本発明は、天井埋込型空気調和機に関する。
従来から、室内の天井に埋込設置された天井埋込型空気調和機は、化粧パネルを天井面とほぼ同一レベルとなるように配置し、その化粧パネルの中央に吸込口を設けるとともに、同じ化粧パネルの吸込口の周囲に吹出口を設けていた。
図4はその従来の天井埋込型空気調和機30の概略構成を示す図である。20は天井である。天井埋込型空気調和機30は、天井20の裏面に突出するように配置された筐体31と、その筐体31の側面内側に周囲方向に縦配置された熱交換器32と、その熱交換器32で囲まれるように内側に配置されたターボファン型の送風ファン33と、その送風ファン33を回転駆動するモータ37と、中央に吸込口34aが形成され周囲に吹出口34bが形成された化粧パネル34と、風向板35と、化粧パネル34を筐体31に対して支持する支持部材36と、吸込口34aから吸引した空気を送風ファン33にガイドする吸込ガイド38と、を備えている。熱交換器32は図5に示すように平面視で四角形状であり、その冷媒配管32aは、横方向に配置され縦方向に複数段で並ぶように両端部が複数個のパスで接続されている。
暖房運転あるいは冷房運転の際は、送風ファン33の回転によって、室内から吸込口34aと吸込ガイド38を経由して吸い込まれた空気が、点線矢印Aで示す経路を経由して、熱交換器32で冷媒と熱交換されてから、吹出口34bより室内に吹き出される。
ところが、図4の室内機は、送風ファン33によって中央の吸込み口34aから吸い込まれた空気が、熱交換器32を通過した後に、筐体31の内壁によって下向きに急激に方向を転じて吹出口34bから室内に吹き出されるので、送風抵抗が大きくなって騒音の上昇や熱交換効率の低下を招くという問題があった。また、ターボファン型の送風ファン33は、図4において、送風ファン33の上側から吹き出される風力が送風ファン33の下側から吹き出される風力よりも大きくなるので、熱交換器32に対して上側から吹きつける風の送風抵抗が大きくなり、この面でも騒音の上昇や熱交換効率の低下を招く。
そこで、図6に示すように、熱交換器32を縦配置から傾斜配置に変更することで、熱交換器32の下側を送風ファン33に近づくようにし、上側を送風ファン33から遠ざけるようにすれば、上記した問題を解決することができる。しかし、この構造では、四角形状の筐体31の内側各辺に、図7に示すように、熱交換器32を4分割した熱交換器32A,32B,32C,32Dを、上側が外側に傾くように傾斜させて配置し、それら各熱交換器32A,32B,32C,32Dの冷媒配管32aを相互に接続しなければならず、大幅なコストアップを招く問題が生じる。
この問題を解決するものとして、熱交換器32に組み込まれる冷媒配管を、縦方向に配置し横方向に複数段で並ぶように上面と下面をそれぞれ複数個のパスで接続して構成したものがある(特許文献1)。
しかしながら、この構造では、冷媒配管のパス接続部分が熱交換器の上面や下面になり、その上面や下面において室外機への配管接続や温度センサ等を取付を行わなければならないので、作業性が悪いという問題がある。
本発明の目的は、送風抵抗を小さくして騒音の上昇や熱交換効率の低下を防止し、コスト増を招くこともなく、室外機への配管接続や温度センサ取付の作業性も損なわれないようにした天井埋込型空気調和機を提供することである。
上記目的を達成するために、請求項1にかかる発明は、天井に取り付けられる筐体と、該筐体内の水平方向の中央に回転軸が垂直になるように配置された送風ファンと、該送風ファンを回転駆動するモータと、該送風ファンの周囲の少なくとも一部を囲み且つ上部が前記送風ファンから遠ざかり下部が前記送風ファンに近づくように前記筐体内に傾斜配置された熱交換器と、前記熱交換器に送る空気を吸い込む空気吸込口と前記熱交換器で冷媒と熱交換された空気を吹き出す空気吹出口とを有する化粧パネルと、を備えた空気調和機の天井埋込型空気調和機であって、前記熱交換器は、横方向に配置され縦方向に複数段で並ぶように両端部で複数個のパスで接続された冷媒配管を備え、且つ少なくとも1か所の曲折部を有し、該曲折部は下側曲折部よりも上側曲折部が内側に倒れ込むように折り曲げられていることを特徴とする。
請求項2にかかる発明は、請求項1に記載の天井埋込型空気調和機において、前記熱交換器の前記曲折部は、前記上側曲折部が前記下側曲折部よりも開き角度が大きいことを特徴とする。
請求項3にかかる発明は、請求項1に記載の天井埋込型空気調和機において、前記熱交換器の前記曲折部の前記上側曲折部は、前記下側曲折部から斜め方向に曲折された第1の曲折部と前記下側曲折部から逆の斜め方向に曲折された第2の曲折部により形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、熱交換器は上部が送風ファンから遠ざかり下部が送風ファンに近づくように筐体内に傾斜配置されるので、その熱交換器から吹出口に至る通路が広くなり、また送風ファンから熱交換器への風圧が均一化されるので、大きな送風抵抗がなくなり、騒音を抑制することができ、モータの小型化も可能となる。また、熱交換器自体は1枚の長尺形状の熱交換器を曲折することで形成できるので、大きなコスト増を招くことはない。また、冷媒配管は、横方向に配置され縦方向に複数段で並ぶように両端部が複数のパスで接続されているので、室外機への配管接続や温度センサ取付は従来と同じ手法で行うことができ、作業性が損なわれることもない。
本発明の実施例の天井埋込型空気調和機の縦断面図である。
図1の天井埋込型空気調和機の熱交換器の平面図である。
図1の天井埋込型空気調和機の熱交換器の斜視図である。
従来の天井埋込型空気調和機の縦断面図である。
図4の天井埋込型空気調和機の熱交換器の平面図である。
別の従来の天井埋込型空気調和機の断面図である。
図6の天井埋込型空気調和機の熱交換器の平面図である。
図1に本発明の実施例の天井埋込型空気調和機10を示す。本実施例の天井埋込型空気調和機10は、天井20の裏面に突出するように配置された筐体11と、その筐体11の側面内側に傾斜配置された熱交換器12と、その熱交換器12で囲まれるように配置され垂直方向に回転軸をもつターボファン型の送風ファン13と、その送風ファン13を回転駆動するモータ17と、その中央に吸込口14aが形成され周囲に吹出口14bが形成された化粧パネル14と、風向板15と、化粧パネル14を筐体11に対して支持する支持部材16と、吸込口34aから吸引した空気を送風ファン13にガイドする吸引ガイド18と、を備える。
暖房運転や冷房運転の際は、送風ファン13の回転によって、室内から吸込口14aと吸込ガイド18を経由して吸い込まれた空気が、点線矢印Aで示す経路を経由して、熱交換器12で冷媒と熱交換されてから、吹出口34bより室内に吹き出される。送風運転の場合は熱交換されず室内に吹き出される。
熱交換器12は、図2と図3に示すように、上部12aの角部付近を除く4辺が外側に傾斜し下部12bの4辺が内側に傾斜するような平面視で略四角形状に折り曲げられ、これにより各辺の上部12aが外側に張り出ている。この熱交換器12は、横方向に配置され縦方向に複数段で並ぶように両端部で複数のパスで接続された冷媒配管12dとその冷媒配管12dにロウ付けされた熱交換フィン(図示せず)を有する。この熱交換器12の傾斜形状は、予め平面長尺形状に形成された熱交換器を、3か所の曲折部12cで曲折することで実現している。
熱交換器12の3か所の曲折部12cは、上部12aを内側に倒した開き角度の大きな上側曲折部12a1と、下部12bを上部12aよりも外側に張り出させた開き角度の小さな下側曲折部12b1とを形成することにより実現されている。つまり、上側曲折部12a1は下側曲折部12b1よりも内側に倒れ込むように折り曲げられている。pは曲折の頂部、qは曲折の谷部である。
これを形成するには、図3に1つの曲折部12cについて示すように、下側曲折部12b1と上側曲折部12a1の一方になるべき部分とに、熱交換器折曲機(図示せず)を符号B1で示すように斜めに当てて熱交換器を内側に折り曲げる。続けて、同じ下側曲折部12b1と上側曲折部12a1の他方となるべき部分に、熱交換器折曲機を符号B2で示すように逆斜めに当てて内側に折り曲る。
このようにして、図2、図3に示すように3か所の曲折部12cで折り曲げられた熱交換器12は、上部12aの一方の端から他方の端までの長さと、下部12bの一方の端から他方の端までの長さが、長尺形状であったときと同じままであり、横方向に配置され縦方向に複数段で並ぶように両端部が複数個のパスで接続された冷媒配管12dにストレスが加わることはない。
以上から、熱交換器12は下側が送風ファン13に近づくように傾斜するので、これを天井埋込型空気調和機10に装着した際に、その熱交換器12から吹出口14bに至る通路が広くなり、送風抵抗が小さくなるので、騒音を抑制することができる。また、熱交換器12自体は1枚の長尺形状の熱交換器の3か所を曲折してほぼ四角形状に形成するので、大きなコスト増を招くことはない。また、冷媒配管12aは、横方向に配置され縦方向に複数段で並ぶように両端部が複数個のパスで接続されているので、室外機への配管接続や温度センサ取付は従来と同じ手法で行うことができ、作業性が損なわれることもない。
なお、前記した熱交換器12の曲折部12cのうちの上側曲折部12a1は、図3における符号B1のラインに沿って曲折された第1の曲折部と、符号B2にのラインに沿って曲折された第2の曲折部により形成してもよい。つまり、上側曲折部12a1は図2、図3に示すように必ずしも円弧形状である必要はなく、2か所で同じ方向に折り曲げられた形状であってもよい。
10:天井埋込型空気調和機、11:筐体、12:熱交換器、12a:上部12a1:上側曲折部、12b:下部12b1:下側曲折部、12c:曲折部、12d:冷媒配管、13:送風ファン、14:化粧パネル、14a:吸込口、14b:吹出口、15:風向板、16:支持体、17:モータ、18:吸込ガイド