JP2015218122A - 高ガス密度水和物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】20面体包接格子に複数の小分子ゲスト物質(SMGS)が2分子以上包蔵されている構造H水和物の製造方法を提供する。
【解決手段】正12面体包接格子と、変則12面体包接格子と、20面体包接格子から構成される構造H水和物の製造方法であって、任意の一つの水素がメチルまたはハロゲンで置換されているシクロヘキサンと、アルゴン、二酸化炭素、クリプトン、窒素、及びキセノンから選ばれる小分子ゲスト物質と、水とを混合して水和させる工程を含み、20面体包接格子に2分子以上の小分子ゲスト物質が包蔵される、構造H水和物の製造方法により解決する。
【選択図】なし
【解決手段】正12面体包接格子と、変則12面体包接格子と、20面体包接格子から構成される構造H水和物の製造方法であって、任意の一つの水素がメチルまたはハロゲンで置換されているシクロヘキサンと、アルゴン、二酸化炭素、クリプトン、窒素、及びキセノンから選ばれる小分子ゲスト物質と、水とを混合して水和させる工程を含み、20面体包接格子に2分子以上の小分子ゲスト物質が包蔵される、構造H水和物の製造方法により解決する。
【選択図】なし
Description
本発明は、構造H水和物の製造方法に関するものであり、小分子ゲスト物質として、アルゴン、クリプトン、窒素、キセノン及び二酸化炭素から選ばれる分子を用い、さらに任意の一つの水素がメチルまたはハロゲンで置換されているシクロヘキサンを構造H水和物の製造時に用いる構造H水和物の製造方法に関する。
ガスハイドレートは、水分子が籠(ケージ:以下、包接格子ともいう)構造をとるような結晶でケージ内部にゲスト物質(主にガス分子)を取り込んで安定化する化合物の名称である。このガスハイドレートは低温高圧条件で安定な化合物である(非特許文献1)。
メタンを包蔵したメタンハイドレートと呼ばれる化合物が海底や永久凍土地帯など天然に多く存在し(非特許文献2)、新たな非在来型資源として注目を浴びており我が国周辺においても天然ガスハイドレート堆積層からガス生産試験が行われている(非特許文献3)。
ガスハイドレートの結晶構造は取り込まれるゲスト物質の大きさや形状によって異なり、構造I、II、H(以下それぞれsI、sII、sHともいう)と呼ばれる3つの結晶構造を主にとる。構造I型は2個の正12面体包接格子と6個の14面体包接格子によって構成されている。構造II型は16個の正12面体包接格子と8個の16面体包接格子によって構成されている。構造H型は3個の正12面体包接格子と2個の変則12面体包接格子と1個の20面体包接格子によって構成されている(非特許文献1)。
例えば構造I水和物は、46個の水分子に対して通常8分子のゲスト物質を包蔵することができ、単位体積当り約160倍のガスが包蔵可能である。その高いガス包蔵性のため、ガスの輸送・貯蔵媒体としてのガスハイドレートの利用研究開発も行われている(特許文献1〜4)。
ここで、水素もガスハイドレートに包蔵できることが知られており、この水素をゲスト物質としたガスハイドレートはMaoらによって報告されている(非特許文献4)。このときの相平衡温度圧力条件は非常に厳しく、その条件を緩やかにする手法の研究が行われた。水素ハイドレートは通常構造II水和物の結晶構造をとる。このことを利用して、水素ハイドレートと同様に構造II水和物の結晶を生成するテトラヒドロフランを用いて、より緩やかな温度圧力条件でのガスハイドレートの生成研究が行われていた。テトラヒドロフランは若干大きいSMGSのため構造II水和物の包接格子を全部埋めることができず、空の包接格子が多く存在する。そこでLeeらはテトラヒドロフランハイドレートの空の包接格子に水素を入れるだけでなく、テトラヒドロフランの量をコントロールすることで、通常テトラヒドロフランが入っている包接格子にも水素を入れることができる「Tuning effect」を発見した(非特許文献5)。
メタンを包蔵したメタンハイドレートと呼ばれる化合物が海底や永久凍土地帯など天然に多く存在し(非特許文献2)、新たな非在来型資源として注目を浴びており我が国周辺においても天然ガスハイドレート堆積層からガス生産試験が行われている(非特許文献3)。
ガスハイドレートの結晶構造は取り込まれるゲスト物質の大きさや形状によって異なり、構造I、II、H(以下それぞれsI、sII、sHともいう)と呼ばれる3つの結晶構造を主にとる。構造I型は2個の正12面体包接格子と6個の14面体包接格子によって構成されている。構造II型は16個の正12面体包接格子と8個の16面体包接格子によって構成されている。構造H型は3個の正12面体包接格子と2個の変則12面体包接格子と1個の20面体包接格子によって構成されている(非特許文献1)。
例えば構造I水和物は、46個の水分子に対して通常8分子のゲスト物質を包蔵することができ、単位体積当り約160倍のガスが包蔵可能である。その高いガス包蔵性のため、ガスの輸送・貯蔵媒体としてのガスハイドレートの利用研究開発も行われている(特許文献1〜4)。
ここで、水素もガスハイドレートに包蔵できることが知られており、この水素をゲスト物質としたガスハイドレートはMaoらによって報告されている(非特許文献4)。このときの相平衡温度圧力条件は非常に厳しく、その条件を緩やかにする手法の研究が行われた。水素ハイドレートは通常構造II水和物の結晶構造をとる。このことを利用して、水素ハイドレートと同様に構造II水和物の結晶を生成するテトラヒドロフランを用いて、より緩やかな温度圧力条件でのガスハイドレートの生成研究が行われていた。テトラヒドロフランは若干大きいSMGSのため構造II水和物の包接格子を全部埋めることができず、空の包接格子が多く存在する。そこでLeeらはテトラヒドロフランハイドレートの空の包接格子に水素を入れるだけでなく、テトラヒドロフランの量をコントロールすることで、通常テトラヒドロフランが入っている包接格子にも水素を入れることができる「Tuning effect」を発見した(非特許文献5)。
Slaon, E. D. and Koh, C. A. Clathrate Hydrates of Natural Gases. Third Edition (2007)
Kvenvolden, K. A., A primer on the geological occurrence of gas hydrate. Geol. Soc. London, Spec. Publ. 1998, 137, 9-30.
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構造H水和物は、構造I、構造II水和物の包接格子に入らないような大きなゲスト物質(以下LMGSともいう)と、構造I、構造II水和物の包接格子に入るような小さなゲスト物質(以下SMGSともいう)を包蔵する。なお、LMGSは、通常だと20面体包接格子に取り込まれる。この構造H水和物は34個の水分子に対して1個のLMGSと5個のSMGSを包蔵することができる(非特許文献1)。
構造H水和物はSMGSとLMGSが系に同時に存在することにより、同じSMGSを包蔵する構造I、構造II水和物の相平衡温度圧力条件よりも高温低圧条件でも安定に存在するというメリットがあり輸送・貯蔵媒体としても有望と思われている(特許文献5,6)。
また、LMGSの種類によって相平衡温度圧力条件が変化するため(特許文献7,8、非特許文献3)、様々なLMGSの探査が行われている。
SMGSを包蔵する構造Iもしくは構造II水和物の場合、1個のSMGS当り0.216nm3のガスハイドレート体積が必要である。構造H水和物の場合1個のSMGS当り0.243nm3のガスハイドレート体積が必要となり、構造I、構造II水和物に比べると単位体積当りの構造H水和物のガス包蔵性は低い。
よって、構造H水和物において、より効率よくSMGSを包蔵できる態様が求められていた。
このことから、SMGSが効率よく包蔵されている構造H型水和物を得るために、20面体包接格子に複数の小分子ゲスト物質(SMGS)が2分子以上包蔵されている構造H水和物の製造方法を提供する。
構造H水和物はSMGSとLMGSが系に同時に存在することにより、同じSMGSを包蔵する構造I、構造II水和物の相平衡温度圧力条件よりも高温低圧条件でも安定に存在するというメリットがあり輸送・貯蔵媒体としても有望と思われている(特許文献5,6)。
また、LMGSの種類によって相平衡温度圧力条件が変化するため(特許文献7,8、非特許文献3)、様々なLMGSの探査が行われている。
SMGSを包蔵する構造Iもしくは構造II水和物の場合、1個のSMGS当り0.216nm3のガスハイドレート体積が必要である。構造H水和物の場合1個のSMGS当り0.243nm3のガスハイドレート体積が必要となり、構造I、構造II水和物に比べると単位体積当りの構造H水和物のガス包蔵性は低い。
よって、構造H水和物において、より効率よくSMGSを包蔵できる態様が求められていた。
このことから、SMGSが効率よく包蔵されている構造H型水和物を得るために、20面体包接格子に複数の小分子ゲスト物質(SMGS)が2分子以上包蔵されている構造H水和物の製造方法を提供する。
本発明者は、任意の一つの水素がメチルまたはハロゲンで置換されているシクロヘキサンと、アルゴン、二酸化炭素、クリプトン、窒素、及びキセノンから選ばれる小分子ゲスト物質と、水とを混合して水和させる工程を含む製造方法を経ることで、得られる構造H水和物において、その水和物を構成する20面体包接格子に2分子以上の小分子ゲスト物質が包蔵されることを見出した。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] 正12面体包接格子と、変則12面体包接格子と、20面体包接格子から構成される構造H水和物の製造方法であって、
任意の一つの水素がメチルまたはハロゲンで置換されているシクロヘキサンと、アルゴン、二酸化炭素、クリプトン、窒素、及びキセノンから選ばれる小分子ゲスト物質と、水とを混合して水和させる工程を含み、20面体包接格子に2分子以上の小分子ゲスト物質が包蔵される、構造H水和物の製造方法。
[2] 任意の一つの水素がメチルまたはハロゲンで置換されているシクロヘキサンが、メチルシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン、フルオロシクロヘキサン、クロロシクロヘキサンから選ばれるものである、[1]に記載の製造方法。
[3] 前記小分子ゲスト物質が、窒素である、[1]または[2]に記載の製造方法。[4] 前記混合して水和させる工程が、0.1〜100MPaの圧力下で行われる、[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法。
[1] 正12面体包接格子と、変則12面体包接格子と、20面体包接格子から構成される構造H水和物の製造方法であって、
任意の一つの水素がメチルまたはハロゲンで置換されているシクロヘキサンと、アルゴン、二酸化炭素、クリプトン、窒素、及びキセノンから選ばれる小分子ゲスト物質と、水とを混合して水和させる工程を含み、20面体包接格子に2分子以上の小分子ゲスト物質が包蔵される、構造H水和物の製造方法。
[2] 任意の一つの水素がメチルまたはハロゲンで置換されているシクロヘキサンが、メチルシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン、フルオロシクロヘキサン、クロロシクロヘキサンから選ばれるものである、[1]に記載の製造方法。
[3] 前記小分子ゲスト物質が、窒素である、[1]または[2]に記載の製造方法。[4] 前記混合して水和させる工程が、0.1〜100MPaの圧力下で行われる、[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法。
本発明により、構造I、構造II水和物よりも高いガス包蔵性を持つ構造H水和物を、構造I、構造II水和物より緩やかな温度圧力条件で生成させることが可能となり、エネルギー効率的に有利なガスの貯蔵・輸送利用に係るコストを削減することができる。
これまでの研究から、構造H水和物において、SMGSとしての窒素が20面体包接格子に取り込まれるためには約1GPa以上圧力が必要であることが報告されている。(非特許文献6)。
これに対し、本発明の製造方法では、特定のシクロヘキサンを添加することにより、従来の1/100程度の圧力でSMGSを20面体包接格子の中に包蔵させることができ、これによって、ガスの包蔵性を高められることが明らかとなった。
ここで20面体包接格子に例えば2個の窒素分子を入れた場合、窒素分子1個当り0.173nm3のガスハイドレート体積となり、構造Iおよび構造II水和物(0.216nm3)よりも包蔵性が高くなる。
これに対し、本発明の製造方法では、特定のシクロヘキサンを添加することにより、従来の1/100程度の圧力でSMGSを20面体包接格子の中に包蔵させることができ、これによって、ガスの包蔵性を高められることが明らかとなった。
ここで20面体包接格子に例えば2個の窒素分子を入れた場合、窒素分子1個当り0.173nm3のガスハイドレート体積となり、構造Iおよび構造II水和物(0.216nm3)よりも包蔵性が高くなる。
本発明では、構造H水和物の大分子ゲスト物質(LMGS)として、任意の一つの水素がメチルまたはハロゲンで置換されているシクロヘキサンを用い、小分子ゲスト物質(SMGS)として、アルゴン、二酸化炭素、クリプトン、窒素、またはキセノンを用いる。
任意の一つの水素がメチルまたはハロゲンで置換されているシクロヘキサンについて、ハロゲンとしては、臭素、塩素またはフッ素を挙げることができる。
大分子ゲスト物質(LMGS)として上記の特定のシクロヘキサンを用いることで、構造H水和物が有する20面体包接格子に、LMGSではなくSMGSが2分子以上包蔵されるようになる。
SMGSが窒素またはアルゴンである場合は、20面体包接格子に包蔵される分子の数は2〜5分子である。SMGSがクリプトンである場合は、20面体包接格子に包蔵される分子の数は2〜3分子である。SMGSがキセノンまたは二酸化炭素である場合は、2
0面体包接格子に包蔵される分子の数は2分子である。
20面体包接格子に包蔵される分子の数は、包蔵される分子の分子サイズに応じて決まる。
任意の一つの水素がメチルまたはハロゲンで置換されているシクロヘキサンについて、ハロゲンとしては、臭素、塩素またはフッ素を挙げることができる。
大分子ゲスト物質(LMGS)として上記の特定のシクロヘキサンを用いることで、構造H水和物が有する20面体包接格子に、LMGSではなくSMGSが2分子以上包蔵されるようになる。
SMGSが窒素またはアルゴンである場合は、20面体包接格子に包蔵される分子の数は2〜5分子である。SMGSがクリプトンである場合は、20面体包接格子に包蔵される分子の数は2〜3分子である。SMGSがキセノンまたは二酸化炭素である場合は、2
0面体包接格子に包蔵される分子の数は2分子である。
20面体包接格子に包蔵される分子の数は、包蔵される分子の分子サイズに応じて決まる。
本発明において、構造H水和物を生成させるためには、その生成に必要となる、上記のLMGS、SMGS及び水を適当な条件下で反応させればよい。任意の一つの水素が置換されているシクロヘキサンの具体例としては、メチルシクロヘキサン(以下、MCHともいう)、ブロモシクロヘキサン(以下、BrCHともいう)、フルオロシクロヘキサン、クロロシクロヘキサンなどが挙げられる。このなかでも、メチルシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサンを好ましく例示できる。
この際、SMGSとして用いるガスは純粋なガスでも混合ガスでもよく、上記のガスを主成分とする混合ガスでもよい。ここで、例えば窒素を主成分とする混合ガスという場合、窒素の混合比が最も高い混合ガスをいう。
水は好ましくは純水を用いる。
SMGSとLMGSの組み合わせとしては特に制限されるものではなく、上記で例示されたLMGSの一種以上と、上記のSMGSの一種以上との組み合わせを挙げることができる。例えば、LMGSとしてメチルシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン、フルオロシクロヘキサン及びクロロシクロヘキサンから選ばれる一種以上と、SMGSとしてアルゴン、二酸化炭素、クリプトン、窒素及びキセノンから選ばれる一種以上の組み合わせを挙げることができる。
この際、SMGSとして用いるガスは純粋なガスでも混合ガスでもよく、上記のガスを主成分とする混合ガスでもよい。ここで、例えば窒素を主成分とする混合ガスという場合、窒素の混合比が最も高い混合ガスをいう。
水は好ましくは純水を用いる。
SMGSとLMGSの組み合わせとしては特に制限されるものではなく、上記で例示されたLMGSの一種以上と、上記のSMGSの一種以上との組み合わせを挙げることができる。例えば、LMGSとしてメチルシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン、フルオロシクロヘキサン及びクロロシクロヘキサンから選ばれる一種以上と、SMGSとしてアルゴン、二酸化炭素、クリプトン、窒素及びキセノンから選ばれる一種以上の組み合わせを挙げることができる。
構造H水和物を生成させる温度や圧力の条件としては、温度が260K〜293K(約−13〜20℃)である態様を挙げることができ、好ましくは260K〜277Kである態様をあげることができ、圧力が0.1〜100MPaである態様を挙げることができ、その範囲の圧力で、用いるSMGSの種類により適宜調整する態様を挙げることができる。
また、この範囲の中でも、四相平衡条件、すなわち水の水相、SMGSの気相、LMGSの液相および生成した構造H水和物が共存し、その量が変化しない条件、に対して温度を2K程度以上低くした条件が望ましい。例えば、水+窒素+MCH+構造H水和物の四相平衡温度圧力条件を示すp−Tダイアグラムを作成し、該ダイアグラムに基づいて適宜条件を選択することができる。
温度、圧力とも反応の間、一定に保つ必要は必ずしもなく、上記温度および圧力条件内にあればよい。
また、この範囲の中でも、四相平衡条件、すなわち水の水相、SMGSの気相、LMGSの液相および生成した構造H水和物が共存し、その量が変化しない条件、に対して温度を2K程度以上低くした条件が望ましい。例えば、水+窒素+MCH+構造H水和物の四相平衡温度圧力条件を示すp−Tダイアグラムを作成し、該ダイアグラムに基づいて適宜条件を選択することができる。
温度、圧力とも反応の間、一定に保つ必要は必ずしもなく、上記温度および圧力条件内にあればよい。
水と任意の一つの水素が置換されているシクロヘキサンの割合は特に限定されるものではなく、例えばモル数の割合として1:1000〜1000:1の中で適宜調整することができる。構造H水和物を生成させるために必要な時間としては、概ね0.5〜10時間を挙げることができる。
構造H水和物を生成させるためには、低温・高圧条件下で水、SMGS及びLMGSを混合して反応させればよい。
例えば、図1に示すような高圧のガスが密閉できる耐圧反応容器と、反応容器内を加圧させるための配管を有する装置を用いる態様を挙げることができる。
あるいは、低温まで冷却するための冷却装置と、SMGSと水を攪拌させるための攪拌装置を備えた装置を用いて、水、SMGS及びLMGSを反応させてもよい。
そのような装置には、必要に応じて水注入管、減圧弁、SMGSを導入するための導入管、排出口等を備えていてもよい。また反応装置は、温度を測定するための手段(例えば、熱電対や圧力を測定するための圧力計を備えていてもよい。
また、水を取り出すための管や生成した構造H水和物を取り出すための管を備えていてもよい。
この際、耐圧反応容器中に、水ならびにLMGSを入れ、容器全体を例えば恒温槽に沈める等して、該容器全体の温度を上記温度に設定し、容器内上部にSMGSを上記の圧力にて供給して反応させればよい。
例えば、図1に示すような高圧のガスが密閉できる耐圧反応容器と、反応容器内を加圧させるための配管を有する装置を用いる態様を挙げることができる。
あるいは、低温まで冷却するための冷却装置と、SMGSと水を攪拌させるための攪拌装置を備えた装置を用いて、水、SMGS及びLMGSを反応させてもよい。
そのような装置には、必要に応じて水注入管、減圧弁、SMGSを導入するための導入管、排出口等を備えていてもよい。また反応装置は、温度を測定するための手段(例えば、熱電対や圧力を測定するための圧力計を備えていてもよい。
また、水を取り出すための管や生成した構造H水和物を取り出すための管を備えていてもよい。
この際、耐圧反応容器中に、水ならびにLMGSを入れ、容器全体を例えば恒温槽に沈める等して、該容器全体の温度を上記温度に設定し、容器内上部にSMGSを上記の圧力にて供給して反応させればよい。
ゲスト物質とガスと水を反応させてガス水和物を生成するための方法は、種々報告されており、本発明の方法においては、これらの公知の方法を用いて、上記条件で反応を行わせればよい。公知の方法として、特開平11−130700号公報、特開2000−256224号公報、特開2000−256226号公報、特開2000−256227号公報、特開2000−256224号公報、特開264850号公報、特開2000−264851号公報、特開2000−264852号公報、特開2000−302702号公報、特開2000−309548号公報、特開2000−309785号公報、特開2001−10985号公報、特開2001−10986号公報、特開2001−10988号公報、特開2001−10989号公報、特開2001−10990号公報、特開2003−95998号公報、特開2003−342590号公報、特開2003−3181号公報、特開2006−160681号等に記載の方法が例示できる。
構造H水和物の生成は、得られた水和物結晶をX線回折により分析することにより確認することができる。
本発明の製造方法で作製される構造H水和物は、水分子で形成された五角形の面をもつ12面体の包接格子(512)と、四角形の面が3個と五角形の面が6個と六角形の面が3個の変則12面体の包接格子(435663)と、五角形の面が12個と六角形の面が8個の20面体の包接格子(51268)が各々3個と2個と1個から一単位が形成された構造を有するクラスレート水和物である。
本発明においては、構造H水和物の比較的空孔径が小さい12面体包接格子(512)と変則12面体包接格子(435663)にSMGSが包接され、大きな空孔を持つ20面体包接格子(51268)にもSMGSが2分子以上包接され、熱力学的に安定なクラスレート水和物を形成している。
このクラスレート水和物(構造H水和物)の空間群はP6/mmmであり、格子定数はa軸1.2nm、c軸1nmである。
各包接格子にどの分子が包蔵されているのかを確認するには、ラマン分光法を用いることができる。
本発明の製造方法で作製される構造H水和物は、水分子で形成された五角形の面をもつ12面体の包接格子(512)と、四角形の面が3個と五角形の面が6個と六角形の面が3個の変則12面体の包接格子(435663)と、五角形の面が12個と六角形の面が8個の20面体の包接格子(51268)が各々3個と2個と1個から一単位が形成された構造を有するクラスレート水和物である。
本発明においては、構造H水和物の比較的空孔径が小さい12面体包接格子(512)と変則12面体包接格子(435663)にSMGSが包接され、大きな空孔を持つ20面体包接格子(51268)にもSMGSが2分子以上包接され、熱力学的に安定なクラスレート水和物を形成している。
このクラスレート水和物(構造H水和物)の空間群はP6/mmmであり、格子定数はa軸1.2nm、c軸1nmである。
各包接格子にどの分子が包蔵されているのかを確認するには、ラマン分光法を用いることができる。
上記の方法により、スラリー状の構造H水和物が生成し、低温高圧条件下で保存および輸送することができる。
例えば、耐圧容器中で密閉状態で保存すればよい。密閉容器を開けて開放状態に置くことにより、常温・常圧下で分解し、SMGSはガスとして分離するので、これを回収することでSMGSをガスとして得ることができる。また、この際、構造H水和物を加熱してSMGSのガスを分離してもよい。
例えば、耐圧容器中で密閉状態で保存すればよい。密閉容器を開けて開放状態に置くことにより、常温・常圧下で分解し、SMGSはガスとして分離するので、これを回収することでSMGSをガスとして得ることができる。また、この際、構造H水和物を加熱してSMGSのガスを分離してもよい。
以下、実施例を参照して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例の態様に制限されない。
<実施例1>
実施例1ではSMGSとして窒素を用い、LMGSとしてMCHを用いた例を示す。
窒素は氷点付近で約12MPaの相平衡圧力を示すので、本実施例では氷点以下で窒素とLMGSと氷を混合して作製した例を示す。
図1に構造H水和物の作製に用いた反応容器の概略図を示す。反応容器の内径は30mm、高さ80mmのステンレスベースの金属製容器1である。反応容器上部にはガス加圧の為の配管2が備え付けられている。
実施例1ではSMGSとして窒素を用い、LMGSとしてMCHを用いた例を示す。
窒素は氷点付近で約12MPaの相平衡圧力を示すので、本実施例では氷点以下で窒素とLMGSと氷を混合して作製した例を示す。
図1に構造H水和物の作製に用いた反応容器の概略図を示す。反応容器の内径は30mm、高さ80mmのステンレスベースの金属製容器1である。反応容器上部にはガス加圧の為の配管2が備え付けられている。
反応容器をあらかじめ−10℃の低温室内で予冷した。−10℃の低温室内で純水から生成させた氷を砕き、砕いた氷を篩で212μm以下に選別し、細氷2gと0.85mlのMCHを反応容器に入れた後、反応容器を密閉した。その後、氷とMCHを封入した反応容器を−10℃に設定した低温恒温槽に浸け、反応容器上部の配管から窒素ガスを11.5MPa圧入した。窒素ガス圧入直前、窒素ガス2MPaで反応容器を加圧して窒素ガスを大気圧まで抜くことを二回繰り返し反応容器内に残存している空気を追い出した。
窒素ガス11.5MPa圧入後、−10℃のまま低温恒温槽の温度を−10℃に保ったまま1週間待機して試料を作製した。
窒素ガス11.5MPa圧入後、−10℃のまま低温恒温槽の温度を−10℃に保ったまま1週間待機して試料を作製した。
加圧1週間後、液体窒素を用いて−190℃以下の低温条件で反応容器から反応試料を取り出して、試料一部を用いて粉末X線回折分析を行った。図2に粉末X線回折分析の結果を示す。図2中の(a)は反応容器から取り出した試料で、(b)は窒素ガスハイドレート(構造II水和物)の結果である。半経験的フィッティング解析から、取り出した反応試料は構造H水和物の結晶構造と一致した。なお、図2中の+印は、未反応のメチルシクロヘキサンの粉末X線回折パターンを示し、図2中の*印は、未反応の氷の粉末X線回折(線源:CuKα線)パターンを示す。
図3に図2で結晶構造を同定した反応試料のN−N伸縮振動ラマンスペクトルを示す。図3で2323.5cm−1付近のラマンピークは構造H水和物の正12面体包接格子と変則12面体包接格子に包蔵されている窒素分子で、2330cm−1付近の緩やかなラマンピークはガス状態の窒素分子のN−N伸縮振動ラマンピークである。
ここで、2327cm−1付近のピークは20面体包接格子に包蔵された窒素分子のN−N伸縮振動ラマンピークで、通常、20面体包接格子にはMCHが取り込まれているはずであるが、反応試料ではMCHの代わりに窒素分子が20面体包接格子に取り込まれている。
図3に図2で結晶構造を同定した反応試料のN−N伸縮振動ラマンスペクトルを示す。図3で2323.5cm−1付近のラマンピークは構造H水和物の正12面体包接格子と変則12面体包接格子に包蔵されている窒素分子で、2330cm−1付近の緩やかなラマンピークはガス状態の窒素分子のN−N伸縮振動ラマンピークである。
ここで、2327cm−1付近のピークは20面体包接格子に包蔵された窒素分子のN−N伸縮振動ラマンピークで、通常、20面体包接格子にはMCHが取り込まれているはずであるが、反応試料ではMCHの代わりに窒素分子が20面体包接格子に取り込まれている。
<実施例2>
LMGSとしてブロモシクロヘキサン(BrCH)を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順を用いて、構造H水和物を作製した。図4に反応試料のN−N伸縮振動ラマンスペクトルを示す。2323.5cm−1付近のラマンピークは構造H水和物の正12面体包接格子と変則12面体包接格子に包蔵されている窒素分子で、2330cm−1付近のラマンピークはガス状態の窒素分子のN−N伸縮振動ラマンピークである。
ここで、2327.2cm−1付近のピーク(図中の+印)は20面体包接格子に包蔵された窒素分子のN−N伸縮振動ラマンピークで、通常20面体包接格子にはBrCHが取り込まれているはずであるが、反応試料ではBrCHの代わりに窒素分子が20面体包接格子に取り込まれている。
LMGSとしてブロモシクロヘキサン(BrCH)を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順を用いて、構造H水和物を作製した。図4に反応試料のN−N伸縮振動ラマンスペクトルを示す。2323.5cm−1付近のラマンピークは構造H水和物の正12面体包接格子と変則12面体包接格子に包蔵されている窒素分子で、2330cm−1付近のラマンピークはガス状態の窒素分子のN−N伸縮振動ラマンピークである。
ここで、2327.2cm−1付近のピーク(図中の+印)は20面体包接格子に包蔵された窒素分子のN−N伸縮振動ラマンピークで、通常20面体包接格子にはBrCHが取り込まれているはずであるが、反応試料ではBrCHの代わりに窒素分子が20面体包接格子に取り込まれている。
<比較例>
MCHやBrCHの代わりに2,2−ジメチルブタンやメチルシクロペンタンをLMGSとして用いSMGS−LMGS−氷を同じ体積比率で反応させても窒素ガスが20面体包接格子に取り込まれることは無かった。つまり窒素分子を構造H水和物の20面体包接格子に取り込む為には、LMGSとしてMCHやBrCHなどの特定のシクロヘキサンが適していることを示している。
MCHやBrCHの代わりに2,2−ジメチルブタンやメチルシクロペンタンをLMGSとして用いSMGS−LMGS−氷を同じ体積比率で反応させても窒素ガスが20面体包接格子に取り込まれることは無かった。つまり窒素分子を構造H水和物の20面体包接格子に取り込む為には、LMGSとしてMCHやBrCHなどの特定のシクロヘキサンが適していることを示している。
本発明者は、構造H水和物において、その作製に特定のシクロヘキサンを添加し、SMGSも特定のものを採用することで、GPa単位のような高圧をかけなくても、通常LMGSが包蔵される20面体の包接格子に、SMGSが複数包蔵されることを見出した。これにより、構造I、構造II水和物よりも高いガス(SMGS)の包蔵性を持つ構造H水和物を低コストで提供できる。
ガスハイドレートの生成分解に伴う潜熱は非常に大きく、ガスハイドレートの生成分解熱を利用した蓄熱材料としても利用価値は高い。ガスハイドレートの生成分解に伴う大きな圧力変動を利用した作動動力源利用、ガスハイドレートを利用した分離効率のアップにより様々な産業への利用が期待できる。
ガスハイドレートを生成させる為には通常では系を高圧条件(例えばGPa単位)にする必要があるが、上記のように本発明ではガス包蔵性が高いため、ガスの包蔵に伴い系の圧力が小さくなる。
ガスハイドレートを生成させる為には通常では系を高圧条件(例えばGPa単位)にする必要があるが、上記のように本発明ではガス包蔵性が高いため、ガスの包蔵に伴い系の圧力が小さくなる。
Claims (4)
- 正12面体包接格子と、変則12面体包接格子と、20面体包接格子から構成される構造H水和物の製造方法であって、
任意の一つの水素がメチルまたはハロゲンで置換されているシクロヘキサンと、アルゴン、二酸化炭素、クリプトン、窒素、及びキセノンから選ばれる小分子ゲスト物質と、水とを混合して水和させる工程を含み、20面体包接格子に2分子以上の小分子ゲスト物質が包蔵される、構造H水和物の製造方法。 - 任意の一つの水素がメチルまたはハロゲンで置換されているシクロヘキサンが、メチルシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン、フルオロシクロヘキサン、クロロシクロヘキサンから選ばれるものである、請求項1に記載の製造方法。
- 前記小分子ゲスト物質が、窒素である、請求項1または2に記載の製造方法。
- 前記混合して水和させる工程が、0.1〜100MPaの圧力下で行われる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2014101385A JP2015218122A (ja) | 2014-05-15 | 2014-05-15 | 高ガス密度水和物の製造方法 |
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JP (1) | JP2015218122A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2021143277A1 (zh) * | 2020-01-15 | 2021-07-22 | 华南理工大学 | 一种利用 h 型水合物储氢的方法 |
CN114133311A (zh) * | 2020-09-03 | 2022-03-04 | 中国科学院大连化学物理研究所 | 通过气体水合物气-固-液相变的低碳环烷烃气体富集与回收方法 |
-
2014
- 2014-05-15 JP JP2014101385A patent/JP2015218122A/ja active Pending
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---|---|---|---|---|
WO2021143277A1 (zh) * | 2020-01-15 | 2021-07-22 | 华南理工大学 | 一种利用 h 型水合物储氢的方法 |
CN114133311A (zh) * | 2020-09-03 | 2022-03-04 | 中国科学院大连化学物理研究所 | 通过气体水合物气-固-液相变的低碳环烷烃气体富集与回收方法 |
CN114133311B (zh) * | 2020-09-03 | 2023-03-28 | 中国科学院大连化学物理研究所 | 通过气体水合物气-固-液相变的低碳环烷烃气体富集与回收方法 |
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