JP2015213942A - せん断加工方法および装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明に係るせん断加工方法は、被加工材をパンチとダイによりせん断加工する方法であって、前記パンチと前記ダイで前記被加工材をせん断加工することと、前記被加工材の表面であって前記せん断加工により得られたせん断縁から所定の距離だけ離れた部位に凹みを生じさせる圧縮加工することを、1回のせん断加工工程で行うことを特徴とするものである。
【選択図】 図1
Description
本明細書におけるせん断加工とは、広義のせん断加工を意味しており、工具を用いて、金属板を塑性変形(せん断変形)させて、材料の破壊までもっていき、所望の形状・寸法に材料を切断する加工方法をいい、プレス機械を用いて行う打抜き加工を含む。
しかしながら、この方法は打抜き孔加工と冷間圧延加工の2工程を必要とするために生産性が低下してしまう。
しかしながら、この方法も打抜き孔加工とコイニング加工の2工程を必要とするために生産性が低下してしまう。
また、ダイス面の切刃部分は被加工材のせん断に用いられるとともに、せん断加工後に引き続き段付ポンチと協働して行われるコイニング加工の際に切刃エッジ部に高荷重が付与されるため、工具寿命の低減が避けられないという問題もあった。
前記パンチが、前記パンチにおける前記切り刃の外側に、前記ダイと協働して前記被加工材に凹みを生じさせる圧縮加工部を有していることを特徴とするものである。
以下、各構成を詳細に説明する。
パンチ3は、全体形状が円柱体からなり、一端にダイ5と協働して被加工材11をせん断加工(打ち抜き加工)するパンチ切刃3aを有し、このパンチ切刃3aの外側に被加工材11を圧縮加工する圧縮加工部3bが設けられている。
また、パンチ3の他端側には、端部に向かって拡径するテーパ部3cが形成されている。
圧縮加工部3bの高さは、パンチ切刃3aの高さよりも低くなっており、せん断加工の際に、パンチ切刃3aが被加工材11に当接した後に被加工材11に当接するようになっている。
凹み部11bが形成されることで、当該部位に圧縮の残留応力が生ずると共に加工硬化が生じ、せん断加工部(打ち抜き加工部)の疲労強度を高めることができる。
凹み部11bの位置、深さ、大きさは疲労強度向上と密接に関連しているので、この点について以下、説明する。
距離L、深さH、直径φは板厚tとの関係で以下のような範囲とすることが望ましい。
距離Lが0.28tより短いと、圧縮塑性加工によるせん断縁側への被加工材11の材料塑性流動が大きく、せん断縁がパンチ切刃3aを押す力が大きくなり過ぎてパンチ切刃3aの寿命が短くなる。逆に、距離Lが1.20tより長いと、せん断加工部の疲労強度を向上させる十分な効果が得られない。
凹み部11bの位置、深さ、大きさを上記の範囲に設定することによる効果は後述の実施例で実証している。
圧縮加工部3bの先端形状は半球状のものに限られず、例えば矩形状、円筒形状、かまぼこ形状などであってもよい。
ダイ5は、パンチ3のパンチ切刃3aに対応するダイ切刃5aを有している。
ダイ5の被加工材11が載置される面は平坦であるため板押え7を用いることができ、安定的に打ち抜き加工することができる。
また、ダイ切刃5aはせん断加工のみに使用され、圧縮残留応力の付与には関係しないので、特許文献3に示されたもののように、ダイ切刃5aに負荷が集中することがなく工具寿命が短くなることもない。
板押え7は、ダイ5と協働して被加工材11をせん断加工する際に押圧して、加工の際に生じる跳ね上がりを防止するためのものである。
板押え7は、図1、図2に示すように、全体形状が円筒体からなり、その内側にパンチ3が挿入されるようになっている。
板押え7は、被加工材11を押圧する押圧部8と、成形荷重を利用して押圧部8を被加工材11に一定の力で押し付ける押え力調整部9を備えている。
荷重受け部17の内周面は、パンチ3のテーパ部3cに当接する傾斜面17aになっており、パンチ3に付加された成形荷重をテーパ部3cを介して受けるようになっている。
被加工材11を板押え7の押圧部8とダイ5で挟んだ後(図6(a)参照)、パンチ3をダイ5に近づく方向に移動させる。このとき、被加工材11はバネ15の付勢力による所定の押圧力で押圧部8によって押圧されて安定的に保持される(図6(a)参照)。
パンチ切刃3aが被加工材11に当接し、被加工材11が打ち抜き加工されて打ち抜き穴11aが形成される(図6(b)参照)。
パンチ切刃3aが被加工材11に当接した直後に、圧縮加工部3bが被加工材11における打ち抜き穴11aの近傍に当接して圧縮加工を行い、被加工材11の表面に凹み部11bが形成される(図4及び図6(c)参照)。
また、上述したように、ダイ5の被加工材11が載置される面を平坦にすることができ、板押え7を用いることができ、安定的に打ち抜き加工を行うことができる。
なお、付勢手段19はバネに限られたものではなく、ガス圧や油圧などを用いてもよい。
圧縮加工部3bは、常時はパンチ3に対して下方にスライドした状態にあり、この状態では、図8に示すように、圧縮加工部3bの上端面とパンチ3との間に隙間Sが形成されている。
打ち抜き加工の際には、圧縮加工部3bの先端が被加工材11の表面に当接した後、圧縮加工部3bがパンチ3内に隙間Sの分だけ移動した後、圧縮加工が開始される。このような構造にすることで、隙間Sにスペーサを入れる等することで、形成する凹み部11bの深さHや直径φを容易に調整することができる。
実験は、図1に示すせん断加工装置1を用いて、パンチ3の圧縮加工部3bを変更して試験片をせん断加工し、せん断加工後の試験片について疲労試験を行い、その結果を評価するというものである。
圧縮加工部3bは、形成される凹み部11bについて距離L、深さH及び直径φ(図5参照)が変わるように、位置や高さ等を設定した。
試験片の大きさは90mm×30mmとし、板厚が1.4mm、2.3mm、2.9mmの1180MPa級冷延鋼板からそれぞれ採取した。
本発明例4〜6は、板厚tと凹み部11bの深さHの関係を確認するためのものであり、試験片の板厚t=2.3mm、深さHを0.32mm、0.55mm、0.80mmとし、いずれもH/t=0.13〜0.35の範囲内とした。その他の条件は共通であり、距離L=0.8mm、直径φ=3.3mm、凹み形状は円筒(圧縮面形状φ3.3mm)とした。
本発明例7〜9は、板厚tと凹み部11bの直径φの関係を確認するためのものであり、試験片の板厚t=2.9mm、直径φを2.7mm、4.0mm、10.0mmとし、いずれもφ/t=0.9〜3.5の範囲内とした。その他の条件は共通であり、距離L=1.5mm、深さH=0.60mm、凹み形状は半球(曲率半径2.5mm)とした。
本発明例4〜6の比較例として、本発明例4〜6(板厚t=2.3mm)の場合よりも深さHが浅いものを比較例12(深さH=0.20mm、H/t=0.09)とし、逆に深いものを比較例13(深さH=1.20mm、H/t=0.52)とした。
本発明例7〜9の比較例として、本発明例7〜9(板厚t=2.9mm)の場合よりも直径φが小さいものを比較例14(直径φ=2.0mm、φ/t=0.7)及び比較例15(直径φ=1.3mm、φ/t=0.4)とした。
上記各条件をまとめたものを表1に示す。
図9は本発明例1〜3及び比較例11についてのグラフ、図10は本発明例4〜6、比較例12及び比較例13についてのグラフ、図11は本発明例7〜9及び比較例15についてのグラフである。図9〜図11において、縦軸は応力振幅(MPa)を表し、横軸は寿命(サイクル)を表している。
図9に示すように、比較例11は、応力振幅が400MPaの場合で40万サイクル、応力振幅が450MPaの場合で16万サイクル、応力振幅が500MPaの場合で10万サイクルであった。
これに対して、本発明例1〜3は、応力振幅が400MPaの場合で170万サイクル〜200万サイクル、応力振幅が450MPaの場合で40万サイクル〜60万サイクル、応力振幅が500MPaの場合で15万サイクル〜18万サイクルであり、疲労特性が大幅に向上している。
また、本発明例1〜3の中では、距離Lが発明例1、3の中間の値である発明例2の疲労強度が最も高くなっている。
このことから、L/tを0.28〜1.20の範囲内とすることが望ましいことが実証された。
図10に示すように、比較例12は、応力振幅が400MPaの場合で42万サイクル、応力振幅が450MPaの場合で15万サイクル、応力振幅が500MPaの場合で9万サイクルであった。また、比較例13は、応力振幅が400MPaの場合で30万サイクル、応力振幅が450MPaの場合で13万サイクル、応力振幅が500MPaの場合で9万5千サイクルであった。
これに対して、本発明例4〜6は、応力振幅が400MPaの場合で170万サイクル〜300万サイクル、応力振幅が450MPaの場合で40万サイクル〜80万サイクル、応力振幅が500MPaの場合で18万サイクル〜20万サイクルであり、疲労特性が大幅に向上している。
また、本発明例4〜6の中では、深さHが発明例4、6の中間の値である発明例5の疲労強度が最も高くなっている。
このことから、H/tを0.13〜0.35の範囲内とすることが望ましいことが実証された。
図11に示すように、比較例15は、応力振幅が400MPaの場合で35万サイクル、応力振幅が450MPaの場合で16万5千サイクル、応力振幅が500MPaの場合で10万5千サイクルであった。
これに対して、本発明例7〜9は、応力振幅が400MPaの場合で165万サイクル〜280万サイクル、応力振幅が450MPaの場合で45万サイクル〜70万サイクル、応力振幅が500MPaの場合で15万サイクル〜19万サイクルであり、疲労特性が大幅に向上している。
また、本発明例7〜9の中では、直径φが発明例7、9の中間の値である発明例8の疲労強度が最も高くなっている。
このことから、φ/tを0.9〜3.5の範囲内とすることが望ましいことが実証された。
3 パンチ
3a パンチ切刃
3b 圧縮加工部
3c テーパ部
5 ダイ
5a ダイ切刃
7 板押え
8 押圧部
9 押え力調整部
11 被加工材
11a 打ち抜き穴
11b 凹み部
11c せん断縁
13 押圧リング
15 バネ
17 荷重受け部
17a 傾斜面
19 付勢手段
Claims (12)
- 被加工材をパンチとダイによりせん断加工する方法であって、前記パンチと前記ダイで前記被加工材をせん断加工することと、前記被加工材の表面であって前記せん断加工により得られたせん断縁から所定の距離だけ離れた部位に凹みを生じさせる圧縮加工することを、1回のせん断加工工程で行うことを特徴とするせん断加工方法。
- 前記せん断縁から前記凹み部の縁までの距離Lを、被加工材の板厚tとの関係で、L=0.28t〜1.2tに設定したことを特徴とする請求項1記載のせん断加工方法。
- 前記凹みの深さHを、被加工材の板厚tとの関係で、H=0.13t〜0.35tに設定したことを特徴とする請求項1又は2に記載のせん断加工方法。
- 前記凹みの直径φを、被加工材の板厚tとの関係で、φ=0.9t〜3.5tに設定したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のせん断加工方法。
- 前記せん断加工を、前記ダイと板押えによって前記被加工材を押えて行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のせん断加工方法。
- 被加工材をせん断加工する切り刃を有するパンチと、ダイとを有し、前記被加工材をせん断加工するせん断加工装置であって、
前記パンチが、前記パンチにおける前記切り刃の外側に、前記ダイと協働して前記被加工材に凹みを生じさせる圧縮加工部を有していることを特徴とするせん断加工装置。 - 前記圧縮加工部は、前記パンチに対して相対移動可能に設けられ、圧縮加工強度及び/又は加工深さが調整可能になっていることを特徴とする請求項6記載のせん断加工装置。
- 前記せん断縁から前記凹み部の縁までの距離Lが、被加工材の板厚tとの関係で、L=0.28t〜1.2tになるように前記圧縮加工部の位置を設定したことを特徴とする請求項6又は7記載のせん断加工装置。
- 前記凹みの深さHが、被加工材の板厚tとの関係で、H=0.13t〜0.35tになるように前記圧縮加工部の位置を設定したことを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載のせん断加工装置。
- 前記凹みの直径φが、被加工材の板厚tとの関係で、φ=0.9t〜3.5tになるように前記圧縮加工部の位置を設定したことを特徴とする請求項6乃至9のいずれかに記載のせん断加工装置。
- せん断加工を行う際に、前記ダイと協働して前記被加工材を押える板押えを備えていることを特徴とする請求項6乃至10のいずれかに記載のせん断加工装置。
- 前記板押えは、前記パンチに付加されるせん断加工力によって作動し、被加工材を押える押え力が所定の圧力になるように調整する押え力調整部を備えていることを特徴とする請求項11記載のせん断加工装置。
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