JP2015182163A - 熱硬化性樹脂シートおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】強度の高い熱硬化性樹脂シートを提供する。【解決手段】円筒状または円柱状の熱硬化性樹脂ブロックをその円筒軸または円柱軸を中心に回転させながら、切削刃物を前記熱硬化性樹脂ブロックに接触させて熱硬化性樹脂を所定の厚さのシート状に切削する工程を含む熱硬化性樹脂シートの製造方法であって、前記切削工程において、55?以上のすくい角で切削を行う方法によって熱硬化性樹脂シートを製造する。【選択図】図2
Description
本発明は、熱硬化性樹脂シートおよびその製造方法に関する。
熱硬化性樹脂シートは、絶縁性、化学的安定性、機械的強度等に優れるという性質を有しており、比較的低コストで製造できるという利点を有している。さらに、熱硬化性樹脂シートを多孔質化した場合には、通気性や透水性を有するシートとなる。このため、熱硬化性樹脂多孔質シート(特にエポキシ樹脂多孔質シート)は、電池用セパレータ、水処理膜等の用途に有望な材料の1つであると考えられる。
電池用セパレータ、水処理膜等の用途においては、多孔質シートの厚さが薄い、例えば300μm以下であることが必要とされている。このような薄い厚さを有する熱硬化性樹脂多孔質シートを製造する方法として、本出願人は、特許文献1に、円筒状または円柱状のポロゲン(細孔形成剤)を含む熱硬化性樹脂ブロックを、その円筒軸または円柱軸を中心に回転させながら、切削刃物により所定厚みで切削し、得られるシートからポロゲンを除去する方法を提案している。
当該方法により、特許文献1の実施例では、厚さ約150μmのエポキシ樹脂多孔質シートが得られている。
しかしながら、本発明者らがさらに検討を進めたところ、特許文献1に記載の方法により得られる熱硬化性樹脂シートには、強度面において改善の余地があることがわかった。
そこで本発明は、強度の高い熱硬化性樹脂シートを提供することを目的とする。
本発明は、円筒状または円柱状の熱硬化性樹脂ブロックをその円筒軸または円柱軸を中心に回転させながら、切削刃物を前記熱硬化性樹脂ブロックに接触させて熱硬化性樹脂を所定の厚さのシート状に切削する工程を含む熱硬化性樹脂シートの製造方法であって、
前記切削工程において、55°以上のすくい角で切削を行う、熱硬化性樹脂シートの製造方法である。
前記切削工程において、55°以上のすくい角で切削を行う、熱硬化性樹脂シートの製造方法である。
本発明の製造方法は、前記熱硬化性樹脂ブロックが、ポロゲンを含み、
前記切削工程により得られる熱硬化性樹脂シートからポロゲンを除去して、前記熱硬化性樹脂シートを多孔質化する工程をさらに含んでいてもよい。
前記切削工程により得られる熱硬化性樹脂シートからポロゲンを除去して、前記熱硬化性樹脂シートを多孔質化する工程をさらに含んでいてもよい。
本発明の製造方法においては、前記切削工程において、75°以下のすくい角で切削を行うことが好ましい。前記切削工程において、切削速度が10m/分以上であることが好ましい。前記切削工程において、1°以上の逃げ角で切削を行うことが好ましい。
本発明の製造方法においては、前記熱硬化性樹脂ブロックが、エポキシ樹脂ブロックであることが好ましい。
本発明はまた、上記の熱硬化性樹脂シートの製造方法によって得られる、厚さが50μm以下の熱硬化性樹脂シートである。
本発明の熱硬化性樹脂シートでにおいては、直径1.0mmかつ先端の曲率半径0.5mmの測定針を使用して、2mm/秒の突き刺し速度で突き刺し試験した場合の突き刺し強度が、60gf/mm2以上であることが好ましい。
本発明によれば、強度の高い熱硬化性樹脂シートが提供される。
本発明は、円筒状または円柱状の熱硬化性樹脂ブロックをその円筒軸または円柱軸を中心に回転させながら、切削刃物を前記熱硬化性樹脂ブロックに接触させて熱硬化性樹脂を所定の厚さのシート状に切削する工程(切削工程)を含む熱硬化性樹脂シートの製造方法であって、
前記切削工程において、55°以上のすくい角で切削を行う、熱硬化性樹脂シートの製造方法である。
前記切削工程において、55°以上のすくい角で切削を行う、熱硬化性樹脂シートの製造方法である。
本発明の製造方法において、前記熱硬化性樹脂ブロックが、ポロゲンを含み、
前記切削工程により得られる熱硬化性樹脂シートからポロゲンを除去して、前記熱硬化性樹脂シートを多孔質化する工程(多孔質化工程)をさらに含む場合には、熱硬化性樹脂多孔質シートを得ることができる。
前記切削工程により得られる熱硬化性樹脂シートからポロゲンを除去して、前記熱硬化性樹脂シートを多孔質化する工程(多孔質化工程)をさらに含む場合には、熱硬化性樹脂多孔質シートを得ることができる。
一般に、硬い被削材に対しては、切削刃物の損傷を防止するために、刃角の大きな切削刃物を使用し、小さなすくい角が採用される。そのため、硬い被削材である円筒状または円柱状の熱硬化性樹脂ブロックを回転させながら、切削刃物で熱硬化性樹脂をシート状に切削する従来の熱硬化性樹脂シートの製造方法においては、55°よりも小さいすくい角が採用されていた。
しかしながら、本発明らが鋭意検討した結果、円筒状または円柱状の熱硬化性樹脂ブロックの切削をすくい角を小さくして行えば、得られる熱硬化性樹脂シートの強度が高くなるという意外な効果が得られることを見出した。
なお、本発明においてすくい角とは、図1における角度α、すなわち、円筒状または円柱状の熱硬化性樹脂ブロック1の接平面P1に垂直な平面P2と、切削刃物2のすくい面3と間の角度のことをいう。また、逃げ角とは、円筒状または円柱状の熱硬化性樹脂ブロック1の接平面P1と切削刃物2の逃げ面4との間の角度γをいう。切削刃物2の刃角は、角度βとなる。
また、本発明において、熱硬化性樹脂シートの強度が高いとは、特に、熱硬化性樹脂シートの突き刺し強度が高いことをいう。
以下、本発明の製造方法について説明する。
本発明で使用される熱硬化性樹脂としては、硬化剤とポロゲンを用いて多孔体を形成可能なものが好ましく、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂(ユリア樹脂)、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミド、シリコーン樹脂、及びジアリルフタレート樹脂などが挙げられ、熱硬化性樹脂シートの用途の有用性の観点から、特にエポキシ樹脂が好ましい。
以下、熱硬化性樹脂ブロックが、ポロゲンを含むエポキシ樹脂ブロックであって、エポキシ樹脂多孔質シートを得る場合を例にして本発明の製造方法を説明する。
円筒状または円柱状のポロゲンを含むエポキシ樹脂ブロックは、エポキシ樹脂(エポキシ化合物)、硬化剤、およびポロゲンを含む樹脂組成物を円筒状又は円柱状モールド内に充填し、その後、必要により加熱してエポキシ樹脂を三次元架橋させることにより作製することができる。その際に、エポキシ樹脂架橋体とポロゲンとの相分離により共連続構造が形成される。また、円柱状モールドを用いて円柱状樹脂ブロックを作製し、その後中心部を打ち抜いて円筒状樹脂ブロックを作製してもよい。
エポキシ樹脂としては、芳香族エポキシ樹脂及び非芳香族エポキシ樹脂のいずれも使用可能である。芳香族エポキシ樹脂としては、ポリフェニルベースエポキシ樹脂、フルオレン環を含むエポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレートを含むエポキシ樹脂、複素芳香環(例えば、トリアジン環)を含むエポキシ樹脂等が挙げられる。ポリフェニルベースエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラキス(ヒドロキシフェニル)エタンベースエポキシ樹脂等が挙げられる。非芳香族エポキシ樹脂としては、脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂肪族グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂環族グリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂環族グリシジルエステル型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、フルオレン環を含むエポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレートを含むエポキシ樹脂、脂環族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂環族グリシジルアミン型エポキシ樹脂及び脂環族グリシジルエステル型エポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つであって、6000以下のエポキシ当量及び170℃以下の融点を有するものを好適に使用できる。これらのエポキシ樹脂を使用すると、均一な三次元網目状骨格及び均一な空孔を形成できるとともに、エポキシ樹脂多孔質シートに優れた耐薬品性及び高い強度を付与できる。
硬化剤としては、芳香族硬化剤及び非芳香族硬化剤のいずれも使用可能である。芳香族硬化剤としては、芳香族アミン(例えば、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ベンジルジメチルアミン、ジメチルアミノメチルベンゼン)、芳香族酸無水物(例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸)、フェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂、複素芳香環を含むアミン(例えば、トリアジン環を含むアミン)等が挙げられる。非芳香族硬化剤としては、脂肪族アミン類(例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、1,3,6−トリスアミノメチルヘキサン、ポリメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ポリエーテルジアミン)、脂環族アミン類(例えば、イソホロンジアミン、メンタンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンアダクト、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、これらの変性品)、ポリアミン類とダイマー酸とを含む脂肪族ポリアミドアミン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、分子内に一級アミンを2つ以上有する硬化剤を好適に使用できる。具体的には、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ポリメチレンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン及びビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンからなる群より選ばれる少なくとも1つを好適に使用できる。これらの硬化剤を使用すると、均一な三次元網目状骨格及び均一な空孔を形成できるとともに、エポキシ樹脂多孔質シートに高い強度及び適切な弾性を付与できる。
エポキシ樹脂と硬化剤との組み合わせとしては、芳香族エポキシ樹脂と脂肪族アミン硬化剤との組み合わせ、芳香族エポキシ樹脂と脂環族アミン硬化剤との組み合わせ、又は脂環族エポキシ樹脂と芳香族アミン硬化剤との組み合わせが好ましい。これらの組み合わせにより、エポキシ樹脂多孔質シートに優れた耐熱性を付与できる。
ポロゲンは、エポキシ樹脂及び硬化剤を溶かすことができる溶剤でありうる。ポロゲンは、また、エポキシ樹脂と硬化剤とが重合した後、反応誘起相分離を生じさせることができる溶剤として使用される。具体的には、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール類、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル、ポリオキシエチレンジメチルエーテル等のエーテル類をポロゲンとして使用できる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、分子量600以下のポリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル及びポリオキシエチレンジメチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1つを好適に使用できる。特に、分子量200以下のポリエチレングリコール、分子量500以下のポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートからなる群より選ばれる少なくとも1つを好適に使用できる。これらのポロゲンを使用すると、均一な三次元網目状骨格及び均一な空孔を形成できる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、個々のエポキシ樹脂又は硬化剤と常温で不溶又は難溶であっても、エポキシ樹脂と硬化剤との反応物が可溶となる溶剤についてはポロゲンとして使用可能である。このようなポロゲンとしては、例えば、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製「エピコート5058」)が挙げられる。
エポキシ樹脂に対する硬化剤の配合比率は、例えば、エポキシ基1当量に対して硬化剤当量が0.6〜1.5である。適切な硬化剤当量は、エポキシ樹脂多孔質シートの耐熱性、化学的耐久性、力学特性等の特性の向上に寄与する。
エポキシ樹脂、硬化剤及びポロゲンの総重量に対して、例えば40〜80重量%のポロゲンを使用できる。適切な量のポロゲンを使用することにより、所望の空孔率、平均孔径及び通気度を有するエポキシ樹脂多孔質シートを形成しうる。
なお、エポキシ樹脂組成物には、硬化剤の他に、目的とする多孔質構造を得るために、溶液中に硬化促進剤を添加してもよい。硬化促進剤としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の三級アミン、2−フェノール−4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェノール−4,5−ジヒドロキシイミダゾール等のイミダゾール類が挙げられる。
なお、エポキシ樹脂多孔質シートの空孔率、平均孔径及び孔径分布は、原料の種類、原料の配合比率及び反応条件(例えば、反応誘起相分離時における加熱温度及び加熱時間)に応じて変化する。そのため、目的とする空孔率、平均孔径、孔径分布を得るために、最適な条件を選択することが好ましい。
エポキシ樹脂多孔質シートの平均孔径を所望の範囲に調節する方法の一例として、エポキシ当量の異なる2種以上のエポキシ樹脂を混合して用いる方法が挙げられる。その際、エポキシ当量の差は100以上であることが好ましく、常温で液状のエポキシ樹脂と常温で固形のエポキシ樹脂とを混合して用いる場合もある。
また、相分離時におけるエポキシ樹脂架橋体の分子量、分子量分布、溶液の粘度、架橋反応速度等を制御することにより、エポキシ樹脂架橋体とポロゲンとの共連続構造を特定の状態で固定し、安定した多孔質構造を得ることができる。
エポキシ樹脂組成物を硬化させるために必要な温度及び時間は、エポキシ樹脂及び硬化剤の種類に応じて変化するので特に限定されない。均一な分布及び均一な孔径を持った空孔を有するエポキシ樹脂多孔質シートを得るために、室温にて硬化処理を実施することができる。室温硬化の場合、温度は20〜40℃程度であり、時間は3〜100時間程度、好ましくは20〜50時間程度である。加熱硬化の場合、温度は40〜120℃程度、好ましくは60〜100℃程度であり、時間は10〜300分程度、好ましくは30〜180分程度である。硬化処理後、エポキシ樹脂架橋体の架橋度を高めるためにポストキュア(後処理)を行ってもよい。ポストキュアの条件は特に制限されないが、温度は室温又は50〜160℃程度であり、時間は2〜48時間程度である。
エポキシ樹脂ブロックの寸法は特に限定されない。エポキシ樹脂が円筒又は円柱の形状を有している場合、エポキシ樹脂多孔質シートの製造効率の観点から、硬化体の直径は、例えば10cm以上であり、好ましくは15〜150cmである。硬化体の長さ(軸方向)も、得るべきエポキシ樹脂多孔質シートの寸法を考慮して適宜設定することができ、シートの端辺をスリットする場合には、シート幅よりも1〜10%程度広く設定してもよい。
切削工程の一例の概略を図2に示す。エポキシ樹脂ブロック12をシャフト14に取り付ける。長尺の形状を有するエポキシ樹脂シート16が得られるように、切削刃物18(スライサー)を用いて、エポキシ樹脂ブロック12の表層部を所定の厚さで切削(スライス)する。詳細には、エポキシ樹脂ブロック12の円筒軸O(又は円柱軸)を中心として、エポキシ樹脂ブロック12に接触する切削刃18に対してエポキシ樹脂ブロック12を相対的に回転させながらエポキシ樹脂ブロック12の表層部を切削する。
切削の際のすくい角は、55°以上である。切削の際のすくい角が小さいと、後述の比較例に示すように、シートは、表面にうろこ状の凹凸を有するものとなるが、すくい角を55°以上として切削することによって、このうろこ状の凹凸を低減することができ、その結果、強度の高いエポキシ樹脂多孔質シートを得ることができる。すくい角は60°以上であることが好ましい。一方、すくい角を大きくするには刃角の小さい刃物が必要となり、切削刃物が損傷を受けやすくなる。そこで、すくい角は、75°以下であることが好ましく、70°以下であることがより好ましい。
また、切削の際の逃げ角が1°以上であることが好ましく、2°以上であることが好ましい。1°以上の逃げ角を設定することによって、刃先での切削屑の発生を抑制できるとともに、シート面の荒れ(シートの厚さのばらつき)の発生を抑制することができる。一方、逃げ角を大きくすると刃角の小さい切削刃物が必要となり、切削刃物が損傷を受けやすくなる。そこで、逃げ角は、5°以下であることが好ましい。
エポキシ樹脂ブロック12を切削するときの切削速度が大きいほど、うろこ状の凹凸を低減することができ、強度の高いシートが得られる傾向がある。そこで、切削速度は、10m/分以上であることが好ましく、30m/分以上であることがより好ましい。一方で、切削速度が大きいほど、切削屑に起因するシート表面の欠陥が生じた場合に、欠陥の長さが長くなる傾向がある。そこで、切削速度は、120m/分以下であることが好ましく、90m/分以下であることがより好ましい。
エポキシ樹脂シート16の厚さは、エポキシ樹脂多孔質膜の目標厚さに応じて決定される。ポロゲンを除去して乾燥させると厚さが若干減少するので、エポキシ樹脂シート16は、通常、エポキシ樹脂多孔質膜の目標厚さよりも若干厚い。
エポキシ樹脂シート16の長さは特に限定されないが、エポキシ樹脂シート16の製造効率の観点から、例えば100m以上であり、好ましくは1000m以上である。
次に多孔質化工程について説明する。エポキシ樹脂シートからポロゲンを抽出除去してエポキシ樹脂多孔質シートとする。エポキシ樹脂シートからポロゲンを抽出除去するためには、エポキシ樹脂シートにポロゲンを溶解可能な溶剤を接触させる方法が好ましく用いられる。
エポキシ樹脂シートからポロゲンを抽出除去するための溶剤としては、水、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)及びTHF(テトラヒドロフラン)からなる群より選ばれる少なくとも1つをポロゲンの種類に応じて使用することが好ましい。また、水、二酸化炭素等の超臨界流体もポロゲンを除去するための溶剤として使用できる。さらには、エポキシ樹脂シートからポロゲンを積極的に除去するために、超音波洗浄を行ってもよく、また、溶剤を加熱して用いてもよい。これらの溶剤としては、ハロゲンフリーのものを特に好ましく用いることができる。
ポロゲンを前記溶剤と接触させる方法も特に限定されず、浸漬する方法や、加圧した溶剤を流通させる方法など公知の方法を使用できる。例えば、エポキシ樹脂シートを溶剤に浸漬することによってポロゲンを除去する場合には、洗浄槽を複数備えた多段洗浄装置を好適に使用できる。洗浄の段数としては、3段以上がより好ましい。また、カウンターフローを利用することによって、実質的に多段洗浄となる方法を用いてもよい。さらに、各段の洗浄で、溶剤の温度を変えたり、溶剤の種類を変えたりしてもよい。
このようにして、ポロゲンを除去した後、エポキシ樹脂多孔質シートの乾燥処理を行うことが好ましい。乾燥条件は特に限定されず、温度は通常40〜120℃程度であり、50〜100℃程度が好ましく、乾燥時間は10秒〜3時間程度である。乾燥処理には、テンター方式、フローティング方式、ロール方式、ベルト方式等の公知のシート乾燥方法を採用した乾燥装置を使用できる。複数の乾燥方法を組み合わせてもよい。
以上のようにして、エポキシ樹脂多孔質シートを得ることができる。エポキシ樹脂の代わりに他の熱硬化性樹脂を用いた場合にも、同様にして熱硬化性樹脂多孔質シートを得ることができる。また、ポロゲンを含まない円筒状または円柱状の熱硬化性樹脂ブロックを用いて、多孔質化工程を省略して上記と同様に切削工程を行うことにより、熱硬化性樹脂シートを得ることができる。
本発明の製造方法によれば、厚さの小さい(例えば、300μm以下)強度の高い熱硬化性樹脂シートが得られる。熱硬化性樹脂シートの厚さが50μm以下であった場合には、電池用セパレータ、水処理膜等の用途に適用することができ、有用性が高い。
そこで本発明は、熱硬化性樹脂シートの製造方法によって得られる、厚さが50μm以下の熱硬化性樹脂シートである。
当該熱硬化性樹脂シートの厚さは、好ましくは5〜50μmであり、より好ましくは10〜50μmであり、さらに好ましくは15〜40μmである。
当該熱硬化性樹脂シートでは、製造時のすくい角と切削速度を調整することにより、直径1.0mmおよび先端の曲率半径0.5mmの測定針を使用して、2mm/秒の突き刺し速度で突き刺し試験した場合の突き刺し強度が、60gf/mm2以上という値を達成することも可能である。
当該熱硬化性樹脂シートは、公知方法に従い、電池用セパレータ(特にリチウムイオン二次電池等の非水電解質電池用のセパレータ)、正浸透(FO)膜(特に水処理用FO膜)等の用途に好適に用いることができる。また、逆浸透(RO)膜(特に水処理用RO膜)の支持体に用いることも可能である。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
実施例1
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製、jER(登録商標)828)100重量部を、ポリプロピレングリコール(三洋化成社製、サンニックスPP−400)147重量部に溶解し、得られた溶液を、内表面に離型剤を塗布して乾燥したφ120mm×150mmの円筒形ステンレス溶液に入れ、1,6−ジアミノヘキサン(特級、東京化成社製)15重量部を加えた。次いで、撹拌翼を備えたスリーワンモーターを用いて200rpmで285分間撹拌した。その後、真空盤(アズワン社製、VZ型)を用いて真空脱泡し、50℃で約1日間放置して硬化させて、円筒状エポキシ樹脂ブロックを作製した。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製、jER(登録商標)828)100重量部を、ポリプロピレングリコール(三洋化成社製、サンニックスPP−400)147重量部に溶解し、得られた溶液を、内表面に離型剤を塗布して乾燥したφ120mm×150mmの円筒形ステンレス溶液に入れ、1,6−ジアミノヘキサン(特級、東京化成社製)15重量部を加えた。次いで、撹拌翼を備えたスリーワンモーターを用いて200rpmで285分間撹拌した。その後、真空盤(アズワン社製、VZ型)を用いて真空脱泡し、50℃で約1日間放置して硬化させて、円筒状エポキシ樹脂ブロックを作製した。
ブロックの軸方向長さ以上の長さを有する平刃を刃物ホルダーと共にすくい角が60°になるようにセットした切削装置(東芝機械社製)に、ステンレス容器から取り出した円筒状エポキシ樹脂ブロックをセットした。切削速度30m/分となるように樹脂ブロックを円筒軸を中心にして回転させながら、平刃により、厚さ30μmの樹脂シートが得られるように樹脂ブロックを連続的に切削し、長尺状のエポキシ樹脂シート(長さ約150m)を得た。
このエポキシ樹脂シートを水中に12時間浸漬してポロゲンとしてのポリプロピレングリコールを除去し、50℃の乾燥機内で約4時間乾燥させることにより、エポキシ樹脂多孔質シートを得た。得られたエポキシ樹脂多孔質シートの空孔率は45%、平均孔径は0.106μmであった。
実施例2
すくい角を57°にして切削した以外は実施例1と同様の方法でエポキシ樹脂多孔質シートを得た。
すくい角を57°にして切削した以外は実施例1と同様の方法でエポキシ樹脂多孔質シートを得た。
実施例3
すくい角を70°、切削速度を20m/分にして切削した以外は実施例1と同様の方法でエポキシ樹脂多孔質シートを得た。
すくい角を70°、切削速度を20m/分にして切削した以外は実施例1と同様の方法でエポキシ樹脂多孔質シートを得た。
実施例4
すくい角を70°、切削速度を40m/分にして切削した以外は実施例1と同様の方法でエポキシ樹脂多孔質シートを得た。
すくい角を70°、切削速度を40m/分にして切削した以外は実施例1と同様の方法でエポキシ樹脂多孔質シートを得た。
実施例5
切削速度を15m/分にして切削した以外は実施例1と同様の方法でエポキシ樹脂多孔質シートを得た。
切削速度を15m/分にして切削した以外は実施例1と同様の方法でエポキシ樹脂多孔質シートを得た。
実施例6
切削速度を5m/分にして切削した以外は実施例1と同様の方法でエポキシ樹脂多孔質シートを得た。
切削速度を5m/分にして切削した以外は実施例1と同様の方法でエポキシ樹脂多孔質シートを得た。
比較例1
すくい角を50°にして切削した以外は実施例1と同様の方法でエポキシ樹脂多孔質シートを得た。
すくい角を50°にして切削した以外は実施例1と同様の方法でエポキシ樹脂多孔質シートを得た。
比較例2
すくい角を47°にして切削した以外は実施例1と同様の方法でエポキシ樹脂多孔質シートを得た。
すくい角を47°にして切削した以外は実施例1と同様の方法でエポキシ樹脂多孔質シートを得た。
比較例3
すくい角を45°にして切削した以外は実施例1と同様の方法でエポキシ樹脂多孔質シートを得た。
すくい角を45°にして切削した以外は実施例1と同様の方法でエポキシ樹脂多孔質シートを得た。
(突き刺し強度の測定方法)
市販の圧縮試験機(カトーテック社製、KES−G5)を用いて、実施例および比較例で得られた多孔質シートの突き刺し試験を行った。測定針には、直径1.0mmかつ先端の曲率半径0.5mmの針を用い、突き刺し速度は2mm/秒とした。測定により得られた荷重変位曲線から最大荷重を読み取り、突き刺し強度とした。結果を表1に示す。
市販の圧縮試験機(カトーテック社製、KES−G5)を用いて、実施例および比較例で得られた多孔質シートの突き刺し試験を行った。測定針には、直径1.0mmかつ先端の曲率半径0.5mmの針を用い、突き刺し速度は2mm/秒とした。測定により得られた荷重変位曲線から最大荷重を読み取り、突き刺し強度とした。結果を表1に示す。
さらに、実施例1の多孔質シートと比較例1の多孔質シートの表面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果を図3および4にそれぞれ示す。
表1より、比較例の多孔質シートの突き刺し強度が60gf/mm2未満であるのに対し、実施例の多孔質シートの突き刺し強度は60gf/mm2以上であることがわかる。また、図3および4に示したSEM観察の結果より、比較例1の多孔質シートの表面では、大きなうろこ状の凹凸があるのに対し、実施例1の多孔質シートの表面では、うろこ状の凹凸が小さくなっているのがわかる。さらに、実施例1および比較例1以外の多孔質シートについてもSEM観察を行ったところ、シート表面のうろこ状の凹凸の大きさと突き刺し強度との間に相関が見られた。よって、本発明によれば、熱硬化性樹脂シート表面のうろこ状の凹凸を低減することができ、これにより、高い突き刺し強度を有する熱硬化性樹脂シートが得られることがわかる。
本発明によって提供される熱硬化性樹脂シートは、電池用セパレータ、水処理膜等の用途に用いることができる。
1 熱硬化性樹脂ブロック
2 切削刃物
3 すくい面
4 逃げ面
12 エポキシ樹脂ブロック
14 シャフト
16 エポキシ樹脂シート
18 切削刃物
2 切削刃物
3 すくい面
4 逃げ面
12 エポキシ樹脂ブロック
14 シャフト
16 エポキシ樹脂シート
18 切削刃物
Claims (8)
- 円筒状または円柱状の熱硬化性樹脂ブロックをその円筒軸または円柱軸を中心に回転させながら、切削刃物を前記熱硬化性樹脂ブロックに接触させて熱硬化性樹脂を所定の厚さのシート状に切削する工程を含む熱硬化性樹脂シートの製造方法であって、
前記切削工程において、55°以上のすくい角で切削を行う、熱硬化性樹脂シートの製造方法。 - 前記熱硬化性樹脂ブロックが、ポロゲンを含み、
前記切削工程により得られる熱硬化性樹脂シートからポロゲンを除去して、前記熱硬化性樹脂シートを多孔質化する工程をさらに含む請求項1に記載の熱硬化性樹脂シートの製造方法。 - 前記切削工程において、75°以下のすくい角で切削を行う請求項1または2に記載の熱硬化性樹脂シートの製造方法。
- 前記切削工程において、切削速度が10m/分以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂シートの製造方法。
- 前記切削工程において、1°以上の逃げ角で切削を行う請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂シートの製造方法。
- 前記熱硬化性樹脂ブロックが、エポキシ樹脂ブロックである請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂シートの製造方法。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂シートの製造方法によって得られる、厚さが50μm以下の熱硬化性樹脂シート。
- 直径1.0mmかつ先端の曲率半径0.5mmの測定針を使用して、2mm/秒の突き刺し速度で突き刺し試験した場合の突き刺し強度が、60gf/mm2以上である請求項7に記載の熱硬化性樹脂シート。
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---|---|---|---|
JP2014059794A JP2015182163A (ja) | 2014-03-24 | 2014-03-24 | 熱硬化性樹脂シートおよびその製造方法 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
FR3057188A1 (fr) * | 2016-10-11 | 2018-04-13 | Airbus Safran Launchers Sas | Procede d'usinage d'une piece en materiau elastomere par tournage |
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2014
- 2014-03-24 JP JP2014059794A patent/JP2015182163A/ja active Pending
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