JP2015172251A - 海水電解システム及び海水電解方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】電極の耐久性の向上を図ることができるとともに、塩素発生効率の低下を抑制することが可能な海水電解装置、海水電解システム及び海水電解方法を提供する。
【解決手段】電極30として陽極A及び陰極Kが収納された電解槽本体20内に流通される海水Wを、陽極A及び陰極K間に通電される電流によって電気分解する海水電解装置10において、酸化イリジウムを含むコーティング材をチタンに被覆した陽極Aを使用し、電極30表面の電流密度が20A/dm〜40A/dmの範囲となるように、陽極A及び陰極K間に電流を通電する電源装置40を備える海水電解装置10と、電解槽本体20の流出口25から流出する電気分解後の海水Wを、電解槽本体20の流入口23から流入する前の海水Wに混合させる循環流路とを設ける。
【選択図】図2

Description

本発明は、海水を電解するための海水電解システム及び海水電解方法に関するものである。
従来より、海水を多量に使用する火力発電所、原子力発電所、海水淡水化プラント、化学プラント等においては、その取水口や配管、復水器、各種冷却器などの海水と接する部分の藻類や貝類の付着繁殖が大きな問題となっている。
この問題を解決するために、天然の海水に電気分解を施すことで次亜塩素酸ソーダを生成し、当該次亜塩素酸を取水口中に注入することにより海洋生物の付着を抑制する海水電解装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
即ち、この海水電解装置は、筐体状をなす電解槽本体内に電極としての陽極・陰極が配置された構造をなしており、当該電解槽本体内に海水が流通されるようになっている。海水中には塩素イオン及び水酸化イオンが存在するため、陽極・陰極間に電流を通電させると、陽極では塩素が生成され、陰極では水酸化ナトリウムが生成される。そして、塩素と水酸化ナトリウムが反応することによって、海洋生物の付着抑制効果を有する次亜塩素酸が生成される。
ここで、上記海水電解装置の電解槽内に配置される電極、特に、陽極としては、一般にチタン基板に白金を主体とした複合金属、即ち、白金主体コーティング材をコーティングしたものが使用されている(例えば特許文献2参照)。
また、未だ海水電解装置として実用化された事例はないが、電気分解の陽極のコーティング材として、酸化イリジウムを主体とした複合金属、即ち、酸化イリジウム主体コーティング材を適用することが提案されている(例えば特許文献3参照)。
特許第3389082号公報 特開2001−262388号公報 特開平8−85894号公報
ところで、白金主体コーティング材を使用した電極においては、電気分解の際に陽極近傍で発生する酸素や、陰極近傍で発生するスケール(カルシウム、マグネシウム等)の影響により、電極の消耗が早く進行してしまう。そのため、電極洗浄や電極交換を頻繁に行う必要があり、メンテナンスコストが多くかかってしまうという問題があった。
また、電極表面での電流密度が高いほど塩素発生効率が高くなると考えられるが、電流密度が増大すると陽極近傍で発生する酸素や陰極近傍で発生するスケールの量も増加することから、却って電極の消耗が早く進行してしまう。そのため、白金主体コーティング材を使用した電極では、電極表面での電流密度を高くすることはできず、例えば電流密度の最大値を15A/dm程度に抑えることが技術常識とされていた。
このように電気分解の電流密度を抑える必要があるため、十分な塩素を発生させるためには数多くの電極を配置する必要があり、生産コストの増大、装置の大型化を招いてしまっていた。
一方、酸化イリジウム主体コーティング材を使用した電極は、陽極近傍で発生する酸素に対する耐久性が高いことから、白金主体コーティング材を使用した電極と比較して長期耐久性に優れるといった利点がある。ところが、実験室レベルでの検討により、マンガンを起因としたスケールによる陽極の消耗の進行、及び、電極表面の触媒活性の低下に伴う塩素発生効率の低下が確認されている。即ち、酸化イリジウム主体コーティング材を使用した電極では、マンガンスケールの付着によって、耐久性が劣化するとともに塩素発生効率が低下してしまうという問題があった。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、電極の耐久性の向上を図ることができるとともに、塩素発生効率の低下を抑制することが可能な海水電解システム及び海水電解方法を提供することを目的とする。
ここで、本発明の発明者らが上記海水電解装置の電極について鋭意研究を重ねたところ、酸化イリジウム主体コーティング材を被覆した陽極では、白金主体コーティング材を被覆した電極の技術常識に反する15A/dmを超える電流密度を通電することが、電極の耐久性の向上及び塩素発生効率の低下の抑制に有効であるという知見を得るに至った。
本発明は上記知見に基づいて以下の手段を提案している。
即ち、本発明に係る海水電解システムは、電極として陽極及び陰極が収納された電解槽本体内に流通される海水を、前記陽極及び前記陰極間に通電される電流によって電気分解する海水電解装置において、前記陽極は、酸化イリジウムを含むコーティング材をチタンに被覆してなり、前記電極表面の電流密度が20A/dm〜40A/dmの範囲となるように、前記陽極及び前記陰極間に電流を通電する電源装置を備える海水電解装置と、前記電解槽本体の流出口から流出する電気分解後の前記海水を、前記電解槽本体の流入口から流入する前の前記海水に混合させる循環流路とを備えることを特徴とする。
また、本発明に係る海水電解方法は、電極として陽極及び陰極が収納される電解槽本体内に流通された海水を、前記陽極及び前記陰極間に通電される電流によって電気分解する海水電解方法において、前記陽極として酸化イリジウムを含むコーティング材を被覆したチタンを使用し、前記電極表面の電流密度が20A/dm〜40A/dmの範囲となるように、前記陽極及び前記陰極間に電流を通電し、前記電解槽本体の流出口から流出する電気分解後の前記海水を、前記電解槽本体の流入口から流入する前の前記海水に混合させることを特徴とする。
このような特徴の海水電解システムにおいては、電極表面での電流密度が従来の15A/dmよりも大きい20A/dm以上とされているため、電気分解に伴って陰極で発生する水素ガスの量が従来に比べて増大する。この多量の水素ガスによって、電極の洗浄効果が発現されるため、陽極へのマンガンスケールの付着、及び、陰極でのカルシウム、マグネシウム等のスケールの付着を防止することができる。また、陽極付近で発生する酸素の量も増大するが、酸化イリジウムは酸素への十分な耐久性を備えているため、当該酸素によって電極が消耗することを防止することができる。
なお、電流密度が大き過ぎる場合、例えば40A/dmを超える場合には、陽極及び陰極でのスケール発生量が水素の洗浄効果の有効な範囲を超えてしまう。これに対して、本発明では電流密度の上限を40A/dmとしているため、水素により洗浄効果を有効に発現させることができ、陽極及び陰極でのスケール付着を効果的に防止することが可能となる。
電流密度を高くすればするほど、電極表面へのスケールの付着が懸念されるが、海水電解装置の電解槽を通過した海水中に含まれるスケール成分による種晶効果により、電極表面へスケール付着を防止することができる。
また、本発明に係る海水電解システムにおいて、前記電源装置は、前記電極表面の電流密度が20A/dm〜30A/dmの範囲となるように、前記陽極及び前記陰極間に電流を通電することが好ましい。
これによって、水素ガスによる洗浄効果をより一層効果的に発現させることができ、陽極及び陰極でのスケール付着を有効に防止することができる。
さらに、本発明に係る海水電解システムにおいては、前記コーティング材に、タンタルの酸化物が添加されていてもよい。
酸素に対する耐久性が高いタンタルをコーティング材に添加することで、陽極で発生する酸素への耐久性を向上させ、電極の異常消耗をより一層効果的に防止することができる。
また、本発明に係る海水電解システムにおいて、前記電極は、前記海水の流通方向一方側の部分が前記陽極とされるとともに他方側の部分が前記陰極とされた複数の二極電極板を含み、これら二極電極板を前記流通方向に間隔をあけて配列してなる電極群が、互いに平行をなすように複数配置され、互いに平行に隣り合う前記電極群同士の前記二極電極板が、前記陽極と前記陰極とを対向させて配置されていることが好ましい。
このように、陽極及び陰極を有する二極電極板を集約的に配置することで、装置自体のコンパクト化を図ることができる。
また、各二極電極板は海水の流通方向に沿って配置されているため、海水の流通が妨げられることはない。これにより、海水の流速を高く維持することができるため、当該海水による電極へのスケール付着の防止効果を有効に得ることができる。
さらに、互いに平行に隣り合う電極群同士の陽極及び陰極が対向していることから、これら陽極及び陰極の間に通電することで、電極間を流通する海水に対して効率的に電気分解を施すことが可能となる。
また、本発明に係る海水電解システムにおいては、各前記電極群における前記流通方向に隣り合う前記二極電極板同士の間隔が、互いに平行に隣り合う前記電極群同士の間隔の8倍以上に設定されていることが好ましい。
流通方向に隣り合う二極電極板同士の間隔が小さい場合には、これら二極電極板同士の間を流通する電流、即ち、電気分解への寄与の小さい迷走電流が発生する。この迷走電流は電極表面での電流密度が高くなるほど顕著なものとなる。これに対して、上記のように流通方向に隣り合う二極電極板同士の間隔の適正化を図ることにより、当該迷走電流の発生を抑制し、海水電解効率の低下を防止することができる。
さらに、本発明に係る海水電解システムは、前記海水電解装置が複数の前記電解槽本体を備え、これら電解槽本体同士の前記流出口と前記流入口とを接続する接続管と、該接続管内のガスを除去するガス抜き手段とを備えるものであってもよい。
電流密度を高くするほど、陰極での水素発生によって液ガス比が低下するため、塩素発生効率が低下してしまう。これに対して、接続管に設けられたガス抜き手段によって特に水素ガスを除去することで、電解槽内を所定の液ガス比以下に抑え、効率低下を防止することができる。
本発明の海水電解システム及び海水電解方法によれば、陽極のコーティング材に酸化イリジウムが含まれ、さらに、電極表面での電流密度が20A/dm〜40A/dmの範囲に設定されているため、水素ガスによる洗浄効果を有効に得ることができる。これにより、電極へのスケールの付着を防止することができるため、電極の耐久性の向上及び塩素発生効率の低下の抑制を図ることが可能となる。
第一実施形態に係る海水電解システムの概要を示す模式図である。 図1の海水電解装置の概要を示す縦断面図である。 図2の部分拡大図である。 電源装置における定電流制御回路の定電流制御カーブを説明するグラフである。 第二実施形態に係る海水電解システムの概要を示す模式図である。 変形例に係る海水電解システムの概要を示す模式図である。 塩素発生効率測定試験の結果を示すグラフである。 電極消耗量測定試験の結果を示すグラフである。
以下、本発明の第一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は第一実施形態に係る海水電解システム100の概要を示す模式図である。海水電解システム100は、海水が流通する取水用水路1から海水を取水し、海水電解装置10にて海水に電気分解を施した後、当該海水を取水用水路1に注入するシステムである。
この海水電解システム100は、上記海水電解装置10と、海水電解装置10にて電気分解された海水Wが貯留される貯留タンク50と、海水電解装置10に取水用水路1から海水Wを導入する取水部60と、貯留タンク50の海水Wを取水用水路1に注入する注水部70とを備えている。
海水電解装置10は、図2に示すように、電解槽本体20、電極支持箱26、端子板28,29及び複数の電極30から構成されている。
電解槽本体20は、両端が開口する略筒状をなす外筒21を備えており、該外筒21の一端側には該一端側の開口を閉塞する上流側蓋部22が設けられ、さらに、外筒21の他端側には該他端側の開口を閉塞する下流側蓋部24が設けられている。電解槽本体20は、これら外筒21、上流側蓋部22及び下流側蓋部24によって所定の耐圧強度が確保されている。
また、上流側蓋部22には、電解槽本体20内外を連通する流入口23が開口しており、下流側蓋部24には電解槽本体20内外を連通する流出口25が開口している。即ち、電解槽本体20においては、上流側蓋部22の流入口23から海水Wが導入され、該海水Wが外筒21内を流入口23側から流出口25側に向かって一方向に流通した後、該流出口25から電解槽本体20外に流出するようになっている。以下では、電解槽本体20内の流入口23側を上流側、流出口25側を下流側と称する。
電極支持箱26は、例えばプラスチック等の電気絶縁材で構成された筒状をなす部材であって、海水Wの流通方向に延在するように電解槽本体20内に収納されている。この電極支持箱26は、複数の固定部材27を介して上流側蓋部22及び下流側蓋部24に固定されている。また、電極支持箱26の内部には、電極30を支持するための支持バー26aが複数設けられている。
端子板28,29は、電極支持箱26内に支持される電極30に対して、電解槽本体20外部からの電流を供給する役割を有しており、上記電極支持箱26の両端に一対が配置されている。
電極30は、板状をなしており、上記電極支持箱26の支持バー26aに複数が配列状態で固定支持されている。本実施形態においては、この電極30として、二極電極板31、陽極板32及び陰極板33の三種類が用いられている。
二極電極板31は、電極基板としてのチタン基板を二分し、その一方を陽極A、他方を陰極Kとした構造を有している。即ち、二極電極板31は、その一端側半分の領域が、酸化イリジウムを含有するコーティング材(酸化イリジウム主体コーティング材)が表面に被覆された陽極Aとされており、他端側半分の領域は、上記酸化イリジウム主体コーティング材が表面に被覆されてない陰極Kとされている。
また、陽極板32は、上記チタン基板の表面全体に酸化イリジウム主体コーティング材が被覆された構造をなしており、該陽極板32全体が電気分解の際の陽極Aとして機能する。一方、陰極板33としては、コーティングが施されていないチタン基板が採用されており、該陰極板33全体が電気分解の際の陰極Kとして機能する。
なお、上記酸化イリジウム主体コーティング材は、酸化イリジウムの含有量が質量比で50%以上に設定されており、好ましくは60%〜70%の範囲に設定されている。これにより、酸化イリジウムによる被覆効果を良好に得ることができる。
また、酸化イリジウム主体コーティング材には、タンタルが添加されていることが好ましい。さらに、この酸化イリジウム主体コーティング材は、白金が含有されていないものであることが好ましい。
ここで、電極支持箱26内における三種類の電極30の配列構造について説明する。二極電極板31、陽極板32及び陰極板33はそれぞれ電極支持箱26内の支持バー26aに固定支持されている。
上記電極30のうち二極電極板31は、図2及び図3に示すように、陽極Aを液入口側に向けるとともに陰極Kを液出口側に向けて、その延在方向が海水Wの流通方向に沿うように複数配列されている。また、これら二極電極板31は、上記流通方向に間隔をあけて直列的に配列されることで電極群Mを構成している。そして、このような電極群Mは、互いに平行をなすように間隔をあけて複数が設けられており、即ち、互いに並列的に複数が設けられている。
ここで、互いに平行に隣り合う電極群M同士は、相対的に上記流通方向に二極電極板31の2分の1ピッチ分だけずれた状態で配置されている。これにより、互いに平行に隣り合う電極群M同士の二極電極板31は、陽極Aと陰極Kとが対向状態となる。また、本実施形態においては、図3に示すように、各電極群Mにおける上記流通方向に隣り合う二極電極板31同士の間隔は、互いに平行に隣り合う電極群M同士の間隔、即ち、互いに平行に隣り合う二極電極板31同士の間隔の8倍以上に設定されていることが好ましい。
一方、陽極板32及び陰極板33は、上記二極電極板31の上流側又は下流側において、海水Wの流通方向に沿って複数が平行に配列されている。
陽極板32は、その下流側の端部が一対の端子板28,29のうちの下流側にある端子板29に接続されており、これら陽極板32の上流側の端部はそれぞれ上記二極電極板31の陰極Kと流通方向に直交する方向に対抗状態とされている。さらに、陰極板33は、その上流側の端部が一対の端子板28,29のうちの上流側にある端子板28に接続されており、これら陰極板33の下流側の端部はそれぞれ上記二極電極板31の陽極Aと流通方向に直交する方向に対向状態とされている。
電源装置40は、海水Wの電気分解に供される電流を供給する装置であって、直流電源41と、定電流制御回路42とを備えている。
直流電源41は、直流電力を出力する電源であって、例えば交流電源から出力される交流電力を直流に整流して出力する構成であってもよい。
定電流制御回路42は、直流電源41から供給される直流電力を定電流として出力する回路であって、電流通電区間の電気抵抗の変化にかかわらず当該電流通電区に所定の定電流を出力可能とされている。即ち、この定電流制御回路42は、直流電源41から直流電力が入力された際に、図4に示すように、当該直流電力の電圧値を振れ幅ΔVの範囲で制御することにより、定電流制御カーブ上の所望の電流値を定電流として出力するようになっている。
このような定電流制御回路42は、一対のリード線43,44を介して陽極Aが下流側の端子板29に接続されるとともに陰極Kが上流側の端子板28に接続されており、これにより、定電流制御回路42にて生成される定電流が端子板28,29を介して電極30に通電されるようになっている。
ここで、本実施形態の電源装置40においては、電極30表面での電流密度が20A/dm〜40A/dm、好ましくは20A/dm〜30A/dmの範囲になるように、定電流制御回路42が定電流を生成する。即ち、電解槽本体20内での電極30の表面積に応じた定電流を生成して当該定電流を電極30に供給することにより、電極30表面での電流密度を20A/dm〜40A/dm、好ましくは20A/dm〜30A/dmの範囲としている。
なお、従来から使用されている白金を主体とした複合金属(白金主体コーティング材)をコーティングした電極においては、電流密度の増加に伴って電極の消耗を進行させる酸素やスケールの量も増加するため、該電流密度の最大値を15A/dm程度に設定している。これに対して、本実施形態においては、従来よりも電流密度が高い20A/dm〜40A/dm、好ましくは20A/dm〜30A/dmの範囲で電気分解を行うこととしている。
貯留タンク50は、上記海水電解装置10における電解槽本体20の流出口25から流出する海水Wが一時的に貯留されるタンクであって、電解槽本体20の流出口25に接続される中間流路51を介して、内部に海水Wが導入される。
取水部60は、取水流路61、第一ポンプ62、第一流量計64及び第一開閉制御弁63とから構成されている。
取水流路61は一端が取水用水路1に接続されるとともに他端が海水電解装置10における電解槽本体20の流入口23に接続された流路である。
第一ポンプ62は、この取水流路61の中途に設けられており、当該第一ポンプ62が取水用水路1の海水Wを一定の出力で汲み上げることで、この海水Wが上記流入口23へと導入される。
第一流量計64は、取水流路61における取水流路61の下流側に設けられており、当該取水流路61を通過する海水Wの流量Qを検出する。
また、第一開閉制御弁63は、取水流路61における第一流量計64の上流側に設けられた弁であって、第一流量計64が検出する海水Wの流量Qに基づいて開閉制御されるようになっている。これによって、取水流路61及び電解槽本体20の海水流通領域の面積比に応じて取水路を流通する海水Wの流量を調整することで、電解槽本体20内を流通する海水Wの流速を任意に調整することができるようになっている。
本実施形態の海水電解装置10においては、電解槽本体20内を流通する海水Wの流速が、少なくとも0.7m/s以上となるように第一開閉制御弁63が制御されることが好ましい。
なお、第一開閉制御弁63の開閉制御によって電解槽本体20内での海水Wの流速を調整する構成のみならず、例えば第一ポンプ62の出力を制御することによって電解槽本体20内での海水Wの流速を調整する構成であってもよい。
注水部70は、流路の注水部71、第二ポンプ72、第二流量計74及び第二開閉制御弁73とから構成されている。
流路の注水部71は一端が貯留タンク50に接続されるとともに他端が取水用水路1に接続された流路である。
第二ポンプ72は、この流路の注水部71の中途に設けられており、当該第二ポンプ72が貯留タンク50内の海水Wを一定の出力で送り込むことによって、この海水Wが取水用水路1へと導入される。
第二流量計74は、流路の注水部71における流路の下流側に設けられており、当該流路の注水部71を通過する海水Wの流量Qを検出する。
また、第二開閉制御弁73は、流路の注水部71における第二流量計74の上流側に設けられた弁であって、第二流量計74が検出する海水Wの流量Qに基づいて開閉制御されるようになっている。これによって、取水用水路1に注入される海水Wの流量が調整される。なお、第二開閉制御弁73の開閉制御によって取水用水路1への海水Wの注入量を調整する構成のみならず、例えば第二ポンプ72の出力を制御することによって取水用水路1への海水Wの注入量を調整する構成であってもよい。
次に、本実施形態の海水電解装置10の作用、及び、海水電解装置10を用いた海水Wの電解方法について説明する。
取水用水路1を流通する海水Wのうちの一部は、取水部60によって海水電解装置10の電解槽本体20の流入口23から電解槽本体20内に導入される。即ち、取水用水路1の海水Wが第一ポンプ62によって取水流路61内に汲み上げられることで、当該取水流路61を介して電解槽本体20内に海水Wが導入される。これにより、電解槽本体20内の電極30が海水Wに浸漬される。この際、第一開閉制御弁63が第一流量計64の検出する流量に応じて開閉することで、電解槽本体20内において流通方向に流通する海水Wの流速が所望の値に調整される。
このように電解槽本体20内を流通する海水Wには、電極30によって電気分解が施される。即ち、電源装置40における直流電源41の直流電力に基づいて定電流制御回路42にて所望の定電流が生成され、当該定電流がリード線43,44を介して端子板28,29に供給される。これら端子板28,29を介して供給される電流は、電解槽本体20内を陽極板32、二極電極板31、陰極板33と順次直列に流通していく。
具体的には、定電流制御回路42から陽極板32に流通された電流が、海水Wを介して二極電極板31の陰極Kに到達すると、この二極電極板31内を流通することで当該二極電極板31の陽極Aに到達し、その後、この陽極Aに対向する他の二極電極板31の陰極Kに海水W内を流通して到達する。このように、電流が陽極板32から複数の二極電極板31を順次流通し、最終的には陰極板33まで流通する。なお、この際の電流の各電極30表面における電流密度は、定電流制御回路42によって、20A/dm〜40A/dm、好ましくは20A/dm〜30A/dmの範囲に制御される。
このように海水Wに通電される電流は、上記定電流制御回路42の作用により、海水Wの電気抵抗の変化にかかわらず、電極30表面での電流密度が一定とされる。即ち、電解槽本体20内を流通する海水Wはその電気抵抗の値が刻々と変化するが、図4に示すように、定電流制御回路42が電圧を所定の振れ幅ΔVで制御することで、電極30表面での電流密度を一定に保持する。
上記のように、電極30間の海水W内を電流が流通することで海水Wに対して電気分解が施される。
即ち、陽極Aにおいては、下記(1)式に示すように、海水W中の塩素イオンから電子eが奪われ酸化が起こり、塩素が生成される。
Figure 2015172251
一方、陰極Kにおいては、下記(2)式に示すように、海水W中の水に電子が与えられて還元が起こり、水酸化イオンと水素ガスが生成される。
Figure 2015172251
また、下記(3)式に示すように、陰極Kで生成された水酸化イオンは海水W中のナトリウムイオンと反応して水酸化ナトリウムが生成される。
Figure 2015172251
さらに、(4)式に示すように、水酸化ナトリウムと塩素とが反応することにより、次亜塩素酸、塩化ナトリウム及び水が生成される。
Figure 2015172251
このように、海水Wの電気分解に基づいて、海洋生成物の付着に対して抑制効果を有する次亜塩素酸が生成される。
そして、電気分解が施された海水Wは、電解槽本体20の流出口25から流出し、中間流路51を通過して貯留タンク50に一時的に貯留される。その後、貯留タンク50内の海水Wは、注水部70を介して取水用水路1に注入される。即ち、貯留タンク50内の次亜塩素酸を含んだ海水Wが、第二ポンプ72が稼動することによって流路の注水部71を介して取水用水路1に注入される。この際、第二開閉制御弁73が第二流量計74の検出する流量に応じて開閉することで、取水用水路1への次亜塩素酸を含む海水Wの流量が調整される。
ここで、一般に、酸化イリジウム主体コーティング材を被覆した陽極Aには、電気分解の際に海水W中に含まれるマンガンイオンに起因したマンガンスケールが付着する。このマンガンスケールの付着によって陽極Aの消耗が進行してしまい、さらに、電極30表面の触媒活性が低下するため、塩素発生効率が低下してしまうという不都合が生じる。また、陰極Kは、海水W中に含まれるマグネシウムやカルシウムに起因したスケールが付着し、このスケールによってやはり電極30の消耗が進行してしまう。
これに対して、本実施形態の海水電解装置10においては、電極30表面での電流密度が従来の15A/dmよりも大きい20A/dm以上に設定されているため、電気分解に伴って陰極Kで発生する水素ガスの量が従来に比べて増大する。この多量の水素ガスによって、電極30の洗浄効果が発現されるため、陽極Aへのマンガンスケールの付着、及び、陰極Kでのカルシウム、マグネシウム等のスケールの付着を防止することができる。
さらに、電極30表面での電流密度の増加によって、陽極A付近で発生する酸素の量も増大するが、酸化イリジウムは酸素への十分な耐久性を備えているため、当該酸化イリジウムを含むコーティング材で被覆された陽極Aが酸素によって消耗してしまうことを防止することができる。
なお、電極30表面での電流密度が大き過ぎる場合、例えば40A/dmを超える場合には、陽極A及び陰極Kでのスケール発生量が水素の洗浄効果の有効な範囲を超えてしまう。これに対して、本実施形態では電流密度の上限を40A/dmとしているため、水素により洗浄効果を有効に発現させ、陽極A及び陰極Kでのスケールの付着を効果的に防止することができる。また、電流密度の上限を30A/dmとした際には、水素による洗浄効果をより有効に発現させることができ、スケールの付着を効果的に防止することができる。
このように、本実施形態においては、陽極Aのコーティング材に酸化イリジウムが含まれ、さらに、電極30表面での電流密度が20A/dm〜40A/dmの範囲、好ましくは30A/dm〜40A/dmに設定されているため、水素ガスによる洗浄効果を有効に得ることができる。これによって、電極30へのスケールの付着を防止することができるため、電極30の耐久性の向上及び塩素発生効率の低下の抑制を図ることが可能となる。
したがって、海水電解装置10のメンテナンス性を向上させることができる他、高い塩素発生効率によって電極30の数を減らすことができ、装置のコンパクト化を図ることができる。
また、陽極Aを被覆する酸化イリジウム主体コーティング材にタンタルの酸化物を添加した場合には、当該タンタルが酸素に対して高い耐久性を発揮するため、陽極A近傍で発生する酸素による電極30の異常消耗をより一層効果的に防止することができる。
なお、この酸化イリジウム主体コーティング材に白金を含有させないことにより、コストの低減を図ることができる。
さらに、本実施形態においては、二極電極板31を直列的に配置して電極群Mを構成するとともにこの電極群Mを互いに平行に配列することで、多数の二極電極30を集約的に配置しているため、塩素の総発生量を大きく担保しながら装置自体のコンパクト化を図ることができる。
また、各二極電極板31は海水Wの流通方向に沿って配置されているため、海水Wの流通が妨げられることない。これにより、海水Wの流速を高く維持することができ、電極30へのスケール付着の防止効果を有効に得ることができる。
そして、互いに平行に隣り合う電極群M同士の陽極A及び陰極Kが対向していることから、これら陽極A及び陰極Kの間に通電することで、電極30間を流通する海水Wに対して効率的に電気分解を施すことができる。
ここで、海水Wの流通方向に隣り合う二極電極板31同士の間隔が小さい場合には、これら二極電極板31同士の間を流通する電流、即ち、電気分解への寄与の小さい迷走電流が発生する。この迷走電流は電極30表面での電流密度が高くなるほど顕著なものとなり、海水電解効率の低下を招いてしまう。
これに対して、本実施形態においては、各電極群Mにおける流通方向に隣り合う二極電極板31同士の間隔が、互いに平行に隣り合う電極群M同士の間隔の8倍以上に設定されており、即ち、流通方向に隣り合う二極電極板31同士の間隔の適正化が図られているため、上記迷走電流の発生を抑制し、海水電解効率の低下を防止することができる。
次に、第二実施形態の海水電解システム100について、図5を参照して説明する。なお、第二実施形態においては、第一実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
図5に示すように、第二実施形態の海水電解システム100は、取水部60の取水流路61と注水部70の流路の注水部71との間に、流路の注水部71の海水Wを取水流路61に混合させる循環部80を備えている。この循環部80は、循環流路81と、第三流量計84と、第三開閉制御弁83とから構成されている。
循環流路81は一端が流路の注水部71に接続されるとともに他端が取水流路61に接続された流路である。本実施形態においては、循環流路81の一端は、流路の注水部71における第二ポンプ72と第二開閉制御弁73との間に接続されており、該循環流路81の他端は、取水流路61における第一ポンプ62と第一開閉制御弁63との間に接続されている。
第三流量計84は、循環流路81の中途に設けられており、当該循環流路81を通過する海水Wの流量Qを検出する。
また、第三開閉制御弁83は、循環流路81における第三流量計84の下流側に設けられた弁であって、第三流量計84が検出する海水Wの流量Qに基づいて開閉制御されるようになっている。これによって、流路の注水部71から循環流路81を介して取水流路61に循環される海水Wの流量を任意に制御することができる。
このような海水電解システム100においては、貯留タンク50に貯留された電気分解後の海水Wが第二ポンプ72によって流路の注水部71内に導入されると、当該海水Wは循環流路81の一端が接続された流路の注水部71の分岐部において、流路の注水部71を流通する海水Wと循環流路81を流通する海水Wとに分流する。
循環流路81を通過した海水Wは、当該循環流路81の他端にて取水流路61内に導入される。即ち、循環流路81を通過した電気分解後の海水Wが取水流路61を通過する電気分解前の海水Wに合流し、再度電解槽本体20内に導入される。この際、第三開閉制御弁83が第三流量計84の検出する流量に応じて開閉することで、取水流路61を流通する海水Wに合流する電気分解後の海水Wの流量を調整することができる。
このように、電解槽本体20の流出口25から流出した電気分解後の海水Wが、循環流路81を流通することで、電解槽本体20の流入口23から再流入する。
ここで、電気分解後の海水W内には、電気分解の際に発生したマンガン、マグネシウム、カルシウム等のスケール成分が存在している。このような海水Wが再び電解槽本体20内に導入されることにより、上記スケール成分による種晶効果により、電極30表面へのスケール付着を防止することができる。即ち、スケール成分が種晶となり、新たに生成されるスケールは当該種晶に付着していくため、電極30表面へのスケールの析出を回避することができる。これにより、電極30の耐久性の向上及び塩素発生効率の低下の抑制を図ることが可能となる。
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の技術的思想を逸脱しない限り、これらに限定されることはなく、多少の設計変更等も可能である。
例えば、海水電解システム100においては、注水部70から取水用水路1に注入される海水Wの次亜塩素酸濃度が概ね2500ppm程度とされていることが好ましい。
ここで、生成される次亜塩素酸の総量は、電源装置40から電極30に供給される電流の総量に概ね比例する。したがって、電極30に供給した電流量を記録することによって、発生した次亜塩素酸の総量を把握することができる。また、取水用水路1に注入される海水Wの次亜塩素酸濃度は、発生した次亜塩素酸の総量を取水用水路1に注入される海水Wの流量Qで割ることによって算出することができる。したがって、次亜塩素酸の総量に応じて、第二開閉制御弁73を制御して取水用水路1に注入される海水Wの流量Qを決定することにより、当該海水W内の次亜塩素酸濃度を上記2500ppmに容易に調整することができる。
また、例えば変形例として、図6に示すように、海水電解装置10が複数の電解槽本体20を有しており、これら電解槽本体20同士の流出口25と前記流入口23とを接続する接続管91と、接続管91内のガスを除去するガス抜き手段としてのガス抜き弁92とが設けられていてもよい。なお、ガス抜き弁92は開閉制御可能とされた弁であって、電解槽本体20内の圧力が所定の高圧に上昇した場合に当該ガス抜き弁92が開放されて海水W中のガスが放出されるように構成されている。
電流密度を高くするほど、陰極Kでの水素発生によって液ガス比が低下するため、塩素発生効率が低下してしまうが、上記接続管91に設けられたガス抜き弁92によって特に水素ガスを除去することで、電解槽本体20内を所定の液ガス比以下に抑え、効率低下を防止することができる。
なお、上記実施形態においては、電極30として二極電極板31を用いた例について説明したが、例えば、二極電極板31を用いず陽極板32と陰極板33とを対向配置し、これら陽極板32と陰極板33間の海水Wに電流を通電する構成であってもよい。また、これら陽極板32と陰極板33とを交互に配置して、互いに隣り合って対向する陽極板32と陰極板33との間の海水Wに電流を通電する構成であってもよい。
また、実施形態において二極電極板31は、陽極Aを液入口側に向けるとともに陰極Kを液出口側に向けて配置されていたが、陽極Aを液出口側に向けるとともに陰極Kを液入口側に向けて配置してもよい。
以下、実施例について説明する。
<塩素発生効率測定試験>
海水を電気分解する際における電極表面の電流密度と塩素発生効率との関係を調査する試験を行なった。
電極面積が50×50mmの板状をなす陽極板及び陰極板を用意し、5mmの間隔をあけて対向配置させた。陽極板としては、酸化イリジウム(IrO)を質量比で50%以上含むコーティング材をチタン基板に被覆したものを使用した。また、陰極板としては、コーティング材を被覆しないチタン基板を使用した。
これら陽極板及び陰極板を海水中に浸漬し、当該海水を250ml/minの流量で流通させ、陽極板及び陰極板間に通電することにより海水の電気分解を行った。そして、各電流密度における塩素発生効率を測定した。
なお、塩素発生効率とは、流通させる電流の電流密度に基づいて理論上発生し得る塩素量に対しての実際に発生する塩素量の比率を意味している。
この塩素発生効率の測定結果を図7に示す。
図7に示すように、電流密度が20A/dm未満の場合には、電流密度が大きくなるに連れて塩素発生効率が上昇する一方、電流密度が20A/dm〜30A/dmの際には塩素発生効率は一定となり、電流密度が30A/dmを超えると塩素発生効率が徐々に低下していく。
なお、白金を含むコーティング材を使用した電極において技術常識とされていた電流密度が15A/dmの場合には、塩素発生効率は93%であった。
また、電流密度が20A/dm、30A/dmの際の塩素効率は96%と最も高い値が得られた。
このことから、酸化イリジウムを含むコーティング材を使用した電極においては、電流密度を20A/dm〜30A/dmの範囲に設定することにより、高い塩素発生効率を得られることがわかった。これは、発生する水素ガスの量が増大したため、当該水素ガスによる陽極板及び陰極板のスケール洗浄効果が得られたことに起因すると考えられる。
ここで、電流密度が大きいほど理論上発生し得る塩素の量は増大していく。したがって、塩素発生効率が同じ値を示す場合であっても電流密度が大きい方がより多くの塩素が発生することになる。
よって、電流密度を40A/dmとした際には、塩素発生効率は93%と電流密度15A/dmの際と同等の効率を示すが、塩素発生量は電流密度40A/dmの場合の方が電流密度15A/dmの場合に比べて大きなものとなる。したがって、電流密度を40A/dmとすることは、塩素の発生量の観点から有効であると言える。一方、電流密度が40A/dmを超えると、水素ガスの洗浄効果が有効に作用する範囲を超えてしまい、塩素発生効率が15A/dmの場合よりも低下してしまう。したがって、電流密度の上限は40A/dmとすることが好ましく、これにより、塩素発生効率を高く維持しながら、発生する塩素の量を多く確保できることがわかった。
以上のように、塩素発生効率測定試験によって、海水の電気分解の際の電極表面での電流密度を20A/dm〜40A/dm、好ましくは20A/dm〜30A/dmの範囲に設定することで高い塩素発生効率を得ることができることがわかった。
なお、電気分解を長時間続けると電極が徐々に消耗していくため、測定結果を示す図7のカーブはより急峻なものになっていくと考えられる。したがって、特に電極が消耗した後には、電流密度を上記範囲に設定することがより一層有効であることが推認できる。
<電解寿命試験結果>
海水の電気分解の際の電流密度と触媒保持量との関係を調査する試験を行なった。
塩素発生効率測定試験と同様、電極面積が50×50mmの板状をなす陽極板及び陰極板を用意し、5mmの間隔をあけて対向配置させた。陽極板としては、酸化イリジウム(IrO)を質量比で50%以上含むコーティング材をチタン基板に被覆したものと、白金(Pt)を含むコーティング材をチタン基板に被覆したものとの二種類を用いた。また、陰極板としては、コーティング材を被覆しないチタン基板を使用した。
これら陽極板及び陰極板をそれぞれ海水中に浸漬し、当該海水を250ml/minの流量で流通させ、陽極板及び陰極板間に通電することにより海水の電気分解を行った。そして、各電流密度における触媒保持量を時間とともに測定した。
なお、触媒保持量とは、電気分解後に保持される電極の触媒量を意味しており、時間とともに触媒保持量が小さくなればそれだけ電極が消耗したことになる。この触媒保持量の測定結果を図8に示す。
図8に示すように、陽極板として白金を含むコーティング材を使用した場合(Pt/Ti)には、触媒保持量は時間とともに徐々に低下していき、特に、電流密度が大きいほど、触媒保持量の低下が顕著なものとなることがわかった。
一方、陽極板として酸化イリジウムを含むコーティング材を使用した場合(IrO)には、時間が経過しても触媒保持量が低下することはなかった。
これにより、酸化イリジウムを含むコーティング材を使用した陽極板は、白金を含むコーティング材を使用した陽極板に比べて、電極の耐久性が高いことがわかった。
10…海水電解装置、20…電解槽本体、30…電極、31…二極電極板、32…陽極板、33…陰極板、40…電源装置、41…直流電源、42…定電流制御回路、60…取水部、61…取水流路、70…注水部、80…循環部、81…循環流路、91…接続管、92…ガス抜き弁(ガス抜き手段)、100…海水電解システム、A…陽極、K…陰極、M…電極群、W…海水

Claims (7)

  1. 電極として陽極及び陰極が収納された電解槽本体内に流通される海水を、前記陽極及び前記陰極間に通電される電流によって電気分解する海水電解装置において、
    前記陽極は、酸化イリジウムを含むコーティング材をチタンに被覆してなり、
    前記電極表面の電流密度が20A/dm〜40A/dmの範囲となるように、前記陽極及び前記陰極間に電流を通電する電源装置を備える海水電解装置と、
    前記電解槽本体の流出口から流出する電気分解後の前記海水を、前記電解槽本体の流入口から流入する前の前記海水に混合させる循環流路とを備えることを特徴とする海水電解システム。
  2. 前記電源装置は、前記電極表面の電流密度が20A/dm〜30A/dmの範囲となるように、前記陽極及び前記陰極間に電流を通電することを特徴とする請求項1に記載の海水電解システム。
  3. 前記コーティング材に、タンタルの酸化物が添加されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の海水電解システム。
  4. 前記電極は、前記海水の流通方向一方側の部分が前記陽極とされるとともに他方側の部分が前記陰極とされた複数の二極電極板を含み、
    これら二極電極板を前記流通方向に間隔をあけて配列してなる電極群が、互いに平行をなすように複数配置され、
    互いに平行に隣り合う前記電極群同士の前記二極電極板が、前記陽極と前記陰極とを対向させて配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の海水電解システム。
  5. 各前記電極群における前記流通方向に隣り合う前記二極電極板同士の間隔が、互いに平行に隣り合う前記電極群同士の間隔の8倍以上に設定されていることを特徴とする請求項4に記載の海水電解システム。
  6. 複数の前記電解槽本体と、
    これら電解槽本体同士における前記海水の流出口と流入口とを接続する接続管と、
    該接続管内のガスを除去するガス抜き手段とをさらに備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の海水電解システム。
  7. 電極として陽極及び陰極が収納される電解槽本体内に流通された海水を、前記陽極及び前記陰極間に通電される電流によって電気分解する海水電解方法において、
    前記陽極として酸化イリジウムを含むコーティング材を被覆したチタンを使用し、
    前記電極表面の電流密度が20A/dm〜40A/dmの範囲となるように、前記陽極及び前記陰極間に電流を通電し、
    前記電解槽本体の流出口から流出する電気分解後の前記海水を、前記電解槽本体の流入口から流入する前の前記海水に混合させることを特徴とする海水電解方法。
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