本発明は、ボール回収システムに関し、特に、テニスコート及び競技区域、例えば競技表面に設けられた少なくとも1面のテニスコートと、テニスボールを回収するように配置されたボール回収システムとを含むもので用いられるボール回収システムに関する。
従来、テニスコートは競技表面に設けられ得る。即ち、複数のラインを競技表面に引いてテニスコートを画定することがあり得る。テニスコートの各端縁は、各端部において所謂ベースラインによって画定される一方、各側部において所謂サイドラインによって画定されることがあり得る。典型的には、競技区域は更に、テニスコートの端縁を超えて延びる競技表面の区画を含む。更に、競技表面の周囲にフェンスを設けて、競技区域の境界を画定し、且つ/又はテニスボールが競技区域を越えて出てしまうのを防ぐことがあり得る。
試合として、或いは個々のポイントを取る友好的なプレー中、練習中やコーチング中というテニスのプレーの際、テニスボールが競技者のコントロールを離れることがある。例えば、テニスボールがテニスコートの中心に亘って設けられるネットに打ち込まれる場合や、方向のミスでテニスコートの側部を離れる場合、競技者の傍を通り過ぎてテニスコートの端部を超えて通り過ぎる場合がある。そのようなボールは最終的に、フェンスの基部に沿った位置や、例えばボールがフェンスから跳ね返った場合は競技区域内の位置といった一定数の位置の一つに至ることがあり得る。
状況に応じ、ボールを回収してプレーを継続できるようにしたり、且つ/又は新たなボールを用いてプレーを継続したりすることができる。例えば、プロの試合の場合、ボールボーイやボールガールがテニス競技者のためにボールを回収し、且つ/又は新たなボールを渡すことがあり得る。従って、テニスボールは常に競技者が使える状態にあり、こぼれ球がコート上に留まることはない。それほどフォーマルでない状況では、競技者は限られた数のテニスボール、例えばただ1個のテニスボールを用いることもあり、テニスボールのコントロールが失われるたびに短時間中断してボールを取って来てからプレーを継続するということがあり得る。このような状況では、テニス競技者には常にテニスボールが使える状態にあり、テニスコートはこぼれ球のない状態であり続けることができる。しかしながら、競技者は、競技区域内のテニスボールが行き着いた場所からボールを常に取って来なければならないため、時間をいくらか失う。
他の状況において、例えばテニスのコーチング中、テニスボールを取ってくる間にコーチングを遅らせることは望ましくない。従って、多数のテニスボールを手持品から用意しておくことがあり得る。従って、例えば、テニス競技者はサーブ間に大きな後れを伴うことなく繰り返しサーブの練習をすることができる。しかしながら、この結果多数のテニスボールが競技区域一面に散らばることになり得る。その帰結として、コーチングが終了した時にはこれらのテニスボール全てを回収する時間が失われる。更に、いくつかのテニスボールが最終的に競技区域上、時にはテニスコート内に存在することになる場合がある。これは、プレー中にテニス競技者がそのうち1個のテニスボールを誤って踏んだりして転んだり捻挫したりするといった事故のリスクを上昇させる恐れがある。
従って、テニスボールを回収するためのシステムを提供することが望ましい。
本発明の一局面に従うと、テニスコートの端縁に沿って設けられるように構成された、テニスコートのためのボール回収システムであって、上記テニスコートの端縁に沿って延び、高さが上記テニスコートの端縁から第1の方向で減少するように構成された第1のスロープと、第1のスロープに近接して、第1のスロープに対してテニスコートの端縁とは反対側に配置され、高さが、第1のスロープの最下部よりも高くない第1の端部から第2の端部へ、第1の方向に垂直の第2の方向で減少するように構成された第2のスロープと、第2のスロープの第2の端部に配置され、第2のスロープを転がり落ちてきたボールを受けるように構成されたボール回収器とを備える、ボール回収システムが提供される。
従って、このようなシステムは、テニスコートの端縁を出たテニスボールの全て、又は多くを回収することができる。例えば、当該ボール回収システムをテニスコートの1端部に沿って設けることによって、コートのこの端部にいる競技者の傍をボールが通り過ぎると、第1のスロープ及び/又は第2のスロープに沿って転がってボール回収器によって受けられることでこのボールを回収できるようにすることがあり得る。従って、例えば、上述のようにサーブの練習のためのコーチング中、複数のボールを用いて、テニスコートの端部を出たボール全て、又はほぼ全てを単一の場所、即ちボール回収器に回収することができる。従って、テニス競技者にとってかなりの時間が節約でき、且つ競技表面にボールが留まるのを防ぐ、又はその数を大幅に減らすことができる。
この観点で、競技表面の周囲に設けられ得るフェンスに当たったボールは、例えば第1のスロープ上に落下し得ることが理解される。従って、ボールは単に第2のスロープ上に転がり落ちてからボール回収器の中に転がり込むことがあり得る。しかしながら、ボールが弾んだ場合、第1のスロープの角度によって、ボールが再び跳ね返ってフェンスに当たり、第2のスロープ上へと転がり落ちる場合もある。フェンスに囲まれた従来の(水平の)競技表面の場合、ボールはテニスコートの中に戻ってしまう恐れがある。
いくつかのボールが競技表面上に留まった場合でも、本発明のボール回収システムはテニスボールの回収の助けとなることができる。例えば、競技者は特に正確に狙いを定めることなくテニスボールをボール回収システムの方へ放り投げれば、ボールはボール回収器の中に回収されることになる。従って、競技者はプレー中の中断中に極めて速やかにこれを行うことができる。上述のコーチングの場合、多くのボールが既にボール回収システムによって回収された状態となり、残ったボール、即ち競技表面上に留まっているものも、上述のように数回放り投げるだけで速やかに回収することができる。これは、競技表面中を歩き回ってテニスボールを全て手で回収するよりも遥かに速やかに行うことができ、且つ簡単である。
更に、このようなシステムは、極めて頑丈であり、即ち手入れや管理を全く又はほとんど必要としないであろうことが理解される。
一構成においては、第2のスロープは第1のスロープの幅全体に亘って延びるようにしても良く、例えば、第2のスロープの第1の端部及び第2の端部を、当該ボール回収システムが設けられたテニスコートの端縁における両端に設けるようにしても良い。
これに代えて、第2のスロープに対応する第3のスロープを設けても良く、これらのスロープは、第1のスロープを転がり落ちたボールが、第1のスロープに沿ったボールの位置に依存して第2のスロープ及び第3のスロープのいずれかに受けられるように配置され得る。従って、第1のスロープの幅は、第2のスロープ及び第3のスロープによって分割しても良い。第2のスロープ(及び、従って、用いられる場合は第3のスロープ)の第1の端部と第2の端部との間の高さ方向の差を制限することが望ましいことがあるため、上述のような構成は有益であり得る。第2のスロープのみを用いる場合、これによって水平方向に対するスロープの最大角度(この最大角度は、第1のスロープの幅と、第2のスロープの第1の端部及び第2の端部間の利用可能な高さ方向の差とによって決定される)が制限されることがある。第1のスロープの幅を第2のスロープ及び第3のスロープに分割することによって、第2のスロープ及び第3のスロープについての水平方向に対する角度を、第2のスロープのみを用いた場合に比べて大きくすることができる。水平方向に対する角度を大きくすることにより、テニスボールがスロープを転がり落ちやすくなり、テニスボールがボール回収システムに入りながらボール回収器で受けられない可能性が減少すると考えられる。
このような構成では、第2のスロープ及び第3のスロープは、共通のボール回収器が設けられ得る共通の場所で両スロープの下端が一致できるように、互いに反対の方向で高さが減少するようにしても良い。テニスコートから1端縁に沿って弾き出されたボールがすべて単一の回収器で受けられ得るため、上述のような構成は有利であると考えられる。
しかしながら、第2のスロープ及び第3のスロープが共通のボール回収器を共有するように配置されることは本質的事項ではないことが理解される。
従って、第2のスロープ及び第3のスロープの第2の端部に2個のボール回収器をそれぞれ配置することによって、第2のスロープ及び第3のスロープを転がり落ちたボールを受けるようにしても良い。例えば、第2のスロープ及び第3のスロープが同じ方向で高さが減少するように配置される場合、又は、両スロープが互いに反対の方向で高さが減少するように配置されるものの、第2のスロープ及び第3のスロープのそれぞれの第1の端部が一致する、即ち最高点が第1のスロープの幅の中間付近にあるように両スロープが配置される場合に、上述の構成を用いることができる。
当該ボール回収システムは、テニスコートの任意の端縁、即ちテニスコートの端部の一方若しくは両方、及び/又はテニスコートの側部の一方若しくは両方に沿って設けられ得ることが理解される。
一構成においては、第1のスロープの最高点は、テニスコートが設けられる競技表面と同一面としても良い。従って、ボール回収システムの全ての部分を競技表面のレベルよりも低くすることによって、つまずきの危険の発生を回避することができる。しかしながら、平坦な競技表面の端縁をテニス競技者に意識させるために、第1のスロープ及び/又は第2のスロープを設けたことを示す視覚的識別部を設けることが望ましい。
一構成においては、第1のスロープは、それが設けられているテニスコートの端縁から延びるようにしても良い。
これに代えて、テニスコートの端縁と、ボール回収システムの第1のスロープにおける最も近い端縁との間に競技表面の平坦な区画が残るようにテニスコートを競技表面に配置しても良い。従って、テニスコートと同一面の競技表面の部分がテニスコートを超えて延びてから第1のスロープが始まるようにしても良い。テニス競技者は、プレー中にテニスコートの外側に立ったり、且つ/又はテニスコートの端縁を超えた競技表面の区画を走る必要がある場合があるため、上記の構成は特にテニスコートの端部において望ましいと考えられる。
複数のボール回収システムがテニスコートの周囲に設けられる場合、互いに異なる構成を異なる端縁に設けても良いことが理解される。例えば、テニスコートの端部と関連したボール回収システムが設けられるまでにテニスコートの端部を超えてテニスコートと同一面の競技表面の区画を設ける一方、競技者がプレー中に頻繁に立ったり走ったりする必要のないテニスコートの側部においては、テニスコートの側部から第1のスロープが延びるようにしても良い。
第1のスロープ及び第2のスロープの角度は、注意深く選択する必要があることが理解される。具体的には、スロープは、テニスボールがスロープを転がり落ちることを促し、且つ/又はテニスボールがスロープに跳ね返ってテニスコートに戻るのでなくボール回収システム内に留まることを促すために、水平方向に対して十分に急勾配である必要がある。
しかしながら、角度の大きさは、設けることが望ましい高さ方向の最大落差によって制約を受ける場合がある。これは特に第2のスロープ(及び、用いられる場合は第3のスロープ)において該当するが、それは、スロープの長さが著しく大きく、例えばテニスコートの端縁の長さ全体に亘って延びる場合があるからである。第1のスロープに関しても、テニス競技者が競技表面の端縁を超えて走り出て第1のスロープ上に至った場合に転ぶリスクを最小限に抑えるために、水平方向に対して設けられる角度の大きさに制限がある場合がある。
これらの要因を考慮して、水平方向に対する第1のスロープの角度は、約2度〜約15度の範囲内とするのが望ましく、好ましい一実施例では約10度となることが判明している。
同様に、水平方向に対する第2のスロープ(及び、用いられる場合は第3のスロープ)の角度は、約1.5度〜約2.5度の範囲内とするのが好ましいことが判明している。好ましい一実施例では、当該角度は約1.8度となる。
本発明では、第1のスロープの長さ、即ち第1の方向における寸法は、約0.5m〜約1.5mの範囲内となる。好ましい一実施例では、約0.9mとなる。
第1のスロープの長さを大きくすると、ボール回収システムのサイズが大幅に増加する(第1のスロープの幅は、それが設けられるテニスコートの端縁の長さと定義する)ことが理解される。ボール回収システムのサイズを大きくすると、テニスコートに必要な競技区域のサイズが大きくなり、且つ/又は競技表面として利用可能なスペース、即ちテニスコートが設けられる競技区域の平坦な部分が小さくなる場合がある。一方、第1のスロープの長さを大きくすれば、ボールがボール回収システムに入る可能性、例えばボールが競技区域の周囲のフェンスから跳ね返ってくる可能性が大きくなり、即ちこぼれ球がボール回収器内に回収される可能性が増加すると考えられる。上述の長さ範囲が好適な妥協と考えられる。
第2のスロープ(及び、用いられる場合は第3のスロープ)の幅、即ち第2の方向における第2のスロープ及び/又は第3のスロープの寸法は、約69mm〜約75mmの範囲内とすることが好ましい。好ましい一実施例では、第2のスロープ及び/又は第3のスロープの幅は、約70mmとすることが好ましい。あらゆる従来のテニスボールが確実に第2のスロープ及び/又は第3のスロープ上に落下してから第2のスロープ及び/又は第3のスロープを転がり落ちることができるように、第2のスロープ及び/又は第3のスロープの幅を十分に大きくする必要があることが理解される。しかしながら、第1のスロープが第2のスロープ及び/又は第3のスロープの低くなった部分に隣接する位置では、第1のスロープの端縁から第2のスロープ及び/又は第3のスロープにかけて垂直方向の落差ができることが理解される。従って、競技者が走っていてテニスコートの端縁から出てしまい、第2のスロープ及び/又は第3のスロープの低くなった部分の上の隙間に足が入り込んでしまう可能性を小さくするために、第2のスロープ及び/又は第3のスロープの幅を最小限に抑えることが望ましい。第2のスロープ及び用いられる場合は第3のスロープに鮮やかな着色を施したり、又は類似の態様で視覚的に目立たせることによって、競技者の注意を隙間に向けさせて上記を防ぐ助けとしても良い。
本発明のいくつかの構成では、少なくとも第1のスロープはテニスコートが設けられる競技表面と同じ材料から形成しても良い。これにより、テニスコートが設けられる競技表面と同時にボール回収システムを構築することができ、ボール回収システムを設けるコストを抑えることができる。同様に、第2のスロープ及び用いられる場合は第3のスロープも、テニスコートが設けられる競技表面と同じ材料から形成しても良い。
これに代えて、第2のスロープ及び/又は用いられる場合は第3のスロープは、テニスコートが設けられる競技表面とは異なる材料から形成しても良い。例えば、テニス競技者は第2のスロープ及び/又は第3のスロープの上を走ることは想定されないため、異なる材料を用いることが可能である。従って、テニスボールが第2のスロープ及び/又は第3のスロープを転がり落ちる可能性を最大限にする観点だけから選択を行うことが可能である。上述のように、水平方向に対する第2のスロープ及び/又は第3のスロープの角度は、第1のスロープよりも小さな値に制約され得ることから、上記は特に第2のスロープ及び/又は第3のスロープについて望ましいと考えられる。
具体的な一実施例では、第2のスロープ及び/又は第3のスロープは、適当な間隔で隔てられた一対の平行のバー又はロッドから形成して、テニスボールが2本の平行のバーに支持されるようにしても良い。第2のスロープ及び/又は第3のスロープをこのような構成にすれば、平坦な表面から形成されたスロープと比べて転がりに対する抵抗を低減できることが理解される。
更に、このような構成は追加的な利益をもたらし得る。具体的には、本発明のボール回収システムが屋外に設けられる場合、雨水がボール回収システムの上に落ちた場合の排水を考慮することが必要となる。第2のスロープ及び/又は第3のスロープが一対の平行のバーから形成される構成を採用した場合、第1のスロープから第2のスロープ及び/又は第3のスロープ上に排水され得るものを含む雨水が、第2のスロープ及び/又は第3のスロープ上を流れ落ちるのではなく、バー間を通り抜けてスロープの下に設けた排水システムに至るようにすることができる。スロープ上を流れ落ちた場合、雨水はボール回収器内に溜まってボールを濡らしてしまう恐れがある。
本発明の更なる局面に従うと、競技区域であって、少なくとも1面のテニスコートが設けられる競技表面と、上述の構成のいずれかに従う少なくとも1式のボール回収システムであって上記少なくとも1面のテニスコートの端縁に対応する競技区域の端縁に沿って設けられたボール回収システムとを備える競技区域が提供される。
当該競技区域は、多数のテニスコートを含む場合があり、その場合、競技区域の端縁に沿ってボール回収システムを設けることで多数のテニスコートがボール回収システムを共有できるようにしても良いことが理解される。これに代えて、多数のボール回収システムを、競技区域における1以上の端縁に沿って設けても良い。上述のように、ボール回収システムがテニスコートの任意の端縁、即ちテニスコートの端部の一方若しくは両方及び/又はテニスコートの側部の一方又は両方に沿って設けられ得るように競技区域を構成しても良い。
一構成においては、本発明の競技区域は、隅で一致する競技区域の端縁に沿ってそれぞれ設けられた少なくとも2式のボール回収システムを有しても良い。従って、これら2式のボール回収システムの第2のスロープを適当に配置することによって、2式のボール回収システムが共通のボール回収器を共有するようにしても良い。具体的には、ボール回収器は、競技区域の2端縁が一致する隅に配置され、2式のボール回収システムのそれぞれの第2のスロープは、いずれのスロープを転がり落ちたボールも共通のボール回収器で受けられるように構成されるようにしても良い。
更に、上述のように、一構成においては、当該競技区域は、競技表面を取り囲む、又は部分的に取り囲むフェンスと、1式以上のボール回収システムとを備えるようにしても良い。従って、このようなボール回収システムは、フェンスと競技表面との間に設けられ得ることが理解される。
一実施例においては、フェンスに当たったボールがフェンスから跳ね返る程度を減らすために、競技区域を取り囲むフェンスに特定的に緩衝性を与えても良い。これによって、フェンスに当たったテニスボールがフェンスと競技表面との間のボール回収システム上に落下する、即ち、例えばテニスコートを含む競技表面上へと跳ね返るのではなく、第1のスロープ又は第2のスロープ及び/若しくは第3のスロープ上に着地して最終的にボール回収器で受けられる可能性が大きくなる。
一実施例においては、当該ボール回収システムは、窪んだ表面であって、テニスコートの端縁に沿って設けられた湾曲した上部端縁から、窪んだ表面の最下点に設けられたボール回収システムまで延びる窪んだ表面を備えても良い。
以下、添付の図面を参照しながら例によって本発明を説明する。ただし、本発明はこれらの例には限定されない。
図1は、本発明に従うボール回収システムを示す図である。
図2は、図1のボール回収システムの一部をより詳細に示す図である。
図3は、図1のボール回収システムの一部をより詳細に示す図である。
図4は、図1のボール回収システムの一部をより詳細に示す図である。
図5は、図1のボール回収システムの一部をより詳細に示す図である。
図6は、図1のボール回収システムの変形例を示す図である。
図7は、図1のボール回収システムの更なる変形例を示す図である。
図8は、図1のボール回収システムの変形例を示す図である。
図9は、本発明の一実施例に従うボール回収システムを示す図である。
図1は、本発明の一実施例に従う競技区域1を示す。図示するように、競技区域1は水平方向の競技表面2を含み、その上にテニスコート3が複数のライン4によって画定される。フェンス5が競技区域1を取り囲む。しかしながら、状況によっては、フェンス5は、競技区域における1又は限られた数の辺のみに設けても良いことが理解される。
図1に示すように、競技区域1は更にボール回収システム10を含む。これを図2でより詳細に示す。図示するように、ボール回収システム10は、テニスコート3の端縁3aに対応する競技表面2の端縁2aに沿って設けられる。
ボール回収システムは、競技表面の端縁2aから始まり下方に傾斜する第1のスロープ11を含む。従って、第1のスロープ11の高さは、競技表面2の端縁2aに垂直な第1の方向で減少する。従って、第1のスロープ11上にボールがあれば、競技表面2の端縁2aから離れるように転がることになる。第1のスロープ11を超えた位置、即ち第1のスロープ11に対して競技表面2とは反対側に、第2のスロープ12及び第3のスロープ13が設けられる。これらは両方とも、第1の方向に垂直な方向に傾斜する、即ち第1の方向に垂直な方向で高さが減少するように配置される。従って、第2のスロープ12及び第3のスロープ13上にボールがあれば、ボール回収システム10が設けられる競技表面2の端縁2aに平行な方向に転がる傾向がある。
図1及び図2に示す構成では、第2のスロープ12及び第3のスロープ13は、第1のスロープ11の最下部と同じレベルに設けられるそれぞれの第1の端部12a,13aからそれぞれの第2の端部12b,13bへ、互いに反対の方向に傾斜するように構成される。第2のスロープ12及び第3のスロープ13は、第2の端部12b,13bが共通のボール回収器14で一致するように構成される。ボール回収器14としては、例えば、バケツ、ワイヤーネット、又はその他テニスボールの回収に好適な容器を用いることができる。ボール回収器14は、テニスボールを容易に取り出せるように、回収システム14に対して着脱可能としても良い。ボール回収器からの取り出しを容易にするために、ボール回収器14から突出するハンドル14aを設けても良い。
図1及び図2は、競技区域1の1端部に設けられた、即ち、テニスコート3の1端部を出たボールを回収するように構成された、本発明のボール回収システムを示す。しかしながら、テニスコート3の端部の一方若しくは両方及び/又はテニスコート3の側部の一方若しくは両方に対応して、類似の、又は異なる構成のボール回収システムを、競技区域1の任意の辺に沿って設けても良いことが理解される。
更に、図1及び図2に示す構成を変形したものを設けても良い。例えば、第2のスロープ12及び第3のスロープ13の代わりに、第2のスロープ12及び第3のスロープ13のいずれかを延長したものに対応する単一のスロープを設けても良い。その場合、ボール回収器14はスロープの最下端に対応する競技区域1の隅に位置することになることが理解される。更に、第2のスロープ12及び第3のスロープ13に代えて、所望の数のスロープを用いて、テニスボールがスロープを転がり落ちて回収器内に至ることを促すために、各々のスロープの角度を所望の範囲内としても良い。
競技区域1における隣接する端縁、即ち同じ隅に繋がる端縁にもボール回収システムを設ける場合、この2式目のボール回収システムもまた、第2のスロープ12又は第3のスロープ13に対応し、同じ隅の回収器内にテニスボールを送り込むスロープを有するように構成することができる。そのような構成を図7に示す。図7においては、競技区域1の1側部に沿って配置されたボール回収システム10は、競技区域1の1端部に沿って配置されたボール回収システム10と共通の回収器14を共有する。このような構成においては、共通の回収器は、図示のように隣接する隅に配置することができる。
従って、ボール回収システムを長方形の競技区域1の4辺に設ける場合、4隅の各々にボール回収器を設けるだけでよいことが理解される。
競技区域1に設けられた2面以上のテニスコート3が、共通のボール回収システムの一部又はそれぞれのボール回収システムの一部として共通のボール回収器を共有する場合、ボール回収器は、分離機構を含んでも良い。この分離機構は、着脱可能とすることができ、これを用いて異なるテニスコートから受けたボールを分離することができる。これにより、異なる競技者のボールが混ざるのを防ぐことができる。
図1及び図2に示す構成の更なる変形例において、第2のスロープ12と第3のスロープ13とを交換して、第2のスロープ12及び第3のスロープ13の最上端12a、13aが、競技表面の端縁2aにおける途中、例えば真ん中で一致し、第2のスロープ12及び第3のスロープ13の最下端12b、13bが競技区域1の隅に設けられるようにしても良い。競技区域1の単一の端縁2aに単一のボール回収システム10だけを設ける場合、このような構成は望ましいものではない場合がある。それは、単一のボール回収器が設けられる図1及び図2に示す構成とは対照的に、2個のボール回収器14を、1個が各隅に配されるように設けることが必要になるからである。しかしながら、上述のように、競技区域1の4端縁全てにボール回収システムを設ける場合、隅で一致するそれぞれの端縁にあるボール回収システムに共通のボール回収器を共有させることができる。従って、このような構成においては、競技区域1の4隅の各々にボール回収器14を設けるだけでよい。
図1及び図2に示す構成の更なる変形例においては、競技区域1の単一の端縁に沿って2式以上のボール回収システムを配置しても良い。このような構成を図6に示す。図6においては、競技区域1の1端部に沿って2式のボール回収システムが設けられている。競技区域の単一の端縁に沿って、より大きな数のボール回収システムを用いても良いことが理解される。図6に示すように、このような構成に置いては、ボール回収システムは、共通の第1のスロープ11を共有する一方、別個のそれぞれのボール回収器14へと続く別個のそれぞれの第2のスロープ12及び第3のスロープ13を有するようにしても良い。このような構成であれば、ボール回収器の所与の深さについて、及び競技区域の端縁の所与の長さについて、第2のスロープ及び第3のスロープの傾斜をより急勾配にすることが可能となる。
図3、図4及び図5は、図1及び図2に示す実施例の更なる詳細を示す。図示するように、第1のスロープ11は、水平方向Hに対して約2度〜約15度の角度θ1で配置することができる。具体的な一実施例においては、水平方向Hに対して約10度の角度θ1とすることができる。この角度であれば、第1のスロープ11上にあるテニスボールが確実に競技表面2を離れて第2のスロープ12及び第3のスロープ13へと転がるために十分であると考えられる。テニスボールは、競技表面2から最も離れた第1のスロープの端縁11aに到達すると、第2のスロープ12及び第3のスロープ13のいずれかの上に落下する。
一構成においては、第1の方向、即ちボール回収システム10が設けられる競技表面2の端縁2aに垂直の方向における第1のスロープ11の長さD1は、約0.5m〜約1.5m(図示するように水平方向で測った場合)とすることができる。具体的な一実施例では、当該長さを約0.9mとすることができる。この長さであれば、フェンス5に当たったボールが第1のスロープ11上に落下し、従ってボール回収システム10内に保持されることが予想され得るのに十分大きい面積の第1のスロープ11が設けられる一方、競技表面2の所与のサイズに対して競技区域1のサイズを大幅に増大させることもなく、或いは競技区域1の所与のサイズに対して競技表面2のサイズを大幅に縮小することもないと考えられる。
第2のスロープ12及び第3のスロープ13の長さD2は、ボール回収システム10が設けられる端縁2aの長さによって固定される。更に、第2のスロープ12及び第3のスロープ13が設けられる図1及び図2に示すような構成を採用するか、第1のスロープ11以外にはただ1つのスロープのみを設ける構成を採用するかについての決定によって決まる。第2のスロープ12及び第3のスロープ13が設けられボール回収システム10がテニスコート3の1端部に設けられる図1及び図2に示すような構成では、水平方向で測った場合の第2のスロープ12及び第3のスロープ13の長さD2は、9m弱とすることができる。
しかしながら、第2のスロープ12及び第3のスロープ13の角度θ2(ボールがスロープ12,13を転がり落ちやすいように大きい方が望ましい)は、第2のスロープ12及び第3のスロープ13の長さD2と、スロープ12,13の上端12a、13a及び下端12b、13b間に設けられる高さ方向の落差とによって決まることが理解される。高さ方向の落差が大きければ大きいほど、この角度は大きくなるが、ボール回収システム10を設けるコストは大きくなり、且つ、ボール回収器14は第2のスロープ12及び第3のスロープ13の最下点よりも下方に設けなければならないため、テニスボールをボール回収器14から取り出す不便さが大きくなる。
第2のスロープ及び第3のスロープは、水平方向に対して約1.5度〜約2.5度の範囲の角度θ2で設けられ得ることが判明している。一実施例では、角度θ2を約1.8度とすることができる。この角度は、上述のような構成について第2のスロープ12及び第3のスロープ13の第1の端部12a、13a及び第2の端部12,13b間の高さ方向の落差が約0.23m〜0.39m、好ましい実施例では約0.28mとなる場合に対応する。
フェンス5を設ける場合、このフェンス5と第1の表面11の端縁との間の隙間のサイズを最小限にするために、第2のスロープ12及び第3のスロープ13の幅D3を最小限に抑えることが求められる。従って、第2のスロープ12及び第3のスロープ13の幅D3は、テニスボールの最大許容サイズよりも僅かに大きいものとすることが求められる一方、例えばフェンス5が動いた時などにテニスボールが詰まることを回避するのに十分な大きさとすることが求められる。従って、第2のスロープ12及び第3のスロープ13の幅D3は、約69mm〜約75mmとすることができる。具体的な一実施例においては、約70mmの幅とすることができる。
第1のスロープ11、第2のスロープ12及び第3のスロープ13のうちの任意のものを、競技表面2と同じ材料から形成することができる。具体的には、これは第1のスロープ11について都合が良いと考えられるが、それは第1のスロープ11が競技表面2に直接隣接しており、競技者がテニスのプレー中に走ってその上に来ることができるのに十分に大きいからである。従って、一致したレベルの摩擦を有することが望ましい。これとは対照的に、第2のスロープ12及び第3のスロープ13は、競技者が走って上に来ることはないと考えられる。従って、第2のスロープ及び第3のスロープは、スロープに沿ってテニスボールが転がりやすいように特定的に構成することができ、競技者が走って上に来るのに望ましい表面を設けることによる制約がない。更に、これが望ましいと考えられる理由としては、上述のように、第2のスロープ12及び第3のスロープ13の角度は大幅により小さくすることができる点が挙げられる。
本発明は、上述のスロープの特定の角度及び/又は上述の寸法に限定されないことが理解される。具体的に、用いられる望ましい角度(これによって用いられるスロープのサイズも決まる)は、用いられる特定の材料及び使用時の条件に依存する。例えば、屋外コートのための材料は、乾いた状態と濡れた状態との両方で用いられ得るが、これはスロープをテニスボールが転がり落ちる態様に影響を与えることがあり得る。本発明のいずれの構成においても、用いられる適当な角度を求めるためには、用いられることが望ましい表面材料に関し、予想される条件下で簡単な実験を行うことが適当であると考えられる。
一実施例では、図8に示すように、第2のスロープ12及び/又は第3のスロープ13は、それぞれ一対のロッド21,22から形成することによって、第2のスロープ及び/又は第3のスロープを転がり落ちるボールが、底面でなく一対のロッド21,22によって支持されるようにしても良い。ロッド21,22の各対につき、ロッド同士を平行に、適当な距離で隔てることによって、テニスボールがロッドによって安定的に支持されてロッド上をボール回収器14へと転がり落ちるようにすることができる。
図1及び図2に示すように、ボール回収システム10は、競技表面2においてテニスコート3の端縁3aと競技表面2の端縁2aとの間に一定の区画があるように構成しても良い。従って、テニスコート3の端縁3aを超えた位置に、競技者が立ったり走ったりできるようなテニスコート3と同一面のスペースが存在する。これはテニスコートの端部において特に重要であると考えられる。
しかしながら、競技表面2は、テニスコート3の端縁3aまでしか延びないようにしても良いことが理解される。従って、ボール回収システム10の第1のスロープ11が始まる競技表面2の端縁2aは、テニスコート3の端縁3aに設けても良い。このような構成は、競技者が立つことのないテニスコートの側部に沿って設けられることが多い。従って、テニスコート3の側部に沿ったスペースを、テニスコート3の側部に沿って設けられたボール回収システム10の第1のスロープ11によって設けるだけで十分であることがあり得る。
一実施例では、ボールがフェンスから跳ね返ることを減らすために、フェンス5に緩衝性を与えても良い。これにより、ボールがフェンス5に当たった後にボール回収システム10内に留められる可能性を高めることができる。一実施例では、緩衝材をフェンス上に掛けることでフェンスに緩衝性を与えることができる。例えば、特にチェーンリンクのフェンスを用いた場合などにおいて、耐久性を有し得る重いプラスチックをフェンス上でフックに掛けても良い。
上述のように、一実施例では、ボール回収システム10は、競技表面2及び/又はテニスコート3の端縁とフェンス5の位置との間に配置され得る。しかしながら、一実施例では、フェンス5は、少なくともその一部が、ボール回収システム10の上方に位置付けても良い。例えば、ボールがフェンス5の下方を通過するのに適当な高さで、フェンス5の下端をボール回収システム10−の上方で懸架しても良い。
一実施例では、フェンス5は、第1のスロープ11と第2のスロープ12及び/又は第3のスロープ13との境界の上方に設けることができる。このように配置するのは、テニスコート3の端縁を超えて走り出たテニス競技者が第1のスロープ11の上にも走り出ることができる一方で、競技者が第2のスロープ12及び/又は第3のスロープ13の上に足を置くリスクを減らすことで、第1のスロープ11の端縁から第2のスロープ12又は第3のスロープ13の上面までに大きな落差のある位置で引き起こされ得る怪我のリスクを減らすためである。
このような構成では、テニスボールがフェンス5の下方を通り過ぎてボール回収システム10の端縁を超えて出てしまうことを防ぐために、第2のスロープ12及び/又は第3のスロープ13の端縁を超えた位置に追加のバリアを設けることが望ましいことがあり得る。
同様に、上述の実施例の一代替例又は追加の一変形例において、ボール回収器14は、その一部又は全体を、フェンス5を超えた位置、即ちフェンス5に対してテニスコート3の反対側に設けても良い。このような構成では、フェンス5の高さは、必要であれば局所的に、テニスボールが確実にフェンス5の下方を通り過ぎてボール回収器14に到達できるように選択することができる。更に、上述のものと類似の態様で、追加のバリアをボール回収器14を超えた位置に設けることで、テニスボールがフェンス5の下方を通り過ぎた後にボール回収器14を超えてしまわないことを確実にしても良い。
上述の実施例では、ボール回収システムは、少なくとも2つの別個のスロープ、即ち、競技表面2及び/又はテニスコート3の端縁をテニスボールが通り過ぎる際に動くことのできる方向に対応する第1の方向で傾斜する第1のスロープ11と、これと垂直の方向に傾斜し、第1のスロープ11の端縁から転がり出たテニスボールを一定の範囲の位置のうちの一つで集めて単一の点又は領域、即ちボール回収器14の位置へと導くように機能する少なくとも第2のスロープ12,13とを備えている。必要であれば上述の各変形例と組み合わせられ得る代替的な一実施例においては、少なくとも2つの別個のスロープの代わりに、単一の湾曲したスロープ表面が両者の機能を組み合わせるようにしても良く、これによって、競技区域2又はテニスコート3の端縁からボールを運ぶことを助け、テニスボールを単一の点又は領域で集めて回収できるようにする。
図9は、これを窪んだ表面30によって達成する実施例を示す。窪んだ表面30は、競技区域2の端縁に設けられた湾曲した端縁31から下方へ傾斜し、湾曲した端縁31に沿ってテニスボールが始まり得る位置に拘らず、テニスボールが窪んだ表面30の共通の最下点(ここにボール回収器14が設けられ得る)へと転がり落ちるように構成される。