JP2015215188A - 高速アッセイ用キャピラリー及びそれを用いた高速アッセイ法 - Google Patents

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Abstract

【課題】試料と試薬と混合から数分以内でのシグナル測定を可能とする高速アッセイ用キャピラリー及びそれを用いた高速アッセイ法を提供すること。【解決手段】測定対象物に結合できる第1の検出試薬を含んでなる層と、前記測定対象物に第1の検出試薬と同時に結合できる第2の検出試薬を含んでなる層とをキャピラリーの内腔壁面上に備え、第1及び第2の検出試薬の一方が蛍光標識され、他方がナノカーボンに固定されていることを特徴とする蛍光消光型サンドイッチアッセイ用キャピラリーを提供する。また、測定対象物に結合できる第1の検出試薬を含んでなる層と、該第1の検出試薬に前記測定対象物と競合的に結合できる第2の検出試薬を含んでなる層とをキャピラリーの内腔壁面に備え、第1及び第2の検出試薬の一方が蛍光標識され、他方がナノカーボンに固定されていることを特徴とする蛍光消光型競合アッセイ用キャピラリーを提供する。【選択図】図6

Description

本発明は、高速アッセイ用キャピラリー及びそれを用いた高速アッセイ法に関する。より具体的には、蛍光標識された試薬を含んでなる層とナノカーボンに固定された試薬を含んでなる層とをキャピラリーの内腔壁面上に備える蛍光消光型アッセイ用キャピラリー及びそれを用いた蛍光消光型キャピラリーアッセイ法に関する。
医学的診断や生化学分析で用いられるタンパク質検出の手法としては、抗原-抗体反応を利用するもの(例えばELISA法)が知られている。
しかしながら、抗原-抗体反応は、分子量が非常に大きいタンパク質同士の反応であるので、通常は非常に遅い反応であり、平衡に達するまで数時間を要する。また、多くの場合、検出反応は多段階で行われるため、煩雑な操作が必要である。よって、結果が得られるまでに数時間以上の時間を要する。
キャピラリーイムノアッセイは、抗原-抗体反応がキャピラリー内腔という微小空間で生じるので、比較的迅速に進行する。特許文献1に開示されているELISA法ベースの技術によれば、キャピラリー内腔中への試料の導入後、室温にて30分間静置期間を経て、蛍光測定がなされる。
国際公報WO 2010/071045
しかし、依然として、被検試料を試薬と混合してから(測定対象物に起因する)シグナルの測定が可能になるまでには数10分単位の時間を要する。
よって、煩雑な操作を要することなく、より短時間で測定結果が得られるアッセイ法の開発が望まれていた。
本発明は、試料と試薬と混合から数分以内でのシグナル測定を可能とする高速アッセイ用キャピラリー及びそれを用いた高速アッセイ法を提供することを課題とする。
本発明によれば、測定対象物に結合できる第1の検出試薬を含んでなる層と、該測定対象物に第1の検出試薬と同時に結合できる第2の検出試薬を含んでなる層とをキャピラリーの内腔壁面上に備え、第1及び第2の検出試薬の一方が蛍光標識され、他方がナノカーボンに固定されていることを特徴とする蛍光消光型サンドイッチアッセイ用キャピラリーが提供される。
また、本発明によれば、測定対象物に結合できる第1の検出試薬を含んでなる層と、該第1の検出試薬に前記測定対象物と競合的に結合できる第2の検出試薬を含んでなる層とをキャピラリーの内腔壁面上に備え、第1及び第2の検出試薬の一方が蛍光標識され、他方がナノカーボンに固定されていることを特徴とする蛍光消光型競合アッセイ用キャピラリーが提供される。
また、本発明によれば、測定対象物がそれぞれ異なる複数の上記キャピラリーを含んでなることを特徴とする蛍光消光型アッセイ用キャピラリーアレイが提供される。
更に、本発明によれば、上記キャピラリー又は上記キャピラリーアレイの各キャピラリーの内腔中に被検試料を導入する工程を含んでなることを特徴とする蛍光消光型アッセイ法が提供される。
本発明によれば、従来法より短時間での、例えばキャピラリー内腔中への被検試料の導入から5分以内の対象物質の測定が可能になる。
酸化グラフェン(GO)及びスルホン化グラフェン(SG)のフーリエ変換赤外分光データを示す。 SGに固定された抗ヒトIgG(Fc specific)抗体及びFITC結合抗ヒトIgG(whole molecule)抗体を検出試薬として用いた本発明のキャピラリーの一形態の内腔中に種々の濃度(左から0、10、50、100、500、1000ng/mL)のヒトIgG溶液を導入し、励起光(465-495nm)を照射して得られた蛍光画像である。 図2に示した蛍光画像から得た検量線である。 本発明のキャピラリーの一形態を用いたアッセイ(本発明のアッセイの一形態)において、種々の濃度のヒト、ウサギ若しくはヤギ由来のIgG又はBSAについて得られた蛍光強度を示すグラフである。 本発明のキャピラリーへの被検試料の導入直前(左端)から15秒間の3秒毎の蛍光画像である。 本発明のキャピラリーの一形態を用いたアッセイ(本発明のアッセイの一形態)において、種々の濃度(0〜1000ng/mL)のヒトIgGについて得られた蛍光強度の経時変化を示す。 従来のアッセイ法で得られた蛍光強度の経時変化を示す。 本発明のキャピラリーの別の形態を用いたアッセイ(本発明のアッセイの別の形態)において得られた蛍光強度の経時変化を示す。
<蛍光消光型アッセイ用キャピラリー>
本発明の蛍光消光型サンドイッチアッセイ用キャピラリーは、測定対象物に結合できる第1の検出試薬を含んでなる層と、該測定対象物に第1の検出試薬と同時に結合できる第2の検出試薬を含んでなる層とをキャピラリーの内腔壁面上に備え、第1及び第2の検出試薬の一方が蛍光標識され、他方がナノカーボンに固定されていることを特徴とする。
本発明の蛍光消光型競合アッセイ用キャピラリーは、測定対象物に結合できる第1の検出試薬を含んでなる層と、該第1の検出試薬に前記測定対象物と競合的に結合できる第2の検出試薬を含んでなる層とをキャピラリーの内腔壁面上に備え、第1及び第2の検出試薬の一方が蛍光標識され、他方がナノカーボンに固定されていることを特徴とする。
なお、以下では、本発明の蛍光消光型サンドイッチアッセイ用キャピラリーを「本発明の第1のキャピラリー」とも呼び、本発明の蛍光消光型競合アッセイ用キャピラリーを「本発明の第2のキャピラリー」とも呼び、両キャピラリーをまとめて「本発明のキャピラリー」ともいう。
本発明のキャピラリーは、測定対象物を介する第1及び第2の検出試薬の結合(「第1の検出試薬-測定対象物-第2の検出試薬」複合体の形成)(サンドイッチアッセイ法)、又は第1の検出試薬と第2の検出試薬との結合に競合する第1の検出試薬と測定対象物との結合(「第1の検出試薬-測定対象物」複合体の形成)(競合アッセイ法)の測定に蛍光消光現象を利用するアッセイに使用するものである。
ここで、「測定」とは、被検試料中における測定対象物の存在の検出及び/又は被検試料中に存在する測定対象物の定量をいう。
測定対象物は特に限定されず、例えば、生物学的試料中に存在し得る内因性又は外因性物質(例えば高分子、特にタンパク質又はポリ若しくはオリゴペプチド、具体的には疾患状態又は感染の指標となり得るマーカー)又は食品サンプルのような検体中に存在し得る(例えば、細菌又はウイルス由来の)汚染/混入物質(例えば高分子、特にタンパク質又はポリ若しくはオリゴペプチド)であり得る。
疾患マーカーとしては、癌マーカー(例えば癌胎児抗原(CEA)、α-フェトプロテイン(AFP)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、塩基性フェトプロテイン(BFP)、扁平上皮癌関連抗原(SCC抗原)、BCA225、CA15-3、CA19-9、CA50、CA54/61、CA72-4、CA125、CA130、CA602、膵癌関連糖タンパク抗原(DUPAN-2)、KMO-1、NCC-ST-439、シアリルLex-i抗原(SLX)、サイトケラチン19フラグメント(CYFRA)、組織ポリペプチド抗原(TPA)、免疫抑制酸性タンパク質(IAP)、前立腺特異抗原(PSA)、神経特異エノラーゼ(NSE)、フェリチン、エラスターゼ1、p53抗体、ガストリン放出ペプチド前駆体(ProGRP)、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、γ-セミノプロテイン(γ-Sm)、Dpyr、ポリアミン、BJPなど)、糖尿病マーカー(例えばインスリンなど)、肥満マーカー(例えばレプチン、アディポネクチンなど)、炎症マーカー(例えばC反応性タンパク質(CRP)など)、動脈硬化性疾患マーカー(例えばホモシステインなど)、腎機能マーカー(例えばシスタチンCなど)、HIVマーカー(p24抗原)、肝炎マーカー(HBs抗原、HBs抗体、HBe抗原、HBe抗体)などが挙げられる。また、種々の疾患のマーカーとして検査対象であることが知られているIgG、IgA、IgE、IgD、IgMなどの免疫グロブリンも測定対象物とし得る。
本発明のキャピラリーは、蛍光標識に使用する蛍光物質の励起光及び該励起光により生じる蛍光に対して透過性である材料の管状中空材で構成される。
そのような透過性材料としては、蛍光波長によるが、一般には、ガラス及びプラスチックが挙げられる。ガラスの具体例としては、シリカガラスが挙げられる。プラスチックの具体例としては、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリアクリル酸メチル、ポリジメチルシロキサン(PDMS)が挙げられる。前記材料は可視光に対して一般に透過性である。管状中空材は、ガラス又はPDMSで構成されていることが好ましく、ガラス(特にシリカガラス)であることがより好ましい。
管状中空材は、その長手軸に垂直な横断面(以下、単に「横断面」という)の外形が方形や円形などのいずれの形状であってもよいが、好ましくは方形、より好ましくは矩形、より好ましくは正方形である。なお、本発明において、「方形」は、方形(四角形)の他、略方形も包含するものとする。「略方形」とは、方形の4つの角のうち少なくとも1つが丸みを帯びているか又は面取りされている形状、及び、当該分野(管状材製造の分野)において実質的に「方形」と認識される形状(例えば辺が円弧状のもの)を意味する。「矩形」及び「正方形」についても同様である。
外形の横断面の一辺(方形の場合)又は直径(円形の場合)は、特に制限されないが、例えば50〜2000μm、好ましくは100〜1800μmである。外形が略方形である場合の辺の長さは、いずれの角も丸みを帯びておらず面取りもされていない仮想の四角形についての辺の長さとする(内腔についても同様とする)。
管状中空材の内腔の横断面は、特に制限されず、方形や円形を含む任意の形状であり得るが、好ましくは方形、より好ましくは矩形、より好ましくは正方形である。
内腔の横断面の一辺(方形の場合)又は直径(円形の場合)は、10〜1000μmであり、好ましくは20〜700μmである。内腔横断面の一辺又は直径がこの範囲にあることにより、内腔中への被検試料の(例えば毛細管現象による)導入に際して、内壁付近で発生する渦流により、該内腔壁面上の検出試薬を含んでなる層から遊離した検出試薬と試料との結合反応が高速で平衡状態に達し、その結果として、キャピラリー内腔中への被検試料の導入から短時間(例えば、5分以内、或る特定の場合には2分以内、別の特定の場合には1分以内)の蛍光シグナル測定が可能になると考えられる。
管状中空材は、アッセイに利用する光の取り扱いが容易となる矩形(特に正方形)の外形及び内腔が好ましい。
管状中空材の長さは、特に制限されないが、例えば、一方の開口端から液体を内腔中に毛細管現象により全長にわたって導入することが可能な長さであり得る。例えば、管状中空材は0.5cm〜1m程度の長さであり得るが、導入する被検試料の量、反応量、取り扱いの容易性などの観点から、例えば0.5〜10cm程度、代表的には0.5〜8cm、好ましくは0.5〜5cm、より好ましくは0.5〜2cm、より好ましくは0.5〜1cmである。
管状中空材は一体的に成形されたものであってもよいし、2つの部材を貼り合わせて製造されたものであってもよい。後者の場合、管状中空材は、例えば、横断面が凹形である(凹状溝を有する)細長部材と平板状の細長部材又は横断面が凹形若しくは凸形である細長部材とを貼り合わせて形成され、凹状溝の少なくとも一部が内腔を形成しているものであり得る。
本発明のキャピラリーは、上記のような管状中空材の内腔壁面上に、第1の検出試薬を含んでなる層と第2の検出試薬を含んでなる層とを備える。第1の検出試薬を含んでなる層及び第2の検出試薬を含んでなる層は、第1の検出試薬と第2の検出試薬とを含んでなる層であってもよい。
前記検出試薬を含んでなる層は、内腔壁の全面を覆っている必要はなく、内腔壁の少なくとも一部に設けられていればよく、例えば内腔横断面が方形である場合には4つの角(内角)の近辺に主として位置し得る。前記検出試薬を含んでなる層は、長手軸方向については、内腔の全長にわたって設けられていることが好ましい。
厚さは、毛細管現象を利用した被検試料の内腔中への導入を妨げない程度であることが好ましい。
第1の検出試薬及び/又は第2の検出試薬を含んでなる層は、第1の検出試薬及び/又は第2の検出試薬が内腔壁面上に直接付着した層であり得る。
第1の検出試薬及び/又は第2の検出試薬を含んでなる層は、第1の検出試薬及び/又は第2の検出試薬並びに水溶性高分子から構成され得る。この場合、層は、第1の検出試薬及び/又は第2の検出試薬が水溶性高分子の層中に捕捉された形態であり得る。
水溶性高分子は、水と接触して可溶化し得る高分子であれば特に限定されない。このような水溶性高分子としては、ポリエチレングリコール、デキストラン及びその水溶性誘導体、セルロースの水溶性誘導体(例えば、ヒドロキシエチルセルロースやカルボキシメチルセルロース)などが挙げられる。水溶性高分子の分子量は、特に限定されないが、例えば200〜4,000,000、好ましくは2,000〜100,000、より好ましくは6,000〜50,000であり得る。
検出試薬及び水溶性高分子から構成される層は、該層が内腔壁面上に保持される粘度(例えば1000〜2000cSt)を有し得る。
検出試薬は、例えば、タンパク質、(ポリ又はオリゴ)ペプチドや(ポリ又はオリゴ)ヌクレオチドなどの生体分子(特に、生体高分子)であり得る。測定対象物に結合できる検出試薬のより具体的な例としては、抗体(IgG、IgA、IgE、IgD、IgMなど)又は抗体フラグメント、抗原、核酸(DNA若しくはRNA、又はPNAやLNAのような人工核酸)プローブ、アプタマー、リガンド、レクチンが挙げられる。本発明において、「抗体フラグメント」とは、抗体の抗原結合部位を含むフラグメント(例えば、Fab、F(ab')2、Fab'、Fv及びそれらの誘導体)である。
第1の検出試薬に測定対象物と競合的に結合できる検出試薬は、測定対象物と同じ物質又はその第1の検出試薬との結合部位を含む一部分又は該結合部位を模倣する分子であり得る。
本発明の第1のキャピラリーにおいて、第1及び第2の検出試薬は測定対象物のみに結合する試薬である必要はない。被検試料中に存在し得る、第1及び第2の検出試薬が同時に結合できる物質が測定対象物のみとなるように、第1及び第2の検出試薬が選択されていればよい。好ましくは、第1及び第2の検出試薬は測定対象物に特異的に結合する。
同様に、本発明の第2のキャピラリーにおいて、第1の検出試薬は測定対象物及び第2の検出試薬のみに結合し、且つ第2の検出試薬は第1の検出試薬のみに結合する試薬である必要はない。被検試料中に存在し得る、第1の検出試薬が結合できる物質が測定対象物のみであり、該試料中には第2の検出試薬が結合し得る物質は存在しないように、第1及び第2の検出試薬が選択されていればよい。好ましくは、第1の検出試薬は測定対象物及び第2の検出試薬に共通する部分(構造)に特異的に結合する。
第1の検出試薬と測定対象物との結合及び/又は第2の検出試薬と測定対象物若しくは第1の検出試薬との結合は抗原-抗体反応によることができる。
1つの実施形態において、第1の検出試薬と測定対象物との結合、及び、第2の検出試薬と測定対象物との結合又は第1の検出試薬と第2の検出試薬との結合は抗原-抗体反応による。すなわち、本発明のキャピラリーは、蛍光消光型サンドイッチイムノアッセイ用又は蛍光消光型競合イムノアッセイ用のキャピラリーである。1つの具体的実施形態において、第1及び/又は第2の検出試薬は、独立して、抗体又は抗体フラグメントであり、測定対象物はその抗原である。1つの好適な具体的実施形態において、第1及び第2の検出試薬は、独立して、抗体又は抗体フラグメントである。別の1つの具体的実施形態において、第1又は第2の検出試薬の一方は抗体又は抗体フラグメントであり、他方及び測定対象物はその抗原である。
本発明において、「抗原」とは、「抗体」又は「抗体フラグメント」との関係において使用される用語であり、抗体又は抗体フラグメントが、その抗原結合部位で結合できる任意の物質をいう。よって、「抗原」は、タンパク質としての抗体又は免疫グロブリンであり得る。抗原が抗体又は免疫グロブリンである場合、検出試薬としての抗体は、抗免疫グロブリン(whole IgX)抗体(Xは免疫グロブリンクラス)、抗IgX(H+L)若しくは抗IgXフラグメント抗体(抗Fab、抗F(ab')2若しくは抗Fc抗体)又は抗イディオタイプ抗体などであり得る。また、「抗原」は免疫原性を有する必要はない。
抗体又は抗体フラグメントは、モノクローナル又はポリクローナルのいずれであってもよいが、モノクローナルが好ましい。抗体はいずれの免疫グロブリンクラスのものであってもよく、例えばIgG、IgMである。
抗体を作製する方法は、当該分野において公知である。
ポリクローナル抗体は、簡潔には、抗原/免疫原を、単独若しくはアジュバント(例えば、完全若しくは不完全フロイントアジュバント、水酸化アルミニウム又はリン酸化アルミニウム(ミョウバン))と共に、又は適切なキャリア(例えば、BSAのようなアルブミン、オボアルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン、ジフテリア毒素、破傷風毒素)に結合させて、動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、モルモット、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ウマ、ロバ、ラクダ、ニワトリ、ダチョウなど抗体産生に使用され得る動物)に1回又はそれ以上免疫することにより、その動物の血清から得られる。
モノクローナル抗体は、簡潔には、抗原/免疫原を単独で若しくはアジュバントと共に、又は適切なキャリアに結合させて免疫した動物の抗体産生細胞(脾臓細胞又はB細胞)を単離し、これを細胞融合法により同種又は近縁動物の骨髄腫細胞と融合して不死化細胞(ハイブリドーマ)とし増殖させ、当該抗原/免疫原に結合する能力を有する抗体を産生するハイブリドーマをスクリーニングすることにより得られる(例えば、Kohler and Milstein,Nature, 256:495-497, 1975;Antibodies: A Laboratory Manual, Harlow and Lane編, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988を参照)。
抗体は、遺伝子組換え技術により製造されたものであってもよい。
検出試薬の一方を標識する蛍光物質としては、バイオアッセイに用いる検出試薬の標識に使用し得る任意のものを使用できる。例えば、フルオレセイン及びその誘導体(例えば、カルボキシフルオレセイン(FAM)、テトラクロロフルオレセイン、ジクロロフルオレセイン、FITC、TET、HEX、JOEなど)、ローダミン及びその誘導体(例えば、ローダミンイソチオシアネート、テトラメチルローダミン、TRITC、カルボキシローダミン(例えばR6G、ROX)、TAMRAなど)、テキサスレッド(TR)、ニトロベンゾ-2-オキサ-1,3-ジアゾール(NBD)、フィコエリトリン(PE)、アロフィコシアニン(APC)、シアニン系色素(例えば、CyシリーズCy2、Cy3、Cy3.5、Cy5)、Alexa Fluorシリーズ、HiLyte Fluorシリーズ、DyLightシリーズが挙げられるが、これらに限定されない。
好ましくは、FITCである。
本発明において、ナノカーボンは消光剤(クエンチャー)として利用される。ナノカーボンは幅広い波長の光(紫外光〜遠赤外光)を吸収し得る。よって、第1の試薬と第2の試薬が近接して位置すると、その一方に接合された蛍光標識が励起光照射により発する蛍光は、他方が固定されているナノカーボンのエネルギー受容能によって吸収されることになり、したがって蛍光の消光が生じる。
ナノカーボンは、少なくとも1つの寸法がナノメートルオーダーであるカーボン材料をいい、具体的には、グラフェン及びその誘導体、グラフェン及びその誘導体の多層シート、単層又は多層のカーボンナノチューブ又はその誘導体、フラーレン及びその誘導体が挙げられ、好ましくはグラフェン及びその誘導体、カーボンナノチューブ又はその誘導体であり、より好ましくはグラフェン又はその誘導体である。ここで、「誘導体」とは、グラフェンやカーボンナノチューブの少なくとも一部の炭素に官能基が結合したものをいう。官能基は、好ましくは親水性の基であり、例えばヒドロキシ基、エポキシ基、エーテル基、カルボニル基、カルボキシ基、スルホン基、アミノ基などであり得る。
グラフェンの誘導体としては、酸化グラフェン及びスルホン化グラフェンが好ましく、スルホン化グラフェンが特に好ましい。
ナノカーボンに試薬は共有結合していてもよいし、物理的に吸着していてもよい。
ナノカーボンには、非特異吸着を防止するために、ウシ血清アルブミン(BSA)、スキムミルクなどのブロッキング剤が(例えば物理的吸着により)固定されていてもよい。
<キャピラリーの製造方法>
(第1の製造方法)
この方法は、適切な形状及びサイズの管状中空材の内腔壁面上に、第1の検出試薬を含んでなる層及び第2の検出試薬を含んでなる層を形成することにより本発明のキャピラリーを製造する方法である。前記層の形成は、当該分野において公知の手法により行うことができる。
例えば、検出試薬と内腔壁表面との間の相互作用(疎水性や静電力)を利用して該試薬を該内腔壁面上に直接吸着させる。この手法は、管状中空材がガラスで構成されている場合に特に適切である。或いは、前記層は、内腔壁面に、検出試薬を含む水溶性高分子層として形成することができる。いずれの場合にも、第1及び第2の検出試薬と必要に応じて上記水溶性高分子とを含有する試薬液を内腔中に充填した後、溶媒を乾燥(例えば風乾又は真空若しくは減圧乾燥)等により除去することで、検出試薬を含んでなる層を内腔壁面上に形成することができる。試薬液の内腔中への充填は、例えば、毛細管現象を利用して容易に行うことができる。試薬液の溶媒については上記のとおりである。
検出試薬への蛍光物質又はナノカーボンの結合は、当該分野において公知の方法で行うことができる。例えば、結合は、蛍光物質又はナノカーボンに導入した官能基と検出試薬中の基との間に形成することができる。この結合に利用し得る検出試薬中の基としてはアミノ基(NH2)及びメルカプト(SH)基などが挙げられる。官能基としては、マレイミド基、N-ヒドロキシスクインイミジル基、アルデヒド基、ピリジルジスルフィド基及びSH基などが挙げられる。
例えば、蛍光物質又はナノカーボンに導入したN-ヒドロキシスクインイミジル基又はマレイミド基と試薬中のNH2基又はSH基との間に共有結合を形成することができる。N-ヒドロキシスクインイミジル基の導入には、例えば、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)若しくはN-ヒドロキシスルホスクシンイミド(sulfo-NHS)と1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド(EDC)とを用いることができる。
蛍光物質は、適切な官能基が導入されたものが市販されているので、それを利用してもよい。
ナノカーボンは、非特異吸着を防止するため、検出試薬の固定後、好ましくは、BSAやスキムミルクなどのブロッキング剤を用いてブロッキング処理を行う。
第1の製造方法に用いる管状中空材は、本発明のキャピラリーについて上記したとおりである。より具体的には、外形の横断面の一辺(方形の場合)又は直径(円形の場合)は、より好ましくは100〜500μm、より好ましくは200〜500μmであり、内腔の横断面の一辺又は直径は、より好ましくは30〜300μm、より好ましくは50〜200μmである。
試薬液中の検出試薬の濃度は、本発明のキャピラリーに保持させるべき試薬量に依存する。試薬が抗体である場合、例えば、10〜100μg/mLであり得る。
試薬液中の水溶性高分子の濃度は、溶媒除去後に形成する高分子層が内腔壁面上に粘着するように選択すればよい。内腔壁面上に粘着保持される粘度(動粘度)は、例えば、1000〜2000cStである。水溶性高分子がポリエチレングリコールである場合には、濃度は、分子量によるが、例えば100〜300g/Lであり得る。
試薬液の溶媒は、水性溶媒、例えば、水、メタノール、エタノールなど又はこれらの混合溶媒であり得る。
試薬は、任意に(例えばpH6〜9に維持されるように)緩衝化された生理学的に等張な溶液(例えば生理食塩水)に溶解又は分散されてもよい。緩衝化には、リン酸緩衝化、Tris-HCl緩衝化、HEPES緩衝化、ホウ酸緩衝化などが用いられる。
試薬液中の水溶性高分子の濃度は、該試薬液が毛細管現象を利用した内腔中への導入を妨げない程度の粘性を有するように選択する。
その後、必要に応じて、所望の長さに(長手軸方向に垂直に)切断してもよい。
第1の製造方法は、本発明の第1のキャピラリーの製造に好ましい。
(第2の製造方法)
この方法は、完成時に内腔を形成することになる面(以下、「内腔形成面」)に予め検出試薬を含んでなる層を設けた2つの部材を貼り合わせることにより本発明のキャピラリーを製造する方法である。
この方法で使用する2つの部材は、共に横断面が凹形である細長部材(以下、「凹形細長部材」)の組合せ、又は凹形細長部材と細長の平板部材(以下、「平板細長部材」)若しくは横断面が凸形である細長部材(以下、「凸形細長部材」)との組合せであり得る。ここで、凸形細長部材の凸部は凹形細長部材の凹部に嵌合でき、凸部の高さは凹部の深さより小さい。凹形細長部材と凸形細長部材との組合せは、嵌合によって位置決めの煩わしさなく貼り合わせることができるので、好ましい。
それぞれの部材の具体的形状は、2つを貼り合わせることにより管状中空材(特に、本発明のキャピラリーについて上記したもの)が得られる形状であれば限定されない。より具体的には、得られる管状中空材の外形横断面の一辺(方形の場合)又は直径(円形の場合)は、300〜2000μmがより好ましく、600〜1800μmがより好ましく、内腔横断面の一辺又は直径は、100〜700μmがより好ましく、200〜600μmがより好ましい。凹形細長部材には、管状中空材をその長手軸に沿って切断した半割体が含まれる。凹形細長部材と平板細長部材又は凸形細長部材を組み合わせる場合、貼り合せ面を含む面上において、平板細長部材又は凸形細長部材の幅は凹形細長部材の幅より長くてもよい(すなわち、貼り合わせたとき、外形横断面が凸形となり得る)。
凹形細長部材と平板細長部材を組み合わせる場合、内腔形成面は、凹形細長部材の凹部壁面(底面を含む)の全部と平板細長部材の1つの平面(貼り合せ面を含む面)の一部であり得る。2つの凹形細長部材を組み合わせる場合、内腔形成面は、それぞれの部材の2つの凹部壁面の全部であり得る。凹形細長部材と凸形細長部材を組み合わせる場合、内腔形成面は、凹形細長部材の凹部壁面の一部と凸形細長部材の凸部の頂上面であり得る。
2つの部材のそれぞれの内腔形成面上又は2つの部材の一方の内腔形成面上に、検出試薬を含んでなる層を形成する。前者の場合、2つの部材の一方の内腔形成面上に第1の検出試薬を含んでなる層を形成し、他方の部材の内腔形成面上に第2の検出試薬を含んでなる層を形成してもよい。
層の形成は、第1の製造方法について記載したとおり、当該分野において公知の手法により行うことができる。
例えば、内腔形成面が凹部壁面(又はその一部)である場合、第1及び/又は第2の検出試薬と必要に応じて水溶性高分子とを含有する試薬液を凹部に導入した後、溶媒を除去して、層を凹部壁面(又はその一部)上に形成することができる。凹部横断面が方形である場合、層は2つの角(内角)の近辺に主として位置していてもよい。
また、内腔形成面が凸部頂上面又は平板平面の一部である場合、検出試薬を含んでなる層は、試薬液の層を所望の領域に形成し、溶媒を除去することにより形成することができる。或いは、原版(例えばガラス板)上に第1及び/又は第2の検出試薬と水溶性高分子とを含んでなる層を予め形成し、該層を凸部頂上面上又は平板平面上に転写することによっても形成することができる。この場合、溶媒の除去は、原版上で行なってもよいし、転写後に行ってもよい。
それぞれの内腔形成面に検出試薬を含んでなる層が形成された2つの部材を、該2つの内腔形成面が内腔を形成するように適切に貼り合わせる。
貼り合せには、接着剤を用いることができる。接着剤は、当該分野において公知のものから、部材の材料に応じて適宜選択できる。接着剤は、硬化後、蛍光標識に使用する蛍光物質の励起光及び該励起光により生じる蛍光に対して透過性であることが好ましい。接着剤の主成分は、例えば、塩化ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂などであり、好ましくは塩化ビニル系樹脂である。接着剤には可塑剤が含まれていることが好ましい。
可塑剤は、特に制限されず公知のものを使用できるが、例えば、フタル酸エステル、トリメット酸エステル、脂肪族二塩基酸エステル、正リン酸エステル、安息香酸エステルなどである。可塑剤の具体例としては、フタル酸ジ-n-ブチル(DBP)、フタル酸-2-エチルヘキシル(DOP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、トリメット酸トリ-2-エチルヘキシル(TOTM)、アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル(DOA)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、リン酸トリフェニル(TPP)、リン酸トリクレジル(TCP)が挙げられる。可塑剤は、主成分たる樹脂100重量部に対して、例えば、30〜300重量部である。
本発明において最も好ましい接着剤は、主成分がポリ塩化ビニルであり、可塑剤がフタル酸-2-エチルヘキシルであり、溶剤がテトラヒドロフランであるものである。
その後、必要に応じて、所望の長さに(長手軸方向に垂直に)切断してもよい。
第2の製造方法は、本発明の第2のキャピラリーの製造に好ましい。
<キャピラリーアレイ>
本発明の蛍光消光型アッセイ用キャピラリーアレイは、測定対象物がそれぞれ異なる複数の本発明のキャピラリーを含んでなることを特徴とする。
本発明のキャピラリーアレイは、同一の被検試料中における複数の測定対象物の同時測定又は連続測定に用いることができる。
アレイに含まれるキャピラリーの数は、2以上であれば特に制限されず、例えば2〜20本である。
各キャピラリーに含まれる検出試薬を標識する蛍光物質は、それぞれのキャピラリーで異なる必要はなく、複数のキャピラリーで共通していてもよく、全体で1種類であってもよい。
本発明のキャピラリーアレイは、例えば、特開2013-250195号公報に記載の方法に従って製造することができる。
或いは、本発明のキャピラリーアレイは、次のように製造することもできる。
複数(所望の数)の平行な細長凹部(凹状溝)を有する部材(第1の部材)と、同数の平行な細長凹部(凹状溝)を有する部材又は平面部材又は同数の平行な細長凸部を有する部材(第2の部材)とを使用する。第2の部材は、第1の部材と嵌合によって位置決めの煩わしさなく貼り合わせることができる細長凸部を有する部材であることが好ましい。
それぞれの部材の具体的形状は、2つを貼り合わせることにより、内部に複数の細長空洞(内腔)が形成され得る形状であれば特に限定されない。より具体的には、得られる内腔の横断面の一辺又は直径は、100〜700μmがより好ましく、200〜600μmがより好ましい。
第1の部材及び/又は第2の部材の内腔形成面(第1の部材及び第2の部材を貼り合わせたときに得られる内腔を形成する面)上に、検出試薬を含んでなる層を形成する。両部材において形成する場合、一方の部材の内腔形成面上に第1の検出試薬を含んでなる層を形成し、他方の部材の内腔形成面上に第2の検出試薬を含んでなる層を形成してもよい。層は、内腔形成面の全面を覆って形成される必要はなく、内腔形成面の少なくとも一部に形成されればよい。例えば、細長凹部(凹状溝)の横断面が方形である場合、層は2つの角(内角)の近辺に主として位置していてもよい。
層の形成は、キャピラリーの製造方法(特に、「第2の製造方法」)について記載したとおり、当該分野において公知の手法により行うことができる。
それぞれの内腔形成面に検出試薬を含んでなる層が形成された第1の部材及び第2の部材を、内腔形成面が内腔を形成するように適切に貼り合わせる。貼り合せは、キャピラリーの製造方法(「第2の製造方法」)について記載したように行うことができる。
その後、必要に応じて、所望の長さに(内腔の長手軸方向に垂直に)切断してもよい。
<アッセイ法>
本発明は、本発明のキャピラリー又はキャピラリーアレイを用いて、被検試料中の測定対象物を測定することを含むアッセイ法も提供する。
より具体的には、上記で説明したキャピラリー又はキャピラリーアレイの各キャピラリーの内腔中に被検試料を導入する工程を含んでなることを特徴とする蛍光消光型アッセイ法が提供される。
被検試料は、測定対象物の存在が疑われる試料であれば特に限定されない。試料は、キャピラリー内腔中に導入し得る液体(懸濁液を含む)の形態であり得、その溶媒は水性溶媒(好ましくは水)である。
被検試料は、被検体(ヒト、家畜動物、ペットや実験動物を含む動物)からの生物学的試料であり得る。生物学的試料としては、血液(血清、血漿を含む)、リンパ液、髄液、腹水、組織滲出液又は分泌液、唾液、痰及び尿を含む体液;器官又は組織(そのホモジネート、溶解物若しくは抽出物);細胞(その溶解物及び抽出物を含む)が挙げられる。試料はまた、細菌感染や異物(例えば、毒性物質)の混入が疑われているような食品サンプル(溶解液、ホモジネート、抽出液など)であってもよい。本発明のアッセイ法では、被検試料と検出試薬との反応をキャピラリ内腔(微小空間)中で行うので、必要な被検試料の量が少量で済む。
試料には、防腐剤、凝固防止剤、界面活性剤などの添加剤や希釈剤/緩衝液が添加されていてもよい。
被検試料のキャピラリー内腔中への導入は、キャピラリーの一方の端面に位置する内腔開口部を該試料中に浸漬することにより行うことができる。この場合、試料は、毛細管現象により内腔中に容易に導入される。
被検試料の温度は、溶媒が凍結しない0℃以上であり且つ測定対象物が変性しない温度以下であれば特に限定されないが、例えば4〜40℃であり、好ましくは10〜38℃であり、より好ましくは室温付近(例えば、20〜30℃)である。
キャピラリ内腔中への被検試料の導入から適当な時間後(例えば5、4、3、2又は1分後)に、蛍光物質に対応する励起光を照射し、該蛍光物質からの蛍光を計測する。計測は当該分野において公知の方法で行う。例えば、キャピラリーの外側に配置した検出装置で、必要に応じてフィルターを用いて検出できる。検出装置は、適切な励起光源を有する蛍光顕微鏡、蛍光光度計、CCDカメラ、フォトダイオード、光電子増倍管であり得る。
アッセイにキャピラリーアレイを用いる場合、励起光の照射及び蛍光強度の測定は複数(全てを含む)のキャピラリーに対して同時に行なってもよいし、個別に連続的に又は逐次に行なってもよい。
得られた値又は得られた値と参照値との差分を検量線に内挿して検出対象物の量/濃度を決定することができる。検量線は、被検試料の測定前に予め作成しておいてもよいし、試験試料の測定と同時に行った(既知量の測定対象物を含む)参照試料の測定で得られた値を用いてその場で作成してもよい。参照値は、測定対象物を含まない参照試料から得られた値であり得る。
本発明のアッセイ法においては、被検試料導入後、内腔中へ追加の試薬を導入する必要も、機械的手段(例えば振盪器)によって試料と試薬とを混合・撹拌する必要もなく、また内腔内を洗浄する必要もない。すなわち、本発明のキャピラリー又はキャピラリーアレイを用いるアッセイ法は、被検試料の導入という1ステップで、測定対象物の存在/量を反映したシグナル(蛍光)を測定可能な状態になる。加えて、被検試料中の測定対象物と検出試薬との結合反応は、キャピラリー内腔中(微小空間内)で(例えば渦流による混合・撹拌により)迅速に平衡に達するので、キャピラリー内腔中への被検試料の導入から短時間で(例えば、5分以内、2分以内、1分以内に)、測定対象物の存在量を反映する蛍光シグナルの測定が可能となる。すなわち、迅速なアッセイが可能となる。
好ましくは、第1検出試薬と測定対象物との結合及び/又は第2の検出試薬と測定対象物若しくは第1の検出試薬との結合は、抗原-抗体反応による。すなわち、本発明のアッセイ法は、サンドイッチイムノアッセイ法又は競合イムノアッセイ法である。
以下、測定原理をアッセイ法に応じて説明する。
(1.サンドイッチアッセイ法)
キャピラリー内腔中に被検試料が導入されると、その水性溶媒の作用により、第1及び第2の検出試薬が内腔壁面上に形成された層から被検試料中に遊離すると同時に、該検出試薬と該試料とが迅速に混合される。
遊離した第1及び第2の検出試薬は、被検試料中に測定対象物が存在しなければ、互いに相互作用することはない一方、存在すれば、両試薬が同時に該測定対象物と結合して「第1の検出試薬-測定対象物-第2の検出試薬」複合体を形成する。
結合反応の平衡状態で、複合体の量は、被検試料中に存在する測定対象物の量を反映する。よって、複合体を測定すれば、被検試料中に存在する測定対象物の存在及び/又は量を知ることができる。
複合体を構成している第1及び第2の検出試薬は測定対象物を介して近接して位置する。すなわち、複合体においては、第1又は第2の検出試薬に接合された蛍光物質と第2又は第1の検出試薬が固定されたナノカーボン(消光剤)が近接して位置することになる。一方、複合体を構成していない第1及び第2の検出試薬は、該被検試料中で均一に(互いに離れて)分布することになる。
したがって、励起光照射により蛍光物質は蛍光を発するが、複合体を構成している検出試薬に接合された蛍光物質からの蛍光は、該複合体を構成している検出試薬が固定されたナノカーボンによって消光される。一方、複合体を構成していない検出試薬に接合された蛍光物質からの蛍光は、消光剤としてのナノカーボンの影響を受けない。その結果、測定試料(被検試料と検出試薬の混合物)からの蛍光強度は、該測定試料中の複合体の存在量に応じて減少する。すなわち、蛍光強度(又は消光量/率)は、被検試料中の測定対象物の存在量(濃度)を反映する。よって、測定試料からの蛍光強度に基づいて被検試料中の測定対象物を測定(検出及び/又は定量)できる。
(2.競合アッセイ法)
キャピラリー内腔中に被検試料が導入されると、その水性溶媒の作用により、第1及び第2の検出試薬が内腔壁面上に形成された層から被検試料中に遊離すると同時に、該検出試薬と該試料とが迅速に混合される。
遊離した第1及び第2の検出試薬は、被検試料中に測定対象物が存在しなければ、互いに結合して「第1の検出試薬-第2の検出試薬」複合体を形成する一方、存在すれば、第1の検出試薬の一部は該測定対象物と結合して「第1の検出試薬-測定対象物」複合体を形成し、第2の検出試薬の一部は第1の検出試薬と複合体を形成できない。
結合の平衡状態で、「第1の検出試薬-測定対象物」複合体の量、及び該複合体が形成されたことにより第1の検出試薬と複合体を形成できなくなった第2の検出試薬の量は、被検試料中に存在する測定対象物の量を反映する。ここで、「第1の検出試薬-第2の検出試薬」複合体においては、一方の検出試薬に接合された蛍光物質と他方の検出試薬が固定されたナノカーボン(消光剤)は近接して位置することになるので、励起光照射により蛍光物質が発した蛍光は近接して位置するナノカーボンによって消光される。一方、測定対象物と複合体を構成している第1の検出試薬に接合されているか又は第1の検出試薬と複合体を形成していない第2の検出試薬に接合された蛍光物質からの蛍光は、消光剤としてのナノカーボンの影響を受けず、消光されない。その結果、測定試料(被検試料と試薬の混合物)からの蛍光強度は、被検試料中の測定対象物の存在量(濃度)を反映する。よって、測定試料からの蛍光強度に基づいて被検試料中の測定対象物を測定(検出及び/又は定量)できる。
1.キャピラリーの製造
スルホン化グラフェンの合成
キャピラリーに使用したスルホン化グラフェンを以下のとおり合成した。
(1)1mg/mLの酸化グラフェン水性分散液(ACS Material)2mLに40mg/mLのNaBH4(和光純薬工業)水溶液400μLを添加し混合した後、pHを5%Na2CO3(和光純薬工業)水溶液で9〜10に調整した。
(2)得られた混合液を80℃に昇温させ、1時間撹拌した。
(3)15,000rpmで15分間遠心分離し、上澄み液を捨て、沈殿物を超純水(アリウム61DI/611UV、日本ミリポア(株))で洗浄した。
(4)(3)を合計3回繰り返した。
(5)3回目の遠心分離後、沈殿物を超純水2mLに再分散させた。
(6)270μLのジアゾニウム水溶液(水5mL中23mgのスルファニル酸(和光純薬工業)、9mgのNaNO2及び250μLの1M HCl(和光純薬工業))を添加し、氷上で2時間撹拌した。
(7)(3)を合計3回繰り返した。
(8)3回目の遠心分離後、沈殿物を超純水2mLに再分散させた。
得られた分散液をフーリエ変換赤外分光法(FT/IR-4200、日本分光(株))により分析した(図1)。1040cm-1に付近にS-Phenyl伸縮振動に帰属する小さなピークが、1200cm-1に付近にS-O伸縮振動に帰属するブロードなピークが観察された。よって、酸化グラフェンへのスルホン基の導入、すなわちスルホン化グラフェン(SG)の合成が確認できた。
また、SG分散液は、30分間の放置後でも、酸化グラフェン(GO)分散液と比較して、より良好に分散していることが観察された。
更に、FITC結合抗体(FITC結合抗ヒトIgG(whole molecule)ヤギポリクローナル抗体;SIGMA-ALDRICH Co. LLC)からの蛍光は、SGへの該抗体の固定(固定法は下記と同様)によって、GOへの固定と比較して、より良好に消光することが観察された。すなわち、SGはGOと同等以上の消光能を有することが確認できた。
スルホン化グラフェンへの抗体の固定
SGへの抗体の固定は以下のとおり行った。
(1)1mg/mLのSG水性分散液100μL、4mg/mLのEDC(同仁化学研究所)水溶液300μL及び10mg/mLのNHS(和光純薬工業)水溶液200μLをマイクロチューブ中で混合し、20分間反応させた。
(2)生成した凝集体を1時間の超音波処理により破砕した。
(3)15,000rpmで15分間遠心分離した後、上澄み液を除去した。
(4)4.93mg/mLの抗ヒトIgG(Fc specific)マウスモノクローナル抗体(SIGMA-ALDRICH Co. LLC)50μLを添加し、6時間撹拌した。
(5)15,000rpmで15分間遠心分離した後、上澄み液を除去し、沈殿物を脱イオン水で洗浄した。これを合計3回繰り返した。最終の洗浄後、液量を1mLに調整した。
(6)BSA(SIGMA-ALDRICH Co. LLC)を10mg添加し、3時間撹拌した。
(7)15,000rpmで15分間遠心分離した後、上澄み液を除去し、沈殿物を脱イオン水で洗浄した。これを合計3回繰り返した。
(8)3回目の遠心分離後、100mM HEPES-NaOH緩衝液(pH7.4;HEPES:同仁化学研究所;NaOH:和光純薬工業)に分散させ、抗体固定化SG分散液を得た。
管状中空材内腔壁面への検出試薬の固相化
上記で得られた400μg/mLの抗体固定化SG分散液30μL、HEPES緩衝液中715μg/mLのFITC結合抗ヒトIgG(whole molecule)ヤギポリクローナル抗体10μL及びHEPES緩衝液中25mg/mLのポリエチレングリコール溶液(PEG:分子量20,000;和光純薬工業)10μLをマイクロチューブ中で混合した。
この混合液を管状中空材(外形:一辺300μmの正方形、内腔:一辺100μmの正方形、長さ:8cm;Square Flexible Fused Silica Capillary Tubing、Polymicro technologies社製、WWP100375)の内腔中に導入し、一晩真空乾燥させて、抗ヒトIgG(Fc specific)抗体固定化SG、蛍光標識抗ヒトIgG(whole molecule)抗体及びPEGで構成される水溶性の層を内腔壁面上に形成した。
その後、長手軸に垂直に切断して長さ1cmのキャピラリーを得た。
2.イムノアッセイ
検量線の作成
上記1のとおり作製した6本のキャピラリーに、それぞれ0、10、50、100、500又は1000ng/mLのヒトIgG(SIGMA-ALDRICH Co. LLC)を含むHEPES緩衝液を導入し、蛍光顕微鏡(VB-S20、励起光:465-495nm、(株)KEYENCE)で蛍光画像を取得し、蛍光(510nm〜)の強度を測定した。
得られた蛍光画像を図2に示す(左から、ヒトIgG 0、10、50、100、500、1000ng/mL)。図から明らかなように、導入したヒトIgG濃度の増大に従って蛍光強度の減少(消光)が観察される。この蛍光強度データから検量線を作成した(図3)。図の縦軸は、ヒトIgG 0ng/mLの導入時の蛍光強度に基づいて規格化した強度である。検量線より、作製したキャピラリーの応答濃度域は0〜1000ng/mLであることが分かる。
特異性
それぞれのキャピラリーに、0、10、100又は1000ng/mLのウサギIgG、ヤギIgG又はBSA(いずれもSIGMA-ALDRICH Co. LLC)を含むHEPES緩衝液を導入し、蛍光顕微鏡で蛍光画像を取得し、蛍光強度を測定した。
結果(N=5)を図4に示す。図の縦軸は、0ng/mLの導入時の蛍光強度に基づいて規格化した強度である。図から明らかなように、上記で製造したキャピラリー(本発明のキャピラリー)は、ウサギIgG、ヤギIgG又はBSAに対して濃度依存性の応答を示さず、ヒトIgGの特異的アッセイが可能であることが確認された。
応答時間
それぞれのキャピラリーに、0、10、100又は1000ng/mLのヒトIgGを含むHEPES緩衝液を導入した。蛍光顕微鏡で、被検試料の導入直前から3秒毎に蛍光画像を撮影した(図5)。蛍光強度が秒単位で増大することが観察された。試料導入後1分間の蛍光強度の変化を図6に示す。
プラトー時の蛍光強度変化の95%の強度変化が得られる時間を95%応答時間(t95%)と定義した。図6より、上記で製造したキャピラリー(本発明のキャピラリー)を用いるアッセイ法のt95%は約30秒であると見積もられる。よって、本発明のアッセイ法によれば、試料導入の約30秒後には、測定対象物の存在及び量を反映する蛍光強度の測定が可能になる。
比較例として、400μg/mLの抗体固定化SG分散液1800μL、HEPES緩衝液中1.43mg/mLのFITC結合抗ヒトIgG(whole molecule)ヤギポリクローナル抗体300μL及びHEPES緩衝液中25mg/mLのポリエチレングリコール溶液600μLを蛍光光度セル中で混合した後、0又は100ng/mLのヒトIgGを含むHEPES緩衝液300μLを添加してピペッティングにより十分に撹拌し、蛍光光度計(FP-5200、励起光:495nm、日本分光(株))で蛍光(520nm)の強度を経時的に測定した。
従来のアッセイ法による場合、ピペッティングにより十分に混合・撹拌を行っても、t95%は約12分と見積もられた(図7)。
参考実験
1.43mg/mLのFITC結合抗ヒトIgG(whole molecule)ヤギポリクローナル抗体10μL及びHEPES緩衝液中25mg/mLのポリエチレングリコール溶液10μLをマイクロチューブ中で混合した。
この混合液を内腔径が異なる2種類の管状中空材(外形:一辺300μmの正方形、内腔:一辺100μmの正方形、長さ:8cm、WWP100375;及び外形:一辺300μmの正方形、内腔:一辺50μmの正方形、長さ:8cm、WWP050375、いずれもPolymicro technologies社製)の内腔中に導入し、一晩真空乾燥させて、検出試薬を含んでなる水溶性の層を内腔壁面上に形成した。その後、長手軸に垂直に切断して長さ1cmのキャピラリーを得た。
作製したキャピラリーのそれぞれに、上記の抗体固定化SGと同様の方法で調製した0又は100g/mLの抗原(ヒトIgG)固定化SG分散液を含むHEPES緩衝液を毛細管現象で導入した。被検試料の導入後30秒間の蛍光強度の変化を図8に示す。図より、t95%は、内腔径100μmのキャピラリーについては15秒程度であり、内腔径50μmのものについては8秒程度であると見積もられた。
上記実施例の結果は、本発明のキャピラリーを用いるアッセイ法(本発明のアッセイ法)が、煩雑な操作を要することなく、従来法より短時間に、すなわち、キャピラリー内腔中への被検試料の導入から1分以内に、測定対象物の存在量を反映する蛍光シグナルの測定を可能とすることを確証する。すなわち、本発明のキャピラリーを用いるアッセイ法(本発明のアッセイ法)によれば、高速アッセイが可能となる。
上記の実施形態および実施例は、本発明の理解を容易にするために例示として記載されたものであって、本発明は本明細書または添付図面に記載された具体的な構成および配置のみに限定されるものではないことに留意すべきである。本明細書に記載した具体的構成、手段、方法、および装置は、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、当該分野において公知の他の多くのものと置換可能であることを、当業者は理解すべきであり、そして容易に認識する。

Claims (10)

  1. 測定対象物に結合できる第1の検出試薬を含んでなる層と、該測定対象物に第1の検出試薬と同時に結合できる第2の検出試薬を含んでなる層とをキャピラリーの内腔壁面上に備え、第1及び第2の検出試薬の一方が蛍光標識され、他方がナノカーボンに固定されていることを特徴とする蛍光消光型サンドイッチアッセイ用キャピラリー。
  2. 測定対象物に結合できる第1の検出試薬を含んでなる層と、該第1の検出試薬に前記測定対象物と競合的に結合できる第2の検出試薬を含んでなる層とをキャピラリーの内腔壁面上に備え、第1及び第2の検出試薬の一方が蛍光標識され、他方がナノカーボンに固定されていることを特徴とする蛍光消光型競合アッセイ用キャピラリー。
  3. 結合が抗原-抗体反応による請求項1又は2に記載のキャピラリー。
  4. ナノカーボンがグラフェン若しくはカーボンナノチューブ又はそれらの誘導体から選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載のキャピラリー。
  5. 内腔の横断面が一辺20μm〜700μm長の矩形である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のキャピラリー。
  6. 測定対象物が、癌マーカー、糖尿病マーカー、肥満マーカー、炎症マーカー、動脈硬化性疾患マーカー、腎機能マーカー、HIVマーカー及び肝炎マーカーから選択される疾患マーカーである、請求項1〜5のいずれか1項に記載のキャピラリー。
  7. 測定対象物がそれぞれ異なる複数の請求項1〜6のいずれか1項に記載のキャピラリーを含んでなることを特徴とする蛍光消光型アッセイ用キャピラリーアレイ。
  8. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のキャピラリー又は請求項7に記載のキャピラリーアレイの各キャピラリーの内腔中に被検試料を導入する工程を含んでなることを特徴とする蛍光消光型アッセイ法。
  9. 被検試料の導入から5分以内に蛍光強度を測定する請求項8に記載のアッセイ法。
  10. 被検試料の導入から2分以内に蛍光強度を測定する請求項8に記載のアッセイ法。
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