JP2016004247A - 光貯蔵装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 太陽光エネルギーを貯蔵する光貯蔵装置を提供する。
【解決手段】 光貯蔵装置は、外部から光を集める集光器からの光を伝播する光ファイバと、各々が回転軸の周りで回転対称な側面を有する光透過性誘電体から形成された複数の微小回転体であって、各々の側面にて光ファイバとエバネッセント結合を生じるように光ファイバに沿って配置されかつ該エバネッセント結合により光ファイバから複数の微小回転体の各々へ誘導された光が内部にウィスパリングギャラリーモードで閉じ込められる複数の微小回転体と、光ファイバと各微小回転体の間のエバネッセント結合を制御する制御部と、を備えている。
【選択図】 図1
【解決手段】 光貯蔵装置は、外部から光を集める集光器からの光を伝播する光ファイバと、各々が回転軸の周りで回転対称な側面を有する光透過性誘電体から形成された複数の微小回転体であって、各々の側面にて光ファイバとエバネッセント結合を生じるように光ファイバに沿って配置されかつ該エバネッセント結合により光ファイバから複数の微小回転体の各々へ誘導された光が内部にウィスパリングギャラリーモードで閉じ込められる複数の微小回転体と、光ファイバと各微小回転体の間のエバネッセント結合を制御する制御部と、を備えている。
【選択図】 図1
Description
本発明は、エネルギーを貯蔵する貯蔵装置、特に太陽光エネルギーを貯蔵する光貯蔵装置に関する。
特許文献1に記載されているように、太陽光発電システムにおいては、ソーラーパネルなどの発電装置とLiイオン2次電池などの蓄電装置が組み合わされている。
現在の太陽光発電システムには、エネルギー密度が高く、重くて嵩張らないで、より軽く、よりコンパクトな蓄電装置が求められている。
たとえば、蓄電装置に用いられているLiイオン2次電池は、電解液中でLiイオンの移動を伴うため、充放電を繰り返すと劣化しやすい。Liイオン2次電池は化学反応を利用しているため、大量のエネルギーを貯めるためには大きな面積や体積が必要である。
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その課題の一例として、小型化可能である太陽光エネルギーを貯蔵する光貯蔵装置を提供することが挙げられる。
本発明に係る光貯蔵装置は、
外部から光を集める集光器と、
前記集光器からの光を伝播する光ファイバと、
各々が回転軸の周りで回転対称な側面を有する光透過性誘電体から形成された複数の微小回転体であって、各々の前記側面にて前記光ファイバとエバネッセント結合を生じるように前記光ファイバに沿って配置されかつエバネッセント結合により前記光ファイバから前記複数の微小回転体の各々へ誘導された光が内部にウィスパリングギャラリーモードで閉じ込められる前記複数の微小回転体と、
前記光ファイバと前記複数の微小回転体の各々との間のエバネッセント結合を制御する制御部と、を備えているものである。
外部から光を集める集光器と、
前記集光器からの光を伝播する光ファイバと、
各々が回転軸の周りで回転対称な側面を有する光透過性誘電体から形成された複数の微小回転体であって、各々の前記側面にて前記光ファイバとエバネッセント結合を生じるように前記光ファイバに沿って配置されかつエバネッセント結合により前記光ファイバから前記複数の微小回転体の各々へ誘導された光が内部にウィスパリングギャラリーモードで閉じ込められる前記複数の微小回転体と、
前記光ファイバと前記複数の微小回転体の各々との間のエバネッセント結合を制御する制御部と、を備えているものである。
光はBoson的性質を有するため、同一の量子状態に同じ量子数の光子を幾つでも占有することができる。この素粒子的性質を利用すると、光波の重ね合わせの結果、非常に微小な空間に大きなエネルギー密度を実現することが可能となる。例えば、1mm3当たりの体積に1000Wh以上のエネルギーを詰め込むことが可能となる。
そこで、本発明では、微小空間に光波を重ね合わせて光エネルギーを詰め込む手法として、光波が物質界面で全反射した場合に反対側の透過側物質内部に浸透して発生したエバネッセント波(近接場光)の結合(エバネッセント結合)と、微小回転体のウィスパリングギャラリーモード(Whispering Gallery Mode、以下、WGモードともいう)とを利用する。エバネッセント結合とは、光ファイバと微小回転体の隣り合う近接場光の光学モード共鳴結合状態を生じさせ、光ファイバから微小回転体へ又は微小回転体から光ファイバへ光を誘導する現象を指す。WGモードとは、屈折率が周囲より大なる材料からなる微小回転体内部において、光が境界面に浅い角度で入射する場合に内側の表面で全反射し、全反射を繰り返しながら微小回転体内に閉じ込められ、1周回ってきた後の元の光と同じ位相をもつ光と共振する現象を指す。
以下、本発明の実施例を、添付図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の実施例1である光貯蔵装置を含む蓄電装置を示す概略構成図である。
図2は、エネルギーを光として貯蔵して、使用する際に光電変換することにより電気を得るような蓄電装置を示す概略斜視図である。
図1に示すように、蓄電装置10において、集光器11は太陽光を集める集光部11aと該集光部からの太陽光を伝搬させる光ファイバケーブルの入力カップリング用のSMA(Sub Miniature Type A)コネクタなどのカプラ11bとを含む。入力光ファイバ12は集光器11から入力される光を伝搬する。微小回転体13−1〜13−n(以下、微小回転体13ともいう)の各々は、入力光ファイバ12との間にエバネッセント結合が生じ得るように配置されている。出力光ファイバ14は微小回転体13との間にエバネッセント結合が生じ得るように配置されている。光電変換素子15は出力光ファイバ14から伝搬された光を電気に変換する。制御部16は微小回転体13と光ファイバ12,14との間の相対距離を調整してエバネッセント結合を制御する。
図2に示すように、カップラ11b、入力光ファイバ12、微小回転体13、出力光ファイバ14及び光電変換素子15は、ベース10a上に設けられている。
図3は、図2のカップラ11bに光ファイバケーブルを介し接続される集光部11aのプリズム11Pを示す。上部プリズム11P1の直下の下部プリズム11P2上に複数の微小球11SPを配置し、太陽光は上部プリズム11P1を介して複数の微小球11SPに照射されることにより、近接場光の光学モード共振結合状態を生じさせることが可能であり、微小球11SPに光を誘導することができる。かかる微小球への光の誘導は、微小球−プリズム間の距離や直径を種々変えた微小球の量を調節して誘導される光の周波数を選択ですることができる。誘導された光は、下部プリズム11P2を介して光ファイバケーブル(図示せず)に入射される。なお、上下部プリズム間の微小球11SPを設けずに上下部プリズムだけも集光部11aを構成することができる。
さらに、集光部11aは、下部プリズム11P2の代わりに透明導波板(図示せず)を上部プリズム11P1の直下に設けて、透明導波板から光ファイバケーブルを介しカップラ11bに光接続されてもよい。
図2に示すように、透明な微小回転体13は、互いに平行な入力光ファイバ12と出力光ファイバ14との間に離間して配置されている。微小回転体13の各々は制御部16のアクチュエータ部16aに固定されている。アクチュエータ部16aは、入力光ファイバ12と出力光ファイバ14が存在する平面における光ファイバ12,14の間にて、微小回転体13が光ファイバ12,14の伸長方向に対して垂直な方向に変位するように構成されている。
微小回転体13と光ファイバ12,14との間で光をエバネッセント結合させる(オン状態)場合、光ファイバ12,14と微小回転体13との距離はエバネッセント結合を生じるためのオン状態の条件、例えば10μm以下に維持される。エバネッセント結合させない(オフ状態)場合、微小回転体13は光ファイバ12,14から例えば10μmを超えて離される。
例えば、エバネッセント結合は入力光ファイバ12から微小回転体13に誘導される光のトンネル効果として表わされる。よってエバネッセント結合は入力光ファイバ12と微小回転体13との光学距離が近づけば近づく程大きくなる。このとき、微小回転体13から入力光ファイバ12へのエバネッセント結合の程度も大きくなるので、微小回転体13から入力光ファイバ12へ光の逆戻り過程も存在する。この場合、入力光ファイバ12の光が微小回転体13のWGモードへほぼ損失なく変換される条件は、微小回転体13内の光の吸収、散乱損失係数、微小回転体13との光学距離を最適化することによって得られる。エバネッセント結合については例えば特許文献1に記載されている。
光ファイバ12,14のエバネッセント結合のオン状態及びオフ状態(以下、オンオフ状態という)の選択制御は、アクチュエータ部16aを含む制御部16によって行われる。
アクチュエータ部16aはMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)などを使用して構成されている。制御部16の本体からの電気的信号により、アクチュエータ部16aが駆動され、アクチュエータ部16aが微小回転体13と共に移動して、機械的に微小回転体−光ファイバ間の距離を変える。近接場光が生じるためには光ファイバと微小回転体間の距離が重要であるため、制御部16が当該距離を制御することによりエバネッセント結合のオンオフ状態を制御する。
微小回転体13はSiO2、TiO2、MgF2などの光透過性誘電体材料やSiで構成されている。微小回転体13の各々はその回転軸の周りで回転対称な側面を有する。微小回転体13は、光ファイバに近接する側面(エバネッセント結合部)で直径1〜100μm好ましくは50〜100μmを有する。
図4(a)〜(c)は、光ファイバ12,14とエバネッセント結合する微小回転体13の形状を表す概略側面図である。
図4(a)に示す微小回転体13はトロイド形状の微小トロイド13aであり、微小トロイド13aの中心が円錐台形ポスト13Pの上に固定されている。微小トロイド13aの外周の側面がエバネッセント結合部となっている。
図4(b)に示す微小回転体13は球形状をしており、球の赤道面の側面がエバネッセント結合部となっている。
図4(c)に示す微小回転体13は、樽形状に形成されている。
これら微小回転体13の側面の光ファイバ12,14に最も近い部分が、光ファイバ12,14とそれぞれエバネッセント結合する。
微小回転体13はCVD、リソグラフィー、エッチング、機械的研磨加工、液相成長、自由落下作製手法、冷却用液体落下法、金型を利用したナノ加工・研磨、3次元印刷(3Dプロッ夕ー)などの手法により作製できる。
球形状微小回転体13は、真球度が高くかつ表面粗さが非常に小さくなるように作成される。これによりWGモードの光が外に漏れるのを防いでおり、微小回転体13に光が長時間貯蔵できる。特に、真球度並びに表面粗さは微小回転体13内のWGモード光損失と密接に関連しており、光閉じ込め時間を左右する重要なパラメーターとなる。
微小回転体13用の石英ガラスの材料は、融解法などの手法で精錬されたものである。微小回転体13用の石英ガラスは、光ファイバなどを作製する際に用いるCVD法などを用い、SiやSiO2以外の不純物並びに欠陥を除去したものが好適である。これにより、光が微小回転体13へ不純物が存在するために光吸収されるのを防ぎ、微小回転体13に光が長時間貯蔵できる。
図1,2に示す光電変換素子15には、800nmの波長で例えば80%以上の光電変換量子効率を有するSiフォトダイオードなどからなる光電変換パネルが使用される。
出力光ファイバ14から光電変換素子15へ光を導光する際は、出力光ファイバ14と光電変換素子15との間に導光板15a(又はレンズなど)を用いて、光電変換素子15の全面に光が入射されるようにする。
光電変換素子15は出力光ファイバ14の両端に設けてあるが、光伝搬方向の片方端だけに光電変換素子を設けてもよい。両端の光電変換素子15の一方はレイリー散乱光など逆進する光をも光電変換する。
光電変換素子15の数を変更することによってアプリケーンョンの電圧に合わせることが可能である。電圧はV(電圧)=N(光電変換素子の数)×Vc(光電変換素子の禁制帯幅)にて制御される。この際、複数の光電変換素子を用いてより大きな電圧を生み出す場合、素子を直列に接続する。この場合、電流マッチングを必要とするため、光電変換素子15に入力される光強度は同じにすることが好ましい。上記の電流マッチングの問題を回避するためには、例えば、光電変換素子から出力された電圧を増幅器などを用いて増幅することによって所望の電圧へと変換してもよい。この際、増幅器の電源として光電変換素子からの電圧を利用してオペアンプ・FETなどを駆動させ、抵抗値などにより増倍率を調節することにより、所望の電圧を得るようにする。
実施例1の光貯蔵装置を含む蓄電装置の動作を説明する。
図1に示すように、入力状態の場合、集光器11からの太陽光は入力光ファイバ12を伝搬し、例えば入力光ファイバ12付近に配置された微小回転体13−1に対して、エバネッセント結合にて微小回転体13に誘導される(微小回転体13−1が入力光ファイバ12に対してオン状態で出力光ファイバ14に対してオフ状態である)。
貯蔵状態の場合、例えば微小回転体13−2の内部にて、誘導された光はWGモードの原理に基づき周回し続け(微小回転体13−2は入力光ファイバ12に対してオフ状態で出力光ファイバ14でもオフ状態である)、微小回転体13−2内に貯蔵される。
出力状態の場合、微小回転体内に貯蔵された光は、電力が必要な際に、例えば微小回転体13−3から取り出され(微小回転体13−3が入力光ファイバ12に対してオフ状態で出力光ファイバ14に対してオン状態である)、出力光ファイバ14を伝搬して光電変換素子15に入射され、これにより光エネルギーが電気エネルギーへと変換される。微小回転体13−1,13−2,13−3の変位は図2に示す制御部16及びアクチュエータ部16aにより制御される。
制御部16は、集光器11からの太陽光を貯蔵する際に、アクチュエータ部16aをパルス駆動して、微小回転体13−1〜13−nの1以上(例えば、全体の1/2,1/3,1/4などと群に分けて)を入力光ファイバ12のみとのエバネッセント結合を順次オン状態として、微小回転体13−1〜13−nへ均一に光を誘導し閉じ込める。制御部16は、微小回転体又はその群(微小回転体群)毎に一定エネルギー以上の光を貯め、順次、次の微小回転体又は微小回転体群へ光を貯蔵する、貯蔵切り換え操作を行う。
制御部16は、貯蔵した光を出力して電力を得る放出の際に、アクチュエータ部16aをパルス駆動して、光を貯蔵した微小回転体13−1〜13−nの1以上(例えば、全体の1/2,1/3,1/4などと群に分けて)を出力光ファイバ14のみとのエバネッセント結合を順次オン状態として、微小回転体13−1〜13−nから光を順次出力光ファイバ14へ誘導する。制御部16は、当該誘導を微小回転体の群毎に分けて連続して行う、誘導切り換え操作を実行する。この場合、微小回転体の個体数の少ない群から光を順次誘導すれば長い時間にわたりエネルギーが取り出せ、微小回転体の個体数の多い群から光を順次誘導すれば短い時間でエネルギーが取り出せる。
制御部16は、光の貯蔵及び放出の場合において、複数(n個)の微小回転体13を複数(m個<n個)の微小回転体群に分けて、各々の微小回転体群毎では同時にエバネッセント結合を制御するものの、制御部16は、個々の微小回転体群の単位でエバネッセント結合を異なるタイミングで独立に制御する。これによって、貯蔵時には装置への均一な光の貯蔵を可能とし、放出時には光貯蔵装置からの単位時間あたりに取り出すエネルギーのダイナミックレンジを大きく取ることができる。
上記の実施例によれば、光は体積がないため、微小回転体13には原理的にはいくらでも光を貯め込むことが可能である。よって、微小回転体内の極めて小さな領域に大量のエネルギー貯蔵が可能となる。現状のスマートホンなどに使用されている一般的なLiイオン2次電池の大きさは10000mm3程度であるのに対して、上記の実施例によれば、例えば、80mm3程度の大きさで同じ容量を蓄えることが可能である。
現在Liイオン電池が使用されているスマートホン、ノートPC、電気自動車などのすべての製品に上記の実施例は適用可能である。
また、カプラ及び光ファイバを主部品として構成できるので、製造コストを低減できると共に、光貯蔵装置の構成が小型化できる。
図5は本発明の実施例2である光貯蔵装置を含む蓄電装置を示す概略構成図である。図6は、当該蓄電装置を示す概略斜視図である。
実施例2である光貯蔵装置は、実施例1における出力光ファイバ14を省いて入出力兼用の光ファイバ21を用いた以外、実施例1と同様である。実施例1と同様な部分の説明は省略して、実施例1と異なる実施例2の特徴を説明する。
図5に示すように、光ファイバ21は集光器11から出力される光を伝搬すると共に、微小回転体13−1〜13−nの1以上との間にエバネッセント結合が生じ得るように配置されている。光電変換素子15は光ファイバ21から伝搬された光を電気に変換する。制御部16は微小回転体13と光ファイバ21との間の相対距離を調整してエバネッセント結合を制御する。
図6に示すように、ベース10a上に光ファイバ21と微小回転体13−1〜13−nの群とが離間して平行に配置されている。微小回転体の各々は制御部16のアクチュエータ部16aに固定されている。アクチュエータ部16aは、光ファイバ21と微小回転体13−1〜13−nの群とが存在する平面にて、微小回転体13が光ファイバ21の伸長方向に対して垂直な方向に変位するように構成されている。
実施例2の光貯蔵装置を含む蓄電装置の動作を説明する。
図5に示すように、入力状態の場合、集光器11からの太陽光は光ファイバ21を伝搬し、例えば微小回転体13−1に対して、エバネッセント結合にて微小回転体13に誘導される(微小回転体13−1が光ファイバ21に対してオン状態である)。
貯蔵状態の場合、例えば微小回転体13−2の内部にて、誘導された光はWGモードの原理に基づき周回し続け(微小回転体13−2は光ファイバ21に対してオフ状態である)、微小回転体13−2内に貯蔵される。
出力状態の場合、微小回転体内に貯蔵された光は、電力が必要な際に、例えば微小回転体13−3から取り出され(微小回転体13−3が光ファイバ21に対してオン状態である)、光ファイバ21を伝搬して光電変換素子15に入射され、これにより光エネルギーが電気エネルギーへと変換される。微小回転体13−1,13−2,13−3の変位は図6に示す制御部16及びアクチュエータ部16aにより制御される。
よって、実施例2によれば、実施例1の出力光ファイバ14がないので、部品点数の減少により製造が容易になる。
図7は本発明の実施例3である光貯蔵装置を含む蓄電装置を示す概略構成図である。図8は実施例3の光貯蔵装置を含む蓄電装置を示す概略斜視図である。実施例3の光貯蔵装置は、実施例2におけるMEMSによるアクチュエータ部16aに代えて、微小回転体13と入出力兼用の光ファイバ21の間に張り付けた微小回転体13毎の電気光学素子17を用いて微小回転体13を移動させない構成にした以外、実施例2と同様である。実施例2と同様な部分の説明は省略して、実施例2と異なる実施例3の特徴を説明する。
図8に示すように、入力光ファイバ12は、ベース10aに形成されたV字断面の溝の傾斜面に沿って延在している。複数の微小回転体13は光ファイバ21に沿ってそれぞれ電気光学素子17を介して光ファイバ21の側面に張り付けられている。複数の微小回転体13は、光ファイバ21の軸線で直交する2つの平面で切られた光ファイバ21の側面に2筋の群として配置されている。
図9の光ファイバ21の断面図に示すように、複数の微小回転体13は、光ファイバ21との間に電気光学素子17を介してエバネッセント結合が生じ得るように配置されている。複数の微小回転体13は、ベース10aに形成されたV字断面の溝の傾斜面に接している。
光ファイバ21内の光が微小回転体13のWGモードへほぼ損失なく変換される条件は、微小回転体13との光学距離を最適化することによって得られる。本実施例では微小回転体13と光ファイバ21のエバネッセント結合のオンオフ状態の選択制御は、電気光学素子17を含む制御部16によって行われる。
電気光学素子17は電気光学結晶などを使用して構成されている。電気光学素子17はLiNO3やZnO、LiTaO3などの印加電圧で屈折率が変化する電気光学効果を有する材料の膜であって、制御部16からの電圧を印加するアノードとカソード(図示せず)が当該膜に付加されて構成されている。
制御部16は、選択した微小回転体13の電気光学素子17に対し所定の電圧を加え、その屈折率を変化させることによって、光ファイバ−電気光学素子間でエバネッセント結合が起こり得る所望の最適光路長を電気光学素子17に与える。すなわち、電気光学素子17への印加電圧を制御部16で制御することにより、それぞれの電気光学素子17の屈折率を変化させて、光ファイバ21と微小回転体13との光学距離を最適化して、エバネッセント結合のオンオフ状態を制御する。
実施例3の光貯蔵装置を含む蓄電装置の動作を説明する。
図7に示すように、集光器11からの太陽光は光ファイバ21を伝搬し、例えば制御部16が電気光学素子17aの屈折率を減少させて入力状態とする場合、光ファイバ21と微小回転体13−1とのエバネッセント結合にて微小回転体13に誘導される(微小回転体13−1が光ファイバ21に対してオン状態である)。
例えば、当該誘導後で制御部16が電気光学素子17bの屈折率を増加させ元に戻して貯蔵状態とする場合、誘導された光は微小回転体13−2の内部をWGモードの原理に基づき周回し続け(微小回転体13−2は光ファイバ21に対してオフ状態である)、微小回転体13−2内に貯蔵される。
出力状態の場合、微小回転体内に貯蔵された光は、電力が必要な際に、例えば制御部16が電気光学素子17cの屈折率を減少させて、微小回転体13−3から取り出され(微小回転体13−3が光ファイバ21に対してオン状態である)、光ファイバ21を伝搬して光電変換素子15に入射され、これにより光エネルギーが電気エネルギーへと変換される。
ここで電気光学素子17の屈折率変化Δnは、印加電界強度V/d(dはアノードカソード距離)に比例し、比例係数をαとしてΔn=αV/dと記載することができる。印加電圧による屈折率n及び屈折率変化Δnと微小回転体−光ファイバの光学的距離Lとの関係は、L=(n+Δn)*D(ただし、Dは物理的距離を示す)で表される。制御部16が電気光学素子17へ電気信号を送ることにより、特定の微小回転体13にのみ近接場光を生じさせることが可能である。
なお、図10の光ファイバ21の断面図に示すように、実施例3の変形例として複数の微小回転体13が入力光ファイバ12の全周囲にその伸長方向に沿って配置されるように構成することもできる。
よって、実施例3によれば、機械的に可動部品が極めて少なくなるので、部品点数の減少により製造が容易になるだけでなく、装置の安定性及び耐久性が向上する。
図11は実施例4の光貯蔵装置を含む蓄電装置を示す概略構成図である。実施例4の光貯蔵装置は、実施例2における微小回転体13のそれぞれを動かすアクチュエータ部16aに代えて、複数の圧電素子18を用いて、微小回転体13のそれぞれに対応する入出力兼用の光ファイバ21の部分を曲げて微小回転体−光ファイバ間の距離を変化させる以外、実施例2と同様である。実施例2と同様な部分の説明は省略して、実施例2と異なる実施例4の特徴を説明する。
すべての複数の微小回転体13は所定ピッチで直線状に一列にベース(図示せず)上に固定される。複数の圧電素子18は光ファイバ21の側面に伸長方向に上記所定ピッチで直線状に一列に張り付けられる。光ファイバ21は、圧電素子18が光ファイバ21を挟んで微小回転体13と一対一に対応するように、圧電素子18を介在させてベースに固定される。
実施例4の光貯蔵装置を含む蓄電装置の動作を説明する。
図11に示すように、集光器11からの太陽光は光ファイバ21を伝搬し、例えば制御部16が圧電素子18(状態A)を駆動し光ファイバ21の微小回転体13−1に対向する部分を微小回転体13−1に近づけて入力状態とする場合、光ファイバ21と微小回転体13−1とのエバネッセント結合にて微小回転体13に誘導される(微小回転体13−1が光ファイバ21に対してオン状態である)。
例えば、当該誘導後で制御部16が圧電素子18(状態B)を非駆動として光ファイバを元に戻して貯蔵状態とする場合、誘導された光は微小回転体13−2の内部をWGモードの原理に基づき周回し続け(微小回転体13−2は光ファイバ21に対してオフ状態である)、微小回転体13−2内に貯蔵される。
出力状態の場合、微小回転体内に貯蔵された光は、電力が必要な際に、例えば制御部16が圧電素子18(状態C)を駆動し光ファイバ21の微小回転体13−1に対向する部分を微小回転体13−1に近づけた時、エバネッセント結合により微小回転体13−3から取り出され(微小回転体13−3が光ファイバ21に対してオン状態である)、光ファイバ21を伝搬して光電変換素子15に入射され、これにより光エネルギーが電気エネルギーへと変換される。
図12は実施例5の光貯蔵装置を含む蓄電装置を示す概略構成図である。
実施例5の光貯蔵装置は、実施例4における光ファイバ21を挟んで微小回転体13と一対一に対応する圧電素子18を設けた光ファイバの組立体に代えて、複数の微小回転体13(微小回転体群)と多対一に対応する1つの圧電素子18を設けた光ファイバの組立体を複数用いたものである。例えば図示するように、蓄電装置は、3つの微小回転体群13a,13b,13cに対応する3つの入出力兼用の光ファイバ21a,21b,21cを備えることができる。
光電変換素子15aが結合された光ファイバ21aについて、複数の微小回転体13(微小回転体群13a)は所定ピッチで直線状に一列にベース(図示せず)上に固定される。1つの圧電素子18は光ファイバ21aの側面に伸長方向に直線状に張り付けられている。光ファイバ21aは、圧電素子18が光ファイバ21を挟んで複数の微小回転体13と一対多に対応し一列の微小回転体群13aと平行になるように、1つの圧電素子18を介在させてベースに固定される。
光ファイバ21aの圧電素子18は、制御部16により駆動されるとき、光ファイバ21aの圧電素子に亘る長さ部分を一様に微小回転体群13aへ同時に押圧する。すなわち、制御部16は、微小回転体群13aに含まれる複数の微小回転体群13を光ファイバ21aに同時にエバネッセント結合させる。
光電変換素子15b,15cがそれぞれ結合された入出力兼用の光ファイバ21b,21cについても、光ファイバ21aと同様に構成され、駆動される。
実施例5の蓄電装置において、制御部16は、複数の微小回転体13を3つの微小回転体群13a,13b,13cに分けて、各々の微小回転体群毎では同時にエバネッセント結合を制御するが、制御部16は、微小回転体群の単位でエバネッセント結合を異なるタイミングで独立に制御する。
実施例5の光貯蔵装置を含む蓄電装置の動作を説明する。
図12に示すように、集光器11から分岐された太陽光は光ファイバ21a,21b,21cを伝搬する。例えば制御部16が光ファイバ21aの圧電素子18を駆動し光ファイバ21a全体(状態A)を微小回転体群13aに近づけて入力状態とする場合、光ファイバ21aと微小回転体群13aとのエバネッセント結合にて光は各微小回転体13に誘導される(微小回転体群13aが光ファイバ21aに対してオン状態である)。この場合、微小回転体群13a例えば球体群はそれらの直径に分布を持たせることができる。すなわち、複数の微小回転体13は、集光器11からの太陽光のスペクトルに含まれる複数の波長に対応して自体の回転軸から回転対称の側面までの距離がそれぞれ異なるように形成されていてもよい。半径に関して分布を有する複数の微小回転体13を1つの光ファイバに対応させれば、複数の波長の光の貯蔵に対応できる。
例えば、当該誘導後の光ファイバ21bで制御部16が圧電素子18を非駆動として光ファイバ21b(状態B)を元に戻して貯蔵状態とする場合、誘導された光は各微小回転体13の内部をWGモードの原理に基づき周回し続け(微小回転体群13bは光ファイバ21bに対してオフ状態である)、各微小回転体13内に貯蔵される。
出力状態の場合、光ファイバ21cにて微小回転体内に貯蔵された光は、電力が必要な際に、例えば制御部16が光ファイバ21cの圧電素子18を駆動し光ファイバ21c(状態C)を再び微小回転体群13cに近づけた時、エバネッセント結合により各微小回転体13から取り出され(微小回転体群13cが光ファイバ21cに対してオン状態である)、光ファイバ21cを伝搬して光電変換素子15cに入射され、これにより光エネルギーが電気エネルギーへと変換される。
よって、本実施例では、m個の入出力兼用の光ファイバ毎にn個の微小回転体を設けた場合、制御部16がm×n個の微小回転体13をm個の微小回転体群に分けて、各々の微小回転体群毎(すなわち光ファイバ毎)で同時にエバネッセント結合を制御して、個々の微小回転体群の単位でエバネッセント結合を任意のタイミングで選択的に制御することができる。制御部16が任意の微小回転体群を選択することによって、電力が必要な際に、光貯蔵装置から任意の供給時間で任意の光エネルギーを取り出すことができる。
図13は、実施例6である光貯蔵装置を含む蓄電装置を示す概略構成図である。実施例6である光貯蔵装置は、実施例1における出力光ファイバ14に、これから分岐するファイバ導波路部14aを追加した以外、実施例1と同様である。実施例1と同様な部分の説明は省略して、実施例1と異なる実施例6の特徴を説明する。
ファイバ導波路部14aは、微小回転体13の群と光電変換素子15との間の出力光ファイバ14から分岐している。
実施例6のファイバ導波路部14aによって、携帯電話のバックライトや照明など、現在、電気を光として利用しているような場合は貯蔵した光をそのまま使用できるようになる。
変形例として、ファイバ導波路部14aの先端に所定の蛍光体が配置されてもよく、貯蔵した光を変換してバックライトや照明など白色光として使用することも可能である。
なお、実施例6のファイバ導波路部14aは実施例2などに用いられる入出力兼用の光ファイバ21にも適用可能である。
図14は、実施例7である光貯蔵装置を含む蓄電装置を示す概略斜視図である。実施例7は、太陽光をRGBの3つのスペクトル帯域に分ける分光集光器11RGBを用意し、当該分光集光器からの出力のそれぞれのスペクトル帯域に対応させた、入力光ファイバ12R,12G,12Bと出力光ファイバ14R,14G,14Bと該スペクトル帯域に適合する特性を有する光電変換素子15R,15G,15Bとを、実施例1と同様に組み合わせたものである。実施例7のスペクトル帯域ごとの組み合わせは実施例1と同様であるので、実施例1と異なる実施例7の特徴を説明する。
実施例7では、RGBの3つの出力光ファイバ14R,14G,14Bに共通に接続された分岐するファイバ導波路部14RGBが追加されている。
実施例7によれば、太陽光からのRGBのスペクトル帯域の3色光を混ぜることにより合成スペクトルは太陽光スペクトルに近づいた白色を得ることができる。
上記のいずれの実施例における入出力用の光ファイバ12,14は、図15に示す概略断面図に示すように、微小回転体の付近(代表として微小回転体13−1,13−2を示す)で近接場光が生じ易いように、当該付近で細くなるようにテーパー状に加工されている。光ファイバ12,14のテーパー部は数μmの直径を有し、テーパー部が各微小回転体の側面付近に近接している。
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。例えば、微小回転体の数、微小回転体群の数や光ファイバの数は、上記の実施例に限定されない。
上記の実施例のいずれにおいても、集光器の集光部は、プリズムに限定されず、例えば、図16に示すように、太陽光を取り入れる底辺部に開口があり内面が鏡面となっているコーンミラー31と該ミラーの頂点部に接続された集光カプラ32とからなるものでもよい。
また、上記の実施例のいずれにおいても、微小回転体との近接場相互作用を行うため光ファイバ全体がクラッド層の無いコアのみを有するものが使用されるが、当該近接場相互作用の領域のみにクラッド層のない部分を設け、そのほかの部分はクラッド層を有している光ファイバを用いても良い。これにより、クラッド層を有している部分は破損に強い、曲げ部分生じる光散乱、損失(漏れ光)を防止することができる、などの効果が得られる。
さらに、上記の実施例のいずれにおいても、光を光ファイバの入光端側から出光端側に進行させるが、その際、光ファイバの出光端側から入光端側に逆行する光も存在する。このような逆行する光を阻止する一方向性を保証する構造、例えばフォトニック結晶光ファイバ、光ファイバアイソレータ、光ファイバファラデー回転ミラーなどを用いることができる。
上記の実施例のいずれにおいても、光を閉じ込める微小回転体及び光ファイバなどの動作に化学反応を用いないものを主部品として構成できるので、製造コストを低減できると共に、太陽光エネルギーを貯蔵する小型化可能な光貯蔵装置を提供することができる。
10 蓄電装置
10a ベース
11 集光器
12 入力光ファイバ
13、13−1〜13−n 微小回転体
13a 微小トロイド
13P 円錐台形ポスト
14 出力光ファイバ
15 光電変換素子
15a 導光板
16 制御部
16a アクチュエータ部
17 電気光学素子
14a、14RGB ファイバ導波路部
18 圧電素子
21 入出力兼用の光ファイバ
10a ベース
11 集光器
12 入力光ファイバ
13、13−1〜13−n 微小回転体
13a 微小トロイド
13P 円錐台形ポスト
14 出力光ファイバ
15 光電変換素子
15a 導光板
16 制御部
16a アクチュエータ部
17 電気光学素子
14a、14RGB ファイバ導波路部
18 圧電素子
21 入出力兼用の光ファイバ
Claims (9)
- 外部から光を集める集光器と、
前記集光器からの光を伝播する光ファイバと、
各々が回転軸の周りで回転対称な側面を有する光透過性誘電体から形成された複数の微小回転体であって、各々の前記側面にて前記光ファイバとエバネッセント結合を生じるように前記光ファイバに沿って配置されかつエバネッセント結合により前記光ファイバから前記複数の微小回転体の各々へ誘導された光が内部にウィスパリングギャラリーモードで閉じ込められる前記複数の微小回転体と、
前記光ファイバと前記複数の微小回転体の各々との間のエバネッセント結合を制御する制御部と、を有することを特徴とする光貯蔵装置。 - 前記複数の微小回転体の各々は微小球又は微小トロイドであることを特徴とする請求項1に記載の光貯蔵装置。
- 前記複数の微小回転体は、前記集光器からの光のスペクトルに含まれる複数の波長に対応して回転軸から回転対称の前記側面までの距離がそれぞれ異なるように形成されていることを特徴とする請求項2に記載の光貯蔵装置。
- 前記光ファイバは、前記複数の微小回転体から出力される光を伝播する出力光ファイバとしても機能することを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか1に記載の光貯蔵装置。
- 前記複数の微小回転体とエバネッセント結合を生じるように配置されかつ前記複数の微小回転体から出力される光を伝播する出力光ファイバを更に備え、前記制御部は前記出力光ファイバと前記複数の微小回転体の各々との間のエバネッセント結合を制御することを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか1に記載の光貯蔵装置。
- 前記光ファイバからの前記複数の微小回転体から出力される光を電気へ変換する光電変換部を更に備えることを特徴とする請求項4又は5に記載の光貯蔵装置。
- 前記光電変換部は、前記複数の微小回転体から出力される光のスペクトル帯域に合わせた特性を有することを特徴とする請求項6に記載の光貯蔵装置。
- 前記制御部は、前記複数の微小回転体を複数の微小回転体群に分けて、前記複数の微小回転体群の各々毎に含まれる前記複数の微小回転体の前記エバネッセント結合を同時に制御すると共に、前記エバネッセント結合を個々の微小回転体群の単位で独立にかつ異なるタイミングで制御することを特徴とする請求項6に記載の光貯蔵装置。
- 前記複数の微小回転体群に対応する数の前記光ファイバ又は前記出力光ファイバを備えたことを特徴とする請求項8に記載の光貯蔵装置。
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2017209277A1 (ja) * | 2016-06-03 | 2017-12-07 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 | 減衰量可変の光減衰器を用いたレーザ出力制御装置 |
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-
2014
- 2014-06-19 JP JP2014126604A patent/JP2016004247A/ja active Pending
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