JP2015193713A - エポキシ樹脂組成物および繊維強化複合材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】強化繊維への含浸が十分に行える低粘度であり、かつ吸水前更に吸水後にも、優れた高い耐熱性が得られるエポキシ樹脂組成物とそれを用いてなる繊維強化複合材料の提供。【解決手段】エポキシ樹脂(A)及び芳香族アミン硬化剤(B)が含まれてなるエポキシ樹脂組成物であって、エポキシ樹脂(A)100質量部中に、50℃の温度における粘度が9,000mPa・s以下であるテトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)65〜85質量部及び25℃の温度における粘度が15,000mPa・s以下であるビスフェノールA型エポキシ樹脂(A2)35〜15質量部が含まれており、前記芳香族アミン硬化剤(B)100質量部中に、ジエチルトルエンジアミンが95質量部以上含まれているエポキシ樹脂組成物。50℃における初期粘度及び4時間後の粘度が1,000mPa・s以下であるエポキシ樹脂組成物。【選択図】なし
Description
本発明はフィラメントワインディング成形品等に好適に用いられるエポキシ樹脂組成物およびそれを用いてなる繊維強化複合材料に関するものである。
炭素繊維やガラス繊維等を強化材とする複合材料は、ゴルフシャフト、釣竿およびテニスラケット等のスポーツやレジャー用品、航空機部材、印刷用ロール、圧力容器等の工業材料および医療関係等に使用されている。さらに近年においては、このような複合材料が、工業材料部品に使用されることが多くなってきている。
強化繊維に樹脂を含浸して成形された繊維強化プラスチック(以下、FRP:Fiber Reinforce Plasticと称することがある。)は、一般に炭素繊維、ガラス繊維、アルミナ繊維、アラミド繊維およびボロン繊維等の強化繊維に、マトリックス樹脂を含浸して加熱成形することにより得られ、その中でも強化繊維に炭素繊維を用いた複合材料は、炭素繊維強化プラスチック(以下、CFRP:Carbon Fiber Reinforce Plasticと称することがある。)と呼ばれ有用化されている。
FRPの代表的な成形法の一つであるフィラメントワインディング成形法は、高い生産性でFRPを得ることができる成形方法である。フィラメントワインディング成形方法は、強化繊維を樹脂含浸槽に連続的に通し、マンドレルに巻き付けた後、樹脂組成物を硬化させる方法であり、筒型形状のCFRPの成形に適した方法である。このことから、フィラメントワインディング成形方法は、シャフトやタンク等の製造に適する成形方法である。
フィラメントワインディング成形法で、例えば、CFRPを成形する場合、樹脂の粘度が成形品の性能に著しい影響を及ぼすことが知られている。炭素繊維に樹脂を均一に含浸させるために、通常は樹脂の粘度を低粘度にする方法が用いられる。用いられる樹脂の粘度が高いと、繊維に樹脂が均一に含浸せず、成型品にボイドが発生する要因となるからである。
また、大型の成形物を成形するためには、樹脂組成物のポットライフが長くなければならない(例えば、最低4時間以上)等の制約があるため、樹脂組成物の選定が重要な課題である。
従来、CFRPのマトリックス樹脂としては、炭素繊維に対する接着性に優れているエポキシ樹脂が用いられている。しかしながら、ガラス転移温度が高温な高耐熱性のエポキシ樹脂は、一般的に粘度が高く、フィラメントワインディング成形法に用いるのは困難である。加えて、3官能以上を有する耐熱性の高いエポキシ樹脂は、エポキシ1分子中のエポキシ基の数が多いため、吸水率が高くなりやすく、吸水によってガラス転移温度が低下するという課題がある。
フィラメントワインディング成形法に用いられるエポキシ樹脂組成物としては、2官能エポキシ、ポリグリシジルアミン型エポキシおよび3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタンからなる組成物が提案されている(特許文献1参照。)。しかしながら、この提案で用いられるエポキシ樹脂組成物は、吸水率を下げるために、硬化剤として3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタンを使用しているため、吸水率が低い特徴を有するものの、得られる樹脂硬化物のガラス転移温度が低く、耐熱性が要求される用途には使用できないという課題があった。
同様に、ナフタレン型エポキシ樹脂またはジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ポリグリシジルアミン型エポキシ樹脂および液状のイミダゾール化合物または液状のアミン化合物からなる組成物が提案されている(特許文献2参照。)。しかしながら、この提案で用いられるエポキシ樹脂組成物では、吸水率を下げるために、エポキシ樹脂としてナフタレン型エポキシ樹脂またはジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を使用しているため、粘度が高くなるという課題があった。
一方で、エポキシ樹脂の粘度を下げるために、ビスフェノールF型エポキシ、3官能以上のエポキシおよびジエチルトルエンジアミンからなる組成物が提案されている(特許文献3参照。)。しかしながら、この提案で用いられているエポキシ樹脂組成物では、ビスフェノールF型エポキシが使用されており、成型品の耐熱性が劣るという課題があった。
同様に、ビスフェノールA型エポキシ、ビスフェノールS型エポキシ、液状芳香族アミン硬化剤および硬化促進剤からなる組成物が提案されている(特許文献4参照。)。しかしながら、この提案で用いられるエポキシ樹脂組成物は、3官能以上のエポキシを含んでいないため、成型品の耐熱性が劣るという課題があった。
また、ポリグリシジルアミン型エポキシ、アミノフェノール型エポキシ、液状芳香族ポリアミンおよびジアミノジフェニルスルホンを必須成分とする組成物が提案されている(特許文献5参照。)。しかしながら、この提案で用いられるエポキシ樹脂組成物には、硬化剤としてジエチルトルエンジアミン以外の成分として固体のジアミノジフェニルスルホンが必須成分として含まれており、この構成では、エポキシ樹脂組成物の粘度が大幅に増加するという課題がある。
以上のことから、従来技術では、用いられるエポキシ樹脂組成物について、粘度と耐熱性との両立が実現できていないという課題があった。
そこで本発明の目的は、これらの課題を解決せんとするものであり、強化繊維への含浸性に優れた低粘度であり、吸水前さらには吸水後の耐熱性にも優れた特性を有し、特にフィラメントワインディング成形方法に適したエポキシ樹脂組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記のエポキシ樹脂組成物からなる繊維強化複合材料を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために種々検討を行なった結果、次に示すエポキシ樹脂組成物を見出すに至った。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、少なくともエポキシ樹脂(A)および芳香族アミン硬化剤(B)が含まれてなるエポキシ樹脂組成物であって、前記エポキシ樹脂(A)100質量部中に、ISO12058−1(1997)における落球粘度計を用いて測定した50℃の温度における粘度が9,000mPa・s以下であるテトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)65〜85質量部および25℃の温度における粘度が15,000mPa・s以下であるビスフェノールA型エポキシ樹脂(A2)35〜15質量部が含まれており、かつ、前記芳香族アミン硬化剤(B)100質量部中に、ジエチルトルエンジアミンが95質量部以上含まれていることを特徴とするエポキシ樹脂組成物である。
本発明のエポキシ樹脂組成物の好ましい態様によれば、前記の芳香族アミン硬化剤(B)は、ジエチルトルエンジアミンのみから構成されていることである。
本発明のエポキシ樹脂組成物の好ましい態様によれば、本発明のエポキシ樹脂組成物は、ISO2884−1(1999)における円錐−平板型回転粘度計を用いて測定した50℃の温度における初期粘度および4時間後の粘度が1,000mPa・s以下である。
本発明のエポキシ樹脂組成物の好ましい態様によれば、本発明のエポキシ樹脂組成物は、180℃の温度で4時間硬化して得られる硬化物の、TAインスツルメンツ社製のARES−G2を用いて昇温速度5℃/分で測定されたガラス転移温度が、210℃以上である。
本発明のエポキシ樹脂組成物の好ましい態様によれば、本発明のエポキシ樹脂組成物は、180℃の温度で4時間硬化して得られる硬化物を、60℃の温度の温水中で7日間浸漬後の、TAインスツルメンツ社製のARES−G2を用いて昇温速度5℃/分で測定したガラス転移温度が、200℃以上である。
本発明においては、上記のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を用いて、繊維強化複合材料を製造することができる。
本発明によれば、強化繊維に十分に含浸できる低粘度であり、また、ポットライフ特性に優れ、粘度変化が小さく、さらにそのエポキシ樹脂硬化物の耐熱性に優れたエポキシ樹脂組成物が得られる。特に、フィラメントワインディング成形法に好適に用いることができ、成形時の粘度変化が小さく、連続生産性に優れた樹脂組成物を得ることができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記のようにフィラメントワインディング成形品に好適に用いられる。また、他のプリプレグ法、ハンドレイアップ法、プルトルージョン引き抜き成形(プルトルージョン)法、RTM(Resin Transfer Molding)法、およびプレス成形法等の方法にも好適に適用される。これらの中で、ハンドレイアップ法、フィラメントワインディング法、および引き抜き成形法およびRTM法にも好適に用いることができる場合がある。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、少なくともエポキシ樹脂(A)および芳香族アミン硬化剤(B)が含まれてなるエポキシ樹脂組成物であって、前記のエポキシ樹脂(A)100質量部中に、ISO12058−1(1997)における落球粘度計を用いて測定した50℃の温度における粘度が9,000mPa・s以下であるテトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)65〜85質量部および25℃の温度における粘度が15,000mPa・s以下であるビスフェノールA型エポキシ樹脂(A2)35〜15質量部が含まれており、かつ、前記の芳香族アミン硬化剤(B)100質量部中に、ジエチルトルエンジアミンが95質量部以上含まれているエポキシ樹脂組成物である。
本発明において、エポキシ樹脂とは、1分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物を言う。また、ポリマー化ないしは硬化反応に必要な要素が混合されたものをエポキシ樹脂組成物、ポリマー化ないしは硬化反応がなされたものをエポキシ樹脂硬化物と定義する。
本発明に記載されている粘度の測定方法は、エポキシ樹脂(A)および芳香族アミン硬化剤(B)については、ISO12058−1(1997)における落球粘度計を使用した測定方法であり、エポキシ樹脂組成物については、ISO2884−1(1999)における円錐−平板型回転粘度計を使用した測定方法である。
本発明において、エポキシ樹脂(A)として、テトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂およびビスフェノールA型エポキシ樹脂を組み合わせることによって、両者を単独で使用する場合に比べて、低粘度および吸水前後の耐熱性のバランスの調整が可能となる。さらに、各組成物の粘度を次に示す範囲とすることにより、強化繊維への含浸が十分に行える低粘度とすることができ、その結果、低粘度および高耐熱性の両立を図ることができる。
本発明において、テトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)は、50℃の温度における粘度が9,000mPa・s以下であることが必要である。50℃の温度における粘度は、好ましくは3,000〜9,000mPa・sであり、より好ましくは3,000〜7,000mPa・sであり、さらに好ましくは3,000〜6,000mPa・sである。
テトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)の粘度が上記範囲であると、得られるエポキシ樹脂組成物の50℃の温度における粘度を、強化繊維への含浸が十分に行える低粘度とすることができ、かつ得られるエポキシ樹脂硬化物が高い耐熱性を得ることができる。
テトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)の50℃の温度での粘度が9,000mPa・sよりも大きいと、得られるエポキシ樹脂組成物の粘度が高くなり、強化繊維への含浸が不十分となる傾向にある。
一方、テトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)の50℃の温度での粘度が3,000mPa・sよりも小さいと、フィラメントワインディング成形において、強化繊維への樹脂の付着量が少なくなることがある。
本発明で用いられるテトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)の割合は、エポキシ樹脂(A)100質量部中、65〜85質量部であることが必要であり、好ましくは70〜85質量部であり、より好ましくは75〜80質量部である。
テトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)の配合量が65〜85質量部であると、エポキシ樹脂組成物の50℃の温度での粘度が低粘度であり、かつ得られるエポキシ樹脂硬化物が高い耐熱性を得ることができる。
一方、テトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)の配合量が65質量部未満では、得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性が劣ることになる。逆に、テトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)の配合量が85質量部よりも大きくなると、得られるエポキシ樹脂組成物の粘度が高くなる。
50℃の温度での粘度が9,000mPa・s以下であるテトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)の市販品としては、“アラルダイト”(登録商標)MY721(ハンツマン・アドバンスドマテリアル社製)、“アラルダイト”(登録商標)MY9655T(ハンツマン・アドバンスドマテリアル社製)、“TETRAD”(登録商標)−X(三菱ガス化学社製)および“TETRAD”(登録商標)−C(三菱ガス化学社製)等が挙げられる。
本発明では、テトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)とともにビスフェノールA型エポキシ樹脂(A2)を用いることにより、エポキシ樹脂組成物の粘度を有効に低下させることができる。
本発明で用いられるビスフェノールA型エポキシ樹脂(A2)は、25℃の温度における粘度が15,000mPa・s以下であることが必要である。25℃の温度における粘度は、好ましくは3,000〜15,000mPa・sであり、より好ましくは3,000〜9,000mPa・sである。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(A2)の25℃の温度における粘度が15,000mPa・sよりも大きいと、得られるエポキシ樹脂組成物の粘度が高くなり、かつエポキシ樹脂硬化物の耐熱性が劣ることになる。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(A2)の配合量が35〜15質量部であると、エポキシ樹脂組成物の粘度が低粘度であり、かつ得られるエポキシ樹脂硬化物が高い耐熱性を得ることができる。
一方、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(A2)の配合量が35質量部よりも多いと、得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性が劣ることになる。逆に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(A2)の配合量が15質量部未満になると、得られるエポキシ樹脂組成物の粘度が高くなる。
25℃の温度における粘度が15,000mPa・s以下であるビスフェノールA型エポキシ樹脂(A2)の市販品としては、“アラルダイト”(登録商標)GY240(ハンツマン・アドバンスドマテリアル社製)、および“jER”(登録商標)828(三菱化学(株)製)等が挙げられる。
さらに、本発明においては、芳香族アミン硬化剤(B)100質量部中に、ジエチルトルエンジアミンを95質量部以上含む構成である。例えば、3,3′−ジエチル−4,4′−ジアミノジフェニルメタンのようなジエチルトルエンジアミン以外の芳香族アミンを添加すると、エポキシ樹脂硬化物の耐熱性が劣る傾向にある。そのため、ジエチルトルエンジアミンを95質量部以上含む構成とすることにより、耐熱性を確保することができる。ジエチルトルエンジアミンが95重量部未満であると、耐熱性の確保に課題が生じる場合がある。
また、本発明において、芳香族アミン硬化剤(B)は、ジエチルトルエンジアミンのみから構成されることが好ましい態様である。これにより、エポキシ樹脂硬化物の耐熱性を、より十分に確保することができる。
芳香族アミン硬化剤(B)の例としては、ジエチルトルエンジアミン、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホンおよび4,4’−ジアミノジフェニルスルホン等が挙げられる。
ジエチルトルエンジアミンの市販品の例としては、 “アラデュール”(登録商標)5200(ハンツマン・アドバンスドマテリアル社製)、“ETHACURE”(登録商標)100(ALBEMARLE社製)および“エピキュア”(登録商標)W(三菱化学社製)等が挙げられる。
また、本発明においては、エポキシ樹脂組成物には、硬化触媒を含まないことが好ましい態様である。
硬化触媒を含まないことにより、ポットライフがより長くなり、50℃の温度で4時間後の粘度上昇が起こりにくく、強化繊維へのより十分な含浸が可能となる。
また、本発明において、芳香族アミン硬化剤(B)の配合量は、エポキシ樹脂(A)に含有されるエポキシ基数に対するアミンの活性水素数の割合が0.8〜1.0の範囲であることが好ましい態様である。アミンの活性水素数の割合を0.8〜1.0とすることにより、エポキシ基とアミン基の反応率が高められるため、得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性をより向上させることができる。アミンの活性水素数の割合が0.8より少ないか、または1.0より多いと、得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性が劣る傾向にある。
また、本発明において、エポキシ樹脂組成物の50℃の温度における初期粘度および4時間後の粘度は、1,000mPa・s以下であることが好ましい。エポキシ樹脂組成物の粘度を1,000mPa・s以下とすることにより、強化繊維内への含浸を十分なものとすることができる。一方、エポキシ樹脂組成物の粘度が1,000mPa・sを超えると、強化繊維内へ樹脂組成物が入りこみにくくなり未含浸部が発生する傾向にある。ここで、初期粘度とは、後に示す表1または表2に記載された比率で、成分をすべて混合した直後の粘度のことを指す。
上記のように、エポキシ樹脂(A)および芳香族アミン硬化剤(B)の組成を適宜選択することにより、エポキシ樹脂組成物の50℃の温度における初期粘度および4時間後の粘度を、1,000mPa・s以下とすることが可能である。
また、本発明において、180℃の温度で4時間硬化して得られるエポキシ樹脂硬化物のガラス転移温度が210℃以上であり、またその硬化物を60℃の温度の温水中で7日間浸漬後のガラス転移温度が200℃以上であることが好ましい。これにより、エポキシ樹脂硬化物の実使用上の耐熱性および耐吸水性を満足させることができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)および芳香族アミン硬化剤(B)を攪拌棒等を用いて攪拌し、混合することにより得られる。混合に際し必要に応じて、加熱または加圧することもできるが、長時間の加熱はエポキシ樹脂組成物の粘度を上昇させることになる。混合されたエポキシ樹脂組成物は、均一に溶解されていることが好ましい。これらの一部が分離した相をなす場合は、含浸過程において成分の局所的な不均一性を招く恐れがある。
本発明で用いられる強化繊維としては、ガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維およびボロン繊維等が好ましく挙げられるが、特に比強度と比弾性率に優れていることから、炭素繊維が好ましく用いられる。
また、強化繊維の形態としては、トウや織物のような連続繊維状物が好ましく用いられる。
次に、本発明のエポキシ樹脂組成物を用いたフィラメントワインディング法により得られる成形品(繊維強化複合材料)の製造方法について説明する。
本発明で好適に用いられるフィラメントワインディング法は、エポキシ樹脂組成物が含浸された強化繊維を、マンドレルに巻きつけ、加熱硬化により複合材料を得る方法である。
図1に、フィラメントワインディング成形方法の製造構成図を示す。
一般的なフィラメントワインディング成形方法としては、図1において、強化繊維ボビン1から解除された強化繊維2を、エポキシ樹脂組成物が入った樹脂含浸槽3に連続的に通し、マンドレル4に連続的に巻き付けた後、エポキシ樹脂組成物を硬化させる。その後、マンドレル4を抜き出し、さらにアフターキュアによって完全硬化させる。これらの成形法は、フィラメントワインディング成形法の一例を示しただけであり、本発明を限定するものではない。
繊維強化複合材料が大型品の場合では、長時間作業となる場合があり、ポットライフが長い樹脂組成物の方が成形性に優れており、好ましい態様である。
樹脂含浸槽3は、10〜60℃の温度に保たれていることが好ましい態様である。樹脂含浸層3をこの温度範囲とすることにより、粘度と反応性をフィラメントワインディング成形に適したものにすることができる。
エポキシ樹脂組成物の付着量は、繊維強化複合材料中の強化繊維の体積含有率が30〜80%とするよう調整することが好ましい態様である。強化繊維の体積含有率をこの範囲とすることにより、強度、剛性と重量とのバランスが取れた繊維強化複合材料とすることができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、フィラメントワインディング成形法に好適に用いられる他、レジントランスファーモールディング法やプルトルージョン法のような液状の樹脂組成物を用いた繊維強化複合材料の成形にも用いることができる。
これら繊維強化複合材料の用途としては、ドライブシャフト、圧力容器、印刷用等の各種ロール、釣り竿、および傘骨等に用いることができる。
次に、本発明のエポキシ樹脂組成物について実施例を用いて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。次に、実施例で用いられるエポキシ樹脂、芳香族アミンおよび強化繊維ならびにそれらの特性を示す。
<樹脂原料>
[エポキシ樹脂(A)]
(1)テトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)
・“アラルダイト”(登録商標)MY721(テトラグリシジルアミン型エポキシ、粘度:4,500mPa・s(50℃)、ハンツマン・アドバンスドマテリアル社製)
・“アラルダイト”(登録商標)MY9655T(テトラグリシジルアミン型エポキシ、粘度:8,000mPa・s(50℃)、ハンツマン・アドバンスドマテリアル社製)
[エポキシ樹脂(A)]
(1)テトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)
・“アラルダイト”(登録商標)MY721(テトラグリシジルアミン型エポキシ、粘度:4,500mPa・s(50℃)、ハンツマン・アドバンスドマテリアル社製)
・“アラルダイト”(登録商標)MY9655T(テトラグリシジルアミン型エポキシ、粘度:8,000mPa・s(50℃)、ハンツマン・アドバンスドマテリアル社製)
(2)ビスフェノールA型エポキシ樹脂(A2)
・“アラルダイト”(登録商標)GY240(ビスフェノールA型エポキシ、粘度:8,000mPa・s(25℃)、ハンツマン・アドバンスドマテリアル社製)
・“jER”(登録商標)828(ビスフェノールA型エポキシ、粘度:13,500mPa・s(25℃)、三菱化学(株)製)
・“アラルダイト”(登録商標)GY240(ビスフェノールA型エポキシ、粘度:8,000mPa・s(25℃)、ハンツマン・アドバンスドマテリアル社製)
・“jER”(登録商標)828(ビスフェノールA型エポキシ、粘度:13,500mPa・s(25℃)、三菱化学(株)製)
(3)上記の(A1)と(A2)以外のエポキシ樹脂(A)
・“アラルダイト”(登録商標)MY9634(テトラグリシジルアミン型エポキシ、粘度:14,000mPa・s(50℃)、ハンツマン・アドバンスドマテリアル社製)
・“jER”(登録商標)828XA(ビスフェノールA型エポキシ、粘度:19,000mPa・s(25℃)、三菱化学(株)製)
・“アラルダイト”(登録商標)MY9634(テトラグリシジルアミン型エポキシ、粘度:14,000mPa・s(50℃)、ハンツマン・アドバンスドマテリアル社製)
・“jER”(登録商標)828XA(ビスフェノールA型エポキシ、粘度:19,000mPa・s(25℃)、三菱化学(株)製)
[芳香族アミン硬化剤(B)]
(1)ジエチルトルエンジアミン
・“アラデュール”(登録商標)5200(ジエチルトルエンジアミン、粘度:150mPa・s(25℃)、ハンツマン・アドバンスドマテリアル社製)
(1)ジエチルトルエンジアミン
・“アラデュール”(登録商標)5200(ジエチルトルエンジアミン、粘度:150mPa・s(25℃)、ハンツマン・アドバンスドマテリアル社製)
(2)ジエチルトルエンジアミン以外の芳香族アミン
・“カヤハード”(登録商標)A−A(3,3′−ジエチル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、粘度:2,500mPa・s(25℃)、日本化薬(株)製)
・“カヤハード”(登録商標)A−A(3,3′−ジエチル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、粘度:2,500mPa・s(25℃)、日本化薬(株)製)
<硬化触媒>
・カテコール(和光純薬工業(株)製)
・カテコール(和光純薬工業(株)製)
<強化繊維>
・“トレカ”(登録商標)T700S−24K(炭素繊維、フィラメント数24,000本、東レ(株)製)。
・“トレカ”(登録商標)T700S−24K(炭素繊維、フィラメント数24,000本、東レ(株)製)。
(実施例1〜6、比較例1〜5)
上記の材料を使用し、次の手順でエポキシ樹脂組成物の調製、フィラメントワインディング成形品の作製、および、ガラス転移温度の測定を行った。組成比および分析結果等を、表1と表2に示す。表1と表2におけるエポキシ樹脂組成物の構成要素の配合量の単位は、質量部である。
上記の材料を使用し、次の手順でエポキシ樹脂組成物の調製、フィラメントワインディング成形品の作製、および、ガラス転移温度の測定を行った。組成比および分析結果等を、表1と表2に示す。表1と表2におけるエポキシ樹脂組成物の構成要素の配合量の単位は、質量部である。
(1)エポキシ樹脂組成物の調製
表1と表2に従って、50℃の温度で、エポキシ樹脂(A)、芳香族アミン硬化剤(B)および硬化触媒を混合し、エポキシ樹脂組成物を得た。
表1と表2に従って、50℃の温度で、エポキシ樹脂(A)、芳香族アミン硬化剤(B)および硬化触媒を混合し、エポキシ樹脂組成物を得た。
(2)エポキシ樹脂組成物の粘度測定
ISO2884−1(1999)における円錐−平板型回転粘度計を使用した測定方法に従い、エポキシ樹脂組成物を調製した直後と、粘度計内において50℃の温度で4時間保温した粘度を、それぞれ50℃の温度において測定した。装置には、東機産業(株)製のTVE−30H型を用いた。ここで、ローターは1°34′×R24を用い、サンプル量は1cm3とした。
ISO2884−1(1999)における円錐−平板型回転粘度計を使用した測定方法に従い、エポキシ樹脂組成物を調製した直後と、粘度計内において50℃の温度で4時間保温した粘度を、それぞれ50℃の温度において測定した。装置には、東機産業(株)製のTVE−30H型を用いた。ここで、ローターは1°34′×R24を用い、サンプル量は1cm3とした。
(3)フィラメントワインディング成形品の作製
表1と表2に従って、上記(1)で得られた実施例および比較例の各樹脂組成物を、50℃の温度の樹脂含浸槽に投入し、このエポキシ樹脂組成物の入った樹脂含浸槽に、上記の炭素繊維をひき通して樹脂を含浸させ、次いでこれをマンドレルに巻き付け、100℃の温度で2時間加熱硬化させ、脱芯後180℃の温度で4時間アフターキュアを行い、フィラメントワインディング成形品を得た。フィラメントワインディング成形には、約6時間を要した。
表1と表2に従って、上記(1)で得られた実施例および比較例の各樹脂組成物を、50℃の温度の樹脂含浸槽に投入し、このエポキシ樹脂組成物の入った樹脂含浸槽に、上記の炭素繊維をひき通して樹脂を含浸させ、次いでこれをマンドレルに巻き付け、100℃の温度で2時間加熱硬化させ、脱芯後180℃の温度で4時間アフターキュアを行い、フィラメントワインディング成形品を得た。フィラメントワインディング成形には、約6時間を要した。
この後、実施例および比較例の各樹脂組成物を用いてフィラメントワインディング成形を行い、100℃の温度で2時間加熱硬化させ、脱芯後180℃の温度で4時間アフターキュアを行った成型品のことを、単にフィラメントワインディング成形品と表記する。
(4)フィラメントワインディング成形品のガラス転移温度測定
TAインスツルメンツ社製のARES−G2を用いて、温度30〜300℃、5℃/分で昇温することにより測定した。貯蔵弾性率(G′)低下のオンセット温度を、ガラス転移点とした。
TAインスツルメンツ社製のARES−G2を用いて、温度30〜300℃、5℃/分で昇温することにより測定した。貯蔵弾性率(G′)低下のオンセット温度を、ガラス転移点とした。
[実験例1:テトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)の粘度の効果]
テトラグリシジルアミン型エポキシ型エポキシ樹脂(A1)の粘度の効果を比較するため、実施例1、実施例4および比較例3で得られた各樹脂組成物の粘度およびフィラメントワインディング成形品のガラス転移温度について、図2および図3にそれぞれ示した。
テトラグリシジルアミン型エポキシ型エポキシ樹脂(A1)の粘度の効果を比較するため、実施例1、実施例4および比較例3で得られた各樹脂組成物の粘度およびフィラメントワインディング成形品のガラス転移温度について、図2および図3にそれぞれ示した。
図2は、横軸にテトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)の50℃の温度における粘度を示し、縦軸にエポキシ樹脂組成物の50℃の温度における初期粘度および4時間後の粘度を示した。図2中の線5は、樹脂組成物の粘度が1,000mPa・sであることを示し、線6は240分後の粘度が1,000mPa・sであるテトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)の粘度を示し、矢印7は初期および240分後の粘度が1,000mPa・s以下であるテトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)の粘度範囲を示している。
図3は、横軸にテトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)の50℃の温度における粘度を示し、縦軸にフィラメントワインディング成形品のガラス転移温度、および60℃の温度の温水中で7日間浸漬後のガラス転移温度を示す。図3中の線8は、初期のガラス転移温度が210℃であることを示し、線9は吸水後のガラス転移温度が200℃であることを示す。また、図3中の線10は、吸水後のガラス転移温度が200℃であるテトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)の粘度を示し、矢印11は初期および吸水後のガラス転移温度がそれぞれ210℃かつ200℃以上であるテトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)の粘度範囲を示す。
図2において、テトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)の50℃の温度における粘度が11,000mPa・s以下であれば、得られたエポキシ樹脂組成物粘度が1000mPa・s以下であり、実使用上問題ないレベルでの樹脂含浸性が得られた。
しかしながら、テトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)の粘度が11,000mPa・sを超えると得られたフィラメントワインディング成形品には、樹脂の未含浸と思われるボイドが見られ、実使用上問題が生じるレベルであった。
また、図3において、テトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)の50℃の温度における粘度が9,000mPa・s以下であれば、得られたフィラメントワインディング成形品の吸水試験後のガラス転移温度は200℃以上であり、実使用上問題ない耐熱性が得られた。
しかしながら、テトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)の50℃の温度における粘度が9,000mPa・sを超えると、フィラメントワインディング成形品のガラス転移温度が210℃よりも低下し、かつ60℃の温度の温水中で7日間浸漬後のガラス転移温度が200℃よりも低下し、実使用上耐熱性に問題があるレベルであった。
図2および図3の結果から、テトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)の粘度特性に関して、エポキシ樹脂組成物の初期粘度及び4時間後の粘度並びにフィラメントワインディング成形品の初期のガラス転移温度及び吸水後のガラス転移温度を鑑みて、テトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)の50℃の温度における粘度が9,000mPa・s以下であれば、フィラメントワインディング成形時の粘度変化が小さく、低粘度及び硬化物の耐熱性の両立を図ることができる。
[実験例2:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(A2)の粘度の効果]
表1および表2に記載した実施例3、実施例5および比較例4によるビスフェノールA型エポキシ樹脂(A2)の粘度の特性を図4および図5に示す。
表1および表2に記載した実施例3、実施例5および比較例4によるビスフェノールA型エポキシ樹脂(A2)の粘度の特性を図4および図5に示す。
図4は、横軸にビスフェノールA型エポキシ樹脂(A2)の25℃の温度における粘度を示し、縦軸にエポキシ樹脂組成物の50℃の温度における初期粘度および4時間後の粘度を示した。図4中の線12は、樹脂組成物の粘度が1,000mPa・sであることを示し、線13は240分後の粘度が1,000mPa・sであるビスフェノールA型エポキシ樹脂(A2)の粘度を示し、矢印14は初期および240分後の粘度が1,000mPa・s以下であるビスフェノールA型エポキシ樹脂(A2)の粘度範囲を示している。
図5は、横軸にビスフェノールA型エポキシ樹脂(A2)の25℃の温度における粘度を示し、縦軸にフィラメントワインディング成形品のガラス転移温度および60℃の温度の温水中で7日間浸漬後のガラス転移温度を示す。図5中の線15は、初期のガラス転移温度が210℃であることを示し、線16は吸水後のガラス転移温度が200℃であることを示す。また、図5中の線17は、吸水後のガラス転移温度が200℃であるビスフェノールA型エポキシ樹脂(A2)の粘度を示し、矢印18は初期および吸水後のガラス転移温度がそれぞれ210℃かつ200℃以上であるビスフェノールA型エポキシ樹脂(A2)の粘度範囲を示す。
図4において、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(A2)の25℃の温度における粘度が15,000mPa・s以下であれば、得られたエポキシ樹脂組成物粘度が1000mPa・s以下であり、実使用上問題ないレベルでの樹脂含浸性が得られた。
しかしながら、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(A2)の25℃の温度における粘度が15,000mPa・sを超えると、得られたフィラメントワインディング成形品には、樹脂の未含浸と思われるボイドが見られ、実使用上問題が生じるレベルであった。
また、図5において、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(A2)の25℃の温度における粘度が15,000mPa・s以下であれば、得られたフィラメントワインディング成形品の吸水試験後のガラス転移温度は200℃以上であり、実使用上問題ない耐熱性が得られた。
しかしながら、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(A2)の25℃の温度における粘度が15,000mPa・sを超えると、ガラス転移温度が210℃よりも低下し、かつ60℃の温度の温水中で7日間浸漬後のガラス転移温度が200℃よりも低下し、実使用上耐熱性に問題があるレベルであった。
図4および図5の結果から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(A2)の粘度特性に関して、エポキシ樹脂組成物の初期粘度及び4時間後の粘度並びにフィラメントワインディング成形品の初期のガラス転移温度及び吸水試験後のガラス転移温度を鑑みて、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(A2)の25℃の温度における粘度が15,000mPa・s以下であれば、フィラメントワインディング成形時の粘度変化が小さく、低粘度および硬化物の耐熱性の両立を図ることができる。
[実験例3:テトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)の配合割合の効果]
テトラグリシジルアミン型エポキシ型エポキシ樹脂(A1)の配合割合の効果を比較するため、実施例1、実施例2、実施例3、比較例1および比較例2で得られた樹脂組成物の粘度、フィラメントワインディング成形品のガラス転移温度について、図6および図7にそれぞれ示した。
テトラグリシジルアミン型エポキシ型エポキシ樹脂(A1)の配合割合の効果を比較するため、実施例1、実施例2、実施例3、比較例1および比較例2で得られた樹脂組成物の粘度、フィラメントワインディング成形品のガラス転移温度について、図6および図7にそれぞれ示した。
図6に、横軸にエポキシ樹脂(A)100質量部中に含まれるテトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)の配合割合を示し、縦軸にエポキシ樹脂組成物の50℃の温度における初期粘度および4時間後の粘度を示す。図6中の線19は、樹脂組成物の粘度が1,000mPa・sであることを示し、線20は240分後の粘度が1,000mPa・sであるテトラグリシジルアミン型エポキシ型エポキシ樹脂(A1)の添加量を示し、矢印21は初期および240分後の粘度が1,000mPa・s以下であるテトラグリシジルアミン型エポキシ型エポキシ樹脂(A1)の添加量の範囲を示している。
図7に、横軸にエポキシ樹脂(A)100質量部中に含まれるテトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)の配合割合を示し、縦軸にフィラメントワインディング成形品のガラス転移温度、および60℃の温度の温水中で7日間浸漬後のガラス転移温度を示す。図7中の線22は、初期のガラス転移温度が210℃であることを示し、線23は吸水後のガラス転移温度が200℃であることを示す。また、図7中の線24は、吸水後のガラス転移温度が200℃であるテトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)の添加量を示し、矢印25は初期および吸水後のガラス転移温度がそれぞれ210℃かつ200℃以上であるテトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)の添加量の範囲を示す。
図6から、テトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)の配合割合が85質量部を超えると50℃の温度における初期粘度と4時間後の粘度が大きく上昇する傾向にあった。実際に得られた成形品中に樹脂の未含浸と思われるボイドが見られた。
また、図7からテトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)の配合割合が65質量部より少なくなるとフィラメントワインディング成形品のガラス転移温度が210℃よりも低下し、かつ60℃の温度の温水中で7日間浸漬後のガラス転移温度が200℃よりも低下する傾向にあった。
図6の結果から、テトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)の配合質量部の範囲が85質量部以下であれば、50℃の温度における初期粘度と4時間後の粘度が、それぞれ1,000mPa・s以下とすることができる。
図7の結果から、テトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)の配合質量部の範囲が65質量部以上であれば、フィラメントワインディング成形品のガラス転移温度、および60℃の温度の温水中で7日間浸漬後のガラス転移温度が、それぞれ210℃以上かつ200℃以上とすることができる。
図6および図7の結果から、エポキシ樹脂(A)100質量部中に含まれるテトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)の配合割合に関して、エポキシ樹脂組成物の初期粘度、4時間後の粘度およびガラス転移温度を鑑みて、配合割合が65〜85質量部の範囲であれば、フィラメントワインディング成形時の粘度変化が小さく、低粘度およびフィラメントワインディング成形品の耐熱性の両立を図ることができることがわかる。
[実験例4:芳香族アミン硬化剤(B)の効果]
表2に記載した比較例5では、芳香族アミン硬化剤(B)として、ジエチルトルエンジアミン90質量部および3,3′−ジエチル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン10質量部としたこと以外は、実施例2と同じ組成で成形を行った。
表2に記載した比較例5では、芳香族アミン硬化剤(B)として、ジエチルトルエンジアミン90質量部および3,3′−ジエチル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン10質量部としたこと以外は、実施例2と同じ組成で成形を行った。
比較例5では、フィラメントワインディング成形品のガラス転移温度および60℃の温度の温水中で7日間浸漬後のガラス転移温度が低い結果となり、実使用上耐熱性に問題があるレベルであった。
[実験例5:硬化触媒の影響]
表1に示した実施例6では、硬化触媒としてカテコールを加えたこと以外は、実施例2と同様の組成で成形を行った。実施例6では、樹脂組成物の50℃の温度における初期粘度は1,000mPa・s以下であった。一方、50℃の温度における4時間後の粘度は1,050mPa・sであり、1,000mPa・sをわずかに上回ったが、実使用上問題ないレベルでの樹脂含浸性が得られた。また、フィラメントワインディング成形品のガラス転移温度、および60℃の温度の温水中で7日間浸漬後のガラス転移温度は、それぞれ210℃以上かつ200℃以上の温度であった。
表1に示した実施例6では、硬化触媒としてカテコールを加えたこと以外は、実施例2と同様の組成で成形を行った。実施例6では、樹脂組成物の50℃の温度における初期粘度は1,000mPa・s以下であった。一方、50℃の温度における4時間後の粘度は1,050mPa・sであり、1,000mPa・sをわずかに上回ったが、実使用上問題ないレベルでの樹脂含浸性が得られた。また、フィラメントワインディング成形品のガラス転移温度、および60℃の温度の温水中で7日間浸漬後のガラス転移温度は、それぞれ210℃以上かつ200℃以上の温度であった。
1:強化繊維ボビン
2:強化繊維
3:樹脂含浸槽
4:マンドレル
5:樹脂組成物の粘度が1,000mPa・sである線
6:240分後の粘度が1,000mPa・sであるテトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)の粘度
7:初期及び240分後の粘度が1,000mPa・s以下であるテトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)の粘度範囲
8:フィラメントワインディング成形品のガラス転移温度が210℃である線
9:フィラメントワインディング成形品のガラス転移温度が200℃である線
10:吸水後のガラス転移温度が200℃であるテトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)の粘度
11:初期及び吸水後のガラス転移温度がそれぞれ210℃かつ200℃以上であるテトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)の粘度範囲
12:樹脂組成物の粘度が1,000mPa・sであることを示す線
13:240分後の粘度が1,000mPa・sであるビスフェノールA型エポキシ樹脂(A2)の粘度
14:初期及び240分後の粘度が1,000mPa・s以下であるビスフェノールA型エポキシ樹脂(A2)の粘度範囲
15:フィラメントワインディング成形品のガラス転移温度が210℃である線
16:フィラメントワインディング成形品のガラス転移温度が200℃である線
17:吸水後のガラス転移温度が200℃であるビスフェノールA型エポキシ樹脂(A2)の粘度
18:初期及び吸水後のガラス転移温度がそれぞれ210℃かつ200℃以上であるビスフェノールA型エポキシ樹脂(A2)の粘度範囲
19:樹脂組成物の粘度が1,000mPa・sであることを示す線
20:240分後の粘度が1,000mPa・sであるテトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)の添加量
21:初期及び240分後の粘度が1,000mPa・s以下であるテトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)の添加量の範囲
22:フィラメントワインディング成形品のガラス転移温度が210℃である線
23:フィラメントワインディング成形品のガラス転移温度が200℃である線
24:吸水後のガラス転移温度が200℃であるテトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)の添加量
25:初期及び吸水後のガラス転移温度がそれぞれ210℃かつ200℃以上であるテトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)の添加量の範囲。
2:強化繊維
3:樹脂含浸槽
4:マンドレル
5:樹脂組成物の粘度が1,000mPa・sである線
6:240分後の粘度が1,000mPa・sであるテトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)の粘度
7:初期及び240分後の粘度が1,000mPa・s以下であるテトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)の粘度範囲
8:フィラメントワインディング成形品のガラス転移温度が210℃である線
9:フィラメントワインディング成形品のガラス転移温度が200℃である線
10:吸水後のガラス転移温度が200℃であるテトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)の粘度
11:初期及び吸水後のガラス転移温度がそれぞれ210℃かつ200℃以上であるテトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)の粘度範囲
12:樹脂組成物の粘度が1,000mPa・sであることを示す線
13:240分後の粘度が1,000mPa・sであるビスフェノールA型エポキシ樹脂(A2)の粘度
14:初期及び240分後の粘度が1,000mPa・s以下であるビスフェノールA型エポキシ樹脂(A2)の粘度範囲
15:フィラメントワインディング成形品のガラス転移温度が210℃である線
16:フィラメントワインディング成形品のガラス転移温度が200℃である線
17:吸水後のガラス転移温度が200℃であるビスフェノールA型エポキシ樹脂(A2)の粘度
18:初期及び吸水後のガラス転移温度がそれぞれ210℃かつ200℃以上であるビスフェノールA型エポキシ樹脂(A2)の粘度範囲
19:樹脂組成物の粘度が1,000mPa・sであることを示す線
20:240分後の粘度が1,000mPa・sであるテトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)の添加量
21:初期及び240分後の粘度が1,000mPa・s以下であるテトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)の添加量の範囲
22:フィラメントワインディング成形品のガラス転移温度が210℃である線
23:フィラメントワインディング成形品のガラス転移温度が200℃である線
24:吸水後のガラス転移温度が200℃であるテトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)の添加量
25:初期及び吸水後のガラス転移温度がそれぞれ210℃かつ200℃以上であるテトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)の添加量の範囲。
Claims (6)
- 少なくともエポキシ樹脂(A)および芳香族アミン硬化剤(B)が含まれてなるエポキシ樹脂組成物であって、前記エポキシ樹脂(A)100質量部中に、50℃の温度における粘度が9,000mPa・s以下であるテトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A1)65〜85質量部および25℃の温度における粘度が15,000mPa・s以下であるビスフェノールA型エポキシ樹脂(A2)35〜15質量部が含まれており、かつ、前記芳香族アミン硬化剤(B)100質量部中に、ジエチルトルエンジアミンが95質量部以上含まれていることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
- 芳香族アミン硬化剤(B)が、ジエチルトルエンジアミンのみから構成されている請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
- 50℃の温度における初期粘度および4時間後の粘度が1,000mPa・s以下である請求項1または2記載のエポキシ樹脂組成物。
- 180℃の温度で4時間硬化して得られる硬化物のガラス転移温度が210℃以上である請求項1〜3のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
- 180℃の温度で4時間硬化して得られる硬化物を60℃の温度の温水中に7日間浸漬後のガラス転移温度が、200℃以上である請求項1〜4のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を用いてなる繊維強化複合材料。
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