以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の画像形成装置の概略断面図であり、ここではタンデム方式のカラープリンターについて示している。カラープリンター100本体内には4つの画像形成部Pa、Pb、Pc及びPdが、搬送方向上流側(図1では右側)から順に配設されている。これらの画像形成部Pa〜Pdは、異なる4色(シアン、マゼンタ、イエロー及びブラック)の画像に対応して設けられており、それぞれ帯電、露光、現像及び転写の各工程によりシアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの画像を順次形成する。
これらの画像形成部Pa〜Pdには、各色の可視像(トナー像)を担持する感光体ドラム1a、1b、1c及び1dが配設されており、さらに駆動手段(図示せず)により図1において時計回り方向に回転する中間転写ベルト8が各画像形成部Pa〜Pdに隣接して設けられている。これらの感光体ドラム1a〜1d上に形成されたトナー像が、各感光体ドラム1a〜1dに当接しながら移動する中間転写ベルト8上に順次転写された後、二次転写ローラー9において転写紙P上に一度に転写され、さらに、定着部7において転写紙P上に定着された後、装置本体より排出される。感光体ドラム1a〜1dを図1において反時計回り方向に回転させながら、各感光体ドラム1a〜1dに対する画像形成プロセスが実行される。
本実施形態では、感光体ドラム1a〜1dはアモルファスシリコン(a−Si)感光体であり、アルミニウム等の導電性基板(筒体)上に、感光層としてa−Si系の光導電層を形成し、その上面にa−Si系のSiC、SiN、SiO、SiON、SiCNなどの無機絶縁体または無機半導体から成る表面保護層が積層されている。
トナー像が転写される転写紙Pは、カラープリンター100本体下部の用紙カセット16内に収容されており、給紙ローラー12a及びレジストローラー対12bを介して二次転写ローラー9へと搬送される。中間転写ベルト8には誘電体樹脂製のシートが用いられ、継ぎ目を有しない(シームレス)ベルトが主に用いられる。また、二次転写ローラー9の下流側には中間転写ベルト8表面に残存するトナーを除去するためのブレード状のベルトクリーナー19が配置されている。
次に、画像形成部Pa〜Pdについて説明する。回転自在に配設された感光体ドラム1a〜1dの周囲及び下方には、感光体ドラム1a〜1dを帯電させる帯電装置2a、2b、2c及び2dと、各感光体ドラム1a〜1dに画像情報を露光する露光装置4と、感光体ドラム1a〜1d上にトナー像を形成する現像装置3a、3b、3c及び3dと、感光体ドラム1a〜1d上に残留した現像剤(トナー)を除去するクリーニング装置5a、5b、5c及び5dが設けられている。
パーソナルコンピューター等の上位装置から画像データが入力されると、先ず、帯電装置2a〜2dによって感光体ドラム1a〜1dの表面を一様に帯電させ、次いで露光装置4によって光照射し、各感光体ドラム1a〜1d上に画像信号に応じた静電潜像を形成する。現像装置3a〜3dには、それぞれシアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの各色のトナーが補給装置(図示せず)によって所定量充填されている。このトナーは、現像装置3a〜3dにより感光体ドラム1a〜1d上に供給され、静電的に付着することにより、露光装置4からの露光により形成された静電潜像に応じたトナー像が形成される。
そして、中間転写ベルト8に所定の転写電圧で電界が付与された後、一次転写ローラー6a〜6dにより感光体ドラム1a〜1d上のシアン、マゼンタ、イエロー、及びブラックのトナー像が中間転写ベルト8上に転写される。これらの4色の画像は、所定のフルカラー画像形成のために予め定められた所定の位置関係をもって形成される。その後、引き続き行われる新たな静電潜像の形成に備え、感光体ドラム1a〜1dの表面に残留したトナーがクリーニング装置5a〜5dにより除去される。
中間転写ベルト8は、上流側の搬送ローラー10と、下流側の駆動ローラー11とを含む複数の張架ローラーに掛け渡されており、駆動モーター(図示せず)による駆動ローラー11の回転に伴い中間転写ベルト8が時計回り方向に回転を開始すると、転写紙Pがレジストローラー対12bから所定のタイミングで中間転写ベルト8に隣接して設けられた二次転写ローラー9へ搬送され、フルカラー画像が転写される。トナー像が転写された転写紙Pは定着部7へと搬送される。
定着部7に搬送された転写紙Pは、定着ローラー対13により加熱及び加圧されてトナー像が転写紙Pの表面に定着され、所定のフルカラー画像が形成される。フルカラー画像が形成された転写紙Pは、複数方向に分岐した分岐部14によって搬送方向が振り分けられる。転写紙Pの片面のみに画像を形成する場合は、そのまま排出ローラー対15によって排出トレイ17に排出される。
一方、転写紙Pの両面に画像を形成する場合は、定着部7を通過した転写紙Pの一部を一旦排出ローラー対15から装置外部にまで突出させる。その後、転写紙Pは排出ローラー対15を逆回転させることにより分岐部14で用紙搬送路18に振り分けられ、画像面を反転させた状態でレジストローラー対12bに再搬送される。そして、中間転写ベルト8上に形成された次の画像が二次転写ローラー9により転写紙Pの画像が形成されていない面に転写され、定着部7に搬送されてトナー像が定着された後、排出ローラー対15を介して排出トレイ17に排出される。
さらに、中間転写ベルト8を挟んで駆動ローラー11と対向する位置には画像濃度センサー40が配置されている。画像濃度センサー40としては、一般にLED等から成る発光素子と、フォトダイオード等から成る受光素子を備えた光学センサーが用いられる。中間転写ベルト8上のトナー付着量を測定する際、発光素子から中間転写ベルト8上に形成された各基準画像に対し測定光を照射すると、測定光はトナーによって反射される光、及びベルト表面によって反射される光として受光素子に入射する。
トナー及びベルト表面からの反射光には正反射光と乱反射光とが含まれる。この正反射光及び乱反射光は、偏光分離プリズムで分離された後、それぞれ別個の受光素子に入射する。各受光素子は、受光した正反射光と乱反射光を光電変換して制御部90(図3参照)に出力信号を出力する。そして、正反射光と乱反射光の出力信号の特性変化からトナー量を検知し、予め定められた基準濃度と比較して現像バイアスの特性値などを調整することにより、各色について濃度補正が行われる。
図2は、カラープリンター100に搭載される現像装置3aの構成を示す側面断面図である。なお、ここでは図1の画像形成部Paに配置される現像装置3aについて説明するが、画像形成部Pb〜Pdに配置される現像装置3b〜3dの構成についても基本的に同様であるため説明を省略する。
図2に示すように、現像装置3aは、二成分現像剤(以下、単に現像剤ともいう)が収納される現像容器20を備えており、現像容器20は仕切壁20aによって第1及び第2攪拌室20b、20cに区画され、第1及び第2攪拌室20b、20cには図示しないトナーコンテナから供給されるトナー(正帯電トナー)をキャリアと混合して撹拌し、帯電させるための第1攪拌スクリュー21a及び第2攪拌スクリュー21bが回転可能に配設されている。
そして、第1攪拌スクリュー21a及び第2攪拌スクリュー21bによって現像剤が攪拌されつつ軸方向に搬送され、仕切壁20aの両端に形成された現像剤通過路(図示せず)を介して第1及び第2攪拌室20b、20c間を循環する。図示の例では、現像容器20は左斜め上方に延在しており、現像容器20内において第2攪拌スクリュー21bの上方には磁気ローラー22が配置され、磁気ローラー22の左斜め上方には現像ローラー23が対向配置されている。そして、現像ローラー23は現像容器20の開口側(図3の左側)において感光体ドラム1aに対向しており、磁気ローラー22及び現像ローラー23は図中時計回り方向に回転する。
なお、現像容器20には、第1攪拌スクリュー21aと対面してトナー濃度センサー(図示せず)が配置されており、トナー濃度センサーで検知されるトナー濃度に応じて補給装置(図示せず)からトナー補給口20dを介して現像容器20内にトナーが補給される。
磁気ローラー22は、非磁性の回転スリーブ22aと、回転スリーブ22aに内包される複数の磁極を有する固定マグネット体22bで構成されている。本実施形態では、固定マグネット体22bの磁極は、主極35、規制極(穂切り用磁極)36、搬送極37、剥離極38、及び汲上極39の5極構成である。磁気ローラー22と現像ローラー23とはその対面位置(対向位置)において所定のギャップをもって対向している。
また、現像容器20には穂切りブレード25が磁気ローラー22の長手方向(図2の紙面と垂直な方向)に沿って取り付けられており、穂切りブレード25は、磁気ローラー22の回転方向(図2の時計回り方向)において、現像ローラー23と磁気ローラー22との対向位置よりも上流側に位置付けられている。そして、穂切りブレード25の先端部と磁気ローラー22表面との間には僅かな隙間(ギャップ)が形成されている。
現像ローラー23は、非磁性の現像スリーブ23aと、現像スリーブ23a内に固定された現像ローラー側磁極23bで構成されている。現像ローラー側磁極23bは、固定マグネット体22bの対向する磁極(主極)35と異極性である。
現像ローラー23及び磁気ローラー22には、バイアス制御回路41(図3参照)を介して現像バイアス電源43が接続されている。具体的には、現像ローラー23には直流電源と交流電源から成る第1電源43aが接続されており、磁気ローラー22には、直流電源と交流電源から成る第2電源43bが接続されている。これにより、現像ローラー23には、直流電圧に交流電圧が重畳された現像バイアスが印加され、磁気ローラー22には、直流電圧に交流電圧が重畳された供給バイアスが印加される。現像バイアスは、直流電圧に矩形波形の交流電圧を印加するパルス部と、交流電圧の印加を休止する休止部とを含む。現像バイアスの具体的な波形については後述する。
前述のように、第1攪拌スクリュー21a及び第2攪拌スクリュー21bによって、現像剤が攪拌されつつ現像容器20内を循環してトナーを帯電させ、第2攪拌スクリュー21bによって現像剤が磁気ローラー22に搬送される。穂切りブレード25には固定マグネット体22bの規制極36が対向するため、穂切りブレード25として非磁性体或いは規制極36と異なる極性の磁性体を用いることにより、穂切りブレード25の先端と回転スリーブ22aとの隙間に引き合う方向の磁界が発生する。
この磁界により、穂切りブレード25と回転スリーブ22aとの間に磁気ブラシが形成される。そして、磁気ローラー22上の磁気ブラシは穂切りブレード25によって層厚規制された後、現像ローラー23に対向する位置に移動すると、固定マグネット体22bの主極35及び現像ローラー側磁極23bにより引き合う磁界が付与されるため、磁気ブラシは現像ローラー23表面に接触する。そして、磁気ローラー22に印加されるVmag(DC)と現像ローラー23に印加されるVslv(DC)との電位差ΔV、及び磁界によって現像ローラー23上にトナー薄層を形成する。
現像ローラー23上のトナー層厚は現像剤の抵抗や磁気ローラー22と現像ローラー23との回転速度差等によっても変化するが、ΔVによって制御することができる。ΔVを大きくすると現像ローラー23上のトナー層は厚くなり、ΔVを小さくすると薄くなる。現像時におけるΔVの範囲は一般的に100V〜350V程度が適切である。
図3は、本発明のカラープリンター100に用いられる制御経路の一例を示すブロック図である。なお、カラープリンター100を使用する上で装置各部の様々な制御がなされるため、カラープリンター100全体の制御経路は複雑なものとなる。そこで、ここでは制御経路のうち、本発明の実施に必要となる部分を重点的に説明する。
バイアス制御回路41は、帯電バイアス電源42、現像バイアス電源43、及び転写バイアス電源44と接続され、制御部90からの出力信号によりこれらの各電源を作動させるものであり、これらの各電源はバイアス制御回路41からの制御信号によって、帯電バイアス電源42は帯電装置2a〜2d内の帯電ローラーに、現像バイアス電源43は現像装置3a〜3d内の磁気ローラー22及び現像ローラー23に、転写バイアス電源44は一次転写ローラー6a〜6d及び二次転写ローラー9に、それぞれ所定のバイアスを印加する。
機内温湿度センサー45は、カラープリンター100内部の温度及び湿度を常に検知している。検知結果は後述するI/F96を介して制御部90に送信される。
操作部50には、液晶表示部51、各種の状態を示すLED52が設けられており、カラープリンター100の状態を示したり、画像形成状況や印字部数を表示したりするようになっている。カラープリンター100の各種設定はパーソナルコンピューターのプリンタードライバーから行われる。
その他、操作部50には、画像形成を開始するようにユーザーが指示するスタートボタン、画像形成を中止する際等に使用するストップ/クリアボタン、カラープリンター100の各種設定をデフォルト状態にする際に使用するリセットボタン等が設けられている。
制御部90は、中央演算処理装置としてのCPU(Central Processing Unit)91、読み出し専用の記憶部であるROM(Read Only Memory)92、読み書き自在の記憶部であるRAM(Random Access Memory)93、一時的に画像データ等を記憶する一時記憶部94、カウンター95、カラープリンター100内の各装置に制御信号を送信したり操作部50からの入力信号を受信したりする複数(ここでは2つ)のI/F(インターフェイス)96を少なくとも備えている。また、制御部90は、装置本体内部の任意の場所に配置可能である。
ROM92には、カラープリンター100の制御用プログラムや、制御上の必要な数値等、カラープリンター100の使用中に変更されることがないようなデータ等が収められている。RAM93には、カラープリンター100の制御途中で発生した必要なデータや、カラープリンター100の制御に一時的に必要となるデータ等が記憶される。また、RAM93(或いはROM92)には、後述する現像ローラー23上のトナーを全て感光体ドラム1a〜1dに現像することができる最小の現像バイアスの直流成分(基準バイアス)を決定する際に用いる、画像濃度センサー40によって検出されるトナーパッチ濃度と現像バイアスとの相関関係を示す基準バイアス決定テーブル、或いは、後述する第1の設定時、第2の設定時に用いるブランクパルスバイアスまたはパルスバイアスの設定値等も保管される。
一時記憶部94は、パーソナルコンピューター等から送信される画像データを受信する画像入力部(図示せず)より入力され、デジタル信号に変換された画像信号を一時的に記憶する。カウンター95は、印字枚数を累積してカウントする。
また、制御部90は、カラープリンター100における各部分、装置に対し、CPU91からI/F96を通じて制御信号を送信する。また、各部分、装置からその状態を示す信号や入力信号がI/F96を通じてCPU91に送信される。制御部90が制御する各部分、装置としては、例えば、画像形成部Pa〜Pd、露光装置4、定着部7、中間転写ベルト8、二次転写ローラー9、画像濃度センサー40、バイアス制御回路41、操作部50等が挙げられる。
図2に示したような現像装置3a〜3dを備えた非接触現像方式のカラープリンター100では、出力画像の形成時において、ベタ画像のエッジ部における吸い込み(過現像)や、ベタ画像に隣接するハーフトーン画像のエッジ部における白抜け等の画像品質の低下が発生し易いことが知られている。
まず、ベタ画像のエッジ部における吸い込みや、ベタ画像に隣接するハーフトーン画像のエッジ部における白抜けが発生するメカニズムについて述べる。図4は、現像ローラー23と感光体ドラム1a〜1dとの間のトナーの飛翔挙動を示す概念図である。図4に示すように、トナーTは基本的に電気力線に沿って飛翔することから、現像初期のトナー飛翔挙動は、感光体ドラム1a〜1d上の高濃度部(ベタ画像部、図4の表面電位10Vの領域)と低濃度部(ハーフトーン画像部、図4の表面電位120Vの領域)が隣接する場合は、低濃度側のエッジ部に向かって飛翔したトナーが高濃度側のエッジ部に引き寄せられる傾向にある。その結果、高濃度側のエッジ部にはトナーが密に付着する吸い込みが発生し、逆に低濃度側のエッジ部ではトナーが疎になり白抜けが発生する。
一方、非接触現像方式は、一般的に矩形波形の交流電圧を用いて現像が行われるが、その現像γ特性は、現像バイアスの直流成分(交流波形の面積中心電圧)に対する現像量(単位面積当たりのトナー付着量)との関係として、図5及び図6のように表すことができる。図5は、現像バイアスによる電界を中和する現像量(電界中和現像量、図の破線で表示)が現像ローラー23の供給可能な最大の現像量(供給限界現像量、図の一点鎖線で表示)よりも下回っている場合を示し、図6は、電界中和現像量が供給限界現像量よりも上回っている場合を示している。
例えば、感光体ドラム1a〜1dとして誘電率の低い有機感光体(OPC)を用いる場合、図5に示すように、現像γ特性を示す直線の傾きは緩やかになる。そのため、現像量が供給限界現像量に達する前に現像量が飽和点(電界中和現像量)に達するような現像バイアス設定としても濃度ムラ等が発生するおそれはない。一方、感光体ドラム1a〜1dとして誘電率の高いa−Si感光体を用いる場合、図6に示すように、現像γ特性を示す直線の傾きは急になる。この場合、供給限界現像量に達する前に電界中和現像量に達するような設定にした場合、現像量が不安定となり、濃度ムラが発生するおそれがある。従って、電界中和現像量に達する前に供給限界現像量に達するような現像バイアス設定とする必要がある。
図7は、感光体ドラム1a〜1d上の静電潜像に対するトナー付着量を模式的に示す図であり、図7(a)は、電界中和現像量が支配的な図5の場合を示し、図7(b)は、供給限界現像量が支配的な図6の場合を示している。図7(a)では、現像ローラー23の静電潜像に対向する部分から飛翔したトナーT1が静電潜像のコントラスト(電位差)を中和するように付着するので、静電潜像の外側から飛翔してきたトナーが余分に付着することはない。
一方、図7(b)では、現像ローラー23の静電潜像に対向する部分から飛翔したトナーT1のみでは静電潜像のコントラスト(電位差)が完全に中和されない。その結果、静電潜像の外側から飛翔してきたトナーT2が余分に付着することが可能であり、ベタ画像のエッジ部における吸い込みや、ベタ画像に隣接するハーフトーン画像のエッジ部における白抜けといった画像不具合が発生しやすい条件となる。
つまり、ベタ画像のエッジ部における吸い込みや、ベタ画像に隣接するハーフトーン画像のエッジ部における白抜けが発生するのは、図6に示したような供給限界現像量が支配的な現像バイアス設定を用いる場合のみで、図5に示したような電界中和現像量が支配的な現像バイアス設定では発生しにくいことになる。
次に、トナーを現像ローラー23側に引き戻す方向に作用する現像バイアス(ブランクパルスバイアス)が、ベタ画像のエッジ部における吸い込みや、ベタ画像に隣接するハーフトーン画像のエッジ部における白抜けを抑制するメカニズムについて述べる。図8は、現像ローラー23と感光体ドラム1a〜1dの対向部分(現像ニップ)におけるトナー粒子の挙動を説明する概念図である。
一般に、交流波形を有する現像バイアスを用いて現像すると、図8に示すように、現像ニップ上流側の領域R1(現像ギャップが大きく現像電界が弱い領域)では、帯電量の大きい大粒径トナーが小粒径トナーよりも先に飛翔し、感光体ドラム1a〜1dの潜像上に現像される。特に、現像ローラー23と感光体ドラム1a〜1dに線速差(現像ローラー23の線速が感光体ドラム1a〜1dよりも速い)がある場合、白地部を通過してきた現像ローラー23がベタ画像のエッジ部(後端部)を通過し、現像ローラー23上のトナーが飛翔してベタ画像のエッジ部近傍に付着し、エッジ部近傍のトナー密度を高くする。
そして、現像ニップの中央部R2(現像ギャップが狭くなり現像電界が最も強くなる領域)では、帯電量の小さい小粒径トナーも飛翔し始め、既に感光体ドラム1a〜1d上の静電潜像に付着した大粒径トナーの一部と入れ替わって潜像に付着する。
さらに、現像ニップ下流側の領域R3(現像ギャップが再び大きくなり現像電界が弱くなる領域)においては、帯電量の小さい小粒径トナーは先に感光体ドラム1a〜1d若しくは現像ローラー23に引き付けられて付着するため、帯電量の大きい大粒径トナーのみが現像ニップ間に浮遊する。この浮遊トナーが現像されることで、ベタ画像のエッジ部における吸い込みが発生し、エッジ部の濃度差(後端溜まり)の原因となる。
つまり、ベタ画像のエッジ部における吸い込みを抑制するためには、現像ニップ上流側の領域R1におけるベタ画像のエッジ部のトナー密度上昇を防ぐことと、現像ニップ下流側の領域R3における浮遊トナーを感光体ドラム1a〜1dに飛翔させないことが重要となる。これらの現象を抑制するのにブランクパルスバイアスは有効であり、パルス部の現像性を促進させる設定にすることで、全てのトナーが往復運動する現像ニップ中央部R2の範囲が広がり、現像ニップ上流側の領域R1で発生するベタ画像のエッジ部のトナー密度上昇を小さくすることができる。また、休止部の現像性を抑制する設定にすることで、現像ニップ下流側の領域R3で現像ニップ間の浮遊トナーを現像ローラー23側に引き寄せることが可能となり、ベタ画像のエッジ部の現像量上昇を防ぐことができる。
ここで、図6に示すように供給限界現像量が支配的な現像設定の場合、ベタ画像部では、現像ローラー23上のトナーが全て感光体ドラム1a〜1d側に飛翔し、静電潜像に付着する(現像される)。そして、ベタ画像のエッジ部では、図4に示したように白地部(地肌部)のトナーが回り込んでくるためにトナー密度の上昇が発生する。しかし、現像バイアスとしてブランクパルスバイアスを用い、パルス部をトナーが感光体ドラム1a〜1d側に飛翔する方向に作用する設定(現像促進側)とし、休止部をトナーが現像ローラー23側に引き戻される方向に作用する設定(現像抑制側)とすることで、ベタ画像のエッジ部における吸い込みの抑制が可能となる。
また、図5に示すように電界中和現像量が支配的な現像設定の場合、ベタ画像のエッジ部における吸い込みや、ベタ画像に隣接するハーフトーン画像のエッジ部における白抜けは発生しにくいが、ベタ画像の印字後も現像ローラー23上にトナーが残存することから、現像ローラー23上のトナーの入れ替えが重要になる。つまり、現像バイアスとしてブランクパルスバイアスを用い、パルス部を現像抑制側にすることで、現像ニップ部での現像ローラー23上のトナーの入れ替えが促進される。また、休止部を現像促進側にすることで現像性の安定化を図ることができる。
このように、現像バイアスとしてブランクパルスバイアスを用い、休止部を現像抑制側に設定する方法は、図6のように供給限界現像量が支配的な現像設定の場合、ベタ画像のエッジ部の吸い込みや、ベタ画像に隣接するハーフトーン画像のエッジ部における白抜けの抑制に対して有効である。その反面、図5のように電界中和現像量が支配的な現像設定の場合、現像ローラー23に持続的に残留し続けるトナーが増加してトナーがチャージアップするため、現像性の低下による画像濃度低下や現像ゴースト等の画像品質の低下を招いてしまう。
そこで、本発明のカラープリンター100では、現像バイアスとしてパルス部と休止部とを有するブランクパルスバイアスを用い、感光体ドラム1a〜1dが誘電率の低い有機感光体である場合に用いる供給限界現像量が支配的な現像設定の場合は、休止部をトナーが現像ローラー23側に引き戻される方向に作用する設定とする。また、感光体ドラム1a〜1dが誘電率の高いa−Si感光体である場合に用いる電界中和現像量が支配的な現像設定の場合は、休止部をトナーが感光体ドラム1a〜1d側に飛翔する方向に作用する設定とする。
これにより、供給限界現像量が支配的な現像設定で発生し易いベタ画像のエッジ部における濃度差や、ベタ画像に隣接するハーフトーン画像のエッジ部における白抜けを抑制するとともに、電界中和現像量が支配的な現像設定においては、現像ローラー23に持続的に残留し続けるトナーが増加してトナーがチャージアップすることで発生する画像濃度低下や現像ゴースト等の画像品質の低下も抑制することができる。
ところで、供給限界現像量が支配的な現像設定であるか、電界中和現像量が支配的な現像設定であるかは、現像ローラー23上に形成されたトナー薄層が全て感光体ドラム1a〜1d上の静電潜像の現像に使用されるか否かによって決まる。従って、現像ローラー23上に形成されたトナー薄層を全て感光体ドラム1a〜1d側に飛翔させることのできる現像バイアスの直流電圧成分Vslv(DC)の最小値Vslv(DC)min(基準バイアス)を検知する必要がある。このVslv(DC)minを検知する方法については以下の2つが考えられる。
一つの方法は、現像バイアスとしてブランクパルスバイアスでない通常の交流波形を用い、その直流電圧成分Vslv(DC)に対する現像量を検知するための濃度検出用パッチの出力時に、感光体ドラム1a〜1dに対する現像ローラー23の線速比を変える(小さくする)ことで、供給限界現像量のパッチが画像濃度センサー40で検知可能なレベルまで下げてやる方法である。この方法では、感光体ドラム1a〜1dに対する現像ローラー23の線速比を変化させても、Vslv(DC)minがほとんど変化しない特性を利用している。
図9は、現像電場シミュレーションによる現像バイアスの直流電圧成分Vslv(DC)とトナー付着量との関係を示すグラフである。図9では、感光体ドラム1a〜1dに対する現像ローラー23の線速比(S/D)が1.6(図の点線)、1.3(図の破線)、1(図の一点鎖線)、0.7(図の実線)と変化した場合でも、現像バイアスの直流電圧成分Vslv(DC)が32Vのときにトナー付着量が飽和している。即ち、Vslv(DC)minが32Vであることがわかる。
図10は、実機による現像バイアスの直流電圧成分Vslv(DC)とトナー濃度との関係を示すグラフである。図10では、感光体ドラム1a〜1dに対する現像ローラー23の線速比(S/D)が1.3(図の破線)、1(図の一点鎖線)、0.7(図の実線)と変化した場合、各線速比においてトナー付着量が飽和する現像バイアスの直流電圧成分Vslv(DC)の値(図の○で表示)の近似直線Lを求めている。近似直線Lから、Vslv(DC)minが約120〜125Vであることがわかる。
Vslv(DC)minを検知するもう一つの方法は、現像バイアスとしてブランクパルスバイアスでない通常の交流波形を用い、その直流電圧成分Vslv(DC)に対する現像量を検知するための濃度検出用パッチとして、高濃度部と低濃度部が現像剤搬送方向(現像ローラー23の回転方向)と交差する境界を有して近接配置されているとともに、高濃度側から低濃度側へ移行する境界部近傍と、低濃度側から高濃度側へ移行する境界部近傍の濃度検知結果の変化を比較する方法である。この方法では、ベタ画像に隣接するハーフトーン画像エッジ部の白抜けのレベルが、現像剤搬送方向に対する画像の順序によって異なる特性と、その濃度域が画像濃度センサー40の検知可能範囲内である特性を利用している。
図11は、現像バイアスの直流電圧成分Vslv(DC)に対する濃度検出用パッチ60の白抜けレベルの変化を示す図であり、図中の矢印は現像剤搬送方向(現像ローラー23の回転方向)を示している。図11(a)は、直流電圧成分Vslv(DC)がVslv(DC)minよりも小さい場合を示している。この状態では、供給限界現像量が電界中和現像量よりも小さいため、濃度検出用パッチ60の高濃度部60aと低濃度部60bはいずれも所定の濃度まで達していない。
図11(b)は、直流電圧成分Vslv(DC)がVslv(DC)minである場合を示している。この状態では、供給限界現像量と電界中和現像量とがほぼ同等であるため、濃度検出用パッチ60の高濃度部60aと低濃度部60bはいずれも所定の濃度まで達している。また、低濃度部60b側から高濃度部60a側へ移行する境界部61a近傍には濃度差(後端溜まり)が発生しておらず、高濃度部60a側から低濃度部60b側へ移行する境界部61b近傍には白抜けが発生していない。
図11(c)は、直流電圧成分Vslv(DC)がVslv(DC)minよりも大きい場合を示している。この状態では、供給限界現像量が電界中和現像量よりも大きいため、濃度検出用パッチ60の低濃度部60bは所定の濃度よりも高濃度となっている。また、低濃度部60b側から高濃度部60a側へ移行する境界部61a近傍には僅かに濃度差(後端溜まり)が発生しており、高濃度部60a側から低濃度部60b側へ移行する境界部61b近傍には僅かに白抜けが発生している。
図11(d)は、図11(c)に比べて直流電圧成分Vslv(DC)がVslv(DC)minよりもさらに大きい場合を示している。この状態では、供給限界現像量が電界中和現像量を大幅に上回っているため、濃度検出用パッチ60の低濃度部60bはず11(c)よりもさらに高濃度となっている。また、低濃度部60b側から高濃度部60a側へ移行する境界部61a近傍の濃度差(後端溜まり)、高濃度部60a側から低濃度部60b側へ移行する境界部61b近傍の白抜けが図11(c)よりも顕著に発生している。
以上から、画像濃度センサー40で検知された濃度検出用パッチが図11(b)のようになるときの直流電圧成分Vslv(DC)をVslv(DC)minとして決定することができる。
上述した二つの方法のいずれかを用いてVslv(DC)minを検出し、検出されたVslv(DC)minを基準バイアスに設定する。そして、現像バイアスの直流電圧成分Vslv(DC)が基準バイアスよりも小さい設定時(以下、第1の設定という)と、現像バイアスの直流電圧成分Vslv(DC)が基準バイアスよりも大きい設定時(以下、第2の設定という)とで、現像バイアスにおけるパルス部または休止部の少なくとも一方の設定を可変させる。
具体的には、供給限界現像量が支配的な現像設定である第2の設定では、現像バイアスとしてブランクパルスバイアスを用い、ブランクパルスバイアスの休止部をトナーが現像ローラー23側に引き戻される方向に作用する設定とする。或いは、ブランクパルスバイアスのパルス部をトナーが感光体ドラム1a〜1d側に飛翔する方向に作用する設定とする。
一方、電界中和現像量が支配的な現像設定である第1の設定では、現像バイアスとして通常の交流パルスまたはブランクパルスバイアスを用いる。そして、ブランクパルスバイアスを用いる場合は、休止部をトナーが感光体ドラム1a〜1d側に飛翔する方向に作用する設定とする。或いは、パルス部をトナーが現像ローラー23側に引き戻される方向に作用する設定とする。
図12は、本発明の第1実施形態に係る現像装置3a〜3dにおいて現像ローラー23に印加される現像バイアスの一例を示すグラフである。現像バイアスは、直流バイアスに交流バイアスを重畳して印加するパルス部と、交流バイアスの印加を休止した休止部とを有するブランクパルスバイアスである。なお、図12では、第1の設定時に用いる第1ブランクパルスバイアス(パルス周期<0の部分)と、第2の設定時に用いる第2ブランクパルスバイアス(パルス周期>0の部分)とを示している。
図12に示すように、第1ブランクパルスバイアスでは、パルス部は、100Vの直流電圧Vdc(図12の破線)に、ピークツーピーク値(Vpp)=1800V、デューティ比0.5の交流電圧Vacを2パルスのインターバルで重畳して印加しており、Vmax=1000V、Vmin=−800Vとなっている。休止部は、パルス部のマイナス側波形(トナーを現像ローラー23側に引き戻す方向に作用するパルス)の直後に交流電圧をオフとし、−200Vの直流電圧Vdc(図12の一点鎖線)のみを交流波形1パルス分のインターバルで印加している。パルス部と休止部を合わせたインターバルは交流波形3パルス分の長さとなっている。
一方、第2ブランクパルスバイアスでは、パルス部は出力画像形成用と同一であるが、休止部は、パルス部のマイナス側波形の直後に交流電圧をオフとし、−200Vの直流電圧Vdc(図12の一点鎖線)のみを交流波形2パルス分のインターバルで印加している。パルス部と休止部を合わせたインターバルは交流波形4パルス分の長さとなっている。
本実施形態では、第2ブランクパルスバイアスにおける休止部のインターバルを第1ブランクパルスバイアスよりも長く(ここでは2倍)変更している。このように、第2の設定時に用いる第2ブランクパルスバイアスにおいて、トナーが現像ローラー23側に引き戻される方向に作用するバイアス(−200V)に設定された休止部のインターバルを長くすることで、現像ニップの下流側R3(図8参照)で浮遊する大粒径トナーを現像ローラー23側に引き戻す時間が確保される。従って、直流電圧成分Vslv(DC)が基準バイアスより大きく、ベタ画像のエッジ部における吸い込みや、ベタ画像に隣接するハーフトーン画像のエッジ部における白抜けが発生し易い条件であっても、それらの発生を効果的に抑制することができる。
一方、第1の設定時に用いる第1ブランクパルスバイアスでは、休止部のインターバルを短くすることで、現像ローラー23上に残存するトナー量が減少する。従って、第1の設定では、トナーがチャージアップすることで発生する画像濃度低下や現像ゴースト等の画像品質の低下を効果的に抑制することができる。
図13は、本発明の第2実施形態に係る現像装置3a〜3dにおいて現像ローラー23に印加される現像バイアスの一例を示すグラフである。第1実施形態と同様に、第1の設定時に用いる第1ブランクパルスバイアス(パルス周期<0の部分)と、第2の設定時に用いる第2ブランクパルスバイアス(パルス周期>0の部分)とを示している。
図13に示すように、第1ブランクパルスバイアスでは、パルス部は、100Vの直流電圧Vdc(図13の破線)に、ピークツーピーク値(Vpp)=1800V、デューティ比0.4の交流電圧Vacを2パルスのインターバルで重畳して印加しており、Vmax=1180V、Vmin=−620Vとなっている。休止部は、パルス部のマイナス側波形の直後に交流電圧をオフとし、−200Vの直流電圧Vdc(図13の一点鎖線)のみを交流波形1パルス分のインターバルで印加している。パルス部と休止部を合わせたインターバルは交流波形3パルス分の長さとなっている。
一方、第2ブランクパルスバイアスでは、休止部は第1ブランクパルスバイアスと同一であるが、パルス部は、460Vの直流電圧Vdc(図13の破線)に、ピークツーピーク値(Vpp)=1800V、デューティ比0.6の交流電圧Vacを2パルスのインターバルで重畳して印加しており、Vmax=1180V、Vmin=−620Vとなっている。パルス部と休止部を合わせたインターバルは交流波形3パルス分の長さとなっている。
本実施形態では、第2ブランクパルスバイアスにおけるパルス部のデューティ比が第1ブランクパルスバイアスよりも大きくなるように(ここでは1.5倍)切り替えている。なお、本明細書中において、デューティ比とは、交流波形1パルスに対する飛翔側(トナーと同極性側)バイアスの長さの比率を指すものとする。このように、第2ブランクパルスバイアスにおいて、トナーが感光体ドラム1a〜1d側に飛翔する方向に強く作用する設定のパルス部を用いることで、現像ニップの中央部R2(図8参照)で大粒径トナーと小粒径トナーが入れ替わる確率が増加し、現像ローラー23上に残存するトナー量が減少するため、トナーのチャージアップに起因する画像濃度低下や現像ゴーストの発生を効果的に抑制することができる。
図14は、本発明の第3実施形態に係る現像装置3a〜3dにおいて現像ローラー23に印加される現像バイアスの一例を示すグラフである。第1及び第2実施形態と同様に、第1の設定時に用いる第1ブランクパルスバイアス(パルス周期<0の部分)と、第2の設定時に用いる第2ブランクパルスバイアス(パルス周期>0の部分)とを示している。
図14に示すように、第1ブランクパルスバイアスでは、パルス部は、200Vの直流電圧Vdc(図14の破線)に、ピークツーピーク値(Vpp)=1600V、デューティ比0.5の交流電圧Vacを2パルスのインターバルで重畳して印加しており、Vmax=1000V、Vmin=−600Vとなっている。休止部は、パルス部のマイナス側波形の直後に交流電圧をオフとし、100Vの直流電圧Vdc(図14の一点鎖線)のみを交流波形1パルス分のインターバルで印加している。パルス部と休止部を合わせたインターバルは交流波形3パルス分の長さとなっている。
一方、第2ブランクパルスバイアスでは、パルス部は、直流電圧Vdcを印加せず(0V、図14の破線)に、ピークツーピーク値(Vpp)=1600V、デューティ比0.5の交流電圧Vacを2パルスのインターバルで重畳して印加しており、Vmax=800V、Vmin=−800Vとなっている。休止部は、パルス部のマイナス側波形の直後に交流電圧をオフとし、−100Vの直流電圧Vdc(図14の一点鎖線)のみを交流波形1パルス分のインターバルで印加している。パルス部と休止部を合わせたインターバルは交流波形3パルス分の長さとなっている。
本実施形態では、第1ブランクパルスバイアスに対して第2ブランクパルスバイアスを全体的に低電圧側にシフトしている。このように、第2の設定時に用いる第2ブランクパルスバイアスを、トナーが現像ローラー23側に引き戻される方向に作用するバイアスに設定されたブランクパルスにすることで、現像ニップの下流側R3(図8参照)で浮遊している大粒径トナーを現像ローラー23側に引き戻す確率が増加する。従って、ベタ画像のエッジ部における吸い込みや、ベタ画像に隣接するハーフトーン画像のエッジ部における白抜けが発生し易い第2の設定において、それらの不具合を効果的に抑制することができる。
一方、第1の設定時に用いる第1ブランクパルスバイアスを、トナーが感光体ドラム1a〜1d側に飛翔する方向(現像性が向上する方向)に作用するバイアスに設定されたブランクパルスにすることで、現像ローラー23上の残留トナーの入れ替わりを促進することとなり、トナーのチャージアップが抑制される。
図15は、本発明の第4実施形態に係る現像装置3a〜3dにおいて現像ローラー23に印加される現像バイアスの一例を示すグラフであり、第1の設定時に用いる現像バイアス(パルス周期<0の部分)と、第2の設定時に用いる現像バイアス(パルス周期>0の部分)とを示している。本実施形態では、第2の設定時に用いる現像バイアスは第1〜第3実施形態と同様にブランクパルスバイアスであるが、第1の設定時に用いる現像バイアスは休止部がなくパルス部のみで構成されるパルスバイアスである。
図15に示すように、第1の設定時に用いるパルスバイアスは、100Vの直流電圧Vdc(図15の破線)に、ピークツーピーク値(Vpp)=1600V、デューティ比0.5の交流電圧Vacを重畳して印加しており、Vmax=900V、Vmin=−700Vとなっている。
一方、第2の設定時に用いるブランクパルスバイアスは、パルス部は、100Vの直流電圧Vdc(図15の破線)に、ピークツーピーク値(Vpp)=1600V、デューティ比0.5の交流電圧Vacを2パルスのインターバルで重畳して印加しており、Vmax=900V、Vmin=−700Vとなっている。休止部は、パルス部のマイナス側波形の直後に交流電圧をオフとし、−100Vの直流電圧(図15の一点鎖線)のみを交流波形1パルス分のインターバルで印加している。パルス部と休止部を合わせたインターバルは交流波形3パルス分の長さとなっている。
本実施形態では、第1の設定時に用いる現像バイアスとして休止部のない通常のパルスバイアスを用い、第2の設定時にブランクパルスバイアスに切り替えている。このように、第2の設定時に用いる現像バイアスを、トナーが現像ローラー23側に引き戻される方向に作用するバイアスに設定されたブランクパルスバイアスにすることで、現像ニップの下流側R3(図8参照)で浮遊している大粒径トナーを現像ローラー23側に引き戻す確率が増加する。従って、ベタ画像のエッジ部における吸い込みや、ベタ画像に隣接するハーフトーン画像のエッジ部における白抜けが発生し易いバイアス設定において、それらの不具合を効果的に抑制することができる。
一方、ベタ画像のエッジ部における吸い込みや、ベタ画像に隣接するハーフトーン画像のエッジ部における白抜けが発生し難い第1の設定では、現像ローラー23上の残留トナーの入れ替わりが課題となるが、第1の設定時に用いる現像バイアスを、トナーが感光体ドラム1a〜1d側に飛翔し易い(現像性が向上する)パルスバイアスにすることで、現像ローラー23上の残留トナーの入れ替わりを促進する効果が得られる。
図16は、本発明の第5実施形態に係る現像装置3a〜3dにおいて現像ローラー23に印加される現像バイアスの一例を示すグラフである。第1〜第3実施形態と同様に、現像バイアスはブランクパルスバイアスであり、第1の設定時に用いる第1ブランクパルスバイアス(パルス周期<0の部分)と、第2の設定時に用いる第2ブランクパルスバイアス(パルス周期>0の部分)とを示している。
図16に示すように、第1ブランクパルスバイアスでは、パルス部は、100Vの直流電圧Vdc(図16の破線)に、ピークツーピーク値(Vpp)=1800V、デューティ比0.5の交流電圧Vacを2パルスのインターバルで重畳して印加しており、Vmax=1000V、Vmin=−800Vとなっている。休止部は、パルス部のマイナス側波形の直後に交流電圧をオフとし、100Vの直流電圧Vdc(図16の破線)のみを交流波形1パルス分のインターバルで印加している。パルス部と休止部を合わせたインターバルは交流波形3パルス分の長さとなっている。
一方、第2ブランクパルスバイアスでは、パルス部は、100Vの直流電圧Vdc(図16の破線)に、ピークツーピーク値(Vpp)=1800V、デューティ比0.5の交流電圧Vacを2パルスのインターバルで重畳して印加しており、Vmax=1000V、Vmin=−800Vとなっている。休止部は、パルス部のマイナス側波形の直後に交流電圧をオフとし、−100Vの直流電圧(図16の一点鎖線)のみを交流波形1パルス分のインターバルで印加している。パルス部と休止部を合わせたインターバルは交流波形3パルス分の長さとなっている。
本実施形態では、第2ブランクパルスバイアスのパルス部は第1ブランクパルスバイアスと同一とし、休止部を第1ブランクパルスバイアスよりも低電圧側にシフトしている。このように、第2ブランクパルスバイアスを、トナーが現像ローラー23側に引き戻される方向に作用するバイアスに設定されたブランクパルスにすることで、現像ニップの下流側R3(図8参照)で浮遊している大粒径トナーを現像ローラー23側に引き戻す確率が増加する。従って、ベタ画像のエッジ部における吸い込みや、ベタ画像に隣接するハーフトーン画像のエッジ部における白抜けが発生し易いバイアス設定において、それらの不具合を効果的に抑制することができる。
一方、第1の設定時に用いる第1ブランクパルスバイアスでは、休止部を第1ブランクパルスバイアスよりも高電圧側(現像性が向上する方向)にシフトすることで、現像ローラー23上に残存するトナー量が減少する。従って、第1の設定では、トナーがチャージアップすることで発生する画像濃度低下や現像ゴースト等の画像品質の低下を効果的に抑制することができる。
図17は、本発明の第6実施形態に係る現像装置3a〜3dにおいて現像ローラー23に印加される現像バイアスの一例を示すグラフである。第1〜第3、第5実施形態と同様に、現像バイアスはブランクパルスバイアスであり、第1の設定時に用いる第1ブランクパルスバイアス(パルス周期<0の部分)と、第2の設定時に用いる第2ブランクパルスバイアス(パルス周期>0の部分)とを示している。
図17に示すように、第1ブランクパルスバイアスでは、パルス部は、100Vの直流電圧Vdc(図17の破線)に、ピークツーピーク値(Vpp)=1800V、デューティ比0.5の交流電圧Vacを2パルスのインターバルで重畳して印加しており、Vmax=1000V、Vmin=−800Vとなっている。休止部は、パルス部のプラス側波形(トナーを感光体ドラム1a〜1d側に飛翔させる方向に作用するパルス)の直後に交流電圧をオフとし、100Vの直流電圧Vdc(図17の破線)のみを交流波形1パルス分のインターバルで印加している。パルス部と休止部を合わせたインターバルは交流波形3パルス分の長さとなっている。
一方、第2ブランクパルスバイアスは、パルス部のマイナス側波形の直後に休止部となる波形を用いている以外は第1ブランクパルスバイアスと同一である。
本実施形態では、第1ブランクパルスバイアスとして、パルス部のプラス側波形(トナーを感光体ドラム1a〜1d側に飛翔させる方向に作用するパルス)の直後に休止部を連続させたブランクパルスバイアスを用い、第2ブランクパルスバイアスとして、パルス部のマイナス側波形(トナーを現像ローラー23側に引き戻す方向に作用するパルス)の直後に休止部を連続させたブランクパルスを用いている。このように、第2の設定時に用いる第2ブランクパルスバイアスでは、トナーが現像ローラー23側に引き戻された直後に休止部となることで、現像ニップ間に浮遊している大粒径トナーが現像ローラー23側近傍にあるときに引き戻されるため、より効率よく引き戻す確率が増加する。従って、ベタ画像のエッジ部における吸い込みや、ベタ画像に隣接するハーフトーン画像のエッジ部における白抜けが発生し易いバイアス設定において、それらの不具合を効果的に抑制することができる。
一方、第1の設定時に用いる第1ブランクパルスバイアスでは、トナーが感光体ドラム1a〜1d側に飛翔した直後に休止部となることで、現像ローラー23上に残存するトナー量が減少する。従って、第1の設定では、トナーがチャージアップすることで発生する画像濃度低下や現像ゴースト等の画像品質の低下を効果的に抑制することができる。
図18は、本発明の第7実施形態に係る現像装置3a〜3dにおいて現像ローラー23に印加される現像バイアスの一例を示すグラフである。第1〜第3、第5、第6実施形態と同様に、現像バイアスはブランクパルスバイアスであり、第1の設定時に用いる第1ブランクパルスバイアス(パルス周期<0の部分)と、第2の設定時に用いる第2ブランクパルスバイアス(パルス周期>0の部分)とを示している。
図18に示すように、第1ブランクパルスバイアスでは、パルス部は、100Vの直流電圧Vdc(図18の破線)に、ピークツーピーク値(Vpp)=1800V、デューティ比0.5の交流電圧Vacを2パルスのインターバルで重畳して印加しており、Vmax=1000V、Vmin=−800Vとなっている。休止部は、交流電圧をオフとし、−100Vの直流電圧Vdc(図18の一点鎖線)のみを交流波形1パルス分のインターバルで印加している。パルス部と休止部を合わせたインターバルは交流波形3パルス分の長さとなっている。
一方、第2ブランクパルスバイアスでは、パルス部は、300Vの直流電圧Vdc(図18の破線)に、ピークツーピーク値(Vpp)=1800V、デューティ比0.5の交流電圧Vacを2パルスのインターバルで重畳して印加しており、Vmax=1200V、Vmin=−600Vとなっている。休止部は、交流電圧をオフとし、−100Vの直流電圧(図18の一点鎖線)のみを交流波形1パルス分のインターバルで印加している。パルス部と休止部を合わせたインターバルは交流波形3パルス分の長さとなっている。
本実施形態では、第1ブランクパルスバイアスのパルス部の直流電圧を、第2ブランクパルスバイアスに比べてマイナス側(トナーが現像ローラー23側に引き戻される方向)に大きくなるように変更している。このように、現像ニップの中央部R2(図6参照)で現像ニップ内を往復運動しているトナーがより速いスピードで現像ローラー23に衝突するため、現像ローラー23上の残留トナーが現像ローラー23から離脱する確率が増加する。従って、第1の設定では、トナーがチャージアップすることで発生する画像濃度低下や現像ゴースト等の画像品質の低下を効果的に抑制することができる。
その他本発明は、上記各実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば上記各実施形態においては、本発明を、二成分現像剤を用い、磁気ローラー22上に磁気ブラシを形成し、磁気ローラー22から現像ローラー23にトナーのみを移動させ、現像ローラー23から感光体ドラム1a〜1dにトナーを飛翔させる非接触現像方式の現像装置3a〜3dに適用したが、その他、一成分現像剤を用いる現像装置や、磁気ローラー22を設けず現像ローラー23のみを設け、現像ローラー23上に形成される磁気ブラシを感光体ドラム1a〜1dに接触させる接触現像方式の現像装置にも適用することができる。但し、本発明を非接触現像方式の現像装置3a〜3dに適用した場合により顕著な効果が得られる。
また、上記各実施形態においては、感光体ドラム1a〜1dとしてアモルファスシリコン(a−Si)感光体を用いているが、アモルファスシリコン(a−Si)感光体に代えて、有機(OPC)感光体、セレン砒素感光体にも適用することができる。但し、a−Si感光体は有機感光体に比べて比誘電率が高く、現像γの傾きが大きくなる。そのため、第1の設定(図12〜図17のパルス周期<0)とすることが困難であり、第2の設定(図12〜図17のパルス周期>0)が重要となる。従って、a−Si感光体を備えた画像形成装置に本発明を適用した場合により顕著な効果が得られる。
また、供給限界現像量が支配的な現像設定とするか、電界中和現像量が支配的な現像設定とするかは、上述したような感光体ドラム1a〜1dの誘電率によって決定する場合の他、画質モードによって決定しても良い。例えば、写真やグラフィック画像等の出力に用いる高画質モードにおいては、図5のように電界中和現像量が支配的な現像設定とし、文字画像の出力に用いる汎用モードにおいては、図6のように供給限界現像量が支配的な現像設定とすれば良い。
また本発明は、図1に示したようなカラープリンター100に限らず、モノクロプリンターやモノクロ複写機、デジタル複合機、タンデム式或いはロータリー式のカラー複写機、或いはファクシミリ等、現像装置を備えた種々の画像形成装置に適用できるのはもちろんである。