JP2016003345A - 成形体の製造方法、樹脂ペレットの製造方法、メッキ膜を有する成形体の製造方法、成形体及び樹脂ペレット - Google Patents

成形体の製造方法、樹脂ペレットの製造方法、メッキ膜を有する成形体の製造方法、成形体及び樹脂ペレット Download PDF

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Abstract

【課題】成形時に溶融樹脂から発生する揮発ガスにより、ナノ粒子の無電解メッキ触媒活性が失活したとしても、ナノ粒子の無電解メッキ触媒活性を復活させることができる成形体を提供する。
【解決手段】成形体の製造方法であって、パラジウム含有ナノ粒子を用意することと、第1の熱可塑性樹脂を可塑化溶融して溶融樹脂とすることと、前記溶融樹脂に前記パラジウム含有ナノ粒子を混合することと、前記パラジウム含有ナノ粒子を含む前記溶融樹脂を所望の形状に成形することを含み、前記パラジウム含有ナノ粒子は、2N〜5Nの塩酸、2N〜5Nの硫酸及び5N〜12Nの酢酸のうちの1つと接触することにより表面が溶解する粒子であることを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、ナノ粒子を含む成形体の製造方法、樹脂ペレットの製造方法、メッキ膜を有する成形体の製造方法に関し、更に、ナノ粒子を含む成形体及び樹脂ペレットに関する。
単分散のナノ粒子は、量子サイズ効果により半値幅の狭い蛍光を発色する等、特異的な性質を有することから、近年、その合成方法や応用が研究されている。単分散のナノ粒子の合成方法は、CVD(Chemical Vapor Deposition)等の気相法と、ゾルゲル法や水熱合成法の液相法に大別される。気相法は製造コストが高く、単分散している微粒子が得難いという欠点を有する。液相法としては、例えば、特許文献1〜3に開示される方法が報告されている。
特許文献1には、以下に説明するナノ粒子の合成方法が開示されている。まず、金属粒子源Aとポリマー粒子Bとそれらの接触を阻害する物質Cと溶媒とを混合し、これら混合物を熱処理及び化学反応させることで粒子源Aからナノ粒子の核を生成する。次いでポリマー粒子Bに囲まれた領域において、600℃以上1000℃以下の温度範囲で熱処理することで、ナノ粒子が生成する。特許文献2及び3にも、水溶性ポリマーで被覆された金属ナノ粒子の合成法及びそれに用いる水溶性ポリマーが開示されている。
非特許文献1には、水溶性ポリマーで被覆された金属ナノ粒子を高速で合成する手法として、高圧反応場を用いた連続反応法が開示されている。非特許文献1は、白金、ロジウム、パラジウム、金のナノ粒子の製造方法を開示している。非特許文献1によれば、パラジウムナノ粒子の場合、まず、トルエンと、1−プロパノール又はアセトンとから混合溶媒を調製する。そして、パラジウムアセチルアセトナトパラジウム(II)等の金属前駆体と、ポリビニルピロリドン等の水溶性ポリマーとを調製した混合溶媒に溶解させて20MPaの高圧とし、200℃〜300℃の温度雰囲気に数十秒通過させる。これにより、水溶性ポリマーの被覆された金属ナノ粒子が連続合成される。非特許文献1では、単分散している白金ナノ粒子が合成されているが、パラジウムナノ粒子には、2次凝集が認められ、単分散しているパラジウムナノ粒子は合成されていない。
一方、樹脂成形体に安価に金属膜を形成する方法として、無電解メッキ法が知られている。更に、メッキ前処理であるエッチング工程を経ずに、樹脂成形体に金属膜を形成する方法として、超臨界二酸化炭素等の加圧二酸化炭素を用いた樹脂成形体の表面改質法の利用が提案されている。本発明者らは、加圧二酸化炭素を用いた表面改質処理を射出成形と同時に行い、樹脂成形体の表面に無電解メッキの触媒となるパラジウム等の金属微粒子を分散させる方法を提案している(特許文献4)。この方法では、表面にパラジウムが偏在化した樹脂成形体に無電解メッキを施すことにより、エッチング工程を経ずに成形体表面にメッキ膜を形成できる。
特許第4767562号公報 特開2006−239552号公報 特開2011−102332号公報 特許第4160623号公報 「超臨界流体を用いた貴金属超微粒子の合成」、木村佳文・原田雅史、Rev. High Pressure Sci. Technol、 20(1)、 11−18(2010)
しかしながら、本発明者らの検討によれば、加圧二酸化炭素を利用した成形法により成形体内部に分散した金属微粒子は、成形体を構成する樹脂の種類によっては、成形時に樹脂から発生する揮発ガスにより、触媒活性を失活する虞があることが明らかとなった。例えば、該成形方法により、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)にパラジウムを分散させた場合、得られた成形体はメッキ反応を示さない場合がある。そこで、ABS樹脂の溶融時に発生するガスを回収し、常温の該ガス雰囲気にパラジウム触媒を分散した成形体を放置する実験を行ったところ、触媒活性が失活することがわかった。
本発明は上記課題を解決するものであり、高温の溶融樹脂と接触させても触媒活性が失活しないナノ粒子を含むメッキ可能な成形体の製造法を提供する。
本発明の第1の態様に従えば、成形体の製造方法であって、パラジウム含有ナノ粒子を用意することと、第1の熱可塑性樹脂を可塑化溶融して溶融樹脂とすることと、前記溶融樹脂に前記パラジウム含有ナノ粒子を混合することと、前記パラジウム含有ナノ粒子を含む前記溶融樹脂を所望の形状に成形することを含み、前記パラジウム含有ナノ粒子は、2N〜5Nの塩酸、2N〜5Nの硫酸及び5N〜12Nの酢酸のうちの1つと接触することにより表面が溶解する粒子であることを特徴とする成形体の製造方法が提供される。
本態様において、前記パラジウム含有ナノ粒子の粒子径が100nm以下であってもよく、前記パラジウム含有ナノ粒子の形状が、略直方体であってもよい。
前記パラジウム含有ナノ粒子を用意することが、親水性ポリマーと、還元剤と、ハロゲン化塩と、水とを含む第1溶液を調製することと、水溶性パラジウム塩と水とを含む第2溶液を調製することと、第1溶液と第2溶液を混合して混合溶液とし、混合溶液中に前記パラジウム含有ナノ粒子を生成させることとを含んでもよい。前記親水性ポリマーがポリビニルピロリドンであり、前記還元剤がアスコルビン酸であり、前記ハロゲン化塩が臭化カリウム及び塩化カリウムであってもよい。前記パラジウム含有ナノ粒子を用意することが、更に、前記パラジウム含有ナノ粒子を含む混合溶液を濾過することを含んでもよい。また、前記溶融樹脂に、前記パラジウム含有ナノ粒子を含む前記混合溶液を混合することにより、前記溶融樹脂に前記パラジウム含有ナノ粒子を混合してもよい。
前記第1の熱可塑性樹脂が、親水性セグメントを含むブロック共重合体であってもよく、前記ブロック共重合体の親水性セグメントが、ポリエーテルであってもよい。
本発明の第2の態様に従えば、樹脂ペレットの製造方法であって、第1の態様の成形体の製造方法によって、第1の成形体を製造することと、第1の成形体を裁断することとを含むことを特徴とする樹脂ペレットの製造方法が提供される。本態様において、前記パラジウム含有ナノ粒子が、第1の成形体中に5〜3000重量ppm含まれてもよい。
本発明の第3の態様に従えば、成形体の製造方法であって、第2の態様の樹脂ペレットの製造方法により、樹脂ペレットを製造することと、前記樹脂ペレットと第2の熱可塑性樹脂を用いて、前記パラジウム含有ナノ粒子を含有する第2の成形体を製造することとを含むことを特徴とする成形体の製造方法が提供される。
本態様において、第2の熱可塑性樹脂がABS樹脂であってもよく、前記パラジウム含有ナノ粒子を含有しなくてもよく、また、親水性セグメントを含むブロック共重合体を含有しなくてもよい。
本発明の第4の態様に従えば、メッキ膜を有する成形体の製造方法であって、第3の態様の成形体の製造方法により第2の成形体を製造することと、第2の成形体に酸を接触させることと、前記酸を接触させた前記成形体に無電解メッキ液を接触させて、メッキ膜を形成することを含み、前記酸が、2N〜5Nの塩酸、2N〜5Nの硫酸及び5N〜12Nの酢酸のうちの1つの酸であることを特徴とするメッキ膜を有する成形体の製造方法が提供される。
本態様において、前記成形体に前記無電解メッキ液を接触させる前に、前記成形体にアルコール処理液を接触させてもよい。前記第1の熱可塑性樹脂が、親水性セグメントを含むブロック共重合体であり、前記アルコール処理液が、前記ブロック共重合体を軟化させてもよい。また、前記アルコール処理液が、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコールからなる群から選択される少なくとも一種を含んでもよく、特に、1,3−ブタンジオールを含んでもよい。
本発明の第5の態様に従えば、成形体であって、熱可塑性樹脂と、パラジウム含有ナノ粒子を含み、前記パラジウム含有ナノ粒子は、2N〜5Nの塩酸、2N〜5Nの硫酸及び5N〜12Nの酢酸のうちの1つと接触することにより表面が溶解する粒子であることを特徴とする成形体が提供される。
本態様において、前記パラジウム含有ナノ粒子の粒子径が、100nm以下であってもよく、前記パラジウム含有ナノ粒子の形状が、略直方体であってもよい。また、前記パラジウム含有ナノ粒子が、前記成形体中に5〜3000重量ppm含まれてもよい。前記熱可塑性樹脂が、親水性セグメントを含むブロック共重合体であってもよく、前記ブロック共重合体の親水性セグメントが、ポリエーテルであってもよい。
本発明の第6の態様に従えば、樹脂ペレットであって、第5の態様の成形体を裁断することによって製造される樹脂ペレットが提供される。
本発明のパラジウム含有ナノ粒子を含む成形体は、成形時に溶融樹脂から発生する揮発ガスにより、ナノ粒子の無電解メッキ触媒活性が失活したとしても、特定の酸を用いたメッキ前処理を行うことで、ナノ粒子の無電解メッキ触媒活性を復活させることができる。
実施形態のメッキ膜を有する成形体の製造方法を示すフローチャートである。 実施形態の第1の成形体の製造装置を示す概略図である。 図3(a)及び(b)は、図2に示す製造装置の下流側シール機構を拡大した概略図である。 実施例1で製造したパラジウム含有ナノ粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)写真であって、(a)は、倍率5万倍のTEM写真であり、(b)は、倍率15万倍のTEM写真である。 実施例1で製造したパラジウム含有ナノ粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)写真であって、(a)は、塩酸と接触する前のTEM写真であって、(b)は、塩酸と接触した後のTEM写真である。 実施例1での第1の成形体の製造において、製造装置の運転時間と、製造装置の高圧混練ゾーンの圧力との関係を示すグラフである。
本実施形態では、まず、パラジウム含有ナノ粒子を含む第1の成形体の製造方法を説明する。そして、第1の成形体を裁断して樹脂ペレットを製造する方法、該樹脂ペレットと第2の熱可塑性樹脂を用いて、パラジウム含有ナノ粒子を含む第2の成形体を製造する方法を説明する。更に、第2の成形体の表面に無電解メッキ膜を形成して、メッキ膜を有する成形体を製造する方法について説明する。
本明細書において、「パラジウム含有ナノ粒子」又は「ナノ粒子」とは、粒子径が100nm以下の金属ナノ粒子であり、好ましくは10nm以下の金属粒子を意味する。また、本明細書において、「樹脂ペレット」とは、樹脂を加工し易いように小さな塊(ペレット)としたものを意味し、サイズ及び形状はペレットの用途により様々であるが、例えば、3〜5mm程度の粒子状、円柱状の樹脂の小片である。本実施形態のナノ粒子含有樹脂ペレットは、可塑化溶融して射出成形や押出成形することにより、第2の成形体に加工することができる。
(1)第1の成形体の製造
図1に示すフローチャートに従って、パラジウム含有ナノ粒子(以下、適宜、単に「ナノ粒子」と記載する)を含む第1の成形体の製造方法について説明する。本実施形態において、第1の成形体は、押出成形により成形される紐状の成形体であり、第1の成形体を裁断することにより、樹脂ペレットを得ることができる。
まず、2N〜5Nの塩酸、2N〜5Nの硫酸及び5N〜12Nの酢酸のうちの1つと接触することにより表面が溶解するパラジウム含有ナノ粒子を用意する(図1、ステップS1)。本実施形態のパラジウム含有ナノ粒子は、無電解メッキ触媒能を有していれば、パラジウム単体からなるナノ粒子であっても、パラジウムとパラジウム以外の金属とを含有するナノ粒子であってもよい。但し、高い無電解メッキ触媒能を得る観点からは、パラジウム以外の金属を含まないパラジウムナノ粒子であることが好ましい。
本実施形態に用いるナノ粒子は、特定の濃度の塩酸、硫酸及び酢酸のうちの1つと接触することにより表面が溶解するという特徴を有していれば任意の粒子を用いることができるが、例えば、非特許文献2(「Synthesis of Pd Nanocrystals Enclosed by {100} Facets and with Sizes <10nm for Application in CO Oxidation」、Mingshang Jin,et al.,Nano Res. 2011,4(1):83−91)に開示される方法により製造することができる。本実施形態では、以下に説明する非特許文献2に開示される方法により、ナノ粒子を製造する。まず、親水性ポリマーと、還元剤と、ハロゲン化塩と、水とを含む第1溶液と、水溶性パラジウム塩と水とを含む第2溶液を調製する。次に、第1溶液と第2溶液を混合して混合溶液とする。これにより、混合溶液中において、水溶性パラジウム塩が還元剤により還元されて、パラジウム含有ナノ粒子が生成する。
水溶性パラジウム塩は、水溶性であれば任意のパラジウム塩を用いることができ、例えば、塩化パラジウム(II)ナトリウム、塩化パラジウム(II)カリウム等を用いることができる。還元剤は水溶性パラジウム塩をゆっくり還元する、還元力の弱いものが好ましく、このような還元剤としては、アスコルビン酸、グルコース、シュウ酸、ギ酸等を用いることができる。親水性ポリマーとしては、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリ(3−ビニルピリジン)、ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリ(N−ビニルアセトアミド)、ポリ(ビニルアミン)及びポリビニルアルコール等を用いることができる。親水性ポリマーは、ナノ粒子を混合溶液中に分散させる分散剤としての機能を有すると推測され、また、分散剤としての機能以外に、後述する第2の成形体の成形工程において、第2の熱可塑性樹脂から発生する揮発ガスからナノ粒子を保護する機能も有する。ハロゲン化塩としては、例えば、臭化カリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、塩化ナトリウム等を用いることができる。ハロゲン化塩は、生成するナノ粒子の形状に影響を与えると推測される。また、本実施形態のナノ粒子の製造方法においては、親水性ポリマーの分子量及び添加量、ハロゲン化塩の添加量が生成するナノ粒子の粒子径に影響を与えると推測される。以上説明した水溶性パラジウム塩、還元剤、親水性ポリマー及びハロゲン化塩は、1種類の化合物を単独で用いてもよいし、2種類以上の化合物を混合して用いてもよい。
第1溶液と第2溶液との混合方法は任意であるが、例えば、第1溶液に、第2溶液を滴下することによって混合してもよい。また、第1溶液、第2溶液、これら2つの溶液の混合溶液の温度は、例えば10℃〜95℃とすることができる。
このようにして、混合溶液中に生成したナノ粒子は、2N〜5Nの塩酸、2N〜5Nの硫酸及び5N〜12Nの酢酸のうちの1つと接触することにより表面が溶解する特徴を有する。ナノ粒子の「表面が溶解する」とは、ナノ粒子が2N〜5Nの塩酸、2N〜5Nの硫酸及び5N〜12Nの酢酸のうちの1つと接触することにより、溶解により消失しないが、表面が溶解して粒子径が小さくなることを意味する。例えば、後述する実施例で説明するように、本実施形態の製造方法によって製造されるナノ粒子と、4Nの塩酸とを接触させ、塩酸との接触前後のナノ粒子を比較すると、塩酸と接触後のナノ粒子は、表面が溶解して粒子形状が変形し、粒子径が小さくなっていることが認められる。
ナノ粒子を無電解メッキ触媒として成形体中に分散させた場合、成形体中のナノ粒子は、成形時に樹脂から発生する揮発ガスにより無電解メッキ触媒活性を失活する場合がある。これは、揮発ガスがナノ粒子の表面に吸着することが原因であり、触媒活性を失活しているのは、ナノ粒子の表面のみと推測される。本実施形態のナノ粒子は、2N〜5Nの塩酸、2N〜5Nの硫酸及び5N〜12Nの酢酸のうちの1つと接触すると、この表面部分が溶解し、新たな表面が露出する。したがって、本実施形態のナノ粒子を含有する成形体は、無電解メッキの前処理として、2N〜5Nの塩酸、2N〜5Nの硫酸及び5N〜12Nの酢酸のうちの1つを成形体表面と接触させることで、成形体表面に存在するナノ粒子の無電解メッキ触媒活性を復活させることができる。
2N〜5Nの塩酸、2N〜5Nの硫酸及び5N〜12Nの酢酸は、本実施形態のナノ粒子を含有する成形体の無電解メッキの前処理に用いるのに適した濃度の塩酸、硫酸及び酢酸である。2N未満の塩酸、2N未満の硫酸、5N未満の酢酸では、ナノ粒子の表面を十分に溶解することができず、一方、5Nを超える塩酸、5Nを超える硫酸、12Nを超える酢酸では、成形体の樹脂自体が劣化する虞がある。同様の観点から、塩酸の濃度は、2N〜4Nが好ましく、2.5N〜4Nがより好ましく、硫酸の濃度は、2N〜4Nが好ましく、2.5N〜4Nがより好ましく、酢酸の濃度は、5N〜9Nが好ましく、6N〜9Nがより好ましい。したがって、本実施形態のナノ粒子は、2N〜4Nの塩酸、2N〜4Nの硫酸及び5N〜9Nの酢酸のうちの1つと接触することにより表面が溶解することが好ましく、2.5N〜4Nの塩酸、2.5N〜4Nの硫酸及び6N〜9Nの酢酸のうちの1つと接触することにより表面が溶解することがより好ましい。
通常のパラジウムは、酸化力のある酸である硝酸や熱濃硫酸に溶解するが、酸化力の無い酸である塩酸、硫酸及び酢酸には溶解しないことが知られている。しかし、このような酸化力のある酸を成形体に接触させると、成形体を構成する熱可塑性樹脂を酸化させて劣化させる虞があるため、硝酸や熱濃硫酸は無電解メッキの前処理に用いる酸として好ましくない。一方、本実施形態のナノ粒子は酸化力のない酸である塩酸、硫酸、酢酸に溶解する。このため、これらの酸化力のない酸を無電解メッキの前処理に用いることで、成形体を構成する熱可塑性樹脂を劣化させることなく、ナノ粒子の表面を溶解して、触媒活性を復活させることができる。本実施形態のナノ粒子が、通常はパラジウムを溶解しない酸化力のない酸である塩酸、硫酸、酢酸に溶解する理由は定かではないが、例えば、本実施形態のパラジウム含有ナノ粒子は、最表面が酸化され酸化パラジウムとなっており、これが酸化力のない酸に溶解している可能性があると推測される。
尚、通常のパラジウムは、酸化力のある熱濃硫酸に溶解するが、これは、熱濃硫酸(HSO)が三酸化硫黄(SO)と水(HO)に分解し、三酸化硫黄(SO)が強い酸化性を示すためであり、硫酸(HSO)そのものにパラジウムが溶解するわけではない。また、濃硫酸とは、例えば、市販の36N程度の濃硫酸を意味するため、熱濃硫酸は、本実施形態のナノ粒子の表面を溶解することができる2N〜5Nの硫酸には含まれない。
本実施形態のナノ粒子の粒子径は100nm以下である。触媒活性を高める観点からは、50nm以下が好ましく、特に、熱可塑性樹脂と混合する前の状態においては、10nm以下が好ましい。また、ナノ粒子の形状は、特に限定されないが、略直方体であってもよい。形状が略直方体のナノ粒子は、例えば、上で説明した製造方法によって製造することができる。ナノ粒子の形状が略直方体になる理由は定かではないが、ナノ粒子の生成場である混合溶液中に含まれるハロゲン化塩が、ナノ粒子の形状が略直方体となることに何らかの影響を与えていると推測される。
混合溶液中にナノ粒子が生成した後、混合溶液から、還元剤及びハロゲン化塩を除去することが好ましい。還元剤やハロゲン化塩がナノ粒子と共に成形体内に含まれると、無電解メッキ工程に影響を与える虞があるからである。還元剤及びハロゲン化塩を除去する方法としては、混合溶液に対して、乾燥、加熱、減圧、遠心分離、濾過等の操作を加えてもよいが、混合溶液のクロスフロー式濾過を行うことが好ましい。通常の濾過法では、粒子径が10nm以下のナノ粒子を分離することが難しく、また、ナノ粒子は濾液と分離されて回収されるため、凝集する虞がある。一方、クロスフロー式濾過は、粒子径が10nm以下のナノ粒子と、還元剤及びハロゲン化塩とを分離可能であり、更に、分離したナノ粒子を混合溶液中に分散した状態で保持可能である。更に、クロスフロー式濾過は、濾過する混合溶液の量が多い場合にも対応が可能である。また、例えば、ナノ粒子の分散性が高いために遠心分離によってはナノ粒子と還元剤等を分離できない場合であっても、クロスフロー式濾過は、効率よくナノ粒子と還元剤等を分離できる。尚、混合溶液中から還元剤及びハロゲン化塩を除去する工程は必須ではなく、後の工程である成形工程、無電解メッキ工程で問題が生じない限りは省略することが可能である。
次に、第1の熱可塑性樹脂を可塑化溶融して溶融樹脂とする(図1、ステップ2)。第1の熱可塑性樹脂としては、任意のものを用いることができ、例えば、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ナイロン等のポリアミド、ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィン、ポリエーテルイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリテーテルエーテルケトン、ABS系樹脂、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミドイミド、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン等を用いることができる。第1の熱可塑性樹脂は、1種類の熱可塑性樹脂を用いてもよく、2種類以上の熱可塑性樹脂を混合して用いてもよい。また、第1の熱可塑性樹脂は、親水性セグメントを含むブロック共重合体(以下、適宜「ブロック共重合体」と記載する)を含むことが好ましい。親水性セグメントを含むブロック共重合体は、第2の成形体中において、ナノ粒子を伴って成形体表面にブリードアウトしようと移動する傾向がある。これにより、第2の成形体の表面は親水化され、第2の成形体の表面近傍のナノ粒子は増量し、第2の成形体の無電解メッキの反応性を高めることができる。
本実施形態で用いる親水性セグメントを含むブロック共重合体は、親水性セグメントを有し、更に、親水性セグメントとは異なる他のセグメント(以下、適宜「他のセグメント」と記載する)を有する。親水性セグメントには、アニオン性セグメント、カチオン性セグメント、ノニオン性セグメントを用いることができる。アニオン性セグメントとしては、ポリスチレンスルホン酸系、カチオン性セグメントとしては、四級アンモニウム塩基含有アクリレート重合体系、ノニオン性セグメントとしては、ポリエーテルエステルアミド系、ポリエチレンオキシド−エピクロルヒドリン系、ポリエーテルエステル系が挙げられる。成形体の耐熱性を確保しやすいことから、親水性セグメントは、ポリエーテル構造を有するノニオン性セグメントであることが好ましい。ポリエーテル構造としては、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシトリメチレン基、オキシテトラメチレン基等のオキシアルキレン基、ポリエーテルジオール、ポリエーテルジアミン、及びこれらの変性物、並びにポリエーテル含有親水性ポリマーが含まれ、特にポリエチレンオキシドが好ましい。
ブロック共重合体の他のセグメントは、親水性セグメントよりも疎水性であれば任意であるが、例えば、ナイロン、ポリオレフィン等を用いることができる。
ブロック共重合体は市販品を用いてもよく、例えば、三洋化成工業製ペレスタット(登録商標)、ペレクトロン(登録商標)等を用いることができる。例えば、三洋化成工業製、ペレスタット300、NC6321、1251は、親水性セグメントのポリエーテルと、他のセグメントのナイロンをエステル結合でコポリマー化したブロック共重合体である。
第1の熱可塑性樹脂は、任意の方法により可塑化溶融できる。本実施形態では、図2に示す押出成形機200の可塑化シリンダ210内において、第1の熱可塑性樹脂の可塑化溶融を行う。
次に、溶融樹脂にパラジウム含有ナノ粒子を混合する(図1、ステップS3)。溶融樹脂にナノ粒子を混合する方法は任意であるが、本実施形態では、図2に示す可塑化シリンダ210内にナノ粒子を供給し、可塑化シリンダ210内において、溶融樹脂とナノ粒子とを混合する。溶融樹脂とナノ粒子との混合方法は任意である。例えば、上述した混合溶液からナノ粒子を分離せず、混合溶液と共に溶融樹脂へナノ粒子を供給して混合してもよいし、混合溶液からナノ粒子を分離して、ナノ粒子のみを直接、溶融樹脂に供給して混合してもよい。また、混合溶液からナノ粒子を分離して、他の溶媒に再分散させて、他の溶媒と共に溶融樹脂に供給して混合してもよい。本実施形態では、混合溶液からナノ粒子を分離せず、混合溶液と共に溶融樹脂へナノ粒子を供給して、溶融樹脂とナノ粒子とを混合する。混合溶液をそのまま溶融樹脂に混合すると、成形体の生産効率や品質安定性を向上させることができる。また、ナノ粒子の凝集を抑制することもできる。以下、本明細書において、ナノ粒子を含む混合溶液を含む、ナノ粒子を溶媒に分散させた分散体を「パラジウム触媒分散体」と、適宜記載する。パラジウム触媒分散体中のナノ粒子の含有量は、少なすぎると後の工程でのメッキ時に反応が生じなくなるため、反対に多すぎると成型時にナノ粒子が凝集する恐れがあるという観点から、200重量ppm〜3000重量ppmとすることができる。
パラジウム触媒分散体を可塑化シリンダに供給する方法は任意である。パラジウム触媒分散体を間欠的に導入してもよいし、連続的に導入してもよい。本実施形態においては、図2に示すパラジウム触媒分散体供給機構100のシリンジポンプ11、12を用いて、可塑化シリンダ210へパラジウム触媒分散体を連続的に供給する。
可塑化シリンダ内における、第1の熱可塑性樹脂と、パラジウム触媒分散体との混合物の圧力(第1の圧力)は、好ましくは3〜40MPaに調整されることが好ましい。混合物の圧力が3MPa以上であると、溶融樹脂へのナノ粒子の分散性が良好となる。また、混合物の圧力が、40MPa以下であると、スクリュやモーター等を含む装置への負担が軽減される。尚、パラジウム触媒分散体が導入されると、溶融樹脂の粘度及び圧力は低下する。そのため、パラジウム触媒分散体と溶融樹脂が混合される前の溶融樹脂の圧力は、5MPa以上に調整することが好ましい。
溶融樹脂と、パラジウム触媒分散体とを連続的に混合している間、混合物の圧力は、上述の第1の圧力の範囲内であれば変動してもよいが、その変動幅を±2MPaの範囲に制御することが好ましく、±1MPaの範囲に制御することがより好ましい。パラジウム触媒分散体は、可塑化シリンダ内において溶融樹脂と混練するとき、分散溶媒の種類に依存するが、超臨界状態ではない可能性が高い。超臨界流体が圧力の変化に伴う密度変化が小さいのに対し、超臨界に達していない流体は、圧力の変化に伴う密度変化が大きい。このため、わずかな圧力変化により急激に密度が低下して気化し、ナノ粒子が凝集する虞がある。本実施形態では、超臨界状態でないパラジウム触媒分散体を用いた場合においても、即ち、圧力変化に伴う密度変化が大きく、溶媒性能を維持しにくいパラジウム触媒分散体を用いた場合においても、混合物の圧力を高圧(第1の圧力)に保持することで、ナノ粒子の良好な分散状態を維持することができる。
混合物の圧力を第1の圧力に保持する方法は任意であるが、本実施形態では、可塑化シリンダ内にシール機構を設けることにより、混合物の圧力を第1の圧力に保持する。本実施形態で設けたシール機構は、所定圧力未満の混合物をシール機構の下流側に流通させない機構である。このシール機構により、シール機構の上流側の混合物の圧力を高め、所望の圧力(第1の圧力)に調整することができる。本実施形態で用いるシール機構は、図3に示すように、バネを介してスクリュの外周面に設けられるシールリングを含むシール機構である。図3に示すシール機構については、後述する実施例1において詳細を説明する。
溶融樹脂に混合するパラジウム触媒分散体の圧力は、第1の圧力より高い第2の圧力に調整することが好ましく、例えば、5〜40MPaとすることが好ましい。パラジウム触媒分散体の圧力を溶融樹脂より高くすることで、可塑化シリンダへのパラジウム触媒分散体の導入を容易にすることができる。
溶融樹脂と、パラジウム触媒分散体との混合工程において、溶融樹脂と、パラジウム触媒分散体との混合割合(混合比率)は、製造される成形体中のナノ粒子の含有量等を考慮して適宜決定できる。例えば、製造される成形体中のナノ粒子の含有量が、好ましくは5〜1000重量ppm、より好ましくは10〜500重量ppm、更により好ましくは100〜400重量ppmとなるように溶融樹脂と、ナノ粒子とを混合してもよい。
本実施形態は、更に、前記溶融樹脂と、ナノ粒子との混合物の圧力を第1の圧力より低い圧力に調整して、溶融樹脂からパラジウム触媒分散体の溶媒を分離することが好ましい。混合物を減圧することで、混合物に含有されるパラジウム触媒分散体の溶媒をガス化して分離することができる。混合物の減圧は、任意の方法により行うことができる。例えば、可塑化シリンダ内に設けられたスクリュに、直径が細く、フライトが深い部分を設けてもよい。また、可塑化スクリュに外部に通じるベントを設け、可塑化シリンダ内を大気開放してもよいし、可塑化シリンダ内を真空ポンプにより大気圧より低い圧力に減圧してもよい。
次に、ナノ粒子を含む溶融樹脂を所望の形状に成形する(図1、ステップS4)。本実施形態では、図2に示す可塑化スクリュ210の先端に設けられたダイ29から溶融樹脂を押し出し、紐状の成形体を得る。
以上、本実施形態における第1の成形体の製造方法について説明したが、本発明における第1の成形体の製造方法は説明した方法に限定されない。他の製造方法としては、例えば、ナノ粒子の原料となるパラジウム錯体等を加圧二酸化炭素に溶解し、パラジウム錯体を含有する加圧二酸化炭素を溶融した第1の熱可塑性樹脂に混合して溶融樹脂中においてナノ粒子を生成させ、生成したナノ粒子を含む溶融樹脂を成形することにより、第1の成形体を製造する方法が挙げられる。
(2)樹脂ペレットの製造
製造したナノ粒子を含む紐状の成形体(第1の成形体)を水槽等を通過させて冷却し、その後、ストランドカット装置等の汎用の裁断装置を用いて裁断して樹脂ペレットを製造する(図1、ステップS5)。第1の成形体の製造、冷却、裁断は、連続して行うことが樹脂ペレットの生産性の観点から好ましい。
樹脂ペレット中のナノ粒子の含有量は、メッキ反応性の観点から、5〜1000重量ppmが好ましく、10〜500重量ppmがより好ましく、100〜400重量ppmが更により好ましい。
(3)第2の成形体の製造
次に、製造した樹脂ペレットと共に、第2の熱可塑性樹脂を用いて、前記ナノ粒子を含有する第2の成形体を製造する(図1、ステップS6)。
本実施形態において、ナノ粒子を含有する樹脂ペレットはマスターバッチであり、第2の熱可塑性樹脂は、マスターバッチが配合されるベース樹脂に相当する。本明細書において、「マスターバッチ」とは、染料、顔料、その他の添加剤等の機能性材料を高濃度に含有した樹脂ペレットであり、機能性材料を含有しないベース樹脂に混合され、ベース樹脂と共に成形される。マスターバッチを用いると、機能性材料を直接ベース樹脂に添加して成形することと比較して、材料の取り扱い性が容易で秤量精度も向上する。また、マスターバッチを用いると、汎用の成形機を用いて、機能性材料を含有する成形体を製造できるという利点もある。本実施形態では、ナノ粒子が、マスターバッチ(樹脂ペレット)が含有する機能性材料に相当する。
第2の熱可塑性樹脂としては、第1の熱可塑性樹脂と同様に任意の樹脂を用いることができ、1種類の熱可塑性樹脂を用いてもよく、2種類以上の熱可塑性樹脂を混合して用いてもよい。また、第2の熱可塑性樹脂は、ガラス繊維、タルク、カーボン繊維等、各種無機フィラー等を含有してもよい。
また、樹脂ペレットが無電解メッ触媒として機能するナノ粒子を含んでいるため、第2の熱可塑性樹脂は同様のナノ粒子を含む必要はなく、コスト低減の観点から、ナノ粒子は含まないことが好ましい。更に、第2の成形体の耐熱性の観点からは、第2の熱可塑性樹脂は、親水セグメントを含むブロック共重合体を含まないことが好ましい。
更に、本実施形態では第2の熱可塑性樹脂として、ナノ粒子の触媒活性を失活させる虞のある揮発ガスを発生する樹脂、例えば、ABS樹脂を用いることができる。上述のように、本実施形態のナノ粒子は、2N〜5Nの塩酸、2N〜5Nの硫酸及び5N〜12Nの酢酸のうちの1つと接触することにより表面が溶解する特徴を有する。この特徴により、無電解メッキの前処理として、2N〜5Nの塩酸、2N〜5Nの硫酸及び5N〜12Nの酢酸のうちの1つを第2の成形体表面と接触させることで、成形体表面に存在するナノ粒子の無電解メッキ触媒活性を復活させることができるからである。
樹脂ペレット及び第2の熱可塑性樹脂は、射出成形機、押出成形機等の汎用の成形機を用いて所望の形状に成形して、ナノ粒子を含む第2の成形体を得ることができる。
樹脂ペレットと、第2の熱可塑性樹脂との混合割合(混合比率)は、樹脂ペレット中のナノ粒子の含有量等を考慮して適宜決定できる。例えば、樹脂ペレットと、第2の熱可塑性樹脂との重量比率、(樹脂ペレット):(第2の熱可塑性樹脂)は、1:99〜30:70とすることができる。
以上、本実施形態における第2の成形体の製造方法について説明したが、本発明における第2の成形体の製造方法は、説明した方法に限定されない。他の製造方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。まず、第1の熱可塑性樹脂を溶媒に溶解し、第1の熱可塑性樹脂溶液を調製する。第1の熱可塑性樹脂溶液をパラジウム触媒分散体と共に、溶融した第2の熱可塑性樹脂と混合し、成形して第2の成形体を製造する。本方法では、第1の熱可塑性樹脂とナノ粒子から形成される樹脂ペレットの製造工程を省くことができる。第1の熱可塑性樹脂を溶解する溶媒は、任意のものを用いることができるが、第1の熱可塑性樹脂が親水性セグメントを含むブロック共重合体である場合は、トルエン、ベンゼン、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、ギ酸等を用いることができる。本方法においては、第1の熱可塑性樹脂溶液と、パラジウム触媒分散体とを混合した場合に、ナノ粒子やブロック共重合体が析出、凝集を生じないように、第1の熱可塑性樹脂溶液の溶媒及びパラジウム触媒分散体の溶媒を選択することが好ましい。
(4)メッキ前処理
次に、第2の成形体に2N〜5Nの塩酸、2N〜5Nの硫酸及び5N〜12Nの酢酸のうちの1つの酸を接触させる(図1、ステップS7)。本実施形態において、成形体にこれらの酸を接触させる工程は、成形体にメッキ膜を形成するためのメッキ前処理に相当する。
第2の成形体中のナノ粒子は、成形時に樹脂から発生す揮発ガスにより無電解メッキ触媒活性を失活する場合がある。第2の成形体に2N〜5Nの塩酸、2N〜5Nの硫酸及び5N〜12Nの酢酸のうちの1つを接触させることで、ナノ粒子の表面部分が溶解し、新たな表面が露出する。これにより、成形体表面に存在するナノ粒子の無電解メッキ触媒活性を復活させることができる。2N未満の塩酸、2N未満の硫酸、5N未満の酢酸では、ナノ粒子の表面を十分に溶解することができず、一方、5Nを超える塩酸、5Nを超える硫酸、12Nを超える酢酸では、成形体の樹脂自体が劣化したり、ナノ粒子が完全に溶解して消失する虞がある。同様の観点から、塩酸の濃度は、2N〜4Nが好ましく、2.5N〜4Nがより好ましく、硫酸の濃度は、2N〜4Nが好ましく、2.5N〜4Nがより好ましく、酢酸の濃度は、5N〜9Nが好ましく、6N〜9Nがより好ましい。
更に、2N〜5Nの塩酸、2N〜5Nの硫酸及び5N〜12Nの酢酸は、第2の成形体表面を溶解(エッチング)し、更に、第2の成形体中に含有されるブロック共重合体を軟化、又は溶解する。「ブロック共重合体が軟化する」とは、酸がブロック共重合体と接触した時に、ブロック共重合体は酸に溶解はしないが膨潤し、ブロック共重合体の硬度が酸との接触前より低くなることを意味する。また、ブロック共重合体が酸に溶解する場合、主にブロック共重合体の親水性セグメントが酸に溶解すると推察される。ブロック共重合体を溶解するか、単に膨潤させるに留まるかは、酸の強さ、濃度、温度、成形体と酸の接触時間等による。また、ブロック共重合体の溶解と膨潤は、どちらか一方のみ生じる場合もあり、また、両方同時に生じる場合もあると推察される。そして、ブロック共重合体が、軟化、又は溶解することにより、メッキ反応性が向上してメッキ膜が形成し易くなるため、複雑形状の成形体のメッキ反応ムラを抑制することができる。更に、本実施形態の強を用いたメッキ前処理を行うと、成形体上に十分な密着強度を有するメッキ膜を形成できる。
成形体に酸を接触させている時間(メッキ前処理時間)は、成形体に含有される熱可塑性樹脂の種類や酸の種類に基づき任意に設定することができる。メッキ反応性を高める観点からは、メッキ前処理時間は、2N〜5Nの塩酸を用いた場合は、5〜150分が好ましく、5〜60分がより好ましく、2N〜5Nの硫酸を用いた場合には、5〜150分が好ましく、5〜60分がより好ましく、5N〜12Nの酢酸を用いた場合は、24〜80時間が好ましく、48〜70時間がより好ましい。また、酸によるメッキ前処理は、室温で行ってもよいし、ナノ粒子の溶解を促進するために、室温以上の温度で行ってもよい。例えば、酸の温度は、10〜95℃が好ましく、30〜50℃がより好ましい。
成形体に酸を接触させる方法は任意であり、目的に応じて種々の方法を用いることができる。例えば、酸に成形体全体を浸漬させてもよい。また、成形体の一部分のみメッキ処理する場合には、メッキ処理が予定される部分のみを酸と接触させてもよい。
尚、本実施形態における酸を用いたメッキの前処理は、従来の成形体表面を粗化するメッキ前処理とは異なる。従来のメッキ前処理としては、ABS樹脂、エラストマー、ミネラル等を樹脂に含有させ、これらを六価クロム酸等の環境負荷の高いエッチング液により成形体表面から除去する方法が知られている。したがって、従来のメッキ前処理では、成形体表面に比較的大きな凹凸が形成される。これに対して、本実施形態の酸によるメッキの前処理は、成形体表面をわずかにエッチングし、更に、成形体表面近傍のブロック共重合体を軟化させるか、又は、ブロック共重合体の親水性セグメントを溶解する。ブロック共重合体を溶解する場合であっても、ナノ粒子を成形体表面に露出させるにとどまり、成形体表面を粗化させることはない。
本実施形態のメッキ前処理は、成形体に酸を接触させるのみでもよいが、更に、成形体にアルコール処理液を接触させてもよい。アルコール処理液も、成形体に含有されるブロック共重合体を膨潤させることができ、無電解メッキのメッキ反応性を更に向上させることができる。アルコール処理液を用いたメッキ前処理は、酸を用いたメッキ前処理の前に行ってもよいし、後に行ってもよい。
アルコール処理液は、成形体に含有されるブロック共重合体を軟化させる性質を有するアルコールを含有する。アルコール処理液が含有するアルコールとしては、例えば、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコールが挙げられる。
本実施形態で用いるアルコール処理液は、アルコールの他に、使用するアルコールと相溶する他の溶媒、例えば水を含有してもよい。ただし、他の溶媒の含有量が多くなりすぎると、メッキ前処理において、上述したブロック共重合体の軟化が不十分になる。このため、アルコール処理液中のアルコールの含有量は、30体積%以上が好ましく、50体積%以上がより好ましい。特に、工業製品の場合に混入してくる不可避不純物を除き、実質的にアルコールのみからなるアルコール処理液が好ましい。尚、アルコール処理液は、成形体への浸透性を向上するために添加剤を含有してもよい。このような添加剤としては、例えば、界面活性剤が挙げられる。
成形体にアルコール処理液を接触させる方法は任意であり、目的に応じて種々の方法を用いることができる。例えば、アルコール処理液中に成形体全体を浸漬させてもよい。また、成形体の一部分のみメッキ処理する場合には、メッキ処理が予定される部分のみをアルコール処理液と接触させてもよい。
成形体にアルコール処理液を接触させている時間は、成形体に含有される熱可塑性樹脂の種類やアルコールの種類に基づき任意に設定することができる。成形体にアルコール処理液を接触させている時間が短すぎると、アルコールが成形体に十分に浸透しないため、アルコール処理液によりブロック共重合体が十分に軟化しない。一方、成形体にアルコール処理液を接触させている時間が長すぎると、製造効率が低下し、更に、アルコールにより成形体の樹脂構造が脆弱化する虞がある。このような観点から、成形体にアルコール処理液を接触させている時間は、例えば、1分〜30分が好ましい。
また、アルコール処理液によるメッキ前処理は、室温で行ってもよいし、ブロック共重合体の軟化及びアルコール処理液の成形体への含浸を促進するために、室温以上の温度で行ってもよい。特に、成形体に含有される熱可塑性樹脂のガラス転位温度以上の温度でメッキ前処理を行うことが好ましい。ガラス転位温度以上であれば、成形体が塑性変形して、アルコール処理液が成形体に浸透し易くなるからである。
(5)無電解メッキ
次に、酸に接触させた前記成形体に、無電解メッキ液を接触させてメッキ膜を形成する(図1、ステップS8)。無電解メッキ液としては、目的に応じて任意の汎用の無電解メッキ液を使用しできるが、触媒活性が高く液が安定であるという点から、無電解ニッケルリンメッキ液が好ましい。本実施形態で用意した成形体は、メッキ触媒として働くナノ粒子を含有しているので、無電解メッキを行うに際してメッキ触媒付与処理を行う必要がない。
メッキ前処理を施した成形体上には、異なる種類の無電解メッキ膜を複数層形成してもよいし、更に、無電解メッキ膜の上に、電解メッキにより電解メッキ膜を形成してもよい。また、無電解メッキ膜が形成された成形体は、無電解メッキ後にアニール処理を施してもよいし、室温で放置して自然乾燥してもよい。また、アニール処理や自然乾燥を行わず、連続して電解メッキ膜を形成する等の次の工程を行ってもよい。
成形体の製造過程又は製造後において、ブロック共重合体の親水性セグメントは成形体表面にブリードアウトしようと移動する。よって、ブロック共重合体は、成形体の表面近傍に偏在し、ブロック共重合体の親水性セグメントにより、成形体は表面近傍のみが親水化される。
本実施形態では、成形体に無電解メッキ液を接触させると、メッキ液は成形体の表面から内部に浸透してナノ粒子と接触し、樹脂成形体の内部から樹脂成形体を押し広げながらメッキ膜が成長する。このとき、本実施形態の成形体はブロック共重合体により表面近傍が親水化されているため、メッキ液の浸透とメッキ膜の成長が促されると考えられる。本実施形態の成形体は、メッキ膜の被覆性が良好で、短時間でメッキ膜が形成される。メッキ膜形成時間が短くなることで、ピンホール等のメッキ膜の欠陥も生じにくくなる。
一方、ブロック共重合体は、成形体の表面近傍に偏析するため、ブロック共重合体により親水化されるのは成形体の表面近傍のみである。ブロック共重合体は成形体の親水性を部分的に向上させるが、成形体全体の吸水性(マクロ的吸水性)へ与える影響は小さい。よって、メッキ液中での成形体の脆性破壊を抑制でき、成形体の機械的特性を低下させない。この結果、メッキ膜形成後も成形体は十分な耐熱衝撃性能を有する。
更に、本実施形態において、ブロック共重合体が成形体の表面近傍へ移動するのに伴って、ナノ粒子も表面近傍へ移動し表面近傍に偏在化し易くなると推察される。この現象の理由は定かではないが、ナノ粒子が表面近傍に偏在化することで、メッキ膜を樹脂表面に形成し易くなり、メッキ膜の密着力低下が抑制され、メッキ反応ムラやピンホール等の外観不良が低減される。
尚、本明細書において、「成形体の表面近傍」とは、成形体の内部であって、且つ、表面に近い領域を意味し、成形体をメッキ液に接触させたときに表面からメッキ液が浸透してメッキ反応が起きる領域を意味する。「成形体の表面近傍」が、成形体の表面から、どの程度の深さまでの領域を意味するかは、成形体に用いられる樹脂の種類によっても異なるが、例えば、成形体の表面から、0.1〜10μmまでの深さの領域である。
尚、本実施形態では、ブロック共重合体を用いることによって、成形体の表面近傍のみを親水化し、上述の効果を奏することができる。例えば、同じ構成成分からなるランダム共重合体や、親水性セグメントのみから構成される重合体等では、成形体の表面近傍のみを親水化することは難しく、本発明と同等の効果は得られない。また、低分子の界面活性剤も成形体表面に偏析する性質を有しているが、本実施形態のブロック共重合体と同等の効果を奏することはできない。ブロック共重合体は、通常の低分子の界面活性剤とは異なり、ポリマーである。ブロック共重合体は、大きな分子量有するため、混合されるナノ粒子を伴って成形体の表面近傍に移動できると考えられる。また、ポリマーであるので、成形体の表面に高濃度に偏在しても、成形体の耐熱性や機械的強度を低下させない。更に、上述したように、可塑化溶融した状態で十分な粘度を有するので、ブロック共重合体単独であっても押出成形が可能であり、ペレット化することができる。
以下、本発明について実施例及び比較例を用いて更に説明する。但し、本発明は、以下に説明する実施例及び比較例に限定されるものではない。
[実施例1]
本実施例では、まず、2N〜5Nの塩酸、2N〜5Nの硫酸及び5N〜12Nの酢酸のうちの1つと接触することにより表面が溶解するパラジウム含有ナノ粒子を製造した。次に、図2に示す製造装置1000を用いて、製造したナノ粒子と第1の熱可塑性樹脂とから、ナノ粒子を含む第1の成形体を製造し、更に、第1の成形体を裁断して樹脂ペレットを製造した。
本実施例では、ナノ粒子の製造において、親水性ポリマーとしてポリビニルピロリドン(東京化成工業社製、PVP K-30)(以下、適宜「PVP」と記載する)、還元剤としてL(+)−アスコルビン酸(和光純薬工業社製)、ハロゲン化塩として臭化カリウム及び塩化カリウム(共に、和光純薬工業社製)、溶媒として水を用いて第1溶液を調製し、水溶性パラジウム塩として塩化パラジウム(II)ナトリウム(和光純薬工業製)、溶媒として水を用いて第2溶液を調製した。また、第1の成形体の製造において、第1の熱可塑性樹脂として、親水性セグメントを含むブロック共重合体(三洋化成製、ペレスタットPL1251)を用いた。ペレスタットPL1251は、12ナイロンとポリエチレングリコールとのブロック共重合体である。
(1)ナノ粒子の製造
PVP2.49g、L(+)−アスコルビン酸1.42g、臭化カリウム0.12g、塩化カリウム4.38gを水190mLに溶解させ、第1溶液を調製し、80℃に加熱して10分間撹拌した。第1溶液とは別に、塩化パラジウム(II)ナトリウム1.35gを水70mLに溶解させ、第2溶液を調製した。
第1溶液を撹拌しつつ、第1溶液に第2溶液を滴下して混合し、混合溶液を調製した。更に、混合溶液を80℃で3時間撹拌した後、撹拌を停止し、室温まで冷却した。
次に、混合溶液中のL(+)−アスコルビン酸、臭化カリウム、塩化カリウムを除去するため、クロスフロー式濾過を実施した。クロスフロー式濾過膜として、ザルトリウス・ジャパン社製、ビバフロー50(分子量カットオフMWCO:30,000)を用いた。濾過中、濾過残液が20mL程度になった段階で、一旦、濾過を停止し、残液に水を追加して100mL程度とし、濾過を再開した。そして、濾過残液量が再び20mL程度になった段階で濾過を終了した。
クロスフロー式濾過後の混合溶液に、水を追加して全量を370mLとし、更にグラスファイバー濾紙を用いて桐山ロートによる濾過を行い、ナノ粒子が分散する濾液を得た。得られたナノ粒子が分散する濾液を以下、「パラジウム触媒分散体」と記載する。本実施例で得られたパラジウム触媒分散体中のナノ粒子の濃度(含有量)は、1.25g/L(約1250重量ppm)であった。
<ナノ粒子の評価>
パラジウム触媒分散体中のナノ粒子(パラジウム粒子)を透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察した。図4に示すように、得られたナノ粒子は、平均粒径約8nmの四角形の粒子であった。TEM観察の結果から、得られたナノ粒子の形状は、略直方体の粒子であると推測される。
次に、40℃、4N塩酸2mLに、パラジウム触媒分散体をスポイドで滴下し、5分間放置した。放置後、ナノ粒子を遠心分離で沈降させて塩酸から分離し、TEMを用いてナノ粒子を観察した。図5(b)に、塩酸から分離したナノ粒子のTEM写真を示す。比較のため、図5(a)に塩酸と接触させる前のナノ粒子のTEM写真を示す。図5(b)に示す塩酸と接触後のナノ粒子は、図5(a)に示す塩酸と接触前のナノ粒子と比較して、略直方体のナノ粒子の角が丸みを帯びて、粒子径が小さくなっていた。これから、4Nの塩酸と接触することによりナノ粒子の表面が溶解することが確認できた。更に、4Nの塩酸に代えて、4Nの硫酸及び8Nの酢酸を用いて同様の実験を行ったところ、4Nの塩酸を用いた場合と同様に、ナノ粒子の表面が溶解するという同様の結果を得た。
(2)第1の成形体の製造
次に、図2に示す製造装置1000を用いて、製造したナノ粒子と第1の熱可塑性樹脂とから、ナノ粒子を含む第1の成形体を製造した。本実施例では、ナノ粒子をパラジウム触媒分散体から分離せず、パラジウム触媒分散体に分散した状態で用いた。
<第1の成形体の製造装置>
まず、本実施例で第1の成形体の製造に用いた製造装置1000について説明する。図2に示すように、製造装置1000は、可塑化シリンダ210を有する押出成形機200と、パラジウム触媒分散体を可塑化シリンダ210に供給するパラジウム触媒分散体供給機構100と、金属塩を含有する加圧二酸化炭素を可塑化シリンダ210に供給する加圧二酸化炭素供給機構300と、制御装置(不図示)を備える。制御装置は、押出成形機200と、パラジウム触媒分散体供給機構100と、加圧二酸化炭素供給機構300の動作を制御する。尚、本実施例では、パラジウム触媒分散体供給機構100を使用し、加圧二酸化炭素供給機構300は使用しなかった。加圧二酸化炭素供給機構300は、後述する実施例4において使用する。
(a)押出成形機
図2に示す押出成形機200は、可塑化シリンダ210と、可塑化シリンダ210の先端に設けられるダイ29と、可塑化シリンダ210内に回転自在に配設されたスクリュ20と、スクリュ20を駆動させるスクリュ駆動機構27と、可塑化シリンダ210内に配置される上流側シール機構S1及び下流側シール機構S2と、可塑化シリンダ210に接続する真空ポンプPを備える。本実施例では、可塑化シリンダ210内において、可塑化溶融された溶融樹脂は、図2における右手から左手に向かって流動する。したがって、本実施例の可塑化シリンダ210の内部においては、図2における右手を「上流」又は「後方」、左手を「下流」又は「前方」と定義する。尚、本実施例の押出成形機200は、従来公知の押出成形機の構成と同様に、可塑化シリンダ210の後方側から見た場合に、スクリュ20を反時計回りに回転させると溶融樹脂を前方(ノズル部側)に送る正回転をし、時計回りに回転させると逆回転するように構成されている。
可塑化シリンダ210の上部側面には、上流側から順に、熱可塑性樹脂を可塑化シリンダ210に供給するための樹脂供給口201、パラジウム触媒分散体を可塑化シリンダ210内に導入するための導入口202、及び必要に応じて可塑化シリンダ210内からガス化したパラジウム触媒分散体の溶媒を排気するためのベント203が形成されている。これらの樹脂供給口201、及び導入口202にはそれぞれ、樹脂供給用ホッパ211、及び導入バルブ212が配設されており、ベント203には、真空ポンプPが接続されている。また導入バルブ212は、押出成形機200の外に設けられるパラジウム触媒分散体供給機構100及び加圧二酸化炭素供給機構300と接続される。
可塑化シリンダ210の外壁面には、バンドヒータ220が配設されており、これにより可塑化シリンダ210が加熱されて、熱可塑性樹脂が可塑化される。さらに、可塑化シリンダ210の下部側面の導入口202と対向する位置及びベント203に対向する位置にはそれぞれ、圧力及び温度をモニターするセンサ(不図示)が設けられている。
このような構造の押出成形機200では、樹脂供給口201から可塑化シリンダ210内に熱可塑性樹脂が供給され、熱可塑性樹脂がバンドヒータ220によって可塑化されて溶融樹脂となり、スクリュ20が正回転することにより下流に送られる。そして、導入口202近傍まで送られた溶融樹脂は、導入されたパラジウム触媒分散体と高圧下、接触混練される。次いで、パラジウム触媒分散体と接触混練された溶融樹脂の樹脂内圧を低下させることにより、ガス化したパラジウム触媒分散体の溶媒が溶融樹脂から分離し、ベント203から排気される。そして、さらに前方に送られた溶融樹脂は、ダイ29から押し出される。これにより、可塑化シリンダ210内では、上流側から順に、熱可塑性樹脂を可塑化して溶融樹脂とする可塑化ゾーン21、溶融樹脂と導入口202から導入されるパラジウム触媒分散体とを高圧下、接触混練する高圧混練ゾーン22、及びパラジウム触媒分散体と接触混練した溶融樹脂の樹脂内圧を低下させることにより、溶融樹脂から分離されたパラジウム触媒分散体の溶媒をベント203から排気する減圧ゾーン23が形成される。更に、減圧ゾーン23の下流には、再可塑化ゾーン24が設けられる。尚、溶融樹脂とパラジウム触媒分散体との接触混練を効率的に行うため、可塑化シリンダ210に導入口202及びベント203をそれぞれ複数設け、可塑化シリンダ210内に高圧混練ゾーン22及び減圧ゾーン23をそれぞれ複数形成してもよい。
可塑化ゾーン21、高圧混練ゾーン22、及び減圧ゾーン23の間にはそれぞれ、上流側シール機構S1及び下流側シール機構S2が配設されている。上流側シール機構S1は、樹脂の上流側への逆流を抑制することができれば任意のシール機構を用いることができ、本実施例では、従来の発泡成形等に用いるシールリングを採用した。下流側シール機構S2は、下流側シール機構S2の上流側の高圧混練ゾーン22において、溶融樹脂の圧力を3MPa〜40MPaの第1の圧力に調整した状態で、下流側シール機構S2の下流側の減圧ゾーン23へ溶融樹脂を流動させることができるシール機構を用いる。本実施例では、下流側シール機構S2として、図3に示すバネを介してスクリュ20の外周面に設けられるシールリング60を含むシール機構を用いた。下流側シール機構S2の詳細な構造及び機能については後述する。
(b)パラジウム触媒分散体供給機構と加圧二酸化炭素供給機構
次に、図2に示すパラジウム触媒分散体供給機構100、加圧二酸化炭素供給機構300について説明する。パラジウム触媒分散体供給機構100、加圧二酸化炭素供給機構300は、背圧弁250を介して押出成形機200の導入バルブ212に接続しており、それぞれ、パラジウム触媒分散体、金属塩を含有する加圧二酸化炭素を成形機200に供給する。パラジウム触媒分散体供給機構100は、パラジウム触媒分散体を収容するパラジウム触媒分散体収容容器10と、パラジウム触媒分散体収容容器10からパラジウム触媒分散体を吸引後、所定の圧力に昇圧し、更に流量一定で液送可能な2つのシリンジポンプ11、12と、配管に配置される2つの吸引用エアー自動バルブ13、14と、2つの液送用エアー自動バルブ15、16とから構成される。
加圧二酸化炭素供給機構300は、二酸化炭素ボンベ37と、コリオリ流量計38及び金属塩溶解槽39を介して二酸化炭素ボンベ37に接続するストレージタンク30と、ストレージタンク30内の液体二酸化炭素の量をモニターする差圧式液面計40と、バルブ41を介してストレージタンク30に接続する2つのシリンジポンプ31、32と、配管に配置される2つの吸引用エアー自動バルブ33、34と、2つの液送用エアー自動バルブ35、36から構成される。金属塩が溶解した加圧二酸化炭素は、ストレージタンク30内に貯蔵され、2つのシリンジポンプ31、32によって、ストレージタンク30から吸引後、所定の圧力に昇圧し、更に流量一定で押出成形機200へ液送される。
加圧二酸化炭素供給機構300において、二酸化炭素ボンベ37は図示しないヒーターを備え、ヒーターにより加温することでボンベ内の二酸化炭素を加圧して、二酸化炭素をストレージタンク30へ供給する。ストレージタンク30への二酸化炭素の供給量は、コリオリ流量計38によりモニターされ、所定量の二酸化炭素がストレージタンク30へ供給されると、図示しない自動弁が閉鎖して二酸化炭素のストレージタンク30への供給を停止する。
ストレージタンク30は、図示しない温度制御機構として、加熱用のヒーターと、チラーに接続する熱交換機を備えており、ストレージタンク30内を所定の温度に保持することで、ストレージタンク30内の二酸化炭素を気液平衡状態に保ち、更に、液体二酸化炭素の密度を一定に保つ。ストレージタンク30において、二酸化炭素の液相をストレージタンク30の下部に設けたヒーターにより加温し、気相をストレージタンク30の上部に設けた熱交換機により冷却する。液体二酸化炭素の液量は差圧式液面計40によりモニターする。
加圧二酸化炭素供給機構300においては、金属塩溶解槽39内に金属塩を導入して、二酸化炭素ボンベ37から、金属塩溶解槽39を経由して二酸化炭素をストレージタンク30へ供給する。金属塩溶解槽39において金属塩は二酸化炭素に溶解し、そのままストレージタンク30へ流入する。これにより、ストレージタンク30内に、金属塩が溶解した加圧二酸化炭素が貯蔵される。本実施例で用いたストレージタンク30の容積は、50Lであった。
パラジウム触媒分散体供給機構100、加圧二酸化炭素供給機構300は、流量制御及び圧力制御が可能なシリンジポンプ11、12、31、32を有するので、流量及び圧力を所定量に制御したパラジウム触媒分散体及び加圧二酸化炭素を押出成形機200へ送ることができる。シリンジポンプ11、12、31、32は、吸引用エアー自動バルブ13、14、33、34を開放してパラジウム触媒分散体、加圧二酸化炭素をシリンジポンプ内に吸引した後、前記バルブを閉鎖して加圧して所定圧力に保つ。液送する際は、液送用エアー自動バルブ15、16、35、36を開放し、シリンジポンプのシリンジを一定速度で押し込むことで流量一定で液送することができる。押出成形機200の可塑化シリンダ210へ導入されるパラジウム触媒分散体及び加圧二酸化炭素の圧力(第2の圧力)は、背圧弁250の設定圧力により調整される。
パラジウム触媒分散体供給機構100、加圧二酸化炭素供給機構300それぞれにおいて、一方のポンプ(例えば、シリンジポンプ11、31)が液送している際に、他方のポンプ(シリンジポンプ12、32)が溶液を吸引加圧して待機する。液送している一方のポンプ(シリンジポンプ11、31)内の加圧した溶液が空になったタイミングで、ポンプを切り替え、今度は、他方のポンプ(シリンジポンプ12、32)により液送を開始する。これにより連続で圧力と流量を一定にして、パラジウム触媒分散体供給機構100、加圧二酸化炭素供給機構300から押出成形機200へパラジウム触媒分散体及び加圧二酸化炭素を液送する(供給する)ことが可能となり、押出成形機200はナノ粒子を含有する第1の成形体を連続成形することができる。
(c)下流側シール機構
押出成形機200に備えられる下流側シール機構S2について説明する。本実施例では、下流側シール機構S2として、以下に説明するバネを介してスクリュ20の外周面に設けられるシールリング60を含むシール機構を用いた。
本実施例のスクリュ20は、図2に示すように、高圧混練ゾーン22と減圧ゾーン23との境界領域において、この境界領域と隣接する領域に比べて縮径された縮径部50を有している(図3参照)。そして、縮径部50には、縮径部50の範囲で軸方向(前後方向)に移動可能となるように遊嵌状態で下流側シールリング60が外嵌している。これら縮径部50と下流側シールリング60とで、下流側シール機構S2が構成されている。
スクリュ20において、縮径部50の下流側には、減圧ゾーン23に位置する下流スクリュ部51が隣接して設けられており、下流クリュ部51は縮径部50より直径が大きいため、縮径部50と連続する端面51aを有する。端面51aには、4か所の孔51bが形成され、それぞれの孔51bの中にはバネピストン61が配置されている。バネピストン61は、孔51bの中に配置される複数の皿バネ63と、孔51bの中で皿バネ63と接触し、且つ一部が孔51bから突出するように配置されるリング64と、皿バネ63とリング64を貫通する軸62から形成される。図3(a)に示すように、バネピストン61のリング64は、下流側シールリング60と接触しており、下流側シールリング60を上流方向(図3(a)において矢印で示す方向)に付勢している。その結果、シールリング60の内壁60aと、縮径部50の外周面50aが当接し、高圧混練ゾーン22と減圧ゾーン23との連通が遮断される。
次に、下流側シール機構S2の動作について説明する。スクリュ20が正回転することで、溶融樹脂は上流から下流へ流動する。その結果、高圧混練ゾーン22に滞留する溶融樹脂は、下流側シールリング60を下流方向へ押す。しかし、図3(a)に示すように、バネピストン61により下流側シールリング60は上流方向に付勢され、高圧混練ゾーン22と減圧ゾーン23との連通が遮断されるため、溶融樹脂は高圧混練ゾーン22から減圧ゾーン23へ流動できない。
更に、スクリュ20が正回転すると、高圧混練ゾーン22と減圧ゾーン23との連通が遮断された状態のまま、溶融樹脂が可塑化ゾーン21から高圧混練ゾーン22へ流動し続け、高圧混練ゾーン22の圧力が上昇する。高圧混練ゾーン22の圧力が所定の圧力以上になると、下流側シールリング60は溶融樹脂に下流方向へ押され移動し始める。これにより、図3(b)に示すように、下流側シールリング60の内壁60aと、縮径部50の外周面50aが離間し、隙間Gが開口し、隙間Gを通って溶融樹脂が高圧混練ゾーン22から減圧ゾーン23へ移動可能となる。
下流側シール機構S2は、下流側シール機構S2の上流の高圧混練ゾーン22の溶融樹脂(本実施例においては、溶融樹脂と、パラジウム触媒分散体との混合物)の圧力を高め、圧力変動の少ない高圧力(第1の圧力)に維持することができる。以下に、下流側シール機構S2を用いた溶融樹脂の圧力の調整方法を説明する。まず、下流側シール機構S2により、高圧混練ゾーン22と減圧ゾーン23との連通を遮断した状態で、スクリュ20を正回転する。上流側シール機構S1により、高圧混練ゾーン22から可塑化ゾーン21への逆流は抑制されるため、可塑化ゾーン21から高圧混練ゾーン22へ溶融樹脂は流動し続け、高圧混練ゾーン22の圧力が上昇する。スクリュを正回転することにより、高圧混練ゾーン22における溶融樹脂の圧力が更に上昇して所定の圧力以上になると、下流側シール機構S2により、高圧混練ゾーン22と減圧ゾーン23とが連通し、溶融樹脂は下流の減圧ゾーン23へ流動する。溶融樹脂が下流の減圧ゾーン23へ流動すると、高圧混練ゾーン22の圧力は低下し始め、そして、高圧混練ゾーン22の圧力が所定の圧力以下になると、再び下流側シール機構S2により、高圧混練ゾーン22と減圧ゾーン23との連通が遮断される。スクリュは正回転するため、再び高圧混練ゾーン22の圧力は上昇し、そして、所定の圧力以上になると、下流側シール機構S2により、高圧混練ゾーン22と減圧ゾーン23とが再び連通し、溶融樹脂は下流の減圧ゾーン23へ流動する。このように、高圧混練ゾーン22の圧力に応じて、下流側シール機構S2が高圧混練ゾーン22と減圧ゾーン23との連通と遮断を繰り返す。この結果、高圧混練ゾーン22における溶融樹脂の圧力を圧力変動の少ない高圧力(第1の圧力)に維持することができる。
<第1の成形体の製造>
以上説明した図2に示す製造装置1000を用いて、第1の成形体を製造した。本実施例では、パラジウム触媒分散体供給機構100を使用し、加圧二酸化炭素供給機構300は使用しなかった。
まず、パラジウム触媒分散体供給機構100のパラジウム触媒分散体収容容器10に先に調整したパラジウム触媒分散体Aを収容した。そして、パラジウム触媒分散体Aをシリンジポンプ11により吸引後、昇圧した。
パラジウム触媒分散体Aを昇圧後、シリンジポンプ11を流量制御に切り替え、パラジウム触媒分散体Aを可塑化シリンダ210へ送液した。パラジウム触媒分散体Aの可塑化シリンダ210への導入圧力は、背圧弁250により、15MPa(第2の圧力)に調整した。これにより、可塑化シリンダ210内に流体を導入する導入バルブ212までの系内をパラジウム触媒分散体Aにより加圧した。
次に、押出成形機200において、バンドヒータ220により、可塑化ゾーン21を190℃、高圧混練ゾーン22を120℃、減圧ゾーン23を170℃、再可塑化ゾーン24を170℃に調整した。そして、押出成形機200において、図示しないフィーダースクリュにより投入量を制御しながら、樹脂供給用ホッパ211から第1の熱可塑性樹脂を供給し、スクリュ20を正回転させた。これにより、該熱可塑性樹脂を加熱、混練し、溶融樹脂とした。スクリュ20を正回転することにより、溶融樹脂を可塑化ゾーン21から高圧混練ゾーン22に流動させた。上流側に上流側シール機構S1、下流側に下流側シール機構S2が設けられている高圧混練ゾーン22において、パラジウム触媒分散体が導入される前の溶融樹脂の圧力を14±1MPaに調整した。
次に、導入バルブ212を開放して、シリンジポンプ11により、パラジウム触媒分散体を高圧混練ゾーン22に一定流量で導入した。パラジウム触媒分散体の流量は、6.4mL/分とした。パラジウム触媒分散体供給機構100では、シリンジポンプ11と、シリンジポンプ12とを用いて交互に送液を行うことで、可塑化シリンダ210へパラジウム触媒分散体を連続供給した。
スクリュ20を正回転することにより、高圧混練ゾーン22において、溶融樹脂にパラジウム触媒分散体を混合し、混合物とした。本導入バルブ212直下に設けた圧力センサ(不図示)のモニターした可塑化シリンダ210の内部の圧力は、流体の導入後は、図6に示すように、9.0±1.5MPaと安定であった。即ち、本実施例では、高圧混練ゾーン22において、溶融樹脂と、パラジウム触媒分散体とを連続的に混合し、連続的な混合の間、溶融樹脂と、パラジウム触媒分散体との混合物の圧力を9.0±1.5MPaの第1の圧力に調整した。
更に、スクリュ20を正回転することにより、高圧混練ゾーン22を9.0±1.5MPa(第1の圧力)に保持した状態で、溶融樹脂を減圧ゾーン23へ流動させた。減圧ゾーン23は大気圧に設定し、減圧ゾーン23へ流動した溶融樹脂からパラジウム触媒分散体の溶媒をガス化させて分離した。ガス化したパラジウム触媒分散体の溶媒は、真空ポンプPにより吸引されてベント203から可塑化シリンダ210の外部へ排出され、真空ポンプPに接続する図示しない回収容器に回収された。
スクリュ20を回転することにより、パラジウム触媒分散体の溶媒を分離した溶融樹脂を更に下流の再可塑化ゾーン24へ流動させ、その後、可塑化シリンダ210の先端に設けられたダイ29から紐状に押し出し、ナノ粒子を含有した第1の成形体を得た。
尚、本実施例においては、可塑化スクリュ20の回転数は、100rpmとし、ダイ29からの溶融樹脂の吐出量は、2.5kg/hrとした。ナノ粒子濃度(含有量)が1.25g/L(約1250重量ppm)であるパラジウム触媒分散体を6.4mL/分で溶融樹脂に供給したことから、溶融樹脂中のナノ粒子の含有量は約200重量ppmであった。
(3)樹脂ペレットの製造
得られた紐状の押出成形物(第1の成形体)を図示しない水槽を通過させ、その後、図示しないストランドカット装置にて連続的に切断して樹脂ペレットを製造した。以下、適宜、本実施例で製造した樹脂ペレットを「ペレット1」と記載する。
ペレット1を目視により観察した。ペレット1は、黒色化していた。これは、ペレット1に分散するパラジウムのナノ粒子による色と推測される。また、目視では、ペレット1中に凝集物は見られなかった。
次に、ペレット1の断面をTEMにより観察した。ペレット1に含まれるナノ粒子の粒子径(2次粒子径)は、約9〜50nmであった。
[実施例2]
本実施例では、ナノ粒子の製造において、クロスフロー式濾過を行わなかった。それ以外は、実施例1と同様の試薬を用いて、同様の製造方法により、樹脂ペレットを製造した。以下、適宜、本実施例で製造した樹脂ペレットを「ペレット2」と記載する。
ペレット2を目視により観察した。ペレット2は、茶色化しており、白色の部分も存在した。また、目視では、ペレット2中に凝集物は見られなかった。次に、ペレット2の断面をTEMにより観察した。ペレット2に含まれるナノ粒子の粒子径(2次粒子径)は、約9〜50nmであった。また、ナノ粒子と共に、臭化カリウムや塩化カリウムと考えられる無機物の粒子も存在していることが確認された。
[実施例3]
本実施例では、第1の成形体の製造において、パラジウム触媒分散体を可塑化シリンダ210へ供給するときの流量を3.2mL/分とした以外は、実施例1と同様の試薬を用いて、同様の製造方法により、樹脂ペレットを製造した。以下、適宜、本実施例で製造した樹脂ペレットを「ペレット3」と記載する。本実施例では、パラジウム触媒分散体の流量を実施例1の半分としたため、溶融樹脂中のナノ粒子の含有量も実施例1の半分の約100重量ppmであった。
ペレット3を目視により観察した。ペレット3は、実施例1と同様に、黒色化していた。これは、ペレット3に分散するパラジウムのナノ粒子による色と推測される。また、目視では、ペレット3中に凝集物は見られなかった。
次に、ペレット3の断面をTEMにより観察した。ペレット3に含まれるナノ粒子の粒子径(2次粒子径)は、約9〜50nmであった。
[実施例4]
本実施例では、図2に示す製造装置1000を用いて、金属塩を含有する加圧二酸化炭素と、第1の熱可塑性樹脂とからナノ粒子を含む第1の成形体を製造した。更に、第1の成形体を裁断して樹脂ペレットを製造した。
第1の熱可塑性樹脂として、実施例1と同様の親水性セグメントを含むブロック共重合体(三洋化成製、ペレスタットPL1251)を用い、金属塩として、ヘキサフルオロアセチルアセトナトパラジウム(II)錯体(シグマ アルドリッチ ジャパン製)を用いた。
(1)第1の成形体の製造
図2に示す製造装置1000を用いて、第1の成形体を製造した。本実施例では、加圧二酸化炭素供給機構300を使用し、パラジウム触媒分散体供給機構100は使用しなかった。
加圧二酸化炭素供給機構300において、金属塩を含有する加圧二酸化炭素を調製した。まず、図示しないヒーターにより、二酸化炭素ボンベ37を35℃に加温し、二酸化炭素の圧力を9MPaに加圧して、ストレージタンク30へ10kgの二酸化炭素を供給した。
図示しない温度制御機構により、ストレージタンク30内の二酸化炭素を20℃、5.0MPaの気液混合状態に制御した。具体的には、20℃に調整した図示しないヒーターにより、二酸化炭素の液相を加温し、10℃のチラーに接続する図示しない熱交換機により、二酸化炭素の気相を冷却した。二酸化炭素の圧力が5.0MPaから0.1MPa上昇した場合は、図示しない熱交換機において、自動電磁弁が開きチラーの冷却水を熱交換器に流して気相を冷却して二酸化炭素の圧力を下げた。反対に、二酸化炭素の圧力が5.0MPaから0.1MPa低下した場合には、冷却水の熱交換機への流入を停止した。これにより、ストレージタンク30内の二酸化炭素の圧力を5.0±0.1MPaに制御した。空のストレージタンク30に10kgの二酸化炭素を供給した本実施例では、気化する二酸化炭素量が多いため、ストレージタンク30の液体二酸化炭素は5kgであった。
次に、加圧二酸化炭素供給機構300の金属塩溶解槽39内に、パラジウム錯体(金属塩)100gを設置した。そして、二酸化炭素ボンベ37から、ストレージタンク30へ、パラジウム錯体が配置された金属塩溶解槽39を介して、二酸化炭素5kgを再供給した。これにより、金属塩溶解槽39内に配置されたパラジウム錯体は二酸化炭素に溶解し、二酸化炭素と共にストレージタンク30内へ供給され、ストレージタンク30中に、パラジウム錯体(金属塩)と液体二酸化炭素からなる溶液Bが調製された。ストレージタンク30内の二酸化炭素は、20℃、5MPaの気液混合状態に制御され、二酸化炭素の全量15kg中、液体二酸化炭素は、10kgであった。したがって、ストレージタンク30中の溶液Bにおいて、液体二酸化炭素に対するパラジウム錯体の濃度(含有量)は、1重量%であった。
次に、加圧二酸化炭素供給機構300において、液体二酸化炭素の気化を抑制するため、まず、シリンジポンプ31、32を10℃に冷却した。次に、バルブ41を開いて、溶液Bをシリンジポンプ31により吸引後、昇圧した。これにより、液体二酸化炭素の密度及びパラジウム錯体の溶解濃度が約20%上昇し、溶液Bにおいて、液体二酸化炭素に対するパラジウム錯体の濃度(含有量)は、約1.2重量%となった。
溶液Bを昇圧後、シリンジポンプ31を流量制御に切り替え、溶液Bを可塑化シリンダ210へ送液した。溶液Bの可塑化シリンダ210への導入圧力は、背圧弁250により、15MPa(第2の圧力)に調整した。これにより、可塑化シリンダ210内に流体を導入する導入バルブ212までの系内を溶液Bにより加圧した。
押出成形機200において、実施例1と同様の方法で第1の熱可塑性樹脂を溶融樹脂とした。そして、パラジウム触媒分散体Aに代えて、金属塩の溶解した液体二酸化炭素(溶液B)を流量6.7mL/分で塑化シリンダ210へ供給した以外は、実施例1と同様の方法で、ナノ粒子を含有した紐状の第1の成形体を成形した。尚、ストレージタンク30では、溶液Bの液量が減るに伴って、二酸化炭素の気液平衡状態を保つために、液体二酸化炭素の一部がガス化して、パラジウム錯体濃度が高くなる。このため、溶液Bの消費に合わせて、ストレージタンク30へ、二酸化炭素ボンベ37から二酸化炭素を定期的に自動補給し、溶液B中のパラジウム錯体の濃度を安定化させた。
本実施例においては、可塑化スクリュ20の回転数は、100rpmとし、ダイ29からの溶融樹脂の吐出量は、2.5kg/hrとした。ナノ粒子濃度(含有量)が約1.2重量%(約1200重量ppm)である溶液Bを流量6.7mL/分で溶融樹脂に供給したことから、溶融樹脂中のナノ粒子の含有量は約200重量ppmであった。
(2)樹脂ペレットの製造
得られた紐状の押出成形物(第1の成形体)を図示しない水槽を通過させ、その後、図示しないストランドカット装置にて連続的に切断して樹脂ペレットを製造した。以下、適宜、本実施例で製造した樹脂ペレットを「ペレット4」と記載する。
ペレット4を目視により観察した。ペレット4は、黒色化していた。これは、ペレット4に分散するパラジウムのナノ粒子による色と推測される。また、目視では、ペレット4中に凝集物は見られなかった。
次に、ペレット4の断面をTEMにより観察した。ペレット4に含まれるナノ粒子は、粒子径約1〜2nm程度で孤立分散していることが確認できた。
[実施例5]
本実施例では、実施例1で製造した樹脂ペレット(ペレット1)と、第2の熱可塑性樹脂を用いて、ナノ粒子を含む第2の成形体を製造した。そして、第2の成形体に、酸を用いたメッキ前処理を行った後、無電解メッキ膜を形成し、更に、無電解メッキ膜上に電解メッキ膜を形成した。第2の熱可塑性樹脂としては、ABS樹脂(東レ製、トヨラック125X82)と、6ナイロン成分を含むABS/PAアロイ材料(東レ製、トヨラックSX01)を用いた。第2の成形体のメッキ前処理には、4Nの塩酸を用いた。
(1)第2の成形体の製造
実施例1で製造した樹脂ペレット(ペレット1)10重量%、ABS樹脂50重量%、ABS/PAアロイ材料40重量%の比率で混合し、成形機として、汎用の射出成形機(日本製鋼所製、J180AD−300H)を用いて、40mm×60mm×3mmの板状の成形体(第2の成形体)を成形した。成形温度は、260℃とした。第2の成形体中のナノ粒子の含有量は、約20重量ppmであった。尚、本実施例で、第2の樹脂として用いたABS/PAアロイ材料は、6ナイロン成分を含み、それにより、第2の成形体のメッキ液に対する濡れ性を向上させる。
(2)メッキ前処理
メッキ前処理として、第2の成形体を40℃、4Nの塩酸に10分間浸漬した。その後、80℃の1,3−ブタンジオール75体積%水溶液に10分間浸漬した。
(3)メッキ膜の形成
80℃の無電解ニッケルリンメッキ液(奥野製薬社製、トップニコロンHMA−LF)中に第2の成形体を浸漬し、無電解メッキ膜を形成した。更に、無電解メッキ膜上に、汎用の硫酸銅を用いた電解メッキ方法により、膜厚20μmの電解銅メッキ膜を形成した。
[実施例6]
ペレット1に代えて、実施例2で製造した樹脂ペレット(ペレット2)を用いた以外は、実施例5と同様の方法で第2の成形体を製造し、メッキ前処理を行った後、無電解メッキ膜及び電解メッキ膜を形成した。ペレット2のナノ粒子含有量はペレット1のナノ粒子含有量と同量であるので、本実施例における第2の成形体中のナノ粒子の含有量は、実施例5と同量の約20重量ppmであった。
[実施例7]
ペレット1に代えて、実施例3で製造した樹脂ペレット(ペレット3)を用いた以外は、実施例5と同様の方法で、第2の成形体を製造し、メッキ前処理を行った後、無電解メッキ膜及び電解メッキ膜を形成した。ペレット3のナノ粒子含有量はペレット1のナノ粒子含有量の半分であるので、本実施例における第2の成形体中のナノ粒子の含有量は、実施例5の半分の約10重量ppmであった。
[実施例8]
メッキ前処理において、4Nの塩酸への第2の成形体の浸漬時間を5分とした以外は、実施例5と同様の方法で、第2の成形体を製造し、メッキ前処理を行った後、無電解メッキ膜及び電解メッキ膜を形成した。
[実施例9]
メッキ前処理において、4Nの塩酸の代わりに4Nの硫酸を用いた以外は、実施例5と同様の方法で、第2の成形体を製造し、メッキ前処理を行った後、無電解メッキ膜及び電解メッキ膜を形成した。
[実施例10]
メッキ前処理において、4Nの塩酸の代わりに4Nの硫酸を用いて、第2の成形体の硫酸への浸漬時間を5分とした以外は、実施例5と同様の方法で、第2の成形体を製造し、メッキ前処理を行った後、無電解メッキ膜及び電解メッキ膜を形成した。
[実施例11]
メッキ前処理において、4Nの塩酸の代わりに8Nの酢酸を用いて、第2の成形体の酢酸への浸漬時間を60時間とした以外は、実施例5と同様の方法で、第2の成形体を製造し、メッキ前処理を行った後、無電解メッキ膜及び電解メッキ膜を形成した。
[実施例12]
メッキ前処理において、4Nの塩酸の温度を室温とし、第2の成形体の塩酸への浸漬時間を60時間とした以外は、実施例5と同様の方法で、第2の成形体を製造し、メッキ前処理を行った後、無電解メッキ膜及び電解メッキ膜を形成した。
[実施例13]
ペレット1に代えて、実施例4で製造した樹脂ペレット(ペレット4)を用い、第2の成形体の塩酸への浸漬時間を15時間とした以外は、実施例5と同様の方法で第2の成形体を製造し、メッキ前処理を行った後、無電解メッキ膜及び電解メッキ膜を形成した。ペレット4のナノ粒子の含有量はペレット1のナノ粒子含有量と同量であるので、本実施例における第2の成形体中のナノ粒子の含有量は、実施例5と同量の約20重量ppmであった。
[比較例1]
メッキ前処理において、4Nの塩酸の代わりに12Nの塩酸を用いた以外は、実施例5と同様の方法で、第2の成形体を製造し、メッキ前処理を行った後、無電解メッキ膜及び電解メッキ膜を形成した。
[比較例2]
メッキ前処理において、4Nの塩酸の代わりに36Nの硫酸を用いた以外は、実施例5と同様の方法で、第2の成形体を製造し、メッキ前処理を行った後、第2の成形体を無電解メッキ液に浸漬した。しかし、本比較例では、第2の成形体上に無電解メッキ膜が成長しなかった。
[比較例3]
メッキ前処理において、4Nの塩酸の代わりに14Nの硝酸を用いた以外は、実施例5と同様の方法で、第2の成形体を製造し、メッキ前処理を行った後、第2の成形体を無電解メッキ液に浸漬した。しかし、本比較例では、第2の成形体上に無電解メッキ膜が成長しなかった。
[比較例4]
メッキ前処理において、4Nの塩酸の代わりに17Nの酢酸を用い、第2の成形体の酢酸への浸漬時間を3時間とした以外は、実施例5と同様の方法で、第2の成形体を製造し、メッキ前処理を行った後、第2の成形体を無電解メッキ液に浸漬した。しかし、本比較例では、第2の成形体上に無電解メッキ膜が成長しなかった。
[比較例5]
メッキ前処理において、塩酸を用いた処理を行わず、1,3−ブタンジオールを用いた処理のみを行った以外は、実施例5と同様の方法で、第2の成形体を製造し、メッキ前処理を行った後、第2の成形体を無電解メッキ液に浸漬した。しかし、本比較例では、第2の成形体上に無電解メッキ膜が成長しなかった。
以上説明した実施例5〜13及び比較例1〜5において、以下の評価(a)及び(b)を行った。各評価結果を表1に示す。
(a)メッキ反応性
第2の成形体を無電解メッキ液に浸漬してから、無電解メッキ膜が第2の成形体の全表面に形成されるまでの時間(メッキ膜形成時間)を測定した。メッキ膜形成時間が短い程、メッキ反応性が高いと判断し、以下の判断基準に従って評価した。

〈メッキ反応性の判断基準〉
A:メッキ膜形成時間が、15分以下。
B:メッキ膜形成時間が、15分を越えて、30分以下。
C:メッキ膜形成時間が、30分を越えて、50分以下。
D:メッキ膜が成形体全面に形成されないため、評価不可。
(b)外観特性
電解メッキ膜の形成された成形体の外観を目視により観察し、以下の判断基準に従って評価した。

〈外観特性の判断基準〉
A:メッキ膜の荒れ、膨れ、樹脂膨れ等の欠陥がない(0個)。
B:メッキ膜の荒れ、膨れ、樹脂膨れ等の欠陥が1〜5個程度ある。
C:メッキ膜の荒れ、膨れ、樹脂膨れ等の欠陥が6〜10個程度ある。
D:メッキ膜の荒れ、膨れ、樹脂膨れ等の欠陥が11個以上ある。又は、メッキ膜が形成されないため、評価不可。
Figure 2016003345
2N〜5Nの塩酸、2N〜5Nの硫酸及び5N〜12Nの酢酸のうちの1つを用いてメッキ前処理を行った実施例5〜13では、無電解メッキ膜が第2の成形体の全表面に均一に形成され、メッキ反応性は良好であった。また、外観特性の評価結果も評価C以上であり、比較例1〜5と比較して良好であった。実施例5〜13では、後述する比較例5の結果から、第2の成形体の製造過程において、溶融状態の第2の樹脂(ABS樹脂)からスチレンモノマー等の揮発ガスが発生してパラジウムのナノ粒子に吸着し、無電解メッキ触媒活性が失活したと推測される。しかし、2N〜5Nの塩酸、2N〜5Nの硫酸及び5N〜12Nの酢酸のうちの1つを用いたメッキ前処理により、ナノ粒子の表面が溶解して触媒活性が復活し、無電解メッキ膜が形成可能になったと推測される。
特に、略直方体の形状のナノ粒子を含む樹脂ペレット1〜3を用いた実施例5〜12と、ナノ粒子を溶融樹脂内で生成した樹脂ペレット4を用いた実施例13とを比較すると、メッキ反応性及び外観特性、共に実施例5〜12の方が優れていた。これから、樹脂ペレット4と比較して、樹脂ペレット1〜3は、2N〜5Nの塩酸、2N〜5Nの硫酸及び5N〜12Nの酢酸のうちの1つの酸との接触により、触媒活性が復活し易いと推測される。
また、略直方体の形状のナノ粒子を含む樹脂ペレット1〜3を用いた実施例5〜12においては、メッキ前処理において、硫酸又は酢酸を用いた実施例9〜11よりも、塩酸を用いた実施例5〜8及び12の方が、外観特性が優れていた。したがって、外観特性の観点からは、メッキ前処理には塩酸を用いることが好ましいいと推測される。また、クロスフロー式濾過により還元剤やハロゲン化塩等の塩の除去を行ったペレット1を用いた実施例5と、塩の除去を行わなかったペレット2を用いた実施例6とを比較すると、塩の除去を行ったペレット1を用いた実施例5の方が、メッキ膜形成時間が短く、メッキ反応性が高いことがわかった。また、パラジウム濃度(含有量)が50重量ppmであるペレット1を用いた実施例5と、パラジウム濃度(含有量)が25重量ppmであるペレット3を用いた実施例7とを比較すると、パラジウム濃度(含有量)が50重量ppmのペレット1を用いた実施例5の方が、メッキ膜形成時間が短く、メッキ反応性が高いことがわかった。更に、4Nの塩酸を用いてメッキ前処理時間を10分とした実施例5と、メッキ前処理時間を5分とした実施例8では、メッキ前処理時間を10分とした実施例5の方が、メッキ膜形成時間が短く、メッキ反応性が高いことがわかった。同様に、4Nの硫酸を用いてメッキ前処理時間を10分とした実施例9と、メッキ前処理時間を5分とした実施例10では、メッキ前処理時間を10分とした実施例9の方が、メッキ膜形成時間が短く、メッキ反応性が高いことがわかった。
一方、メッキ前処理に12Nの塩酸を用いた比較例1では、無電解メッキ膜及び電解メッキ膜は形成可能であったが、樹脂の白色化が見られ、外観特性の評価結果は「D」であった。これは、塩酸の濃度が高いために、成形体が劣化したためと推定される。メッキ前処理に、36Nの硫酸を用いた比較例2、14Nの硝酸を用いた比較例3、17Nの酢酸を用いた比較例4では、無電解メッキ膜が形成されず、更に、樹脂の白色化もみられた。これは、硫酸、硝酸、酢酸の濃度が高く、更に硝酸は酸化力を有する酸であるため、メッキ前処理おいて、ナノ粒子は完全に溶解して消失し、更に、これらの酸により成形体が劣化したと推測される。メッキ前処理において酸を用いた処理を行わなかった比較例5では、第2の成形体の製造過程において、第2の樹脂(ABS樹脂)から発生した揮発ガスにより、ナノ粒子の無電解メッキ触媒活性が失活したため、メッキ反応が生じなかったと推測される。
本発明の成形体は、成形時に溶融樹脂から発生する揮発ガスにより、ナノ粒子の無電解メッキ触媒活性が失活したとしても、特定の酸を用いたメッキ前処理を行うことで、ナノ粒子の無電解メッキ触媒活性を復活させることができる。これにより、成形体に用いる樹脂の選択の幅を広げることができる。
10 パラジウム触媒分散体収容容器
30 ストレージタンク
11、12、31、32 シリンジポンプ
13、14、33、34 吸引用エアー自動バルブ
15、16、35、36 液送用エアー自動バルブ
20 スクリュ
21 可塑化ゾーン
22 高圧混練ゾーン
23 減圧ゾーン
24 再可塑化ゾーン
S1 上流側シール機構
S2 下流側シール機構
100 パラジウム触媒分散体供給機構
200 押出成形機
210 可塑化シリンダ
300 加圧二酸化炭素供給機構
1000 製造装置

Claims (27)

  1. 成形体の製造方法であって、
    パラジウム含有ナノ粒子を用意することと、
    第1の熱可塑性樹脂を可塑化溶融して溶融樹脂とすることと、
    前記溶融樹脂に前記パラジウム含有ナノ粒子を混合することと、
    前記パラジウム含有ナノ粒子を含む前記溶融樹脂を所望の形状に成形することを含み、
    前記パラジウム含有ナノ粒子は、2N〜5Nの塩酸、2N〜5Nの硫酸及び5N〜12Nの酢酸のうちの1つと接触することにより表面が溶解する粒子であることを特徴とする成形体の製造方法。
  2. 前記パラジウム含有ナノ粒子の粒子径が100nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の成形体の製造方法。
  3. 前記パラジウム含有ナノ粒子の形状が、略直方体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の成形体の製造方法。
  4. 前記パラジウム含有ナノ粒子を用意することが、
    親水性ポリマーと、還元剤と、ハロゲン化塩と、水とを含む第1溶液を調製することと、
    水溶性パラジウム塩と、水とを含む第2溶液を調製することと、
    第1溶液と第2溶液を混合して混合溶液とし、前記混合溶液中に前記パラジウム含有ナノ粒子を生成させることとを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の成形体の製造方法。
  5. 前記親水性ポリマーがポリビニルピロリドンであり、前記還元剤がアスコルビン酸であり、前記ハロゲン化塩が臭化カリウム及び塩化カリウムであることを特徴とする請求項4に記載の成形体の製造方法。
  6. 前記パラジウム含有ナノ粒子を用意することが、更に、前記パラジウム含有ナノ粒子を含む前記混合溶液を濾過することを含むことを特徴とする請求項4又は5に記載の成形体の製造方法。
  7. 前記溶融樹脂に、前記パラジウム含有ナノ粒子を含む前記混合溶液を混合することにより、前記溶融樹脂に前記パラジウム含有ナノ粒子を混合することを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載の成形体の製造方法。
  8. 第1の熱可塑性樹脂が、親水性セグメントを含むブロック共重合体であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の成形体の製造方法。
  9. 前記ブロック共重合体の親水性セグメントが、ポリエーテルであることを特徴とする請求項8に記載の成形体の製造方法。
  10. 樹脂ペレットの製造方法であって、
    請求項1〜9のいずれか一項に記載の成形体の製造方法によって、第1の成形体を製造することと、
    第1の成形体を裁断することとを含むことを特徴とする樹脂ペレットの製造方法。
  11. 前記パラジウム含有ナノ粒子が、第1の成形体中に5〜3000重量ppm含まれていることを特徴とする請求項10に記載の樹脂ペレットの製造方法。
  12. 成形体の製造方法であって、
    請求項10又は11に記載の樹脂ペレットの製造方法により、樹脂ペレットを製造することと、
    前記樹脂ペレットと第2の熱可塑性樹脂を用いて、前記パラジウム含有ナノ粒子を含有する第2の成形体を製造することとを含むことを特徴とする成形体の製造方法。
  13. 第2の熱可塑性樹脂がABS樹脂であることを特徴とする請求項12に記載の成形体の製造方法。
  14. 第2の熱可塑性樹脂は、前記パラジウム含有ナノ粒子を含有しないことを特徴とする請求項12又は13に記載の成形体の製造方法。
  15. 第2の熱可塑性樹脂は、親水性セグメントを含むブロック共重合体を含有しないことを特徴とする請求項12〜14のいずれか一項に記載の成形体の製造方法。
  16. メッキ膜を有する成形体の製造方法であって、
    請求項12〜15のいずれか一項に記載の成形体の製造方法により第2の成形体を製造することと、
    第2の成形体に酸を接触させることと、
    前記酸を接触させた前記成形体に無電解メッキ液を接触させて、メッキ膜を形成することを含み、
    前記酸が、2N〜5Nの塩酸、2N〜5Nの硫酸及び5N〜12Nの酢酸のうちの1つの酸であることを特徴とするメッキ膜を有する成形体の製造方法。
  17. 前記成形体に前記無電解メッキ液を接触させる前に、前記成形体にアルコール処理液を接触させることを特徴とする請求項16に記載のメッキ膜を有する成形体の製造方法。
  18. 前記第1の熱可塑性樹脂が、親水性セグメントを含むブロック共重合体であり、前記アルコール処理液が、前記ブロック共重合体を軟化させることを特徴とする請求項17に記載のメッキ膜を有する成形体の製造方法。
  19. 前記アルコール処理液が、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコールからなる群から選択される少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項17又は18に記載のメッキ膜を有する成形体の製造方法。
  20. 前記アルコール処理液が、1,3−ブタンジオールを含むことを特徴とする請求項19に記載のメッキ膜を有する成形体の製造方法。
  21. 成形体であって、
    熱可塑性樹脂と、
    パラジウム含有ナノ粒子を含み、
    前記パラジウム含有ナノ粒子は、2N〜5Nの塩酸、2N〜5Nの硫酸及び5N〜12Nの酢酸のうちの1つと接触することにより表面が溶解する粒子であることを特徴とする成形体。
  22. 前記パラジウム含有ナノ粒子の粒子径が、100nm以下であることを特徴とする請求項21に記載の成形体。
  23. 前記パラジウム含有ナノ粒子の形状が、略直方体であることを特徴とする請求項21又は22に記載の成形体。
  24. 前記パラジウム含有ナノ粒子が、前記成形体中に5〜3000重量ppm含まれることを特徴とする請求項21〜23のいずれか一項に記載の成形体。
  25. 前記熱可塑性樹脂が、親水性セグメントを含むブロック共重合体であることを特徴とする請求項21〜24のいずれか一項に記載の成形体。
  26. 前記ブロック共重合体の親水性セグメントが、ポリエーテルである請求項25に記載の成形体。
  27. 樹脂ペレットであって、
    請求項21〜26の成形体を裁断することによって製造される樹脂ペレット。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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