表1は、治療開始から10週後(14週齢)のマウスの血漿および組織(μMの平均+/−SD、n=4)のcuraxin−137の濃度(μM)を示す。
表2は、各群の老いた動物(1群につき2例)の組織病理学的所見を示す。
表3は、DMHによって誘発される雌マウスの腫瘍の発生率を示す。
表4は、DMHによって誘発される雄マウスの腫瘍の発生率を示す。
表5は、DMH試験を受けた雌動物の剖検中に抽出された臓器の重量を示す。
表6は、DMH試験を受けた雄動物の剖検中に抽出された臓器の重量を示す。
表7は、雌マウスの臓器の肉眼的変化を示す。
表8は、雄マウスの臓器の肉眼的変化を示す。
(発明の概要)
本発明は、部分的に、curaxinが癌、とりわけ、これに限定されないが、ER、PR、HER2、およびFACTを含む分子マーカーを特徴とする癌、特に乳癌に抗癌作用を有するという発見に基づいている。
ある態様では、本発明は、有効量の式Iの化合物またはその薬剤的に許容可能な塩もしくは水和物を投与することを含む、治療を必要とする対象の乳癌を治療する方法を提供する。
式中、R1〜R9のそれぞれは独立してH、ヒドロキシルまたはアルキルであり;nは0、1、2、3、4、または5であり;並びに乳癌は、エストロゲン受容体陽性(ER+)、ヒト上皮成長因子受容体2陽性(HER2+)、プロゲステロン受容体陽性(PR+)、およびクロマチン転写促進因子陽性(FACT+)の1つ以上である。
いくつかの実施形態では、式Iの化合物はcuraxin137であり、以下である。
いくつかの実施形態では、乳癌はER+、またはHER2+、またはFACT+、またはPR+、またはER+およびHER2+、またはER+およびFACT+、またはER+およびPR+、またはHER2+およびFACT+、またはHER2+およびPR+、またはFACT+およびPR+、またはER+およびHER2+およびFACT+、またはER+およびHER2+およびPR+、またはER+およびFACT+およびPR+、またはHER2+およびFACT+およびPR+、またはER+およびHER2+およびFACT+およびPR+である。
いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、例えば、ホルモン療法等の追加の癌療法と併用して投与される。
様々な実施形態では、対象はホルモン療法を受けていないか、ホルモン療法は効果的でない。
様々な実施形態では、式Iの化合物は、限定されないが、単独の補助療法を含む切除後の補助療法として投与される。
いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、切除前の術前補助療法として投与される。
様々な実施形態では、対象は、ヒトであり、例えば女性のヒトである。
様々な実施形態では、乳癌は白金剤および/またはタキサンに抵抗性があるか、化学受容性試験または代替バイオマーカーに基づき、白金剤またはタキサンに抵抗性があると決定される。
別の態様では、本発明は乳癌腫瘍を有し、式Iの化合物による治療に奏効しない可能性がある対象を識別する方法を提供し、ER、PR、HER2、およびFACTの少なくとも1つの存在、非存在、またはレベルを測定することを含む、腫瘍の評価を含み、ここで、ER、PR、HER2、およびFACTの少なくとも1つの存在は、対象が式Iの化合物による治療に奏効する可能性があることを示し、並びに式Iの化合物は以下である。
式中、R1〜R9のそれぞれは独立してH、ヒドロキシルまたはアルキルであり;nは0、1、2、3、4、または5であり;またはその薬剤的に許容可能な塩もしくは水和物である。
いくつかの実施形態では、乳癌腫瘍を有し、式Iの化合物による治療に奏効する可能性のある患者を識別し、さらに、有効量の式Iの化合物またはその薬剤的に許容可能な塩を、式Iの化合物に奏効する可能性のある対象に投与することを含む。
いくつかの実施形態では、式Iの化合物は以下である。
様々な実施形態では、測定はタンパク質の存在、非存在、レベルの評価を含む。
その他の実施形態では、測定は、腫瘍または該腫瘍から培養された細胞の標本を、ER、PR、HER2、およびFACTの少なくとも1つに特異的に結合する剤に接触させることを含む。いくつかの実施形態では、ER、PR、HER2、およびFACTの少なくとも1つに特異的に結合する剤は抗体である。
その他の実施形態では、ER、PR、HER2、およびFACTの少なくとも1つの測定は、免疫組織化学的染色、ウエスタンブロット法、インセル・ウエスタン、免疫蛍光染色、ELISA、および蛍光活性化セルソーティング(FACS)の1つ以上を含む。
その他の実施形態では、腫瘍標本は、凍結腫瘍組織標本、培養細胞、末梢循環腫瘍細胞、およびホルマリン固定パラフィン包埋腫瘍組織標本から選択される生検である。
以下の定義は、本明細書に開示の発明に結び付いて使用される。そうではないと定義されない限り、本明細書に使用される技術用語および科学用語はすべて、本発明が帰属する当該技術分野の当業者に広く理解されるものと同じ意味を持つ。
本明細書に使用される「a」、「an」または「the」は1つ以上を意味する。さらに、参照される数字と連結して使用される用語「約」は、参照される数字の最大±10%の参照数字を意味する。例えば、語「約50」は45〜55の範囲を網羅する。
本開示に使用される用語「投与する」、「投与している」、「投与」は、化合物または化合物の薬剤的に許容可能な塩または組成物を、対象に直接投与するか、または対象の身体に当量の活性化合物を形成することができる、化合物または化合物の薬剤的に許容可能な塩または組成物のプロドラッグ複合物または類似体を投与することのいずれかを意味する。
本明細書に使用される用語「アルキル」は、特に規定されない限り、アルカンから水素原子を取り除いたものから形成される直鎖または分岐鎖飽和基を意味する。代表的な直鎖アルキル基として、限定されないが、−メチル、−エチル、−n−プロピル、−n−ブチル、−n−ペンチル、およびn−ヘキシルが挙げられる。代表的な分岐鎖アルキル基として、限定されないが、イソプロピル、−sec−ブチル、−イソブチル、−tert−ブチル、−イソペンチル、−ネオペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,1−ジメチルプロピルおよび1,2−ジメチルプロピルが挙げられる。
用語「担体」は、本開示に使用されるとき、担体、賦形剤、および希釈剤を含み、液体もしくは個体材料充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒もしくは封入材料等の組成物またはビヒクルを意味し、薬剤を1つの臓器、または身体の一部分から、別の臓器、または身体の部分に運ぶ、または輸送することに関係する。
オープンエンドな用語「〜を含む」は、〜を含む、〜を含有する、または〜を有する等の用語と類義語として、発明、本発明、またはその実施形態を記述し主張するために、本明細書に使用され、あるいは「〜から成る」または「〜から本質的に成る」等の代替用語を使用して記述されてもよい。
用語「障害」は、特に断りがない限り、用語、疾患、病態、または病気を意味し、互換可能に使用される。
「有効量」は、本明細書に記載の化合物と連結して使用されるとき、例えば、乳癌等の癌または関係疾患の病因の測定可能な治療、予防または低減を提供するのに効果的である量である。
「ホルモン療法」は、内分泌系の操作を含み得る抗癌療法である。当該療法は例えば、ホルモン(ホルモンアンタゴニスト)の産生または活性を抑制する薬剤を含み得る。
「ホルモン療法」は、内分泌系の操作を含み得る抗癌療法である。当該療法は例えば、ホルモン(ホルモンアンタゴニスト)の産生または活性を抑制する薬剤を含み得る。
用語「ヒドロキシル」は-OHを意味する。
「対象」は哺乳動物、例えば、ヒト(例、女性または男性)、マウス、ラット、モルモット、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、またはサル、チンパンジー、ヒヒまたはアカゲザル等の非ヒト霊長類であり、「対象」と「患者」は、本明細書では互換可能に使用される。
用語「治療すること」は、対象について、対象の障害の少なくとも1つを改善することを意味する。治療することは、例えば、乳癌等の癌または関係疾患を含む障害を治癒させ、改善し、または少なくとも部分的にでも寛解させることができる。治療は、全生存期間、無進行間隔、無疾患間隔、または病理学的な完全奏効を含む、様々なエンドポイントを用いて評価することができる。
本明細書に述べるように、全ての組成比率は、特に断りがない限り、成分の計の重量による。単語「〜を含む」およびその変化形は、本明細書に使用されるとき、リスト項目の列挙は、当該技術分野の材料、組成物、機器、および手法にも有用になり得る他の項目を除外するつもりはない。同様に、用語「できる」、「〜得る」およびその他の変化形は、非限定的であることを意図し、実施形態が特定の要素または特徴を含むことができるまたは含み得るという列挙は、それらの要素または特徴を含まない本技術分野のその他の実施形態を除外しない。
一般的に、本発明の組成物はカルバゾール化合物を含む。適切なカルバゾール化合物およびその作成方法は、2009年10月5日に提出されたPCT/US2009/059558に記載され、その開示の全体は参照により本明細書に取り込まれる。ある実施形態では、カルバゾールは、curaxinとして本明細書に参照される化合物である。
様々な実施形態では、本発明は式Iの化合物、
式中、R1〜R9のそれぞれは独立してH、ヒドロキシルまたはアルキルであり;
nは0、1、2、3、4、または5であり;
またはその薬剤的に許容可能な塩もしくは水和物に関するものである。
様々な実施形態では、式Iの化合物またはその薬剤的に許容可能な塩もしくは水和物はcuraxinとして本明細書に参照される。
curaxinは異なる構造ではあるが、腫瘍細胞に対する作用の同じような分子機序を伴う化学化合物の2つの基を組み合わせる。第一の基は9−アミノアクリジンの誘導体を含む(例えば、抗マラリア薬アクリキン)。第二の基はカルバゾール細胞核を有する化合物を含む。いくつかの実施形態では、カルバゾールは、アセチルおよび/またはアルキルアシルおよび/またはアルキルケトン置換基を含むことができる。いくつかの実施形態では、カルバゾール窒素原子に結合される側鎖は、直鎖または分岐鎖アルキルアミンを含むことができ、二級および三級アミノ基を含んでいてもよい。
ある実施形態では、化合物は以下の構造を有する。
上述の化合物はcuraxinとして一般的に意味され、特に、本明細書ではcuraxin−137および/またはCBL−137および/またはCBL0137として意味される。
様々な実施形態では、本発明は癌に関する。いくつかの実施形態では、本発明は乳癌に関する。いくつかの実施形態では、本発明は、限定されないが、ER+、またはHER2+、またはFACT+、またはPR+、またはER+およびHER2+、またはER+およびFACT+、またはER+およびPR+、またはHER2+およびFACT+、またはHER2+およびPR+、またはFACT+およびPR+、またはER+およびHER2+およびFACT+、またはER+およびHER2+およびPR+、またはER+およびFACT+およびPR+、またはHER2+およびFACT+およびPR+、またはER+およびHER2+およびFACT+およびPR+を含む乳癌の特定のサブタイプに関する。いくつかの実施形態では、本発明は、限定されないが、ER−、またはHER2−、またはFACT−、またはPR−、またはER−およびHER2−、またはER−およびFACT−、またはER−およびPR−、またはHER2−およびFACT−、またはHER2−およびPR−、またはFACT−およびPR−、またはER−およびHER2−およびFACT−、またはER−およびHER2−およびPR−、またはER−およびFACT−およびPR−、またはHER2−およびFACT−およびPR−、またはER−およびHER2−およびFACT−およびPR−を含む乳癌の特定のサブタイプに関する。
癌または腫瘍は、未制御の細胞増殖および/または細胞生存期間の異常な増加および/または身体の器官および系の正常な機能を妨げるアポトーシスの阻害を意味する。癌または腫瘍を有する対象は、対象の身体に存在する客観的に測定することのできる癌細胞を有する対象である。良性および悪性癌、ならびに休止状態の腫瘍または微小転移が本発明に含まれる。元の場所および種の重要臓器から移動する癌は、結果として冒された臓器の機能的悪化によって、対象を死に至らしめる可能性がある。
様々な実施形態では、本発明は、前転移癌、または転移癌にも適用できる。転移は、癌が、身体の本来の場所から他の場所に拡散することを意味する。癌細胞は、原発腫瘍から抜け出し、血管を通じてリンパ管および血管、循環に浸透することができ、身体の他の正常組織内の遠い焦点で増殖する(転移する)。転移は局所であっても遠隔であってもよい。転移は連続的なプロセスであり、腫瘍細胞次第で、原発腫瘍から関係を絶ち、血流を通って進んでいき、遠い場所に落ち着く。新しい場所で、細胞は血液供給を確立し、増殖し、生命を脅かす腫瘤を形成する。腫瘍細胞内の刺激性および抑制的な分子経路の両方がこの行動を調節し、遠い場所での腫瘍細胞と宿主細胞の相互関係に重要である。
転移は、特定の症状をモニタリングする他に、磁気共鳴画像(MRI)スキャン、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン、血液および血小板数、肝機能試験、胸部X線および骨スキャンを単独または組み合わせて検出されることが多い。
本明細書に記載の方法および組成物は、癌の治療、および/または悪性腫瘍の増殖、進行、および/または転移、ならびに細胞生存の増加に関連する増殖障害、またはアポトーシスの阻害の治療、予防または寛解に関する。いくつかの実施形態では、本発明は乳癌に関する。
乳癌は、胸部組織に由来する癌の種類であり、乳管の内側(乳管癌)または管に乳を供給する小葉(小葉癌)を含む。乳癌はヒトや他の哺乳動物に発症する。多くは女性のヒトに発症するが、男性の乳癌もあり得る。いくつかの実施形態では、本発明は女性のヒトの乳癌対象に関する。いくつかの実施形態では、本発明は、男性のヒトの乳癌対象に関する。
乳癌は、予後に影響を及ぼし得、治療の反応に影響を与える可能性のある1つ以上のグレード付けシステムによって分類されてもよい。組織病理学は、組織学的な外見によって乳癌の分類を記述する。大部分の乳癌は、乳管または小葉を裏張りしている上皮に由来し、これらの癌は乳管癌または小葉癌として分類される。非浸潤性癌は、周囲の組織に浸潤することなく、乳腺管等の特定の組織区画内に、低悪性度の癌性または前癌性細胞が増殖する。対照的に、浸潤癌はそれ自体最初の組織区画に制限されない。グレード付けは、乳癌細胞の外見を正常な乳組織と比較する。いくつかの実施形態では、癌性細胞は、正常細胞および細胞の正常な集団の特徴である分化および規則正しい配列を失う。さらに細胞分裂が制御されなくなり、細胞核の均一性が少ない。細胞を、良好に分化(低悪性度)、中程度に分化(中悪性度)、正常な乳癌細胞に見られる特徴を進行的に失っているような低い分化(高悪性度)として区間分けすることができる。低分化癌(その細胞は正常な細胞と最も似ていない)の予後はいっそう悪い。乳癌はTNMシステムを用いて病期分類され、腫瘍(T)のサイズ、腫瘍が腋窩のリンパ節(N)に拡散しているかどうか、腫瘍が転移(M)しているかどうかに基づく。サイズが大きく、結節性の拡散、転移があるほどステージ数が大きくなり、予後は悪い。主要なステージとして、ステージ0は前癌性またはマーカー条件、非浸潤性乳管がん(DCIS)または上皮内小葉癌(LCIS)のいずれかであり、ステージ1〜3は乳房または領域リンパ節内にあり、ステージ4は予後が望ましくないことが多い転移癌である。DNAマイクロアレイを含む様々なタイプのDNA検査も、正常細胞と乳癌細胞を比較するために使用される。特定の乳癌の特異的な変化を用いて、いくつかの方法で癌を分類することができ、そのDNAタイプに最も効果的な治療を選択することの助けとなり得る。
さらに、受容体の状態は癌を分類するのに重要であり、受容体の状態は、治療の最適なコースを決定するために重要になる可能性がある。乳癌細胞はその表面および細胞質および細胞核に受容体を有する。ホルモン等の化学メッセンジャーは受容体と結合し、このことが細胞を変化させる。乳癌細胞には少なくとも3つの重要な受容体:本明細書に記述されるように、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)、およびHER2がある場合とない場合がある。
いくつかの実施形態では、本発明は以下を含む乳癌の特定のサブタイプに関するものであり、以下、限定されないが、ER+、またはHER2+、またはFACT+、またはPR+、またはER+およびHER2+、またはER+およびFACT+、またはER+およびPR+、またはHER2+およびFACT+、またはHER2+およびPR+、またはFACT+およびPR+、またはER+およびHER2+およびFACT+、またはER+およびHER2+およびPR+、またはER+およびFACT+およびPR+、またはHER2+およびFACT+およびPR+、またはER+およびHER2+およびFACT+およびPR+。いくつかの実施形態では、本発明は乳がんの特定のサブタイプに関するものであり、以下、限定されないが、ER−、またはHER2−、またはFACT−、またはPR−、またはER−およびHER2−、またはER−およびFACT−、またはER−およびPR−、またはHER2−およびFACT−、またはHER2−およびPR−、またはFACT−およびPR−、またはER−およびHER2−およびFACT−、またはER−およびHER2−およびPR−、またはER−およびFACT−およびPR−、またはHER2−およびFACT−およびPR−、またはER−およびHER2−およびFACT−およびPR−を含む。
さらに、いくつかの実施形態では、本発明は、例えば、アンドロゲン受容体(AR)およびプロラクチン受容体(PRLr)等の追加の受容体の存在または非存在を伴う、上述の組み合わせのいずれかを含む乳癌の特定のサブタイプに関する。したがって、いくつかの実施形態では、本発明の乳癌の特定のサブタイプは、少なくともアンドロゲン受容体陽性(AR+)またはアンドロゲン受容体陰性(AR−)である。したがって、いくつかの実施形態では、本発明の乳癌の特定のサブタイプは、少なくともプロラクチン受容体陽性(PRLr+)またはプロラクチン受容体陰性(PRLr−)である。
乳癌の根底にある病因の機序は完全には理解されていないが、ホルモンが事例のほぼ70%に重要な役割を担い、多くの現在の治療戦略がホルモンに反応する乳癌を標的にする。これらの癌は「ER陽性」(ER+)であり、免疫組織化学、または当該技術分野および/または本明細書に記載のその他の手技のいずれかを使用して当該組織内に実証することができる。
エストロゲンは乳房の細胞分裂のプロモーターであり、正常および悪性細胞の増殖を引き起こす。2つの主要なクラスの抗エストロゲン剤、選択的エストロゲン受容体修飾薬(SERM)およびアロマターゼ阻害剤(AI)は、乳癌治療の活動のために最近使用されている。いくつかの実施形態では、タモキシフェンは本発明の関係する抗エストロゲン薬である。
エストロゲンは、エストロゲン受容体陽性乳癌の調節に重要な役割を担うことが示されている。内因性エストロゲン、具体的には17β−エストラジオール(E2)がエストロゲン受容体に結合することは、いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、癌細胞を細胞周期のG1フェーズから細胞周期のSフェーズに移行させることによって、癌細胞の増殖と結び付いている。間期のG1ステージは、休止状態にある細胞を特徴とするが、細胞の生存に大切なDNA合成および増殖が発生するのはSフェーズの間である。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、エストロゲンを乳房細胞の増殖を刺激するERに結合することは、結果的に細胞分裂およびDNA複製を増加させ、腫瘍性変異を導き得る。さらに、いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、ERはエストロゲン代謝の効果によって乳癌に結びつけられ得、遺伝毒性廃棄物を産生する。
エストロゲン受容体は、ホルモンエストロゲン(17β−エストラジオール)によって活性化されるタンパク質のグループである。少なくとも2つのクラスのエストロゲン受容体細胞内受容体の核内ホルモンファミリーのメンバーであるER、およびGタンパク質結合受容体のロドプシン様ファミリーのメンバーであるGPER:が存在する。エストロゲンによって一度活性化されると、ERは転写因子のように機能し、細胞核に転位置し、様々な遺伝子の活動を制御するDNAに結合する。さらに、ERの小さいプールが形質膜に局在化し、カップリングではないが、Gタンパク質に、直接的または間接的にシグナルを送る。ステロイドに反応して、シグナル伝達は非転写イベントおよび転写イベントの両方を調節し、エストロゲンの急速でより高い持続作用に影響を与える。
エストロゲン受容体陽性乳癌の治療の現在のトレンドは、E2がエストロゲン受容体に結合することを防ぐ抗エストロゲン剤の使用である。抗エストロゲンは、エストロゲン受容体の競合阻害によって、または抗エストロゲンまたはカルモジュリン受容体等の別の領域に結合することによって、E2結合を阻害し、それによって、E2がエストロゲン受容体に結合することを防ぎ得ると仮定している(Pharmacol Rev 36:245(1984))。ある試験では、エストロゲン受容体陽性乳癌(>10フェムトモル/mgサイトゾルタンパク質)の患者の約60%が抗エストロゲン療法に奏効したが、エストロゲン受容体陰性腫瘍(<10フェムトモル/mgサイトゾルタンパク質)の患者の10%以下しか奏効しなかった(J.L.Borgna、Biochem Pharmacol 31:3187(1982)参照)。
このアプローチにも関わらず、エストロゲンに感受性のあるタイプの乳癌ER+乳癌は、腫瘍増殖を刺激し、ER乳腺腫瘍と比較して通常療法に異なるレベルの奏効性を示す可能性がある。
いくつかの実施形態では、腫瘍の攻撃性は、病理学報告:細胞分化、有糸分裂活性、および細胞核異常性の3つの測定値のうち1つ以上を用いることによって、決定される。これらの測定値についての情報は、測定値を合計し、3から9の範囲のスコアを与える3つのスケールによって、提供される。細胞分化評価では、「正常」な乳房細胞分化は、細胞が胸部組織を構成する線を正常に形成できることを意味する。細胞が胸部組織腺のようには見えない組織を形成する場合、それらを分化が少ないと呼ぶ。これは、通常、攻撃性がより増した癌のサインである。スコアは一般に1から3まであり、スコアが高いほど分化が少ないことを示す。有糸分裂活性評価では、腫瘍細胞が速く分化する測定値である。攻撃的な腫瘍は、分裂(有糸分裂)の活動に、多数の細胞を有する。スコアは0から3まであり、スコアが高いほど攻撃的作用が強いことを示す。細胞核異常評価では、どの程度サイズが同じように見えるかに基づいて、細胞の核をグレード付けする。スコアは0から3まであり、スコアが高いほど塊だらけでサイズが異なる核であることを示す。これら3つの評価を、スケール攻撃性の和として、まとめることが多い。スコア9中3〜5は、グレード1であり、攻撃性が低い癌を示す傾向にあり、スコア6〜7はグレード2であり、スコア8〜9はグレード3であり、攻撃性がより増した癌であることを示す傾向にある。いくつかの実施形態では、当該技術分野に知られているその他の測定値を、癌の攻撃性を評価するために使用してもよい。
したがって、本発明は、とりわけ、ER+癌を治療するための本明細書に記載の化合物の使用に関する。いくつかの実施形態では、ER+癌は乳癌である。いくつかの実施形態では、ER+癌は乳癌の特定のサブタイプであり、その他のバイオマーカーの文脈にあってもよい(例えば、FACTおよび/またはPRおよび/またはHER2)。
いくつかの実施形態では、ER+癌は、卵巣癌、結腸癌、前立腺癌、子宮内膜癌、胃癌、および子宮癌の1つ以上である。いくつかの実施形態では、ER+癌は、卵巣癌および/または結腸癌および/または前立腺癌および/または子宮内膜癌および/または胃および/または子宮癌の特定のサブタイプであり、その他のバイオマーカーの文脈にあってもよい(例えば、FACTおよび/またはPRおよび/またはHER2)。いくつかの実施形態では、結腸癌は、結腸組織の支配的なERであるERβの欠失に関連し、結腸癌はERβ特異的アゴニストで治療する。
HER2(Neu、ErbB−2、CD340、またはp185としても知られる)は、ヒトの場合に、周知の癌原遺伝子であるERBB2遺伝子によってコードされるタンパク質である。HER2は上皮性増殖因子受容体(EGFR/ErbB)ファミリーのメンバーである。この遺伝子の増幅または過剰発現は、乳癌を含むある攻撃的なタイプの癌の病因および進行に重要な役割を担うことが示されている。
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、HER2によって活性化されるシグナル経路として、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)、ホスホイノシチド3−キナーゼ(PI3K/Akt)、ホスホリパーゼ C γ、プロテインキナーゼC(PKC)、およびシグナル伝達性転写因子(STAT)が挙げられる。
一般的に、受容体のErbBファミリーによってシグナル送達することは、細胞増殖を促進し、アポトーシスに反する。ERBB2遺伝子の増幅または過剰発現は、乳癌の約30%に発生する。疾患の再発の増加およびいっそう悪い予後に強く関連する。したがって、HER2+乳癌は乳癌の特に攻撃的なサブタイプであり、予後不良をもたらすことが多い。
本発明は、とりわけ、HER2+癌を治療するための本明細書に記載の化合物の使用に関する。いくつかの実施形態では、免疫組織化学、または当該技術分野および/または本明細書に記載のその他の手技のいずれかを用いて、当該組織中のHER2+癌を実証することができる。いくつかの実施形態では、HER2+癌は乳癌である。いくつかの実施形態では、FACT+癌は、乳癌の特定のサブタイプであり、その他のバイオマーカーの文脈にあってもよい(例えば、PRおよび/またはERおよび/またはFACT)。
いくつかの実施形態では、HER2+癌は、卵巣癌、結腸癌、前立腺癌、子宮内膜癌、胃癌、および子宮癌の1つ以上である。いくつかの実施形態では、HER2+癌は卵巣癌および/または結腸癌および/または前立腺癌および/または子宮内膜癌および/または胃および/または子宮癌の特定のサブタイプであり、その他のバイオマーカーの文脈にあってもよい(例えば、PRおよび/またはERおよび/またはFACT)。
プロゲステロンは、胸部上皮細胞の増殖および分化の主要な制御因子である。プロゲステロンの乳房の発現および機能の基礎となるコントローラーである。しかし、プロゲステロンの曝露は、エストロゲンと共に閉経期に使用されると、乳癌を発現する機会を増加させる。
プロゲステロン受容体は、転写因子の核受容体スーパーファミリーのプロゲスチン活性化ステロイド受容体のメンバーである。妊娠の確立および持続、乳房の胞状の発達および性行動に関連する多様な生殖イベントに中心的な役割を担う。PR(PR−)を欠損している遺伝子改変動物は、野生型マウスと比較して乳腺腫瘍の発生率が著しく低い。臨床的および実験的証拠は、プロゲステロンの曝露は、PR+乳癌を、リンパ節および遠位の臓器に転移するのを促進する役割を担う可能性があり、当該疾患の罹患および死亡の主原因である。
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、プロゲステロンは、少なくとも、組織因子または血管内皮成長因子発現を増加させ、マトリックスメタロプロテアーゼおよびウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子活性を増加させ、または接着斑(FA)複合体の形成を起動させることによって乳癌細胞の浸潤を増強し、細胞運動および侵入中の細胞外基質に細胞を結合させるためのアンカー部位を提供する。
機序を問わず、プロゲステロンに感受性のある乳癌のタイプであるPR+乳癌は、腫瘍の増殖を刺激し、PR+乳癌はPR癌とは異なる治療に反応性を示し得る。いくつかの実施形態では、免疫組織化学、または当該技術分野に周知および/または本明細書に記載のその他の手技のいずれかを用いることによって、当該細胞中のPR2+癌を実証することができる。
したがって、本発明は、特に、PR+癌を治療するための本明細書に記載の化合物の使用に関する。いくつかの実施形態では、PR+癌は乳癌である。いくつかの実施形態では、PR+癌は乳癌の特定のサブタイプであり、その他のバイオマーカーの文脈にあってもよい(例えば、FACTおよび/またはERおよび/またはHER2)。
いくつかの実施形態では、PR+癌は卵巣癌、結腸癌、前立腺癌、子宮内膜癌、胃癌、および子宮癌の1つ以上である。いくつかの実施形態では、PR+癌は卵巣癌および/または結腸癌および/または前立腺癌および/または子宮内膜癌および/または胃および/または子宮癌の特定のサブタイプであり、その他のバイオマーカーの文脈にあってもよい(例えば、FACTおよび/またはPRおよび/またはHER2)。
クロマチン転写促進因子(The FAcilitates Chromatin Transcription)(FACT)複合体は、2つのサブユニット:80kDaのサブユニットおよび140kDaのサブユニットのヘテロ二量体である。これらのサブユニットは構造特異的認識タンパク質1(Structure Specific Recognition Protein 1)およびTy抑制因子(Suppressまたはof Ty)(SPT16またはSUPT16H)である。本明細書に使用されるとき、FACTはSSRP1およびSPT16のヘテロ二量体または個別のSSRP1およびSPT16サブユニットを意味する。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、FACTはヌクレオソームの安定性を調節することによってクロマチンを再構築することに関与する。FACTは、例えば、転写、複製、組換え、DNA損傷および修復等のクロマチンに関係する多くのプロセスに関与し得る。FACTは、特にヒストンH2A/H2Bと相互作用し、ヌクレオソームの解体および転写伸長に影響を及ぼす。癌の様々なモデルで広い抗癌活動を有する(国際特許公開第2010/042445号参照、内容は参照によりその全体が本明細書に取り込まれる)curaxin(例えば、Curaxin−137)は、FACTの機能的不活化を引き起こす(Gasparian、ら、Sci.Trans.Med.3:95ra74(2011)参照、内容は参照によりその内容の全体が本明細書に取り込まれる)。
構造特異的認識タンパク質1(SSRP1)(ヒトのmRNA:NM_003146.2、配列は参照によりその全体が本明細書に取り込まれる、マウスのmRNA:NM_001136081.1、配列は参照によりその全体が本明細書に取り込まれる)の遺伝子によってコードされるタンパク質は、SPT16と一緒にFACTを形成するヘテロ二量体のサブユニットである。SSRP1は80kDaのサブユニットである。FACTおよびシスプラチン損傷DNAは、シスプラチンの抗癌機序に欠くことのできないものになり得る。SSRP1がコードされたタンパク質(ヒトの場合:NP_003137.1、配列は参照によりその全体が本明細書に取り込まれる、マウスの場合:NP_001129553.1、配列は参照によりその全体が本明細書に取り込まれる)は、いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、シスプラチン修飾DNAについて構造認識要素を構成し得る高移動度群ボックスを含む。SSRP1は、SSRP1、SUPT16H、CSNK2A1、CSNK2A2およびCSNK2Bを含む、UV照射後に形成するCK2−SPT16−SSRP1複合体の要素でもある。SSRP1はセリン/トレオニン−タンパク質キナーゼであるNEK9に相互作用を示している。SSRP1は、(例えば、TP63のアイソフォームγを含む)転写活性因子p63の活性化補助因子としても機能する。SSRP1は全長p63の活動を増長するが、N末端が切除されたp63(DeltaN−p63)変異体に影響を及ぼさない。SSRP1は、FYTTD1/UIFおよびSRFにも相互に作用する。
SPT16(SUPT16H)は、ヒトの場合SUPT16H遺伝子(ヒトのmRNA:NM_007192.3、配列は参照によりその全体が本明細書に取り込まれる、マウスのmRNA:NM_033618.3、配列は参照によりその全体が本明細書に取り込まれる)によってコードされるタンパク質である。SPT16タンパク質(ヒトの場合:NP_009123.1、配列は参照によりその全体が本明細書に取り込まれる、マウスの場合:NP_291096.2、配列は参照によりその全体が本明細書に取り込まれる)は、FACT複合体内の140kDaのサブユニットである。SPT16は、SSRP1、SUPT16H、CSNK2A1、CSNK2A2およびCSNK2Bを含む、UV照射後に形成するCK2−SPT16−SSRP1複合体の要素でもある。さらに、SPT16は、少なくともSMARCA2、SMARCA4、SMARCB1、SMARCC1、SMARCC2、SMARCD1、SMARCE1、ACTL6A、BAZ1B/WSTF、ARID1A、SUPT16H、CHAF1AおよびTOP2Bを含むWINAC複合体の要素である。SPT16は、チロシン‐タンパク質キナーゼであるBAZ1Bと相互作用を示している。SPT16は、基本転写因子IIEサブユニット2(GTF2E2)とも相互作用し、ヒストンH2A−H2Bに結合する。
FACTは多くの変化形の攻撃的癌に結び付いている。2013年2月11日に提出された米国仮特許出願第61/763266号を参照のこと、内容は参照によりその内容の全体が本明細書に取り込まれる。
したがって、本発明は、特に、FACT+癌を治療するための本明細書に記載の化合物の使用に関する。いくつかの実施形態では、FACT+癌は乳癌である。いくつかの実施形態では、FACT+癌は乳癌の特定のサブタイプであり、その他のバイオマーカー(例えば、PRおよび/またはERおよび/またはHER2)の文脈にあってもよい。いくつかの実施形態では、FACT+癌は、免疫組織化学、またはその他の手技のいずれかを使用して当該組織内に実証することができる。
いくつかの実施形態では、FACT+癌は卵巣癌、結腸癌、前立腺癌、子宮内膜癌、胃癌、および子宮癌の1つ以上である。いくつかの実施形態では、FACT+癌は卵巣癌および/または結腸癌および/または前立腺癌および/または子宮内膜癌および/または胃および/または子宮癌の特定のサブタイプであり、その他のバイオマーカー(例えば、PRおよび/またはERおよび/またはHER2)の文脈にあってもよい。
乳癌は、当該技術分野に周知のおよび/または本明細書に記載の手法を用いて、ある特定のサブタイプとして分類することができる(例えば、ER+、またはHER2+、またはFACT+、またはPR+、またはER+およびHER2+、またはER+およびFACT+、またはER+およびPR+、またはHER2+およびFACT+、またはHER2+およびPR+、またはFACT+およびPR+、またはER+およびHER2+およびFACT+、またはER+およびHER2+およびPR+、またはER+およびFACT+およびPR+、またはHER2+およびFACT+およびPR+、またはER+およびHER2+およびFACT+およびPR+、またはER−、またはHER2−、またはFACT−、またはPR−、またはER−およびHER2−、またはER−およびFACT−、またはER−およびPR−、またはHER2−およびFACT−、またはHER2−およびPR−、またはFACT−およびPR−、またはER−およびHER2−およびFACT−、またはER−およびHER2−およびPR−、またはER−およびFACT−およびPR−、またはHER2−およびFACT−およびPR−、またはER−およびHER2−およびFACT−およびPR−)。これらの手法として、限定されないが、フローサイトメトリー(例えば、蛍光活性化セルソーティング(FACS)を含む)、固相酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ウエスタンブロット法(インセル・ウエスタンを含む)、免疫蛍光染色、マイクロエングレービング(microengraving)(例えば、Lab Chip.2010;10(11):1391−1400)参照,組み込まれたブロモデオキシウリジン(BrdU)または7−アミノアクチノマイシン D(7−AAD)の免疫蛍光染色;ELISPOTアッセイ;mRNA分析;質量的RT−PCR;TaqMan Q−PCR;組織学;レーザーキャプチャー法;生物ルミネセンスイメージング;および腫瘍抗原と共に表されるT細胞を測定するアッセイ(Hishii,ら、(1997).Proc.Natl.Acad Sci(USA)、94:1378;Ramirez−Montagut,ら.、(2000).119:11;Kradin、ら、(1989).Lancet、1:577;Hishii、ら、(1999).Clin Exp Immunol、116:388;and Pandolfi、ら、(1991).Cancer Res.、51:3164)が挙げられる。これらの手法は、当該技術に周知のその他の手法も含む(例えば、Wiley and SonsによるCurrent Protocols in Immunology(2013) 参照)。
様々な実施形態では、本発明は発癌物質によって誘発される癌を治療する方法に関する。いくつかの実施形態では、本発明は、遺伝毒性の発癌物質によって誘発される癌を治療する方法に関する。
いくつかの実施形態では、発癌物質は国際がん研究機関(IARC)Monographs on the Evaluation of Carcinogenic Risks to Humansによって分類されるものである。グループ1発癌物質(ヒトに対して明らかに発癌物質となる薬剤。曝露状況はヒトに対して発癌物質となる曝露を伴う)、グループ2A発癌物質(ヒトに対してほぼ確実に発癌物質となる薬剤。曝露状況はヒトに対してほぼ確実に発癌物質となる曝露を伴う)、グループ2B発癌物質(ヒトに対しておそらく発癌物質となる薬剤。曝露状況はヒトに対しておそらく発癌物質となる曝露を伴う)、グループ3発癌物質(ヒトに対する発癌性として分類されない剤)およびグループ4発癌物質(ヒトに対してまず発癌物質とはならない剤)を含む。非限定的な例示的発癌物質は、ダイオキシンおよびダイオキシン様化合物、ベンゼン、ケポン、EDB、アスベスト、工場などから出る煙およびタバコの煙、ベンゾ[a]ピレン、ニトロサミン(ニトロソノルニコチン等)、ならびに反応性アルデヒド(ホルムアルデヒド等)、塩化ビニル、ヒ素、アスベスト、カドミウム、六価クロム(VI)化合物、ディーゼル排気、酸化エチレン、ニッケル、ラドンおよびその壊変生成物、ラジウム−226、ラジウム−224、プルトニウム−238、プルトニウム−239、ならびにその他の高原子量のその他のα粒子エミッタである。
いくつかの実施形態では、発癌物質はジメチルヒドラジン(DMH)である。特定の実施形態では、発癌物質は1,2−DMHおよび/または非対称類似体の1,1−DMHである。いくつかの実施形態では、これらの方法は、本明細書に記載の有効量の化合物を投与することを含む。いくつかの実施形態では、これらの方法は、有効量の式Iの化合物またはその薬剤的に許容可能な塩を投与することを含む。いくつかの実施形態では、これらの方法は、有効量のcuraxin137またはその薬剤的に許容可能な塩を投与することを含む。
1,2−DMHも非対称類似体の1,1−DMHもヒトの発癌物質である。ヒドラジンおよびその誘導体は、ロシア連邦法で正式にヒトの発癌物質であると正式に言われている(Sanitation RegulationおよびHygienic norms 1.2.2353‐08 “Carcinogenic factorsおよびmain requirements to prevention of carcinogenic risk”)。1,1DMHは、ロケット燃料の重要成分として、航空産業で広く使用されている。何千人もの人々がその製造および使用に携わっており、その多くが1,1−DMHによって慢性中毒の症状にあるため、発癌物質高リスク群にある。
1,2−DMHは「絶対的発癌物質」であると考えられており、腫瘍形成を開始するだけでなく、その進行を促進することもあり得る。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、DMHそれ自体は変異を直接的に引き起こすとは考えられない。しかしながら、生物に導入されると、薬物動態のミクロソームの酸化によって影響される肝臓およびその他の臓器に、代謝性変質を起こす。これらの反応の共産生物は、DNAを損傷する能力を有するアルキル化誘導体を含む。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、DMHの代謝性変質の結果として、活性酸素の形成が、腫瘍増殖の促進能力になると考えられる。分子シグナル移動のレベルで、転写因子p53、NF−kBおよびホスファチジルイノシトール−3−キナーゼ/mTORを含むストレス経路の成分の活動によって、腫瘍の促進が調節される。
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、DMHは癌発現、前駆型変異原性病変O6−MeGについてのサインを有し、GCをin vitroおよびin vivoにAT移行へ誘発する。これは、DNH曝露の後に、大腸菌およびサルモネラ筋に誘発される変異だけである。さらにGCからATへの変異は、DMHが誘発したラットの腫瘍のK−ras癌原遺伝子に検出されている。
DMHは、限定されないが、大腸の腺癌およびポリープ、肛門周囲の皮膚肝細胞腫および血管内皮腫の扁平上皮細胞癌、腫瘍、子宮肉腫、卵巣腺癌、副腎の血管肉腫、嚢胞性のおよび固形腎腺癌を含む、多くの変化形の腫瘍を誘発する。
ある態様では、本発明は、有効量の上述の式Iの化合物またはその薬剤的に許容可能な塩または水和物を投与することを含む、治療が必要な対象の乳癌を治療する方法を提供し、乳癌は、エストロゲン受容体陽性(ER+)、ヒト上皮成長因子受容体2陽性(HER2+)、プロゲステロン受容体陽性(PR+)、およびクロマチン転写促進因子陽性(FACT+)の1つ以上である。
別の態様では、本発明は有効量のcuraxin137またはその薬剤的に許容可能な塩または水和物を投与することを含む、治療が必要な対象の乳癌を治療する方法を提供し、乳癌は、ストロゲン受容体陽性(ER+)、ヒト上皮成長因子受容体2陽性(HER2+)、プロゲステロン受容体陽性(PR+)、およびクロマチン転写促進因子陽性(FACT+)の1つ以上である。
いくつかの実施形態では、式Iの化合物または薬剤的に許容可能な塩を、例えば、ホルモン療法等の追加の癌療法と併用して投与する。当該併用療法は本明細書に記載される。
様々な実施形態では、対象はホルモン療法を受けていないまたはホルモン療法は効果がない。
いくつかの実施形態では、癌は多剤耐性である。例えば、患者は実質的な奏効がないまま、化学療法のサイクルを1つ以上、経験している。あるいはまたはさらに、腫瘍は多剤耐性の1つ以上のマーカーを有する。当該マーカーとして、化学反応アッセイまたは分子アッセイが挙げられる。そのため、用語、多剤耐性は、少なくとも1つの併用化学療法のサイクルに奏効性を表さない癌を含み、ドセタキセル、パクリタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、カルボプラチン、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、オキサリプラチン、カルムスチン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、シクロホスファミド、イホスファミド、トポテカン、エルロチニブ、エトポシド、およびマイトマイシンの少なくとも2つ(それに相当する薬剤)に耐性があるとして、(診断によって)スコアを付けている。
様々な実施形態では、乳癌は白金剤および/またはタキサンに抵抗性があり、または化学受容性試験または代替バイオマーカーに基づいて、白金剤またはタキサンに抵抗性があると決定される。
当該技術分野に周知のように、タキサンは、限定されないが、パクリタキセル(TAXOL)およびドセタキセル(TAXOTERE)を含む薬剤のグループである。タキサンは、いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、微尿細管に影響を及ぼすことによって、癌細胞の増殖を予防し、細胞機能に重要な役割を担う。白金(Pt)は自然に発生する元素である。白金剤は、いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、DNA複製および転写を干渉するDNAの化学的架橋の形成によって、細胞死を引き起こす。白金剤は、限定されないが、シスプラチン(PLATINOL)、カルボプラチン(PARAPLATIN)、およびオキサリプラチン(ELOXATIN)を含む薬剤のグループである。
様々な実施形態では、式Iの化合物または薬剤的に許容可能な塩を、限定されないが、単独補助療法等を含む切除後の補助療法として投与する。
アジュバントケアとも呼ばれる補助療法は、一次治療、腫瘍または初回治療の他に与えられる治療である。非限定的な例の方法によって、検知された疾患をすべて取り除いたが、潜在的な疾患による再発の統計学的なリスクが残っている外科手術の後に、通常与えられる追加治療であってもよい。いくつかの実施形態では、式Iの化合物またはその薬剤的に許容可能な塩を、本明細書に記載のサブタイプを含む乳癌の治療の補助療法として使用する。いくつかの実施形態では、式Iの化合物またはその薬剤的に許容可能な塩は、式Iの化合物またはその薬剤的に許容可能な塩を、本明細書に記載のサブタイプを含む乳癌の治療の単独の補助療法として使用する。
いくつかの実施形態では、式Iの化合物またはその薬剤的に許容可能な塩は、切除前の術前補助療法として投与される。
ある実施形態では、術前補助療法は任意の外科手術の前に腫瘍を収縮および/またはダウングレードするための療法を意味する。いくつかの実施形態では、術前補助療法は、外科手術前の癌患者に投与される化学療法を意味する。いくつかの実施形態では、術前補助療法は外科手術前の癌患者に投与される本明細書に記載の薬剤を意味する。術前化学療法が一般に考えられる種類の癌として、例えば、乳房、大腸、卵巣、頸部、膀胱、および肺が挙げられる。いくつかの実施形態では、式Iの化合物またはその薬剤的に許容可能な塩は、本明細書に記載のサブタイプを含む乳癌の治療の場合に、切除前の術前補助療法として使用される。
いくつかの実施形態では、切除は、限定されないが、a)乳癌の(乳腺)腫瘤摘出術)(乳房温存手術)―癌領域および正常な細胞の周囲の辺縁を切除する。リンパ節を取り除くために第二の切開が行われてもよい。当該治療は、外科手術が終了すると、正常な乳房の外見を保持することを目的とする。b)部分もしくは分節乳房切除術または乳腺1/4切除術―(乳腺)腫瘤摘出術より多くの胸部組織を取り除く。癌領域および正常な細胞の周囲の辺縁を切除する。c)単純または全乳房切除術―乳房全体を取り除くが、リンパ節は取り除かない。単純乳房切除術は、新しい癌が発現することを予防するため、または癌がリンパ節に及んでいない場合に用いられる。およびd)改変した根治的乳房切除術―乳首と一緒に全胸部組織を取り除く。腋窩のリンパ節も試料採取する。胸部筋肉はそのまま残る。
いくつかの実施形態では、本発明は癌の予防に関する。いくつかの実施形態では、本発明は、有効量の式Iの化合物またはその薬剤的に許容可能な塩を投与することを含む、対象の癌を予防する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は有効量の式Iの化合物またはその薬剤的に許容可能な塩を投与することを含む、対象の乳癌を予防する方法を提供する。様々な実施形態では、式Iの化合物またはその薬剤的に許容可能な塩は、追加の治療と共に投与されてもよい。
いくつかの実施形態では、予防方法は、癌になりやすい対象に、薬剤を投与する方法を含む。いくつかの実施形態では、対象が、高リスクの癌、癌の遺伝的素因(例えば、遺伝的危険因子)、以前に癌を発症したことがある(例えば、新しい癌および/または再発)、癌の家族歴、および癌を誘発する薬剤に曝露(例えば、環境要因)の1つ以上を特徴とする場合に、その対象は癌になりやすい。
いくつかの実施形態では、高リスクの癌を特徴とする場合に、対象は癌になりやすい。いくつかの実施形態では、癌の遺伝的素因を特徴とする場合に、対象は癌になりやすい。いくつかの実施形態では、癌の遺伝的素因は、当該技術分野に周知のように、遺伝的危険因子である。当該危険因子として、例えば、少なくとも結腸、子宮、小腸、胃、尿路の癌について、HNPCC、MLH1、MSH2、MSH6、PMS1、PMS2が挙げられる。いくつかの実施形態では、以前に癌を発症したことがある場合に、対象は癌になりやすい。いくつかの実施形態では、対象は、以前に1、または2、または3、または4、または5、または6回の癌に苦しんだことがある。いくつかの実施形態では、癌の家族歴を特徴とする場合に、対象は癌になりやすい。いくつかの実施形態では、親および/または祖父または祖母および/または兄弟および/または、おじ/おば、および/または大おじ/大おば、および/またはいとこが癌に苦しんだことがある、または苦しんでいる場合に、対象は癌になりやすい。いくつかの実施形態では、対象は癌を誘発する薬剤に曝露されること(例えば、環境要因)を特徴とする場合に、癌になりやすい。例えば、皮膚を強い太陽光に曝露することは皮膚癌の危険因子である。例えば、喫煙は肺、口腔、喉頭、膀胱、腎臓およびいくつかのその他の臓器の癌の危険因子である。
例えば、乳癌では、以下の危険因子が、本明細書の薬剤で癌を予防する対象を選択するのに有用であり得る。以下、性別(例えば、乳癌は男性より女性の方が多い);加齢(例えば、乳癌は年齢を重ねるほど流行する);遺伝的危険因子(限定的な例ではあるが、BRCA1およびBRCA2の1つ以上の変異の存在、ATM(例えば、当該遺伝子の単独の変異コピーを受け継ぐこと)、TP53(例えば、リー−フラウメニ症候群に苦しむ対象)、CHEK2(例えば、リー−フラウメニ症候群に苦しむ対象)、PTEN(例えば、カウデン病に苦しむ対象)、CDH1、STK11(例えば、ピュッツ・ジェガース症候群に苦しむ対象));乳癌の家族歴(例えば、乳癌の第一度近親者がいる対象は、女性のリスクを約2倍にする);乳癌の個人歴;人種および民族性;胸部組織の特徴(例えば、年齢、閉経状態、薬物の使用(閉経期のホルモン療法)、妊娠および遺伝によって引き起こされる高密度な胸部組織);様々な良性の乳房条件(例えば、限定されないが、線維化および/または単純嚢胞(例えば、線維嚢胞性疾患または変化)を含む、非増殖性病変)、中程度の過形成、腺症((例えば、非硬化)、管拡張、葉状腫瘍(例えば、良性)、1つ以上の乳頭腫、脂肪壊死、管周囲の線維化、扁平上皮およびアポクリン化生、上皮に関係する石灰化、乳腺炎、その他の良性腫瘍(限定されないが、脂肪腫、過誤腫、血管腫、神経線維腫、腺筋上皮腫を含む)、異型のない増殖性病変(例えば、通常の乳管過形成、線維腺腫、硬化性腺症、いくつかの乳頭腫(乳頭腫症と呼ぶ)、および放射状の傷跡),異型の増殖性病変(例えば、異型乳管過形成(ADH)および異型小葉過形成(ALH)));上皮内小葉癌(LCIS)の存在が月経期、胸部放射線、発癌物質の暴露(例えばジエチルスチルベストロールの暴露)の数を増加させた。
特定の実施形態では、本発明は、発癌物質によって誘発される癌の予防を提供する。いくつかの実施形態では、発癌物質は1,2−DMHおよび/またはその非対称類似体1,1−DMHである。いくつかの実施形態では、本発明は、発癌物質に曝露されたことのある、または曝露されるであろう対象を選択することを含む。
別の実施形態では、本発明は、乳癌であり、式Iの化合物による治療に奏効する可能性のある対象を識別する方法を提供し、ER、PR、HER2、およびFACTの少なくとも1つの存在、非存在を測定することを含む腫瘍の評価を含み、ここで、ER、PR、HER2、およびFACTの少なくとも1つの存在は、対象が式Iの化合物による治療に奏効する可能性があり、式Iの化合物は以下であり、
式中、R1〜R9のそれぞれは独立してH、ヒドロキシルまたはアルキルであり、nは0、1、2、3、4、または5であり;またはその薬剤的に許容可能な塩もしくは水和物である。
いくつかの実施形態では、乳癌であり、式Iの化合物による治療に奏効する可能性のある対象を識別する方法は、有効量の式Iの化合物またはその薬剤的に許容可能な塩を、式Iの化合物に奏効する可能性のある対象に投与することを含む。
いくつかの実施形態では、診断、予後、および治療に奏効することを評価するのに有用な方法は、2013年2月11日に提出された米国仮特許出願第61/763266号の記載の方法に関するものであり、その内容の全体が参照により取り込まれる。
診断は、例えば、癌または乳癌等の可能性のある疾患または障害を特定し、診断しようとするプロセスを意味する。予後は、例えば、癌または乳癌等の可能性のある疾患または障害のありうる転帰を予測することを意味する。完全な予後は、予想される期間、機能、および漸進的な低下、断続的な危機、または急激で予測不能な危機の過程の記述を含む。治療に対する奏効は、治療を受けたときに患者の医療転帰を予測することである。治療に対する奏効は、非限定的な例として、病理学的完全奏効、生存期間、および再発の可能性であってもよい。
様々な態様では、本発明は腫瘍の評価を含む。様々な実施形態では、評価は診断、予後、および治療に対する奏効から選択されてもよい。
様々な実施形態では、測定はタンパク質の存在、非存在、またはレベルを評価することを含む。別の実施形態では、測定は核酸の存在、非存在、または発現レベルを評価することを含む。
その他の実施形態では、測定は、腫瘍または該腫瘍から培養された細胞の標本を、ER、PR、HER2、およびFACTの少なくとも1つに特異的に結合する薬剤に接触させることを含む。いくつかの実施形態では、ER、PR、HER2、およびFACTの少なくとも1つに特異的に結合する薬剤は抗体である。
その他の実施形態では、ER、PR、HER2、およびFACTの少なくとも1つの測定は、免疫組織化学的染色、ウエスタンブロット法、インセル・ウエスタン、免疫蛍光染色、ELISA、および蛍光活性化セルソーティング(FACS)、または本明細書に記載または当該技術分野に周知のその他の任意の腫瘍の1つ以上を含む。
本発明の方法は、組織または体液に特異的であり、(例えば、ER、PR、HER2、およびFACT(すなわち、FACTおよび/またはSSRP1および/またはSPT16)に対する)癌の状態を示しているエピトープを識別するために、(例えば、ER、PR、HER2、およびFACT(すなわち、FACTおよび/またはSSRP1および/またはSPT16)に対する)抗体を、腫瘍標本(例えば、生検または組織または体液)と接触させることを含んでもよい。
一般的に、体液または組織の抗原のエピトープを検出するために使用される2つの戦略、直接的手法および間接的手法がある。直接的手法は、一段階染色を含み、体液または組織標本内の抗原に直接反応する標識抗体(例えば、FITC結合抗血清)を含んでもよい。間接的手法は、体液または組織抗原に反応する非標識一次抗体、および、一次抗体に反応する標識二次抗体を含む。ラベルとして、放射性ラベル、蛍光ラベル、ビオチン等のハプテンラベル、または西洋ワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼ等の酵素が挙げることができる。これらのアッセイを実施する方法は、当該技術分野に良く知られている。Harlowら(Antibodies、Cold Spring HarbまたはLaboratory、NY、1988)、Harlowら(Using Antibodies、A Laboratory Manual、Cold Spring HarbまたはLaboratory、NY、1999)、Virella(Medical Immunology、6th edition、Informa HealthCare、New York、2007)、およびDiamandisら(Immunoassays、Academic Press、Inc.、New York、1996)参照。これらのアッセイを実施するキットが、例えば、Clontech Laboratories、LLC.(マウンテンビュー、カリフォルニア州)から市販されている。
様々な実施形態では、抗体は、全抗体および/または切片に結合する任意の抗原(例えば、抗原結合部分)および/またはこれらの短鎖(例えば、ジスルフィド結合によって、内部で接続された少なくとも2つの重鎖(H)および2つの軽鎖(L)を含む抗体、Fab切片、VL、VH、CLおよびCH1ドメインから成る一価切片;F(ab)2切片、ヒンジ領域でジスルフィド結合によって結合された2つのFab切片を含む二価切片;VHおよびCH1ドメインから成るFd切片;抗体の片方の腕のVLおよびVHドメインから成るFv切片等)を含む。様々な実施形態では、ポリクロナールおよびモノクロナール抗体は、ヒトもしくはヒト化抗体、またはその機能的切片から単離されると、有用である。
様々な種の標的に対する抗体の結合能を評価するための標準的アッセイは当該技術分野に周知であり、例えば、ELISA、ウエスタンブロット法およびRIAが挙げられる。抗体の結合動力学(例えば、結合親和性)も、Biacore分析等の当該技術分野に周知の標準的アッセイによって評価することができる。
別の実施形態では、測定は、核酸の存在、非存在、またはレベルを評価することを含む。
当業者は、いくつかの方法を使用して、ERおよび/またはPRおよび/またはHER2および/またはFACT(すなわち、FACTおよび/またはPR SSRP1および/またはSPT16)を検出し、または定量化できることを認識するだろう。
遺伝子発現は、例えば、限定されないが、レポーター遺伝子アッセイ、ノーザンブロット、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)、および逆転写PCR(RT−PCR)を含む低〜中程度のプレックス技術を使用して、測定することができる。限定されないが、遺伝子発現の逐次分析法(SAGE)、DNAマイクロアッセイ、タイリングアレイ、RNA配列/全トランスクリプトームシーケンシング(WTSS)、ハイスループットシーケンシング、マルチプレックスPCR、multiplex ligation−dependent probe amplification(MLPA)、ライゲーションによるDNA配列、およびLuminex/XMAPを含む高程度のプレックス技術を用いても、遺伝子発現を測定することができる。
当業者は、マイクロアレイ、RT−PCR(定量的PCRを含む)、ヌクレアーゼプロテクションアッセイおよびノーザンブロット分析を含むいくつかの手法を用いて、試料内のバイオマーカーのRNA生成物のレベルを検出し、または定量化できることを認識するだろう。
いくつかの実施形態では、本発明は、生検、または外科的標本の試料を含む、腫瘍標本を測定することを含む。いくつかの実施形態では、生検はヒト生検である。様々な実施形態では、生検は凍結腫瘍組織標本、培養細胞、末梢循環腫瘍細胞、およびホルマリン固定パラフィン包埋腫瘍組織標本のいずれか1つである。
いくつかの実施形態では、腫瘍標本は、凍結腫瘍組織(低温切片)標本等の生検試料であってもよい。当該技術分野に周知のように、低温切片はクリオスタットを使用しても良く、冷凍庫の内部にはミクロトームを含む。外科的標本を、チャックで密封され、約−20℃〜約−30℃で急速凍結される金属組織ディスクに配置される。標本は、例えば、ポリエチレンおよびポリビニルアルコールから成るゲル様培地に組み込まれる。凍結組織はクリオスタットのミクロトームで、凍結したまま切断され、その断片を、ガラスのスライド上に取り上げ、染色してもよい。
いくつかの実施形態では、腫瘍標本は培養細胞等の生検標本であってもよい。これらの細胞は、当該技術分野に周知の通常の培養技術を用いて処理されてもよい。これらの細胞は末梢循環腫瘍細胞であってもよい。
いくつかの実施形態では、腫瘍標本は、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)腫瘍組織標本等の生検標本であってもよい。当該技術分野に周知のように、生検標本を、ホルマリン(水とホルムアルデヒドの混合液)またはその他の液体と共に、容器に入れ、保存してもよい。組織標本を、熱いパラフィンワックスと共に、型に入れてもよい。ワックスを冷却し、組織を保護する固形のブロックを形成する。包埋組織と共にパラフィンワックスをミクロトームに配置し、組織を極めて薄いスライスに切り分ける。
ある実施形態では、腫瘍標本は100mg以下の組織であり、またはある実施形態では、約50mgまたはそれより少ない組織を含む。腫瘍標本(または生検)は、約35mgの組織等の約20mg〜約50mgの組織を含んでいてもよい。
組織を、(14ゲージの針またはその他適切な針を使用して)1つ以上(1、2、3、4、または5)の針生検として得てもよい。いくつかの実施形態では、生検は細針吸引であり、分析のために、長く細い針を疑わしい領域に刺し、シリンジを用いて液体および細胞を取り出す。いくつかの実施形態では、生検は、コア針生検の最中に切削チップの付いた大きな針を用いて、疑わしい領域から組織のカラムを取り出すコア針生検である。いくつかの実施形態では、生検は、吸引装置が針を通って抽出される液体および細胞の量を増加させる吸引生検である。いくつかの実施形態では、生検は、針生検を例えば、X線、コンピュータ断層撮影(CT)、磁気共鳴画像(MRI)または超音波等の画像検査法と組み合わせる、画像誘導下生検である。その他の実施形態では、MAMMOTOME(登録商標)生検システム等の機器によって試料を得てもよく、乳房生検について、レーザー誘導下、真空補助下生検システムである。
いくつかの実施形態では、本発明は本明細書に記載の治療方法を提供し、式Iの化合物または薬剤的に許容可能な塩をその他の抗癌治療法と組み合わせてもよい。これらの治療法として、例えば、外科的切除、放射線療法(放射線感作薬として、または放射線感作薬と併用して本明細書の化合物を使用することを含む)、化学療法、薬力学療法、標的療法、免疫療法、および支持療法(例えば、鎮痛剤、利尿剤、抗利尿薬、抗ウイルス剤、抗生物質、栄養補助食品、貧血治療法、血液凝固治療法、骨治療法、ならびに精神医学的および心理社会的治療法)が挙げられる。このようなその他の抗癌治療は、連続して(例えば、前または後)または式Iの化合物または薬剤的に許容可能な塩の投与と同時に提供されてもよい。
いくつかの実施形態では、本発明は、式Iの化合物またはその薬剤的に許容可能な塩、および追加の治療薬、またはその薬剤的に許容可能な塩と共に、本明細書に記載されるように、治療方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、式Iの化合物を含む組成物またはその薬剤的に許容可能な塩、および追加の治療薬、またはその薬剤的に許容可能な塩を含む組成物を提供する。その他の実施形態では、本発明は、本明細書に記載の乳癌を含む1つ以上の癌を治療または予防するのに有用な薬物の製造時に、単独または追加の治療薬またはその薬剤的に許容可能な塩と併用する、式Iの化合物またはその薬剤的に許容可能な塩の使用を提供する。
このような追加の治療薬は、連続して(例えば、前または後)または式Iの化合物または薬剤的に許容可能な塩の投与と同時に提供されてもよい。いくつかの実施形態では、式Iの化合物または薬剤的に許容可能な塩は、追加の治療薬と結合させてもよい。
結合を含む実施形態では、当該結合は、特定の解剖学的部位または目的の領域(例えば、腫瘍)への化合物の送達を高め、標的細胞中の化合物の治療濃度を保持し、化合物の薬物動態および薬力学的特性を変化させ、および/または化合物の治療指数または安全性を向上させる。適切な補助部分として、例えば、アミノ酸、オリゴペプチド、またはポリペプチド、例えば、モノクロナール抗体およびその他の操作された抗体等の抗体;ならびに、標的細胞または組織への天然または合成試薬が挙げられる。その他の適切な補助物として、脂肪酸または標的細胞による化合物の体内分布および/または取り込みを促進する脂質部分が挙げられる(例えば、Bradleyら、Clin.Cancer Res.(2001)7:3229参照)
例示的な実施形態では、本発明は様々な追加の治療薬を提供する。追加の治療薬の例として、限定されないが、以下が挙げられる。チオテパおよびCYTOXANシクロホスファミド等のアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファンおよびピポスルファン等のアルキルスルホン酸塩;ベンゾドーパ、カルボクオン、メツレドーパ、およびウレドーパ等のアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホルアミドおよびトリメチロールオメラミンを含むエチレンイミンおよびメチルアメラミン;アセトゲニン(例えば、ブラタシンおよびブラタシノン);カンプトテシン(合成類似体トポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC−1065(アドゼレシン、カルゼルシンおよびビゼレシン合成類似体を含む);クリプトフィシン(例えば、クリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;ズオカルマイシン(合成類似体、KW−2189およびCB1−TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコディクタイイン;スポンジスタチン;クロランブシル、クロルナファジン、コロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミン塩酸酸化物、メルファラン、ノベンビチン、フェネステリン、プレドニマスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード等のナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、およびラニムスチン等のニトロスレアス;エンジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特に、カリチアマイシンガンマllおよびカリチアマイシンオメガll(例えば、Agnew、Chem.Intl.Ed.Engl.、33:183−186(1994)参照)等の抗生物質;ダイネマイシンAを含むダイネマイシン;クロドロネート等のビスホスホネート製剤;エスペラミシン;およびネオカルジノスタチンクロモフォアならびに関連の色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、アドリアマイシンドキソルビシン(モルホリノドキソルビシン、シアノモルホリノドキソルビシン、2−ピロリノ−ドキソルビシンおよびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン,ミトマイシンC等のミトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;メトトレキサートおよび5−フルオロウラシル(5−FU)等の代謝拮抗薬;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサート等の葉酸類似体;フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン等のプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン等のピリミジン類似体;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン等のアンドロゲン;アミノグルテチミド等の抗副腎薬、ミトタン、トリロスタン;フロリニック酸等の葉酸補液;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビスアントレン;エダトラキセート;デメコルシン;ジアジクオン;エルフォルミチン;エリプチニウム酢酸塩;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン;メイタンシンおよびアンサマイトシン等のマイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモル;ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK多糖類複合体(JHS Natural Products、Eugene、Oreg.);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2”−トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(例えば、T−2トキシン、ベラクリンA、ロリジンAおよびアングイデン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(“Ara−C”);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えば、タキソールパクリタキセル(Bristol−Myers Squibb Oncology、プリンストン、ニュージャージー州)、アブラキサンクレモフォール非含有、パクリタキセルのアルブミン操作ナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners、Schaumberg、111.)、およびタキソテールドキセタキセル(Rhone−Poulenc Rorer、Antony、フランス);クロランブシル;ジェムザールゲムシタビン;6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチン等の白金類似体、オキサリプラチンおよびカルボプラチン;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP−16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ナベルビンビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;イリノテカン(Camptosar、CPT−11)(5−FUおよびロイコボリンを伴うイリノテカンの治療レジメンを含む);トポイソメラーゼ阻害薬RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸等のレチノイド;カペシタビン;コンブレタスタチン;ロイコボリン(LV);オキサリプラチン治療レジメン(FOLFOX)を含むオキサリプラチン;ラパチニブ(Tykerb);PKC−α、Raf、H−Ras、EGFR(例えば、エルロチニブ(タルセバ))および細胞増殖を低下させるVEGF−Aの阻害剤ならびに薬剤的に許容可能な塩、酸または上述の任意の誘導体。
多くの癌治療プロトコルは現在、電磁放射、例えばX線によって活性化された放射線増感剤を使用する。本発明は、また、追加の治療薬として当該化合物の使用を提供する。X線活性化放射線増感剤として、限定されないが、メトロニダゾール、ミソニダゾール、脱メチルミソニダゾール、ピモニダゾール、エタニダゾール、ニモラゾール、ミトマイシンC、RSU1069、SR4233、EO9、RB6145、ニコチンアミド、5−ブロモデオキシウリジン(BUdR)、5−ヨードデオキシウリジン(IUdR)、ブロモデオキシシチジン、フルオロデオキシウリジン(FUdR)、ヒドロキシウレア、シスプラチン、および治療に有効な類似体およびその誘導体が挙げられる。
光線力学療法(PDT)は、増感剤の放射活性因子として、可視光を使用する。本発明は、また、追加の治療薬として当該化合物の使用を提供する。光線力学的放射線増感剤の例として、限定されないが、ヘマトポルフィリン誘導体、フォトフリン(登録商標)、ベンゾポルフィリン誘導体、NPe6、スズエチオポルフィリン(SnET2)、フェオボルビド−a、バクテリオクロロフィルa、ナフタロシアニン、フタロシアニン、亜鉛フタロシアニンおよび治療に有効な類似体およびその誘導体が挙げられる。
特定の実施形態では、追加の療法はホルモン療法である。本発明に含まれるホルモンおよび/またはステロイド(合成類似体を含む)として、限定されないが、17−α−エチニルエスタジオール、ジエチルスチルベストロール、テストステロン、プレドニゾン、フルオキシメステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、テストラクトン、メゲストロール酢酸塩、メチルプレドニゾロン、メチルテストステロン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、クロロトリアニセン、ヒドロキシプロゲステロン、アミノグルトイミド、エストラムスチン、酢酸メドロキシプロゲステロン、ロイプロリド、フルタルニド、トレミフェン、ゾラデックスが挙げられる。いくつかの実施形態では、ホルモン療法は、タモキシフェンおよびトレミフェン(フェアストン)、またはフルベストラント(フェソロデックス)、またはメゲストロール酢酸エステル(メゲース)または同等のプロゲステロン様薬剤またはアロマターゼ阻害剤(例えば、レトロゾール(フェマーラ)、アナストロゾール(アリミデックス)、およびエキセメスタン(アロマシン)、またはゴセレリン(ゾラデックス)またはロイプロリド(リュープロン)等の黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)類似体が挙げられる。
本明細書に記載の任意の薬剤は、無機酸もしくは有機酸またはカルボキシル基に反応することができ、無機塩基または有機塩基に反応することができる十分な塩基性官能基を持ち、薬剤的に許容可能な塩を形成することができる。薬剤的に許容可能な酸付加塩は、当該技術分野に周知のように、薬剤的に許容可能な酸から形成される。当該塩として、Journal of Pharmaceutical Science、66、2−19(1977)and The Handbook of Pharmaceutical Salts;Properties、Selection、and Use.P.H.StahlおよびC.G.Wermuth(eds.)、Verlag、Zurich(Switzerland)2002に列挙される薬剤的に許容可能な塩が挙げられ、その全体が参照により取り込まれる。
薬剤的に許容可能な塩として、非限定的な例として、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸、乳酸塩、サリチル酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチジン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルカロン酸塩、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩、パモ酸塩、フェニル酢酸、トリフルオロ酢酸塩、アクリル酸塩、クロロ安息香酸塩、ジニトロ安息香酸エステル、ヒドロキシ安息香酸、メトキシ安息香酸、メチル安息香酸、o−アセトキシ安息香酸、ナフタレン−2−安息香酸、イソ酪酸塩、フェニル酪酸、α−ヒドロキシ酪酸塩、ブチン−1,4−ジカルボン酸、ヘキシン−1,4−ジカルボン酸、カプリン酸エステル、カプリル酸塩、桂皮酸塩、グリコル酸塩、ヘプタン酸エステル、馬尿酸塩、リンゴ酸塩、ヒドロキシマレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、ニコチン酸塩、フタル酸塩、テラフタル酸塩、プロピオル酸塩、プロピオン酸塩、フェニルプロピオン酸、セバシン酸塩、スベリン酸塩、p−ブロモベンゼンスルホン酸塩、クロロベンゼンスルホン酸塩、エチルスルホン酸塩、2−ヒドロキシエチルスルホン酸塩、メチルスルホン酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、ナフタレン−1,5−スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、および酒石酸塩が挙げられる。
用語、薬剤的に許容可能な塩は、カルボン酸官能基等の酸性官能基、および塩基を有する化合物の塩も意味する。適切な塩基として、限定されないが、ナトリウム、カリウム、およびリチウム等のアルカリ金属の水酸化物;カルシウムおよびマグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;アルミニウムおよび亜鉛;アンモニア、および有機アミン類等、非置換またはヒドロキシ置換されたモノ−、ジ‐、またはトリ‐アルキルアミン類、ジシクロヘキシルアミン等のその他の金属類の水酸化物;トリブチルアミン;N−メチル、N−エチルアミン;モノ−;ビス−、またはトリス−(2−ヒドロキシエチル)アミン、2−ヒドロキシ−tert−ブチルアミン、またはトリス−(ヒドロキシメチル)メチルアミン、N,N−ジ−低級アルキル−N−(ヒドロキシル−低級アルキル)−アミン等、N,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アミンまたはトリ−(2−ヒドロキシエチル)アミン等のモノ−;ビス−、またはトリス−(2−OH−低級アルキルアミン類);N−メチル−D−グルカミン;およびアルギニン、リシン等のアミノ酸が挙げられる。
いくつかの実施形態では、代表的な薬剤的に許容可能な塩として、例えば、酢酸塩、アムソン酸(4,4−ジアミノスチルベン−2、2−ジスルホン酸)、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、酒石酸水素塩、ホウ酸塩、臭化物、酪酸塩、カルシウム、エデト酸カルシウム、カンシラート、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、クラブラル酸塩、二塩化水素化物、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストレート、エシレート、フィウナル酸塩、グルセプト酸、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ヘキシルレソルシン酸塩、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸、ヨウ化物、イソチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、マグネシウム、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、臭化メチル、硝酸メチル、硫酸メチル、ムチン酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、N−メチルグルカミンアンモニウム塩、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩(1,1−メテン−ビス−2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸、エインボン酸塩)、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ピクリン酸塩、ポリガラクツロ酸、プロピオン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、スルホサリチル酸塩、スラム酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシレート、トリエチオジドおよび吉草酸塩等の水可溶性および水不溶性塩類が挙げられる。
さらに、本明細書に記載の任意の薬剤は、薬剤的に許容可能な担体またはビヒクルを含む組成物の成分として、対象に投与することができる。当該組成物は、適切な投与のための形式を提供するために、適切な量の薬剤的に許容可能な賦形剤を含んでいてもよい。
薬剤的賦形剤は、水、および石油、動物性、植物性、または合成起源を含み、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油といった油等の液体であってもよい。薬剤的賦形剤は、生理食塩水、アラビア・ゴム、ゼラチン、デンプンのり、タルク、ケラチン、コロイドシリカ、尿素等であってもよい。さらに、補助剤、安定剤、増粘剤、潤滑剤、および着色剤を使用してもよい。ある実施形態では、薬剤的に許容可能な賦形剤は、対象に投与されるとき無菌である。本明細書に記載の任意の薬剤を静脈内に投与すると、水は有用な賦形剤になる。生理食塩水溶液および水性デキストロースおよびグリセロール溶液を、特に注入溶液のために、液体賦形剤として使用することもできる。適切な薬剤的賦形剤として、デンプン、ブドウ糖、ラクトース、ショ糖、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、白亜、シリカゲル、ナトリウムステアリン酸塩、グリセロールモノステアリン酸塩、タルク、ナトリウム塩化物、乾燥スキムミルク、グリセリン、プロピレン、グリコール、水、エタノール等が挙げられる。望まれれば、本明細書に記載の任意の薬剤は、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤を含んでいてもよい。
本明細書に記載の任意の薬剤は、溶液、懸濁液、乳剤、錠剤、丸薬、ペレット、カプセル、液体を含有するカプセル、粉末、持続的に放出する製剤、坐薬、乳剤、エアロゾル、スプレー、懸濁液、または使用に適した任意のその他の剤形の形状を取ることができる。適切な薬剤的賦形剤のその他の例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 1447−1676(Alfonso R.Gennaro eds.、19th ed.1995)に記述され、参照により本明細書に取り込まれる。
ある実施形態では、本明細書に記載の任意の薬剤は、ヒトの経口投与に適応した組成物として、通常の手順に従い製剤化される。経口送達のための組成物は、例えば、錠剤、トローチ、水性または油性懸濁液、粒剤、粉末、乳剤、カプセル、シロップ、またはエリキシル剤の形状にあってもよい。経口投与される組成物は、1つ以上の剤、例えば、果糖、アスパルテームまたはサッカリン等の甘味剤;ペパーミント、ウインターグリーンの油、またはチェリー等の調味料;着色剤、および保存剤を含み、薬剤的に口に合う調剤を提供することができる。さらに、錠剤または丸薬を形成する場合には、組成物は、消化管内の分解および吸収を遅らせ、時間が経過しても持続的な活性を提供できるように、コーティングすることができる。本明細書に記載の任意の薬剤を駆動する浸透圧的に活性である周囲の選択的透過膜も、経口投与される組成物に適している。これら後者のプラットフォームでは、カプセルを取り囲む環境からの液体が、駆動化合物によって吸収され、開口部を通って薬剤または薬剤組成物に代わるように膨張する。これらの送達プラットフォームは、即時放出性製剤のスパイクのある特性とは反対に、ゼロ次制御送達特性を提供することができる。グリセロールモノステアリン酸塩またはグリセロールステアリン酸塩等の時間遅延性物質も有用になり得る。経口組成物は、マンニトール、ラクトース、デンプン、マグネシウムステアリン酸塩、ナトリウムサッカリン、セルロース、およびマグネシウム炭酸塩等の標準的な賦形剤を含むことができる。ある実施形態では、賦形剤は医薬品グレードのものである。
成分は、例えば、アンプル、充填済シリンジ、または有効成分の量を示す小袋等の密封された容器内の混合前溶液、凍結乾燥された粉末、水分のない濃縮物として、単位剤形に別々にまたは一緒に混合されて供給されてもよい。本明細書に記載の任意の薬剤が、吸入によって投与される場合、例えば、無菌の医薬品グレード水または生理食塩水を含む吸入ボトルで調合することができる。明細書に記載の任意の薬剤が、注射によって投与される場合、成分が投与前に混合されるように、注射のための無菌水または生理食塩水のアンプルを提供することができる。
本明細書に記載の任意の薬味は、制御または持続放出、または当業者に良く知られている送達装置によって、投与することができる。その例として、限定されないが、米国特許第3,845,770号;3,916,899号;3,536,809号;3,598,123号;4,008,719号;5,674,533号;5,059,595号;5,591,767号;5,120,548号;5,073,543号;5,639,476号;5,354,556号;および5,733,556号が挙げられ、それぞれ参照によりその全体が本明細書に取り込まれる。当該剤形は、様々な割合で望ましい放出プロファイルを提供するために、例えば、ハイドロプロピルメチル・セルロース、その他のポリマーマトリックス、ゲル、透過性の膜、浸透圧系、多層コーティング、微粒子、リポソーム、ミクロスフェアまたはその組み合わせを使用して、1つ以上の有効成分の制御または持続放出を提供するのに有用になり得る。本明細書に記載を含む、当業者に周知の適切な制御または持続放出製剤は、本明細書に記載の薬剤の有効成分と使用するために容易に選択することができる。本発明はそのため、限定されないが、制御または持続放出に適応した錠剤、カプセル、ゲルカップ、およびカプレット等の経口投与に適した単位剤形を提供する。
有効成分の制御または持続放出製剤は、限定されないが、pHの変化、温度変化、適切な光の波長、酵素の濃度または利用可能性、水の濃度または利用可能性、またはその他の生理学的条件または化合物を含む様々な条件によって刺激を受けることができる。
通常の混合、造粒、コーティングまたは重合方法にそれぞれ従い、組成物を調製することができ、本発明の組成物は、ある実施形態では、重量または容量で、本明細書に記載の任意の薬剤の約0.1%〜約99%、別の実施形態では、約1%〜約70%を含むことができる。
別の実施形態では、本明細書に記載の任意の薬剤は、別の薬剤と共に投与されると、相乗的に作用し、当該薬剤を単独療法として使用されるときに通常採用される容量よりも低い容量で投与される。例えば、いくつかの実施形態では、式Iの化合物またはその薬剤的に許容可能な塩、および追加の治療薬またはその薬剤的に許容可能な塩は、併用または結合して投与されると、相加効果より大きい効果を有することができる。いくつかの実施形態では、式Iの化合物またはその薬剤的に許容可能な塩、および追加の治療薬、またはその薬剤的に許容可能な塩は、併用または結合して投与されると、相乗効果を有することができる。
例えば、本明細書に記載の任意の薬剤の容量および投与スケジュールは、限定されないが、治療を受ける癌(例えば、乳癌)、対象の通常の健康、および投与を担当する医師の裁量を含む、様々な要因に依存する可能性がある。本明細書に記載の任意の薬剤は、治療の必要な対象に追加の治療薬を投与する前(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、または12週間前)、同時に、または後(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、または12週間後)に投与することができる。様々な実施形態では、本明細書に記載の任意の薬剤は、1分間隔、10分間隔、30分間隔、1時間未満の間隔、1時間間隔、1時間〜2時間間隔、2時間〜3時間間隔、3時間〜4時間間隔、4時間〜5時間間隔、5時間〜6時間間隔、6時間〜7時間間隔、7時間〜8時間間隔、8時間〜9時間間隔、9時間〜10時間間隔、10時間〜11時間間隔、11時間〜12時間間隔、24時間以下の間隔または48時間以下の間隔で投与される。
単一用量を生成するために、担体材料と混合される本明細書に記載の任意の薬剤の用量は、治療を受ける対象、投与の具体的な形式に依存して変化する可能性がある。in vitroまたはin vivoアッセイを使用して、最適な用量範囲の識別を助けることができる。
通常、有用な用量は当業者に周知である。例えば、参考文献、Physicians’Desk Reference、第66版、PDR Network;2012年版(2011年12月27日)で用量を決定してもよく、その内容は参照により全体が本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載の任意の薬剤の用量は、病態の重症度、病態は治療されているか、それとも予防されているのか、年齢、体重および治療を受ける対象の健康を含む、いくつかの因子に依存する可能性がある。さらに、特定の対象についての薬理ゲノミクス(薬物動態、薬力学、または治療の効果プロファイルに影響を及ぼす遺伝子型)の情報が、使用される用量に影響を与え得る。さらに、厳密な個別の用量は、投与される薬剤の特定の組み合わせ、投与の時間、投与経路、製剤の性質、排出速度、治療を受ける特定の癌(例えば、乳癌のタイプ)、障害の重症度、および障害の解剖学的位置を含む、様々な因子にいくらか依存して調節することができる。用量のいくつかの変化形を予想することができる。
一般的に、哺乳動物に経口投与する場合、本明細書に記載の任意の薬剤の用量は、0.001mg/kg/日〜100mg/kg/日、0.01mg/kg/日〜50mg/kg/日、または0.1mg/kg/日〜10mg/kg/日である。ヒトに経口投与する場合、本明細書に記載の任意の薬剤の用量は、通常、1日0.001mg〜1000mg、1日1mg〜600mg、または1日5mg〜30mgである。ある実施形態では、経口用量は1日600mgである。ある実施形態では、経口用量は1日300mgの2回である。別の実施形態では、経口用量は1週間に7.5mg〜15mgである。
非経口注射による本明細書に記載の任意の薬剤の投与について、用量は、通常、1日0.1mg〜250mg、1日1mg〜20mg、または1日3mg〜5mgである。毎日最大4回注射してもよい。一般的に、経口または非経口投与では、本明細書に記載の任意の薬剤の用量は、通常1日0.1mg〜1500mg、または1日0.5mg〜10mg、または1日0.5mg〜5mgである。1日最大3000mgの用量を投与することができる。
いくつかの実施形態では、式Iの化合物またはその薬剤的に許容可能な塩、および追加の治療薬またはその薬剤的に許容可能な塩の(併用または独立して投与される)非限定的な用量は、対象の体重の約0.1mg/kg〜約100mg/kgの範囲にあってもよく、例えば、約0.1mg/kg、約0.2mg/kg、約0.3mg/kg、約0.4mg/kg、約0.5mg/kg、約0.6mg/kg、約0.7mg/kg、約0.8mg/kg、約0.9mg/kg、約1mg/kg、約1.1mg/kg、約1.2mg/kg、約1.3mg/kg、約1.4mg/kg、約1.5mg/kg、約1.6mg/kg、約1.7mg/kg、約1.8mg/kg、約1.9mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg、約6mg/kg、約7mg/kg、約8mg/kg、約9mg/kg、約10mg/kg、約11mg/kg、約12mg/kg、約13mg/kg、約14mg/kg、約15mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、約35mg/kg、約40mg/kg、約45mg/kg、約50mg/kg、約55mg/kg、約60mg/kg、約65mg/kg、約70mg/kg、約75mg/kg、約80mg/kg、約85mg/kg、約90mg/kg、約95mg/kg、または約100mg/kg体重であってもよく、数値の間の全数値および範囲を含む。
投与経路として、例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、経口、舌下、鼻腔内、脳内、膣内、経皮、直腸、吸入による、または局所的、具体的には、耳、鼻、目、または皮膚が挙げられる。
投与様式は、実施者の裁量に任せることができるが、部分的には、病状の場所に依存する。大部分の例では、投与は、本明細書に記載の任意の薬剤が血流に放出されることになる。
本明細書に記載の任意の薬剤は経口投与できる。当該薬剤は、その他の都合の良い経路、例えば、静脈内注入またはボーラス注入、上皮または皮膚粘膜裏層(例えば、口腔粘膜、直腸および腸粘膜等)を通る吸収によっても投与することができ、別の生物学的活性剤と一緒に投与することができる。投与は全身性または局所性であってもよい。様々な送達系、例えば、リポソームのカプセル封入、微粒子,カプセル等が知られ、投与に使用することができる。
特定の実施形態では、治療が必要な領域に局所的に投与することが望ましい場合もある。
別の実施形態では、小胞、特にリポソーム内の送達が可能である(Langer、1990、Science 249:1527−1533;Treatら、in Liposomes in the Therapy of Infectious DiseaseおよびCancer、Lopez−BeresteinおよびFidler(eds.)、Liss、New York、pp.353−365(1989)参照)。別の実施形態では、制御された放出系で送達することができる。ある実施形態では、ゆっくりと放出できる装置を使用してもよい。いくつかの実施形態では、当該装置は、局所的に送達された浸食性または非浸食性の液体、ゲル、ポリマー等から構成される。
別の実施形態では、高分子材料を使用することができる(Medical Applications of Controlled Release、LangerおよびWise(eds.)、CRC Pres.、Boca Raton、Florida(1974);Controlled Drug Bioavailability、Drug Product DesignおよびPerformance、SmolenおよびBall(eds.)、Wiley、New York(1984);RangerおよびPeppas、1983、J.Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.23:61;Levyら、1985、Science 228:190;Duringら、1989、Ann.Neurol.25:351も参照;Howardら、1989、J.Neurosurg.71:105)参照)。別の実施形態では、制御放出系は、治療を受ける標的領域の近くに配置することができ、全身的な用量のわずかしか必要とされない。Langer、1990、Science 249:1527−1533)による報告で検討されたその他の制御放出系を使用してもよい。
本明細書に記載の任意の薬剤は、独立して、毎日1〜4回または1ヵ月に1〜4回または1年に1〜6回または2、3、4または5年毎に1回に投与することができる。投与期間は、1日または1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月、6ヵ月、1年、2年、3年、および対象の生存期間中であってもよい。慢性、長期間投与が、いくつかの事例では指示されてもよい。用量は単一用量であっても、複数回用量に分けてもよい。通常、数ヶ月以上または数年以上のもっと長い期間必要とされ得ることもあるが、たいていは少なくとも数週間または数ヶ月間、決められた間隔で、望ましい用量を投与されるべきである。
本明細書に記載の任意の薬剤を使用する用量レジメンは、対象のタイプ、種、年齢、体重、性別および健康状態;治療を受ける病態の重症度;投与経路;対象の腎臓または肝機能;個体の薬理遺伝学的組成;ならびに使用される本発明の具体的な化合物を含む多様な因子に従い選択することができる。本明細書に記載の任意の薬剤は、連日の単一用量で投与することができ、総連日用量を、毎日、2、3、または4回に分けて投与することができる。さらに、本明細書に記載の任意の薬剤は、用量レジメン全体にわたって、間断より連続的に投与することができる。
投与される用量は、薬剤の有効量である。有効量、毒性、および治療効果は、限定されないが、細胞培地または実験動物内で標準的な薬剤的手順によって決定することができ、LD50(母集団の約50%の致死用量)および/またはED50(母集団の約50%の治療効果用量)の測定が含まれる。用量は、採用する剤形、および利用可能な投与経路に依存して変化する可能性がある。毒性と治療効果の間の用量比は、治療指数であり、LD50/ED50の比として表すことができる。いくつかの実施形態では、高い治療指数を表す組成物および方法を使用に選択されてもよい。
治療有効量は、細胞培養アッセイから初めに推定することができる。また、動物モデルでは用量を公式化し、細胞培養で決定されたように、IC50(例えば、式Iの化合物および/またはその追加の治療上または薬剤的に許容可能な塩の濃度)を含む循環血漿の濃度範囲に達することができ、細胞培養または適切な動物モデルで決定されたように、最大半量の症状の抑制に達する。血漿中のレベルを、例えば、高性能液体クロマトグラフィーによって測定することができる。特定の用量の効果を、適切なバイオアッセイによってモニターすることができる。観察された治療効果に見合うように、用量を医師が決定し、必要であれば調節することができる。
例えば、式Iの化合物およびその薬剤的に許容可能な塩の潜在能を、NF−κB活性を抑制する、またはp53を活性化する化合物の能力を測定することによって、評価してもよい。p53の活性化は、感度の高いアッセイ系を、ある範囲の濃度以上の目的の化合物に接触させる用量反応アッセイを使用して測定してもよく、全くないか、もしくは最小の効果が観察される濃度、部分的な効果が観察されるより高い濃度から、最大効果が観察される飽和濃度までを含む。理論的に、活性因子の化合物の用量反応効果の当該アッセイは、濃度を関数として、活性化の程度を表すS字状曲線として記載することができる。この曲線はまた、理論上、アッセイ‐EC50値のベースラインと最大活性の間の差が50%であるレベルまで活性を増加させるのに濃度が十分である点を通過する。EC50値は、通常の生化学(無細胞)アッセイ技術または細胞ベースのアッセイ技術を用いて決定される。
活性因子の効果の比較は、相対的EC50値の参照で提供されることが多く、EC50が高いほど、参照化合物より試験化合物の潜在能が低く、EC50が低いほど、参照化合物より試験化合物の潜在能が高い。本発明の化合物は、ルシフェラーゼレポーター細胞株アッセイで、予想外にも良好な潜在能、例えば、p53活性化を表す。
いくつかの実施形態では、効果は、結果として、少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約20%、約30%、約50%、約70%、または約90%以上の定量化できる変化になる。治療上の利益として、また、改善に気づくかどうかに関わらず、根底の疾患または障害の進行を止めるかペースを落とすことが挙げられる。
ある実施形態では、癌を治療する有効量は、典型的には少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、または少なくとも約50%症状を転調する。例示的な実施形態では、当該転調は、結果として、例えば、癌細胞の数に統計学的に有意で定量的変化をもたらす。いくつかの実施形態では、遠位臓器の微小転移の数を減少させ、再発性転移疾患等を減少させ得る。
本発明をさらに以下の非限定的な実施例によって説明する。
実施例1:curaxin−137は、腫瘍を発生し易いMMTV−Neu雌マウスに投与すると、抗腫瘍効果を有する
本明細書に使用する方法は当該技術分野に周知である。いくつかの方法の詳細を以下に提供する。
化学物質および試薬:Dalton Pharma(トロント、カナダ)にて、CBLC137(HPLCおよびLC/MSにより>97%の純度)としても知られているcuraxin−137をカスタムで合成した。動物に投与するために、0.1または0.2mg/mlの薬剤を水に溶解し、室温で保管した。水中の化合物の安定性について、Sci Transl Med 2011 Aug 10;3(95):95ra74に記述されるように、RCC45−p53−Luc細胞の標準p53活性化レポーターアッセイに、2ヵ月以上、室温で試験を行った。新鮮な溶液と保管溶液とに差は認められなかった。ヘキスト33358、R1881、TNF、III型コラゲナーゼ、ヒドロコルチゾン、インスリンおよびEGFは、Sigma(Sigma−Aldrich社)から購入した。100Xペニシリン/ストレプトマイシンおよびフンギゾン溶液、DMEM、グルタミン、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−エタンスルホン酸(HEPES)、ウシ血清アルブミン(BSA)、コレラ毒素並びにトリゾールは、Invitrogen社から購入した。
細胞:MDA−MB−453−MMTV−luc(KB2)細胞はATCCから購入した。H1299−κB−LucおよびRCC45−p53−Luc細胞は以前に記載した(Proc Natl Acad Sci USA 2005 Nov 29;102(48):17448−53参照)。細胞を10%のウシ胎児血清(Hyclone)およびその他の標準的な補充物を含むDMEM中で増殖させた。
Ex vivo細胞培養:腫瘍のない乳腺またはネクローシスのない乳腺腫瘍を、無菌条件下で深く麻酔をかけられたマウスから単離し、PBS内で洗浄し、ハサミでミンチにし、振盪プラットフォーム上、37℃以上で一晩、完全な培養培地(100U/ml ペニシリン、100pg/ml ストレプトマイシン、2mM グルタミン、10mM HEPES、0.075% BSA、10ng/ml コレラ毒素、0.5pg/ml ヒドロコルチゾン、5pg/mlインスリン、および5ng/ml EGFを補充したDMEM)中、0.1%のIII型コラゲナーゼ中でインキュベートした。インキュベーション後、40gの細胞懸濁液を1分間遠心分離にかけた。上清を捨て、ペレットを同じ遠心分離条件を用いて、PBSで1回洗浄した。最終ペレットを完全な培地に再懸濁し、プラスチック皿に播種した。得られる「オルガノイド」培養は、さらに再播種せずに1週間以内に実験に使用した。
標準的な手順を用いてウエスタンブロット法および免疫蛍光染色を行った。以下の主要抗体を使用した:抗−ERα(SC−542、サンタクルス、WBについての希釈は1:1000であった、IF 1:100)、抗−Her2(カタログ番号2165、Cell Signaling、WBについての希釈は1:1000であった、IF 1:200)、抗−PCNA(カタログ番号2586、Cell Signaling、WBについての希釈は1:1000であった、IF 1:300)、抗−SSRP1 カタログ番号60970、Biolegend、WBについての希釈は1:1000であった、IF 1:200)、抗−SPT16(カタログ番号607002、Biolegend、WBについての希釈は1:1000であった、IF 1:200)、抗−p53(Pab421,SC−99、サンタクルス、WBについての希釈は1:1000であった、IF 1:200)、抗−p65(SC372 サンタクルス、IFについての希釈は1:200であった)、抗−β−アクチン(A3854、Sigma、WBについての希釈は1:20,000であった)西洋ワサビペルオキシダーゼ(Cell Signaling、WBについての希釈は1:2であった)またはAlexa Fluまたは488もしくは594(A21202、A21207、Invitrogen、IFについての希釈は1:500であった)のいずれかでコンジュゲートされた二次抗‐マウスまたは抗‐ウサギ抗体。
免疫組織化学:パラフィン切片を5μmに切り取り、荷電スライドに配置し、60℃で1時間乾燥させた。スライドを室温に冷却し、キシレンの3つの変更に脱パラフィンし、段階別のアルコールを用いて再水和した。内在性ペルオキシダーゼを水性の3%H2O2でクエンチした。抗原回復については、クエン酸塩緩衝液(pH6.0)内で、20分間マイクロ波で加熱し、15分間冷却し、0.1%PBS/Tween20溶液内で洗浄した。スライドをDako Autostainerに充填し、非血清タンパク質ブロック(Dako)で5分間ブロックした。ブロッキング後、0.2μg/mlのヤギ抗マウスSSRP1ポリクロナール抗体(サンタクルス、sc−5909)で、スライドを1時間インキュベートした。アイソタイプが一致した対照抗体(0.2μg/mlヤギIgG)を、負対照としての一次抗体の代わりに、複製スライド上で使用した。洗浄後、スライドをビオチン化ロバ抗ヤギIgG(Jackson ImmunoResearch Laboratories、Inc.)でインキュベートし、次にElite ABCキット(Vectastain)、およびDAB chromagen(Dako)で染色した。最後に、染色されたスライドをヘマトキシリンで対比染色し、脱水し、鮮明にし、カバースリップした。全スライドをAperioスキャンスコープ(Aperio Technologies社)を用いてスキャンした。Image scopeソフトウェア(Aperio Technologies社)を用いて画像を作成した。
マイクロアレイに基づく遺伝子発現プロファイリング:トリゾール試薬(Invitrogen)を用いて、凍結組織試料から総RNAを単離した。mRNA標識およびMouseWG−6 v2.0 Expressionへのハイブリダイゼーション。製造者(Illumina、サンディエゴ、カリフォルニア州)の説明書に従いBeadChip、画像スキャニング、および強度処理をおこなった。BeadChipデータファイルをIllumina’sGenomeStudioソフトウェアおよびR−based Bioconductorパッケージで分析し、遺伝子発現のシグナルレベルを決定した。ピアソン相関の平均結合に基づく階層的クラスタリングアルゴリズムを採用した。データはNCBI GEOデータベース(寄託番号GSE33285)に預けた。
マウス組織および血漿中のcuraxin−137濃度の測定:薬剤化合物の抽出をクリーブランド生物学研究室の化学部門で行った。元の組織標本から70〜100mgの試料を量り分けた。冷却したメタノール(試料の9倍の重量)を試料に加え、試料を機械的に均一にした(Fisher Scientific PowerGen 125)。得られる試料/メタノール懸濁液を4℃の冷蔵庫内で一晩揺り動かした。試料を遠心分離にかけ、上清をLC/MS/MSによる分析のために取り出した。血漿試料をアセトニトリル(試料の4倍の重量)中の0.1%トリフルオロ酢酸の抽出溶液を用いて抽出した。希釈試料を徹底的にボルテックスし、遠心分離にかけ、得られる上清をLC/MS/MSによる分析のために取り出した。全調製試料は、分析されるまで4℃で保管した。curaxin−137について、Applied Biosystems API 3000 LC/MS/MSシステムを用いて試料を分析した。移動相:(A)水中の2mMアンモニウム酢酸塩、0.1%トリフルオロ酢酸および(B)メタノール中の2mMアンモニウム酢酸塩、0.1%トリフルオロ酢酸と共に、勾配HPLC法を採用した。注入容量は20μLであり、流速は0.20mL/分であった。Phenomenex LunaカラムC18(2)、50x2.00mm、粒径5μmを、PhenomenexC18、4x2.00mm ガードカートリッジ/カラムと連結した。質量分析計は、m/z 86.00のフラグメントイオンを与えているm/z 337.20の選択された単独荷電されたcuraxin−137と共に、多重反応モニタリング(MRM)を使用した。
動物実験:全ての動物実験はロズウェルパーク癌研究所(“RPCI”)IACUC承認の実験計画に従い、the National Research Council(ISBN 0−309−05377−3)によるthe “Guide for the CareおよびUse of Laboratory Animals”のガイダンスと共に行った。FVB/N−Tg(MMTVneu)202Mul/Jマウス(本明細書では“MMTV−neuマウス”と呼ぶ)は、The Jackson Laboratory(バーハーバー、メイン)から入手し、RPCIのLaboratory Resources(LAR)部門内で必要なときに給餌を受けた。これらのマウスによって実施された導入遺伝子は、ステロイド受容体、雌の場合は主にエストロゲン受容体(ER)反応性MMTVプロモーターから、Her2/neu癌原遺伝子を発現するように命令する。6〜12月齢の間に、雌MMTV−neuマウスの100%が乳癌を発症した。
マウスに投与される飲料水内のcuraxin−137の最大耐量(MTD)の検出:MMTV−neuマウス5例の群(雄と雌、4週齢)をケージに入れ、唯一の水供給源として、黒いボトル(ボトル当り少なくとも150ml)の水にcuraxin−137(濃度は以下に記す)の溶液を提供した。実験開始前にボトルの重さを計測し、その後、週に1回計測する。ボトルは週に1回再充填される。マウスは標準的な食事を自由に与えられた。マウスの外見および行動の変化を毎日観察し、第1週目は毎日、その後は週に1回体重を計測する。実験は1ヵ月間または以下の条件のいずれかが観察されるまで実施した:≧10%の体重減少(群の全5例);≧15%の体重減少(群の2例以上);マウスの外見または行動の一貫した変化;ケージ内の1例以上の死亡。当該実験に試験される出発用量は、いくつかの参照文献から引用される平均的なマウスの一日液体消費量150ml/kg/日に基づいて計算し、RPCIのLAR施設内の実液体消費量に基づき調節した。
飲料水のMTDおよび1/2MTDのcuraxin−137慢性投与の安全性:5例の雄MMTV−neuマウス(4週齢)の群に、純粋な水またはcuraxin−137(MTDまたは1/2MTD)を含んだ水のいずれかを10週間自由に与えた。マウスの体重を週に1回計測した。10週後、マウスに深い麻酔をかけ、血漿の単離のために心臓穿刺によって血液を回収した。病理組織学的分析、RNA単離およびcuraxin−137の濃度を測定するために、主要な臓器を回収した。
癌予防研究:未交尾の雌MMTV−neuマウス(群あたり19〜27例)に、純粋な水またはcuraxin−137含んだ水のいずれかを自由に与えた。curaxin治療群は4週齢から0.1mg/mlのcuraxin−137、または10週齢から0.2mg/mlのcuraxin−137のいずれかを与えた。動物の異常および腫瘍の出現のサインを毎日モニターした。体重は、最初の24週間は週に1回、その後は月に1回計測した。少なくとも1つ目に見える腫瘍を発現した動物を、薬剤の含まれていない水に移行し、蓄積腫瘍容量が2000mm3に達するまでそのままにした。そのときに、マウスを屠殺し、腫瘍の有無に関わらず全乳腺を切除し、切片を作るために緩衝ホルマリンおよびパラフィン内に固定した。組織病理学的検査を、外部施設で専門の病理学者によって盲検的に行われた。さらに、マウスの実質器官、骨髄および腫瘍のH&E染色されたスライドを、施設内(I.T.)内で専門の動物病理学者によって分析され、N−achroplan 100x/1.25油浸レンズ、Zeiss MRC5 カメラおよびAxioVision Rel.4.8ソフトウェアを備えたZeiss Axio Observer A1倒立顕微鏡を用いて、代表的な写真を撮影した。
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、腫瘍細胞のp53、NF−κBおよびHSF1経路に対するcuraxinの抗癌作用は、FACT複合体の活性を抑制することに起因する可能性がある。
(いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが)前癌状態の細胞内のFACT活性を調節することによって腫瘍形成の抑制する場合のcuraxinの活性と同様に、腫瘍変質におけるFACTの役割を調査した。これらの実験は、乳癌発生のMMTV−neu導入遺伝子マウスモデルを採用し、マウス乳癌ウイルス(MMTV)の末端反復配列からのステロイド反応性プロモーターによって駆動されるHer2/neu癌原遺伝子の異所性発現によって、乳癌形成が誘発される(例としてCancer Lett 1992 Jul 10;64(3):203−9参照)。これらのマウスの導入遺伝子の発現は、ステロイド受容体、および雌の場合は、主に乳腺上皮細胞または卵巣等のエストロゲン受容体を発現する組織に限定される。これらの動物の乳腺腫瘍は、ヒト乳腺癌の組織病理学的特徴を再現する(Breast Cancer Res Treat 1998 Jan;47(2):171−80参照)。
MMTV−neuモデルの腫瘍形成を促進する場合のp53抑制およびNF−κB活性化についての役割は以前に説明した(Breast Cancer Res 2007;9(4):211参照)。NF−kB活性の増加に伴う炎症は、MMTV−neuマウスモデルにおけるより侵攻性の乳癌のマーカーであり、腫瘍形成のプロモーターである(Breast Cancer Res 2007;9(4):211参照)。極めて初期の形成段階に開始されるFACTサブユニット発現の段階的な増加が、これらのマウスに観察された。curaxin化合物、curaxin−137(別名CBLC137)は、FACT、p53およびNF−κBに影響を及ぼす。これらの影響は、飲料水と共に提供されたcuraxin−137によって慢性的に治療を受けたMMTV−neuマウスの抗癌効果に解釈され、つまり腫瘍の発生開始および進行が抑制され、curaxin−137で治療を受けたMMTV−neu動物の寿命が、対照動物より有意に長かった。
以下の実験は、curaxin−137が、MMTV−neuマウスの異所性Her2/neu発現で直接干渉されなかったことを特に示している。MMTV−neuトランスジェニックマウスでは、雌の乳房腫瘍形成は、エストロゲン受容体(ER)制御MMTVプロモーターからのHer2/neu癌原遺伝子発現によって駆動される。当該モデルのcuraxin−137の潜在的な抗腫瘍効果を試験するために、化合物がHer2/neuの異所性発現を変化させると思われるMMTVプロモーターの活性になんらかの直接的な影響をもたらすのかどうかを試験した。そのため、ヒト乳癌細胞株(MDA−KB2)のMMTVプロモーターからのルシフェラーゼレポーター遺伝子に対するcuraxin−137の影響を評価した。正対照として、NF−κB依存性ルシフェラーゼレポーターを運ぶ細胞、curaxin−137によって阻害されることが知られている発現を使用した。ステロイド受容体(MDA−KB2細胞内のアンドロゲン受容体)およびNF−κBの転写活性を、異なる濃度のcuraxin−137の存在または非存在下で、対応する試薬、合成アンドロゲン、それぞれR1881またはTNFと共に細胞に導入した(図1Aおよび図1B)。curaxin−137は、処置後早くも3時間で、明らかにNF−κB依存性ルシフェラーゼレポーター活性を阻害したが、高用量のcuraxin−137を与えても、処置後3時間または6時間に、MMTVプロモーターからのルシフェラーゼ発現に影響を及ぼさなかった。MMTV−Luc発現の阻害は、高濃度の薬物による処置から24時間しか認められず、そのときには細胞死の徴侯が明らかであった。
MMTV−neuマウスからの正常な乳腺および乳腺腫瘍の細胞内のERおよびHer2に対するcuraxin−137の影響についても試験を行った。脱凝集した乳腺腫瘍または正常な乳腺の短期間のex vivo培地を、24時間curaxin−137で処置した。免疫蛍光染色は、正常な乳腺上皮細胞のER発現がcuraxin−137に反応して増加したが、非悪性細胞にHer2染色は検出されなかった(図1C、上部パネル)。対照的に、抗PCNA抗体を用いて試験した乳腺腫瘍、ERの発現、Her2、および増殖はすべて、curaxin−137処置後に減少した(図1C、下部パネル)。これらの発現の差は、正常な乳腺上皮細胞(図1D)およびcuraxin−137によってex vivoで処置された乳房腫瘍細胞(図1E)からのタンパク質抽出物のウエスタンブロット分析により確認された。これらのデータは、いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、MMTV−neuマウスの乳腺の正常および腫瘍細胞のERおよびHer2発現に、curaxin−137は異なる影響を及ぼし、正常細胞のERおよびHer2レベルに、わずかに用量依存的な釣鐘型の増加を引き起こすが、腫瘍細胞では両タンパク質は減少することを示している(図1Dおよび図1E)。これらの影響の根底を成す機序はさらに調査されなかったが、いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、curaxin−137の処置を受けた腫瘍細胞に観察されたERおよびHer2タンパク質レベルは、ヒートショック因子1(HSF1)転写活性をcuraxin−137が媒介して阻害したことに起因する可能性がある。このことは、ERおよびHer2タンパク質の安定性に欠かせない調節因子であることが知られているシャペロンのHSF1依存性発現を減少させ得る。
上述の結果は、当該モデルでは、curaxin−137には乳房細胞のMMTVプロモーター活性に対する直接的な阻害影響がないことも示し、そのため、当該モデルはcuraxin−137の抗癌効果を試験するのに適している。
次に、その他の因子、FACT、p53およびNF−κBが、MMTV−neuモデルの乳癌発生に関与しているかどうか、それらがcuraxin−137による治療に反応するかどうかを調査した。正常な乳房上皮組織と腫瘍のある乳腺上皮組織とで、FACTの発現に差があるかどうかを調査した。MMTV−neu動物の腫瘍のない乳腺組織では、SSRP1およびSPT16は極めて低く、両サブユニットは同動物から単離された腫瘍では高いレベルで検出された(図2A)。SSRP1レベルもSPT16レベルも変化しやすかったが、あらゆる事例において腫瘍のない組織の場合よりも高かった。当該モデルでFACTが過剰発現するようになる腫瘍形成の段階を識別するために、腫瘍のない乳腺の切片および様々な程度の悪性腫瘍の病変を、抗SSRP1抗体で染色した。図2Bに示されるように、SSRP1陽性の乳腺上皮組織は、MMTV−neuマウスの腫瘍のない乳腺の切片では検出されたが、同じFVB経歴の年齢が一致する野生型動物の同様の切片では検出されなかった。もっと高い程度のSSRP1染色が、MMTV−neuマウスからの全段階の異常な乳房病変に認められた(図2B)。これらのデータは、いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、FACTレベルがMMTV−neu動物の乳腺上皮形成の過程の早い時期に上昇することを示している。
p53は乳癌の発生に役割を果たす。curaxin−137はFACTのクロマチントラッピングを引き起こす。このことは、FACT関連性カゼインキナーゼ2(CK2)によるリン酸化によるp53の活性化と、核質からの可溶性FACTの欠乏によるNF−κB依存性転写の阻害の両方を導く。curaxinによる処置を受けた細胞の可溶性FACTの欠損が、NF−κB依存性転写の伸長を遮断するが、NF−κBそのものの核移行を防ぐことはない。さらに、遮断されたNF−κB依存性転写は、通常は細胞質体のNF−κB複合体を保持しているIκBαを欠乏させる。そのため、curaxinの処置は細胞核内のNF−κBを蓄積させる。特筆すべきことは、NF−κBの核移行は、典型的にはNF−κBの活性化の標識として解釈されるが、今回の事例では、実際にはNF−κB阻害の指標となることである。
以下の3つのパラメーターを使用して、MMTV−neuモデルの分子レベルでの薬剤の活性を評価した:(i)核タンパク質抽出物の可溶性画分におけるFACTサブユニットレベルの減少;(ii)p53の安定化(タンパク質レベルの上昇);および(iii)NF−κBのp65サブユニットの核移行。
curaxin−137が、MMTV−neuマウスの腫瘍のない乳腺細胞および乳房腫瘍細胞内のFACT、p53およびNF−κBに及ぼす影響を評価するために、新鮮に単離され、脱凝集された組織から短期間のex vivo培地を生成し、curaxin−137で処置をした。図2Cに示されるように、ex vivoのcuraxin−137処置により、乳房腫瘍細胞の可溶性核抽出物から、FACTサブユニット、SSRP1およびSPT16の両方が消失し、腫瘍のない乳腺抽出物にSSRP1またはSPT16タンパク質はほとんど検出されないか、全く検出されなかった(図2A)。
MMTV−neuマウスから乳腺腫瘍のNF−κBの状態を明らかにするために、同腫瘍の試料を、NF−κBのp65サブユニットの抗体と共に免疫蛍光染色に使用した。弱いバックグラウンド染色が腫瘍のない乳腺に観察され、5つの腫瘍試料全てに、大部分の細胞の細胞質体の局在化、およびいくつかの細胞の核染色と共に、視認できるp65陽性を示した(図2D)。curaxin−137による処置は、追加の刺激がなくとも有意なp65の核の再局在化を導き、curaxin−137によるNF−κB阻害で以前に示された特異的機序と一致している(図2E)。
同じex vivo培地のp53タンパク質レベルの評価では、腫瘍のない乳腺および5つの乳腺腫瘍のうち1つから、curaxin−137による処置から6時間後に、用量依存的様式で、p53レベルが増加したことを示した(図2F)。評価されたその他の4つの腫瘍では、基底p53レベルが高く、p53安定化変異による可能性のある、curaxin−137による処置に反応して導入がないことを示した(図2F)。これらの結果は、当該モデルの高い割合の乳腺腫瘍が、p53変異によっておそらく不活化され、curaxin−137による処置に反応しないp53経路を有することを示唆する。
そのため、curaxin−137はFACT、ER、Her2、p53、およびNF−κBを含む複数の経路に望ましい効果を有し、MMTV−neuマウスモデルおよびヒト乳癌に関与し得ることが説明される。
さらに、curaxin−137は飲料水と共に、マウスに慢性的に投与することができることを示した。curaxin−137は経口で利用可能であり、水に可溶性である。癌予防研究について、慢性投与のレジメンを確立するために、マウスに飲料水に含まれる化合物を与えることができるかどうかを試験した。MMTV−neuマウスは、0.1または0.2mg/mlのcuraxin−137の溶液を飲むことを拒否せず、負対照の水に曝露されたマウスのように、与えられた時間内に同じ容量の液体を飲んだ(図3A)。しかしながら、curaxin−137のもっと濃縮された溶液には、飲んだ液体はもっと少なかった。マウスによって飲まれた溶液の容量を、薬剤の実際の用量に転換すると、curaxin−137の平均1日用量は、0.1mg/mlの溶液群については13.8±2.2mg/kgであり、0.2mg/mlの群については28.5±2.5mg/kgであることを示した(図3B)。4週齢から14週齢に、通常の飲料水の代わりにこれらの用量値でcuraxin−137溶液を与えられたMMTV−neuマウスは、負対照の水を与えられた対照動物に比べ、体重に差がなかった(図3C)。さらに、1例が、2日間、外見または体重にその他の変化はないものの、背中を丸くしていたこと以外に、当該期間中にcuraxin治療群と対照群とに目に見える差がなかった。観察期間(10週)の最後の内部の実質器官に対する組織病理学的調査の際に、試験群に形態学的差は認められなかった。さらに、curaxin治療動物と対照動物とに、肝臓および脾臓(最も高レベルのcuraxin−137が蓄積されていた臓器として、これらの臓器が選択された、以下参照)の遺伝子の広域遺伝子発現のプロファイルの階層クラスタリングにほとんど差がなかった(図3E)。これらのデータは、curaxin−137の慢性投与は、いかなる明白な全身毒性を引き起こさないことを示している。
飲料水中の0.2mg/kgより多いcuraxin−137の濃度はマウスの液体消費を妨げたため、当該用量(飲料水中0.2mg/mlのcuraxin−137;28.5mg/kg/日と当量)を、当該投与レジメンについてのMTDとして定義した。当該用量は、経口による経管栄養によるマウスへの投与について、以前に確立された反復的MTD(30mg/kg)に極めて近い。
飲料水中の0.1または0.2mg/mlのcuraxin−137を10週間投与した後、中央値濃度がそれぞれ56.2および111.2ng/ml(0.17および0.33μMと当量、補足表1を参照)の化合物を、マウスの血漿中に検出した。実質的に高濃度のcuraxin−137が、いくつかのマウスの臓器に認められ、脾臓が最も高い数値であった(低用量群と高用量群とでそれぞれ1286および2414ng/ml(3.8および7.2μMと当量)(表1)。
in vitroの大部分の腫瘍細胞についてLC50%超の濃度のcuraxin−137(0.2〜0.6μM)は、分析された脾臓またはその他の臓器に生理学的変化を引き起こさなかった(図4)。そのため、我々はcuraxin−137の慢性投与を、腫瘍予防レジメンとして試験するのに申し分なく安全であると結論づけた。
さらに、curaxin−137はMMTV−neuトランスジェニックマウスの腫瘍の発生開始を遅らせ、生存期間を増加させる。雌のMMTV−neuトランスジェニックマウスの3群に、(i)生存中にわたって通常の水(「未治療」対照)、(ii)4週齢から0.1mg/mlのcuraxin−137溶液を含んだ水、または(iii)10週齢から0.2mg/mlのcuraxin−137溶液を含んだ水を与えた(図3D)。各群のマウスの何例か(未治療対照群を含む)は、試験期間中に腫瘍のない状態で死亡した。これらの死の根底にある理由は、剖検および組織病理学的検査によって確立されなかった。そのため、薬剤投与または腫瘍形成に関係のないもととして結論づけた。
対照群および0.1mg/mlのcuraxin−137治療群では、23〜25週齢に乳腺腫瘍が検出され始めた(図5A)。対照的に0.2mg/mlのcuraxin−137治療群では、腫瘍出現が40週齢まで延長された。低用量のcuraxin治療群の最初の腫瘍出現の動態学は、対照群のそれとほとんど同じであるという事実にも関わらず、低用量curaxin治療群も高用量curaxin治療群も、ログランク検定を用いた腫瘍のない生存期間のカプラン−マイヤー曲線の比較に基づくと、対照群と統計学的に差があった(図5B)。
腫瘍のない中央値生存期間は、それぞれ、対照群では44週であり、低用量curaxin治療群では57週、高用量curaxin治療群では78週であった(図5B)。
curaxin−137による治療を受けた動物の全生存期間は、両群で対照群より長かった(図5A)。両curaxin治療群の動物の何例かは、15ヶ月より長く腫瘍のない状態にあり、対照動物は13ヶ月より長く生存することはなかった(図5B;表2)。施設内生理学的評価の他に(図4)、各群の最も長く生存した動物に、独立系の表現型施設によって盲検の組織病理学的評価を行った(表2)。curaxin−137による治療を受けた生存期間が最長の動物は、対照マウスの中の生存期間が最長のマウスに見られた異常と異なる異常はなかった(表2)。このことは、curaxin全身投与の一般的な非毒性および安全性をさらに支持する。
さらに、データは、curaxin−137が乳腺腫瘍の進行を遅らせることを示した。マウスあたり蓄積腫瘍サイズが2000mm3近くになったときに、前の段落に記述した3つの試験群のマウスから単離した腫瘍のある乳腺に対する組織学分析を行った。このアプローチは、ほぼ同時に増殖した腫瘍の分析を可能にし、そのため、それらの組織診の潜在的な差を、腫瘍の外見による差によって説明することはできない。腫瘍は切除され、各腫瘍の形態をH&E染色切片で評価した。腫瘍は、Oncogene 2000 Feb 21;19(8):968−88の推奨に従いグレード分けし、以下、腫瘍質量が腺性または管状構造を形成する細胞のトレースがない>90%の固形細胞質量であった場合「未分化」(図6A)、腫瘍質量の>50%があまり組織化されてないが、認識可能な腺性様構造(図6B)または厚い管状構造(図6C)から構成された場合「高グレード」(図6B);腫瘍質量の100%が腺性または管状構造に似ていた場合「腺性」(図6D)、および腫瘍質量が過形成の乳腺上皮構造から主に構成される場合「in situの癌」(図6Eおよび図6F)。各試験群(対照群、0.1mg/mlまたは0.2mg/mlのcuraxin−137治療群)の各タイプの腫瘍の割合を分析したところ、対照群の腫瘍の半分以上が未分化の表現型を有し、腫瘍のうちわずかな割合がもっと分化されたサブタイプとして分類された。対照的に、curaxin−137はどちらの群も、大部分の腫瘍がもっと分化されたサブタイプであった(図6G)。分化の消失はたいてい腫瘍の進行に関連するため、マウスのcuraxin−137の治療群のより分化された腫瘍の発生率は、薬剤の慢性投与がMMTV−neu乳癌モデルの腫瘍の進行を遅らせたことを示している。
実施例2:curaxinの抗腫瘍形成の効果
発癌を抑制する能力を評価するために、1,2−ジメチルヒドラジン(DMH)を投与されたCBAマウスを用いて、curaxin137(CBLO137)の試験を行った。当該発癌物質は大腸、腎臓、子宮、卵巣、肛門周囲の皮膚の腫瘍、肝腫瘍を誘発する。マウスおよびラットの大腸に腫瘍を誘発するDMHの能力は当該技術分野に知られている。様々なマウスの系統を用いて1,2−DMHの発癌活動の比較評価を行った(表3および表4)。
DMHの最も効果的な発癌活動はCBAマウスで明らかとなった。DMHは、雌雄CBAマウスに、例えば、大腸の腺癌およびポリープ、肛門周囲の皮膚の扁平上皮細胞の癌、肝細胞腫および血管内皮腫等の腫瘍を誘発した。DMHが雌CBAマウスに典型的に誘発する例示的な腫瘍として、例えば、子宮肉腫、卵巣腺癌が挙げられ、DMHが雄CBAマウスに典型的に誘発する例示的な腫瘍として、例えば、副腎の血管肉腫並びに嚢胞性および固形腎腺腫が挙げられる。したがって、当該実験モデルでは様々な場所の腫瘍に対するcuraxinを評価することができる。さらに化学的に誘発された腫瘍の当該モデルは、1,2−DMHおよびその非対称類似体である1,1−DMHがヒトの発癌物質であるため、ヒト疾患に間接的にも直接的にも言い換える。ヒドラジンおよびその誘導体は、ロシア連邦法で正式にヒトの発癌物質と言われている(Sanitation RegulationおよびHygienic norms 1.2.2353‐08 “Carcinogenic factorsおよびmain requirements to prevention of carcinogenic risk”)。1,1−DMHはロケット燃料の重要な成分として、航空産業で広く使用されている。何千人もの人々がその製造および使用に携わっており、その多くが1,1−DMHによって慢性中毒の症状にあるため、発癌物質高リスク群にある。「絶対的発癌物質」として示される多くの発癌物質は、腫瘍形成を開始するだけでなく、その進行を促進し得る。1,2−DMHはこのような発癌物質の1つである。
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、curaxinは異物代謝に関与する酵素、具体的には、1,2−DMHの代謝活性化に非常に重要なチトクロムР450 CYP2E1アイソフォームに影響し得る。したがって、curaxinは1,2−DMHによって誘発される開始プロセスおよび腫瘍促進‐進行プロセスの両方に影響し得る。
当該実施例は、1,2−DMHの同時投与または動物への曝露後に、curaxinが及ぼす影響を示す。
試験には152例の雄マウスおよび150例の雌マウスを必要とした。動物を以下の実験群:1)1,2−DMH投与群、2)1,2−DMHおよびcuraxin投与群、3)curaxin投与群、4)(何も投与されない)対照群に分けた。
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、発癌物質およびその代謝物の両方を生物から取り除くべきであるときに1,2−DMH投与を中断してから2週間後に、curaxin投与を開始した。30および20mg/kgの用量に相当する0.20mg/mlまたは0.13mg/mlの濃度でcuraxinを飲料水に加えた。curaxin溶液は毎日調製した。
実験群:
CBA雄マウス(152例):
1)30例―対照(投与なし)、
2)37例―1,2−DMH、15週、8mg/kg、
3)44例―1,2−DMH、15週、8mg/kg、CBL0137、17〜40週、20mg/kg、
4)39例−CBL0137、17〜40週、20mg/kg;
CBA雌マウス(150例):
1)30例―対照(投与なし)、
2)37例―1,2−DMH、20週、8mg/kg、
3)44例―1,2−DMH、20週、8mg/kg、CBL0137、22〜42週、20mg/kg、および
4)39例―CBL0137、22〜42週、20mg/kg。
実験計画を図7に示す。1,2‐ジメチルヒドラジンによって腫瘍が誘発した。curaxin137(СВL0137)を指示どおりに投与した。
試験全体の動物の状態評価:試験の第1週目(DMH投与)から、マウスの体重を計測し、週に数回、個別に観察した。薬剤投与中のマウスの状態は、体重および動物の運動活性の変化によって観察した。死亡した動物および瀕死の動物は、試験中に殺傷し剖検に付した。curaxin溶液の投与量は1ケージあたりの飲料用の器内の液体の残量によって評価し、1個体についての平均として計算した。
剖検および肉眼的分析:承認された動物実験計画に従いマウスを安楽死させた。剖検中に血液試料を回収し、病理学解剖の肉眼的分析を行い、予備的診断を行い、臓器の重量を計測した。152例の雄マウスおよび150例の雌マウスから(冷凍およびホルマリン固定のために別々に)臓器を取り出した。(腐敗が観察されなければ)試験中に死亡が認められた動物の臓器は、ホルマリンに固定した。
当該技術分野で知られているように、組織学的標本の調製を行った。抽出後、臓器を10%緩衝ホルマリン(Bio Vitrum)に3日間以上固定した。その後、組織試料をアルコール(70о;96о‐1、96о‐2;100о‐1、100о‐2)、クロロホルム(c.p.、Vekton)で脱水し、Histomix(Histomixextra、BioVitrum)に注いだ。パラフィンの除去および組織学的試料の染色:キシロール−1、キシロール−2(m−キシロール、Merck);アルコール類(100о、96о、70о)、ヘマトキシリン−エオシン(ヘマトキシリン、Ferak;エオシンB、Aldrich)。標本の脱水化およびバルサムの埋め込み:アルコール(100о、96о、70о)、キシロール、キシロール−2(m−キシロール、Merck);封入剤Bio−Mount‐バルサムの類似体(Bio−Optica)。
動物の体重:第1週目から第16週目にかけて、全群の動物の体重が安定して増加した。何例かは、第16週目から第20週目にかけて、DMHの投与の間に平均体重の減少を観察した。30mg/kgの用量のcuraxinを投与した後に、全動物の体重が急激に減少し、脱水症状を観察した。第14週目の雄マウスおよび第7週目の雌マウスは、脱水を起こしたため、雄マウスでは10日間、雌マウスでは7日間、curaxin投与を中止した。その後、試験の終わりまで、20mg/kgの用量でcuraxin投与を行った。脱水症状は観察されなかった(図8)。
剖検および肉眼的分析のデータ‐臓器の重量:剖検の間に抽出された臓器の重量を表5および表6に示す。
記載の試験における動物の臓器、雄および雌の肉眼的分析のデータは、表7および表8に示す。
大腸の腫瘍:雌雄マウスの対照群、およびcuraxinを投与された動物では、腫瘍の変質は観察されなかった。大腸の腫瘍がDMHを投与された動物群、雄マウスでは37例中22例、雌マウスでは39例中20例に認められた。これらの群の腫瘍の多重度は、1個体あたり2個から5個に変動した。DMH+curaxin投与群では、雄マウスでは44例中12例、雌マウスでは44例中12例に、腫瘍が認められた。
腎腫瘍:DMHを投与された動物の22例の雄マウス、およびDMH+curaxinを投与された群の45例のうち18例の雄マウスに、腎腫瘍が観察された。curaxinを投与された動物群および対照群では、腎臓に何の変化も観察されなかった。雌マウスでは、DMHを投与された動物群にだけ腎腫瘍が認められたが、40例中1例に過ぎなかった。
肝腫瘍:雄CBAマウスは、自発的肝細胞腫の高い発生率を特徴とする。DMHの投与は、このタイプの良性腫瘍の発生率の有意な減少を誘発するが、これまでその機序については完全に明らかにされていない。curaxinは雄マウスの自発的発癌の強度に何も影響を及ぼさなかった。対照動物(30例の雄マウス)およびcuraxin投与群(40例の雄マウス)では、肝腫瘍の発生率は、それぞれ17/30(56.7%)および22/39(56.4%)であった。雌CBAマウスの自発的肝細胞腫発生は、雄マウスほどめったに起こらない。DMH群の肝腫瘍発生率は1/39、DMH+curaxin群では1/44であった。DMHおよびDMH+curaxinを投与された雄マウスでは、肝臓の出血性腫瘍は発生するのはまれであった(それぞれ1/37および1/44)。そのため、curaxinには、DMHによるこの種の腫瘍の誘発に調節効果はなかった。肝臓の出血性腫瘍は雌マウスのほうがもっと多かった(DMH群では6/39、DMH+curaxin群では9/44)。
肛門周囲の皮膚の扁平上皮癌:肛門周囲の皮膚の扁平上皮癌(肛門腫瘍−AT)は、肛門周囲の皮膚の胚上皮から発生する扁平上皮細胞の癌である。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、これらの腫瘍のなかには胚上皮からだけではなく、肛門周囲の皮脂(包皮の)腺からも発生し得る。DMHはATの誘導源である。雄マウス37例中16例、39例中10例に、腫瘍が観察された。curaxin投与はこの種の腫瘍の形成は誘発せず、DMHの発癌活動に影響を及ぼさなかった(雄マウス44例中18例および雌マウス44例中15例)。
子宮腫瘍:対照群およびcuraxinを投与されたマウスの群では、子宮腫瘍は観察されなかった。DMH群では、腫瘍の発生率および子宮角および子宮体部の肥厚は19/39であり、DMH+curaxin群では当該変質は44例中18例に観察された。
卵巣腫瘍:腫瘍が30例中9例に認められたように、透明な嚢胞の最大発症率が対照群で観察された。対照的に、curaxin群での透明な嚢胞は40例中3例であった。したがって、curaxinは透明な卵巣嚢胞の発生率に抑制的な効果を及ぼした。同様の効果はDMHおよびDMH+curaxinを投与された動物で観察された(それぞれ39例中6例、44例中6例に嚢胞が観察された)。卵巣の出血性腫瘍は、DMHを投与されたマウスの群に主に観察された(39例中6例)。DMH+curaxinを投与されたマウスの群では、これらの腫瘍の発生率は、44例中3例に減少した。curaxinのみを投与されたマウスの群では、卵巣の出血性腫瘍は観察されず、対照群では、この種の腫瘍が30例中1例に認められた。
その他の臓器の腫瘍:DMH群の雄マウスでは、1例の腸間膜腫瘍が認められた。DMHを投与された雌マウスでは、1例の子宮腫瘍および転移性起源の胃腫瘍が観察された。
さらに顕微鏡分析では、以下の良性および悪性腫瘍および腫瘍体積を観察した。
大腸:腺性ポリープおよび腺癌が、DMHおよびDMH+curaxin群の雌雄マウスで認められた。
1,2−DMHおよびDMH+curaxinを投与されたマウスの大腸に組織学的分析を行ったところ、雌雄マウスともに腺性ポリープおよび腺癌の発現を明らかになった。雄マウスでは、ポリープおよび腺癌の発生率に、curaxinの有意な抗癌効果が明らかになった。1,2−DMH群および1,2−DMH+curaxin群では、ポリープを有するマウスの割合は、それぞれ54.05%および22.73%であった。ピアソン・カイ二乗検定(χ2)に従い、これらの差は統計学的に有意であった(Р<0.01)。肉眼的分析では、多くの動物に複数の腺性ポリープが観察された。このつながりで、動物あたりのポリープの数を計算した(多重度)。DMH群でカウントされた大腸ポリープの多重度は、DMH+curaxin群より1,2高かった(それぞれ1.80および1.50)。
DMH群の雌マウスでは、腺性ポリープが35例中25例(64.10%)に認められ、DMH+curaxin群では44例中11例であった(25.00%)。これらの差は統計学的に有意であった(Р<0.001)。DMH群でカウントされた雌マウスの大腸ポリープの多重度は、DMH+curaxin群より4倍上回っていた(それぞれ6.12および1.64)。
腺性ポリープが1,2−DMHの影響下で発現し、自発的に腫瘍は発現しなかった。当該試験に使用したモデルでは、腺性ポリープが、大腸の腺性上皮過形成を示し、外方増殖性の増殖を示し、基底膜には浸透せず、筋層に損傷を与えなかった。
雄マウスの大腸の腺癌は、DMH群で37例中7例しか認められなかった(18.92%)。DMH+curaxin群ではこれらの腫瘍は観察されなかった(0%)。これらの差は統計学的に有意であった(Р<0.01)。
雌マウスでは、大腸の腺癌はDMH群で39例中8例に観察され(20.51%)、対照群より統計学的に高い。DMH+curaxin群では、腺癌は44例中5例に認められた(11.36%)。DMH群では、いくつかのポリープの悪性化が1例に観察され(多重度1.50)、DMH+curaxin群ではこのような現象は観察されなかった。
大腸の腺癌は、基底膜および筋層への浸透を伴う細胞異型および浸潤性増殖を特徴とする悪性腫瘍である。
腎臓:さらに雄マウスでは、腎皮膜血管肉腫の発生率を減少させる有意な抗癌効果が明らかにされた。腎腫瘍はDMH群およびDMH+curaxin群の雌雄マウスの腎臓に認められた。雄マウスでは腎皮膜血管肉腫も観察された。DMH群の雄マウスでは腎腺腫が94.6%(37例中35例)に認められ、DMH+curaxin群では44例中38例(86.4%)認められた。顕微鏡分析の間に、多くの動物にいくつかの腎腺腫があることが観察された。DMH群の腎腺腫の多重度は、DMH+curaxin群より1.5倍高かった(それぞれ3.84および2.55)。
DMH群の雌マウスでは、腎腺腫が39例中3例(7.69%)、DMH+curaxin群では44例中1例に観察された(2.27%)。
組織学的構造によって、腎腺腫を嚢胞腺腫、乳頭状嚢腺腫および固形腺腫に分ける。これらの腫瘍の有糸分裂はほとんどまれであり、異型は重症でなく、周囲組織への浸潤的増殖はなかった。
腎皮膜血管肉腫(RCA)は雄マウスにのみ認められた。DMH群ではRCAは37例中18例(48.65%)、DMH+curaxin群ではRCAは44例中9例(20.45%)に認められた。これらの差は統計学的に有意であった(Р<0.01)。
腎皮膜血管肉腫の発現の組織学的に初期段階で、動脈血栓症および腎被膜に毛細血管の拡大を伴う皮膜下出血が認められた。大きな腫瘍が血管肉腫の様々な組織学的変異形を示した。転移はどの動物にも観察されなかった。
肝臓:自発的良性肝腫瘍の形成、肝細胞腫はCBAマウスに典型的である。肝細胞腫は、雌雄マウスともに、全実験および対照群の動物、雌雄マウスに認められた。肝細胞腫は、DMH群の雄マウスの37例中11例(29.73%)、DMH+curaxin群の44例中10例(22.73%)、curaxin群の39例中22例(56.41%)、対照群の30例中16例(53.33%)に認められた。DMH投与群の自発性肝細胞腫の発生率は、curaxin群および対照群より低かった。しかしながら、DMH群では多発性肝細胞腫が観察され(1.55の多重度)、その他の群では観察されなかった。DMH群では、39例中2例(5.13%)が肝細胞腫であり、DMH+curaxin群では、44例中2例(4.55%)、curaxin群では39例中1例(2.56%)、対照群では30例中1例(3.33%)であった。
組織学的に肝細胞腫は小結節であり、肝組織に変化しないことが明確に定義される。肝細胞腫は、肝構造内の損傷、肝臓に典型的な梁構造がないことを特徴とし、肝細胞は重度の異型、細胞のジストロフィーおよび壊死を伴う。
肛門周囲の皮膚:肛門周囲の皮膚の腫瘍は、DMHによってマウスに最も誘発される腫瘍の1つである。肛門周囲の皮膚の腫瘍(肛門腫瘍、AT)は扁平上皮細胞癌であり、肛門周囲の皮膚の胚上皮から発現する。当該腫瘍のいくつかは、表面上皮だけでなく、肛門周囲の皮脂腺性(包皮)腺からも発現され得る。
ATは、DMH群では雄マウスの37例中16例に認められ(43.24%)、DMH+curaxin群では44例中18例に認められた(40.91%)。
雌マウスでは、ATは、DMH群で38例中11例(28.21%)、DMH+curaxin群で44例中15例(34.09%)に認められた。
顕微鏡分析は、以下のように肛門周囲の皮膚腫瘍の組織学的タイプを明らかにした。最も多く見られる癌は、角質化がある場合とない場合の扁平上皮細胞癌である。角質化のある扁平上皮細胞癌のタイプは、角質化のない皮膚癌よりもっと分化される。包皮腺癌は、DMH群の2例(雌マウス1例、雄マウス1例)にのみ診断され、雄マウスでは当該腫瘍が肺に転移した。角質化あり扁平上皮細胞癌の増加が、DMH群より、DMH+curaxin群に多く観察された。したがって、DMH群では雄マウスの37例中7例(18.92%)、DMH+curaxin群では雄マウスの44例中16例(36.36%)が、角質化あり扁平上皮細胞癌を有した。角質化なし扁平上皮細胞癌はDMH群の37例中8例(21.62%)に認められ、DMH+curaxin群では44例中2例(4.55%)にしか認められなかった。雌マウスの場合、角質化あり扁平上皮細胞癌は、DMH群では39例中3例(7.69%)、DMH+curaxin群では44例中11例(25.00%)に認められた。角質化なし扁平上皮細胞癌は、DMH群では39例中7例(17.94%)、DMH+curaxin群では44例中4例(9.09%)に観察された。
子宮:CBAマウスの自発的子宮肉腫の発現は極めてまれで、18月齢より老いたマウスにだけ見られる。DMH投与後に、用量およびレジメンに依存して、50%のマウスに子宮肉腫が観察される。DMH群の子宮肉腫の数はDMH+curaxin群より1.4倍高かった。子宮肉腫は、DMH群では39例中13例(33.33%)、DMH+curaxin群では44例中9例(20.45%)に認められた。DMH群の雌マウス1例に腹壁の転移を伴う子宮肉腫が観察された。組織学的に、これらの腫瘍は、子宮筋層の浸潤を伴って、子宮内膜間質に発現する間質性肉腫として定義される。腫瘍組織は、伸長した線維芽種の細胞および未成熟な間葉細胞から成る。腹壁転移は腹腔に突出する腫瘍のように見え、顕微鏡では線維芽肉腫の構造を有した。
卵巣:雌CBAマウスでは、加齢の加速に関連する濾胞性の卵巣嚢胞が自然に発現する。透明な嚢胞の最大発生率が対照群で観察され(39例中17例(56.67%))、濾胞性嚢胞が、DMH群では39例中11例(28.31%)に発現し、DMH+curaxin群では44例中9例(20.45%)に発現し、curaxin群では39例中15例(38.46%)に発現した。そのため、DMHは確かに濾胞性嚢胞の数を減少させ、curaxinはその作用を増強する。
濾胞性嚢胞の他に、実験群および対照群の雌マウスは出血性嚢胞および血管腫によって引き起こされる、卵巣に損傷を受けた。curaxin群以外の全ての群で、出血性嚢胞が発現した。出血性嚢胞が、DMH群では39例中3例(7.69%)、DMH+curaxin群では44例中5例(11.36%)、対照群では30例中4例(13.33%)に認められた。血管腫はDMH群にだけ観察され(雄マウス39例中5例、12.82%)、DMH+curaxin群では44例中1例(2.27%)に観察された。DMH群の血管腫の数は、DMH+curaxin群の数を5倍上回った。
肺:肺で良性の腫瘍が観察され、これらの腺腫は、linearマウスで自発的に発症し、CBAマウスには極めてまれに発現した。雄マウスでは、DMHが肺に自発的な腺腫の発生を誘発し、curaxinはそれに何の影響も及ぼさなかった。腺腫が、DMH群では27例中7例(18.92%、対照群と比較してР<0.05)、DMH+curaxin群では44例中7例(15,91%、対照群と比較してР>0.05)、対照群では30例中1例(3.33%)に観察された。curaxin群では、肺腺腫は認められなかった。DMH群の雌マウスでは、腺腫が39例中3例(7.69%)、DMH+curaxin群では44例中2例(4.55%)に観察され、curaxin群では39例中1例(7.69%)に観察された。対照群では腺腫は認められなかった。
脾臓:脾臓の顕微鏡分析を全ての雌雄マウスに行った。当該臓器に病理学的変化は観察されなかった。
したがって、当該実施例は、特に、curaxinは1,2−ジメチルヒドラジンによる大腸の腫瘍の誘発後に、抗癌効果することを示した。腺腫性ポリープの発生率が雄マウスでは54.05%から22.73%に減少、雌マウスでは64.4%から25%に減少し、腺癌の発生率は雄マウスでは18.9%から0%に減少、雌マウスでは20.51%から11.3%に減少した。さらに、当該実施例は、特に、curaxinは、腺腫性ポリープの形成の多重度を雄マウスでは1.2倍、雌マウスでは4倍減少させた。さらに当該実施例は、特に、curaxinは雄マウスの腎皮膜血管肉腫を48.65%から20.45%に減少させた。さらに、当該実施例は、特に、curaxin投与は、DMHによって誘発された子宮肉腫の発生率を33.33%から20.45%に減少させた。その他に、当該実施例は、特に、curaxinには前発癌性効果がなかった。
等価物
当業者は、通常の実験法にすぎないものを使用して、本明細書に明確に記載された特定の実施形態の多くの等価物を使用することを認識し、確認することができるだろう。当該等価物は以下の請求項の範囲に含まれることが意図される。
参照による取り込み
本明細書に参照された特許および刊行物はすべて、これによってその全体が参照により取り込まれる。