JP2015205972A - 溶解パルプ - Google Patents

溶解パルプ Download PDF

Info

Publication number
JP2015205972A
JP2015205972A JP2014086236A JP2014086236A JP2015205972A JP 2015205972 A JP2015205972 A JP 2015205972A JP 2014086236 A JP2014086236 A JP 2014086236A JP 2014086236 A JP2014086236 A JP 2014086236A JP 2015205972 A JP2015205972 A JP 2015205972A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
pulp
mass
surfactant
viscose
cooking
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2014086236A
Other languages
English (en)
Inventor
祐治 佐波
Yuji Sawa
祐治 佐波
友朗 佐々木
Tomoaki Sasaki
友朗 佐々木
祥平 眞田
Shohei SANADA
祥平 眞田
木皿 幸紀
Yukinori Kizara
幸紀 木皿
洋介 内田
Yosuke Uchida
洋介 内田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Oji Holdings Corp
Original Assignee
Oji Holdings Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Oji Holdings Corp filed Critical Oji Holdings Corp
Priority to JP2014086236A priority Critical patent/JP2015205972A/ja
Publication of JP2015205972A publication Critical patent/JP2015205972A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Abstract

【課題】レーヨンの原料となるビスコースの生産に適した溶解パルプを提供する。【解決手段】リグノセルロースを原料とする溶解パルプであって、前記溶解パルプに含まれるαセルロースが92質量%以上、パルプ粘度が8mPa・s以上13mPa・s以下であり、且つ、界面活性剤を含有することを特徴とする溶解パルプ。界面活性剤の含有量が、パルプ絶乾重量あたり0.01質量%よりも多く、1.0質量%未満である。溶解パルプがシート状に形成され、シートの少なくとも片面の表層部分に界面活性剤が含まれている。【選択図】なし

Description

本発明は、レーヨンの原料となるビスコースの製造に適した高い品質を有する溶解パルプに関する。
リグノセルロース物質から溶解パルプを製造するには、リグノセルロース物質中のヘミセルロースとリグニンを選択的に除去し、セルロース純度を高める必要がある。セルロース純度を表す指標としては、一般にα−セルロース含量が用いられ、値が大きいほど、高品質の溶解パルプであるとされている。溶解パルプの製造方法としては、古くから酸性サルファイト蒸解法および前加水分解−クラフト蒸解法の二法が知られている。酸性サルファイト蒸解法では、リグノセルロース物質中の多くのヘミセルロースとリグニンを蒸解工程で一度に除去するのに対し、前加水分解−クラフト蒸解法は前加水分解工程では大部分のヘミセルロースを酸加水分解して除去する。続くクラフト蒸解で少量のヘミセルロースと大部分のリグニンを除去する。前加水分解工程では、リグノセルロース物質に水を加えて加熱するだけで、ヘミセルロース中のアセチル基が脱離して酢酸を生成し、自動的に酸性状態となり、酸加水分解が進むため、一般には酸を外から添加することなく行なわれる。酸性サルファイト蒸解法と前加水分解−クラフト蒸解法を比較すると、溶解パルプを製造することだけに焦点をあてた場合、酸性サルファイト蒸解の方が一工程でヘミセルロースとリグニンを除去できるため効率的と言える。しかし、廃棄物のヘミセルロース、リグニンをそれぞれ分離して有効利用することにも焦点をあてた場合には、前加水分解−クラフト蒸解法の方が有利ということになる。近年、バイオマス原料であるリグノセルロース物質中のセルロース、ヘミセルロース、リグニンを分離して、それぞれから価値の高い物質を製造することはバイオリファイナリーと呼ばれ、注目度が高まってきており、前加水分解−クラフト蒸解法の重要性が再認識されてきている。
溶解パルプからビスコースを製造し、ビスコースからレーヨンを製造することができる。溶解パルプからビスコースを製造する方法において、溶解パルプに界面活性剤を添加すると、溶解パルプの濾過性が改善することが報告されている(特許文献1)。しかし、高い強度を有するレーヨンの生産に適したビスコースを製造するためには、ビスコースの原料となる溶解パルプの品質(αセルロースの含量、粘度等)が影響するものと推測される。しかし、レーヨンの製造に適した高い品質を有するビスコースの原料となる溶解パルプについては報告されていない。
特開2014−37482号公報
本発明は、ビスコースの原料となる高い品質を有する溶解パルプを提供することを課題とする。
本発明者らは、リグノセルロースを含有する原料から品質の高いビスコースの製造に適した溶解パルプの提供ができることを見出し、本発明を完成するに至った。
本願発明は以下の発明を包含する。
(1)リグノセルロースを原料とする溶解パルプであって、前記溶解パルプに含まれるαセルロースが92質量%以上、パルプ粘度が8mPa・s以上13mPa・s以下であり、且つ、界面活性剤を含有することを特徴とする溶解パルプ。
(2)界面活性剤の含有量が、パルプ絶乾重量あたり0.01質量%よりも多く、1.0質量%未満であることを特徴とする(1)に記載の溶解パルプ。
(3)溶解パルプがシート状に形成され、シートの少なくとも片面の表層部分に界面活性剤が含まれていることを特徴とする(1)または(2)に記載の溶解パルプ。
(4)パルプ粘度が8mPa・s以上10mPa・s以下であることを特徴とする(1)から(3)のいずれか1項に記載の溶解パルプ。
(5)リグノセルロースが木材であることを特徴とする(1)から(4)のいずれか1項に記載の溶解パルプ。
(6)原料となる木材が、広葉樹材であることを特徴とする(1)から(5)のいずれか1項に記載の溶解パルプ。
本発明により、リグノセルロースを含有する原料からビスコースの原料となる高い品質を有する溶解パルプの提供が可能となった。
本発明の溶解パルプに含まれるαセルロース含量は、92質量%以上であり、93質量%以上であることが好ましく、94質量%以上であることがさらに好ましい。αセルロースを92質量%以上とすることにより、溶解パルプの溶解性が向上し、効率的にビスコースを生産することができる。
溶解パルプの粘度は、8mPa・s以上13mPa・s以下であり、8mPa・s以上12mPa・s以下がさらに好ましく、8mPa・s以上10mPa・s以下が特に好ましい。ここで粘度とは、J TAPPI No.44に規定されている相対粘度であり、パルプを銅エチレンジアミン水溶液で溶解したときの比較粘度であって、重合度の指標として用いられる。溶解パルプの粘度が8mPa・s未満の場合、すなわち重合度が低い場合、得られるビスコースレーヨンの重合度も低くなってしまい、このようなレーヨン繊維は強度が低くなるため、強度を重要視する用途に適用する場合において好ましくない。またパルプ粘度が8mPa・s未満の場合、ビスコース溶液の粘性が落ち、紡糸時にトラブルが生じる場合があり、安定的な生産が困難になるため好ましくない。一方、パルプ粘度が13mPa・sよりも高い場合、ビスコース溶液の流動性が悪くなり、紡糸速度が遅くなって効率的なレーヨン生産が困難となるため好ましくない。
前記溶解パルプに界面活性剤を添加し、溶解パルプに界面活性剤を含有させる。溶解パルプに界面活性剤を含有させることにより、溶解パルプの溶解性が向上し、効率的にビスコースを生産することができる。用いる界面活性剤の種類は特に限定されないが、ノニオン性界面活性剤を用いることが好ましい。界面活性剤の最低含有量は特に限定されるものではないが、パルプ絶乾重量あたり0.01質量%よりも多いことが好ましく、0.03質量%よりも多いことがさらに好ましく、0.05質量%よりも多いことが特に好ましい。一方、界面活性剤の最大含有量は、特に限定されるものではないが、1.0質量%未満が好ましく、0.5質量%未満がさらに好ましく、0.2質量%未満が特に好ましい。前記濃度範囲の界面活性剤を含有させることにより、溶解パルプからビスコースを生産する際に、溶解パルプ及びビスコースの溶解性が向上し、効率的にビスコースを生産することが可能となる。界面活性剤の含有量が、0.01質量%以下であると溶解性が低減するため好ましくない。一方、界面活性剤の含有量が1.0質量%を超えると効果(溶解性)が頭打ちとなり、コストが上昇するため好ましくない。また、界面活性剤の過剰の添加は、溶解性を逆に悪化させる。
本発明では、前記溶解パルプをシート状にすることもできる。シート状にする場合は、シート全体に界面活性剤を含有させることもできるし、シートの少なくとも片面の表層部分に界面活性剤を含有させることもできる。界面活性剤の添加方法は特に限定されない。パルプ繊維を含む懸濁液に界面活性剤を内添し、その後、シート状に成形してもよいし、パルプをシート状に成形した後、界面活性剤を外添してもよい。外添することにより、シートの表層部分に界面活性剤を含有させることができる。
本発明で使用できるリグノセルロース物質は、木材、非木材のいずれでもよいが、生産効率を考慮すると、容積重が高い木材が好適に用いられる。木材の中では、一般に針葉樹よりも広葉樹材の方が容積重が高く、好適であり、さらに広葉樹の中でも容積重が高い一部のユーカリやアカシアが好適に用いられる。該当する広葉樹としては、ユーカリ・グロブラス、ユーカリ・グランディス、ユーカリ・ユーログランディス、ユーカリ・ペリータ、ユーカリ・ブラシアーナ、アカシア・メランシ等を挙げることができる。特に容積重の高いユーカリ・ペリータがよいが、特に限定されるものではない。容積重の値で表現すると、450〜700kg/mのものがよく、さらに好ましくは500〜650kg/mのものである。容積重が450kg/mよりも低い材は、前記のようにパルプの生産効率の面からは不利である。一方、容積重が700kg/mよりも高い材は、前加水分解やアルカリ蒸解時の薬液浸透が不十分と成りやすく、結果としてパルプ品質が低下する可能性があるため、不利である。言うまでもなく、広葉樹、針葉樹、非木材をそれぞれ単独で使用することもできるし、組み合わせて使用することもできるし、その組み合わせは限定されるものではない。
本発明の溶解パルプは、クラフト蒸解法によって好適に製造される。以下に、クラフト蒸解法による溶解パルプの製造方法を説明するが、これに限定さるものではない。なお、溶解パルプ製造における種々条件を適宜調整することにより、所望のαセルロース含有量、粘度に調整することができる。
本発明では、まずリグノセルロース物質を水の存在下で、加温して前加水分解処理を行う。ここで、リグノセルロース物質に対する水の量(液比)は、1.0〜10、好ましくは1.5〜5.0である。液比が1.0より少ない場合には、水が不足して加水分解が十分に進まない上に反応が不均一となるので適さない。10より高い場合には、所望の温度まで加熱するのに要する熱量が多くなり、経済的ではないので適さない。水の添加方法としては、特に限定されるものではなく、外部から水を添加しても良いし、リグノセルロース物質に元々含まれる水を利用しても良いし、加熱時に蒸気を使用する場合には蒸気に含まれる水を利用しても良い。また、水と共にアルカリ、酸、キレート剤等、多糖の加水分解を直接的、間接的に補助する薬品を添加することもできる。本発明の前加水分解の強度はPファクターとして200〜1000であり、温度は140〜200℃、好ましくは160〜170℃で、処理時間は処理温度に対応して決定される。なお、Pファクターは前加水分解時の温度と時間の積であり、式1として表される。
Figure 2015205972
<式1>




Pファクターが200より低い場合には、ヘミセルロースの酸加水分解が十分でなく、その後のアルカリ蒸解を行っても、パルプのセルロース純度を十分に高められないので適さない。Pファクターが1000より高い場合には、セルロースの酸加水分解が進んでしまい、パルプのセルロース純度を十分に高められない上に、パルプ粘度が低くなりすぎ、さらにはパルプ収率も低くなるので適さない。前加水分解温度が140℃よりも低い場合には反応時間を10時間以上にする必要があり、巨大な反応容器を準備する必要があることから経済的ではないので適さない。逆に200℃よりも高くすると、場合によっては反応時間を0.1時間以下にする必要があり、反応の制御が困難となる上にそのような熱条件に耐え得る装置の材質は高価になるため、経済的にも適さない。
前加水分解工程で用いる装置は、リグノセルロース物質を含水状態の加圧状態にて所望の時間の間、保持できるものであればよく、特に限定されるものではないが、好適には汎用の連続蒸解釜、バッチ釜、等が用いられる。本発明の前加水分解工程では、反応終了後、脱水あるいは希釈洗浄、脱水して、次のアルカリ蒸解工程に送られる。なお、前加水分解後の排水は、フラッシュタンクに送り、ガス層と液層に分け、ガス層に多く含まれるフルルラール類を抽出して利用し、液層に多く含まれるヘミセルロースの分解物を抽出して利用することが可能である。
本発明のアルカリ蒸解に用いられる装置は、特に限定されるものではないが、好適には汎用の連続蒸解釜、バッチ釜、等が用いられる。アルカリ蒸解法としては、クラフト蒸解、ポリサルファイド蒸解、ソーダ蒸解、アルカリサルファイト蒸解等の公知の蒸解法を用いることができるが、パルプ品質、エネルギー効率等を考慮すると、クラフト蒸解法が好適に用いられる。例えば、木材をクラフト蒸解する場合、クラフト蒸解液の硫化度は5〜75%が好ましく、20〜35%がより好ましい。有効アルカリ添加率は絶乾木材質量当たり5〜30質量%が好ましく、10〜25質量%がより好ましい。蒸解温度は140〜170℃で、蒸解白液を分割で添加する蒸解法でもよく、その方式は特に問わない。
蒸解に際して、使用する蒸解液に蒸解助剤として、公知の環状ケト化合物、例えばベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノン、アントロン、フェナントロキノンおよび前記キノン系化合物のアルキル、アミノ等の核置換体、或いは前記キノン系化合物の還元型であるアントラヒドロキノンのようなヒドロキノン系化合物、さらにはディールスアルダー法によるアントラキノン合成法の中間体として得られる安定な化合物である9,10−ジケトヒドロアントラセン化合物等から選ばれた1種或いは2種以上が添加されてもよく、その添加率は木材チップの絶乾質量当たり0.001〜1.0質量%である。
蒸解後のカッパー価は特に限定されるものではないが、パルプ品質やその後の漂白性等を考慮すると、例えば広葉樹を原料とした場合にはカッパー価は6〜18が好ましく、針葉樹を原料とした場合にはカッパー価は20〜35が好ましい。
本発明では、公知のアルカリ蒸解法により得られた未漂パルプは洗浄、粗選および精選工程を経て、公知の漂白法で漂白処理される。好適には、まず酸素脱リグニン法により脱リグニンされる。本発明に使用される酸素脱リグニン法は、中濃度法あるいは高濃度法がそのまま適用できるが、パルプ濃度が8〜15質量%で行われる中濃度法が特殊な脱水装置を必要とせず、操業性がよいため好ましい。酸素脱リグニン法に用いるアルカリとしては苛性ソーダあるいは酸化されたクラフト白液を使用することができ、酸素ガスとしては、深冷分離法からの酸素、PSA(Pressure Swing Adsorption)からの酸素、VSA(Vacuum Swing Adsorption)からの酸素等が使用できる。前記酸素ガスとアルカリは中濃度ミキサーにおいて中濃度のパルプスラリーに添加され混合が十分に行われた後、加圧下でパルプ、酸素およびアルカリの混合物を一定時間保持できる反応塔へ送られ、脱リグニンされる。酸素ガスの添加率は、絶乾パルプ質量当たり0.5〜3質量%、アルカリ添加率は0.5〜4質量%、反応温度は80〜120℃、反応時間は15〜100分、パルプ濃度は8〜15質量%であり、この他の条件は公知のものが適用できる。本発明では、酸素脱リグニン工程において、上記酸素脱リグニンを連続して複数回行い、できる限り脱リグニンを進めるのが好ましい実施形態である。酸素脱リグニンを施されたパルプは洗浄段へ送られる。
本発明では、酸素脱リグニン後の洗浄段に限らず、漂白段毎に洗浄段を設けるのが好ましい。洗浄段で使用される洗浄機としては、プレッシャーディフューザー、ディフュージョンウオッシャー、加圧型ドラムウオッシャー、水平長網型ウオッシャー、プレス洗浄機等を挙げることができ、特に限定されるものではない。各洗浄段では、一機の洗浄機でまかなうこともできるし、複数の洗浄機を使用することもできる。本発明においては、各洗浄段の洗浄水にアルカリ、酸、キレート剤、界面活性剤等の洗浄助剤を添加することもできる。また、洗浄排水を前段の洗浄段の洗浄水として再利用する向流洗浄を行なうこともできる。
本発明では、未晒パルプは、好ましくは酸素脱リグニン工程を経て、多段漂白工程へ送られる。本発明の多段漂白工程では、二酸化塩素(D)、アルカリ(E)、酸素(O)、過酸化水素(P)、オゾン(Z)といった公知のECF漂白段を組合せて使用できる。各漂白段後には前述の洗浄段を設けることができる。また、多段漂白工程中に、高温酸処理段(A)や酸洗浄段、高温二酸化塩素漂白段、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)やジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)等によるキレート剤処理段等を導入することもできる。本発明の多段漂白工程では、パルプの白色度が85〜92%ISOになるように、漂白される。白色度は87〜92%ISOが好ましく、89〜92%ISOがさらに好ましい。白色度が85%ISO未満の場合には、その後の酸性下での過酸化物添加処理を行っても白色度が90%ISOに到達せず、溶解パルプとしての品質が低くなるので適さない。白色度が92%ISOよりも高い場合には、多段漂白工程で使用する漂白薬品量が多くなりすぎて経済的ではない上に、場合によっては溶解パルプに余計な官能基が導入され、溶解パルプの品質が低下するので適さない。
本発明では、多段漂白工程後、酸性下で過酸化物添加処理が行われる。本発明の酸性下での過酸化物添加処理は、パルプ濃度は1〜40質量%が好ましく、8〜15質量%がより好ましい。pHは1〜5が好ましく、2〜4がより好ましい。温度は30〜95℃が好ましく、50〜90℃がより好ましい。パルプ濃度が1質量%未満の場合は、pH調整用に添加する酸が多くなりすぎて経済的ではないため適さず、40質量%より高い場合には、パルプと薬品の混合が不十分となり、反応が不均一になるので適さない。pHは、1より低い場合には反応容器が腐食しやすくなり、5より高い場合には灰分除去効果が不十分になるため適さない。反応温度は、30℃より低い場合にはパルプの粘度の低下効果が不十分となり、95℃より高い場合には昇温に多大なエネルギーが必要となり、経済的でないので適さない。
本発明の、酸性化での過酸化物添加処理では、酸性状態にするために酸を添加することができる。酸としては、蟻酸、蓚酸、酢酸等の有機酸、硫酸、塩酸、硝酸等の無機酸のいずれでもよく、特に限定されるものではないが、好適には比較的安価な硫酸、塩酸等が使用される。酸の添加率としては特に限定されるものではないが、対パルプ絶乾重量あたり0.01〜2質量%、好ましくは0.1〜1.0質量%である。本発明の酸性化での過酸化物添加処理で使用される過酸化物としては、有機過酸、無機過酸のいずれでもよく、特に限定されるものではないが、好適には比較的安価で、分解後も環境負荷のない過酸化水素が使用される。例えば、過酸化水素の場合、添加率は対パルプ絶乾重量あたり0.01〜2質量%、好ましくは0.1〜1.0質量%である。添加率が0.01質量%未満の場合には添加効果がほとんど見られず、2質量%以上になると反応が頭打ちとなりコストが上昇するため好ましくない。処理時間は、10分以上、好ましくは30分〜180分であるが、時間については特に限定されない。なお、過酸化物添加によるパルプ粘度の低減効果は、処理対象のセルロース純度が高いために過酸化物とセルロースの反応頻度が高くなり、解重合され易いためであり、灰分低減効果は、例えば鉄のような元素が酸化され、水に溶解し、除去され易くなるためであると考えられる。
前記で得られた溶解パルプからレーヨンの原料となるビスコースを製造することができる。ビスコースを製造する方法は、特に限定されない。本発明の溶解パルプを原料として製造したビスコースは、溶解性が高く、適切な粘度が得られるという特徴を有する。溶解性が高いことによって、効率的にビスコースを製造することができる。また粘度を適切な範囲にすることによって、低粘度による紡糸時のトラブルや、高粘度による紡糸速度の低下を未然に防止し、効率的にビスコースを製造することができる。さらに適切な粘度範囲、すなわち適切な重合度範囲を有するビスコースが得られるため、レーヨン繊維に必要な強度を維持でき、特に強度を重要視される用途において好適に用いられる。なお、本発明の溶解パルプは、αセルロースが高いため、一般的なビスコースレーヨン用途をはじめ、特殊レーヨン、ケミカル、医療用途等、その他、様々なセルロース系誘導体の原料として広範に利用することができる。
実施例
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例における薬品の添加率は絶乾パルプ質量当たりの質量%示す。
実施例1
<溶解パルプの調製>
ユーカリ・ペリータ材チップを絶乾質量で300g採取し、水道水10リットルに一晩浸漬した。その後、チップを取り出して400メッシュの篩に空け、濾別した後、この脱水後のチップを2.5リットル容量のオートクレーブに入れ、液比が3になるように水道水を加えた後、165℃で60分間、前加水分解処理した。この時のPファクターは406であった。前加水分解後、オートクレーブの脱気コックから廃ガスを抜き出し、オートクレーブ内の圧力が0になったことを確認した後、処理後のチップを400メッシュの篩に空け、濾別した。濾別後のチップを絶乾質量で200g採取し、再度2.5リットル容量のオートクレーブに入れ、液比5、絶乾チップ質量当たり活性アルカリ16%、蒸解液の硫化度28%、蒸解温度165℃、蒸解時間50分の条件下でクラフト蒸解を行なった。蒸解後、黒液とパルプを分離し、パルプを8カットのスクリーンプレートを備えたフラットスクリーンで精選して、未晒パルプを絶乾質量で120.0gを得た。
前記未漂白クラフトパルプの絶乾質量で70.0gを採取し、絶乾パルプ質量当たり苛性ソーダを2.0質量%添加し、次いでイオン交換水で希釈してパルプ濃度を10質量%に調整した。前記パルプ懸濁液を間接加熱式オートクレーブに入れ、99.9%の市販の圧縮酸素ガスを注入してゲージ圧力0.5MPaで、100℃で60分間、酸素脱リグニンを行った。酸素漂白終了後、ゲージ圧力が0.05MPa以下になるまで減圧し、パルプをオートクレーブから取り出し、イオン交換水7リットルを用いて洗浄、脱水した。
前記アルカリ酸素脱リグニン後のクラフトパルプを絶乾質量で60g採取し、プラスチック袋に入れ、イオン交換水を用いてパルプ濃度を10質量%に調整した後、絶乾パルプ質量当たり1.0質量%の二酸化塩素を添加し、温度が70℃の恒温水槽に60分間浸漬してD0段処理を行った。得られたパルプをイオン交換水で3質量%に希釈した後、ブフナーロートで脱水、洗浄した。前記D0段後のパルプをプラスチック袋に入れ、イオン交換水を加えてパルプ濃度を10質量%に調整した後、絶乾パルプ質量当たり苛性ソーダを1.0質量%、過酸化水素0.2質量%を添加してよく混合した後、温度が70℃の恒温水槽に90分間浸漬してE/P段処理を行った。得られたパルプをイオン交換水で3質量%に希釈した後、ブフナーロートで脱水、洗浄した。
前記E/P段後のパルプをプラスチック袋に入れ、イオン交換水を用いてパルプ濃度10質量%に調整した後、絶乾パルプ質量当たり二酸化塩素を0.3質量%添加し、温度が70℃の恒温水槽に60分間浸漬し、D1段の漂白を行った。得られたパルプをイオン交換水で3質量%に希釈した後、ブフナーロートで脱水、洗浄した。
前記D1段後のパルプをプラスチック袋に入れ、イオン交換水を用いてパルプ濃度10質量%に調整した後、絶乾パルプ質量当たり硫酸を0.5質量%、過酸化水素を0.3質量%添加し、温度が90℃の恒温水槽に60分間浸漬し、酸性過酸化物処理を行った。得られたパルプをイオン交換水で3質量%に希釈した後、ブフナーロートで脱水、洗浄した。前記で得られたパルプ(以下、「溶解クラフトパルプ」という。)を用いて、下記の方法でパルプシートを作成した。
<パルプシートの作成>
溶解クラフトパルプをイオン交換水で希釈、離解してパルプスラリーを調製し、手抄きマシンにて、絶乾重量700g/mのシートを作成した。得られたシートを油圧プレス機で脱水した後、シート表面に対して、界面活性剤(Berol Visco388/AkzoNobel社製)をパルプ絶乾重量あたり0.05質量%となるようにスプレー噴霧塗布した。その後、一晩風乾し、表面温度90℃のシリンダードライヤーに通して仕上げ、パルプシートを得た。
パルプに含まれるαセルロース含量、及びパルプの粘度を下記の方法で測定した。また、得られたパルプシートからビスコース溶液を調製し、ビスコース溶液の溶解性及び粘度を下記の方法で測定した。結果を表1に示す。
<パルプのαセルロース含量測定>
JIS P 8101に準じて測定した。
<パルプの粘度測定>
J TAPPI No.44に準じて測定した。
<ビスコースの溶解性の評価:溶解性試験>
絶乾重量14.4gのパルプシート断片を、361mlの13.7質量%水酸化ナトリウム水溶液で離解し、ペースト状の試料を得た。得られた試料に対して二硫化炭素を8ml添加し、庫内温度20℃の恒温振とう機で4時間反応させビスコース溶液を得た。ビスコース溶液を目視観察し溶解性を下記のように官能評価した。
○:セルロース繊維がすべて溶けている。
○’:セルロース繊維の溶け残りが僅かにある。
△:セルロース繊維の溶け残りがある。
×:セルロース繊維の溶け残りが大量にある。
<ビスコースの粘度の測定>
溶解性試験で得たビスコース溶液をメスシリンダーに入れ、20℃の恒温槽に浸け放置した。ビスコース溶液の温度が20℃±0.1℃になったら、メスシリンダーを恒温槽から取り出し、直ちに1/8インチ鋼球(重量0.13g)をピンセットでメスシリンダーに投入し、メスシリンダーの目盛り20cmの間を落下する所要時間を測定した。
(実施例2)
実施例1において、界面活性剤の塗布量をパルプ絶乾重量あたり0.1質量%に変更した以外は、全て実施例1と同じ条件でパルプシートを得た。結果を表1に示す。
(実施例3)
実施例1において、界面活性剤の塗布量をパルプ絶乾重量あたり0.2質量%に変更した以外は、全て実施例1と同じ条件でパルプシートを得た。結果を表1に示す。
(実施例4)
実施例2において、前加水分解時の温度を175℃に変更し、酸性過酸化物処理時の硫酸の添加率を0.2質量%に変更した以外は、全て実施例2と同じ条件でパルプシートを得た。なお、この前加水分解の時のPファクターは876であった。結果を表1に示す。
(実施例5)
実施例4において、チップをユーカリ・グロブラス材に変更した以外は、全て実施例4と同じ条件でパルプシートを得た。結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1において、界面活性剤を塗布しなかった以外は、全て実施例1と同じ条件でパルプシートを得た。結果を表1に示す。
(比較例2)
実施例2において、酸性過酸化物処理時の硫酸の添加率を0.6質量%に変更した以外は、全て実施例2と同じ条件でパルプシートを得た。結果を表1に示す。
(比較例3)
実施例2において、チップをユーカリ・グロブラス材に変更し、前加水分解処理を行わず、酸性過酸化物処理時に硫酸を添加しなかった以外は、全て実施例2と同じ条件でパルプシートを得た。結果を表1に示す。
(比較例4)
実施例2において、前加水分解時の温度を160℃に変更し、酸性過酸化物処理時の硫酸の添加率を0.4質量%に変更した以外は、全て実施例2と同じ条件でパルプシートを得た。なお、この前加水分解の時のPファクターは273であった。結果を表1に示す。
表1
Figure 2015205972
表1に示すように、実施例1〜5で得られたパルプシートは、比較例1〜4で得られたパルプシートと比較し、ビスコースの品質(溶解性、粘度)が高く、ビスコースから製造したレーヨンの強度も高かった。
本発明により、溶解パルプをレーヨンの原料として用いることにより、強度の高いレーヨンの製造が可能となる。

Claims (6)

  1. リグノセルロースを原料とする溶解パルプであって、前記溶解パルプに含まれるαセルロースが92質量%以上、パルプ粘度が8mPa・s以上13mPa・s以下であり、且つ、界面活性剤を含有することを特徴とする溶解パルプ。
  2. 界面活性剤の含有量が、パルプ絶乾重量あたり0.01質量%よりも多く、1.0質量%未満であることを特徴とする請求項1に記載の溶解パルプ。
  3. 溶解パルプがシート状に形成され、シートの少なくとも片面の表層部分に界面活性剤が含まれていることを特徴とする請求項1または2に記載の溶解パルプ。
  4. パルプ粘度が8mPa・s以上10mPa・s以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の溶解パルプ。
  5. リグノセルロースが木材であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の溶解パルプ。
  6. 原料となる木材が、広葉樹材であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の溶解パルプ。
JP2014086236A 2014-04-18 2014-04-18 溶解パルプ Pending JP2015205972A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014086236A JP2015205972A (ja) 2014-04-18 2014-04-18 溶解パルプ

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014086236A JP2015205972A (ja) 2014-04-18 2014-04-18 溶解パルプ

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2015205972A true JP2015205972A (ja) 2015-11-19

Family

ID=54603057

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014086236A Pending JP2015205972A (ja) 2014-04-18 2014-04-18 溶解パルプ

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2015205972A (ja)

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS4839763B1 (ja) * 1970-12-22 1973-11-27
WO2013158384A1 (en) * 2012-04-18 2013-10-24 Georgia-Pacific Consumer Products Lp The use of surfactant to treat pulp and improve the incorporation of kraft pulp into fiber for the production of viscose and other secondary fiber products
JP2013227705A (ja) * 2012-04-27 2013-11-07 Oji Holdings Corp 溶解パルプの製造方法
JP2014037482A (ja) * 2012-08-15 2014-02-27 Nippon Paper Industries Co Ltd 溶解パルプ

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS4839763B1 (ja) * 1970-12-22 1973-11-27
WO2013158384A1 (en) * 2012-04-18 2013-10-24 Georgia-Pacific Consumer Products Lp The use of surfactant to treat pulp and improve the incorporation of kraft pulp into fiber for the production of viscose and other secondary fiber products
JP2013227705A (ja) * 2012-04-27 2013-11-07 Oji Holdings Corp 溶解パルプの製造方法
JP2014037482A (ja) * 2012-08-15 2014-02-27 Nippon Paper Industries Co Ltd 溶解パルプ

Non-Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
紙パ技協誌,1959,VOL.13,NO.98,P.29-33, JPN6017025498, ISSN: 0003596412 *

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5953909B2 (ja) 溶解パルプの製造方法
JP5712754B2 (ja) 溶解パルプの製造方法
US6245196B1 (en) Method and apparatus for pulp yield enhancement
JP6197717B2 (ja) 溶解パルプの製造方法
JP4893210B2 (ja) 漂白パルプの製造方法
JP6187619B2 (ja) 溶解パルプの製造方法
JPH1181173A (ja) 漂白パルプの製造方法
JP5915263B2 (ja) パルプの製造方法
JP2015205966A (ja) 溶解パルプ
JP6522274B2 (ja) 溶解クラフトパルプの製造方法。
JP6398388B2 (ja) 溶解パルプ及びその製造方法
JPWO2015037647A1 (ja) 溶解クラフトパルプの製造方法
JP2015205972A (ja) 溶解パルプ
JP2018104877A (ja) 化学パルプの製造方法
JP6305715B2 (ja) 溶解パルプの製造方法
JP6196022B2 (ja) 溶解クラフトパルプの製造方法
JP2016017106A (ja) 溶解パルプ
JP3915682B2 (ja) 漂白パルプの製造方法
JP4750068B2 (ja) 漂白パルプ中のヘキセンウロン酸含量の測定方法、漂白パルプの製造方法、および紙の製造方法
JP6518287B2 (ja) 溶解クラフトパルプの製造方法
SU1730299A1 (ru) Способ получени целлюлозы дл химической переработки
JP2022093319A (ja) 溶解パルプシート
JP2002302888A (ja) 漂白パルプの製造方法
JP6221218B2 (ja) 溶解クラフトパルプの製造方法
JP2014074251A (ja) 溶解クラフトパルプの製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20160620

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170425

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170622

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20170622

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170711

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20180123