以下、本実施形態に係る超音波診断装置について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
図1は、本実施形態に係る超音波診断装置10の構成概略図である。超音波診断装置10は、一般に病院等の医療機関に設置され、被検体に対して超音波診断を実行する医療上の機器である。超音波診断装置10は、被検体内の生体組織の弾性画像を生成する機能を備えている。
プローブ12は、被検体に当接され超音波の送受波を行う超音波探触子である。プローブ12は複数の振動子からなる振動子アレイを有している。振動子アレイに含まれる各振動子は、送受信部14からの各振動子に対応する複数の送信信号によって振動して超音波ビームを発生する。超音波ビームが送信される領域を送受波領域と呼ぶ。また、振動子アレイは送受波領域からの反射エコーを受信し、音響信号を電気信号に変換する。超音波ビームは、機械的に走査される。走査の方式としては、超音波ビームが扇状に走査されるセクタ方式、超音波ビームが直線状に走査されるリニア方式などあるが、本実施形態では、超音波ビームはリニア方式により走査される。
また、プローブ12は、弾性画像を生成するにあたり、被検体表面を圧迫するために用いられる。検査者などのユーザは、プローブ12を被検体表面に当接させ、そこから数ミリメートル程度プローブ12を被検体内側に移動させることで被検体組織の圧迫を行う。
送受信部14は、プローブ12が有する複数の振動子を励振する複数の送信信号をプローブ12へ送ることで、プローブ12において超音波を発生させる。また、送受信部14は、反射エコーを受信した複数の振動子から得られる複数の受信信号を整相加算処理して、超音波ビームの走査方向に並ぶビームデータを形成する。このように、送受信部14は、送信ビームフォーマと受信ビームフォーマの機能を備えている。
また、送受信部14において、複数の受信信号の整相加算処理の前に、各受信信号の信号強度(振幅)を調整する処理が行われてもよい。超音波ビームは、反射や散乱などの影響により、ビーム方向の深い位置へ進むにつれ信号強度が減衰する。これに応じて、より深い位置からの反射エコーはより信号強度が小さくなる。これを補正するため、より深い位置からの反射エコーにより得られた受信信号の増幅量を増やすなどして、位置の深さによる反射エコーの信号強度の差を低減させる。このゲイン変更処理は、STC(Sensitivity Time Control)あるいはTGC(Time Gain Compensation)と呼ばれている。
送受信部14において順次形成されるビームデータは、ビームメモリ16に記憶される。
断層画像形成部18は、送受波領域を1走査したことによって得られた複数のビームデータ(1セットのビームデータ)をビームメモリ16から読み出し、当該1セットのビームデータに基づいて1フレーム分の断層画像データを生成する。この処理を連続的に行うことで複数フレーム分の断層画像データを生成する。本実施形態においては、断層画像形成部18は、対象組織の送受波領域における断面が画像として表されるBモード画像を形成する。
弾性画像形成部20は、ビームメモリ16に記憶されたビームデータのうち、後述の関心領域設定部32が送受波領域内において設定した関心領域に対応する部分のデータである区間データに基づいて、弾性画像データを形成する。弾性画像は、関心領域内における組織弾性の相対的な分布を示す画像である。弾性画像形成部20は、2セットビームデータに含まれる2つの区間データに基づいて、相関演算などを用いて関心領域内の各位置における変位量を計測する。2つの区間データは、例えば得られた順(時系列順)に並べたときに隣接する2つのデータであるのが好ましい。さらに、弾性画像形成部20は、計測された変位量を空間微分して関心領域内の各位置におけるひずみ量を算出する。
弾性画像形成部20が有する平均値算出部22は、関心領域内の各位置のひずみ量の平均値を算出する。本実施形態では、ひずみ量の平均値はカラーバーの中央色である緑に割り当てられる。関心領域内の各画素について、対応する位置のひずみ量が平均値近傍である画素は緑に設定され、ひずみ量が少ない程青に近く、ひずみ量が多い程赤に近くなるよう設定される。
表示制御部24は、断層画像形成部18、弾性画像形成部20、及び後述の警告生成部38から出力される信号に対して処理を行い処理後のデータを表示部30に出力する。表示制御部24に含まれる白黒スキャンコンバータ26は、断層画像形成部18からの1フレーム分の断層画像データに基づいて、1枚の断層画像を生成する。また、表示制御部24に含まれるカラースキャンコンバータ28は、弾性画像形成部20からの弾性画像データに基づいて、関心領域内の各画素がひずみ量に応じて着色された弾性画像を生成する。
表示制御部24は、生成した断層画像、弾性画像、および後述の警告生成部38で生成された警告データを表示部30に表示させる。なお、表示部30には、断層画像と弾性画像を並列に並べるあるいは重畳させるなどして両方表示させてもよいし、弾性画像のみを表示させるようにしてもよい。
関心領域設定部32は、弾性画像の形成対象領域となる関心領域を設定する。関心領域設定部32は、ユーザの指示に従って関心領域を設定する。本明細書においては、ユーザの指示に基づいて設定される関心領域を初期関心領域と記載する。ユーザは、表示部30に表示された断層画像上において、入力部40に含まれるトラックボールなどを用いてカーソルを動かし、初期関心領域の位置および範囲を指定する。関心領域設定部32は、当該指定に応じて初期関心領域を設定する。
関心領域設定部32は、初期関心領域内において、反射エコーが減衰してその信号強度が十分でないため適切な弾性画像が形成されない領域(以後「低演算精度領域」と記載)を識別し、低演算精度領域が関心領域から除外されるよう、関心領域のサイズを調整する処理を行う。
関心領域設定部32には減衰評価値演算部34およびサイズ設定部36が含まれる。減衰評価値演算部34は、関心領域内における反射エコーの減衰を評価する減衰評価値を演算する。減衰評価値は、初期関心領域内における低演算精度領域を示す指標となる。
サイズ設定部36は、演算された減衰評価値に基づいて、低演算精度領域を初期関心領域から除外するよう初期関心領域のサイズを調整し、調整後の関心領域を設定する。減衰評価値演算部34およびサイズ設定部36の処理については、図2−図8を用いて後に詳述する。
警告生成部38は、サイズ設定部36が関心領域のサイズを調整した結果、調整後の関心領域のサイズが所定の条件を満たす場合に警告データを生成する。例えば、調整された関心領域の面積が所定値以下になった場合、あるいは調整した結果、関心領域がなくなってしまった場合(すなわち初期関心領域内の全てが低演算精度領域であると判断された場合)に、弾性画像が表示できないことを示す警告データを生成する。警告データは、予めメモリなどに記憶されており、条件に応じた警告データを読み出すようにしてもよい。警告データは文字データまたは画像データなど表示部30に表示するためのデータであってもよいし、音声データ、あるいは超音波診断装置10に備えられるLEDなどを点灯させるためのデータなどであってもよい。
入力部40は、ボタン、スイッチ、あるいはトラックボールなどを含む操作パネルである。入力部40は検査者などのユーザに用いられ、初期関心領域の設定などに用いられる。制御部42は、CPUであり超音波診断装置10全体を制御するものである。
以下、図1を参照しながら図2−図8を用いて、関心領域設定部32の処理を具体的に説明する。
図2は、初期関心領域と初期関心領域に対して送信される超音波ビームを示す概念図である。図2は、表示部30に表示された断層画像50を示している。上述の通り、断層画像50はBモード画像である。断層画像50上には、ユーザの指示に基づいて設定された初期関心領域52が示されている。
図2には、プローブ10から初期関心領域52に対して送信される超音波ビーム群56が示されている。超音波ビーム群56を示す矢印は超音波ビームの送信イメージを表すものであり、実際には表示部30には表示されない。超音波ビーム群56は体表面58に当接されたプローブ10から送信される。図2の下側ほどプローブ10からより遠い位置すなわちより深い位置となっている。本明細書においては、図2、および図5−図6の上下方向を深さ方向と表現し、下側ほど深度が深いと表現する。なお、図示は省略されているが超音波ビームは初期関心領域52以外の領域に対しても送信されている(それにより断層画像50が形成される)。
超音波ビームが送信されると送受波領域内において反射エコーが生じ、上述の通り送受信部14において反射エコーに基づいてビームデータが形成される。形成されるビームデータのうち、初期関心領域52内の位置からの反射エコーにより形成されたビームデータが区間データとなる。減衰評価値演算部34は、複数の超音波ビームから得られる複数の区間データのうち少なくとも1つの区間データに基づいて反射エコーの減衰評価値を演算する。なお、ビームデータは、サンプリングされた反射エコーデータ列で構成されるものである。よって、区間データは深さ方向に並ぶ複数の反射エコーデータにより構成される。個々の反射エコーデータは反射エコーの大きさを示すものである。
本実施形態においては、初期関心領域52に送信される超音波ビーム群56から選択される1本の代表ビームから得られる区間データに基づいて減衰評価値を演算する。超音波ビーム56aが代表ビームとして選択された場合について説明する。図2には、超音波ビーム56a上において、初期関心領域52の最も浅い位置である最浅位置60と、最も深い位置である最深位置62が示されている。最浅位置60の体表面58からの(すなわちプローブ10からの)深さはd1であり、最深位置62の深さはd2である。
超音波ビーム56aに対応する区間データに基づけば、最浅位置60と最深位置62との間の超音波ビーム56aの深さ方向に並ぶ複数の位置からの反射エコーの信号強度を得ることができる。減衰評価値演算部34は、これら複数の位置からの反射エコーの信号強度に基づいて減衰評価値を算出する。当該減衰評価値は、最浅位置60と最深位置62との間における反射エコーの減衰を示すものである。具体的には、最浅位置60における反射エコーの信号強度に対して、ある位置における反射エコーの信号強度がどの程度小さくなっているかを示す指標である。
反射エコーは、多数の周波数成分を有しており、その信号強度は周波数によって異なる。本実施形態では、各周波数の信号強度のうち最も大きい信号強度を当該反射エコーの信号強度としている。反射エコーの信号強度として、各周波数の信号強度の合計値などを用いるようにしてもよい。
また、送受信部14においてSTC処理が行われている場合は、減衰評価値の演算に先立って、減衰評価値演算部34において反射エコーの信号強度をSTC処理前の状態に戻す逆STC処理が行われるのが好ましい。これにより、ゲイン処理がされていない素の状態においての反射エコーの信号強度に基づいて減衰評価値を演算することができる。
本実施形態では、減衰評価値演算部34は、初めに最浅位置60からの反射エコーの信号強度と、最深位置62からの反射エコーの信号強度との比を減衰評価値として算出する。これは、最深位置62における反射エコーの信号強度が、最浅位置60からの反射エコーの信号強度がどれだけ減衰しているかを示す指標となる。
図3は、超音波ビーム56aの反射エコーの信号強度の減衰の一例を示すグラフである。図3のグラフの横軸が深度であり、縦軸が反射エコーの信号強度である。図3に示される通り、深度が大きくなるにつれ反射エコーの信号強度が小さくなっている。最浅位置60からの反射エコーの信号強度はa1であり、最深位置62からの反射エコーの信号強度がa1よりも小さいa2となっている。減衰評価値演算部34は、減衰評価値としてa2/a1を算出する。本実施形態ではa2を分子としているため、減衰評価値が大きい程反射エコーの減衰が小さいことを意味する。算出した減衰評価値は、予め定められる閾値と比較される。当該閾値は、適切にひずみ量が算出されない程度の信号強度に基づいて定められる。算出した減衰評価値が閾値よりも大きい場合には、初期関心領域52における超音波ビーム56aの反射エコーの減衰量が小さく、超音波ビーム56aに対応する区間データにおいては低演算精度領域が存在しない、と判断できる。
本実施形態においては、複数の超音波ビームの反射エコーの減衰量は一様であるとの考えから、1本の代表ビームの反射エコーについての減衰評価値が閾値よりも大きければ、初期関心領域52内には低演算精度領域が存在しない、と判断している。これにより、演算量を低減させることが可能になり、よりリアルタイム性が向上する。しかし、代表ビームを複数選択し、複数の代表ビームの反射エコーに関する減衰評価値が閾値よりも大きい場合に低演算精度領域が存在しないと判断してもよく、また初期関心領域52内に送信されたすべての超音波ビームの反射エコーに関する減衰評価値が閾値よりも大きかった場合に低演算精度領域が存在しない、と判断してもよい。
図3に示す例においては、減衰評価値が閾値以上であったため、減衰評価値演算部34は、初期関心領域52内に低演算精度領域は含まれないと判断する。サイズ設定部36は初期関心領域52のサイズを変更しない。したがって、図2において、初期関心領域52内における各位置のひずみ量が算出され、これに基づいて初期関心領域52内において弾性画像54が表示される。
次に、減衰評価値a2/a1が閾値以下だった場合の処理について説明する。図4は、超音波ビーム56aの反射エコーの信号強度の減衰の他の例を示すグラフである。図4に示されるグラフにおいては、超音波ビーム56aの反射エコーの信号強度の減衰が図3に示される例よりも大きく、減衰評価値a2/a1が閾値よりも小さくなっているとする。この場合、単に減衰評価値a2/a1のみの評価では、初期関心領域52の最深位置62において弾性画像が適切に形成されないということしか把握できない。
そこで、減衰評価値が閾値よりも小さかった場合、減衰評価値演算部34は、超音波ビーム56aに対応する区間データを参照し、減衰評価値が閾値と等しくなる深度をサーチする。サーチの方法としては、例えば、最浅位置60における信号強度a1と閾値に基づいて、閾値と減衰評価値a3/a1とが等しくなる信号強度a3を算出する。次に、最浅位置60の深度d1とその信号強度a1、および最深位置62の深度d2とその信号強度a2から信号強度減衰の傾きを算出する。そして、算出したa3と傾きに基づいて減衰評価値が閾値と等しくなる深度d3を算出する。あるいは、最浅位置60から深度が大きくなる方向へ、または最深位置62から深度が小さくなる方向へ、各位置における信号強度を演算していき、信号強度がa3となる深度を決定してもよい。
算出された深度d3は、低演算精度領域の境界となる深度である。すなわち、初期関心領域の深度d3より浅い位置は反射エコーの減衰がそれほど大きくなく、適切に弾性画像が形成できると判断される領域である。一方、初期関心領域の深度d3よりも深い位置は低演算精度領域と判断される。
図5は、サイズが調整された関心領域を示す図である。サイズ設定部36は、減衰評価値演算部34が算出した深度d3に基づいて、関心領域のサイズを調整する。具体的には、体表面58(すなわちプローブ10)から関心領域の下限深さまでの距離がd3となるように、初期関心領域56のサイズを減少させて、調整後の関心領域70を設定する。これにより、低演算精度領域が関心領域から除外される。
図4及び図5に示した例においても、1本の代表ビームに対応する区間データに基づいて算出された減衰評価値に基づいて関心領域のサイズを調整している。したがって、代表ビームである超音波ビーム56aに対応する区間データに基づいて、減衰評価値が閾値と等しくなる深度がd3と算出された場合、図5に示すように、関心領域は矩形を保ったままその下限深度がd3となるように調整される。しかし、代表ビームが複数あってもよい。算出される減衰評価値と閾値とが等しくなる深度が複数の区間データ毎に異なる場合、どの深度を関心領域の下限深さとするかはユーザにより選択させるようにしてよい。例えば、ユーザが関心領域から低演算精度領域を完全に排除することを望む場合は、複数の深度のうち最も浅い深度を下限深さとすればよい。一方、ユーザが関心領域に多少低演算精度領域が含まれても、より広い範囲の弾性画像を得ることを望む場合は、深度のうち、複数の深度のうち最も深い深度を下限深さとすればよい。あるいは、算出される複数の深度の平均値を下限深さとするようにしてもよい。
また、初期関心領域52に送信される複数の超音波ビームに対応する複数の区間データ毎に減衰評価値と閾値が等しくなる深度を算出し、区間データ毎に関心領域の下限深さを変更するようにしてもよい。図6は、区間データ毎に関心領域の下限深さが変更させられる例を示す図である。図6に示されるように、複数の区間データ毎に算出された複数の深度に基づいて、区間データ毎に関心領域の下限深さが変更された場合、調整後の関心領域72の下限は非直線となっている。区間データ毎に関心領域の下限深さを変更することで、関心領域から低演算精度領域を除外するとともに、関心領域をより広く取ることが可能になる。
図7は、初期関心領域が比較的深い位置に設定された場合における反射エコーの信号強度の減衰の例を示すグラフである。本実施形態においては、初期関心領域の最浅位置からの反射エコーの信号強度の減衰量に基づいて減衰評価値を演算し、それに基づいて関心領域のサイズを設定している。したがって、初期関心領域が比較的深い位置に設定され、初期関心領域の最浅位置において既に反射エコーの信号強度が小さい場合、そこから初期関心領域の最深位置までの反射エコーの信号強度の減衰量は小さく、演算される減衰評価値は予め定められた閾値よりも大きくなってしまう場合がある。この場合、初期関心領域内のすべての位置において適切に弾性画像が形成されないにも関わらず、初期関心領域のサイズは調整されないことになってしまう。
本実施形態では、このような事態を防ぐため、図7に示すよう反射エコーの信号強度に所定の閾値(Threshold 1)を設け、初期関心領域の最浅位置における反射エコーの信号強度(a1)がThreshold 1よりも小さい場合は、減衰評価値演算部34は、関心領域を削除し、弾性画像を表示させないこととする。Threshold 1は、適切に弾性画像が形成されるのに最低限必要な反射エコーの信号強度とする。
図8は、初期関心領域が比較的浅い位置に設定された場合における反射エコーの信号強度の減衰の例を示すグラフである。初期関心領域が比較的浅い位置に設定され、初期関心領域の最深位置においても反射エコーの信号強度が十分に大きい場合であっても、初期関心領域の最浅位置から最深位置までの反射エコーの信号強度の減衰量が大きい場合、演算される減衰評価値は予め定められた閾値よりも小さくなってしまう。この場合、初期関心領域内のすべての位置において適切に弾性画像が形成されるにも関わらず、初期関心領域のサイズが減少するよう調整されることになってしまう。
本実施形態では、このような事態を防ぐため、図8に示すよう反射エコーの信号強度に所定の閾値(Threshold 2)を設け、初期関心領域の最深位置における反射エコーの信号強度(a2)がThreshold 2よりも大きい場合は、算出された減衰評価値が閾値より小さい場合であってもサイズ設定部36は、初期関心領域のサイズを調整せず、関心領域を初期関心領域のサイズのまま維持する。Threshold 2も、適切に弾性画像が形成されるのに最低限必要な反射エコーの信号強度とする。
なお、本実施形態においては、Threshold 1とThreshold 2は同一の信号強度としているが、これらを異なる値に設定してもよい。
本実施形態では、初期関心領域の最浅位置における反射エコーの信号強度と、初期関心領域の最浅位置と最深位置との間のある位置における反射エコーの信号強度との比を減衰評価値としているが、減衰評価値としては、2つの位置における反射エコーの信号強度の比に限られず、例えば2つの位置における反射エコーの信号強度の差などであってもよい。
また、複数の区間データに基づいて、初期関心領域における反射エコーの減衰量の平均値を減衰評価値としてもよい。この場合、各区間データにおいて2つの位置の深度と反射エコーの信号強度から、図3および図4に示されるグラフの傾きに相当する量を算出し、各区間データにおける傾きの平均値を減衰評価値とする。そして、算出された傾きの平均値に応じて、関心領域の深度を決定するようにしてもよい。
上述の通り、本実施形態では、区間データに基づいて初期関心領域内における反射エコーの減衰を評価する減衰評価値を算出している。減衰評価値は、初期関心領域内における低演算精度領域を示す指標となる値であるため、これに基づいて初期関心領域から低演算精度領域を除外するよう初期関心領域のサイズが調整される。これにより、弾性画像内において正確でない組織弾性が表示されるのを防ぐことができ、弾性画像の信ぴょう性を向上させることができる。また、関心領域内の組織弾性の平均値を正しく算出可能になるため、弾性画像における画素の着色も正しく行うことが可能にある。
図9は、警告データが表示される例を示す図である。本実施形態では、初期関心領域52のサイズが調整された結果、調整後の関心領域の面積が所定値以下になった場合、あるいは調整した結果、関心領域がなくなってしまった場合に表示部に弾性データを表示できないことを示す警告画像90を表示させる。このとき、ユーザが初期関心領域52の位置および大きさを把握できるよう、初期関心領域52の範囲が点線などで表示させるのが好適である。
図10は、本実施形態に係る超音波診断装置の動作の流れを示すフローチャートである。図1を参照しながら図10を説明する。
ステップS10において、関心領域設定部32は、ユーザの指示に従って、送受波領域に初期関心領域を設定する。
ステップS12において、プローブ12から初期関心領域に対して超音波ビームが送信され、ビームメモリ16に区間データを含むビームデータが記憶される。
ステップS14において、減衰評価値演算部34は、区間データに基づいて、減衰評価値を算出する。本実施形態では、初期関心領域の最浅位置からの反射エコーの信号強度であるa1と、最深位置からの反射エコーの信号強度であるa2に基づいて、a2/a1を減衰評価値として算出する。
ステップS16において、減衰評価値演算部34は、算出したa2/a1が予め定められた閾値以上であるか否かを判断する。a2/a1が閾値以上であれば、ステップS18に進み、弾性画像形成部20は、初期関心領域において弾性画像を形成し、ステップS28において当該弾性画像が表示部30に表示される。
ステップS16においてa2/a1が閾値より小さかった場合は、ステップS20に進み、減衰評価値演算部34は、a3/a1=閾値を満足する信号強度であるa3を算出し、区間データに基づいて反射エコーの信号強度がa3となる位置を算出する。
ステップS22において、サイズ設定部36は、減衰評価値演算部34が算出した位置に基づいて、初期関心領域のサイズを調整する。具体的には上述のように、初期関心領域の下限深さを調整する。
ステップS24において、調整後の関心領域の面積が所定値以上であるか否かを判断する。調整後の関心領域の面積が所定値以上である場合、ステップS26において、弾性画像形成部20は、調整後の関心領域において弾性画像を形成し、ステップS28において当該弾性画像が表示部30に表示される。
ステップS24において、調整後の関心領域の面積が所定値より小さい場合は、ステップ30において、表示部30には、警告生成部38が生成した警告画像が表示される。この場合、弾性画像形成部20は、弾性画像の形成を行わない。
上述においては、ユーザの指示に基づいて設定された初期関心領域のサイズを1度調整する例について説明している。しかし、初期関心領域内において低演算精度領域が刻々と変化する場合も考えられる。したがって、順次取得される区間データに基づいて、関心領域のサイズ調整を連続して行うのが好適である。これにより、刻々と変化する低演算精度領域に応じて、動的に関心領域のサイズ調整を行うことができる。