JP2015203049A - 鏡胴用筒状体及び鏡胴 - Google Patents

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Abstract

【課題】レンズを備える撮像装置又は光学機器に好適な部品であって、隣接する筒状体又は他の部品と動的に接触した際に、良好な摺動性が得られるとともに、擦れ音(軋み音)の発生が抑制され、寸法安定性、耐衝撃性、剛性及び外観性に優れる鏡胴用筒状体、並びに、これを備える鏡胴を提供する。【解決手段】本発明の鏡胴用筒状体は、ポリカーボネート樹脂、ゴム質重合体に由来する重合体部と、ビニル系(共)重合体部とを備えるゴム質重合体強化ビニル系樹脂、並びに、繊維状充填剤(ガラス繊維等)を含有し、融点(JIS K 7121−1987)が0℃〜100℃の範囲にある熱可塑性樹脂組成物からなる。【選択図】図1

Description

本発明は、レンズを備える撮像装置又は光学機器に配される鏡胴用筒状体及びこれを備える鏡胴に関する。
従来、カメラ(デジタルカメラ、動画カメラを含む)、望遠鏡(双眼鏡)、顕微鏡、投影露光装置、光ディスク装置、光学測定装置等の、レンズを備える撮像装置又は光学機器においては、自動焦点調節、ズーム等の機能が向上する一方、コストダウンも進み、例えば、これらの機能を支える鏡胴用筒状体(鏡筒)の樹脂化が図られてきた。樹脂原料は、製品を製造した際の成形収縮を抑制するものであって、強度、剛性、寸法安定性等に優れた製品を与えることが必要であり、このために、ポリカーボネート樹脂をはじめとする数々の熱可塑性樹脂を含有する組成物が検討されてきた。
特許文献1には、(a−1)ポリカーボネート樹脂又は(a−2)ポリカーボネート樹脂及びスチレン系樹脂のアロイからなる樹脂成分(A)40〜95質量%と、繊維断面における長径と短径との比(長径/短径)の平均値が2.5〜6であるガラス繊維(B)4〜40質量%と、カーボン繊維(C)1〜30質量%とからなる樹脂組成物100質量部に対し、(d−1)フェノキシ樹脂及び(d−2)エポキシ樹脂から選ばれる一種以上の官能基を有する界面改質樹脂(D)0.3〜5質量部を含む繊維強化ポリカーボネート系樹脂組成物が開示されている。また、特許文献2には、芳香族ポリカーボネート樹脂(A−1)からなる熱可塑性樹脂(A成分)40〜99重量部、繊維断面の長径の平均値が10〜50μm、長径と短径の比(長径/短径)の平均値が1.5〜8である扁平断面ガラス繊維(B−1)及び(B−1)を除く繊維状充填材(B−2)よりなり、(B−1)と(B−2)との重量比(B−1/B−2)が30/70〜99/1である強化充填材(B成分)1〜60重量部、並びに、A成分及びB成分の合計100重量部に対し0.001〜20重量部の難燃剤(C成分)よりなるガラス繊維強化樹脂組成物が開示されている。
ところで、カメラ等の撮像装置又は光学機器の中には、その本体に、筒状の固定鏡筒と、この固定鏡筒に対して光軸方向に進退自在に支持された可動鏡筒とを備える鏡胴が接続された構造、即ち、ズーム機能を有する沈胴式構造を備えるものが知られている。鏡胴の内部構造としては、固定鏡筒及び可動鏡筒が、直接的に接触する場合があれば、その間に他の部材が介在している場合もある。可動鏡筒を円滑に作動させるために、固定鏡筒の接触面側の少なくとも一部分、又は、可動鏡筒の接触面側の少なくとも一部分に潤滑剤を塗布しておいたり、他の部材に潤滑剤を染み込ませたりしておくことが試みられている。また、下記の特許文献3に示されるように、摺動性付与剤、即ち、(潤)滑剤を含有する熱可塑性樹脂組成物からなる成形品を用いることにより、その表面において良好な摺動性が付与されることも知られている。
特許文献3には、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂よりなる熱可塑性樹脂100重量部に対し、(B)繊維断面の長径の平均値が10〜50μm、長径と短径との比(長径/短径)の平均値が1.5〜8である扁平断面ガラス繊維(B−1)1〜150重量部、及び、(B−1)を除く充填材(B−2)0〜150重量部、並びに、(C)摺動性付与剤0.1〜30重量部を含有するガラス繊維強化樹脂組成物が開示されている。そして、摺動性付与剤(C)として、オレフィン系ワックス、フッ素系樹脂、フッ素系オイル、シリコーン系オイル、シリコーン系パウダー、ポリオレフィン系樹脂、鉱物油,合成油、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド及び二硫化モリブデンが例示されている。
特開2009−292953号公報 特開2010−70590号公報 特開2010−275346号公報
固定鏡筒の接触面側の少なくとも一部分、又は、可動鏡筒の接触面側の少なくとも一部分に潤滑剤を塗布する場合には、塗布量にばらつきを生じたり、製品の組み付けに時間を要したりすることがあり、他の部材に潤滑剤を染み込ませる場合には、製品の使用中に外部に滲み出して外観不良を引き起こすことがあった。更に、潤滑剤が枯渇して、所期の摺動性が得られないこともあった。また、特許文献3に記載された摺動性付与剤の中には、成形体の表面から滲み出るものがあり、長期に渡って良好な摺動性及び外観性が得られるかどうか不明である。
撮像装置又は光学機器を構成する鏡胴としては、複数の可動鏡筒を備えるものもあり、固定鏡筒と、それに隣接する可動鏡筒との間、又は、可動鏡筒どうしの間、において摺動性が得られる一方、従来の材料からなる鏡筒どうしを動的接触させると、擦れ音(軋み音)が顕著となる場合があった。
本発明の目的は、レンズを備える撮像装置又は光学機器に好適な部品であって、隣接する筒状体又は他の部品と動的に接触した際に、良好な摺動性が得られ、擦れ音(軋み音)の発生が抑制され、寸法安定性、耐衝撃性、剛性及び外観性に優れる鏡胴用筒状体、並びに、これを備え、撮像装置又は光学機器において滑らかな操作感が得られる鏡胴を提供することである。
本発明は、カメラ(デジタルカメラ、動画カメラを含む)、望遠鏡(双眼鏡)、顕微鏡、投影露光装置、光ディスク装置、光学測定装置等の、レンズを備える撮像装置又は光学機器に好適な部品であり、以下に示される。
1.〔A〕ポリカーボネート樹脂、〔B〕ゴム質重合体に由来する重合体部と、ビニル系(共)重合体部とを備えるゴム質重合体強化ビニル系樹脂、及び、〔C〕繊維状充填剤、を含有し、融点(JIS K 7121−1987)が0℃〜100℃の範囲にある熱可塑性樹脂組成物からなることを特徴とする鏡胴用筒状体。
2.上記ゴム質重合体強化ビニル系樹脂〔B〕及び上記繊維状充填剤〔C〕の含有量は、上記ポリカーボネート樹脂〔A〕の含有量を100質量部とした場合に、それぞれ、0.5〜40質量部及び10〜200質量部である上記1に記載の鏡胴用筒状体。
3.上記ゴム質重合体強化ビニル系樹脂〔B〕が、エチレン・α−オレフィン系ゴムに由来する重合体部と、ビニル系(共)重合体部とを備えるエチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体強化ビニル系樹脂を含む上記1又は2に記載の鏡胴用筒状体。
4.上記エチレン・α−オレフィン系ゴムの融点(JIS K 7121−1987)が0℃〜100℃の範囲にある上記3に記載の鏡胴用筒状体。
5.上記エチレン・α−オレフィン系ゴムに由来する重合体部の含有量が、上記熱可塑性樹脂組成物の全体に対して、0.5〜25質量%である上記3又は4に記載の鏡胴用筒状体。
6.上記ゴム質重合体強化ビニル系樹脂〔B〕が、ポリオルガノシロキサン系ゴムに由来する重合体部と、ビニル系(共)重合体部とを備えるポリオルガノシロキサン系ゴム質重合体強化ビニル系樹脂を含む上記1乃至5のいずれか一項に記載の鏡胴用筒状体。
7.上記ゴム質重合体強化ビニル系樹脂〔B〕を構成するビニル系(共)重合体部が、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含む上記1乃至6のいずれか一項に記載の鏡胴用筒状体。
8.上記繊維状充填剤〔C〕がガラス繊維を含む上記1乃至7のいずれか一項に記載の鏡胴用筒状体用筒状体。
9.上記熱可塑性樹脂組成物が、更に、〔D〕難燃剤を含有する上記1乃至8のいずれか一項に記載の鏡胴用筒状体。
10.上記1乃至9のいずれか一項に記載の鏡胴用筒状体を備えることを特徴とする鏡胴。
本発明の鏡胴用筒状体は、固定鏡筒又は可動鏡筒として用いることができ、これを備える本発明の鏡胴とともに、上記に例示した撮像装置又は光学機器に好適な部品である。特に、本発明の鏡胴用筒状体は、特定の構成の熱可塑性樹脂組成物により構成されているため、隣接する筒状体又は他の部品と動的に接触した際に、良好な摺動性が得られ、擦れ音(軋み音)の発生が抑制され、寸法安定性、耐衝撃性、剛性及び外観性に優れる。即ち、この鏡胴用筒状体の外表面及び内表面のいずれにおいても、潤滑剤等を使用せずとも、十分な摺動性が得られ、作動音以外の雑音(部品同士の擦れ音等)の発生を抑制することができる。そして、潤滑剤を塗布した場合に発生する外観性の低下を抑制することもできる。従って、本発明の鏡胴用筒状体又は鏡胴を備える撮像装置又は光学機器に、滑らかな操作感及び耐久性を付与することができる。
本発明の鏡胴用筒状体の一例を示す概略斜視図である。 本発明の鏡胴用筒状体を備える鏡胴の一例を示す概略斜視図である。 本発明の鏡胴を備える撮像装置又は光学機器の部分断面の一例を示す概略図である。 本発明の鏡胴を備える撮像装置又は光学機器の部分断面の他例を示す概略図である。 実施例にて作製した円筒型成形体の真円度の評価方法を説明する概略図である。 実施例における摺動性の評価方法を説明する概略図である。
以下、本発明を詳しく説明する。
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルを、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートを、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基及びメタクリロイル基を、「(共)重合体」は、単独重合体及び共重合体を意味する。
また、JIS K 7121−1987に準ずる融点(以下、「Tm」と表記する)は、DSC(示差走査熱量計)を用い、1分間に20℃の一定昇温速度で吸熱変化を測定し、得られた吸熱パターンのピーク温度を読みとった値である。
更に、ポリカーボネート樹脂を除く高分子の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリスチレン換算値である。
本発明の鏡胴用筒状体は、上記のように、〔A〕ポリカーボネート樹脂(以下、「成分〔A〕」ともいう。)、〔B〕ゴム質重合体に由来する重合体部と、ビニル系(共)重合体部とを備えるゴム質重合体強化ビニル系樹脂(以下、「成分〔B〕」ともいう。)、及び、〔C〕繊維状充填剤(以下、「成分〔C〕」ともいう。)を含有し、Tmが0℃〜100℃の範囲にある、特定の熱可塑性樹脂組成物からなる成形体である。
また、本発明の鏡胴は、特定の熱可塑性樹脂組成物からなる鏡胴用筒状体(以下、「筒状部」ということがある。)を備える物品である。
本発明の鏡胴用筒状体及び鏡胴は、カメラ(デジタルカメラ、動画カメラを含む)、望遠鏡(双眼鏡)、顕微鏡、投影露光装置、光ディスク装置、光学測定装置等の、レンズを備える撮像装置又は光学機器に配される部品である。
本発明の鏡胴用筒状体の形状及びサイズは、特に限定されない。本発明において、鏡胴用筒状体は、外観が筒に見えるものだけでなく、輪に見えるものも含む。また、鏡胴用筒状体の断面形状は、円、楕円、多角、星、又は、これらが変形したもの等とすることができる。図1は、本発明の鏡胴用筒状体の一例であり、円筒形状を示す図である。尚、開口する1端側から他端側への長さ方向において、断面形状が同じであってよいし、異なってもよい。更に、開口する1端側から他端側への長さ方向において、断面形状が同じである前者の場合、1端側から他端側に対して、孔径が同一であってよいし、異なってもよい(図2参照)。
本発明の鏡胴用筒状体は、外表面及び内表面のいずれにおいても、凸部、凹部、溝部、孔部等を備えてもよい。また、鏡胴用筒状体の端部には、切り欠き部を備えてもよい。
以下、本発明の鏡胴用筒状体、又は、本発明の鏡胴の構成部材である筒状部を構成する熱可塑性樹脂組成物について、説明する。この熱可塑性樹脂組成物は、成分〔A〕、〔B〕及び〔C〕を必須とするが、他の熱可塑性樹脂や添加剤(いずれも後述)を含有してもよい。
上記熱可塑性樹脂組成物に含まれる成分〔A〕は、主鎖にカーボネート結合を有するポリカーボネート樹脂であれば、特に限定されず、芳香族ポリカーボネートでもよいし、脂肪族ポリカーボネートでもよい。また、これらを組み合わせて用いてもよい。この成分〔A〕は、末端が、R−CO−基、R′−O−CO−基(R及びR′は、いずれも有機基を示す。)に変性されたものであってもよい。
上記熱可塑性樹脂組成物は、成分〔A〕を一種のみ含んでよいし、二種以上の組み合わせで含んでもよい。
本発明においては、鏡胴用筒状体に対する耐衝撃性及び耐熱性の観点から、芳香族ポリカーボネートを含むことが好ましい。
上記芳香族ポリカーボネートとしては、芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステルを溶融によりエステル交換(エステル交換反応)して得られたもの、ホスゲンを用いた界面重縮合法により得られたもの、ピリジンとホスゲンとの反応生成物を用いたピリジン法により得られたもの等を用いることができる。
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、分子内にヒドロキシル基を二つ有する化合物であればよく、ヒドロキノン、レゾルシノール等のジヒドロキシベンゼン、4,4′−ビフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「ビスフェノールA」という。)、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、9,9−ビス(p−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(p−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、4,4′−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール、4,4′−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール、ビス(p−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エステル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(p−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホキシド等が挙げられる。これらは、単独であるいは二つ以上を組み合わせて用いることができる。
上記芳香族ヒドロキシ化合物のうち、二つのベンゼン環の間に炭化水素基を有する化合物が好ましい。尚、この化合物において、炭化水素基は、ハロゲン置換された炭化水素基であってもよい。また、ベンゼン環は、そのベンゼン環を構成する炭素原子に結合する水素原子がハロゲン原子に置換されたものであってもよい。従って、上記化合物としては、ビスフェノールA、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ブタン等が挙げられる。これらのうち、ビスフェノールAが特に好ましい。
芳香族ポリカーボネートをエステル交換反応により得るために用いる炭酸ジエステルとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−tert−ブチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等が挙げられる。これらは、単独であるいは二つ以上を組み合わせて用いることができる。
上記成分〔A〕の平均分子量及び分子量分布は、組成物が、成形加工性を有する限り、特に限定されない。成分〔A〕の分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、25℃で測定した溶液粘度より換算した粘度平均分子量(Mv)で、好ましくは10,000〜50,000、より好ましくは15,000〜30,000、更に好ましくは17,500〜27,000である。粘度平均分子量が10,000〜50,000であると、成形加工性及び機械的強度に優れる。
また、上記成分〔A〕のMFR(温度240℃、荷重10kg)は、好ましくは1〜70g/10分、より好ましくは2.5〜50g/10分、更に好ましくは4〜30g/10分である。
上記成分〔B〕は、ゴム質重合体に由来する重合体部(以下、「ゴム質重合体部」という。)と、ビニル系(共)重合体部とを備え、これらの部分が化学的に結合して複合化したゴム質重合体強化ビニル系樹脂である。
上記熱可塑性樹脂組成物は、成分〔B〕を一種のみ含んでよいし、二種以上の組み合わせで含んでもよい。
上記ゴム質重合体は、25℃でゴム質であれば、単独重合体であってもよいし、共重合体であってもよい。本発明においては、ジエン系重合体(以下、「ジエン系ゴム」という。)及び非ジエン系重合体(以下、「非ジエン系ゴム」という。)のいずれを用いてもよいが、非ジエン系ゴムを用いることが特に好ましい。このゴム質重合体は、架橋重合体であってもよいし、非架橋重合体であってもよい。上記ゴム質重合体は、一種単独であるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
上記ジエン系ゴムとしては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン等の単独重合体;スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・ブタジエン共重合体等のスチレン・ブタジエン系共重合体ゴム;スチレン・イソプレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・イソプレン共重合体等のスチレン・イソプレン系共重合体ゴム等が挙げられる。これらの共重合体は、ブロック共重合体でもよいし、ランダム共重合体でもよい。また、これらの共重合体は、水素添加(但し、水素添加率は50%未満。)されたものであってもよい。
また、上記非ジエン系ゴムとしては、エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴム(以下、「エチレン・α−オレフィン系ゴム」という。);ウレタン系ゴム;アクリル系ゴム;ポリオルガノシロキサン系ゴム;シリコーン・アクリル系IPNゴム;共役ジエン系化合物よりなる単位を含む(共)重合体を水素添加してなる水素添加重合体等が挙げられる。この水素添加重合体は、ブロック共重合体であってもよいし、ランダム共重合体であってもよい。また、これらの共重合体は水素添加(但し、水素添加率は50%以上。)されたものであってもよい。
本発明において、上記ゴム質重合体部は、非ジエン系ゴムであるエチレン・α−オレフィン系ゴムに由来するゴム質重合体部を含むことが好ましい。以下、エチレン・α−オレフィン系ゴムに由来するゴム質重合体部を備えるゴム強化ビニル系樹脂を、「エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体強化ビニル系樹脂」という。
上記エチレン・α−オレフィン系ゴムは、エチレンに由来する構造単位と、α−オレフィンに由来する構造単位とを含む共重合体ゴムである。
α−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−ヘキサデセン、1−エイコセン等が挙げられる。これらのα−オレフィンは、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。α−オレフィンの炭素原子数は、鏡胴用筒状体に対する耐衝撃性の観点から、好ましくは3〜20、より好ましくは3〜12、更に好ましくは3〜8である。
上記エチレン・α−オレフィン系ゴムを構成する、エチレンに由来する構造単位及びα−オレフィンに由来する構造単位の含有割合は、鏡胴用筒状体が、隣接する筒状体又は他の部品と動的に接触した際に、良好な摺動性が得られ、また、優れた耐衝撃性が得られることから、両者の合計を100質量%とした場合に、好ましくは5〜95質量%及び95〜5質量%、より好ましくは50〜95質量%及び50〜5質量%、更に好ましくは60〜95質量%及び40〜5質量%である。
本発明において、好ましいエチレン・α−オレフィン系ゴムは、Tmが0℃〜100℃の範囲にあるエチレン・α−オレフィン系共重合体(以下、「エチレン・α−オレフィン系ゴム(r1)」という。)であり、その限りにおいて、他の単量体に由来する構造単位を有してもよい。他の単量体としては、アルケニルノルボルネン類、環状ジエン類、脂肪族ジエン類等の非共役ジエン化合物が挙げられる。これらの非共役ジエン化合物は、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。非共役ジエン化合物に由来する構造単位の含有割合の上限は、上記エチレン・α−オレフィン系ゴム(r1)を構成する構造単位の全量を100質量%とした場合に、好ましくは10質量%、より好ましくは5質量%、更に好ましくは3質量%である。
上記エチレン・α−オレフィン系ゴム(r1)のTmは、鏡胴用筒状体が、隣接する筒状体又は他の部品と滑らかに動的接触することができ、その際に軋み音(擦れ音)の発生が低減され、優れた耐衝撃性が得られることから、好ましくは10℃〜90℃、より好ましくは20℃〜80℃である。尚、エチレン・α−オレフィン系ゴム(r1)のTmが0℃〜100℃の範囲に存在することは、このゴムが結晶性を有することを意味している。そして、このエチレン・α−オレフィン系ゴム(r1)が結晶性部分を有することにより、鏡胴用筒状体が、隣接する筒状体又は他の部品と滑らかに動的接触することができ、また、スリップスティック現象の発生が抑制されて、上記部品との接触による軋み音(擦れ音)の発生が低減されるものと考えられる。
上記エチレン・α−オレフィン系ゴム(r1)は、鏡胴用筒状体が、隣接する筒状体又は他の部品と滑らかに動的接触することができ、その際に軋み音(擦れ音)の発生が低減され、優れた耐衝撃性が得られることから、エチレンに由来する構造単位と、α−オレフィンに由来する構造単位とからなるエチレン・α−オレフィン共重合体であることが好ましい。具体的には、エチレン・α−オレフィン系ゴム(r1)は、好ましくは、エチレンに由来する構造単位と、炭素原子数が3〜8のα−オレフィンに由来する構造単位とからなる共重合体であり、より好ましくは、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体及びエチレン・1−オクテン共重合体であり、特に好ましくは、エチレン・プロピレン共重合体である。
上記成分〔B〕に含まれるエチレン・α−オレフィン系ゴムは、エチレン・α−オレフィン系ゴム(r1)のみであってよいし、エチレン・α−オレフィン系ゴム(r1)と、他のエチレン・α−オレフィン系ゴム(Tmを有さないゴム、又は、Tmが0℃〜100℃の範囲外にあるゴム)との組み合わせであってもよい。
また、上記成分〔B〕に含まれるエチレン・α−オレフィン系ゴム(r1)の含有割合は、鏡胴用筒状体が、隣接する筒状体又は他の部品と滑らかに動的接触することができ、その際に軋み音(擦れ音)の発生が低減されることから、成分〔B〕を100質量%とした場合に、好ましくは5〜60質量%、より好ましくは10〜50質量%、更に好ましくは15〜40質量%である。
上記成分〔B〕が、エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体強化ビニル系樹脂を含有する場合、エチレン・α−オレフィン系ゴムに由来する重合体部の含有量は、本発明の鏡胴用筒状体を構成する熱可塑性樹脂組成物の全体に対して、好ましくは0.5〜25質量%、より好ましくは0.7〜15質量%、更に好ましくは1〜7質量%である。このエチレン・α−オレフィン系ゴムは、上記エチレン・α−オレフィン系ゴム(r1)を含むことが好ましい。
本発明において、上記ゴム質重合体部として、エチレン・α−オレフィン系ゴムに由来するゴム質重合体部と、他のゴムに由来するゴム質重合体部とを含むことも好ましい態様である。この場合、ゴム質重合体部の形成に用いられるエチレン・α−オレフィン系ゴムとしては、その中の好ましくは50質量%以上、より好ましくは65〜100質量%がエチレン・α−オレフィン系ゴムであると、本発明の効果を十分に得ることができる。
他のゴムとしては、ポリオルガノシロキサン系ゴム及びジエン系ゴムが好ましい。以下、ポリオルガノシロキサン系ゴムに由来するゴム質重合体部を備えるゴム強化ビニル系樹脂を、「ポリオルガノシロキサン系ゴム質重合体強化ビニル系樹脂」という。以下、ジエン系ゴムに由来するゴム質重合体部を備えるゴム強化ビニル系樹脂を、「ジエン系ゴム質重合体強化ビニル系樹脂」という。
上記ポリオルガノシロキサン系ゴムは、好ましくは、重合性不飽和結合(炭素−炭素二重結合)を有するポリオルガノシロキサン系重合体であり、特に好ましくは、下記一般式(1)で表される構造単位を有するオルガノシロキサン(i)の1種以上と、グラフト交叉剤(ii)とを共縮合して得られた変性ポリオルガノシロキサンゴムである。
〔R SiO〕(4−n)/2 (1)
(式中、Rは置換又は非置換の1価炭化水素基であり、nは0〜3の整数を示す。Rが複数ある場合、互いに同一であっても異なってもよい。)
上記一般式(1)におけるR、即ち、1価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;及び、これら炭化水素基における炭素原子に結合した水素原子の一部がハロゲン原子、シアノ基等で置換された基;並びにアルキル基の水素原子の少なくとも1個がメルカプト基で置換された基等が挙げられる。
上記オルガノシロキサン(i)は、直鎖状、分岐状又は環状であり、環状構造を有することが好ましい。具体的には、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、トリメチルトリフェニルシクロトリシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。これらは、単独であるいは二つ以上を組み合わせて用いることができる。
尚、上記オルガノシロキサン(i)は、上記一般式(1)で表される化合物の1種以上を用いて、予め縮合された、例えば、重量平均分子量(Mw)が500〜10,000程度のポリオルガノシロキサンであってもよい。そして、このポリオルガノシロキサンにおいて、その分子鎖末端が、ヒドロキシル基、アルコキシ基、トリメチルシリル基、メチルジフェニルシリル基等の官能基で封止されたポリオルガノシロキサンであってもよい。
上記グラフト交叉剤(ii)としては、ビニルメチルジメトキシシラン、p−ビニルフェニルメチルジメトキシシラン、1−(p−ビニルフェニル)メチルジメチルイソプロポキシシラン、2−(p−ビニルフェニル)エチレンメチルジメトキシシラン、3−(p−ビニルフェノキシ)プロピルメチルジエトキシシラン、1−(o−ビニルフェニル)−1,1,2−トリメチル−2,2−ジメトキシジシラン、アリルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等の、炭素−炭素不飽和結合とアルコキシシリル基とを有する化合物;γ−メルカプトプロピルメチルメチルジメトキシシラン等の、メルカプト基(チオール基)を有するシラン化合物;アミノ基を有するシラン化合物;テトラビニルテトラメチルシクロシロキサン等が挙げられる。
上記オルガノシロキサン(i)が、重合性不飽和結合を含む場合、使用するグラフト交叉剤(ii)は、重合性不飽和結合を有しても有さなくてもよい。
上記変性ポリオルガノシロキサンゴムを製造する場合には、オルガノシロキサン(i)とグラフト交叉剤(ii)とを、アルキルベンゼンスルホン酸等の乳化剤の存在下、ホモミキサー等を用いて剪断混合し、縮合させる方法等とすることができる。上記グラフト交叉剤(ii)の使用量の上限は、上記オルガノシロキサン(i)との合計量を100質量%とした場合に、好ましくは50質量%、より好ましくは10質量%、更に好ましくは5質量%である。
上記変性ポリオルガノシロキサンゴムの製造に際して、耐衝撃性を改良するために、架橋剤を添加することもできる。架橋剤としては、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等の3官能性架橋剤、テトラエトキシシラン等の4官能性架橋剤等が挙げられる。架橋剤を用いる場合、その使用量の上限は、オルガノシロキサン(i)及びグラフト交叉剤(ii)の合計量を100質量部とした場合に、通常、10質量部、好ましくは5質量部である。
上記変性ポリオルガノシロキサンゴムの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは30,000〜1,000,000、より好ましくは50,000〜300,000である。この範囲であると、鏡胴用筒状体に対する耐衝撃性に優れる。
上記ポリオルガノシロキサン系ゴムの体積平均粒子径は、好ましくは20〜500nm、より好ましくは50〜400nm、更に好ましくは150〜350nmである。
上記成分〔B〕が、ポリオルガノシロキサン系ゴム質重合体強化ビニル系樹脂を含有する場合、ポリオルガノシロキサン系ゴムに由来する重合体部の含有量は、本発明の鏡胴用筒状体を構成する熱可塑性樹脂組成物の全体に対して、好ましくは0.3〜20質量%、より好ましくは0.4〜15質量%、更に好ましくは0.5〜7質量%である。このポリオルガノシロキサン系ゴムは、上記変性ポリオルガノシロキサンゴムを含むことが好ましい。
上記成分〔B〕が、エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体強化ビニル系樹脂及びポリオルガノシロキサン系ゴム質重合体強化ビニル系樹脂を含有する場合、これらを構成するエチレン・α−オレフィン系ゴムに由来するゴム質重合体部及びポリオルガノシロキサン系ゴムに由来するゴム質重合体部の含有割合は、鏡胴用筒状体に対する耐衝撃性の観点から、両者の合計を100質量%とした場合に、それぞれ、好ましくは5〜95質量%及び5〜95質量%、より好ましくは20〜90質量%及び10〜80質量%、更に好ましくは50〜85質量%及び15〜50質量%である。
尚、上記の場合、上記エチレン・α−オレフィン系ゴムに由来するゴム質重合体部及びポリオルガノシロキサン系ゴムに由来するゴム質重合体部の合計量は、鏡胴用筒状体に対する耐衝撃性の観点から、成分〔B〕を100質量%とした場合に、好ましくは0.5〜30質量%、より好ましくは1〜20質量%、更に好ましくは3〜15質量%である。
また、ジエン系ゴムは、上記例示した通りであるが、鏡胴用筒状体に対する耐衝撃性の観点から、1,3−ブタジエン又はイソプレンに由来する構造単位を有する(共)重合体が好ましい。
上記成分〔B〕が、エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体強化ビニル系樹脂及びジエン系ゴム質重合体強化ビニル系樹脂を含有する場合、エチレン・α−オレフィン系ゴムに由来するゴム質重合体部及びジエン系ゴムに由来するゴム質重合体部の含有割合は、鏡胴用筒状体に対する耐衝撃性の観点から、両者の合計を100質量%とした場合に、それぞれ、好ましくは10〜95質量%及び5〜90質量%、より好ましくは30〜90質量%及び10〜70質量%、更に好ましくは50〜85質量%及び15〜50質量%である。
尚、上記の場合、上記エチレン・α−オレフィン系ゴムに由来するゴム質重合体部及びジエン系ゴムに由来するゴム質重合体部の合計量は、鏡胴用筒状体に対する耐衝撃性の観点から、成分〔B〕を100質量%とした場合に、好ましくは0.2〜25質量%、より好ましくは1〜20質量%、更に好ましくは3〜15質量%である。
本発明において、上記成分〔B〕は、エチレン・α−オレフィン系ゴムに由来するゴム質重合体部を有するゴム質重合体強化ビニル系樹脂、ジエン系ゴムに由来するゴム質重合体部を有するゴム質重合体強化ビニル系樹脂及びポリオルガノシロキサン系ゴムに由来するゴム質重合体部を有するゴム質重合体強化ビニル系樹脂からなる混合樹脂であってもよい。
上記成分〔B〕を構成するビニル系(共)重合体部は、重合性不飽和結合(炭素−炭素二重結合)を有するビニル化合物(以下、「ビニル系単量体」という。)に由来する構造単位を含む樹脂部である。即ち、このビニル系(共)重合体部は、ビニル系単量体に由来する構造単位の一種のみからなるビニル系重合体部であってよいし、ビニル系単量体に由来する構造単位の二種以上からなるビニル系共重合体部であってもよい。
上記ビニル系単量体としては、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイミド系化合物、不飽和酸無水物、カルボキシル基含有不飽和化合物、アミノ基含有不飽和化合物、アミド基含有不飽和化合物、ヒドロキシル基含有不飽和化合物、オキサゾリン基含有不飽和化合物等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明において、成形性及び成形外観性の観点から、上記ビニル系(共)重合体部は、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含むことが好ましい。上記ビニル系(共)重合体部に含まれる、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位の含有量の下限は、鏡胴用筒状体の剛性の観点から、好ましくは55質量%、より好ましくは60質量%、更に好ましくは65質量%である。
上記芳香族ビニル化合物は、少なくとも一つのビニル結合と、少なくとも一つの芳香族環とを有する化合物であれば、特に限定されない。但し、官能基等の置換基を有さないものとする。その例としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、β−メチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは二つ以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、スチレン及びα−メチルスチレンが好ましく、スチレンが特に好ましい。
上記シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリル、α−イソプロピルアクリロニトリル等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは二つ以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、アクリロニトリルが好ましい。
上記(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは二つ以上を組み合わせて用いることができる。
上記マレイミド系化合物としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−ドデシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(4−メチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジメチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジエチルフェニル)マレイミド、N−(2−メトキシフェニル)マレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−ナフチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。これらのうち、N−フェニルマレイミドが好ましい。また、これらの化合物は、単独であるいは二つ以上を組み合わせて用いることができる。尚、重合体鎖に、マレイミド系化合物に由来する構造単位を導入する他の方法としては、例えば、無水マレイン酸の不飽和ジカルボン酸無水物を共重合し、その後イミド化する方法でもよい。
上記不飽和酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは二つ以上を組み合わせて用いることができる。
上記カルボキシル基含有不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは二つ以上を組み合わせて用いることができる。
上記アミノ基含有不飽和化合物としては、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、アクリル酸ジメチルアミノメチル、アクリル酸ジエチルアミノメチル、アクリル酸2−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸アミノエチル、メタクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノメチル、メタクリル酸ジエチルアミノメチル、メタクリル酸2−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、p−アミノスチレン、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アクリルアミン、メタクリルアミン、N−メチルアクリルアミン等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
上記アミド基含有不飽和化合物としては、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
上記ヒドロキシル基含有不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、o−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、m−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、2−ヒドロキシメチル−α−メチルスチレン、3−ヒドロキシメチル−α−メチルスチレン、4−ヒドロキシメチル−α−メチルスチレン、4−ヒドロキシメチル−1−ビニルナフタレン、7−ヒドロキシメチル−1−ビニルナフタレン、8−ヒドロキシメチル−1−ビニルナフタレン、4−ヒドロキシメチル−1−イソプロペニルナフタレン、7−ヒドロキシメチル−1−イソプロペニルナフタレン、8−ヒドロキシメチル−1−イソプロペニルナフタレン、p−ビニルベンジルアルコール、3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは二つ以上を組み合わせて用いることができる。
上記エポキシ基含有不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−オキシシクロヘキシル、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、メタリルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは二つ以上を組み合わせて用いることができる。
上記オキサゾリン基含有不飽和化合物としては、ビニルオキサゾリン、4−メチル−2−ビニル−2−オキサゾリン、5−メチル−2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4,4−ジメチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、4−メチル−2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、5−メチル−2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4,4−ジメチル−2−オキサゾリン等が挙げられる。
上記ビニル系(共)重合体部が、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含む場合、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位の一種又は二種以上からなるビニル系(共)重合体部であってよいし、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位と、他のビニル系単量体に由来する構造単位とからなるビニル系共重合体部であってもよい。後者の場合、他のビニル系単量体としては、鏡胴用筒状体の剛性及び外観性の観点から、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物が好ましい。
本発明において、上記ビニル系(共)重合体部が、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位と、シアン化ビニル化合物に由来する構造単位とを含む場合、これらの構造単位の合計量は、鏡胴用筒状体の機械的強度及び耐薬品性の観点から、ビニル系(共)重合体部の全量に対して、好ましくは70〜100質量%であり、より好ましくは80〜100質量%、更に好ましくは95〜100質量%である。また、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位及びシアン化ビニル化合物に由来する構造単位の含有割合は、鏡胴用筒状体の機械的強度及び耐薬品性の観点から、これらの合計を100質量%とした場合、それぞれ、好ましくは50〜95質量%及び5〜50質量%、より好ましくは60〜90質量%及び10〜40質量%、更に好ましくは65〜85質量%及び15〜35質量%である。
上記成分〔B〕を構成する、ゴム質重合体部と、ビニル系(共)重合体部との含有割合は、鏡胴用筒状体に対する耐衝撃性の観点から、これらの合計を100質量%とした場合、それぞれ、好ましくは10〜90質量%及び10〜90質量%、より好ましくは30〜85質量%及び15〜70質量%、更に好ましくは45〜80質量%及び20〜55質量%である。
上記成分〔B〕としては、以下に示される。
(B1)エチレン・α−オレフィン系ゴムに由来する重合体部(以下、「エチレン・α−オレフィン系重合体部」という。)と、ビニル系(共)重合体部とを有するゴム質重合体強化ビニル系樹脂(以下、「エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体強化ビニル系樹脂(B1)」という。)
(B2)ジエン系ゴムに由来する重合体部(以下、「ジエン系重合体部」という。)と、ビニル系(共)重合体部とを有するゴム質重合体強化ビニル系樹脂(以下、「ジエン系ゴム質重合体強化ビニル系樹脂(B2)」という。)
(B3)ポリオルガノシロキサン系ゴムに由来する重合体部(以下、「ポリオルガノシロキサン系重合体部」という。)と、ビニル系(共)重合体部とを有するゴム質重合体強化ビニル系樹脂(以下、「ポリオルガノシロキサン系ゴム質重合体強化ビニル系樹脂(B3)」という。)
上記のように、成分〔B〕は、一種又は二種以上の樹脂からなることができるが、本発明の効果が確実に得られることから、エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体強化ビニル系樹脂(B1)を含むことが好ましい。従って、エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体強化ビニル系樹脂(B1)と、ジエン系ゴム質重合体強化ビニル系樹脂(B2)又はポリオルガノシロキサン系ゴム質重合体強化ビニル系樹脂(B3)とを併含する鏡胴用筒状体は、隣接する筒状体又は他の部品と動的に接触した際に、良好な摺動性が得られ、擦れ音(軋み音)の発生が抑制され、寸法安定性、耐衝撃性、剛性及び外観性に優れる。尚、隣接する筒状体又は他の部品の構成材料は、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物と異なる材料であってよいし、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物に含まれる他の材料であってもよい。
上記エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体強化ビニル系樹脂(B1)を構成するエチレン・α−オレフィン系重合体部及びビニル系(共)重合体部の含有割合は、隣接する筒状体又は他の部品と動的に接触した際に、良好な摺動性が得られ、擦れ音(軋み音)の発生が抑制されることから、両者の合計を100質量%とした場合に、それぞれ、好ましくは10〜90質量%及び10〜90質量%、より好ましくは30〜80質量%及び20〜70質量%、更に好ましくは35〜70質量%及び30〜65質量%である。
上記ジエン系ゴム質重合体強化ビニル系樹脂(B2)を構成するジエン系重合体部及びビニル系(共)重合体部の含有割合は、鏡胴用筒状体に対する耐衝撃性の観点から、両者の合計を100質量%とした場合に、それぞれ、好ましくは10〜90質量%及び10〜90質量%、より好ましくは30〜85質量%及び15〜70質量%、更に好ましくは40〜80質量%及び20〜60質量%である。
また、上記ポリオルガノシロキサン系ゴム質重合体強化ビニル系樹脂(B3)を構成するポリオルガノシロキサン系重合体部及びビニル系(共)重合体部の含有割合は、鏡胴用筒状体に対する耐衝撃性の観点から、両者の合計を100質量%とした場合に、それぞれ、好ましくは10〜90質量%及び10〜90質量%、より好ましくは25〜80質量%及び20〜75質量%、更に好ましくは40〜70質量%及び30〜60質量%である。
上記の各ゴム質重合体強化ビニル系樹脂は、好ましくは、ゴム質重合体の存在下に、ビニル系単量体を重合して得られたゴム強化樹脂に含まれるグラフト樹脂である。
上記ゴム強化樹脂を製造するために、ゴム質重合体の存在下に、ビニル系単量体を重合する方法は、乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合、又は、これらを組み合わせた重合方法であり、従来、公知の方法が適用される。
上記の重合法により製造されたゴム強化樹脂は、主として、ゴム質重合体強化ビニル系樹脂を含み、更に、原料として用いたゴム質重合体そのものや、このゴム質重合体に化学的に結合していない、ビニル系単量体に由来する構造単位を含むビニル系(共)重合体が含まれる。後者のビニル系(共)重合体は、他の熱可塑性樹脂に含まれる。
上記熱可塑性樹脂組成物に含まれる成分〔B〕の含有量は、上記成分〔A〕の含有量を100質量部とした場合に、好ましくは0.5〜40質量部、より好ましくは1.5〜35質量部、更に好ましくは2〜30質量部、特に好ましくは2.5〜20質量部である。
上記成分〔C〕は、繊維状充填剤であり、下記式で表されるアスペクト比が、好ましくは2〜200、より好ましくは2〜120、更に好ましくは2.5〜70、特に好ましくは3〜50の長尺形状を有する充填剤である。アスペクト比が2〜120であることにより、機械的強度に優れ、更に、異方性が抑制され成形外観性に優れる鏡胴用筒状体とすることができる。尚、長手方向の形状は、直線状、波線状、ジグザグ状、曲線状、螺旋状等とすることができる。
Figure 2015203049
上記式では、繊維長、繊維径、長径及び短径を、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)により、一定量の数の充填剤に対して測定した後の数平均値を用いることができる。本発明の鏡胴用筒状体から、成分〔C〕を単離する場合には、例えば、空気中、500℃〜800℃の温度で加熱して、樹脂成分を灰化させた後、成分〔C〕を回収する方法等を適用すればよい。
尚、上記成分〔C〕の平均繊維長は、好ましくは0.02〜2.8mm、より好ましくは0.05〜2.2mm、更に好ましくは0.1〜1.5mmである。
上記成分〔C〕は、中実体、多孔体、管状体等の構造を有する繊維のみからなるものであってよいし、中実体、多孔体、管状体等の構造を有する基部繊維と、その表面の少なくとも一部に、所定の表面処理等が施されたことにより形成された層とを有するものであってもよい。即ち、上記成分〔C〕の構成材料は、その構造により、適宜、選択され、一種のみであってよいし、二種以上であってもよい。そして、上記成分〔C〕の断面形状は、円形、楕円形、多角形、不定形等とすることができる。
上記成分〔C〕又はその基部繊維の構成材料としては、ガラス、炭素、硼素、石膏、アスベスト、シリカ、シリカ・アルミナ、アルミナ、ジルコニア、窒化硼素、窒化珪素、炭化珪素、チタン酸カリウム、ウォラストナイト、ゾーノトライト、セピオライト、硫酸マグネシウム、酸化亜鉛、ホウ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、硅酸カルシウム、ステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等の無機材料、並びに、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、フッ素樹脂、ポリエステル、アクリル樹脂等の高融点有機材料が挙げられる。そして、これらの材料が加工された繊維状物(「ウィスカー」と言われるものも含む)が用いられる。
上記熱可塑性樹脂組成物は、成分〔C〕を一種のみ含んでよい、二種以上の組み合わせで含んでもよい。
上記成分〔C〕は、ガラス繊維を含むことが好ましい。このガラス繊維を構成するガラスは、含アルカリガラス、低アルカリガラス及び無アルカリガラスのいずれを原料としたものでもよく、原料ガラスとしては、珪酸塩ガラス、ホウ酸珪酸ガラス、燐酸塩ガラス等が挙げられる。また、原料ガラスの種類としては、Eガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Mガラス、ARガラス、Lガラス等が挙げられる。
上記ガラス繊維の形態は、特に制限はなく、長めの単繊維を多数本撚り、ガラス繊維用集束剤によって集束させた後、切断して得られたチョップドストランド、ロービング、ミルドファイバー等、いずれの形態であってもよい。これらのうち、機械的強度と弾性率のバランスの観点から、チョップドストランドが好適である。チョップドストランドに用いるガラス繊維としては、平均繊維径が好ましくは6〜23μm、より好ましくは9〜16μmの単繊維が好ましく用いられる。そして、単繊維の集束本数は、好ましくは100〜4,000本、より好ましくは800〜3,000本である。
上記ガラス繊維は、本発明の鏡胴用筒状体における剛性を更に向上させる等のために、ガラス繊維用集束剤、表面処理剤等による部分又は層を有していてもよい。
ガラス繊維用集束剤としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂を含む組成物、ウレタン樹脂を含む組成物、ウレタン樹脂及びカップリング剤を含む組成物、ノボラック型エポキシ樹脂、ウレタン樹脂及びカップリング剤を含む組成物、ノボラック型エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂及びカップリング剤を含む組成物、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物の共重合体を含む組成物、アミノ樹脂を含む組成物、ポリ酢酸ビニルを含む組成物、ポリエステル樹脂を含む組成物、ポリアクリレートを含む組成物、変性ポリオレフィン樹脂を含む組成物、デンプン又はポリビニルアルコールと、油脂とを含む組成物等が挙げられる。これらのうち、エポキシ樹脂を含む組成物が好ましい。
表面処理剤としては、反応性カップリング剤;高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸金属塩、フルオロカーボン系界面活性剤等が挙げられる。
上記反応性カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、ボランカップリング剤等が挙げられる。
上記シランカップリング剤としては、例えば、下記一般式(2)で表される化合物を用いることができる。
Si(OR (2)
(式中、Rは、アミノ基、グリシドキシ基、塩素原子、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、3,4−エポキシシクロヘキシル基、メルカプト基、N−アミノエチルアミノ基、イソシアネート基及びウレイド基から選ばれる基若しくは原子、又は、上記基を末端に有するアルキル基であり、Rは炭化水素基である。)
上記シランカップリング剤としては、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルメチルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルメチルトリエトキシシラン、γ−(2−ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、β−メルカプトエチルトリメトキシシラン、β−メルカプトエチルトリエトキシシラン、β−メルカプトエチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリス(β−メトキシ−エトキシ)シラン、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−ジアリルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アリルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アリルチオプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
上記チタネートカップリング剤としては、例えば、下記一般式(3)で表される化合物を用いることができる。
(RO)Ti(OR)(OR)(OR) (3)
(式中、Rはアルキル基であり、R、R及びRは、互いに同一又は異なって、置換もしくは非置換のアルキル基、アルカノイル基、(メタ)アクリロイル基、ジアルキルパイロホスフェート基、N−アミノエチル−アミノエチル基、アルキルベンゼンスルホニル基、ジアルキルホスフェート基、ジアルキルホスファイト基及びクミルフェニル基から選ばれる基であり、R及びRが一緒になっている、2価の、エチレン基、オキサリル基又は−CO−CH−基である。)
上記チタネートカップリング剤としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、ジイソプロピルビス(ジオクチルホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルジオクチルパイロホスフェートチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、イソプロピルトリス(ドデシルベンゼンスルフォニル)チタネート、チタニウム−イソプロポキシオクチレングリコレート、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラキス2−エチルヘキソキシ)等が挙げられる。
上記アルミネートカップリング剤としては、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート等のアルミニウムアルキルアセトアセテート・ジアルキレート;アルミニウムアルケニルアセトアセテート・ジアルキレート;アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート等が挙げられる。
上記ガラス繊維は、集束剤及び表面処理剤の両方により改質されたものであってもよい。
上記熱可塑性樹脂組成物に含まれる成分〔C〕の含有量は、鏡胴用筒状体に対する耐衝撃性及び剛性の観点から、上記成分〔A〕100質量部に対して、10〜200質量部であり、好ましくは20〜150質量部、より好ましくは30〜120質量部、更に好ましくは40〜100質量部である。
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、更に、他の成分を含有してもよい。
上記成分〔A〕及び〔B〕以外の他の熱可塑性樹脂としては、ビニル系単量体に由来する構造単位を含むビニル系(共)重合体(芳香族ビニル系(共)重合体、アクリル系(共)重合体、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、フッ素樹脂等)、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
上記熱可塑性樹脂組成物が、他の熱可塑性樹脂を含有する場合、その含有量の上限は、上記成分〔A〕及び〔B〕の合計100質量部に対して、好ましくは60質量部、より好ましくは40質量部である。
本発明において、好ましい他の熱可塑性樹脂は、ゴム質重合体の非存在下に、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体(以下、「ビニル系単量体(m1)」ともいう。)を重合して得られた共重合体(以下、「成分〔E〕」という。)である。上記熱可塑性樹脂組成物は、成分〔E〕を一種のみ含んでよいし、二種以上の組み合わせで含んでもよい。
上記成分〔E〕は、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体(m1)を重合して得られた共重合体である。即ち、この共重合体は、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位(以下、「構造単位(mx)」ともいう。)、及び、シアン化ビニル化合物に由来する構造単位(以下、「構造単位(my)」ともいう。)を含む共重合体であり、更に他のビニル系単量体に由来する構造単位(以下、「構造単位(mz)」ともいう。)を、任意に含んでもよい共重合体である。
上記構造単位(mx)を形成する芳香族ビニル化合物については、上記成分〔B〕におけるビニル系(共)重合体部の形成に用いられるビニル系単量体として例示された芳香族ビニル化合物の説明が適用される。上記成分〔E〕に含まれる構造単位(mx)は、一種のみであってよいし、二種以上であってもよい。上記芳香族ビニル化合物としては、スチレン及びα−メチルスチレンが好ましい。
上記成分〔E〕に含まれる構造単位(mx)の含有量は、上記成分〔E〕を構成する構造単位の合計を100質量%とすると、好ましくは50〜95質量%、より好ましくは60〜90質量%、更に好ましくは65〜85質量%である。上記構造単位(mx)の含有量が50〜95質量%であると、優れた機械的強度及び成形外観性を得ることができる。
上記構造単位(my)を形成するシアン化ビニル化合物については、上記成分〔B〕におけるビニル系(共)重合体部の形成に用いられるビニル系単量体として例示されたシアン化ビニル化合物の説明が適用される。上記成分〔E〕に含まれる構造単位(my)は、一種のみであってよいし、二種以上であってもよい。上記シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリルが好ましい。
上記成分〔E〕に含まれる構造単位(my)の含有量は、上記成分〔E〕を構成する構造単位の合計を100質量%とすると、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜40質量%、更に好ましくは15〜35質量%である。上記構造単位(my)の含有量が5〜50質量%であると、優れた機械的強度及び成形外観性を得ることができる。
また、上記構造単位(mz)を形成する他のビニル系単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイミド系化合物、不飽和酸無水物、カルボキシル基含有不飽和化合物、ヒドロキシル基含有不飽和化合物、オキサゾリン基含有不飽和化合物等が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル酸エステル化合物が好ましい。
上記成分〔E〕が、構造単位(mz)を含む場合、その含有量の上限は、上記成分〔E〕を構成する構造単位の合計、即ち、構造単位(mx)、(my)及び(mz)の合計を100質量%とすると、好ましくは70質量%、より好ましくは50質量%である。
上記成分〔E〕は、構造単位(mx)及び(my)からなる共重合体であることが好ましく、構造単位(mx)及び(my)からなる共重合体と、構造単位(mx)、(my)及び(mz)からなる共重合体との組合せであってもよい。
上記成分〔E〕の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは30,000〜500,000、より好ましくは40,000〜350,000、更に好ましくは50,000〜300,000である。
また、上記成分〔E〕の固有粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、耐衝撃性の観点から、好ましくは0.2〜0.8dl/g、より好ましくは0.25〜0.7dl/g、更に好ましくは0.3〜0.6dl/gである。
ここで、固有粘度[η]は、成分〔E〕をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度の異なるものを5点調製し、ウベローデ粘度管を用いて、30℃で各濃度の還元粘度を測定することにより、求めることができる。
上記熱可塑性樹脂組成物が、上記成分〔E〕を含む場合、この成分〔E〕の含有量は、鏡胴を構成する筒状体の耐衝撃性及び剛性が更に向上することから、上記成分〔A〕及び〔B〕の合計100質量部に対して、好ましくは1〜30質量部であり、より好ましくは2〜25質量部、更に好ましくは3〜20質量部、特に好ましくは4〜16質量部である。
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は添加剤を含有することができる。この添加剤としては、充填剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、難燃剤、安定剤、耐候剤、光安定剤、熱安定剤、帯電防止剤、撥水剤、撥油剤、消泡剤、抗菌剤、防腐剤、着色剤(顔料、染料等)、蛍光増白剤、導電性付与剤等が挙げられる。
上記充填剤としては、重質炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、カーボンブラック、クレー、タルク、フュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ、カオリン、硅藻土、ゼオライト、酸化チタン、生石灰、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化バリウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、硫酸アルミニウム、ガラスバルーン、シラスバルーン、サランバルーン、フェノールバルーン等が挙げられる。これらは、単独であるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
上記可塑剤としては、フタル酸エステル、トリメリット酸エステル、ピロメリット酸エステル、脂肪族一塩基酸エステル、脂肪族二塩基酸エステル、リン酸エステル、多価アルコールのエステル、エポキシ系可塑剤、高分子型可塑剤、塩素化パラフィン等が挙げられる。これらは、単独であるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
上記酸化防止剤としては、ヒンダードアミン系化合物、ハイドロキノン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、含硫黄化合物、含リン化合物等が挙げられる。これらは、単独であるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
上記紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物等が挙げられる。これらは、単独であるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
上記老化防止剤としては、ナフチルアミン系化合物、ジフェニルアミン系化合物、p−フェニレンジアミン系化合物、キノリン系化合物、ヒドロキノン誘導体系化合物、モノフェノール系化合物、ビスフェノール系化合物、トリスフェノール系化合物、ポリフェノール系化合物、チオビスフェノール系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、亜リン酸エステル系化合物、イミダゾール系化合物、ジチオカルバミン酸ニッケル塩系化合物、リン酸系化合物等が挙げられる。これらは、単独であるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
上記難燃剤(以下、「成分〔D〕」ともいう。)としては、含ハロゲン化合物、含リン化合物、グアニジン系化合物、シリコーン系化合物等が挙げられる。これらは、単独であるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
含ハロゲン化合物としては、下記の(D1)〜(D7)が挙げられる。
(D1)臭素化ポリエチレン、テトラブロモエタン、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、ジブロモエチルジブロモシクロヘキサン、ジブロモジメチルヘキサン、2−(ブロモメチル)−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、ジブロモネオペンチルグリコール、トリブロモネオペンチルアルコール、ペンタエリスリチルテトラブロミド、モノブロモジペンタエリスリトール、ジブロモジペンタエリスリトール、トリブロモジペンタエリスリトール、テトラブロモジペンタエリスリトール、ペンタブロモジペンタエリスリトール、ヘキサブロモジペンタエリスリトール、ヘキサブロモトリペンタエリスリトール、ポリブロム化ペンタエリスリトール等の、臭素化脂肪族化合物若しくはその誘導体、又は、臭素化脂環式化合物若しくはその誘導体
(D2)テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA−ジアリルエーテル、テトラブロモビスフェノールA−ジメタリルエーテル、テトラブロモビスフェノールA−ジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールA−ジグリシジルエーテルのトリブロモフェノール付加物、テトラブロムビスフェノールA−ビス(2−ヒドロキシジエチルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2−ブロモエチルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールS−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ポリカーボネートオリゴマー、テトラブロモビスフェノールA−ジグリシジルエーテルのブロム化ビスフェノール付加物エポキシオリゴマー等の、臭素化ビスフェノール類又はその誘導体
(D3)ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、エチレンビスペンタブロモジフェニル、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、ビス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)エタン、テトラブロモ無水フタル酸、オクタブロモトリメチルフェニルインダン、トリブロモフェニルアリルエーテル、2,3−ジブロモプロピルペンタブロモフェニルエーテル、オクタブロモ−1,1,3−トリメチル−1−フェニルインダン、デカブロモジフェニルオキサイド、オクタブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモジフェニルオキサイド、エタン−1,2−ビス(ペンタブロモフェニル)、ビス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)エタン、エチレンビステトラブロモフタルイミド、ポリジブロモフェニレンオキサイド、1,1−スルホニル[3,5−ジブロモ−4−(2,3−ジブロモプロポキシ)]ベンゼン、トリス(2,3−ジブロモプロピル−1)イソシアヌレート、トリス(トリブロモフェニル)シアヌレート、アタクチック構造の臭素化ポリスチレン、アタクチック構造の臭素化スチレン・プロピレン系共重合体等の、臭素化芳香族化合物又はその誘導体
(D4)ペンタブロモベンジルアクリレート、アタクチック構造の臭素化スチレン・メチルメタクリレート系共重合体、アタクチック構造の臭素化スチレン・メチルメタクリレート・グリシジルメタクリレート系共重合体、アタクチック構造の臭素化スチレン・グリシジルメタクリレート系共重合体、ポリペンタブロモベンジルアクリレート等の臭素化(メタ)アクリル系化合物
(D5)エチレンビスジブロモノルボルナンジカルボキシイミド、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート等の、臭素原子及び窒素原子含有化合物
(D6)塩素化パラフィン、塩素化ナフタレン、パークロロペンタデカン、塩素化芳香族化合物、塩素化脂環式化合物等の、塩素原子含有化合物
(D7)臭化アンモニウム等の臭素化無機化合物
含リン化合物としては、下記一般式(4)で表されるリン酸エステル及びその塩、下記一般式(5)で表される亜リン酸エステル及びその塩、下記一般式(6)で表されるホスホン酸エステル及びその塩、下記一般式(7)で表される縮合型のリン酸エステル、ホスファゼン誘導体等が挙げられる。
O=P(OR11(OMn+ 1/n3−s (4)
(式中、各R11は、独立して、炭素原子数1〜30の炭化水素基であり、各Mは、独立して、水素原子、又は、周期表の第1A族、第1B族、第2A族及び第2B族から選ばれる金属原子であり、sは1、2又は3であり、nは1又は2である。)
P(OR11(OMn+ 1/n3−t (5)
(式中、各R11は、独立して、炭素原子数1〜30の炭化水素基であり、各Mは、独立して、水素原子、又は、周期表の第1A族、第1B族、第2A族及び第2B族から選ばれる金属原子であり、tは1、2又は3であり、nは1又は2である。)
O=P(R12)(OMn+ 1/n (6)
(式中、R12は、水素原子、又は、炭素原子数1〜30の炭化水素基であり、各Mは、独立して、水素原子、又は、周期表の第1A族、第1B族、第2A族及び第2B族から選ばれる金属原子であり、nは1又は2である。但し、R及びMのすべてが水素原子である場合を除く。)
Figure 2015203049
(式中、R14、R15、R16及びR17は、それぞれ、互いに独立して、アリール基又はアラルキル基であり、Xはアリーレン基であり、j、k、l及びmは、それぞれ、互いに独立して、0又は1であり、Nは1〜5の整数である。)
上記一般式(4)で表されるリン酸エステルにおいて、R11は、炭素原子数1〜30の炭化水素基であるが、脂肪族炭化水素基(直鎖状でも、分岐状でもよい。)、脂環族炭化水素基(置換基を有してもよい。)、及び、芳香族炭化水素基(置換基を有してもよい。)のいずれでもよく、また、飽和型でも不飽和型でもよい。好ましい炭素原子数は、6〜28であり、より好ましくは10〜24である。尚、s=2又はs=3の場合、二つのR11によって環構造を形成していてもよい。
上記一般式(4)で表されるリン酸エステルは、s=1のとき、モノエステルであり、例えば、メチルジハイドロジェンホスフェート、エチルジハイドロジェンホスフェート、ヘキシルジハイドロジェンホスフェート、オクチルジハイドロジェンホスフェート、ノニルジハイドロジェンホスフェート、デシルジハイドロジェンホスフェート、ドデシルジハイドロジェンホスフェート、オクタデシルジハイドロジェンホスフェート、ノニルフェニルジハイドロジェンホスフェート等が挙げられる。s=2のとき、ジエステルであり、例えば、ジメチルホスフェート、ジエチルホスフェート、ジヘキシルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ジノニルホスフェート、ジデシルホスフェート、ジドデシルホスフェート、ジテトラデシルホスフェート、ジオクタデシルホスフェート、ジフェニルホスフェート、ジベンジルホスフェート等が挙げられる。各化合物の金属塩とすることもできる。また、s=3のとき、トリエステルであり、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリオクタデシルホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、ジメチルエチルホスフェート、メチルジブチルホスフェート、エチルジプロピルホスフェート等が挙げられる。
更に、s=2の場合、R11同士で環構造を形成している、ナトリウム−2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェート、ナトリウム−2,2′−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェート、リチウム−2,2′−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェート、ナトリウム−2,2′−エチリデンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェート、リチウム−2,2′−エチリデンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェート等を用いることもできる。
上記一般式(5)で表される亜リン酸エステルにおいて、R11は、炭素原子数1〜30の炭化水素基であるが、脂肪族炭化水素基(直鎖状でも、分岐状でもよい。)、脂環族炭化水素基(置換基を有してもよい。)、及び、芳香族炭化水素基(置換基を有してもよい。)のいずれでもよく、また、飽和型でも不飽和型でもよい。好ましい炭素原子数は、6〜28であり、より好ましくは10〜24である。
上記一般式(5)で表される亜リン酸エステルは、t=1のとき、モノエステルであり、例えば、メチルジハイドロジェンホスファイト、エチルジハイドロジェンホスファイト、ヘキシルジハイドロジェンホスファイト、オクチルジハイドロジェンホスファイト、ノニルジハイドロジェンホスファイト、デシルジハイドロジェンホスファイト、ドデシルジハイドロジェンホスファイト、オクタデシルジハイドロジェンホスファイト、ヘキサコシルジハイドロジェンホスファイト、ドデシルフェニルジハイドロジェンホスファイト等が挙げられる。t=2のとき、ジエステルであり、例えば、ジメチルハイドロジェンホスファイト、ジエチルハイドロジェンホスファイト、ジヘキシルハイドロジェンホスファイト、ジオクチルハイドロジェンホスファイト、ジ(2−エチルヘキシル)ハイドロジェンホスファイト、ジノニルハイドロジェンホスファイト、ジデシルハイドロジェンホスファイト、ジドデシルハイドロジェンホスファイト、ジテトラデシルハイドロジェンホスファイト、ジオクタデシルハイドロジェンホスファイト、オクチルベンジルハイドロジェンホスファイト、ノニルトリデシルハイドロジェンホスファイト、ブチルエイコシルハイドロジェンホスファイト、ジフェニルハイドロジェンホスファイト、ジベンジルハイドロジェンホスファイト等が挙げられる。また、t=3のとき、トリエステルであり、例えば、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリヘキシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリドデシルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリキシレニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、フェニルジデシルホスファイト等が挙げられる。各化合物の金属塩とすることもできる。
上記一般式(6)で表されるホスホン酸エステルにおいて、R12は、水素原子、又は、炭素原子数1〜30の炭化水素基であるが、後者の場合、脂肪族炭化水素基(直鎖状でも、分岐状でもよい。)、脂環族炭化水素基(置換基を有してもよい。)、及び、芳香族炭化水素基(置換基を有してもよい。)のいずれでもよく、また、飽和型でも不飽和型でもよい。好ましい炭素原子数は、6〜28であり、より好ましくは10〜24である。
上記一般式(6)で表されるホスホン酸エステルとしては、ホスホン酸ジメチル、ホスホン酸ジエチル、ホスホン酸ジブチル、ホスホン酸ジヘキシル、ホスホン酸ジオクチル、ホスホン酸ジデシル、ホスホン酸ジドデシル、ホスホン酸ジオクタデシル、ホスホン酸ジフェニル、ホスホン酸ジトリル、ホスホン酸ジメチルメチル、ホスホン酸ジエチルエチル、ホスホン酸ジイソプロピルメチル、ホスホン酸ジオクチルフェニル、ホスホン酸ジフェニルメチルが挙げられる。各化合物の金属塩とすることもできる。
上記一般式(7)で表される縮合リン酸エステル化合物において、R14、R15、R16及びR17は、アリール基又はアラルキル基であり、好ましくはクレジル基、フェニル基、キシレニル基、プロピルフェニル基及びブチルフェニル基である。また、Xは、アリーレン基であり、好ましくはレゾルシノール、ハイドロキノン又はビスフェノールAに由来する炭化水素基である。
上記ホスファゼン誘導体としては、環状ホスファゼン化合物(シクロホスファゼン化合物)、鎖状ホスファゼン化合物、架橋フェノキシホスファゼン化合物等が挙げられる。
その他、水酸化アルミニウム、酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、ジルコニウム系化合物、モリブデン系化合物、スズ酸亜鉛等を用いることができる。
上記成分〔D〕としては、縮合型のリン酸エステルが特に好ましい。この縮合型のリン酸エステルを用いると、鏡胴用筒状体に対して優れた難燃性を与えるのみでなく、隣接する筒状体又は他の部品と動的に接触した場合に、より優れた摺動性を与えることができる。
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物が成分〔D〕を含有する場合、その含有量は、上記成分〔A〕及び〔B〕の合計量100質量部に対して、好ましくは1〜50質量部、より好ましくは5〜35質量部、更に好ましくは8〜30質量部、特に好ましくは10〜25質量部である。
本発明の鏡胴用筒状体は、上記熱可塑性樹脂組成物又はその原料混合物を溶融した後、射出成形等の、従来、公知の成形方法に供することにより得られたものとすることができる。そして、本発明の鏡胴用筒状体は、成分〔A〕及び〔B〕を含む熱可塑性樹脂からなる母相に、成分〔C〕や、必要により熱可塑性樹脂組成物に配合された添加剤が分散した構成を有し、耐衝撃性及び剛性に優れる。
本発明の鏡胴用筒状体は、種々の形態を有する鏡胴の構成部品とすることができ、撮像装置又は光学機器の固定鏡筒又は可動鏡筒として好適である。
本発明の鏡胴は、上記本発明の鏡胴用筒状体を備える物品であり、図1の鏡胴用筒状体1のみからなるものであってよいし、図2に示される鏡胴10又はその類似物若しくは変形物、更には、図3又は図4に示されるように、複数の筒状体を備える鏡胴であって、これらの筒状体を連結するための接続部品を含む物や、これらの筒状体の間に配設された嵌挿部品を含む物であってもよい(但し、レンズを除く)。
本発明の鏡胴は、目的、用途等により、この筒状部又は他の材料からなる筒状部の孔内にレンズを配設した後、撮像装置又は光学機器の形成に好適に用いられる。
図2は、沈胴式構造を備える鏡胴の一例であり、丸みのある略四角形の断面形状を有する、互いに異なる大きさの鏡胴用筒状体を備え、第1筒状部11と、第2筒状部12と、第3筒状部13とを備える鏡胴10である。第1筒状部11、第2筒状部12及び第3筒状部13は、いずれも、開口する1端側から他端側に対して、孔径が異なる筒状体からなり、図2は、第2筒状部12及び第3筒状部13が第1筒状部11に収容された状態から、図面の手前側に突き出していることを示している。また、第2筒状部12は、第1筒状部11の孔内に内接しつつ収容できるようになっており、第3筒状部13は、第2筒状部12の孔内に内接しつつ収容できるようになっている。このような構造の態様において、第1筒状部11、第2筒状部12及び第3筒状部13の全てが、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物からなる鏡胴用筒状体である場合には、本発明の効果を十分に得ることができる。尚、図2の場合、第2筒状部12が、第1筒状部11及び第3筒状部13と動的に接触するので、第1筒状部11及び第3筒状部13が本発明に係る熱可塑性樹脂組成物とは異なる材料からなる場合でも、第2筒状部12が、本発明の鏡胴用筒状体からなるものとすることにより、第2筒状部12と第1筒状部11との摺動性、及び、第2筒状部12と第3筒状部13との摺動性を得ることができる。このように互いに接触する第1筒状部11、第2筒状部12及び第3筒状部13の全てが、本発明の鏡胴用筒状体からなる鏡胴10は、その全体として安定な構造又は物理的性能を有するため、特に好ましい態様である。
図2の鏡胴10は、三つの筒状部を備えるものであるが、本発明の鏡胴は、これに限定されず、鏡胴を構成する筒状部の数は、一つでも、複数でもよい。筒状部が一つの場合、この筒状部は、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物からなることが必要であるが、複数の筒状部を備える場合、上記のように、全ての筒状部が本発明に係る熱可塑性樹脂組成物からなることが好ましいが、隣り合う筒状部同士の位置関係等により、特定の筒状部のみが本発明に係る熱可塑性樹脂組成物からなるものであってもよい。
また、第2筒状部12及び第3筒状部13の収容形態は、特に限定されないが、図2では、第2筒状部12及び第3筒状部13が、光軸方向の1端側から他端側にテーパー形状を有するように、即ち、図2では、各筒状部の手前側断面積が縮小するように、形成されて、第2筒状部12及び第3筒状部13が、それぞれ、第1筒状部11の孔内、及び、第2筒状部12の孔内に収容できるようになっている。また、図示していないが、第1筒状部11、第2筒状部12及び第3筒状部13のいずれかを枠体として、その孔内にレンズが配設されていてもよい。上記のように、本発明に係る筒状部は、隣接する筒状体又は他の部品と動的に接触した際の摺動性に優れるため、少なくとも第2筒状部12が、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物からなる構成とすることにより、第2筒状部12と動的接触に供される第1筒状部11及び第3筒状部13が、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物と異なる材料からなる場合に、第2筒状部12又は第3筒状部13が、光軸方向に移動した際に、円滑な摺動性を得ることができ、擦れ音(軋み音)の発生を抑制することができる。尚、第1筒状部11、第2筒状部12及び第3筒状部13の全てが、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物からなる場合には、鏡胴10全体として、摺動性、耐衝撃性、剛性及び外観性に優れるので、これは最も好ましい態様である。
上記において、第1筒状部11、第2筒状部12及び第3筒状部13を、順次、面接触させた態様としているが、1の筒状部の内表面又は外表面に、その表面を周回する凸部を形成し、凸部の上面において、隣接する筒状部と接触させる構成とすることもできる。
1の筒状部と、隣り合う他の筒状部とを、直接又は他の部品を介して接触状態とすることは、撮像装置又は光学機器の作動時において筒状部の動きがある場合に、鏡胴の内部に光や塵等の侵入防止の効果(遮蔽効果)を見込むものであり、本発明においては、潤滑剤を不使用とした熱可塑性樹脂組成物を含む筒状部を用いることができるので、撮像装置又は光学機器を長時間使用しても、劣化した又は浮き出した潤滑剤による外観性の低下を招くことがなく、鏡胴及び撮像装置又は光学機器の耐久性に優れる。
図3は、鏡胴、レンズ14等を備える撮像装置又は光学機器20を示す。鏡胴は、二つの筒状部(第1筒状部11及び第2筒状部12)と固定部材16とを備え、第1筒状部11の孔内に、第2筒状部12が内接収容された構造を有する。第2筒状部12は、第1筒状部11の厚肉部の一部に配設された貫通孔を利用した固定部材16(ピン)により、第1筒状部11と固定されており、固定部材16(ピン)を開放すると、第2筒状部12は図面の右方向に摺動しつつ移動できるようになっている。
図3の場合、鏡胴を構成する第2筒状部12は、撮像装置又は光学機器20の作動時に、第1筒状部11及び固定部材16の両方と動的接触するので、少なくとも、第2筒状部12が、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた鏡胴用筒状体からなることが好ましく、第1筒状部11及び第2筒状部12の両方が、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた鏡胴用筒状体からなることが特に好ましい。
図4は、鏡胴、レンズ14等を備える撮像装置又は光学機器20を示す他の例である。鏡胴は、二つの筒状部(第1筒状部11及び第2筒状部12)と、遮光部品18とを備え、第1筒状部11の孔内に、第2筒状部12が内接されずに収容された構造を有する。遮光部品18(遮光リング)は、第2筒状部12の外表面を周回するように配設されており、この遮光部品18を収容するための凹部が第1筒状部11の内表面に形成されている。第2筒状部12は、図示していない機構により自動又は手動により、光軸方向(図面における左右方向)に移動可能であり、第2筒状部12が移動した場合は、第2筒状部12と遮光部品18とが摩擦することになるので、少なくとも、第2筒状部12が、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた鏡胴用筒状体からなることにより、本発明の効果を得ることができる。
以下に、実施例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。尚、下記において、部及び%は、特に断らない限り、質量基準である。
1.円筒型成形体の製造原料
円筒型成形体の製造は、下記の原料(樹脂又は共重合体、ガラス繊維等)を用いて調製された熱可塑性樹脂組成物の射出成形により行った。尚、グラフト率、固有粘度[η]等の測定は、上記記載の方法に準じて行った。
1−1.原料〔P〕
三菱エンジニアリングプラスチックス社製ポリカーボネート「NOVAREX7022PJ」(商品名)を用いた。粘度平均分子量(Mv)は、18,700であり、MFR(温度240℃、荷重10kg)は、18g/10分である。
1−2.原料〔Q〕
本発明に係る成分〔B〕を含み、組成物のTmを0℃〜120℃の範囲とすることができるエチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体強化ビニル系樹脂(原料Q1)と、他のゴム強化樹脂である、ポリオルガノシロキサンゴム質重合体強化ビニル系樹脂(原料Q2)、及び、ブタジエンゴム質重合体強化ビニル系樹脂(原料Q3)とを以下に示す。
合成例1(原料Q1の合成)
リボン型攪拌機翼、助剤連続添加装置、温度計等を装着したステンレス製オートクレーブに、エチレン・プロピレン共重合体ゴム(エチレン/プロピレン=78/22(%)、Tm:40℃、ガラス転移温度:−50℃、ムーニー粘度(ML1+4,100℃):20)25部、スチレン10.95部、アクリロニトリル4.05部、tert−ドデシルメルカプタン0.5部及びトルエン110部を仕込み、昇温した。内温が75℃に達したところで、オートクレーブ内容物を1時間攪拌して均一溶液とした。その後、tert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート0.09部を添加し、更に昇温した。内温を100℃に保持しながら、攪拌回転数100rpmとして重合を開始した。60分間重合した後、スチレン43.8部、アクリロニトリル16.2部及びtert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート0.36部を3時間かけて連続的に添加した。重合を開始して4時間経過した後、内温を120℃に昇温し、この温度を保持しながら更に2時間反応を行って重合を終了した。重合転化率は97%であった。その後、内温を100℃まで冷却し、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)−プロピオネート0.2部を添加した。次いで、反応液をオートクレーブより抜き出し、水蒸気蒸留により未反応物と溶媒を留去した。その後、40mmφベント付き押出機(シリンダー温度220℃、真空度760mmHg)を用いて揮発分を実質的に脱気させ、ペレット化し、エチレン・プロピレン共重合体ゴムからなる部分と、シアン化ビニル化合物(アクリロニトリル)に由来する構造単位及び芳香族ビニル化合物(スチレン)に由来する構造単位を含むビニル系共重合体からなる部分とを含むエチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体強化ビニル系樹脂(グラフト樹脂)、並びに、未グラフトのビニル系共重合体(アクリロニトリル・スチレン共重合体)からなる樹脂混合物であるゴム強化樹脂(原料Q1)を得た。この原料Q1に含まれる上記グラフト樹脂におけるグラフト率は46%、未グラフトのビニル系共重合体(以下、「アセトン可溶分」ともいう。)の含有率は64%であり、このアセトン可溶分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、0.45dl/gであった。その後、このペレットを用いて原料Q1のTmを測定したところ、40℃であった。
合成例2(原料Q2の合成)
p−ビニルフェニルメチルジメトキシシラン1.5部及びオクタメチルシクロテトラシロキサン98.5部の混合物を、ドデシルベンゼンスルホン酸2.0部を蒸留水に溶解させた水溶液300部に投入し、ホモミキサーにより3分間攪拌して乳化分散させた。乳化分散液を、コンデンサー、窒素ガス導入口及び攪拌機を備えたセパラブルフラスコに移し、攪拌下、90℃で6時間加熱して縮合反応させ、5℃で24時間冷却することで反応を完了させた。これにより、縮合率92.8%で変性ポリオルガノシロキサンゴムを含むラテックスを得た。その後、このラテックスに、炭酸ナトリウム水溶液を添加してpH7に中和した。尚、変性ポリオルガノシロキサンゴムの体積平均粒子径は280nmであった。
次に、攪拌機を備えたガラス製フラスコに、上記変性ポリオルガノシロキサンゴム40部、イオン交換水100部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.5部、tert−ドデシルメルカプタン0.1部、スチレン15部及びアクリロニトリル5部を収容し、攪拌しながら45℃まで昇温した。その後、エチレンジアミン4酢酸ナトリウム0.1部、硫酸第1鉄0.003部、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシラート・2水和物0.2部及びイオン交換水15部よりなる活性剤水溶液、並びに、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド0.1部を添加し、重合を開始した。そして、1時間後、イオン交換水50部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部、tert−ドデシルメルカプタン0.1部、ジイソプロピルハイドロパーオキサイド0.2部、スチレン30部及びアクリロニトリル10部からなるインクレメンタル重合成分を3時間に渡って連続的に添加し、重合を続けた。添加終了後、更に攪拌を1時間続けた。
その後、2,2−メチレン−ビス(4−エチレン−6−tert−ブチルフェノール)0.2部を添加して重合を停止し、ポリオルガノシロキサンゴム質重合体強化ビニル系樹脂(グラフト樹脂)を含むラテックスを得た。次いで、ラテックスに塩化カルシウム2部を添加して、樹脂成分を凝固し、水洗及び乾燥(75℃、24時間)を行い、変性ポリオルガノシロキサンゴムからなる部分と、シアン化ビニル化合物(アクリロニトリル)に由来する構造単位及び芳香族ビニル化合物(スチレン)に由来する構造単位を含むビニル系共重合体からなる部分とを含むポリオルガノシロキサンゴム質重合体強化ビニル系樹脂(グラフト樹脂)、並びに、未グラフトのビニル系共重合体(アクリロニトリル・スチレン共重合体)からなる樹脂混合物であるポリオルガノシロキサンゴム強化樹脂(原料Q2)からなる白色粉末を回収した。この原料Q2に含まれる上記グラフト樹脂におけるグラフト率は90%、未グラフトの(共)重合体(アセトン可溶分)の含有率は24%であり、アセトン可溶分の固有粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は0.47dl/gであった。尚、この原料Q2のTmは観測されなかった。
合成例3(原料Q3の合成)
攪拌機を備えたガラス製フラスコに、窒素気流中で、イオン交換水42部、ロジン酸カリウム0.35部、tert−ドデシルメルカプタン0.2部、平均粒子径300nmのポリブタジエンゴム(ゲル含有率80%)32部を含むラテックス80部、平均粒子径600nmのスチレン・ブタジエン共重合体ゴム(スチレン単位量30%)8部を含むラテックス19部、スチレン14部及びアクリロニトリル6部を収容し、攪拌しながら昇温した。内温が40℃に達したところで、ピロリン酸ナトリウム0.2部、硫酸第一鉄7水和物0.01部及びブドウ糖0.3部を、イオン交換水8部に溶解した溶液を加えた。その後、クメンハイドロパーオキサイド0.07部を加えて重合を開始した。
30分間重合させた後、イオン交換水45部、ロジン酸カリウム0.7部、スチレン30部、アクリロニトリル10部、tert−ドデシルメルカプタン0.13部及びクメンハイドロパーオキサイド0.1部を、3時間かけて連続的に添加した。その後、更に1時間重合を継続し、反応系に、2,2′−メチレン−ビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)0.2部を添加して重合を完結させた。
次いで、反応生成物を含むラテックスに、硫酸水溶液を添加して、樹脂成分を凝固し、水洗した。その後、水酸化カリウム水溶液を用いて、洗浄・中和し、更に、水洗した後、乾燥し、ゴム強化樹脂(原料Q3)を得た。この原料Q3に含まれるブタジエンゴム質重合体強化ビニル系樹脂(グラフト樹脂)におけるグラフト率は55%、未グラフトの(共)重合体(アセトン可溶分)の含有率は38%であり、このアセトン可溶分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、0.45dl/gであった。尚、この原料Q3のTmは観測されなかった。
1−3.原料〔R〕
オーウェンスコーニングジャパン社製ガラス繊維(チョップドストランド)「CS03MA FT665」(商品名)を用いた。この製品は、素線径φ13μmの単繊維をエポキシ樹脂組成物からなる集束剤で束ねた後、繊維長3mmに調節されたチョップドストランドである。
1−4.原料〔S〕
ADEKA社製縮合リン酸エステル「FP−700」(商品名)を用いた。
1−5.原料〔T〕
信越シリコーン社製メチルフェニルシリコーンオイル「KF−54」(商品名)を用いた。
2.円筒型成形体等の製造及び評価
実施例1〜12及び比較例1〜3
原料〔P〕、〔Q〕、〔R〕、〔S〕及び〔T〕を、表1〜表4に記載の割合で、ヘンシェルミキサーにて混合した後、この混合物を、日本製鋼社製2軸押出機「TEX44αII」(型式名)に供給して溶融混練(シリンダー設定温度:200℃〜250℃)し、熱可塑性樹脂組成物からなるペレットを得た。そして、このペレットを、下記の評価に供した。その結果を表1〜表4に併記した。
2−1.寸法安定性
(a)真円性
熱可塑性樹脂組成物からなるペレットを射出成形に供し、図5に示す円筒型成形体3(外径25mm、高さ15mm、肉厚2mm)を製造した。ミツトヨ社製三次元測定機を用いて、成形体断面の真円性を測定した。具体的には、端から10mmの位置の断面における異なった3点を5回測定した。そして、実測円上の3点(360度を3等分の目安で選択した3点)を真円で近似し、その直径を求め、得られた5点の直径の最大値及び最小値の差を真円度とした。この値が小さいほど、真円性が良好であることを示す。
(b)線膨張係数
熱可塑性樹脂組成物からなるペレットを射出成形に供し、板状試験片(50mm×10mm×4mm)を作製し、80℃で2時間アニールした後、23℃で、基準となる試験片長さを測定した。その後、加熱して70℃における試験片長さを測定し、23℃から70℃までの1℃あたりの長さの平均変化率を求め、これを線膨張係数とした。単位は「×10−5/℃」である。尚、試験片長さは、OMRON社製「LASER MICROMETER 3Z4L−S506R」にて測定した。
2−2.耐衝撃性
熱可塑性樹脂組成物からなるペレットを用いて、ISO 179に準ずる、所定の形状及びサイズを有する試験片を作製し、シャルピー衝撃強さを、温度23℃で測定した。単位は「kJ/m」である。
2−3.引張特性
熱可塑性樹脂組成物からなるペレットを用いて、ISO 527に準ずる、所定の形状及びサイズを有する試験片を作製し、引張強さを、温度23℃で測定した。単位は、「MPa」である。
2−4.曲げ特性
熱可塑性樹脂組成物からなるペレットを用いて、ISO 178に準ずる、所定の形状及びサイズを有する試験片を作製し、曲げ強さ及び曲げモジュラスを、温度23℃で測定した。単位は、それぞれ、「MPa」及び「MPa」である。
2−5.成形収縮性
熱可塑性樹脂組成物からなるペレットを用いて、JIS K7152−4に準ずる、所定の形状及びサイズを有する試験片を作製し、MD方向及びTD方向について、それぞれ、成形収縮率を、温度23℃で測定した。
2−6.スティックスリップ試験(異音リスク指数)
熱可塑性樹脂組成物からなるペレットを、東芝機械社製射出成形機「IS−170FA」(型式名)を用いた射出成形(シリンダー温度:250℃、射出圧力:50MPa、金型温度:60℃)に供し、板状成形体を得た。次いで、この成形体を、ディスクソーを用いて切削加工し、60mm×100mm×4mm及び50mm×25mm×4mmの二種の試験片を切り出した。その後、番手#100のサンドペーパーで試験片の端部を面取りし、細かいバリを除去し、大小2枚のスティックスリップ試験(SS試験)用試験片を作製した。
次に、これらの試験片を、80℃±5℃に調整したオーブン内に300時間放置した後、取り出して、25℃で24時間静置し、熱老化(エージング)させた試験片を得た。そして、ジグラー(ZIEGLER)社製スティックスリップ試験機「SSP−02」(型式名)に、大小2枚の試験片をセットし、両者を3回擦り合わせて、異音リスク指数を測定した。測定条件は、温度:23℃、湿度:50%RH、荷重:40N、速度:10mm/秒、振幅:20mmである。
異音リスク指数が小さいほど、軋み音の発生リスクが低くなる。
2−7.摺動性
図6に示すように、同じ大きさ(75mm×50mm×2mm)の2枚の板状成形体を重ねた状態のまま、2本の指で挟んで、接触面を交互に滑らせて(ストローク長さ:20mm)、摺動性を評価した。尚、この評価では、同じ熱可塑性樹脂組成物からなるペレットから得た2枚の板状成形体を用いた場合、及び、一方を、各実験例の熱可塑性樹脂組成物からなるペレットから得た板状成形体、他方を、テクノポリマー社製ABS/PCアロイ樹脂「エクセロイCK20」(商品名、表において、「材料〔W〕」で示した)からなるペレットから得た板状成形体とした場合、の両方について行った。摺動性を以下の基準で判定した。
○:指先に力のかからぬ滑らかな動きを示した
×:指先に引っかかりのあるぎしぎしとした動きを示した
2−8.燃焼性
熱可塑性樹脂組成物からなるペレットを用いて、アンダーライターズラボラトリーズ社(UL)のサブジェクト94に準ずる、所定の形状及びサイズを有する試験片(125mm×13mm×1mm)作製し、垂直燃焼試験に供した。
Figure 2015203049
Figure 2015203049
Figure 2015203049
Figure 2015203049
表1〜表4より、以下のことが分かる。
比較例1及び3は、Tmが0℃〜100℃の範囲に見られないため、スティックスリップ試験及び摺動性の両方に劣っていた。比較例2は、シリコーンオイルを含むため、摺動性は得られたが、スティックスリップ試験では十分ではなかった。
一方、実施例1〜12によれば、スティックスリップ試験及び摺動性の両方に優れ、シャルピー衝撃強さ、引張強さ、曲げ強さ及び曲げモジュラスがいずれも向上しており、また、メルトマスフローレートが2.3〜50g/10分の範囲にあり、耐衝撃性及び剛性のバランスに優れることが分かる。更に、潤滑剤を含まないので、長期に渡って外観性を保持することができる。
3.鏡胴の製造
実施例13
実施例7で用いた熱可塑性樹脂組成物からなるペレットを射出成形に供し、円筒型成形体M1(外径25mm、高さ15mm、肉厚2mm)を製造した。また、実施例7で用いた熱可塑性樹脂組成物からなるペレットを射出成形に供し、円筒型成形体M2(外径21mm、高さ20mm、肉厚2mm)を製造した。円筒型成形体M2の、円筒型成形体M1の孔内への出し入れを繰り返したところ、滑らかに移動させることができた。
実施例14
実施例7で用いた熱可塑性樹脂組成物からなるペレットを射出成形に供し、円筒型成形体M1(外径25mm、高さ15mm、肉厚2mm)を製造した。また、実施例4で用いた熱可塑性樹脂組成物からなるペレットを射出成形に供し、円筒型成形体M2(外径21mm、高さ20mm、肉厚2mm)を製造した。円筒型成形体M2の、円筒型成形体M1の孔内への出し入れを繰り返したところ、滑らかに移動させることができた。
実施例15
実施例7で用いた熱可塑性樹脂組成物からなるペレットを射出成形に供し、円筒型成形体M1(外径25mm、高さ15mm、肉厚2mm)を製造した。また、比較例3で用いた熱可塑性樹脂組成物からなるペレットを射出成形に供し、円筒型成形体M2(外径21mm、高さ20mm、肉厚2mm)を製造した。円筒型成形体M2の、円筒型成形体M1の孔内への出し入れを繰り返したところ、滑らかに移動させることができた。
比較例4
比較例1で用いた熱可塑性樹脂組成物からなるペレットを射出成形に供し、円筒型成形体M1(外径25mm、高さ15mm、肉厚2mm)を製造した。また、比較例3で用いた熱可塑性樹脂組成物からなるペレットを射出成形に供し、円筒型成形体M2(外径21mm、高さ20mm、肉厚2mm)を製造した。円筒型成形体M2の、円筒型成形体M1の孔内への出し入れを繰り返したところ、ぎしぎしと引っかかりを感じ、滑らかに移動させることができなかった。
本発明の鏡胴用筒状体及び鏡胴は、カメラ(デジタルカメラ、動画カメラを含む)、望遠鏡(双眼鏡)、顕微鏡、投影露光装置、光ディスク装置、光学測定装置等の、レンズを備える撮像装置又は光学機器に配される部品として好適である。
1:鏡胴用筒状体
3:円筒型成形体
5:板状成形体の積層物
6:板状成形体
7:板状成形体
10:鏡胴
11:第1筒状部
12:第2筒状部
13:第3筒状部
14:レンズ
16:固定部品(ピン)
18:遮光部品(遮光リング)
20:撮像装置又は光学機器

Claims (10)

  1. 〔A〕ポリカーボネート樹脂、
    〔B〕ゴム質重合体に由来する重合体部と、ビニル系(共)重合体部とを備えるゴム質重合体強化ビニル系樹脂、
    及び、
    〔C〕繊維状充填剤、
    を含有し、融点(JIS K 7121−1987)が0℃〜100℃の範囲にある熱可塑性樹脂組成物からなることを特徴とする鏡胴用筒状体。
  2. 上記ゴム質重合体強化ビニル系樹脂〔B〕及び上記繊維状充填剤〔C〕の含有量は、上記ポリカーボネート樹脂〔A〕の含有量を100質量部とした場合に、それぞれ、0.5〜40質量部及び10〜200質量部である請求項1に記載の鏡胴用筒状体。
  3. 上記ゴム質重合体強化ビニル系樹脂〔B〕が、エチレン・α−オレフィン系ゴムに由来する重合体部と、ビニル系(共)重合体部とを備えるエチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体強化ビニル系樹脂を含む請求項1又は2に記載の鏡胴用筒状体。
  4. 上記エチレン・α−オレフィン系ゴムの融点(JIS K 7121−1987)が0℃〜100℃の範囲にある請求項3に記載の鏡胴用筒状体。
  5. 上記エチレン・α−オレフィン系ゴムに由来する重合体部の含有量が、上記熱可塑性樹脂組成物の全体に対して、0.5〜25質量%である請求項3又は4に記載の鏡胴用筒状体。
  6. 上記ゴム質重合体強化ビニル系樹脂〔B〕が、ポリオルガノシロキサン系ゴムに由来する重合体部と、ビニル系(共)重合体部とを備えるポリオルガノシロキサン系ゴム質重合体強化ビニル系樹脂を含む請求項1乃至5のいずれか一項に記載の鏡胴用筒状体。
  7. 上記ゴム質重合体強化ビニル系樹脂〔B〕を構成するビニル系(共)重合体部が、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含む請求項1乃至6のいずれか一項に記載の鏡胴用筒状体。
  8. 上記繊維状充填剤〔C〕がガラス繊維を含む請求項1乃至7のいずれか一項に記載の鏡胴用筒状体。
  9. 上記熱可塑性樹脂組成物が、更に、〔D〕難燃剤を含有する請求項1乃至8のいずれか一項に記載の鏡胴用筒状体。
  10. 請求項1乃至9のいずれか一項に記載の鏡胴用筒状体を備えることを特徴とする鏡胴。
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