JP2015225871A - 超伝導電磁石装置及び荷電粒子線治療装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】超伝導コイルの材料の使用量を削減することが可能な超伝導電磁石及び荷電粒子線治療装置を提供する。【解決手段】超伝導電磁石41は、ヨーク43のギャップGに近い方に配置された第1コイル部42aと、第1コイル部42aよりもギャップから遠い方に配置された第2コイル部42bと、第1コイル部42aに電流を供給する第1電源と、第2コイル部42bに電流を供給する第2電源とを備えている。これにより、第1コイル部42aと第2コイル部42bとに流れる電流値を異なるものとすることができる。第1コイル部42aに流れる電流値を、第2コイル部42bに流れる電流値よりも高く設定することで、第1コイル部42aに流れる電流値の配分を高くして、第2コイル部42bに流れる電流値の配分を低く抑え、超伝導コイル42による起磁力を同一とした場合に、第2コイル部42bにおける断面積を削減する。【選択図】図3
Description
本発明は、超伝導電磁石装置及び荷電粒子線治療装置に関する。
例えばがん患者に荷電粒子線を照射して治療を行う荷電粒子線治療装置において、荷電粒子線の軌道の周辺に偏向磁場を形成する偏向電磁石として、超伝導電磁石を用いて荷電粒子線を偏向するものがある(例えば、特許文献1参照)。
超伝導電磁石の超伝導コイルに通電可能な最大電流値は、超伝導コイルが配置された環境における磁場の強さによって異なる。具体的には、鉄心のギャップからの漏れ磁束の影響を受けてしまい、ギャップに近い場所ほど磁束密度が高くなり、超伝導コイルに通電可能な最大電流値が制限される。そのため、超伝導コイルにおいて、ギャップから遠い方に配置された部分は、通電可能な最大電流値に余裕があり、無駄が生じていることになる。
超伝導コイルの材料は、高価であるので、超伝導コイルの材料の無駄を省くことが求められている。本発明は、起磁力を同一とした場合に、超伝導コイルの材料の使用量を削減することが可能な超伝導電磁石装置及びこれを備えた荷電粒子線治療装置を提供することを目的とする。
本発明の超伝導電磁石装置は、中心軸線周りに配置された第1コイル部及び第2コイル部を各々有する一対の超伝導コイルと、中心軸線方向において一対の超伝導コイル間にギャップを有し、ギャップを挟んで一対の磁極を形成する一対の鉄心と、第2コイル部よりもギャップに近い方に配置された第1コイル部に電流を供給する第1電源と、第2コイル部に電流を供給する第2電源と、を備える。
本発明の超伝導電磁石装置では、鉄心のギャップに近い方に配置された第1コイル部に電流を供給する第1電源と、鉄心のギャップから遠い方に配置された第2コイル部に電流を供給する第2電源とを備えているので、第1コイル部と第2コイル部とに流れる電流値を異なるものとすることができる。本発明の超伝導電磁石装置では、第1コイル部に流れる電流値を、第2コイル部に流れる電流値よりも高く設定することで、超伝導コイルによる起磁力を同一とした場合に、第1コイル部に流れる電流値の配分を高くして、第2コイル部に流れる電流値の配分を低く抑え、第2コイル部における超伝導コイルの断面積を削減することができる。その結果、超伝導コイルの材料の使用量を削減することができる。
本発明の超伝導電磁石装置は、中心軸線周りに配置された第1コイル部及び第2コイル部を各々有する一対の超伝導コイルと、中心軸線方向において一対の超伝導コイル間にギャップを有し、ギャップを挟んで一対の磁極を形成する一対の鉄心と、を備え、第1コイル部は、第2コイル部よりもギャップに近い方に配置され、第1コイル部の巻線密度は、第2コイル部の巻線密度よりも高い。
本発明の超伝導電磁石装置では、鉄心のギャップに近い方に配置された第1コイル部の巻線密度が、ギャップから遠い方に配置された第2コイル部の巻線密度よりも高くなっている。巻線密度とは、単位断面積当たりに占める超伝導コイルの断面積の割合である。例えば、コイルをきつく巻くことでコイル同士を接近させることで、巻線密度を高くすることができ、コイルを緩く巻くことでコイル同士の間に隙間を形成して、巻線密度を低くすることができる。本発明の超伝導電磁石装置では、ギャップに近い方と遠い方とで、単位断面積当たりの巻線密度に差を設けることで、電流密度に差を生じさせることができる。これにより、第1コイル部に流れる電流値の配分を高くして、第2コイル部に流れる電流値の配分を低く抑え、超伝導コイルによる起磁力を同一とした場合に、第2コイル部における超伝導コイルの断面積を削減することができる。その結果、超伝導コイルの材料の使用量を削減することができる。
本発明の超伝導電磁石装置は、中心軸線周りに配置された第1コイル部及び第2コイル部を各々有する一対の超伝導コイルと、中心軸線方向において一対の超伝導コイル間にギャップを有し、ギャップを挟んで一対の磁極を形成する一対の鉄心と、を備え、第1コイル部は、第2コイル部よりもギャップに近い方に配置され、第1コイル部の電流密度が、第2コイル部の電流密度よりも高い。
本発明の超伝導電磁石装置では、鉄心のギャップに近い方に配置された第1コイル部の電流密度が、ギャップから遠い方に配置された第2コイル部の電流密度よりも高くなっている。電流密度とは、単位断面積に垂直な方向に単位時間当たりに流れる電気量である。本発明の超伝導電磁石装置では、ギャップに近い方と遠い方とで、電流密度に差を設けることができる。これにより、第1コイル部に流れる電流値の配分を高くして、第2コイル部に流れる電流値の配分を低く抑え、超伝導コイルによる起磁力を同一とした場合に、第2コイル部における超伝導コイルの断面積を削減することができる。その結果、超伝導コイルの材料の使用量を削減することができる。
本発明の荷電粒子線治療装置は、上記の超伝導電磁石装置を備えたものである。本発明の荷電粒子線治療装置では、超伝導電磁石装置によって荷電粒子線を偏向させることができる。また、超伝導電磁石装置では、ギャップに近い方の第1コイル部と、ギャップから遠い方の第2コイル部とで、電流密度に差を設けることができる。これにより、第1コイル部に流れる電流値の配分を高くして、第2コイル部に流れる電流値の配分を低く抑えることができる。そのため、超伝導コイルによる起磁力を同一とした場合に、第2コイル部における超伝導コイルの断面積を減らして、超伝導コイルの材料の使用量を削減することができる。
本発明によれば、ギャップに近い方の第1コイル部と、ギャップから遠い方の第2コイル部との間で、電流密度に差を設け、第1コイル部に流れる電流値の配分を高くして、第2コイル部に流れる電流値の配分を低く抑えることができ、起磁力を同一とした場合に、超伝導コイルの材料の使用量を抑制することができる。
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、「上流」、「下流」の語は、出射する荷電粒子線の上流(加速器側)、下流(患者側)をそれぞれ意味している。
図1に示すように、荷電粒子線治療装置1は、放射線療法におけるがん治療等に治療される装置であり、荷電粒子を加速して荷電粒子線を出射する加速器11と、荷電粒子線を被照射体へ照射する照射ノズル12(照射部)と、加速器11から出射された荷電粒子線を照射ノズル12へ輸送するビーム輸送ライン13(輸送ライン)と、ビーム輸送ライン13に設けられ、荷電粒子線のエネルギーを低下させて荷電粒子線の飛程を調整するデグレーダ18(エネルギー調整部)と、ビーム輸送ライン13に設けられた複数の電磁石25と、複数の電磁石25のそれぞれに対応して設けられた電磁石電源27と、荷電粒子線治療装置1全体を制御する制御部30と、を備えている。本実施形態では、加速器11としてサイクロトロンを採用するが、これに限定されず、荷電粒子線を発生させるその他の発生源、例えば、シンクロトロン、シンクロサイクロトロン、ライナック等であってもよい。また、サイクロトロンとして、リングサイクロトロン、AVFサイクロトロンなどが挙げられる。
荷電粒子線治療装置1では、治療台22上の患者Pの腫瘍(被照射体)に対して加速器11から出射された荷電粒子線の照射が行われる。荷電粒子線は、電荷をもった粒子を高速に加速したものであり、例えば陽子線、重粒子(重イオン)線等がある。本実施形態に係る荷電粒子線治療装置1は、いわゆるスキャニング法により荷電粒子線の照射を行うものであり、被照射体を深さ方向に仮想的に分割(スライス)し、スライス平面(層)毎に、層上の照射範囲に対して、荷電粒子線の照射を行う。
なお、スキャニング法による照射方式として、例えばスポット式スキャニング照射、及び、ラスター式スキャニング照射がある。スポット式スキャニング照射は、照射範囲である、一のスポットへの照射が完了すると、一度ビーム(荷電粒子線)照射を止め、次のスポットへの照射準備が整った後に次のスポットへの照射を行う方式である。これに対し、ラスター式スキャニング照射は、同一層の照射範囲については、照射を途中で止めることなく、連続的にビーム照射を行う方式である。このように、ラスター式スキャニング照射は、同一層の照射範囲については連続的にビーム照射が行われるものであるため、スポット式スキャニング照射と異なり、照射範囲は複数のスポットから構成されるものではない。
照射ノズル12は、治療台22の周りを360度回転可能な回転ガントリ23の内側に取り付けられており、回転ガントリ23によって任意の回転位置に移動可能とされている。照射ノズル12には、後述する収束電磁石19、スキャニング電磁石21、真空ダクト28が含まれている。スキャニング電磁石21は、照射ノズル12の中に設けられている。スキャニング電磁石21は、荷電粒子線の照射方向と交差する面においてX方向へ荷電粒子線を走査するX方向走査電磁石と、荷電粒子線の照射方向と交差する面においてX方向と交差するY方向へ荷電粒子線を走査するY方向走査電磁石と、を有している。また、スキャニング電磁石21により走査された荷電粒子線はX方向及び/又はY方向へ偏向されるため、スキャニング電磁石よりも下流側の真空ダクト28は、その径が下流側ほど拡大されている。
ビーム輸送ライン13は、荷電粒子線が通る真空ダクト14を有している。真空ダクト14の内部は真空状態に維持されており、輸送中の荷電粒子線を構成する荷電粒子が空気等により散乱することを抑制している。
また、ビーム輸送ライン13は、加速器11から出射された所定のエネルギー幅を有する荷電粒子線から所定のエネルギー幅よりも狭いエネルギー幅の荷電粒子線を選択的に取り出すESS(Energy Selection System)15と、ESS15によって選択されたエネルギー幅を有する荷電粒子線を、エネルギーが維持された状態で輸送するBTS(Beam Transport System)16と、BTS16から回転ガントリ23に向けて荷電粒子線を輸送するGTS(Gantry Transport System)17と、を有している。
デグレーダ18は、通過する荷電粒子線のエネルギーを低下させて当該荷電粒子線の飛程を調整する。患者の体表から被照射体である腫瘍までの深さは患者ごとに異なるため、荷電粒子線を患者に照射する際には、荷電粒子線の到達深さである飛程を調整する必要がある。デグレーダ18は、加速器11から一定のエネルギーで出射された荷電粒子線のエネルギーを調整することにより、患者体内の所定の深さにある被照射体に荷電粒子線が適切に到達するように調整する。このようなデグレーダ18による荷電粒子線のエネルギー調整は、被照射体をスライスした層毎に行われる。
電磁石25は、ビーム輸送ライン13に複数設けられるものであり、磁場によってビーム輸送ライン13で荷電粒子線を輸送することができるように、当該荷電粒子線の調整を行うものである。電磁石25として、輸送中の荷電粒子線のビーム径を収束させる収束電磁石19、及び荷電粒子線を偏向させる偏向電磁石20が採用される。なお、以下では収束電磁石19及び偏向電磁石20を区別せずに電磁石25と記載する場合がある。また、電磁石25は、少なくともビーム輸送ライン13のうちデグレーダ18よりも下流側に複数設けられる。ただし、本実施形態では、電磁石25は、デグレーダ18よりも上流側にも設けられる。ここでは、電磁石25として収束電磁石19が、デグレーダ18によるエネルギー調整前の荷電粒子線のビーム径を収束させるために、デグレーダ18の上流側にも設けられている。電磁石25の総数は、ビーム輸送ライン13の長さ等により柔軟に変更が可能であり、例えば、10〜40程度の数とされる。なお、図1中には電磁石電源27が一部のみ記載されているが、実際には、電磁石25の数と同数、設けられている。本実施形態では、偏向電磁石20として、後述するマグネット装置100(図2及び図3参照)が用いられている。
デグレーダ18及び電磁石25のビーム輸送ライン13中における位置は特に限定されないが、本実施形態では、ESS15には、デグレーダ18、収束電磁石19、及び偏向電磁石20が設けられている。また、BTS16には収束電磁石19が設けられており、GTS17には収束電磁石19及び偏向電磁石20が設けられている。なお、デグレーダ18は、上述したように加速器11と回転ガントリ23との間であるESS15に設けられており、より詳細には、ESS15のうち回転ガントリ23よりも加速器11側(上流側)に設けられている。
電磁石電源27は、対応する電磁石25に電流を供給することによって電磁石25の磁界を生じさせる。電磁石電源27は、対応する電磁石25に供給する電流を調整することにより、対応する電磁石25の磁場の強さを設定可能である。電磁石電源27は、制御部30からの信号に応じて電磁石25に供給する電流を調整している。電磁石電源27は、各電磁石25それぞれに一対一で対応するように設けられている。すなわち、電磁石電源27は、電磁石25の数と同数、設けられている。また、偏向電磁石20であるマグネット装置100に電流を供給する電磁石電源27は、後述する第1電源51及び第2電源52を有する(図5参照)。
被照射体の各層の深さと電磁石25に供給される電流との関係は以下のとおりである。すなわち、各層の深さから、各層に荷電粒子線を照射するために必要な荷電粒子線のエネルギーが決まり、デグレーダ18によるエネルギー調整量が決まる。ここで、荷電粒子線のエネルギーが変わると、当該荷電粒子線を偏向・収束するために必要な磁場の強さも変わることとなる。従って、電磁石25の磁場の強さがデグレーダ18によるエネルギー調整量に応じた強さとなるように、電磁石25に供給される電流が決まる。
制御部30は、加速器11から出射された荷電粒子線の被照射体への照射を制御する。制御部30は、加速器11を制御して荷電粒子線の出射を行わせる。制御部30は、ESS15、BTS16、及びGTS17を制御して、加速器11から出射された荷電粒子線を輸送させる。また、制御部30は、被照射体への荷電粒子線のスキャニング(走査)を制御する。
ここで、荷電粒子線治療では、ある患者の治療を行うにあたり、その患者へどのように荷電粒子線を照射するかが計画される(治療計画)。当該治療計画時に決定した治療計画データは、治療が行われる前に治療計画装置(図示せず)から制御部30に送信され、制御部30において記憶される。当該治療計画データには、被照射体の各層に荷電粒子線を照射するためのデグレーダ18のエネルギー調整量、及び、デグレーダ18のエネルギー調整量に応じた全ての層に照射するための電磁石25のパラメータ等が含まれている。また、当該治療計画データには、偏向電磁石20として用いられる超伝導電磁石41の超伝導コイル42に供給される電流値に関するデータ等が含まれている。
次に、超伝導電磁石41を備えたマグネット装置(超伝導電磁石装置)100について説明する。図2に示すように、マグネット装置100は、上下一対の超伝導電磁石41を対向配置することで構成されている。超伝導電磁石41は、内部にコイルユニット44を収容する真空容器である一対のクライオスタット45と、クライオスタット45の外側に設けられる一対のヨーク(鉄心)43と、を備えている。
上側の超伝導電磁石41のクライオスタット45と下側の超伝導電磁石41のクライオスタット45とは、互いに上下を逆転した状態で対向し、支柱46を介して互いに離間するように連結されている。マグネット装置100は、一対のクライオスタット45の間を通過する荷電粒子線Bの軌道を曲げる上記の偏向電磁石20として機能する。
図3は、マグネット装置100の荷電粒子線の軌道に交差する断面図である。なお、図3では、クライオスタット45の図示を省略し、一対の超伝導コイル42、一対のヨーク43、及び真空ダクト14を図示している。真空ダクト14は、内部を真空状態とすることができ、荷電粒子線Bが通過する管路を形成するものである。一対のヨーク43は、上下方向に対向して配置され、超伝導コイル42の周囲で発生する磁束を案内する。
ヨーク43は、図3に示される断面において図示左右方向(中心軸線C方向及び荷電粒子線の軌道と交差する方向)に沿って配置されたヨーク本体43aと、ヨーク本体43aの図示左右方向の両端部から中心軸線C方向に張り出す一対の張出部43bと、ヨーク本体43aの図示左右方向の中央部から中心軸線C方向に張り出す凸部43cと、を備えている。
一対の張出部43bは、凸部43cと同じ向きに張り出し、中心軸線C方向において凸部43cよりも大きく張り出している。一対の超伝導電磁石41は、対向する張出部43b同士が当接し、対向する凸部43c間にギャップ(隙間)Gが形成されている。ギャップGは、中心軸線C方向に対向する凸部43cの先端面43d間に形成され、このギャップGに、真空ダクト14が配置されている。
また、図示左右方向において凸部43cの両側には、凹部43eが形成されている。凹部43eは凸部43cと一対の張出部43bとの間に形成され、この凹部43eに超伝導コイル42が配置されている。
超伝導電磁石41は、通電されて磁束を発生させる超伝導コイル42と、超伝導コイル42を冷却する冷凍機47と、超伝導コイル42に電流を導入して通電させる電流導入部48と、備えている。超伝導コイル42は、上下方向に延在する所定の中心軸線C周りに配置され、中心軸線C方向から見て略矩形状を成している。超伝導コイル42は、周方向に少なくとも2以上の異なる曲率を有している。
超伝導コイル42の形状は特に限定されず、図4(a)に示されるような略D型の形状を有するD型コイル42Aを採用してもよく、図4(b)に示されるようなレーストラックコイル42Bを採用してもよく、図4(c)に示されるようなくら形コイル42Cを採用してもよい。また、超伝導コイル42は、中心軸線に対して対称をなす形状を有していてもよく、非対称をなす形状を有していてもよい。
超伝導コイル42は、超伝導線材を巻回した構成を有している。超伝導線材として高温超伝導線材を用いてもよい。高温超伝導線材として、例えばBi2223、Bi2212、Y123、MgB2、酸化物超伝導体等を用いてもよい。なお、超伝導線材として低温超伝導線材を用いてもよい。
超伝導コイル42は、第1コイル部42a及び第2コイル部42bを有し、第1コイル部42a及び第2コイル部42bが積層されて2段構成となっている。第1コイル部42a及び第2コイル部42bは、中心軸線C方向に重ねられ、凸部43cの先端面43dに近い方が第1コイル部42aであり、凸部43cの先端面43dから遠い方が第2コイル部42bである。また、第1コイル部42a及び第2コイル部42bは、クライオスタット45の内部で、クライオスタット45の壁面に支持されている。
図5は、第1コイル部42aに電流を供給する電気回路及び第2コイル部42bに電流を供給する電気回路を示す回路図である。マグネット装置100は、第1コイル部42aに電流を供給する第1電源51と、第2コイル部42bに電流を供給する第2電源52とを備えている。第1電源51は、電流導入部を介して第1コイル部42aと電気的に接続され、第2電源52は、電流導入部を介して第2コイル部42bと電気的に接続されている。マグネット装置100は、第1コイル部42aに電流を供給する電気回路53、及び第2コイル部42bに電流を供給する電気回路54をそれぞれ独立して備えている。
また、マグネット装置100では、第1電源51は、第2電源52よりも大きな電流を流すものであり、第1コイル部42aに流れる電流値I1は、第2コイル部42bに流れる電流値I2よりも大きくなっている(I1>I2)。第1コイル部42a及び第2コイル部42bに流れる電流は、同一の向き流れるように、各電気回路53,54が構成されている。
冷凍機47は、図示しない伝熱部材を介して第1コイル部42a及び第2コイル部42bと接続されている。第1コイル部42a及び第2コイル部42bの熱は、伝熱部材を介して冷凍機47に伝達され、第1コイル部42a及び第2コイル部42bは冷凍機47によって冷却されて、所定の温度(例えば4K)に維持される。
次に、本実施形態に係る荷電粒子線治療装置1及びマグネット装置100の作用について説明する。
荷電粒子線治療装置1では、加速器11によって荷電粒子が加速され、加速器11から出射された荷電粒子線はビーム輸送ライン13によって輸送される。ビーム輸送ライン13によって輸送された荷電粒子線は、照射ノズル12から出射されて、患者に照射されて治療に利用される。
荷電粒子線治療装置1のビーム輸送ライン13には、偏向電磁石20として機能するマグネット装置100が設けられている。マグネット装置100では、超伝導コイル42が通電されて、超伝導コイル42の周囲に磁束が発生する。この磁束がヨーク43を通り超伝導コイル42周りに磁気回路を形成し、対向する一対のヨーク43の凸部43cが磁極となる。超伝導コイル42に流れる電流の向きに応じて、図3に示す場合には、例えば、一対の凸部43c間において上向きの起磁力を生じさせる。マグネット装置100では、ギャップG内に真空ダクト14が配置され、荷電粒子線に起磁力を作用させて荷電粒子線を偏向する。
ここで、図6を参照して、ヨーク43の凸部43cからの漏洩磁束について説明する。図6では、磁束密度が高い領域を濃く図示し、磁束密度が低い領域を薄く図示している。図6(a)は、ヨーク43における磁力線及び磁束密度を示し、図6(b)は、超伝導コイル42における磁束密度を示している。
図6(a)に示されるように、凸部43cの先端面43dの張出部43b側において、張出部43bに向かうように磁力線が伸びている。図6(b)に示されるように、超伝導コイル42において、ヨーク43の凸部43c間に形成されたギャップGに近い方の第1コイル部42aは、ギャップGから遠い方の第2コイル部42bよりも磁束密度が高くなっている。また、第1コイル部42aにおいても、ギャップGに最も近い角部42gで、その他の部分と比較して、磁束密度が高くなっている。コイルに通電可能な最大電流は磁束密度の影響を受けるので、ギャップGから遠い方の第2コイル部42bは、ギャップGから近い方向の第1コイル部42aと比較して、通電可能な最大電流に余裕がある。
マグネット装置100は、ギャップGに近い方に配置された第1コイル部42aに電流を供給する第1電源51と、ギャップGから遠い方に配置された第2コイル部42bに電流を供給する第2電源52とを備えている。これにより、第1コイル部42aと第2コイル部42bとに流れる電流値(I1>I2)を異なるものとすることができる。マグネット装置100では、第1コイル部42aに流れる電流値I1を、第2コイル部42bに流れる電流値I2よりも高く設定することで、第1コイル部42aに流れる電流値の配分を高くして、第2コイル部42bに流れる電流値の配分を低く抑えることができる。従来と比較すると、超伝導コイル42による起磁力を同一した場合、第2コイル部42bにおける超伝導コイル42の断面積を削減することができる。換言すれば、超伝導コイル42の断面積を小さくしても、起磁力を確保することができる。その結果、超伝導コイル42の材料の使用量を削減することができる。
次に第2実施形態に係るマグネット装置について説明する。第2実施形態のマグネット装置が第1実施形態のマグネット装置100と違う点は、超伝導コイル42に電流を供給する電気回路が異なる点である。図7は、第2実施形態に係るマグネット装置の超伝導コイル42に電流を供給する電気回路を示す回路図である。第2実施形態のマグネット装置100では、第1コイル部42a及び第2コイル部42bに電流を供給する主電源55と、第1コイル部42aに電流を供給する補助電源56とを備えている。第1コイル部42a及び第2コイル部42bは直列に接続され、主電源55によって電流が供給される。補助電源56は、第1コイル部42aのみに電流を供給するように電気的に接続されている。
このような構成の第2実施形態のマグネット装置100では、主電源55によって、第1コイル部42a及び第2コイル部42bの両方に電流を供給することができ、補助電源56によってさらに第1コイル部42aのみに電流を供給することができる。第2実施形態のマグネット装置100によれば、ギャップGに近い方の第1コイル部42aの電流値I1を、ギャップGから遠い方の第2コイル部42bの電流値I2よりも高くすることができる。これにより、第1コイル部42aと第2コイル部42bとの間で電流密度に差を設けることができる。そのため、通電可能な最大電流に余裕がある第2コイル部42bの断面積を削減して、超伝導コイル42の材料の使用量を削減することができる。
次に第3実施形態に係るマグネット装置について説明する。図8は、第3実施形態に係るマグネット装置の超伝導コイルを示す断面図である。第3実施形態のマグネット装置が第1実施形態のマグネット装置100と違う点は、第1コイル部42aの巻線密度と、第2コイル部42bの巻線密度とが異なる点である。具体的には、ギャップGに近い方の第1コイル部42aの巻線密度は、ギャップGから遠い方の第2コイル部42bの巻線密度よりも高くなっている。例えば、第2コイル部42bでは、超伝導コイル42の径方向(図示左右方向)に隣接する線材57間に隙間が形成され、第1コイル部42aでは、超伝導コイル42の径方向に隣接する線材57同士が密着するように、線材57が巻かれて超伝導コイル42が形成されている。第2コイル部42bでは、スペーサ58を挟んで線材57を巻き付けることで形成されていてもよい。なお、第3実施形態のマグネット装置では、第1コイル部42aの電流値と、第2コイル部42bの電流値とが同じ値となるように電流が供給されている。この場合、共通の電源から第1コイル部42a及び第2コイル部42bに電流を供給してもよく、別々の電源から第1コイル部42a、第2コイル部42bにそれぞれ電流を供給してもよい。
このような第3実施形態に係るマグネット装置によれば、ギャップGに近い方の第1コイル部42aの巻線密度が、ギャップから遠い方の第2コイル部42bの巻線密度よりも高くなっているので、第1コイル部42aと第2コイル部42bとで、単位断面積当たりの電流密度に差を設けることができる。これにより、超伝導コイル42による起磁力を維持したまま、超伝導コイル42の材料の使用量を削減することができる。
次に第4実施形態に係るマグネット装置について説明する。第4実施形態のマグネット装置では、ギャップGに近い方の第1コイル部42c,42eの断面積が、ギャップGから遠い方の第2コイル部42d,42fの断面積よりも大きくなっている。図9は、第4実施形態に係るマグネット装置の超伝導コイルの断面図である。図9(a)では、段階的に断面積が減少しているタイプの超伝導コイルを示し、図9(b)では、ギャップGからの距離に応じて断面積が減少しているタイプの超伝導コイルを示している。なお、コイル部の断面積とは、例えば単位面積当たりの線材の断面積の合計である。
このような第4実施形態のマグネット装置においても、上記実施形態と同様に、ギャップGに近い方の第1コイル部42c,42eと、ギャップGから遠い方の第2コイル部42d,42fとで、電流密度に差を設け、第1コイル部42c,42eに流れる電流値の配分を第2コイル部42d,42fに流れる電流値の配分よりも高く設定することができる。第2コイル部42d,42fに流れる電流値の配分を低く押させることができるので、超伝導コイル42による起磁力を同一とした場合に、第2コイル部42d,42fにおいて断面積を削減することができる。その結果、超伝導コイル42の材料の使用量を削減することができる。
本発明は、前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で下記のような種々の変形が可能である。
なお、上記実施形態では、超伝導コイル部は、第1コイル部及び第2コイル部を有し、2段構成として、説明されている。超伝導コイル部は、第1コイル部及び第2コイル部の他に、他のコイル部を備え、3段以上の構成でもよい。この場合には、例えば、ギャップGに近い方から順に電流密度が高くなるように、電流密度分布を生じさせる。
また、上記実施形態では、中心軸線C方向において、ギャップGに近い方を第1コイル部とし、ギャップGから遠い方を第2コイル部としているが、中心軸線Cと直交する方向(図示左右方向)において、ギャップGに近い方を第1コイル部とし、ギャップGから遠い方を第2コイル部としてもよい。
また、第1実施形態において、マグネット装置100を備えた荷電粒子線治療装置1について説明しているが、第2〜第4実施形態に係る超伝導コイルを有する超伝導電磁石を備えた荷電粒子線治療装置でもよく、その他の超伝導電磁石を備えた荷電粒子線治療装置でもよい。
マグネット装置100は、例えば回転ガントリ23の外周部に取り付けられて、回転ガントリ23と共に回転移動可能な偏向電磁石として用いられてもよく、ESS15やBTS16における偏向電磁石として使用されるものでもよい。
また、上記実施形態では、マグネット装置を偏向電磁石として使用する場合について説明しているが、本発明のマグネット装置は、偏向電磁石に使用されるものに限定されず、その他の用途に使用してもよい。本発明のマグネット装置は、加速器において、荷電粒子を加速する際に使用される超伝導電磁石でもよい。
また、第1コイル部の巻線密度を第2コイル部の巻線密度より高くすると共に、第1コイル部の電流値を、第2コイル部の電流値より高くしてもよい。
1…荷電粒子線治療装置、41…超伝導電磁石、42…超伝導コイル、42a,42c,42e…第1コイル部、42b,42d,42f…第2コイル部、43…ヨーク(鉄心)、51…第1電源、52…第2電源、100…マグネット装置、C…中心軸線、G…ギャップ。
Claims (4)
- 中心軸線周りに配置された第1コイル部及び第2コイル部を各々有する一対の超伝導コイルと、
中心軸線方向において前記一対の超伝導コイル間にギャップを有し、前記ギャップを挟んで一対の磁極を形成する一対の鉄心と、
前記第2コイル部よりも前記ギャップに近い方に配置された前記第1コイル部に電流を供給する第1電源と、
前記第2コイル部に電流を供給する第2電源と、を備える、超伝導電磁石装置。 - 中心軸線周りに配置された第1コイル部及び第2コイル部を各々有する一対の超伝導コイルと、
中心軸線方向において前記一対の超伝導コイル間にギャップを有し、前記ギャップを挟んで一対の磁極を形成する一対の鉄心と、を備え、
前記第1コイル部は、前記第2コイル部よりも前記ギャップに近い方に配置され、
前記第1コイル部の巻線密度が、前記第2コイル部の巻線密度よりも高い、超伝導電磁石装置。 - 中心軸線周りに配置された第1コイル部及び第2コイル部を各々有する一対の超伝導コイルと、
中心軸線方向において前記一対の超伝導コイル間にギャップを有し、前記ギャップを挟んで一対の磁極を形成する一対の鉄心と、を備え、
前記第1コイル部は、前記第2コイル部よりも前記ギャップに近い方に配置され、
前記第1コイル部の電流密度が、前記第2コイル部の電流密度よりも高い、超伝導電磁石装置。 - 請求項1〜3の何れか一項に記載の超伝導電磁石装置を備えた、荷電粒子線治療装置。
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