JP2015190096A - 耐油性シート - Google Patents
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Abstract
【課題】耐油性及び二次加工性に優れた耐油性シートを提供すること。
【解決手段】本発明の耐油性シートは、基材シートの少なくとも片面側に、デンプン又はポリビニルアルコールと非フッ素系且つ非シリコーン系撥水剤とを含む耐油性層を有する。前記耐油性層は、前記基材シートから相対的に近い側に位置する内層と、該基材シートから相対的に遠い側に位置する外層とを含んで構成され、該外層に前記撥水剤が偏在していることが好ましい。前記内層は前記デンプンを含み、前記外層は前記ポリビニルアルコールと前記撥水剤とを含むことが好ましい。
【選択図】なし
【解決手段】本発明の耐油性シートは、基材シートの少なくとも片面側に、デンプン又はポリビニルアルコールと非フッ素系且つ非シリコーン系撥水剤とを含む耐油性層を有する。前記耐油性層は、前記基材シートから相対的に近い側に位置する内層と、該基材シートから相対的に遠い側に位置する外層とを含んで構成され、該外層に前記撥水剤が偏在していることが好ましい。前記内層は前記デンプンを含み、前記外層は前記ポリビニルアルコールと前記撥水剤とを含むことが好ましい。
【選択図】なし
Description
本発明は、耐油性に優れ、食用油を使用した食品の包装材料として有用な耐油性シートに関する。
従来、紙などのシートに耐油性を付与するために、シートの一面に耐油剤を塗工するなどして、該一面の臨界表面張力を油性物質の表面張力よりも小さくする方法が採られており、耐油剤としてフッ素系耐油剤が使用されている。しかし、フッ素系耐油剤は、100℃以上に加熱された場合や、該耐油剤が塗工されたシートで品温100℃以上の食品などを直接包装した場合などに、フッ化アルコールガス、フッ化水素などの、人体に蓄積され害を及ぼし得るガスを発生するおそれがあるとされている。
このような従来の耐油性シートの問題に鑑み、本出願人は先に、非フッ素系耐油剤を使用した耐油性シート状物を提案した(特許文献1及び2)。この耐油性シート状物は、基材シートの少なくとも片面に、疎水化デンプンなどのデンプン及び/又はポリビニルアルコールと脂肪酸とを含む塗工層を設けた構成を有し、その優れた耐油性により、フライや天ぷらなどの食用油を使用した食品の包装材料として有用である。また特許文献3には、食品包装用途に有用な撥水・撥油紙として、紙基材の少なくとも一方の表面上に、耐油度及び撥水度がそれぞれ特定範囲にある撥水・撥油・剥離性を有するシリコーン樹脂層を設けたものが記載されている。
しかし、近年の耐油性シートの用途拡大に伴い、耐油性の要求レベルは上昇しており、その要求に十分に応え得る耐油性シートの開発が要望されている。また、この種の耐油性シートは、実質的に加工せずにそのまま使用する場合のみならず、種々の加工を施してから使用する場合もあり、例えば、包装用袋などの素材として使用する場合には、折り込み、糊付けなどの製袋加工(二次加工)が施される。従って、耐油性シートには、耐油性のみならず二次加工性にも優れることが要望されているが、両特性を高いレベルで満たす耐油性シートは未だ提供されていない。例えば、従来の耐油性シートに製袋加工を施して袋を作製する場合において、耐油性シートの一面に糊を塗工すると、その糊が耐油性シートを厚み方向に透過して該一面とは反対側の他面に染み出す結果、耐油性シートの表面がべたつく、染み出した糊を介して耐油性シートどうしの意図しない接着(いわゆるブロッキング)が起こる、などの不都合が生じるおそれがあった。
本発明は、耐油性及び二次加工性に優れた耐油性シートに関する。
本発明は、基材シートの少なくとも片面側に、デンプン又はポリビニルアルコールと非フッ素系且つ非シリコーン系撥水剤とを含む耐油性層を有する耐油性シートである。
本発明によれば、耐油性及び二次加工性に優れた耐油性シートが提供される。本発明の耐油性シートは、耐油性に優れているため、例えば、から揚げ、天ぷら、ドーナツなどの揚げ物食品の如き、食用油を使用した食品の包装材料として有用であり、また、二次加工性に優れているため、例えば、糊を塗工しても意図しない糊の染み出しやそれに起因するブロッキングなどの不都合を起こし難く、製袋加工適性を有している。
本発明の耐油性シートは、基材シートと、該基材シートの少なくとも片面側に設けられた耐油性層とを有する。耐油性層は、基材シートの両面側それぞれに設けられていても良い。
基材シートとしては、塗工適性を有するシート状物であれば良く、例えば、紙;樹脂フィルム;織布:乾式法、湿式法、スパンボンド法等の各種製法による不織布;前記のうちの1種又は2種以上を積層してなる複合シート等が挙げられる。基材シートの坪量及び厚みは、特に制限されないが、通常、基材シートの坪量は30〜60g/m2、好ましくは40〜50g/m2の範囲であり、基材シートの厚みは50〜100mmの範囲である。
本発明に係る基材シートを構成する紙としては、公知の湿式抄紙法で製造可能なものを用いることができる。紙の主原料である繊維としては、例えば、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の木材パルプ;他、麻、竹、藁、ケナフ、三椏、楮、木綿等の非木材パルプ;カチオン化パルプ、マーセル化パルプ等の変性パルプ;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂からなる合成繊維等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。紙には、必要に応じ、繊維以外の他の成分、例えば、澱粉、ポリアクリルアミド、ポリアミンポリアミドエピクロルヒドリン等の紙力増強剤又は定着剤、サイズ剤、填料、濾水歩留り向上剤、耐水化剤、定着剤、消泡剤、スライムコントロール剤等の1種又は2種以上が含有されていても良い。本発明に係る基材シートを構成する樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、ナイロン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート等の高分子材料からなるフィルム等が挙げられる。
本発明に係る耐油性層は、少なくともデンプン又はポリビニルアルコールと、非フッ素系且つ非シリコーン系撥水剤とを含む。耐油性層は、デンプン及びポリビニルアルコールの両方を含んでいても構わない。耐油性層は、デンプン又はポリビニルアルコールを含むことにより耐油性、即ち、外部からの油の浸透を遮断する性質を有する。非フッ素系且つ非シリコーン系撥水剤は、主として、耐油性層の表面のべたつきの抑制、ブロッキングの防止に寄与し、本発明の耐油性シートの二次加工性を向上し得る。
耐油性層に含有されるデンプンは、通常のデンプン(未加工デンプン)でも良く、通常のデンプンを加工してなる加工デンプンでも良い。加工デンプンとしては、例えば、グラフト化デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、カルボキシメチルデンプン、カチオンデンプン、酢酸デンプン、リン酸デンプン、リン酸ジデンプン、グリセロールジデンプン、白色デキストリン、黄色デキストリン、ブリティッシュガム、マルトデキストリン、酸化デンプン、酸処理デンプン、エーテル化デンプン、エステル化デンプン、架橋デンプン、焙焼デンプン、酵素変性デンプンなどが挙げられる。この他、造粒された粒状デンプン、多孔質化した吸油性デンプンなども使用できる。耐油性層に含有されるデンプンは、1種のみでも良く、複数種でも良い。
耐油性層に含有されるデンプンの給源は特に制限されず、例えば、タピオカ、ジャガイモ、トウモロコシ、小麦、米などが挙げられる。特に、タピオカを給源とするタピオカデンプンは、耐油性層に高い耐油性を付与し得るため、本発明で好ましく用いられる。
耐油性層に含有されるデンプンとして特に好ましいものは疎水化デンプンである。疎水化デンプンは、未加工デンプンを疎水化処理して得られる。この疎水化処理としては、例えば、1)デンプンをアルミン酸アルカリ又は水酸化アルカリの存在下でオルガノシラン水溶液と密に接触させる方法、2)デンプンをシリコーンやアルケニルで誘導体化する方法、3)水性系においてオクテニルコハク酸無水物やドゼセニルコハク酸無水物などの有機酸無水物とデンプンとを反応させる方法、4)デンプンにアクリロニトリルなどの疎水性モノマーや疎水性不飽和単量体を共重合させる方法、5)エーテル化、エステル化により炭化水素基を含む疎水基をデンプンに付与させる方法、6)デンプンをコハク酸デンプンアルキルとする方法、などが挙げられるが、これらの方法に制限されるものではない。また、疎水化デンプンの原料となるデンプン、即ち疎水化処理されるデンプンは、特に制限されないが、タピオカデンプンを原料とする疎水化デンプンは、特に耐油性層に架橋剤を含有させた場合、その架橋剤との反応により、耐油性層に優れた耐油性を付与し得るため、本発明で好ましく用いられる。
特に好ましい疎水化デンプンは、「デンプンの水酸基を炭素数6〜22個の炭化水素基で置換してなる疎水化デンプン」である。この特定の疎水化デンプンは、水性系において有機酸無水物とデンプンとを反応させることによって得られる。この特定の疎水化デンプンは、特に耐油性層に架橋剤を含有させた場合、その架橋剤との反応により、耐油性層に優れた耐油性を付与し得るため、本発明で好ましく用いられる。
耐油性層に含有されるポリビニルアルコールは、完全鹸化でも良く、部分鹸化でも良い。また、カルボキシル基、シアノール基などで変性されていても構わない。耐油性能の面から、カルボキシル基又はシアノール基で変性されたポリビニルアルコールであることが好ましい。また、耐油性、透気抵抗度、製袋適性のバランスの観点から、耐油性層に含有されるポリビニルアルコールは、鹸化度85〜100%、平均重合度300〜2500であることが好ましい。
耐油性層には、デンプン及び/又はポリビニルアルコールに加えてさらに、架橋剤を含有させることができる。耐油性層にデンプン又はポリビニルアルコールと共に架橋剤を含有させると、耐油性の一層の向上が期待できる。特に疎水化デンプンと架橋剤との組み合わせは、耐油性の向上に効果的である。架橋剤としては、例えば、グリオキザール、ジアルデヒド、ポリアクロレイン、N−メチロール尿素、N−メチロールメラミン、活性化ビニル化合物、各種エステル、ジイソシアネートなどが挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの架橋剤の中でも特に、エピクロルヒドリンなどのエポキシ化合物は、架橋反応の安定性、製造コスト、人体への安全性などの観点から、本発明で好ましく用いられる。架橋剤の含有量は、最小限の使用量で最大の効果を得る観点から、耐油性層中のデンプンとポリビニルアルコールとの合計固形分質量に対して固形分換算で、好ましくは1〜30質量%、さらに好ましくは5〜15質量%である。
耐油性層に含有される撥水剤は、非フッ素系且つ非シリコーン系撥水剤である。即ち、本発明に係る耐油性層は、フッ素系撥水剤及びシリコーン系撥水剤を含まない。このように、耐油性層に含油される撥水剤を限定している理由の1つは、フッ素系撥水剤及びシリコーン系撥水剤には、人体に有害というイメージが定着しており、これらを耐油性シートに用いると、食品に関わる用途に該シートを適用し難くなるためである。また、特にシリコーン系撥水剤に関しては、これを耐油性シートに用いると、該シートの二次加工性が低下するおそれがある。即ち、耐油性層にシリコーン系撥水剤を含有させた耐油性シートは、製袋加工などの二次加工において、該シートの表面を形成する耐油性層に、該シート同士を接着するなどの目的で糊を塗工した場合に、シリコーン系撥水剤による高い剥離性能に起因して、その糊が乾燥したときに耐油性層から剥がれ落ちるおそれがあり、二次加工性の点でも好ましくない。
耐油性層に含有される非フッ素系且つ非シリコーン系撥水剤としては、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、蜜蝋、カルナバウロウ、ワセリンなどのワックス系撥水剤を用いることができるが、特に好ましいものは3価クロムイオンの脂肪酸錯体である。特に、Zaclon社から市販されているQuilon(登録商標)Cは、3価クロムイオンの脂肪酸錯体として本発明で好ましく用いられる。
本発明に係る耐油性層は、デンプン又はポリビニルアルコールと、非フッ素系且つ非シリコーン系撥水剤とを含んでいれば良く、単層構造でも良く、二層以上の層を積層してなる多層構造でも良いが、特に好ましいのは多層構造の耐油性層である。多層構造の耐油性層の好ましい一実施形態として、基材シートから相対的に近い側に位置する内層と、基材シートから相対的に遠い側に位置する外層とを含んで構成され、該外層に非フッ素系且つ非シリコーン系撥水剤が偏在している構成のもの(以下、特定耐油性層ともいう)が挙げられる。外層は、通常、耐油性シートの厚み方向の最外方に位置して、耐油性シートの表面を形成する。この特定耐油性層における内層には、非フッ素系且つ非シリコーン系撥水剤が含まれていないか、又は外層よりも少量の非フッ素系且つ非シリコーン系撥水剤が含まれている。内層における非フッ素系且つ非シリコーン系撥水剤の含有量は、内層の全質量に対して、好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.1〜0.5質量%である。
非フッ素系且つ非シリコーン系撥水剤の機能(シート表面のべたつき抑制、ブロッキング防止など)を考慮すると、撥水剤は耐油性層の外層に偏在させるのが合理的である。また、紙などの基材シートと撥水剤の含有量が相対的に多い外層との間に、撥水剤を含有しないか又は相対的に撥水剤の含有量が少ない内層を介在させることにより、外層を塗設するのに用いる外層用塗工液の染み込みが内層によって抑制されるため、所定塗工量の外層を設けるのに必要な外層用塗工液の使用量が低減され、製造コストの低減につながる。従って、前記特定耐油性層は、高性能の耐油性シートを効率良く製造し得るものであると言える。
前記特定耐油性層を構成する内層は、デンプン及びポリビニルアルコールのうちの一方のみを含んでいても良く、両方を含んでいても良い。内層の好ましい一実施形態として、疎水化デンプンなどのデンプンを含む構成のものが挙げられる。斯かる構成の内層は、ポリビニルアルコール及び非フッ素系且つ非シリコーン系撥水剤を含まないことが好ましい。一般に、デンプンを含む塗工層は、ポリビニルアルコールを含む塗工層に比して表面のべとつきが少なく、製造装置の汚染などの不都合を起こし難い。
内層にデンプンを含有させる場合、その含有量は内層の全質量に対して、好ましくは50〜100質量%、さらに好ましくは80〜100質量%である。内層におけるデンプンの含有量が少なすぎると、耐油性の向上効果に乏しくなる。
また同様の観点から、内層にポリビニルアルコールを含有させる場合、その含有量は内層の全質量に対して、好ましくは50〜100質量%、さらに好ましくは80〜100質量%である。
また同様の観点から、内層にポリビニルアルコールを含有させる場合、その含有量は内層の全質量に対して、好ましくは50〜100質量%、さらに好ましくは80〜100質量%である。
内層の塗工量は、好ましくは0.5〜20g/m2、さらに好ましくは1〜10g/m2である。内層の塗工量が少なすぎると、実用上十分な耐油性を確保し難く、また多すぎても、耐油性の向上効果は頭打ちとなって効果的ではない。尚、本明細書において「塗工量」は、特に説明しない限り、固形分換算での塗工量を意味する。
前記特定耐油性層を構成する外層は、内層よりも多量の非フッ素系且つ非シリコーン系撥水剤以外に、デンプン及びポリビニルアルコールのうちの一方のみを含んでいても良く、両方を含んでいても良い。外層は、内層と同様に耐油性を有しているところ、外層の耐油性の発現に寄与するのは主にデンプン及び/又はポリビルアルコールであり、非フッ素系且つ非シリコーン系撥水剤は、主に、デンプン及び/又はポリビニルアルコールを含有する外層の表面のべたつきの抑制、ブロッキングの防止に寄与し、本発明の耐油性シートの二次加工性を向上し得る。外層の好ましい一実施形態として、ポリビニルアルコールと非フッ素系且つ非シリコーン系撥水剤とを含む構成のものが挙げられる。斯かる構成の外層は、デンプンを含まないことが好ましい。
外層にポリビニルアルコールを含有させる場合、その含有量は外層の全質量に対して、好ましくは90〜99質量%、さらに好ましくは95〜98.5質量%である。外層におけるポリビニルアルコールの含有量が少なすぎると、耐油性の向上効果に乏しく、逆に多すぎると、相対的に撥水剤の含有割合が低下するため、撥水剤による作用効果(シート表面のべたつき及びブロッキングの防止、二次加工性の向上)が十分に得られないおそれがある。
また同様の観点から、外層にデンプンを含有させる場合、その含有量は外層の全質量に対して、好ましくは90〜99質量%、さらに好ましくは95〜98.5質量%である。尚、外層に含有させる非フッ素系且つ非シリコーン系撥水剤がカチオン性の場合、該撥水剤と共に外層に含有させるデンプン及びポリビニルアルコールとして、ノニオン性又はカチオン性のものを用いると、これらの成分を含んでなる外層用塗工液がゲル化しないので好ましい。
また同様の観点から、外層にデンプンを含有させる場合、その含有量は外層の全質量に対して、好ましくは90〜99質量%、さらに好ましくは95〜98.5質量%である。尚、外層に含有させる非フッ素系且つ非シリコーン系撥水剤がカチオン性の場合、該撥水剤と共に外層に含有させるデンプン及びポリビニルアルコールとして、ノニオン性又はカチオン性のものを用いると、これらの成分を含んでなる外層用塗工液がゲル化しないので好ましい。
外層における非フッ素系且つ非シリコーン系撥水剤の含有量は、外層の全質量に対して、好ましくは1〜10質量%、さらに好ましくは1.5〜5質量%である。外層における非フッ素系且つ非シリコーン系撥水剤の含有量が少なすぎると、二次加工性の向上効果に乏しく、逆に多すぎると、相対的にポリビニルアルコール及び/又はデンプンの含有割合が低下するため、それらによる作用効果(耐油性の向上)が十分に得られないおそれがある。また、外層における非フッ素系且つ非シリコーン系撥水剤の含有量が多すぎると、耐油性シートの二次加工(例えば製袋加工)において、該シートの表面を形成する外層に、該シート同士を接着するなどの目的で糊を塗工した場合に、その糊が乾燥したときに外層から剥がれ落ちるおそれがあり、二次加工性の点でも好ましくない。
外層には、デンプン、ポリビニルアルコール及び撥水剤以外の他の成分を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜含有させることができ、例えば、この種の塗工層に通常含有される塗工適性を向上させるための各種薬剤を含有させることができる。この外層における必須成分以外の他の成分の取り扱いは、内層にも適用され得る。本発明の好ましい実施形態は、基材シート、内層及び外層がいずれもシリコーン樹脂を含まないため、人体に対して安全、製造コストが抑えられる、という効果を奏する。
外層の塗工量は、好ましくは1〜20g/m2、さらに好ましくは2〜15g/m2である。外層の塗工量が少なすぎると、実用上十分な耐油性を確保し難く、逆に多すぎると、二次加工性の向上効果は頭打ちとなってコスト的に不利となる。
前記特定耐油性層を備えた本発明の耐油性シートにおいて、基材シートと内層との間、及び内層と外層との間には、これら以外の他の層が介在されていても構わないが、本発明の好ましい実施形態の1つは、基材シートと内層と外層とが他の層を介在させずに積層一体化され、且つ外層が耐油性シートの厚み方向の最外方に位置して該耐油性シートの表面を形成している形態である。
本発明の耐油性シートは、この種の塗工紙と同様に製造することができ、例えば、基材シートの片面側又は両面側それぞれに、公知の塗工装置を用いて、単層構造の耐油性層を塗設するか、又は内層及び外層を順次塗設することで製造することができる。尚、本発明に係る耐油性層が単層構造の場合、その塗工量や各成分の含有量は下記範囲で設定することが好ましい。
単層構造の耐油性層の塗工量は、好ましくは1〜20g/m2、さらに好ましくは2〜15g/m2である。
単層構造の耐油性層におけるデンプンの含有量は、耐油性層の全質量に対して、好ましくは95〜99.5質量%、さらに好ましくは97.5〜99.3質量%である。
単層構造の耐油性層におけるポリビニルアルコールの含有量は、耐油性層の全質量に対して、好ましくは95〜99.5質量%、さらに好ましくは97.5〜99.3質量%である。
単層構造の耐油性層における非フッ素系且つ非シリコーン系撥水剤の含有量は、耐油性層の全質量に対して、好ましくは0.5〜5質量%、さらに好ましくは0.7〜2.5質量%である。
単層構造の耐油性層におけるデンプンの含有量は、耐油性層の全質量に対して、好ましくは95〜99.5質量%、さらに好ましくは97.5〜99.3質量%である。
単層構造の耐油性層におけるポリビニルアルコールの含有量は、耐油性層の全質量に対して、好ましくは95〜99.5質量%、さらに好ましくは97.5〜99.3質量%である。
単層構造の耐油性層における非フッ素系且つ非シリコーン系撥水剤の含有量は、耐油性層の全質量に対して、好ましくは0.5〜5質量%、さらに好ましくは0.7〜2.5質量%である。
本発明の耐油性シートは耐油性に優れており、より具体的には、JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.41(キット法)に従って測定した耐油度がキット値で6以上、さらに好ましくは7以上である。キット値が大きいほど、耐油性に優れる。
本発明の耐油性シートは、その優れた耐油性により、食品を含む幅広い物品の包装材料などとして有用であり、例えば、から揚げ、天ぷら、ドーナツなどの揚げ物食品又はバター、マーガリンの如き、食用油を使用した食品を包んだり載せたりするための包装材料などに好適である。また、本発明の耐油性シートは、表面のべたつきが少なく、ブロッキングを生じ難く、二次加工性にも優れており、糊などの接着剤を塗工する工程を有する二次加工、例えば製袋加工にも使用できる。
以下、実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例により制限されるものではない。
〔実施例1〕
木材パルプとして、針葉樹晒クラフトパルプ100質量%を使用し、ダブルディスクリファイナーでカナディアンスタンダードフリーネスによる叩解度が270mlの原料パルプスラリーを調製した。この原料パルプスラリーに、エピクロルヒドリン系湿潤紙力増強剤を対パルプ質量当たり固形分濃度で0.5質量%、ロジンサイズ剤を対パルプ質量当たり固形分濃度で0.5質量%、硫酸アルミニウムを4質量%それぞれ添加して原料スラリーを調製し、この原料スラリーを常法に従って湿式抄紙して坪量44g/m2の紙を得、これを基材シートとした。
また別途、内層用塗工液及び外層用塗工液をそれぞれ調製した。内層用塗工液の組成は、疎水化デンプン(National Starch製、Filmkote370)100質量%であった。外層用塗工液の組成は、ポリビニルアルコール(クラレ製、PVA 117)98質量%、非フッ素系且つ非シリコーン系撥水剤(Zaclon製、Quilon(登録商標)C)2質量%であった。
基材シートの両面それぞれに前記内層用塗工液を、片面当たりの塗工量が固形分換算で1.6g/m2となるように塗工して内層を設け、さらに両内層それぞれに前記外層用塗工液を、片面当たりの塗工量が固形分換算で1g/m2となるように塗工して外層を設け、目的とするシート状物(耐油性シート)を得た。実施例1のシート状物は、基材シートと内層と外層とが他の層を介在させずに積層一体化され、且つ該外層が該シート状物の厚み方向の最外方に位置して該シート状物の表面を形成している。
木材パルプとして、針葉樹晒クラフトパルプ100質量%を使用し、ダブルディスクリファイナーでカナディアンスタンダードフリーネスによる叩解度が270mlの原料パルプスラリーを調製した。この原料パルプスラリーに、エピクロルヒドリン系湿潤紙力増強剤を対パルプ質量当たり固形分濃度で0.5質量%、ロジンサイズ剤を対パルプ質量当たり固形分濃度で0.5質量%、硫酸アルミニウムを4質量%それぞれ添加して原料スラリーを調製し、この原料スラリーを常法に従って湿式抄紙して坪量44g/m2の紙を得、これを基材シートとした。
また別途、内層用塗工液及び外層用塗工液をそれぞれ調製した。内層用塗工液の組成は、疎水化デンプン(National Starch製、Filmkote370)100質量%であった。外層用塗工液の組成は、ポリビニルアルコール(クラレ製、PVA 117)98質量%、非フッ素系且つ非シリコーン系撥水剤(Zaclon製、Quilon(登録商標)C)2質量%であった。
基材シートの両面それぞれに前記内層用塗工液を、片面当たりの塗工量が固形分換算で1.6g/m2となるように塗工して内層を設け、さらに両内層それぞれに前記外層用塗工液を、片面当たりの塗工量が固形分換算で1g/m2となるように塗工して外層を設け、目的とするシート状物(耐油性シート)を得た。実施例1のシート状物は、基材シートと内層と外層とが他の層を介在させずに積層一体化され、且つ該外層が該シート状物の厚み方向の最外方に位置して該シート状物の表面を形成している。
〔実施例2〕
内層及び外層の組成及び塗工量を適宜変更した以外は実施例1と同様にしてシート状物を得た。
内層及び外層の組成及び塗工量を適宜変更した以外は実施例1と同様にしてシート状物を得た。
〔実施例3〕
基材シートの両面それぞれに前記外層用塗工液のみを塗工し、前記内層用塗工液は塗工しなかった以外は実施例1と同様にしてシート状物を得た。実施例3のシート状物は、基材シートの両面それぞれに、ポリビニルアルコールと非フッ素系且つ非シリコーン系撥水剤とを含む前記外層に相当する、単層構造の耐油性層のみが設けられている。
基材シートの両面それぞれに前記外層用塗工液のみを塗工し、前記内層用塗工液は塗工しなかった以外は実施例1と同様にしてシート状物を得た。実施例3のシート状物は、基材シートの両面それぞれに、ポリビニルアルコールと非フッ素系且つ非シリコーン系撥水剤とを含む前記外層に相当する、単層構造の耐油性層のみが設けられている。
〔比較例1〕
基材シートの両面それぞれに前記内層用塗工液のみを塗工し、前記外層用塗工液は塗工しなかった以外は実施例1と同様にしてシート状物を得た。比較例1のシート状物は、基材シートの両面それぞれに、疎水化デンプンを含む前記内層に相当する、単層構造の耐油性層のみが設けられている。
基材シートの両面それぞれに前記内層用塗工液のみを塗工し、前記外層用塗工液は塗工しなかった以外は実施例1と同様にしてシート状物を得た。比較例1のシート状物は、基材シートの両面それぞれに、疎水化デンプンを含む前記内層に相当する、単層構造の耐油性層のみが設けられている。
〔比較例2〕
基材シートの両面それぞれに前記内層用塗工液を塗工し、さらに両内層それぞれにポリビニルアルコール(クラレ製、PVA 117)100質量%の外層用塗工液を塗工して外層を設けた。
基材シートの両面それぞれに前記内層用塗工液を塗工し、さらに両内層それぞれにポリビニルアルコール(クラレ製、PVA 117)100質量%の外層用塗工液を塗工して外層を設けた。
〔試験評価〕
各実施例及び比較例のシート状物について、前記方法(キット法)により耐油度(キット値)を測定すると共に、二次加工性の一指標として下記方法により耐ブロッキング性を評価した。その結果を下記表1に示す。
各実施例及び比較例のシート状物について、前記方法(キット法)により耐油度(キット値)を測定すると共に、二次加工性の一指標として下記方法により耐ブロッキング性を評価した。その結果を下記表1に示す。
<耐ブロッキング性の評価方法>
評価対象のシート(シート状物)を5cm四方にカットしたものを4枚用意する。そのうちの1枚のシートの片面の略中央に水を1滴滴下した後、該シートの水滴滴下面に別の1枚のシートを重ね合わせて2層構造の内層積層体を得、この内層積層体をその両側から残り2枚のシートで挟んで、4層構造の積層体を得た。この積層体に対し、厚み方向(各層の積層方向)の片面側から16kg/cm2の荷重を該積層体全体に1秒間加えた後、荷重を除去し、前記内層積層体とその外側に位置する1枚のシートとの接着程度を目視観察して、両者がそれらの接触部分において全く接着していない場合を○、両者がそれらの接触部分において部分的に接着している場合、より具体的には、接着面積が両者の全接触面積の50%未満の場合を△、接着面積が両者の全接触面積の50%以上の場合を×とした。
評価対象のシート(シート状物)を5cm四方にカットしたものを4枚用意する。そのうちの1枚のシートの片面の略中央に水を1滴滴下した後、該シートの水滴滴下面に別の1枚のシートを重ね合わせて2層構造の内層積層体を得、この内層積層体をその両側から残り2枚のシートで挟んで、4層構造の積層体を得た。この積層体に対し、厚み方向(各層の積層方向)の片面側から16kg/cm2の荷重を該積層体全体に1秒間加えた後、荷重を除去し、前記内層積層体とその外側に位置する1枚のシートとの接着程度を目視観察して、両者がそれらの接触部分において全く接着していない場合を○、両者がそれらの接触部分において部分的に接着している場合、より具体的には、接着面積が両者の全接触面積の50%未満の場合を△、接着面積が両者の全接触面積の50%以上の場合を×とした。
表1に示す通り、ポリビニルアルコールと非フッ素系且つ非シリコーン系撥水剤とを含む層(外層)を有する、各実施例の耐油性シートは、斯かる層を有さない各比較例に比して耐ブロッキング性に優れ、また、耐油性に関しても遜色ない結果となった。以上のことから、耐油性及び耐ブロッキング性(二次加工性)に優れた耐油性シートを得るためには、基材シートに設ける塗工層に、デンプン又はポリビニルアルコールのみを含有させるだけでは足りず、さらに非フッ素系且つ非シリコーン系撥水剤を含有させることが有効であることがわかる。また、実施例1と実施例2との対比から、非フッ素系且つ非シリコーン系撥水剤としては、3価クロムイオンの脂肪酸錯体が特に有効であることがわかる。
Claims (6)
- 基材シートの少なくとも片面側に、デンプン又はポリビニルアルコールと非フッ素系且つ非シリコーン系撥水剤とを含む耐油性層を有する耐油性シート。
- 前記耐油性層は、前記基材シートから相対的に近い側に位置する内層と、該基材シートから相対的に遠い側に位置する外層とを含んで構成され、該外層に前記撥水剤が偏在している請求項1に記載の耐油性シート。
- 前記内層は前記デンプンを含み、前記外層は前記ポリビニルアルコールと前記撥水剤とを含む請求項2に記載の耐油性シート。
- 前記外層における前記撥水剤の含有量は1.5〜5質量%である請求項2又は3に記載の耐油性シート
- 前記撥水剤が3価クロムイオンの脂肪酸錯体である請求項1〜4のいずれか一項に記載の耐油性シート。
- 前記デンプンが疎水化澱粉である請求項1〜5のいずれか一項に記載の耐油性シート。
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JP2014070383A JP2015190096A (ja) | 2014-03-28 | 2014-03-28 | 耐油性シート |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2017119921A (ja) * | 2015-12-28 | 2017-07-06 | 王子ホールディングス株式会社 | 耐油紙 |
CN110183859A (zh) * | 2019-05-30 | 2019-08-30 | 李全峰 | 一种抗拉防水淀粉膜的制备方法 |
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2014
- 2014-03-28 JP JP2014070383A patent/JP2015190096A/ja active Pending
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