JP2015222616A - 電子ビーム装置、電子ビーム用フィラメントの製造装置及び製造方法 - Google Patents

電子ビーム装置、電子ビーム用フィラメントの製造装置及び製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】電子ビーム装置のフィラメントに到達するイオン数を軽減して、フィラメントの長寿命化を実現すること。
【解決手段】電子ビームを生成する電子銃部110は、電子ビーム140を生成する。試料室120は、電子ビーム140が照射される対象物が配置される。TMP162及びTMP164は、電子銃部110を排気する。真空チャンバVC1は、TMP162によって排気される。真空チャンバVC2は、開口部151を介して真空チャンバVC1と連結され、かつ、試料室120と連結され、TMP164によって排気される。フィラメント111は、真空チャンバVC1内に配置され、熱電子を放出する。アノード113は、真空チャンバVC2内に配置され、開口部151を介して熱電子を導いて電子ビーム140を生成する。
【選択図】図3

Description

本発明は電子ビーム装置、電子ビーム用フィラメントの製造装置及び製造方法に関する。
金属材料などを溶接する手法として、電子ビーム溶接が知られている。電子ビーム溶接は、真球中に保持した2つの金属部材の接合部に電子ビームを照射することで、接合部を高温にして溶接を行う。一般には、電子ビーム溶接では、電流を流して加熱したフィラメント(カソード)から熱電子を放出し、グリッド(引き出し電極)により放出された熱電子に電位勾配を与えて、一定方向に進行する電子ビームとして取り出す。そして、アノードが取り出した電子ビームに加速電圧を与え、溶接対象物に電子ビームを照射する。溶接対象物に照射された電子ビームの運動エネルギーは溶接対象物で熱エネルギーに変換され、この熱エネルギーにより溶接対象物を溶融させて溶接を行う。
電子ビーム溶接は、他の溶接方法と比べて、深い溶け込みが得られ、高精度な溶接が可能である。また、電子ビーム溶接は真空中で溶接を行うので、溶接部の酸化を防止できる。更に、溶接部への入熱量が他の溶接方法に比べて少ないので、溶接後の歪みを抑制できるなど、様々な利点を有する。
電子ビーム溶接をはじめとする電子ビームを用いる装置においては、上述のように、熱電子を放出するため、フィラメントを加熱する必要が有る。そのため、フィラメントの加熱によりフィラメント表面の原子が昇華し、フィラメントは経時的に減肉する。その結果、フィラメントを長時間使用するとフィラメントの破断や抵抗値の上昇が発生し、フィラメントは寿命を迎え、交換が必要となる。これは、フィラメントの交換コストのみならず、フィラメント交換に伴う真空チャンバの開放など、交換作業による装置のダウンタイムが発生し、大きなスループット制約要因ともなる。
そのため、電子ビーム装置においては、フィラメントの長寿命化を実現するための様々な試みが行われている。例えば、電子ビーム装置において、リング形状の部材にフィラメントをコイル状に巻き付け、電子ビーム溶接による反射イオンの影響を回避する手法が提案されている(特許文献1)。また、電子ビーム溶接装置において、電子銃の中に、反射イオンを受けとめて、反射イオンがフィラメントに到達するのを妨害する部材を設ける手法が提案されている(特許文献2)。
また、フィラメントの熱電子を放出する部分にコーティングを施すことでフィラメントの寿命を延伸させる手法も提案されている(特許文献3)。
特開2002−324509号公報 特開2007−165160号公報 特開平2−121225号公報
しかし、発明者らは、上述の手法には以下に示す問題点を見出した。上述のフィラメントは、螺旋形状(特許文献1)やリング形状(特許文献2)などの複雑な形状を有している。一般に、フィラメントはタングステンなどの高硬度の金属を用いる。そのため、複雑な形状のフィラメントを製造しようとすると、曲げ方向の厚みが薄い材料を用いなければならない。曲げ方向の厚みが厚すぎると、曲げ加工時にクラックや破断が生じ、フィラメント製造が困難となる。また、フィラメントにコーティングを施しても(特許文献3)、フィラメントへのイオン照射を軽減することはできない。
本発明は上記の事情に鑑みて成されたものであり、本発明の目的は、電子ビーム装置のフィラメントに到達するイオン数を軽減して、フィラメントの長寿命化を実現することである。
本発明の一態様である電子ビーム装置は、電子ビームを生成する電子銃部と、前記電子ビームが照射される対象物が配置される試料室と、電子銃部を排気する第1の真空ポンプ及び第2の真空ポンプと、を備え、前記電子銃部は、前記第1の真空ポンプによって排気される第1の真空チャンバと、前記第1の真空チャンバと第1の開口を介して連結され、かつ、前記試料室と連結され、前記第2の真空ポンプによって排気される第2の真空チャンバと、前記第1の真空チャンバ内に配置され、熱電子を放出するフィラメントと、前記第2の真空チャンバ内に配置され、前記第1の開口を介して熱電子を導いて電子ビームを生成するアノードと、を備えるものである。
本発明によれば、電子ビーム装置のフィラメントに到達するイオン数を軽減して、フィラメントの長寿命化を実現することである。
実施の形態1にかかる電子ビーム溶接装置の構成を模式的に示す断面図である。 実施の形態1にかかる電子ビーム溶接装置での陽イオンの移動を示す図である。 実施の形態1にかかる電子ビーム溶接装置の真空チャンバにおける陽イオンの阻止を示す図である。 実施の形態1にかかる電子ビーム溶接装置のオリフィスに衝突する陽イオンを示す図である。 実施の形態2にかかる電子ビーム装置のフィラメントを斜め上方より俯瞰した斜視図である。 実施の形態2にかかる電子ビーム装置のフィラメントを斜め下方より見上げた斜視図である。 下方(Z(−)側)から見た平坦面を示す下面図である。 平坦部をY方向から見た場合の拡大図である。 電子ビーム装置の一例である電子ビーム溶接装置の構成を模式的に示す図である。 実施の形態2にかかるフィラメントの作製に用いるフィラメントの製造装置を示す図である。 ポンチの底面近傍の拡大図である。 実施の形態2にかかる治具とポンチとを用いてフィラメントを製造する様子を示す横面図である。 比較例にかかる治具とポンチとを用いて比較例にかかるフィラメントを製造する様子を示す横面図である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。各図面においては、同一要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略される。
実施の形態1
実施の形態1にかかる電子ビーム装置について説明する。ここでは、電子ビーム装置の一例である電子ビーム溶接装置100について説明する。電子ビーム溶接装置100は、所定の位置で真空ポンプによる排気を行うことで、フィラメントの寿命を延伸させることができる電子ビーム装置として構成される。図1は、実施の形態1にかかる電子ビーム溶接装置100の構成を模式的に示す断面図である。図1では、紙面水平方向をX方向、紙面鉛直方向をZ方向としている。
電子ビーム溶接装置100は、電子銃部110、試料室120、ターボ分子ポンプ(TMP)162、ターボ分子ポンプ(TMP)164、メカニカルブースターポンプ(MP)165及びロータリーポンプ(RP)166を有する。
ターボ分子ポンプ(TMP)162は、第1の真空ポンプとも称する。ターボ分子ポンプ(TMP)164は、第2の真空ポンプとも称する。なお、本実施の形態では、第1及び第2の真空ポンプとしてターボ分子ポンプを用いているが、例えばディフュージョンポンプ(拡散ポンプ)などの他のタイプの真空ポンプを用いてもよい。同様に、メカニカルブースターポンプ(MP)165及びロータリーポンプ(RP)166も他のタイプの真空ポンプに置き換えてもよい。
電子銃部110と試料室120とは、開口部153を介して連結され、一体の真空装置(真空チャンバ)を構成する。電子銃部110は、試料室120へ向けて、電子ビーム140を出射する。電子銃部110は、2つのターボ分子ポンプ162及び真空ポンプ164によって排気される。試料室120は、縦続接続されたメカニカルブースターポンプ(MP)165及びロータリーポンプ(RP)166によって排気される。
電子銃部110は、真空チャンバVC1〜VC3、フィラメント111、グリッド112、アノード113、アライメントコイル114、レンズコイル115、偏向コイル116及びオリフィス117、真空バルブ118を有する。
真空チャンバVC1〜VC3及び試料室120は、Z方向に縦続して連結されている。
真空チャンバVC1内には、フィラメント111及びグリッド112が配置される。フィラメント111の一端はDC電源130の正極と接続され、他端はDC電源130の負極と接続される。これにより、フィラメント111にDC電圧が印加され、電流が流れる。フィラメント111は、電流が流れることによるジュール熱で加熱され、熱電子を放出する。真空チャンバVC1は、開口161を介して接続されるターボ分子ポンプ162により排気される。
フィラメント111から放出された熱電子は、グリッド112を通過した後、後述するアノード113により加速電圧を与えられ、電子ビーム140となる。グリッド112は、フィラメント111に対して高電位となるように構成されている。グリッド112とフィラメント111との間の電圧を高くすることで、電子ビーム140のビーム電流を制御することができる。電子ビーム140は、真空チャンバVC1から真空チャンバVC2及びVC3を経て、試料室120に導かれる。
真空チャンバVC1と真空チャンバVC2とは連結され、開口部151を介して真空チャンバVC1から真空チャンバVC2へ電子ビーム140が導かれる。真空チャンバVC2と真空チャンバVC3とは連結され、開口部152を介して真空チャンバVC2から真空チャンバVC3へ電子ビーム140が導かれる。真空チャンバVC3と試料室120とは連結され、開口部153を介して真空チャンバVC3から試料室120へ電子ビーム140が導かれる。
なお、ここでは、真空チャンバVC1を第1の真空チャンバとも称する。真空チャンバVC2を第2の真空チャンバとも称する。また、真空チャンバVC2と試料室120とは、真空チャンバVC3を介して連結されているが、この連結状態を、単に真空チャンバVC2と試料室120とが連結されているとも表記する。
真空チャンバVC2の内部には、アノード113、オリフィス117が配置される。真空チャンバVC2内の開口部151には、アノード113が配置される。アノード113の電子ビーム140の出射側(Z(−)側)には、電子ビーム140が通過できるようにオリフィス117が配置される。真空チャンバVC2と真空チャンバVC3との間の開口部152には、真空バルブ118が設けられる。真空バルブ118により、真空チャンバVC2と真空チャンバVC3との間が開放され、又は遮断される。真空チャンバVC2は、開口163を介して接続されるターボ分子ポンプ164により排気される。
真空チャンバVC3内には、アライメントコイル114、レンズコイル115及び偏向コイル116が配置される。アライメントコイル114は、電子ビーム140のビームスポットの原点位置を決定する。レンズコイル115は、電子ビーム140のビームスポットの大きさを決定する。偏向コイル116は、溶接対象物に対する電子ビーム140の照射位置を制御する。
試料室120には、溶接対象物(この例では、部材W1及びW2)が配置される。試料室120は、真空ポンプ(メカニカルブースターポンプ(MP)165、ロータリーポンプ(RP)166)により、溶接作業中は常時排気されている。この例では、電子ビーム140が部材W1と部材W2との接合部に照射され、部材W1と部材W2とが溶け合った溶融金属部141を形成する。この溶融金属部141が冷えて固化することで、部材W1と部材W2とが溶接される。
以下、本実施の形態にかかる電子ビーム溶接装置100におけるフィラメント111の寿命延伸の原理について説明する。
電子ビーム140が部材W1及びW2に照射されると、電子ビーム140のエネルギーにより、部材W1及びW2を構成する金属原子が陽イオンとなって試料室120内に放出される。図2は、実施の形態1にかかる電子ビーム溶接装置100での陽イオンの移動を示す図である。図2に示すように、部材W1及びW2から放出された陽イオン170は、電位が低いフィラメント111の側に引かれて、電子ビーム140とは逆の経路を辿ってフィラメント111へ向かう。陽イオン170が、経路の途中で妨害されることなくフィラメント111に到達すると、陽イオン170がそのままフィラメント111に衝突する。その結果、フィラメント111は陽イオン照射により、すり鉢型の穿孔が生じるなどの物理的ダメージを受ける。その結果、フィラメント111の抵抗値上昇や断裂などが発生し、フィラメント111の寿命が縮まる。
ところが、本実施の形態にかかる電子ビーム溶接装置100では、真空チャンバVC2にターボ分子ポンプ164を接続し、排気を行っている。これにより、フィラメントに衝突する陽イオン数を抑制し、フィラメント寿命を延伸させることができる。特に、陽イオンは溶接作業中に多く生じるので、ターボ分子ポンプ164による真空チャンバVC2の排気は、少なくとも溶接作業中には行われることが前提である。
以下、図を参照して具体的に説明する。図3は、実施の形態1にかかる電子ビーム溶接装置100の真空チャンバVC2における陽イオンの阻止を示す図である。図3に示すように、部材W1及びW2から放出される陽イオンには、まっすぐ(正確にZ軸に沿って)フィラメント111へ向かわずに、Z軸に対してある程度の角度をもってフィラメント111に向かうものがある。
Z軸に対してある程度の角度をもってフィラメント111に向かう陽イオンが、真空チャンバVC2に進入すると、ターボ分子ポンプ164により排気されるものが存在する(図3の陽イオン172)。こうした陽イオン172がターボ分子ポンプ164で排気されることで、フィラメント111に到達する陽イオンの数を低減することができる。その結果、フィラメント111に衝突する陽イオン数を低減し、フィラメント111の寿命を延伸することが可能となる。
また、図1に示すように、電子ビーム溶接装置100には、オリフィス117を設けることができる。図4に、実施の形態1にかかる電子ビーム溶接装置100のオリフィス117に衝突する陽イオン171を示す。この場合、アノードに向かう陽イオンのうちで、オリフィス117の中央の開口を通過できない程度の角度をもってオリフィス117に到達した陽イオン171は、オリフィス117に衝突する。オリフィス117に衝突した陽イオン171は速度が低下し、ターボ分子ポンプ164により排気される。つまり、オリフィス117を設けることで、電子ビーム140を導く経路を確保しつつ、フィラメント111に到達する陽イオン数をより低減することが可能である。以上より、オリフィス117を設けることで、フィラメント111の寿命を更に延伸することが可能となる。
実施の形態2
実施の形態2にかかる電子ビーム装置のフィラメント200について説明する。フィラメント200は、実施の形態にかかるフィラメント111の具体例である。図5は、実施の形態2にかかる電子ビーム装置のフィラメント200を斜め上方より俯瞰した斜視図である。図6は、実施の形態2にかかる電子ビーム装置のフィラメント200を斜め下方より見上げた斜視図である。フィラメント200は、リボン状の金属部材1を折り曲げて形成されている。フィラメント200は、Y軸に沿った方向(Y方向)から見た場合、Z軸を中心として線対称の構成を有する。なお、以下では、Z軸に沿った方向(Z方向)を第1の方向とも称し、X軸に沿った方向(X方向)を第2の方向とも称する。
本実施の形態においては、リボン状の金属部材1の材質として、タングステン、レニウム−タングステン合金、カリウム添加タングステンのいずれかを用いることができる。
フィラメント200は、中央部下方(Z(−)側)に平坦部2を有する。図5では、平坦部2は、X−Y平面を主面とする部分である。平坦部2のZ(−)側、すなわち金属部材1の折り曲げ方向に対して反対側に、正方形の平坦面2Aが設けられる。図7は、下方(Z(−)側)から見た平坦面2Aを示す下面図である。平坦面2AのX方向の辺LxとY方向の辺Lyとは、同じ長さとなる。但し、金属部材1の製造交差及び金属部材1の曲げ加工の交差を考慮すると、Lx及びLyについては、それぞれ±0.1mmの交差が生じうる。したがって、Lx=Ly=Lとおくと、平坦面2Aが正方形であるということは、平坦面2AがL±0.1mmの対向する二辺と、L±0.1mmの対向する他の二辺とに囲まれることと同義である。
平坦部2のX方向の両端で、金属部材1は折り曲げられている。平坦部2の一端と折り曲げ部10を介して連結している部分を、アーム部11と称する。平坦部2の他端と折り曲げ部20を介して連結している部分を、アーム部21と称する。なお、図5では、アーム部11及びアーム部21は、途中で折り曲げられているが、これは例示に過ぎず、折り曲げは必須ではない。
図8は、平坦部2をY方向から見た場合の拡大図である。平坦面2Aの一端の折り曲げ部10には、曲げ加工により丸みを帯びた角部13が存在する。平坦面2Aの他端の折り曲げ部20には、曲げ加工により丸みを帯びた角部23が存在する。フィラメント200では、丸みの曲率半径が0.3〜0.5mmとなるように、角部13及び角部23が設けられる。この曲率半径の範囲を設ける理由については、後述する。
フィラメント200の電子ビーム装置への実装について説明する。ここでは、電子ビーム装置の一例である電子ビーム溶接装置210について説明する。図9は、電子ビーム装置の一例である電子ビーム溶接装置210の構成を模式的に示す図である。電子ビーム溶接装置210は、真空チャンバ31内に、フィラメント200、グリッド33、アノード34、アライメントコイル35、レンズコイル36、偏向コイル37が配置される。
フィラメント200のアーム部11の端部12及びアーム部21の端部22の一方はDC電源32の正極と接続され、他方はDC電源32の負極と接続される。これにより、フィラメント200にDC電源が印加され、電流が流れる。フィラメント200は、電流が流れることによるジュール熱で加熱され、平坦面2Aから熱電子を放出する。
放出された熱電子は、グリッド33に導かれ、その後、アノード34により加速電圧を与えられ、電子ビーム30となる。アライメントコイル35は、電子ビーム30のビームスポットの原点位置を決定する。レンズコイル36は、電子ビーム30のビームスポットの大きさを決定する。偏向コイル37は、溶接対象物に対する電子ビーム30の照射位置を制御する。
真空チャンバ31は、真空ポンプ38により溶接作業中は常時排気されている。この例では、部材W1と部材W2とを溶接する。電子ビーム30は、部材W1と部材W2との接合部に照射され、部材W1と部材W2とが溶け合った溶融金属部39を形成する。この溶融金属部39が冷えて固化することで、部材W1と部材W2とが溶接される。
次いで、フィラメント200について、更に詳細に説明する。上述の通り、フィラメント200は、平坦面2Aが電子ビームの出射方向に向いており、主として平坦面2Aから熱電子を放出する。そのため、平坦部2で最も減肉が生じる。このため、フィラメント200では、金属部材1に厚みを持たせ、減肉の影響を軽減する。本実施の形態では、平坦部2の厚み(Z軸方向)を、0.25mm、0.33mm、0.38mmとして、フィラメント200の寿命を測定した。以下に、フィラメント200の平坦部2の厚みとフィラメント寿命の関係を、表1に示す。
Figure 2015222616
表1の例では、平坦部のY−Z平面での断面積が等しくなるように、厚みの変化ともなって、平坦面2Aの面積を変化させている。また、WDはワークディスタンスであり、電子ビームの照射対象物と平坦面2Aとの間の距離である。突き出し量は、フィラメントを電子銃に組み込んだときの平坦面2Aとカソードとの距離を示す。
表1に示す通り、厚みが0.25mm以上であれば、300時間以上のフィラメント寿命を確保することができる。
また、上述のとおり、フィラメント200は、金属部材1を曲げて作製する。この際、折り曲げ部10及び折り曲げ部20の角の曲率半径を考慮する必要がある。曲率半径が0.3mmよりも小さければ、曲げ加工時にクラックが発生する。また、曲率半径が0.5mmよりも大きければ、電子ビーム生成時のサイドビームの発生が懸念される。したがって、本実施の形態では、折り曲げ部10及び折り曲げ部20の角の曲率半径は、0.3
mm以上0.5mm以下とする必要がある。
電子ビーム装置のなかでも、電子ビーム溶接装置では、溶接対象物に電子ビームを照射すると、溶接対象物から金属イオンが叩き出される。発生したイオンは、電子ビームの照射経路をさかのぼり、フィラメント200の平坦面2Aに衝突する。よって、平坦部2にイオン照射によるすり鉢状の穴が生じ、フィラメント破断の原因になり得る。しかし、上述の通り、フィラメント200では平坦部2のZ方向に厚みを持たせているので、こうしたイオン衝突によるダメージが有る場合でも、フィラメントの破断を抑制し、フィラメントの長寿命化を実現できる。
次いで、フィラメント200の製造方法について説明する。フィラメント200は、金属部材1を治具とポンチとで挟んで圧迫することで、金属部材1を曲げて作製される。図10は、実施の形態2にかかるフィラメント200の作製に用いるフィラメント製造装置250の構成を示す図である。フィラメント製造装置250は、雌側の治具4と雄側のポンチ5とを有する。
治具4は、治具4には、例えば金属で形成されZ軸(+)側から穿たれた開口40を有する。開口40の底部41は、平坦(X−Y平面)となっている。
底部41のX(+)側の端部には、概ね半円形の曲面42Aを有する凹部42が設けられている。そして、曲面42Aと連続する曲面43Aを有する支持部43が設けられる。曲面43Aは、曲面42AのX(+)側の端部からZ(+)方向へ立ち上がり、X(+)側へ向かうに従って徐々に勾配が小さくなるように設けられる。そして、曲面43AのX(+)側の端部からZ(+)方向に立ち上がる側面44Aを有する側面部44が設けられている。
底部41のX(−)側の端部には、概ね半円形の曲面45Aを有する凹部45が設けられている。そして、曲面45Aと連続する曲面46Aを有する支持部46が設けられる。曲面46Aは、曲面45AのX(−)側の端部からZ(+)方向へ立ち上がり、X(−)側へ向かうに従って徐々に勾配が小さくなるように設けられる。そして、曲面46AのX(−)側の端部からZ(+)方向に立ち上がる側面47Aを有する側面部47が設けられている。
ポンチ5は、軸部51及び錐形部52を有する。軸部51は、Z軸方向に延在する棒状の部材である。錐形部52は、軸部51のZ(−)方向の先端に設けられ、Z(−)方向に向かうに従ってX方向の幅が狭まる。ポンチ5は、錐形部52のZ(−)方向の底面53(X−Y平面)は、治具4の底部41と対向するように配置される。底面53のX(+)の端部と軸部51のX(+)側の端部の間には、底面53のX(+)の端部からZ(+)側へ立ち上がり、X(+)側へ向かうにしたがって勾配が大きくなる曲面54が存在する。底面53のX(−)の端部と軸部51のX(−)側の端部の間には、底面53のX(−)の端部からZ(+)側へ立ち上がり、X(−)側へ向かうにしたがって勾配が大きくなる曲面55が存在する。
図11は、実施の形態2にかかるポンチ5の底面53近傍の拡大図である。図11に示すように、ポンチ5の先端のX(+)側の端部には、X(+)方向に張り出すように、半円形の張り出し部56が設けられる。ポンチ5の先端のX(−)側の端部には、X(−)方向に張り出すように、半円形の張り出し部57が設けられる。
図12は、実施の形態2にかかる治具4とポンチ5とを用いてフィラメント200を製造する様子を示す横面図である。金属部材1の長手方向がX方向に沿うように、かつ、金属部材の主面がZ方向に垂直になるように、金属部材を配置する。そして、治具4とポンチ5とで金属部材1を挟み込み、ポンチ5をZ(−)方向の押し付けることで、金属部材1の曲げ加工を行う。この際、フィラメント200の先端は、治具4の底部41に支持され、かつ、ポンチ5の先端(底面53、張り出し部56及び57)に押し付けられ、底部41とポンチ5の先端に挟まれた金属部材1の両端は、凹部42及び凹部45の底部へむけて撓むことができる。これにより、治具4の底部41に支持された部分の金属部材1に、確実に平坦部2を作製できる。また、金属部材1は、支持部43及び支持部46に支持されることで、折り曲げ部10及び折り曲げ部20を所望の位置及び所望の曲率半径で作製することができる。
以下、図12に示すフィラメントの作製の利点を理解するため、通常の治具及びポンチを用いてフィラメントを作製する場合を比較例について説明する。図13は、比較例にかかる治具6とポンチ7とを用いて比較例にかかるフィラメント300を製造する様子を示す横面図である。
治具6は、治具4と比較して、凹部42及び45が存在せず、また曲面43A及び46Aが平面に置換されている。ポンチ7は、ポンチ5と比較して、曲面54及び55が平面に置換されており、また、底面の両端には張り出し部56及び57が存在しない。
この例では、治具6とポンチ7とで金属部材1を挟み込み、ポンチ7をZ(−)方向に押し付けることで、金属部材1の曲げ加工を行う。この際、フィラメント300の先端は、治具6の底部に支持され、かつ、ポンチ7の先端に押し付けられる。そして、治具6及びポンチ7の形状に沿って変形する。しかし、凹部42及び凹部45へ撓むことができず、かつ、曲面43A及び46Aとの接触による押圧を受けないので、金属部材1の変形が不十分となる。その結果、フィラメント300の先端に平坦部を形成できず、丸みを帯びた形状となってしまう。つまり、本実施の形態にかかる治具4及びポンチ5を用いた曲げ加工によらなければ、本実施の形態にかかるフィラメント300を作製することができないことが理解できる。
その他の実施の形態
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、 上述では、金属部材1の材質として、タングステン、レニウム−タングステン合金、カリウム添加タングステンのいずれかを用いることができるものとして説明した。しかし、上述のように、金属部材1の曲げ加工を行うことを考慮すると、カリウム添加タングステンは、金属部材1の脆性を軽減し、曲げ加工によるクラックの発生を抑制することができる。よって、曲げ加工に対する親和性の観点からは、金属部材1にカリウム添加タングステンを用いることが有利である。また、カリウム添加タングステンは、純タングステンやレニウム−タングステン合金に比べた安価であり、コスト面からも有利である。
1 金属部材
2 平坦部
2A 平坦面
4、6 治具
5、7 ポンチ
10、20 折り曲げ部
11、21 アーム部
12、22 端部
13、23 角部
30 電子ビーム
31 真空チャンバ
32 電源
33 グリッド
34 アノード
35 アライメントコイル
36 レンズコイル
37 偏向コイル
38 真空ポンプ
39 溶融金属部
40 開口
41 底部
42、45 凹部
42A、45A 曲面
43、46 支持部
43A、46A 曲面
44、47 側面部
44A、47A 側面
51 軸部
52 錐形部
53 底面
54、55 曲面
56、57 張り出し部
100 電子ビーム溶接装置
110 電子銃部
111 フィラメント
112 グリッド
113 アノード
114 アライメントコイル
115 レンズコイル
116 偏向コイル
117 オリフィス
118 真空バルブ
120 試料室
130 DC電源
140 電子ビーム
141 溶融金属部
151、152、153 開口部
161、163 開口
162、164 ターボ分子ポンプ(TMP)
165 メカニカルブースターポンプ(MP)
166 ロータリーポンプ(RP)
170〜172 陽イオン
200、300 フィラメント
210 電子ビーム溶接装置
250 フィラメント製造装置
VC1〜VC3 真空チャンバ
W1、W2 部材

Claims (13)

  1. 電子ビームを生成する電子銃部と、
    前記電子ビームが照射される対象物が配置される試料室と、
    電子銃部を排気する第1の真空ポンプ及び第2の真空ポンプと、を備え、
    前記電子銃部は、
    前記第1の真空ポンプによって排気される第1の真空チャンバと、
    前記第1の真空チャンバと第1の開口を介して連結され、かつ、前記試料室と連結され、前記第2の真空ポンプによって排気される第2の真空チャンバと、
    前記第1の真空チャンバ内に配置され、熱電子を放出するフィラメントと、
    前記第2の真空チャンバ内に配置され、前記第1の開口を介して熱電子を導いて電子ビームを生成するアノードと、を備える、
    電子ビーム装置。
  2. 前記第2の真空チャンバは、少なくとも前記電子ビームが前記対象物に照射されているときに、前記第2の真空ポンプにより排気される、
    請求項1に記載の電子ビーム装置。
  3. 前記アノードの前記対象物側に、前記電子ビームが通過可能に配置されたオリフィスを更に備える、
    請求項1又は2に記載の電子ビーム装置。
  4. 前記対象物は、前記電子ビームが照射されることで、前記対象物を構成する原子に由来する陽イオンを放出する、
    請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電子ビーム装置。
  5. 前記対象物は複数の部材からなり、前記電子ビームが照射されることで前記複数の部材が溶接される、
    請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電子ビーム装置。
  6. 前記フィラメントは、
    矩形断面を有する金属部材からなり、第1の方向に垂直な正方形の面を有する平坦部と、
    前記平坦部と連続した金属部材からなり、前記平坦部の前記第1の方向に直交する第2の方向の一端で前記金属部材が前記第1の方向の側に折り曲げられて形成された第1のアームと、
    前記平坦部と連続した金属部材からなり、前記平坦部の前記第2の方向の他端で前記金属部材が前記第1のアームと同じ方向に折り曲げられて形成された第2のアームと、を備え、
    前記第1のアームと前記第2のアームとの間に電圧が印加されることで、前記平坦部の前記正方形の面から熱電子を放出する、
    請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電子ビーム装置。
  7. 矩形断面を有する1本のリボン状の金属部材を折り曲げることにより、前記平坦部、前記第1のアーム及び前記第2のアームを形成する、
    請求項6に記載の電子ビーム装置。
  8. 前記平坦部の前記第1の方向の厚みは、0.25mm以上である、
    請求項7に記載の電子ビーム装置。
  9. 前記平坦部と前記第1のアームとの間の折り曲げ部及び前記平坦部と前記第2のアームとの間の折り曲げ部の角の曲率半径は、0.3mm以上0.5mm以下である、
    請求項7に記載の電子ビーム装置。
  10. 前記金属部材は、タングステン、レニウム−タングステン合金、又は、カリウムが添加されたタングステンからなる、
    請求項6乃至9のいずれか一項に記載の電子ビーム装置。
  11. 第1の方向に垂直な底面と、前記底面から前記第1の方向に遠ざかるにつれて前記底面と平行な第2の方向の幅が広くなる形状と、を有し、前記第1の方向に垂直な主面を有するリボン状の金属部材を前記第1の方向に沿って押し付けるポンチと、
    前記第1の方向に沿って穿たれた開口と、前記開口の底部の前記第2の方向の両端部に設けられ、前記底部から遠ざかる方向に窪んだ凹部と、前記凹部の前記底部とは反対側の端部から、前記底部から前記第1の方向に遠ざかるように立ち上がるとともに前記底部から前記第2の方向に遠ざかるにつれて勾配が緩やかになる形状と、を有する治具と、を備え、
    前記治具の前記底部と前記ポンチの前記底面との間に前記金属部材を挟み込んで前記金属部材を折り曲げることで、前記治具の底部と前記ポンチの底面とに挟まれた前記金属部材に平坦部が形成し、前記平坦部の前記治具の前記底部側に正方形の面が形成して、
    請求項1乃至10いずれか一項に記載の前記電子ビーム装置の前記フィラメントを形成する、
    電子ビーム用フィラメントの製造装置。
  12. 前記ポンチの前記底面の前記第2の方向の両端には、前記第2の方向に張り出した張り出し部を有する、
    請求項11に記載の電子ビーム用フィラメントの製造装置。
  13. 第1の方向に垂直な底面を有し、前記底面から前記第1の方向に遠ざかるにつれて前記底面と平行な第2の方向の幅が広くなる形状を有するポンチの前記底面と、
    前記第1の方向に沿って穿たれた開口を有し、前記開口の底部の前記第2の方向の両端部に、前記底部から前記第1の方向へ遠ざかる方向に窪んだ凹部を有し、前記凹部の前記底部とは反対側の端部から、前記底部から遠ざかるように前記第1の方向へ立ち上がるとともに前記底部から前記第2の方向に遠ざかるにつれて勾配が緩やかになる形状を有する治具の前記底部と、の間に、
    長手方向が前記第2の方向に沿うように、かつ、主面が前記第1の方向に垂直になるように、リボン状の金属部材を配置し、
    前記ポンチを前記治具の前記開口に押し込んで前記金属部材を折り曲げることにより、前記治具の底部と前記ポンチの底面とに挟まれた前記金属部材に平坦部を形成し、前記平坦部の前記治具の底部側に正方形の面を形成して、
    請求項1乃至10いずれか一項に記載の前記電子ビーム装置の前記フィラメントを形成する、
    電子ビーム用フィラメントの製造方法。
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