JP2015167572A - 塞栓治療デバイス - Google Patents
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Abstract
【課題】簡単な構成により吐出した塞栓剤とデバイスとの接着を防止又は抑制する。
【解決手段】塞栓治療デバイス10は、血管内を送達され、且つ塞栓剤を吐出可能な吐出口22を先端側に有するシャフト16を有する。また、塞栓治療デバイス10は、吐出口22の近傍位置に配置され、表面14aが縮小状態からシャフト16の外側に離間した拡張状態に移行可能であり、且つシャフト16から離脱可能なキャップ14を備える。これにより、塞栓剤が接着されたキャップ14を留置することで、塞栓治療デバイス10を容易に回収することができる。
【選択図】図1
【解決手段】塞栓治療デバイス10は、血管内を送達され、且つ塞栓剤を吐出可能な吐出口22を先端側に有するシャフト16を有する。また、塞栓治療デバイス10は、吐出口22の近傍位置に配置され、表面14aが縮小状態からシャフト16の外側に離間した拡張状態に移行可能であり、且つシャフト16から離脱可能なキャップ14を備える。これにより、塞栓剤が接着されたキャップ14を留置することで、塞栓治療デバイス10を容易に回収することができる。
【選択図】図1
Description
本発明は、生体管腔内において塞栓剤を吐出する塞栓治療デバイスに関する。
近年、製造技術の向上によりカテーテルの細径化が促進されたことで、脳血管に生じる疾患に対し経カテーテル治療を施す機会が増加している。例えば、動脈が静脈に直接つながる脳動静脈瘻(AVF)、動脈と静脈が異常吻合を生じる脳動静脈奇形(AVM)等の治療では、カテーテル等の治療デバイスを血管内に挿入及び送達し、治療部位に塞栓剤を吐出して閉塞する手技が行われている。塞栓剤としては、血管内での硬化が短時間になされるNBCAやOnyx(登録商標)等の液体塞栓物質が挙げられる。
また、塞栓剤を吐出する治療デバイスとしては、例えば、特許文献1に開示されているものが挙げられる。特許文献1に開示の塞栓治療システム(塞栓治療デバイス)は、血管内に挿入及び送達されて塞栓剤の吐出を行うカテーテルと、カテーテルの先端に固着され血管内で拡張可能な弁及びフィルタとを備える。この塞栓治療システムの弁及びフィルタは、血管内において拡張することで血管内の血流を抑制し、塞栓剤の逆流(バックフローとも呼ばれる)を低減する機能を有している。
ところで、上記のような塞栓治療デバイスを使用する手技では、血管内に吐出した塞栓剤の硬化に伴い、塞栓治療デバイスと血管内壁とが接着されるという問題があり、この手技の難度を高める要因となっている。塞栓治療デバイスから塞栓剤を吐出する際に、血管内を満たす血液により塞栓剤の一部が逆流し、塞栓治療デバイスの外表面と血管内周面との間に塞栓剤が流れることで、塞栓治療デバイスと血管内壁が接着されるためである。特に、液体塞栓物質は、吐出後直ちに硬化するため、特許文献1に開示されているような弁等を備えると、塞栓剤が弁に簡単に接着してしまい、塞栓治療デバイスの回収を困難にさせるおそれがある。また、塞栓治療デバイスを無理やり回収しようとした場合には、カテーテル断裂や血管損傷のおそれもある。
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであって、簡単な構成により、吐出した塞栓剤とデバイスとの接着を防止又は抑制することで、生体管腔内に塞栓剤を吐出する手技を容易且つ良好に行うことができる塞栓治療デバイスを提供することを目的とする。
前記の目的を達成するために、本発明に係る塞栓治療デバイスは、生体管腔内を送達され、且つ塞栓剤を吐出可能な吐出口を先端側に有する長尺部と、前記吐出口の近傍位置に配置され、外側部が前記長尺部に近接した縮小状態から、前記縮小状態よりも前記外側部が前記長尺部の外側に離間した拡張状態に移行可能であり、且つ前記長尺部から離脱可能な留置部と、を備えることを特徴とする。
上記によれば、塞栓治療デバイスは、長尺部及び留置部という簡単な構成により、塞栓剤の吐出前に留置部を縮小状態から拡張状態に移行させて、長尺部の吐出口付近の生体管腔内を留置部で殆ど塞ぐことができる。そのため、吐出口から吐出された塞栓剤が逆流により長尺部側に回り込んで長尺部に接着することが防止又は抑制される。また、逆流により長尺部側に流れた塞栓剤は、留置部の表面に接触及び硬化して拡張状態の留置部と血管壁を接着する。これに対し、塞栓治療デバイスは、留置部が長尺部から離脱される構成となっているので、塞栓剤に接着した留置部を残して長尺部を確実且つ簡単に回収することができる。これにより、生体管腔内を閉塞する手技を容易且つ良好に行うことが可能となる。
また、留置部は、拡張後において、前記長尺部の外表面と前記生体管腔の内表面との間を覆っていることが好ましい。
このように、留置部が長尺部の外表面と生体管腔の内表面との間を覆うことで、塞栓剤が留置部よりも基端方向に移動するのを防止することができる。そのため、硬化した塞栓剤と長尺部との接触を防ぐことができ、塞栓治療デバイスを容易に回収することができる。
この場合、前記留置部は、拡張状態において前記吐出口の縁部を覆っていることが好ましい。なお、吐出口の縁部とは、長尺部の先端と吐出口の内周面とがなす角部である。
このように、留置部が吐出口の縁部を覆うことで、硬化した塞栓剤と長尺部との接触をより確実に防ぐことができるため、塞栓治療デバイスの回収時に、長尺部の断裂や血管損傷のリスクを一層抑制することができる。
また、前記留置部は、前記長尺部の周方向に環状に連なると共に、前記縮小状態で前記吐出口から前記長尺部の外周面の所定範囲までを覆う膜材であることが好ましい。
このように、留置部が環状に形成された膜材であることで、留置部は、簡単な操作により縮小状態から拡張状態に移行し、吐出口からの塞栓剤の吐出を許容する一方で、吐出口の周囲の血管内を塞ぐことができる。
上記構成に加えて、前記留置部を前記縮小状態から前記拡張状態へと変形させる拡張機構を備えることが好ましい。
このように、留置部を縮小状態から拡張状態へと移行させる拡張機構を備えることで、塞栓剤の吐出前に、拡張機構により留置部を簡単に拡張状態とすることができる。
ここで、前記拡張機構は、前記膜材を内側から押し広げることによって前記拡張状態にする変形部を有することが好ましい。
これにより、変形部は、膜材を簡単に拡張状態とすることができる。そして、変形部は、膜材を押し広げた際には、生体管腔の管腔壁に接触して、生体管腔に対する長尺部の軸方向の位置ずれを抑えることもできる。
また、前記拡張機構は、前記変形部に連なると共に、前記長尺部に沿って進退移動することで前記変形部を変形させる操作部を前記長尺部の基端側に有するとよい。
これにより、術者は、手技時に、患者の体外から露出された操作部を進退操作することで、変形部を容易に変形することができる。
或いは、前記変形部は、径方向外側に自動的に拡張可能であり、前記拡張機構は、前記変形部の外側を覆い、且つ前記変形部に対し相対的に後退可能な外管を含んでもよい。
このように、拡張機構は、変形部に対し相対的に後退可能な外管を含むことで、外管の後退により変形部を露出することができる。よって、自動的に拡張可能な変形部は、膜材を簡単に拡張させることができる。
この場合、前記変形部は、前記外管の後退後の再進出により縮小するとよい。
このように、変形部が外管の再進出により縮小することで、塞栓治療デバイスを引き抜く際に、変形部が生体管腔に接触して傷付けることを回避することができる。
さらに、前記長尺部は、前記塞栓剤を前記吐出口に流動させるルーメンを有し、前記変形部は、前記ルーメンからの前記塞栓剤の圧力を受けて前記膜材を拡張させるように作用する構成とすることもできる。
このように、ルーメンを流動する塞栓剤により変形部を変形させると、変形部を操作する他の手段が必要なくなるため、塞栓治療デバイスの使い易さが一層向上する。
そして、前記拡張機構は、先端が前記吐出口の近傍位置の前記長尺部に固定され、基端側からの押出力により前記長尺部の径方向外側に変形する複数のワイヤであることが好ましい。
このように、拡張機構として複数のワイヤを適用することで、ワイヤの変形により留置部を縮小状態から拡張状態に簡単に移行させることができる。
また或いは、前記留置部は、前記長尺部の周方向に環状に連なると共に、前記縮小状態から前記拡張状態に自己拡張可能な拡縮体であり、前記拡縮体に対し相対移動可能に配置され、且つ前記拡縮体の外側部を囲って前記縮小状態とする外管を有する構成であってもよい。
このように、留置部が自己拡張可能な拡縮体であると、拡縮体は、外管の後退により長尺部の周囲で簡単に自己拡張して、生体管腔内を閉塞することができる。
本発明に係る塞栓治療デバイスによれば、簡単な構成により、吐出した塞栓剤とデバイスとの接着を防止又は抑制することで、生体管腔内に塞栓剤を吐出する手技を容易且つ良好に行うことができる。
以下、本発明に係る塞栓治療デバイスについて好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
本発明に係る塞栓治療デバイスは、血管(生体管腔)内を通してデバイスを送達するインターベンション手技に用いられる。手技において、術者は、デバイスの先端部を脳血管内の治療部位に送達し、送達後に塞栓剤を吐出して血管内を閉塞する治療を行う。血管の閉塞を行う疾患としては、例えば、既述した脳動静脈瘻(AVF)や脳動静脈奇形(AVM)等の動静脈シャント疾患、或いは子宮癌、肝臓癌が挙げられる。なお、塞栓治療デバイスが適用される血管は、脳血管に限定されず、脊髄等の血管、或いはその他の血管でもよい。また、塞栓治療デバイスは、AVFやAVM以外にも塞栓剤の吐出が必要な様々な治療(例えば、瘤の塞栓術)に用いてもよく、治療対象部位も血管、胆管、気管、食道、尿道、鼻腔或いはその他の臓器等、種々の生体器官に適用し得る。
〔第1実施形態〕
図1に示すように、第1実施形態に係る塞栓治療デバイス10は、カテーテル本体12と、このカテーテル本体12の先端部に配置されるキャップ14(留置部)とを備える。カテーテル本体12は、術者により患者の血管内に経皮的に導入されて送達され、脳血管の治療部位に塞栓剤を吐出することが可能なデバイス本体部である。キャップ14は、塞栓剤の吐出前に図1中の2点鎖線で示すように拡張されて、血管内に吐出された塞栓剤に接着されカテーテル本体12から離脱することで塞栓剤と共に血管内に留置される部材である。
図1に示すように、第1実施形態に係る塞栓治療デバイス10は、カテーテル本体12と、このカテーテル本体12の先端部に配置されるキャップ14(留置部)とを備える。カテーテル本体12は、術者により患者の血管内に経皮的に導入されて送達され、脳血管の治療部位に塞栓剤を吐出することが可能なデバイス本体部である。キャップ14は、塞栓剤の吐出前に図1中の2点鎖線で示すように拡張されて、血管内に吐出された塞栓剤に接着されカテーテル本体12から離脱することで塞栓剤と共に血管内に留置される部材である。
具体的には、カテーテル本体12は、手技時に血管内に主に挿入されるシャフト16(長尺部)と、シャフト16の基端側を保持し体外に露出されて術者に操作されるハブ18とを含む。
シャフト16は、患者の導入部位から治療部位に到達可能な長さを有する管状部材である。シャフト16の全長は、シャフト16の導入部位や治療部位に応じて適宜選択され、例えば、脳血管の治療では800〜1500mm程度に設定される。また、シャフト16の外径は、血管の内径よりも小径に形成される。特に、本実施形態に係るシャフト16は、脳血管の治療を行うため、大動脈等を治療するカテーテルと比較してさらに細く構成されている。例えば、シャフト16の先端部は3Fr(約1mm)以下の外径に設定されるとよい。すなわち、この塞栓治療デバイス10は、マイクロカテーテルとして構成され、脳血管にアクセス可能となっている。シャフト16の内部には、塞栓剤を流通可能なルーメン20が設けられている。
また、シャフト16は、体内で複雑に湾曲及び屈曲する血管に対応して、適度な物性(柔軟性、硬度、強度、滑り性、耐キンク性、伸縮性等)を有することが好ましい。シャフト16を構成する材料としては、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、或いはこれら2種以上の混合物等)、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、ポリイミド、フッ素樹脂等の高分子材料又はこれらの混合物が挙げられる。加えて言えば、上記のうちのポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、フッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン)の高分子材料又はこれらの混合物は、塞栓剤の溶媒として用いられるジメチルスルホキシド(DMSO)等の有機溶媒の影響を受けにくい材料であるため、より好ましい。
また、シャフト16は、上記で挙げた材料を2種以上組み合わせた(例えば、内層及び外層からなる)多層構造に構成することもできる。シャフト16の外層(外周面)は、血管内での送達を容易化するために、潤滑剤がコーティングされていてもよい。
さらに、内層と外層の間には、シャフト16の送達性能を高めるために金属材料又は樹脂材料からなる補強層が設けられてもよい。この場合、金属材料としては、例えば、Ni−Ti系合金のような擬弾性合金(超弾性合金を含む)、形状記憶合金、ステンレス鋼(例えば、SUS304、SUS303、SUS316、SUS316L、SUS316J1、SUS316J1L、SUS405、SUS430、SUS434、SUS444、SUS429、SUS430F、SUS302等、SUSの全品種)、コバルト系合金、金、白金のような貴金属、タングステン系合金、炭素系材料(ピアノ線を含む)等が挙げられる。金属材料は、コイル状又はメッシュ状に巻回することで補強層を構成するとよい。なお、シャフト16自体を金属材料で形成してもよい。
一方、カテーテル本体12のハブ18は、シャフト16よりも剛性を有する樹脂材料により構成される。ハブ18は、術者が把持し易いようにシャフト16よりも大径に形成され、その内部においてシャフト16を強固に固定している。術者は、このハブ18を把持及び操作(進退操作や回転操作)することで、血管内に挿入したシャフト16の先端部を治療部位まで送達する。
ハブ18の内部には、シャフト16のルーメン20に連通する内部空間18aが形成されている。また、ハブ18の基端部には、内部空間18aに連通する図示しない基端開口18bが設けられ、内部空間18aに塞栓剤を供給可能な塞栓剤押出装置19(例えば、シリンジ)が接続される。塞栓剤押出装置19から供給された塞栓剤は、内部空間18aを介してルーメン20の先端側に搬送されて治療部位に吐出される。
治療部位に吐出する塞栓剤は、吐出前は液状であり吐出後に硬化して固形化(又は半固形化)となる接着剤を適用することができる。この場合、重合型又は析出型のうちいずれの接着剤でもよく、例えば、シアノアクリレート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ゼラチン系接着剤、フィブリン系接着剤(フィブリン糊)等が挙げられる。これらの中でも、シアノアクリレート系接着剤は、シャフト16から吐出して直ぐに塞栓効果を発揮するため良好に適用し得る。シアノアクリレート系接着剤としては、例えば、NBCA(N−butyl−2−cyanoacrylate)、Onyx(登録商標)等が挙げられる。
図2Aに示すように、シャフト16内に設けられるルーメン20は、シャフト16の軸方向に沿って延び、シャフト16の先端方向に向かって塞栓剤を流動させる。ルーメン20は、シャフト16の先端に形成された吐出口22に連通し、シャフト16の基端においてハブ18の内部空間18aに連通する。ルーメン20を構成するシャフト16の内層は、塞栓剤を流動する材料で構成される、又はコーティングがなされているとよい。また、ルーメン20は、ガイドワイヤ24(図3A参照)の外径よりも大径に形成されることが好ましい。これにより手技において、ルーメン20に挿入されたガイドワイヤ24に沿ってシャフト16を案内することが可能となる。
吐出口22は、ルーメン20内を流動する塞栓剤をシャフト16の先端方向に吐出する開口である。シャフト16の先端面と吐出口22を形成する内周面の角部は、吐出口22の縁部22aとなっている。なお、図2A中では、吐出口22の縁部22aに至るシャフト16の先端側内周面が直線状に形成されているが、シャフト16の先端側内周面又は縁部22aは、塞栓剤の吐出時にシャフト16の軸方向と直交方向に塞栓剤を広げるため、テーパ状に形成されていてもよい(図5Cも参照)。また、シャフト16は、吐出口22の近傍位置にX線(放射線)を造影するための造影マーカ26を備えることが好ましい。
また、シャフト16の壁部には、後述する拡縮操作部30を部分的に収容可能な複数の挿通孔28が形成されている。複数の挿通孔28は、拡縮操作部30のワイヤ40の設置本数に対応して設けられる。挿通孔28は、シャフト16の先端から所定間隔離れた位置に設けられる先端露出口28aと、ハブ18の先端から所定間隔離れた位置に設けられる基端露出口28b(図1参照)とに連通している。
図1、図2A及び図2Bに示すように、本実施形態に係るカテーテル本体12は、キャップ14を拡張させる拡縮操作部30(拡張機構)をシャフト16の軸方向に沿って備える。この拡縮操作部30は、シャフト16の先端側から基端側に向かって、先端変形部32、中間伝達部34及び基端操作部36を含む。キャップ14は、先端変形部32の先端側を部分的に覆うように配置される。
拡縮操作部30は、シャフト16に設けられる複数(図1中では4本)のワイヤ40によって構成される。4本のワイヤ40は、シャフト16の周方向に沿って等間隔(90°間隔)に配置され、且つシャフト16の軸方向に平行して延びている。ワイヤ40は、その物性(弾性力、強度等)を適切に設計すれば、金属材料又は樹脂材料のいずれを使用してもよい。
4本のワイヤ40は、シャフト16先端側の露出部位が先端変形部32を構成し、先端変形部32よりも基端側でシャフト16内の収容部位が中間伝達部34を構成し、中間伝達部34よりも基端側の露出部位が基端操作部36を構成する。
具体的に、先端変形部32は、4本のワイヤ40がシャフト16先端側で露出していることで、シャフト16の径方向外側に弾性変形可能となっている。シャフト16の先端部には、ワイヤ40の先端を固定する先端固定部42が設けられ、ワイヤ40が先端方向に突き出ることを防止している。なお、図2A中では、ワイヤ40の先端をシャフト16の外周面から内側に埋め込んでいるが、ワイヤ40の固定手段は特に限定されるものではなく、例えば、金属材料からなる造影マーカ26に溶接する等、種々の構成をとり得る。
先端が固定された4本のワイヤ40は、塞栓治療デバイス10が送達される際の縮小状態において、図2Aに示すようにシャフト16の外周面の近接位置を軸方向に延在している。ワイヤ40の形状は、基本的にこの縮小状態を呈するように組成されている。そして、術者の操作により、中間伝達部34から先端方向への進出力(押出力)が付与されることで拡張状態に移行し、図2Bに示すようにシャフト16の外周面から離間し径方向外側に拡張する。ワイヤ40は、拡張状態において、先端固定部42とシャフト16の先端露出口28aの間で円弧状に弾性変形する。
また、中間伝達部34は、先端変形部32に対し基端操作部36からの進退方向の動作力(進出力及び後退力)を伝達する。すなわち、4本のワイヤ40は、シャフト16の挿通孔28内に摺動可能に収容されており、基端操作部36から進出力を受けることでシャフト16と相対的に先端方向に向かって進出する。これにより、先端露出口28aからワイヤ40が送出され、縮小状態の先端変形部32が拡張状態となる。逆に、ワイヤ40は、基端操作部36から後退力を受けることで、シャフト16と相対的に基端方向に向かって後退する。これにより、先端露出口28aにワイヤ40が引き込まれ、拡張状態の先端変形部32が縮小状態となる。
基端操作部36は、図1に示すように、中間伝達部34の基端側でシャフト16から露出した4本のワイヤ40の基端部分と、各ワイヤ40の基端が連結される操作リング44とを含む。ワイヤ40の基端部分は、シャフト16の基端露出口28bから送出されて、基端露出口28bよりも基端側の操作リング44に向かって直線状に延びている。
操作リング44は、術者が拡縮操作部30を操作するため、シャフト16の外周面上に設けられる操作子である。操作リング44は、4本のワイヤ40を一体的(均等的)に移動可能とする。シャフト16外周面の操作リング44よりも先端側には、操作リング44の先端方向の移動を規制するストッパ46が設けられていることが好ましい。ストッパ46は、拡縮操作部30を拡張する際に必要以上にワイヤ40を押し出してしまうことを抑制する。
一方、塞栓治療デバイス10のキャップ14は、シャフト16の先端において先端変形部32の先端側略半分を覆うように配置される膜材である。このキャップ14は、シャフト16の吐出口22を閉塞しないように吐出口22の縁部22a及び内周面を覆いつつ、中心部にルーメン20に連通する穴50を有する。キャップ14は、先端変形部32の縮小状態において、ワイヤ40と共にシャフト16の外周面に近接又は接触している。そして、先端変形部32の拡張状態において、ワイヤ40によりシャフト16の径方向外側に拡がるように作用して、中央部に穴50を有する略ドーム状を呈する。なお、キャップ14は、拡張状態において吐出口22の縁部22aを覆うように配置されている。これにより、塞栓治療デバイス10のキャップ14は、吐出口22から吐出された塞栓剤がシャフト16と血管壁とを接着するリスクを減少させる。なお、キャップ14は、塞栓剤がシャフト16と血管壁とを接着するリスクを減少させる観点より、キャップ14の一端が、吐出口22の縁部22a又は塞栓治療デバイス10のルーメン20内に配置されていることが好ましい。
キャップ14の表面14a(外側部:シャフト16の非対向面)は、拡張状態で、吐出口22から吐出された塞栓剤がカテーテル本体12の基端側に流動する現象(バックフロー)を抑える。さらに、キャップ14は、塞栓剤の硬化に伴い接着されることで、カテーテル本体12への塞栓剤の接着を防止又は抑制する。
キャップ14は、拡張状態で塞栓剤や血液により破れない強度の膜厚に形成され、塞栓剤や血液を不透過とするものであることが好ましい。このキャップ14は、伸縮性又は非伸縮性のいずれの性質を有していてもよい。例えば、伸縮性を有する材料としては天然ゴムや合成ゴム等の樹脂材料が挙げられる。非伸縮性を有する材料としては、織物、編物、不織布、紙材のような繊維膜、その他、非繊維性多孔質膜や高分子シートのような緻密膜等が挙げられる。
第1実施形態に係るキャップ14は、伸縮性を有する樹脂材料を適用し、キャップ14の内側に存在するワイヤ40やシャフト16に積極的に密着させている。また、キャップ14は、シャフト16先端で内側に折り返して吐出口22の内周面まで覆うことで、シャフト16の送達時にシャフト16による血管の損傷を抑制している。キャップ14の内側折返し部分52は、拡張時にもシャフト16への引っ掛かりを容易に維持し、キャップ14の基端側のみが先端変形部32の拡張に追従して拡張する。内側折返し部分52は、シャフト16からのキャップ14の離脱を防ぐために接着等により仮留めされていてもよい。
また、キャップ14の基端側は、拡張時にキャップ14がワイヤ40からずり落ちないように、ワイヤ40に仮留めされることが好ましい。なお、キャップ14の形状は、特に限定されるものではなく、内側折返し部分52を備えずにシャフト16の先端の外周面を覆うだけでもよい。
さらに、キャップ14の表面14aには、血管内でのシャフト16の送達性を高めるために潤滑剤がコーティングされていることが好ましい。この場合、潤滑剤は、塞栓剤との親和性が高い材料を選択するとよい。
第1実施形態に係る塞栓治療デバイス10は、基本的には以上のように構成されるものであり、以下その作用及び効果について説明する。
塞栓治療デバイス10は、上述したように動静脈シャント疾患(AVF、AVM等)が生じた脳血管の治療部位を閉塞する塞栓術に用いる。術者は、この手技において、例えば、セルジンガー法により患者の所定位置(手首、腕部、足首、大腿部等)から経皮的にガイドワイヤ24を先行挿入する。そして、専用デバイスを血管内に挿入しガイドワイヤ24に沿って血管内造影法や血管内超音波診断法により治療部位の形態を特定する。
治療部位の特定後に、専用デバイスに代えて塞栓治療デバイス10を血管V内に挿入していく。図3Aに示すように、塞栓治療デバイス10は、挿入及び送達時に、拡縮操作部30(4本のワイヤ40)が縮小状態となってシャフト16の外周面に近接している。このため、キャップ14もシャフト16の外周面を密着した状態となっている。また、シャフト16の挿入時には、プライミングを行うことにより、血管V内に空気等が導入されないようにしている。例えば、塞栓剤としてNBCAを使用する場合、ブドウ糖溶液でプライミングしておくことにより、NBCAが塞栓治療デバイス10のルーメン20に接着することを抑制できる。
術者は、塞栓治療デバイス10の吐出口22からルーメン20内にガイドワイヤ24を挿入して、基端側のハブ18を把持操作することで、シャフト16をこのガイドワイヤ24に沿うように進行させる。この際、キャップ14は、シャフト16の吐出口22に内側折返し部分52が引っ掛かっていることで、基端側への位置ずれが阻止される。よって、シャフト16の先端部及びキャップ14は、血管V内をスムーズに移動して脳血管の治療部位を臨む位置に到達する。
塞栓治療デバイス10の送達後は、ガイドワイヤ24を引き抜き、さらに拡縮操作部30を操作することによりキャップ14を径方向外側に拡張させる。すなわち、術者は、基端操作部36の操作リング44(図1参照)をシャフト16と相対的に進出することで、4本のワイヤ40の基端部を同時に先端方向に進出動作させる。この進出力は、中間伝達部34を介して先端変形部32に伝達され、先端がシャフト16に固定されているワイヤ40を変形させて径方向外側に向かって突出させる。これにより、先端変形部32のワイヤ40は、血管Vの血管壁VWに接触することになり、血管V内でシャフト16の軸方向位置を位置決めする。脳血管の治療では、血流路の断面積が狭いため、シャフト16の外周面からワイヤ40を1mm前後拡張すればワイヤ40を血管壁VWに接触させることができる。
また、ワイヤ40の変形によりワイヤ40に支持されているキャップ14も径方向外側に拡張する。この場合、キャップ14の先端側は、ワイヤ40の変形が少ないためシャフト16の先端を覆ったままで、キャップ14の基端側の表面14aがワイヤ40に連れて血管壁VWに接触又は近接する位置まで展開する。
キャップ14の拡張後に、図3Cに示すように、治療部位(シャフト16の先端方向)へ塞栓剤Xを吐出する。すなわち、術者は、ハブ18に接続されている塞栓剤押出装置19(図1参照)を操作することで、ルーメン20に塞栓剤Xを供給して先端方向に押し出す。これにより、シャフト16のルーメン20を流動した塞栓剤Xは吐出口22から血管V内に吐出される。
吐出口22から吐出された塞栓剤Xは、シャフト16先端の血管V内に充満する。この際、シャフト16の先端にはキャップ14が展開しているため、塞栓剤Xの基端方向への移動がキャップ14により抑えられる。このため、塞栓剤Xは、キャップ14の表面14aに接触しつつ血管V内の治療部位に展開し、さらに短時間に硬化することで血管V内を閉塞する。なお、塞栓治療デバイス10は、塞栓剤Xにより治療部位を閉塞した後、直ちに後述の操作を行う。これにより、塞栓治療デバイス10のルーメン20内に残っている塞栓剤Xが硬化する前に、キャップ14が離脱したカテーテル本体12を血管から抜去することができる。
塞栓剤Xの吐出後、図3Dに示すように、治療部位の閉塞が完了するものの、硬化した塞栓剤Xがキャップ14に接着した状態となる。この接着状態では、先端変形部32のワイヤ40を縮小状態に移行しても、キャップ14は追従せずに塞栓剤Xに密着する。なお、ワイヤ40は、術者が操作リング44を後退させることで、中間伝達部34を介して先端変形部32に後退力が伝達され、縮小状態に簡単に移行する。
そして、術者がカテーテル本体12を後退させると、塞栓剤Xに接着しているキャップ14がシャフト16から容易に離脱する。すなわち、キャップ14は塞栓剤Xと共に患者の血管V内に残留する。このようにキャップ14が残っても血管V内が閉塞されているため、キャップ14は血液に流されることがなく、塞栓剤Xと共に閉塞状態を良好に継続することができる。
一方、キャップ14が離脱したカテーテル本体12は、術者により血管Vを後退移動することで血管Vから引き抜かれて回収される。これにより、動静脈シャント疾患の塞栓術が終了する。
以上のように、第1実施形態に係る塞栓治療デバイス10は、キャップ14及び拡縮操作部30という簡単な構成により、塞栓剤Xの吐出前にキャップ14を縮小状態から拡張状態に移行させ、吐出口22付近の血管V内をキャップ14で略塞ぐことができる。そのため、吐出口22から吐出された塞栓剤Xが基端側に回り込んでシャフト16に接着する不都合が防止又は抑制される。また、塞栓剤Xの硬化に伴い拡張状態のキャップ14に塞栓剤Xが接着する。このため、キャップ14がシャフト16から離脱される構成となっている塞栓治療デバイス10は、塞栓剤Xに接着したキャップ14を残してシャフト16を確実且つ簡単に回収することができる。これにより、血管V内を閉塞する手技を容易且つ良好に行うことが可能となる。また、塞栓治療デバイス10は、複雑な血管内を経由して治療部位に送達されている。そのため、塞栓治療デバイス10と血管壁VWとが接着されてしまうと、塞栓治療デバイス10を血管から抜去する際、塞栓治療デバイス10の一部が断裂する、又は血管に損傷を与えるおそれがある。第1実施形態に係る塞栓治療デバイス10は、逆流により基端側に流れた塞栓剤Xをキャップ14と接着させることで、塞栓治療デバイス10の断裂や血管損傷のリスクを抑制することができる。
特に、キャップ14がシャフト16の外表面と血管Vの内表面との間を覆うことで、塞栓剤Xがキャップ14よりも基端方向に移動するのを良好に防止することができる。そのため、硬化した塞栓剤Xとシャフト16との接触を防ぐことができ、塞栓治療デバイス10を容易に回収することができる。さらに、塞栓治療デバイス10は、キャップ14が吐出口22の縁部22aを覆うことで、硬化した塞栓剤Xとシャフト16との接触をより確実に防ぐことができる。このため、塞栓治療デバイス10の回収時に、シャフト16の断裂や血管損傷のリスクを一層抑制することができる。
この場合、キャップ14が環状に形成された膜材であることで、キャップ14は、簡単な操作により縮小状態から拡張状態に移行し、吐出口22からの塞栓剤Xの吐出を許容する一方で、吐出口22の周囲の血管V内を塞ぐことができる。また、塞栓治療デバイス10は、先端変形部32がシャフト16の外周面から径方向外側に離間した状態となることで、キャップ14を内側から支持して拡張状態とすることができる。先端変形部32は、径方向外側への拡張に伴い血管壁VWに接触して、血管Vに対するシャフト16の軸方向の位置ずれを抑えることもできる。そして、拡縮操作部30としてワイヤ40を適用することで、ワイヤ40の弾性変形によりキャップ14を縮小状態から拡張状態に簡単に移行させることができる。
また、第1実施形態に係る塞栓治療デバイス10は、種々の変形例及び応用例をとり得る。例えば、カテーテル本体12は、ガイドワイヤ24を通すガイドワイヤルーメンを別に備えていてもよい。以下、図4A〜図5Cを参照して塞栓治療デバイス10の変形例を説明していく。なお、以降の説明において、第1実施形態に係る塞栓治療デバイス10と同じ構成又は同じ機能を奏する構成については、同一の符号を付しその詳細な説明については省略する。
図4Aに示す第1変形例に係る拡縮操作部30A(先端変形部32A)は、これを構成する4本のワイヤ40Aを、シャフト16の外周面を回り込むように(螺旋状に)形状記憶している点で塞栓治療デバイス10と異なる。すなわち、基端操作部36(図1参照)から進出力を加えると、ワイヤ40Aが、シャフト16を斜めに回り込みつつシャフト16の径方向外側に拡張する。よって、ワイヤ40Aの拡張状態では、ワイヤ40Aがキャップ14を斜めに支持することで、正面視で円形状に一層近くなるようにキャップ14を展開させる。その結果、塞栓剤Xのバックフローをより低減することができる。なお、ワイヤ40Aのシャフト16の回り込み角度は自由に設計してよく、回り込み角度を大きくすることで、より円形状に近づけることもできる。
図4Bに示す第2変形例に係るキャップ15は、非伸縮性の膜材により構成され、シャフト16の外周面上をキャップ15の縮小状態でキャップ15を折り畳むように配置している。この場合、ワイヤ40は、シャフト16の外周面に近接した状態で、キャップ15の折り重なった部分を押さえ込み、キャップ15の縮小状態を良好に維持する。また、キャップ15は、ワイヤ40の先端変形部32の弾性変形にともない折り畳み部分が拡げられて血管V内で展開されるので、塞栓治療デバイス10のキャップ14と同様の効果を得ることができる。
図5Aに示す第3変形例に係る拡縮操作部30Bは、1本のワイヤ40Bにより構成されている。このワイヤ40Bの先端変形部32Bは、螺旋状に形状記憶がなされており、図示しない縮小状態ではシャフト16の外周面を巻回している。そして、ワイヤ40Bの拡張時には、シャフト16の先端固定部42よりも基端側が螺旋状を描きつつシャフト16の径方向外側に離間していく。これにより、ワイヤ40Bは、正面視で略円形状を呈するようにキャップ14を展開させ、塞栓剤Xのバックフローをより低減することができる。要するに、拡縮操作部30を構成するワイヤ40は、形状や本数を自由に設計してよい。
図5Bに示す第4変形例に係る拡縮操作部30Cは、バルーン54と、バルーン54の内側に拡張用流体を供給可能な供給路54aとを有し、バルーン54によりキャップ14を拡張させる構成となっている。このようにバルーン54によりキャップ14を拡張する構成では、拡張流体の供給及び排出によりバルーン54を拡縮操作して、キャップ14を容易に拡張させることができる。また、キャップ14は、バルーン54により円形状に拡張されるので、塞栓剤Xのバックフローをより低減することができる。なお、バルーン54は、ルーメン20を流動する塞栓剤Xの一部を分流させることで拡張されてもよい。この場合、プライミング時にキャップ14が離脱しにくいという観点から、キャップ14は伸縮性がある部材であることが好ましい。また、キャップ14が非伸縮性の部材であっても、ルーメン20にもう1本スリットの入ったインナーカテーテルを挿入しておき、それを回して位置をずらすことで、初めてバルーン54へ液体が流入するようなコントロール手段を用いることで使用することが可能である。
図5Cに示す第5変形例に係る拡縮操作部30Dは、キャップ14を吐出口22の先端に拡張させる構成となっている。キャップ14の一端は、所定の仮留め手段(例えば、接着等)によりシャフト16先端の内周面に固定され、キャップ14の他端は、拡縮操作部30Dのワイヤ40Cが所定の取付手段(例えば、接着等)により仮留めされる。ワイヤ40Cは、シャフト16の外周面の先端露出口28a付近からシャフト16よりも先端に斜め外側に進出する構成となっている。
このように構成することで、拡縮操作部30Dの動作により、キャップ14は、図5C中の2点鎖線で示す折り畳まれた縮小状態から、先端側に向かってロート状に展開した拡張状態に移行する。また、キャップ14の仮留め手段や取付手段は、塞栓剤Xの接着力よりも充分に弱く設定されており、キャップ14は、塞栓剤Xに接着した状態でシャフト16の後退により容易に離脱される。このように、塞栓治療デバイス10は、キャップ14を先端側に向かって展開しても塞栓治療デバイス10と同様の効果を得ることができる。
〔第2実施形態〕
第2実施形態に係る塞栓治療デバイス10Aは、図6に示すように、キャップ14の拡縮操作部60(拡張機構)を、カテーテル本体12の先端側に設けた先端変形部62と、その外側を覆う外管64(アウターカテーテル)とにより構成している。先端変形部62は、外管64が周囲に配置されていない状態で、シャフト16から離間した拡張状態を呈し、外管64の配置により拡張が規制されてシャフト16に近接した縮小状態となる。よって、外管64から先端変形部62を露出すると、先端変形部62は自動的に拡張状態に変形する。
第2実施形態に係る塞栓治療デバイス10Aは、図6に示すように、キャップ14の拡縮操作部60(拡張機構)を、カテーテル本体12の先端側に設けた先端変形部62と、その外側を覆う外管64(アウターカテーテル)とにより構成している。先端変形部62は、外管64が周囲に配置されていない状態で、シャフト16から離間した拡張状態を呈し、外管64の配置により拡張が規制されてシャフト16に近接した縮小状態となる。よって、外管64から先端変形部62を露出すると、先端変形部62は自動的に拡張状態に変形する。
具体的に、先端変形部62は、シャフト16の軸方向に沿って比較的短い範囲で延びる複数(図6中では4本)のワイヤ66と、ワイヤ66の基端が連結されるスライダ68とを含む。また、シャフト16の外周面には、スライダ68を配置する凹部16aが設けられている。
4本のワイヤ66は、シャフト16の先端側の周方向に等間隔で配置されている。各々のワイヤ66は、シャフト16の径方向外側且つ円弧状となるように形状記憶がなされている。ワイヤ66の先端は、第1実施形態に係るワイヤ40と同様にシャフト16を構成する壁部(先端固定部42)に埋め込まれている。そして、ワイヤ66の外側で、シャフト16の先端からワイヤ66の途中位置までの間にキャップ14が配置される。一方、ワイヤ66の基端は、溶接等によりスライダ68に接合され、シャフト16の軸方向に変位可能となっている。
スライダ68は、シャフト16の凹部16aを周方向に囲う環状部材であり、凹部16aに沿って先端方向又は基端方向に摺動可能である。凹部16aは、シャフト16の主要部の外径に対し径方向内側に凹んで形成されており、軸方向の端部の段差によりスライダ68のスライドを規制する。なお、スライダ68は、シャフト16の軸方向にスライドできればよく、シャフト16は凹部16aを備えていなくてもよい。
一方、外管64は、カテーテル本体12のシャフト16よりも多少短い軸方向長さを有する長尺な管状部材であり、その内部にはシャフト16を収容する収容ルーメン70を備える。収容ルーメン70の内径は、シャフト16の外径よりも若干大きい程度である。従って、外管64は、径方向外側且つ円弧状に形状記憶されたワイヤ66をシャフト16の外周面に近接又は接触させつつ、シャフト16と相対移動可能となっている。
また、外管64の基端部には、径方向外側に突出するフランジ72が形成されている。このフランジ72は、カテーテル本体12のハブ18よりも先端側に配置され、手技時には体外に露出され、術者が外管64を進退するための操作部となる。外管64は、先端変形部62の拡張状態を規制可能な程度の剛性があればその構成材料については特に限定されず、例えばシャフト16の材料として挙げたものを適用することができる。
第2実施形態に係る塞栓治療デバイス10Aは、基本的には以上のように構成されるものであり、以下その作用効果について説明する。
塞栓治療デバイス10Aは、図7Aに示すように、シャフト16、キャップ14及び拡縮操作部60(先端変形部62)を外管64の収容ルーメン70に収容した状態で血管V内に挿入される。そして、術者の操作に基づき塞栓治療デバイス10Aの先端部が血管Vの治療部位に送達される。
その後、術者により外管64が後退操作されることで、図7Bに示すように、外管64の先端からシャフト16、キャップ14、先端変形部62が露出する。先端変形部62のワイヤ66は、変形を規制していた外管64が後退することで弾性復元して縮小状態から拡張状態に移行する。このワイヤ66の拡張状態の移行に伴い、縮小状態となっていたキャップ14も径方向外側に拡張する。また、ワイヤ66は、径方向外側に拡張して血管壁VWに接触することで、血管V内でシャフト16を位置決めする。
キャップ14の拡張後に、図7Cに示すように、治療部位(シャフト16の先端方向)に塞栓剤Xを吐出する。吐出口22から吐出された塞栓剤Xは、基端方向への移動がキャップ14により抑えられ、キャップ14の表面14aに接触しつつ血管V内で短時間に硬化し、血管V内を閉塞する。
その結果、図7Dに示すように、硬化した塞栓剤Xにキャップ14が接着された接着状態が形成される。この接着状態で外管64を進出させると、外管64は拡張状態のワイヤ66を径方向内側に弾性変形させていく。このため、塞栓剤Xに接着しているキャップ14がワイヤ66やシャフト16から離脱することになり、術者がカテーテル本体12を後退させると、キャップ14と塞栓剤Xが患者の血管V内に残留する。外管64及びカテーテル本体12は、術者により血管Vを後退移動することで血管Vから引き抜かれて回収される。これにより、動静脈シャント疾患の塞栓術が終了する。
以上のように、第2実施形態に係る塞栓治療デバイス10Aでも、第1実施形態に係る塞栓治療デバイス10と同様の効果を得ることができる。特に、拡縮操作部60が先端変形部62に対し相対移動可能な外管64を含むことで、径方向外側に形状記憶された先端変形部62を外管64の後退により露出させ、先端変形部62を拡張状態に簡単に移行することができる。これにより、キャップ14が簡単に展開して、塞栓剤Xを吐出する手技を一層容易に行うことができる。
なお、第2実施形態に係る塞栓治療デバイス10Aも種々の変形例や応用例を適用し得る。例えば、シャフト16を構成する壁部に、4本のワイヤ66の基端部分を収容する挿通孔(図示せず)を形成しておき、ワイヤ66は、外管64により縮小状態となった際に、その基端部分が挿通孔に摺動可能に収容されてもよい。
〔第3実施形態〕
第3実施形態に係る塞栓治療デバイス10Bは、図8A〜図8Dに示すように、吐出口22の近傍位置で拡張する留置部として、膜材からなるキャップ14に代えて、多孔質の拡縮体80(例えば、スポンジ)を適用している。この拡縮体80は、シャフト16の外周面を周方向に囲う穴82を有する環状に形成されている。
第3実施形態に係る塞栓治療デバイス10Bは、図8A〜図8Dに示すように、吐出口22の近傍位置で拡張する留置部として、膜材からなるキャップ14に代えて、多孔質の拡縮体80(例えば、スポンジ)を適用している。この拡縮体80は、シャフト16の外周面を周方向に囲う穴82を有する環状に形成されている。
拡縮体80は、シャフト16と外管64(拡張機構)との間に挟まれることにより、密度が高められて圧縮され外側部80aがシャフト16側に寄った縮小状態を呈する。そのため、拡縮体80は、外管64から露出されると、縮小状態から元の状態(拡張状態)に復帰する、すなわちシャフト16に対し径方向外側に自己拡張するように作用する。拡縮体80を構成する材料は、特に限定されるものではなく、ポリウレタン等の合成樹脂や天然スポンジを適用することが可能である。
外管64は、第2実施形態に係る外管64と同様に、シャフト16及び拡縮体80と相対移動可能であり、カテーテル本体12のシャフト16及び縮小状態の拡縮体80を収容ルーメン70に収容する。一方、シャフト16の外周面には、外管64の後退時に外管64に連れて拡縮体80が移動しないように突条部84が設けられている。
従って、図8Aに示すように、塞栓治療デバイス10Bは、術者により外管64にシャフト16及び縮小状態の拡縮体80を収容して治療部位に送達された後、外管64を後退することで拡縮体80を外管64の外側に容易に露出することができる。拡縮体80は、外管64からの露出に伴い、図8Bに示すように径方向外側に拡張し、その外側部80aがシャフト16の外周面から離間して血管Vに接触する。この状態で、塞栓剤Xを吐出口22から吐出すると、図8Cに示すように拡縮体80により塞栓剤Xが基端側に向かうことが抑えられる。また、塞栓剤Xの硬化に伴い、拡縮体80に対して塞栓剤Xが接着することになり、図8Dに示すようにカテーテル本体12から拡縮体80が良好に離脱される。
以上のように、塞栓治療デバイス10Bにより自己拡張可能な拡縮体80を適用しても、第1及び第2実施形態に係る塞栓治療デバイス10、10Aと同様の効果を得ることができる。特に、拡縮体80は、外管64の後退により外管64から露出されることで、吐出口22の周囲においてスムーズに自己拡張して、血管V内を閉塞することができる。
なお、第3実施形態に係る塞栓治療デバイス10Bも種々の変形例や応用例を適用し得る。例えば、拡縮体80の周面には、塞栓剤X又は血液の通過を遮断するシール膜(合成樹脂材等)やパッキン材が設けられていてもよい。また、拡縮体80に血液と反応して凝固する凝固剤(カルシウム溶液、トロンビン、ビタミン)を含ませて血管V内の閉塞を補助させてもよい。
〔第4実施形態〕
第4実施形態に係る塞栓治療デバイス10Cは、図9A及び図9Bに示すように、拡張機構91であるワイヤ90を塞栓剤Xの流動に基づき拡張する構成となっている。具体的には、ワイヤ90は、先端変形部92だけを構成しており、シャフト16の先端側付近において比較的短い軸方向長さを有する。また、ワイヤ90の基端側部分は、ルーメン20を構成するシャフト16の壁部に収容されている。
第4実施形態に係る塞栓治療デバイス10Cは、図9A及び図9Bに示すように、拡張機構91であるワイヤ90を塞栓剤Xの流動に基づき拡張する構成となっている。具体的には、ワイヤ90は、先端変形部92だけを構成しており、シャフト16の先端側付近において比較的短い軸方向長さを有する。また、ワイヤ90の基端側部分は、ルーメン20を構成するシャフト16の壁部に収容されている。
シャフト16の壁部には、ワイヤ90の基端側部分をルーメン20の軸方向に沿って収容する空間部94が設けられている。この空間部94はルーメン20に連通する連通口96を有し、連通口96を介してルーメン20から塞栓剤Xを流入させる。また、連通口96を構成する縁部の先端側にはルーメン20を径方向内側に狭める突出壁98が形成されている。
なお、ワイヤ90の基端には、空間部94に流入した塞栓剤Xを受けるために、ワイヤ90よりも一回り太い受部90aが形成されているとよい。これにより、空間部94に塞栓剤Xが流入すると受部90aが先端側に押し出されて、ワイヤ90の基端側部分が先端側に進出する。なお、受部90aは、空間部94の先端側よりも太く形成されていることで、ワイヤ90がシャフト16から抜け出ることを防ぐことができる。
第4実施形態に係る塞栓治療デバイス10Cでは、図9Bに示すように、ルーメン20に塞栓剤Xを供給した際に、ルーメン20の内周面側を流れる塞栓剤Xの一部が空間部94に流入する。この際、塞栓剤Xは突出壁98に当たることで空間部94への流入が促進される。そして、空間部94に流入した塞栓剤Xは、ワイヤ90の受部90aを押し出すことで縮小状態のワイヤ90を径方向外側に拡張させる。これによりワイヤ90の外側に配置されていたキャップ14が拡張する。ワイヤ90の拡張量(シャフト16の外周面から血管壁VWまでの間隔)は、例えば1mm程度と短いため、塞栓剤Xの流動圧でもワイヤ90を充分に拡張させることができる。なお、プライミング時に拡張機構91が拡張しても、プライミング液(生理食塩水等)の粘性が小さいため、拡張機構91は、キャップ14の収縮に伴って元の状態に戻る。その一方で、塞栓剤Xを吐出した場合は、塞栓剤Xの粘性が高いため、キャップ14が拡張したまま維持される。
以上のように、第4実施形態に係る塞栓治療デバイス10Cでも、第1〜第3実施形態に係る塞栓治療デバイス10、10A及び10Bと同様の効果を得ることができる。特に、ルーメン20を流動する塞栓剤Xにより先端変形部92を変形させることで、塞栓剤Xの供給操作以外の操作(先端変形部92を操作する他の手段)を術者に対し要求することがないため、塞栓治療デバイス10Cの使い易さが一層向上する。
上記において、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。
10、10A〜10C…塞栓治療デバイス
14、15…キャップ 16…シャフト
20…ルーメン 22…吐出口
30、30A〜30D、60…拡縮操作部
32、32A、32B、62、92…先端変形部
34…中間伝達部 36…基端操作部
40、40A、40B、40C、66、90…ワイヤ
64…外管 80…拡縮体
91…拡張機構 X…塞栓剤
14、15…キャップ 16…シャフト
20…ルーメン 22…吐出口
30、30A〜30D、60…拡縮操作部
32、32A、32B、62、92…先端変形部
34…中間伝達部 36…基端操作部
40、40A、40B、40C、66、90…ワイヤ
64…外管 80…拡縮体
91…拡張機構 X…塞栓剤
Claims (12)
- 生体管腔内を送達され、且つ塞栓剤を吐出可能な吐出口を先端側に有する長尺部と、
前記吐出口の近傍位置に配置され、外側部が前記長尺部に近接した縮小状態から、前記縮小状態よりも前記外側部が前記長尺部の外側に離間した拡張状態に移行可能であり、且つ前記長尺部から離脱可能な留置部と、を備える
ことを特徴とする塞栓治療デバイス。 - 請求項1記載の塞栓治療デバイスにおいて、
前記留置部は、拡張後において、前記長尺部の外表面と前記生体管腔の内表面との間を覆っている
ことを特徴とする塞栓治療デバイス。 - 請求項1又は2記載の塞栓治療デバイスにおいて、
前記留置部は、拡張状態において前記吐出口の縁部を覆っている
ことを特徴とする塞栓治療デバイス。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載の塞栓治療デバイスにおいて、
前記留置部は、前記長尺部の周方向に環状に連なると共に、前記縮小状態で前記吐出口から前記長尺部の外周面の所定範囲までを覆う膜材である
ことを特徴とする塞栓治療デバイス。 - 請求項4記載の塞栓治療デバイスにおいて、
前記留置部を前記縮小状態から前記拡張状態へと移行させる拡張機構を備える
ことを特徴とする塞栓治療デバイス。 - 請求項5記載の塞栓治療デバイスにおいて、
前記拡張機構は、前記膜材を内側から押し広げることによって前記拡張状態にする変形部を有する
ことを特徴とする塞栓治療デバイス。 - 請求項6記載の塞栓治療デバイスにおいて、
前記拡張機構は、前記変形部に連なると共に、前記長尺部に沿って進退移動することで前記変形部を変形させる操作部を前記長尺部の基端側に有する
ことを特徴とする塞栓治療デバイス。 - 請求項6記載の塞栓治療デバイスにおいて、
前記変形部は、径方向外側に自動的に拡張可能であり、
前記拡張機構は、前記変形部の外側を覆い、且つ前記変形部に対し相対的に後退可能な外管を含む
ことを特徴とする塞栓治療デバイス。 - 請求項8記載の塞栓治療デバイスにおいて、
前記変形部は、前記外管の後退後の再進出により縮小する
ことを特徴とする塞栓治療デバイス。 - 請求項6記載の塞栓治療デバイスにおいて、
前記長尺部は、前記塞栓剤を前記吐出口に流動させるルーメンを有し、
前記変形部は、前記ルーメンからの前記塞栓剤の圧力を受けて前記膜材を拡張させるように作用する
ことを特徴とする塞栓治療デバイス。 - 請求項5〜10のいずれか1項に記載の塞栓治療デバイスにおいて、
前記拡張機構は、先端が前記吐出口の近傍位置の前記長尺部に固定され、基端側からの押出力により前記長尺部の径方向外側に変形する複数のワイヤである
ことを特徴とする塞栓治療デバイス。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載の塞栓治療デバイスにおいて、
前記留置部は、前記長尺部の周方向に環状に連なると共に、前記縮小状態から前記拡張状態に自己拡張可能な拡縮体であり、
前記拡縮体に対し相対移動可能に配置され、且つ前記拡縮体の外側部を囲って前記縮小状態とする外管を有する
ことを特徴とする塞栓治療デバイス。
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Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2014041937A Pending JP2015167572A (ja) | 2014-03-04 | 2014-03-04 | 塞栓治療デバイス |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2015167572A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2023042909A1 (ja) * | 2021-09-17 | 2023-03-23 | テルモ株式会社 | カテーテルおよび塞栓物装填済みカテーテル |
-
2014
- 2014-03-04 JP JP2014041937A patent/JP2015167572A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2023042909A1 (ja) * | 2021-09-17 | 2023-03-23 | テルモ株式会社 | カテーテルおよび塞栓物装填済みカテーテル |
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