化させた。フィルター処理には、網目寸法0.45μmの濾紙を用い、加速劣化後の潤滑油をこの濾紙で濾過した。流路内流速は、296μl/minとした。
図21で説明したように、実際の測定データである図22においても、非劣化潤滑油しか存在しない区間Uでは、センサ基板21上へはスラッジ34の沈降又は堆積は発生せず、反射光のピーク波長はほぼ一定となった。時間6000秒を超えたあたりで、流路24f内に流す潤滑油を非劣化潤滑油からフィルター処理した加熱加速劣化潤滑油に切り替えると、非劣化潤滑油と劣化潤滑油との屈折率の差からセンサ出力である反射光のピーク波長が大きく低下した。区間Vにおいて、その後、センサ基板21表面にスラッジ34が堆積していくにつれてセンサ出力である反射光のピーク波長が徐々に増加した。センサ出力がほぼ一定となった経過時間8000秒を超えた時点で、流路24f内に流す潤滑油を非劣化潤滑油に切り替えた。このとき劣化潤滑油と非劣化潤滑油との屈折率の差によりセンサ出力である反射光のピーク波長が急増した。区間Wにおいて、その後、センサ基板21上に堆積したスラッジ34は、非劣化潤滑油によって洗い流され、センサ出力は初期状態に戻った。
図22に示す測定結果は、図21に示す測定例と同様の変化を示した。
以上、本実施形態を説明したが、前述した内容により本実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、本実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
10 劣化指標物質検出装置
11 フォトニック結晶センサ(劣化指標物質捕捉装置)
12 光検出部
13 制御部
21 金属膜被覆フォトニック結晶
21u 空間
22 カバー
23 台
24 薄板
24f 流路
25 フォトニック結晶
26 金属膜
27 表面
28A、28B 非平坦部
29 反射面
31 不純物
32 アミノ基
33 標識試薬
34 スラッジ
35 高分子鎖
51 光源
52 測定プローブ
53 光検出装置
54 第1光ファイバー
55 第2光ファイバー
56 コリメートレンズ
61 出射面
62 入射面
63 同一の面(入出射面)
71 ポンプ
72 容器
73 流体
74 弁
75、76 供給管
77、78 排出管
79 コネクタ
M 混合物
LI 入射光
LR 反射光

Claims (5)

  1. 流体を流通させる流路内にフォトニック結晶を設置し、
    前記流路内に基準流体となる潤滑油を流通させ、前記フォトニック結晶からの反射光のピーク波長に対応した検出値を測定し、
    前記反射光のピーク波長が安定した後、前記流路内に流通させる流体を前記基準流体から測定対象流体となる潤滑油に切り替え、前記フォトニック結晶からの反射光のピーク波長に対応した検出値を測定し、
    前記反射光のピーク波長が安定した後、前記流路内に流通させる流体を前記測定対象流体から前記基準流体に切り替え、前記フォトニック結晶からの反射光のピーク波長に対応した検出値を測定し、
    各段階で測定した反射光のピーク波長に対応した検出値から、測定対象流体中の劣化指標物質の存在を検出する、潤滑油の劣化検出方法。
  2. 前記測定対象流体を流通させてから前記基準流体に切り替える間は、前記測定対象流体の流路内外への流通を止める、請求項1に記載の潤滑油の劣化検出方法。
  3. 前記劣化指標物質が前記潤滑油に含まれる金属粉である、請求項1又は請求項2に記載の潤滑油の劣化検出方法。
  4. 前記劣化指標物質が前記潤滑油に含まれるカルボキシ基である、請求項1又は請求項2に記載の潤滑油の劣化検出方法。
  5. 前記測定対象流体を測定前に加熱し濾過する、請求項1又は請求項2に記載の潤滑油の劣化検出方法。
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