JP2015178550A - シリコーン系表面調整剤及び/又はフッ素系表面調整剤を含む膜 - Google Patents
シリコーン系表面調整剤及び/又はフッ素系表面調整剤を含む膜 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】 テーバー式摩耗試験におけるヘイズの差(ΔH(%))が4%未満となる膜を提供する。
【解決手段】 下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計100質量部に対して、該(A)成分を20〜80質量部、該(B)成分を10〜70質量部、該(C)成分を1〜35質量部含み、かつ、(D)成分として、下記(D−1)〜(D−4)のいずれかの表面調整剤を0.01〜2質量部含む組成物を硬化させたことを特徴とする膜。
(A)成分:イソシアヌル環含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物
(B)成分:ウレタン結合を有しないイソシアヌル環含有トリ(メタ)アクリレート化合物
(C)成分:シラン化合物とコロイダルシリカとの反応生成物の不揮発性成分
(D成分):
(D−1)−[SiR15R16O]−からなる繰り返し単位を20〜500有するシリコーン系表面調整剤
(D−2)炭素−炭素二重結合含有シリコーン系表面調整剤
(D−3)炭素−炭素二重結合含有フッ素系表面調整剤
(D−4)シリコーン系表面調整剤及び炭素−炭素二重結合含有フッ素系表面調整剤
【選択図】なし
【解決手段】 下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計100質量部に対して、該(A)成分を20〜80質量部、該(B)成分を10〜70質量部、該(C)成分を1〜35質量部含み、かつ、(D)成分として、下記(D−1)〜(D−4)のいずれかの表面調整剤を0.01〜2質量部含む組成物を硬化させたことを特徴とする膜。
(A)成分:イソシアヌル環含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物
(B)成分:ウレタン結合を有しないイソシアヌル環含有トリ(メタ)アクリレート化合物
(C)成分:シラン化合物とコロイダルシリカとの反応生成物の不揮発性成分
(D成分):
(D−1)−[SiR15R16O]−からなる繰り返し単位を20〜500有するシリコーン系表面調整剤
(D−2)炭素−炭素二重結合含有シリコーン系表面調整剤
(D−3)炭素−炭素二重結合含有フッ素系表面調整剤
(D−4)シリコーン系表面調整剤及び炭素−炭素二重結合含有フッ素系表面調整剤
【選択図】なし
Description
本発明は、シリコーン系表面調整剤及び/又はフッ素系表面調整剤を含む膜、並びに、該膜で被覆された車両用部材に関するものである。
ポリカーボネート等の樹脂材料は、無機ガラスに比べて比重が小さく軽量であり、加工が容易で、衝撃に強いという特徴を生かし、車両用部材を含む多種多様な部材の材料として利用されている。反面、樹脂材料は、表面が傷付きやすく光沢や透明性が失われやすい、有機溶剤に侵されやすい、耐候性(たとえば、紫外線などに対する光安定性)及び耐熱性に劣る等の欠点を有する。自動車用の窓ガラスなどは、長期にわたって太陽光に曝されることが多い。そのため、樹脂材料を自動車用部材に用いる場合には、保護膜により表面を被覆するなどして、樹脂材料に耐摩耗性と耐候性を付与する必要がある。
特許文献1には、樹脂材料の表面に、耐候性に優れた下塗り剤組成物を硬化してなる第一層、該第一層の上に耐摩耗性に優れたコーティング剤組成物を硬化してなる第二層を設けたプラスチック物品が開示されている。特許文献1に記載のプラスチック物品は、高いレベルで耐摩耗性と耐候性とを両立する。しかし、特許文献1のようにコーティング剤組成物だけでなく下塗り剤組成物を使用すると工程数が増加するため、生産性の観点から望ましくない。そこで、下塗り剤組成物を使用することなく十分な耐摩耗性および耐候性を発揮する保護膜を形成可能なコーティング剤が熱望されていた。
そこで、本発明者らは、かかる条件を満足する、特定の成分を特定の配合量で含むコーティング剤を新たに提供し、該コーティング剤を硬化させた保護膜が耐摩耗性および耐候性を発揮することを報告した(特許文献2)。
さて、米国連邦自動車安全基準(FMVSS:Federal Motor Vehicle Safety Standard)によると、車のクォーターウィンドウについて、テーバー式摩耗試験におけるヘイズの差(ΔH(%))が4%未満となることが求められている。
上記特許文献2に記載の保護膜につき、上記テーバー式摩耗試験にてヘイズの差(ΔH(%))を算出したところ、ヘイズの差(ΔH(%))が4%をわずかに超えることが判明した。
本発明は、かかる事情に鑑みて為されたものであり、テーバー式摩耗試験におけるヘイズの差(ΔH(%))が4%未満となる膜を提供することを目的とする。
本発明者は、膜の構成成分と膜の耐摩耗性の関係について鋭意検討した。そして、多数の試行錯誤を重ねた結果、本発明者は特定の表面調整剤を用いることで上記課題を解決し得る膜が得られることを見出した。
すなわち、本発明の膜は、下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計100質量部に対して、該(A)成分を20〜80質量部、該(B)成分を10〜70質量部、該(C)成分を1〜35質量部含み、かつ、(D)成分として、下記(D−1)〜(D−4)のいずれかの表面調整剤を0.01〜2質量部含む組成物を硬化させたことを特徴とする。
(A)成分:
下記一般式(1)で表されるイソシアヌル環含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物
下記一般式(1)で表されるイソシアヌル環含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物
(B)成分:
下記一般式(2)で表されるウレタン結合を有しないイソシアヌル環含有トリ(メタ)アクリレート化合物
下記一般式(2)で表されるウレタン結合を有しないイソシアヌル環含有トリ(メタ)アクリレート化合物
(C)成分:
下記一般式(3)で表されるシラン化合物(c1)とコロイダルシリカ(c2)とを、(c1)と(c2)の質量比を9:1〜1:9で反応させた反応生成物の不揮発性成分であって、(c1)で(c2)を化学修飾したものを含む。
下記一般式(3)で表されるシラン化合物(c1)とコロイダルシリカ(c2)とを、(c1)と(c2)の質量比を9:1〜1:9で反応させた反応生成物の不揮発性成分であって、(c1)で(c2)を化学修飾したものを含む。
(D成分):
(D−1)−[SiR15R16O]−からなる繰り返し単位を20〜500有するシリコーン系表面調整剤(R15、R16は、それぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
(D−2)炭素−炭素二重結合含有シリコーン系表面調整剤
(D−3)炭素−炭素二重結合含有フッ素系表面調整剤
(D−4)シリコーン系表面調整剤及び炭素−炭素二重結合含有フッ素系表面調整剤
(D−1)−[SiR15R16O]−からなる繰り返し単位を20〜500有するシリコーン系表面調整剤(R15、R16は、それぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
(D−2)炭素−炭素二重結合含有シリコーン系表面調整剤
(D−3)炭素−炭素二重結合含有フッ素系表面調整剤
(D−4)シリコーン系表面調整剤及び炭素−炭素二重結合含有フッ素系表面調整剤
本発明の膜は、テーバー式摩耗試験におけるヘイズの差(ΔH(%))が4%未満となる。
以下に、本発明を実施するための最良の形態を説明する。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「x〜y」は、下限xおよび上限yをその範囲に含む。そして、これらの上限値および下限値、ならびに実施例中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。さらに数値範囲内から任意に選択した数値を上限、下限の数値とすることができる。なお、本明細書においては、アクリロイル基またはメタクリロイル基を(メタ)アクリロイル基と表し、また、アクリレートまたはメタクリレートを(メタ)アクリレートと表す。
本発明の膜は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計100質量部に対して、該(A)成分を20〜80質量部、該(B)成分を10〜70質量部、該(C)成分を1〜35質量部含み、かつ、(D)成分として、(D−1)〜(D−4)のいずれかの表面調整剤を0.01〜2質量部含む組成物(以下、「本発明の組成物」又は単に「組成物」という。)を硬化させたことを特徴とする。本発明の膜は、車両用部材の表面を被覆することにより、車両用部材の保護膜として作用する。
まず、(A)成分について説明する。(A)成分は、下記一般式(1)で表されるイソシアヌル環含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物である。
一般式(1)において、R1、R2およびR3はそれぞれ独立して炭素数2〜10の2価の有機基を表す。炭素数2〜10の2価の有機基としては、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基およびテトラメチレン基等の炭素数2〜4のアルキレン基が好ましい。また、一般式(1)の化合物には、ε−カプロラクトン変性した化合物も含まれ、この場合、炭素数2〜10の2価の有機基は−COCH2CH2CH2CH2CH2−又は−OCOCH2CH2CH2CH2CH2−を含む。R1、R2およびR3がすべてテトラメチレン基であるものは、耐摩耗性と耐候性に特に優れた膜が得られるため、特に好ましい。
一般式(1)において、R4、R5およびR6はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を表す。ここで、R4、R5およびR6が全て水素原子である化合物は、硬化性に優れる点で特に好ましい。
(A)成分は、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート型三量体と、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートまたはそのカプロラクトン変性物との付加反応により合成される。この付加反応は無触媒でも可能であるが、反応を効率的に進めるために、ジブチルスズジラウレート等の錫系触媒や、トリエチルアミン等のアミン系触媒等の触媒を用いるのがよい。
本発明の組成物における(A)成分の含有割合は、(A)成分、(B)成分、および(C)成分の合計100質量部に対して、20〜80質量部であり、より好ましくは30〜70質量部である。(A)成分の含有割合を20〜80質量部とすることで、耐摩耗性と耐候性に優れた膜が得られる。
次に、(B)成分について説明する。(B)成分は、下記一般式(2)で表されるウレタン結合を有しないイソシアヌル環含有トリ(メタ)アクリレート化合物である。
一般式(2)において、R7、R8およびR9はそれぞれ独立して炭素数2〜10の2価の有機基を表す。炭素数2〜10の2価の有機基としては、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基およびテトラメチレン基等の炭素数2〜4のアルキレン基が好ましい。また、一般式(2)には、ε−カプロラクトン変性した化合物も含まれ、この場合、炭素数2〜10の2価の有機基は−COCH2CH2CH2CH2CH2−又は−OCOCH2CH2CH2CH2CH2−を含む。R7、R8およびR9がすべてエチレン基であるものは、耐摩耗性と耐候性に特に優れた膜が得られるため、特に好ましい。
一般式(2)において、R10、R11およびR12はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を表す。ここで、R10、R11およびR12が全て水素原子である化合物は、硬化性に優れる点で特に好ましい。
一般式(2)において、n1、n2およびn3は、それぞれ独立して1〜3の数を表す。ただし、n1+n2+n3=3〜9である。n1、n2およびn3としては、1が好ましく、n1+n2+n3としては3が好ましい。
(B)成分は、好ましくはイソシアヌル酸のアルキレンオキサイド付加物と(メタ)アクリル酸を反応させて製造される。n1+n2+n3は、(B)成分1分子当たりのアルキレンオキサイドの平均付加モル数を表す。
本発明の組成物における(B)成分の含有割合は、(A)成分、(B)成分、および(C)成分の合計100質量部に対して、10〜70質量部であり、より好ましくは20〜60質量部である。(B)成分の含有割合を10部以上とすることで樹脂材料と膜との初期密着性を良好にすることができ、10〜70質量部とすることで、耐摩耗性と耐候性に優れた膜が得られる。
なお、組成物中の(B)成分の含有割合に応じて、膜に含まれるSiの厚さ方向の分布が変化する。膜に含まれるSiは、主に後述の(C)成分に由来する。具体的には、同じ割合の(C)成分を含む膜であれば、(B)成分の含有割合が多いほど、膜表面で検出されるSiが増加する。膜の表面側にSiを多く含む膜は、耐擦傷性に優れるため好ましい。組成物における(B)成分の含有量を25〜55質量部さらには30〜50質量部とすることで、耐摩耗性および耐候性と耐擦傷性とを両立できるため望ましい。
膜中のSi濃度は、走査型分析顕微鏡(SEM/EDX)等を用いた元素分析により、膜の断面を膜厚方向に沿って分析することで測定可能である。
膜中のSi濃度は、走査型分析顕微鏡(SEM/EDX)等を用いた元素分析により、膜の断面を膜厚方向に沿って分析することで測定可能である。
次に、(C)成分について説明する。(C)成分は、下記一般式(3)で表されるシラン化合物(c1)とコロイダルシリカ(c2)とを、(c1)と(c2)の質量比を9:1〜1:9で反応させた反応生成物の不揮発性成分であって、(c1)で(c2)を化学修飾したものを含む。
なお、(C)成分の合成は、通常、溶媒中で行われるが、(C)成分は反応で使用した水および有機溶媒を除いた成分を意味する。また、(C)成分は、アルコキシシランが加水分解して生成するアルコールや、シラノールの縮合で生成する水を除いた成分である。すなわち、(C)成分は反応生成物中の不揮発性成分を意味する。
一般式(3)において、R13は水素原子または1価の有機基を表す。R13の一価の有機基としては、具体的には、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシを有する炭素数1〜6のアルキル基、その他のC、H、O原子からなる炭素数1〜6の有機基が挙げられる。
反応性の点では、R13は水素原子または炭素数1〜6の酸素原子を有してもよい一価の有機基が好ましく、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基がより好ましい。
反応性の点では、R13は水素原子または炭素数1〜6の酸素原子を有してもよい一価の有機基が好ましく、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基がより好ましい。
一般式(3)において、R14は、炭素数1〜6の二価の飽和炭化水素基を表す。R14は直鎖状でも、分岐を有していてもよい。直鎖状飽和炭化水素基としては、エチレン基、1,3−プロピレン基(トリメチレン基)、1,4−ブチレン基(テトラメチレン基)、1,5−ペンタンジイル基(ペンタメチレン基)、1,6−ヘキサンジイル基(ヘキサメチレン基)を例示できる。分岐状アルキレン基としては、1,2−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,3−ブチレン基、2,3−ブチレン基、1,3−ペンタンジイル基、2,4−ペンタンジイル基、2,5−ヘキサンジイル基、2−メチル−1,3−プロピレン基、2−エチル−1,3−プロピレン基、3−メチル−1,5−ペンタンジイル基を例示できる。
R14としては、炭素数3〜6の直鎖状二価の飽和炭化水素基が特に好ましい。R14としては、膜が耐摩耗性や耐候性に優れたものとなる点で、炭素数1〜6の二価の飽和炭化水素基が好ましく、さらには炭素数3〜6の直鎖状の二価の飽和炭化水素基がより好ましい。
一般式(3)において、zは0.1≦z≦3を満たす。zは、Si原子1モル当りの残存アルコキシ基の平均モル数を表す。(c1)は、zが3のときアルコキシシランモノマーを示し、zが3未満のときアルコキシシラン縮合物あるいはアルコキシシラン縮合物とアルコキシシランモノマーとの混合物を示す。なお、zの値は、(c1)の1H−NMRスペクトルを測定し、水素原子の積分比から求めることができる。
zを0.1以上にすることで、コロイダルシリカが有効に表面修飾され、膜が耐擦傷性に優れたものとなる。また、反応性の観点から、zは0.4≦z≦3を満たすのが好ましく、さらには0.8≦z≦3を満たすのがより好ましい。
zを0.1以上にすることで、コロイダルシリカが有効に表面修飾され、膜が耐擦傷性に優れたものとなる。また、反応性の観点から、zは0.4≦z≦3を満たすのが好ましく、さらには0.8≦z≦3を満たすのがより好ましい。
(c1)が縮合物である場合、R13は、それぞれ異なる2種以上の化学構造であってよい。
なお、一般式(3)の3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド基は、紫外線を吸収すると、3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド基同士が反応し、二量化する場合がある。
一般式(3)の化合物の好ましい製造方法については、上記特許文献2の記載を参照されたい。
(c2)はコロイダルシリカであり、種々のものが使用できるが、球状粒子が均一分散したものが好ましく、たとえばアルコール系溶媒に均一分散したものがより好ましい。
(c2)の平均一次粒子径としては、1〜100nmが好ましく、5〜60nmであることがより好ましく、特に好ましくは5〜30nmである。(c2)の平均一次粒子径を1nm以上とすることで、耐摩耗性に優れるものすることができ、100nmより以下とすることで、コロイド溶液の分散安定性に優れるものとすることができる。なお、本発明において平均一次粒子径とは、BET法による比表面積から算出された値を意味する。また、(c2)の比表面積は、30〜3,000m2/gの範囲である。
(C)成分の合成方法は、水を含む有機溶媒の存在下に、(c1)と(c2)とを、所定の質量比で仕込んだ後、加熱して反応させる方法が好ましい。加熱温度および時間は、触媒の有無等により異なるため一概に規定することはできないが、40〜140℃望ましくは60〜120℃で0.5〜20時間が望ましい。
(C)成分には、(c1)で表面修飾されたシリカ微粒子だけでなく、シリカ微粒子を含まない(c1)の加水分解縮合物や(c1)を製造する際の副生物が含まれていてもよく、それらを含めて(C)成分は定義される。
(C)成分を合成する際の(c1)と(c2)の仕込み質量比は1:9〜9:1であるが、より好ましくは2:8〜7:3、さらに好ましくは2:8〜6:4である。(c1)と(c2)の質量比を1:9〜9:1とすることで、膜の耐摩耗性と耐候性を両立させることができる。
(C)成分を合成する際の反応系に仕込む水の量は、アルコキシ基1モルに対し、0.3〜10モルであることが好ましく0.5〜5モルであることがさらに好ましい。水の仕込み量をアルコキシ基1モルに対して0.3〜10モルとすることで、シリカ微粒子をゲル化させることなく、シリカ微粒子の表面を効率よく表面修飾することができる。
有機溶媒としては、水を均一に溶解するものが好ましく、より好ましくは沸点100℃〜200℃のアルコール系溶媒であり、さらに好ましくはエーテル結合を有する沸点100℃〜200℃のアルコール系溶媒である。好ましい有機溶媒の具体例としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテルおよびエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
なお、(C)成分は、無触媒で製造することができるが、酸触媒やアルカリ触媒を加えてもよい。
(c1)と(c2)の反応終了後、反応後の液に含まれる水を除去するとよい。反応後の液を加熱したり減圧したりして、水、さらには有機溶媒を留去するとよい。このとき、反応後の液に水よりも高沸点の有機溶媒を加えることが好ましい。
本発明の組成物における(C)成分の含有割合は、(A)成分、(B)成分、および(C)成分の合計100質量部に対して1〜35質量部であり、より好ましくは1〜30質量部、さらに好ましくは3〜25質量部、特に好ましくは5〜20質量部である。(C)成分の含有割合を1〜35質量部とすることで、耐摩耗性と耐候性に優れた膜が得られる。(C)成分の割合が1質量部以上であれば、膜の耐摩耗性が向上する。しかし、(C)成分が過多では、膜が収縮しやすくなったり、膜の有機部分の分解が速くなったりするため、膜の耐候性が低下する。
次に、(D)成分について説明する。(D)成分は、下記(D−1)〜(D−4)のいずれかから選択される表面調整剤である。
(D−1)−[SiR15R16O]−からなる繰り返し単位を20〜500有するシリコーン系表面調整剤(R15、R16は、それぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
(D−2)炭素−炭素二重結合含有シリコーン系表面調整剤
(D−3)炭素−炭素二重結合含有フッ素系表面調整剤
(D−4)シリコーン系表面調整剤及び炭素−炭素二重結合含有フッ素系表面調整剤
(D−1)−[SiR15R16O]−からなる繰り返し単位を20〜500有するシリコーン系表面調整剤(R15、R16は、それぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
(D−2)炭素−炭素二重結合含有シリコーン系表面調整剤
(D−3)炭素−炭素二重結合含有フッ素系表面調整剤
(D−4)シリコーン系表面調整剤及び炭素−炭素二重結合含有フッ素系表面調整剤
(D−1)について説明する。
(D−1)は鎖状であっても環状であってもよい。繰り返し単位の数は20〜500であり、20〜300が好ましい。繰り返し単位の数が20未満であると、膜の耐摩耗性が悪くなる。繰り返し単位の数が500超であると、膜における(D)成分の分散性が悪化して、膜の外観が悪くなる。また、(D−1)は化学構造の一部がポリエーテル若しくはポリエステルで置換されていてもよい。
(D−1)は鎖状であっても環状であってもよい。繰り返し単位の数は20〜500であり、20〜300が好ましい。繰り返し単位の数が20未満であると、膜の耐摩耗性が悪くなる。繰り返し単位の数が500超であると、膜における(D)成分の分散性が悪化して、膜の外観が悪くなる。また、(D−1)は化学構造の一部がポリエーテル若しくはポリエステルで置換されていてもよい。
R15又はR16の炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基を例示できる。(D−1)のシリコーン系表面調整剤としては、その化学構造に炭素−炭素二重結合を含有するものが好ましく、特に化学構造の末端に炭素−炭素二重結合を含有するものがより好ましい。(D−1)の化学構造に炭素−炭素二重結合があれば、組成物の硬化時、すなわち重合反応時に、(A)成分、(B)成分と共重合し得る。そのため、(D−1)が強固に膜の一部を構成でき、好適な耐摩耗性を発揮する。炭素−炭素二重結合としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基を例示することができる。
具体的な(D−1)として、EBECRYL350(ダイセル・オルネクス株式会社)、BYK−315(ビックケミー・ジャパン株式会社)、BYK−375(ビックケミー・ジャパン株式会社)、BYK−378(ビックケミー・ジャパン株式会社)、BYK−UV3500(ビックケミー・ジャパン株式会社)を挙げることができる。
(D−2)について説明する。
(D−2)は炭素−炭素二重結合を含有するので、(D−1)で説明したのと同様に、組成物の硬化時、すなわち重合反応時に、(A)成分、(B)成分と共重合し得る。そのため、(D−2)が強固に膜の一部を構成でき、好適な耐摩耗性を発揮する。(D−2)は鎖状であっても環状であってもよい。(D−2)の炭素−炭素二重結合含有シリコーン系表面調整剤としては、その化学構造の末端に炭素−炭素二重結合を含有するものが好ましい。炭素−炭素二重結合としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基を例示することができる。(D−2)の炭素−炭素二重結合含有シリコーン系表面調整剤は、−[SiR15R16O]−からなる繰り返し単位を有する。繰り返し単位の数に特段の限定は無いが、20〜500が好ましく、20〜300がより好ましい。R15、R16については、(D−1)で説明したとおりである。また、(D−2)は化学構造の一部がポリエーテル若しくはポリエステルで置換されていてもよい。
(D−2)は炭素−炭素二重結合を含有するので、(D−1)で説明したのと同様に、組成物の硬化時、すなわち重合反応時に、(A)成分、(B)成分と共重合し得る。そのため、(D−2)が強固に膜の一部を構成でき、好適な耐摩耗性を発揮する。(D−2)は鎖状であっても環状であってもよい。(D−2)の炭素−炭素二重結合含有シリコーン系表面調整剤としては、その化学構造の末端に炭素−炭素二重結合を含有するものが好ましい。炭素−炭素二重結合としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基を例示することができる。(D−2)の炭素−炭素二重結合含有シリコーン系表面調整剤は、−[SiR15R16O]−からなる繰り返し単位を有する。繰り返し単位の数に特段の限定は無いが、20〜500が好ましく、20〜300がより好ましい。R15、R16については、(D−1)で説明したとおりである。また、(D−2)は化学構造の一部がポリエーテル若しくはポリエステルで置換されていてもよい。
具体的な(D−2)として、EBECRYL350(ダイセル・オルネクス株式会社)、EBECRYL1360(ダイセル・オルネクス株式会社)、BYK−371(ビックケミー・ジャパン株式会社)、BYK−UV3500(ビックケミー・ジャパン株式会社)、BYK−UV3570(ビックケミー・ジャパン株式会社)、X−22−164(信越化学工業株式会社)、X−22−164AS(信越化学工業株式会社)、X−22−164A(信越化学工業株式会社)、X−22−164B(信越化学工業株式会社)、X−22−164C(信越化学工業株式会社)、X−22−164E(信越化学工業株式会社)、X−22−174DX(信越化学工業株式会社)、X−22−2426(信越化学工業株式会社)、X−22−2475(信越化学工業株式会社)、AC−SQ TA−100(東亞合成株式会社)、AC−SQ SI−20(東亞合成株式会社)、MAC−SQ TM−100(東亞合成株式会社)、MAC−SQ SI−20(東亞合成株式会社)、MAC−SQ HDM(東亞合成株式会社)を挙げることができる。
(D−3)について説明する。
(D−3)は炭素−炭素二重結合を含有するので、(D−1)及び(D−2)で説明したのと同様に、組成物の硬化時、すなわち重合反応時に、(A)成分、(B)成分と共重合し得る。そのため、(D−3)が強固に膜の一部を構成でき、好適な耐摩耗性を発揮する。(D−3)は鎖状であっても環状であってもよい。(D−3)の炭素−炭素二重結合含有フッ素系表面調整剤としては、その化学構造の末端に炭素−炭素二重結合を含有するものが好ましい。炭素−炭素二重結合としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基を例示することができる。(D−3)炭素−炭素二重結合含有フッ素系表面調整剤は、その化学構造にCF3、CHF2、CH2F、−CF2−、−CHF−等のフッ化アルキル基又はフッ化アルキレン基を有する。また、(D−3)は化学構造の一部がポリエーテル若しくはポリエステルで置換されていてもよい。
(D−3)は炭素−炭素二重結合を含有するので、(D−1)及び(D−2)で説明したのと同様に、組成物の硬化時、すなわち重合反応時に、(A)成分、(B)成分と共重合し得る。そのため、(D−3)が強固に膜の一部を構成でき、好適な耐摩耗性を発揮する。(D−3)は鎖状であっても環状であってもよい。(D−3)の炭素−炭素二重結合含有フッ素系表面調整剤としては、その化学構造の末端に炭素−炭素二重結合を含有するものが好ましい。炭素−炭素二重結合としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基を例示することができる。(D−3)炭素−炭素二重結合含有フッ素系表面調整剤は、その化学構造にCF3、CHF2、CH2F、−CF2−、−CHF−等のフッ化アルキル基又はフッ化アルキレン基を有する。また、(D−3)は化学構造の一部がポリエーテル若しくはポリエステルで置換されていてもよい。
具体的な(D−3)として、メガファックRS−75(DIC株式会社)、メガファックRS−76−E(DIC株式会社)、メガファックRS−72−K(DIC株式会社)、メガファックRS−76−NS(DIC株式会社)、メガファックRS−90(DIC株式会社)、オプツールDAC−HP(ダイキン工業株式会社)、ZX−058−A(株式会社T&K TOKA)、ZX−201(株式会社T&K TOKA)、ZX−202(株式会社T&K TOKA)、ZX−212(株式会社T&K TOKA)、ZX−214−A(株式会社T&K TOKA)を挙げることができる。
(D−4)について説明する。
(D−4)のシリコーン系表面調整剤は鎖状であっても環状であってもよい。シリコーン系表面調整剤は、−[SiR15R16O]−からなる繰り返し単位を有する。繰り返し単位の数に特段の限定は無いが、20〜500が好ましく、20〜300がより好ましい。R15、R16については、(D−1)で説明したとおりである。(D−4)のシリコーン系表面調整剤としては、その化学構造に炭素−炭素二重結合を含有するものが好ましく、特に化学構造の末端に炭素−炭素二重結合を含有するものがより好ましい。炭素−炭素二重結合としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基を例示することができる。具体的な(D−4)としては、上記(D−1)及び(D−2)で例示したものに加えて、一般的なポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、8019additive(東レ・ダウコーニング株式会社)、BYK−349(ビックケミー・ジャパン株式会社)を挙げることができる。
(D−4)のシリコーン系表面調整剤は鎖状であっても環状であってもよい。シリコーン系表面調整剤は、−[SiR15R16O]−からなる繰り返し単位を有する。繰り返し単位の数に特段の限定は無いが、20〜500が好ましく、20〜300がより好ましい。R15、R16については、(D−1)で説明したとおりである。(D−4)のシリコーン系表面調整剤としては、その化学構造に炭素−炭素二重結合を含有するものが好ましく、特に化学構造の末端に炭素−炭素二重結合を含有するものがより好ましい。炭素−炭素二重結合としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基を例示することができる。具体的な(D−4)としては、上記(D−1)及び(D−2)で例示したものに加えて、一般的なポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、8019additive(東レ・ダウコーニング株式会社)、BYK−349(ビックケミー・ジャパン株式会社)を挙げることができる。
(D−4)の炭素−炭素二重結合含有フッ素系表面調整剤は、(D−3)で説明したのと同じである。また、(D−4)のシリコーン系表面調整剤及び炭素−炭素二重結合含有フッ素系表面調整剤はいずれも化学構造の一部がポリエーテル若しくはポリエステルで置換されていてもよい。
(D)成分としては、シリコーン系表面調整剤及び炭素−炭素二重結合含有フッ素系表面調整剤による耐摩耗性の相乗効果が奏される点から、(D−4)が好ましい。
本発明の組成物における(D)成分の含有割合は、(A)成分、(B)成分、および(C)成分の合計100質量部に対して0.01〜2質量部であり、より好ましくは0.02〜1.5質量部、さらに好ましくは0.03〜1.2質量部、特に好ましくは0.04〜1質量部である。また、(D)成分が(D−4)の場合、シリコーン系表面調整剤と炭素−炭素二重結合含有フッ素系表面調整剤との配合質量比は、1:5〜5:1の範囲内が好ましく、1:4〜2:1の範囲内がより好ましく、1:3〜1:1の範囲内が特に好ましい。
本発明の膜における好ましい(D)成分の含有割合は、膜全体を100質量%としたとき、0.009〜1.8質量%であり、より好ましくは0.018〜1.35質量%、さらに好ましくは0.027〜1.08質量%、特に好ましくは0.036〜0.9質量%である。
本発明の膜は、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を含む組成物を硬化させたものである。上記組成物の硬化時には、(A)成分、(B)成分等が重合反応を起こし高分子化する。上記組成物には、ラジカル重合開始剤、紫外線吸収剤、有機溶剤、ヒンダードアミン系光安定剤、重合禁止剤、酸化防止剤、不飽和化合物、有機ポリマー等の添加物を配合しても良い。
ラジカル重合開始剤を用いることで、本発明の組成物を速やかに硬化させることができる。ラジカル重合開始剤としては、公知の光ラジカル重合開始剤及び熱ラジカル重合開始剤を採用すれば良い。ラジカル重合開始剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。本発明の組成物におけるラジカル重合開始剤の好ましい含有割合は、(A)成分、(B)成分、および(C)成分の合計100質量部に対して、0.1〜10質量部であり、より好ましくは0.5〜5質量部、特に好ましくは1〜3質量部である。
光ラジカル重合開始剤の具体例としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−〔4−(1−メチルビニル)フェニル〕プロパノン}および2−ヒドロキシ−1−{4−〔4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル〕フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン等のアセトフェノン系化合物;ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノンおよび4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルスルファイド等のベンゾフェノン系化合物;メチルベンゾイルフォルメート、オキシフェニル酢酸の2−(2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ)エチルエステルおよびオキシフェニル酢酸の2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステル等のα−ケトエステル系化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のフォスフィンオキサイド系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルおよびベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン系化合物;チタノセン系化合物;1−〔4−(4−ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル〕−2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルフィニル)プロパン−1−オン等のアセトフェノン/ベンゾフェノンハイブリッド系光開始剤;2−(O−ベンゾイルオキシム)−1−〔4−(フェニルチオ)〕−1,2−オクタンジオン等のオキシムエステル系光重合開始剤;並びにカンファーキノンが例示できる。
熱ラジカル重合開始剤としては、有機過酸化物およびアゾ系化合物等が挙げられる。
有機過酸化物の具体例としては、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、α、α‘−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイドおよびt−ブチルハイドロパーオキサイドを例示できる。
アゾ系化合物の具体例としては、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾジ−t−オクタンおよびアゾジ−t−ブタンを例示できる。
紫外線吸収剤を用いることで、本発明の膜が被覆する車両用部材の紫外線による劣化を抑制することができる。紫外線吸収剤としては、公知のものを採用すれば良い。紫外線吸収剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。本発明の組成物における紫外線吸収剤の含有割合は、(A)成分、(B)成分、および(C)成分の合計100質量部に対して、1〜12質量部が好ましく、より好ましくは3〜12質量部である。
紫外線吸収剤の含有割合を1〜12質量部とすることで、膜の耐摩耗性および耐候性を好適に両立させることができる。紫外線吸収剤が1質量部未満では、十分な耐候性を示す膜が得られない恐れがある。一方、紫外線吸収剤が多すぎると、膜の耐摩耗性が低下するだけでなく、耐候性も低下する傾向にある。
紫外線吸収剤の具体例としては、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシロキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシロキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−(2−エチルヘキシロキシ)プロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブチロキシフェニル)−6−(2,4−ビス−ブチロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチロキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン等のトリアジン系紫外線吸収剤;2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−5−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、オクチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等のシアノアクリレート系紫外線吸収剤、酸化チタン微粒子、酸化亜鉛微粒子、酸化錫微粒子等の紫外線を吸収する無機微粒子を例示できる。膜の耐候性と耐摩耗性を好適に両立させ得る点で、(メタ)アクリロイル基を有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましい。
有機溶剤を用いることで、組成物を均一に車両用部材に塗布することができる。また、有機溶剤を含有する組成物を用いた場合には、膜形成時の乾燥工程及び硬化工程にて有機溶剤が離脱するのに併せて、(D)成分は組成物中を移動し(migration)、膜の表面付近に集合する。特に、化学構造の一部がポリエーテル若しくはポリエステルで置換されている(D)成分は、(D)成分の化学構造における極性のポリエーテル若しくはポリエステル部分を膜内部側に位置し、耐摩耗性に優れるアルキル基やフルオロアルキル基などの部分を膜表面側に位置するようにmigrationするため、膜の耐摩耗性の観点から好適である。有機溶剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
有機溶剤の具体例としては、エタノールおよびイソプロパノール等のアルコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のアルキレングリコールモノエーテル;トルエンおよびキシレン等の芳香族化合物;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトン等のケトン;ジブチルエーテル等のエーテル;ジアセトンアルコール;並びにN−メチルピロリドン等が挙げられる。これらのうち、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノエーテルは、各種成分の分散性または溶解性に優れるだけでなく、組成物が塗布される車両用部材がポリカーボネート樹脂製である場合に、ポリカーボネート樹脂を溶かさないため、特に好ましい。
さらに、有機溶剤として、アルコールやアルキレングリコールモノエーテル等のポリカーボネート樹脂を溶かさない有機溶剤と、エステルやケトン等のポリカーボネート樹脂を溶かす有機溶剤を混合して用いると、塗工時にはポリカーボネート樹脂製車両用部材は溶かさず、その後の加熱工程では該部材表面をミクロンオーダーで溶解して膜の密着性を高める手法を適用できる。また、種々の沸点の有機溶剤を併用することで、膜表面の平滑性を高める手法を適用できる。
本発明の組成物における有機溶剤の含有割合は、(A)成分、(B)成分、および(C)成分の合計100質量部に対して、10〜1000質量部が好ましい。有機溶剤の配合量が少なすぎると組成物の均一な塗布が行いにくく、多すぎると十分な厚さの膜が得られにくい。したがって、有機溶剤は、塗膜方法に応じて適宜選択すればよいが、敢えて規定するのであれば、生産性の観点から、好ましくは50〜500質量部、さらに好ましくは50〜300質量部である。
ヒンダードアミン系光安定剤を用いることで、本発明の膜の耐候性を向上できる。ヒンダードアミン系光安定剤としては、公知のものを採用すれば良い。ヒンダードアミン系光安定剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。ヒンダードアミン系光安定剤の含有割合としては、(A)成分、(B)成分、および(C)成分の合計100質量部に対して0.05〜1.5質量部が好ましく、0.1〜1.5質量部がより好ましい。
ヒンダードアミン系光安定剤の具体例としては、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、2,4−ビス[N−ブチル−N−(1−シクロヘキシロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ]−6−(2−ヒドロキシエチルアミン)−1,3,5−トリアジン、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチロキシ)−4−ピペリジニル)エステルを例示できる。これらのうち、ヒンダードアミンの塩基性が低いものが組成物の安定性の点で好ましく、具体的には、アミノエーテル基を有する所謂NOR型のものがより好ましい。
本発明の組成物には、保存安定性を良好にする目的で、重合禁止剤を添加することが好ましい。重合禁止剤の具体例としては、ハイドロキノン、tert−ブチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノール、ベンゾキノン、フェノチアジン、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンのアンモニウム塩、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンのアルミニウム塩、ジブチルジチオカルバミン酸銅、塩化銅、硫酸銅を例示できる。
本発明の組成物における重合禁止剤の添加量は、(A)成分、(B)成分、および(C)成分の合計100質量部に対して10〜10,000ppmとする事が好ましく、より好ましくは100〜3000ppmである。
本発明の組成物には、膜の耐熱性や耐候性を良好にする目的で、各種の酸化防止剤を配合してもよい。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤等の一次酸化防止剤や、イオウ系およびリン系の二次酸化防止剤が挙げられる。酸化防止剤の好ましい配合量は、(A)成分、(B)成分、および(C)成分の合計100質量部に対して0〜5質量部であり、より好ましくは0〜3質量部である。
一次酸化防止剤の具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、1,3,5−トリス[(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリル)メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンを例示できる。
二次酸化防止剤の具体例としては、ジドデシル3,3’−チオジプロピオネート、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイトを例示できる。
本発明の組成物には、1分子中に1個以上のラジカル重合性不飽和基を有する、(A)成分および(B)成分以外の不飽和化合物を配合してもよい。不飽和化合物の配合割合としては、耐摩耗性および耐候性が悪化するのを防ぐ観点から、(A)成分、(B)成分、および(C)成分の合計100質量部に対して、20質量部以下とすることが好ましい。
不飽和化合物としては、1分子中に1個のラジカル重合性不飽和基を有する化合物(以下、「単官能不飽和化合物」という)と、1分子中に2個以上のラジカル重合性不飽和基を有する化合物(以下、「多官能不飽和化合物」という)がある。
単官能不飽和化合物は、膜と車両用部材との密着性を高めるために配合することができる。単官能不飽和化合物におけるラジカル重合性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
単官能不飽和化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸、アクリル酸のマイケル付加型のダイマー、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノールのアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、アルキルフェノールのアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、パラクミルフェノールのアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、オルトフェニルフェノール(メタ)アクリレート、オルトフェニルフェノールのアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンメチロール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、N−(2−(メタ)アクリロキシエチル)ヘキサヒドロフタルイミド、N−(2−(メタ)アクリロキシエチル)テトラヒドロフタルイミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタムを例示できる。
多官能不飽和化合物は、膜と樹脂基材との密着性および膜の耐摩耗性を高める目的で配合することができる。多官能不飽和化合物におけるラジカル重合性不飽和基の数は、耐摩耗性を低下させないためには1分子中に3個以上であることが好ましく、4〜20個であることがより好ましい。多官能不飽和化合物としては、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましく、具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールZアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、チオビスフェノールアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールZのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSのジ(メタ)アクリレート、チオビスフェノールのジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリンアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ダイマー酸ジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメチロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンアルキレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのトリ又はテトラアクリレート、ペンタエリスリトールアルキレンオキサイド付加物のトリ又はテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ又はペンタアクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、末端に(メタ)アクリロイル基を有するシリコーン樹脂等が挙げられる。
ポリエステル(メタ)アクリレートとしては、ポリエステルポリオールと(メタ)アクリル酸との脱水縮合物が挙げられる。ポリエステルポリオールとしては、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、シクロヘキサンジメチロール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、およびトリメチロールプロパン等の低分子量ポリオール、並びにこれらのアルキレンオキシド付加物等のポリオールと、アジピン酸、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸およびテレフタル酸等の二塩基酸またはその無水物等の酸成分とからの反応物等が挙げられる。また、各種デンドリマー型ポリオールと(メタ)アクリル酸との脱水縮合物が挙げられる。
エポキシ(メタ)アクリレートとしては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の(メタ)アクリル酸付加物、水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂の(メタ)アクリル酸付加物、フェノールまたはクレゾールノボラック型エポキシ樹脂の(メタ)アクリル酸付加物、ビフェニル型エポキシ樹脂の(メタ)アクリル酸付加物、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルのジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、ポリブタジエンのジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、ポリブタジエン内部エポキシ化物の(メタ)アクリル酸付加物、エポキシ基を有するシリコーン樹脂の(メタ)アクリル酸付加物、リモネンジオキサイドの(メタ)アクリル酸付加物、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートの(メタ)アクリル酸付加物等が挙げられる。
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、有機ポリイソシアネートとヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを付加反応させた化合物や、有機ポリイソシアネートとポリオールとヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを付加反応させた化合物が挙げられる。有機ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、およびイソホロンジイソシアネート等が挙げられる。ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートや、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有多官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。ポリオールとしては、低分子量ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられる。低分子量ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメチロール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、およびグリセリン等が挙げられる。ポリエーテルポリオールとしては、ポリプロピレングリコールやポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。ポリエステルポリオールとしては、これら低分子量ポリオールおよび/またはポリエーテルポリオールと、アジピン酸、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸およびテレフタル酸等の二塩基酸またはその無水物等の酸成分との反応物が挙げられる。
以上列挙した不飽和化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物には、透明性を維持しながら硬化時の反りを低減させる目的等で、有機ポリマーを配合することもできる。好適なポリマーとしては、(メタ)アクリル系ポリマーが挙げられ、好適な構成モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、N−(2−(メタ)アクリロキシエチル)テトラヒドロフタルイミド等が挙げられる。(メタ)アクリル酸を共重合したポリマーの場合、グリシジル(メタ)アクリレートを付加させて(メタ)アクリロイル基をポリマー鎖に導入してもよい。
本発明の膜の膜厚について説明する。膜厚が厚いほど耐候性は向上する。しかし、膜の外観および生産性の観点から、膜厚を著しく厚くするのは好ましくない。耐候性、外観および生産性を考慮すると、膜の膜厚は5〜70μmが好ましく、10〜50μmがより好ましい。なお、本発明の膜は、該膜と車両用部材の間に下塗り層を形成することなく、優れた密着性が発揮される。
本発明の車両用部材は本発明の膜で被覆されてなる。被覆箇所は車両用部材の一部の表面でもよいし、表面全体でもよい。車両用部材のうち、耐摩耗性や耐候性が要求される箇所に適宜適切な量で本発明の膜を被覆させればよい。
車両用部材としては、自動車、産業車両、パーソナルビークル、自走可能な車体、鉄道などの内外装部材、外板および樹脂ウィンドウ等が挙げられる。
外装部材としては、ドアモール、ドアミラーのフレーム枠、ホイールキャップ、スポイラー、バンパー、ウィンカーレンズ、ピラーガーニッシュ、リアフィニッシャー、ヘッドランプカバー等が挙げられる。
内装部材としては、インストルメントパネル、コンソールボックス、メーターカバー、ドアロックペゼル、ステアリングホイール、パワーウィンドウスイッチベース、センタークラスター、ダッシュボード、ボンネット等が挙げられる。
外板としては、フロントフェンダー、ドアパネル、ルーフパネル、フードパネル、トランクリッド、バックドアパネル等が挙げられる。
樹脂ウィンドウとしては、サンルーフ、フロントガラス、サイドガラス、リアガラス、リアクウォーターガラス、リアドアクウォーターガラス等が挙げられる。
車両用部材は樹脂製のものがよい。樹脂としては、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂およびポリウレタン等を挙げることができる。特に、ポリカーボネートは十分な透明性と耐衝撃性を有するため、窓ガラス等の車両用部材の樹脂として好適である。
以下に、本発明の膜及び車両用部材の製造方法を説明する。本発明の膜及び車両用部材の製造方法は、主として、調製工程、塗布工程および硬化工程を含む。
調製工程は、各成分を所定の配合割合で混合し、本発明の組成物を調製する工程である。
塗布工程は、車両用部材の表面の少なくとも一部に本発明の組成物を塗布する工程である。組成物の塗布方法は、常法に従えばよい。たとえば、スプレー法、スピンコート法、ディップコート法、バーコート法、フローコート法などが好ましく、車両用部材の形状などに応じて選択するとよい。このとき、車両用部材の表面が有機溶媒を含む組成物に長時間さらされないようにすると、有機溶剤による車両用部材の劣化が抑制される。塗布により形成する塗膜の膜厚は、組成物に含まれる固形分の割合にもよるが、得られる膜の厚さに応じて適宜選択すればよい。たとえば、塗膜(乾燥および硬化前)の膜厚を6〜100μmとするとよい。なお、乾燥後あるいは硬化後の膜厚が不十分であれば、さらに塗布から硬化までの工程を繰り返し行えばよい。
塗布工程と硬化工程との間に、塗膜を乾燥させる乾燥工程を行ってもよい。乾燥工程は、有機溶剤や水等の揮発性成分を自然乾燥、加熱乾燥、真空乾燥などの手段で除去する工程である。塗膜の乾燥温度は、車両用部材の耐熱性に応じて適宜選択すればよく、例えば車両用部材が樹脂の場合はその軟化点以下とすればよい。具体的には、車両用部材がポリカーボネート製の場合、乾燥温度は50〜120℃の範囲とするのが好ましい。
硬化工程は、組成物(塗膜)を硬化させて車両用部材の表面に膜を形成させる工程である。組成物のうち少なくとも(A)成分及び(B)成分には重合可能な末端オレフィンが存在するため、組成物に熱等のエネルギーを与えることで重合反応が進行し、組成物が硬化する。組成物が光ラジカル重合開始剤又は熱ラジカル重合開始剤を含む場合には、それぞれの重合開始剤が作用する条件下に組成物を供すればよい。組成物が光ラジカル重合開始剤を含む場合は、組成物を車両用部材に塗布した後、乾燥し、紫外線等の光を照射すればよい。好ましい製造方法としては、乾燥後の塗膜を高温条件下で光を照射する方法が挙げられる。ここで、上記高温条件下とは、車両用部材の性能維持温度以下であればよい。たとえば、車両用部材がポリカーボネート製の場合、50〜120℃の範囲が好ましく、60〜110℃の範囲がより好ましく、70〜100℃の範囲がさらに好ましく、80〜100℃の範囲が特に好ましい。紫外線を照射する際の温度条件を50〜120℃の範囲に維持することで、膜の耐摩耗性を高めることができる。
光としては、紫外線および可視光線が挙げられ、紫外線が特に好ましい。紫外線照射装置としては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、UV無電極ランプ、LED等が挙げられる。UV無電極ランプの場合、直流電源電流による新しいタイプのものも好適に使用することができる。照射エネルギーは、活性エネルギー線の種類や配合組成に応じて適宜設定すべきものであるが、一例として高圧水銀ランプを使用する場合を挙げると、UV−A領域の照射エネルギーで100〜10,000mJ/cm2が好ましく、1,000〜6,000mJ/cm2がより好ましい。
組成物が熱ラジカル重合開始剤を含む場合には、組成物を車両用部材に塗布した後、乾燥し、さらに加熱するとよい。加熱温度としては、車両用部材の性能維持温度以下であれば特に限定されるものではないが、80〜200℃が好ましい。加熱時間としては、10分以上120分以下が好ましい。生産性の観点からであれば、60分以下さらには30分以下とするとよい。
なお、硬化工程は、大気中で行ってもよいし、真空中、不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。膜の性能上、真空中または不活性ガス雰囲気中が好ましいが、生産性の面から大気中で行ってもよい。
本明細書において乾燥および加熱の温度は、塗膜の表面温度であって、乾燥または加熱の雰囲気温度にほぼ等しい。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
以下に、実施例および比較例等を示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。以下において「部」とは質量部を意味し、「%」とは質量%を意味する。
(製造例1):(A)成分の製造(HDI3−HBA)
攪拌装置および空気の吹き込み管を備えた3Lセパラブルフラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート型三量体を主成分とするイソシアネート化合物〔旭化成ケミカルズ(株)製デュラネートTPA−100。NCO含有量23%。〕1369.5g(NCO7.5モル)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール1.22g、ジブチルスズジラウレート0.73gを仕込み、液温を50〜70℃で攪拌しながら、4−ヒドロキシブチルアクリレート1080g(7.5モル)を滴下した。
攪拌装置および空気の吹き込み管を備えた3Lセパラブルフラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート型三量体を主成分とするイソシアネート化合物〔旭化成ケミカルズ(株)製デュラネートTPA−100。NCO含有量23%。〕1369.5g(NCO7.5モル)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール1.22g、ジブチルスズジラウレート0.73gを仕込み、液温を50〜70℃で攪拌しながら、4−ヒドロキシブチルアクリレート1080g(7.5モル)を滴下した。
滴下終了後、80℃で4時間攪拌し、IR分析にて、反応液からイソシアネート基のものが消失していることを確認して反応を終了し、(A)成分に該当するイソシアヌル環含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物を得た。以下、この反応生成物を「HDI3−HBA」と呼ぶ。
HDI3−HBAは、前記一般式(1)において、R1、R2およびR3が全てテトラメチレン基で、R4、R5およびR6が全て水素原子である化合物に該当する。
(製造例2):(C)成分の製造(THPI−シリカ)
撹拌器を備えた3Lセパラブルフラスコに、トルエン1119g、3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸無水物456g(3.0mol)を仕込み、室温で撹拌しながら窒素下で、3−アミノプロピルトリエトキシシラン663g(3.0mol)を滴下した。滴下終了後、エタノールが留出するまで昇温し、次いで反応液を85〜110℃の範囲に保ちながら4時間反応させた。
撹拌器を備えた3Lセパラブルフラスコに、トルエン1119g、3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸無水物456g(3.0mol)を仕込み、室温で撹拌しながら窒素下で、3−アミノプロピルトリエトキシシラン663g(3.0mol)を滴下した。滴下終了後、エタノールが留出するまで昇温し、次いで反応液を85〜110℃の範囲に保ちながら4時間反応させた。
反応終了後、フラスコを80℃のオイルバスで加熱しながらトルエンやエタノール等の低沸点成分を減圧留去し、一般式(3)のシラン化合物であり(c1)に該当する化合物を得た。以下、この反応生成物を「THPI−アルコキシシラン」と呼ぶ。得られたTHPI−アルコキシシランの構造は、1H−NMRスペクトルより、前記一般式(3)において、R13がエチル基、R14が1,3−プロピレン基(トリメチレン基)、zが1.2の化合物であることを確認した。
撹拌器を備えた3Lセパラブルフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、PGMという)960g、水23.6g、およびイソプロピルアルコール分散コロイダルシリカ(日産化学工業(株)製IPA−ST、平均粒子径10〜15nm(BET法による比表面積から算出した値)、固形分30%、イソプロピルアルコール70%含有。)800gを仕込み、撹拌均一化後、THPI−アルコキシシラン189gを仕込んで室温で攪拌し、コロイド分散液とした。このとき、(c1)と(c2)の質量比は44:56であった。
このコロイド分散液を窒素下で80℃に加熱して4時間反応させた後、不揮発性成分が35%となるまでIPAや水等を留去して濃縮した。次いで、PGM640gを加え、反応系中に残存する少量の水等をPGM等と共に留去して不揮発性成分35%の反応生成物を得た。以後、ここで得られた反応生成物のうち、溶剤等を除いた不揮発性成分〔(C)成分〕を「THPI−シリカ」と呼ぶ。
(実施例1)
(A)成分としてHDI3−HBAを60部、(B)成分としてM−315(東亞合成株式会社、商品名アロニックスM−315)を30部、(C)成分としてTHPI−シリカを10部、(D)成分((D−1)及び(D−2)に該当)としてEBECRYL350(ダイセル・オルネクス株式会社)を0.1部、光ラジカル重合開始剤としてIrg−819(BASF株式会社、商品名イルガキュア819)を2部、紫外線吸収剤としてRUVA−93(大塚化学株式会社)を5部、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルを110部、ヒンダードアミン系光安定剤としてT−123(BASF株式会社、商品名チヌビン123)を0.5部混合し、撹拌して実施例1の組成物とした。
(A)成分としてHDI3−HBAを60部、(B)成分としてM−315(東亞合成株式会社、商品名アロニックスM−315)を30部、(C)成分としてTHPI−シリカを10部、(D)成分((D−1)及び(D−2)に該当)としてEBECRYL350(ダイセル・オルネクス株式会社)を0.1部、光ラジカル重合開始剤としてIrg−819(BASF株式会社、商品名イルガキュア819)を2部、紫外線吸収剤としてRUVA−93(大塚化学株式会社)を5部、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルを110部、ヒンダードアミン系光安定剤としてT−123(BASF株式会社、商品名チヌビン123)を0.5部混合し、撹拌して実施例1の組成物とした。
なお、M−315はトリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートでああり、一般式(2)において、R7、R8およびR9がエチレン基であり、R10、R11およびR12が水素原子であり、n1、n2およびn3が1で、n1+n2+n3=3である化合物に該当する。
EBECRYL350は、−[SiR15R16O]−からなる繰り返し単位を20〜500有し、その化学構造の末端にアクリル基からなる炭素−炭素二重結合を含有する化合物を99〜100%含むものであるから、実施例1の組成物には実質的に(D)成分が0.1部配合されていたことになる。
Irg−819はビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドである。RUVA−93は2−[2−ヒドロキシ−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾールである。T−123はデカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチロキシ)−4−ピペリジニル)エステルである。
参考までに、RUVA−93及びT−123の化学構造を以下に示す。
実施例1の組成物を、10cm四方のポリカーボネート製の板の表面に、乾燥後の塗膜厚さが15〜35μm程度となるようにバーコータで塗布した。次いで、100℃の熱風乾燥機で10分間乾燥した後、すぐに(塗膜表面温度90℃で)紫外線照射を行って、板の表面に実施例1の膜(膜厚14μm)を備える実施例1の部材を作製した。
紫外線照射は、アイグラフィックス(株)製の高圧水銀ランプを使用し、EIT社製のUV POWER PUCKのUV−A領域で、ピーク照度400mW/cm2、1パス当りの照射エネルギー250mJ/cm2となるようランプ出力、ランプ高さ、およびコンベア速度を調整し、12パス(合計3000mJ/cm2)照射して実施した。
(実施例2)
(D)成分((D−2)に該当)としてBYK−371(ビックケミー・ジャパン株式会社)を0.1部用いた以外は、実施例1と同様に、実施例2の組成物、膜及び部材を作成した。ただし、BYK−371は(D)成分としてのアクリル基含有ポリエステル変性ポリジメチルシロキサンを40%含むものであるから、実施例2の組成物には実質的に(D)成分が0.04部配合されていたことになる。
(D)成分((D−2)に該当)としてBYK−371(ビックケミー・ジャパン株式会社)を0.1部用いた以外は、実施例1と同様に、実施例2の組成物、膜及び部材を作成した。ただし、BYK−371は(D)成分としてのアクリル基含有ポリエステル変性ポリジメチルシロキサンを40%含むものであるから、実施例2の組成物には実質的に(D)成分が0.04部配合されていたことになる。
(実施例3)
(D)成分((D−1)に該当)としてBYK−378(ビックケミー・ジャパン株式会社)を0.1部用いた以外は、実施例1と同様に、実施例3の組成物、膜及び部材を作成した。ただし、BYK−378は(D)成分としてのポリエーテル変性ジメチルポリシロキサンを80.5%含むものであるから、実施例3の組成物には実質的に(D)成分が0.08部配合されていたことになる。
(D)成分((D−1)に該当)としてBYK−378(ビックケミー・ジャパン株式会社)を0.1部用いた以外は、実施例1と同様に、実施例3の組成物、膜及び部材を作成した。ただし、BYK−378は(D)成分としてのポリエーテル変性ジメチルポリシロキサンを80.5%含むものであるから、実施例3の組成物には実質的に(D)成分が0.08部配合されていたことになる。
(実施例4)
(D)成分((D−1)及び(D−2)に該当)としてBYK−UV3500(ビックケミー・ジャパン株式会社)を0.1部用いた以外は、実施例1と同様に、実施例4の組成物、膜及び部材を作成した。なお、BYK−UV3500は、アクリル基含有ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンそのものである。
(D)成分((D−1)及び(D−2)に該当)としてBYK−UV3500(ビックケミー・ジャパン株式会社)を0.1部用いた以外は、実施例1と同様に、実施例4の組成物、膜及び部材を作成した。なお、BYK−UV3500は、アクリル基含有ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンそのものである。
(実施例5)
(D)成分((D−3)に該当)としてメガファックRS−75(DIC株式会社)を0.5部用いた以外は、実施例1と同様に、実施例5の組成物、膜及び部材を作成した。ただし、メガファックRS−75は(D)成分を40%含むものであるから、実施例5の組成物には実質的に(D)成分が0.2部配合されていたことになる。
(D)成分((D−3)に該当)としてメガファックRS−75(DIC株式会社)を0.5部用いた以外は、実施例1と同様に、実施例5の組成物、膜及び部材を作成した。ただし、メガファックRS−75は(D)成分を40%含むものであるから、実施例5の組成物には実質的に(D)成分が0.2部配合されていたことになる。
(実施例6)
(D)成分((D−3)に該当)としてメガファックRS−76−E(DIC株式会社)を0.5部用いた以外は、実施例1と同様に、実施例6の組成物、膜及び部材を作成した。ただし、メガファックRS−76−Eは(D)成分を40%含むものであるから、実施例6の組成物には実質的に(D)成分が0.2部配合されていたことになる。
(D)成分((D−3)に該当)としてメガファックRS−76−E(DIC株式会社)を0.5部用いた以外は、実施例1と同様に、実施例6の組成物、膜及び部材を作成した。ただし、メガファックRS−76−Eは(D)成分を40%含むものであるから、実施例6の組成物には実質的に(D)成分が0.2部配合されていたことになる。
(実施例7)
(D)成分((D−4)に該当)として8019additive(東レ・ダウコーニング株式会社)を0.1部及びメガファックRS−75(DIC株式会社)を0.5部用いた以外は、実施例1と同様に、実施例7の組成物、膜及び部材を作成した。ただし、8019additiveは(D)成分としてのオクタメチルシクロテトラシロキサンを約99%含み、メガファックRS−75は(D)成分を40%含むものであるから、実施例7の組成物には実質的に(D)成分が0.1部及び0.2部の合計0.3部配合されていたことになる。
(D)成分((D−4)に該当)として8019additive(東レ・ダウコーニング株式会社)を0.1部及びメガファックRS−75(DIC株式会社)を0.5部用いた以外は、実施例1と同様に、実施例7の組成物、膜及び部材を作成した。ただし、8019additiveは(D)成分としてのオクタメチルシクロテトラシロキサンを約99%含み、メガファックRS−75は(D)成分を40%含むものであるから、実施例7の組成物には実質的に(D)成分が0.1部及び0.2部の合計0.3部配合されていたことになる。
(実施例8)
(D)成分((D−4)に該当)としてBYK−349(ビックケミー・ジャパン株式会社)を0.1部及びメガファックRS−75(DIC株式会社)を0.5部用いた以外は、実施例1と同様に、実施例8の組成物、膜及び部材を作成した。ただし、BYK−349は(D)成分としてのポリエーテル変性シロキサンを85%含むものであり、メガファックRS−75は(D)成分を40%含むものであるから、実施例8の組成物には実質的に(D)成分が0.085部及び0.2部の合計0.285部配合されていたことになる。
(D)成分((D−4)に該当)としてBYK−349(ビックケミー・ジャパン株式会社)を0.1部及びメガファックRS−75(DIC株式会社)を0.5部用いた以外は、実施例1と同様に、実施例8の組成物、膜及び部材を作成した。ただし、BYK−349は(D)成分としてのポリエーテル変性シロキサンを85%含むものであり、メガファックRS−75は(D)成分を40%含むものであるから、実施例8の組成物には実質的に(D)成分が0.085部及び0.2部の合計0.285部配合されていたことになる。
(実施例9)
(D)成分((D−4)に該当)としてBYK−UV3500(ビックケミー・ジャパン株式会社)を0.1部及びメガファックRS−75(DIC株式会社)を0.5部用いた以外は、実施例1と同様に、実施例9の組成物、膜及び部材を作成した。ただし、メガファックRS−75は(D)成分を40%含むものであるから、実施例9の組成物には実質的に(D)成分が0.1部及び0.2部の合計0.3部配合されていたことになる。
(D)成分((D−4)に該当)としてBYK−UV3500(ビックケミー・ジャパン株式会社)を0.1部及びメガファックRS−75(DIC株式会社)を0.5部用いた以外は、実施例1と同様に、実施例9の組成物、膜及び部材を作成した。ただし、メガファックRS−75は(D)成分を40%含むものであるから、実施例9の組成物には実質的に(D)成分が0.1部及び0.2部の合計0.3部配合されていたことになる。
(比較例1)
(D´)成分として8019additive(東レ・ダウコーニング株式会社)を0.1部用いた以外は、実施例1と同様に、比較例1の組成物、膜及び部材を作成した。ただし、8019additiveは(D´)成分としてのオクタメチルシクロテトラシロキサンを約99%含むものであるから、比較例1の組成物には実質的に(D´)成分が0.1部配合されていたことになる。
(D´)成分として8019additive(東レ・ダウコーニング株式会社)を0.1部用いた以外は、実施例1と同様に、比較例1の組成物、膜及び部材を作成した。ただし、8019additiveは(D´)成分としてのオクタメチルシクロテトラシロキサンを約99%含むものであるから、比較例1の組成物には実質的に(D´)成分が0.1部配合されていたことになる。
(比較例2)
(D´)成分としてBYK−349(ビックケミー・ジャパン株式会社)を0.1部用いた以外は、実施例1と同様に、比較例2の組成物、膜及び部材を作成した。ただし、BYK−349は(D´)成分としてのポリエーテル変性シロキサンを85%含むものであるから、比較例2の組成物には実質的に(D´)成分が0.085部配合されていたことになる。
(D´)成分としてBYK−349(ビックケミー・ジャパン株式会社)を0.1部用いた以外は、実施例1と同様に、比較例2の組成物、膜及び部材を作成した。ただし、BYK−349は(D´)成分としてのポリエーテル変性シロキサンを85%含むものであるから、比較例2の組成物には実質的に(D´)成分が0.085部配合されていたことになる。
(評価例1)
実施例1〜9、比較例1〜2の膜及び部材につき、以下の耐摩耗性試験、外観試験、透明性試験、密着性試験、耐候性試験を行った。各試験の結果を各組成物の(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分並びにこれらの実質的な配合量とともに図3に示す。
実施例1〜9、比較例1〜2の膜及び部材につき、以下の耐摩耗性試験、外観試験、透明性試験、密着性試験、耐候性試験を行った。各試験の結果を各組成物の(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分並びにこれらの実質的な配合量とともに図3に示す。
耐摩耗性試験:各部材に対し、ASTM D−1044に準拠し、テーバー式摩耗試験機を使用して、テーバー式摩耗試験を行った。試験前後のヘイズHの差ΔH(%)を測定して評価した。ここで、摩耗輪はCS−10F、荷重は各500g、回転数は100回とした。ΔH(%)が小さいものほど、耐摩耗性良好と評価した。
外観試験:目視で膜の性状を観察した。図3において、外観が良好なものを○と表し、白濁が観察されたものを△と表した。
透明性試験:各部材に対し、JIS K7136に準じて、濁度計NDH−2000(日本電色工業製)にて保護膜のヘイズH(%)を測定した。Hの値が小さいほど、透明性良好と評価した。
密着性試験:膜にカッターナイフで縦横各11本の2mm間隔の切り込みを入れて100マスの碁盤目を形成した。この碁盤目にセロハンテープ(ニチバン株式会社)を貼り付け、JIS K5600に準じてセロハンテープを剥離した。セロハンテープ剥離後の残存膜の割合(つまり残存したマス目の数、単位:%)で密着性を評価した。
耐候性試験:JIS K5600に準じて、カーボンアーク式サンシャインウェザメーターにて5000時間の促進試験を行い、5000時間後に上記密着性試験及び外観試験を行った。なお、密着性試験は、膜にセロハンテープを貼り付けて剥がしたとき、膜が剥れなかったものを良好と判定し、図3において○で表した。また、外観試験は、目視観察により膜に割れが発見されなかったものを良好と判定し、図3において○と表した。
図3に示すように、実施例1〜9の膜はいずれも耐摩耗性試験前後のヘイズの差ΔH(%)が4%未満であった。これらの膜はいずれも米国連邦自動車安全基準を満足することが確認できた。実施例1〜9の膜のうち、実施例1、4、7〜9の膜はΔH(%)が3%未満であり、耐摩耗性に著しく優れていることがわかった。実施例1の(D)成分はEBECRYL350であり、−[SiR15R16O]−からなる繰り返し単位を20〜500有し、その化学構造の末端にアクリル基からなる炭素−炭素二重結合を含有するものである。実施例4の(D)成分はBYK−UV3500であり、−[SiR15R16O]−からなる繰り返し単位を20〜500有し、その化学構造の末端にアクリル基からなる炭素−炭素二重結合を含有し、さらに、化学構造内にポリエーテルを有するものである。実施例7〜9の(D)成分は、いずれもシリコーン系表面調整剤及び炭素−炭素二重結合含有フッ素系表面調整剤を併用した(D−4)であって、実施例7〜9の膜が奏した良好な耐摩耗性は、両表面調整剤の相乗効果が発揮された結果と考えられる。
外観試験、透明性試験、密着性試験、耐候性試験については、外観試験において実施例6の膜に白濁が観察されたものの、他の膜においてはいずれの試験においても満足できる結果が得られた。(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の配合量が実施例1〜9及び比較例1〜2の組成物程度の範囲であれば、透明性、密着性及び耐候性に問題がないことが確認できた。
(応用例1)
本発明の車両用部材を、自動車用窓ガラス(サンルーフ)として用いた具体例を、図1および図2を用いて説明する。図1は、サンルーフを模式的に示す斜視図である。サンルーフは、窓ガラス1と、窓ガラス1の周縁部を支持する枠状のフレーム4と、からなる。窓ガラス1およびフレーム4の周縁部には、車内の気密を確保するために、可撓性材料から形成されたループ状のウェザーストリップ5が装着される。このサンルーフは、自動車のルーフパネルに形成された開口に、開閉自在に設けられる。
本発明の車両用部材を、自動車用窓ガラス(サンルーフ)として用いた具体例を、図1および図2を用いて説明する。図1は、サンルーフを模式的に示す斜視図である。サンルーフは、窓ガラス1と、窓ガラス1の周縁部を支持する枠状のフレーム4と、からなる。窓ガラス1およびフレーム4の周縁部には、車内の気密を確保するために、可撓性材料から形成されたループ状のウェザーストリップ5が装着される。このサンルーフは、自動車のルーフパネルに形成された開口に、開閉自在に設けられる。
図2は、窓ガラス1を模式的に示す断面図である。窓ガラス1は、ポリカーボネート製のガラス本体2と、ガラス本体2の少なくとも車外側の表面に形成された膜3と、からなる。膜3は、実施例1〜9の組成物のいずれかを上記の手順で硬化させてなる。
Claims (7)
- 下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計100質量部に対して、該(A)成分を20〜80質量部、該(B)成分を10〜70質量部、該(C)成分を1〜35質量部含み、かつ、(D)成分として、下記(D−1)〜(D−4)のいずれかの表面調整剤を0.01〜2質量部含む組成物を硬化させたことを特徴とする膜。
(A)成分:
下記一般式(1)で表されるイソシアヌル環含有ウレタン(メタ)アクリレート化合物
(B)成分:
下記一般式(2)で表されるウレタン結合を有しないイソシアヌル環含有トリ(メタ)アクリレート化合物
(C)成分:
下記一般式(3)で表されるシラン化合物(c1)とコロイダルシリカ(c2)とを、(c1)と(c2)の質量比を9:1〜1:9で反応させた反応生成物の不揮発性成分であって、(c1)で(c2)を化学修飾したものを含む。
(D成分):
(D−1)−[SiR15R16O]−からなる繰り返し単位を20〜500有するシリコーン系表面調整剤(R15、R16は、それぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
(D−2)炭素−炭素二重結合含有シリコーン系表面調整剤
(D−3)炭素−炭素二重結合含有フッ素系表面調整剤
(D−4)シリコーン系表面調整剤及び炭素−炭素二重結合含有フッ素系表面調整剤 - 前記(D)成分が前記(D−1)であって、該(D−1)のシリコーン系表面調整剤がさらに炭素−炭素二重結合を含有する請求項1に記載の膜。
- 前記(D)成分が前記(D−4)である請求項1に記載の膜。
- 前記(D)成分が前記(D−4)であって、該(D−4)のシリコーン系表面調整剤が、−[SiR15R16O]−からなる繰り返し単位を20〜500有し、かつ炭素−炭素二重結合を含有する請求項1に記載の膜。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の膜で被覆された車両用部材。
- 前記車両用部材がポリカーボネート製である請求項5に記載の車両用部材。
- 前記(D−4)を含有する膜で被覆された樹脂製の車両用部材。
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