JP2015185306A - 飛行時間型質量分析装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡素な構造で以て、高い質量分解能を維持しつつ検出器へのイオンの到達効率を改善して検出感度を高める。【解決手段】イオンの時間収束性が良好になるように電場が調整されたデュアルステージ式リフレクトロンに対し、第2ステージに形成する電場の電位勾配は変更せず、第1ステージに形成する電場の電位勾配の傾きを大きくする。ただし、第2ステージに隣接する第1ステージの終端領域には電位一定の補助自由空間を設け、その分だけ、第1ステージにおける電位変化開始点をリフレクトロンの入口端に近い位置にずらす。それによって、無電場の自由飛行空間が第1ステージの始端領域まで延長されて自由飛行空間が実質的に延びることによる飛行時間を適切に調整し、第2ステージの電場における折り返し条件を合わせ、時間収束性の低下を抑える。これにより、リフレクトロンを構成する複数の平板電極に印加する電圧を調整するだけで、高い質量分解能を維持しつつイオンの到達効率を改善することができる。【選択図】図2

Description

本発明は飛行時間型質量分析装置(以下「TOFMS」と略す)に関し、さらに詳しくは、イオンの飛行軌道を反転させるリフレクトロン(イオンミラーなどとも呼ばれる)を備えたリフレクトロンTOFMS、及び、リフレクトロンを複数設けることでイオンを多重反射させるようにした多重反射TOFMSに関する。
TOFMSでは一般に、目的化合物由来のイオンに一定の加速エネルギを付与して一定距離である空間を飛行させ、その飛行に要する時間を計測して飛行時間からイオンの質量電荷比を求める。質量電荷比が同じであっても、加速前に個々のイオンが持つ初期エネルギがばらついていると、そのばらつきが飛行速度の相違に反映され、イオン検出器に到達する際に時間ずれが起こる。この時間ずれが質量分解能の低下をもたらす。そのため、TOFMSにおいて高い質量分解能を達成するには、イオンが持つ初期エネルギのばらつきの影響を軽減することが重要である。
上述したようにエネルギにばらつきがある同一質量電荷比のイオンの飛行時間を収束させるには、反射電場によってイオンの飛行軌道を反転させるリフレクトロンが有効である(特許文献1、2など参照)。即ち、リフレクトロンにより形成される反射電場中にイオンが入射すると、同一質量電荷比であっても相対的に大きなエネルギを有するイオンほど奥まで進んで折り返す。そのため、相対的に大きなエネルギを有し飛行速度が速いイオンほど実質的な飛行距離が長くなり、それによって飛行時間のずれが修正される。これにより、リフレクトロンTOFMSでは同一の質量電荷比を有するイオンの時間収束性(又はエネルギ収束性)を高め、質量分解能を改善することができる。もちろん、リフレクトロンTOFMSでは、イオンを直線的に飛行させるリニアTOFMSに比べて、小さな空間でも長い飛行距離を確保することができるので、高い質量分解能や質量精度を確保しながら装置を小型化するのにも有利である。
一般的にリフレクトロンは、一直線上に互いに平行に配列された多数のドーナツ状の平板電極からなる電極群と、該電極群に含まれる各平板電極にそれぞれ所定の直流電圧を印加する電圧源と、を含んで構成される。各平板電極に印加される直流電圧は決まっているので、ネットワーク抵抗などを用いた抵抗分圧回路が電圧源としてよく利用される(特許文献1、2参照)。
最も単純な構造のリフレクトロンは、1段のみの一様電場(つまり中心軸上のポテンシャルが該軸上の距離に比例する電場)を形成するリフレクトロンであり、これはシングルステージ式リフレクトロンと呼ばれる。このシングルステージ式リフレクトロンは設計が容易であるものの、同一質量電荷比を有するイオンの飛行時間の広がりをイオンが持つエネルギの1次微分の項までしか補償することができず、エネルギの2次以上の高次微分の項は補償されない。そのため、高い質量分解能が得られるのは、エネルギ広がりが比較的小さなイオンに対してのみであるという制約がある。
これに対し、中心軸上のポテンシャル分布の勾配が互いに異なる2段の一様電場を形成するリフレクトロンは、デュアルステージ式リフレクトロンと呼ばれる。デュアルステージ式リフレクトロンは、実質的な電場を有さない自由飛行空間中を飛行して来たイオンが最初に入射する第1ステージと、その第1ステージに続く第2ステージとを有し、第1ステージにおける電場強度は第2ステージにおける電場強度よりも強く(つまり、中心軸上のポテンシャル分布の勾配が大きく)なっている。
自由飛行空間からデュアルステージ式リフレクトロンに入射したイオンはまず第1ステージにおける電場により減速され、飛行速度が低下したイオンは次の第2ステージにおいて反射される。そして、第2ステージで反射されたイオンは再び第1ステージを先とは逆方向に通過するが、その際にイオンは入射時とほぼ同じ速度まで加速され自由飛行空間へと戻される。こうしたデュアルステージ式リフレクトロンでは、第1、第2なる2段階のステージにおける電場の作用により、同一質量電荷比を有するイオンの飛行時間の広がりはそのイオンが持つエネルギの2次微分の項まで補償される。その結果、デュアルステージ式リフレクトロンを用いたTOFMSでは、シングルステージ式リフレクトロンを用いたTOFMSよりも、広いエネルギ広がりを持つイオンに対して高い質量分解能を達成することができる。
なお、デュアルステージ式リフレクトロンでは、第1、第2ステージにそれぞれ形成される電場は基本的には一様電場であるが、例えば特許文献3に記載されているように、性能を一層向上させるために、一方又は両方のステージに形成された線形の電場に非線形の補正電場を加えることもある。その場合でも、こうした補正電場は元の一様電場に比べればその電場強度は十分に小さいから、各ステージにおける電場は実質的には一様電場であるということができる。したがって、以下の説明においても、こうした非線形の補正電場が加えられた、厳密に言えば非線形である一様電場も含めて一様電場ということとする。
ところで、TOFMSにおいてパケット状のイオンが飛行空間に入射する際に、そのイオンの入射角度は若干の広がりを有している。そのため、飛行空間中をイオンが飛行するに伴い、イオンはその進行方向に直交する方向に徐々に広がり、飛行距離が長くなるほどその広がりは大きくなる。リフレクトロンは、原理的に、このように進行方向とは直交する方向に広がったイオンを空間的に収束させる作用は有さない。そのため、リフレクトロンTOFMSでは、リニアTOFMSに比べて飛行距離が長くなる分だけ、上記のような空間的なイオンの広がりが大きくなる。その結果、イオンがイオン検出器に到達したときに空間的に広がったイオンの一部がイオン検出器の検出面を外れてしまい、これが検出感度の低下をもたらすという問題がある。
こうした問題の解決策の一つとして、イオンが飛行空間に導入される直前にアインツェルレンズなどのイオン収束レンズを設け、飛行空間に入射するイオンのビーム径を絞ることが考えられる。こうした手法は或る程度有効ではあるものの、イオン収束レンズからイオン検出器に至るまでのイオンの飛行距離は長く、またイオン収束レンズに或る電圧を印加した状態でのイオンの収束の程度はイオンの質量電荷比に依存するため、幅広い質量電荷比を持つイオンの全てについて高いイオン収束性を実現してイオン検出器へのイオンの到達効率を改善するのは困難である。
一方、上述したように、リフレクトロンは原理的にイオンの進行方向と直交する方向へのイオンの広がりを収束する作用は有さないものの、第1ステージと第2ステージとの境界にグリッド電極を設けない、いわゆるグリッドレス構造のデュアルステージ式リフレクトロンでは、両ステージ間の境界における漏れ電場を利用したイオン軌道の収束を行うことができる。即ち、特許文献1に記載されているように、グリッドレス構造のデュアルステージ式リフレクトロンでは、第1ステージと第2ステージとの境界に電場を区画し得るグリッド電極がないために、電場強度がより大きい第1ステージにおける減速電場が第2ステージ側に漏れ出す。この漏れ電場による等電位面は第2ステージ側に膨出して凸レンズの作用を示すため、第1ステージと第2ステージとの境界領域を通過するイオンは凸レンズ作用により偏向され、それによってイオン軌道は収束されることになる。
しかしながら、上述したような第1ステージと第2ステージとの電場強度の相違により生じる、第1ステージから第2ステージへの漏れ電場によるレンズ作用を単に利用しただけでは、飛行距離を長くした場合にイオンを十分に収束させることは難しい。何故なら、漏れ電場による凸レンズの収束作用を強めるためには、第1ステージと第2ステージとの電場強度の差を大きくする、つまり中心軸上のポテンシャル分布の勾配の差を大きくする必要があるが、そのように電場強度を調整しようとすると、実質的な飛行距離が変化することになって同一の質量電荷比を持つイオンの飛行時間のばらつきが大きくなり、質量分解能の低下に繋がるおそれがあるからである。また、上述したように非線形の補正電場を利用している場合、各ステージの電場強度を変更したときに補正電場も併せて変更する必要があり、リフレクトロンの電極群に含まれる各平板電極に印加する電圧の設定が煩雑になる。
また、飛行距離をさらに延ばすために、複数のデュアルステージ式リフレクトロンを対向配置してイオンを複数回反射させるようにした多重反射TOFMSでも、同様の問題がある。
例えば特許文献4には、対向配置したリフレクトロンによりイオンを多重反射させ、鋸歯状の飛行軌道を形成した多重反射TOFMSが開示されている。この多重反射TOFMSでは、イオンが進行するに伴いイオン軌道がその進行方向に直交する方向に徐々に広がってしまう。そのため、この広がりによって反射回数、つまりは飛行距離は制約を受けることになる。
特許文献5に記載の多重反射TOFMSでは、上記問題を解決するために、対向配置したリフレクトロンの間にそれぞれアインツェルレンズであるイオン収束レンズを設け、各イオン収束レンズによって通過するイオンを収束させ、イオン軌道が空間的に広がることを回避している。しかしながら、こうした構造はかなり複雑で部品点数も多くなり、また複数のアインツェルレンズの位置調整などもかなり煩雑であるために、コストの大幅な増加が避けられない。
特表2002−502096号公報 特開2003−151487号公報 国際公開第2012/086630号公報 英国特許公開第2080021号公報 米国特許第7385187号公報
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その主たる目的は、簡素な構造でありながら、高い質量分解能や高い質量精度を維持しつつ、イオン検出器にイオンが到達する効率を改善することにより高い検出感度を達成することができるリフレクトロンTOFMS、及び多重反射TOFMSを提供することにある。
2段の一様電場を用いた一般的なグリッドレス構造のデュアルステージ式リフレクトロンでは、イオンを減速させる第1ステージの領域とイオンを折り返す第2ステージの領域とは隣接しており、リフレクトロンの中心軸上の電位勾配は第1、第2ステージの境界において折れ線状に変化する。特許文献3等に開示されているように、各ステージにおける一様電場による電位勾配の傾斜や第2ステージの一様電場に重畳される補正電場による電位勾配の傾斜の非線形性は、質量分解能を大きく左右する。そのため、デュアルステージ式リフレクトロンを用いた既存のTOFMSでは、リフレクトロンを構成する多数の電極、特に第2ステージを構成する複数の電極、にそれぞれ印加される電圧値が微妙に調整されている。一方で、こうした既存のTOFMSでは、その進行方向に直交する方向のイオンの広がりをリフレクトロンで抑えることは殆ど考慮されていないか、或いは、少なくともリフレクトロンにおけるそうした作用の最適化はなされていない。
グリッドレス構造のデュアルステージ式リフレクトロンでは、第1、第2ステージの境界における電位勾配の変化が大きいほど、第1ステージから第2ステージ側への漏れ電場が大きく、漏れ電場が大きいほど上述した漏れ電場を利用した凸レンズによるイオンの収束作用は強くなる。第1ステージにおける電位勾配は第2ステージにおける電位勾配よりも急であるから、第1、第2ステージの境界における電位勾配の変化を大きくするには、既存のリフレクトロンよりも、第1ステージにおける電位勾配を急にするか、或いは逆に、第2ステージにおける電位勾配を緩くすればよい。ただし、第2ステージの電位勾配を変化させると各電極に印加されている電圧の比率が変わり、質量分解能に大きな影響を与えるおそれがある。そこで、本願発明者は、グリッドレス構造のデュアルステージ式リフレクトロンを用いた既存のTOFMSにおける基本的な構成をできるだけ維持しつつ、リフレクトロンにおけるイオンの収束作用を強めることによって、質量精度や質量分解能などを低下させることなくイオン検出器へのイオンの到達効率を高めることを目標とし、計算機シミュレーションを繰り返して適切な構成を見いだし、本発明を得るに至った。
即ち、上記課題を解決するために成された本発明に係る飛行時間型質量分析装置の第1の態様は、分析対象であるイオンに一定のエネルギを付与して加速するイオン射出部と、該イオン射出部から射出されたイオンを飛行させる実質的な電場を有さない自由飛行空間と、電極部と該電極部に電圧を印加する駆動部とを含み、前記自由飛行空間に隣接する領域において前記電極部により形成される電場の作用によりイオンを反射させるリフレクトロンと、該リフレクトロンで反射され前記自由飛行空間を再び通過して来たイオンを検出するイオン検出器と、を具備する飛行時間型質量分析装置であって、前記リフレクトロンが、前記自由飛行空間から入射したイオンを減速させる作用を有する実質的な一様電場を形成する第1ステージと、該第1ステージで減速されたイオンを折り返す作用を有する実質的な一様電場を形成する第2ステージとを含み、該第1ステージと該第2ステージとの間にグリッド電極を有さないグリッドレス構造のデュアルステージ式リフレクトロンである飛行時間型質量分析装置において、
前記リフレクトロンは、
質量分析に関して所定の性能が得られるように、第1ステージとこれに隣接する第2ステージにおける中心軸上の電位分布が定められてなる状態を基本状態として、
前記第2ステージにおける中心軸上の電位分布は前記基本状態と同一に定められる一方、該第2ステージに隣接する前記第1ステージの終端領域に、中心軸上の電位勾配を有さない所定長さの補助自由飛行空間が設けられるとともに、前記自由飛行空間に隣接する前記第1ステージの始端領域側に中心軸上の電位勾配を有さない自由飛行空間が所定長さだけ延長され、該第1ステージの始端領域及び終端領域で減速領域が短縮する分だけ該第1ステージにおける中心軸上の電位勾配の傾きが前記基本状態における第1ステージの中心軸上の電位勾配の傾きよりも大きくなるように第1ステージにおける中心軸上の電位分布が定められてなり、そうして定められた第1ステージ及び第2ステージにおける中心軸上の電位分布が形成されるべく、前記駆動部が前記電極部に所定の電圧を印加するように構成されてなることを特徴としている。
また、上記課題を解決するために成された本発明に係る飛行時間型質量分析装置の第2の態様は、分析対象であるイオンに一定のエネルギを付与して加速するイオン射出部と、該イオン射出部から射出されたイオンを飛行させる実質的な電場を有さない自由飛行空間と、電極部と該電極部に電圧を印加する駆動部とを含み、前記自由飛行空間に隣接する領域において前記電極部により形成される電場の作用によりイオンを反射させるリフレクトロンと、該リフレクトロンで反射され前記自由飛行空間を再び通過して来たイオンを検出するイオン検出器と、を具備する飛行時間型質量分析装置であって、前記リフレクトロンが、前記自由飛行空間から入射したイオンを減速させる電場を形成する第1ステージと、該第1ステージで減速されたイオンを折り返す作用を有する電場を形成する第2ステージとを含み、該第1ステージと該第2ステージとの間にグリッド電極を有さないグリッドレス構造のデュアルステージ式リフレクトロンである飛行時間型質量分析装置において、
前記リフレクトロンは、
前記第1ステージ及び第2ステージにおいてそれぞれ形成される電場が実質的な一様電場であり、且つ、質量分析に関して所定の性能が得られるように、第1ステージとこれに隣接する第2ステージにおける中心軸上の電位分布が定められてなる状態を基本状態として、
前記第2ステージにおける中心軸上の電位分布は前記基本状態と同一に定められる一方、前記第1ステージにはその中心軸上の電位勾配がイオンの往路において徐々に大きくなる非線形電場が形成されるべく、前記駆動部が前記電極部に所定の電圧を印加するように構成されてなることを特徴としている。
本発明に係る上記第1及び第2の態様において、「基本状態」とは、例えば上述したように高い質量分解能が達成されるようにイオンの時間収束性を良好にするべく、第1ステージ及び第2ステージそれぞれの中心軸上の電位分布が定められてなる状態である。上記第1及び第2の態様のいずれにおいても、リフレクトロンの第2ステージの電極部の構成や該ステージにおける中心軸上の電位勾配は基本状態から変更されない。そのため、例えば第2ステージにおいて一様電場に非線形の補正電場が重畳されていれば、その非線形性は維持される。一方、第1ステージに形成される減速電場は基本状態から変更されるが、上記第1の態様と第2の態様とではその電場が異なる。
即ち、第1の態様では、第1ステージに形成される減速電場は基本的に一様電場であるが、その減速電場における中心軸上の電位勾配の傾きは基本状態におけるそれよりも大きく、つまり電場強度が大きくなっている。第1ステージにおけるイオン減速の程度(具体的には減速後のイオンの速度)を基本状態と同じにしつつ減速電場の電位勾配を大きくするには、実質的な減速領域の長さを短縮すればよいが、自由飛行空間を第1ステージの始端領域側に延ばすことのみによって減速領域の短縮分を補うと、自由飛行空間が延びた分だけ飛行時間が変化し、第2ステージにおけるイオンの折り返し条件が合わなくなる。
これに対し第1の態様による飛行時間型質量分析装置では、第1ステージの始端領域側への自由飛行空間の延長を抑え、その代わりに、第2ステージに隣接する第1ステージの終端領域に所定長さの補助自由飛行空間を設けている。これによって飛行時間を調整し、第2ステージにおけるイオンの折り返し条件を基本状態と合わせることができる。その結果、第1ステージにおける電場強度を変えてもイオンの時間収束性の低下を抑えることができ、高い質量分解能を維持することができる。一方、第1ステージの終端領域に設けられる実質的に電場のない補助自由飛行空間を挟んだその両側の電場の電位勾配の変化は、基本状態に比べて大きくなるので、第1ステージから第2ステージ側への電場の漏れが大きくなる。それにより、両ステージの境界でのイオンの収束作用は強まり、リフレクトロンで折り返されてイオン検出器へと向かうイオンの、その進行方向に直交する方向の広がりを抑えることができる。その結果、イオン検出器の検出面へのイオンの到達効率を高めることができ、従来よりも高い検出感度の達成することができる。
また、第2の態様による飛行時間型質量分析装置では、第1ステージに形成される減速電場は一様電場ではなく、中心軸上の電位勾配が第2ステージに近付くに従い徐々に大きくなる非線形電場とされている。そのため、第2ステージに隣接する第1ステージの終端領域における電位勾配の傾きは基本状態の第1ステージにおける電位勾配の傾きよりも大きくなり、第1ステージと第2ステージとの境界における電位勾配の変化は基本状態よりも大きくなる。それによって、この第2の態様においても上記第1の態様と同様に、両ステージの境界でのイオンの収束作用が強まり、リフレクトロンで折り返されてイオン検出器へと向かうイオンの、その進行方向に直交する方向の広がりを抑えることができる。その結果、イオン検出器の検出面へのイオンの到達効率を高めることができ、従来よりも高い検出感度を達成することができる。
なお、上記第2の態様において、第1ステージの中心軸上の電位勾配は例えば2次曲線形状又は3次曲線形状とすればよい。
また、第1及び第2の態様のいずれにおいても、上記イオン射出部と上記自由飛行空間の入口端との間に、イオン軌道を収束させるイオンレンズをさらに備える構成としてもよい。付加的に設けたイオンレンズとイオン収束作用を有するリフレクトロンとの併用により、イオン検出器へのイオン到達効率を一層高め、検出感度を一層向上させることができる。
また、本発明に係る第1及び第2の態様による飛行時間型質量分析装置はリフレクトロン飛行時間型質量分析装置であるが、それら態様で用いられているデュアルステージ式リフレクトロンを多重反射飛行時間型質量分析装置に適用すれば、多重反射飛行時間型質量分析装置においても、高い質量精度や質量分解能を達成しつつ、イオン検出器の検出面へのイオンの到達効率を改善して、高い検出感度を達成することができる。
即ち、上記課題を解決するために成された本発明に係る飛行時間型質量分析装置の第3の態様は、分析対象であるイオンに一定のエネルギを付与して加速するイオン射出部とイオンを検出するイオン検出器との間に、イオンを飛行させる実質的な電場を有さない自由飛行空間と、電極部と該電極部に電圧を印加する駆動部とを含み、前記自由飛行空間に隣接する領域において前記電極部により形成される電場の作用によりイオンを反射させる複数のリフレクトロンと、を具備し、前記複数のリフレクトロンにより順次反射され、最終段のリフレクトロンで反射され前記自由飛行空間を再び通過して来たイオンを前記イオン検出器により検出する飛行時間型質量分析装置であって、前記複数のリフレクトロンはそれぞれ、前記自由飛行空間から入射したイオンを減速させる作用を有する電場を形成する第1ステージと、該第1ステージで減速されたイオンを折り返す作用を有する電場を形成する第2ステージとを含み、該第1ステージと該第2ステージとの間にグリッド電極を有さないグリッドレス構造のデュアルステージ式リフレクトロンである飛行時間型質量分析装置において、
各リフレクトロンはそれぞれ、
a)前記第1ステージ及び第2ステージにおいてそれぞれ形成される電場が実質的な一様電場であり、且つ、質量分析に関して所定の性能が得られるように、第1ステージとこれに隣接する第2ステージにおける中心軸上の電位分布が定められてなる状態を基本状態として、
前記第2ステージにおける中心軸上の電位分布は前記基本状態と同一に定められる一方、該第2ステージに隣接する前記第1ステージの終端領域に、中心軸上の電位勾配を有さない所定長さの補助自由飛行空間が設けられるとともに、前記自由飛行空間に隣接する前記第1ステージの始端領域側に中心軸上の電位勾配を有さない自由飛行空間が所定長さだけ延長され、該第1ステージの始端領域及び終端領域で減速領域が短縮する分だけ該第1ステージにおける中心軸上の電位勾配の傾きが前記基本状態における第1ステージの中心軸上の電位勾配の傾きよりも大きくなるように第1ステージにおける中心軸上の電位分布が定められてなり、そうして定められた第1ステージ及び第2ステージにおける中心軸上の電位分布が形成されるべく、前記駆動部が前記電極部に所定の電圧を印加するように構成されてなるリフレクトロン、又は、
b)前記第1ステージ及び第2ステージにおいてそれぞれ形成される電場が実質的な一様電場であり、且つ、質量分析に関して所定の性能が得られるように、第1ステージとこれに隣接する第2ステージにおける中心軸上の電位分布が定められてなる状態を基本状態として、
前記第2ステージにおける中心軸上の電位分布は前記基本状態と同一に定められる一方、前記第1ステージにはその中心軸上の電位勾配がイオンの往路において徐々に大きくなる非線形電場が形成されるべく、前記駆動部が前記電極部に所定の電圧を印加するように構成されてなるリフレクトロン、
のいずれかであることを特徴としている。
この第3の態様において、リフレクトロンの数は2以上の任意の数である。
本発明に係る第1乃至第3の態様のいずれにおいても、例えば、上述したように電極部が一直線上に互いに平行に配列された多数の平板電極から構成される場合、従来と同様に、複数の抵抗の抵抗値をそれぞれ適切に調整したネットワーク抵抗を用いた抵抗分圧回路により各平板電極へ直流電圧を印加すればよい。したがって、本発明では、上述したようなイオンの収束作用を高めるために、イオン光学素子や回路などの特段の追加を要しない。このように、本発明に係る飛行時間型質量分析装置によれば、簡素な構造でありながら、つまりコストの増加を抑えながら、高い質量分解能や高い質量精度を保ちつつイオン検出器にイオンが到達する効率を改善して、高い検出感度を達成することができる。
本発明の一実施例(第1実施例)であるリフレクトロンTOFMSの概略構成図。 第1実施例のリフレクトロンTOFMSにおけるリフレクトロンと従来のリフレクトロンTOFMSにおけるリフレクトロンとでの、各平板電極の電位分布の比較を示す図。 第1実施例のリフレクトロンTOFMSと従来のリフレクトロンTOFMSとでの質量電荷比毎のイオンの検出器への到達効率のシミュレーション結果を示す図。 第1実施例のリフレクトロンTOFMSと従来のリフレクトロンTOFMSとでの質量電荷比毎の飛行時間の半値幅のシミュレーション結果を示す図。 第1実施例のリフレクトロンTOFMSと従来のリフレクトロンTOFMSとでの質量電荷比毎のピーク強度増加比のシミュレーション結果を示す図。 リフレクトロンにより形成される電場中の等電位面をシミュレーションした結果を示す図。 イオン飛行軌道のシミュレーション結果を示す図。 本発明の他の実施例(第2実施例)であるリフレクトロンTOFMSにおけるリフレクトロンと従来のリフレクトロンTOFMSにおけるリフレクトロンとでの、各平板電極の電位分布の比較を示す図。 第2実施例のリフレクトロンTOFMSと従来のリフレクトロンTOFMSとでの質量電荷比毎のイオンの検出器への到達効率のシミュレーション結果を示す図。 第2実施例のリフレクトロンTOFMSと従来のリフレクトロンTOFMSとでの質量電荷比毎の飛行時間の半値幅のシミュレーション結果を示す図。 第2実施例のリフレクトロンTOFMSと従来のリフレクトロンTOFMSとでの質量電荷比毎のピーク強度増加比のシミュレーション結果を示す図。 本発明の他の実施例(第3実施例)である多重反射(2回反射)TOFMSにおけるイオン飛行軌道のシミュレーション結果を示す図。 第3実施例の多重反射TOFMSと従来の多重反射TOFMSとでの質量電荷比毎の分解能のシミュレーション結果を示す図。 第3実施例の多重反射TOFMSと従来の多重反射リフレクトロンとでの質量電荷比毎のイオンの検出器への到達効率のシミュレーション結果を示す図。 本発明の他の実施例(第4実施例)である多重反射(6回反射)TOFMSにおけるイオン飛行軌道のシミュレーション結果の一例を示す図。 第4実施例の多重反射TOFMSにおける質量電荷比毎の反射回数と分解能との関係のシミュレーション結果を示す図。 第4実施例の多重反射TOFMSにおける質量電荷比毎の反射回数と飛行時間の半値幅との関係のシミュレーション結果を示す図。
本発明の一実施例(第1実施例)であるリフレクトロンTOFMSについて、添付図面を参照してその構成と動作について説明する。
図1は第1実施例のリフレクトロンTOFMSの概略構成図である。
このリフレクトロンTOFMSは、図1に示すように、マトリクス支援レーザ脱離イオン化(MALDI)法によるイオン化を行うイオン生成部1と、イオン捕捉部2と、イオン導入部3と、質量分析部4と、を備える。
イオン生成部1は、その上面に試料12が付着された導電性のサンプルプレート11と、レーザ光を発するレーザ照射部15と、そのレーザ光を反射して試料12表面に集光する反射鏡16と、パルス状のレーザ光照射により試料12表面近傍で生成されたイオンを引き出すとともに加速する引出し電極13と、引き出されたイオンをさらに加速するとともにイオン光軸C付近に収束させるイオン輸送光学系14と、を含む。試料12は目的物質とマトリクスとが混合され調製されたものである。サンプルプレート11は図示しない試料ステージにより保持されている。この例では、イオン輸送光学系14はイオン光軸Cに沿って並ぶ3段の電極からなる静電レンズである。
イオン捕捉部2は、1個の円環状のリング電極21と、該電極21を挟んで対向して配置された一対のエンドキャップ電極22、23とからなる3次元四重極型のイオントラップを含む。入口側エンドキャップ電極22の略中央にはイオン導入穴24が穿設され、その外側にはイオン導入穴24付近の電場の乱れを補正するための入口側電場補正用電極26が配設されている。一方、出口側のエンドキャップ電極23の略中央には、イオン導入穴24とほぼ一直線上にイオン導出穴25が穿設されている。なお、図示しないが、イオン捕捉部2には、必要に応じてイオントラップの内部に不活性なクーリングガスや衝突誘起解離(CID)のためのCIDガスを導入するガス供給部が設けられている。
質量分析部4は、直線的である自由飛行空間42とイオンが折り返し飛行する折り返し飛行空間43とを内部に形成するフライトチューブ41と、中央にイオンが通過する円形開口が形成された多数の平板電極からなるイオンミラー電極群44と、イオンミラー電極群44の最終段の平板電極の後方に配置されるバックプレート45と、フライトチューブ41内の空間42、43を折返し飛行したイオンが最終的に到達するイオン検出器46と、を含む。なお、この例では、直線的に飛行したイオンを検出するリニアモードでの動作も可能であるようにバックプレート45に円形開口が形成されているが、リフレクトロンモードのみの動作を行う場合には、バックプレート45の円形開口は不要である。
また、イオン捕捉部2と質量分析部4との間に配置されたイオン導入部3は、アインツェルレンズであるイオン収束レンズ31を含む。
また、本実施例のリフレクトロンTOFMSは、制御系として、引出し電圧発生部51、輸送電圧発生部52、トラップ電圧発生部53、収束電圧発生部54、リフレクトロン電圧発生部55、及び、分析を行う際に各電圧発生部51〜55やレーザ照射部15などを制御する制御部56、を備える。引出し電圧発生部51は、サンプルプレート11と引出し電極13とにそれぞれ所定の電圧を印加することにより、両者の間の空間に試料12近傍からイオンを引き出して加速する電場を形成する。輸送電圧発生部52はイオン光軸Cに沿って配列されたイオン輸送光学系14の少なくとも一段の電極に所定の電圧を印加し、イオンをイオン導入穴24付近でイオン光軸Cに収束させるための電場を形成する。トラップ電圧発生部53は電極21、22、23に高周波電圧、直流電圧、又はその両方を印加し、それにより形成される電場によりイオンをイオントラップ内部に閉じ込めたり、特定のイオンを選択的に共鳴励振させたり、或いは、捕捉されているイオンに運動エネルギを付与してイオントラップ内部から射出させたりする。
図1では記載を省略しているが、イオン検出器46による検出信号は図示しないデータ処理部に入力され、データ処理部においてマススペクトル作成などの所定のデータ処理が実行される。
また、こうしたデータ処理部や制御部56の機能の少なくとも一部は、パーソナルコンピュータに予めインストールされた専用の制御・処理ソフトウエアを該コンピュータ上で実行することにより具現化することができる。
本実施例のリフレクトロンTOFMSによりMSn分析を実行する際の概略動作を説明する。
制御部56からの指示を受けてレーザ照射部15は、短時間レーザ光を出射する。このレーザ光が試料12に照射されると、該試料12中の目的物質はイオン化される。発生したイオンは、引出し電圧発生部51から引出し電極13及びサンプルプレート11に印加されている電圧により形成される電場により引き出され、さらに輸送電圧発生部52からイオン輸送光学系14に印加されている電圧により形成される電場により収束されつつ送り出される。
収束されたイオンはイオン導入穴24を通してイオントラップ内に導入される。このとき、トラップ電圧発生部53はリング電極21に所定の高周波高電圧を印加するとともに、エンドキャップ電極22、23にイオン入射のタイミングに合わせて適宜の直流電圧を印加し、導入されたイオンを内部に捕捉する。その後、例えばイオントラップ内にクーリングガスを導入して所定時間、イオンのクーリングを行った後、共鳴励起排出を利用した特定の質量電荷比を有するイオンの選択(プリカーサイオン選択)、CIDガスの導入と共鳴励起によるCID操作、を任意の回数(通常最大でも数回程度)繰り返し、CID操作により生成されたプロダクトイオンをイオントラップ内部に捕捉する。
分析対象であるプロダクトイオンをイオントラップ内部に捕捉し十分なクーリングを行ったあと、トラップ電圧発生部53はエンドキャップ電極22、23に所定の直流電圧を印加する。この直流電圧により形成される電場によってイオントラップ内に捕捉されていたイオンには運動エネルギが付与され、それらイオンは一斉に加速されてイオン導出穴25を通して射出される。射出されたイオンは、収束電圧発生部54からイオン収束レンズ31に印加されている電圧により形成される電場により収束され、フライトチューブ41内の自由飛行空間42に送り込まれる。
リフレクトロン電圧発生部55はイオンミラー電極群44の各平板電極にそれぞれ所定の直流電圧を印加する。それによってイオンミラー電極群44の内側の折り返し飛行空間43には、イオンを押し戻すような反射電場が形成される。フライトチューブ41内で自由飛行空間42をイオン光軸Cに沿ってほぼ直線的に飛行して来たイオンは、折り返し飛行空間43において反射電場により折り返され、再び自由飛行空間42を飛行して最終的にイオン検出器46に到達する。このようにイオンが折り返し飛行する間に、各イオンは質量電荷比に応じてその進行方向に分離され、異なる飛行時間を以てイオン検出器46に入射する。図示しないデータ処理部は、検出信号に基づいて、イオントラップからのイオンの射出タイミングを起点とした飛行時間とイオン強度との関係を示す飛行時間スペクトルを作成し、予め求めておいた質量校正情報を参照して飛行時間を質量電荷比に換算することにより、飛行時間スペクトルからマススペクトルを求める。
本実施例のリフレクトロンTOFMSにおいて、イオンミラー電極群44、バックプレート45、及びリフレクトロン電圧発生部55、を含むリフレクトロンは、デュアルステージ式リフレクトロンである。このリフレクトロンは、自由飛行空間42を通って到来したイオンを減速させる減速電場を形成する第1ステージと、該第1ステージで減速されたイオンをその速度がゼロになるまで減速して反射させる反射電場を形成する第2ステージと、を有する。各ステージにおいて、イオンミラー電極群44に含まれる複数の平板電極の中心軸上(以下「中心軸」とは平板電極の中心軸のことをいう)の電位勾配は、その複数の平板電極にそれぞれ印加される直流電圧の値で決まる。通常、このそれぞれの電圧値は設計上決まっており変化させる必要はないから、リフレクトロン電圧発生部55はそれぞれの抵抗値が適宜に調整されたネットワーク抵抗を用いた抵抗分圧回路を含み、その抵抗分圧回路により生成した直流電圧を各平板電極に印加する構成とすることができる。
本実施例のリフレクトロンTOFでは、リフレクトロンにより形成される電場の中心軸上の電位勾配、換言すれば、その電場中の等電位面の形状が従来とは異なる特徴的なものとなるように、リフレクトロン電圧発生部55からイオンミラー電極群44の各平板電極に印加される電圧の値が設定されている。
以下、リフレクトロンTOFMSにおける性能等のシミュレーション結果を説明しながら、本実施例のリフレクトロンTOFMSにおけるリフレクトロンにより形成される電場の特徴を従来のリフレクトロンTOFMSにおけるリフレクトロンにより形成される電場と比較して述べる。
図2は本実施例のリフレクトロンTOFMSにおけるリフレクトロンと従来のリフレクトロンTOFMSにおけるリフレクトロンとでの、各平板電極の電位分布の比較を示す図、図3〜図5はそれぞれ、本実施例のリフレクトロンTOFMSと従来のリフレクトロンTOFMSとでの質量電荷比毎のイオンの検出器への到達効率のシミュレーション結果、質量電荷比毎の飛行時間の半値幅(FWHM)のシミュレーション結果、及び、質量電荷比毎のピーク強度増加比のシミュレーション結果、を示す図である。また、図6はリフレクトロンにより形成される電場中の等電位面をシミュレーションした結果を示す図であり、図7はイオン飛行軌道のシミュレーション結果を示す図である。
上記計算機シミュレーションでは、イオンミラー電極群44は等間隔で配置された46枚の平板電極からなるものとした。ただし、便宜上、図2では、イオンミラー電極群44の1番目の(自由飛行空間42に最も近い位置にある)平板電極を電極番号#2とし、フライトチューブ41自体を電極番号#1、バックプレート45を電極番号#48としている。つまり、平板電極に付された電極番号は#2〜#47である。
なお、各ステージ全体の電位差は各イオンのピークの半値幅ができるだけ小さくなるように調整されており、第2ステージにおける各平板電極の電位は予め定められた平板電極間の抵抗値(実機の値)に基づいて決定されている。
またシミュレーションの条件としては、イオンの質量電荷比が、500、1000、2000、3000、4000、5000[Da]であるものとし、各質量電荷比のイオンについて5000個の軌道を調べて検出器への到達効率などを計算した。また、イオントラップ内においてイオンは、射出直前まで±1[kV]、550[kHz]の矩形波高電圧がリング電極に印加されることで形成される電場により捕捉(低質量カットオフLMCO=m/z 453.6)されて十分にクーリングを受けているものと想定した。
図2中に「normal」として示した電位勾配は、質量精度や質量分解能が良好になるように調整された従来のリフレクトロンTOFMSにおけるリフレクトロンでの平板電極の電位分布である。電極番号#2である平板電極から電極番号#19である平板電極までの領域が第1ステージであり、電極番号#19である平板電極から電極番号#48であるバックプレート45までの領域が第2ステージである。図示するように、第1ステージ、第2ステージともに、電位勾配は実質的に直線状となっており、第1ステージにおける電位勾配の傾きは第2ステージにおける電位勾配の傾きよりも大きくなっている。そして、両ステージの境界に位置する電極番号#19である平板電極において、電位勾配の傾きは折れ線状に変化している。これが一般的なデュアルステージ式リフレクトロンの電位分布である。
なお、厳密にいえば、同一質量電荷比を有するイオンの時間収束性を高めるために、第2ステージの電場は一様電場に非線形の補正電場が重畳されたものとなっており、それによって、第2ステージにおける電位勾配はバックプレート45に向かって僅かずつ勾配の増加率が大きくなる非線形状を呈している。ただし、その電位勾配の増加は一様電場の電位勾配に比べてごく僅かであり、実質的には第2ステージにおける電位勾配も直線状であるとみなし得る。
図7(a)は上述した従来のリフレクトロンTOFMSにおけるイオン軌道をシミュレーションした結果である。この結果から、リフレクトロンに入射したイオンは折り返したあとに徐々にその軌道が広がっていくことが分かる。そのため、イオンの一部はイオン検出器に入射せず、その分だけ検出感度の低下を招くことになる。
図3に示したように、従来のリフレクトロンTOFMSにおけるリフレクトロンでは、LMCOに近い低質量電荷比領域における検出器へのイオンの到達効率は90%以上である。しかしながら、質量電荷比が高くなるに従い到達効率は大幅に下がり、質量電荷比が5000[Da]であるイオンでは50%以下になってしまう。
このリフレクトロンでは第1ステージと第2ステージとの境界にグリッド電極が無いため、図6(a)に示すように、電場強度が相対的に大きい第1ステージ側の電場が第2ステージ側に漏れ、等電位面が凸状に膨出する。そのため、この漏れ電場はイオンに対する凸レンズの作用を有する。リフレクトロンにおいてイオンの軌道の曲がりを大きくすることで収束性を高めるには、第1ステージと第2ステージとの境界での電場の漏れを大きくし上記レンズ作用を強めればよく、そのためにはその境界における電位勾配の変化をより大きくすればよい。これは、第1ステージの電位勾配を急にする又は第2ステージの電位勾配を緩やかにするように、イオンミラー電極群44に含まれる平板電極への印加電圧を調整すれば実現可能である。しかしながら、上述したように、第2ステージの電位勾配は、イオン検出器46へのイオン到達時間が時間収束するように微妙に調整されており、各平板電極間の電位差の比率を変更してしまうと質量分解能に大きな影響を与える。そこで、第2ステージの電位勾配を変更することなく、第1ステージにおける電場の電位分布のみを調整することで、第1ステージから第2ステージ側への電場の漏れを大きくしイオン軌道の収束性を高め、イオン検出器46へのイオンの到達効率を改善する試みを行った。
ただし、第1ステージにおける電位分布のみを変更する場合であっても、第2ステージにおける電場も影響を受けて質量分解能が悪化するおそれがある。そこで、シミュレーション計算によりイオン検出器へのイオンの到達効率を調べるとともに、イオンの飛行時間の半値幅も計算し、その半値幅の広がりの質量分解能への影響を調べるために、基準とするピーク強度に対するピーク強度の増加度合いも計算した。
図2中に「Linear」として示した電位勾配は、「normal」として示した従来のリフレトロンに対し、第1ステージと第2ステージとの境界での電位勾配の変化を大きくするために、第1ステージにおいて電位が変化し始める平板電極を電極番号#2から電極番号#8に変更した場合の電位勾配である。この場合、実質的に減速電場が形成される領域が短くなり、第1ステージにおける電場(減速電場)の強度は従来のリフレクトロンにおける電場強度のおおよそ2倍となる。
図3に示すように、上述したごとく第1ステージにおける電位変化開始位置を後方にずらして電位勾配の傾きを急にすることで、5000[Da]の質量電荷比におけるイオンの検出器への到達効率を50%以下から80%程度まで高めることができる。
また、図6(b)に示すように、第1ステージにおける電位勾配の傾きを大きくしたことで、第1ステージと第2ステージとの境界における、第1ステージから第2ステージ側への電場の漏れが大きくなり、等電位面の膨出度合が大きくなっていることが分かる。このことから、この境界での凸レンズの作用が大きくなっていることが分かる。また、図7(b)を見れば、リフレクトロンでのイオンの軌道の収束性が高まり、折り返し後のイオンの広がりが抑えられていることが分かる。
しかしながら、図4に示すように、「Linear」では飛行時間の半値幅が全体的に「normal」の1.5倍に広がっており、質量分解能が悪化している。これは次の理由による。即ち、上記「Linear」では電位の変化開始位置が従来の「normal」よりもリフレクトロンの入口端から遠い位置となる。ここでは、リフレクトロンの相対的な位置は変更しないことを前提としているため、リフレクトロンにおける電位の変化開始位置が上記のようにずれると、その分だけイオンの自由飛行空間42が実質的に長くなり、飛行時間も変化する。その結果、第2ステージでの電位勾配の調整(具体的には非線形状である補正電場の重畳)によるイオンの時間収束の効果が十分に発揮されなくなり、飛行時間の半値幅の広がりをもたらす。
そこで、「Linear」における自由飛行空間42の延長の影響を緩和するように、第2ステージに隣接する第1ステージの終端領域に、中心軸上の電位の変化が無い補助自由飛行空間を設けることを考えた。図2に「Linear modified」として示したのがその電場の電位勾配であり、図2中にSで示した電極番号#17〜#19の間がその補助自由飛行空間である。また、補助自由空間を設けた分だけ、第1ステージの電位変化開始点を入口側にずらすので、図2中にPで示した範囲が自由飛行空間42が第1ステージの始端領域中に延びた範囲である。さらにまた、図2中にQで示した範囲が電位勾配が直線状である一様電場の範囲である。このような補助自由飛行空間により飛行時間の調整を行い、第2ステージでの電位勾配の調整によるイオンの時間収束の効果が十分に発揮されるようにしている。
図3に示すように、「Linear modified」では「Linear」に比べれば検出器へのイオン到達効率は若干下がっているものの、5000[Da]の質量電荷比のイオンでも80%に近い検出効率が得られている。一方、図4に示すように、「Linear modified」ではどの質量電荷比においてもピークの広がり(「normal」との半値幅の差)は0.5[ns]以下に抑えられている。これが、第1ステージの終端領域に設けられた補助自由飛行空間の効果である。
以上のシミュレーション結果から、第1ステージにおける電位勾配を従来のデュアルステージ式リフレクトロンにおける第1ステージの電位勾配から変更すると、検出器へのイオン到達効率が向上する一方、質量分解能は悪化することが判明した。そこで、リフレクトロンの第1ステージにおける電場を「normal」とし且つイオン収束レンズ31でのイオン収束を行わない状態を基本的な状態としたときに、イオン収束レンズ31でのイオン収束を行った状態での「normal」、「Linear」、及び「Linear modified」でそれぞれピーク強度がどの程度変化するのかを計算した。具体的には、上述した各質量電荷比のイオンについて5000個の軌道を調べ、検出器へのイオン到達時間分布を0.5[ns]で積算したときのピーク強度を求め、そのピーク強度の増加比を計算したものである。その結果が図5である。
図5から分かるように、2000[Da]以下の低質量電荷比領域では、イオン収束レンズ31でのイオン収束作用が十分に機能しており、また第1ステージにおける電位勾配が大きくなるときに飛行時間の半値幅が広がる影響が現れるために、ピーク強度の増加割合は「Linear」や「Linear modified」よりも「normal」のほうが大きくなっている。しかしながら、2000[Da]以上の高質量電荷比範囲では、飛行時間の半値幅の広がりが相対的に小さく、検出器へのイオン到達効率も「normal」より向上している「Linear modified」の方がピーク強度増加比が高くなっている。
以上の結果から、検出器へのイオン到達効率だけでなく、質量分解能やピーク強度増加比なども考慮に入れると、第1ステージにおける電場の電位勾配を直線状としたい場合には、その電位変化の開始点を単に第1ステージの後方側へとずらずのではなく、第2ステージに隣接する第1ステージの終端領域に電位勾配がない(電位勾配が平坦である)補助自由飛行空間を設ける「Linear modified」が有効であると結論付けることができる。
この第1実施例のリフレクトロンTOFMSでは、リフレクトロン電圧発生部55においてネットワーク抵抗の各抵抗値を調整することで、第1ステージの領域に対応するイオンミラー電極群44の各平板電極の電位が図2中に「Linear modified」で示した電位となるように、それぞれの印加電圧を調整する。この場合、自由飛行空間42が第1ステージの始端領域中に延びていることで、電極番号#2〜#6の平板電極の電位はフライトチューブ41と同電位としておけばよくなり、これら電極番号を持つ平板電極は実質的には不要である。したがって、これら平板電極は除去することができ、イオンミラー電極群44は等間隔で配置された41枚の平板電極からなるものとすればよい。なお、第2ステージには、従来と同様の、一様電場に非線形形状の補正電場を重畳した電場が形成されるように、それぞれの平板電極に適当な電圧を印加すればよい。
以上のように、本実施例のリフレクトロンTOFMSは、従来のリフレクトロンTOFMSにおけるリフレクトロンと実質的に同じ電極配置で、第1ステージを構成する各平板電極に印加する電圧値を変更するだけで、リフレクトロンにおけるイオンの収束作用を強め、イオン検出器46にイオンが到達する効率を向上させることができる。また、第2ステージの各平板電極に印加する電圧は従来と同じにしたままで、高い質量分解能を確保することができる。
次に、本発明の他の実施例(第2実施例)であるリフレクトロンTOFMSについて説明する。この第2実施例のリフレクトロンTOFMSの概略構成は第1実施例と同じであり、リフレクトロン電圧発生部55からイオンミラー電極群44の各平板電極に印加する電圧の値だけが第1実施例とは相違する。
上述したように、リフレクトロンにおいてイオンの軌道の曲がりを大きくして収束性を高めるには、第1ステージと第2ステージとの境界での電位勾配の変化を大きくすればよい。第1実施例では、第1ステージにおける電場を一様電場にするという制約を課していたが、第1ステージにおける電位勾配の形状を例えば2次曲線や3次曲線などの非線形形状とすれば、第1ステージと第2ステージとの境界近傍における第1ステージ側の電位勾配はその勾配が直線のときよりも必ず大きくなる。そこで、第1実施例と同様に、シミュレーション計算によって、第1ステージの電位勾配を非線形形状にする場合の、イオン検出器46へのイオン到達効率、飛行時間の半値幅、ピーク強度増加比を求めた。シミュレーションの条件は第1実施例と同じである。
図8は第2実施例のリフレクトロンTOFMSにおけるリフレクトロンと従来のリフレクトロンTOFMSにおけるリフレクトロンとでの、各平板電極の電位分布の比較を示す図、図9〜図11はそれぞれ、第2実施例のリフレクトロンTOFMSと従来のリフレクトロンTOFMSとでの質量電荷比毎のイオンの検出器への到達効率のシミュレーション結果、質量電荷比毎の飛行時間の半値幅のシミュレーション結果、及び、質量電荷比毎のピーク強度増加比のシミュレーション結果、を示す図である。
図8において、「Quadratic」及び「Cubic」はそれぞれ、第1ステージにおける電位変化開始位置を「normal」と同じとし、第1ステージ中の電位勾配を2次曲線形状及び3次曲線形状としたものである。また「Quadratic modified」は、第1ステージにおける電位変化開始位置を電極番号#11に変更し、電位勾配を2次曲線形状としたものである。
図9に示すように、「Quadratic」、「Cubic」、及び「Quadratic modified」のいずれにおいても、「normal」に比べて高いイオン到達効率が得られている。特に「Quadratic modified」と「Cubic」はいずれも非常に高いイオン到達効率となっており、質量電荷比の変化に対するイオン到達効率の変化もほぼ同じ傾向である。これは、3000〜5000[Da]の質量電荷比におけるイオン到達効率において100%から低下している分は、イオントラップからのイオン引き出しの際にエンドキャップ電極23に衝突して消失するイオンが占めており、それ以外のイオンは殆どイオン検出器46に到達しているからであると推測できる。
一方、図10に示すように、「Quadratic modified」はいずれの質量電荷比でも飛行時間の半値幅は0.5[ns]以下に収まっている。また、「Quadratic」は「Quadratic modified」よりもさらに半値幅が抑えられており、質量電荷比によっては「normal」と同等のレベルである。このように、飛行時間の半値幅、つまりは質量分解能の観点からは、第1ステージにおける電位勾配を3次曲線形状とするよりも2次曲線形状としたほうが適当であるということができる。
図11に示したピーク強度増加比をみると、「Quadratic」が最も良好であり、常に「normal」を上回る。また、「Quadratic modified」も1000[Da]の質量電荷比以外では「normal」を上回る。「Cubic」は低質量電荷比領域では「normal」を若干下回るものの、高質量電荷比を中心として全体としては「normal」を上回っており、少なくともイオン収束レンズのみを利用した場合に比べれば、質量分解能の低下の程度に比べて検出感度の向上の度合いが上回り、性能改善に有効な方法であることが分かる。
こうしたことから、第2実施例のリフレクトロンTOFMSでは、リフレクトロン電圧発生部55においてネットワーク抵抗の各抵抗値を調整することで、第1ステージに対応するイオンミラー電極群44の各平板電極の電位が図8中に「Quadratic」又は「Quadratic modified」で示した電位となるように、それぞれの印加電圧を調整する。「Quadratic modified」の場合には、自由飛行空間42が第1ステージの始端領域中に延びていることで、電極番号#2〜#9の平板電極の電位はフライトチューブ41と同電位としておけばよくなり、これら電極番号を持つ平板電極は実質的には不要である。したがって、これら平板電極は除去することができ、イオンミラー電極群44は等間隔で配置された38枚の平板電極からなるものとすればよい。
なお、第1、第2実施例で説明したシミュレーション計算の結果は、イオンがフライトチューブ41に入射する直前にイオン収束レンズ31によりイオンの収束を行ったときの結果であるが、イオン収束レンズ31を使用しない場合であっても、つまりフライトチューブ41へのイオン導入直前にイオンの収束を行わない場合であっても、リフレクトロンの効果のみによってイオン検出器46へのイオンの到達効率を向上させることは可能である。ただし、イオン収束レンズ31でイオン収束を行わない場合には、飛行時間の半値幅の広がりが大きくなる傾向にある。これはリフレクトロンによってイオン軌道の収束はなされるものの、リフレクトロンにイオンが入射する前に軌道の広がりによって飛行時間にばらつきが生じており、リフレクトロンではそのばらつきを補正することできないためであると推測できる。そのため、好ましくは、イオン収束レンズ31でフライトチューブ41への入射前のイオンの軌道が広がらないようにその軌道を収束した上で、上述したようにリフレククトロンにおいて漏れ電場によるイオンの軌道の曲げ作用を利用してイオンを収束させるようにするとよい。
続いて、本発明に係る多重反射TOFMSの実施例について説明する。
多重反射TOFMSは、複数のリフレクロンによってイオンを複数回反射させて最終的にイオン検出器に入射させるものである。したがって、その複数のリフレクトロンに上述したようなイオンの収束作用を従来よりも高めたリフレクトロンを使用することで、最終的なイオン検出器へのイオンの到達効率を高めることができることは容易に推測し得る。リフレクトロンとしては、第1実施例、第2実施例のいずれのリフレクトロンTOFMSで使用されているリフレクトロンを用いてもよい。もちろん、第1ステージにおける電場の電位勾配を直線状としたリフレクトロンと第1ステージにおける電場の電位勾配を2次曲線形状又は3次曲線形状としたリフレクトロンとが混在しても構わない。
図12は2回反射の多重反射TOFMSにおけるイオン軌道をシミュレーションした結果を示す図であり、(a)は全体図、(b)は一部拡大図である。この図に示した符号は図1中の符号に対応している。この多重反射TOFMSでは、イオンミラー電極群44A、44Bを含む2つのリフレクトロンは自由飛行空間42を挟んで対向して配置されておいる。そして、イオン捕捉部2のイオントラップから射出され、イオン収束レンズ31を経て自由飛行空間42に入射したイオンは、第1のイオンミラー電極群44Aを含む第1のリフレクトロンで折り返される。そして、自由飛行空間42を通過したイオンは第2のイオンミラー電極群44Bを含む第2のリフレクトロンで折り返され、再び自由飛行空間42を通過してイオン検出器46に到達する。
図13は、図12に示した多重反射TOFMSにおける質量電荷比毎の質量分解能をシミュレーションした結果を示す図、図14は質量電荷比毎のイオン検出器へのイオンの到達効率をシミュレーションした結果を示す図である。図13、図14ともに、「normal」は従来のリフレクトロンを用いた場合、「modified」は第1実施例で説明した「Linear Modified」の電場を持つリフレクトロンを用いた場合の質量分解能を示している。また、「1 turn」は1回反射した状態の結果、「2 turns」は2回反射してイオン検出器に到達したときの結果である。
「1 turn」の結果と「2 turns」との結果を比較すれば分かるが、当然のことながら、「normal」、「modified」のいずれでも、イオンを2回反射させることで飛行距離が延び、質量分解能が大幅に向上する。一方、「normal」の場合の「2 turns」は、飛行距離が延びた分だけイオンの広がりも大きくなるため、「1 turn」の場合よりも検出器へのイオンの到達効率が大幅に低下している。これに対し、「modified」の「2 turns」では、各リフレクトロンにおいてイオンの軌道が収束されるため、「modified」の「1 turn」とほぼ同程度のイオン到達効率が達成されている。
図15は、さらにリフレクトロンの数を増やした6回反射の多重反射TOFMSにおけるイオン軌道をシミュレーションした結果を示す図である。また、図16はこの多重反射TOFMSにおけるイオンの反射回数に対する質量分解能の変化のシミュレーション結果、図17はイオンの反射回数に対する飛行時間の半値幅の変化のシミュレーション結果を示す図である。反射回数の増加に伴い飛行距離は延び、質量分解能は向上していくが、高質量電荷比では質量分解能の改善効果に飽和の傾向がみられる。逆に、反射回数の増加に伴い飛行時間の半値幅は広がり、特に高質量電荷比では4回以上の反射で、半値幅の広がりが急に大きくなることが分かる。こうしたことから、多重反射TOFMSにおける反射回数は3回程度で十分であるということができるが、いずれにしても、上記リフレクトロンを用いた多重反射TOFMSは、複数のリフレクトロンの間を飛行する経路上にイオン収束レンズを設けることなく、リフレクトロンによるイオン収束作用を利用して検出器へのイオン到達効率を向上させることができる。
なお、上記実施例はいずれも本発明の一例にすぎず、本発明の趣旨の範囲で適宜、変形、追加、修正を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは当然である。
1…イオン生成部
11…サンプルプレート
12…試料
13…引出し電極
14…イオン光学系
15…レーザ照射部
16…反射鏡
2…イオン捕捉部
21…リング電極
22…入口側エンドキャップ電極
23…出口側エンドキャップ電極
24…イオン導入穴
25…イオン導出穴
26…入口側電場補正用電極
3…イオン導入部
31…イオン収束レンズ
4…質量分析部
41…フライトチューブ
42…自由飛行空間
43…折り返し飛行空間
44、44A、44B、44C、44D、44E、44F…イオンミラー電極群
45…バックプレート
46…イオン検出器
51…引出し電圧発生部
52…輸送電圧発生部
53…トラップ電圧発生部
54…収束電圧発生部
55…リフレクトロン電圧発生部
56…制御部
C…イオン光軸

Claims (5)

  1. 分析対象であるイオンに一定のエネルギを付与して加速するイオン射出部と、該イオン射出部から射出されたイオンを飛行させる実質的な電場を有さない自由飛行空間と、電極部と該電極部に電圧を印加する駆動部とを含み、前記自由飛行空間に隣接する領域において前記電極部により形成される電場の作用によりイオンを反射させるリフレクトロンと、該リフレクトロンで反射され前記自由飛行空間を再び通過して来たイオンを検出するイオン検出器と、を具備する飛行時間型質量分析装置であって、前記リフレクトロンが、前記自由飛行空間から入射したイオンを減速させる作用を有する実質的な一様電場を形成する第1ステージと、該第1ステージで減速されたイオンを折り返す作用を有する実質的な一様電場を形成する第2ステージとを含み、該第1ステージと該第2ステージとの間にグリッド電極を有さないグリッドレス構造のデュアルステージ式リフレクトロンである飛行時間型質量分析装置において、
    質量分析に関して所定の性能が得られるように、第1ステージとこれに隣接する第2ステージにおける中心軸上の電位分布が定められてなる状態を基本状態として、
    前記第2ステージにおける中心軸上の電位分布は前記基本状態と同一に定められる一方、該第2ステージに隣接する前記第1ステージの終端領域に、中心軸上の電位勾配を有さない所定長さの補助自由飛行空間が設けられるとともに、前記自由飛行空間に隣接する前記第1ステージの始端領域側に中心軸上の電位勾配を有さない自由飛行空間が所定長さだけ延長され、該第1ステージの始端領域及び終端領域で減速領域が短縮する分だけ該第1ステージにおける中心軸上の電位勾配の傾きが前記基本状態における第1ステージの中心軸上の電位勾配の傾きよりも大きくなるように第1ステージにおける中心軸上の電位分布が定められてなり、そうして定められた第1ステージ及び第2ステージにおける中心軸上の電位分布が形成されるように、前記駆動部は前記電極部に所定の電圧を印加することを特徴とする飛行時間型質量分析装置。
  2. 分析対象であるイオンに一定のエネルギを付与して加速するイオン射出部と、該イオン射出部から射出されたイオンを飛行させる実質的な電場を有さない自由飛行空間と、電極部と該電極部に電圧を印加する駆動部とを含み、前記自由飛行空間に隣接する領域において前記電極部により形成される電場の作用によりイオンを反射させるリフレクトロンと、該リフレクトロンで反射され前記自由飛行空間を再び通過して来たイオンを検出するイオン検出器と、を具備する飛行時間型質量分析装置であって、前記リフレクトロンが、前記自由飛行空間から入射したイオンを減速させる電場を形成する第1ステージと、該第1ステージで減速されたイオンを折り返す作用を有する電場を形成する第2ステージとを含み、該第1ステージと該第2ステージとの間にグリッド電極を有さないグリッドレス構造のデュアルステージ式リフレクトロンである飛行時間型質量分析装置において、
    前記第1ステージ及び第2ステージにおいてそれぞれ形成される電場が実質的な一様電場であり、且つ、質量分析に関して所定の性能が得られるように、第1ステージとこれに隣接する第2ステージにおける中心軸上の電位分布が定められてなる状態を基本状態として、
    前記第2ステージにおける中心軸上の電位分布は前記基本状態と同一に定められる一方、前記第1ステージにはその中心軸上の電位勾配がイオンの往路において徐々に大きくなる非線形電場が形成されるように、前記駆動部は前記電極部に所定の電圧を印加することを特徴とする飛行時間型質量分析装置。
  3. 請求項2に記載の飛行時間型質量分析装置であって、
    前記第1ステージには、中心軸上の電位勾配が2次曲線状又は3次曲線状である非線形電場が形成されてなることを特徴とする飛行時間型質量分析装置。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の飛行時間型質量分析装置であって、
    前記イオン射出部と前記自由飛行空間の入口端との間に、イオン軌道を収束させるイオンレンズをさらに備えることを特徴とする飛行時間型質量分析装置。
  5. 分析対象であるイオンに一定のエネルギを付与して加速するイオン射出部とイオンを検出するイオン検出器との間に、イオンを飛行させる実質的な電場を有さない自由飛行空間と、電極部と該電極部に電圧を印加する駆動部とを含み、前記自由飛行空間に隣接する領域において前記電極部により形成される電場の作用によりイオンを反射させる複数のリフレクトロンと、を具備し、前記複数のリフレクトロンにより順次反射され、最終段のリフレクトロンで反射され前記自由飛行空間を再び通過して来たイオンを前記イオン検出器により検出する飛行時間型質量分析装置であって、前記複数のリフレクトロンはそれぞれ、前記自由飛行空間から入射したイオンを減速させる作用を有する電場を形成する第1ステージと、該第1ステージで減速されたイオンを折り返す作用を有する電場を形成する第2ステージとを含み、該第1ステージと該第2ステージとの間にグリッド電極を有さないグリッドレス構造のデュアルステージ式リフレクトロンである飛行時間型質量分析装置において、
    各リフレクトロンはそれぞれ、
    a)前記第1ステージ及び第2ステージにおいてそれぞれ形成される電場が実質的な一様電場であり、且つ、質量分析に関して所定の性能が得られるように、第1ステージとこれに隣接する第2ステージにおける中心軸上の電位分布が定められてなる状態を基本状態として、
    前記第2ステージにおける中心軸上の電位分布は前記基本状態と同一に定められる一方、該第2ステージに隣接する前記第1ステージの終端領域に、中心軸上の電位勾配を有さない所定長さの補助自由飛行空間が設けられるとともに、前記自由飛行空間に隣接する前記第1ステージの始端領域側に中心軸上の電位勾配を有さない自由飛行空間が所定長さだけ延長され、該第1ステージの始端領域及び終端領域で減速領域が短縮する分だけ該第1ステージにおける中心軸上の電位勾配の傾きが前記基本状態における第1ステージの中心軸上の電位勾配の傾きよりも大きくなるように第1ステージにおける中心軸上の電位分布が定められてなり、そうして定められた第1ステージ及び第2ステージにおける中心軸上の電位分布が形成されるべく、前記駆動部が前記電極部に所定の電圧を印加するように構成されてなる第1のリフレクトロン、又は、
    b)前記第1ステージ及び第2ステージにおいてそれぞれ形成される電場が実質的な一様電場であり、且つ、質量分析に関して所定の性能が得られるように、第1ステージとこれに隣接する第2ステージにおける中心軸上の電位分布が定められてなる状態を基本状態として、
    前記第2ステージにおける中心軸上の電位分布は前記基本状態と同一に定められる一方、前記第1ステージにはその中心軸上の電位勾配がイオンの往路において徐々に大きくなる非線形電場が形成されるべく、前記駆動部が前記電極部に所定の電圧を印加するように構成されてなる第2のリフレクトロン、
    のいずれかであることを特徴とする飛行時間型質量分析装置。
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