JP2015190952A - 物体変位量検知信号処理装置 - Google Patents

物体変位量検知信号処理装置 Download PDF

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Abstract

【課題】物体の変位を検知する際の検知精度を向上させること。
【解決手段】物体変位量検知信号処理装置は、1つ以上のアンテナと、検知の対象となる物体に1つ以上のアンテナから送信波を送信し、該送信波の検知の対象となる物体による反射波を前記1つ以上のアンテナから受信する送受信回路と、反射波を2つの信号に分配し、直交座標系に該2つの反射波をプロットすることによってリサージュ軌跡を作成し、直交座標系の所定の象限に、リサージュ軌跡を回転させて複数配置し、該回転させて複数配置したリサージュ軌跡を時間軸上にプロットすることにより求められるパラメータに基づいて位相変化量を求め、該位相変化量を変位量へ換算する変位量演算部とを有する。
【選択図】図22

Description

本発明は、非接触式で物体の変位を検知する技術に関する。
マイクロ波を送信し、該マイクロ波の物体による反射波を受信することにより非接触で物体の変位を検知する技術が存在する。この技術では、検知の対象となる物体の変位に伴って生じる反射波の位相角の変化を直交検波方式で検知する。そして、マイクロ波の波長を用いて、反射波の位相角の変化を距離の変化に換算して物体の変位量の検知を行う。
電波式の無変調ドップラーセンサにより乗員の動きを検知するセンサ部と、センサ部の出力の位相変化に基づいて、乗員の生体信号を抽出する生体信号抽出部と、センサ部の出力の位相変化量の積分値に基づいて、センサ部と乗員との推定距離を算出する距離算出部と、推定距離に基づいて、生体信号の信頼度を判定し、信頼度が低い場合には生体信号の出力を中止する生体信号出力判定部とを備える生体信号検知装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2010−120493号公報
直交検波方式で物体の変位量を検知する際には、物体からの反射波を2つに分配し、一方の反射波に送信波と同位相の信号を乗算し、他方の反射波に送信波との間の位相差が90度となる信号を乗算することにより2信号を生成する。送信波と同位相の信号を乗算した反射波と、送信波と位相差が90度となる信号を乗算した反射波との間の逆正接(アークタンジェント)を求めることにより位相角を検知する。
図1を参照して、物体の変位量の検知精度が低下する場合について説明する。送信波と同位相の信号を乗算した反射波と、送信波との間の位相差が90度となる信号を乗算した反射波との間の位相差が90度であるため、逆正接を求めることにより位相角を容易に求めることができる。
しかし、2信号を生成する回路の製造ばらつき等の原因により、2信号間の位相差が90度とはならない場合がある。2信号間の逆正接を演算するために、2信号の直流成分を減算して、直交座標上に2信号のリサージュ円が描かれる。2信号間の位相差が90度とはならない場合、リサージュ円の中心を原点に移動させる際に減算する直流成分の算出が困難となる。2信号間の位相差が90度である場合には、リサージュ円が真円となるため(図1の左図)、2信号によって描かれるプロット点の軌跡と円の式から容易に直流成分を求めることができる。
しかし、2信号間の位相差が90度でない場合には、リサージュ円が真円から歪むため(図1の右図)、2信号によって描かれるプロット点の軌跡に円の式を適用できなくなるため、直流成分を求めることができない。原点を振幅の中心とする2信号を出力する回路のハードウェアを設ける場合、部品点数が増大するとともに、正負電源が必要になる。また、2信号間の位相差が90度でない場合には、真円から歪んだリサージュ円の中心が原点にある場合でも、単純に逆正接を計算しただけでは、正確な位相の変化を検知できないため、検知結果に誤差が発生し、検知精度が低下する(図1の真ん中の図)。
本発明は、物体の変位を検知する際の検知精度を向上させることである。
開示の一実施例の物体変位量検知信号処理装置は、1つ以上のアンテナと、検知の対象となる物体に前記1つ以上のアンテナから送信波を送信し、該送信波の前記検知の対象となる物体による反射波を前記1つ以上のアンテナから受信する送受信回路と、前記反射波を2つの信号に分配し、直交座標系に該2つの反射波をプロットすることによってリサージュ軌跡を作成し、直交座標系の所定の象限に、前記リサージュ軌跡を回転させて複数配置し、該回転させて複数配置したリサージュ軌跡を時間軸上にプロットすることにより求められるパラメータに基づいて位相変化量を求め、該位相変化量を変位量へ換算する変位量演算部とを有する。
開示の実施例によれば、物体の変位を検知する際の検知精度を向上させることができる。
直交検波方式による変位量検知を示す図である。 物体変位量検知信号処理装置の一実施例を示す図である。 変位量演算装置の処理(その1)を示す図である。 変位量演算装置の処理(その2)を示す図である。 アンテナ位置での反射波の位相を示す図である。 直交検波回路の一例を示す図である。 I信号、及びQ信号のプロット例(その1)を示す図である。 I信号、及びQ信号のプロット例(その2)を示す図である。 変位量演算装置の処理(その3)を示す図である。 変位量演算装置の処理(その4)を示す図である。 変位量演算装置の処理(その5)を示す図である。 変位量演算装置の処理(その6)を示す図である。 変位量演算装置の処理(その7)を示す図である。 変位量演算装置の処理(その8)を示す図である。 変位量演算装置の処理(その9)を示す図である。 変位量演算装置の処理(その10)を示す図である。 変位量演算装置の処理(その11)を示す図である。 変位量演算装置の処理(その12)を示す図である。 変位量演算装置の処理(その13)を示す図である。 変位量演算装置の処理(その14)を示す図である。 物体変位量検知信号処理装置の一実施例を示す図である。 物体変位量検知信号処理装置の動作の一実施例を示すフロー図である。
次に、本発明を実施するための形態を、以下の実施例に基づき図面を参照しつつ説明する。以下で説明する実施例は一例に過ぎず、本発明が適用される実施の形態は、以下の実施例に限られない。
なお、実施例を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を用い、繰り返しの説明は省略する。
<物体変位量検知信号処理装置100>
図2は、物体変位量検知信号処理装置100の一実施例を示す。
物体変位量検知信号処理装置100は、検知の対象となる物体に送信した送信波と該送信波の該検知の対象となる物体による反射波に基づいて、該検知の対象となる物体の変位を検知する。物体変位量検知信号処理装置100は、車両などの移動体に搭載されるのが好ましい。物体変位量検知信号処理装置100の一実施例は、車両に搭載される。
車両に搭載される物体変位量検知信号処理装置100は、車両の周辺を監視する。この場合、物体変位量検知信号処理装置100により、該物体変位量検知信号処理装置100の搭載された車両の周辺の車が監視されるのが好ましい。物体変位量検知信号処理装置100により、該物体変位量検知信号処理装置100の搭載された車両の周辺の人、ものが監視されてもよい。つまり、該物体変位量検知信号処理装置100の搭載された車両の周辺の車、人、ものが、検知の対象となる物体(以下、「検知対象物体」という)とされる。
また、車両に搭載される物体変位量検知信号処理装置100は、車両内の状態を監視する。この場合、物体変位量検知信号処理装置100により、該物体変位量検知信号処理装置100の搭載された車両の乗員の状態、例えば乗員の動きが監視される。つまり、該物体変位量検知信号処理装置100の搭載された車両の乗員が、検知対象物体とされる。
物体変位量検知信号処理装置100は、送受信アンテナ102と、送受信回路104と、変位量演算装置106とを備える。
送受信アンテナ102は、送受信回路104からの送信波Txを空間に放射する。また、送受信アンテナ102は、送信波Txの検知対象物体による反射波(以下、「受信波Rx」という場合もある)を受信する。受信波Rxは、送受信回路104に入力される。図1には、1本の送受信アンテナが示されているが2本以上の送受信アンテナを有してもよく、送信アンテナと受信アンテナとを別々に設けてもよい。
送受信回路104は、送受信アンテナ102と接続され、変位量演算装置106に受信波Rxの位相に応じて位相が変化する第1の信号S1、及び第2の信号S2を入力する。第1の信号S1と第2の信号S2との間の位相差φは、180度×N(Nは、0≦Nの自然数)以外である。つまり、第1の信号S1と第2の信号S2との間の位相差φは、90度に限定されない。また、第1の信号S1と第2の信号S2との間の位相差は、固定値である。
変位量演算装置106は、送受信回路104と接続され、送受信回路104からの第1の信号S1、及び第2の信号S2により、検知対象物体の変位距離を演算する。
<変位量演算装置106>
変位量演算装置106は、CPU(図示なし)と、RAM(図示なし)と、ROM(図示なし)とを有する。CPUは、送受信回路104からの第1の信号S1、及び第2の信号S2により、検知対象物体の変位距離を演算する。RAMは、データを一時的に記憶する。ROMは、検知対象物体の変位距離を算出する処理を実行するプログラム、及び各種処理を実行する各プログラムを記憶する。
変位量演算装置106が複数のCPUを有していてもよく、1又は複数のマイコンを有していてもよく、マイコンとCPUとが混在していてもよい。
検知対象物体の位置の変化に応じて、第1の信号S1、及び第2の信号S2は、変動する。変位量演算装置106は、送受信回路104からの第1の信号S1と第2の信号S2を直交座標へプロットする。
図3は、第1の信号S1、及び第2の信号S2の波形の一例を示す。図3において、横軸は時間[秒]であり、縦軸は電圧[V]である。図3の上図は電圧(V)で表される第1の信号S1の時間変化を示し、下図は電圧(V)で表される第2の信号S2の時間変化を示す。
図4は、送受信回路104からの第1の信号S1、及び第2の信号S2を、第1の信号S1を横軸とし、第2の信号S2を縦軸とした直交座標上にプロットした例を示す。直交座標上に第1の信号S1、及び第2の信号S2をプロットした結果は、歪んだ円になるのが分かる。
図5に示すように、アンテナから検知対象物体へ送信したマイクロ波の反射波のアンテナの位置における位相は、アンテナと検知対象物体との間の距離Lの2倍に応じて変化する。図1の右図に示される「M」は奇数である。
マイクロ波の周波数を「f」、波長を「λ」、時間を「t」で表した場合、送信波Tx、及び反射波Rxは、それぞれ式(1)、及び式(2)で表される。
Tx=sin(2πft) (1)
Rx=sin(2πft+2π(2L/λ)) (2)
式(1)、及び式(2)から、送信波と反射波との間の位相差φ(=(2π(2L/λ)))を検知することにより、物体の変位に伴うアンテナと検知対象物体との間の距離Lの変化を求めることができる。
図6は、直交検波によって位相差を検知する処理の一例を示す。
送受信回路104は、第1のミキサ(Mixer1)、及び第2のミキサ(Mixer2)を有する。受信波Rxは、第1のミキサ、及び第2のミキサに入力される。第1のミキサは受信波Rxと第1の局部発振信号(LO(0))とを合成することにより受信波Rxの同相成分(I(In-phase))を出力し、第2のミキサは受信波Rxと第2の局部発振信号(LO(π/2))とを合成することにより受信波Rxの直交成分(Q(Quadrature-phase))を出力する。ここで、第1の局部発振信号は式(3)で表され、第2の局部発振信号は式(4)で表される。
LO(0)=sin(2πft) (3)
LO(π/2)=sin(2πft+π/2) (4)
したがって、I信号、及びQ信号は、式(5)、及び式(6)で表される。
I=Rx×LO(0)=sin(2πft+φ)×sin(2πft)
=(1/2)conφ-(1/2)cos(4πft+φ) (5)
Q=Rx×LO(π/2)=sin(2πft+φ)×sin(2πft+π/2)
=(1/2)sinφ-(1/2)cos(4πft+φ+π/2) (6)
式(5)、及び式(6)において、φは式(3)で表される第1の局部発振信号LO(0)の位相に対するRx信号の位相差を示す。直交検波回路から出力されるI信号、及びQ信号からローパスフィルタを用いて低周波数成分を抽出することで、I信号、及びQ信号はそれぞれ、式(7)、及び式(8)のように近似される。
I≒(1/2)cos(φ) (7)
Q≒(1/2)sin(φ) (8)
図7は、I信号、及びQ信号の直交座標上へのプロット例を示し、式(7)、及び式(8)において、位相差φ=φとしたものである。図7に示すように、I値、及びQ値によるプロット点は、半径1/2の円周上に位置し、プロット点と原点との間を結んだ線と、I軸との間のなす角度が位相差φとなる。この位相差φは、逆正接関数(アークタンジェント)Arctan(I,Q)を用いて、I値、及びQ値から算出できる。つまり、式(3)で表される送信波と同位相の信号、式(4)で表される送信波の位相に対して位相が(π/2)シフトした信号、及び式(2)で表される検知対象物体からの反射波に基づいて、送信波と受信波との間の位相差φを検知できる。さらに、検知した位相差φ、及び送信波の波長から検知対象物体の変位量を得ることができる。
ハードウェアによって実現する場合に、送信波の位相に対して位相が(π/2)シフトした信号を精度よく生成するのは難しい。したがって、実際には、式(8)は、式(9)のように位相誤差φerrを含んだものとなる。ここで、位相誤差φerrは、I信号とQ信号との間の位相差の90度からの誤差である。
Q≒(1/2)sin(φ+φerr) (9)
図8は、位相誤差を含む場合に、I信号、及びQ信号を直交座標上にプロットした例を示す。I信号とQ信号との間の位相差が90度ではないため、I信号、及びQ信号とは記載せず、第1の信号S1、及び第2の信号S2として説明する。
変位量演算装置106の処理の説明を続ける。
変位量演算装置106は、送受信回路104からの第1の信号S1、及び第2の信号S2を直交座標へプロットすることによって描かれるリサージュ軌跡を原点を中心に第1象限上に複数回回転させて配置する。第2象限-第3象限に配置した場合でも、直交座標系の回転対称性により、第1象限に配置した場合と等価となる。
図9は、リサージュ軌跡を原点を中心に第1象限上へ複数回回転させて配置した例を示す。図9には、一例として、0度の位置に回転させて配置した例、30度の位置に回転させて配置した例、及び60度の位置に回転させて配置した例が示される。これらの角度に限らず、任意の角度に適用できる。具体的には、回転させて配置したいデータを(X,Y)とした場合、この(X,Y)と原点との間の距離Mは式(10)で表され、この(X,Y)と原点との間を結んだ線と横軸とのなす角度θは式(11)で表される。
√(X2+Y2)=M (10)
Arctan(X,Y)=θ (11)
さらに、回転させたい角度までのシフト量θshiftから、回転した後のデータ点(Xrot,Yrot)は、式(12)、式(13)により表される。
Xrot=M×cos(θ+θshift) (12)
Yrot=M×sin(θ+θshift) (13)
変位量演算装置106は、式(12)、式(13)により表される回転した後のデータ点(Xrot,Yrot)を求めることにより、回転させて配置する。
次に、変位量演算装置106は、回転させて配置した各回転角におけるリサージュ軌跡の第1の信号S1、及び第2の信号S2を時間軸上にプロットする。
図10は、回転させて配置した各回転角のリサージュ軌跡の第1の信号S1、及び第2の信号S2を時間軸上にプロットした例を示す。(1)は、回転させて配置した回転角0度のリサージュ軌跡の第1の信号S1(S10)、及び第2の信号S2(S20)を時間軸上にプロットした例を示す。(2)は、回転させて配置した回転角30度のリサージュ軌跡の第1の信号S1(S130)、及び第2の信号S2(S230)を時間軸上にプロットした例を示す。(3)は、回転させて配置した回転角60度のリサージュ軌跡の第1の信号S1(S160)、及び第2の信号S2(S260)を時間軸上にプロットした例を示す。具体的には、変位量演算装置106は、式(12)により表されるXrotをS1n、YrotをS2n(nは角度を表す)として、それぞれ時間軸上にプロットする。
回転させて配置した各回転角のリサージュ軌跡の第1の信号S1、及び第2の信号S2を時間軸上にプロットした後に、変位量演算装置106は、処理パラメータを求める。具体的には、変位量演算装置106は、振幅中心値、位相差90度回転配置角、及び振幅補正係数を求める。以下、これらのパラメータについて説明する。
<振幅中心値>
振幅中心値について、図11を参照して説明する。図11は、回転させて配置した回転角0度のリサージュ軌跡の第1の信号S1を時間軸上にプロットした例(S10)であり、図10の(1)の上図と同様である。
変位量演算装置106は、第1の信号S10の極大値、及び極小値を演算し、隣接する極大値、及び極小値の平均値を演算する。変位量演算装置106は、隣接する極大値、及び極小値の平均値を、該極大値、及び該極小値の中間の時刻における振幅中心値とする。変位量演算装置106は、回転させて配置した各回転角におけるリサージュ軌跡の第1の信号S1、及び第2の信号S2について、振幅中心値を求める。
<位相差90度回転配置角>
図12を参照して、位相差90度回転配置角について説明する。2つの信号間の位相差が90度である場合には、各回転角におけるリサージュ軌跡の第1の信号S1、及び第2の信号S2のうちの一方の波形が極大値又は極小値となるとき、他方の波形の傾きの絶対値は最大となる。つまり、一方の波形が極大値又は極小値となる時刻と、他方の波形の傾きの絶対値が最大となる時刻は一致する。この特徴を利用して、変位量演算装置106は、各回転角におけるリサージュ軌跡の第1の信号S1、及び第2の信号S2のうち、位相差が90度に最も近い波形を選別し、選別した波形に対応する回転角を位相差90度回転配置角とする。
図10に戻り説明を続ける。変位量演算装置106は、回転させて配置した各回転角におけるリサージュ軌跡の第1の信号S1、及び第2の信号S2を時間軸上にプロットしたものの間の位相差を演算する。図10に示される例では、回転角が60度の第1の信号S160と第2の信号S260との間の位相差が最も90度に近い値をとるため、変位量演算装置106は、位相差90度回転配置角を60度とする。ただし、時間区間によっては、位相差が90度に最も近い回転配置角が変化する場合がある。このような場合、変位量演算装置106は、位相差が90度に最も近い位相差に対応する回転配置角を求め、その値を使用して処理を行う。上述した例では、説明の容易のため、位相差が最も90度に近い回転配置角は、全時間区間で60度とする。
また、変位量演算装置106は、回転角を1度ステップとするなど、リサージュ軌跡の第1の信号S1と、第2の信号S2との間の位相差を演算する回転角を増加させるようにしてもよい。回転角を増加させることにより、より多くのリサージュ軌跡の第1の信号S1、及び第2の信号S2を得ることができるため、回転させて配置した各回転角におけるリサージュ軌跡の第1の信号S1、及び第2の信号S2を時間軸上にプロットしたものの位相差が90度により近い値となる波形を得ることが可能となる。つまり、求める回転配置角の抽出分解能を向上させることができる。
<振幅補正係数>
変位量演算装置106は、位相差90度回転配置角について、回転させて配置したリサージュ軌跡の第1の信号S1、及び第2の信号S2を時間軸上にプロットしたものについて、振幅を一定とするための補正係数を求める。
図13は、振幅補正係数を求める処理を示す図であり、図10の(3)の上図に示した、回転させて配置した回転角60度のリサージュ軌跡の第1の信号S1を時間軸上にプロットしたものである。変位量演算装置106は、第1の信号S1の極大値に接する包絡線と、第1の信号S1の極小値に接する包絡線との間の長さ(以下、「包絡線間隔」ともいう)が一定値となるように補正する振幅補正係数を各時刻で求める。第2の信号S2についても同様の処理を行う。つまり、各時刻での包絡線間隔が一定となるように補正する振幅補正係数を求める。具体的には、一定値を1にする場合には、包絡線間隔が0.5のときは振幅補正係数は2とし、包絡線間隔が2のときは振幅補正係数は0.5とする。
変位量演算装置106は、回転させて配置した各回転角のリサージュ軌跡の第1の信号S1、及び第2の信号S2を時間軸上にプロットした場合に、検知対象物体が停止している等によって振幅に変化がなく、処理パラメータを演算できない場合には、予め設定された代替値を使用する。具体的には、変位量演算装置106は、回転させて配置した各回転角のリサージュ軌跡の第1の信号S1、及び第2の信号S2を時間軸上にプロットした場合に、図10の0s-2sのような波形が継続した場合には処理パラメータを演算できない。このような場合、変位量演算装置106は、予め設定される代替値を使用する。代替値は、検知条件、実際に使用するセンサの特性などに基づいて適宜設定される。
変位量演算装置106は、位相差90度回転配置角を求めることができるか否かに基づいて、検知対象物体が停止しているか否かを判定する。また、変位量演算装置106は、回転させて配置した各回転角におけるリサージュ軌跡の第1の信号S1、及び第2の信号S2について振幅中心値を求めた際に、第1の信号S1の振幅中心値が第1の信号S1の各値と一致するか否か、及び第2の信号S2の振幅中心値が第2の信号S2の各値と一致するか否かに基づいて、検知対象物体が停止しているか否かを判定するようにしてもよい。検知対象物体が停止の場合には、波形の振幅に変化がないため、振幅中心値が一致すると想定される。
変位量演算装置106は、処理パラメータに基づいて位相変化量を演算し、位相変化量を物体の変位量へ変換する。具体的には、変位量演算装置106は、横軸を第1の信号S1、縦軸を第2の信号S2とする直交座標へ、各回転角における、極大値、及び極小値の中間の時刻における振幅中心値をプロットする。各回転角における、極大値、及び極小値の中間の時刻における振幅中心値をプロットした後、変位量演算装置106は、該プロットを、位相差90度回転配置角へ回転させて配置する。
図14は、各回転角における、極大値、及び極小値の中間の時刻における振幅中心値の1又は複数のプロット点を位相差90度回転配置角へ回転させて配置する処理を示す。図14に示す例では、回転角が0度における、極大値、及び極小値の中間の時刻における振幅中心値の1又は複数のプロット点を位相差90度回転配置角である60度へ回転させて配置する。同様に、回転角が30度における、極大値、及び極小値の中間の時刻における振幅中心値の1又は複数のプロット点を位相差90度回転配置角である60度へ回転させて配置する。
各回転角における、極大値、及び極小値の中間の時刻における振幅中心値の1又は複数のプロット点を位相差90度回転配置角へ回転させて配置した後、変位量演算装置106は、回転させて配置した、各回転角における、極大値、及び極小値の中間の時刻における振幅中心値について、同一時間上へプロットする。
図15は、各回転角における、極大値、及び極小値の中間の時刻における振幅中心値について、同一時間上へプロットした例を示す。図15において、「S160_center」は回転角が60度における、第1の信号S1の極大値、及び極小値の中間の時刻における振幅中心値(群)であり、「S130_center」は回転角が30度における、第1の信号S1の極大値、及び極小値の中間の時刻における振幅中心値(群)であり、「S10_center」は回転角が0度における、第1の信号S1の極大値、及び極小値の中間の時刻における振幅中心値(群)である。
各回転角について求められた振幅中心値の時刻は、回転角間で異なる。つまり、図10に示されるように、回転角が異なるリサージュ軌跡の第1の信号S1、及び第2の信号S2を時間軸上へプロットした各波形の極大値、及び極小値の時刻は異なるため、振幅中心値に対応する時刻も異なる。したがって、各回転角における振幅中心値を同一時間軸上へプロットすることにより、プロット点が同一時刻で重なることが少ないため、データ点数を増加させることができる。データ点数を増加させることにより、第1の信号S1、及び第2の信号S2が変動した場合に振幅中心値の変化の応答性を向上させることができる。これにより、変位量への変換精度を向上させることができる。
変位量演算装置106は、第1の信号S1から同一時間軸上へプロットした第1の信号S1の振幅中心値を減算し、第2の信号S2から同一時間軸上へプロットした第2の信号S2の振幅中心値を減算する。これにより、リサージュ軌跡の第1の信号S1、及び第2の信号S2の振幅中心値が零になり、リサージュ軌跡の第1の信号S1、及び第2の信号S2を直交座標上にプロットした場合、そのリサージュ円の中心が原点となる。
図16は、回転させて配置した回転角が60度における第1の信号S1の振幅中心値を示す。図10の(3)の上図と同様の図である。
図17は、第1の信号S1から同一時間軸上へプロットした第1の信号S1の振幅中心値を減算し、第2の信号S2から同一時間軸上へプロットした第2の信号S2の振幅中値を減算して描いたリサージュ軌跡の一例を示す。変位量演算装置106は、第1の信号S1に対応する第1の信号S1の振幅中心値、及び第2の信号S2に対応する第2の信号S2の振幅中心値が存在しない時刻については、隣接する時刻におけるデータに基づいて補間した値を用いるのが好ましい。
変位量演算装置106は、振幅中心を零にシフトさせた第1の信号S1、及び第2の信号S2について、振幅補正係数を乗算することによって、振幅を一定にする。
図18は、振幅中心を零にシフトさせた第1の信号S1に振幅補正係数を乗算した結果の一例を示す。さらに、変位量演算装置106は、振幅補正係数を乗算した第1の信号S1、及び第2の信号を直交座標上にプロットする。
図19は、振幅補正係数を乗算した第1の信号S1、及び第2の信号を直交座標上にプロットした結果を示す。図19によれば、振幅補正係数を乗算することにより、第1の信号S1、及び第2の信号S2の軌跡は、半径が一定の歪みのない円となる。変位量演算装置106により、リサージュ軌跡の第1の信号S1と、第2の信号S2の位相差が最も90度に近い値をとる回転角を位相差90度回転配置角として演算が行われることにより、振幅補正係数を乗算した、第1の信号S1、及び第2の信号S2の軌跡は、半径が一定の歪みのない円となる。
図20の上図に示すように、リサージュ軌跡の第1の信号S1と、第2の信号S2の位相差が90度から遠い値をとる、つまり位相差が90度ではない値をとる回転角を位相差90度回転配置角としても、振幅補正係数を乗算した第1の信号S1、及び第2の信号S2の軌跡は、半径が一定の歪みのない円とはならない。振幅補正係数は、リサージュ軌跡の第1の信号S1、及び第2の信号S2を横方向又は縦方向へ変形させるが、リサージュ軌跡の第1の信号S1と、第2の信号S2の位相差が90度から遠い値の円を横方向又は縦方向へ変形させても、真円とはならないためである。
図20の下図に示すように、リサージュ軌跡の第1の信号S1と、第2の信号S2の位相差が90度をとる回転角を位相差90度回転配置角とした場合、振幅補正係数を乗算した第1の信号S1、及び第2の信号S2の軌跡は、半径が一定の歪みのない円となる。
変位量演算装置106は、図19に示される、振幅補正係数を乗算した第1の信号S1、及び第2の信号を直交座標上にプロットした結果に基づいて、位相の変化を求める。具体的には、変位量演算装置106は、逆正接を求めることにより位相角を求める。振幅補正係数を乗算した第1の信号S1、及び第2の信号S2を直交座標上にプロットした結果は、原点を中心とする半径が一定の円周上を移動するため、逆正接を求めることにより得られる位相角は、歪みの影響が小さいものとなる。
次に、変位量演算装置106は、位相角に基づいて、検知対象物体の変位量を求める。
変位量演算装置106は、送受信回路104から入力される第1の信号S1、及び第2の信号S2の位相差が90度である場合や、振幅に変動がない場合や、求められる位相変化検知精度が高く無い場合には、上述した処理の少なくも一部を省略してもよい。換言すれば、変位量演算装置106は、図4に示される送受信回路104からの第1の信号S1、及び第2の信号S2を、横軸を第1の信号S1とし、縦軸を第2の信号S2とした直交座標上にプロットしたものが円であり、歪みがない場合や、該円の半径が一定の場合や、要求されるリニアリティが高く無い場合には、上述した処理の少なくも一部を省略してもよい。
また、変位量演算装置106は、検知対象物体の変位量を算出する前に、キャリブレーション工程を設けるようにしてもよい。
図21は、物体変位量検知信号処理装置200の一実施例を示す。物体変位量検知信号処理装置200は、位相差検知式マイクロ波変位センサ202と、A/D変換器204と、マイコン206と、メモリ208とを有する。
位相差検知式マイクロ波変位センサ202は、上述した送受信回路104を適用でき、検知対象物体の変位量をマイクロ波を用いて非接触で検知し、変位量に応じた反射波の位相の変動の情報を有する2つの信号を出力する。これらの2つの信号間の位相差は、180度×N(N=0,1,2,・・・)以外である。これらの2信号は、A/D変換器204へ入力される。
A/D変換器204は、上述した送受信回路104の処理を適用でき、位相差検知式マイクロ波変位センサ202から入力される2つの信号の電圧値(アナログ値)をデジタル値へ変換する。
マイコン206は、上述した変位量演算装置106を適用でき、A/D変換器204から入力されるデジタル信号を処理することにより、検知対象物体の変位量を演算する。マイコン206は、検知対象物体の変位量を演算する際に、キャリブレーション工程で、処理パラメータを演算し、メモリ208へ格納する。マイコン206は、メモリ208へ格納した処理パラメータを適宜読み出して処理を行う。これにより、計測を実行する途中で、処理パラメータを抽出する処理を削減できる。
<物体変位量検知信号処理装置の動作>
図22は、物体変位量検知信号処理装置の動作の一実施例を示す。図22は、主に、変位量演算装置106の動作を示す。
ステップS2202では、変位量演算装置106は、第1の信号S1、及び第2の信号S2を直交座標上へプロットする。
ステップS2204では、変位量演算装置106は、プロット点によって描かれるリサージュ軌跡を原点を中心に第1象限上に複数回回転させて配置する。
ステップS2206では、変位量演算装置106は、回転させて配置した各リサージュ軌跡の第1の信号S1、及び第2の信号S2をそれぞれ時間軸上にプロットする。
ステップS2208では、変位量演算装置106は、処理パラメータを演算できる場合、時間軸上にプロットした波形に基づいて、処理パラメータを演算する。
ステップS2210では、変位量演算装置106は、時間軸上にプロットした波形に変化が無い等の要因により処理パラメータを演算できない場合、予め設定される処理パラメータの代替値を使用する。
ステップS2212では、変位量演算装置106は、各処理パラメータを用いて、位相変化量を演算し、変位量へ換算する。
ステップS2214では、変位量演算装置106は、変位量を出力する。
物体変位量検知信号処理装置100の一実施例によれば、物体の変位を検知する信号から物体の変位量を演算する際に、検知の対象となる物体にアンテナから送信波を送信し、該送信波の検知の対象となる物体による反射波をアンテナから受信し、反射波を2つの信号に分配し、直交座標系に該2つの反射波をプロットすることによってリサージュ軌跡を作成し、直交座標系に、リサージュ軌跡を回転させて複数配置することによる軌跡を求め、該軌跡を時間軸上にプロットすることにより求められるパラメータに基づいて位相変化量を求め、該位相変化量を変位量へ換算する。これにより、直交座標上のプロット点を原点を中心とする半径が一定の円周上を移動させることができるため、逆正接を演算することにより、その位相の変化を歪み無く演算することが可能となり、位相の変化から検知対象物体の変位量を求める際の精度を向上させることができる。つまり、同一の物体変位を検知した場合でも、検知装置の性能差、及び温度等の動作環境の変化による処理対象となる検知信号の挙動の変化の影響を低減することができ、検知信号から物体変位量を演算する際の精度を向上させることができる。
以上、本発明は特定の実施例を参照しながら説明されてきたが、実施例は単なる例示に過ぎず、当業者は様々な変形例、修正例、代替例、置換例等を理解するであろう。説明の便宜上、本発明の実施例に従った装置は機能的なブロック図を用いて説明されたが、そのような装置はハードウェアで、ソフトウェアで又はそれらの組み合わせで実現されてもよい。本発明は上記実施例に限定されず、本発明の精神から逸脱することなく、様々な変形例、修正例、代替例、置換例等が包含される。
100 物体変位量検知信号処理装置
102 送受信アンテナ
104 送受信回路
106 変位量演算装置
200 物体変位量検知信号処理装置
202 位相差検知式マイクロ波変位センサ
204 A/D変換器
206 マイコン
208 メモリ

Claims (1)

  1. 1つ以上のアンテナと、
    検知の対象となる物体に前記1つ以上のアンテナから送信波を送信し、該送信波の前記検知の対象となる物体による反射波を前記1つ以上のアンテナから受信する送受信回路と、
    前記反射波を2つの信号に分配し、直交座標系に該2つの反射波をプロットすることによってリサージュ軌跡を作成し、直交座標系の所定の象限に、前記リサージュ軌跡を回転させて複数配置し、該回転させて複数配置したリサージュ軌跡を時間軸上にプロットすることにより求められるパラメータに基づいて位相変化量を求め、該位相変化量を変位量へ換算する変位量演算部と
    を有する、物体変位量検知信号処理装置。
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