JP2015229061A - 超音波照射装置及び診断システム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】超音波照射装置は、ジェル層を介さずに、生体の局部に当接され、超音波を照射する発振素子112を有する超音波照射部110と、発振素子112を駆動制御する駆動制御手段と、を備える。駆動制御手段は、500±50kHz以上800±50kHz以下の範囲の出力周波数において、60分間以下の連続した駆動時間で、米国FDAの審査における超音波の出力強度の測定方法で1つの発振素子あたり40mW±20%以上85mW±20%以下の範囲の出力強度で超音波を照射するように発振素子112を駆動制御する。
【選択図】図3
Description
更に、生体内の皮下脂肪蓄積部位に照射して照射部位の脂肪を分解する超音波照射装置においては、超音波の周波数180kHz〜700kHzの範囲では出力強度が10mW/cm2より大きく、周波数700kHz〜1.3MHzの範囲では800mW/cm2より大きく設定されている(特許文献8参照)。
前記発振素子を駆動制御する駆動制御手段と、を備え、
前記駆動制御手段は、500±50kHz以上800±50kHz以下の範囲の出力周波数において、60分間以下の連続した駆動時間で、米国FDAの審査における超音波の出力強度の測定方法で1つの前記発振素子あたり40mW±20%以上85mW±20%以下の範囲の出力強度で超音波を照射するように前記発振素子を駆動制御することを特徴とする超音波照射装置。
前記超音波照射部は、前記発振素子を収容するパッド本体を備え、前記パッド本体は、前記生体の前記局部に当接される局部当接面を有し、
前記局部当接面に前記ジェル層が設けられずに、室温下において、前記超音波照射部が超音波を照射する直前の前記局部当接面の温度を基準とした、前記超音波照射部が超音波を照射し始めてから10分後の、ジェル層が設けられていない前記局部当接面の温度の最大上昇率が1.3以下であり、20分後の、ジェル層が設けられていない前記局部当接面の温度の最大上昇率が、1.3以下であり、30分後の、ジェル層が設けられていない前記局部当接面の温度の最大上昇率が、1.3以下であり、60分後の、ジェル層が設けられていない前記局部当接面の温度の最大上昇率が、1.3以下である超音波照射部であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の超音波照射装置。
(3)前記生体の病変部以外の前記局部に超音波を照射し全身性効果を発揮させる超音波照射装置であって、
前記生体の病変部以外の局部は、肘部から末梢部までの一部であり、前記超音波照射部は、前記超音波照射部の長手方向が肘部から末梢部に向かう方向に一致した位置関係で前記局部に固定されて肘部から末梢部までの一部に対して超音波を照射する腕部照射用超音波照射部であるか、又は、前記生体の病変部以外の局部は、足首から末梢部までの一部であり、前記超音波照射部は、前記超音波照射部の長手方向が踵から足指先に向かう方向に一致した位置関係で前記局部に固定されて足首から末梢部までの一部に対して超音波を照射する足部照射用超音波照射部であり、
前記超音波の照射により、血圧降下、心拍出量低下、血管内皮機能上昇、自律神経活性化、自律神経活性バランスの調節、体温上昇、血糖値降下、頚部から腰背部の鎮痛効果のうちの少なくとも一つの効果を発揮させることを特徴とする請求項1に記載の超音波照射装置。
前記診断装置は、
前記超音波照射装置により前記局部に超音波が照射された前記生体の生体情報として、収縮期圧値、拡張期圧値、脈拍数値、脈拍の周期変動の周波数成分のパワースペクトル解析によって算出された低周波数成分を示すLF値と高周波数成分を示すHF値との比を示すLF/HF値、自律神経活性化を示すTP値、及び前記局部以外の部位の表面温度の少なくとも1つを取得する取得手段と、
前記取得手段で取得した前記生体情報が予め定められた閾値以上又は閾値以下か否かを判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果に応じた診断情報を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段を参照して、前記判定手段の前記判定結果に応じた前記診断情報を抽出し、表示手段に前記診断情報の内容を表示する診断制御手段と、を備えることを特徴とする診断システム。
更に、上記患者は、生体情報を計測し、計測した値が、上記に示すような意味を持つことを知っていたとしても、この値が一時的なものなのか、それとも、医師の処方が必要な疾患によるものかの判断はできない。
これにより、患者は、自らの操作により、超音波を局部に照射し、その後の生体情報から、自らの判断より正確な診断情報を得ることができる。よって、患者の誤った判断により疾患が進行するのを防止できる。特に、血液の出にくい糖尿病患者の採血や血糖自己測定(SMBG)に有効である。また、薬物治療抵抗性高血圧や糖尿病の治療に有効である。
前記超音波照射部は、前記発振素子を収容するパッド本体を備え、前記パッド本体は、前記生体の前記局部に当接される局部当接面を有し、
前記発振素子の出力周波数と同一の周波数の圧電素子を、前記局部当接面及び前記ジェル層を介さずに前記発振素子に当接させたときに、前記圧電素子が2Vrms以上の交流電圧を出力するように、超音波を照射する超音波照射部であることを特徴とする請求項1に記載の超音波照射装置。
以下に、本発明の第1実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の第1実施形態の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
超音波照射装置60は、本体61と、超音波照射部及び腕部照射用超音波照射部としての超音波照射パッド110と、固定装具120と、を備える。本体61は、操作盤62を有する。超音波照射パッド110は、本体61のコネクタ65に複合ケーブル110aを介して接続される。固定装具120は、この超音波照射パッドを生体の前腕50に当接した状態で固定する。なお、超音波照射パッド110の数は、1個も含む任意の数とすることができる。
超音波照射装置60の本体61についての詳細は、図5を用いて後述する。
超音波照射パッド110は、パッド本体111と、超音波発振素子112と、を備える。パッド本体111は、長辺110bを有する略矩形に形成される。超音波発振素子112は、パッド本体111の内部に収容され超音波を発生する。
超音波発振素子112は、パッド本体111の長辺110bに沿って、2個配列されている。なお、超音波発振素子112の数は、2個以上の任意の数とすることができる。超音波発振素子112のパッド本体111の下面は、塗布されるジェルを介さずに、又は、ジェルシートにより形成されるジェル層を介さずに、直接生体の前腕に当接される。従って、パッド本体111の下面は、生体の局部に当接される局部当接面を構成する。ここで、ジェルシートとは、ジェルが不織布に含浸させられてシート状とされたものをいう。また、1個の超音波発振素子112の生体に当接される部分の面積(照射面積)は、6.16cm2である。即ち、2個の超音波発振素子112を備える超音波照射パッド110の照射面積は、12.32cm2である。
図3に示すように、固定装具120は、前腕50に巻き廻すことができるバンドにより構成されており、その長辺121が前腕50の肘から末梢に向かう方向に直交するように配置され、生体の前腕50に巻き廻されて、超音波照射パッド110を、ジェル層を介さずに直接前腕50に当接した状態で固定する。具体的には、固定装具120は、固定装具120の長辺121に対して、超音波照射パッド110の長辺110bが交差した状態で、超音波照射パッド110を前腕50に固定する。即ち、生体の病変部以外の局部は、肘部から末梢部までの一部である。超音波照射パッド110は、超音波照射パッド110の長手方向である長辺121の延びる方向が、肘部から末梢部に向かう方向に一致した位置関係で局部に固定されて、肘部から末梢部までの一部に対して超音波を照射する。なお、第1実施形態では、1つの超音波照射パッド110を前腕50に固定しているが、例えば、超音波照射装置60が2つの超音波照射パッド110を備える場合には、固定装具120は、2つの超音波照射パッド110で前腕50を挟んで固定する。
本体61は、操作者の操作を受け付ける操作盤62と、操作盤62で受け付けた操作者の操作に基づき、超音波発振素子112の駆動制御を行う駆動制御手段63と、0〜60分間の時間をカウントし、駆動制御手段63に時間情報を送信するタイマー設定手段64と、2つ超音波照射パッド110の複合ケーブル110aを夫々接続可能なコネクタ65と、を備える。なお、コネクタ65の数は、1個も含む任意の数とすることができる。
なお、第1実施形態において、出力周波数を500kHz±5kHz又は800kHz±5kHzとしているが、本発明の出力周波数には、超音波出力機器や測定器の違いによる誤差として、500kHz±50kHz以上800kHz±50kHz以下の範囲が含まれる。
発振素子を有する超音波照射部としての超音波照射パッド110を、ジェル層を介さずに前記生体の前記局部に当接させ、前記生体の前記局部に対して前記超音波照射パッド110の発振素子112から超音波を照射する超音波照射工程を有し、
前記生体の病変部以外の局部は、肘部から末梢部までの一部であるか、又は、前記生体の病変部以外の局部は、足首から末梢部までの一部であり、
前記超音波照射工程では、前記超音波照射パッド110は、前記超音波照射パッド110の長手方向が肘部から末梢部に向かう方向に一致した位置関係で前記局部に固定されて、肘部から末梢部までの一部に対して超音波を照射するか、又は、前記超音波照射パッド110は、前記超音波照射パッド110の長手方向が踵から足指先に向かう方向に一致した位置関係で前記局部に固定されて、足首から末梢部までの一部に対して超音波を照射し、
前記超音波照射工程により、血圧降下、心拍出量低下、血管内皮機能上昇、自律神経活性化、自律神経活性バランスの調節、体温上昇、血糖値降下、頚部から腰背部の鎮痛効果のうちの少なくとも一つの効果を発揮させる超音波照射治療方法。
前記超音波照射工程では、500±50kHz以上800±50kHz以下の範囲の出力周波数において、前記超音波照射パッド110の発振素子112から超音波を連続照射し、
前記局部当接面に前記ジェル層が設けられておらず、室温下において、前記超音波照射パッド110が超音波を照射する直前の前記局部当接面の温度を基準とした、超音波照射部が超音波を照射し始めてから10分後の、ジェル層が設けられていない局部当接面の温度の最大上昇率が、1.3以下であり、20分後の、ジェル層が設けられていない局部当接面の温度の最大上昇率が、1.3以下であり、30分後の、ジェル層が設けられていない局部当接面の温度の最大上昇率が、1.3以下であり、60分後の、ジェル層が設けられていない局部当接面の温度の最大上昇率が、1.3以下であることを特徴とする。
実施例1では、2個の超音波発振素子112を有する1つの超音波照射パッド110を備える超音波照射装置60により、800kHz(±50kHz)の出力周波数の超音波を、米国FDAの審査における超音波の出力強度の測定方法で1つの発振素子あたり40mW±20%以上85mW±20%以下の範囲(平均出力強度62.5mW)の出力強度で、20人の高血圧患者である被験者の右前腕50に、30分間連続照射した。なお、この超音波の振動の強度は、前述の圧電素子201及びオシロスコープ202を用いた測定で、2Vrms以上の交流電圧が出力される程度の超音波の振動の強度に相当する。
本実施例では、脈波・コロトコフ音記録計(パラマテック株式会社:GP−303)を用いて、収縮期圧、拡張期圧、脈圧、心拍数、心拍出量、末梢血管抵抗及び心筋負荷係数を測定した。収縮期圧、拡張期圧、脈圧、心拍数、心拍出量、末梢血管抵抗及び心筋負荷係数は、高血圧患者にとって、いずれも数値が低い方が望ましい。
心拍出量は、1分間に心臓から送り出される血液量を示し、算出式“1回の心拍出量X脈拍”により算出される。
末梢血管抵抗は、末梢血管を血液が通過する時に受ける圧力を示し、算出式“平均血圧(mmHg)−中心静脈圧(mmHg)X1332”により算出される。
心筋負荷係数は、心臓負荷の指標である心筋酸素消費量と極めて相関が高い値であり、算出式“収縮期圧X心拍数”により算出される。
一方、500±50kHz以上800±50kHz以下の範囲の出力周波数において、米国FDAの審査における超音波の出力強度の測定方法で1つの発振素子あたり85mWを超える出力強度で30分間連続照射した被験者の群では、収縮期圧、拡張期圧、脈圧、心拍数、心拍出量及び心筋負荷係数において、有意な低下が認められなかった。
これに対して比較例では、有意な低下が認められなかった。同一の条件で、他に4人の被験者(56歳の男性、58歳の男性、71歳の女性、及び76歳の女性)に対しても、同様に超音波の照射を行ったが、表1Bと同様に有意な低下が認められなかった。
超音波照射装置60の駆動制御手段63は、500±50kHz以上800±50kHz以下の範囲の出力周波数において、超音波を照射するように発振素子112を駆動制御する。超音波照射パッド110は、発振素子112を収容するパッド本体111を備え、パッド本体111は、生体の局部に当接される局部当接面としての下面を有する。そして、超音波照射パッド110は、発振素子112の出力周波数と同一の周波数の圧電素子201を、ジェルシート等のジェル層を介さずに局部当接面を介して発振素子112に当接させたときに、圧電素子201が2Vrms以上の交流電圧を出力するように、超音波を照射する超音波照射パッドである。この構成により、生体の病変部以外の局部に超音波を照射することで、収縮期圧、拡張期圧、及び脈拍数といった全身性効果を発揮させることができる。
実施例2では、2個の超音波発振素子112を有する1つの超音波照射パッド110を備える超音波照射装置60により、800kHz(±50kHz)の出力周波数の超音波を、米国FDAの審査における超音波の出力強度の測定方法で1つの発振素子あたり40mW±20%以上85mW±20%以下の範囲(平均出力強度62.5mW)の出力強度で、20人の自律神経のバランスを欠く被験者の右前腕50に、10分間連続照射した。
SDNNは、RR(NN)intervalに対する標準偏差を示す値であり、値が大きい程、健康であることを示す。
TPは、自律神経活性化を示す値であり、値が大きい程、自律神経の調整能力が高いことを示す。
LFは生体の心拍の周期変動の周波数成分をパワースペクトル解析した解析結果の中間周波数成分を示す値、HF値は高周波数成分を示す値である。
LFは交感神経系の活性を示す指標となり、HFは副交感神経系の活性を示す指標となる。即ち、LF/HFは、1より大きい値であれば交感神経系の活性が優位であることを示し、1より小さい値であれば副交感神経系の活性が優位であることを示す。
本実施例では、副交感神経系の活性が優位である(LF/HF<1.0)被験者10人、交感神経系の活性が優位である(LF/HF>1.0)被験者10人に夫々、上記超音波を照射した。
これにより、800kHz(±50kHz)の出力周波数の超音波を、米国FDAの審査における超音波の出力強度の測定方法で1つの発振素子あたり40mW±20%以上85mW±20%以下の範囲(平均出力強度62.5mW)の出力強度で、10分間、被験者に連続照射する方法が、自律神経バランスの調節効果を奏することが確認できた。また、超音波の照射時間を10分間ではなく60分間とした場合も、10分間の場合と同様の効果を得ることができた。
一方、500±50kHz以上800±50kHz以下の範囲の出力周波数において、米国FDAの審査における超音波の出力強度の測定方法で1つの発振素子あたり85mWを超える出力強度で10分間連続照射した被験者の群では、SDNN、TP及びLF/HFにおいて、正常に近づく有意な変化が認められなかった。
実施例3では、2個の超音波発振素子112を有する1つの超音波照射パッド110を備える超音波照射装置60により、800kHz(±50kHz)の出力周波数の超音波を、米国FDAの審査における超音波の出力強度の測定方法で1つの発振素子あたり40mW±20%以上85mW±20%以下の範囲(平均出力強度62.5mW)の出力強度で、18人の被験者の右前腕50に、30分間連続照射した。また、本実施例による超音波の照射は、室温25℃の状態で行った。
これにより、800kHz(±50kHz)の出力周波数の超音波を、米国FDAの審査における超音波の出力強度の測定方法で1つの発振素子あたり40mW±20%以上85mW±20%以下の範囲(平均出力強度62.5mW)の出力強度で、30分間、被験者に連続照射する方法が、照射部以外の四肢末端の表面温度の上昇効果を奏することが確認できた。また、超音波の照射時間を30分間ではなく60分間とした場合も、30分間の場合と同様の効果を得ることができた。
被験者は、40代男性の糖尿病患者であり、坐骨神経痛が持続、整形外科で低周波、神経節ブロックでも治癒しない頑固な痛みを感じ、MRIで腰椎椎間板ヘルニアも発覚している。この被験者に、2個の超音波発振素子112を備える超音波照射パッド110を、前腕、腰、殿部から大腿部背側に1枚ずつ当接させ、800kHz(±50kHz)又は500kHz(±50kHz)の出力周波数の超音波を、米国FDAの審査における超音波の出力強度の測定方法で1つの発振素子あたり40mW±20%以上85mW±20%以下の範囲の出力強度で、30分間連続照射した。これにより、被験者は、痛みが消失し1回照射で完治した。
図6は、超音波照射装置60を被験者に適用した実施例4を説明する図である。
実施例4における被験者は、医師から糖尿病と診断されて糖尿病治療薬を服用している。この糖尿病治療薬とは、インスリン分泌刺激薬(SU剤、グリニド系薬剤)、インスリン作用改善薬(ピオグリタゾン)、ビグアナイド剤(メトホルミン)、alpha−グルコシダーゼ阻害薬(ボグリボース)の経口血糖降下薬で治療中の患者や、更に前記経口薬に加えインスリン製剤を併用している者を含むものである。
すなわち、糖尿病治療薬を服用する被験者に超音波照射装置60を適用し、出力周波数500kHzで、米国FDAの審査における超音波の出力強度の測定方法で1つの発振素子あたり85mW±20%の出力強度の超音波を被験者の前腕の一部に30分間照射することで、血糖値がより降下することが分かった。
図7は、超音波照射装置60を被験者に適用した実施例5を説明する図である。
実施例5は、複数の被験者に超音波照射装置60を適用し、これら被験者の血管の状態を検査した。血管の状態は、血管の内皮機能を反映する値であるRHIにより検査した。RHIの正常値は“1.67”であり、この値が大きい程、血管内皮機能が良好であることを示す。
また、実施例5では、超音波照射装置60により、500kHz、800kHz及び1000kHzの3種類の出力周波数において、米国FDAの審査における超音波の出力強度の測定方法で1つの発振素子あたり85mW±20%の出力強度の超音波を複数の被験者の前腕50の一部に30分間照射し、その後、各被験者のRHIを測定した。また、実施例5では、無照射(図7に示す0kHz)の場合の各被験者のRHIも測定した。
図7(b)は、図7(a)における出力周波数毎の超音波照射前と後とのRHIの平均値の差をグラフにしたものである。
また、図7(b)に示すように、超音波照射前と後とのRHIの平均値の差も、出力周波数が0kHz、1000kHz、500kHz、800kHzの順で値が大きいことが統計学的に確認できた(ANOVA2x2検定でP<0.05)。
すなわち、500kHz以上1MHz未満の範囲の出力周波数において、血管内皮機能の低下を改善する効果を奏し、特に、出力周波数800kHzが最も血管内皮機能の低下を改善できることが分かった。また、超音波の照射時間を30分間ではなく60分間とした場合も、30分間の場合と同様の効果を得ることができた。
超音波照射装置60は、500±50kHz以上800±50kHz以下の範囲の出力周波数において、米国FDAの審査における超音波の出力強度の測定方法で1つの発振素子あたり40mW±20%以上85mW±20%以下の範囲の出力強度の超音波を、生体の肘から末梢の一部を覆って照射できる。
このような超音波を肘から末梢の一部を覆って照射することで、生体内全体の血管障害を改善できるので、糖尿病による血管合併症を予防できる。より具体的には、超音波照射装置60は、大血管障害の発症と関連が深い血管内皮機能の低下を改善できる。よって、超音波照射装置60は、血管障害予防機器としての臨床応用化、血管障害治療機器としての臨床応用化も期待できる。
更に、このような超音波を生体の部位に照射することで、生体の睡眠を誘発できるので、睡眠誘導機器としての応用化も期待できる。
実施例6では、2個の超音波発振素子112を備える超音波照射パッド110の表面には、ジェル層を設けられていない。
そして、本実施例では、超音波照射装置60を、800kHz(±50kHz)の出力周波数、米国FDAの審査における超音波の出力強度の測定方法で1つの発振素子あたり40mW±20%以上85mW±20%以下の範囲の出力強度で、60分間連続駆動した。そして、本実施例では、0分、10分、30分及び60分経過時に、超音波照射パッド110において、2個の超音波発振素子112接合表面の温度を夫々測定した。本実施例では、上記測定を32個のサンプルに対して行った。
超音波照射装置60によれば、500±50kHz以上800±50kHz以下の範囲の出力周波数の超音波を、病変部の治療を目的とした場合に比べ、比較的長い5分間以上60分間以下の連続した駆動時間で、極めて小さい、米国FDAの審査における超音波の出力強度の測定方法で1つの発振素子あたり40mW±20%以上85mW±20%以下の範囲の出力強度で照射できる。
これにより、500±50kHz以上800±50kHz以下の範囲の出力周波数の超音波を、微弱な出力強度で、5分間以上60分間以下の連続時間に亘って、生体の前腕の広い範囲に亘って照射できる。
次に、上記第1実施形態の超音波照射装置60を適用した応用例に係る超音波照射システム1について説明する。
[超音波照射システム1の構成]
図8は、前記第1実施形態の応用例に係る超音波照射システム1の機能構成を示す図である。
応用例に係る超音波照射システム1は、上記第1実施形態に係る超音波照射装置60と、診断装置の一例である超音波を照射する生体の生体情報を測定する測定器70を備える。ここで、本応用例において、測定器70は、例えば、収縮期圧値、拡張期圧値、脈拍数値を測定する血圧測定器、LF/HF値を測定する自律神経バランス測定器、生体の表面温度を測定する温度測定器等で構成される。
測定器70は、測定器70の動作を制御する測定器制御部71と、測定器制御部71に制御され、生体の生体情報を取得する取得手段としての測定部72と、測定器制御部71に表示制御される表示部73と、測定器制御部71が参照する診断情報記憶部74と、を備える。
測定器制御部71は、測定器制御手段711と、タイマー設定手段712と、演算手段713と、判定手段714と、診断制御手段715と、送受信手段716と、を備える。
測定器制御手段711は、測定部72を所定の圧力(例えば、160mmHg又は200mmHg)で、生体の前腕を加圧させ、所定時間経過後、減圧して、生体情報を取得させる。
タイマー設定手段712は、測定器制御手段711が測定部72を所定の圧力で生体の前腕を加圧させてからの時間をカウントする時間情報を測定器制御手段711に送信する。
演算手段713は、測定器制御手段711の制御により、測定部72が減圧された後、測定部72で取得した生体情報から、生体の収縮期圧を示す収縮期圧値、拡張期圧を示す拡張期圧値及び脈拍を示す脈拍値を算出する。そして、演算手段713は、算出した収縮期圧値、拡張期圧値及び脈拍値を表示部73に表示する制御を行う。
測定器制御手段711は、測定部72を制御して生体情報を取得させる。具体的には、測定器制御手段711は、1分間の予備測定をした後、3〜5分間の脈波を示す生体情報を取得させる。
演算手段713は、当該生体情報から、生体の心拍一拍毎の心拍変動を測定し、心拍の周期変動の周波数成分をパワースペクトル解析する。演算手段713は、当該解析の結果における、SDNN、TP、LF値、HF値及びLF/HF値を算出する。そして、演算手段713は、算出したSDNN、TP、LF値、HF値及びLF/HF値を表示部73に表示する制御を行う。
情報診断テーブルは、複数種類の生体情報と、各生体情報の予め定められた閾値と、当該閾値以上又は以下であった場合の診断情報の内容が対応付けられ、診断情報記憶部74に記憶されている。
また、測定器70を自律神経バランス測定器で構成した場合、判定手段714は、演算手段713により、算出されたLF/HF値が1.3以上又は0.7以下の場合には、生体情報が異常値であると判定し、その他の場合は正常値であると判定する。
例えば、図9に示す例では、診断制御手段715は、判定手段714により、収縮期圧値/拡張期圧値が異常値であると判定された場合には、表示部73に「高血圧で要治療」と表示する。
また、測定部72は、例えば、測定器70を自律神経バランス測定器で構成した場合、脈波センサを有し、例えば、左2指に装着される。
図10は、前記応用例に係る超音波照射システム1の診断動作フローを説明するフローチャートである。
まず、超音波照射システム1に診断動作をさせる前に、超音波照射装置60の超音波照射パッド110のパッド本体111下面にジェルシートは貼り付けられない。そして、超音波照射パッド110を固定装具120により、病変部以外の局部である生体の一方の前腕に直接当接させ固定する。そして、超音波照射装置60により、所定の周波数で、所定の出力強度の超音波を所定時間照射する。
次に、測定器70の測定部72を生体に装着する。
そして、超音波照射システム1の測定器70に診断動作を開始させる。なお、測定器70に診断動作は、波照射装置60から駆動終了情報を受信した場合に、開始してもよい。
この場合、超音波照射装置60の駆動制御手段63は、測定器70から駆動開始情報を受信し、超音波照射パッド110を、5分間以上60分間以下の連続駆動時間で、例えば、出力周波数800kHz(±50kHz)で、米国FDAの審査における超音波の出力強度の測定方法で1つの発振素子あたり40mW±20%以上85mW±20%以下の範囲(平均出力強度62.5mW)の出力強度の超音波を生体に照射する駆動制御を行う。また、駆動制御手段63は、上記連続駆動時間経過後に、超音波照射パッド110の駆動制御を終了し、駆動制御が終了したことを示す駆動終了情報を、測定器70に送信する。
これにより、超音波照射システム1は、例えば、超音波を照射する前の生体の生体情報を取得し、当該生体情報の値が異常値と判定した場合に、当該生体に超音波を照射し、その後、再度、生体情報を取得し、当該生体情報の値が異常値か否かを判定できる。即ち、超音波の照射前後の生体情報を取得できるので、これらの生体情報を対比した診断も可能となる。具体的には、例えば、超音波の照射前後の生体情報として収縮期圧値、拡張期圧値及び脈拍値を算出する。これらの値の変化から、白衣高血圧やストレスによる一過性の高血圧反応と、病的高血圧症との鑑別が可能となり、薬物療法の必要性が判定できる。
超音波照射システム1によれば、超音波照射装置60により、病変部以外の局部に超音波を照射した後に、収縮期圧値、拡張期圧値、脈拍数値、LF/HF値及び局部以外の部位の表面温度の少なくとも1つの生体情報から、診断情報を表示できる。
これにより、患者は、自らの操作により、超音波を局部に照射し、その後の生体情報から、自らの判断より正確な診断情報を得ることができる。よって、患者の誤った判断により疾患が進行するのを防止できる。
以下に、本発明の第2実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。第2実施形態は、超音波照射部としての超音波照射パッド110が足裏に超音波を照射する超音波照射部である点において第1実施形態とは異なる。これ以外の構成は、第1実施形態の構成と同一であるため、以下の第2実施形態の説明にあたっては、第1実施形態と同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
実施例7では、50〜70歳の男女6名を被験者として、足裏に対して超音波の照射を行った。被験者は、慢性の頸部から腰背部の痛みがあり、マッサージや低周波治療でも治癒しない状態である。これらの被験者に、2個の超音波発振素子112を備える超音波照射パッド110の長手方向に一致する長辺を、両足裏の踵から足指へ向かう方向に一致した位置関係で、ジェル層としてのジェルシートを介さずに、直接当接させて固定させた。そして、800kHz(±50kHz)又は500kHz(±50kHz)の出力周波数の超音波を、米国FDAの審査における超音波の出力強度の測定方法で1つの発振素子あたり40mW±20%以上85mW±20%以下の範囲の出力強度で、20分間連続照射した。照射後、6名の被験者全員に、頸部から腰背部に温熱効果と鎮痛効果が認められた。また、超音波の照射時間を60分間とした場合も、同様の効果を得ることができた。
実施例8では、副交感神経系の活性が優位である(LF/HF<1.0)被験者6人の両足裏に、2個の超音波発振素子112を備える超音波照射パッド110を、実施例7と同一の位置関係でジェルシートを介さずに、直接当接させて固定させ、実施例7と同一の出力周波数、及び出力強度で、超音波照射を10分間連続照射した。超音波照射前と照射後の、SDNN、TP、及びLF/HFの平均値±標準誤差で示した値は、表12に示すとおりである。なお、SDNN、TP、LFは、それぞれ前述の第1実施形態における実施例2で説明したとおりである。
生体の病変部以外の局部は、足首から末梢部までの一部であり、超音波照射パッド110は、超音波照射パッド110の長手方向が踵から足指先に向かう方向に一致した位置関係で局部に固定されて足首から末梢部までの一部に対して超音波を照射する足部照射用超音波照射部である。そして、駆動制御手段63は、500±50kHz以上800±50kHz以下の範囲の出力周波数において、60分間以下の連続した駆動時間で、米国FDAの審査における超音波の出力強度の測定方法で1つの発振素子あたり40mW±20%以上85mW±20%以下の範囲の出力強度で、超音波を照射するように発振素子112を駆動制御する。
63 駆動制御手段
110 超音波照射パッド
112 超音波発振素子
Claims (4)
- ジェル層を介さずに、生体の局部に当接され、超音波を照射する発振素子を有する超音波照射部と、
前記発振素子を駆動制御する駆動制御手段と、を備え、
前記駆動制御手段は、500±50kHz以上800±50kHz以下の範囲の出力周波数において、60分間以下の連続した駆動時間で、米国FDAの審査における超音波の出力強度の測定方法で1つの前記発振素子あたり40mW±20%以上85mW±20%以下の範囲の出力強度で超音波を照射するように前記発振素子を駆動制御することを特徴とする超音波照射装置。 - 前記駆動制御手段は、500±50kHz以上800±50kHz以下の範囲の出力周波数において、超音波を連続照射するように前記発振素子を駆動制御し、
前記超音波照射部は、前記発振素子を収容するパッド本体を備え、前記パッド本体は、前記生体の前記局部に当接される局部当接面を有し、
前記局部当接面に前記ジェル層が設けられずに、室温下において、前記超音波照射部が超音波を照射する直前の前記局部当接面の温度を基準とした、前記超音波照射部が超音波を照射し始めてから10分後の、ジェル層が設けられていない前記局部当接面の温度の最大上昇率が、1.3以下であり、20分後の、ジェル層が設けられていない前記局部当接面の温度の最大上昇率が、1.3以下であり、30分後の、ジェル層が設けられていない前記局部当接面の温度の最大上昇率が、1.3以下であり、60分後の、ジェル層が設けられていない前記局部当接面の温度の最大上昇率が、1.3以下である超音波照射部であることを特徴とする請求項1に記載の超音波照射装置。 - 前記生体の病変部以外の前記局部に超音波を照射し全身性効果を発揮させる超音波照射装置であって、
前記生体の病変部以外の局部は、肘部から末梢部までの一部であり、前記超音波照射部は、前記超音波照射部の長手方向が肘部から末梢部に向かう方向に一致した位置関係で前記局部に固定されて肘部から末梢部までの一部に対して超音波を照射する腕部照射用超音波照射部であるか、又は、前記生体の病変部以外の局部は、足首から末梢部までの一部であり、前記超音波照射部は、前記超音波照射部の長手方向が踵から足指先に向かう方向に一致した位置関係で前記局部に固定されて足首から末梢部までの一部に対して超音波を照射する足部照射用超音波照射部であり、
前記超音波の照射により、血圧降下、心拍出量低下、血管内皮機能上昇、自律神経活性化、自律神経活性バランスの調節、体温上昇、血糖値降下、頚部から腰背部の鎮痛効果のうちの少なくとも一つの効果を発揮させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の超音波照射装置。 - 請求項1〜請求項3のいずれかに記載の超音波照射装置と、前記超音波照射装置により前記局部に超音波が照射された前記生体を診断する診断装置と、を備える診断システムであって、
前記診断装置は、
前記超音波照射装置により前記局部に超音波が照射された前記生体の生体情報として、収縮期圧値、拡張期圧値、脈拍数値、脈拍の周期変動の周波数成分のパワースペクトル解析によって算出された低周波数成分を示すLF値と高周波数成分を示すHF値との比を示すLF/HF値、自律神経活性化を示すTP値、及び、前記局部以外の部位の表面温度の少なくとも1つを取得する取得手段と、
前記取得手段で取得した前記生体情報が予め定められた閾値以上又は閾値以下か否かを判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果に応じた診断情報を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段を参照して、前記判定手段の前記判定結果に応じた前記診断情報を抽出し、表示手段に前記診断情報の内容を表示する診断制御手段と、を備えることを特徴とする診断システム。
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