JP2015187222A - 樹脂組成物、被覆粒子、注入剤および充填方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】地下層に形成された亀裂に充填され、その高い流体浸透性を確保し得る被覆粒子を製造し得る樹脂組成物、かかる樹脂組成物を用いて製造された被覆粒子、この被覆粒子を含む注入剤、およびかかる注入剤を亀裂に注入する充填方法を提供すること。【解決手段】本発明の樹脂組成物は、地下層中に形成された亀裂に充填される被覆粒子1の外表面の少なくとも一部を被覆する表面層3を形成するために用いられるものであり、イソシアネート基を有するイソシアネート化合物と、水酸基を備える硬化性樹脂とを含有し、前記イソシアネート化合物は、前記イソシアネート基に、該イソシアネート基に対して反応性を有する化合物によりブロック化された状態で存在している。【選択図】図1
Description
本発明は、樹脂組成物、被覆粒子、注入剤および充填方法に関する。
近年、地下層からオイル状またはガス状の炭化水素(流体)を回収することが積極的に行われている。具体的には、炭化水素を含有する地下層(シェール層)に到達する掘削穴を形成し、この掘削穴を介して炭化水素を回収する。この場合、地下層は、流体が掘削穴に流入するのを許容する十分な流体浸透性(コンダクティビティー)を備える必要がある。
この地下層の流体浸透性を確保するために、例えば、水圧破砕が行われる。水圧破砕の作業では、まず、粘性流体を掘削穴を介して、十分な速度および圧力で、地下層に注入して地下層に亀裂を形成する。その後、粒子を含有する注入剤を地下層に注入し、形成された亀裂内に粒子を充填して亀裂の閉塞を防止する。
このような粒子としては、例えば、シリカサンドやガラスビーズのようなコア粒子を、エポキシ樹脂、レゾール樹脂等の熱硬化性樹脂で被覆した被覆粒子が開示されている(例えば、特許文献1、2参照。)。
かかる被覆粒子は、コア粒子が樹脂で被覆されているため、仮に地中の圧力によってコア粒子が崩壊しても、その破片が散逸することが阻止される。このため、被覆粒子同士の間の空間が破片により閉塞するのを防止することができ、地下層の流体浸透性を確保することができる。
しかしながら、炭化水素の回収量を向上させる観点から、さらに高い流体浸透性を地下層に確保し得る被覆粒子の開発が求められている。
本発明の目的は、地下層に形成された亀裂に充填され、その高い流体浸透性を確保し得る被覆粒子を製造し得る樹脂組成物、かかる樹脂組成物を用いて製造された被覆粒子、この被覆粒子を含む注入剤、およびかかる注入剤を亀裂に注入する充填方法を提供することにある。
このような目的は、下記(1)〜(19)に記載の本発明により達成される。
(1) 地下層中に形成された亀裂に充填される粒子の外表面の少なくとも一部を被覆する表面層を形成するために用いられる樹脂組成物であって、
イソシアネート基を有するイソシアネート化合物と、前記イソシアネート基との反応性を備える水酸基を有する硬化性樹脂とを含有し、
前記イソシアネート化合物は、前記イソシアネート基に、該イソシアネート基に対して反応性を有する化合物が結合することでブロック化された状態で存在していることを特徴とする樹脂組成物。
(1) 地下層中に形成された亀裂に充填される粒子の外表面の少なくとも一部を被覆する表面層を形成するために用いられる樹脂組成物であって、
イソシアネート基を有するイソシアネート化合物と、前記イソシアネート基との反応性を備える水酸基を有する硬化性樹脂とを含有し、
前記イソシアネート化合物は、前記イソシアネート基に、該イソシアネート基に対して反応性を有する化合物が結合することでブロック化された状態で存在していることを特徴とする樹脂組成物。
(2) 前記化合物は、活性水素基を備え、該活性水素基が前記イソシアネート基と反応することで、前記イソシアネート化合物をブロック化する上記(1)に記載の樹脂組成物。
(3) 前記化合物は、フェノール系化合物、ピリジン系化合物、活性メチレン系化合物、メルカプタン系化合物、アミド系化合物、ラクタム系化合物、アゾール系化合物、尿素系化合物、オキシム系化合物、カルバゾール系化合物、モノオール系化合物、モノアミン系化合物およびアミジン系化合物よりなる群から選択される少なくとも1種を含む上記(2)に記載の樹脂組成物。
(4) 前記化合物は、前記活性水素基の数が、前記イソシアネート化合物の前記イソシアネート基の数を1としたとき、イソシアネート基:活性水素基=1:0.1〜1.9となるように含まれている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(5) 前記イソシアネート化合物は、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート(ポリメリックMDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)およびポリメリックヘキサメチレンジイソシアネート(ポリメリックHDI)よりなる群から選択される少なくとも1種を含む上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(6) 前記イソシアネート化合物の含有量は、前記硬化性樹脂100質量部に対して0.1質量部以上、20質量部以下である上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(7) 前記硬化性樹脂は、前記イソシアネート化合物の作用により100℃以下の温度で硬化する上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(8) 前記硬化性樹脂は、自硬化性樹脂である上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(9) 前記自硬化性樹脂は、フラン樹脂およびレゾール樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種を含む上記(8)に記載の樹脂組成物。
(10) 地下層中に形成された亀裂に充填される複数の被覆粒子であって、
各被覆粒子は、外表面を有するコア粒子と、該コア粒子の前記外表面の少なくとも一部を被覆する表面層とを備え、
前記表面層は、イソシアネート化合物と、水酸基を備える硬化性樹脂とを含有し、
前記イソシアネート化合物は、このものが備えるイソシアネート基が、該イソシアネート基に対して反応性を有する化合物によりブロック化された状態で存在しているものを有することを特徴とする被覆粒子。
各被覆粒子は、外表面を有するコア粒子と、該コア粒子の前記外表面の少なくとも一部を被覆する表面層とを備え、
前記表面層は、イソシアネート化合物と、水酸基を備える硬化性樹脂とを含有し、
前記イソシアネート化合物は、このものが備えるイソシアネート基が、該イソシアネート基に対して反応性を有する化合物によりブロック化された状態で存在しているものを有することを特徴とする被覆粒子。
(11) 前記硬化性樹脂は、硬化状態、半硬化状態または未硬化状態である上記(10)に記載の被覆粒子。
(12) 前記表面層の平均厚さは、0.5μm以上、20μm以下である上記(10)または(11)に記載の被覆粒子。
(13) 前記表面層は、前記コア粒子の前記外表面の50%以上、100%以下を被覆する上記(10)ないし(12)のいずれかに記載の被覆粒子。
(14) 前記複数のコア粒子は、砂粒子およびセラミックス粒子のうちの少なくとも1種を含む上記(10)ないし(13)のいずれかに記載の被覆粒子。
(15) 前記複数のコア粒子の平均粒子サイズは、100μm以上、3,000μm以下である上記(10)ないし(14)のいずれかに記載の被覆粒子。
(16) 地下層中に形成された亀裂に注入される注入剤であって、
上記(10)ないし(15)のいずれかに記載の被覆粒子と、
該被覆粒子を分散し、前記被覆粒子を前記亀裂に移送するための流体とを含むことを特徴とする注入剤。
上記(10)ないし(15)のいずれかに記載の被覆粒子と、
該被覆粒子を分散し、前記被覆粒子を前記亀裂に移送するための流体とを含むことを特徴とする注入剤。
(17) 前記流体は、溶媒、粘度調整剤、界面活性剤、ブレーカー、粘度安定剤、ゲル化剤および安定剤のうちの少なくとも1つを含む上記(16)に記載の注入剤。
(18) 当該注入剤中に含まれる前記被覆粒子の量は、1重量%以上、99重量%以下である上記(16)または(17)に記載の注入剤。
(19) 上記(16)ないし(18)のいずれかに記載の注入剤を地下層中に形成された亀裂に、前記地下層に至る掘削穴を介して移送し、前記注入剤を前記亀裂に注入することにより、前記粒子を前記亀裂に充填することを特徴とする充填方法。
本発明によれば、被覆粒子が備える表面層中に含まれるイソシアネート化合物と硬化性樹脂とのうちイソシアネート化合物が備えるイソシアネート基が、このイソシアネート基に対して反応性を有する化合物が化学結合することでブロック化された状態のものとして存在しており、これにより、被覆粒子を充填部位(地下層の亀裂)に注入した際に、被覆粒子が破砕されるのを的確に抑制または防止することができるため、被覆粒子の充填部位における流体浸透性が高まる。
以下、本発明の樹脂組成物、被覆粒子、注入剤および充填方法について、添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の被覆粒子の実施形態を示す部分断面図、および、図2は、図1に示す被覆粒子に圧力が付与された状態を示す部分断面図である。
本発明の被覆粒子は、地下層中に形成された亀裂に充填され、この亀裂が閉塞するのを防止するとともに、地下層の被覆粒子の充填部位(地下層の亀裂)の流体浸透性を確保する。これにより、地下層が含有する炭化水素の地下層に形成された掘削穴への流入効率を高めることができる。
図1に示すように、各被覆粒子1は、コア粒子2と、コア粒子2の外表面の少なくとも一部を被覆する表面層3とを有する。
コア粒子2は、被覆粒子1が亀裂に充填された際に、亀裂内で支持材として機能する。
このコア粒子2には、比較的高い機械的強度を有する種々の粒子を用いることができ、特定の種類に限定されない。コア粒子2の具体例としては、例えば、砂粒子、セラミックス粒子、シリカ粒子、金属粒子、有機物粒子等が挙げられる。
このコア粒子2には、比較的高い機械的強度を有する種々の粒子を用いることができ、特定の種類に限定されない。コア粒子2の具体例としては、例えば、砂粒子、セラミックス粒子、シリカ粒子、金属粒子、有機物粒子等が挙げられる。
これらの中でも、複数のコア粒子2は、砂粒子およびセラミックス粒子のうちの少なくとも1種を含むことが好ましい。砂粒子およびセラミックス粒子は、高い機械的強度を有するとともに、比較的安価かつ容易に入手可能である。
複数のコア粒子2の平均粒径は、100μm以上、3,000μm以下程度であることが好ましく、200μm以上、1,000μm以下程度であることがより好ましい。このようなサイズのコア粒子2を用いることにより、得られた被覆粒子1同士の凝集を防止することができる。また、被覆粒子1を充填した亀裂の流体浸透性を十分に確保することができる。
なお、複数のコア粒子2は、粒子サイズにバラつきが存在し、10倍程度粒子サイズが異なる粒子を含んでいてもよい。すなわち、複数のコア粒子2の粒度分布を測定したとき、山形関数で表される粒度分布曲線のピークの半値幅が比較的大きな値であってもよい。
なお、図1では、コア粒子2の断面形状は、ほぼ円形状として示されているが、楕円形状、多角形状、異形状等であってもよい。これらの場合、コア粒子2の粒子サイズは、横断面における最大長として規定される。
コア粒子2としてセラッミクス粒子を用いる場合、断面形状ができる限り円形状に近いことが好ましい。かかるセラッミクス粒子は、特に高い機械的強度を有する。また、かかるセラッミクス粒子を用いて被覆粒子1を製造することにより、製造された被覆粒子1の真球度を高めることができる。したがって、被覆粒子1を亀裂に充填した際に、被覆粒子1同士は、点接触するようになる。このため、それらの間に形成される空間(流路)の容積を増大させることもできる。
また、コア粒子2としては、自然に産出される砂粒子をそのまま用いることもできる。かかる砂粒子を用いることにより、注入剤の生産性の向上とコスト削減とを図ることができる。さらに、コア粒子2として、セラミックス粒子と砂粒子との混合物を用いてもよい。この場合、セラミックス粒子と砂粒子との混合比は、質量比で好ましくは1:9〜9:1程度、より好ましくは3:7〜7:3程度とされる。
各コア粒子2の外表面の少なくとも一部が、表面層3で被覆されている。この表面層3は、図2に示すように、地下層の亀裂に充填されたコア粒子2が地中の圧力で仮に崩壊した場合でも、コア粒子2の破片が散逸するのを防止するよう機能する。このため、被覆粒子1同士の間の空間(流路)が、コア粒子2の破片により閉塞するのを防止することができる。これにより、被覆粒子1を充填した亀裂の流体浸透性をより確実に確保することができる。
表面層3は、コア粒子2の外表面の全体を被覆するのが好ましい。しかしながら、表面層3は、コア粒子2が地中の圧力で仮に崩壊した場合でも、コア粒子2の破片が散逸することを防止することができるのであれば、コア粒子2の外表面の一部のみを被覆してもよい。このようなことから、表面層3は、コア粒子2の外表面の50%以上、100%以下を被覆することが好ましく、70%以上、100%以下を被覆することがより好ましく、90%以上、100%以下を被覆することがさらに好ましい。
また、表面層3の平均厚さは、特定の値に限定されないが、0.5μm以上、20μm以下であることが好ましく、1μm以上、10μm以下であることがより好ましい。表面層3の平均厚さを、上記数値範囲内の値に設定することにより、被覆粒子1のサイズが不要に大きくなるのを抑制しつつ、コア粒子2の破片の散逸防止効果が十分に発揮される。
このような表面層3は、イソシアネート基がブロック化されたイソシアネート化合物と、イソシアネート基の存在下で、すなわちブロック化が解除されたイソシアネート化合物の作用により、その同士間における硬化が架橋される硬化性樹脂とを含んでいる。硬化性樹脂は、イソシアネート基との反応性を備える水酸基を有し、この水酸基を介してイソシアネート化合物が硬化性樹脂同士を架橋させることで、表面層3に高い機械的強度を付与し、コア粒子2の破片の散逸をより確実に防止する。
なお、硬化性樹脂は、地下層の亀裂に被覆粒子1が充填された状態で硬化(完全硬化および半硬化)していればよい。
したがって、被覆粒子1を亀裂へ充填する前において、硬化性樹脂は、完全硬化状態、半硬化状態または未硬化状態のいずれであってもよい。半硬化状態または未硬化状態の硬化性樹脂は、地下層の亀裂に被覆粒子1が充填された際に、地中の熱および圧力の条件下においてイソシアネート化合物が備えるイソシアネート基の作用によって、より確実に硬化することとなる。
以下、これらイソシアネート化合物と、硬化性樹脂とが反応して、硬化性樹脂が硬化する過程について説明する。
本発明では、この表面層3中において、硬化性樹脂に対して反応性を有するイソシアネート化合物が備えるイソシアネート基が、このイソシアネート基に対して反応性を有する化合物(以下、この化合物を「ブロック化合物」と言うこともある。)が化学結合することによりブロック化された状態のもの(ブロックイソシアネート化合物)が存在している。そして、ブロックイソシアネート化合物に連結したブロック化合物は、所定の条件でイソシアネート化合物から離脱してイソシアネート基を生成するように設計されている。
ここで、被覆粒子1を亀裂へ充填する前において、硬化性樹脂が硬化状態である場合には、表面層3中に含まれるイソシアネート化合物のうちその多くにおいてブロック化合物がイソシアネート化合物から離脱している。これに対して、被覆粒子1を亀裂へ充填する前において、硬化性樹脂が半硬化状態または未硬化状態である場合には、表面層3中に含まれるイソシアネート化合物のうちその多くにおいてブロック化合物がイソシアネート化合物から離脱することなく、イソシアネート化合物が備えるイソシアネート基に対してブロック化合物が化学結合することによりブロック化している。これにより、イソシアネート化合物と硬化性樹脂とが、不要な箇所で接触(反応)して、硬化性樹脂が硬化するのを防止することができ、さらに、必要な箇所(すなわち地下層中に形成された亀裂)において、ブロック化合物がイソシアネート化合物から離脱することで、イソシアネート化合物と硬化性樹脂とが接触(反応)して硬化性樹脂を硬化させることができる。すなわち、イソシアネート化合物は、不要な箇所では、ブロック化合物でブロック化されていることに起因して、硬化性樹脂を硬化させる機能(反応性)が不活化しており、必要な箇所では、ブロック化合物が離脱することにより、硬化性樹脂を硬化させることができる。このように、必要な箇所(すなわち地下層中に形成された亀裂)において、選択的に、硬化性樹脂を硬化させることができ、表面層3の強度を向上させることができることから、地下層の被覆粒子1の充填部位(地下層の亀裂)の流体浸透性をより確実に確保することができる。よって、亀裂と連通する掘削穴への炭化水素の流入効率を高めることができる。
なお、本明細書において、「ブロック化」とは、ブロック化合物が有する活性水素基が、イソシアネート化合物が備えるイソシアネート基に化学結合し、このイソシアネート基により硬化性樹脂の硬化が進行する反応性(硬化性樹脂に対する反応性)を不活化させることを言う。また、「ブロック化の解除」とは、イソシアネート化合物が備えるイソシアネート基からブロック化合物が有する活性水素基が離脱し、このイソシアネート基により硬化性樹脂の硬化が進行する反応性が活性化された状態になっていることを言う。
また、「化学結合」としては、ブロック化合物が有する活性水素基と、イソシアネート化合物が備えるイソシアネート基との反応により、硬化性樹脂の硬化が進行する反応性を不活化させ得るものであればよく、例えば、共有結合、配位結合のような分子内結合、イオン結合、ファンデルワールス結合のような分子間の化学結合が挙げられる。
イソシアネート化合物は、ブロック化合物によるブロック化が解除されて硬化性樹脂に接触した際には、イソシアネート基と硬化性樹脂が有する水酸基とが反応して、硬化性樹脂同士を架橋する架橋剤として機能する。
このようなイソシアネート化合物としては、特に限定されず、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート(ポリメリックMDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、p−フェニレンジイソシアネート、1,3−ビス−(イソシアナトメチル)−ベンゼン(XDI)、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)のような芳香族系ジイソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ポリメリックヘキサメチレンジイソシアネート(ポリメリックHDI)、ダイマー酸ジイソシアネート(DDI)、ノルボルネン・ジイソシアネート(NBDI)のような脂肪族系ジイソシアネート化合物、トランス−1,4−シクロヘキサンジイソシアネート(CHDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、1,3−ビス−(イソシアナトメチル)−シクロヘキサン(H6XDI)のような脂環族系ジイソシアネート化合物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート(ポリメリックMDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)およびポリメリックヘキサメチレンジイソシアネート(ポリメリックHDI)よりなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。これらのイソシアネート化合物を用いることにより、ブロック化合物でイソシアネート化合物をより確実にブロック化させることができる。
また、イソシアネート化合物の含有量は、表面層3中に含まれる硬化性樹脂100質量部に対して0.1質量部以上、20質量部以下程度であるのが好ましく、0.5質量部以上、15質量部以下程度であるのがより好ましく、1質量部以上、10質量部以下程度であるのがさらに好ましい。イソシアネート化合物の含有量を上記範囲の値に設定することにより、イソシアネート化合物の作用により硬化性樹脂を硬化させる際に、何らかの要因で、仮にブロック化合物によるブロック化が半分程度解除しない場合でも、硬化性樹脂を硬化させ得る十分な量のイソシアネート化合物を確保することができる。
また、イソシアネート化合物が備えるイソシアネート基に対して反応性を有する化合物(ブロック化合物)は、イソシアネート化合物が備えるイソシアネート基をブロック化することで、被覆粒子1を亀裂へ充填する前において、硬化性樹脂が半硬化状態または未硬化状態である場合には、イソシアネート化合物と硬化性樹脂とが、不要な箇所で反応して、硬化性樹脂が硬化するのを防止する機能を有するとともに、必要な箇所において、イソシアネート化合物から離脱することで、イソシアネート化合物と硬化性樹脂とを反応させて硬化性樹脂を硬化させる機能を有する。
このようなブロック化合物は、活性水素基を備え、この活性水素基が、イソシアネート化合物が備えるイソシアネート基と反応することで、イソシアネート化合物をブロック化するものである。
活性水素基を有するブロック化合物としては、特に限定されず、例えば、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、ブチルフェノールのようなフェノール系化合物、2−ヒドロキシピリジンのようなピリジン系化合物、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトンのような活性メチレン系化合物、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタンのようなメルカプタン系化合物、アセトアニリド、酢酸アミドのようなアミド系化合物、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、コハク酸イミド、マレイン酸イミドのようなラクタム系化合物、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、ジメチルピラゾール、トリアゾールのようなアゾール系化合物、尿素、チオ尿素、エチレン尿素のような尿素系化合物、ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトオキシム、メチルイソブチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムのようなオキシム系化合物、カルバゾールのようなカルバゾール系化合物、メタノール、エタノール、プロパノール等の脂肪族モノオール、シクロヘキサノール、メチル−シクロヘキサノール等の脂環式モノオール、ベンジルアルコール等の芳香族モノオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテルモノオール、ヒドロキシ酢酸エステル、ヒドロキシプロピオン酸エステル等のエステルモノオールのようなモノオール系化合物、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミンのようなモノアミン系化合物、N,N’−ジフェニルホルムアミジンのようなアミジン系化合物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合せて用いることができる。これにより、ブロック化合物でイソシアネート化合物を確実にブロック化させることができる。
これらの中でも、N,N’−ジフェニルホルムアミジンであることが好ましい。N,N’−ジフェニルホルムアミジンは、比較的低温でイソシアネート化合物から離脱する。そのため、後述するように、硬化性樹脂として、イソシアネート化合物の作用により100℃以下の温度で硬化するものを用いたとしても、かかる100℃以下の温度による加熱により、N,N’−ジフェニルホルムアミジン(ブロック化合物)を確実にイソシアネート化合物から離脱させることができる。
また、ブロック化合物は、その活性水素基の数が、イソシアネート化合物が備えるイソシアネート基の数を1としたとき、イソシアネート基:活性水素基=1:0.1〜1.9となるように含まれているのが好ましく、1:0.3〜1.7となるように含まれているのがより好ましく、1:0.5〜1.5となるように含まれているのがさらに好ましい。
なお、イソシアネート化合物からブロック化合物を離脱させる際に、低温領域でより円滑にこの離脱を進行させるためには、ブロック化合物がイソシアネート化合物から離脱する反応を促進させる触媒(ブロック化合物解離触媒)として機能する4級アンモニウム塩が、樹脂組成物中に含まれているのが好ましい。
この4級アンモニウム塩としては、特に限定されず、例えば、テトラメチルアンモニウムオルトリン酸塩、テトラエチルアンモニウムオルトリン酸塩、テトラn−プロピルアンモニウムオルトリン酸塩、テトラn−ブチルアンモニウムオルトリン酸塩、トリエチルモノメチルアンモニウムオルトリン酸塩等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合せて用いることができる。
また、硬化性樹脂は、イソシアネート化合物が有するイソシアネート基との反応性を備える水酸基を有するものであり、この硬化性樹脂同士がイソシアネート化合物を介して架橋されることにより硬化するものである。
硬化性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、フラン樹脂、レゾール樹脂、ノボラック樹脂、メラミン樹脂およびオキセタン樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの硬化性樹脂は、イソシアネート基の存在下で、室温程度の温度で硬化が促進するものが多く認められるため、特に本発明での使用に適する。また、これらの樹脂を用いることにより、表面層3に優れた機械的強度を付与することができる。
この硬化性樹脂は、特に、自硬化性樹脂であることが好ましい。ここで、本明細書中において、「自硬化性樹脂」とは、前述した水酸基とは異なる官能基を備え、この官能基がイソシアネート化合物を介することなく、所定の条件下において反応することにより、自硬化性樹脂同士が化学結合することで硬化するもののことを言う。このような自硬化性樹脂を硬化性樹脂として用いることにより、表面層3中において、イソシアネート化合物がブロック化合物によりブロック化された状態であったとしても、官能基同士による反応を進行させて、自硬化性樹脂を硬化させることができる。
このような自硬化性樹脂としては、例えば、フラン樹脂およびレゾール樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
フラン樹脂としては、例えば、フルフラール樹脂、フルフラールフェノール樹脂、フルフラールケトン樹脂、フルフリルアルコール樹脂、フルフリルアルコールフェノール樹脂等が挙げられる。
レゾール樹脂としては、ジメチレンエーテルレゾール樹脂およびメチロールレゾール樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、メチレンエーテルレゾール樹脂とメチロールレゾール樹脂との双方を含むのが好ましい。これにより、靭性に優れたジメチレンエーテルレゾール樹脂と、耐熱性に優れたメチロールレゾール樹脂の双方の特性を発現させることができ、機械的強度と耐熱性とを両立させることができる。
なお、フラン樹脂およびレゾール樹脂を自硬化性樹脂として用いた場合、水酸基とは異なる官能基としては、メチロール基、アルデヒド基が挙げられる。これらのうち、メチロール基は、イソシアネート化合物を介さない硬化反応に関与するとともに、イソシアネート化合物を介する硬化反応にも関与する。
また、上記のような構成の被覆粒子1において、硬化性樹脂は、ブロック化合物によるブロック化がなされていないイソシアネート化合物(イソシアネート化合物の未ブロック品)の作用により100℃以下の温度で硬化するのが好ましく、75℃以下の温度で硬化するのがより好ましく、25℃(室温)以下の温度で硬化するのがさらに好ましい。かかる硬化性樹脂を用いることにより、かかる被覆粒子1を含む注入剤を用いて、比較的浅い箇所に位置する地下層から炭化水素を回収する場合に、特に好適に使用することができる。また、このように、硬化性樹脂が比較的低い温度でイソシアネート化合物の作用により硬化するとしても、かかる注入剤では、イソシアネート化合物と硬化性樹脂とのうちイソシアネート化合物が備えるイソシアネート基がブロック化合物によりブロック化された状態で存在しているため、イソシアネート化合物からブロック化合物が離脱する前では、硬化性樹脂の硬化を的確に抑制することができる。
表面層3は、前述のイソシアネート化合物と硬化性樹脂との成分以外に、他の成分を含んでいてもよい。
他の成分としては、例えば、滑剤(ワックス)、カップリング剤、強化剤等が挙げられる。例えば、滑剤は、流体と樹脂(表面層3)とのなじみ性を向上させる機能を有し、カップリング剤は、コア粒子2と表面層3との密着性を向上させる機能を有する。
滑剤としては、例えば、エチレンビスステアリン酸アマイド、メチレンビスステアリン酸アマイド、オキシステアリン酸アマイド、ステアリン酸アマイド、メチロールステアリン酸アマイド、炭化水素ワックス、ステアリン酸等が挙げられる。一方、カップリング剤としては、例えば、アミノシラン、エポキシシラン、ビニルシランのようなシランカップリング剤、チタネイトカップリング剤等が挙げられる。
なお、図1に示す本実施形態では、コア粒子2と表面層3とが直接接触するように示されている。しかしながら、コア粒子2と表面層3との間には、任意の機能を有する少なくとも1層の中間層を設けるようにしてもよい。かかる中間層の機能としては、例えば、コア粒子2と表面層3との密着性を向上する機能等が挙げられる。
前述したような構成の被覆粒子1は、本発明の樹脂組成物、すなわち、イソシアネート基を有するイソシアネート化合物と、このイソシアネート基との反応性を備える水酸基を有する硬化性樹脂とを含有し、かかるイソシアネート化合物は、イソシアネート基にブロック化合物が結合することでブロック化された状態で存在している樹脂組成物を用いて、例えば、以下に示すI〜IIIの被覆粒子の製造方法を適用して製造することができる。
すなわち、Iの被覆粒子の製造方法では、前述した硬化性樹脂と、イソシアネート基がブロック化されたイソシアネート化合物(ブロックイソシアネート化合物)とを含む樹脂組成物(本発明の樹脂組成物)を用意し、この樹脂組成物とコア粒子2との混練、樹脂組成物のコア粒子2の外表面への塗布、噴霧等の作業により、コア粒子2の外表面の少なくとも一部を樹脂組成物で被覆した後に冷却することで、コア粒子2の外表面の少なくとも一部に表面層3が形成された被覆粒子1が製造される。また、Iの被覆粒子の製造方法において、かかる作業は、複数回繰り返し行ってもよい。この場合、複数回の作業において、樹脂組成物の組成は、同一であっても異なっていてもよい。なお、Iの被覆粒子の製造方法では、表面層3は、その厚さ方向において、硬化性樹脂と、イソシアネート基がブロック化されたイソシアネート化合物とがほぼ均一に混合しているものがコア粒子2の外表面の少なくとも一部に形成される。
また、IIの被覆粒子の製造方法では、硬化性樹脂を含む第1の樹脂組成物と、イソシアネート基がブロック化されたイソシアネート化合物を含む第2の樹脂組成物とをそれぞれ用意し、これらのうち第1の樹脂組成物とコア粒子2とを混練して混練物とし、その後、この混練物にさらに第2の樹脂組成物を添加して混練することにより、コア粒子2の外表面の少なくとも一部を第1の樹脂組成物および第2の樹脂組成物を含む混練物で被覆した後、冷却することにより、コア粒子2の外表面の少なくとも一部に表面層3が形成された被覆粒子1が製造される。また、IIの被覆粒子の製造方法において、かかる第1の樹脂組成物および第2の樹脂組成物を含む混練物で被覆する作業は、複数回繰り返し行ってもよい。この場合、複数回の作業において、樹脂組成物の組成は、同一であっても異なっていてもよい。なお、IIの被覆粒子の製造方法では、表面層3は、その厚さ方向において、硬化性樹脂と、イソシアネート基がブロック化されたイソシアネート化合物とのうち、硬化性樹脂の含有量がコア粒子2側から表面側に向かって漸減しているものがコア粒子2の外表面の少なくとも一部に形成される。
さらに、IIIの被覆粒子の製造方法では、硬化性樹脂を含む第1の樹脂組成物と、イソシアネート基がブロック化されたイソシアネート化合物を含む第2の樹脂組成物とをそれぞれ用意し、これらのうち第1の樹脂組成物とコア粒子2とを混練して混練物とした後に冷却し、その後、この混練物にさらに第2の樹脂組成物を添加して混練する(まぶす)ことで、コア粒子2の外表面の少なくとも一部を第1の樹脂組成物を含む層と第2の樹脂組成物を含む層との積層体で被覆して、コア粒子2の外表面の少なくとも一部に表面層3が形成された被覆粒子1が製造される。また、IIIの被覆粒子の製造方法において、かかる第1の樹脂組成物を含む層と第2の樹脂組成物を含む層とで被覆する作業は、複数回繰り返し行ってもよい。この場合、複数回の作業において、樹脂組成物の組成は、同一であっても異なっていてもよい。なお、IIIの被覆粒子の製造方法では、表面層3は、その厚さ方向において、硬化性樹脂を含む層と、イソシアネート基がブロック化されたイソシアネート化合物を含む層とが、コア粒子2側からこの順で積層された積層体としてコア粒子2の外表面の少なくとも一部に形成される。
なお、I〜IIIの被覆粒子の製造方法で用いられる硬化性樹脂は、その重量平均分子量が、200以上、50,000以下であることが好ましく、2,000以上、30,000以下であることがより好ましい。かかる重量平均分子量の硬化性樹脂を含む樹脂組成物(第1の樹脂組成物)は、比較的低い粘度を有する。このため、樹脂組成物とコア粒子2との混練を容易かつ確実に行うことができる。
樹脂組成物(第1の樹脂組成物)中に含まれる熱硬化樹脂の量は、表面層3における硬化性樹脂の目的とする量に応じて設定されるため、特定の値に限定されないが、70質量%以上、99質量%以下であることが好ましく、85質量%以上、99質量%以下であることがより好ましい。
また、樹脂組成物(第2の樹脂組成物)中に含まれるイソシアネート化合物の量は、表面層3におけるイソシアネート化合物の目的とする量に応じて設定されるため、特定の値に限定されないが、0.001質量%以上、15質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上、6質量%以下であることがより好ましい。
なお、樹脂組成物中の硬化性樹脂およびイソシアネート化合物の含有量を前記範囲内の値に設定することにより、樹脂組成物の粘度が高くなることを防止することができる。その結果、樹脂組成物を容易に取り扱うことができる。
樹脂組成物(第1および第2の樹脂組成物)は、前記各成分を溶解または分散可能な液剤を含んでいてもよい。これにより、樹脂組成物の粘度を容易に調整することができる。樹脂組成物が液剤を含む場合、コア粒子2の外表面の少なくとも一部を樹脂組成物で被覆した後、例えば、風乾等により樹脂組成物から液剤を除去することが好ましい。これにより、樹脂組成物(表面層3)のコア粒子2からの脱落を防止することができるとともに、表面層3の厚さを均一にすることもできる。
かかる液剤としては、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノールのようなアルコール系液剤、アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン系液剤、酢酸メチル、酢酸エチルのようなエステル系液剤等が挙げられる。なお、液剤には、これらの化合物の1種または2種以上を組み合わせて用いることもできる。
なお、I〜IIIの被覆粒子の製造方法を適用して製造された被覆粒子1において、表面層3に含まれる硬化性樹脂を、硬化状態または半硬化状態とする場合には、コア粒子2の外表面に形成された表面層3を加熱することにより、この硬化性樹脂の硬化を容易に行うことができる。
この際、本発明では、表面層3に含まれるイソシアネート化合物は、そのイソシアネート基に対してブロック化合物が化学結合することによりブロック化された状態で存在し、表面層3の加熱により離脱するように設計されている。そのため、この加熱の際の加熱温度を低く設定することが可能となり、加熱に要するエネルギーの削減を図ることができる。
表面層3を加熱する加熱温度は、30℃以上、250℃以下であることが好ましく、60℃以上、200℃以下であることがより好ましい。
また、表面層3を加熱する加熱時間は、0.1分以上、60分以下であることが好ましく、0.1分以上、5分以下であることがより好ましい。
表面層3を加熱する条件を前記範囲内に設定することにより、表面層3に含まれる硬化性樹脂を、確実に硬化状態または半硬化状態とすることができる。
また、表面層3を加熱する方法としては、特に限定されず、例えば、コア粒子2の外表面に表面層3を形成した後に、表面層3を加熱するようにしてもよいし、予めコア粒子2を加熱しておき、その後、このコア粒子2に表面層3を形成することで、表面層3を加熱するようにしてもよい。
さらに、硬化性樹脂として自硬化性樹脂を用い、IIまたはIIIの被覆粒子の製造方法を適用して、表面層3に含まれる硬化性樹脂を、半硬化状態として被覆粒子1を製造する場合、上述したIIおよびIIIの被覆粒子の製造方法において、第1の樹脂組成物とコア粒子2とを混練して混練物を得る際に、これらを加熱することで、イソシアネート化合物を介することなく、水酸基とは異なる官能基同士を反応させることにより、自硬化性樹脂を半硬化状態としてもよい。
また、この場合、第2の樹脂組成物をさらに混練物に添加するのに先立って、混練物を冷却しているのが好ましい。これにより、イソシアネート化合物からのブロック化合物の離脱が抑制され、その結果、イソシアネート化合物と水酸基との反応に起因する自硬化性樹脂の硬化が的確に抑制または防止される。なお、混練物の加熱温度は、100℃以上、200℃以下であることが好ましく、冷却時の混練物の温度は、40℃以下であることが好ましい。
以上説明したような複数の被覆粒子1は、地下層中に形成された亀裂に充填する際に、被覆粒子1を亀裂に移送するための流体に分散され、注入剤が調製される。かかる注入剤は、地下層に至る掘削穴を介して移送され、亀裂に注入される。
注入剤を調製するために用いられる流体としては、地下層に亀裂を形成する際に用いられるのと同一の流体が好ましい。かかる流体の25℃における粘度は、10mPa・s以上、500mPa・s以下であることが好ましく、15mPa・s以上、300mPa・s以下であることがより好ましく、20mPa・s以上、100mPa・s以下であることがさらに好ましい。このような粘度の流体を用いることにより、亀裂を確実に形成することができる。また注入剤中における被覆粒子1の分散性を高め、被覆粒子1を効率よく亀裂にまで移送および充填することができる。
このような流体は、水を主成分とし、溶媒、粘度調整剤、界面活性剤、ブレーカー、粘度安定剤、ゲル化剤および安定剤のうちの少なくとも1つの化合物を含むことが好ましい。このような化合物を用いることにより、液体の粘度を前述のような範囲の値に容易かつ確実に調製することができる。
注入剤中に含まれる被覆粒子1の量は、1重量%以上、99重量%程度であることが好ましく、5重量%以上、90重量%以下であることがより好ましい。かかる量の被覆粒子1を含む注入剤では、流体の粘度に係らず、被覆粒子1を安定的に分散させることができる。
次に、地下層から炭化水素を回収する方法について説明する。
図3は、地下層から炭化水素を回収する方法を説明するための概念図である。
図3は、地下層から炭化水素を回収する方法を説明するための概念図である。
[1]まず、図3に示すように、地表Sから、炭化水素を含有する目的の地下層Lにまで、鉛直方向に掘削穴91を掘り進める。その後、掘削穴91が地下層Lに到達したら、掘削方向を変更して、掘削穴91を地下層L内の水平方向に、所定の距離で堀り進める。
[2]次に、流体を、所定の速度および圧力で掘削穴91を介して地下層Lに注入する。このとき、流体が地下層Lの脆弱な部分を徐々に破壊し、掘削穴91に連通する複数の亀裂92が地下層L中に形成される。
[3]続いて、流体に代えて、注入剤を所定の速度および圧力で掘削穴91を介して地下層Lに注入する。このとき、注入剤が各亀裂92に注入され、各亀裂92に複数の被覆粒子1が充填される。すなわち、本工程[3]が、本発明の充填方法(注入剤を亀裂92に注入する方法)に相当する。
なお、この工程[3]は、注入剤中の被覆粒子1の量を徐々に増加させて行うことが好ましい。これにより、被覆粒子1を各亀裂92に確実かつ高密度で充填することができる。
このように、各亀裂92に被覆粒子1を充填することにより、各亀裂92が地中の圧力により閉塞することを防止することができる。特に、被覆粒子1を亀裂へ充填する前において、硬化性樹脂が硬化状態である場合には、各亀裂92に被覆粒子1を充填すると同時に表面層3としての機能を確実に発揮させることができるため、コア粒子2が地中の圧力で仮に崩壊したとしても、コア粒子2の破片が散逸するのを的確に抑制または防止することができる。また、被覆粒子1を亀裂へ充填する前において、硬化性樹脂が半硬化状態または未硬化状態である場合には、表面層3中に含まれるイソシアネート化合物のうちその多くにおいてブロック化合物がイソシアネート化合物から離脱することなく、イソシアネート化合物が備えるイソシアネート基に対してブロック化合物が化学結合することによりブロック化している。これにより、イソシアネート化合物と硬化性樹脂とが、不要な箇所で接触(反応)して、硬化性樹脂が硬化するのを防止することができ、さらに、必要な箇所(すなわち亀裂92)において、ブロック化合物がイソシアネート化合物から離脱することで、イソシアネート化合物と硬化性樹脂とが接触(反応)して硬化性樹脂を硬化させることができる。このように、必要な箇所(すなわち亀裂92)において、選択的に、硬化性樹脂を硬化させることができ、表面層3の強度を向上させることができることから、地下層の被覆粒子1の充填部位(地下層の亀裂)の流体浸透性をより確実に確保することができる。
[4]次に、地表Sに設置されたポンプPにより各亀裂92および掘削穴91を介して、地下層Lから炭化水素を回収する。
以上、本発明の樹脂組成物、被覆粒子、注入剤および充填方法を実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。
A.硬化性樹脂の製造方法
レゾール樹脂1:フェノールとアルデヒド水溶液をモル分率がホルムアルデヒド/フェノール=2になるように混合し、水酸化カリウムを加えてpH=8.7に調整した。その後、60℃で30分、90℃で80分、80℃で80分加熱し、冷却後、硫酸でpH=6になるまで中和した。その後、減圧下(70mmHg)で95℃になるまで加熱してレゾール樹脂1を得た。
A.硬化性樹脂の製造方法
レゾール樹脂1:フェノールとアルデヒド水溶液をモル分率がホルムアルデヒド/フェノール=2になるように混合し、水酸化カリウムを加えてpH=8.7に調整した。その後、60℃で30分、90℃で80分、80℃で80分加熱し、冷却後、硫酸でpH=6になるまで中和した。その後、減圧下(70mmHg)で95℃になるまで加熱してレゾール樹脂1を得た。
フラン樹脂1:フルフリルアルコール300gに塩酸(1.85wt%水溶液)0.9g添加してpH=2.5に調製した後、85℃で1時間15分加熱して屈折率が1.5となるように調製した。その後、一度冷却し、フルフラールを150g加えた。さらに塩酸を3g加えてしてpH=2.5に調製し、93℃で加熱し、粘度が400cpsになったところで加熱を終了した。その後、冷却して水酸化ナトリウム(50wt%水溶液)を0.8g加え、減圧下(68mmHg)83℃で加熱した。次いで、常圧下で冷却しフルフリルアルコールを45g、フルフラールを15g加えることによってフラン樹脂1を得た。
1.被覆粒子の製造
[実施例1]
まず、イソシアネート基がブロック化されたイソシアネート化合物(ブロックイソシアネート化合物)として、ブロック型イソシアネート溶液(日本ポリウレタン社製、「CORONATE2507」)と、硬化性樹脂として、レゾール樹脂1と、コア粒子として、平均粒子サイズが400μmのフラタリーサンド(砂粒子)とをそれぞれ用意した。
[実施例1]
まず、イソシアネート基がブロック化されたイソシアネート化合物(ブロックイソシアネート化合物)として、ブロック型イソシアネート溶液(日本ポリウレタン社製、「CORONATE2507」)と、硬化性樹脂として、レゾール樹脂1と、コア粒子として、平均粒子サイズが400μmのフラタリーサンド(砂粒子)とをそれぞれ用意した。
次に、このフラタリーサンド100重量部を100℃に加熱して、ミキサーに投入した後、レゾール樹脂1、5重量部を添加し、120秒間混錬して混練物を得た。次いで、混練物を40℃に冷却した後、0.5重量部のCORONATE2507(ブロックイソシアネート化合物)を混練物に添加し、300秒間混錬を行って、被覆粒子を得た。
なお、表面層は、フラタリーサンドの各粒子の外表面の全体(100%)を覆っており、その平均厚さは、10μmであった。なお、この被覆粒子の表面の状態(表面層の状態)は、光学顕微鏡により観察した。
[実施例2]
硬化性樹脂として、レゾール樹脂1に代えて、フラン樹脂1を用いたこと以外は、前記実施例1と同様にして、被覆粒子を作成した。
硬化性樹脂として、レゾール樹脂1に代えて、フラン樹脂1を用いたこと以外は、前記実施例1と同様にして、被覆粒子を作成した。
[比較例]
イソシアネート基がブロック化されたイソシアネート化合物に代えて、イソシアネート化合物(イソシアネート基がブロック化されていないもの)として、ポリイソシアネート変性体(日本ポリウレタン社製、「CORONATE HX」)を用いたこと以外は、前記実施例1と同様にして、被覆粒子を作成した。
イソシアネート基がブロック化されたイソシアネート化合物に代えて、イソシアネート化合物(イソシアネート基がブロック化されていないもの)として、ポリイソシアネート変性体(日本ポリウレタン社製、「CORONATE HX」)を用いたこと以外は、前記実施例1と同様にして、被覆粒子を作成した。
2.評価
2−1.クラッシュテスト
各実施例および比較例で得られた被覆粒子40gを砂破壊金型(有限会社 オクヤマ金型製作所製)に投入し、回転数14,000psiで昇圧1分、保圧2分とすることにより、クラッシュテストを行った。
2−1.クラッシュテスト
各実施例および比較例で得られた被覆粒子40gを砂破壊金型(有限会社 オクヤマ金型製作所製)に投入し、回転数14,000psiで昇圧1分、保圧2分とすることにより、クラッシュテストを行った。
2−2.流体浸透性
流体浸透性は、図4に示す測定装置を用いて測定した。
流体浸透性は、図4に示す測定装置を用いて測定した。
この測定装置10は、送液可能なポンプ11と、被覆粒子を収納可能であり、かつ、収納された被覆粒子を加圧可能なプレス機12と、ポンプ11とプレス機12とを接続するパイプ13と、プレス機12のポンプ11と反対側に接続されたパイプ14とを備えている。また、パイプ13、14には、その内部を流れる液体の圧力を測定可能な圧力センサ15、16がそれぞれ設けられている。
このような測定装置10では、液体をポンプ11からパイプ13を介してプレス機12に移送し、プレス機12内を通過した液体がパイプ14を介して廃液される。このとき、圧力センサ15、16により、パイプ13、14の内部を流れる液体の圧力を測定し、その圧力差を求めることにより、この圧力差をプレス機12の内部(被覆粒子1の充填部位)の液体浸透性とすることができる。
なお、実際に流体浸透性を測定する際には、液体として、2%塩化カリウム水溶液を用い、ポンプ11から送られる液体の圧力を、10Kpsiに設定した。
これらの結果において、各実施例で得られた被覆粒子では、クラッシュテストによる微粉発生量に違いはなく、また、比較例で得られた被覆粒子とも差がなかった。
一方、各実施例で得られた被覆粒子は、比較例で得られた被覆粒子と比較して、明らかに高い流体浸透性を示す結果となった。
1 被覆粒子
2 コア粒子
3 表面層
10 測定装置
11 ポンプ
12 プレス機
13 パイプ
14 パイプ
15 圧力センサ
16 圧力センサ
91 掘削穴
92 亀裂
L 地下層
P ポンプ
S 地表
2 コア粒子
3 表面層
10 測定装置
11 ポンプ
12 プレス機
13 パイプ
14 パイプ
15 圧力センサ
16 圧力センサ
91 掘削穴
92 亀裂
L 地下層
P ポンプ
S 地表
Claims (19)
- 地下層中に形成された亀裂に充填される粒子の外表面の少なくとも一部を被覆する表面層を形成するために用いられる樹脂組成物であって、
イソシアネート基を有するイソシアネート化合物と、前記イソシアネート基との反応性を備える水酸基を有する硬化性樹脂とを含有し、
前記イソシアネート化合物は、前記イソシアネート基に、該イソシアネート基に対して反応性を有する化合物が結合することでブロック化された状態で存在していることを特徴とする樹脂組成物。 - 前記化合物は、活性水素基を備え、該活性水素基が前記イソシアネート基と反応することで、前記イソシアネート化合物をブロック化する請求項1に記載の樹脂組成物。
- 前記化合物は、フェノール系化合物、ピリジン系化合物、活性メチレン系化合物、メルカプタン系化合物、アミド系化合物、ラクタム系化合物、アゾール系化合物、尿素系化合物、オキシム系化合物、カルバゾール系化合物、モノオール系化合物、モノアミン系化合物およびアミジン系化合物よりなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項2に記載の樹脂組成物。
- 前記化合物は、前記活性水素基の数が、前記イソシアネート化合物の前記イソシアネート基の数を1としたとき、イソシアネート基:活性水素基=1:0.1〜1.9となるように含まれている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 前記イソシアネート化合物は、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート(ポリメリックMDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)およびポリメリックヘキサメチレンジイソシアネート(ポリメリックHDI)よりなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項1ないし4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 前記イソシアネート化合物の含有量は、前記硬化性樹脂100質量部に対して0.1質量部以上、20質量部以下である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 前記硬化性樹脂は、前記イソシアネート化合物の作用により100℃以下の温度で硬化する請求項1ないし6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 前記硬化性樹脂は、自硬化性樹脂である請求項1ないし7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 前記自硬化性樹脂は、フラン樹脂およびレゾール樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項8に記載の樹脂組成物。
- 地下層中に形成された亀裂に充填される複数の被覆粒子であって、
各被覆粒子は、外表面を有するコア粒子と、該コア粒子の前記外表面の少なくとも一部を被覆する表面層とを備え、
前記表面層は、イソシアネート化合物と、水酸基を備える硬化性樹脂とを含有し、
前記イソシアネート化合物は、このものが備えるイソシアネート基が、該イソシアネート基に対して反応性を有する化合物によりブロック化された状態で存在しているものを有することを特徴とする被覆粒子。 - 前記硬化性樹脂は、硬化状態、半硬化状態または未硬化状態である請求項10に記載の被覆粒子。
- 前記表面層の平均厚さは、0.5μm以上、20μm以下である請求項10または11に記載の被覆粒子。
- 前記表面層は、前記コア粒子の前記外表面の50%以上、100%以下を被覆する請求項10ないし12のいずれか1項に記載の被覆粒子。
- 前記複数のコア粒子は、砂粒子およびセラミックス粒子のうちの少なくとも1種を含む請求項10ないし13のいずれか1項に記載の被覆粒子。
- 前記複数のコア粒子の平均粒子サイズは、100μm以上、3,000μm以下である請求項10ないし14のいずれか1項に記載の被覆粒子。
- 地下層中に形成された亀裂に注入される注入剤であって、
請求項10ないし15のいずれか1項に記載の被覆粒子と、
該被覆粒子を分散し、前記被覆粒子を前記亀裂に移送するための流体とを含むことを特徴とする注入剤。 - 前記流体は、溶媒、粘度調整剤、界面活性剤、ブレーカー、粘度安定剤、ゲル化剤および安定剤のうちの少なくとも1つを含む請求項16に記載の注入剤。
- 当該注入剤中に含まれる前記被覆粒子の量は、1重量%以上、99重量%以下である請求項16または17に記載の注入剤。
- 請求項16ないし18のいずれか1項に記載の注入剤を地下層中に形成された亀裂に、前記地下層に至る掘削穴を介して移送し、前記注入剤を前記亀裂に注入することにより、前記粒子を前記亀裂に充填することを特徴とする充填方法。
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