以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明の第1実施形態のカラーコンパスは、図1〜図8に示す以下の構成を想定している。(1)「清色スケール」、(2)「濁色スケール」、(3)清色スケールと濁色スケールを重ねたベーシックスケールを用いた「JIS慣用色名マップ」、(4)同ベーシックスケールを用いた「MPCS色名マップ」、(5)対比用の「比較スケール(JIS慣用色名比較マップ)」、(6)清色スケールの応用となる「肌表示一体型清色スケール」、(7)「加色(灰色、黄、青)フィルター」、(8)「保管容器」。なお、これらのスケール又はマップは、透明又は半透明のプレートに対して各種情報が印刷等によって表示されていることが好ましい。互いに重ね合わせて見ることができるからである。
また、本発明の第2実施形態のカラーコンパスとしては、図9及び図10に示す他の表示例とした「濁色スケール」に限定して紹介する。本発明の第3実施形態のカラーコンパスとしては、第1実施形態のカラーコンパスをディスプレイ上で実現するためのソフトウエアを紹介する。
まず、第1実施形態のカラーコンパスについて説明する。このカラーコンパスを用いることで、今までにない新しいカラーシステムを得ることが出来る。このカラーシステムを、ここでは「地図式実用カラーシステム、通称MPCS(Map Practical Color System)」と呼んでいる。
<清色スケールの全体説明>
図1Aには、第1実施形態のカラーコンパスにおける清色スケール10が示されている。図1Aは、清色スケール内に表示される文字を省略し、図面説明用の符号を付したものであり、図1Bは、図面説明用の符号を省略し、清色スケール内に実際に表示される文字を付したものである。特許明細書用の図面はモノクロで表現することになるが、実際の清色スケールは、必要に応じて着色されていることをここに付記しておく。
清色スケールは、カラーコンパスの基軸になるものである。実用面では清色の使用頻度が高いので、これを土台にする必要があるからである。詳細は後述するが、この清色スケールと、後述する濁色スケールと、無彩色を統合的に表すスケールを「ベーシックスケール」と呼ぶ。
なお、各スケール内の最外周表示は、マンセル色相値か、MPCS色相記号(MPCS特有の記号)を任意で選ぶ必要がある。ここで紹介するのは、MPCS色相記号を採用した「清色スケール」について説明をする。
清色スケール10は、円盤状のプレートであり、半径方向にトーン段階が配置される色領域20を合計10個有している。10個の色領域20は「5赤、5橙、5黄、5黄緑、5緑、5青緑、5青、5青紫、5紫、5赤紫(マゼンダ)」のMPCS色相記号が割り当てられる。なお、MPCS色体系ではマゼンタは赤紫の別称となる。MPCS色相記号の中でもこの10色をMPCSの規定色と呼ぶ。このMPCSの規定色は分割しだいで10個〜100個あるいはそれ以上に増やすこともできる。なお、清色スケール10の最外周にはMPCS色相が示されているが、マンセルシステムを採用する場合には、マンセル色相値(5R、5YR、5Y、5GY、5G、5BG、5B、5PB、5P、5RP)が示されることになる。勿論、MPCS色相とマンセル色相を同時に示すこともできる。清色スケール10ではマンセル色相値には参考付記として( )カッコを付けて区別した。
各色領域20は、色相順に周方向に等間隔で並ぶことによって環状(放射状)となる。即ち、全体的に見ると、10個の色領域20が、360度の10分割となる36度間隔で放射状に配置される。また、これらの色領域20の色相数は、ここでは10段階としているが、これはJISが準拠しているマンセル色相環との整合を図るためである。
一方、PCCSカラーシステムは色相が12段階となる。従って、本実施形態の清色スケール10には、赤と橙の間、及び青緑と青の間に、PCCS対応目盛V1(朱)、V2(シアン)を配置している。これにより、PCCSとの対応も概念的に理解しやすい状態となる。勿論、ここでは10段階を例示したが、100段階などのように、もっと細かく分割することも可能である。
色領域20の各々は、半径方向の内側から外側に向かって列状に、暗清色域30と、純色域40と、明清色域50がこの順に並んでいる。この清色スケール10では、暗清色域30のさらに内側に、色味を帯びた黒に近い無彩色領域31が配置され、そのさらに内側に黒領域20blackが配置される。また、明清色域50のさらに外側には、色味を帯びた白に近い無彩色領域51が配置され、そのさらに外側に白領域20whiteが配置される。領域31、領域51は、無彩色だが明清色域50及び暗清色域30の清色レベル±4に相当し、色彩をより高度に表示したい場合に用いる。従って、清色スケール10では、必須表示とはならない。なお、ここでは半径方向の内側から外側に向かって、暗清色域30、純色域40、明清色域50を並べる場合を例示したが、例えば、半径方向の外側から内側に向かって並べるなど、その並べ方には柔軟性がある。そして、環状以外の形もある。
<清色スケールの純色域の説明>
図1Aの純色域40には、対応する色相の純色で着色された純色子401が配置される。純色は、各色相において最も彩度が高い色と定義できる。各色相において白及び黒の無彩色を全く含まない有彩色と定義することもできる。この純色子401がトーンの中心になり、純色の色見本とにもなる。なお、実際の見本色を配置する場合に限らず、説明用の概念として示す場合は、モノクロでもよい。なお、現存の塗料が実現できない色は沢山あり、清色スケール10に実際に着色される色は理論的な色とは異なる場合もある。即ち、清色スケール10は、実現可能な近似色を着色することによって、MPCS色体系における理想色(理論色)の色概念を模式的に示して理解を深めるツールとなる。
<清色スケールの暗清色域の説明>
図1Aの暗清色域30には、対応する色相における暗清色で着色された複数の暗清色子301〜303が均等間隔で配置される。暗清色とは、純色に黒が含まれた有彩色と定義される。本実施形態では、暗清色域30が3つの暗清色子301〜303を備える。暗清色子301〜303には、黒の含有量が段階的に異なる暗清色が割り振られる。例えば、暗清色子301〜303には、一定の比率で異なる3段階(等歩度加算の等歩度混色)の暗清色が割り振られる。黒の含有量が最も少ない暗清色子303を「レベル−1」、黒の含有量が中間となる2番目の暗清色子302を「レベル−2」、黒の含有量が最も多い暗清色子301を「レベル−3」と定義する。レベル−1〜−3の簡略符号によって、色に関するコミュニケーションがとりやすくなる。3つの暗清色子301〜303は、黒の含有量が少ない方が純色域40に近くなるように半径方向に配置される。この3つの暗清色子301〜303が暗清色の色見本となり、ツールには着色されている。
<清色スケールの明清色域の説明>
図1Aの明清色域50には、対応する色相における明清色で着色された複数の明清色子501〜503が均等間隔で配置される。明清色とは、純色に白が含まれた有彩色と定義される。本実施形態では、明清色域50が3つの明清色子501〜503を備える。明清色子501〜503には、白の含有量が段階的に異なる明清色が割り振られる。例えば、白の明清色子501〜503には、白の含有量が一定の比率で異なる3段階(等歩度加算の等歩度混色)の明清色が割り振られる。白の含有量が最も少ない明清色子501を「レベル+1」、白の含有量が中間となる2番目の明清色子502を「レベル+2」、白の含有量が最も多い明清色子503を「レベル+3」と定義する。レベル+1〜+3の簡略符号によって、色に関するコミュニケーションがとりやすくなる。3つの明清色子501〜503は、白の含有量が少ない方が純色域40に近くなるように半径方向に配置される。この3つの明清色子501〜503が明清色の色見本となり、ツールには着色されている。
図1Aの清色スケール10では、複数(10列)の色領域20において、明清色域50、純色域40、暗清色域30の半径方向の相対位置を互いに一致させる。即ち、複数(10個)の色領域20の間では、半径方向に広がる明清色域50、純色域40、暗清色域30が、共通の同心円状のリング領域内に配置されることになる。
既に述べたように、この清色スケール10では、点線で示されるように、暗清色域30のさらに内側に、レベル−4となる「色味を帯びた黒に近い無彩色域」31が配置されている。また、明清色域50のさらに外側に、レベル+4となる「色味を帯びた白に近い無彩色域」51が配置されている。
以上の結果、図1Aの清色スケール10の色領域20では、半径方向の位置が統一化される純色域40を基準として、半径方向外側に向かって「+1〜+3」の3段階で次第に白を多く含有する明清色域50が配置され、半径方向内側に向かって「−1〜−3」の3段階で次第に黒を多く含有する暗清色域30が配置される。結果、この清色スケール10は、各純色からの位置で、具体的な色を想像しやすいことと、簡単な番号で色を表現することを可能にし、人間同士の色に関するコミュニケーションを円滑にする。更に、清色スケール10の考え方の根底には、簡単明瞭な色に関する理論が十分に構築されているので、人間同士の(色での)理解の共有レベルを高めることにつながる。なお、清色スケール10で定義される色は、概念的理想色(理論色)であり、色見本として配置される色はその近似色となる。なぜなら、清色スケール10を製作する際に、塗料やディスプレイ等で実際に表現可能な色を選択しなければならないからである。
<MPCSトーン表記の解説>
ちなみに、図1Aの清色スケール10(又はMPCS色体系)の主軸をトーン表記的に表現すると、図11Aの「MPCSトーン表」になり、濁色の主軸と清色の主軸を表併記することができる。なお、上段はJISに準拠させる為にJISを基盤とした馬蹄形のトーン表記であり、その馬蹄形のトーン表記内に、下段のMPCSトーンの数字記号をはめこんだものである。(日本語の修飾語はMPCSトーン表記である。)この上段は、各純色に対してトーンの修飾語として付記する際の明度及び彩度の相互関係」を示しており、横軸が彩度方向、縦軸が明度方向となる。この中に「MPCSトーン表」を当て込むと、有彩色領域内において、清色スケール10に相当するのは、外側の半楕円領域(2つの馬蹄形の外側領域)となり、内側の半楕円領域(2つの馬蹄形の内側領域)が濁色スケールに相当する。
これまでのトーン表記は、馬蹄形内で清濁を区別することなく一体の表し方だったが、MPCSトーンは実用頻度の高い清色トーンを濁色トーンと切り離して、清色スケールと濁色スケールとに定めた。更には、ベーシックスケールのように清色スケールと濁色スケールの双方を重ね合わせた使用形態も、用途に応じて使える便利さを有する。さらに、図1Aの清色スケール10のごとく、トーン表現で全色相を一同に網羅できるように、馬蹄形ではなく円形表現をとりいれた。色を立体で表現していた3次元を、トーンを用いた円形での2次元表記にすることで、数十ページで表していた全色相を1枚で表現することを可能とした。そして、これまでの馬蹄形トーンの、混乱と共にわかりにくく紛らわしい記号や言葉を簡略化して、より実用的にした。図1Aの、半径表示にしたMPCSトーンは、これまで難しいとされていた色の共通化を実現し、色の扱いにくさからのミスや経費等のロスの軽減を実現する新しいシステムである。
また図11Aの「MPCSトーン表」は、この外側の半楕円(馬蹄形)領域の最も右端(最高彩度)が純色(トーン表記「0」)となり、それを基準に、明度が高まり且つ彩度が低下する上側の馬蹄形領域が明清色域、明度が低下し且つ彩度が低下する下側の馬蹄形領域が暗清色域に対応する。そして、明清色域では、彩度面だけで言えば彩度が低下するにつれて+1〜+3の段階的な記号を付与する。また、暗清色域では、彩度面だけで言えば彩度が低下するにつれて−1〜−3の段階的な記号を付与する。 より理解を深める為に、図11Bには、「MPCSトーン表」の外側の清色に限定した半楕円領域(馬蹄形領域)を、直線的に展開した概念が示されている。この半楕円領域を直線的に展開した概念が、図1Aの清色スケール10における、円盤の半径方向の色領域20に直線的に展開したものとなる。
<MPCSとJISトーン表の関係>
図11AのMPCSトーン表と、図12AのJISトーン表の違いを説明する。図11Aの「MPCSトーン表」の外側の馬蹄領域は、トーン記号としては、「かなり明るい→+3」、「明るい→+2」、「やや明るい→+1」「あざやか→0」、「やや暗い→−1」、「暗い→−2」、「かなり暗い→−3」と定め、3つの数字での簡略表記にした。これは、JISトーンの日本語と英語がわかりにくく使いづらいことや、PCCSトーン名が乱れ入っていることを解消したのである。
更に詳細に解説すると、MPCSトーン表の外側の馬蹄形領域(清色スケール10の領域)は、JISトーン表の外側の馬蹄領域(「ごくうすい(very pale)」、「うすい(pale)」、「明るい(light)」、「あざやかな(vivid)」、「こい(deep)」、「暗い(dark)」、「ごく暗い(very dark)」)の中で、最も外周に配置される色(清色)のみに限定してグループ化し、その中の濁色を除外したものであると定義できる。つまり清色スケール10は、この馬蹄形の最外周のトーンを縦に伸ばして半径にしたものである。更に、MPCSトーン表では、純色に対する白又は黒の加算段階として「±1〜3」の三つの数字を用いたトーン表記を付記することで、修飾語の言葉のみの表現によるイメージの誤解や不安定さを低減している。更に、トーン名で問題となっているJISとPCCSのトーン表において、同義と異議の箇所が混在している問題を解決する。
<従来のJISトーン表と、第1実施形態のカラーコンパスの違い>
次に図1(A)の清色スケールと、従来のJISトーン表やPCCSトーン表(図12参照)の違いについて解説する。トーン表を用いて、全物体色の色相のトーンを把握するには、全色相数分のトーン表を必要とする。例えば、10種の色相についてコミュニケーションを行う場合は、10枚のトーン表が必要となる。また、10種の色相を貫くような色理論が存在しないため、10枚のトーン表を、頭の中で想像することは困難を極める。10枚のトーン表を準備するだけでも、手間や経費がかかるという問題がある。一方、第1実施形態のカラーコンパスでは、MPCSトーン表記が1枚の清色スケール10に統合的に反映されることによって、清色に限定した、全色相の全トーンを俯瞰することが可能になる。なお、ベーシックスケールであれば、濁色及び一部の無彩色も俯瞰することが可能になる。このように、10種の色相を一枚のスケールに網羅することによって、多数者間で色理解とともに色指定の統一を図ることができ、従来のカラーコミュニケーションケーションの曖昧さやミスが軽減できる。なお、後述する清色スケールと濁色スケールを更に統合した「ベーシックスケール」の場合、清濁を含めた全色相の全トーンを更に俯瞰することが可能になる。
<清色スケールの補助色領域及びレッドバランスの説明>
図1Aの通り、更にこの清色スケール10では、特定の色領域20と、この特定の色領域20の両側に隣接する色領域20の間に、それぞれ補助色領域60が配置されている。本実施形態では、特定の色領域20として、赤の色領域20が選定されており、赤の色領域20と、この両脇に隣接する橙と赤紫の色領域20の間に、一対の補助色領域60が配置される。具体的には、なじみのあるマンセル値で説明すると、5Rの赤の純色領域40の左右両側に4Rと6Rの一対の補助色領域60が配置される。時計回り側に隣接する補助色領域60の色相6Rを、本実施形態では「赤朱」と呼び、半時計回り側に隣接する色相4Rを「赤紅」と呼ぶ。なお「赤朱」は、わずかに黄色がかった赤であり、「赤紅」は、わずかに青色がかった赤を意味する。図1では説明の便宜上、「赤朱」が大よそ7.5R、「赤紅」が大よそ2.5Rの位置に配置されているが、実際は、「赤朱」が6R、「赤紅」4Rに配置される。補助色領域60も、純色域、明清色域、暗清色域を有するが、本実施形態では暗清色域側の表示を省略している。清色スケール10内の余裕スペースが限られていることと、実用面では明清色域側を明示すればほぼ間に合うからである。
<レッドバランスの説明とYBリンクの関係>
このように、5Rの「赤」を基準として、両脇に「赤紅」「赤朱」の補助色領域60を配置すると、色表現で重要となる3種類の赤色カテゴリー(これを「レッドバランス」と呼ぶ)となる。このレッドバランスは、全ての色が、5Rの赤を基準として、黄色を含有する色相カテゴリー(これをイエローアンダー色相カテゴリー11=「YU」と定義する)と、黄みを含有しない色相カテゴリー(これをブルーアンダー色相カテゴリー14=「BU」と定義する)に分類する役割も兼ねる。赤を基準とするのは、赤には、「黄みも青みも含まない赤」が存在するので、それが基軸とするのが理論に則っているうえに理解がしやすく、扱いやすくなるからである。具体的に、図1Aのイエローアンダー色相カテゴリー11は、基軸となる赤を含まずに、レッドバランスの「赤朱」を起点として黄側を経て青の手前までの、青自体は含まない範囲となる。また、ブルーアンダー色相カテゴリー14は、基軸となる赤を含まずに、レッドバランスの「赤紅」を起点として紫側を経て青まで(青自体を含む)の範囲となる。従って、このレッドバランスは、YU、BUのスタート基点を分かり易く示すことになる。なお、このイエローアンダーとブルーアンダーの色領域の総称を「YBリンク」として定義しており、ここではカラーコンパスの中心部分に表示している。実際には、YBリンクに入らない赤は存在しにくくどちらかの赤になるのが一般的であるが、このどちらの赤になるかが、色彩上重要なのである。
<レッドバランスの効用(カメラ・モニター等への波及効果)>
5Rの赤の近辺だけを図1Aで見ると、5Rの赤、YU側の(6Rの)「赤朱」、BU側の(4Rの)「赤紅」の3種類の赤が存在することを視覚的に理解できる。レッドバランスは、様々な赤の根本的な考え方を端的に示す手段にもなっている。赤は色彩の中で最重要色とされており、レッドバランスのように、赤を3種のカテゴリーに分けて明示すると、色の調和や色表現等を的確に行うための重要な役割を果たすことができる。例えば、赤の中でも、YUの色群の色とより調和が取りやすい赤は赤朱、BU色群の中の色とより調和が取りやすい赤は赤紅となる。赤の3カテゴリー(「赤朱」「赤」「赤紅」)を理解し使い分けることで、原因がわからずに不調和をおこしていた色の取り合わせへの解決につながる。それは赤の色がレッドバランスで適切に選択できるからである。赤は微妙な色の性質をもっていて、それぞれの赤の違いによって、ムードやイメージにも大きな影響を与える。例えば、赤に黄みや青みがはいっているかいないかで、「ムードやイメージ、似合うか似合わないか」等の意味合いが大きく異なってくる。なお、鳥居や、和装花嫁の伊達襟や口紅に使う赤は赤朱の赤でなければいけない。しかし、現物は赤朱であっても、映像(テレビや写真)での表出が、赤紅になっていることがあり、違和感を与える映像がしばしば見られる。従って、カメラやモニターのソフトウエアに、このカラーコンパスを導入して、レッドバランス機能をとりいれることが望ましい。レッドバランス機能を付帯させることは画期的なことであるから、機器の進歩・改善に大いに役立つ。これまでホワイトバランスはあったが、レッドに関しては取り沙汰されてこなかったので、赤の表現に不満や問題が続いている。またレッドバランスは絵画制作にも有用性がある。後述する肌スケールでも、レッドバランスは重大な役割を担う。
ちなみに、赤が日常的に多く使われる為、それに応じようとして赤系統の色名が増えていった経緯がある。JIS慣用色名の269色でも、赤系統は46色となり1番多い。加えて、黄赤系統や赤紫系統のなかにも、赤っぽさを感じる色もあるので赤傾向の色数は断然多い。多数の赤を、イメージとともに伝達するには、慣用色名、系統色名等をもってしても間に合わないため、不都合さと混乱を生じている。そこで、レッドバランスによって赤を分けた清色スケール10内で各赤色の位置を示せば、数々の問題が解決される。なお、レッドバランス機能をもったMPCS色体系で、色の位置を把握すれば、より適切な調和や配色が、YUとBUの帯表示(YBリンク)で即座に理解することが可能であり、更には、重色や混色への示唆を得ることも可能となる。それはMPCS色体系の清色スケール10は、色を簡潔かつ的確に理論構築したものだからである。なお付記したいのは、調和や配色方法はレベルに応じて多種あって、ここでは「基本的(初級的)配色・調和」を指している。なお、YBリンクによるこの基本的な考え方は簡単であるが、上級への土台となる。
例えば、化粧品や服飾品で頻繁に利用される色相の「赤」に属する色は、JIS規格の慣用色名だけでも、朱色、紅色、えんじ、ルビーレッド、ローズ、ローズレッド、赤橙、ローズピンク、さくら、サーモンピンク、ネールピンクなど多岐に亘る。従って、現場では、JIS慣用色名だけをとっても様々な色名が存在するため、人間同士で実際にイメージする色が一致しない。そればかりか、JIS慣用色名と、それを補う系統色名の両者の色名には、同名であっても異色が存在していたり、異名であっても同色が存在していたりして、混乱をきたしている。
JISの慣用色名は、この色名から万人が色を同じように想像するのは難しい。なぜなら、色名の付け方に理論性があいまいで統一性もないから色を把握するのが困難である。そしてJIS系統色名は、理論性はあるものの問題がある。次にそれを具体的に示す。
JIS慣用色名の「ピンク」は、JIS系統色名では「やわらかい赤(sf)」で、「灰み」が含まれている濁色である。一方、JIS慣用色名の「ローズピンク」は、JIS系統色名では「あかるい紫みの赤」で、「清色」である。つまり、「ピンク」と「ローズピンク」は濁色と清色という根本的な違いがあるが、色名が似ているので、直感的に同じ仲間の似た色と思ってしまう。
またJIS慣用色名の「ももいろ」は、JIS系統色名は「やわらかな赤(sf)」で、「灰み」が含まれてた濁色である。そして「ももいろ」を「ピーチ」の翻訳名と理解する人も多々存在するが、慣用色名「ピーチ」のJIS系統色名は「あかるい灰みの黄赤(lg)」で、「ももいろ」と同じ濁色であっても、異なるトーンとなっており、そのうえ、異なる色相での「別々の色」である。つまり図11Aからわかるように、JISトーンの「あかるい灰み(lg)」は、「やわらかい(sf)」と比較して濁色レベルが大きいが、そのような事実(どんなふう違う色同士なのか)を十分に理解できている人は少ないため「ももいろと」と「ピーチ」の誤解や混乱が生じている。つまり「やわらかい」という言葉が濁色だと認識しにくいという問題や、清濁の区分けやトーンの段階の判別がしにくいという問題がある。JIS系統色名は、色を分かりやすく表記するために規格したものであるにも関わらず、実際には、現場であまり効果をなしていない。なお、「ももいろと」と「ピーチ」が大きく異なる色であることは、このあと、JIS慣用色名マップを使って簡単に説明する。
付け足すと、JIS慣用色名では、純色だけをとりあげても、洋名をただ翻訳しただけで「洋名=和名」になる場合と、「レッド」や「イエロー」や「グリーン」や「ブルー」が、和名の「赤」「黄」「緑」「青」の色と、異なる色となる「洋名≠和名」の場合がある。即ち、洋名と和名の混在によっても色のイメージは困惑している。そして「ももいろ」と「ピーチ」は、色相とトーンの両方が互いにかけはなれているが、その事実さえも理解している者は少ない。ましてやどのような違いかを語れる人はまずいない。そこで、本実施形態のカラーコンパスに含まれる図3の「JIS慣用色名マップ(後述)」を見ればそのことを即座に理解でき、更に、どういう違いがあるかの色理論までも一目で把握できる。つまり本実施形態のカラーコンパスを用いれば、純色に対して、明清色(+1〜+3)、暗清色(−1〜−3)、明濁色(△+1〜△+3)、暗濁色(△−1〜△−3)という「1〜3の数字」のトーン表記で、色理論やトーン段階を即座に理解できるので、誰でも簡単に使用できる。ちなみに、図3のJIS慣用色名マップを見れば「ももいろ」は「2.5赤 △+2」で「ピーチ」は「3橙 △+3」である。この表記から、色相がどれほど大きく離れているかと、トーンが一段階違うということが判断できる。
本実施形態のカラーコンパスのレッドバランスは、多数の赤を整理したり、また、色のイメージを感覚的かつ理論的に把握したりして色カテゴリーを明確にする目的で役に立つ。即ち「赤朱」側のYUの色か「赤紅」側のBUの色かを念頭におくことで、様々な赤色の関係を根本的に理解でき、色のイメージもしやすくなる。例えば、朱色、サーモンピンク、ネールピンク、ピーチはYUに所属しており、紅色、えんじ、さくら、ローズピンク、ルビーレッド、ローズレッドはBUに所属している。黄みが入っている色群(カテゴリー)かを判別するのは、色を扱う上で、重要であることから自覚したり明記させたりすることで色の利用・活用が的確にでき、色調和等にも便宜となる。
このレッドバランスは、一例をあげると各企業の商品のカラーチャートに応用すれば、商品が作りやすくかつ見やすくなる。従来、多数の赤の仲間を、苦心の命名を行って、その場的に羅列していたため相関関係が判然とせず、色が混乱していた。そこでレッドバランスを用いることで、これまで、色が何となく濁るとか、何となく配色がマッチしないとか、身につけたときに顔の色がくすむなどの様々な問題の解決につながる。また赤をレッドバランスで振り分けることで、売りたい色の赤の説明を簡単に行えるようになり、そして適切な組み合わせの色の選択も行えるようになり、広範囲の各種問題を解決することもできるようになる。
なお、レッドバランスによるYUやBUは、調和や配色に効果をもたらすばかりでなく、色そのものの見え方を示すのに効果をもたらす。色は光によって知覚するが、自然光と人工光の双方とも、黄みと青みの光線を含んでいる。黄みを帯びた光線下ではYU色群が美しく映え、青みを帯びた光線下ではBU色群が美しく映える。その相乗効果は、色の魅力を増す見え方となる。つまり、結婚披露宴やレストランのように、黄みを帯びた照明下では、赤の服や赤のインテリアは、YU側の赤朱を用いると輝くような、あでやかな赤となって見え、BU側の赤紅を用いると、赤朱のように前に飛び出す赤ではなく、ちょっと押さえられた赤、静かな赤という見え方が発生する。条件によっては、さえない赤になることもあるので、黄み照明下では赤朱系を用いるのが無難である。これは色理論の補色関係などによるが、色理論を知らなくても、レッドバランスで赤を選択すれば、目的に合った赤を選定できる。赤い服を着た人を、「若く」や「あでやかに」に見せるのか、または「大人びた」や「品格のある」美しさを強調するのかなど、意図的に演出もできる。青み光線は赤朱系をくすませることもあるので注意を要する。即ち、赤ならなんでもいいと考えて、適当な赤を用いると、さえないばかりか雰囲気やイメージが異なってしまうことがある。一方、最適な赤を選定することが出来れば、他の色にない魅力を出せる。
また、このレッドバランスは、「調和色(似合う色)」を選定する際にも便利である。具体的には、イエローアンダーに属している色同士は、互いに調和しやすい。また、イエローアンダー内でも、同レベル(例えば+3)同士の色を組み合わせた方が調和しやすい。これはブルーアンダーでも同様である。
<MPCSにおける清色の系統色名の説明>
既に述べたように、図1Aの清色スケール10は、人間同士の色に関するコミュニケーションを円滑にする。具体的な表現例として、図1Aの純色となる10種類の色相と、各色相の明又は暗清色レベルとなる−3〜+3の数値の組み合わせによって、様々な色を定義できる。例えば、図1Aにおける位置「ア」の色は、「5青の清色レベル+3」と定義でき、感覚的に「かなり白みがかった青」であることを観念(イメージ)できる。これにより、色名とイメージを一致させた状態で、色を把握することが可能となる。また、「青の清色レベル+3」は「5青 +3」と表記する。これはJISトーン表記の「ごくうすい(ベリーペールの)あざやかな青」、PCCSトーン表記の「うすい(ペールトーンの)ビビッドブルー」を意味する。これでわかるとおり、MPCSによれば表記が簡素で且つ分かりやすくなり、覚えやすく、なおかつ、既存のトーンとの変換も可能となる。なお「+3」はJISとPCCSではトーン名が「「ごくうすい(ベリーペールの)」と「うすい(ペールトーンの」と異なっている紛らわしさがある。「+3」だけでの分かり易く覚えやすいMPCS色体系の表記が、いかに便利かがわかる。
なお、図1Aの清色スケール10では、「1」刻みでレベルを設定したが、0.5刻みのレベル設定も勿論可能である。更にレベルの絶対値を「3」ではなく「10」などに設定することも可能である。勿論、数字ではなくアルファベット順等の他のレベル表記手法を用いることも可能である。
更に図1Aの清色スケール10では、明清色域50と暗清色域30で、そのレベルを多段階(ここでは3段階)に区分けしている。これにより、単純でわかりやすく、使い勝手が向上する。具体的に各レベルは、黒又は白の含有量で段階的かつ等歩度的に区分されている。なお、3つの数字だけで表す3段階は簡潔かつ単純にするには適切である。
なお、図1Aの清色スケール10では、明清色域50を「+1〜+3」、暗清色域30を「−1〜−3」の3つの数字で表現したが、例えば、MPCS色体系の独自の表示用語として、明清色域50の「+3」を「かなり明るい」、「+2」を「明るい」、「+1」を「やや明るい」、暗清色域40の「−1」を「やや暗い」、「−2」を「暗い」、「−3」を「かなり暗い」というように、色の明暗を基準とした文字で区分することも可能である。これらは、JISトーン表記を参考に、明清色域50の「+3」を「ベリーペール(ごくうすい)」、「+2」を「ペール(うすい)」、「+1」を「ライト(明るい)」、純色域40を「ビビッド(あざやか)」、暗清色域40の「−1」を「ディープ(濃い)」、−2を「ダーク(暗い)」、「−3」を「ベリーダーク(ごく暗い)」という文字に対応させることも可能である。また、PCCSのトーン表記に対応させることも可能である。しかしながら、既存のトーン表記はJISとPCCSだけでも混乱させている現状があるので、これらの表記から独立し、且つ改善した表記とするためにも、数値(例えば+3〜−3)を用いるのが、効率も良く利便性に長ける。なおJISとの対応をしやすくするためにJISの略記号を付記してもよい。
<濁色スケールの全体説明>
図2Aには、図1Aの清色スケール10を基準とし、その純色に「灰み」を加えた濁色で構成される濁色スケール12が示されている。なお、図2Aは、濁色スケール内に表示される文字を省略し、図面説明用の符号を付したものであり、図2Bは、図面説明用の符号を省略し、濁色スケール内に実際に表示される文字を付したもので実際図となる。なお、必要に応じて、半径方向に沿って灰色のみの濁色レベル(明るい灰色、中位の灰色、暗い灰色)をどこかに表示しておくと、一層、有彩色の濁色レベルの理解が促進される。
<MPCSの濁色スケールのトーン表記の解説>
図2Bの濁色スケール12は、半径方向に伸びて同方向に色が段階的に配置される濁色領域25を合計10個(規定色相数)有している。濁色領域25が、清色スケール10と異なる点は、JISトーンで説明すると清色スケールの中心(レベル0)が純色(あざやかな色「vv」)であるのに対し、濁色スケールは、その中心が半径方向に広い範囲を示すようになっており、しかもその両端「±1」に分かれている。この理由を、トーンとの関係において図11でもって説明する。
図11Aの「(馬蹄形)MPCSトーン表」の有彩色領域内において、最も外側の半楕円領域(馬蹄形領域)が清色スケール10に相当し、この清色スケールの内側の半楕円領域(内側の馬蹄形領域)が濁色スケールに相当する。したがって、清色スケールに相当する領域では、「0」の純色を基準に、左側に移動するにつれて、明清色域では+1〜+3の段階的な修飾語を付与し、暗清色域では−1〜−3の段階的な修飾語を付与する。この数字は図11AのMPCSトーン表の下側に付記した符号表の上段に相当する。このことは、清色スケール10では、「MPCSトーン表」の最も外側の半楕円領域を、円盤の半径方向の色領域20に直線的に展開した構造となるのだが、この点は、既に説明した通りである。
次に濁色スケールでのトーン表関係の説明をする。図11Aの「(馬蹄形)MPCSトーン表」の内側にある(馬蹄形の)濁色スケールの段階は、純色のトーン表記(0)に相当する彩度となるトーンが存在しないことが分かる。即ち、濁色スケールにおける彩度が最も高いトーン表記(「△+1」又は「△−1」)は、清色スケールのトーン表記「+1」「−1」の彩度に相当する。そして、濁色スケールの段階は、左側に移動するにつれて、上側の明濁色域では「△+1〜△+3」の段階的な符号(番号)を付与し、下側の暗濁色域では「△−1〜△−3」の段階的な符号(番号)を付与する。即ち、濁色スケール12では、「MPCSトーン表」の内側の半楕円領域(馬蹄形)を、円盤の半径方向の色領域25に直線的に展開した構造となる点は、清色スケールと同様である。なお、明清色域及び暗清色域の「+1〜+3」と「−1〜−3」の数値表現に関して、明濁色域と暗濁色域の数値表記を区別するために、トーン表記として前に「△」をつける。そして分かりやすく説明する為に、「+1」と「−1」側の色の領域を点線でつなげることで、トンネルのようにつながっている意味合いを、視覚的に理解できるようにしていることを図2Bに示している。なお点線内に、便宜上、純色の各色名を配置して分かり易くしている(本来のツールは点線内が規定色10色で着色されている)。トーン図を清色スケール、濁色スケールに展開する概念は、図11Bを参照して欲しい。このように、清色の「+1」「−1」に対して濁色の「△+1」「△−1」、清色の「+2」「−2」に対して濁色の「△+2」「△−2」、清色の「+3」「−3」に対して濁色の「△+3」「△−3」が対応するように展開すると、共通の軸で、清色と濁色を対比させながらトーン表記できることがわかる。なお、「△±1」はJISトーンの「ストロング」に相当する。ストロングは最も微妙なトーンで理解しにくいことから、更に「△+1」と「△−1」に細分化しても良い。
<濁色スケールの詳細説明>
図2Aの濁色スケール12の最外周には、MPCS色相記号が示されている。これは、図1Aの清色スケールの主軸の色相に合わせたものとなっている。MPCS色体系は、清色スケールが基本となっているので、図1Aの清色スケールと図2Aの濁色スケールの主軸の色相を合わせておけば、各色の純色(清色)と濁色の相間を一目瞭然に理解できる。例えば、緑で説明すると、濁色スケールの5G/5緑の半径軸は、純色の5G/5緑の濁色段階を示したものとなる。
清色スケールと同じように 図2Aの各濁色領域25は、色相順に周方向に等間隔で並ぶことによって環状(放射状)となる。即ち、全体的に見ると、10個の濁色領域25が、360度の10分割となる36度間隔で放射状に配置される。なお清色スケールと同様に100分割又はそれ以上の分割も可能である。
濁色領域25の各々は、半径方向の内側から外側に向かって列状に、暗濁色域35と、明濁色域55がこの順に並んでいる。これも清色スケールと同様である。
図2Aでの濁色スケール12では、点線で示されるように、暗濁色域35のさらに内側に、レベル−4となる「色味を帯びた黒に近い無彩色領域」34が配置されている。また、明濁色域55のさらに外側に、レベル+4となる「色味を帯びた白に近い無彩色領域」56が配置されている。なお、無彩色域の±4に色を表示する際は点線の△を付帯させることで、有彩色と無彩色の区別を視覚的に図るようにしている。
<濁色スケールのストロングの説明>
図2Aの暗濁色域35の半径方向外側端の「△−1」と、明濁色域55の半径方向内側端の「△+1」は、同じトーン名の色(「△±1」)となり、そこには清色スケールの各純色に対して中位の灰色を含めたJISトーンのストロング色(つよい色)となる。具体的には、明度が中レベルで、彩度が高レベルの「わずかな灰み」を有する濁色子(551、353)が配置される。
<濁色スケールの暗濁色域の説明>
図2Aの暗濁色域35は、清色スケールの暗清色域と同様に3段階をなしていて、半径方向内側に向かうほど黒に近い灰色に近づく。この暗濁色は、純色に対して暗い灰色を含む色と定義することができ、純色に含められる灰色の暗さレベルが3段階となる。具体的に例えば、明度・彩度共に純色よりも低レベルの「灰み」を有する暗濁色子351、352、353が均等間隔で配置される。図2Bに示されるように、純色に対して「かなり暗い灰色」を加算することで、彩度及び明度が純色よりもかなり低くなる暗濁色子351を「△−3」、純色に対し「暗い灰色」を加算することで、彩度及び明度が純色よりも中程度に低くなる暗濁色子352を「△−2」、純色に対し「やや暗い」灰色を加算することで、彩度及び明度が純色よりもやや低くなる暗濁色子353を「△−1」と定義することによって、色に関するコミュニケーションの簡略化を図る。特記すると、上記のように複雑でわかりにくい馬蹄形のトーン表がMPCS色体系(カラーコンパス)によって、円の半径軸に表記されることで、トーンのレベルの段階が、一目で理解できるのである。また清濁を1枚にしたベーシックスケールは濁色スケールだけよりも一層有効である。
<濁色スケールの明濁色域の説明>
図2Aの明濁色域55は、清色スケールの明清色域と同様に3段階をなしていて、半径方向外側に向かうほど明るくなる(白に近い灰色に近づく)。この明濁色は、純色に対して明るい灰色を含む色と定義することができ、純色に含められる灰色の明るさレベルが3段階となる。具体的に例えば、純色よりも明度が高レベルで彩度が低レベルの「灰み」を加算する明濁色子551、552、552が均等間隔で配置される。図2Bに示されるように、純色に対して「やや明るい灰色」を加算することで、明度が純色よりもやや高くなり且つ彩度が純色よりもやや低くなる明濁色子551を「△+1」、純色に対して「明るい灰色」を加算することで、明度が純色よりも中程度に高く且つ彩度が純色よりも中程度に低くなる明濁色子552を「△+2」、純色に対して「かなり明るい灰色」を加算することで、明度が純色よりもかなり高くなり且つ彩度が純色よりもかなり低くなる明濁色子553を「△+3」、と定義することによって、色に関するコミュニケーションの簡略化を図る。
<MPCSにおける濁色のトーンと三角の説明>
図2Aの濁色スケール12では、清色を排除することで、濁色を分かりやすくしている。なぜなら、そもそも濁色は理解しにくいので、清色と切り離すのが有効だからである。濁色の表現として、色相名(5R/5赤、5YR/5橙、5Y/5黄、5GY/5黄緑、5G/5緑、5BG/5青緑、5B/5青、5PB/5青紫、5P/5紫、5RP/5赤紫)と、各色相名に対して、濁色レベルとなる△−3、△−2、△±1、△+2、△+3の数値の組み合わせによって、様々な色を定義できる。例えば、図2Aにおける位置「イ」の色は、「10橙 △+3」となる。これを図12のJISトーン表記及びJIS系統色名に対応させると「ライトグレイッシュイ」で、「明るい灰みの赤みを帯びた黄」となる。これらの複雑な文字表記を3つの数字で簡潔化し、色の位置からイメージも整理がしやすく、混乱を防止できる。ちなみに「イ」の色は、「ベージュ」である。つまり、「ベージュ」は「10橙 △+3」という簡単なうえに色の解説を含む表記なのである。
なお、彩度は表しにくさがあるばかりでなく、人が明確に感じにくいので、トーン表示による明度と彩度を融合させた表現は、人間の見た目にあった表現と言える。彩度は、とくに濁色において見届けにくいが大きな影響を色に与えるのである。なんとなくの現象(色がにごる、不調和だ、色制作に不具合が生じる、不似合いだ、違和感がある等)は、彩度での灰みがかかわっていることがある。これはYBリンクでの濁色の不整合が考えられる。つまりYUやBUが不整合での濁色が原因になることがあるので、YBリンクは濁色スケールにおいても、清色スケールと同様に重要である。なお、一目で濁色とわかるように△(濁色マーク)を付帯させている。
なお、ここでは濁色におけるトーンのレベルを、△−3、△−2、△±1、△+2、△+3の段階で表示するようにしているが、これに加えて又はこれに代えて、他のトーン表記を表示することもできる。
なお、MPCS色体系の無彩色の灰色のレベルとなる「明るい灰色」「中位の灰色」「暗い灰色」の考え方は、PCCSの灰色レベルも3段階なので、互いに変換しやすい。ちなみに、JISの灰色のレベルは4段階である。従って、JISとの変換を容易にするためには、灰みのレベルを4段階に設定することも好ましい。
<ベーシックスケールの説明>
清色スケールと濁色スケールを重ね合わせて一枚のスケールにしたものを、ここでは「ベーシックスケール」と定義する。なお、この「ベーシックスケール」には、清色スケールと濁色スケールに加えて、無彩色の段階(色みを帯びた無彩色と白や黒)や、マンセル色相値及びMPCS色相名を表示しておくことが好ましい。なお、10規定色はMPCS色相名で作成されているのでマンセル色相値は参考の為の付記している。この「ベーシックスケール」は、清色スケールと濁色スケールを同時に把握できることから、MPCS色体系全体を俯瞰でき、実用性の極めて高いツールとなる。このベーシックスケールを利用して、派生スケールと応用スケールを生成できる。
次にこの派生スケールを説明する。「派生スケール」は2つあり、図3の(1)JIS慣用色名マップと図4の(2)MPCS色名マップがある。(1)(2)共にJISの系統色名の表記法で、ベーシックスケール上に色を配置したものである。
<(1)JIS慣用色名マップ>
図3にはJIS慣用色名マップ13が示されている。このJIS慣用色名マップ13は、ベーシックスケール上にJIS系統色名に基づいて、JIS慣用色名をそのまま表記したものである。つまりJIS慣用色名のマンセル値通りに色を表示させるために、最外周にはマンセル色相値を表示している。JIS慣用色名が清色の場合は、色名と共にその場所に○を表示し、かつ、ベーシックスケールの通り、○の半径方向の位置によって「−3〜+3」の清色レベルを示す。JIS慣用色名が濁色の場合は、色名と共にその場所に△を表示し、かつ、ベーシックスケールの通り、△の半径方向の位置によって「△−3〜△+3」の濁色レベルを示す。このようにすることで、JIS慣用色名と、ベーシックスケール(清色スケールと濁色スケール)を極めて分かり易く統合できる。なお、マンセル値に従って色を表示しているので、〇や△はピンポイントの表示となる。
JIS慣用色名は、色名の命名に規則性(及び理論性)がうすために色のイメージがつかみにくい。述べてきたように翻訳が一致しない色もある。結果、色の、誤解や伝達ミスなどの数々の問題をおこしている。そこで、この図3のJIS慣用色名マップ13を用いることで、JIS慣用色名の各色の地図位置から、他の色との比較、色そのものの正確なイメージをひと目で読み取ることができ、結果、JIS慣用色名を簡便に使いこなすことができる。つまり、JIS慣用色名での各色は、どのような色なのかが、即、わかるのである。産業・教育等でJIS慣用色名が用いられる場面が多いので、JIS慣用色名の理解を深めるJIS慣用色名マップ13の存在意義は大きい。なお、この図3では実用面で必要となるJIS慣用色名(基準となる色・比較したほうが良い色・誤解しやすい色・覚えておいた方が良い色)を抽出表示しているが、全ての色を表示しても良いし、必要に応じて個人的に追記入しても良いことは無論である。なお、主軸から純色がずれている場合は、その純色を「●」で表記すると同時に、主軸には空欄を意味する点線の「○」を配置することで、ずれの大きさと、その純色名が一目でわかるようにしている。
<(2)MPCS色名マップ>
派生スケールの(2)MPCS色名マップを説明する。図4にはMPCS色名マップが示されている。このMPCS色名マップ15は、JIS慣用色名マップ13を参考に、現場で用いる際の実用性を一層高めるために作成したものである。JIS慣用色名マップ13におけるJIS慣用色名の位置を、範囲(面積)を持ち合わせて明記したものである。色はピンポイントで示されるより範囲でもって表記するのが理論的にもふさわしいことから、このMPCS色名マップは理論的にも実用的にも優れた表現図と言える。理論や実用に沿わせるために図3の慣用色名マップを微調整して再配置したものということもできる。
JIS慣用色名は、各色に一つのマンセル値を表記していることから、理論上、地図上の「一点」となるが、現場の実情から鑑みると、色はある程度の範囲を有していると考えるべきである。従って、図4のMPCS色名マップ15では、JIS慣用色名が清色の場合は、ある程度の面積を有する円形、楕円等の範囲で示し、濁色の場合は、ある程度の面積を有する三角形等の範囲で示す。なお、MPCS色名マップ15の場合は、様々な形状の範囲を示したいので、その観点では清色と濁色の区別を○と△で行う場合に限られず、例えば実線で囲った範囲を清色とし、点線で囲った範囲を濁色と区別することもできるであろう。線種ではなく、線の色や太さで清色・濁色を区別しても良いであろう。
最外周にはマンセル色相値ではなく、MPCS色相記号(5赤・5橙・5黄・5黄緑・5緑・5青緑・5青・5青紫・5紫・5赤紫)が付帯する。つまり、MPCS色体系の10規定色を基準にしてJIS慣用色名を再配置したものであることから、このマップではマンセル色相値ではなくMPCS色相記号が最外周に表示されなければならない。つまり、図3で示したJIS慣用色名マップでは、マンセル色相を基準に主軸を配置したので純色の黄緑・緑・青緑・青・青紫・紫は、主軸からずれることになるが、図4のMPCS色名マップでは、図3ではずれていた黄緑・緑・青緑・青・青紫・紫の色が、MPCS色相の主軸に配置される。このように、MPCS色相記号は、マンセル色相値と対応させているものの、MPCS色体系の純色の色であるという意味を持たせる必要性から、ずれを修正している色があることを示すために、あえて、マンセル色相値と異なる表記にしている。具体的には「5B」を「5青」というように異ならせている。
図4のMPCS色名マップ15に表示される色は、実用的に重要な色の中から更に選択的に表示したものであり、この他に必用に応じて、色を足してゆくことも勿論可能である。図4のMPCS色名マップ15では、純色の赤・橙・黄・黄緑・緑・青緑・青・青紫・紫・赤紫を理論色(理想色)での10規定色とし、この10色からの相関関係で展開したものである。実用的にはこのマップの色の概念が重要で、これによって色が統一され、色関係での会議等のカラーコミュニケーションの場において、共通概念で議論ができるようになり、更には、難しかった色のイメージの複数者間での共有を可能にし、色伝達の向上につながる。MPCS色名マップには10規定色と、ピンク・ブラウン(茶)・空色を必須として実用主要色としておくことが好ましい。実用面では、規定色と合わせたこの13色と白・灰色・黒の合計16色(基準色と呼ぶ)があれば基本的構築ができる。
MPCS色名マップ15で特筆すべきは、一般的又は現場で混同しやすい色や注意すべき色は、このJIS慣用色名の問題を改善する目的で、一部の色の位置を、マンセル値を鑑みて修正し、更に、色のその目的に沿った範囲(エリア)として提示させたことである。その修正は理論に則っている。これにより、MPCS色体系の便覧図のような意味合いを持たせている。即ち、JIS慣用色名の色名問題を解決するために再配置していることから、図3で示したJIS慣用色名マップと区別する為に、図4のマップ名称は「MPCS色名」マップと名付ける。
更に図4のMPCS色名マップ15では、明確にしたほうがよい複数の色をくくった「群」という概念も導入して、広範囲な領域を別途の形(点線)で括っている。例えば、「マゼンタピンク群」と「うす赤ピンク群」と「オレンジピンク群」には、JIS慣用色名に相当する「さくら」「ももいろ」「サーモンピンク」「ピーチ」等がまとめて括られている。
更に具体的に説明する。たとえば、「ターコイズブルー」は、JIS系統色名は「明るい緑みの青」である。図3のJIS慣用色名マップにおいて「ターコイズブルー」は「5B」の位置にある。つまり「5B」は「緑みの青」であって青ではない。青のマンセル値は「10B」である。青は青であることが、実用の場では求められることから、図3のJIS慣用色名マップにおける「青」の「10B」を、図4のMPCS色名マップでは主軸の「5青」へ移動させた。図4をみれば、「水色」は「ターコイズブルー」よりトーンが高く、「そら色」は「青」よりトーンが高い色であることが一目でわかる。ちなみに「青」や「そら色」は、緑みが含まれていないこともわかる。「みず色」は「そら色」と違い、多少緑みがかかっている。「ターコイズブルー」より明るいのが「みず色」で、「そら色」は緑みがないという違いも瞬時に理解できる。つまり、図3のJIS慣用色名マップの「そら色」「みず色」「ターコイズブルー」と、図4のMPCS色名マップ15のこれらの色で表示位置を異ならせているのは、図4のMPCS色名マップでの現場の実用性や便利度を高めるためと、使用頻度の高い色は色の位置を定めて色ブレをしないようにするためである。
「そら色・みず色・ターコイズブルー」のように一見似た3種の色で、従来、区別の付け方がわからずに混乱しているものであっても、図4のMPCS色名マップ15では一目で見分けることができる。結果、あまり色を勉強していない人でもこのMPCS色名マップ15を見れば、全ての色の裏付けが自ずと理解でき、色の位置で色の理解ができる。このように、色の配置に理論性を加えると、色を頭で考えて色をイメージできるので応用もきく。そのうえ既知の色名の存在しない色であっても、マップ上で提示すれば、その色を簡単に想像できる。結果、新しい色を決める時や色の企画やカラーコミュニケーションも円滑になる。結果、MPCS色名マップを用いれば、電子メールや電話でも色関係の話が理解した上でできる。要するに、MPCS色名マップ15は、JIS慣用色名をはじめ、色名の発祥根拠(色理論)を示しながら、各色の概念基準を示す実用的ツールとなる。例えば必要に応じて、図3のJIS慣用色名マップで慣用色名の色の色相値とトーン(系統色名)を確認し、実際には図4のMPCS色名マップで色の詳細の検討をし、新しい企画・新色決定等を行い、MPCS色名マップに新色を追記することで、色情報も保管することが効率よく出来るのである。なお、図4のMPCS色名マップは、全色を示すことができるものであって、この全色に「色の配置に関する理論がある」のだが、ここでは代表色のみの説明にとどめる。
MPCS色名マップ15中のレッドバランスの近辺は、高トーン(+2・+3)の赤系統の色表現に効果を発揮する。例えば「ピンク」は、赤系統の高トーンである。JIS系統色名に於いて「ピンク」は「(ソフト)やわらかい赤」で、「灰み」、つまり「濁色」としている。しかし、一般的(通念的)にピンクは「清色」と捉えられている。つまり「赤系統に白を混ぜた色」との理解である。そのギャップを明確に認識している者が少ないために、ピンクの色扱いでのトラブルが発生する。そこで、レッドバランスを用いて、赤朱側(YU側)のピンクを「オレンジピンク群」とし、理想色の「赤」(5赤)に白を加量したものを「うす赤(ピンク)群」とし、赤紅側(BU側)のピンクを「マゼンタピンク群」とする。赤系統で何となく不具合な色になるというときは、レッドバランスの赤の取り違いが考えられる(または、濁色と清色の誤りもある)。そして、白が加量された清色ピンクか、明るい灰色が加量された濁色ピンクかを一目で理解させるために、清色○(丸)と濁色の△(三角)マークはここでも効果を発揮する。更に、一般的理解と、JIS慣用色名との不整合を解決するために、日常的なピンクは、マゼンタピンク群とみるほうがより実用性があるので、マゼンタピンク群に「ピンク群」と付記する。更に、実用上の「ピンク」は、青みが僅かに加量された高トーンの清色(○表示)の場合と、濁色(△表示)の場合の双方が含まれるので、図4のMPCS色名マップでは、清色の○マークに濁色の△マークを重ねている(ちなみに、「えんじ」も△と○を重ねている)。このように赤系統色を整理し、群や清濁によって区分けをすると、多数存在する赤系統の色が整理され、混乱を相当に防ぐことができる。
また、この3つのピンク群を利用した区分けは、イメージやムードの使い分けにも役立つ。オレンジピンク群は大人びたピンクで知的というイメージにつながり、マゼンタピンク群は可愛いというイメージにつながる。色は青みが入ると落ち着く方向にいくのだが(「色+青み」は、沈む・落ち着く傾向がある)、ピンクの場合、白の含有量との兼ね合いで青みが加量されると、幼さや愛くるしさや可愛いらしさというイメージになる。これは多種の性質を持つ赤という色の特徴で、強い印象のショッキングピンクにも赤の特殊な性質がある。なお、ショッキングピンクには黄みは入っていない。このように、ピンクの青みと黄みは、イメージやムードをガラリと変える。これらは(例えば)ファッション界に必要な知識で、YUカテゴリーとBUカテゴリーを明確にして、3つのピンク群(赤群)を踏まえることで、ターゲット(年齢)や目的イメージなどに応じた商品を、より的確に企画することができる。
高トーンのピンクの次に、純色の「あざやかな赤」の活用例を具体的に説明する。JIS慣用色名には、系統色名での「あざやかな赤」の色が多数存在する。「赤」「レッド」「ばら色」「ローズ」「べに色」「べに赤」「からくれない」「カーマイン」「ストロベリー」「トマトレッド」「シグナルレッド」「ポピーレッド」がある。これらは『あざやか赤』という同じ系統色名だが全て異色である。そもそも、JIS慣用色名には、その命名にきっちりした理論性がないので、色名からのイメージが錯綜し、イメージを揃えることができず、色表示としては不十分で混乱のもとにもなっていた。JIS系統色名は、慣用色名でのこの不十分さを補うように作成されたが、1つの修飾語である「あざやかな」が付く色だけを取り出しても多すぎて、これまた不十分である。あまりにも色相の情報が大雑把すぎるのである。つまり、赤をとってみると、オレンジ寄りの赤でも、マゼンタ寄りの赤でも、すべて同じ「あざやかな赤」になるのである。そこでMPCS色体系は、MPCS色相をマンセル色相値に対応させて、微妙な色相まで表現できるようにしたのである。つまり、マンセル色体系同様、100分割でもそれ以上でも詳しい色相を明記できる。そして視覚的に表現する地図法式なので、一目で詳細な色相情報が理解できる。なお「ローズ」と「ばら色」は、マンセル値(彩度値)が異なる別々の色である。翻訳での同一色ではないことも付記しておく。
すでにMPCS色名マップについて説明をしているが、ここで補足説明を行う。JIS慣用色名は広く普及しているので、このJIS慣用色名を、より実用的に使える事が理想である。しかし、JIS慣用色名には問題がいくつかある。JIS慣用色名はマンセル準拠でマンセル値表記をしているが、「青」をとりあげて説明すると、「旧マンセル」では青は「5B」に位置していたのに対し、「修正マンセル」では「青」は「10B」の位置になっている。このズレが企業も色彩専門家でも意識できていないことが多く、「青」の色の扱いが乱れている。これは特に実用面で困る現象に繋がっている。そこで、実用性をテーマとしているMPCS色名マップでは、JIS慣用色名を使いやすいものに改良するために、「青」は「5青」に位置させるようにし、これを基準に、青相関の色が理論と共に地図式に配置されている。だから、外周にはマンセル色相値ではなくMPCS色相値(5青)が記入されている。なお、図3のJIS慣用色名マップは、図1及び図2の清色スケールと濁色スケールの主軸を重ねたベーシックスケールの主軸を一緒に表示しているが、これは本出願において説明の便宜の理由から表示しているものであり、主軸は表示しておく必要はない。図4のMPCS色名マップのように、主軸を省略すると本来の色の分布が見やすくなるので好ましい。実際のツールでは、ベーシックスケールの主軸のみを記載したプレートの上に、透明のMPCS色名マップを重ねることで、一層見やすいものにできる。
また図4のMPCS色名マップ15をみれば、同名・異色や異名・同色を解決できる。例えば「ピンク」「ももいろ」「こうばいいろ」が、灰みがかっている(濁色)か否かも表示手法で示される(ここでは濁色であることを示す三角形が表示される)。結果、清色と受け止められがちのこれらの3色は、実際は濁色であることがわかる。
<JIS系統色名の説明>
図4のMPCS色名マップ15に示される「ベージュ」のJIS系統色名は「明るい灰みの赤みを帯びた黄」である。色相は同じで明るさが増すと「生成り」となるが、この「生成り」のJIS系統色名は「赤みを帯びた黄みの白」(図12Aのトーン表参照)である。このように系統色名は複雑すぎるうえ、「赤みを帯びた黄みの白」という表現は相当にわかりにくい。
ちなみに「アイボリー」の系統色名は「赤みを帯びた黄みのうすい灰色」(図12Aのトーン表参照)となり、これも相当にわかりにくい。しかも「アイボリー」は「生成り」と共に無彩色扱いとなり複雑極まる。このように、従来、慣用色名や系統色名で、難解または複雑となっていた表現の色を、MPCS色名マップ15では、位置(色相・トーン)と、清色や濁色の〇と△を組み合わせて示すことによって、色を視覚的に理解できるようになる。
ここで理論色(理想色)について説明する。MPCS色体系では「赤・青・黄」を「3元色」とし、混ざりのない純粋色と定義する。即ち、赤は黄みも青みもない赤、黄は赤みも青みもない黄、青は黄みも赤みもない青と定義する。それに赤の反対色の緑と紫を加えて、色の基になる5基本色とし、これらの5基本色の中間色5色(黄赤・黄緑・青緑・青紫・赤紫)を加えて10規定色とする。上記「色の基となる5基本色」は理論的な色であって、実際の色再現・提示は近似色になる場合があるので、それと区別するために『理論色(理想色)』とする。図4の「MPCS色名マップ」は、「MPCS色名」とあるように、この10規定色を表記している。この10規定色は、修正マンセルの色相環での10色とは異なる色ずれ部分があるので、マンセル値に対応しているが、実際のマンセル値ではないため、MPCS色相記号表記となる。
<MPCS色名マップでの黄近辺の説明>
次に図4のMPCS色名マップを参照して黄色近辺を事例とともに説明する。黄色近辺も、赤系統同様、日常関係で使用頻度が高い色である。まずは、黄色近辺の清濁色の事例をあげて説明する。例えば「ヤマブキ色・エクルベージュ・クリーム色」は清色であり(○で表示)、「おうど・ベージュ・すすたけ色」は濁色(△で表示)である。なお「生成り・アイボリー」は無彩色なので点線表記となる。
「生成り」は、JIS慣用色名では"色みを帯びた無彩色"として扱っている。「生成り」は、JIS系統色名では「赤みを帯びた黄みの白」で、PCCSでは「ペールトーンより明るめ」という双方異なった表記である。しかもこれらの表現はわかりにくい。MPCS色体系だと、「〇10橙+4」(〇は無彩色を意味する点線表記)と表記するだけである。色相が「10YR」に対応した色であり、無彩色であって、かつ、かなり白っぽい色であることが理解できる。そしてこれは、マップをみれば視覚的に一目瞭然で、色理論までも即時に理解できる。
同様に「アイボリー」は、JIS系統色名では「赤みを帯びた黄みのうすい灰色」となるが、MPCS色名マップでは「△2.5黄+4」(△は無彩色を意味する点線表記)と表示される。JIS系統色名の「赤みを帯びた黄み」は、色相幅が大きすぎて、19YRから2.5Yまでの幅があり、しかも表現(言葉や文)がわかりにくい。MPCS色名マップではそれも解決している。(10YR対応の)「10橙」、(2.5Y対応の)「2.5黄」というように、0・5までの色相表示がされている。
次に「エクルベージュ」と「ベージュ」を説明する。「エクルベージュ」のJIS系統色名は「うすい赤みの黄」となり、MPCS色名マップは「7.5橙+2」と表す。「ベージュ」のJIS系統色名は「明るい灰みの赤み帯びた黄」となり、MPCS色名マップでは「△10橙+3」と表示される。両者を比較すると、MPCS色名マップなら、「ベージュ」が濁色であることがひと目で判り、両者の色相の違いの理由までわかるが、JIS系統色名では、清濁判別ばかりでなく色の説明がわかりにくいうえに、不十分な説明である。なお、ここでは清色には○を付けず濁色のみ△を付けるようにしている。
なお、図4のMPCS色名マップでは、「ベージュ」の実用的な範囲は、トーンの低い色まで用いられる傾向があるので、その実用面から「ベージュ」の色範囲を長い三角形にすることで、現場の傾向と整合させている。
次に「すすたけ色」を説明する。「すすたけ色」は、JIS系統色名では「赤みを帯びた黄みの暗い灰色」(これも長い文でわかりにくい)で、MPCS色体系では「△9.5橙−4」(△は無彩色だが灰みがかかっていることを意味する点線表記)となる。従って、黒に近い無彩色と言うことがひと目で判る。つまり、MPCS色名マップは、表記だけでも十分に色がイメージでき、それだけでも分かりやすいが、マップを見ればもっと理解が早く確実となり、ミスが少なくなる。
また、MPCS色名マップを見ると、10橙の色には、「生成り」「ベージュ」「やまぶき」「おうど」がある。これらは同じ色相で「やまぶき」を濁色かつ高トーンにしたのがベージュで、濁色かつ低トーンにしたのが「おうど」であるということが瞬時にわかる。ちなみに「おうど色」のJIS系統色名は「くすんだ赤みの黄」である。上記の4色はファッション・インテリア・建築等に利用度が高い色だが、この清濁の相異やトーンを知ることで適切に色を扱うことができる。また、「茶色」と「こげ茶」について説明をすると、これらは、JIS系統色名では共に「暗い灰みの黄赤」の「ダーク」になっているが、色見本を見るまでもなく両者は異なる色というのが一般的である。そこで、MPCS色名マップでは、トーンで区別して茶色を「△5橙−2」、こげ茶を「△5橙−3」としている。このようにJIS慣用色名の色で、修正を加えた方が実用に沿っている色は、MPCS色名マップでは移動させている。
また上記において橙付近の色にも触れたが、この辺りの色は医学・生理学関係や肌関係に大きく関わってくる。そこで応用スケールとして、「肌スケール(花肌円)」を作成したがそれは後述する。医学・生理学関係の「医学用部分マップ」をここで簡単に説明する。
尿や便等の色表現に赤色・茶色・褐色・黄褐色・赤褐色や茶褐色・暗褐色・淡赤色・琥珀色・チョコレート色・ウイスキー色・ワイン色・コーラ色・コーヒー色・ココア色・紅茶色・黄色・山吹色・焦げ茶色・白色・緑色等がでてくる。これらは脈絡がなく、統一性のない色名の使い方をしている。そこでMPCS色体系の「医学用部分マップ(5橙を中心に180度から150度を拡大した半円形や扇形)」を用いて、清濁を踏まえた色の整理をし、色提示をすれば合理的かつ医学の詳細情報となり診断や医学教育等に偉力を発揮する。患者からは「チョコレート色の便」の訴えが多数ある。「便は、血液の色で肛門より遠いと古い血になり黒ずんだ茶色になる。」からして清色のチョコレートか、濁色のくすんだ褐色かによって、診断がしやすくなるというような色の活用法ができる。つまり「医学用部分マップ」で医学的色地図を作成して、色統一及び色提示をするのである。
この「医学用部分マップ」は、色相の提示が色の成り立ちからの3段階表記であることと、○と△でもって表現しているので、患者にも医学生にもわかりやすいため、誰でもこのマップを使って症状の説明がしやすくなる。これまた、カラーコミュニケーションアップが医学界でも発揮するのである。医学関係の他にも目的に応じてベーシックスケールの一部を拡大してツールを作成することができるのである。なお、図4のMPCS色名マップでは、「はだ色」や「チョコレート」や「かっ色」や「セピア」が清色(〇表記)であること、「あんず」や「ちゃ色」や「こげ茶」や「おうど色」が濁色(△表記)であることを紹介しておく。
後ほど詳述する肌スケールでは、図4のMPCS色名マップで示すように「肌色」は色彩理論通り清色で灰みのない色となる。肌にはくすみがあるので、肌スケールではそれを黒に近い暗い灰色ドットで示し、肌に加算された見え方になることを肌スケールの図で示している。図4のMPCS色名マップで示すように、肌色に重要な「かっ色」も清色扱いになる。これらがくすんだ色ではなく清色であることが重要なのである。
なお、ここでは、濁色表示を三角形の記号で清色と区別したが、濁色レベルを数値や文字で示すなど、またその他の記号や他の方法によって清色と区別することも勿論可能である。
ここでは特に図示しないが、赤を起点としたイエローアンダー色相カテゴリーとブルーアンダー色相カテゴリーの終点となる青の両脇にも、ブルーバランスとして一対の補助色領域を配置することも考えられる。重要度からすると、レッドバランスの方がずっと高い。また、青を中心に右が黄みがかる、左が赤みがかるというものでレッドバランスと意味が異なる。青は赤と同様に特異な色性質をもつ色である。
<比較スケール(明度版JIS慣用色名比較マップ)の説明>
図5の比較スケール16は、半径方向の中心からの距離が明度値となる明度目盛が表示されており、この目盛が各色相に放射状に備えている。この比較スケール16では、半径方向の中心側が明度1、半径方向の最も外側が明度10となり、周方向が色相の遷移となる。比較スケール16には、JIS慣用色名の各色が、明度値と色相値を基準に配置される。つまり、清色スケールの「+3〜−3」のトーン段階ではなく、JISの明度値「1〜10」を用いている。なお、ここでも、図3及び図4で示した「JIS慣用色名マップ」及び「MPCS色名マップ」と同様に、清色ではなく濁色の場合は三角(△)を付すことで、区別できるようにしている。JIS慣用色名を配置した比較スケールを、ここでは(明度版)JIS慣用色名比較マップと呼ぶ。なお図5の明度値「0〜10」の数字は、本来なら目盛となる線上に書くことが好ましい。
なおこの比較スケール16を用いることで、色相が異なると、純色の明度が違ってくることが一目でわかる。従って、図5の比較スケール16と、図3のJIS慣用色名マップを見比べることによって、JIS慣用色名のマンセル表記と、JIS慣用色名の系統色名表記による色名の関連性を、視覚的に理解することができる。
また、図4のMPCS色名マップで主軸に配置される10色の規定色は、理想色(理論色)であることは既に説明したが、比較スケール16は、大きな丸の中に10色(赤・橙・黄・黄緑・緑・青緑・青・青紫・紫・赤紫)が、マンセル色相値のまま配置される。結果、JIS慣用色名の一部の純色は、主軸上からずれていることも一目で理解できる。このような理解も、一般的には知られておらず、混乱の要因となっているので、図3のベーシックスケールでのJIS慣用色名マップと、図5の比較スケールでのJIS慣用色名比較マップの双方を用いることで、この相違等が一目でわかると共に、色への理解が深まり、色を使い分けることができる。そして、相違だけでなく一致する純色もあることも容易に把握できる。更に、JIS慣用色名の各純色は、かなりの明度差があることも図5から簡単に理解できる。ちなみに、この明度差はマンセルの色相環の並び方に符合している。つまり、「黄」の明度が一番高いことがマンセル色相環でもってトップ(水平に対して90度)の位置に表記されている、そして真下に青紫がきている。これは図5とマンセル色相環の重要な関係を示している。その他の純色の位置も同様に図5に符合している。
なお、ここではJIS慣用色名の一部を掲載したが、JIS慣用色名の他の色を形成することは勿論可能である。更には、JIS以外の色名等をマップ上に掲載することも可能である。また、この図5のJIS慣用色名比較マップでは、明度値を半径軸に設定したが、自然物や建物など、彩度が重要となる用途に関しては、明度段階ではなく彩度段階を半径軸にもってきた比較スケールを用意する。
<肌色表示一体型清色スケール(以下、「肌スケール」と呼ぶ)の説明>
次に、応用スケールの1つとなる、図6の肌スケール70について説明する。なお、図6Aは、肌スケール内に表示される文字を省略し、図面説明用の符号を付したものであり、図6Bは、図面説明用の符号を省略し、肌スケール内に実際に表示される文字を付したものである。この肌スケール70には、清色スケール10と同じ概念が取り込まれることから、清色スケール10と同一又は類似する部分については、図1の清色スケール10と同じ符号を付与することで詳細な説明を省略し、ここでは異なる点を中心に説明する。なお、「肌スケール」は、「清色スケール」の各色領域が、花びらのような半円型に移行している。肌スケールは、肌色と色の調和(似合う)の関係及び肌色タイプ診断を示すツールとなる。なお、医学的には皮膚色と言うがここでは、肌色(はだしょく)と呼ぶ。
既に第1実施形態で説明したように、清色スケール10のイエローアンダー領域及びブルーアンダー領域は、MPCS色体系の大きな特徴の1つである。この清色スケール10の応用バリエーションは豊富であり、しかも利便性も高い。肌スケール70はその具体例の一つであり、特にレッドバランス(赤の3種とイエローアンダー領域とブルーアンダー領域)の活用方法がここでも特徴的である。
図6Aの肌スケール70の最外周には、10色の規定色名(赤・橙・黄・黄緑・緑・青緑・青・青紫・紫・赤紫)と、MPCS色体系特有のレッドバランスを表示する赤朱と赤紅の文字が表示される。これらの内側には、2つの補助色領域60と10規定色の計12個の色領域20(それぞれ7段階のトーン色:−3〜+3)が、半円形の中に収められて並んでいる。全体視すると花のようなデザインとなる。なお、実際の肌スケール70では、各半円形内は各色相の7トーンに着色される。そして肌の丸にも暫定肌色が着色されている。これらの色領域20及び補助色領域60によって、有彩色を網羅し(濁色スケールも含むので)、これらと肌色との調和色を明示する。2つの補助色領域60を含む計12個の色領域20の内側には、色の2大カテゴリーのイエローアンダー色相カテゴリー72とブルーアンダー色相カテゴリー74を明示した環状の帯(YBリンク)が存在する。この帯は、図1の清色スケール10では中心に近いところに配置したものである。そして更に内側には、肌色タイプ選定領域71が形成される。なお、暫定肌色を説明すると、肌の色を紙やモニターで表すと肌の複雑さ(詳細は後述)から表しきれないので、暫定としたのである。肌の色表現には、理論の筋道からの概念的考慮が重要で、表現手段が困難な肌色を概念でもって色を定めることで、どんな人種でも,肌スケールを用いられるのである。
イエローアンダー色相カテゴリー72は、実際には薄い黄色で表示され、ブルーアンダー色相カテゴリー74は、薄い青色で表示される。なお、この肌スケール70のイエローアンダー色相カテゴリー72は、赤朱から黄側を経て青の手前までとしていて、既に説明したものと同様となっている。ブルーアンダー色相カテゴリー74は、赤紅から紫側を経て青までとしている。
この肌スケール70は、「赤」の色領域20を小さくして、レッドバランスを構成する赤朱と赤紅色の2つの補助色領域60の間に配置している。また、この赤朱と赤紅の補助色領域60は、「−3〜+3」までの7トーンを表示するようにしている。更に他の色領域20(純色域40)と同じ面積となる半円形にしている。また、肌スケール70における180度を占めるイエローアンダー色相カテゴリー72の外周側に、補助色領域60の赤朱色と、橙、黄、黄緑、緑、青緑の色領域20を、30度の位相差で等間隔に配置している。一方、肌スケール70における180度を占めるブルーアンダー色相カテゴリー74には、補助色領域60の赤紅色と、赤紫、紫、青紫、青(ブルーアンダー領域は5枚で1枚少ない)の色領域20を、36度の位相差で等間隔に配置している。
<肌色タイプ選定領域の説明>
図6Aで示すように、肌色タイプ選定領域71は、環状に配置されるドットリンク79を有する。このドットリンク79の内側には、中庸肌色に加算される黄み含有量表示領域71A、中庸肌色に加算される赤み含有量表示領域71B、中庸肌色に加算される白み含有量領域71C、中庸肌色に加算される黒み含有量表示領域71Dを、それぞれ180度の周方向に沿った帯として備えている。黄み含有量表示領域71Aは、上半分の180度、即ちイエローアンダー色相範囲72と同じ範囲に設定され、中庸肌色に加算される黄み含有量レベルが両側に向かってレベル4〜レベル1まで低下する。赤み含有量表示領域71Bは、下半分の180度、即ちブルーアンダー色相範囲74と同じ範囲に設定され、中庸肌色に加算される赤み含有量レベルが両側に向かってレベル4〜レベル1まで低下する。白み含有量表示領域71Cは、左半分の180度の範囲に設定され、中庸肌色に加算される白み含有量レベルが上下側に向かってレベルIV〜レベルIまで低下する。黒み含有量表示領域71Dは、右半分の180度の範囲に設定され、中庸肌色に加算され黒み含有量レベルが上下側に向かってレベルIV〜レベルIまで低下する。従って、これらの4種の表示領域71A〜71Dは、周方向に沿って2種が、互いに重なり合う関係となり、各表示領域71A〜71Dの中央には、四角で囲むようにして含有色名(白め、黒め、黄め、赤め)が配置される。4種の表示領域71A〜71Dの内側には、丸領域(着色された見本肌色が並ぶ)76が周方向に複数配置される。この各丸領域76は、中庸肌色にその場所に相当する2種の含有量を組み合わせた色(例えば、中庸肌色+白み含有量レベル1+黄み含有量レベルIV)で着色されることで、周方向に色が推移する。(実際のツールでは、着色された段階的混色の暫定肌色の丸が4つずつ並んでいて、肌色見本としては16色が提示されている。)なおブルーアンダー領域中央の四角の「赤め」を「青め」としなかったのは、肌の見えは生理学・医学的に「青み」から「赤み」になる考察がある為、それに基づかせている。なお、この「赤め」の赤は「赤紅」である。ここでは見本の肌色として4段階レベルで肌色表示をしたが、例えば3段階でも良く、その他の段階数で表示しても良い。なお「中庸肌色」とは、とりわけ色白や色黒でもない、そして黄みや赤みが際立っていない肌色、または、ミックス(後述詳細)の肌色をさした暫定的な色である。ここにJIS慣用色名の肌色(はだいろ)や日本人の平均的肌色を想定することも好ましい。補足すると、「黄め」「赤め」「白め」「黒め」は、肌の4大カテゴリーを区分けするキーワードなので、それを強調するためにこれらを四角で示した。
肌色見本は、4つの肌カテゴリーの中に含まれる。4つの肌カテゴリーは、上記4種の領域71A〜71Dの中での2種の組み合わせが中庸肌色に加算されることで決定される。具体的には、「黄(色)っぽさ」+「白っぽさ」の肌色、「黄っぽさ」+「黒っぽさ」の肌色、「赤っぽさ」+「白っぽさ」の肌色、「赤っぽさ」+「黒っぽさ」の肌色が配置される。各カテゴリーは、各々90度角の位相範囲となる。
クリームスキンカテゴリー73YWは、中庸肌色に黄み含有量表示領域71Aと白み含有量表示領域71Cが重なった90度の角度範囲に設定され、「クリームを含んだ明るい肌色」を意味する。クリームスキンカテゴリー73YDは、中庸肌色に黄み含有量表示領域71Aと黒み含有量表示領域71Dが重なった90度の角度範囲に設定され、「かっ色を含んだ暗め系の肌色」を意味する。ピンクスキンカテゴリー75BWは中庸肌色に赤み含有量表示領域71Bと白み含有量表示領域71Cが重なった90度の角度範囲に設定され、「ピンクを含んだ明るい肌色」を意味する。赤ら(顔)スキンカテゴリー75BDは、中庸肌色に赤み含有量表示領域71Bと黒み含有量表示領域71Dが重なった90度の角度範囲に設定され、「赤ら顔系の暗めの肌色」を意味する。これらのカテゴリーを読み取ることで、個人(パーソナル)の肌色に近い色や肌タイプを選定することが可能となる。
クリームスキンカテゴリー73YWは、周方向にクリーム色系統の肌色が、色味を変化させながら配置される概念を意味する。なぜなら、白みの含有量1(少ない)〜4(多い)と、黄みの含有量I(少ない)〜IV(多い)の組み合わせによって、肌が階調表示されるからである。
かっ色スキンカテゴリー73YDには、周方向にかっ色系統の肌色が、色味を変化させながら表示される概念を意味する。なぜなら、黒みの含有量が1(少ない)〜4(多い)と、黄みの含有量がI(少ない)〜IV(多い)の組み合わせによって、肌が階調表示されるからである。
ピンクスキンカテゴリー75BWには、周方向にピンク系統の肌色が、色味を変化させながら表示される概念を意味する。なぜなら、白みの含有量1(少ない)〜4(多い)と、青みの含有量I(少ない)〜IV(多い)の組み合わせによって、肌が階調表示されるからである。
赤ら(顔)スキンカテゴリー75BDには、周方向に赤ら系統の肌色が、色味を変化させながら表示される概念を意味する。なぜなら、黒み含有量1(少ない)〜4(多い)と、青みの含有量がI(少ない)〜IV(多い)の組み合わせによって、肌が階調表示されるからである。
これらの4つの肌カテゴリーでは、それぞれの肌色の程度のパターンを示したものであるが、肌は、透明度や色ムラ、ツヤ、凹凸などがあることから、具体的に色表示を行うことは不可能に近い。中心の中庸肌と共に、これらは見本色と言っても、概念的な肌色階調を示す表示となるので暫定色と言える。なお、丸領域76は、近似色での肌見本をこの小円に付けるのは可能である。なお、中庸肌にはミックスタイプの肌として、各要素がミックスされた肌色や、表出赤(後述)がYBリンクと逆の赤の場合が含まれる。
<肌スケールの使用方法>
この肌スケール70を用いると、肌色タイプ選定領域71を利用して、自分の肌に近い肌色領域(スキンタイプ)を特定する。つまり、個人(パーソナル)の肌色診断をする。その方法は、先ず、明度が一番見極めやすいことから、自分の肌タイプを診断する場合、自分の肌が、色白か色黒かを見極める。
そこで色が白いことが最も大きな特徴な肌であれば、白み含有量表示領域71C側に決定し、続いて「黄(色)め」か「赤め」かを見極めることになる。青白さやピンクの肌であれば、ピンクスキンで、黄色っぽさが見受けられればクリームスキンということになる。
一方、色が黒いことが最も大きな特徴な肌であれば、黒み含有量表示領域71D側に決定し、続いて「黄(色)め」か「赤め」かを見極めることになる。黄みがかった茶色系であればかっ色スキンということになり、黄みよりも赤みのほう際立つ場合は赤ら(顔)スキンになる。
以上の結果、自分の肌が、クリームスキンカテゴリー73YW、かっ色スキンカテゴリー73YD、ピンクスキンカテゴリー75BW、赤ら(顔)スキンカテゴリー75BDのいずれかに該当することになる。結果、該当した肌のカテゴリーは、YBリンクでイエローアンダーかブルーアンダーかを見極め、そのアンダー側の花びらのYUの6枚からか、BUの5枚から、色を選ぶことでより調和する色(似合う色)を選定できる。中庸肌の場合の調和色は、円周全色と調和しやすいことを表しているが、実際にはYUかBUかのどちらかであることが多い。
なお肌色タイプ診断のもうひとつの使いかたは、肌色見本の中の4つの色、具体的には「黄白肌」、「青白肌」、「黄黒肌」、「赤黒肌」で、4つのカテゴリーの堺の色でもって判断することもできる。個人の肌の特徴にあわせて使い分けるとよい。
肌色診断の一義的な目的は、イエローアンダー(黄み含有量表示領域71A)かブルーアンダー(青み含有量表示領域71B)を判別することである(更に高度な調和色を求める方法が肌スケールにはあるが誰にでもやりやすい初歩的調和法だけに、ここではとどめる)。その判別をしやすくするための仕組みが、肌タイプ選定領域71の4区分なのである。なお、この初歩的調和を確認するには、YBリンクだけを独立して回転させると良い。このYBリンクが逆の位置になると、全花びらの色が、一気に見映えが悪くなる。YBリンクの調和色の効果を如実に実感できる。それほど重要なYBリンクである。
カラーコーディネーターなど専門家は、この肌スケールで、スピーディ且つ厳密に肌区分けが可能となり、従来の問題、例えばカラーコーディネーターによる肌色診断が一定しない等の課題を解決することができ、プロならではの高度な調和(似合う)色のアドバイスまですることも可能になる。つまり「肌スケール」は一般人の自己診断も出来、プロによる肌診断の良さも出るという便利ツールとなる。なお「似合う」とは、「何」と「何」との関係性を意味しており、「肌と髪の色・肌と服の色・肌とメイクの色」等が代表的であるが、その他に「肌とメガネの色」など多数ある。従って、肌スケールは、肌の色に対して、様々な他のマッチしやすい色を探すツールとなる。
なお、ドットリンク79には、赤朱と赤紅のドットや、くすみを意味する濃い灰色のドットが環状(周方向)に配置される。これらのドットによって肌色の変化を感覚的に理解できるようにすることも好ましく、図6ではYBリンクの内側に配置している。つまり、肌色は、黄、赤、白、黒の感じる度合いのレベルで、イエローアンダーかブルーアンダーを見極めるのだが、肌色は、高揚時など突発的に表出する赤み(気温的表出もある)があり(この場合の赤みも、「赤朱」か「赤紅」がある)、更には、くすみが関わってくる。それを合わせて肌色を見るために、模式的に補助的な事項をドット表示しておくと、利便性を高めることが出来る。
また、この肌スケールでは、周囲に清色スケールを配置する場合を示したが、勿論、濁色スケールを配置してもよい。その他、ベーシックスケール(MPCS色名マップやJIS慣用色名マップ等の色名)を配置することも可能である。
<加色(灰)フィルターの説明>
図7に示すように、清色スケール10の上側を覆うように配置される加色(明るい灰色)フィルター19を用いて、濁色を示すことも可能である。この灰色フィルター19は、清色スケール10の色に対して「灰み」を混在させた視認状態を生成する。
この灰色フィルター19は、光透過性(透明)のガラス又は樹脂材料によって形成される円板状のプレートであり、灰色の微細ドット(点)を無数に配置することも可能である。灰色フィルター19の目的は、清色に灰みがかったときの見え方を視覚的にシミュレーションするためのものである。「明るい灰色」は見え方を生み出す程度の色合いのものである。
<灰色以外の加色フィルターの説明>
ここでは特に図示しないが、図1の清色スケール10の色領域20の上側を覆うように、灰色以外の他の色の加色フィルターを配置することも好ましい。この加色フィルターは、清色スケール10の色領域20に対して、灰色の他に、例えばうすい黄色や、うすい青色等の特定の色を重ねた視認状態を生成する。具体的には、灰色フィルター13と同様に、特定の有彩色の微細ドットを配置したり、うすい黄色又はうすい青色を光透過性フィルムに着色したりする。この結果、例えば、うすい黄色のフィルターをかざせば(重ねれば)黄みを帯びた自然光での朝夕の斜光や人工光での電球、そして青色のフィルターをかざせば(重ねれば)人工光での青みの蛍光灯などの各種光の下で、清色スケール10を見た状態を仮想的に表現することができる。光の色によっての色の見え方においては、演劇等の舞台のほか、ショーやパーティや結婚式などの照明のもとでの衣装やインテリア等に如実に影響し、色の失敗が当現場で判明することが多い。実用面での色扱いが大きく物を言うのが光の色なのである。このフィルターを用いて、あらかじめ環境下での色の見えを頭におき、清濁スケール(ベーシックスケールでもよい)にフィルターを重ねて、予想光での色による色の見え方を確認しておくことで、失敗のない色使いを可能にする。
<保管容器の説明>
図8には、本カラーコンパスの保管容器を含めた全体像が示されている。清色スケール10、濁色スケール12、ベーシックスケール(JIS慣用色名マップ13及びMPCS色名マップ15)、比較スケール16、肌スケール70(これらを総称して「スケール群」と呼ぶ)は、全て保管容器18に収容される。なお、付録として備えるフィルター19も、保管容器18に収容される。この保管容器18は、下側容器18Aと透明上蓋18Bを備える。下側容器18Aには、中心軸18Dと、清色スケール10の周縁と部分的に接触する円弧状の側壁18Cが形成されており、中心軸18Dと側壁18Cによって、清色スケール10が下側容器18Aから脱落することを防止する。また、下側容器18Aには、各スケールの固定角度を規制するための突起18Xが形成され、全てのスケールの外縁に形成される切欠き18Yと嵌め合う。結果、全てのスケールの角度が互いに一致するようになっている。なお、応用スケールは「医学用部分マップ」等、多種が考えられるがこのような追加スケールも収容が可能である。
なお、ここでは「スケール群」の外縁に切欠き18Yを形成する場合を例示するが、「スケール群」の中心に形成される貫通穴側に、収容角度を一致させるための切欠き又は突起を形成することも可能である。その場合は、この貫通穴に挿入される下側容器18Aの中心軸18Dに、反対の突起又は切欠きを形成すればよい。
側壁18Cは、「スケール群」の外周に対して、全周ではなく部分的に接近する。従って、側壁18Cが存在しない場所を利用して、指先によって清色スケール10をつまみ出すことができる。透明上蓋18Bは、保管時や使用中に清色スケール10の上方を覆うことで、「スケール群」に塵埃が付着したり「スケール群」に手や異物が触れたりすることを抑制して、損傷や変色(汚れ以外に色の退色)を予防する。なお、「スケール群」の材質は、正確に発色できるものを採用し、現場での使用時を配慮して、汚れ防止機能や、堅牢性を兼ね備えたものが好ましい。汚れ防止の意味からは、保管容器に入れたまま、各スケールを観察できるように、蓋は透明にする。製造コストを下げた簡易製品の場合は、紙で製造することも可能である。
<カラーコンパスツールの利用方法>
カラーコンパスを利用する場合、「スケール群」から観察したいスケールを選択し、使用するスケールが上側となるように積層順を入れ替える。
例えば清色スケール10を用いる場合は、清色スケール10を最上側に配置し、更に透明上蓋18Bで上方を覆うことで保護する。他のスケールについても同様である。具体的な使用方法は様々であるが、数多い中から幾つかを紹介すると、例えば、以下(1)〜(5)のように用いる。
(1)「取り留めなく存在する何万の色から"任意の色を探す"場合」、着色された清色スケール10の基本(規定)色でまず大雑把に色み(色相)のあたりをつけ、そこから半径方向に明清色、暗清色をたどってゆく。色が最も色差を表すのが色みであり、その次が明暗で、しかも、人間が認知しやすいのも明暗となる。清色スケール10を用いれば、色を見つけやすく、半径軸に沿うことで色が大幅に絞られる。ここですでに目的の色にたどりつくこともある。たどり着かない場合は、求めている色が清色でないことになるので、濁色スケール12に交換して同様の作業を行う。
(2)「"新色を決める"場合」、過去に選定した色を知っておく必要があるが、従来は、系統付けて整理するシステムがなかったため、創作した色名の色を羅列していた。そこで本カラーコンパスでは、過去に選定した色(創作名称)を、清色スケール10又はベーシックスケールを"書き込み版"として用い、そこに過去に選定した色を書き込んで整理する。こうすると、どこの辺りの色が足らないか、新色はどのような位置で求めたいのかがはっきりし、決めやすくなる。こうして色の位置を確認し決定出来ると、新色の命名も、色理論に基づいた設定ができ、また大量に存在する既存色名からもぴったりのものを選定できる。なお新色の命名は、位置を定めた後に、既存色名の他に、MPCS色体系で用いた色の位置(地図の経度と緯度にあたる)番号をつけてもよい。また、商品イメージやムードや目的にあわせた、アピール性が高い独自の色名もつけやすくなる。このようなプロセスで新色を決定すると、新色名と、実際の色のイメージが結び付きやすくなり、新色名は目的物(商品等)の適切なイメージを伝えやすいものとなる。なおかつ、企業内では、企画で決定した色の伝達を、本実施形態のカラーコンパス表示で行えば、各部署にも伝わりやすく、その伝達ミスも少ない。そして、選定した"色を修正する場合"も、「清色レベル(または、濁色レベル)を+2から+1に変更する」、「色相を5黄から8黄に変更する」、「清色スケールから濁色スケールに変更する」など、頭の中における色の修正イメージと、言葉による色の修正指示を一致させることが可能となり色の修正もしやすくなって、この伝達のミスも抑制できる。
とりわけ、このカラーコンパスを用いることによって、このコンパス(及び他の色体系)で数値として表現されていない「間の色」の設定も容易になる。例えば、「清色レベルを+1.5程度(+1と+2の間)」と説明した場合でも、そのイメージを複数名の間で共有することができる。なお、色相は100やそれ以上の数の色を0.5以下でも指定できる。濁色に関しても同様である。結果、色の無限大の広がりを、言葉と目でカバーできるので、色の活用性を飛躍的に高めることが出来る。色見本が無い場合でもMPCS色体系を用いた色の位置番号を取り交わすことで、制作部署(工場)での作業効率もあがる。
ここで重要なのは、これまで製作部署(印刷や塗料・染料・顔料を用いた製品制作部署)と企画部署とデザイン部署(マンセル値を使用するが他の部署では通じない)とには共通する色のものさしがなく、各部署で異なる色モノサシを使っていたので伝達が困難となったていたことである。その結果、やり直しが発生し時間・経費がかかっていたが、それぞれの部署で、本実施形態のカラーコンパスを用いれば、色の基軸ができ、色のモノサシ及び色表現の一本化(統一)を可能にするので、企画部署(デザイン部署も)と製作部署間での色修正のやりとりもスムーズになる為、時間や経費や労力がカットされる。しかも、電話やメールでも、色のやりとりが自在になる。
具体的には、企画部署と製作部署の双方が、本実施形態のカラーコンパスを保有しておき(簡単なシステムなので、頭に入ってしまえば無くても可能になる)、製作部署では、事前にカラーコンパスを用いて自社での色による基本色マップを作成しておくと更に効率がよい。企画部署からカラーコンパスを用いて指定された色は、すぐさま製作にとりかかれる。
(3)顔料、染料、塗料等では、混色の際、組み合わせに注意を要する色同士がある。そこで本実施形態のカラーコンパスを用いて、良い配色や調和色としてはYUやBUの中で互いに選択すれば無難である。何よりは、不具合の色同士を回避できる。この用い方は、顔料等だけでなく、粘土状態の物質や、照明を用いた各種ディスプレイ機器においても同様となり、またその他の場面など幅広く適用できる。
(4)製品関係だけではく、"映像やデザイン等の決定時に用いることが出来る"。いちいちピッタリの色見本を手元にすることは甚だ困難である。ピッタリの色見本がない場合の色に関するコミュニケーションはむろん困難を来していたが、MPCS色体系を用いることで大幅に解決される。清色スケールを各人の頭に持ちあえば、互いに抱いている色についての会話がしやすいものとなる。つまり色イメージが、清色又は濁色の3段階の数字と10の色相(詳細まで可能)で話せる。清色と濁色を整理して一同に表せるうえに、有彩色ならず無彩色までの色全般を簡潔に会話ができる。
(5)上記様々な用い方において、JIS慣用色名との関係を求められる場合がある。その時は、ベーシックスケール(JIS慣用色名マップ13やMPCS色名マップ15)や比較スケール16を参照して、JIS慣用色名の位置を確認すればよい。JIS慣用色名をMPCS色体系で把握すれば、JIS規定の色に沿った色の企画や製品製作も、色情報や色理解が充実したうえで出来るのである。
<第2実施形態の濁色スケールの説明>
次に第2実施形態のカラーコンパスに含まれる濁色スケールに限定して説明する。図9Aに示される濁色スケール12は、色を表示する枠として△と□を用いており、図11CのMPCSトーン表の展開概念を採用している。即ち、濁色スケール12の半径軸の中央に、濁色レベル△±1を意味する「□表記」配置し、半径方向の外側に向かって濁色レベル△+2、△+3を意味する「△表記」、内側に向かって濁色レベル△−2、△−3を意味する「△表記」を配置する。濁色レベル△±1を「□表記」にしたのは、純色ではなくJISのストロングであることを明確に区別するためである。ストロングは「つよい」と表記している。
図11Cの展開の通り、清色用レベル目盛数及び長さと濁色用レベル目盛数及び図での長さ(距離)が互いに異なっているのでので、この図9に清色スケールを重ねて表示すると主軸の長さがずれる。勿論、図11Cの点線Xのように、この濁色スケールの目盛を半径方向にそのまま拡大して、半径軸の長さを清色スケールの長さと同じサイズにすることも可能であるが、そうすると清色用レベル目盛間隔と濁色用レベル目盛間隔が異なるので、重ねて表示する際には、注意を要する。
<第3実施形態のカラーコンパス用プログラムの説明>
次に、図10を参照し、本発明の第3実施形態として、上述のカラーコンパスをディスプレイ86上で実現するカラーコンパス用プログラム90について説明する。このカラーコンパス用プログラム90は、計算機80の記憶装置82に蓄積されておりCPU84で実行される。この結果、計算機80に接続されているディスプレイ86上に、図1〜図9で説明したカラーコンパスが画像として生成される。
具体的に、このカラーコンパス用プログラム90は、清色スケール用プログラム91、濁色スケール用プログラム92、JIS慣用色名マップ用プログラム93A、MPCS色名マップ用プログラム93B、比較スケール用プログラム94、肌スケール用プログラム95、加色フィルター用プログラム96、選定色保存プログラム98、色値表示プログラム99を備えている。
清色スケール表示プログラム91は、図1で示す清色スケール10を仮想的にディスプレイ86に表示させる。濁色スケール用プログラム92は、図2で示す濁色スケール12を仮想的にディスプレイ86に表示させる。JIS慣用色名マップ用プログラム93Aは、図3のJIS慣用色名マップ13をディスプレイに表示させる。MPCS色名マップ用プログラム93Bは、図4で示すMPCS色名マップ15をディスプレイ86に表示させる。比較スケール用プログラム94は、図5で示す比較スケール16(JIS慣用色名比較マップ)をディスプレイ86に表示させる。肌スケール用プログラム95は、図6で示す肌スケール70をディスプレイ86に表示させる。加色フィルター用プログラム96は、キーボードなどの外部入力装置(図示省略)からの指示を受けて、キーボードなどの外部入力装置(図示省略)から、追加色とその重畳レベル(重ね合わせ量)の指示を受けて、清色スケール10に対して、加色フィルター19を被せた時と同じ状態の画像を、ディスプレイ86に表示させる。具体的には、ディスプレイ86上の清色スケール10に対して、指定された色を、その重畳レベルで重ね合わせた視認状態の色を生成して表示する。選定色保存プログラム98は、ディスプレイ86において、利用者によって最終的に特定された色を、計算機80の記憶装置82に保存する。
色値表示プログラム99は、画面に表示される清色スケール10や濁色スケール12の上に、マウスでポインタを合わせた際、その場所の色のMPCS記号を画面表示する。これにより、このカラーコンパスとMPCS色体系との相関を、常に把握することが可能となる。同様に、マウスを合わせた際に、最も近いマンセル値、JIS慣用色名、PCCS系統色名やJISやPCCSのトーン(略記号を含む)などを表示することも好ましい。他にも、MPCS色体系記号、RGB値(10進、16進)、CMYK値等、色に関する付加情報を表示することも考えられる。そしてその他の和名に限られず、洋名も表示に加えることも考えられる。JIS系統色名を表示することも考えられる。
第3実施形態のカラーコンパス用プログラム90によれば、ディスプレイ86上に仮想的にカラーコンパスを表示させることができるので、色の選定作業を飛躍的に効率化できる。
なお、以上の実施形態のカラーコンパスでは、各スケールが円盤形状となっており、色領域が放射状に配置される場合に限って示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、一方の軸(例えば横軸)が色相、他方の軸(例えば縦軸)が清色レベル又は濁色レベルとなるような、方形のスケールに、平行状やマトリクス状に色を配置する事も可能である。
<商品タグや医学用部分マップ等への応用について>
カラーコンパスの利用方法は他にもある。例えば商品に付されるタグや、店内の陳列棚に表示される案内標識(又は色ガイド)に活用できる。さらに、商品パンフレットや色説明等にも活用できる。これらの商品タグ等に清色スケールや濁色スケール、ベーシックスケール等を印刷しておき、対応商品の色彩の「位置」を表示する(例えば星マークで位置を示す)だけで、多数の商品のカラーバリエーションの整理と、対応商品の色の位置づけを視覚的に簡単に把握できる。なお、この際の清色スケール等は簡略表示でも良い。このカラーコンパスに、調和色や似合う色、良配色を含むコーディネイト等(アドバイスとなるような色群等)を目的に応じて付記することも可能になる。なお、インターネット通販においても、画面上にこのカラーコンパスを表示することが好ましい。実際の色が購入者に伝えられないと言われている通販関係ではかなり大きな効果及び便利さが発揮できる。カラーコンパスによって、色彩理論に則っているため一定した色の表示ができ、なおかつ、購入者がこのカラーコンパスに基づいて、色を、実感に近い感じで想像しながら、色の要点をおさえて自分の好みの色を選択できるので、商品の撮影・印刷・モニター等での写真の出来映えによる"見え"の色彩に惑わされることが少なくなる。結果、購入商品が到着した時に、思っていた色と異なるような失望を免れ、結果として返品の軽減に貢献する。即ち、このカラーコンパスは、単なる色説明ではなく、色案内(カラーナビゲーション)機能を併せ持つことが大きな魅力である。
なお従来は、ラベル・パンフ・店頭用案内板などでは、配色や調和色の似合う色の取り合わせが、表示したいのに出来なかった。それは配色や調和色が複雑かつ相当な説明が必要であったためと考えられる。本実施形態のカラーコンパスによれば、簡単な図や言葉で理解が可能となるため、それを実現できるのである。端的に色の、説明や詳細表示ができることから、売り手側は商品の、管理や展示がしやすくなり、買い手側は買いたい物の色のアドバイスを目で受けて買いやすくなる。
また、ここでは特に図示しないが、このカラーコンパスは医学・医療分野においても有益である。例えば医学の専門書でも、皮膚の色、血液の色、内臓の色、便や尿の色等で様々な判断を書く必要があるが、その色を正確に伝えることは困難を極める。そこで専門書において、本発明のカラーコンパスを用いて、色を解説するようにすれば、具体的なイメージとして読者(医師や看護師や医学生等)に医学とからめて色を伝達することができる。特に医学分野では、清色と濁色の違いが判断に大きな影響を及ぼすことが多く、例えば、かっ色とチョコレート色が清色であり、それが濁色になるとどのような症状や病名であるかなどについて、簡潔かつ分かり易く解説することができるようになる。医学・医療分野では、特に橙や赤や茶近辺の色が重要になるため、この近辺のベーシックスケールまたは、図4のMPCS色名マップを一部切きりだして部分的に拡大した医学用部分マップを用意することが好ましいといえる(もちろん全部でも構わない)。具体的には5橙(5R)を中心に180度内の部分マップを作成する(「医学用部分マップ」と呼ぶ)。医学界では、色名が病名になっているものもあるほど、数多くの色名が使われているのだが、人によって表現が異なり錯綜状態にある。そこでこの医学用部分マップ(図4からの部分マップ作成がよい。基準になる色名があったほうが都合が良い)で、清色の丸と濁色の三角で何十種類もの色を色彩理論に基づいて医学的に提示できる。これは医学専門家だけでなく患者(一般者)にとっても便利で、医師への尿や便の色の状態説明をマップの位置で示せて、より正確でスピーディさが伴うので好ましいと言える。なお、マップのなかで要所の色見本として、丸や三角を着色(拡大しているので丸が大きいことから、塗りつぶして表示すると、色見本の役目が大となる)するのも好ましい。
以上、図面等で説明したカラーコンパスは、あくまでも模式図であることから、色の位置や分布は、目安である点に留意されたい。
なお、応用となる書き込み手法としての使い方を簡単に説明する。まず、書き込み手法としては、「書き込み版」のカラーコンパスを用意する。具体的に書き込み版は、(1)具体的な色名が表示されていない主軸のみのベーシックスケール(これを「白紙ベーシックスケール」と呼ぶ)に書き込む方法と、(2)既に色名が配置されている図4のMPCS色名マップに書き込む方法がある。(1)では、白紙ベーシックスケール(主軸上の規定色が着色された版と、着色無しのモノクロ版がある)に、各自が載せたい色を、○や△のマークで地図の位置に記してゆく方法である(マークの横に色名を付記することや、ソフトウエアなら自動的に着色することも可能)。(2)の方法の場合、図4のMPCS色名マップを透明盤として用意し(不透明版もある)、上記の「白紙ベーシックスケール」の上に重ねて主軸を透視しながら、書き込み版のMPCS色名マップに、載せたい色を追記する方法である。(透明盤でしかもマジック等で書き込める素材であることが求められ、また、カラーコンパスの価格によってセット内容や材質の違いがあるものとする)。この書き込み版MPCS色名マップは、透けるモノクロ盤だから(無論、着色版もあってもいい)、白紙ベーシックスケールがしっかり見えるように重ね合わすことができるので、書き込み版MPCS色名マップでは主軸を省略して書き込み空間を増やしつつ、MPCS色体系の色の基本軸が透けて見えることになる。もちろん下の白紙ベーシックスケールが邪魔なときは、それを外して白の紙等の上に置いて書き込めばよい。このように、図4の書き込み版MPCS色名マップに、目的の色を書き込んでゆく作業は、MPCS色名マップに予め配置されている主要色に沿ってできるので迷うことなくできる。つまり、色の基本概念を白紙ベーシックスケールがガイドし、そして実用色を、図4のMPCS色名マップがガイドしてくれるのである。自社の色の整理や管理はベーシックスケールで行ってもよいが、MPCS色名マップを用いると、実用色のガイド付きなので、ベーシックスケールよりもわかりやすく、作業の担当者が変わっても、あるいは経験の浅い者でもガイド通りに色を置いてゆけばよい。
次に書き込み手法で利用される製品態様を説明する。製品態様としては、(1)ケースに収まるプレート態様と(2)紙素材で構成される紙面態様と、そして(3)ソフト(プログラム)によってディスプレイに提示される情報態様の3パターンが代表的である。(2)の紙面態様が最も安価で、しかも、上述の書き込み手法で用いる各種スケールを簡単に複製することができるので、製品ごとにマップを自作することが可能であり、何枚でも作成することが可能である。なお、(2)の応用として、主軸や色ガイドが表示された下敷きを用意しておき、その上にトレーシングペーパーを配置して書き込むトレース態様にするとよい。また(2)は、カラーコンパスの解説書をセットに組み入れても良いし、単品としてでもよい。次に(3)のソフトであるが、これであれば、重ねる又はトレーシングペーパーにする行為など、色の軸である下敷きが必要なときに、ディスプレイ上で自動的に行えるので、(1)や(2)の態様よりも簡便にできる。さらにソフトでは図4のMPCS色名マップでの色の範囲を示しながら、色を追記したいときに、丸や三角や長丸や長三角のマークを用意しておけば、マークや大きさが自由にすばやく明示でき、その印刷出力及び配布も容易となる。そして、色数が増えて表示スペースが狭くなったら、簡単に拡大表示することも瞬時にできる。さらに、(円全体ではなく)部分図としても、その拡大縮小の自動化の観点で、ソフトが力を発揮する。範囲選択が自由自在になるからである。なおMPCS色名マップの応用の一例として既に説明した「医学用部分マップ」があるが、これはソフトを用いた部分拡大図を用いることが好ましい。無論、ソフトではなく(1)のプレート態様や(2)の紙面態様でもこの「医学用部分マップ」は可能である。
なお、自社オリジナルのマップを作成するにあたっては、各社は独自の材料による色を持っているので、製品の赤・橙・黄・黄緑・緑・青緑・青・青紫・紫・赤紫は、各社の色合いとなる。その色をもって図4(MPCS色名マップ)やベーシックスケールの書き込み版に、記入したい色を置くことになる。つまり、「5B」の青ではなく自社の「5青」になるわけである。
尚、本発明のカラーコンパスは、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。