JP2015229706A - カーボンナノチューブを用いた漆黒性顔料 - Google Patents

カーボンナノチューブを用いた漆黒性顔料 Download PDF

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Abstract

【課題】従来よりも青味が強く漆黒性が高い顔料を提供する。【解決手段】気体の炭素含有化合物とカルボン酸パラジウム触媒を500℃〜1200℃で接触させる、化学気相成長法により製造されたカーボンナノチューブを顔料として用いることで、従来にない青味の強い漆黒性の顔料を提供することが出来る。【選択図】なし

Description

本発明は、カーボンナノチューブを用いた漆黒性顔料に関する。
自動車分野、家電、家具、調度品等の部品には、安価に自由度の高い形状を得られることから、樹脂成型品や金属成型品が用いられている。これらの成形品は、樹脂成型品においては、塗装することなく高い意匠性を得るために、顔料を添加することで成形品のみで実現する技術が一般的となっているが、顔料を添加した成形品では望む色調を得るためには同時に用いるフィラーとの相互作用や、添加量等の多数の難題を解決する必要があり、目的とする色調と機械強度を両立させるため、多数の解決策が示されている(特許文献1、2)。
また、成形品のみでは意匠性に乏しいことから、より付加価値を求められる分野においては、引き続き成形品の表面を塗装することにより、希望とする意匠性を付与する手法が用いられている(特許文献3)。
意匠性の高い色調としては黒色が多用されているが、この中でも特にJIS Z8781-4に規定される表色系に基づく色空間において、Lが0に近く、bが小さい、青味の強い漆黒が高級な色合いとされている。漆黒の色合いを得るために、カーボンブラックを用いるのが一般的だが、配合によってはaが大きい赤身の強い漆黒となってしまい、より漆黒性が高く青味のある色調を付与することが出来る顔料が求められている。
特開2011−291961号公報 特開2013−209494号公報 特表2010−506717号公報
従来よりも青味が強く漆黒性が高い顔料を提供する。
本発明者は、上記の課題を解決する為に鋭意研究を重ねた結果、入手が簡単な酢酸パラジウム等のカルボン酸パラジウムを担体に担持することなくそのまま触媒として使用して製造されたカーボンナノチューブに、従来のカーボンブラックには無い青味の強い漆黒性があることを見出し、本発明にて提供を行う顔料の技術を完成するに到った。
本発明の漆黒性の高い顔料は、以下の条件(1)〜(8)を満足することを特徴とするものである。
(1)JIS Z8781-4に規定される表色系に基づく、Lが3から15、aが0から1、bが−4から−3の範囲の色度座標を持つカーボンナノチューブであることを特徴とする漆黒性顔料。
(2)気体の炭素含有化合物とカルボン酸パラジウム触媒を500℃〜1200℃で接触させたカーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1記載の顔料。
(3)気体の炭素含有化合物と固体のカルボン酸パラジウム触媒を500℃〜1200℃で接触させ、触媒上に多層カーボンナノチューブを成長させたことを特徴とする請求項1記載の顔料。
(4)気体の炭素含有化合物と気化したカルボン酸パラジウム触媒を500℃〜1200℃で接触させ多層カーボンナノチューブを成長させたことを特徴とする請求項1記載の顔料。
(5)粉体のカルボン酸パラジウム触媒に気体の炭素含有化合物を導入してカルボン酸パラジウム触媒を飛散させながら、気体の炭素含有化合物とカルボン酸パラジウム触媒を500℃〜1200℃で接触させ多層カーボンナノチューブを成長させたことを特徴とする請求項1記載の顔料。
(6)前記カルボン酸パラジウムが酢酸パラジウムであることを特徴とする請求項1記載の顔料。
(7)前記炭素含有化合物がメタンであることを特徴とする請求項1記載の顔料。
(8)請求項1に記載の漆黒性顔料を含む組成物。
本発明の顔料であるカーボンナノチューブは、従来にない青味の強い漆黒性を付与することが出来、入手が比較的簡単な酢酸パラジウムなどのカルボン酸パラジウムを担体に担持することなくそのまま触媒として使用することで、結晶性の高いカーボンナノチューブを、効率的に製造することができる。
固定床法による顔料の製造方法を示す模式図。 固相流動法による顔料の製造方法を示す模式図。 実施例1で得られた顔料
本発明にて提供する顔料は、JIS Z8781-4(2013)に規定される測定法により、色座標を測定することが出来る。
本発明において、目的とする色座標を持つ顔料となる、カーボンナノチューブ製造の為に用いられる触媒として使用されるのは、カルボン酸パラジウム、好ましくは炭素数1〜22、さらに好ましくは炭素数1〜8、最も好ましくは炭素数1〜6のカルボン酸パラジウムである。炭素数1〜22のカルボン酸パラジウムとしては、具体的には蟻酸パラジウム、酢酸パラジウム、プロピオン酸パラジウム、酪酸パラジウム、吉草酸パラジウム、カプロン酸パラジウム、エナント酸パラジウム、カプリル酸パラジウム、ペラルゴン酸パラジウム、カプリン酸パラジウム、ラウリン酸パラジウム、ミリスチン酸パラジウム、パルミチン酸パラジウム、マルガリン酸パラジウム、ステアリン酸パラジウム、オレイン酸パラジウム、リノール酸パラジウム、リノレン酸パラジウム、アラキドン酸パラジウム、ドコサヘキサン酸パラジウム、エイコサペンタエン酸パラジウム、シュウ酸パラジウム、マロン酸パラジウム、コハク酸パラジウム、安息香酸パラジウム、フタル酸パラジウム、イソフタル酸パラジウム、テレフタル酸パラジウム、サリチル酸パラジウム、没食子酸パラジウム、メリト酸パラジウム、ケイ皮酸パラジウム、ビルビン酸パラジウム、乳酸パラジウム、リンゴ酸パラジウム、クエン酸パラジウム、フマル酸パラジウム、マレイン酸パラジウム、アコニット酸パラジウム、グルタル酸パラジウム、アジピン酸パラジウム、アミノ酸パラジウム、ニトロカルボン酸パラジウム等を挙げることができる。なかでも入手が容易な点で酢酸パラジウムが好ましい。酢酸パラジウムは、通常市販されているもの(例えば、和光純薬工業(株)、関東化学(株)製など)を使用できる。また、使用済みのパラジウム触媒から、公知の方法にて回収して酢酸パラジウムの粉体を作成してもよい。
本発明は、従来のように触媒を調製する工程が不要であり、粉体のカルボン酸パラジウムをそのまま使用することができるので、効率的に顔料となるカーボンナノチューブを製造することができる。
本発明において顔料であるカーボンナノチューブの炭素源となる炭素含有化合物としては、メタン、アセチレン、エチレンなどの炭化水素、エタノール、プロパノールなどのアルコール類などが挙げられる。しかし、炭素含有化合物はこれらに限定されるものではなく、カーボンナノチューブを成長させうる炭素含有化合物であればよい。
炭素含有化合物は、気体でカルボン酸パラジウム触媒と、所定の温度で接触させる。特にメタン、アセチレン、エチレンを炭素含有化合物として使用した場合、550〜650℃程度の温度でカーボンナノチューブを製造することもできるため好ましい。
本発明で得られるカーボンナノチューブは、青味が強く漆黒性が高い。さらに本発明の製法はカーボンナノチューブの成長速度が速いため、他の製法よりも短時間で長いカーボンナノチューブができる。本発明で得られたカーボンナノチューブから作製された顔料は導電性が高いという特徴を有している。
炭素含有化合物とカルボン酸パラジウムの接触は無酸素雰囲気で行なう必要があるので、反応炉内を予め、窒素、ヘリウムまたはアルゴンの不活性ガスで置換し、反応炉内を無酸素雰囲気下とする。
本発明は、気体の炭素含有化合物とカルボン酸パラジウムを高温で接触させて製造されたカーボンナノチューブを顔料とすることを特徴とするが、気体の炭素含有化合物とカルボン酸パラジウムを接触させる形態により、(1)固定床法、(2)気相成長法、(3)固相流動法が挙げられる。以下に、それぞれのカーボンナノチューブの製造方法を説明する。
(1)固定床法
高温の反応炉内に粉体固体のカルボン酸パラジウムを触媒として置き、そこに気体の炭素含有化合物を供給することにより、触媒と炭素含有化合物を接触させ、触媒上にカーボンナノチューブを成長させる方法である。
固定床法とは、固定化された(粉体等のまま静置、ボードの上から動かないという意味)触媒(カルボン酸パラジウム)と炭素含有化合物の気体(メタンガス等)の反応からCNTを合成する方法である。
一般に固定床法では、石英、SiC、アルミナなどの耐熱性反応管と電気炉からなる常圧CVD装置が用いられる。その模式図を図1に示す。
図1中、1は石英等の耐熱性反応官、2は耐熱性反応官を加熱する電気炉である。粉末状のカルボン酸パラジウム5は石英ボート3に置かれる。生成したCNTを4で示した。
手順は次のとおりである。
(i)カルボン酸パラジウムを載せた石英ボートを耐熱性反応管後方反応管後方7に挿入する。
(ii)窒素、ヘリウム等の不活性ガスを供給し、装置内を不活性ガスで置換し無酸素雰囲気にする。
(iii)その後、炭素含有化合物ガスを供給し装置内を炭素含有化合物ガスで置換する。
(iv)装置内を反応温度まで昇温する。
(v)反応温度に到達後、所定の時間反応させることで、カルボン酸パラジウム触媒上にCNTを成長させる。
(vi)CNT成長後、炭素含有化合物ガスの供給を停止し、再び不活性ガスを供給する。その後、室温まで冷却する。
(vii)冷却後、装置内の石英ボートを取り出し、成長したCNTを取り出す。
固定床法で用いる固体のカルボン酸パラジウムの形状は、粉体のまま用いてもいいが、溶媒に溶かしたカルボン酸パラジウムを基板上に塗布し膜状にすることもできる。
(2)気相成長法
高温の反応路内に、気化させたカルボン酸パラジウム触媒と気体の炭素含有化合物を導入し、触媒と炭素含有化合物を接触させ、カーボンナノチューブを成長させる方法である。
気相成長法とは、気化した触媒(カルボン酸パラジウム)と炭素源となる気体(メタンガス等)の反応からCNTを合成する方法である。一般に気相成長法では、石英、SiC、アルミナなどの耐熱性反応管と電気炉からなる常圧CVD装置が用いられる。
図2に気相成長法に用いられる反応装置の概略を示す。図1と、同一の要素には、同一の符号を付し、その説明を省略する。
耐熱性反応管はY字型や直管のものを用いることができる。Y字型反応管を用いた場合、前方の2つに枝分れした反応管の一方には、カルボン酸パラジウムを載せた石英ボートを挿入し、もう一方は炭素含有化合物ガスの供給部となる。
手順は以下のとおりである。
(i)装置内に不活性ガスを供給し、装置内を不活性ガスで置換し無酸素雰囲気にする。
(ii)反応管後方7を反応温度まで昇温する。
(iii)Y字型反応管を用いた場合、カルボン酸パラジウムを載せた石英ボートを設置した反応管前方反応管前方8の一方の枝管をカルボン酸パラジウムが気化する温度に昇温する。その間、不活性ガスを供給し続ける。カルボン酸パラジウムは加熱により気化し、不活性ガス供給により反応温度に加熱された石英反応管後方反応管後方7に供給される。もう一方の枝管からは炭素含有化合物ガスを供給する。反応温度に加熱された反応管後方でカルボン酸パラジムガスと炭素含有化合物ガスが気相反応を生じ、CNTが生成する。
直管の反応管を用いた場合、炭素含有化合物ガスを供給しながらカルボン酸パラジウムを載せた石英ボートを設置した反応管前方反応管前方8をカルボン酸パラジウムが気化する温度に昇温する。気化したカルボン酸パラジウムは炭素含有化合物ガスと一緒に加熱された反応管後方反応管後方7へ供給され、CNTが生成する。
(iv)CNT成長後、炭素含有化合物ガスの供給を停止し、再び不活性ガスを供給する。その後、室温まで冷却する。
(v)冷却後、装置内からCNTを取り出す。
(3)固相流動法
高温の反応路内に、炭素含有ガスと粉体のカルボン酸パラジウム触媒を飛散させながら導入し、触媒と炭素含有化合物を接触させ、カーボンナノチューブを成長させる方法である。
固相流動法とは、飛散している触媒(カルボン酸パラジウム)と炭素源となる気体(メタンガス等)の反応からCNTを合成する方法である。一般に固相流動法では、石英、SiC、アルミナなどの耐熱性反応管と電気炉からなる常圧CVD装置と固体原料供給器(サイクロン等)が用いられる。
図2に固相流動法に用いられる反応装置の概略を示す。図1と異なるのは、カルボン酸パラジウム触媒を飛散させて供給するためのサイクロン固体原料供給器6が耐熱性反応管1の上流側に設けられている点である。
固体原料供給器はサイクロンなど、粉体を飛散させることのできる装置であればどのようなものでも使用できる。
手順は以下のとおりである。
(i)カルボン酸パラジウムを固体原料供給器に設置する。
(ii)サイクロンを通して固体原料供給器に不活性ガスを供給し、装置内を不活性ガスで置換する。
(iii)耐熱性反応管を反応温度に昇温する。
(iv)炭素含有化合物ガスをサイクロン固体原料供給器から供給することで、カルボン酸パラジウム粉体を耐熱性反応管内に飛散させ、CNTを成長させる。
(v)CNT成長後、炭素含有化合物ガスの供給を停止し、不活性ガスを供給する。その後、室温まで冷却する。
(vi)冷却後、装置内CNTを取り出す。
反応温度について
反応温度は、いずれの方法を用いた場合(固定床法、気相流動法、固相流動法)においても、500〜1200℃、好ましくは550〜1000℃、さらに好ましくは、600℃〜900℃で行う。500℃未満だと炭素含有化合物ガスが分解しないためCNTが生成せず、1200℃を超えると炭素含有化合物ガスがベンゼンやトルエンに変化し、CNTが生成される効率が低下もしくは、触媒であるカルボン酸パラジウムのパラジウム金属がシンタリングにより粒径が大きくなりCNT生成が阻害される。
反応時間について
いずれの方法を用いた場合(固定床法、気相流動法、固相流動法)においても、反応時間が長ければCNTの長さや量が増えるが、生成されたCNTによって反応管内の気流が阻まれる前に反応を止める必要がある。
固相流動法において触媒として用いるカルボン酸パラジウムは、飛散させて反応する必要があるため平均粒子径で0.001〜30μm、好ましくは0.01〜3μmの粉体がよい。
顔料の用途、及び要求特性によっては、触媒に由来する微量の金属化合物を徹底的に除去するため、硝酸、塩酸、硫酸、酢酸などの酸、及びこれらの混酸で処理したり、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリ水溶液で処理してもよい。
樹脂や溶媒など各種媒体に分散させて使用する場合は、媒体への分散性を向上させるため、超音波照射、ボールミリング、キャビテーションの利用などの物理的方法や、硝酸やフッ化水素酸などの酸化性物質を接触させる化学的方法を適宜組み合わせて、顔料であるカーボンナノチューブを適当な長さに切断することが出来る。
顔料分散体としては、溶媒に分散させた顔料分散液、分散液を塗工する方法などにより得られる顔料分散膜、樹脂にフィラーなど他の添加剤とともに分散させた顔料分散マスターバッチ、マスターバッチを成形した顔料分散成形体などを挙げることができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
CNTの合成には、図1に示すような常圧CVD(Chemical Vapor Deposition)装置を用いた。装置は、原料ガス供給系、石英反応管1、電気炉2、排気系から構成されている。石英反応管の直径:50mm、長さ:900mmである。電気炉は炉心部分が直径:50mm、長さ:600mmの抵抗加熱炉であり、2箇所で温度制御が可能である。石英ボート3中に粉末の酢酸パラジウム1gをのせ、石英反応管の後方(原料供給部側から450mmの位置)に設置した(あらかじめ、石英ボートの重量と石英ボートと酢酸パラジウム合計の重量をそれぞれ測定しておく。)。酢酸パラジウムを含む石英ボートを石英反応管中に設置後、窒素ガスを300sccm(Standard Cubic Centimeter per Minutes)で供給し、10分間置換(酸素フリーの状態)を行なった。引き続き、電気炉により石英反応管全体を800℃に昇温した。石英反応管が800℃に到達した後、メタンガスを流量2000sccmで供給し、酢酸パラジウム上に30分間成長を行なった。30分後、石英反応管へのメタンガスの供給を停止し、窒素ガスを300sccm供給した。電気炉を開放し、室温まで冷却したした後、石英ボートを取り出し、触媒を含むCNTを回収した。電子天秤により回収したCNTの重量を測定した。酢酸パラジウムはCNT成長直前までに56%重量減、すなわち0.44gまで減少することがわかっている。この酢酸パラジウムの重量減を含めたCNTの成長量を算出すると、約25g/30分でCNTが成長していた。成長したCNTの径は100−300nm、長さは平均10μmであった。実施例1で得られたCNTのラマンスペクトルを測定し、単層CNTに特有の200〜600cm−1にはピークがなかったので、得られたCNTは単層ではないと推定された。得られたCNTのJIS Z8781-4に規定される色度座標は、L*:4.20、a*:0.55、b*:−3.45であった。
<実施例2>
CNTの合成には、実施例1と同様の装置を用いた。石英ボート中に粉末の酢酸パラジウム1gをのせ、石英反応管の前方(原料供給部側から150mmの位置)に設置した。酢酸パラジウムを含む石英ボートを石英反応管中に設置後、窒素ガスを300sccmで供給し、10分間置換を行なった。その後、CNT原料となるメタンガスを供給した。石英反応管内にメタンガスを300sccmで10分間供給し置換を行なった。引き続き、電気炉を昇温した。まず、石英反応管後方を800℃まで昇温し、その後石英反応管前方を400℃まで昇温した(昇温速度25℃/1分。酢酸パラジウムは248℃で気化し始める。)。石英反応管前方が400℃に到達後、メタンガスの流量を2000sccmに増加させ、30分間成長を行なった。気化した酢酸パラジウムとメタンガスが石英反応管後部で反応し、CNTが成長した。30分後、石英反応管へのメタンガスの供給を停止し、窒素ガスを300sccm供給した。石英反応管の温度が650℃まで降温した後、電気炉を開放し、室温まで冷却した。石英反応管が室温まで冷却した後、石英ボートを取り出し、触媒を含むCNTを回収した。電子天秤により回収したCNTの重量を測定した。CNTの成長量を算出すると、約1g以上/30分でCNTが成長していた。成長したCNTの径は50〜100nm、長さは100μm以上であった。得られたCNTのJIS Z8781-4に規定される色度座標は、L*:3.80、a*×0.33、b*:−4.00であった。
<実施例3>
固体原料供給器としてサイクロンを用いた。サイクロン容器内の酢酸パラジウム粉体にメタンガスを供給することで飛散させ、実施例1と同様の装置(固定床法)に供給することでCNT成長を行なった。まず、サイクロン容器内に酢酸パラジウム粉体(平均粒子径:1 μm 測定中アルドリッチ社製 酢酸パラジウム(II)98%)3gを設置した。サイクロン容器および石英反応管中に窒素ガスを300sccmで供給し、10分間置換(酸素フリーの状態)を行なった。引き続き、電気炉により石英反応管全体を650℃に昇温した(昇温速度25℃/1分)。その後、メタンガス650sccmをサイクロン容器に供給した。飛散された酢酸パラジウム粉体を650℃に加熱された石英反応管に供給した。30分間成長を行ない、成長終了後石英反応管へのメタンガスの供給を停止し、窒素ガスを300sccm供給した。石英反応管の温度が650℃まで降温した後、電気炉を開放し、室温まで冷却した。石英反応管が室温まで冷却した後、石英反応管内の触媒を含むCNTを回収した。CNTの成長量は5g、CNT径は10〜20nm、長さ5μm以上であった。得られたCNTのJIS Z8781-4に規定される色度座標は、L*:4.45、a:0.45、b:−3.00であった。
<比較例1>
実施例1と同様の装置を用いて、酢酸コバルトを触媒とするCNT成長を行なった。まず、酢酸コバルト4水和物を120℃・1時間乾燥し脱水を行なった。脱水処理された酢酸コバルトを石英ボート中に1gをのせ、石英反応管の後方に設置した。酢酸コバルトを含む石英ボートを石英反応管中に設置後、窒素ガスを300sccmで供給し、10分間置換(酸素フリーの状態)を行なった。その後、CNT原料となるメタンガスを供給した。石英反応管内にメタンガスを500sccmで10分間供給し置換を行なった。引き続き、電気炉により石英反応管全体を650℃に昇温した(昇温速度25℃/1分)。石英反応管が650℃に到達した後、30分間成長を行なった。30分後、石英反応管へのメタンガスの供給を停止し、窒素ガスを300sccm供給した。石英反応管の温度が650℃まで降温した後、電気炉を開放し、室温まで冷却した。石英反応管が室温まで冷却した後、石英ボートを取り出し、触媒を含むCNTを回収した。電子天秤により回収したCNTの重量を測定した。重量増加は確認されず、SEM観察においてもCNTは確認されなかった。酢酸コバルト4水和物上でもCNT成長は確認されなかった。以上の結果より、酢酸コバルト上でのCNT成長は不可能であることがわった(CNTが成長しないのは、酢酸コバルトが200〜300℃で分解し、コバルトの凝集が著しく促進されることによるものと思われる)。
<比較例2>
実施例1と同様の装置を用いて、酢酸鉄を触媒とするCNT成長を行なった。酢酸鉄を石英ボート中に1gをのせ、石英反応管の後方に設置した。酢酸鉄を含む石英ボートを石英反応管中に設置後、窒素ガスを300sccmで供給し、10分間置換(酸素フリーの状態)を行なった。その後、CNT原料となるメタンガスを供給した。石英反応管内にメタンガスを300sccmで10分間供給し置換を行なった。引き続き、電気炉により石英反応管全体を750℃に昇温した(昇温速度25℃/1分)。石英反応管が750℃に到達した後、30分間成長を行なった。30分後、石英反応管へのメタンガスの供給を停止し、窒素ガスを300sccm供給した。石英反応管の温度が650℃まで降温した後、電気炉を開放し、室温まで冷却した。石英反応管が室温まで冷却した後、石英ボートを取り出し、触媒を含むCNTを回収した。電子天秤により回収したCNTの重量を測定した。重量増加は確認されず、SEM観察においてもCNTは確認されなかった。以上の結果より、酢酸鉄上でのCNT成長は不可能であることがわった(CNTが成長しないのは、酢酸鉄が200〜300℃で分解し、鉄の凝集が著しく促進されることによるものと思われる)。
<比較例3>
実施例1と同様の装置を用いて、酢酸銅を触媒とするCNT成長を行なった。まず、酢酸銅1水和物を120℃・1時間乾燥し脱水を行なった。脱水処理された酢酸銅を石英ボート中に1gをのせ、石英反応管の後方に設置した。酢酸銅を含む石英ボートを石英反応管中に設置後、窒素ガスを300sccmで供給し、10分間置換(酸素フリーの状態)を行なった。その後、CNT原料となるメタンガスを供給した。石英反応管内にメタンガスを500sccmで10分間供給し置換を行なった。引き続き、電気炉により石英反応管全体を800℃に昇温した(昇温速度25℃/1分)。石英反応管が800℃に到達した後、30分間成長を行なった。30分後、石英反応管へのメタンガスの供給を停止し、窒素ガスを300sccm供給した。石英反応管の温度が550℃まで降温した後、電気炉を開放し、室温まで冷却した。石英反応管が室温まで冷却した後、石英ボートを取り出し、触媒を含むCNTを回収した。電子天秤により回収したCNTの重量を測定した。重量増加は確認されず、SEM観察においてもCNTは観察されなかった(CNTが成長しないのは、酢酸銅が200〜300℃で分解し、銅の凝集が著しく促進されることによるものと思われる)。
<比較例4>
実施例1と同様の装置を用いて、塩基性酢酸アルミニウム粉体に酢酸パラジウムを担持させた触媒(Al/Pd=0.25/1)を用いてCNT成長を行なった。酢酸パラジウム/塩基性酢酸アルミニウムを石英ボート中に1gをのせ、石英反応管の後方に設置した。酢酸パラジウム/塩基性酢酸アルミニウムを含む石英ボートを石英反応管中に設置後、窒素ガスを300sccmで供給し、10分間置換(酸素フリーの状態)を行なった。その後、CNT原料となるメタンガスを供給した。石英反応管内にメタンガスを300sccmで10分間供給し置換を行なった。引き続き、電気炉により石英反応管全体を650℃に昇温した(昇温速度25℃/1分)。石英反応管が650℃に到達した後、30分間成長を行なった。30分後、石英反応管へのメタンガスの供給を停止し、窒素ガスを300sccm供給した。石英反応管の温度が550℃まで降温した後、電気炉を開放し、室温まで冷却した。石英反応管が室温まで冷却した後、石英ボートを取り出し、触媒を含むCNTを回収した。電子天秤により回収したCNTの重量を測定した。0.4gの重量増加が確認され、SEM観察においてCNTが観察された。観察されたCNTの径は70〜100nm、長さ3μmであった(これまでの実験より担持した場合、還元操作が必要であると思われる。しなしながら、還元すると酢酸パラジウム自身も分解が促進し、CNTは成長しないものと思われる)。
<比較例5>
サイクロン容器内の酢酸ニッケル粉体にメタンガスを供給することで飛散させ、実施例1と同様の装置に供給することでCNT成長を行なった。まず、サイクロン容器内に酢酸ニッケル粉体(平均粒子径:3μm)を3g設置した。サイクロン容器および石英反応管中に窒素ガスを300sccmで供給し、10分間置換(酸素フリーの状態)を行なった。引き続き、電気炉により石英反応管全体を850℃(550℃〜800℃)に昇温した(昇温速度25℃/1分)。その後、メタンガス1000sccm(300〜2000sccm)をサイクロン容器に供給した。飛散された酢酸ニッケル粉体を850℃に加熱された石英反応管に供給した。30分間成長を行ない、成長終了後石英反応管へのメタンガスの供給を停止し、窒素ガスを300sccm供給した。石英反応管の温度が650℃まで降温した後、電気炉を開放し、室温まで冷却した。石英反応管が室温まで冷却した後、石英反応管内の触媒を含むCNTを回収した。石英反応管内外での黒色堆積物が確認された。SEM観察からこの黒色堆積物はCNTであることを確認した。CNTの成長量は0.5g、CNT径は20nm、長さ3μm以下であった(酢酸パラジウムを用いた実施例3の固相流動法に比較して、CNT生成量は少なく、CNT長も短い。)。得られたCNTのJIS Z8781-4に規定される色度座標は、L*:6.15、a:0.85、b:−1.60であった。
本発明の漆黒性の高い顔料である多層カーボンナノチューブ集合体は、樹脂、セラミックスなどの基材、マトリックスに、意匠性の高い青味の強く漆黒の外観を与えるのみならず、導電性、熱伝導性、難燃性、電磁波遮蔽性など、本来有するカーボンナノチューブの機能を、効果的に与えることができる。
そのため、高い意匠性だけではなく、静電塗装用導電性プライマー、各種半導体部品の加工、移送、保管中における静電気による破壊を防止するための電気・電子部品用容器及びシート、各種電子・電気製品(家電用、車両用、通信用など;電子・電気回路、導電性;熱伝導性、電磁波遮蔽性、難燃性を要求される熱伝導性シートなどの部材・部品)、磁気記録媒体(オーディオテープ、ビデオテープなど;帯電防止)、表示デバイス(液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、タッチパネルなど;表面の帯電防止、透明導電膜)、画像記録材料(電子写真用、インクジェット記録用、感熱記録用、熱現像用、ハロゲン化銀写真用フィルム・シート;帯電防止)などにも利用できる。
また、本発明は、従来にない青味の強い漆黒性顔料であるカーボンナノチューブを、比較的入手が容易な酢酸パラジウム等のカルボン酸パラジウムをそのまま触媒として使用することで、簡便に製造することができるので、産業上極めて有用である。
1 耐熱性反応管
2 電気炉
3 石英ボート
4 CNT
5 カルボン酸パラジウム
6 固体原料供給器

Claims (8)

  1. JIS Z8781-4に規定される表色系に基づく、Lが3から15、aが0から1、bが−4から−3の範囲の色度座標を持つカーボンナノチューブであることを特徴とする漆黒性顔料。
  2. 気体の炭素含有化合物とカルボン酸パラジウム触媒を500℃〜1200℃で接触させたカーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1記載の顔料。
  3. 気体の炭素含有化合物と固体のカルボン酸パラジウム触媒を500℃〜1200℃で接触させ、触媒上に多層カーボンナノチューブを成長させたことを特徴とする請求項1記載の顔料。
  4. 気体の炭素含有化合物と気化したカルボン酸パラジウム触媒を500℃〜1200℃で接触させ多層カーボンナノチューブを成長させたことを特徴とする請求項1記載の顔料。
  5. 粉体のカルボン酸パラジウム触媒に気体の炭素含有化合物を導入してカルボン酸パラジウム触媒を飛散させながら、気体の炭素含有化合物とカルボン酸パラジウム触媒を500℃〜1200℃で接触させ多層カーボンナノチューブを成長させたことを特徴とする請求項1記載の顔料。
  6. 前記カルボン酸パラジウムが酢酸パラジウムであることを特徴とする請求項1記載の顔料。
  7. 前記炭素含有化合物がメタンであることを特徴とする請求項1記載の顔料。
  8. 請求項1に記載の漆黒性顔料を含む組成物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN113582162A (zh) * 2021-08-27 2021-11-02 西安应用光学研究所 一种高光学吸收碳纳米材料及其制备方法

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