Pneumovax(登録商標)23ワクチンによって生じる抗体応答を調査するために、本発明者は、SLE患者および健康な対照由来のワクチン中に存在する肺炎連鎖球菌血清型に対する多数の高親和性ヒトモノクローナル抗体を生成し、特徴付けた。肺炎連鎖球菌に対するヒトモノクローナル抗体は過去に製造されているが(BaxendaleおよびGoldblatt、2006年;Baxendaleら、2000年;Zhouら、2002年;Zhouら、2004年)、これらの研究は、2つの因子によって制限されてきた:1つ目は、彼らがFab発現ライブラリースクリーニングを採用したことであり、2つ目は、ハイブリドーマのランダム産生を採用したことである。さらに、以前の研究は、1つの血清型(6Bおよび23F)に焦点を当てたか、または7つの莢膜血清型だけからなる結合体ワクチンPrevnarによるワクチン接種を利用したかのいずれかである。対照的に、本発明者の技術は、1つの特定の時点、ワクチン接種の7日後に、抗多糖応答の横断的な特徴付けを提供する;従って、抗体をクローニングするために使用される全ての細胞は、この特定のワクチン接種に対するメモリー応答から生じている。この系は、多糖免疫応答および自己免疫の分野におけるいくつかのなお未回答の問題についての情報を与える。特に、本明細書のデータは、異なる血清型間で交差反応するヒトモノクローナル多糖抗体の百分率、Pneumovax(登録商標)23に対する個体のASC応答が、如何にして肺炎連鎖球菌に対する以前の曝露の結果であるか、およびSLEを有するドナーにおいてこの応答が如何にして異なるか、に具体的に取り組んでいる。結果として、診断適用、セラノスティック適用および治療適用に適用され得る、肺炎連鎖球菌に対する完全にヒトの広範なモノクローナル抗体が、本明細書で入手可能である。本発明のこれらおよび他の態様は、以下に詳細に記載される。
II.肺炎連鎖球菌
A.概要
肺炎連鎖球菌または肺炎球菌は、Streptococcus属の、グラム陽性、アルファ−溶血性、胆汁溶解性耐気性で嫌気性のメンバーである。顕著なヒト病原性細菌肺炎連鎖球菌は、19世紀後半において肺炎の主要な原因として認識されており、多くの体液性免疫研究の対象である。
肺炎連鎖球菌はオプトヒン感受性であるので、肺炎連鎖球菌は、そのうちいくつかはアルファ−溶血性でもあるStreptococcus viridansから、オプトヒン試験を使用して差別化され得る。肺炎連鎖球菌は、胆汁による溶解に対するその感受性に基づいても識別され得る。被包性のグラム陽性球菌様細菌は、グラム染色において弁別的な形態学を有する、いわゆる「ランセット型」双球菌である。これらの細菌は、生物に対する毒性因子として作用する多糖莢膜を有する;90を超える異なる血清型が公知であり、これらの型は、毒性、有病率、および薬物耐性の程度が異なっている。
肺炎連鎖球菌のゲノムは、株に依存して、2.0百万と2.1百万との間の塩基対を含む閉鎖型環状DNA構造である。このゲノムは、1553遺伝子のコアセット、+毒性に寄与するそのビルローム(virulome)中に154遺伝子、および非侵襲性表現型を維持する176遺伝子を有する。遺伝子情報は、株間で最大10%まで変動し得る。
肺炎連鎖球菌は、正常な上部気道細菌叢の一部であるが、多くの天然の細菌叢と同様、適切な条件下(例えば、宿主の免疫系が抑制される場合)で病原性になり得る。ニューモリシンなどのインベイシン、抗貪食性莢膜、種々のアドヘシンおよび免疫原性細胞壁構成成分は全て、主要な毒性因子である。
市中感染性肺炎(CAP)は、ますます一般的になってきており、世界中の死亡率および罹患率の主要な原因を示す。いくつかの異なる病原体がCAPを生じ得るが、肺炎連鎖球菌は、最も一般的なものの1つである。
CAPは、肺区域または肺葉中への肺病原性生物の吸入または吸引を介して感染する場合が多い。あまり一般的ではないが、CAPは、離れた供給源からの二次的菌血症から生じる。
重症CAPは通常、心肺疾患を有し、脾臓機能が減退した、および/または病原的毒性の患者において発症するが、低年齢のおよび/または健康な宿主でさえも、原因病原体が十分に毒性である場合には、重症CAPを発症し得る。CAPにおける合併症は、感染する病原体および患者の健康に依存する。心筋梗塞は、市中感染性肺炎(CAP)に起因する発熱によって誘起され得る。また、脾臓機能が損なわれた、CAPを有する患者は、圧倒的な肺炎球菌敗血症を発症し得、潜在的には、使用される抗菌レジメンに関わらず、12〜24時間以内に死を導く。
CAPの罹患率および死亡率は、高齢患者および免疫無防備状態宿主において最も高い。CAPを有する患者における死亡率の増加したリスクを予測する他の因子には、顕著な併存症の存在、増加した呼吸数、低血圧、発熱、多葉性の病変、貧血および低酸素が含まれる。
B.関連疾患の状況
その名称にもかかわらず、肺炎連鎖球菌は、急性副鼻腔炎、中耳炎、髄膜炎、菌血症、敗血症、骨髄炎、化膿性関節炎、心内膜炎、腹膜炎、心膜炎、蜂巣炎および脳膿瘍を含む、肺炎以外の多くの型の肺炎球菌感染を引き起こす。
C.多剤薬物耐性
肺炎連鎖球菌治療における増大する関心は、世界中で増加している、多くはペニシリンおよび他のベータ−ラクタム(アモキシシリンなど)に対する株の耐性である。耐性の主要な機構は、ペニシリン結合性タンパク質をコードする遺伝子における変異の導入を含む。この発生は、処置を大いに複雑にし、治療が失敗した場合には不必要なコストもまた加算する。
2000年に、Whitneyらは、Centers for Disease Control and PreventionのActive Bacterial Core Surveillanceプログラムにおいて1995年から1998年までに同定された患者における侵襲性肺炎球菌疾患に関するデータを試験した。1998年の間に、4013症例の侵襲性肺炎連鎖球菌疾患が報告され、3475(87%)について単離体が入手可能であった。全体で、1998年からの単離体の24%が、ペニシリンに対して耐性であった。ペニシリン耐性単離体は、感受性単離体よりも、他の抗菌剤に対する高レベルの耐性を有する可能性が高かった。7価の結合体および23価の肺炎球菌多糖ワクチン中に含まれる血清型は、それぞれペニシリン耐性株の78%および88%を占めた。1995年と1998年との間に、3つ以上のクラスの薬物に対して耐性であった単離体の割合は、9%から14%まで増加した;ペニシリン(21%から25%)、セフォタキシム(10%から14%まで)、メロペネム(10%から16%まで)、エリスロマイシン(11%から15%まで)およびトリメトプリム−スルファメトキサゾール(25%から29%まで)に対して耐性であった単離体の割合においても増加が存在した。これらの傾向は、バンコマイシンおよびレボフロキサシンなどの薬物に頼る臨床医に対して、より大きい圧力をかけ続けがちである。
D.診断
肺炎連鎖球菌は、アルファ−溶血性試験に基づいて、他のStreptococcus感染から差別化され得る。肺炎連鎖球菌はオプトヒン感受性であるがS.viridansは感受性でないので、そのうちいくつかはアルファ−溶血性でもあるStreptococcus viridansは、オプトヒン試験を使用して識別され得る。肺炎連鎖球菌は、胆汁による溶解に対するその感受性に基づいても識別され得る。被包性のグラム陽性球菌様細菌は、グラム染色において弁別的な形態学を有する、いわゆる「ランセット型」双球菌である。これらの細菌は、生物に対する毒性因子として作用する多糖莢膜を有する;90を超える異なる血清型が公知であり、これらの型は、毒性、有病率、および薬物耐性の程度が異なっている。
血清型を識別することに関して、血清型1、3、4、5、6B、7F、8、9N、9V、12F、14、18C、19Fおよび23Fに対する抗体が、現在入手可能である(ARUP Laboratories、Salt Lake City、UT)。
E.処置
抗生物質は、細菌性肺炎の支持的治療としての人工呼吸(酸素補充)を用いた、S.pnemoniae感染に対する最適処置である。抗生物質の選択は、地理的領域において最も一般的に肺炎を引き起こしている微生物、ならびに特定の生物の性質、個体の免疫状況および根底にある健康、感染の重症度、ならびに以前の処置履歴に依存する。英国では、アモキシシリンが、市中で肺炎に感染する患者の大部分において第一選択の治療として使用され、時々クラリスロマイシンが追加される。市中感染性肺炎の「非定型」形態がより一般的になりつつある北米では、単一治療としてのクラリスロマイシン、アジスロマイシンまたはフルオロキノロンが、第一選択の治療としてアモキシシリンに取って代わっている。抗生物質耐性の地域パターンは、薬物療法を開始する場合に常に考慮すべきである。入院した個体または免疫欠損を有する個体では、地域のガイドラインが抗生物質の選択を決定する。これらの抗生物質は典型的に、静脈内ラインを介して与えられる。具体的には、肺炎連鎖球菌は、アモキシシリン(またはペニシリンに対してアレルギーの患者ではエリスロマイシン)を用いて、ならびに重症症例ではセフロキシムおよびエリスロマイシンを用いて、処置される。
III.モノクローナル抗体の産生
A.一般的方法
肺炎連鎖球菌に結合するモノクローナル抗体は、いくつかの適用において用途を有することが理解される。これらには、疾患を検出および診断する際に使用するための診断キットの製造を含む。これらに関して、診断剤もしくは治療剤にかかる抗体を連結することができ、または捕捉剤もしくは競合アッセイにおける競合者としてこれらを使用することができる。抗体を調製および特徴付けるための手段は、当技術分野で周知である(例えば、Antibodies: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、1988年;米国特許第4,196,265号を参照のこと)。
モノクローナル抗体(MAb)を生成する方法は一般に、ポリクローナル抗体を調製する方法と同じ路線に沿って開始する。これら両方の方法のための第1のステップは、適切な宿主の免疫、または以前の天然の感染に起因して免疫になっている被験体の同定である。当業者に周知なように、免疫のための所与の組成物は、その免疫原性が変動し得る。従って、ペプチド免疫原またはポリペプチド免疫原を担体にカップリングすることによって達成され得るように、宿主免疫系をブーストすることがしばしば必要である。例示的な好ましい担体は、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)およびウシ血清アルブミン(BSA)である。オボアルブミン、マウス血清アルブミンまたはウサギ血清アルブミンなどの他のアルブミンもまた、担体として使用され得る。ポリペプチドを担体タンパク質に結合体化するための手段は、当技術分野で周知であり、グルタルアルデヒド、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(m−maleimidobencoyl−N−hydroxysuccinimide ester)、カルボジイミド(carbodiimyde)およびビス−ジアゾ化ベンジジン(bis−biazotized benzidine)が含まれる。当技術分野でこれもまた周知のように、特定の免疫原組成物の免疫原性が、アジュバントとして公知の免疫応答の非特異的刺激因子の使用によって増強され得る。例示的な好ましいアジュバントには、フロイント完全アジュバント(死滅したMycobacterium tuberculosisを含む免疫応答の非特異的刺激因子)、フロイント不完全アジュバントおよび水酸化アルミニウムアジュバントが含まれる。
ポリクローナル抗体の産生で使用される免疫原組成物の量は、免疫原の性質ならびに免疫に使用される動物によって変動する。種々の経路が、免疫原を投与するために使用され得る(皮下、筋内、皮内、静脈内および腹腔内)。ポリクローナル抗体の産生は、免疫後の種々の時点において、免疫した動物の血液を試料抽出することによってモニタリングされ得る。第2のブースター注射もまた与えられ得る。ブーストおよび力価決定のプロセスは、適切な力価が達成されるまで反復される。所望のレベルの免疫原性が得られたときに、免疫した動物が採血され得、血清が単離および保存され得、ならびに/または動物がMAbを生成するために使用され得る。
ヒトモノクローナル抗体の場合、免疫応答を生成したこと、この場合肺炎連鎖球菌に曝露されていることまたはPneumovax(登録商標)23で免疫されていることが既に分かっている個体を、その代わりに単に探すことができる。種々の肺炎連鎖球菌株に対する免疫を有する被験体を同定するために、一般に、被験体から血液を取得することができ、肺炎連鎖球菌抗体についてそれらを試験することができる。本発明で記載される多くの抗体は、肺炎連鎖球菌に以前に感染した他の点では健康な個体由来の末梢血液を使用して、この方法で生成した。
上記のように、免疫後に、または以前に感染した被験体から細胞を取得した後に、抗体を産生する潜在力を有する体細胞、特にBリンパ球(B細胞)が、MAb生成プロトコールにおける使用のために選択される。これらの細胞は、生検した脾臓もしくはリンパ節から、または循環血液から取得され得る。次いで、免疫した動物由来の抗体産生Bリンパ球は、免疫された動物と同じ種の細胞またはヒト細胞もしくはヒト/マウスキメラ細胞の1種であることが一般的な不死骨髄腫細胞の細胞と融合される。ハイブリドーマ産生融合手順における使用に適した骨髄腫細胞系統は好ましくは、非抗体産生性であり、高い融合効率を有し、所望の融合細胞(ハイブリドーマ)の増殖のみを支持する特定の選択培地中で増殖することができないようにする酵素欠損を有する。
当業者に公知のように、いくつかの骨髄腫細胞のうちいずれか1つが使用され得る(Goding、65〜66頁、1986年;Campbell、75〜83頁、1984年)。例えば、免疫した動物がマウスである場合、P3−X63/Ag8、X63−Ag8.653、NS1/1.Ag41、Sp210−Ag14、FO、NSO/U、MPC−11、MPC11−X45−GTG1.7およびS194/5XX0 Bulを使用することができ;ラットについては、R210.RCY3、Y3−Ag1.2.3、IR983Fおよび4B210を使用することができ;ならびにU−266、GM1500−GRG2、LICR−LON−HMy2およびUC729−6は全て、ヒト細胞融合物に関連して有用である。1つの特定のマウス骨髄腫細胞は、細胞系統リポジトリ番号GM3573を請求することによって、NIGMS Human Genetic Mutant Cell Repositoryから容易に入手可能なNS−1骨髄腫細胞系統(P3−NS−1−Ag4−1とも称される)である。使用され得る別のマウス骨髄腫細胞系統は、8−アザグアニン耐性マウスマウス骨髄腫SP2/0非産生体細胞系統である。より最近、KR12(ATCC CRL−8658;K6H6/B5(ATCC CRL−1823 SHM−D33(ATCC CRL−1668)およびHMMA2.5(Posnerら、1987年)を含む、ヒトB細胞と共に使用するためのさらなる融合パートナー系統が記載されている。本発明における抗体は、HMMA2.5系統を使用して生成した。
抗体産生性の脾臓またはリンパ節細胞と骨髄腫細胞とのハイブリッドを生成する方法は、通常、体細胞と骨髄腫細胞とを2:1の割合で混合するステップを含むが、この割合は、細胞膜の融合を促進する薬剤(単数または複数)(化学的または電気的)の存在下で、それぞれ約20:1から約1:1まで変動し得る。センダイウイルスを使用する融合方法は、KohlerおよびMilstein(1975年;1976年)によって記載されており、37%(v/v)PEGなどのポリエチレングリコール(PEG)を使用する融合方法は、Gefterら(1977年)によって記載されている。電気的に誘導される融合方法の使用もまた適切である(Goding、71〜74頁、1986年)。本発明におけるインフルエンザ抗体を分泌するハイブリドーマは、電気融合によって取得した。
融合手順は通常、低頻度、約1×10−6〜1×10−8で生存ハイブリッドを生成する。しかし、生存融合ハイブリッドは、選択培地中で培養することによって、親の注入された細胞(特に、通常は無制限に分裂し続ける注入された骨髄腫細胞)から差別化されるので、これは問題にならない。選択培地は一般に、組織培養培地中でのヌクレオチドのde novo合成をブロックする薬剤を含む培地である。例示的な好ましい薬剤は、アミノプテリン、メトトレキサートおよびアザセリンである。アミノプテリンおよびメトトレキサートは、プリンおよびピリミジンの両方のde novo合成をブロックするが、アザセリンはプリン合成のみをブロックする。アミノプテリンまたはメトトレキサートが使用される場合、この培地には、ヌクレオチドの供給源として、ヒポキサンチンおよびチミジンが補充される(HAT培地)。アザセリンが使用される場合、この培地には、ヒポキサンチンが補充される。B細胞供給源が、エプスタイン・バーウイルス(EBV)で形質転換されたヒトB細胞系統である場合、骨髄腫に融合されていないEBVで形質転換された系統を排除するために、ウアバインが添加される。
好ましい選択培地は、HATまたはウアバインを含むHATである。ヌクレオチドサルベージ経路を作動させることが可能な細胞のみが、HAT培地中で生存することができる。骨髄腫細胞は、このサルベージ経路の重要な酵素、例えば、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)が欠損しており、生存できない。B細胞は、この経路を作動させ得るが、培養物中で限定された寿命を有し、一般には約2週間以内に死亡する。従って、選択培地中で生存し得る唯一の細胞は、骨髄腫およびB細胞から形成されたハイブリッドである。融合に使用されるB細胞の供給源が、本明細書のように、EBVで形質転換されたB細胞系統である場合、EBVで形質転換されたB細胞は薬物死滅に対して感受性であるので、ウアバインは、ハイブリッドの薬物選択のためにも使用され、使用される骨髄腫パートナーは、ウアバイン耐性であるように選択される。
培養することは、特異的ハイブリドーマが選択されるハイブリドーマの集団を提供する。典型的には、ハイブリドーマの選択は、マイクロタイタープレート中での単一クローン希釈によって細胞を培養し、その後個々のクローン上清(約2〜3週間後)を所望の反応性について試験することによって、実施される。このアッセイは、例えばラジオイムノアッセイ、酵素イムノアッセイ、細胞傷害性アッセイ、プラークアッセイドット免疫結合アッセイなどのように、感受性があり単純かつ迅速であるべきである。
選択されたハイブリドーマは、次いで、段階希釈されまたはフローサイトメトリーソーティングによって単一細胞ソートされ、個々の抗体産生細胞系統中にクローニングされ、次いでこれらのクローンは、mAbを提供するために無制限に増殖され得る。これらの細胞系統は、2つの基本的な方法で、MAb産生に利用され得る。ハイブリドーマの試料は、動物(例えば、マウス)中に注射(しばしば腹腔中に)され得る。任意選択で、これらの動物は、注射前に、炭化水素、特にプリスタン(テトラメチルペンタデカン)などの油で予備刺激される。この方法でヒトハイブリドーマが使用される場合、腫瘍拒絶を予防するために、SCIDマウスなどの免疫無防備状態マウスに注射することが最適である。注射された動物は、融合した細胞ハイブリッドによって産生される特異的モノクローナル抗体を分泌する腫瘍を発症する。次いで、動物の体液、例えば血清または腹水が、高濃度でMAbを提供するために採取され得る。個々の細胞系統もまた、in vitroで培養され得るが、MAbは、これらが高濃度で容易に取得され得る培養培地中に、天然に分泌される。あるいは、ヒトハイブリドーマ細胞系統は、細胞上清中に免疫グロブリンを産生するためにin vitroで使用され得る。これらの細胞系統は、高純度のヒトモノクローナル免疫グロブリンを回収する能力を最適化するために、無血清培地中での増殖のために適応され得る。
いずれかの手段によって産生されたMAbは、所望の場合、濾過、遠心分離および種々のクロマトグラフィー方法、例えばFPLCまたはアフィニティクロマトグラフィーを使用して、さらに精製され得る。本発明のモノクローナル抗体の断片は、ペプシンもしくはパパインなどの酵素による消化、および/または化学的還元によるジスルフィド結合の切断を含む方法によって、精製されたモノクローナル抗体から取得され得る。あるいは、本発明に包含されるモノクローナル抗体断片は、自動ペプチド合成機を使用して合成され得る。
分子クローニングアプローチがモノクローナルを生成するために使用され得ることもまた企図される。このために、RNAが、ハイブリドーマ系統から単離され得、抗体遺伝子がRT−PCRによって取得され得、免疫グロブリン発現ベクター中にクローニングされ得る。あるいは、コンビナトリアル免疫グロブリンファージミドライブラリーが、これらの細胞系統から単離されたRNAから調製され、適切な抗体を発現するファージミドが、ウイルス抗原を使用したパニングによって選択される。従来のハイブリドーマ技術を超えるこのアプローチの利点は、およそ104倍多い抗体が産生され得、単一ラウンドでスクリーニングされ得ること、ならびに新たな特異性が、適切な抗体を見出す機会をさらに増加させるH鎖およびL鎖の組合せによって生成されることである。
本発明において有用な抗体の産生を教示する、各々参照によって本明細書に組み込まれる他の米国特許には、コンビナトリアルアプローチを使用したキメラ抗体の産生を記載する米国特許第5,565,332号;組換え免疫グロブリン調製を記載する米国特許第4,816,567号;および抗体−治療剤結合体を記載する米国特許第4,867,973号が含まれる。
B.本発明の抗体
本発明に従う抗体は、その結合特異性によって、まず第1に定義され得る。当業者に周知の技術を使用して所与の抗体の結合親和性を評価することによって、当業者は、かかる抗体が本発明の特許請求の範囲内に入るかどうかを決定することができる。
本発明の文脈では、抗体特異性は、肺炎連鎖球菌血清型に関連する。Pneumovax(登録商標)23によって提示される24の異なる血清型が存在し、以下の指定によって示される:1、2、3、4、5、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19F、19A、20、22F、23F、33FおよびCWPS。代表的抗体のCDR領域の配列は、添付の配列表に含まれている。
本発明の抗体を分類する別の方法は、その活性によるものである。これは、補体の存在下または非存在下で肺炎連鎖球菌を中和または死滅させる能力を含み得る。最後に、抗体は、特に重鎖/軽鎖可変領域配列を参照して定義され得る。本発明者は、食作用細胞系統による細菌の抗体媒介性取り込みを測定するオプソニン化貪食作用アッセイ(OPA)において肺炎連鎖球菌に対する活性が実証された以下の抗体を提供する。これは、表2に示される可変領域によっても示され得る。
C.抗体配列の操作
種々の実施形態では、改善された発現、改善された交差反応性または減退したオフターゲット結合などの種々の理由のために、同定された抗体の配列を操作することを選択することができる。以下は、抗体操作のための関連の技術の一般的な議論である。
ハイブリドーマが培養され得、次いで細胞が溶解され得、総RNAが抽出され得る。ランダムヘキサマーが、RNAのcDNAコピーを生成するためにRTと共に使用され得、次いで、全てのヒト可変遺伝子配列を増幅することが予測されるPCRプライマーの多重混合物を使用してPCRが実施され得る。PCR産物は、pGEM−T Easy(登録商標)ベクター中にクローニングされ得、次いで標準的なベクタープライマーを使用した自動DNA配列決定によって配列決定され得る。結合および中和のアッセイは、ハイブリドーマ上清から収集され、プロテインGカラムを使用したFPLCによって精製された抗体を使用して、実施され得る。
組換え全長IgG抗体は、クローニングベクター由来の重鎖および軽鎖Fv DNAを、Lonza pConIgG1またはpConK2プラスミドベクターなどの第2のベクター中にサブクローニングすることによって生成され得、293 Freestyle細胞またはLonza CHO細胞中にトランスフェクトされ得、次いで抗体が、細胞上清から収集および精製され得る。
pCon Vectors(商標)は、抗体全体を再発現させるための容易な方法である。これらの定常領域ベクターは、pEEベクター中にクローニングされた多様な免疫グロブリン定常領域ベクターを提供するベクターのセットである。これらのベクターは、ヒト定常領域を有する全長抗体の容易な構築およびGS System(商標)の簡便さを提供する。
抗体分子は、例えばmAbのタンパク質分解性切断によって産生される断片(例えばF(ab’)、F(ab’)2)、または例えば組換え手段を介して産生可能な単鎖免疫グロブリンを含む。かかる抗体誘導体は1価である。一実施形態では、かかる断片は、互いに組み合わされ得るか、または「キメラ」結合性分子を形成するために、他の抗体断片もしくは受容体リガンドと組み合わされ得る。顕著なことに、かかるキメラ分子は、同じ分子の異なるエピトープに結合することが可能な置換基を含み得る。
関連の実施形態では、この抗体は、開示された抗体、例えば、開示された抗体中のCDR配列と同一のCDR配列を含む抗体の誘導体(例えば、キメラ抗体またはCDR移植抗体)である。なおさらなる実施形態では、この抗体は完全にヒトの組換え抗体である。あるいは、例えば抗体分子中に保存的変化を導入するなど、より僅かな改変を行うことが望まれ得る。かかる変化を行う際には、アミノ酸のヒドロパシー指標が考慮され得る。タンパク質に双方向的な生物学的機能を付与することにおけるヒドロパシーアミノ酸指標の重要性は、当技術分野で一般に理解されている(KyteおよびDoolittle、1982年)。アミノ酸の相対的ヒドロパシー特徴は、得られるタンパク質の二次構造に寄与し、これが次いで、このタンパク質と、他の分子、例えば酵素、基質、受容体、DNA、抗体、抗原などとの相互作用を規定すると認められている。
同様のアミノ酸の置換が、親水性に基づいて効率的になされ得ることもまた、当技術分野で理解される。参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第4,554,101号は、その隣接アミノ酸の親水性によって支配されるタンパク質の最大の局所平均親水性が、そのタンパク質の生物学的特性と相関することを記述している。米国特許第4,554,101号に詳述されるように、以下の親水性値が、アミノ酸残基に割り当てられている:塩基性アミノ酸:アルギニン(+3.0)、リシン(+3.0)およびヒスチジン(−0.5);酸性アミノ酸:アスパラギン酸(+3.0±1)、グルタミン酸(+3.0±1)、アスパラギン(+0.2)およびグルタミン(+0.2);親水性の非イオン性アミノ酸:セリン(+0.3)、アスパラギン(+0.2)、グルタミン(+0.2)およびスレオニン(−0.4)、硫黄含有アミノ酸:システイン(−1.0)およびメチオニン(−1.3);疎水性の非芳香族アミノ酸:バリン(−1.5)、ロイシン(−1.8)、イソロイシン(−1.8)、プロリン(−0.5±1)、アラニン(−0.5)およびグリシン(0);疎水性の芳香族アミノ酸:トリプトファン(−3.4)、フェニルアラニン(−2.5)およびチロシン(−2.3)。
アミノ酸は、類似の親水性を有する別のアミノ酸で置換され得、生物学的にまたは免疫学的に改変されたタンパク質を生じ得ることが理解される。かかる変化では、その親水性値が±2以内であるアミノ酸の置換が好ましく、±1以内であるアミノ酸の置換が特に好ましく、±0.5以内であるアミノ酸の置換がなおより特に好ましい。
上に概説したように、アミノ酸置換は一般に、アミノ酸側鎖置換基の相対的類似性、例えば、その疎水性、親水性、電荷、サイズなどに基づく。種々の前述の特徴を考慮に入れた例示的な置換が当業者に周知であり、これには以下が含まれる:アルギニンおよびリシン;グルタミン酸およびアスパラギン酸;セリンおよびスレオニン;グルタミンおよびアスパラギン;ならびにバリン、ロイシンおよびイソロイシン。
本発明はまた、アイソタイプ改変もまた企図する。異なるアイソタイプを有するようにFc領域を改変することによって、異なる機能性が達成され得る。例えば、IgG1に対する変化は、抗体依存性細胞傷害を増加させ得、クラスAへの切り替えは、組織分布を改善し得、クラスMへの切り替えは、結合価を改善し得る。
改変された抗体は、標準的な分子生物学的技術を介した発現、またはポリペプチドの化学合成を含む、当業者に公知の任意の技術によって作製され得る。組換え発現のための方法は、本明細書の別の箇所で扱われる。
D.単鎖抗体
単鎖可変断片(scFv)は、短い(通常セリン、グリシン)リンカーによって一緒に連結された、免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の可変領域の融合物である。このキメラ分子は、定常領域の除去およびリンカーペプチドの導入にもかかわらず、元の免疫グロブリンの特異性を保持する。この改変は通常、特異性をそのまま変更させないでおく。これらの分子は、ファージディスプレイを容易にするために歴史的に創出されたものであり、抗原結合性ドメインを単一ペプチドとして発現するのに高度に便利である。あるいは、scFvは、ハイブリドーマ由来のサブクローニングされた重鎖および軽鎖から直接創出され得る。単鎖可変断片は、完全抗体分子中に見出される定常Fc領域を欠き、従って、抗体を精製するために使用される共通の結合部位(例えば、プロテインA/G)を欠く。タンパク質Lはカッパ軽鎖の可変領域と相互作用するので、これらの断片は、タンパク質Lを使用してしばしば精製/固定化され得る。
可撓性リンカーは一般に、アラニン(alaine)、セリンおよびグリシンなどのヘリックス促進性およびターン促進性アミノ酸残基から構成される。しかし、他の残基も同様に機能し得る。Tangら(1996年)は、タンパク質リンカーライブラリーから単鎖抗体(scFv)のために誂えられたリンカーを迅速に選択する手段として、ファージディスプレイを使用した。重鎖および軽鎖可変ドメインの遺伝子が、変動する組成の18アミノ酸ポリペプチドをコードするセグメントによって連結された、ランダムリンカーライブラリーを構築した。scFvレパートリー(およそ5×106の異なるメンバー)を、線維状ファージ上にディスプレイさせ、ハプテンを用いた親和性選択に供した。選択されたバリアントの集団は、結合活性における顕著な増加を示したが、かなりの配列多様性を保持した。1054の個々のバリアントのスクリーニングにより、可溶性形態で効率的に産生された触媒的に活性なscFvが引き続いて得られた。配列分析により、VH C末端の2残基後のリンカー中の保存されたプロリン、ならびに選択された係留の唯一の共通の特徴としての他の位置における大量のアルギニンおよびプロリンが明らかになった。
本発明の組換え抗体は、受容体の二量体化または多量体化を可能にする配列または部分もまた含み得る。かかる配列には、J鎖と関連した多量体の形成を可能にする、IgA由来の配列が含まれる。別の多量体化ドメインは、Gal4二量体化ドメインである。他の実施形態では、これらの鎖は、2つの抗体の組合せを可能にする、ビオチン/アビジンなどの薬剤によって改変され得る。
別の実施形態では、単鎖抗体は、非ペプチドリンカーまたは化学的単位を使用して、受容体の軽鎖および重鎖を接続することによって創出され得る。一般に、軽鎖および重鎖は、別個の細胞において産生され、精製され、引き続いて適切な様式で一緒に連結される(即ち、重鎖のN末端が、適切な化学的ブリッジを介して軽鎖のC末端に付着される)。
架橋試薬は、2つの異なる分子、例えば安定化剤および凝固剤の官能基を結ぶ分子架橋を形成するために使用される。しかし、同じアナログの二量体もしくは多量体または異なるアナログから構成されるヘテロマー複合体が創出され得ることが企図される。段階的な様式で2つの異なる化合物を連結するために、望ましくないホモポリマーの形成を排除するヘテロ−二機能性クロスリンカーが使用され得る。
例示的なヘテロ−二機能性クロスリンカーは、2つの反応性基を含む:一方は第一級アミン基と反応し(例えば、N−ヒドロキシスクシンイミド)、他方はチオール基と反応する(例えば、ピリジルジスルフィド、マレイミド、ハロゲンなど)。第一級アミン反応性基を介して、このクロスリンカーは、1つのタンパク質(例えば、選択された抗体または断片)のリシン残基(複数可)と反応し得、チオール反応性基を介して、第1のタンパク質と既に結び付けられたクロスリンカーは、他のタンパク質(例えば、選択的薬剤)のシステイン残基(遊離スルフヒドリル基)と反応する。
血液中での合理的な安定性を有するクロスリンカーを使用することが好ましい。標的化剤および治療剤/予防剤を結合体化するために首尾よく使用され得る多くの型のジスルフィド結合含有リンカーが公知である。立体障害されたジスルフィド結合を含むリンカーは、in vivoでより高い安定性を与えることが判明し得、作用部位に達する前の標的化ペプチドの放出を防止する。従って、これらのリンカーは、連結剤の1つの群である。
別の架橋試薬は、隣接ベンゼン環およびメチル基によって「立体障害された」ジスルフィド結合を含む二機能性クロスリンカーであるSMPTである。ジスルフィド結合の立体障害は、組織および血液中に存在し得るグルタチオンなどのチオレートアニオンによる攻撃からこの結合を保護する機能を果たし、それにより、標的部位への付着した薬剤の送達の前のこの結合体の脱カップリングを防止するのに役立つと考えられる。
SMPT架橋試薬は、多くの他の公知の架橋試薬と同様、システインのSHまたは第一級アミン(例えば、リシンのイプシロンアミノ基)などの官能基を架橋する能力を与える。別の可能な型のクロスリンカーには、切断可能なジスルフィド結合を含むヘテロ−二機能性光反応性フェニルアジド、例えばスルホスクシンイミジル−2−(p−アジドサリチルアミド)エチル−1,3’−ジチオプロピオネートが含まれる。N−ヒドロキシ−スクシンイミジル基は第一級アミノ基と反応し、フェニルアジド(光分解の際に)は任意のアミノ酸残基と非選択的に反応する。
障害されたクロスリンカーに加えて、障害されていないリンカーもまた、本明細書に従って使用され得る。保護されたジスルフィドを含むとも生成するともみなされない他の有用なクロスリンカーには、SATA、SPDPおよび2−イミノチオランが含まれる(WawrzynczakおよびThorpe、1987年)。かかるクロスリンカーの使用は、当技術分野で十分理解される。別の実施形態は、可撓性リンカーの使用を含む。
米国特許第4,680,338号は、特にキレート剤、薬物、酵素、検出可能な標識などとの抗体結合体を形成するために、リガンドとアミン含有ポリマーおよび/またはタンパク質との結合体を産生するために有用な二機能性リンカーを記載している。米国特許第5,141,648号および同第5,563,250号は、種々の穏やかな条件下で切断可能な不安定な結合を含む切断可能な結合体を開示している。このリンカーは、対象の薬剤がリンカーに直接結合され得、切断が活性薬剤の放出を生じるという点で、特に有用である。特定の使用には、遊離アミノ基または遊離スルフヒドリル基を、抗体などのタンパク質または薬物に付加することが含まれる。
米国特許第5,856,456号は、単鎖抗体などの融合タンパク質を作製するためにポリペプチド構成要素を接続する際に使用するためのペプチドリンカーを提供している。このリンカーは、最大約50アミノ酸長であり、荷電アミノ酸(好ましくはアルギニンまたはリシン)の少なくとも1つの存在とその後のプロリンとを含み、より高い安定性および低減された凝集によって特徴付けられる。米国特許第5,880,270号は、種々の免疫診断および分離技術において有用な、アミノオキシ含有リンカーを開示している。
特定の実施形態では、この抗体は、細胞の内側での作用に適した組換え抗体である−かかる抗体は、「細胞内抗体」として公知である。これらの抗体は、細胞内タンパク質輸送を変更すること、酵素機能を妨害すること、ならびにタンパク質−タンパク質相互作用またはタンパク質−DNA相互作用をブロックすることなどの種々の機構によって、標的機能を妨害し得る。多くの方法で、それらの構造は、上で議論した単鎖抗体および単一ドメイン抗体の構造を模倣するまたはそれらと匹敵する。実際、単一転写物/単鎖は、標的細胞における細胞内発現を可能にする、およびまた細胞膜を横切るタンパク質移行をより実現可能なものにする、重要な特徴である。しかし、さらなる特徴が必要とされる。
細胞内抗体治療剤の実行に影響を与える2つの主要な問題は、細胞/組織標的化を含む送達、および安定性である。送達に関して、組織特異的送達、細胞型特異的プロモーターの使用、ウイルスベースの送達、および細胞透過性/膜輸送ペプチドの使用などの種々のアプローチが使用されてきた。安定性に関して、このアプローチは一般に、ファージディスプレイを含む方法を含むいずれかで強引にスクリーニングすることであり、これには、配列成熟もしくはコンセンサス配列の発達、または挿入物安定化配列(例えば、Fc領域、シャペロンタンパク質配列、ロイシンジッパー)およびジスルフィド置換/改変などのより特異的な改変が含まれ得る。
細胞内抗体が必要とし得るさらなる特徴は、細胞内標的化のためのシグナルである。細胞質、核、ミトコンドリアおよびERなどの細胞内領域へ細胞内抗体(または他のタンパク質)を標的化し得るベクターが設計されており、市販されている(Invitrogen Corp.;Persicら、1997年)。
細胞に進入するその能力によって、細胞内抗体は、他の型の抗体が達成できない可能性のあるさらなる使用を有する。本発明の抗体の場合、生存細胞中のMUC1細胞質ドメインと相互作用する能力は、MUC1 CDと関連する機能、例えばシグナル伝達機能(他の分子への結合)またはオリゴマー形成を妨害し得る。特に、かかる抗体が、MUC1二量体形成を阻害するために使用され得ることが企図される。
E.精製
特定の実施形態では、本発明の抗体は精製され得る。用語「精製された」は、本明細書で使用される場合、他の構成成分から単離可能な組成物を指すことを意図し、このタンパク質は、その天然に取得可能な状態に対して任意の程度まで精製されている。従って、精製されたタンパク質は、そのタンパク質が天然に存在し得る環境から離れたタンパク質もまた指す。用語「実質的に精製された」が使用される場合、この指定は、そのタンパク質またはペプチドが、組成物の主要な構成成分を形成する、例えば、組成物中約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%またはそれ以上のタンパク質を構成する、組成物を指す。
タンパク質精製技術は、当業者に周知である。これらの技術は、1つのレベルにおいて、ポリペプチド画分および非ポリペプチド画分への細胞環境の粗製分画を含む。他のタンパク質からポリペプチドを分離した後、対象のポリペプチドは、部分的または完全な精製(または均一になるまでの精製)を達成するために、クロマトグラフィーおよび電気泳動技術を使用してさらに精製され得る。純粋なペプチドの調製に特に適した分析方法は、イオン交換クロマトグラフィー、排除クロマトグラフィー;ポリアクリルアミドゲル電気泳動;等電点電気泳動である。タンパク質精製のための他の方法には、硫酸アンモニウム、PEG、抗体などによる沈殿、または熱変性による沈殿、その後の遠心分離;ゲル濾過、逆相、ヒドロキシルアパタイト(hydroxylapatite)およびアフィニティクロマトグラフィー;ならびにかかる技術と他の技術との組合せが含まれる。
本発明の抗体を精製する際に、原核生物または真核生物の発現系においてポリペプチドを発現させ、変性条件を使用してこのタンパク質を抽出することが望まれ得る。このポリペプチドは、ポリペプチドのタグ化部分に結合するアフィニティカラムを使用して、他の細胞構成成分から精製され得る。当技術分野で一般に公知のように、種々の精製ステップを実施する順番は変化され得、または特定のステップが省かれて、実質的に精製されたタンパク質またはペプチドの調製のための適切な方法をなおも生じ得ると考えられる。
一般に、完全な抗体は、抗体のFc部分に結合する薬剤(即ち、プロテインA)を使用して、分画される。あるいは、抗原が、適切な抗体を同時に精製および選択するために使用され得る。かかる方法は、カラム、フィルターまたはビーズなどの支持体に結合した選択剤を利用することが多い。これらの抗体は、支持体に結合され、夾雑物が除去され(例えば、洗浄され)、条件(塩、熱など)を適用することによって抗体が放出される。
タンパク質またはペプチドの精製の程度を定量するための種々の方法が、本開示の教示の下で当業者に公知である。これらには、例えば、活性画分の比活性を決定すること、またはSDS/PAGE分析によって画分内のポリペプチドの量を評価することが含まれる。画分の純度を評価するための別の方法は、画分の比活性を計算し、それを開始抽出物の比活性と比較し、こうして、純度の程度を計算することである。活性の量を示すために使用される実際の単位は、当然、精製の後に続く選択された特定のアッセイ技術に依存し、発現されたタンパク質またはペプチドが検出可能な活性を示すかどうかに依存する。
ポリペプチドの移動は、SDS/PAGEの異なる条件と共に、時折顕著に変動し得ることが公知である(Capaldiら、1977年)。従って、異なる電気泳動条件下で、精製されたまたは部分的に精製された発現産物の見かけの分子量が変動し得ることを理解すべきである。
IV.肺炎連鎖球菌感染の受動免疫および処置
A.製剤化および投与
人工的に獲得された受動免疫として公知の抗体の受動伝達は一般に、静脈内注射または筋内注射の使用を含む。かかる免疫は、短い期間にわたってのみ一般に持続するが、即座の保護を提供する。抗体は、注射に適した担体、即ち、無菌でシリンジに吸引可能な(syringeable)担体中に製剤化される。従って、本発明は、抗肺炎連鎖球菌抗体を含む医薬組成物およびかかる抗体を生成するための抗原を提供する。かかる組成物は、予防有効量または治療有効量の抗体またはその断片、および薬学的に許容される担体を含む。特定の実施形態では、用語「薬学的に許容される」は、連邦政府または州政府の規制機関によって承認され、動物、より具体的にはヒトでの使用に関して米国薬局方または他の一般に認識された薬局方中に列挙されていることを意味する。用語「担体」とは、治療剤と共に投与される希釈剤、賦形剤またはビヒクルを指す。かかる医薬担体は、無菌液体、例えば水、および石油、動物、植物または合成起源の油、例えばラッカセイ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などを含む油であり得る。水は、医薬組成物が静脈内投与される場合の特定の担体である。生理食塩水溶液ならびに水性デキストロース溶液およびグリセロール溶液もまた、液体担体として、特に注射が可能な溶液のために使用され得る。他の適切な医薬賦形剤には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが含まれる。
所望の場合、この組成物は、微量の湿潤剤もしくは乳化剤またはpH緩衝剤もまた含み得る。これらの組成物は、溶液、懸濁物、乳濁物、錠剤、丸剤、カプセル、散剤、徐放性製剤などの形態を取り得る。経口製剤は、標準的な担体、例えば医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、セルロース、炭酸マグネシウムなどを含み得る。適切な医薬薬剤の例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。かかる組成物は、患者への適切な投与のための形態を提供するように、適切な量の担体と一緒に、好ましくは精製形態で、予防有効量または治療有効量の抗体またはその断片を含む。この製剤は、経口、静脈内、動脈内、頬内(intrabuccal)、鼻腔内、噴霧、気管支吸入または機械的人工呼吸による送達であり得る投与様式に適合すべきである。
一般に、本発明の組成物の成分は、別々に、または単位剤形中で一緒に混合されて、例えば、活性薬剤の量を示すアンプルもしくはサシェ(sachette)などの密封容器中の乾燥凍結乾燥粉末もしくは水を含まない濃縮物として、供給される。組成物が注入によって投与される場合、この組成物は、無菌の医薬グレートの水または生理食塩水を含む注入瓶を用いて分配され得る。この組成物が注射によって投与される場合、それらの成分が投与前に混合され得るように、注射のための無菌水または生理食塩水のアンプルが提供され得る。
本発明の組成物は、中性形態または塩形態として製剤化され得る。薬学的に許容される塩には、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などから誘導されるようなアニオンと共に形成される塩、ならびにナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどから誘導されるようなカチオンと共に形成される塩が含まれる。
B.組合せ治療
本発明の抗体治療の有効性を増加させるために、この処置を、S.pneumonia感染を処置または防止するのに有効な他の薬剤、例えば抗生物質と組み合わせることが望まれ得る。このプロセスは、患者に本発明の抗体と他の薬剤(複数可)とを同時に投与することを含み得る。これは、両方の薬剤を含む単一の医薬組成物の使用によって、または2つの別個の組成物を同時に投与することによって達成され得、後者の場合、一方の組成物は本発明の抗体を含み、他方の組成物は第2の薬剤(複数可)を含む。
2つの治療は、いずれの順番で与えられてもよく、数分から数週間までの範囲の間隔で、他方の処置の前またはその後に与えられ得る。他の薬剤が別々に適用される実施形態では、一般に、これらの薬剤が、有利に組み合わされた効果を患者に対して発揮することがなおもできるように、顕著な期間が各送達の時点間に満了しないことを確実にする。かかる例では、互いの約12〜24時間以内に、より好ましくは互いの約6〜12時間以内に、両方の様式が投与され得ることが企図される。いくつかの例では、処置の時間を顕著に延長させることが望まれ得るが、この場合、それぞれの投与間に数日間(2、3、4、5、6または7)から数週間(1、2、3、4、5、6、7または8)が経過する。
種々の組合せが使用され得、本発明の抗体処置は、「A」であり、二次的処置は「B」である:
二次的薬剤の投与は、存在する場合にはその毒性を考慮に入れて、その薬物の一般的なプロトコールに従う。処置サイクルは、必要に応じて反復されることが予測される。
1.アモキシシリンおよびエリスロマイシン
アモキシシリン。アモキシシリン(INN)は、以前にはアモキシシリン(BAN)と呼ばれ、amoxと略称されるが、感受性微生物によって引き起こされる細菌感染を処置するために使用される、中程度のスペクトルの溶菌性β−ラクタム系抗生物質である。アモキシシリンは、経口投与後に他のβ−ラクタム系抗生物質よりも良好に吸収されるので、通常はこのクラス内の最適薬物である。アモキシシリンは、小児に処方される最も一般的な抗生物質の1つである。この薬物は、細菌細胞壁の合成を阻害することによって作用する。アモキシシリンは、グラム陽性細菌およびグラム陰性細菌の両方の細胞壁の主要構成成分を構成する線状ペプチドグリカンポリマー鎖間の架橋を阻害する。
アモキシシリンは、生理学的な範囲に、2つのイオン化可能な基を有する(アミドカルボニル基に対してアルファ位にあるアミノ基、およびカルボキシル基)。アモキシシリンは、広いスペクトルのβ−ラクタム系抗生物質、例えばペニシリンに対して耐性であるβ−ラクタマーゼ産生細菌による分解に対して感受性である。この理由のために、アモキシシリンは、β−ラクタマーゼインヒビターであり、1つの名称の下で市販されているクラブラン酸と組み合わされる場合が多い。これは、β−ラクタマーゼ耐性に対するその感受性を低減させることによって、有効性を増加させる。
アモキシシリン(Amoxicllin)は、以下を含むいくつかの感染の処置において使用される:急性中耳炎、連鎖球菌性咽頭炎、肺炎、皮膚感染、尿路感染、サルモネラ、ライム病およびクラミジア感染。アモキシシリンは、歯科治療を受けている高リスクの人々において細菌性心内膜炎を予防するため、脾臓を有さない人々においてstrep pneumococus感染を予防するため、ならびに炭疽の予防および処置の両方のために、使用される。アモキシシリンは、嚢胞性ざ瘡のための処置でもある。しかし、英国は、感染性心内膜炎予防のためにはその使用を推奨していない。これらの推奨は、感染の速度を変化させたようには見えなかった。
副作用は、他のベータ−ラクタム系抗生物質の副作用と同様である。副作用には、悪心、嘔吐、発疹および抗生物質関連大腸炎が含まれる。軟便(下痢)もまた生じ得る。より稀ではあるが、患者の報告として、副作用には、精神的変化、もうろう状態、不眠症、錯乱、不安、光および音に対する敏感性、ならびに不明確な思考が含まれる。即座の医療が、これらの副作用の最初の徴候の際に必要とされる。
アモキシシリンに対するアレルギー反応の発生は、非常に突然で激烈であり得る−緊急の医学的な配慮が、可能な限り素早く求められるべきである。かかる反応の初期の発生は、精神状態における変化、激烈な掻痒感を伴う皮膚発疹(指先および鼠径部周辺領域で始まることが多く、迅速に広がる)ならびに発熱、悪心および嘔吐の感覚で始まる場合が多い。僅かであっても疑わしいと思われる任意の他の症状は、非常に深刻に受け止めるべきである。しかし、より軽度のアレルギー症状、例えば発疹は、処置の間の任意の時点において生じ得、実に処置の最大1週間後に止んだ。アモキシシリンに対してアレルギーである幾人かの人々について、これらの副作用は致命的であり得る。1週間超にわたるアモキシシリン/クラブラン酸組合せの使用は、幾人かの患者において軽度の肝炎を引き起こした。アモキシシリンの急性過剰投与を摂取した低年齢小児は、嗜眠、嘔吐および腎機能不全を示した。
三水和物形態のアモキシシリンは、経口使用のために、カプセル、噛み砕けるおよび分散性の錠剤+シロップおよび小児科懸濁物として、ならびに静脈内投与のためにナトリウム塩として(IV製剤は米国では入手できないが)、入手可能である。アモキシシリンは、最も一般的には経口摂取される。液体形態は、患者が錠剤またはカプセルを摂取するのに困難を見出し得る場合に、有益である。
エリスロマイシン。エリスロマイシンは、ペニシリンと類似またはペニシリンより僅かに広い抗菌スペクトルを有するマクロライド系抗生物質であり、ペニシリンに対するアレルギーを有する人々に使用される場合が多い。気道感染について、エリスロマイシンは、マイコプラズマおよびレジオネラ症を含む非定型生物のより良い適用範囲を有する。エリスロマイシンは、Eli Lilly and Companyによって最初に市販され、EES(エリスロマイシンエチルスクシネート、一般に投与されるエステルプロドラッグ)として今日一般に公知である。
構造において、この大環状化合物は、10個の不斉中心および2つの糖(L−クラジノース(L−cladinose)およびD−デソサミン(D−desosamine))を有する14員ラクトン環を含み、これにより、この化合物が合成方法を介して産生されることが非常に困難になっている。エリスロマイシンは、放線菌Saccharopolyspora erythraeaの1つの株から産生される。
この薬物をカバーする米国特許第2,653,899号は、1953年に特許付与された。この産物は、商品名Ilosone(これが元々収集されたフィリピン地域のIloiloにちなむ)の下で、1952年に発売された。エリスロマイシンは、以前にはIlotycinとも呼ばれた。
エリスロマイシンAおよび抗菌剤としてのその活性の発見以来数年にわたり、これを実験室で合成するための多くの試みがなされてきた。しかし、10個の立体特異的炭素およびいくつかの点の別個の置換の存在が、エリスロマイシンAの全合成を手ごわい課題にしている。エリスロマイシンの関連構造および前駆体、例えば6−デオキシエリスロノリドBの完全合成が達成されており、異なるエリスロマイシンおよび他のマクロライド系抗菌剤のなし得る合成のための道を与えている。しかし、Woodwardおよび共同研究者は、1981年にエリスロマイシンAの合成を首尾よく完了した。
エリスロマイシンは、腸溶性錠剤、持続放出カプセル、経口懸濁物、点眼用溶液、軟膏、ゲルおよび注射において利用可能である。商品名には、Robimycin、E−Mycin、E.E.S.Granules、E.E.S.−200、E.E.S.−400、E.E.S.−400 Filmtab、Erymax、Ery−Tab、Eryc、Ranbaxy、Erypar、EryPed、Eryped 200、Eryped 400、Erythrocin Stearate Filmtab、Erythrocot、E−Base、Erythroped、Ilosone、MY−E、Pediamycin、Zineryt、Abboticin、Abboticin−ES、Erycin、PCE Dispertab、Stiemycine、AcnasolおよびTilorythが含まれる。
エリスロマイシンはモチリンアゴニストであるので、下痢、悪心、腹部疼痛および嘔吐などの胃腸障害は非常に一般的である。これに起因して、エリスロマイシンは、第1選択の薬物として処方されない傾向がある。しかし、エリスロマイシンは、この運動性促進効果に起因して、胃不全麻痺を処置する際に有用であり得る。静脈内エリスロマイシンは、胃内容物を一掃するための補助剤として、内視鏡検査においても使用され得る。より重篤な副作用には、トルサード・ド・ポアンツを含む延長したQTc間隔を有する不整脈、および可逆的聴覚消失が含まれる。アレルギー反応は、じんま疹からアナフィラキシーまでの範囲である。胆汁うっ滞、スティーブンス・ジョンソン症候群および中毒性表皮壊死症は、生じ得るいくつかの他の稀な副作用である。
エリスロマイシンに対する曝露(特に、抗菌用量での長期過程、およびまた母乳栄養を介した場合)は、低年齢の乳児における幽門狭窄症の増加した可能性と関連付けられてきた。低年齢の乳児における哺乳不耐性に使用されるエリスロマイシンは、肥厚性幽門狭窄症とは関連付けられてこなかった。
エリスロマイシンエストレートは、上昇した血清グルタミン酸−オキサロ酢酸トランスアミナーゼの形態で、妊娠女性における可逆的な肝毒性と関連付けられており、妊娠の間には推奨されない。いくつかの証拠が、他の集団における類似の肝毒性を示唆している。
エリスロマイシンエストレートは、中枢神経系にも影響を与えて、精神病性反応、悪夢および寝汗を引き起こし得る。これはまた、腸細菌叢に対するその影響に起因して、組み合わされた経口避妊丸剤の有効性を変更し得る。エリスロマイシンは、チトクロムP450系のインヒビターであり、これは、エリスロマイシンが、この系によって代謝される他の薬物、例えばワルファリンのレベルに対する迅速な影響を有し得ることを意味している。
エリスロマイシンは、特により高い濃度で殺菌活性を示すが、この機構は、完全には理解されていない。細菌70s rRNA複合体の50Sサブユニットに結合することによって、生活または複製に極めて重要なタンパク質合成ならびに引き続く構造および機能プロセスが阻害される。エリスロマイシンは、アミノアシル転位を妨害し、rRNA複合体のA部位において結合したtRNAの、rRNA複合体のP部位への転移を防止する。この転位がない場合、A部位は占有されたままであり、従って、入ってくるtRNAおよびその付着したアミノ酸の、新生ポリペプチド鎖への付加が阻害される。エリスロマイシンは、機能的に有用なタンパク質の産生を妨害し、これがこの抗菌作用の基礎である。
2.クラリスロマイシン、アジスロマイシン、フルオロキノロンおよびセフロキシム
クラリスロマイシン。クラリスロマイシンは、咽頭炎、扁桃炎、急性上顎洞炎、慢性気管支炎の急性細菌性増悪、肺炎(特に、Chlamydia pneumoniaeまたはTWARに関連する非定型肺炎)、皮膚および皮膚構造の感染を処置するために使用されるマクロライド系抗生物質である。さらに、クラリスロマイシンは、レジオネラ症、Helicobacter pyloriおよびライム病を処置するために時々使用される。クラリスロマイシンは、いくつかの商品名、例えば、Crixan、Clarac、Biaxin、Klaricid、Klacid、Klaram、Klabax、Klacid、Claripen、Clarem、Claridar、Fromilid、Clacid、Clacee、Vikrol、InfexおよびClariwin、Resclarの下で入手可能である。
クラリスロマイシンは、日本の製薬会社Taisho Pharmaceuticalにおいて、1970年代に研究者によって発明された。この製品は、悪心および胃痛などの副作用を引き起こす、消化管における酸不安定性を経験しないバージョンの抗生物質エリスロマイシンを開発する努力を介して出現した。Taishoは、1980年前後にこの薬物に対する特許保護を求めて出願を行い、引き続き、Clarithと呼ばれるその薬物の商標付きバージョンを、1991年に日本市場に導入した。1985年に、Taishoは、国際的な権利のために米国の会社Abbott Laboratoriesと提携し、Abbottもまた、1991年10月にBiaxinについてのFDAの承認を獲得した。この薬物は、2004年には欧州で、2005年半ばには米国でジェネリックになった。
抗細菌スペクトルはエリスロマイシンと同じであるが、クラリスロマイシンは、Mycobacterium avium複合体(MAV)、M.lepraeおよび非定型マイコバクテリアに対して活性である。
クラリスロマイシンは、そのタンパク質合成を妨害することによって、細菌の増殖を防止する。クラリスロマイシンは、細菌リボゾームのサブユニット50Sに結合し、従って、ペプチドの翻訳を阻害する。クラリスロマイシンは、エリスロマイシンと類似の抗菌スペクトルを有するが、特定のグラム陰性細菌、特にLegionella pneumophilaに対してより有効である。この静菌効果に加えて、クラリスロマイシンは、Haemophilus influenzae、肺炎連鎖球菌およびNeisseria gonorrhoeaeなどの特定の株に対して殺菌効果もまた有する。
エリスロマイシンとは異なり、クラリスロマイシンは、酸安定性であり、従って、胃酸から保護されることなしに経口摂取され得る。クラリスロマイシンは容易に吸収され、ほとんどの組織および貪食細胞中に拡散される。貪食細胞における高い濃度に起因して、クラリスロマイシンは、感染の部位に能動的に輸送される。能動的な食作用の間に、大きい濃度のクラリスロマイシンが放出される。組織中のクラリスロマイシンの濃度は、血漿中よりも10倍を上回って高くなり得る。最高濃度は、肝臓および肺組織中で見出された。
クラリスロマイシンは、極めて迅速な初回通過肝代謝を有する。しかし、クラリスロマイシンの代謝物である14−ヒドロキシクラリスロマイシンは、クラリスロマイシンのほぼ2倍活性であり、クラリスロマイシンの5時間と比較して、7時間の半減期を有する。クラリスロマイシンおよびその代謝物の排除の主要経路は、尿および胆汁排出である。そのクラスの全ての薬物のうち、クラリスロマイシンは、50%で最良のバイオアベイラビリティを有し、これにより、経口投与を受け入れるようになっている。
最も一般的な副作用は、下痢、悪心、極度の易刺激性、腹部疼痛および嘔吐を含む胃腸、顔面腫脹である。あまり一般的でない副作用には、頭痛、幻覚(聴覚および視覚)、めまい/動揺病、発疹、クラリスロマイシンを摂取している間中持続する金属味を含む、匂いおよび味の感覚における変更、が含まれる。口渇症、パニックおよび/または不安が襲い、悪夢もまた、あまり頻繁ではないものの報告されている。より重篤な例では、黄疸、硬変症、および腎不全を含む腎臓の問題を引き起こすことが公知である。不整な脈、胸部疼痛および息切れもまた、この薬物を摂取している間に報告されている。
中枢神経系におけるクラリスロマイシンの有害作用には、めまい、聴覚毒性および頭痛が含まれるが、せん妄および躁病もまた、一般的でない副作用である。血液血清コレステロールレベルを低減させるために使用される薬物であるある種のスタチンと一緒に摂取する場合、筋肉疼痛が生じ得る。これらの抗生物質からの身体中の増加した酵母産生に起因して、口腔カンジダ症のリスクもまた存在する。
アジスロマイシン。アジスロマイシンは、マクロライド系抗生物質のサブクラスであるアザライド(azalide)である。アジスロマイシンは、世界のベストセラーの抗生物質の1つであり、米国では名称Zithromaxの下で市販され、世界中では種々の商品名の下でおよびジェネリック表示で市販される。アジスロマイシンはエリスロマイシンから誘導される;しかし、アジスロマイシンは、メチル置換された窒素原子がラクトン環中に組み込まれ、従って15員のラクトン環を形成しているという点で、エリスロマイシンとは化学構造が異なる。
アジスロマイシンは、ほとんどの場合中耳感染、連鎖球菌性咽頭炎、肺炎、腸チフスおよび副鼻腔炎を引き起こす細菌感染である、特定の細菌感染を処置または予防するために使用される。近年、アジスロマイシンは、乳児およびより弱い免疫系を有する者において細菌感染を予防するために主に使用されている。アジスロマイシンは、非淋菌性尿道炎、クラミジアおよび子宮頸管炎などの特定の性行為感染症に対しても有効である。最近の研究は、アジスロマイシンが、遅発性喘息に対しても有効であることを示しているが、これらの知見は議論の余地があり、広く受け入れられているわけではない。
アジスロマイシンは、急性中耳炎、連鎖球菌性咽頭炎、旅行者下痢症などの胃腸感染、肺炎などの気道感染、蜂巣炎、バベシア症、バルトネラ、軟性下疳、クラミジア、コレラ、鼠径リンパ肉芽腫症、レプトスピラ症、ライム病、マラリア、Mycobacterium avium複合体、Neisseria meningitidis、骨盤内炎症性疾患、百日咳、つつが虫病、梅毒、トキソプラスマ症およびサルモネラを含む、多くの異なる感染を処置するために使用される。アジスロマイシンは、細菌性心内膜炎および性的暴行後のある種の性行為感染病を予防するために使用される。
アジスロマイシンは、エリスロマイシンと類似の抗菌スペクトルを有するが、特定のグラム陰性細菌、特にHaemophilus influenzaeに対してより有効である。アジスロマイシン耐性が記載されており、多くの地域で風土性である。アジスロマイシンは、MRSAに対しては著しく無効である。アジスロマイシンは、アーテスネートまたはキニーネと組み合わせて使用した場合、マラリアに対して有効であることが示されている;これのための最適な用量は未だ知られていない。
最も一般的な副作用は胃腸である:下痢(5%)、悪心(3%)、腹部疼痛(3%)および嘔吐。患者の1%未満は、副作用に起因してこの薬物の摂取を停止する。神経過敏、皮膚科学的反応およびアナフィラキシーが報告されている。全ての抗菌剤と同様に、偽膜性大腸炎が、アジスロマイシン治療の間に、およびその後最大数週間まで生じ得る。この薬物は、経口避妊薬の有効性を妨害し得る;他の形態の避妊が、処置期間の間に必要とされ得る。アジスロマイシン懸濁物は、好ましくない味を有するので、これを吐き出し得る低年齢、即ち2〜5歳の小児に投与することは困難であり得る。
偶発患者が、胆汁うっ滞性肝炎またはせん妄を発症させている。乳児における偶発的な静脈内過量投与は、重症の心ブロックを引き起こし、残存脳症を生じる。
アジスロマイシンは、そのタンパク質合成を妨害することによって、細菌の増殖を防止する。アジスロマイシンは、細菌リボゾームの50Sサブユニットに結合し、従って、mRNAの翻訳を阻害する。核酸合成は影響されない。
エリスロマイシンとは異なり、アジスロマイシンは、酸安定性であり、従って、胃酸からの保護の必要なしに経口摂取され得る。アジスロマイシンは容易に吸収されるが、その吸収は空の胃でより大きい。成人におけるピーク濃度までの時間は、経口剤形については2.1〜3.2時間であり、用量の1〜2時間後である。貪食細胞における高い濃度に起因して、アジスロマイシンは、感染の部位に能動的に輸送される。能動的な食作用の間に、大きい濃度のアジスロマイシンが放出される。組織中のアジスロマイシンの濃度は、血漿中よりも50倍を上回って高くなり得る。これは、イオントラッピングおよび高い脂質溶解性に起因する(分布の体積が低すぎる)。
アジスロマイシンの半減期は、大きい単一用量が投与されることを可能にし、および数日間にわたって感染組織中で静菌レベルをなおも維持することを可能にする。アジスロマイシンの新たな延長放出製剤「Zmax」、A−Maxは、単一の2g用量でこの薬物を放出する液体経口懸濁物である。Zmaxのマクロライド技術を用いると、これは、薬物が胃を回避するのを可能にし、高用量アジスロマイシンの胃腸副作用を低減させる。
アジスロマイシンは、錠剤または経口懸濁物で一般に投与される(1用量バージョンは、2005年に入手可能になった)。アジスロマイシンはまた、静脈内注射のために、および1%点眼用溶液中で入手可能である。錠剤は、250mgおよび500mgの用量で供給される。経口懸濁物は、100mg/5mLおよび200mg/5mLの強度で供給される。250mg錠剤は、6個の包装で分配される場合が多く、一般に「Z−Pak」と呼ばれるが、500mg錠剤は、3日間の処置として意図される3個の錠剤のパック即ち「Tri−Pak」で、一般に市販される。経口アジスロマイシン治療の一般的な用量は、処置の第1日目の薬物療法と、さらなる4日間または5日間にわたる引き続く処置との「二重用量」からなる。「Z−Pak」を用いると、これは、第1日目の2つの250mg錠剤(合計500mg)および次の4日間にわたる1日1回の1つの250mg錠剤を意味する。
Pfizerの商品名、即ちZithromaxのアジスロマイシン錠剤は、アジスロマイシン一水和物および以下の不活性成分:ブチル化ヒドロキシトルエン、リン酸カルシウム、カーミン、コロイド二酸化ケイ素、FD&C赤#40レーキ、FD&C黄#6レーキ、ヒプロメロース(2910、15cP)、ラクトース一水和物、ステアリン酸マグネシウム、アルファ化デンプン、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、二酸化チタンおよびトリアセチンを含む、斑ピンク色の、割線なしの、フィルムコートされた改変卵型形状の錠剤である。
フルオロキノロン。キノロンは、広いスペクトルの合成抗生物質のファミリーである。用語キノロン(複数可)とは、強力な合成化学療法抗細菌剤を指す。第1世代のキノロンは、ヒトにおける尿路感染の処置のために、1962年にナリジクス酸の導入で開始する。ナリジクス酸は、クロロキン合成における試みの間に、留出物において、George Lesherおよび共同研究者によって発見された。これらは、細菌のDNAが巻き戻しおよび複製するのを防止する。
キノロンは、他の抗生物質クラスと比較して、MRSAおよびClostridium difficileによるコロニー形成を引き起こす最も高いリスクを有する。この理由のために、フルオロキノロンの一般的な回避が、入手可能な証拠および臨床ガイドラインに基づいて推奨される。臨床使用におけるキノロンの大多数は、典型的には6位またはC−7位において中心環系に付着したフッ素原子を有する、フルオロキノロンのサブセットに属する。呼吸器障害の処置のためのフルオロキノロンの有効性が他の抗生物質クラスの有効性と類似しているかどうかに関しては、なおも論争が起こっている。
肺炎に対するフルオロキノロンの使用は増加しつつあり、これにより、フルオロキノロンに対する細菌耐性も増加しつつある。フルオロキノロンの処方の大部分が不適切であり、キノロンを処方された人々の4%未満が、臨床ガイドラインに従って適切である。カナダにおける臨床ガイドラインは、特定の併存症状態を有する患者などの少数の患者、例えばCOPDの病歴を有する患者または抗生物質が最近使用された患者における、肺炎の外来処置についてのみフルオロキノロンを推奨した。市中感染性肺炎の重症形態のために、これらのフルオロキノロンは、改善された処置速度と関連するが、他の抗生物質クラス間での死亡率における差異は見出されない。
フルオロキノロンは、急性副鼻腔炎に対する第1選択の抗生物質としては推奨されないが、これは、この状態が通常は自己限定的であり、他の抗生物質クラスと比較して、リスクが利益をしのぐからである。
フルオロキノロンを含む抗生物質は、気管支炎のいくつかの症例において有効であり得る。しかし、気管支炎症例の約5〜10%だけが細菌感染によって引き起こされる;気管支炎のほとんどの症例は、ウイルス感染によって引き起こされ、自己限定的であり、数週間で自然に消散する。抗生物質は、ほとんどの症例において、自然に消散しなかった症状を有する者に限定されることが推奨されてきた。
フルオロキノロンは、尿生殖器感染に使用される場合が多い;一般に、フルオロキノロンは、他の抗生物質レジメンが失敗した後にのみ推奨される。しかし、患者が入院の必要があり得る腎盂腎炎または細菌性前立腺炎の重篤な急性症例について、フルオロキノロンが第1選択の治療として推奨される。前立腺炎は、Stanford Universityの卓越した泌尿器科医Thomas Stamey博士によって「無知による病名のゴミ箱」と命名されている。泌尿器科医の最も権威ある参考テキストであるCampbell’s Urologyは、前立腺炎を有する全ての患者のうち約5%のみが細菌性前立腺炎を有し、この細菌前立腺炎が、抗生物質によって少なくとも短期間で「治癒」できると同定している。言い換えると、前立腺炎を有する男性の95%は、任意の同定可能な細菌感染を実際には有さないので、抗生物質単独による治癒の望みがほとんどない。
一般に、フルオロキノロンは、十分に耐容され、ほとんどの副作用は軽度〜中程度である。時々、重篤な有害作用が生じる。他の抗生物質薬物クラスよりも、フルオロキノロンを用いたときにより一般的に発生する重篤な有害作用のいくつかには、CNSおよび腱の毒性が含まれる。現在市販されているキノロンは、他の抗菌剤クラスと類似の安全性プロファイルを有する。フルオロキノロンは、QTc間隔の延長および心不整脈、痙攣、腱断裂、トルサード・ド・ポアンツならびに低血糖と時折関連する。
これらの有害反応は、全てのキノロンのクラスエフェクトである;しかし、特定のキノロンは、特定の器官に対する増加した毒性とより強く関連する。例えば、モキシフロキサシンは、QTc延長のより高いリスクを有し、ガチフロキサシンは、障害された血液糖レベルに最も頻繁に関連付けられてきたが、全てのキノロンがこれらのリスクを有する。ある種のキノロンは、これらの有害事象に起因して、市場から回収された(例えば、スパルフロキサシンは、光毒性およびQTc延長と関連し、血小板減少症および腎炎がトスフロキサシンで見られ、肝毒性がトロバフロキサシンで見られた)。コルチコステロイドの同時使用が、キノロン関連の腱断裂のほぼ3分の1において存在する。有害事象のリスクは、投薬量が適切に調整されない場合、例えば、腎不全が存在する場合に、さらに増加する。
重篤な事象は、治療的用量レベルでのまたは急性過剰投与を用いた治療的使用の間に生じ得る。治療的用量では、重篤な事象には以下が含まれる:CNS毒性、心血管毒性、腱/関節毒性、および稀ではあるが肝毒性。肝臓疾患を有する患者には注意が必要とされる。急性過剰投与において生じ得る事象は稀であり、腎不全およびてんかんが含まれる。感受性群の患者、例えば小児および高齢者は、治療的使用の間に、有害反応のリスクがより高い。有害反応は、フルオロキノロン治療の間ならびにフルオロキノロン治療が完了した後に顕在化し得る。
CNSは、フルオロキノロン媒介性の神経毒性の重要な標的である。医師によるイタリアでの有害事象の報告は、有害な神経学的影響および精神医学的影響を引き起こすことに関して、上位3つの処方薬物の中にフルオロキノロンを示した。これらの神経精神医学的影響には、振戦、錯乱、不安、不眠症、激越および重症症例では精神病が含まれる。モキシフロキサシンは、CNS毒性を引き起こすことに関して、キノロンのうちでも最悪になっている。
フルオロキノロンクラスの基本的ファルマコフォアまたは活性構造は、キノリン環系に基づく。C6におけるフッ素原子の付加は、第1世代のキノロンから後続世代のフルオロキノロンを識別するものである。C6フッ素原子の付加は、このクラスの抗細菌活性に必要ないことがその後実証された(1997年頃)。
キノリン環に対して行われた種々の置換は、今日利用可能な多数のフルオロキノロン薬物の開発を生じた。各置換は、いくつかの特定の有害反応、ならびに細菌感染に対する増加した活性と関連するが、キノリン環はそれ自体で、重症なおよびさらには致死的な有害反応と関連していた。
セフロキシム。セフロキシムは、1977年以来米国においてCeftinとして広く入手可能であった第2世代のセファロスポリン系抗生物質である。GlaxoSmithKlineは、名称Zinnatの下で、英国(ならびに他の国、例えば、オーストラリア、トルコ、イスラエル、バングラディッシュ、タイ、ハンガリーおよびポーランド)でこの抗生物質を販売している。
他のセファロスポリンと同様、第2世代として、セフロキシムは、ベータ−ラクタマーゼに対してあまり感受性でないものの、Haemophilus influenzae、Neisseria gonorrhoeaeおよびライム病に対するより高い活性を有し得る。他の第2世代のセファロスポリンと異なり、セフロキシムは血液脳関門を横切ることができる。
セフロキシムは、一般には十分に耐容され、副作用は通常一過性である。セフロキシムは、食物と共に消化される場合、より良好に吸収され、かつ下痢、悪心、嘔吐、頭痛/片頭痛、めまいおよび腹部疼痛の、その最も一般的な副作用を引き起こす可能性が低い。
セファロスポリンとペニシリンとの間に、広く引き合いに出される10%の交差アレルギーリスクが存在するが、最近の評価は、セフロキシムおよびいくつかの他の第2世代またはそれ以降のセファロスポリンについて、交差アレルギーの増加したリスクがないことを示している。
3.バンコマイシンおよびレボフロキサシン
バンコマイシン。バンコマイシン(INN)は、グラム陽性細菌によって引き起こされる感染の予防および処置において使用されるグリコペプチド抗生物質である。バンコマイシンは、他の抗生物質による処置が失敗した後にのみ使用される「最後の手段」の薬物として伝統的に準備されてきたが、バンコマイシン耐性生物の出現は、バンコマイシンが、POおよびIVで利用可能なリネゾリド(Zyvox)ならびにダプトマイシン(Cubicin)IVならびにキヌプリスチン/ダルホプリスチン(Synercid)IVによってこの役割からますます取って代わられていることを意味する。
バンコマイシンは、伝道者によってボルネオの奥地のジャングルから採取された土壌試料から、Edmund Kornfeld(Eli Lillyで働いていた)によって1953年に最初に単離された。バンコマイシンを生成した生物は、最終的にAmycolatopsis orientalisと命名された。バンコマイシンに関する元の効能は、ペニシリン耐性Staphylococcus aureusの処置のためであった。すぐに明らかになった1つの利点は、ブドウ球菌が、バンコマイシンを含む培養培地中での連続継代にもかかわらず、顕著な耐性を発生させなかったことである。ブドウ球菌によるペニシリン耐性の迅速な発生は、1958年にFDAによる承認のためにファストトラックで審査される化合物を導いた。Eli Lillyは、塩酸バンコマイシンを、Nucleus、インドから、商標Vancocinの下でおよびCOVANCとして、最初に市販した。
バンコマイシンは、いくつかの理由で、Staphylococcus aureusに対する第1選択の処置には決してならなかった。第1に、バンコマイシンは経口バイオアベイラビリティが低い。また、バンコマイシンは、ほとんどの感染に対して静脈内で与えられなければならない。さらに、非MRSAブドウ球菌に対するより良い活性を有するβ−ラクタマーゼ耐性半合成ペニシリン、例えばメチシリン(およびその後継、ナフシリンおよびクロキサシリン)が引き続いて開発された。
経口形態のバンコマイシンは元々、Clostridium difficile誘導性の偽膜性大腸炎の処置のために、1986年にFDAによって承認された。これは、血液中に経口吸収されることはなく、胃腸管中に留まってC.difficleを根絶する。この製品は、米国ではViroPharmaによって現在市販されている。
バンコマイシン生合成は、異なる非リボソーム型タンパク質シンターゼ(NRPS)を介して生じる。これらの酵素は、その7つのモジュールを介したアセンブリの間にアミノ酸配列を決定する。バンコマイシンがNRPSを介してアセンブルされる前に、アミノ酸が最初に改変される。L−チロシンは、β−ヒドロキシクロロチロシン(β−hTyr)および4−ヒドロキシフェニルグリシン(HPG)残基になるように改変される。他方、アセテートは、3,5ジヒドロキシフェニルグリシン環(3,5−DPG)を導出するために使用される。
非リボソーム型ペプチド合成は、タンパク質を装着し得、活性化ドメインの接触部位におけるアミド結合の形成を介して1アミノ酸ずつそのタンパク質を延長させ得る、別個のモジュールを介して生じる。各モジュールは典型的に、アデニル化(A)ドメイン、ペプチジル担体タンパク質(PCP)ドメイン、および縮合(C)または伸長ドメインからなる。Aドメインでは、特定のアミノ酸が、チオエステル化によって4’ホスホパンテテイン補因子に付着したアミノアシルアデニル酸酵素複合体へと変換されることによって活性化される。次いで、この複合体は、AMPの駆逐によってPCPドメインに転移される。このPCPドメインは、成長中のペプチド鎖およびその前駆体を装着するために、付着した4’−ホスホパンテテイン(4’−phosphopantethein)補欠分子族を使用する。バンコマイシンの生合成では、1つの立体化学から別の立体化学へとアミノ酸を異性化するために使用されるエピマー化(E)ドメインなどのさらなる改変ドメインが存在し、チオエステラーゼドメイン(TE)は、チオエステラーゼ切断を介した分子の環化および放出のための触媒として使用される。
線状ヘプタペプチド分子が合成された後に、バンコマイシンは、生物学的に活性になるために、テーラリング酵素と呼ばれる別個の酵素によって、トランスで、酸化的架橋およびグリコシル化などのさらなる改変を受ける必要がある。この線状ヘプタペプチドを変換するために、8つの酵素が使用される。これらの酵素の助けにより、β−ヒドロキシル基が、チロシン残基2および6に導入され、カップリングが、環5および7、環4および6ならびに環4および2について生じる。さらに、ハロペルオキシダーゼが、酸化的プロセスを介して環2および6に塩素原子を付着させるために使用される。
バンコマイシンは、グラム陽性細菌における適切な細胞壁合成を阻害することによって作用する。グラム陰性細菌がその細胞壁を産生する異なる機構およびグラム陰性生物の外膜に進入することに関する種々の因子に起因して、バンコマイシンは、グラム陰性細菌(いくつかの非淋菌性種のNeisseriaを除く)に対して活性ではない。
大きな親水性分子は、NAM/NAG−ペプチドの末端D−アラニル−D−アラニン部分と水素結合相互作用を形成することができる。通常の状況下では、これは5点の相互作用である。D−Ala−D−Alaに対するバンコマイシンの結合は、2つの方法で細胞壁合成を防止する。バンコマイシンは、細菌細胞壁の骨格鎖を形成するN−アセチルムラミン酸(NAM)およびN−アセチルグルコサミン(NAG)の長いポリマーの合成を防止し、お互いとの架橋から骨格ポリマーが何とか形成するのを防止する。
バンコマイシンレベルは通常モニタリングされるが、有害事象を低減させる試みにおいて、これの価値は論議の域を超えない。ピークレベルおよびトラフレベルは通常モニタリングされ、研究目的のために、曲線下の面積もまた時々使用される。毒性は、トラフ値を見ることによって最も良くモニタリングされる。IVバンコマイシンと関連する一般的な有害薬物反応(患者の≧1%)には以下が含まれる:重症および/または血栓性静脈炎であり得る局所疼痛。
腎臓および聴力に対する損傷は、初期の不純なバージョンのバンコマイシンの副作用であり、これらは、1950年代半ばに実施された臨床試験において顕著であった。バンコマイシンのより純粋形態を使用した後期の試験は、腎毒性が希発の有害作用(患者の0.1〜1%)であるが、これが、アミノグリコシドの存在下で強調されることを見出した。
稀な有害作用(患者の<0.1%)には以下が含まれる:アナフィラキシー、中毒性表皮壊死症、多形紅斑、レッドマン症候群(以下を参照のこと)、重複感染、血小板減少症、好中球減少症、白血球減少症、耳鳴症、めまいおよび/または聴覚毒性(以下を参照のこと)。
バンコマイシンは、患者において血小板反応性抗体を誘導し得、重症血小板減少症ならびに鮮紅色点状出血、斑状出血および湿った紫斑(wet purpura)を伴う出血を導くことが最近強調されている。
バンコマイシンは、腸の内層を横切らないので、全身治療のためには静脈内(IV)で与えなければならない。バンコマイシンは、胃腸粘膜を横切った分配がされにくい大きな親水性分子である。経口バンコマイシン治療のための唯一の効能は、偽膜性大腸炎の処置にあり、このときバンコマイシンは、結腸中の感染の部位に到達するために、経口で与えなければならない。経口投与後、バンコマイシンの糞便濃度は、ほぼ500μg/mLである(C.difficileの感受性株は、≦2μg/mLの平均阻害濃度を有する)。
ネブライザーを介して、上部および下部気道の種々の感染の処置のために、吸入バンコマイシンもまた使用されてきた(認可外)。
バンコマイシンの腐食性の性質により、末梢ラインを使用するIV治療は、血栓性静脈炎のリスクのあるものになっている。理想的には、中心ライン、PICCまたは注入ポートを使用すべきである。
バンコマイシンは、聴覚毒性を経験した腎障害患者における上昇した血清レベルの初期の研究者による観察に基づき、引き続いて医学文献中の症例報告を通じて、腎毒性および聴覚毒性薬物として伝統的に検討されてきた。しかし、バンコマイシンの使用が、1970年代に始まるMRSAの広がりと共に増加するにつれ、以前に報告された比率の毒性は観察されなくなっていると認識された。これは、この薬物の初期製剤中に存在する不純物の除去に帰せられたが、これらの不純物は、毒性について特には試験されなかった。
バンコマイシン関連腎毒性の症例報告の蓄積の引き続く再検討により、患者の多くが、他の公知のネフロトキシン、特にアミノグリコシドもまた受けていたことが見出された。残りのほとんどは、バンコマイシンと観察された腎機能不全との明確な関連付けを妨げた、他の交絡因子またはそのような可能性に関する不十分なデータを有した。最も秩序立って妥当な調査は、バンコマイシン誘導性腎毒性の実際の発生率が、ほぼ5〜7%であることを示している。これに脈絡を持たせるために、類似の比率の腎機能不全が、2つの通説では非腎毒性の抗生物質であるセファマンドールおよびベンジルペニシリンについて報告されている。
さらに、腎毒性をバンコマイシン血清レベルに関連付ける証拠は食い違っている。いくつかの研究は、トラフレベルが10μg/mLを超えた場合に増加した比率の腎毒性を示したが、他の研究は、これらの結果を再現しなかった。腎毒性は、「治療」範囲内の濃度でも同様に観察された。本質において、ネフロトキシンとしてのバンコマイシンの評判は誇張されており、腎毒性効果が生じる場合に、バンコマイシン血清レベルを特定の範囲内に維持することがその腎毒性効果を防止することは、実証されていない。
バンコマイシン誘導性の聴覚毒性の比率を確立するための試みは、質的証拠の不足に起因して、さらにいっそう困難である。現在のコンセンサスは、バンコマイシン聴覚毒性の明確に関連した症例が稀であることである。バンコマイシン血清レベルと聴覚毒性との間の関連もまた不確かである。聴覚毒性の症例は、バンコマイシン血清レベルが80μg/mLを超えた患者において報告されているが、症例は、治療レベルを有する患者でも同様に報告されている。従って、「治療」レベルを維持する目的のためのバンコマイシンの治療的薬物モニタリングが聴覚毒性を防止することもまた、未だ証明されていない。
論争および疑念のある別の領域は、バンコマイシンが他のネフロトキシンの毒性を増加させるかどうか、増加させる場合にはどの程度まで増加させるかという問題に関する。臨床研究により、変動する結果が得られたが、動物モデルは、バンコマイシンがアミノグリコシドなどのネフロトキシンに添加される場合、幾分増加した腎毒性効果がおそらく存在することを示している。しかし、用量−効果または血清レベル−効果の関連性は、確立されていない。
レボフロキサシン。レボフロキサシンは、フルオロキノロン薬物クラスの合成化学療法抗生物質であり、重症もしくは命に関わる細菌感染、または他の抗生物質クラスに対して応答できなかった細菌感染を処置するために使用される。レボフロキサシンは、最も一般的にはLevaquinおよびTavanicなどの、種々の商品名の下で販売されている。点眼用溶液の形態では、Oftaquix、QuixinおよびIquixとして公知である。
レボフロキサシンは、キラルフッ素化カルボキシキノロンである。ラセミ混合物である旧薬物オフロキサシンの調査により、1つの形態[(−)−(S)エナンチオマー]がより活性であることが見出された。この特定の構成成分がレボフロキサシンである。レボフロキサシンは、錠剤形態、注射、経口溶液で利用可能であり、ならびに処方点眼剤および点耳剤において使用される。
レボフロキサシンは、いくつかの他の薬物ならびにいくつかの生薬および天然のサプリメントと相互作用する。かかる相互作用は、心毒性および不整脈、抗凝固、非吸収性複合体の形成のリスクを増加させ、ならびに毒性のリスクを増加させる。
レボフロキサシンは、いくつかの重篤なおよび命に関わる有害反応ならびに自然腱断裂および不可逆的末梢神経障害と関連している。かかる反応は、治療が完了した後長期にわたって顕在化し得、重症症例では、一生にわたる身体障害を生じ得る。レボフロキサシンの使用による肝毒性(hepatoxicity)もまた報告されている。
2011年現在、FDAは、自然腱断裂、およびレボフロキサシンが筋力低下および呼吸の問題を含む重症筋無力症症状の悪化を引き起こし得るという事実に関して、この薬物に対する2つの黒枠警告を追加している。かかる有害反応は、潜在的に命に関わる事象であり、換気補助を必要とし得る。
レボフロキサシンは、以下を含むいくつかの感染を処置するために使用される:気道感染、蜂巣炎、尿路感染、前立腺炎、炭疽、心内膜炎、髄膜炎、骨盤内炎症性疾患および旅行者下痢症。
成人集団では、経口およびI.V.レボフロキサシンは、判明した重篤なおよび命に関わる細菌感染、例えば尿路感染、市中感染性肺炎、皮膚および皮膚構造の感染、院内肺炎、慢性細菌性前立腺炎、肺炭疽、急性細菌性副鼻腔炎、慢性気管支炎の急性細菌性増悪、ならびに急性腎盂腎炎の処置に限定される。
経口およびI.V.Levaquinは、筋骨格系に対する可逆的または不可逆的な傷害のリスクに起因して、例外(肺炭疽)を除いて、小児での使用に関してFDAによって認可されていない。有効であると主張されているが、レボフロキサシンは、筋骨格系に関する重症有害反応、および致死率を含む他の重篤な有害反応に起因して、小児科集団における肺炭疽のための第1選択の薬剤とみなすべきではない。
CDCは、炭疽研究のための抗菌剤曝露後予防(Antimicrobial Postexposure Prophylaxis)(別名Cipro 60日研究)内で報告された有害反応のリスクに起因して、炭疽(一部)を処置する際の第一選択の薬剤としてのフルオロキノロン(シプロフロキサシン)の使用に関する推奨を取り消した。しかし、フルオロキノロンは、英国では、嚢胞性線維症を有する小児における下部呼吸器感染を処置するために認可されている。
重篤な有害事象は、任意の他の抗生物質薬物クラスを用いた場合よりもフルオロキノロンを用いた場合により一般的に生じる。ほとんどの有害反応は軽度〜中程度である;しかし、時々、重篤な有害作用が生じる。かかる有害反応の結果として、黒枠警告の最近の追加に関する「医師宛ての書簡」の発行を伴った黒枠警告を含む、公表された警告、追加的警告および添付文書に添付された安全性情報を含む、いくつかの規制措置が取られてきた。
2004年に、FDAは、末梢神経障害(不可逆的神経損傷)、腱損傷、心臓の問題(延長したQT間隔/トルサード・ド・ポアンツ)、偽膜性大腸炎、横紋筋融解(筋消耗)、スティーブンス・ジョンソン症候群、ならびにこれらの反応の重症度に寄与するNSAIDの併用使用に関して、レボフロキサシンを含む全てのフルオロキノロンに新たな警告ラベルを追加することを要求した。これに続いて、2007年6月25日に、FDAは、添付文書に、「あるものは過敏症に起因し、あるものは未確定の病因に起因する、他の重篤なおよび時折致死的な事象が、レボフロキサシンを含むキノロンを用いた治療を受けている患者において報告されている」と述べた追加的警告を追加することを、製造業者に要求した。
レボフロキサシン点眼剤でも生じ得る重篤な視覚的合併症、特に角膜穿孔が点眼用フルオロキノロン治療でも生じることが報告されており、眼球内容除去および眼球除去でも生じ得る。角膜穿孔の事故の増加は、間質コラーゲンにおける変更を引き起こすフルオロキノロンに起因し得、構造的強度における低減を導く。以前に留意されたように、永久的な複視(二重視)もまた報告されている。
レボフロキサシンは、キノロン抗菌剤ラセミ体オフロキサシンのL−異性体である。化学用語では、レボフロキサシンはキラルフッ素化カルボキシキノロンであり、ラセミ薬物物質オフロキサシンの純粋な(−)−(S)−エナンチオマーである。化学名は、(−)−(S)−9フルオロ−2,3−ジヒドロ−3−メチル−10−(4−メチル−1−ピペラジニル)−7−オキソ−7H−ピリド[1,2,3−デ]−1,4ベンゾキサジン−6−カルボン酸半水和物ある。その実験式はC18H20FN3O4・1/2H2Oであり、分子量は370.38である。レボフロキサシンは、淡い黄白色から黄白色の結晶または結晶性粉末である。
レボフロキサシンの薬物動態は線形であり、単一および複数の経口またはIV投薬レジメンの後に予測可能である。レボフロキサシンは、経口投与後迅速に、かつ本質において完全に吸収される。ピーク血漿濃度には通常、経口投薬の1〜2時間後に到達する。IV投与後のレボフロキサシンの血漿濃度プロファイルは、等しい用量(mg/mg)が投与される場合にLEVAQUIN錠剤について観察されるプロファイルに対し、曝露の程度(AUC)において類似し匹敵する。レボフロキサシンは、尿中の未変化の薬物として大部分が排出される。レボフロキサシンの平均終末血漿排除半減期は、経口または静脈内で与えられた単一または複数用量のレボフロキサシンの後、およそ6から8時間までの範囲である。グルクロン酸抱合およびヒドロキシル化は、レボフロキサシン塩酸塩の主要代謝経路の1つとして言及されている。しかし、レボフロキサシン(DB01137)の薬物カードは、生体内変換情報が利用できないと述べている。生体内変換に関する具体的情報は、添付文書内で容易に利用可能でないようである。
レボフロキサシンは、グラム陽性細菌およびグラム陰性細菌の両方に対して活性な広いスペクトルの抗生物質である。レボフロキサシンは、複製されたDNAを分離するために必要な酵素であるDNAジャイレース、II型トポイソメラーゼおよびトポイソメラーゼivを阻害し、それによって細胞分裂を阻害することによって機能する。
これらのフルオロキノロンは、DNAジャイレースと呼ばれる酵素複合体を阻害することによって、DNA複製を妨害する。これは、哺乳動物細胞の複製にも影響を与え得る。特に、この薬物ファミリーのいくつかの同族体は、細菌トポイソメラーゼに対してだけでなく、真核生物トポイソメラーゼに対しても高い活性を示し、培養された哺乳動物細胞およびin vivo腫瘍モデルに対して毒性である。キノロンは、培養物中の哺乳動物細胞に対して高度に毒性であるが、細胞毒性作用の機構は未知である。キノロン誘導性のDNA損傷は、1986年に最初に報告された。
V.抗体結合体
本発明の抗体は、抗体結合体を形成するために、少なくとも1つの薬剤に連結され得る。診断剤または治療剤としての抗体分子の効力を増加させるために、少なくとも1つの所望の分子または部分を連結するまたは共有結合するまたは複合体形成することが従来法である。かかる分子または部分は、少なくとも1つのエフェクター分子またはレポーター分子であり得るが、これらに限定されない。エフェクター分子は、所望の活性、例えば細胞毒性活性を有する分子を含む。抗体に付着されたエフェクター分子の非限定的な例には、毒素、抗生物質、治療的酵素、放射性核種、抗がん剤、抗ウイルス剤、キレート剤、サイトカイン、増殖因子、およびオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドが含まれる。
対照的に、レポーター分子は、アッセイを使用して検出され得る任意の部分として規定される。抗体に結合体化されたレポーター分子の非限定的な例には、酵素、放射性標識、ハプテン、蛍光標識、リン光分子、化学発光分子、発色団、光親和性分子、着色粒子またはリガンド、例えばビオチンが含まれる。
抗体結合体は一般に、診断剤としての使用に好ましい。抗体診断薬は一般に、2つのクラス、種々のイムノアッセイ中などのようなin vitro診断で使用するためのもの、および「抗体特異的イメージング(antibody−directed imaging)」として一般に公知のin vivo診断プロトコール使用するためのもの、に入る。多数の適切なイメージング剤が、抗体にそれらを付着させる方法と同様、当技術分野で公知である(例えば、米国特許第5,021,236号、同第4,938,948号および同第4,472,509号を参照のこと)。使用されるイメージング部分は、常磁性イオン、放射性同位体、蛍光色素、NMR検出可能な物質およびX線イメージング剤であり得る。
常磁性イオンの場合、クロム(III)、マンガン(II)、鉄(III)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、ネオジム(III)、サマリウム(III)、イッテルビウム(III)、ガドリニウム(III)、バナジウム(II)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)および/またはエルビウム(III)などのイオンを例として言及することができるが、ガドリニウムが特に好ましい。X線イメージングなどの他の文脈で有用なイオンには、ランタン(III)、金(III)、鉛(II)および特にビスマス(III)が含まれるがこれらに限定されない。
治療適用および/または診断適用のための放射性同位体の場合、アスタチン211、14炭素、51クロム、36塩素、57コバルト、58コバルト、銅67、152Eu、ガリウム67、3水素、ヨウ素123、ヨウ素125、ヨウ素131、インジウム111、59鉄、32リン、レニウム186、レニウム188、75セレン、35硫黄、テクネチウム(technicium)99mおよび/またはイットリウム90に言及することができる。125Iは、特定の実施形態における使用に好ましい場合が多く、テクネチウム99mおよび/またはインジウム111もまた、その低いエネルギーおよび長い範囲の検出のための適切性に起因して、好ましい場合が多い。放射性標識された本発明のモノクローナル抗体は、当技術分野で周知の方法に従って産生され得る。例えば、モノクローナル抗体は、ヨウ化ナトリウムおよび/もしくはヨウ化カリウムならびに化学的酸化剤、例えば次亜塩素酸ナトリウム、または酵素的酸化剤、例えばラクトペルオキシダーゼとの接触によって、ヨウ素化され得る。本発明に従うモノクローナル抗体は、リガンド交換プロセスによって、例えば、過テクネチウム酸塩(pertechnate)を第一スズ溶液で還元し、還元されたテクネチウムをSephadexカラム上にキレートし、抗体をこのカラムに適用することによって、テクネチウム99mで標識され得る。あるいは、例えば、パーテクネート、SNCl2などの還元剤、フタル酸ナトリウム−カリウム溶液などの緩衝溶液、および抗体をインキュベートすることによる、直接的標識化技術が使用され得る。金属イオンとして存在する放射性同位体を抗体に結合させるためにしばしば使用される中間官能基は、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)である。
結合体としての使用のために企図される蛍光標識の中には、Alexa 350、Alexa 430、AMCA、BODIPY 630/650、BODIPY 650/665、BODIPY−FL、BODIPY−R6G、BODIPY−TMR、BODIPY−TRX、Cascade Blue、Cy3、Cy5、6−FAM、Fluorescein Isothiocyanate、HEX、6−JOE、Oregon Green 488、Oregon Green 500、Oregon Green 514、Pacific Blue、REG、Rhodamine Green、Rhodamine Red、Renographin、ROX、TAMRA、TET、Tetramethylrhodamineおよび/またはTexas Redが含まれる。
本発明において企図される別の型の抗体結合体は、in vitroでの使用のために第一に意図される結合体であり、ここで抗体は、二次結合リガンドに、および/または発色性基質との接触の際の着色産物を生成する酵素(酵素タグ)に連結されている。適切な酵素の例には、ウレアーゼ、アルカリホスファターゼ、(西洋ワサビ)水素ペルオキシダーゼまたはグルコースオキシダーゼが含まれる。好ましい二次結合リガンドは、ビオチンならびにアビジンおよびストレプトアビジン化合物である。かかる標識の使用は、当業者に周知であり、例えば、米国特許第3,817,837号、同第3,850,752号、同第3,939,350号、同第3,996,345号、同第4,277,437号、同第4,275,149号および同第4,366,241号に記載されている。
抗体に対する分子の部位特異的付着のなお別の公知の方法は、抗体とハプテンベースの親和性標識との反応を含む。本質的に、ハプテンベースの親和性標識は、抗原結合部位中のアミノ酸と反応し、それにより、この部位を破壊し、特異的抗原反応をブロックする。しかし、これは、抗体結合体による抗原結合の喪失を生じるので、有利ではない可能性がある。
アジド基含有分子もまた、低強度の紫外線光によって生成される反応性ナイトレン中間体を介して、タンパク質に対する共有結合を形成するために使用され得る(PotterおよびHaley、1983年)。特に、プリンヌクレオチドの2−および8−アジドアナログが、粗製細胞抽出物中のヌクレオチド結合性タンパク質を同定するために、部位特異的光プローブとして使用されてきた(OwensおよびHaley、1987年;Athertonら、1985年)。この2−および8−アジドヌクレオチドは、精製されたタンパク質のヌクレオチド結合性ドメインをマッピングするためにも使用されており(Khatoonら、1989年;Kingら、1989年;Dholakiaら、1989年)、抗体結合剤として使用され得る。
その結合体部分への抗体の付着または結合体化のためのいくつかの方法が、当技術分野で公知である。ある種の付着方法は、例えば、有機キレート剤、例えばジエチレントリアミン五酢酸無水物(DTPA);エチレントリアミン四酢酸;N−クロロ−p−トルエンスルホンアミド;および/または抗体に付着したテトラクロロ−3α−6α−ジフェニルグリコルリル−3(tetrachloro−3α−6α−diphenylglycouril−3)を使用する、金属キレート錯体の使用を含む(米国特許第4,472,509号および同第4,938,948号)。モノクローナル抗体は、グルタルアルデヒドまたはパーヨーデートなどのカップリング剤の存在下で、酵素と反応させることもできる。フルオレセインマーカーとの結合体は、これらのカップリング剤の存在下で、またはイソチオシアネートとの反応によって、調製される。米国特許第4,938,948号では、乳房腫瘍のイメージングが、モノクローナル抗体を使用して達成され、検出可能なイメージング部分が、メチル−p−ヒドロキシベンズイミデートまたはN−スクシンイミジル−3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどのリンカーを使用して、抗体に結合される。
他の実施形態では、免疫グロブリンのFc領域中にスルフヒドリル基を選択的に導入し、抗体結合部位を変更させない反応条件を使用することによる、免疫グロブリンの誘導体化が企図される。この方法論に従って産生された抗体結合体は、改善された長寿命、特異性および感度を示すことが開示されている(参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第5,196,066号)。レポーター分子またはエフェクター分子がFc領域中の炭水化物残基に結合体化されるレポーター分子またはエフェクター分子の部位特異的付着もまた、文献中に開示されている(O’Shannessyら、1987年)。このアプローチは、現在臨床評価中の診断的および治療的に有望な抗体を産生することが報告されている。
VI.免疫検出方法
なおさらなる実施形態では、本発明は、S.pneumoniaを結合、精製、除去、定量および他の方法で一般に検出するための、免疫検出方法に関する。かかる方法は、伝統的な検出の意味で適用され得るが、より具体的な使用は、上に列挙した血清型のほとんどから単一の肺炎連鎖球菌血清型を識別することが可能な抗体群の生成を含む。感染を担う特異的血清型を同定することによって、治療の必要性および型をより良く評価することができる。また、保護的免疫は、血清型特異的IgGに主に帰せられる。特異的肺炎球菌抗体の測定値は、2つの状況において臨床的に有用である:(1)患者の保護状態を決定するため、および(2)再発性の感染を有する患者におけるB細胞の機能性を評価するため。競合的形式での本発明に従う抗体の使用は、この型のアッセイも同様に促進する。
いくつかの免疫検出方法には、いくつか挙げると、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫放射線アッセイ、蛍光免疫アッセイ、化学発光アッセイ、生物発光アッセイおよびウエスタンブロットが含まれる。特に、試料中の抗体の検出および定量のための競合的アッセイもまた提供される。種々の有用な免疫検出方法のステップは、例えばDoolittleおよびBen−Zeev(1999年)、GulbisおよびGaland(1993年)、De Jagerら(1993年)ならびにNakamuraら(1987年)などの科学文献中に記載されている。一般に、免疫結合方法は、肺炎連鎖球菌を含むと疑われる試料を取得するステップ、および場合によって免疫複合体の形成を可能にするのに有効な条件下で、この試料を本発明に従う第1の抗体と接触させるステップ、を含む。
これらの方法には、試料から肺炎連鎖球菌または関連抗原を精製するための方法が含まれる。この抗体は、例えばカラムマトリックスの形態の固体支持体に連結されることが好ましく、肺炎連鎖球菌または抗原性構成成分を含むと疑われる試料が、固定化された抗体に適用される。望ましくない構成成分は、このカラムから洗浄して除かれ、固定化された抗体に対して免疫複合体形成した肺炎連鎖球菌抗原が残り、これは次いで、カラムから生物または抗原を取り出すことによって収集される。
これらの免疫結合方法には、試料中の肺炎連鎖球菌または関連構成成分の量を検出および定量するための方法、ならびに結合プロセスの間に形成された任意の免疫複合体の検出および定量のための方法もまた含まれる。本明細書では、肺炎連鎖球菌またはその抗原を含むと疑われる試料を取得し、この試料を、肺炎連鎖球菌またはその構成成分を結合する抗体と接触させ、その後、特定の条件下で形成された免疫複合体の量を検出および定量する。抗原検出に関して、分析される生物学的試料は、肺炎連鎖球菌または肺炎連鎖球菌抗原を含むと疑われる任意の試料、例えば、組織切片もしくは標本、ホモジナイズされた組織抽出物、血液および血清を含む生物学的流体、または分泌物、例えば糞便もしくは尿であり得る。
免疫複合体(一次免疫複合体)の形成を可能にするのに有効な条件下で、それに十分な期間にわたって、選択された生物学的試料を抗体と接触させることは、一般に、抗体組成物を試料に単純に添加することおよび、抗体が肺炎連鎖球菌または存在する抗原と免疫複合体を形成する、即ち抗体が肺炎連鎖球菌または存在する抗原に結合するのに十分に長い期間にわたってこの混合物をインキュベートすることである。この時間の後、組織切片、ELISAプレート、ドットブロットまたはウエスタンブロットなどの試料−抗体組成物は、一般に、任意の非特異的に結合した抗体種を除去するために洗浄され、一次免疫複合体内の特異的に結合した抗体のみの検出を可能にする。
一般に、免疫複合体形成の検出は、当技術分野で周知であり、多数のアプローチの適用を介して達成され得る。これらの方法は一般に、放射性、蛍光、生物学的および酵素的タグのうちいずれかなどの標識またはマーカーの検出に基づく。かかる標識の使用に関する特許には、米国特許第3,817,837号、同第3,850,752号、同第3,939,350号、同第3,996,345号、同第4,277,437号、同第4,275,149号および同第4,366,241号が含まれる。当然、当技術分野で公知のように、第2の抗体および/またはビオチン/アビジンリガンド結合配置などの二次結合リガンドの使用を介して、さらなる利点を見出すことができる。
検出において使用される抗体は、検出可能な標識にそれ自体連結され得、このとき、この標識を次いで単純に検出し、それによって組成物中の一次免疫複合体の量の決定を可能にする。あるいは、一次免疫複合体内で結合することになる第1の抗体は、この抗体に対する結合親和性を有する第2の結合リガンドによって検出され得る。これらの場合、この第2の結合リガンドは、検出可能な標識に連結され得る。この第2の結合リガンドは、それ自体が抗体である場合が多く、この抗体は従って「二次」抗体と称される。これらの一次免疫複合体を、二次免疫複合体の形成を可能にするのに有効な条件下で、それに十分な期間にわたって、標識された二次結合リガンドまたは抗体と接触させる。次いで、これらの二次免疫複合体は一般に、任意の非特異的に結合した標識された二次抗体またはリガンドを除去するために洗浄され、次いで、二次免疫複合体中の残留標識が検出される。
さらなる方法には、2ステップアプローチによる一次免疫複合体の検出が含まれる。この抗体に対する結合親和性を有する抗体などの第2の結合リガンドが、上記のように、二次免疫複合体を形成するために使用される。洗浄した後、これらの二次免疫複合体を、再度、免疫複合体(三次免疫複合体)の形成を可能にするのに有効な条件下で、それに十分な期間にわたって、第2の抗体に対する結合親和性を有する第3の結合リガンドまたは抗体と接触させる。この第3のリガンドまたは抗体は、検出可能な標識に連結され、そのようにして形成された三次免疫複合体の検出を可能にする。この系は、これが所望される場合に、シグナル増幅を提供し得る。
免疫検出の1つの方法は、2つの異なる抗体を使用する。第1のビオチン化抗体は、標的抗原を検出するために使用され、次いで、第2の抗体が、複合体化したビオチンに付着したビオチンを検出するために使用される。この方法では、試験される試料は、第1ステップの抗体を含む溶液中で最初にインキュベートされる。標的抗原が存在する場合、この抗体のいくつかは、抗原に結合してビオチン化抗体/抗原複合体を形成する。次いで、この抗体/抗原複合体は、ストレプトアビジン(またはアビジン)、ビオチン化DNAおよび/または相補的ビオチン化DNAの連続溶液中でのインキュベーションによって増幅され、各ステップは、抗体/抗原複合体に対してさらなるビオチン部位を追加する。増幅ステップは、適切なレベルの増幅が達成されるまで反復され、この時点で、この試料は、ビオチンに対する第2ステップの抗体を含む溶液中でインキュベートされる。この第2ステップの抗体は、例えば、色素原基質を使用する組織酵素学によって抗体/抗原複合体の存在を検出するために使用され得る酵素によって、標識される。適切な増幅が存在する場合、肉眼で見える結合体が産生され得る。
免疫検出の別の公知の方法は、イムノ−PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)方法論を利用する。このPCR法は、ビオチン化DNAとのインキュベーションに対応できるCantor方法と類似しているが、複数のラウンドのストレプトアビジンおよびビオチン化DNAのインキュベーションを使用する代わりに、DNA/ビオチン/ストレプトアビジン/抗体複合体が、抗体を放出する低pHまたは高塩の緩衝液で洗浄して除かれる。得られた洗浄溶液は次いで、適切な対照を用い適切なプライマーを用いるPCR反応を実施するために使用される。少なくとも理論的には、PCRの極度の増幅能および特異性が、単一の抗原分子を検出するために利用され得る。
A.ELISA
イムノアッセイは、最も単純かつ直接的な意味において、結合アッセイである。特定の好ましいイムノアッセイは、当技術分野で公知の種々の型の酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)およびラジオイムノアッセイ(RIA)である。組織切片を使用する免疫組織化学的検出がまた、特に有用である。しかし、検出はかかる技術に限定されず、ウエスタンブロッティング、ドットブロッティング、FACS分析などもまた使用され得ることが、容易に理解される。
1つの例示的なELISAでは、本発明の抗体は、タンパク質親和性を示す選択された表面、例えば、ポリスチレンマイクロタイタープレート中のウェル上に固定化される。次いで、肺炎連鎖球菌または肺炎連鎖球菌抗原を含むと疑われる試験組成物が、これらのウェルに添加される。結合および非特異的に結合した免疫複合体を除去するための洗浄後、結合した抗原が検出され得る。検出は、検出可能な標識に連結された別の抗肺炎連鎖球菌抗体の添加によって達成され得る。この型のELISAは、単純な「サンドイッチELISA」である。検出は、第2の抗肺炎連鎖球菌抗体の添加と、第2の抗体に対する結合親和性を有する第3の抗体のその後の添加とによっても達成され得、この第3の抗体は、検出可能な標識に連結されている。
別の例示的なELISAでは、肺炎連鎖球菌または肺炎連鎖球菌抗原を含むと疑われる試料が、ウェル表面上に固定化され、次いで、本発明の抗肺炎連鎖球菌抗体と接触させられる。結合および非特異的に結合した免疫複合体を除去するための洗浄後、結合した抗肺炎連鎖球菌抗体が検出される。最初の抗肺炎連鎖球菌抗体が検出可能な標識に連結されている場合、免疫複合体は直接検出され得る。再度、これらの免疫複合体は、第1の抗肺炎連鎖球菌抗体に対する結合親和性を有する第2の抗体を使用して検出され得、この第2の抗体は、検出可能な標識に連結されている。
使用される形式に関わらず、ELISAは、共通する特定の特徴、例えば、被覆するするステップ、インキュベートするステップおよび結合させるステップ、非特異的に結合した種を除去するために洗浄するステップ、ならびに結合した免疫複合体を検出するステップを有する。これらは以下に記載される。
抗原または抗体のいずれかでプレートを被覆する際には、一般に、一晩または特定の時間の期間にわたって、このプレートのウェルを、抗原または抗体の溶液と共にインキュベートする。次いで、このプレートのウェルは、不完全に吸着された材料を除去するために洗浄される。次いで、ウェルの任意の残りの利用可能な表面が、試験抗血清に関して抗原的に中性である非特異的タンパク質で「被覆」される。これらには、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン、または粉ミルクの溶液が含まれる。被覆は、固定化表面上の非特異的吸着部位のブロッキングを可能にし、従って、その表面上への抗血清の非特異的結合によって引き起こされるバックグラウンドを低減させる。
ELISAでは、おそらく、直接的手順ではなく、二次または三次検出手段を使用することがより慣習的である。従って、タンパク質または抗体をウェルに結合させるステップ、バックグラウンドを低減させるために非反応性材料で被覆するステップ、および未結合の材料を除去するために洗浄するステップの後、固定化表面は、免疫複合体(抗原/抗体)形成を可能にするのに有効な条件下で、試験される生物学的試料と接触させられる。次いで、免疫複合体の検出は、標識された二次結合リガンドまたは抗体、および標識された三次抗体または第3の結合リガンドと併せた二次結合リガンドまたは抗体を必要とする。
「免疫複合体(抗原/抗体)形成を可能にするのに有効な条件下」とは、この条件が、抗原および/または抗体を、BSA、ウシガンマグロブリン(BGG)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)/Tweenなどの溶液で希釈することを好ましくは含むことを意味する。これらの添加された薬剤は、非特異的バックグラウンドの低減を補助する傾向もある。
「適切な」条件とは、インキュベーションが、有効な結合を可能にするのに十分な温度で、またはそれに十分な期間にわたることもまた意味する。インキュベーションステップは典型的に、約1〜2〜4時間程度であり、好ましくは25℃〜27℃のオーダーの温度であり、または約4℃程度で一晩であり得る。
ELISA中の全てのインキュベーションステップ後、接触された表面は、複合体形成していない材料を除去するために洗浄される。好ましい洗浄手順には、PBS/Tweenまたはホウ酸塩緩衝液などの溶液で洗浄するステップが含まれる。試験材料と元々結合していた材料との間での特異的免疫複合体の形成および引き続く洗浄の後に、僅かな量の免疫複合体の存在でさえも決定され得る。
検出手段を提供するために、第2または第3の抗体は、検出を可能にするための会合した標識を有する。好ましくは、これは、適切な発色性基質とインキュベートした際に発色を生じる酵素である。従って、例えば、さらなる免疫複合体形成の発達を支持する期間にわたり、そのような条件下(例えば、PBS−TweenなどのPBS含有溶液中で室温で2時間にわたるインキュベーション)で、第1および第2の免疫複合体を、ウレアーゼ、グルコースオキシダーゼ、アルカリホスファターゼまたは水素ペルオキシダーゼ−結合体化抗体と接触させるまたはかかる抗体と一緒にインキュベートすることが望まれる。
標識された抗体とのインキュベーション後、および未結合の材料を除去するための洗浄に引き続いて、標識の量が、例えば、酵素標識としてペルオキシダーゼの場合、尿素、またはブロモクレゾールパープル、または2,2’−アジノ−ジ−(3−エチル−ベンズチアゾリン−6−スルホン酸(ABTS)、またはH2O2などの発色性基質とのインキュベーションによって、定量される。次いで、定量が、例えば可視スペクトル分光光度計を使用して、生成された色の程度を測定することによって達成される。
別の実施形態では、本発明は、競合形式の使用を企図する。これは、試料中の肺炎連鎖球菌抗体の検出において特に有用である。競合ベースのアッセイでは、未知の量の分析物または抗体が、既知の量の標識された抗体または分析物に取って代わるその能力によって決定される。従って、シグナルの定量可能な喪失は、試料中の未知の抗体または分析物の量を示す。
本明細書で、本発明者は、試料中の肺炎連鎖球菌抗体の量を決定するための、標識された肺炎連鎖球菌モノクローナル抗体の使用を提案する。基本的形式は、既知の量の肺炎連鎖球菌モノクローナル抗体(検出可能な標識に連結されている)を、肺炎連鎖球菌抗原または粒子と接触させることを含む。肺炎連鎖球菌抗原または生物は、好ましくは支持体に付着される。支持体への標識されたモノクローナル抗体の結合の後、試料を添加し、試料中の任意の標識されていない抗体が標識されたモノクローナル抗体と競合する、従って標識されたモノクローナル抗体に取って代わるのを可能にする条件下でインキュベートされる。喪失された標識または残留標識のいずれかを測定する(および結合した標識の元の量からそれを差し引く)ことによって、どれだけの標識されていない抗体が支持体に結合しているか、従って、どれだけの抗体が試料中に存在したかを決定することができる。
B.ウエスタンブロット
ウエスタンブロット(あるいは、タンパク質イムノブロット)は、組織ホモジネートまたは抽出物の所与の試料中の特定のタンパク質を検出するために使用される分析技術である。これは、ポリペプチドの長さ(変性条件)またはタンパク質の3−D構造(ネイティブ/非変性条件)によって、ネイティブまたは変性したタンパク質を分離するために、ゲル電気泳動を使用する。次いで、これらのタンパク質は、メンブレン(典型的にはニトロセルロースまたはPVDF)に転移され、この場所で、標的タンパク質に対して特異的な抗体を使用して探索(検出)される。
試料は、組織全体または細胞培養物から採取され得る。ほとんどの場合、固形組織が、ブレンダーを使用して(より大きい試料体積について)、ホモジナイザーを使用して(より小さい体積)、または超音波処理によって、最初に機械的に破壊される。細胞は、上記機械的方法の1つによっても破壊され得る。しかし、細菌試料または環境試料がタンパク質の供給源であり得、従って、ウエスタンブロッティングが細胞研究のみに限定されないことに留意すべきである。取り揃えられた界面活性剤、塩および緩衝液が、細胞の溶解を促し、タンパク質を可溶化させるために、使用され得る。プロテアーゼゼインヒビターおよびホスファターゼインヒビターが、それ自体の酵素による試料の消化を防止するために添加される場合が多い。組織調製は、タンパク質変性を回避するために、冷温で実施される場合が多い。
試料のタンパク質は、ゲル電気泳動を使用して分離される。タンパク質の分離は、等電点(pI)、分子量、電荷、またはこれらの因子の組合せによる分離であり得る。分離の性質は、試料の処理およびゲルの性質に依存する。これは、タンパク質を決定するための非常に有用な方法である。タンパク質を2次元で単一試料から広げる2次元(2−D)ゲルを使用することも可能である。タンパク質は、第1次元では等電点(タンパク質が中性の正味の電荷を有するpH)に従って、第2次元ではその分子量に従って、分離される。
タンパク質を抗体検出に利用可能なものにするために、これらのタンパク質は、ニトロセルロースまたはフッ化ポリビニリデン(PVDF)製のメンブレン上に、ゲル内から移動される。このメンブレンは、ゲルの上部に配置され、濾紙のスタックが、その上部に配置される。このスタック全体を、毛細管作用によって紙を上がって移動する緩衝溶液中に配置し、タンパク質をこの溶液と接触させる。タンパク質を転移させるための別の方法は、エレクトロブロッティングと呼ばれ、ゲルからPVDFまたはニトロセルロースメンブレン中にタンパク質を引き込むために電流を使用する。タンパク質は、それらがゲル内で有していた組織を維持したままで、ゲル内からメンブレン上に移動する。このブロッティングプロセスの結果として、タンパク質は、検出のために薄い表面層上に曝露される(以下を参照のこと)。両方の種類のメンブレンは、その非特異的タンパク質結合特性(即ち、全てのタンパク質に等しく良好に結合する)について選択される。タンパク質結合は、疎水性相互作用、ならびにメンブレンとタンパク質との間の電荷相互作用に基づく。ニトロセルロースメンブレンは、PVDFよりも安価であるが、かなり脆く、繰り返される探索に十分持ちこたえない。ゲルからメンブレンへのタンパク質の転移の均質性および全体的有効性は、Coomassie Brilliant BlueまたはPonceau S色素によってメンブレンを染色することによって、チェックされ得る。一度転移されると、タンパク質は、標識された一次抗体または標識されていない一次抗体を使用し、この一次抗体のFc領域に結合する標識されたプロテインAまたは標識された二次抗体を使用する間接的検出が次に行われて、検出される。
C.免疫検出キット
なおさらなる実施形態では、本発明は、上記免疫検出方法と共に使用するための免疫検出キットに関する。肺炎連鎖球菌抗体は、肺炎連鎖球菌または肺炎連鎖球菌抗原を検出するために一般に使用されるので、これらの抗体がキット中に含まれる。この免疫検出キットは、従って、適切な容器手段中に、肺炎連鎖球菌または肺炎連鎖球菌抗原に結合する第1の抗体、および任意選択で免疫検出試薬を含む。
特定の実施形態では、この抗体は、カラムマトリックス、ディップスティック、メンブレン、粒子(例えば、ビーズもしくはナノ粒子)、またはマイクロタイタープレートのウェルなどの固体支持体に、予め結合され得る。このキットの免疫検出試薬は、所与の抗体と会合したまたは所与の抗体に連結された検出可能な標識を含む、種々の形態のうちいずれか1つを取り得る。二次結合リガンドと会合したまたは二次結合リガンドに付着した検出可能な標識もまた企図される。例示的な二次リガンドは、第1の抗体に対する結合親和性を有する二次抗体である。
本発明のキットでの使用のためのさらなる適切な免疫検出試薬には、第2の抗体に対する結合親和性を有する第3の抗体と共に、第1の抗体に対する結合親和性を有する二次抗体を含む2構成成分の試薬が含まれ、この第3の抗体は、検出可能な標識に連結されている。上述のように、いくつかの例示的な標識が当技術分野で公知であり、全てのかかる標識が、本発明と関連して使用され得る。
これらのキットは、標識されているにしろ標識されていないにしろ、検出アッセイのための検量線を生成するために使用され得る、肺炎連鎖球菌または肺炎連鎖球菌抗原の適切にアリコート化された組成物をさらに含み得る。これらのキットは、完全に結合体化された形態で、中間体の形態で、またはキットの使用者によって結合体化される別々の部分としてのいずれかで、抗体−標識結合体を含み得る。キットの構成成分は、水性媒体中または凍結乾燥形態のいずれかで包装され得る。
キットの容器手段は、抗体が中に配置され得る、または好ましくは適切にアリコート化され得る、少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、瓶、シリンジまたは他の容器手段を一般に含む。本発明のキットは、市販のための厳重な制限の下に抗体、抗原および任意の他の試薬容器を含むための手段もまた、典型的に含む。かかる容器には、所望のバイアルが中に保持される射出成型またはブロー成型されたプラスチック容器が含まれ得る。
VII.実施例
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を実証するために含まれる。以下の実施例中に開示された技術は、本発明の実施において良好に機能することが本発明者によって発見された技術を示しており、従って、本発明の実施のための好ましい様式を構成するとみなされ得ることが、当業者に理解されるはずである。しかし、当業者は、本開示に照らして、多くの変化が、本発明の精神および範囲から逸脱することなしに、開示された特定の実施形態においてなされ得、同様または類似の結果をなおも生じ得ることを理解すべきである。
実施例1−材料および方法
免疫およびドナー。ドナーは、その年齢またはSLE状況に基づいて、ケアワクチン接種の標準として、Pneumovax(登録商標)23(Merck、Whitehouse Station、NJ)を受けた。健康なドナーCon1およびCon2は、両方ともコーカサス人種であり、それぞれ62歳および61歳であった。ループスドナーSLE1は、47歳のアフリカ系アメリカ人であり、SLE2は45歳のコーカサス人種であった。全てのプロトコールは、IRBによって承認され、患者はこの研究に参加することに同意した。血液を、ワクチン接種の7日後に静脈穿刺によってACDチューブ(BD、Franklin Lakes、NJ)中に採取し(約40〜60ml)、処理の前に、18時間以下保存した。
細胞単離およびフローサイトメトリー。末梢血液単核細胞(PBMC)を、リンパ球分離媒体(Cellgro、Manassas、VA)を使用して新鮮な血液から単離し、PBS中2%の不活化胎仔ウシ血清中に懸濁した。次いで、細胞を計数し、単離の2時間以内に染色した。染色に使用した抗体は、FITCに結合体化された抗CD3および抗CD20、APC−Cy5.5に結合体化された抗CD38、PEに結合体化された抗CD27、PE−Alexa610に結合体化された抗CD19(全てInvitrogen/Caltag、Carlsbad、CAから)、APCに結合体化された抗IgG(BD Biosciences、San Jose CA)、およびビオチン(Southern Biotech、Birmingham、AL)に結合体化され、その後ストレプトアビジン−PE−Cy7(Invitrogen/Caltag)に結合体化された抗IgMであった。B細胞を、Becton−Dickinson FACS Aria血球計算器(BD Biosciences、San Jose、CA)を使用してバルクソートし(CD3/CD20陰性、CD19低、CD38高、CD27非常に高い、IgG陽性)、次いで、単一細胞を、Cytomation MoFlo血球計算器(Dako、Carpinteria、CA)を用いて96ウェルPCRプレート中にソートした。
単一細胞RT−PCRおよび抗体可変領域遺伝子のPCR。以前の研究において詳述されたように(Smithら、2009年;Wrammertら、2008年)、上でソートされた単一細胞を受容するプレートは、各ウェル中に40U/μlのRNaseインヒビター(Promega、Madison、WI)と共に10mM Tris−HClからなる低張緩衝液10マイクロリットルを含む。ソート後、プレートを、ドライアイス上で即座に凍結させ、−80℃で保存した。One−Step RT−PCRキット(Qiagen、Valencia、CA)を使用して、遺伝子ファミリーの各々のリーダー領域に対するセンスプライマーならびに重鎖およびカッパ鎖の定常領域に対するアンチセンスプライマーのカクテルを使用して、VHおよびVκメッセージを増幅した。次いで、1マイクロリットルのRT−PCR混合物を、別々の重鎖およびカッパ鎖PCR反応において増幅して、最初に配列を取得し、もう1マイクロリットルを最終PCR反応に使用して、さらなるクローニングのための制限部位を組み込んだ。次いで、可変領域を、発現ベクター(全長IgG1重鎖またはカッパ定常領域を含む)中にクローニングし、マキシプレップし(Roche、Indianapolis IN)、ポリエチレンイミン(PEI)(Polysciences、Warrington、PA)を使用してHEK293A細胞系統中に同時トランスフェクトした。トランスフェクトした細胞に、5日間にわたり、1%Nutridoma(Roche、Indianapolis、IN)を補充した無血清DMEM中に抗体を分泌させた。次いで、これらの抗体を、プロテインA−アガロースビーズ(Pierce、Rockford、IL)を使用して精製した。抗体の純度および完全性を、SDS−PAGEによって検証し、濃度を、Nanodrop分光光度計(Fisher、Pittsburg、PA)を用いて得た。
多糖親和性およびアビディティELISA。結合についてスクリーニングするために、ELISAを、5つまたは6つの肺炎連鎖球菌多糖のカクテルを用いてプレートを被覆し、この様式で23全て(ATCC、Manassas、VA)をスクリーニングすることによって、最初に実施した。次いで、このカクテルアッセイ中の陽性結合体を、個々の多糖の各々に対して再スクリーニングした。細胞壁多糖(CWPS)は、ほぼ全ての外被多糖中の不純物であるので(Xuら、2005年)、4つ全ての群に結合した抗体を、精製された細胞壁多糖(CWPS)(Miravista Labs、Indianapolis、IN)に対してさらに試験して、CWPS結合を確認した。ウェルを、10μgの各多糖(または総混合多糖)で被覆し、20%FCSでブロッキングし、抗ヒトIgG−HRP(Jackson ImmunoResearch、West Grove、PA)およびSuper Aqua Blue基質(EBiosciences、San Diego CA)で発色させた。吸光度を、マイクロプレートリーダー(Molecular Devices、Sunnyvale、CA)で405nmで測定した。抗体親和性(Kd)を、10μg/mlで開始する抗体の16の2倍希釈の希釈系列からプロットされた個々のELISA曲線のカーブフィッティング分析によって計算した。アビディティELISAについて、1つの濃度の抗体を使用し(1μg/ml)、溶出ステップを、結合体の添加前に追加した。この溶出ステップは、PBS中の変動する濃度のチオシアン酸アンモニウム(3M〜0.06M、合計8の希釈)、ならびにPBS単独を使用した。結合保持の%を、チオシアン酸アンモニウムの各希釈について計算した。これらの値を、チオシアネート濃度に対してグラフ化し、結合の50%保持(または喪失)を引き起こしたチオシアネートの濃度を、斜面補正を有する用量応答/シグモイド曲線にデータをフィッティングさせることによって計算した。
自己抗原ELISA。全ての抗体を、5つの自己抗原Ro、La、Sm、nRNPおよびカルジオリピンに対する結合に関しても試験した。各々について、カルジオリピン以外、高結合プレート上の1ウェル当たり1単位の抗原(ImmunoVision、Springdale、AR)を被覆した。プレートを、PBS中0.1%のBSAでブロッキングし、抗体を1μg/mlで添加し、上記多糖ELISAにより発色させた。抗カルジオリピンELISAについて、約5mg/mlのカルジオリピン溶液(Sigma、St.Louis、MO)を、エタノール中に1対1000希釈し、50μl/ウェルを、中間結合プレート中で蒸発させた。プレートを、PBS中0.5%の成体ウシ血清でブロッキングし、抗体を10μg/mlでスクリーニングし、上記のように発色させた。
配列の分析およびカーブフィッティング。全てのカーブフィッティングを、Excelを使用して計算および平均したバックグラウンド差し引き値または%保持値と共に、GraphPad Prismソフトウェアを使用して実施した。可変領域配列を、International Immunogenetics Information System(IMGT、Montpellier、France)、ならびに社内ソフトウェアおよび/またはVector NTI(Invitrogen、Carlsbad、CA)を使用して分析した。クローン的に関連する抗体を、それぞれ重鎖および軽鎖における同じVDJ/VJ用法、ならびに高度に関連するVHDH、DHJHおよびVKJK接合部を有する抗体として規定した。平均ヌクレオチド体細胞高頻度変異値を、各抗体配列中の生殖系列からのヌクレオチド変化の数について、配列を分析する(IMGTを使用する)ことによって得た。次いで、得られた抗体当たりの値を平均して、ドナー当たりの平均変異率を得た。これらの分析のためのn値は以下を含んだ:6人のドナー由来のナイーブ細胞(n=18、42、21、34、15、36);17人のドナー由来のIgM胚中心/メモリー細胞(n=56、158、18、91、17、10、16、30、19、28、11、36、29、13、22、20、64);13人のドナー由来のIgG胚中心/メモリー細胞(n=110、37、19、28、174、40、25、15、21、18、22、24、19、71);11人のドナー由来の抗インフルエンザASC(n=63、18、33、46、49、11、36、11、30、35、25)。これらのドナーは、(Wrammertら、2008年)に以前に記載されている。抗多糖ASC配列は、この研究における4人のドナー由来である(Con1、39;Con2、49;SLE1、24;SLE2、25)。
実施例2−結果
Pneumovax(登録商標)23は、SLE患者と比較して、健康な対照においてより頑強な強いASC応答を誘導する。4人の個体を、Pneumovax(登録商標)23で免疫した。血液を、ワクチン接種の7日後に採取し、PBMCを、Ficoll勾配によって単離した。次いで、これらの細胞を染色し、CD38高/CD27非常に高い細胞を数え上げた。インフルエンザワクチン接種後にこれらの技術を使用した本発明者の以前の結果(Wrammertら、2008年)は、7日目に、総末梢血液B細胞の1%から16%までの範囲のASCバースト(平均6.4%)を示した。Pneumovax(登録商標)23は、さらにいっそう頑強なASC応答を誘導し(図1A)、2人の健康なドナーは、特にこれが各ドナーに対する一次ワクチン接種である場合、その総末梢血液B細胞の22.8%〜24.7%を示すASCを有する。両方のSLEドナーは、健康なドナーの半分の数のASCを有したが、全体的百分率(10.6%および7.1%)は、なおかなり高い。この強い既往応答は、肺炎連鎖球菌が、一般的集団において臨床的疾患および無症候性疾患の両方を引き起こす遍在性の生物であるという事実に起因する可能性が高い。図1Bは、抗体分泌細胞からヒトモノクローナル抗体を作製するためのプロセスの模式的表示を示す。この技術は、以前に詳細に記載されている(Smithら、2009年;Wrammertら、2008年)。合計して、非結合性抗体を含めると、137の抗体を産生し、特徴付けた(Con1、n=39;Con2、n=49;SLE1、n=24;SLE2、n=25)。
ASCから産生された多糖抗体の大多数は、単一の血清型に結合する。多糖ELISA曲線が図2Aに示され、各々の曲線は1つの抗体を示す。1.5のOD405のカットオフを高い〜中程度の親和性の抗体と低い〜非結合性の抗体との間の任意の分離として使用した。百分率を、どの抗体が顕著な結合を有したかを決定するための手段としてこのカットオフを使用して計算した。4人のドナーを平均すると、抗体の76%(Con1、62%;Con2、90%;SLE1 75%;SLE2、75%)が、ワクチン由来の肺炎連鎖球菌血清型多糖または細胞壁多糖に結合した。生成されたhmAbのうち、SLEドナーは、単離された高親和性抗体の数において有意な差異を示さなかった。陽性結合を有する全ての抗体のリストを表1に示し、この表は、結合した血清型、特徴付けたクローン性同胞の総数、ならびにVHおよびVκ用法を詳述する。多糖に結合した抗体(合計の76%)のうち、4人のドナーから特徴付けられた抗体の平均88%が、血清型特異的である(図2B)(Con1、88%;Con2、90%;SLE1 94%;SLE2、80%)。目下血清中に存在する抗体の88%が、非常に密に関連した構造の中であっても特異的な様式で炭水化物エピトープと結合するという観察は、抗体レパートリーの周知の特異性を補強する。
*クローン性ファミリーについて平均された、計算されたELISA親和性。交差反応性抗体から列挙された親和性は、最も強く結合した血清型に対するものである(血清型の欄において最初に列挙した血清型)。
**オプソニン化貪食作用アッセイ(OPA)は、抗体媒介性の細菌取り込みを測定する;4以下の値は陰性とみなす(「なし」)。
クローンの数は、クローン性ファミリーのメンバーの総数を示す。
抗体を、5つの共通ループス自己抗原:Ro、La、Sm、nRNPおよびカルジオリピンに対する結合についても試験した。これら5つの抗原のうち少なくとも2つに結合した抗体を、多反応性と分類した(多糖を結合するかどうかに関わらない)。図2Cは、各ドナー由来の多反応性抗体の百分率を示す。SLE2は、多反応性を示す抗体の著しい52%を示す。図2Aと類似してはいるが、各ドナー由来の交差反応性または多反応性抗体を強調するグラフが、図7A〜Bに示される。
ASCから産生された抗多糖抗体の、小さいが顕著な百分率が、2つの別個の血清型の多糖に結合する。抗体のほとんどが血清型特異的であるが、特徴付けられた抗体のうち12%が2つの血清型に結合する。2つの血清型に結合する抗体のうち、1対の多糖9Nおよび9Vは、いくつかの抗体によって二重に結合された。これら2つの炭水化物は、非常に類似した非分岐構造を有し、9N鎖反復中の4つのD−Glcのうち1つが、9V中ではD−Galによって置き換えられている。従って、いくつかの抗体は、両方の血清型と交差反応しないことが予測される。しかし、本発明者は、広範な種々の9Nおよび9V結合性抗体を観察しており、そのうちあるものは交差反応するが、あるものは交差反応しない。例えば、Con1p2D02およびSLE1p1E01抗体は、それぞれ9Nおよび9Vに対して単一特異的であり(図3A)、交差反応性がほとんどない〜全くないことを示す。しかし、Con1p4B03は、両方の血清型に結合し、親和性において1オーダー、アビディティにおいて5倍、9Nを好む(図3B)。9Nに対する1つの抗体SLE1p1A03は、9Vに結合しないが、血清型14の多糖と類似の親和性およびアビディティで交差反応し(図3C)、この観察は、炭水化物配列のみを試験して説明することが困難である。これらの交差反応する抗体のいくつかは同じドナー由来であり、単一の個体内の特定の血清型に対する種々の抗体を実証している。血清型19Aおよび19Fもまた非常に類似した構造を有し、19Fは、1−2結合と共にD−Glcを有し、19Aは1−3結合を有する。抗体SLE2p2D03は、ほぼ等価な親和性で19Aおよび19Fの両方に結合するが(図3D)、4倍異なるアビディティである(19Aを好む)。
本発明者は、血清型15Bと14との間(図4C)、ならびに17Fと33Fとの間(図4Aおよび4B)の交差反応性もまた検出した。抗体SLE2p1B01は、アビディティにおいて血清型15Bよりも血清型14の方を僅かに好むが、親和性においてはそうではない。SLE2p2G06およびSLE2p2C04は、それぞれ17Fおよび33Fに対して単一特異的であるが(図4A)、SLE2p1C03(同じドナー由来;図4B)は、類似のアビディティで両方の血清型と交差反応する。全体で、これは、血清は2つの血清型間で交差反応し得るが、この応答を構成する実際の抗体の85%が1つの多糖だけに特異的であるという証拠である。本発明者は、測定可能な親和性/アビディティで2つを超える血清型と反応する抗体には遭遇しなかった。
これらの抗体中の高頻度の体細胞高頻度変異は、頻繁な既往抗多糖応答を示す。以前に報告されたように、インフルエンザワクチンに対するASCリコール応答は、高度に変異しており、典型的なIgG胚中心メモリー細胞中よりもよりいっそう変異している。本発明者は、これが、毎年のワクチンの反復性の性質ならびに種々のインフルエンザ株に対する頻繁な曝露に起因すると仮説を立てた。この研究で取得された抗体は、類似の変異頻度を有する(図5を参照のこと)。各ドナーについてこれが一次ワクチン接種であったので、これは特に興味深い。これらのドナーがこれらの多糖抗原に対して真にナイーブである場合、ASC応答はより小さくなっており、抗体の配列はより少ない変異を示す。従って、このワクチンは、肺炎連鎖球菌株に対する以前の感染または曝露のみから生じ得る既往応答を生じている。
各ドナーは、抗体血清型特異性の独自の既往フィンガープリントを示す。4人のドナーの各々は、各血清型または細胞壁多糖に対して産生された抗体の数によって実証されるように、著しく異なる抗体応答を示した(図6A、非結合性抗体は示さない;交差反応する抗体が、最も強い親和性を有する血清型のビンにおいて計数される)。特定の血清型に対する応答が各ドナーにおいて優勢であると思われる。ドナーCon1は、血清型8に対して強い応答を示し(合計6つの抗体、そのうち3つはクローン性である)、Con2は血清型18Cに対して強い応答を示し(9つの抗体、全てクローン性)、SLE1およびSLE2は共に、血清型5に対して強い応答を示し(それぞれ、6つの抗体、そのうち2つはクローン性であり、6つの抗体、そのうち4つはクローン性である)。本発明者は、これが、ドナーの寿命のある時点におけるその血清型による感染(臨床的に明らかまたは明らかでない)に起因すると仮説を立てている。
インフルエンザワクチン接種に対する免疫応答の本発明者の以前の研究(Wrammertら、2008年)は、このワクチンに対するASC応答の強いクローン性を強調しており、これは、Pneumovax(登録商標)23による免疫後にも当てはまる。従って、本発明が特徴付けた抗体のいくつかは、クローン的に関連するが、非常に類似した結合特徴を示す(親和性を比較するためには表1を参照のこと)。単一のヒストグラムグラフ上に4人のドナー全てを示し、クローン的に関連する抗体を1のカウントに減少させる場合(図6B)、各ドナーから単離されたhmAbが独自のフィンガープリントを生じ、3人のドナーが9V、15B、17Fを結合し、血清型8および33Fだけは4人全てのドナーによって結合されるということが、完全に明らかである。また、この研究中の被験体はいずれも、血清型7F、10Aまたは12Fに結合した抗体を産生しなかった。各ドナーからのヒストグラムが独自であることを数学的に示すことは困難であるが、本発明者は、Con2由来の44の抗体の産生が、この個体が既往応答を有している血清型の代表的な分布を与えること、およびこれがドナー毎に異なることを確信している。
実施例3−考察
これは、モノクローナル抗体の産生のための供給源として、ワクチン接種の7日後に出現する抗体分泌細胞(ASC)を利用した、1抗体当たりに基づく、Pneumovax(登録商標)23免疫に対するヒト免疫応答の最初の包括的分析である。これらの多糖特異的モノクローナル抗体の分析により、このワクチンに対するヒト抗体レパートリーの詳細な研究が可能になった。各抗体の特異性に関する洞察もまた提供され、各参加者の以前の感染歴を反映していると本発明者が解釈している「既往フィンガープリント」が、驚くべきことに明らかになった。
以前の研究(Wrammertら、2008年)では、本発明者は、インフルエンザワクチン接種後の既往応答の大きさが、総B細胞の平均6%がASCであるような大きさであり、なお幾人かのドナーが非存在の応答に対し不良になることを見出した。これらの同じ技術を使用して、いくつかのワクチン(特にAnthrax AVA)は、非常に不良な誘導の保護的応答を慣用的に生じる(Croweら、2010年)。本明細書で、本発明者は、Pneumovax(登録商標)23が、幾人かのインフルエンザドナーにおいて誘導された最も強い応答よりも、2倍〜4倍より頑強な応答を惹起したことを報告しており、これらの多糖が、メモリー応答を誘発するのに並はずれて有効であることを示唆している。初期の研究(2〜4)もまた、PBMC百万個当たり平均して100を超える血清型特異的細胞で、多糖および結合体ワクチンの両方によるワクチン接種の7日後に抗体分泌細胞を検出した。本発明者自身のELISpot結果は、これら以前の報告と類似していたが(データ示さず)、フローサイトメトリーによって決定されるIgG ASC応答の全体的な大きさは、なお驚くべきものであった。興味深いことに、SLEドナーのうち1人SLE2は、以前のインフルエンザ研究にも参加しており、インフルエンザワクチンに対する応答を示さなかったが、多糖ワクチンに対する印象的なASC応答をなおも生じた。これは、小さい試料サイズにもかかわらず、特に免疫無防備状態の個体における、ワクチンに対する潜在的免疫応答における膨大な差異の直接的比較を提供する。
SLEドナーと健康な対照との間には、この研究において、いくつかの興味深い差異が存在する。上で考察したように、ワクチン接種から生じたASCの百分率は、SLE1およびSLE2においてかなり小さかった(Con1およびCon2についての23.8%と比較して、平均8.8%)。これらのドナーから生成された高親和性抗体の百分率は異ならなかったが、SLE2から生成された抗体は、非炭水化物抗原に対してかなり多反応性であるように見える。SLE2由来の4つの交差反応性抗体のうち3つもまた多反応性であることに留意することも重要である(図7A〜Bを参照のこと)。これらは複数の自己抗原に結合するが、1つまたは2つだけの多糖構造に対してなお特異的であることは、注目に値する。これらの結果は、他の方法で欠失またはアネルギー化された交差反応性および多反応性のB細胞に抗体を熟成させおよび分泌させている、このドナーにおけるB細胞寛容における欠損を示す可能性が高い。この様式の多反応性抗体が生理学的効果を有するかどうかは未知であるが、この個体における任意のワクチン接種がかかる多反応性抗体を生じる可能性は高い。
この研究は、結合およびレパートリー用途の両方に関して特徴付けられた、肺炎連鎖球菌に対する報告されたヒトモノクローナル抗体の数を、大いに増加させた。これらの抗多糖抗体は、反復された季節性インフルエンザワクチン接種から生じる抗体と同程度に高度に変異されている。これらの抗体におけるV遺伝子用法を以前の報告と比較して、本発明者は、類似の傾向を観察している。例えば、Baxendale(BaxendaleおよびGoldblatt、2006年;Baxendaleら、2000年)は、彼らが特徴付けた2つのVH3−48ファミリー抗体はこれら2つの血清型に結合したので、VH3−48が、血清型23Fおよび18C由来のエピトープを好む抗原結合性ドメインに寄与する可能性が高いことを示唆しており、Zhouは23F研究においてVH3−48を見出したが(Zhouら、2002年)、6B研究では見出さなかった(Zhouら、2004年)。同様に、この研究において特徴付けられた4つのVH3−48抗体のうち3つ(表1)もまた、これら2つの血清型に結合する。本発明者は、血清型2を結合するVH3−48(Con2p5E05)、異なる血清型を結合するVH3−48の1例もまた、特徴付けている。彼らは、細胞壁多糖(CWPS)を結合すると特徴付けられた抗体中にも著しい類似性を観察した。2人の独自のドナーを比較すると、これらの抗体は、VH3−30または密接に関連したVH3−33のいずれかを使用する。CDR3でさえも著しい類似性を示す(Con2p6B03、VKESATGWYRTADY(配列番号57);Con2p5A06、VKEYSWGYYRTADY(配列番号49);SLE2p1A06、VKEQGFGYYRTADY(配列番号101);SLE2p1C04、VKEQDYGYYRTADH(配列番号107))。従って、反復多糖配列の化学的単純さは、別個の個体における類似のV遺伝子ファミリー用法を誘導すると考えられる。
アビディティは、保護との重要な相関であることが示されているが(Anttilaら、1999年;Harrisら、2007年;UsingerおよびLucas、1999年)、チオシアネートELISAは一般に、モノクローナル抗体に対しては実施されない。単純なELISA曲線をフィッティングすることによって親和性を決定する際にはいくつかの複雑さが存在するので、本発明者は、本明細書でこれを利用する。これらには、親和性に対する小さい抗体濃度誤差の誇張された影響、抗原結合相互作用が1価または2価であるかどうかが不確実なこと、および大きい単位の反復エピトープによるプレートの被覆が含まれる。SLEドナー(および時折は健康な対照)由来の多反応性抗体が、結合部位の外側で抗原と相互作用し得る可能性もある。これらの影響の全てが、チオシアネートアビディティELISA系において最小化される。図3Dおよび4Cは共に、親和性およびアビディティELISAの結合測定値が相関しない抗体を示す。これらの抗体は両方ともSLE2由来であり、両方の抗体が多反応性である。本発明者は現在、これらのような興味深い抗体をより詳細に調査しているが、これらの場合、チオシアネートアビディティは、抗体−炭水化物相互作用のより信頼性のある測定である。
血清交差反応性は典型的に、血清から特定の血清型の炭水化物を枯渇させ、次いで、血清中になおも存在する血清型の結合を観察することによって、決定される。Soininenら(2000年)は、例えば、特にワクチン接種していない個体において、血清における著しい交差反応性を見出した。しかし、これらのアッセイは、特にワクチン接種していない個体において一般的な非特異的反応性を除去するために、注意深い較正、ならびにCWPSおよび他の多糖の事前吸着を必要とする(Marcheseら、2006年)。マイクロアレイ印刷および読み取り技術を使用する、この方法に対する現在の更新(Pickeringら、2007年)は、例えば、これらのアッセイの信頼性を大いに改善している;しかし、この研究に至るまで、観察された交差反応性が実際の個々の交差反応性抗体に起因するかまたは血清抗体のポリクローナル性質に起因するかは、明確にできなかった。
モノクローナル抗体における交差反応性に焦点を当てたこの研究は、かかる曖昧さを扱ってきた。Parkら(2009年)は、抗体が結合している共通の線状炭水化物構造を推定する、交差血清型モノクローナル抗体を記載している。他の報告(Baxendaleら、2006年;Baxendaleら、2000年;Zhouら、2004年)は、交差反応性抗体を特定していないが、Fabライブラリーから産生された抗体だけが、対象の血清型を用いてパニングされている。しかし、これらの実験は、多数の抗肺炎球菌ヒトモノクローナル抗体を特徴付けた最初の実験であり、抗体のほとんどが血清型特異的であるが、15%はそうではなかった。上記報告とは異なり、本発明者が特徴付けたモノクローナル抗体のいくつかの交差反応性を説明することは、明らかに、類似の一次多糖構造を見出すことほどには単純ではない。9N/9Vおよび19A/19Fはかなり類似しているが、17Fおよび33Fならびに14および15Bは、類似の一次構造を有さない。Pickeringら(2007年)は、観察された結果(図3A〜Dおよび4A〜C)と全て一致して、9Vが9N結合を阻害し得、15Bが14結合を阻害し、19Fが19A結合を強く阻害し、33Fが17F結合を強く阻害したことを見出した。興味深いことに、この逆は典型的には当てはまらないが(14は15Bを阻害せず、17Fは33Fを阻害しない)、これは親和性の問題である可能性が高い。これを説明するためにこれらの結果を使用すると、9Nに対するその親和性は、1オーダーを超えて高いので、9Nに対するCon1p4B03結合が、9V多糖を添加することによって阻害され得る可能性は低い。全体で、本発明者は、これらの研究で観察された血清交差反応性が、少なくとも2つの異なる血清型に結合する個々のモノクローナル抗体に実際に起因していることを、自信を持って言うことができる。
ドナーの各々が、血清型の各々に対する抗体の独自の群を生成したという観察は、大変興味深い。この現象の1つの説明は、「既往フィンガープリント」を見ているというもの、または観察されているメモリー応答が、被験体の各々が過去において曝露された血清型の産物であるというものである。彼らがPneumovax(登録商標)23ワクチンを受ける時点までに曝露されたものが23株のうちいくつであるかを概算することは困難である。その血清がPickeringら(2007年)によって注意深く試験された4人のドナーは、22の血清型のうち5〜12についてかなりのIgG濃度(1μg/mlより高い)を有し(これらの試料は、CWPSおよび22Fが枯渇していた)、これは、活性な形質細胞を示し、引き続いて、これらの血清型に対する以前の曝露を示す。本明細書のドナーは、この以前の研究における血清学と一致して、平均11(13、13、9および10)の血清型をちょうど超える抗体を示した。従って、ワクチン接種の七日後のメモリー細胞の再活性化からの抗体が、おそらく長期生存形質細胞由来の、血清において観察された抗体と類似していることが観察されている。
これらのヒトモノクローナル抗体の生成は、基本的な既往応答を解明するが、治療目的もまた果たし得る。多くの現在の処置が、抗生物質耐性に対して無効になり得るので、病原体を安全に標的化し得る受動免疫療法剤を検討することが重要である。いくつかの以前の報告(Casalら、2002年;Yusteら、2002年)は、マウス敗血症モデルにおいて特異的抗体の影響を調査している。著しいことに、感染後に過免疫血清を投与することで、マウスが回復するのに必要とされる抗生物質の量を、8分の1に低減させることができた。さらに、この相乗効果は、免疫無防備状態の個体において、膿胸などの困難または侵襲性の感染、ならびに菌血症を処置する際に有効に使用され得る。完全にヒトのモノクローナル抗体の無数の処置選択肢に加えて、アナフィラキシーショックおよび抗処置免疫応答の大幅に減少したリスクは、それらが現在自己免疫状況にある場合と同様に、感染性疾患においてこれらが重要になることを示唆している。
本明細書で開示され特許請求された全ての組成物および方法は、本開示に照らして過度の実験なしに作製および実行され得る。本発明の組成物および方法は、好ましい実施形態に関して記載されてきたが、バリエーションが、本発明の構想、精神および範囲から逸脱することなしに、本明細書に記載される組成物および方法に、ならびにこの方法のステップまたはステップの配列において、適用され得ることが、当業者に明らかである。より具体的には、化学的および生理学的の両方で関連する特定の薬剤が、本明細書に記載される薬剤を置き換え得るが、同じまたは類似の結果が達成されることが明らかである。当業者に明らかな全てのかかる類似の置換および改変は、添付の特許請求の範囲によって規定されるように、本発明の精神、範囲および構想内に入るとみなされる。
VIII.参考文献
以下の参考文献は、本明細書中に示された内容に対する例示的手順または他の詳細の補充を提供する程度まで、参照により具体的に本明細書に組み込まれる。