JP2015503592A - 神経成長因子の投与による疼痛処置方法 - Google Patents

神経成長因子の投与による疼痛処置方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、神経成長因子の投与を含む、急性疼痛および慢性疼痛を処置するための方法および組成物を提供する。

Description

[関連出願の相互参照]
本願は、2012年1月5日に出願された米国仮出願61/583,538号に基づく優先権の利益を主張するものであり、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
神経成長因子(NGF)は、原型的な神経栄養因子で、かつニューロトロフィンファミリーの一員であり、標的細胞における広範な応答を促す。これらの応答には、神経細胞分化、神経細胞生存の維持、代謝活性の調節が含まれるが、これに限定されない。神経成長因子は、中枢神経系(CNS)における前脳基底部コリン作動性ニューロンの正常な発生および機能にとって不可欠なものとしてよく特徴付けられた神経栄養因子である(Ghahn他、1983; ThoenenおよびEdgar、1985)。神経成長因子の応用における研究の中心領域となっているのは、前脳基底部コリン作動性ニューロンの萎縮や減少に起因する、加齢に伴う認知障害への応用である(Armstrong他、Neurobiol. Aging 14:457-470(1993))。たとえば、高齢ラットで、NGFの脳室内注入により、コリン作動性ニューロンの萎縮の低減、および空間学習や記憶保持の向上が可能になることが研究によって示されている(Scali他、Neurosci Lett 170:117-120(1994);Markowska他、J. Neurosci 14:4815-4825(1994))。高齢齧歯動物の前脳基底部におけるNGF受容体についての免疫反応性の低下を示した研究によると、神経成長因子は空間学習や記憶保持に関与しているようである(Fischer他、Neurobiol. Aging 13:9-23(1992))。NGFの治療用途の一例としては、アルツハイマー型老年性認知症(SDAT)の患者へのNGFの投与が挙げられる。このような処置の問題点は、NGFが生理学的に適切な量で血液脳関門を通過せず、処置には頭蓋内手術が必要であったことである(Kordower他、Exp. Neurol. 124:21-30(1993))。抗トランスフェリン受容体抗体(OX-26)に共有結合したNGFからなる新規担体系では、血液脳関門の通過が可能となっている。
本願の関心対象としてはUS2004/0127409の開示があり、この文献では、神経成長因子の投与が鬱病の諸相を含む精神状態の処置に有用であるとして開示されている。具体的には、少量の神経成長因子を、局所投与、舌下投与、または皮下投与することによって大うつ病の症状を持つ患者を処置する方法が開示されている。このような方法は、限定するものではないが、日常の諸事を行う際の苦痛や困難といった症状の処置を含む、気分変調症の処置に有用なものとして開示された。本発明の方法もまた、限定するものではないが、老人性鬱病や青年期鬱病を含む、抑鬱気分の処置に有用である。このような場合、本発明の方法は、悲感、暗鬱感、空虚感、疲労、食欲不振、身体のうずきや疼痛、そして睡眠障害を軽減する。パニック障害(胸痛)および月経前症候群(pms)(頭痛、背部痛、生理痛、および乳房圧痛を含む疼痛)の処置もまた開示される。
本発明の関心対象としてはまた、便秘症の処置のためのNGF投与に関するUS2007/0270347や、禁断症状(cravings)の処置のためのNGF投与に関するUS2010/093631の開示が挙げられる。
本発明の関心対象としてはまた、US2010/0291083の開示が挙げられ、この文献は、NGFとその高親和性受容体TrkAとの結合を阻害することができる抗TrkA抗体の投与による、慢性疼痛の処置に関する。
本発明の関心対象としてはさらに、US2011/0033447の開示が挙げられ、この文献は、外科手術後の疼痛、関節リウマチの疼痛、および骨関節炎の疼痛の処置および予防のための、抗NGFアンタゴニスト抗体を含む抗NGF抗体の使用に関する。
このような近年の神経成長因子の応用例にもかかわらず、急性疼痛や慢性疼痛を含むその他の障害を治癒させるためのNGFの使用に対しては依然として要望がある。
本発明は、有効量の神経成長因子(NGF)含有組成物を、投与を必要とする対象に投与することを含む、疼痛処置方法を提供する。この方法は、急性疼痛と慢性疼痛のどちらの処置にも使用することができ、特に、骨関節炎を含む関節炎に伴う疼痛、および脊椎関節炎に伴う疼痛の処置に有用である。
神経成長因子は一般に、従来の療法に比べて低いレベルで投与される。これは、投与レベルが高くなると不安感を増す可能性があると考えられるからである。神経成長因子は、好ましくは1日あたり約0.001〜1マイクログラムの用量で投与され、また、1日あたり0.01〜0.1マイクログラムの用量が好ましい。神経成長因子は、舌下投与、頬側投与、経口飲投与、皮下投与、皮内投与、および静脈内投与からなる群を含む様々な様式で投与することができ、舌下投与が特に好ましい。
神経成長因子のホロタンパク質を投与してもよいが、βサブユニットとして投与することもできる。
本発明はまた、上記疼痛の処置に有効な量で神経成長因子を含む、疼痛を処置するための医薬組成物であって、必要に応じて医薬的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤をさらに含み得る医薬組成物も提供する。好ましい医薬組成物としては、その中に神経成長因子が0.001〜1マイクログラムの量で存在するもの、より好ましくは、神経成長因子が0.01〜0.1マイクログラムの量で存在するものが挙げられる。
本発明は、有効量の神経成長因子(NGF)またはそのサブユニット、特にNGFのβサブユニットの投与による疼痛処置方法に関する。神経成長因子は、Sigmaなどの業者から市販されている。SigmaおよびEMD Biosciencesから入手可能な、組換え生成されたNGFのβサブユニットの使用が特に好ましい。神経成長因子は、好ましくは1日あたり約0.001〜10マイクログラムの範囲の量で投与され、また好ましくは、液体ビヒクルで処方され、単一液滴としておよそ0.04マイクログラムの濃度で提供される。神経成長因子の単一液滴は0.001〜1マイクログラムの範囲内である。より好ましくは、神経成長因子組成物の1液滴は、液滴あたり0.02マイクログラムの量である。神経成長因子組成物は、より好ましくは1日あたり約0.05〜1マイクログラムの範囲の量で投与され、さらに好ましくは1日あたり約0.01〜0.1マイクログラムの範囲の量で投与される。好ましい投与経路は舌下経路であるが、他の経路、例えば頬側、経口飲、皮下、皮内、および静脈内などの経路でも効き目があると予想される。
以下の実施例によって、様々な疼痛の病状の処置に関して本発明の方法を説明する。以下の実施例を考慮すれば、本発明の多くの改良やさらなる態様が、当業者には明らかとなる。
実施例1
本実施例では、口腔外科手術後の疼痛を訴える患者1名に、疼痛が緩和するまで15分毎に経口でNGF溶液1液滴(0.05ml)(0.008μg/液滴)のNGFを摂取するように勧めた。患者は最初の液滴をt0時点で摂取し、二度目をt15分の時点で摂取したが、疼痛が緩和したために三度目の液滴は不要となった。
実施例2
本実施例では、骨関節炎型の病状から来る膝痛を患う患者1名に、疼痛が緩和するまで15分毎に経口でNGF溶液1液滴(0.05ml)(0.008μg/液滴)のNGFを摂取するように勧めた。疼痛は三度目の液滴(t-30分)後に緩和した。
実施例1および2の双方において、必要な場合にはさらにNGFの液滴を使用するように患者に勧めた。公認看護師による上記2名の患者の経過観察報告によると、それらの患者は、摂取するとしても1液滴をごくまれに摂取しているとのことであった。
実施例3
本実施例では、十代の対象1名について、中臀筋が弱くなっていると思われる臀部右外側の疼痛の処置を行った。彼は理学療法を受けて運動プログラムを完了しており、これにより、数週間の間疼痛はなかった。その後彼は、クロスカントリーランニングのシーズン中に、右鼠径部と股関節部に疼痛を発症した。この疼痛は冬の間は和らいだが、競技シーズン中にぶり返した。彼の仙腸関節のX線写真から右仙腸関節炎が認められたが、この関節炎は、後にチルドレンズ・ホスピタル・オブ・ピッツバーグのリウマチ専門医によりHLA-27陽性脊椎関節炎と診断された。その後5年間にわたり、彼の疼痛は保存療法と軽い運動でコントロールされた。最近になってこの対象の疼痛と痙攣の活性度が増し、特に午前中は強くなった。1日あたり1液滴の舌下投与で、あるいは必要に応じて、その場合典型的には2〜3日毎に1液滴の割合で、NGFの舌下投与による処置を彼の処置に加えた。彼の疼痛が改善したので、この処置は最終的に打ち切りとなった。(過度に頻繁な液滴摂取によって患者がNGFを過剰摂取した場合、患者が数時間の間不安になることがわかった。)
さらに最近になって、この対象の疼痛がぶり返したが、NGFを1日あたり1液滴(0.05ml)(0.008μg/液滴)または1日2回加えたところ、再度応答を示した。この対象からの報告によると、疼痛がなくなるにつれて背部の痙攣が和らぐような感じがするとのことであった。彼は再び運動を始め、疼痛の軽減に伴い、メディカルスクールでの学業期間中、より集中できている。
実施例4
本実施例では、何年も前に使っていたねじから2つの根管が衰弱したことにより歯周部が衰え、その後炎症、毒素、感染を伴って歯肉が爛れ、歯肉から鼻腔への瘻孔ができてしまった60歳の女性患者1名である。最近になって、歯周病専門歯科医によりスケーリングとルートプレーニングが行われた。従前の医薬療法、即ち、スケーリングとルートプレーニングの2時間の施術の間の緊張緩和用のトリアゾラム0.25mg、および施術後の疼痛用の麻薬(ヒドロコドン5mg)といった療法を使用せずに、施術の30分前に、タウリン酸カルシウムおよびタウリン酸マグネシウムおよびコバマミド−コエンザイムB12を含有する抗不安サプリメント(Shpilkes)2錠と共に、NGFの液滴を2液滴分(0.05ml)(0.008μg/液滴)使用した。
施術後、疼痛または炎症を予防するため、覚醒時にさらにNGFの液滴を3時間毎に投与した。麻酔(ノボカイン)が切れたとき、疼痛はなかった。
実施例5
本実施例では、線維筋痛症を有し、ほぼ全ての圧痛点にこの病状が伴うことを特徴とする61歳の女性患者1名である。この患者は、1液滴を1日あたり2回の割合でNGFを始めた。服薬量は1日あたりNGF1〜4液滴(舌下)の範囲で変動があった。彼女の圧痛点は寛解し、NGFによる処置の前と比べて、疼痛は全体的にはるかに軽くなっている。彼女は、疼痛が和らぐにつれて気分が全般に良くなっていると述べた。NGFの処置による副作用は見られなかった。
実施例6
本実施例では、脱髄性末梢神経障害を有する患者が、1日あたり1〜4液滴のNGFの舌下投与による処置を受けて最初の2週間で、下肢知覚異常がほぼ完全に消失した。
実施例7
本実施例では、リウマチ性多発筋痛症を有する患者から、1日あたり1〜4液滴のNGFの舌下投与による処置を開始して2週間以内に疲労、肩の疼痛、そして腕の疼痛がかなり改善したという知らせがあった。
上に述べたこれらの実施例は、NGFによる処置が、炎症性疼痛を患う対象、非炎症性疼痛を患う対象のどちらにも良い影響を及ぼしたことを実証している。副作用は見られず、疼痛緩和効果は処置後数年間持続した。
本発明の目下の好ましい実施形態を考慮すれば、当業者であれば、本発明の実施における改良や改変を数多く思いつくことが予想される。従って、本発明の範囲に加えられるべき限定は、添付の特許請求の範囲に示されるもののみである。

Claims (15)

  1. 有効量の神経成長因子含有組成物を、投与を必要とする対象に投与することを含む、疼痛処置方法。
  2. 前記疼痛が急性疼痛である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記疼痛が慢性疼痛である、請求項1に記載の方法。
  4. 前記疼痛が関節炎に伴うものである、請求項1に記載の方法。
  5. 前記疼痛が骨関節炎に伴うものである、請求項4に記載の方法。
  6. 前記疼痛が脊椎関節炎に伴うものである、請求項4に記載の方法。
  7. 前記神経成長因子が、舌下投与、頬側投与、経口飲投与、皮下投与、皮内投与、および静脈内投与からなる群から選択される様式で投与される、請求項1に記載の方法。
  8. 前記神経成長因子が舌下投与される、請求項3に記載の方法。
  9. 前記神経成長因子が、1日あたり0.001〜1マイクログラムの1日用量で投与される、請求項1に記載の方法。
  10. 前記神経成長因子が、1日あたり0.01〜0.1マイクログラムの1日用量で投与される、請求項1に記載の方法。
  11. 前記神経成長因子が神経成長因子のβサブユニットである、請求項1に記載の方法。
  12. 前記疼痛の処置に有効な量で神経成長因子を含む、疼痛を処置するための医薬組成物。
  13. 医薬的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤をさらに含む、請求項12に記載の医薬組成物。
  14. 前記神経成長因子が0.001〜1マイクログラムの量で存在する、請求項12に記載の医薬組成物。
  15. 前記神経成長因子が0.01〜0.1マイクログラムの量で存在する、請求項12に記載の医薬組成物。
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