以下に添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。
図1は、本実施形態に係る取水装置の構成を示す模式図である。図2は、図1の矢印Aの方向から見た本実施形態に係る取水装置の模式図である。図3は、図1の矢印Bの方向から見た本実施形態に係る取水装置の模式図である。図1及び図2に示すように、取水装置10は、取水ゲート20と、ゲート支持部30と、ロック部40と、フロートガイド部50と、フロート部52と、ロッドとしての駆動ロッド54と、流量調整部60と、第1の開度調整ロッド70と、第2の開度調整ロッド72とを有する。取水装置10は、水路11に配置され、取水ゲート20により取水量を制御しながら、水路11の流水100を、取水装置10よりも流水100の上流方向X1側に設けられる取水口12から取水する。取水装置10は、取水した流水100を、取水装置10より流水100の下流方向X2側に設けられる出水口13から出水する。
図4は、取水口と出水口とを示す模式図である。図2及び図4に示すように、取水口12は、水路11内に設けられ、水路11の底部90と、流水100の流れ方向に沿って設けられて底部90から延伸する2つの取水壁部82,84と、取水壁部82,84の先端を連結する取水屋根部86とに囲まれる空間に形成される。取水屋根部86には、開口部88が設けられている。
図3及び図4に示すように、出水口13は、水路11の底部90と、流水100の流れ方向に沿って設けられて底部90から延伸する2つの出水壁部92,94と、出水壁部92,94の先端を連結した出水屋根部96とに囲まれる空間に形成される。出水壁部92,94の鉛直方向の高さは、取水壁部82,84の鉛直方向の高さよりも小さい。出水屋根部96は、流水100の上流側の端部から鉛直方向上方に延伸する出水壁部93を有する。
図4に示すように、取水口12と出水口13とは、取水壁部82と出水壁部92と、取水壁部84と出水壁部94と、取水屋根部86の下流方向X2側の端部と出水壁部93の鉛直方向上方の端部とが連結することにより、互いに連結されている。なお、取水口12は、取水装置10が流水100を取水することができればよく、構造はこれに限られない。また、出水口13は、取水装置10が流水100を出水することができればよく、構造はこれに限られない。
図1に示すように、取水ゲート20は、流水100の流れ方向に対向し、取水口12に設けられる壁状の部材である。本実施形態において、取水ゲート20は、流水100の下流方向X2側の面の一部が出水壁部93と接している。取水ゲート20は、出水壁部93と共に、取水口12から出水口13への流水100の流れをせき止める。ただし、取水ゲート20は、取水口12から出水口13への流水100の流れをせき止めるものであれば、出水壁部93と接していなくてもよい。
取水装置10は、取水ゲート20の下端面22と水路11の底部90とにより、取水用の開口部24を形成する。取水装置10は、開口部24を介して、取水口12からの流水100を取水し、出水口13に出水する。また、取水ゲート20は、鉛直方向に沿って昇降することができる。取水ゲート20は、鉛直方向下方に降下することにより、開口部24の開口面積を減少させ、鉛直方向上方に上昇することにより、開口部24の開口面積を増加させる。取水ゲート20の昇降方法については後述する。
図5は、ゲート支持部の内部構造を表す模式図である。図1及び図5が示すように、ゲート支持部30は、ピニオンカバー部31と、ラックカバー部32と、ピニオン部33と、ラック部35と、基台部37と、とを有する。ゲート支持部30は、ラックアンドピニオン構造を有し、取水ゲート20を取水ゲート20の下端面22が水路11の底部90と接しない範囲で昇降可能に支持する。
ピニオンカバー部31は、取水屋根部86の開口部88に設けられ、取水屋根部86と出水壁部93とを連結する土台部71に設けられる箱状の部材である。ピニオンカバー部31は、内部にピニオン部33と、ラック部35の一部と、基台部37を収納する。
図5に示すように、ピニオン部33は、複数の歯33aを有する円形の歯車であり、基台部37に、水平方向を中心軸として回転可能に取付けられている。ラック部35は、平板状の棒に、軸方向に沿って複数の歯35aを設けた部材である。ラック部35は、鉛直方向に沿って、かつ、ピニオン部33の外周の接線方向に沿って設けられている。ラック部35は、一部がピニオンカバー部31に収納され、他の一部がラックカバー部32に収納される。また、ラック部35は、鉛直方向下方の端部において、取水ゲート20の鉛直方向上端部と接続されている。
ピニオン部33の歯33aと、ラック部35の複数の歯35aの間の歯間35bとは、少なくとも1つ同士が噛み合っている。ピニオン部33は、自身の回転運動をラック部35に伝達して、ラック部35を鉛直方向に移動させる。同様に、ラック部35は自身の鉛直方向の移動をピニオン部33に伝達して、ピニオン部33を回転させる。本実施形態において、ピニオン部33の時計回りの回転運動は、ラック部35の鉛直方向下方の移動に連動している。また、ピニオン部33の反時計回りの回転運動は、ラック部35の鉛直方向上方の移動に連動している。ただし、これらの関係は逆でもよく、ピニオン部33の時計回りの回転運動は、ラック部35の鉛直方向上方の移動に連動していてもよい。
ラック部35は、取水ゲート20と接続されているため、取水ゲート20は、ラック部35の鉛直方向の移動に伴って昇降する。ピニオン部33には、レバーが取り付けられており、作業者がレバーを回すことにより、ピニオン部33を回転させ、ラック部35及び取水ゲート20を、手動で昇降させることができる。
また、ピニオン部33には、ロック部40が取り付けられている。ロック部40は、取水屋根部86の鉛直方向上部からピニオン部33に向かって延在する。図1及び図5に示すように、ロック部40は、棒状の部材であり、接触部42と、支点部44と、固定部46とを有する。接触部42は、ロック部40の一方の端部であって、取水屋根部86の鉛直方向上部に設けられている。固定部46は、ロック部40の他方の端部であって、ピニオン部33の歯間33bと噛み合っている。支点部44は、接触部42と固定部46との間に設けられている。支点部44は、土台部71と固定されており、ロック部40を回転可能に支持している。また、ロック部40は、支点部44と接触部42との間の被支持部45が、土台部71に取付けられた支持部43に鉛直方向下方から支持されている。ロック部40は、支持部43に支持されているため、被支持部45が支持部43に支持されている位置から支持部43と離れる方向に向かって回転可能であるが、被支持部45が支持部43に支持されている位置から支持部43に向かって回転しない。すなわち、本実施形態においては、ロック部40は、被支持部45が支持部43に支持されている位置から、時計回りに回転可能であるが、反時計回りには回転しない。
上述のように、ロック部40の固定部46は、ピニオン部33の歯間33bと噛み合っている。ロック部40は、ピニオン部33を固定し、ピニオン部33の回転をロックしている。より詳しくは、ロック部40は、支持部43に支持されているため、ピニオン部33が時計回りに回転することを抑制する。すなわち、ロック部40は、ラック部35及び取水ゲート20を固定し、取水ゲート20を所定の位置に固定して、取水ゲート20が鉛直方向下方に移動することを抑制する。
ロック部40は、接触部42が駆動ロッド54に跳ね上げられることにより、支点部44を中心に時計回りに回転する。ロック部40は、支点部44を中心に時計回りに回転することにより、ロック部40の固定部46と、ピニオン部33の歯間33bとの噛み合いが解除される。ロック部40の固定部46と、ピニオン部33の歯間33bと噛み合いが解除されれば、ピニオン部33は時計回りに回転可能となる。そして、ラック部35及び取水ゲート20の固定は解除され、取水ゲート20は自重で降下する。
図1に示すように、フロートガイド部50は、両端が開口する円筒状の部材である。フロートガイド部50は、外周が取水屋根部86の開口部87に支持されることにより取水口12に設けられる。フロートガイド部50は、一方の端部51が取水屋根部86の開口部87の鉛直方向上部に位置して鉛直方向下方に延在する。フロートガイド部50は、他方の端部が水路11の底部90上に底部90と所定の間隔をもって位置する。また、フロートガイド部50の一方の端部51には、ロック部40の接触部42が配置されている。
フロート部52は、内部に空気を収納する筒状(半円筒状)の中空の部材である。フロート部52は、流水100に対して浮力を有する。フロート部52は、フロートガイド部50の内部に設けられる。フロート部52は、フロートガイド部50の内部で、取水口12内の水位の変動に応じて、鉛直方向に移動する。すなわち、フロート部52は、取水口12内の水位が上昇すれば、それに伴い鉛直方向上方に移動し、取水口12内の水位が下降すれば、それに伴い鉛直方向下方に移動する。なお、フロート部52は、流水100に対して浮力を有するものであれば、筒状の中空の部材に限られず、例えば多孔性の部材であってもよい。
駆動ロッド54は、図1に示すように、棒状の部材である。駆動ロッド54は、一方の端部55がフロート部52に取付けられる。駆動ロッド54は、フロートガイド部50に沿って、一方の端部55から他方の端部56に向かって鉛直方向上方に延在する。駆動ロッド54は、取水口12内の水位の変動に応じて、フロート部52の移動に伴い鉛直方向に移動する。駆動ロッド54は、所定の位置まで上昇すると、他方の端部56がフロートガイド部50の一方の端部51の位置に達し、ロック部40の接触部42と接触する。駆動ロッド54は、ロック部40の接触部42と接触して接触部42を鉛直方向上部に跳ね上げて、ロック部40によるピニオン部33の固定を解除する。
図6は、流量調整部の構成を示す模式図である。図1及び図6に示すように、流量調整部60は、板部61と、浮体部66と、連結部68とを有する。流量調整部60は、連結部68により、取水ゲート20の下端部に取付けられる。流量調整部60は、取水口12の水位に応じて連結部68を回転軸として回転することにより、取水ゲート20の開口部24の遮蔽量を変化させる。
板部61は、板状の部材である。板部61は、一方の端部62に連結部68が取り付けられている。板部61は、連結部68を介して、取水ゲート20の取水口12側の面の下端部に取付けられている。板部61は、取水ゲート20の水平方向に沿って、かつ、取水ゲート20の下端部から鉛直方向下方に向かって他方の端部63に延在するように、取水ゲート20に取付けられている。
板部61は、下流方向X2側の面64の一部であって一方の端部62側の面である接触面65が取水ゲート20の取水口12側の面と接している。板部61は、接触面65にゴム状の弾性体を有する。板部61は、接触面65にゴム状の弾性体を有することにより、板部61及び取水ゲート20を保護し、また、板部61と取水ゲート20との間の水密性を向上させる。なお、板部61は、板部61及び取水ゲート20を保護し、また、板部61と取水ゲート20との間の水密性を向上させるものであれば、接触面65にゴム状の弾性体を設けることに限られない。
浮体部66は、鋼又はFRP(Fiber Reinforced Plastics 強化繊維プラスチック)等により製造され、内部に空気を収納する中空の部材である。浮体部66は、流水100に対して浮力を有する。浮体部66は、板部61の面64に設けられる。浮体部66は、板部61に取付けられている面と反対側の面67が円弧状となっている。より詳しくは、面67は、板部61の一方の端部62から他方の端部63に向かって円弧状となっている。また、面67には、板部61の一方の端部62から他方の端部63に向かって複数の溝部69が設けられている。本実施形態において、溝部69は、水平方向にそって5個設けられているが、板部61の一方の端部62から他方の端部63に向かって、面67に設けられていれば、これに限られない。また、浮体部66は、流水100に対して浮力を有するものであれば、上述の材料に限られず、また中空の部材でなくてもよい。浮体部66は、例えば多孔性の部材であってもよい。
連結部68は、取水ゲート20の水平方向に沿って設けられ、上述のように、板部61と、取水ゲート20の取水口12側の面の下端部とを連結している。本実施形態において、連結部68は、ヒンジである。連結部68は、板部61が連結部68を中心軸として流水100の上流方向X1に向かって回転できるように、板部61と取水ゲート20の取水口12側の面の下端部とを連結している。より詳しくは、連結部68は、板部61の他方の端部63が鉛直方向下方から流水100の上流方向X1に向かって0度以上90度以下の範囲内で回転するように、板部61と取水ゲート20の取水口12側の面の下端部とを連結することが好ましい。なお、連結部68は、板部61が流水100の上流方向X1に向かって回転できるように、板部61と取水ゲート20の取水口12側の面の下端部とを連結するものであれば、ヒンジに限られない。
このように、流量調整部60は、流水100に対して浮力を有する浮体部66と、板部61及び浮体部66を流水100の上流方向X1に回転可能とする連結部68とを有する。浮体部66は、浮力による流水100の上流方向X1への回転モーメントが作用する。また、板部61は、取水口12の水位に応じた水圧による流水100の下流方向X2への回転モーメントが作用する。流量調整部60は、浮体部66に作用する浮力による上流方向X1への回転モーメントが、板部61に作用する取水口12の水位に応じた水圧による流水100の下流方向X2への回転モーメントを下回った場合は、板部61及び浮体部66が流水100の上流方向X1に向かって回転しない。流量調整部60は、浮体部66に作用する浮力による上流方向X1への回転モーメントが、板部61に作用する取水口12の水位に応じた水圧による流水100の下流方向X2への回転モーメントを上回った場合は、板部61及び浮体部66が流水100の上流方向X1に向かって回転する。流量調整部60は、浮力による上流方向X1への回転モーメントと、取水口12の水位に応じた水圧による流水100の下流方向X2への回転モーメントとの関係に応じて、板部61及び浮体部66の流水100の上流方向X1に向かう回転量を変化させる。
第1の開度調整ロッド70は、図1及び図2に示すように、一方の端部が取水ゲート20の鉛直方向上端部に取付けられ、土台部71に設けられた開口部77を介して鉛直方向上方に延在する棒状の部材である。第1の開度調整ロッド70は、取水ゲート20の昇降に伴って、鉛直方向に移動する。また、第1の開度調整ロッド70の外周であって、土台部71よりも鉛直方向上方の所定の位置には、円板部74が設けられている。円板部74は、開口部77よりも径が大きい。従って、第1の開度調整ロッド70及び取水ゲート20は、円板部74が土台部71に接する位置まで降下すると、円板部74と土台部71とが接触することにより、それ以上降下しない。すなわち、円板部74及び第1の開度調整ロッド70は、取水ゲート20の下降を所定の位置までに制限するストッパー部となる。
本実施形態において、円板部74及び第1の開度調整ロッド70は、取水ゲート20の下端面22が水路11の底部90と接さないように、取水ゲートの下降位置を制限する。従って、ゲート支持部30は、円板部74及び第1の開度調整ロッド70により、取水ゲート20を取水ゲート20の下端面22が水路11の底部90と接しない範囲で昇降可能に支持する。ただし、取水装置10は、円板部74及び第1の開度調整ロッド70の位置を調整することにより、ゲート支持部30が取水ゲート20を取水ゲート20の下端面22が水路11の底部90と接するように支持するようにしてもよい。すなわち、この場合、取水装置10は、円板部74及び第1の開度調整ロッド70の位置を調整することにより、取水ゲート20を全閉とすることができる。
本実施形態においては、第1の開度調整ロッド70の外周及び円板部74の内周には、ねじが設けられている。円板部74は、第1の開度調整ロッド70の外周とのねじの締付量を制御することにより、円板部74の第1の開度調整ロッド70の軸方向での位置を変化させることができる。従って、円板部74は、取水ゲート20の最大下降位置を変化させることができる。また、本実施形態において、第1の開度調整ロッド70及び円板部74には、鉛直方向の高さを示す目盛が設けられている。作業者は、この目盛を読み取ることにより、設定した取水ゲート20の所定の下降位置を容易に認識することができる。
第2の開度調整ロッド72は、図1及び図2に示すように、一方の端部が取水ゲート20の鉛直方向上端部に取付けられ、土台部71に設けられた開口部78を介して鉛直方向上方に延在する棒状の部材である。第2の開度調整ロッド72は、ゲート支持部30を介して、第1の開度調整ロッド70に隣接して設けられている。第2の開度調整ロッド72は、取水ゲート20の昇降に伴って、鉛直方向に移動する。また、第2の開度調整ロッド72の外周であって、土台部71よりも鉛直方向上方の所定の位置には、ナット76が設けられている。ナット76は、開口部78よりも径が大きく、円板部74より径が小さい。従って、第2の開度調整ロッド72及び取水ゲート20は、ナット76が土台部71に接する位置まで降下すると、ナット76と土台部71とが接触することにより、それ以上降下しない。すなわち、ナット76及び第2の開度調整ロッド72は、取水ゲート20の下降を所定の位置までに制限するストッパー部となる。
本実施形態において、ナット76及び第2の開度調整ロッド72は、取水ゲート20の下端面22が水路11の底部90と接さないように、取水ゲートの下降位置を制限する。従って、ゲート支持部30は、ナット76及び第2の開度調整ロッド72により、取水ゲート20を取水ゲート20の下端面22が水路11の底部90と接しない範囲で昇降可能に支持する。ただし、取水装置10は、ナット76及び第2の開度調整ロッド72の位置を調整することにより、ゲート支持部30が取水ゲート20を取水ゲート20の下端面22が水路11の底部90と接するように支持するようにしてもよい。すなわち、この場合、取水装置10は、ナット76及び第2の開度調整ロッド72を調整することにより、取水ゲート20を全閉とすることができる。
本実施形態においては、第2の開度調整ロッド72の外周及びナット76の内周には、ねじが設けられている。ナット76は、第2の開度調整ロッド72の外周とのねじの締付量を制御することにより、ナット76の第2の開度調整ロッド72の軸方向での位置を変化させることができる。従って、ナット76は、取水ゲート20の最大下降位置を変化させることができる。また、本実施形態において、第1の開度調整ロッド70及びナット74には、鉛直方向の高さを示す目盛が設けられている。作業者は、この目盛を読み取ることにより、取水ゲート20の鉛直方向での位置を容易に認識することができる。なお、本実施形態においては、第1の開度調整ロッド70と円板部74とにより取水ゲート20の最大下降位置を決定し、ナット76は、円板部74と鉛直方向で同じ高さに位置するように、位置を調整される。円板部74は、ナット76よりも径が大きいため、位置の微調整が可能となる。なお、本実施形態において、開度調整ロッドは2つであるが、これに限られず、1つあるいは3つ以上であってもよい。
次に、取水口12の水位の変化に伴う取水装置10の動作について説明する。図7、図8及び図9は、取水口の所定の水位における取水装置の動作を示す模式図である。図7は、取水口12の水位が通常の水位102である場合を示している。図8は、取水口12の水位が上昇して設定水位103になっている場合を示している。図9は、取水口12の水位が設定水位103から下降して、所定水位105になっている場合を示している。
取水ゲート20の鉛直方向での位置は、作業者がゲート支持部30のピニオン部33に取付けられたレバーを操作して取水ゲート20を所定の位置まで移動させ、ロック部40でピニオン部33をロックすることにより、決定される。この場合の取水ゲート20の位置は、図7に示されるように、取水ゲート20の下端部と水路11の底部90との距離が距離Y1になるように決定される。この場合、流量調整部60の下端部と水路11の底部90との距離は、距離Z1となる。この場合において、流水100が取水口12から出水口13に流れる流路である有効流路24Aは、開口部24から流量調整部60が遮蔽する箇所を除いた部分である。すなわち、図7における有効流路24Aは、流量調整部60の下端部と水路11の底部90との間の、鉛直方向の距離が距離Z1となる開口部分である。本実施形態において、距離Y1及びZ1は、任意に設定することができる。
図8に示すように、増水などで取水口12の水位が上昇し設定水位103(例えば、流量0.9m3/sに対応)になると、フロート部52が取水口12の水位に伴って上昇することにより、駆動ロッド54がロック部40の接触部42を鉛直方向上部に跳ね上げて、ロック部40によるピニオン部33の固定を解除する。そして、取水ゲート20が、自重により第1の開度調整ロッド70及び円板部74により決定された位置まで降下する。図8に示されるように、本実施形態における取水ゲートの降下位置は、取水ゲート20の下端部と水路11の底部90との距離が距離Y2となる位置である。
取水口12の水位が設定水位103である場合、浮体部66に作用する浮力による上流方向X1への回転モーメントが、板部61に作用する取水口12の水位に応じた水圧による流水100の下流方向X2への回転モーメントを下回っている。そのため、図8に示されるように流量調整部60は、流水100の上流方向X1に向かって回転せず、板部61及び浮体部66は、鉛直方向下方に向かって延在している。この場合、流量調整部60の下端部と水路11の底部90との距離は距離Z2となる。
図8に示されるように、取水口12の水位が設定水位103になった場合において、流水100が取水口12から出水口13に流れる流路である有効流路24Bは、流量調整部60の下端部と水路11の底部90との間の、鉛直方向の距離が距離Z2となる開口部分である。また、有効流路24Bを通って出水口13より出水された流水100の水位104は、流量調整部60の下端部、すなわち距離Z2に対応する水位となっている。本実施形態において、距離Y2及び距離Z2は、取水口12の水位が設定水位103以上になった場合においても、取水量が許可水量を超えないように設定されるものであれば、任意に設定することができる。また、ロック部40がピニオン部33の固定を解除する水位である設定水位103も、取水量が許可水量を超えないものであれば、任意に設定することができる。
図9に示すように、取水口12の水位が設定水位103から所定水位105まで下降した場合、取水ゲート20の位置は図8に示す位置から変わらない。この場合の取水ゲート20の下端部と水路11の底部90との距離は、距離Y2のままである。従って、この場合において、流量調整部60は、鉛直方向下方に向かって延在している場合においては、流量調整部60の下端部と水路11の底部90との距離が距離Z2である位置のままである。
ここで、所定水位105は、鉛直方向の高さが距離Z2よりも大きい。また、取水口12の水位が所定水位105である場合、浮体部66に作用する浮力による上流方向X1への回転モーメントが、板部61に作用する取水口12の水位に応じた水圧による流水100の下流方向X2への回転モーメントを上回る。従って、図9に示すように流量調整部60は、流水100の上流方向X1に向かって回転する。より詳しくは、取水口12が所定水位105である場合、流量調整部60は、流量調整部60の下端部と水路11の底部90との距離が、距離Z3となるように、流水100の上流方向X1に向かって回転する。この場合、流量調整部60の下端部は、浮体部66の面67が流水100の水面(所定水位105の位置)と接する位置である。すなわち、流量調整部60は、流量調整部60の下端部が流水100と接するように回転する。従って、距離Z3は、所定水位105と対応する位置である。
この場合において、流水100が取水口12から出水口13に流れる流路である有効流路24Cは、流量調整部60の下端部と水路11の底部90との間の、鉛直方向の距離が距離Z3となる開口部分である。このように、取水口12の水位が設定水位103以上となり、その後水位が所定水位105まで低下した場合、流量調整部60が流水100の上流方向X1に向かって回転するため、有効流路が大きくなる。
流量調整部60の回転量、すなわち流量調整部60の下端部と水路11の底部90との距離は、取水口12の水位に応じて変化する。すなわち、浮体部66に作用する浮力による上流方向X1への回転モーメントと板部61に作用する取水口12の水位に応じた水圧による流水100の下流方向X2への回転モーメントとの関係に応じて、流量調整部60の回転量が変化する。例えば、取水口12の水位が所定水位105よりも上昇した場合、浮力による回転モーメントが大きくなるため、流量調整部60は、さらに上流方向X1へ回転し、有効流路が大きくなる。なお、流量調整部60が回転を始める場合、すなわち浮力による回転モーメントが水圧による回転モーメントを上回る場合の取水口12の水位は、例えば、取水口12の水位が板部61の一方の端部62と他方の端部63の鉛直方向における中央部に位置した場合であるが、これに限られず任意に設定することができる。
なお、取水口12の水位が所定水位105まで下降して、取水装置10が流量調整部60の回転により有効流路を大きくしながら取水を所定の期間継続した後、作業者がゲート支持部30のピニオン部33に取付けられたレバーを操作することにより、取水ゲート20の位置を図7で示す位置に戻す。
このように、本実施形態に係る取水装置10は、所定の水位になれば取水ゲート20の固定を解除するロック部40を有し、また、取水口12の水位に応じて開口部24の遮蔽量を変化させる流量調整部60を有する。従って、取水装置10は、許可水量以上の取水を抑制しながら、その後に水位が低下した場合にも、有効流路の開口面積を調整することにより取水量が不足することを抑制することができる。また、この流量調整部60は、取水ゲート20に取付けるものなので、既設の取水ゲートにも容易に取り付けることができる。
さらに、本実施形態に係る流量調整部60は、板部61と、浮体部66とを有する。従って、本実施形態に係る取水装置10は、水位が高く流量調整部60が閉じている場合は板部61により、開口部24を確実に遮蔽することができる。また、流量調整部60は、浮体部66に働く浮力による回転モーメントが板部61に働く取水口12の水位に起因する水圧による回転モーメントを上回った場合に、流水100の上流方向X1に向かって回転する。そして、流量調整部60の回転量は、浮体部66に働く浮力と、板部61に働く取水口12の水位に起因する水圧とのバランスに応じて変化する。従って、本実施形態に係る取水装置10は、取水口12の水位に応じて、適切に有効流路の開口面積を調整することができる。
さらに、本実施形態に係る流量調整部60は、浮体部66の面67が円弧状である。従って、流量調整部60は、流水100の抵抗を抑制して、取水口12の流水100の水面(取水口12の水位)に適切に追従することができる。また、本実施形態に係る流量調整部60は、浮体部66の面67に溝部69を有する。流量調整部60は、溝部69により、流水100の抵抗を抑制して、取水口12の流水100の水面(取水口12の水位)に適切に追従することができる。そのため、流量調整部60は、取水口12の水位に応じて適切に回転して、有効流路の開口面積をより好適に調整することができる。
また、本実施形態に係る流量調整部60は、鉛直方向下方から流水100の上流方向X1に向かって0度以上90度以下の範囲内で回転する。従って、取水装置10は、取水口12の水位が再度上昇した場合において、流量調整部60を適切に閉じる(鉛直方向下方に位置させる)ことができ、開口部24をより適切に遮蔽することができる。
また、本実施形態に係る取水装置10は、ラックアンドピニオン構造を有するゲート支持部30により、取水ゲート20を昇降可能に支持する。従って、取水装置10は、取水ゲート20を好適に昇降することができる。ただし、ゲート支持部30は、取水ゲート20を昇降可能に支持するものであれば、ラックアンドピニオン構造に限られず、例えばワイヤで取水ゲート20を支持し、そのワイヤを巻き上げることにより取水ゲート20を昇降させるものであってもよい。
以上、本発明の実施形態について説明したが、これら実施形態の内容によりこの発明が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。