JP2015507685A - 複雑性の低い、重質炭化水素の高収率転化 - Google Patents

複雑性の低い、重質炭化水素の高収率転化 Download PDF

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Abstract

高い溶媒対プロセス流体比を持つ、高性能溶媒抽出法を利用し、依然として低い全体としての溶媒対プロセス流体比を維持しつつ、重質炭化水素から、先ず該重質炭化水素に対して穏やかな熱分解を行い、次いで得られた熱的な影響を受けた流体からアスファルテンに富む画分を分離し、結果として該方法の高い溶媒対オイル比部分を、これらアスファルテンに富む画分のみに作用させ、また乾燥、固体アスファルテンを、最終製品として製造することにより、パイプライン-レディーまたはリファイナリ-レディー供給原料を製造するための方法。【選択図】図1

Description

本発明は、ビチューメン等の重質炭化水素を改善して、より軽質のより流動性の高い生成物、およびより詳しくはリファイナリ-レディー(refinery-ready)でありかつ希釈剤の添加なしにパイプライン輸送基準を満足する最終的な炭化水素製品とするための、最適化された方法に関するものである。固体アスファルテン副生物は、容易に取扱えるものとして、また更に加工されるものとして生成される。本発明は、カナダ産のビチューメンをより良いものとすることを目標としており、しかも本発明はあらゆる重質炭化水素の改善において、一般的な用途を有している。
重質で粘稠な炭化水素の所望の製油所用の供給原料への転化実行可能性およびその経済性を改善すべく、低複雑性で、高収率の一体化された方法が、開発され、テストされかつ向上を図られてきた。この一体化された方法の概念は、米国特許出願第13/037185号および同第13/250935号において以前に記載されており、またパイロットプラント(5 BPD)およびデモスケール(1500 BPD)の設備を通して検証されている。剪断混合による該一体化された方法に対する改善は、米国特許出願第61/548915号に記載されている。
本発明は、記載の一体化された方法に関して、最低の複雑さおよび最高の収率を実現するための、最適の動作条件を記載する。該一体化された方法は、当分野の任意の公開された(open art)方法を外れた、温度、圧力、熱流束、滞留時間、掃引ガスの割合および溶媒対オイル比において動作する。全てのこれら条件の新規な組合せ、および溶媒の選択に由来する、この新規な一体化された方法に関する低減された資本および運転費は、その高い液体製品の収率と共に、あらゆる重油メーカーに対して、高い利益を得る機会を与える。
(従来技術の説明)
オイルサンドビチューメンをパイプラインで輸送可能かつ製油所に許容される原油に添加しおよび/または状態調節するための様々な方法が開示されている。注目すべきは、熱分解、接触分解、溶媒脱歴およびこれら3つの方法の組合せ(例えば、ビスブレーキング法と溶媒脱暦法との組合せ)が、ビチューメンを転化して、製油所用の供給原料として輸送し、また使用するためにその諸特徴を改善すべく、提案されている。
熱分解
熱分解の一形態である、ビスブレーキング、即ちビスコシティーブレーキングは、周知の石油精製法であり、該方法において、重質および/または還元された原油は、比較的温和な条件下で熱分解、または分解されて、より低い粘度および流動点を持つ生成物をもたらす。その結果として、所定量の粘稠性の低いおよび徐々に増大するコスト高なものを減じて、該原油の流動性を改善するための希釈剤として知られるブレンド用炭化水素を得、また該原油に、最小限度の輸送パイプライン規格値(19なる最低API比重)を満足させる。
2つの基本的なビスブレーキング構成、即ちコイルオンリー(coil-only)ビスブレーカーおよびコイル&ソーク(coil-and-soak)ビスブレーカーがある。これら両者は、上記原油を加熱するためのヒーターを必要とし、該コイルオンリー式のものではヒーターチューブのみにおける分解を利用している。コイルオンリービスブレーカーは、約1分間という滞留時間で、該ヒーターの出口において約482℃(約900°F)にて動作する。ガスオイルを再循環させて、該反応を停止させる。上記コイル&ソークビスブレーカーにおいては、容器が炉の出口において使用されて、該原油の分解のための追加の滞留時間が与えられる。該原油は放置され、またその温度が徐々に低下するにつれて、分解/反応し続ける。該コイル&ソークビスブレーカーは、約427℃(800°F)なるヒーター出口温度にて運転される。そのソーカードラム温度は、該出口において約371℃(700°F)まで低下し、ここで全滞留時間は1時間を超える。
このようなビスブレーキング法の例は、Beuther等, 「重質残留物のサーマルビスブレーキング(Thermal Visbreaking of Heavy Residues)」, ジオイルアンドガスジャーナル(The Oil and Gas Journal), 57:46, Nov 9, 1959, pp. 151-157; Rhoe等, 「ビスブレーキング:アフレキシブルプロセス(Visbreaking: A Flexible Process)」, 炭化水素加工(Hydrocarbon Processing), Jan., 1979, pp. 131-136;および米国特許第4,233,138号において記載されている。収率構造(yield structure)は、何れの構成に対してもほぼ同一である:1-3%のライトエンド;5%(wt)のナフサおよび15%(vt)のガスオイル。残部は、重油またはビチューメンのままである。これら生成物は、更なる加工またはブレンドの目的で、蒸留カラム内で分離される。
標準的なビスブレーキングスキームに係る一つの問題は、カナダ産のビチューメンに関連して、動作温度がその限界(約371℃〜約382℃(700°F-720°F)なる範囲)を超えることにあり、ここでは著しいコーキングが、実施可能性に影響を及ぼしている(Golden & Bartletta, (カナダ産重質原油用の)真空ユニットの設計(Designing Vacuum Units (for Canadian heavy crudes)), ペトロリウムテクノロジークオータリー(Petroleum Technology Quarterly), Q2, 2006, pp. 105)。更に、該ヒーター内で短期間に渡り熱が加えられ、その結果、局所的な熱流束が不規則になることはなく、またこれはコーキング開始限界よりも十分に高い位置でピークに達することができ、更に該熱は絶えず維持されることはなく、縮合反応の発生を可能とする。カナダ産ビチューメンに対して従来のビスブレーキング法を適用する試みは、上記コーキング傾向およびこの問題への対処に係るこれら系の無力さのために制限される。
米国特許第6,972,085号の主要部分および同第7,976,695号において、長期間に渡り、原油に一定不変かつ持続的な熱の適用に係る要求を扱おうとの試みがなされている。本質的に、上記ヒーターおよび保持容器は、一つの容器に併合されて、該原油用の連続加熱浴を生成する。様々な時点において、該原油には多数のレベルの加熱が適用される。これは、標準的なビスブレーキング法を超える改善の一つであるが、該処理された原油内のホットスポットの形成を排除することはなく、分解に対する最適レベルを超える温度ピークのために、コーキングが発生してしまう。
熱分解/接触分解法と溶媒脱暦法との組合せ
米国特許第4,454,023号には、重質で粘稠な炭化水素オイルを処理するための方法が開示されており、この方法は、該オイルをビスブレーキングする工程;該ビスブレーキング処理されたオイルを分画する工程;2-段階の脱歴処理で、該ビスブレーキング処理されたオイルの蒸留されない部分を溶媒脱歴処理して、別々のアスファルテン、樹脂、および脱歴されたオイル画分を生成する工程;該脱歴オイル(DAO)と上記ビスブレーキング処理された留分とを混合する工程;および上記脱歴工程由来の樹脂を再循環し、かつこれを、上記ビスブレーカーに最初に供給される供給原料と併合する工程を含む。この米国特許第‘023号は、カナダ産ビチューメンよりも軽質の炭化水素(API度(比重)>15)をアップグレードする手段を与えているが、該炭化水素流を過度に分解およびコーキングするであろう、上記熱分解技術の誤った適用による、また該脱歴されたオイルから該樹脂画分を分離するための、2-段階の溶媒脱歴システムの複雑性およびコストによる、負担が掛けられている。更に、該樹脂流の一部分を再循環する必要性は、操業コストおよび操作の複雑性を増大する。
米国特許第4,191,636号において、重油は、同時にアスファルテンを選択的に分解し、かつニッケルおよびバナジウム等の重金属を除去するために、該重油を水素化処理することにより連続的にアスファルテンと金属を含まないオイルとに変換される。該液状生成物は、アスファルテンを含まず、かつ金属を含まないオイルの軽質画分と、アスファルテン-含有かつ重金属-含有オイルからなる重質画分とに分離される。該軽質画分は、製品として回収され、また該重質画分は、該水素化処理工程に再循環される。この特許第'636号記載の方法を用いた、カナダ産重質ビチューメン(API比重<10)の接触転化は、選択性および収率に影響を及ぼす、迅速な触媒の失活に係る、信頼性の問題を持つ傾向がある、強力な方法である。
米国特許第4,428,824号においては、溶媒脱歴ユニットが、ビスブレーキングユニットの上流側に設置されていて、そのビスブレーキング作業に由来するアスファルテンを除去している。この構成において、該ビスブレーキングユニットは、今回はより高温にて動作して、何の妨害もなしに、より重質の分子をより軽質の炭化水素分子に転化することができる。というのは、該アスファルテンが該生成物の流れから完全に除去されているからである。しかし、該ビチューメンの収率は、大幅に低下される(10-15%だけ)。この方法における該アスファルテンの初期の除去が、該原油の当該部分の精製可能な生成物への熱的転化を妨害するからである。
米国特許第4,428,824号におけるように、米国特許第6,274,032号は、炭化水素供給原料源を処理するための方法を開示しており、この方法は、主な原油成分を分離するための精留塔、次いでより重質な粗製アスファルテンに富む成分に対して作用する溶媒脱歴(SAD)ユニット、および非アスファルテン系の流れに対する穏やかな熱分解装置を含む。該アスファルテンに富む流れは、ガス化ユニット内で処理されて、水素需要に対する合成ガス(シンガス)を発生する。熱分解装置の上流側にSDAユニットを配置することにより、製油所供給原料としての上記ビチューメンの全体的な収量が減少する。というのは、カナダ産ビチューメンの15%までを構成する、該原油のアスファルテン部分が、原油としてのある形態における含有物に対する考察から除外されるからである。製品収量におけるこの損失は、上記ビスブレーカーにおける高い分解性によって補償されることはない。
米国特許第4,686,028号では、全原油を処理するための方法が開示されており、この方法は、2-段階の脱歴工程において高沸点範囲の炭化水素を脱歴して、別々のアスファルテン、樹脂および脱歴オイル画分を生成し、次いで該樹脂画分のみを水素添加またはビスブレーキング処理することによってアップグレード化する工程を含む。この米国特許第4,686,028号の発明は、全原油の流れの内の好都合な部分にビスブレーキング処理を施して、コークスの発生を最小化している。しかし、この特許‘028は、最適の転化率に起因する利益を得る可能性のある、該原油の大部分を失うことにより制限され、従って該原油の大部分は、輸送用希釈剤の必要性なしに、最終的にパイプライン製品となることはない。
米国特許第5,601,697号においては、抜頭原油を処理する方法が開示されており、該方法は、該抜頭原油を減圧蒸留し、該蒸留に由来する残液生成物を脱歴し、該脱歴オイルを接触分解し、蒸留可能な接触分解画分(約593℃(約1100°F)なる大気等価(atmospheric equivalent)沸点)を混合して、輸送燃料、軽質ガス、およびスラリーオイルを含む生成物を製造する工程を含む。米国特許第’697号は、複雑性、コスト、および約454℃(約850°F)まで抜頭重質原油を減圧蒸留すること並びに該脱歴されたオイルを接触分解して輸送燃料を製造することの技術的実行可能性による負担を受けることになる。
米国特許第6,533,925号においては、溶媒脱歴法と、ガス化法および溶媒、脱歴されたオイル(DAO)および樹脂を含む溶媒溶液から樹脂相を分離するための改善された方法との一体化を含む方法が開示されている。上記第一のアスファルテン抽出器よりも温度の高い溶媒を使用する樹脂抽出器が、本特許’925号の発明において含まれている。該アスファルテンの流れは処理されるが、あらゆる熱的転化処理前に除去され、使用可能な製油所供給原料にまで価値を高める可能性が排除される。その影響は、該原油の流れの可能な全体的収率における減少である。
米国特許出願第2007/0125686号においては、一方法が開示されており、該方法においては、重質炭化水素流が、先ず蒸留によって様々な画分に分離され、その重質成分は穏やかな熱分解装置(ビスブレーカー)に送られる。該穏やかな熱分解装置由来の残りの重質の液体は、公開された技術のSDAユニットにおいて溶媒脱歴される。該SDAから分離された該アスファルテンは、ガス化装置に対する供給原料として使用される。該脱歴オイルは、凝縮された温和な熱分解装置の蒸気とブレンドされて、ブレンド製品が生成される。上記特許’023において述べられているように、ビスブレーキングは、早期のコークス生成という難題に直面する。具体的には、該特許出願’686号は、この穏やかな熱分解装置を使用する意図が、専ら非-アスファルテン系物質を分解することであるものと説明しているが、このことは、カナダ産ビチューメンについても実際的ではない。この特許出願において、該穏やかな熱分解装置は、不必要にコークスの生成、およびその結果としてのその収率を増大する、高圧条件下で動作される。更に、該蒸留および抽出工程において追加のエネルギーが必要となり、その分離され多成分の殆どが、パイプライン輸送のために再度組合されることになる。
米国特許第8,048,291号においては、一方法が開示されており、該方法において、大気圧カラムおよび/または減圧カラム由来の残液は、溶媒脱歴ユニットにおいて処理され、また次いである態様の熱分解または接触分解により処理される。この特許の目的は、該分解装置の上流にSDAを配置することにより、該DAOの流れを分解するコストを減じることにある。多数の抽出工程および該SDAの動作条件は、この方法全体のコストを増大し、より小型の分解ユニットによる節約の幾分かを相殺してしまい、該一体化された方法は、収率を高めるべく、水素を添加するのに多大なコスト増を負わなければ、より低い全体としての収率をこうむることになる。該SDAユニットは、重質ビチューメン流の15%以上を構成する、上記重質アスファルテンを除去し、結果として経費の掛かる接触法を使用しない場合には、全体としての収率を85%未満に制限してしまう。この方法のこの全体としての結果は不経済であり、処理される供給原料の限界は、該SDAによって、5APIを超える。
SDAにより生じたアスファルテンに富む流れの処理
米国特許第4,421,639号において、溶媒脱歴法は、第二のアスファルト抽出器を使用して、アスファルテン物質を濃縮(またより多くの脱歴オイルを回収)している。該濃縮されたアスファルト流は、ヒーターに送られて、約0.124MPa絶対圧力(18psia)にて約218℃(425°F)とされ、またフラッシュドラムおよび流れストリッパーを用いて、該アスファルト流から溶媒(この場合はプロパン)が分離される。液体頸状にあるアスファルト製品は、保存のためにポンプ輸送される。この配列は、該アスファルトに富む流れが、これらの条件において液体である場合においてのみ働く。何らかのかなりの量の固体アスファルテンが、ビチューメンと同様にアスファルテンに富む流れにおける如く存在する場合には、詰りによる負荷を受ける。
米国特許第3,847,751号においては、上記SDAユニット由来の濃厚なアスファルテン生成物が、溶媒と混合されて、スプレー乾燥機に対する液状溶液として搬送されている。スプレーノズルの設計および圧力降下は、形成される液体の液滴のサイズを決定付けている。該軽質炭化水素(溶媒)の液滴が小さいほど、迅速に完璧に蒸発する。該重質炭化水素(アスファルテン)粒子が小さいほど、乾燥非粘着性固体粒子を製造するという目的で、該重質の液滴を冷却するための熱伝達に対して利用し得る表面積が大きくなる。追加の冷却ガスが、該スプレー乾燥機の底部に添加され、結果的に付随的な対流熱伝達による冷却が増強され、並びに(上向きの冷却ガス流による)該液滴の下降速度の低減によってその滞留時間を増大させて、その容器のサイズ(極めて大きい傾向がある)を減じる。この配列は、該抽出機内で析出したアスファルテン粒子が、該方法の稼働温度にて該溶媒中で固体形状にある場合には、必要とされない。
米国特許第4,278,529号においては、ビチューメン系物質の持込みなしに、圧力低下によってビチューメン系物質から溶媒を分離する方法が例示されている。ビチューメン系物質および溶媒を含む該流体状の相の圧力は、減圧バルブを通すことにより低下し、また該相は蒸気ストリッパー内に導入される。該圧力の減少は、該溶媒の一部を気化させ、また該溶媒中に微細なビチューメン系粒子のミストを分散させる。この方法に係る問題は、残留するアスファルテンが、湿潤かつ粘着性状態のままであり、また該重質ビチューメン系の相(多数の固体を含む)を流動状態に維持するのに十分な溶媒を残してはいない。
米国特許第4,572,781号においては、遠心デカンターを用いて、重質炭化水素材料から高い軟化点を持つ実質上乾燥したアスファルテンを分離して、固体アスファルテンからなる高度に濃縮されたスラリーから液相を分離するための溶媒脱歴法が記載されている。この方法は、固体粒子を有する濃厚なアスファルテン流の処理を意図するものであるが、該固体の分離が、該材料を該デカンターまで流動させる必要性のために、追加の溶媒添加を伴う、固/液分離により行われることから、著しく経費の掛かる方法である。常に、該分離された固体物質は、依然として比較的高い湿分を含み、また蒸気として該溶媒を回収するために別途の乾燥工程を要する。該溶媒蒸気は、再使用のために凝縮する必要があり、これは別の高エネルギー工程を必要とする。
米国特許第5,009,772号においては、連続的な比較的低温の脱歴法に関連する方法が示されており、該方法では、重質炭化水素供給原料物質と抽出溶媒とを、高い亜臨界的な温度および超大気圧にて、抽出ゾーン内で接触させて、軽質の抽出相と、より高分子量の炭化水素成分、コンラドソン(Conradson)炭素プリカーサおよび重金属に富む重質相とを製造している。この米国特許第5,009,772号は、該抽出ゾーン内で生成された該第一の軽質抽出相に対して連続的に圧力を下げることを含み、これは該SDAユニット内での、超臨界的条件未満における操作には幾つかの利益があることを示唆している。しかし、該方法全体における更なる改善が、より重質の原油を、より単純な、経費の掛からない様式での処理を可能とするために利用し得る。
米国特許第7,597,794号においては、溶媒抽出により分離した後に、アスファルト相に分散溶媒が導入され、また該アスファルト相は、ガス-固体分離装置内で迅速な相変化を行い、また固体粒子内に分散され、一方で該溶媒は蒸発して、アスファルトと、調節可能なサイズの該アスファルト粒子を含む溶媒との、低温での分離をもたらす。輸送媒体として液状溶媒を使用するフラッシュ/スプレー乾燥機に係る難題は、この方法において生成される上記アスファルテンが、フラッシュ乾燥段階の前、その最中およびその後に、湿潤状態を維持する傾向である。更に、この方法によれば、該アスファルテンは、高温において液化し続ける。湿潤状態にあるアスファルテンは、あらゆる表面に付着し、また該機器を容易に汚染し、かつ詰まらせる。この方法の使用に起因する低減された信頼性は、高いアスファルテン系物質の含有率を持つ重質の原油に対して、この操作をコスト高なものとしている。この特許の実施例6は、2なるAPIを持つ重質原油を使用しており、この場合達成される全体としてのDAOの収率は83.5%であり、また溶媒の回収率は80%を超える。これらの値は両者共に、これが不経済な方法であることを示しており、また大幅に改善することができる。
米国特許第7,749,378号においては、重油またはビチューメンを輸送し、またアップグレード化するための方法を例示しており、該方法は、該重油またはビチューメンを、その製造場所において、3〜8個の炭素原子を持つ炭化水素を含む希釈剤で希釈して、混合物を生成し;該製造場所からの該混合物を、溶媒脱歴ユニットに搬送し;該溶媒脱歴ユニット内で該混合物を脱歴して、アスファルテン画分、本質的にアスファルテンを含まない脱歴されたオイル画分および溶媒画分を回収し;該溶媒脱歴ユニットにおいて、該アスファルテン画分、該脱歴されたオイル画分および該溶媒画分から水および塩を分離し;および該溶媒画分の少なくとも一部を上記製造サイトに搬送して、該重油またはビチューメンを希釈し、かつ上記混合物を形成する各工程を含む。この特許における該方法は、当然のことながら2以上のAPIを持つ原油(2-5なる範囲のAPIが特許請求されている)に制限される。というのは、該抽出装置の詰りは、常に低い信頼性を結果し、またこの方法において許容される条件は、全体的な収率を、全バレルの<85%に制限する。というのは、ビチューメンのような重質の原油は、15%を超えるアスファルテン含有率を持つであろうし、またこれらの分子は、この方法では完全に排除されるからである。
米国特許第7,964,090号においては、SDAおよびガス化を利用して重質アスファルテン系の原油をアップグレード化するための方法が開示されている。この特許において興味深いことは、ガス化装置への流れが、1種またはそれ以上のアスファルテンおよび1種またはそれ以上の非アスファルテン系物質を含む炭化水素と溶媒とを混合することにより生成され、ここで該溶媒対該炭化水素の比は、約2:1〜約10:1なる範囲にある。該アスファルテンに富む流れは、液状の流れとして上記SDAからガス化装置に移される。輸送に際して使用される大量の溶媒は、該ガス化装置内で消費され、また燃料ガスに等価な値にまでダウングレード化される。該アスファルテンは、液体となる傾向があるので、述べられている量での該材料の輸送のための溶媒の使用は実行可能である。固体アスファルテンに対しては、この方法は、輸送のために10-20倍多くの溶媒が必要とされ、またこのような量の高価な溶媒が消費され、またその価値が減じられるであろう。
本質的に、重質原油、例えばカナダ産オイルサンドビチューメンからパイプライン-レディー原油および製油所用供給原料を製造するための改善された方法が記載され、該方法は以下の諸工程からなっている:(1) 最小限度のコークス生成およびオフガス発生と共に最適のアスファルテン転化を、反応器内の完全なビチューメンの流れにおいて行って、熱的な影響を受けたアスファルテンに富む画分、最小量の非凝縮性蒸気流、および増大量の製油所用供給原料の液体流を生成する工程;(2) 該熱的な影響を受けたアスファルテンに富む画分を脱歴処理して、製油所用供給原料の液体流および濃縮されたアスファルテン流とする工程;(3) パイプライン仕様に対して必要とされるように、特定の炭化水素成分を選択的に水素化処理し、また上記液体流の全てを最終的にブレンドして、製油所用供給原料を製造する工程;および(4) ガス化装置、発電プラントまたはアスファルトプラントにおける転化のために、該濃縮された固体アスファルテン流を慣性分離処理する工程。
上記ビチューメンを熱的に処理して、選択されたアスファルテンを除去し、また転化/分解し、次いでこれらをより効率的な溶媒抽出工程において十分に分離し、かくしてコークスの生成を減じ、また望ましからぬ汚染物質(金属、MCR、および残留アスファルテン)を単離する。
ここに記載される本発明の稼働条件下で、カナダ産ビチューメンアスファルテンに関する相対的な複雑性および高い側鎖所有度を考慮して、該側鎖を、中心的な該アスファルテン分子から優先的に開裂させて、所望の真空ガスオイルを軽質炭化水素領域の成分とする。残留する熱的な影響を受けたポリ芳香族アスファルテンコアは、稼働条件以上の高温および高圧において固体状態を維持しており、従って溶媒脱歴法(50)および慣性分離法(110)等の改善された分離法において生じる、熱的に影響を受けていないアスファルテンよりも一層容易に分離される。
更に、上記ビチューメン内のより重質の炭化水素は、また穏やかに分解されて、全て製油所において分離および転化するのに望ましい真空ガスオイル、ガソリンおよび流出物沸騰領域の成分とされる。上記反応器におけるビチューメンプール内の温度および熱流束におけるあらゆる主要なズレは、コークス化および高いガス収率、また上記元のビチューメンの全体的な粗収率における減少、および該操作の低い信頼性へと導き、これらはこの設備の稼働コストを増大する。
本発明は、重質の高アスファルテン原油(例えば、カナダ産ビチューメン)からのパイプライン-レディーおよびリファイナリ-レディー供給原料および未処理のまたは予め処理された炭化水素流としての有用性を持つ供給原料を製造するための装置及び方法を提供するものであり、該方法並びに装置は、プロセス流体を、反応器の所望の稼働温度またはその近傍の設計温度まで予備加熱するための予熱装置を含み;該プロセス流体を転化するための反応器内で該プロセス流体に調節しつつ熱を適用することにより、該流体を転化するための該反応器内に該流体を移し、結果として該プロセス流体を、該反応器全体に渡り実質的に均一な温度に維持して、熱的な影響を受けたアスファルテンに富む画分の流れ、および最少量の非凝縮性の蒸気を含む液体炭化水素蒸気の流れを生成する。該蒸気の流れは、2つの更なる流れ、即ち非凝縮性の蒸気、および軽質液状炭化水素の流れに分離される。該熱的な影響を受けたアスファルテンに富む画分は、先ず高剪断ミキサを用いて混合され、次いで1-段階溶媒抽出法を用いた脱歴処理により、夫々脱歴されたオイル液体、および濃縮されたアスファルテンとされる。これらの諸工程において生成された該脱歴されたオイル液体および該軽質液状炭化水素はブレンドされて、パイプライン-レディーおよびリファイナリ-レディー供給原料とされる。該濃縮されたアスファルテンは、慣性分離ユニット内で処理されて、乾燥固体アスファルテン副生物を生成する。
掃引ガスを上記反応器内に配置することができ、また予備加熱して、該反応器のヒーター以外の熱流束源を設けることができ、該掃引ガスは、また反応器における蒸気系生成物の除去を支援する可能性がある。
脱歴は、あらゆる公開技術の溶媒抽出法以外の条件にて、少なくとも一つの抽出段階(より多くの段階も使用可能)および低圧ストリッパーを使用して実現される。該初期のプロセス流体は熱的な影響を受けているので、上記重質のアスファルテンに富む画分は、高剪断ミキサ、および類似のアップグレーダの操作において典型的に見られるものよりも低い、溶媒対オイル比、温度および圧力の組合せを用いる、複雑性のより低い1-段階抽出法を用いて、更に分離することができる。より一層低い全体としての溶媒対オイル比を用いて更に一層改善された溶媒-抽出性能および改善されたDAOの収率を、最終的な抽出段階に先立って、上記アスファルテンに富む画分をさらに濃縮することによって、達成することができる。この方法は、公開された溶媒脱歴法に対して、第一の溶媒抽出カラム由来の該アスファルテンに富む流れについて操作される、追加の溶媒抽出カラム(リンスカラム)を用いることによって改善を施し、パイプライン原油の回収率および品質を高める。
上記SDA法は、上記重質のアスファルテンに富む炭化水素流の幾分かの部分を、上記反応器に再循環し、かつ新たな供給原料とブレンドすることを可能とする。
上記の得られる濃縮された熱的な影響を受けたアスファルテンを、首尾よく、遠心コレクタまたは沈降チャンバー等の慣性分離機内で処理して、乾燥固体アスファルテン副生物を生成することができる。
数葉の添付図全体に渡り、同様な参照番号が、類似の部品を示している、添付図を参照すると、これらの図における本発明の数種の局面は、本発明を限定するのではなく、これを詳細に例示するものである。
図1は、重質炭化水素供給原料由来の、パイプライン輸送可能な炭化水素製品を製造するための工程図である。 図2は、具体的に分解工程および液体分離工程および固体分離工程に関連する工程図である。 図3は、一体化された穏やかな熱分解法および改善された溶媒脱歴法の例示的な応用を示すものであり、該応用においては、記載された1またはそれ以上の態様に従う真空及び/又はコーキングユニットを備えた、既存のアップグレーダまたは製油所内に適切に配置された剪断混合デバイスを用いる。 図4は、一体化された穏やかな熱分解法および改善された溶媒脱歴法の、図3とは異なる、特定の例示的な応用を示すものであり、ここには記載された1またはそれ以上の態様に従う水素化分解、残留物水素化分解およびガス化ユニットに送られる、該一体化された分解装置/SDAからの様々な生成物を含む、既存のアップグレーダまたは製油所由来の真空残液流が供給される。
添付した図面との関連で以下に示される詳しい説明は、本発明の様々な態様を説明するものであり、本発明者により目論まれた態様のみを示そうとしたものではない。この詳細な説明は、本発明の包括的な理解を与えるための特定の細部を包含する。しかし、本発明が、これらの特定の詳細なしに実施可能であることは、当業者には明白であろう。
本発明のその他の局面が以下の詳細な説明から当業者には容易に明らかとなるであろうことを理解すべきであり、以下の詳細な説明において、本発明の様々な態様が示され、また例として記載されている。認識されるであろう如く、本発明は、その他のおよび異なる態様に対しても適用可能であり、その数種の細部は、本発明の精神並びに範囲を全く逸脱することなしに、様々な他の点において改善を施すことができる。従って、以下の図面および詳細な説明は、その性質上例示的なものであって、限定的なものではないと考えるべきである。
図1は、炭化水素供給原料12から炭化水素生成物160を製造するための方法10を描写した工程流れ図であり、ここで該最終的な炭化水素生成物160は、最低限のパイプライン輸送要件(19という最低API比重)を満たすのに十分な諸特性を持ち、また好都合な製油所用供給原料である。重質炭化水素の供給原料12から形成されたプロセス流体14は、反応器30に配送される前に、所定の温度レベルまで該プロセス流体14を加熱するためのヒーター20を通して配送することができ、該反応器において、該プロセス流体14は制御され、かつ維持され、一方でこれは穏やかな制御された分解工程の作用を受ける。該穏やかな分解工程の後、軽質トップ画分32は、該反応器30から気-液凝縮分離工程40に配送することができ、また重質残液画分34は、高性能溶媒抽出工程50に配送し得る。該気-液分離工程40からの生産物44の幾分かを、該高性能溶媒抽出工程50の生産物52、54の幾分かとブレンドして、炭化水素製品160とすることができ、該製品は、該最終的な炭化水素製品160を、外部の源からの希釈剤と混合する必要なしに、あるいはより一層減じられた体積のこのような希釈剤の必要性なしに、所要のパイプライン輸送基準を満たすことを可能とするのに十分な物理的諸特性を有している。
上記供給原料12は、重質炭化水素(未処理のまたは予め処理された流れ)、例えばSAGD(蒸気支援重力排液)工程から得られる重質炭化水素、例えばカナダ産オイルサンドビチューメン、または重質炭化水素のあらゆる他の適当な源を由来とする重質炭化水素であり得る。一局面において、該供給原料12は、0〜14なる範囲のAPI比重を持つことができる。
一局面において、上記高性能溶媒抽出工程50由来の生産物としての樹脂流54の再循環部分70は、工程10を流通する上記プロセス流体14を生成するために、流入してくる供給原料12とブレンドすることができる。該樹脂流は、更なる原油の収率、および/またはより軽質の原油、および/またはアスファルテンの削除(抑制)が、処理された生成物の特性上の目標を満たすために望ましい例においては、該プロセス流体に添加することができる。該樹脂の再循環は、製造の規格値を満たすべく、調節可能な流動パラメータを介して、該操作者に柔軟性をもたらし、また該プラントが、活発に様々な供給原料を扱うことを可能とする。
上記溶媒抽出工程50由来の樹脂製品54は、典型的には比較的低いAPI比重を持つであろう。一局面において、該樹脂製品54のAPI比重は、0〜10なる範囲のAPI比重を持つことができる。上記供給原料12の諸特性および該供給原料12とブレンドされた該製品54の量に依存して、得られるプロセス流体14は、ある範囲の特性および特にある範囲のAPI比重を持つことができる。
上記プロセス流体14(完全に上記供給原料12から得られた、あるいは供給原料12と上記溶媒抽出工程50由来の樹脂生成物54とのブレンドとして作製されたもの)は、上記ヒーター20に配送することができ、該ヒーターにおいて、該プロセス流体14は、上記反応器30に配送して穏やかな熱分解に掛ける前に、該ヒーター20を通過する際に所定の温度まで加熱することができる。反応器30は、該反応器全体を通して熱を均一に適用することにより、首尾一貫した流体温度を維持し、結果として該反応器の操作および/または性能にとって問題となり、あるいはこれらにとって有害であるコーキングを引起すことなしに、穏やかな熱分解の発生を可能とする。
一局面において、上記ヒーター20は、上記プロセス流体14を上記反応器30に導入する前に、該流体14を、約357℃〜約413℃(675〜775°F)なる範囲の温度に加熱するであろう。
上記反応器30において、上記プロセス流体14(上記ヒーター20によって、約357℃〜約413℃(675〜775°F)なる範囲の温度に加熱された)は、穏やかな制御された分解工程に掛けられる。該ヒーター20において発生した所望の一定温度を維持し、かつ該プロセス流体14に対して均一な熱流束を適用するように、この反応器30には、適切に配置されたヒーターが設けられている。これらのヒーターは、容易に入手し得る任意の源(電機、熱媒液、発光体等)を介して熱を供給する。該反応器30は、主として5つの相互に関連するプロセス変数(温度、圧力、滞留時間、掃引ガスおよび熱流束)の最適化を通して、該反応中のコークスの生成を減じまたは更には防止するように操作することができ、またガスの生成を最小化し、しかも上記重質炭化水素のアスファルテン部分の一部の、リファイナリ-レディー供給原料成分への最適の転化をももたらす。
上記第一および第二の変数は、約2.21×104〜約3.79×104W/m2(7000-12000BTU/時・ft2)なる範囲の均一な熱流束の、上記反応器内のプロセス流体の全プールへの適用、および約357℃〜約413℃(675〜775°F)なる範囲での、該反応器における単一の稼働温度の維持を含む。これは、該反応器における適当なサイズを持ちまた適切に配置された加熱デバイスの存在により実現し得る。該ヒーターの数は、任意の2つのヒーター間の熱の最適分散を、該プール全体に渡る均一な温度を持つように、また該反応器内の標的温度よりも著しく高いピークまたはスポット温度の発生を回避するように計算することによって、設定されるであろう。
上記第三の反応器変数、即ち滞留時間は、上記反応器において40〜180分間なる範囲の値であり得る。
上記第四の反応器変数である稼働圧力は、首尾一貫した性能を得るために使用される標準的な圧力調節原理を用いて、あらゆる場合において約0.345MPaG(50psig)未満の大気圧近傍の圧力に維持することができる。この圧力範囲は、炭化水素の過度のかつ早期のフラッシングを防止するために、本質的には該反応器を迂回することにより低圧側の限界に調節され、また二次的な分解および結果的な高いガス収率を減じるために、上記高圧側の限界に制限される。
上記第五の反応器変数である、上記プロセス流体21と同一の温度範囲[約357℃〜約413℃(675〜775°F)]にある高温掃引ガス36は、約0.36〜約1.44kJ/L(20-80scf/bbl)なる範囲にて、該反応器30における該プロセス流体14に添加される。
上記掃引ガス36は、天然ガス、水素、上記工程由来の生成/燃料ガス、蒸気、窒素または該反応器環境内で凝縮して液体となることのない、任意の他の非反応性、非凝縮性ガスであり得る。
供給原料の約0.36〜約1.44kJ/L(20-80scf/bbl)なる範囲の投与量での掃引ガスは、上記「より軽量の」炭化水素生成物(即ち、メタン乃至<約399℃(<750°F)なる沸点を持つ炭化水素)を、これらが上記反応器30内で生成されたら即座に除去して、二次的な分解を最低限度とするように供給され、該二次的な分解は、ガスの発生を増大させ、またことによるとオレフィン系ナフサ/留出物の生産量を増大する恐れがある。
上記掃引ガスは、また上記反応器が、上記所望の稼働圧力[約0.345MPaG未満(<50psig)]および稼働温度の近傍にて動作することを可能とする。該掃引ガス36は、また追加の熱を供給し、および/または該反応器30内の上記プロセス流体14と混合し得る。
以上、図1および2に関して論じたように、反応器30に対する熱エネルギーの流れ36は、上記所望の温度[約357℃〜約413℃(675〜775°F)]および圧力[約0.345MPaG未満(50psig未満)]において、該反応器における上記炭化水素の滞留時間(40〜180分間)全体に渡って、均一に[約2.21×104〜約3.79×104W/m2(7000-12000BTU/時・ft2)なる範囲]適用されて、コーキングを開始する恐れのあるあらゆる局所的な流体のピーク温度の発生を最小化し、それにより、反応器30内の炭化水素の転化率を改善する、より高い内部温度における、高い熱伝導を可能とする。これらの稼働条件において、該反応の速度は、上記アスファルテンの最適な転化を有利なものとし、これは該反応器内でコーキングを生じることなしに、あるいは高いガス生産量をもたらすことなしに、上記精製のための所用の望ましい炭化水素(VGOおよびディーゼル範囲の炭化水素)を生成する、所定範囲外の炭化水素鎖を優先的に開裂する。一例として、以下の表1は、様々な型の原油に関連するアスファルテンの、様々な形状、構成を示すものである。上記提案された反応器30の稼働条件は、様々な異なる原油に関する高い側鎖の存在度および相対的な複雑性を考慮に入れている。
表1:様々な源を由来とするアスファルテン分子を表す平均的分子構造:A:伝統的な重質原油由来のアスファルテン;B:カナダ産ビチューメン由来のアスファルテン(Sheremata 等, 2004)。
各変数は、示唆された範囲内で、提供された供給原料の品質に基いて、あるいは望まれる生産物の品質に基いて、夫々独立に変えることができる。上記5つの述べられたプロセス変数は相互に関連しているので、所定の目的とする機能(例えば、最低の製品規格を満たすための最大収率)を持つ、多-変数プロセスコントロールスキームは、該変数の何れか一つを変更した場合または供給原料/生成物状況または目標が変更された場合に、該方法が最適の点において稼働することを保証する上で有益であろう。
一旦上記プロセス流体14が、上記反応器30からの生産物の諸特性が所定の性質に達するように、十分な期間に渡り該反応器30内に維持されたら、軽質オーバーヘッド画分32および重質残液画分34を、該反応器30から取り出すことができる。
上記反応器30を由来とする生産物の上記軽質オーバーヘッド画分32は、非凝縮性の蒸気生成物、軽質液状炭化水素およびより重質の液状炭化水素を含むことができる。この蒸気生成物は、熱分解を受けつつ、上記プロセス流体14から放出された蒸気、例えばサワーガス、並びに該反応器30を流通した、導入されかつ未転化のもしくは未使用の掃引ガス36であり得る。
上記オーバーヘッド液体画分32は、上記残液画分34よりも大きなAPI比重を持つであろう。例えば、該オーバーヘッド液体画分32は、典型的に26またはそれ以上のAPI比重を持つことができる。該オーバーヘッド画分32は、気-液分離ユニット40に誘導でき、該ユニットは、一例としてクーラー41および分離ドラム42を含むことができ、そこで、ナフサおよび重質の炭化水素を含む凝縮性の液状生成物である該オーバーヘッド画分32の一部は、該オーバーヘッド画分32のガス状成分から分離することができる。サワーガス等の望ましからぬガスを含むオフガスライン43は、該分離ドラム42において、これらのガスを処分し、再循環し、または更なる処理に掛けることを可能とする。
1またはそれ以上の液状炭化水素流を、分離ドラム42により製造することができる。流れ44、即ち流れ46よりも重質の炭化水素は、製品ブレンド処理に送ることができ、一方で流れ46は、製品のブレンドに先立って、更に大規模の水素化処理に掛けることを考えることもできる。
上記残液画分34は、炭化水素、および変性されたアスファルテンを含むことができる。上記反応器30から採取された残液画分34の特徴は、該反応器30への上記プロセス流体14の投入量および該反応器の稼働パラメータに応じて変動するが、一局面において、該残液画分34は、-7〜5なる範囲のAPI比重を持つことができる。
調節可能なプロセス変数は、操作者が上記反応器30の性能を変更して、流入してくるプロセス流体14の特性の変更に基いて、最終製品の諸要件を満たすことを可能とする。
上記反応器30における上記5種の相互に関連する変数である、滞留時間、掃引ガス、熱流束、温度および圧力の制御性は、操作者が該反応器30の性能を変更することを可能とする。
このように、上記供給原料12の諸特性が、異なる新たな供給原料または多少の樹脂再循環70の何れかとして変更された場合、上記5種の相互に関連するプロセス変数は、コークスの生成を回避し、また該反応器30において生成される非凝縮性蒸気の生成を最小化するように最適化することができる。例えば、該操作者は、該プロセス流体14の特徴に基いて該反応器30内の該プロセス流体14の滞留時間を変更して、生産物32、34の所望の収量および/または品質を得ることができる。あるいはまた、該操作者は、上記掃引ガス、温度または圧力を変更して、同様に適合させた成果を達成することができる。これらのプロセス変数は相互に関連しており、コークス生成の最小化および過度のガス生産の回避は魅力的であり、またこれらはパイロット操作によって最もよく決定され、その決定は、過度の実験の実施なしに行うことができる。
上記反応器30からの上記残液画分34は、高性能溶媒抽出工程50に供給することができ、該抽出工程は、熱的な影響を受けたアスファルテンの流れ58、抽出されたオイルの流れ52および樹脂流54の製造を可能とする。該反応器30は、コークスの形成を著しく制限し、更には阻害し、またガスの生成を減じ、しかもアスファルテンを下流側で処理するためにより一層適した成分に転化するように動作される。結果的に、変性されたアスファルテンおよび他の望ましからぬ要素は、該残液画分34内に残され、該画分は該反応器30から除去される。
上記残液画分34内に残されている上記望ましからぬ要素を含まない、上記の望ましい製油所用供給原料としての原油の回収率を最大にするために、該反応器30からの該残液画分34を、例えば高性能溶媒抽出工程50を利用して、更に処理する必要がある。溶媒抽出工程50による該残液画分34の処理は、該反応器30および該溶媒抽出工程50を組み合わせて使用して、適当な完全な範囲の製油所用供給原料としての原油を生成することを可能とする。
上記溶媒抽出工程50は、任意の適当な溶媒抽出工程を含むことができる。一局面において、該方法は3-段階超臨界溶媒法であり得、該方法は、上記残液画分34内の樹脂から上記アスファルテンを分離する。該溶媒抽出工程50の生産物は、アスファルテン流58、抽出されたオイル流52および樹脂流54であり得る。該アスファルテン流58は、典型的には望ましいものではなく、また工程10から取除かれる。該抽出されたオイル流52は、比較的品質の高いものであり得、9〜15なる範囲のAPI比重を持つ。該樹脂流54は、典型的には該抽出されたオイル流52よりも品質の低いものであって、該抽出されたオイル流52よりも低いAPI比重を持つ。一局面において、該樹脂流54は、0〜10API比重なる範囲のAPI比重を持つことができる。
上記溶媒抽出工程50由来の上記抽出されたオイル流52および上記樹脂流54は、上記気-液分離装置40から得られる液体製品の流れ44と共にブレンドして、パイプラインおよび/またはリファイナリ-レディーの規格値を満足する最終的な炭化水素製品160を製造することができる。一局面において、この最終的な炭化水素製品160は、19を超えるAPI比重を持つであろう。典型的に、該最終的な炭化水素製品160は、350センチストークス(cSt)またはそれ未満の粘度を持つであろう。
上記樹脂流54は、典型的に上記抽出されたオイル流52よりも品質の低いものである。該樹脂流54の再循環部分70は、上記最終的な炭化水素製品160を製造するために再処理すべき供給原料12とブレンドすることができる。結果として、該樹脂流のこの再循環部分は、該最終的な炭化水素製品160の品質を改善するであろう。
図2におけるもう一つの局面においては、上記5つの相互に関連する変数群を用いて稼働される、従って最大の収率を達成するように稼働される、反応器30と一体化された場合の、上記最適な溶媒脱歴および固体分離スキームが、例示されている。剪断ミキサ25および単一のアスファルテン抽出器50が、上記オイルおよび溶媒の流れ51から、流れ58内の固体アスファルテンを分離するように設けられている。反応器30内で生成された上記熱的な影響を受けたアスファルテンのために、上記溶媒抽出は、1-段階で起こり、また約2.5:1までの溶媒対オイルの質量比において、また該溶媒に関する臨界点よりも十分に低い稼働条件にて効果的であり得る。該低エネルギー/強度の1-段階抽出の結果として、単一の低圧溶媒ストリッパー処理流41は、上記製品としての脱歴オイル52と該流れ101としての回収された溶媒とを分離する上で経済的かつ効果的である。流れ58、即ち濃縮されたアスファルテン固体流は、溶媒蒸気流62および乾燥固体アスファルテン流61を分離する、慣性分離装置60内で処理される。流れ62は、110にて濃縮され、また該溶媒は上記工程において使用すべく再循環される。該乾燥固体は、乾燥固体貯蔵槽130に送られ、あるいはその他の方法で処理される。該慣性分離ユニット110は、遠心力、重力、および慣性力等の力の組合せを利用して、流れ58内のガス、残留溶媒から該アスファルテン固体を分離する。これらの力は、該アスファルテン固体を、該ガス流により及ぼされる力が最少となる領域に移すことを可能とする。該分離された固体アスファルテンは、重力の作用によって、該固体を一時的に保存するホッパー内に移すことができる。ユニット110は、沈降チャンバー、バッフルチャンバーまたは遠心コレクタ、固体とガスとの慣性的な分離をもたらすデバイスの何れかであり得る。遠心コレクタは1-段または多段サイクロンの何れかであり得る。該SDAユニット50が、該樹脂、DAOおよび溶媒から該アスファルテンを分離する上で極度に効果的である場合には、流れ58は、適当な低分子量ガス(例えば、天然ガス、または窒素)を用いて投入して、該アスファルテン固体に対して気体搬送手段を与えることができ、該固体は、さもなくば、該ライン内の残留プロセス溶媒をフラッシングすることにより供給されるであろう。気体搬送システムは、粒度約50mmまでの固体を輸送することができる。該固体は、20%以下の水分を含む乾燥状態にあり、また非粘着性でなければならない。上記熱的な影響を受けたアスファルテン固体は、上記基準を満足し、従ってこの方法は、慣性分離ユニット110を使用する能力に基く利益を得る。
反応器30からの生成物である炭化水素の全体としての回収率を高め、かつ溶媒の循環速度を下げるために、高性能溶媒抽出工程50は、もう一つの剪断ミキサ235と共に、随意の補足的抽出処理工程55を含むことができる。第二の抽出器55による、上記アスファルテンに富む流れに対する該追加の溶媒抽出段階は、上記第一の抽出器において使用されたものと同一の溶媒を用いた、標準的な液-液抽出を利用する。該アスファルテンに富む流れに対するこの標準的な液-液カラムの配置は、有益であり得るが、その理由は、その溶媒対オイル比が、このカラム内で20:1まで経済的に高められ、結果として脱歴オイルの回収率が高められ、一方で全体的な溶媒の使用量は低減されるからである。流れ52における高い炭化水素回収率を実現するための全体的な溶媒の使用量は、匹敵する公開技術の方法を使用するよりも25%下げることができる。その結果は、最先端の3-段階抽出法と比較して、大幅に節減されたエネルギー消費である。得られる該アスファルテンの流れ58は、20%小型化されたアスファルテン分離ユニット110内で処理し得る。残留する濃縮され、熱的な影響を受けたアスファルテンのコア部分は、高温[約371℃(700°F)]においてさえ固体であり、側部炭化水素鎖は除去されており、該アスファルテン分離ユニットが処理する体積をより小さくする。更に、該アスファルテンの改善された性質は、より効果的な金属の再生、埋め立ておよびクリーンエネルギー転化技術(例えば、ガス化、接触ガス化、増強されたSAGD生産のための酸素燃焼(oxy-combustion))のためのより良好な供給原料を得る機会をもたらす。
図1の工程10はパイプライン要件を満たした粗製供給原料を与え、また高転化量の製油所にとって最適である。流れ160は、低金属(<20wppmのNi + V)、低アスファルテン(<0.3質量%)、極めて低いTAN数(<0.3mg KOH/mg)を持ち、希釈剤を含まず、またVGO範囲の物質の含量において高い(原油の30-50%)。高転化率製油所(>1.4:1なるコーキングに対する転化率)に対して、流れ160において生成される原油の蒸留品位は、残りのユニットを充填しつつ、最高利益-創出(profit-generating)ユニットの利用性を改善するであろう。以下の表2では、様々な代表的重油粗製流れとしてのオイル159L(1バレル)を含む、各沸騰範囲の物質の百分率を、工程10の流れ160と比較して示す。「非アップグレード化(non-upgraded)」供給原料(dilbit=希釈されたビチューメン;WCS=ウエスタンカナダセレクト(Western Canada Select))は強力な転化を要する、全バレルの35%を超える、より多くの真空重質残留物[約510+℃の物質(950+°F物質)]を含み、また製油業者ではなく製油所に輸送すべきより軽質の物質(C5’s)は、有利に輸送燃料に精製し得る。他方において、該十分にアップグレード化され/製造されたリファイナリ-レディー供給原料(SSB=スウィート合成ブレンド(sweet synthetic blend))は、本質的に真空残留物または軽質物質(C5’s)を含まない。これは釣合が取れておらず、従って製油業者に関して体積上の限界を持つ。製油業者は、10-25%の真空残留物、20-50%のガスオイル(HVGO=重質真空ガスオイル、LVGO=軽質真空ガスオイル、AGO=常圧ガスオイル)、40-60%のガソリン乃至ディーゼルオイル範囲の物質を含む、全体的に十分に釣合のとれた供給原料を処理する操作を開発した。以下の表2に示すように、流れ160は、その他の重質の公知の原油と同一の範囲内にある炭化水素組成を持つ、他の重質の従来の十分に釣合のとれた原油[ANS=アラスカノーススロープ(Alaska North Slope)、WTI=ウエストテキサスインターミーディエイト(West Texas Intermediate)、MSO=ミディアムサワー(Medium Sour)(マイデール(Midale))]と首尾よく比較される。
反応器30、高性能溶媒抽出処理ユニット50、および慣性分離ユニット110の組合せは、低い工程複雑性を示す。このことは、コーキングおよび/または水素化処理スキームに対する9.0-10.0よりも実質的に低い4.0-4.5なるネルソン複雑性指数値として表すことができる。改善された性能の他の例示は、稼働するのに4.70GJ/トン(供給原料)なるエネルギー投入量を必要とするディレードコーキング法と比較した場合の、低い3.93GJ/トン(供給原料)なるエネルギー要求量である。これは、ディレードコーキング(delayed coking)法と比較して、エネルギー強度における16.4%の減少となる。これは、該ディレードコーキング法に関する0.253トンCO2/トン(供給原料)およびここに提案された方法に対する0.213トンCO2/トン(供給原料)なる、比温室ガス(GHG: specific greenhouse gas)排出量に相当する。生成物の比較に基いて、該エネルギー低減率は、コーキング法に対して約25-27%である。
コーキングアップグレード化法および標準的な反応器および溶媒抽出法と比較した場合、工程10は、以下の表3に記されているように、副生物(コークスおよび非縮合性炭化水素)の生成を最小化することにより、収率における大幅な改善をもたらす。
工程10の上記低い複雑性によって、より低い動作温度および圧力に帰せられるもう一つの利益は、より低い投下資本コストである。より少ない装置が必要とされ、また使用し得るフランジ規格(flange rating)は、材料の仕様が関連する温度および圧力のために変化し、コスト増を招く、「区切り点(break-point)」を大きく下回る。該材料の高い硫黄含有率およびTAN規格(TAN rating)を考慮すると、304L/316LSS材料が、信頼性にとって適切な選択である。この冶金学に対して、一例としてクラス300パイプおよびフランジは、約204℃(400°F)および約2.86MPaG(415psig)(起源:ASME/ANSI B16.5 1988/2009規格)まで取扱うことができる。上記SDAユニットは、最大約204℃(400°F)および約2.76MPaG(400psig)にて作動し、従ってクラス(Class) 300を特定することができる。公開技術のSDAプロセスと比較して、例えばクラス600のようなより高級のパイプ/フランジクラスは、これら他のプロセスよりも高い作動温度および圧力での処理を必要とするであろう。全体としての投下コストの節減は、クラス600フランジに関しては、例えばクラス300フランジの価格の8倍のコストを要する、公開された技術のSDA構成のプロセスに対して、工程10に対しては20-30%なる範囲にあるであろう。
新たな大衆的な設備に対して適していると同時に、図3は、開示され、一体化され、制御された本発明の熱分解装置および改善されたSDAの、既存のアップグレーダ(upgrader)への一適用例を示すものである。該提案された一体式方法、反応器30、単純化されたSDA50、およびアスファルテン回収装置110は、製油工場/アップグレーダのコーキングユニットの上流側に配置し得る。製油工場/アップグレーダにとっての利益は、真空およびコーキングユニットの障害を除く能力および該ユニットに対するより重質の原油の受入れ能力である。既存の装置で処理されたより多量の原油は、投下資本と、より大きな利益および経済的な見返りとを一致させる。更に、より高性能の材料が該コーキングユニット300に送られるので、運転の苛酷度を軽減することができ、コーキング装置のサイクル時間(12〜24時間)を増大することによる該コーキング装置の寿命が延長され、かつより少量のガスおよびコークスとより大量の生成物が製造される。装置入れ替えのための資本に係るコストの支出は、先延ばしすることができ、また高い収率を実現することができる(約2-3%)。上記SDAにおいて捕獲された該固体アスファルテンは、容易に入手し得る処分流302を含み、既存のコークス捕集並びに輸送システムは、該提案された一体化法の付加を、よりコスト的に効率の良いものとし、かつ利益率のより高いものとしている。
流れ12は、図3においてユニット200として記載されているような、アスファルテンカラム、真空カラム、または接触的分解ユニット由来の残液流であり得る。該一体化された分解装置およびSDAプロセスは、DAO流52を生成するが、このDAO流は、水素化分解および水素化処理複合ユニット400において、更に処理して、流れ401の輸送燃料とすることができる。該一体化された分解装置およびSDAプロセスは、またコーキングFCC(流動床接触分解)および/または更に処理して最終生成物とするためのアスファルトプラントに送ることのできる樹脂品位の流れ54を生成し得る。前に述べたように、流れ61として生成される固体アスファルテンは、ユニット300において生成されるコークスと混合されるか、あるいは更なる処理(エネルギー生産および/または金属イオン封鎖)のために離れた場所に送ることができる。
一例として、図4は、精油所および/またはアップグレーダに関して、新たに設計または改良する機会を与える、特定の態様を示す。ユニット200は真空ユニットであり、また残液流12は、一体化された分解装置/SDA工程、ユニット20、30、40、50、60、および110に送られる。該DAO流52は、該真空ユニット由来の流れ205と共に、上記水素化分解および水素化処理ユニット400に送られる。樹脂流54はユニット50により製造され、また残留物水素化分解ユニット500に送られる。反応した場合に著しく発熱性であり、またユニット500に送られるアスファルテンが少ない場合、該残留物水素化分解装置は、より高い転化率(+8〜15%)にて稼働でき、最終的な輸送燃料生成物としてより多くの物質を製造する。ユニット110由来の固体アスファルテン流61は、水素発生のためのガス化ユニットに送ることができる。
図3におけるように、図4に示された一体化ユニットの付加による利益は、以下に列挙するものを含む:存在する場合には、プラント障害解消(debottlenecking)に対する流入してくる原油の最大収率、またはコーキングユニットのサイズの低減;存在する場合には障害解消、または残留物水素化分解サイズの縮小;存在する場合には障害解消、またはガス化ユニットのサイズの縮小;複雑性に対して減じられた、全体的なカーボンフットプリント。
また図2の一体化工程は、取扱いの容易な、複雑性の低い(ハイドロスキミング(hydro-skimming))製油工場による、入手の一層容易な、重質のより安価な原油の使用を助け、またその結果より多くの対価を得るべく、有用物の移動を行う。該一体化工程は、該製油所の前方に位置して、該より重質の原油に初期状態調節を施すことを可能とする。
(稼働条件の比較)
本発明による上記一体化工程の新規な配列および特徴は、これまで任意の特定の公知技術の方法では不可能であった領域において稼働する機会を与えることができ、それによって、重質の炭化水素を0なるAPI値にまで処理するための、技術的に実行可能でありかつ経済的に有利な優れた解決策を創生する。89-91%なる範囲のDAOによる体積収率および2%未満の溶媒損失量で、低い稼働コスト並びに資本上のコストをもたらす、この複雑性の低い一体化工程は、パイプライン-レディーのおよび製油所用供給原料を製造するための経済的な(収益率に基づく)解決策を生み出す。以下の表4は、幾つかの代表的な既存の特許と、本発明との比較を与える。太線で示された項目は、工程10と比較した際に、公知技術を直接的に制限し、または該公知技術を不利にする条件を表す。比較技術の何れも、0〜7API比重なる範囲における重質炭化水素供給原料用の例示された方法と同様な収率を実現することはない。この比較は、一体化された分解装置とSDAユニット、および更にはSDAのみのスキームを含む。本発明は、その操作の一部に対して米国特許第7,976,695号に略述されている熱分解工程に係る幾つかの概念を借用しているので、熱分解工程との比較は与えられていない。表4に示したように、該熱分解装置の稼働条件に係る上記固有の組合せは、該SDAの単純化を可能とし、該SDAは、稼働条件とアスファルテン固体および溶媒蒸気を厳密に扱う慣性分離器の使用との固有の組合せによって作動し得る。
この一体化工程を用いて、0〜12+なるAPI範囲にある原油を、信頼性良く処理することができる。更に、上記SDAユニット50は、高い信頼度にて、-5〜0なる範囲のAPIを持つ供給原料を受け入れることができる。上記掃引ガス(他の同様な方法では使用されない)、均一な熱流束(他の方法では均一に維持されない)、低い稼働温度および圧力の使用は、穏やかで好都合な反応が、重質炭化水素を、軽質ガスオイルの範囲に入る既存の炭化水素と共にパイプライン輸送するのに適した、該範囲のガスオイルに変更することを可能とする。最低のコークス生成および軽質ガスの生成は、該炭化水素の大部分(原油バレルの>90%) を、望ましい生成物として維持する。また、アスファルテンは「粘着性の」分子から「クランチング(crunching)」分子に転化されている。-7〜0なる範囲のAPI密度を持つ、上記改善されたアスファルテンに富む流れは、稼働条件の新規な組合せを用いた、単純化されたSDA工程において処理することができる。単一の抽出段階および慣性固体分離装置を備えた低圧溶媒ストリッパーが、上述の高い収率を得るのに必要とされる全てである。以下の表5に示すように、溶媒対オイルの質量比は、C6〜C7なる範囲にある好ましい溶媒に対しては、2-4:1なる範囲内であり得る。該単一の抽出カラムにおける温度は、その圧力同様に、その臨界値を十分に下回る値である。これらの低い稼働条件において、使用エネルギーは、大幅に減じられ、また単一の低圧ストリッパーのみが必要とされる。より安価な材料および構成の、極めて少ない数の物理的な装備が必要とされ、これは全体としての投下コストを、他の概念よりも低いものとする。
溶媒の選択
経済的な目標を満たしつつ、技術的に実行可能であるためには、重質原油(2API未満)を脱歴するための溶媒は、上記必要なアスファルテンをまさに析出させ、しかも該DAOを、該溶媒により溶液状態に維持するのに十分に重質(十分に高い分子量を持つ)でなければならない。また、該溶媒は、大量のエネルギーを必要とすることなしに、該アスファルト抽出器残液(固体アスファルテン+溶媒)の移送中にフラッシングするのに十分に軽質である必要がある。同様に、上記稼働温度は、上記溶媒に対するDAOの溶解度を高めるのに十分に低くする必要があり、また上記固体アスファルテンの移送中に、該溶媒がフラッシングするのに十分な熱が存在するように、十分に高い必要がある。この工程のために、溶液からの固体アスファルテンの析出は、溶媒の選択にとっては殆ど影響しない。表5は、重質で粘稠な炭化水素(上記SDAに対して-7〜0なるAPI)を処理する際に考慮すべき溶媒の比較を与えるものである。該C6およびC7は高い収率(89-91%)を与え、また上記方法の低い複雑性は、新規でかつ経済的に実施し得る方法を産出す。
アスファルテンを分離するためのC6およびC7溶媒の同様な有効性に基いて、これら炭化水素のブレンドが、コストを減じるものと考えることができる。移送希釈剤の凡その画分を抜取ることができ、またこれを上記SDAにおける溶媒として使用すべく考慮することができる。テストは、C5-C8(>60%のC6およびC7)の混合物が、上記工程10の稼働用の溶媒を仕入れる際の、低コストの選択肢であり得る。これは、該工程に対する供給原料用の希釈剤として通常特徴付けられている、容易に入手できる溶媒の仕入れを通して、この方法の稼働コストをさらに減じる。
上記開示された態様の以上の説明は、当業者が本発明を確認し、またその利用を可能とするために与えられている。これらの態様に対する様々な変更は、当業者には容易に明らかとなるであろうし、また本明細書において規定された一般的な原理は、本発明の精神並びに範囲を逸脱することなしに、他の態様に適用することが可能である。従って、本発明を、ここに示された態様に限定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に従う完全な範囲と一致すべきものであり、該特許請求の範囲において、単数で表された要素、例えば不定冠詞「a」または「an」の使用によって示された要素は、特別に述べていない限り、「一つまたは唯一つ」を意味するものではなく、寧ろ「1またはそれ以上」を意味するものとする。当業者にとって知られており、あるいは後に当業者に知られることになる、本開示全体に渡って記載された様々な態様の要素と、構造上および機能上等価な全ての要素は、上記特許請求の範囲のこれら要素に含まれるものとする。その上、本明細書において全く記載されていないことは、このような開示が、上記特許請求の範囲において明確に述べられているか否かとは無関係に、公表されたものであることを意図している。
(本件出願において使用した用語の語彙集)
本出願人は、本件特許出願の解説において読者に役立てるべく、以下の説明を与える。勿論、これらの定義は、本発明の係る当業者によれば理解されるであろうように、これら用語に対する共通かつ一般的な意味にとって代わるものではなく、また補助手段を意味するものであり、類似の用語に対して2以上の意味がある場合に、その曖昧さを解消することを意味する。
アスファルテン:アスファルテンは、(1) 40部のアルカン対1部の原油なる希釈比において、n-プロパン(またはn-ヘプタン)に対して不溶性であり、かつ(2) トルエンに再溶解する、原油中の物質である。
ビチューメン:重油の属性を共有しているが、依然として高密度かつ粘稠である。天然ビチューメンは、10,000cPを超える粘度および典型的に<10なるAPIを持つオイルである。
残液:上記熱分解装置内で気化しない原油材料である。主として、ガスオイル、樹脂およびアスファルテンからなっている。
カナダ産ビチューメン:カナダを供給源とする<10なるAPI比重を持つ原油である。
カナダ産重質原油:従来の重油および<20なるAPIを持つビチューメン両者で構成される。
脱歴(された)オイル(DAO):260+℃(500+°F)なる呼称沸点範囲を持つ、取出されたアスファルテンの大部分を含む重油部分。
ガスオイル:271-538℃(520-1000°F)なる範囲にて沸騰する、任意の原油の部分。
重油:これは、アスファルト状の、高密度(<20APIなる低いAPI比重を持つ)、かつ粘稠なオイル(100cPなる限界)であり、これはそのアスファルテンの含有率によって化学的に特徴付けられる(該オイル中の硫黄の大部分および恐らく金属の90%を組込んだ極めて大きな分子である)。
ライトエンド:典型的にペンタン、ペンチレン、ブタン、ブチレン、プロパン、プロピレン、エタン、エチレンおよびメタンを含む、5個の炭素鎖およびそれ以下からなる炭化水素。大気条件にて、37.8℃(100°F)以下の沸点を持つ原油およびビチューメン中に見出されるあらゆる物質を含む。
MCR:これはマイクロカーボン残留物である。
樹脂:427+℃(800+°F)なる沸騰範囲にあり、またアスファルテンを含むことのできる重油部分である。
SDA:これは、「溶媒脱歴装置」または「溶媒脱歴処理」を意味し、また典型的にSDAユニットを意味し、該ユニットは、溶媒脱歴処理(溶媒を用いてプロセス流体からアスファルトを除去する)用の処理装置(または段階)である。
シンガス:主として水素、メタン、一酸化炭素、および炭化水素の破壊的な蒸留によって発生した汚染物質で構成されるガス状混合物である。
抜頭原油(トップトクルード):蒸留またはその他の手段によって、粗製石油(crude petroleum)(例えば、ライトエンド)の、より揮発性の高い成分のかなりの量を除去した後に残される、原油の流れの一部。

Claims (21)

  1. 重質の高アスファルテン供給原料プロセス流体から、パイプライン-またはリファイナリ-レディー供給原料および乾燥状態にあり、熱的な影響を受けたアスファルテン固体を製造するための、最適化され、一体化された方法であって、該方法が以下の諸工程を含むことを特徴とする、前記方法:
    (a) プロセス流体を、ヒーター内で設計通りの温度に予備加熱する工程;
    (b) 該予備加熱されたプロセス流体を反応器に移し、また場合により該反応器内で該プロセス流体中のアスファルテンを転化して、熱的な影響を受けたアスファルテンに富む画分からなる第一の流れ、および蒸気からなる第二の流れを製造する工程;
    (c) 該蒸気からなる第二の流れを、非凝縮性の蒸気からなる第三の流れおよびより軽質の液状炭化水素からなる第四の流れに分離する工程;
    (d) 該第一の流れの熱的な影響を受けたアスファルテンに富む画分を、溶媒抽出法によって脱歴処理し、重質の脱歴されたオイル(DAO)からなる第五の流れおよび濃縮されたアスファルテンからなる第六の流れとする工程;
    (e) 該第五の流れの重質DAOと該第四の流れの液状炭化水素とをブレンドして、上記パイプライン-またはリファイナリ-レディー供給原料とする工程;および
    (f) 該濃縮されたアスファルテンからなる第六の流れを、慣性分離ユニット内で、乾燥状態にある、固体アスファルテンからなる第七の流れおよびこの方法において再利用するための溶媒からなる第八の流れに分離する工程。
  2. 前記反応器が、以下のパラメータの範囲内で作動するオーバーヘッド分縮器を備えた単一の熱転化反応器である、連続的方法としての請求項1記載の方法:
    (a) 該反応器内でプロセス流体に導入される、約2.21×104〜約3.79×104W/m2(7,000〜12,000BTU/時・ft2)なる範囲の均一な熱流束;
    (b) 約0.36〜約1.44kJ/L(20〜80scf/bbl)(ガス/プロセス流体)の掃引ガスを該反応器内に導入;
    (c) 40〜180分間の、該反応器内での該プロセス流体の滞留時間;
    (d) 約357℃〜約413℃(675〜775°F)の、該反応器における実質的に均一な動作温度;
    (e) <約0.35MPaG(<50psig)の、該反応器内のほぼ常圧の動作圧力。
  3. 前記溶媒脱歴が、以下のパラメータで動作する剪断ミキサ、単純なアスファルト抽出器および低圧DAO/溶媒回収ストリッパーである、連続的方法としての請求項1記載の方法:
    (a) C6-C7なる範囲内にある溶媒;
    (b) 2〜4:1なる範囲内にある溶媒対オイル質量比;
    (c) 該溶媒の臨界温度-約4.44℃(-40°F)〜約54℃(130°F)なる範囲のアスファルト抽出器動作温度;
    (d) 該溶媒の臨界圧力-約2.76MPaG(-40psig)〜約16.5MPaG(240psig)なる範囲のアスファルト抽出器動作圧力。
  4. 前記工程(f)が、慣性分離ユニットを使用する、請求項1記載の方法。
  5. 前記方法に送られる前記供給原料が0〜12なる範囲のAPIを有し、前記溶媒脱歴工程に送られる生成する供給原料が-8〜0なる範囲のAPIを有し、且つ、前記慣性分離器に送られる生成する供給原料が約371℃(700°F)を超える温度にて固体である、請求項1記載の方法。
  6. 前記溶媒が、現場までビチューメン供給原料を輸送するのに使用される、希釈剤(C5-C8なる範囲)の一部分である、請求項1記載の方法。
  7. 前記SDA予熱器と前記SDAユニットとの間の流れ、または第一SDAユニットと第二の高溶媒強度SDAユニットとの間の流れについて、高剪断混合処理を行う、請求項1記載の方法。
  8. 依然として低い全体としての溶媒対プロセス流体比に維持しながら、高い局所的溶媒対プロセス流体比を用いる高性能溶媒抽出プロセスを用いる、重質炭化水素からパイプライン-レディーまたはリファイナリ-レディー供給原料を製造する方法であって、先ず重質炭化水素について穏やかな熱分解を行い、次いで得られる熱的な影響を受けた流体からアスファルテンに富む画分を分離して、該プロセスの該高い溶媒対オイル比を持つ部分を、これらのアスファルテンに富む画分のみに作用させ、かつ乾燥状態にある固体アスファルテンを、最終製品として製造することによる、方法。
  9. 抽出処理のためのアスファルテンに富む画分を分離するための前記重質炭化水素の処理が、該重質炭化水素をプロセス流体内に入れ、該プロセス流体を所定温度にまで加熱し、該プロセス流体を反応器に移し、且つ、温度、反応器内の滞留時間、熱流束、圧力および反応器内の掃引ガスの少なくとも一つを管理操作して、更なる処理のための前記アスファルテンに富む画分を製造し、乾燥状態にある固体のアスファルテンを最終生成物として製造する、請求項8記載の方法。
  10. 重質炭化水素を処理してパイプライン-レディーまたはリファイナリ-レディー供給原料を製造するための処理装置であって、以下の部品を含むことを特徴とする、該装置:
    a) 重質炭化水素と、プロセス流体を調製するのに必要とされる他の物質とを混合するための、プロセス流体製造部材;
    b) 該プロセス流体を予熱器に移すための輸送手段;
    c) 反応器の所望の動作温度またはその近傍の温度に、該プロセス流体を加熱することのできる該予熱器;
    d) 該加熱されたプロセス流体を、該反応器に移すための輸送手段;
    e) 該プロセス流体に所望の熱流束を与え、かつ実質的に均一な所望の温度にて所望の滞留期間に渡り、該プロセス流体を反応器内に維持するための、熱交換手段を有する該反応器;
    f) 該反応器内の該プロセス流体に、掃引ガスを供給するための手段;
    g) 様々な生成された物質を、該滞留時間の終了時点において、該反応器から取出すための手段、ここでこれら物質は、少なくとも1種の以下の物質を含む:
    i. 非凝縮性蒸気;
    ii. 軽質液状炭化水素;
    iii. 熱的な影響を受けたアスファルテンに富む画分;
    h) 軽質液状炭化水素から非凝縮性蒸気を分離する手段;
    i) 該熱的な影響を受けたアスファルテンに富む画分を、溶媒抽出処理装置に移すための輸送手段;
    j) 抽出された生成物を、該熱的な影響を受けたアスファルテンに富む画分から取出すための手段を有する、該溶媒抽出処理装置、ここでこれら生成物は以下に列挙するものである:
    i. 脱歴されたオイル;
    ii. 樹脂;
    iii. 濃縮された乾燥固体アスファルテン;
    k) 適切な量の該脱歴処理されたオイル、樹脂および該軽質液状炭化水素を集め、これらを一緒にブレンドして、該パイプライン-レディーまたはリファイナリ-レディー供給原料を提供するための手段。
  11. 前記反応器が、オーバーヘッド分縮器を備えた単一の熱転化反応器である、請求項10記載の装置。
  12. 前記反応器内のプロセス流体に導入される、約2.21×104〜約3.79×104W/m2(7,000〜12,000BTU/時・ft2)の均一な熱流束を用いて動作する、請求項11記載の装置。
  13. 前記反応器内に導入される掃引ガスを用いて動作する、請求項11記載の装置。
  14. 前記掃引ガス対プロセス流体の比が、約0.36〜約1.44kJ/L(20〜80scf/bbl)である、請求項11記載の装置。
  15. 前記掃引ガスが、窒素、水蒸気水素または軽質炭化水素、例えばメタン、エタンまたはプロパン、の少なくとも1種である、請求項11記載の装置。
  16. 前記反応器に導入する前に、前記掃引ガスを加熱するためのヒーターを備えている、請求項11記載の装置。
  17. 継続して40〜180分間、前記反応器内での前記プロセス流体の滞留期間にて動作する、請求項11記載の装置。
  18. 前記反応器内の前記プロセス流体に、約357℃〜約413℃(675〜775°F)の実質的に均一な温度を与える、請求項11記載の装置。
  19. 大気圧下またはその近傍の前記反応器内の前記プロセス流体を含む、請求項11記載の装置。
  20. 約0.35MPaG(50psig)より低い圧力にて動作する、請求項11記載の装置。
  21. 高剪断混合が、前記(g)項において前記反応器から取出される、熱的な影響を受けたアスファルテンに対して行われる、請求項10記載の装置。
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