<<第一の実施形態>>
以下、本発明の第一の実施形態を説明する。以下、本発明の実施形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
[MRI装置の構成]
図1(a)は、本実施形態のMRI装置の構成図である。本図に示すように、本実施形態のMRI装置100は、被検体101の周囲に静磁場を発生する磁石102と、該空間に傾斜磁場を発生する傾斜磁場コイル103と、この領域に高周波磁場を発生するRFコイル104と、被検体101が発生するMR信号を検出するRFプローブ105と、信号検出部106と、信号処理部107と、解析部108と、傾斜磁場電源109と、RF送信部110と、制御部111と、ベッド112と、表示部113と、を備える。
傾斜磁場コイル103は、X、Y、Zの3方向の傾斜磁場コイルで構成され、傾斜磁場電源109からの信号に応じてそれぞれ傾斜磁場を発生する。RFコイル104はRF送信部110の信号に応じて高周波磁場を発生する。RFプローブ105で受信したエコー信号は、信号検出部106で検出され、信号処理部107で信号処理され、また、計算によりMR信号データに変換される。
解析部108は、MR信号データに演算処理を施し、画像、スペクトル波形等の表示データを生成する。生成された画像等は、表示部113に表示される。なお、解析部108は、MRI装置100とは独立した情報処理装置に構築されてもよい。
表示部113は、操作者による操作(被検者情報や撮像条件の入力や、撮像の実行と停止)を入力するインターフェースを兼ねる。
制御部111は、入力された撮像条件を磁場印加に関わるタイミングチャートに変換し、同タイミングチャートに従って、傾斜磁場電源109、RF送信部110、信号検出部106を制御し、計測を実行する。制御のタイムチャートはパルスシーケンスと呼ばれている。ベッド112は被検体が横たわるためのものである。
また、本実施形態では、信号処理部107が処理したMR信号データの中から、解析部108で解析するMR信号データを決定する。
本実施形態の制御部111および解析部108の各機能は、CPU、メモリおよび記憶装置を備え、予め記憶装置に格納されたプログラムを、CPUがメモリにロードし、実行することにより実現する。
一般に、MRIの撮像対象は被検体の主たる構成物質、プロトンである。プロトン密度の空間分布や、励起されたプロトンの緩和現象の空間分布を画像化することで、人体頭部、腹部、四肢等の形態または機能を、2次元もしくは3次元的に撮像する。
上記MRI装置100による撮像方法を説明する。傾斜磁場により異なる位相エンコードを与え、それぞれの位相エンコードで得られるエコー信号を検出する。位相エンコードの数は通常1枚の画像あたり128、256、512等の値が選ばれる。各エコー信号は通常128、256、512、1024個のサンプリングデータからなる時系列信号として得られる。
MRI装置100では、これらのデータをフーリエ変換(以下、FT)して1枚のMR画像を作成したり、各種の解析を行ったりし、その結果をユーザに提示する。MRI装置100でなされる解析には、例えば、被検体の温度計測がある。また、前記撮像に先がけて、様々な効果を持つプリパルスを印加する場合がある。
[制御部の機能]
本実施形態では、同一の撮像条件を用いてMR信号を繰り返して取得する繰り返し計測において、計測結果の精度(計測精度)を低下させるデータを除外して、計測精度を向上させる。すなわち、所望の計測精度を達成するMR信号データのみを処理対象データとして選択する。所望の計測精度を達成するか否かは、体動等による被検体の変動の影響の多寡で判断し、変動の少ないものを選択する。変動の多寡は、所定数のMR信号データから得た指標で判断する。
これを実現するため、本実施形態の制御部111は、図1(b)に示すように、計測部210と、処理対象データ選択部220と、を備える。
計測部210は、予め定めた計測シーケンスを同一の撮像条件で繰り返し実行し、複数のエコー信号を取得する、繰り返し計測を行う。
本実施形態では、繰り返し計測として、MRSを実行する場合を例にあげて説明する。MRSは、数cm立方の領域を計測対象とする。微小な信号を計測対象としているため、多数回の繰り返し計測を行い、得られた結果に対し、加算平均処理を適用する。このため、計測時間が長くなる。例えば、TR(繰り返し時間)3秒で128回加算する場合は、計測時間は約6分半となる。
処理対象データ選択部220は、計測シーケンスを繰り返し実行することにより得た複数のエコー信号の中から、所望の計測精度を得るエコー信号を処理対象データとして選択する。本実施形態では、各エコー信号の指標を算出し、ユーザに提示する指標提示部221と、ユーザから前記処理対象データの選択を受け付ける受付部222と、を備える。
指標提示部221は、繰り返し回数Nを、複数のブロックBに分割し、ブロック毎にエコー信号を変換して得たMR信号データの指標を算出し、ユーザに提示する。すなわち、所定数のエコー信号群を1ブロックとし、前記ブロック単位で当該ブロックを構成する前記エコー信号群の指標を算出し、ユーザに提示する。
本実施形態では、指標として、各ブロックのMR信号データの平均値と分散とを算出する。そして、ブロック毎の算出結果を処理結果表示としてユーザに提示する。
なお、繰り返し回数Nは、ユーザにより撮像条件の1つとして入力され、設定される。あるいは、撮像種により予め定められる。ブロック数Bは、ユーザにより設定される。あるいは、予め定められる。
計測が終了した時点で、表示部113に表示される処理結果表示300の例を図2(a)に示す。処理結果表示300は、ブロック番号301と、指標(ここでは、平均値302と、分散303)と、除外データ指定欄304とを備える。本図に示すように、計測が終了した時点では、処理結果表示300として、表示部113上には、ブロック数B個分のMR信号データの、ブロック毎の平均値と分散とが表示される。
この処理結果表示300は、ユーザから除外データの指定を受け付けるユーザインタフェース(UI)としても機能する。
受付部222は、処理結果表示300の、除外データ指定欄304を介して、除外するデータをブロック単位で受け付ける。すなわち、受付部222は、ユーザから、処理対象データから除外するブロックの選択を受け付ける。
ユーザは、処理結果表示300の指標の数値を確認し、加算処理の対象から除外するMR信号データを、ブロック単位で指定する。指定は、除外データ指定欄304を選択することにより行う。例えば、他のブロックの数値と比較して、平均値が大きく異なるブロックや分散が大きいブロックは、計測精度を低下させるブロックと見なすことができる。従って、加算処理の対象とするには不適なMR信号データを有するブロックと判断できる。ユーザは、計測精度を低下させるブロックのMR信号データ、例えば、分散の大きいブロックのMR信号データを、不適なMR信号データとして加算処理の対象から除外する様に指定する。
なお、受付部222は、除外するブロックの指定ではなく、加算処理の対象とするMR信号データの指定をブロック単位で受け付けるよう構成してもよい。
解析部108は、処理対象データ選択部220が処理対象データとして決定したデータに対し、解析を行う。なお、解析結果は、表示部113に表示する。例えば、処理対象データを加算して加算データを得、加算データに対し、所定の解析処理を施し、代謝物のスペクトル波形を得る。
なお、表示した代謝物のスペクトル波形を用いた更なる解析については、従来技術と同様である。例えば、MRSを用いた被検体の温度計測を行う場合は、渦電流に起因する信号歪の補正、ノイズ除去などが挙げられる。
以下、本実施形態の計測部210、処理対象データ選択部220、解析部108による、繰り返し計測処理の流れを説明する。
[従来の繰り返し計測の流れ]
本実施形態の繰り返し計測処理の説明に先立ち、比較のため、従来の繰り返し計測処理の流れを説明する。図3は、従来の計測処理の処理フローである。
制御部111は、計測の繰り返し回数Nを設定する(ステップS1001)。制御部111は、設定された繰り返し回数N回、計測シーケンスを実行してMR信号データを取得し、データベースに保存する(ステップS1002、S1003)。
解析部108は、データベースに保存されているMR信号データに対し、加算処理を行い、加算データを作成する。そして、加算データに対し、所定の解析処理を適用し、処理結果を得る(ステップS1005)。
そして、解析部108は、処理結果を表示部113に表示する(ステップS1005)。
[本実施形態の繰り返し計測処理の流れ]
本実施形態では、N回の計測で得られるN個のデータを、所定のブロックに分割し、ブロック単位で計測精度を特定する指標を算出し、ユーザに提示する。そして、ユーザが選択したブロックのデータのみを解析処理に用いる。これにより、計測精度を低下させるブロックのデータは、除外され、所望の計測精度を得られるブロックのデータのみで解析処理が行われる。
[本実施形態の繰り返し計測の流れ]
本実施形態の、繰り返し計測処理の流れを説明する。図4は、本実施形態の繰り返し計測処理の処理フローである。
計測部210は、撮像条件を受け付け、計測の繰り返し回数Nと、ブロック数Bとを設定する(ステップS1101)。そして、1ブロック分のデータ数N/Bを算出し、ブロック番号のカウンタbを1とする。
計測部210は、1ブロック分のデータ数(N/B)回、計測シーケンスを実行してMR信号データを取得し、データベースに保存する(ステップS1102、S1103)。1ブロック分のデータ数の取得を終えたか否かの判別は、取得したデータ数がN/Bの倍数となったか否かで行う。また、取得されたMR信号は、計測毎に、データベースの異なるアドレスに保存する。
指標提示部221は、1ブロック分のデータ数(N/B)個、MR信号を取得すると、これらのデータを、ブロック番号bのデータとする。そして、指標提示部221は、ブロック番号bのデータの、平均値Mbと分散SDbとを計算し、ブロック番号bに対応づけて、処理結果表示300として表示部113に表示する(ステップS1104)。具体的には、データベースから直近のN/B個のMR信号データを抽出し、平均値と分散とを計算し、処理結果表示300として表示する。
計測部210および指標提示部221は、ステップS1102、S1103、S1104の処理を、計測したデータ数がNとなるまで、すなわち、ブロック番号bがBとなるまで、繰り返す(ステップS1105、S1106)。
例えば、データベースにN/B×2個のデータが保存されると、指標提示部221は、第N/B+1番目から第N/B×2番目に取得したMR信号データを用いて平均値M2と分散SD2を導出し、その結果を処理結果表示として表示部113に表示する。
操作者は、処理結果表示300として表示された指標(平均値302および分散303)を確認し、加算処理の対象から除外するMR信号データを、ブロック単位で指定する。
受付部222は、ユーザによる除外の指示を受け付け、当該ブロックのMR信号データを除外し、処理対象データを決定する(ステップS1107)。
解析部108は、処理対象データに対し、加算処理を行い、加算データを作成する。そして、加算データに対し、所定の解析処理を適用し、処理結果を得る(ステップS1108)。
そして、解析部108は、処理結果を表示部113に表示する(ステップS1109)。
以上説明したように、本実施形態のMRI装置100は、予め定めた計測シーケンスを同一の撮像条件で繰り返し実行し、複数のエコー信号を取得する計測部210と、前記複数のエコー信号の中から、所望のエコー信号を処理対象データとして選択する処理対象データ選択部220と、前記処理対象データに対し、解析を行う解析部108と、を備える。
前記処理対象データ選択部220は、前記エコー信号の指標を算出し、ユーザに提示する指標提示部221と、ユーザから前記処理対象データの選択を受け付ける受付部222と、を備えてもよい。
前記指標提示部221は、所定数の前記エコー信号を1ブロックとし、前記ブロック単位で当該ブロックを構成する前記エコー信号の前記指標を算出し、ユーザに提示し、前記受付部222は、ユーザから、前記処理対象データから除外する前記ブロックの選択を受け付けてもよい。
前記指標は、前記1ブロックを構成するエコー信号の平均値および分散であってもよい。
本実施形態のMRI装置100は、2つの要素技術を含む。第1は撮像対象の変動を確認する技術である。これは、同一の撮像条件で信号を収集しているので、例えば、所定期間における信号強度の平均値と分散とを指標とし、被検体の変動を確認する。第2はその結果をユーザに提示する技術および特定期間のデータを積算処理に適用するか否かを指定するユーザインタフェース(UI)である。本実施形態のMRI装置100では、このUIを介して、加算処理に適用すると選択されたデータのみを使用し、加算平均などの処理を実施する。
このように、本実施形態によれば、積算(加算)処理の対象となる計測データから、被検者の状態が同一でないと推定可能なデータを除外することにより、所望の精度を達成可能なデータのみを解析処理に用いることとなるため、その後の加算処理で得られる計測結果が向上する。特に、撮影部位が、脳のように動きの少ない箇所の場合、本実施形態は有用である。
<変形例その1>
なお、本実施形態では、各ブロックのMR信号データの指標(平均値と分散)をユーザに提示し、ユーザから指定を受け付けるよう構成している。すなわち、ユーザに各ブロックの適否の判断を任せているが、これに限定されない。適否の判断基準となる閾値を設定し、適否の判断を自動化してもよい。
この場合の、制御部111aの機能ブロック図を図5(a)に示す。本変形例の制御部111aは、上記実施形態同様、計測部210と処理対象データ選択部220とを備える。そして、処理対象データ選択部220は、エコー信号の指標を算出する指標算出部223と、指標が、予め定めた閾値を用いて定められた条件を満足するか否か判別し、満足する場合、前記処理対象データと選択する判別部224とを備える。
指標算出部223は、繰り返し回数Nを、複数のブロックBに分割し、ブロック毎にエコー信号を変換して得たMR信号データの指標を算出する。すなわち、所定数のエコー信号群を1ブロックとし、前記ブロック単位で当該ブロックを構成する前記エコー信号群の指標を算出する。本変形例では、指標として、ブロック毎のMR信号データの平均値Mbと分散SDbとを算出する。
判別部224は、ブロック単位で、前記条件を満足するか否か判別する。ここでは、予めブロック単位のデータの指標の閾値(ここでは、平均値の閾値Mthおよび分散の閾値SDth)を定め、これらを用い、閾値条件を定める。閾値条件は、被検体の変動による影響の少ないデータで構成されるブロックを選択するもので、当該条件を満たす場合、そのブロックのMR信号データは採用と決定される条件である。例えば、算出された平均値Mbおよび分散SDbがともに閾値以下である場合、条件を満たすとし、それ以外は、満たさないとする。
処理対象データ選択部220は、判別部224において、閾値条件を満たすと判別されたデータのみ採用する。すなわち、判別部224において、閾値条件を満たしていないとされたブロックのMR信号データは、データベースから削除する。
解析部108は、データベースに残っているMR信号データのみ用い、加算データを作成し、解析を行う。
以下、本変形例の繰り返し計測処理の流れを説明する。図6は、本変形例の繰り返し計測処理の処理フローである。
計測部210は、撮像条件を受け付け、計測の繰り返し回数Nと、ブロック数Bとを設定する(ステップS1201)。そして、1ブロック分のデータ数N/Bを算出する。また、このとき、ブロック単位のMR信号データに対して適用する、平均値と分散との閾値Mth及びSDthも併せて設定する。ブロック数B、閾値Mth及びSDthは、それぞれ、予め設定される。
計測部210は、1ブロック分のデータ数(N/B)回、計測シーケンスを実行してMR信号データを取得し、データベースに保存する(ステップS1202、S1203)。1ブロック分のデータ数の取得を終えたか否かの判別は、上記実施形態と同様とする。また、取得されたMR信号は、計測毎に、データベースの異なるアドレスに保存する。
1ブロック分のデータ数(N/B)個、MR信号を取得すると、指標算出部223は、これらのMR信号データの、平均値Mと分散SDとを計算する(ステップS1204)。
その後、判別部224は、計算結果が、閾値条件を満足しているか判定する(ステップS1205)。
閾値条件を満足していない場合、処理対象データ選択部220は、当該ブロックのMR信号データをデータベースから削除する(ステップS1206)。一方、閾値条件を満足している場合は、処理対象データ選択部220は、そのままデータをデータベースに残す。計測部210および処理対象データ選択部220は、ステップS1202からS1206の処理を、計測したデータ数がNとなるまで繰り返す(ステップS1207)。
計測したデータ数がNとなると、解析部108は、データベースに保存されているMR信号データに対し、加算処理を行い、加算データを作成する。そして、加算データに対し、所定の解析処理を適用し、処理結果を得る(ステップS1208)。
そして、解析部108は、処理結果を表示部113に表示する(ステップS1209)。
このように、本変形例のMRI装置100の前記処理対象データ選択部220は、前記エコー信号の指標を算出する指標算出部223と、前記指標が、予め定めた閾値を用いて定められた条件を満足するか否か判別し、満足する場合、前記処理対象データと選択する判別部224と、を備えてもよい。
前記指標算出部223は、所定数のエコー信号を1ブロックとし、前記ブロック単位で当該ブロックを構成する前記エコー信号の前記指標を算出し、前記判別部224は、前記ブロック単位で、前記条件を満足するか否か判別してもよい。
このように、本変形例では、MR信号データの適否の判断基準となる閾値を予め設定し、適否の判断を自動化する。すなわち、本変形例のように構成することで、ユーザがMR信号データの採否を判断するプロセスを自動化できる。従って、計測精度を維持しつつ、操作性が向上する。
なお、本変形例においても、図2(b)の処理結果表示300aに示すように、判別結果305を、当該ブロックを除外対象とするか否かの情報と併せ、処理結果表示300として表示するよう構成してもよい。
また、処理対象データの選択まで自動化せず、判別部224は、判別のみ行うよう構成してもよい。すなわち、処理結果とともに判別結果305を図2(b)の処理結果表示300aのように表示する。そして、受付部222は、指標(平均値302および分散303)と判別結果305とを見て、除外データを指定するよう構成してもよい。
<変形例その2>
また、本実施形態では、計測の繰り返し数Nは、予め撮像条件として設定されたものを用いているが、これに限定されない。計測精度を指標に決定してもよい。これにより、計測精度を指標に、繰り返し回数を最適化することができる。以下、本手法を、繰り返し最適化法と表現する。繰り返し最適化法について詳細に説明する。
一般に、繰り返し回数Nは、加算平均処理でSN比が向上し、目標とする計測精度を満足すると予想される数値が設定される。なお、計測精度は、本実施形態では、平均値および分散で特定される。繰り返し最適化法では、計測精度を重視し、計測精度が所定以上となった場合に繰り返し計測を終了する。従って、繰り返し最適化法では、当初設定される繰り返し回数は目安の値である。従って、ここでは、Npと表現する。
この場合の制御部111bの機能ブロック図を図5(b)に示す。本図に示すように、本変形例の制御部111bは、上記変形例その1同様、計測部210と処理対象データ選択部220とを備える。そして、処理対象データ選択部220は、指標算出部223と、判別部224とを備える。本変形例の処理対象データ選択部220は、さらに、繰り返し最適化部225を備える。
本変形例の繰り返し最適化部225は、計測シーケンスの実行終了時を決定し、繰り返し回数を最適化する。本変形例では、処理対象データが決定される毎に、その時点でデータベースに処理対象データとして保持されるデータ群により、目標とする計測精度を達成できるか否かを判別し、達成できると判別された場合、実行終了と決定する。
繰り返し最適化部225の決定を受け、計測部210は、計測シーケンスの繰り返しを終了する。
解析部108の処理は、上記実施形態および変形例その1と同様である。
以下、本変形例の繰り返し最適化法による繰り返し計測処理の流れを説明する。図7は、本変形例の繰り返し計測処理の処理フローである。
まず、計測部210は、繰り返し回数Npと、繰り返し回数Npを分割するブロック数Bとを設定する(ステップS1301)。そして、1ブロック分のデータ数N/Bを算出する。このとき、ブロック単位のMR信号データに対して適用する指標の閾値(平均値と分散との閾値Mth及びSDth)、解析処理の対象とする全MR信号データに要求される計測精度の参照値(平均値Mrefおよび分散SDref)も併せて設定する。さらに、繰り返し回数のカウンタNeffに初期値ゼロを代入する。
なお、繰り返し回数Npは、予め撮像条件として設定される。ブロック数B、閾値Mth及びSDth、値Mref及びSDrefは、それぞれ、予め設定される。また、カウンタNeffは、実効的な繰り返し回数を表す。
ブロック単位のMR信号データに対して適用する、平均値と分散との閾値Mth及びSDthは、当該ブロックで取得したデータの採否を判定するために用いられ、解析処理の対象とする全MR信号データに要求される平均値Mrefおよび分散SDrefは、計測精度の判定、すなわち、計測を終了するか否かの判定に用いる。すなわち、閾値MthおよびSDthは、各々のMR信号データに要求される精度を規定する。また、平均値Mrefおよび分散SDrefは、全体の計測精度を規定する。
具体的には、平均値と分散との閾値Mth及びSDthにより、閾値条件が設定される。閾値条件は、当該条件を満たす場合、そのブロックのMR信号データは採用と決定される条件である。また、平均値Mrefおよび分散SDrefにより、参照条件が設定される。参照条件は、その時点でデータベースに保存されている全MR信号データから算出された平均値Mと分散SDとが参照条件を満たす場合、計測はその時点で打ち切りと判断される条件である。
計測部210は、ブロック分のデータ数(Np/B)回、計測シーケンスを実行してMR信号を取得して、データベースに保存する(ステップS1302、S1303)。1ブロック分のデータ数の取得を終えたか否かの判別は、上記実施形態と同様とする。また、取得されたMR信号データは、計測毎に、データベースの異なるアドレスに保存する。
1ブロック分のデータ数(Np/B)個、MR信号データを取得すると、指標算出部223は、これらのMR信号データの、平均値Mと分散SDとを計算する(ステップS1304)。
その後、判別部224は、計算結果が、閾値条件を満足しているか判定する(ステップS1305)。
閾値条件を満足していない場合、処理対象データ選択部220は、当該ブロックのMR信号データをデータベースから削除する(ステップS1306)。このとき、繰り返し回数のカウンタNeffはそのままとする(Neff=Neff+0)。そして、計測部210は、ステップS1302へ戻り、処理を繰り返す。
一方、閾値条件を満足している場合は、処理対象データ選択部220は、そのままデータをデータベースに残す。そして、繰り返し回数のカウンタNeffに計測回数Np/Bを加える(Neff=Neff+Nb/B)(ステップS1307)。
そして、繰り返し最適化部225は、現時点でデータベースに保持されている全MR信号データの平均値Mおよび分散SDを計算し、計算結果が、MrefおよびSDrefで定められる参照条件を満足するか否かを判別する(ステップS1308)。
参照条件を満足していないと判別された場合、計測部210は、ステップS1302へ戻り、処理を繰り返す。
一方、満足していると判別された場合、解析部108は、データベースに保存されているMR信号データに対し、加算処理を行い、加算データを作成する。そして、加算データに対し、所定の解析処理を適用し、処理結果を得る(ステップS1309)。
そして、解析部108は、処理結果を表示部113に表示する(ステップS1310)。
本変形例においても、図2(b)に示すように、判別結果を、判別結果を、当該ブロックを除外対象とするか否かの情報と併せ、処理結果表示300として表示するよう構成してもよい。
このように、本変形例のMRI装置100の前記処理対象データ選択部220は、前記エコー信号の指標を算出する指標算出部223と、前記指標が、予め定めた閾値を用いて定められた条件を満足するか否か判別し、満足する場合、前記処理対象データと選択する判別部224と、前記計測シーケンスの実行終了時を決定し、当該計測シーケンスの繰り返し回数を最適化する繰り返し最適化部225と、を備え、前記繰り返し最適化部225は、前記処理対象データが選択される毎に、既に前記処理対象データと選択された全データにより予め定めた目標とする計測精度を達成できるか否かを判別し、達成できると判別された場合、実行終了と決定するを備える。
この繰り返し最適化法は、計測精度を指標に用いて、計測の継続もしくは終了を判断する点で、一般の繰り返し計測とは異なっている。この繰り返し最適化法は、繰り返し回数が最適化されるだけでなく、計測が完了した場合は、計測データの精度が補償される。
ただし、繰り返し最適化法では、MR信号をN回繰り返し取得しても、計測が終了しない場合や、N回繰り返す前に計測が終了する場合もある。すなわち、Np/B個毎の精度が閾値を満足しないことが連続すると、繰り返し計測が長引く。この場合、例えば、閾値を満足しないブロックが複数回連続で生じた場合、警告メッセージを表示し、計測条件の変更や計測中止を操作者に考慮させるよう構成してもよい。また、Neffとは別に、実際の計測回数をカウントするカウンタを設け、計測シーケンスの繰り返し回数が、所定数以上となった場合、計測の繰り返しを打ち切るよう構成してもよい。
なお、最終的に得られたNeffを、被検体、あるいは、撮像条件に対応づけて保持し、以降、同じ被検体、あるいは、同じ撮像条件での撮像時に、この繰り返し回数Neffを用いるよう構成してもよい。
<<第二の実施形態>>
本発明の第二の実施形態を説明する。第一の実施形態では、計測したMR信号データを用いて計測精度を判別し、解析処理の対象とする処理対象データを選択する。本実施形態では、被検体の周期的体動に同期させて(を参照して)繰り返し計測し、体動安定期に取得したMR信号データの中から、所望の計測精度を達成するデータのみ解析に用いる。
以下、生体信号に同期させて(を参照して)行う繰り返し計測(以下、体動同期繰り返し計測と呼ぶ。)として、心筋を対象としたMRSを例にあげて説明する。用いる生体信号は、心電波形と呼吸波形とする。
腹部・胸部を撮像対象部位とした場合、MRSの様にデータ収集に時間がかかる計測技術を実行する場合、心拍と呼吸による臓器の位置変動が計測精度を低下させる主要因となる。そこで、心電図と呼吸の両方と同期をとり、特定心時相であり、かつ、特定呼吸時相(例えば、心拡張末期かつ呼気)の時にのみMR信号を収集することが多い。しかしながら、この場合は、MR信号を収集できる期間が極めて短く、必要なだけMR信号を収集するためには、計測が長時間になる。
具体例を図8の表(以下、心−呼吸周期マップ)400に示す。本表では、横軸(各列)が、呼吸周期を表現し、縦軸(各行)が心周期を表現している。それぞれ、1周期を5秒および1秒としている。ここで、体動の影響が十分に小さい計測期間は、呼吸周期では呼気の末期(心−呼吸周期マップ400ではeの期間)、心周期では拡張期の末期(心−呼吸周期マップ400では、5の期間)である。すなわち、ハッチングを施した期間401に相当する。この期間401が全体に占める割合が少ないことは、容易に判断できる。以下、体動の影響が十分に小さい計測期間を、体動安定期と呼ぶ。
本実施形態では、このような、体動同期繰り返し計測において、精度の低いデータを除外して、計測精度を向上させる。
[MRI装置の構成]
本実施形態のMRI装置100aは、基本的に第一の実施形態のMRI装置100と同様の構成を有する。ただし、本実施形態では、図9(a)に示すように、生体信号に同期させて計測を行うため、被検体101の生体信号(心電波形および呼吸波形)を検出する生体信号検出部114をさらに備える。
[制御部の機能]
本実施形態の制御部111cの機能も基本的に第一の実施形態と同様である。ただし、本実施形態では、図9(b)に示すように、さらに、生体信号収集部226を備える。また、計測部210の計測回数の制御が異なる。なお、ここでは、第一の実施形態の変形例その1と同様の構成を有する場合を例にあげて説明する。
生体信号収集部226は、生体信号検出部114が検出した生体信号を収集する。収集した生体信号は、計測部210に通知する。
計測部210は、初期設定として、生体信号に関する条件を設定し、体動安定期間にエコー信号が取得できた計測のみ計測回数としてカウントする。
ここで設定される条件は、例えば、生体信号同期計測(参照計測)のトリガとなる信号の発生時刻をゼロとした場合の、データ取得タイミングである。データ取得タイミングは、体動安定期間401とする。
体動安定期間401は、心電波形、及び呼吸波形から推測される体動が小さい期間である。この体動安定期間401は、一般に、被検体の心電波形を検出する心電波形装置、及び同呼吸波形を検出する呼吸波形装置から出力されるトリガ信号からの遅れ時間(delay time)と計測期間(duration)とにより指定される。
例えば、体動安定期間401が、心電波形装置から出力されるトリガ信号(心電トリガ信号)からの遅れ時間DTcおよびその期間がDUcと、呼吸波形装置から出力されるトリガ信号(呼吸トリガ信号)からの遅れ時間DTbおよび期間DUbとで特定されるものとする。
計測部210は、心電トリガ信号からの遅れ時間の実測値RDTcが、DTcから(DTc+DUc)間である場合、心電波形に関し、時間差0とし、呼吸トリガ信号からの遅れ時間の実測値RDtbが、DTbから(DTb+Dub)間である場合、呼吸波形に関し、時間差0とする。そして、両時間差がともに0の場合、体動安定期401間に取得されたデータと判別する。
図10は、収集したMR信号データの一例である。心周期DTcと呼吸周期DTbの遅れ時間に関して、トリガ信号からMR信号取得までの実測値と体動安定期間との時間差が算出される。そして、心電波形および呼吸波形両者に関し、時間差が0と算出されたデータが、体動安定期401間に取得されたデータと判別される。なお、MR信号波形は本図では波形として表示しているが、通常は信号を検出した際のサンプリング点毎の信号強度を記載した数値データである。
なお、体動同期繰り返し計測における繰り返し回数Nは、図8の心−呼吸周期マップ400において、ハッチングを施した期間401に取得されるMR信号データの個数(計測回数)に相当する値である。図8の心−呼吸周期マップ400において、ハッチングを施していない期間にもMR信号データは取得される。しかし、ハッチングを施した期間401以外の期間に取得されたMR信号データの個数(計測回数)は、繰り返し回数Nに含めない。
[体動同期繰り返し計測処理の流れ]
本実施形態の、体動同期繰り返し計測処理の流れを説明する。図11は、本実施形態の体動同期繰り返し計測処理の処理フローである。
計測部210は、撮像条件を受け付け、計測の繰り返し回数Nと、ブロック数Bとを設定する(ステップS2101)。そして、1ブロック分のデータ数N/Bを算出する。また、このとき、ブロック単位のMR信号データに対して適用する、平均値の閾値Mthおよび分散の閾値SDthも併せて設定する。ブロック数Bは、閾値Mth及びSDthそれぞれ、予め設定される。
次に、計測部210は、生体信号に関する条件を設定する(ステップS2102)。ここで設定される条件は、体動安定期間の遅れ時間と期間とである。
計測部210は、所定の時間間隔(TR)で計測シーケンスを実行してMR信号データを収集する(ステップS2103)。このとき、本実施形態では、エコー信号計測時の、心電トリガ信号からの遅れ時間の実測値RDTcと、呼吸トリガ信号からの遅れ時間の実測値RDtbと、の情報を合わせて取得する。
計測部210は、収集したMR信号データが、体動安定期間401に計測されたか否かを判別する(ステップS2104)。
体動安定期間401に計測されたエコー信号から得たMR信号データであれば、採用し、データベースに保存するとともに、取得したデータ(体動安定期取得データ)としてカウントする(ステップS2105)。そうでなければ、当該データを破棄する(ステップS2106)。
計測部210は、ステップS2103からステップS2106の処理を、体動安定期に取得したMR信号データが、N/B個になるまで繰り返す(ステップS2107)。なお、MR信号データは、計測毎にデータベースの異なるアドレスに保存される。
1ブロック分のデータ数(N/B)個、MR信号を取得した後の処理は、第一の実施形態の変形例その1と同様である。
すなわち、指標算出部223は、これらのMR信号データの、平均値Mと分散SDとを計算し(ステップS1204)、判別部224は、計算結果が、閾値条件を満足しているか判定し(ステップS1205)、閾値条件を満足していない場合、処理対象データ選択部220は、当該ブロックのMR信号データをデータベースから削除する(ステップS1206)。一方、閾値条件を満足している場合は、処理対象データ選択部220は、そのままデータをデータベースに残す。計測部210および処理対象データ選択部220は、ステップS2103からS1206の処理を、体動安定期取得データの数がNとなるまで繰り返す(ステップS1207)。
体動安定期に取得したデータ数がNとなると、解析部108は、データベースに保存されているMR信号データに対し、加算処理を行い、加算データを作成する。そして、加算データに対し、所定の解析処理を適用し、処理結果を得る(ステップS1208)。そして、処理結果を表示部113に表示する(ステップS1209)。
以上説明したように、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100は、予め定めた計測シーケンスを同一の撮像条件で繰り返し実行し、複数のエコー信号を取得する計測部210と、前記複数のエコー信号の中から、所望のエコー信号を処理対象データとして選択する処理対象データ選択部220と、前記処理対象データに対し、解析を行う解析部108と、を備える。前記処理対象データ選択部220は、前記エコー信号の指標を算出する指標算出部223と、前記指標が、予め定めた閾値を用いて定められた条件を満足するか否か判別し、満足する場合、前記処理対象データと選択する判別部224と、被検体の周期的な生体信号を収集する生体信号収集部226と、を備え、前記指標算出部223は、前記生体信号で定まる前記被検体の体動が安定する体動安定期に取得した前記エコー信号についてのみ、前記指標を算出する。
前記指標算出部223は、所定数のエコー信号を1ブロックとし、前記ブロック単位で当該ブロックを構成する前記エコー信号の前記指標を算出し、前記判別部224は、前記ブロック単位で、前記条件を満足するか否か判別してもよい。
前記指標は、前記1ブロックを構成するエコー信号の平均値および分散であってもよい。
このように、本実施形態によれば、生体信号を計測対象の精度の見積もり対象に活用し、生体信号の乱れが大きい期間に収集したMR信号を除外してMR信号の加算処理を実施できる。さらに、その中でも所望の計測精度を達成するMR信号データのみ解析処理に用いる。従って、本実施形態によれば、体動同期繰り返し計測であっても、第一の実施形態同様、所望の精度を有するデータのみ解析処理に用いるため、計測結果が向上する。すなわち、計測精度を維持しつつ、操作性が向上する。
なお、上記実施形態では、生体信号として生体信号収集部226が収集した心電波形、呼吸波形を用いているが、これに限定されない。例えば、加算平均処理の対象にならないMR信号として、呼吸による横隔膜や腹壁の動きを観察可能な横隔膜ナビゲート信号を用いてもよい。
また、上記実施形態では、制御部111cが第一の実施形態の変形例その1と同様の構成を有する場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、第一の実施形態と同様の構成であってもよい。すなわち、ブロック単位の精度をユーザに提示し、ユーザから処理対象データとして選択するブロックの指示を受け付けるよう構成してもよい。この場合、制御部111cは、図1(b)に示す構成に加え、生体信号収集部226を備える。
<変形例その1>
本実施形態においても、第一の実施形態の変形例その2同様、計測精度を指標として、繰り返し回数を最適化してもよい。すなわち、生体信号を参照する計測において、計測中に所定の時間間隔でデータの精度を検証し、繰り返し回数を変化させて計測精度の向上と計測時間の短縮を実現する。
この変形例は、図11の体動同期繰り返し計測と、図7の繰り返し最適化法との組み合わせで構成される。この場合の制御部111dの機能ブロックを図12(a)に示す。本図に示すように、本実施形態の制御部111dの処理対象データ選択部220は、指標算出部223と、判別部224と、繰り返し最適化部225と、生体信号収集部226とを備える。各部の機能は、上記各実施形態、変形例と同様である。
この場合の体動同期繰り返し計測処理の処理フローを図13に示す。
まず、計測部210は、繰り返し回数Npと、繰り返し回数Npを分割するブロック数Bとを設定する(ステップS1301)。そして、1ブロック分のデータ数N/Bを算出する。また、閾値Mth及びSDth、平均値Mrefおよび分散SDrefも併せて設定し、繰り返し回数のカウンタNeffに初期値ゼロを代入する。
次に、計測部210は、生体信号に関する条件を設定する(ステップS2102)。上記実施形態同様、ここで設定される条件は、体動安定期間の遅れ時間と期間とである。
計測部210は、所定の時間間隔(TR)で計測シーケンスを実行してMR信号データを収集する(ステップS2103)。このとき、本実施形態では、エコー信号計測時の、心電トリガ信号からの遅れ時間の実測値RDTcと、呼吸トリガ信号からの遅れ時間の実測値RDtbと、の情報を合わせて取得する。
計測部210は、収集したMR信号データが、体動安定期間401に計測されたか否かを判別し(ステップS2104)、体動安定期間401に計測されたエコー信号から得たMR信号データであれば、採用し、データベースに保存するとともに、取得したデータ(体動安定期取得データ)としてカウントする(ステップS2105)。そうでなければ、当該データを破棄する(ステップS2106)。
計測部210は、ステップS2103からステップS2106の処理を、体動安定期取得データが、Np/Bの倍数になるまで繰り返す(ステップS2107)。なお、MR信号データは、計測毎にデータベースの異なるアドレスに保存される。
1ブロック分のデータ数(Np/B)個、MR信号データを取得すると、指標算出部223は、これらのMR信号データの、平均値Mと分散SDとを計算する(ステップS1304)。
その後、判別部224は、計算結果が、閾値条件を満足しているか判定し(ステップS1305)、閾値条件を満足していない場合、処理対象データ選択部220は、当該ブロックのMR信号データをデータベースから削除する(ステップS1306)。このとき、繰り返し回数のカウンタNeffはそのままとする(Neff=Neff+0)。そして、計測部210は、ステップS2103へ戻り、処理を繰り返す。
一方、閾値条件を満足している場合は、処理対象データ選択部220は、そのままデータをデータベースに残す。そして、繰り返し回数のカウンタNeffに計測回数Np/Bを加える(Neff=Neff+Nb/B)(ステップS1307)。
そして、繰り返し最適化部225は、現時点でデータベースに保持されている全MR信号データの平均値Mおよび分散SDを計算し、計算結果が、MrefおよびSDrefで定められる参照条件を満足するか否かを判別する(ステップS1308)。
参照条件を満足していないと判別された場合、計測部210は、ステップS2103へ戻り、処理を繰り返す。
一方、満足していると判別された場合、解析部108は、データベースに保存されているMR信号データに対し、加算処理を行い、加算データを作成する。そして、加算データに対し、所定の解析処理を適用し、処理結果を得る(ステップS1309)。そして、解析部108は、処理結果を表示部113に表示する(ステップS1310)。
本変形例においても、図2(b)に示すように、判別結果を処理結果表示300として表示するよう構成してもよい。
<変形例その2>
上記変形例では、計測精度を指標として、繰り返し回数を最適化している。すなわち、変更する撮像条件は繰り返し回数のみである。しかし、これに限定されない。例えば、生体信号に対する条件、すなわち、心電波形のトリガからの遅れ時間、及び期間など、体動安定期間の条件を、取得したMR信号の精度を確認した上で変更するよう構成してもよい。
図8の心−呼吸周期マップ400に示すように、体動安定期間401は、呼気の末期かつ拡張期の末期と定められている。しかしながら、MR信号に無視できない体動の影響が含まれるかは被検者毎に異なり一様ではない。本変形例では、個々の被検体に応じて、この体動安定期間を決定する。
例えば、図10に示す各MR信号データを、それぞれ、心−呼吸周期マップ400に配置すると、図14(a)に示すように、1回目に取得したデータは、5d<402>に、2回目に取得したデータは、5e<401>に、3回目に取得したデータは、4e<403>にそれぞれ配置される。このように、5e<401>の期間だけでなく、5d<402>や4e<403>といった近傍の期間も、被検体によっては体動が安定している可能性もある。
このため、本変形例の制御部111eの処理対象データ選択部220は、図12(b)に示すように、指標算出部223と、判別部224と、生体信号収集部226に加え、予め定められた体動安定期を変更する安定期変更部227とを備える。
安定期変更部227は、所定数のMR信号データを収集し、その指標を心−呼吸周期マップの各期間について算出し、算出した指標が予め定めた条件を満たす場合、その期間を、体動安定期と決定することにより、当初の体動安定期を変更する。
精度を判定する期間は、図8の心−呼吸周期マップ400に示す、全期間であってもよいし、上述のような近傍期間<402>、<403>のみであってもよいし、予め定めた1つの近傍領域でもよい。
本変形例の処理フローを図15および図16に示す。ここでは、本実施形態同様、取得するデータ数は固定の場合を示す。
本変形例の処理は、図11に示す本実施形態の体動同期繰り返し処理の処理フローの初期設定(ステップS2101、S2102)の後に、体動安定期間決定処理(ステップS2300)が加わったものである。
まず、上記ステップS2101からステップS2102の処理を行う(ステップS2301〜S2302)。すなわち、繰り返し回数Nやブロック数bなどの撮像条件と閾値MthとSDth、及び、生体信号に関する条件DTc、DUc、DTb、DUbを設定する。
ただし、本例では、生体信号に関する条件は、図8の心−呼吸周期マップ400の各期間(1a,1b、1c・・・・5d、5e)が特定可能な条件を設定する。
その他の処理は、図11に示すものと同様であるため、ここでは説明を省略する。
[体動安定期間決定処理]
次に、安定期変更部227によるステップS2300の体動安定期間決定処理の流れを、図16を用いて説明する。
そして、計測部210は、MR信号を一定の時間間隔TRで繰り返し収集し、それぞれ、データベースの異なるアドレスに保存する(ステップS2301)。このとき、MR信号取得時の、心電トリガ信号からの遅れ時間の実測値RDTcと、呼吸トリガ信号からの遅れ時間の実測値RDtbと、の情報を合わせて保存する。
なお、実測値RDTc、RDtbから、当該MR信号を収集したタイミングが、図14のいずれの期間に該当するタイミングで取得されたかを算出し、これらの実測値の代わりに、図14の期間を識別可能な情報に対応づけて保存してもよい。
安定期変更部227は、ステップS2301で収集されたMR信号データが、体動安定期間401に収集されたデータであるか否かを判別する(ステップS2302)。そして、体動安定期間401に収集されたデータであれば、当該データを、判定データとして識別可能に保存するとともに、その個数をカウントする(ステップS2303)。例えば、別の保存領域に複製を保存する、あるいは、フラグを立てるなどし、識別可能に保存する。
計測部210および安定期変更部227は、ステップS2301からステップS2303の処理を、判定データが、N/B個になるまで繰り返す(ステップS2304)。
判定データが、N/B個になると、安定期変更部227は、判定データを用い、平均値Mと分散SDとを計算する(ステップS2305)。
そして、安定期変更部227は、算出した平均値Mと分散SDとが、それぞれ、閾値条件を満足するかを判定し(ステップS2306)、満足しない場合は計測を中断して撮像条件の変更を促す(ステップS2307)。ここでは、例えば、撮像条件の変更を促すメッセージを表示部113に表示する。
一方、ステップS2306において、閾値を満足する場合は、安定期変更部227は、体動安定期間401に含まれるデータとし、計算された平均値Mおよび分散SD、或いは、閾値MthおよびSDthを、その被検者におけるリファレンス値(Mref及びSDref)と決定する(ステップS2308)。
以下、安定期変更部227は、データベースに保存されたデータの中から、予め定めた順に、図8の心−呼吸周期マップ400に示す各期間のMR信号データを抽出し、それぞれ、解析処理に適用可能なデータ(利用データ)であるか、すなわち、当該領域が体動安定期間であるか、判別する(ステップS2309)。
具体的には、データベースに保存されたデータの中から、判別対象とする領域のMR信号データを抽出し、当該データの平均値Mnおよび分散SDnを算出する。そして、算出した平均値Mnbおよび分散SDnbをリファレンス値と比較し、有意差があるか否かを判別し、有意差がなければ、当該領域は、体動安定期間であると判別する。一方、有意差がなければ、体動安定期間ではないと判別する。
そして、領域が体動安定期間であるか否かの判別は、順不同で全領域に関して行ってもよい。また、当初の体動安定期間5eに隣接する領域から順に判別してもよい。この場合、ある領域に関し、当該領域に隣接する全領域が、体動安定期間でないと判別された場合、処理を終了する。
安定期変更部227は、体動安定期間と判別された期間を、体動安定期間に加え、体動安定期間を更新する(ステップS2310)。
例えば、図14(a)の期間4e(403)において取得したデータに有意差がない場合、この期間4eも体動安定期間とされる。この場合の体動安定期間は、以下のようになる。
[計測開始時](図8のハッチング期間401)
・心電波形:遅れ時間DTcからDTc+DUcの間(期間DUc)
・呼吸波形:遅れ時間DTbからDTb+DUbの間(期間DUb)
[体動安定期間決定後](図14(b)ハッチングの期間)
・心電波形:遅れ時間DTc−DUcからDTc+DUcの間(期間DUcの2倍)
・呼吸波形:遅れ時間DTbからDTb+DUbの間(期間DUb)
心臓の拍動や呼吸動による変位や時間的な変動は個体差が大きいため、被検体毎にDTcやDTbを最適化することは、一般に困難である。しかしながら、本変形例によれば、被検体毎の体動安定期間を最適化できる。
また、被検体によっては、体動安定期間が増加するため、これに伴い、データ取得期間が増加する。従って、全体の計測期間も短縮できる。
<変形例その3>
変形例2の体動安定期間を最適化する手法に、さらに、繰り返し最適化法を組み合わせてもよい。この場合、当初の想定よりも繰り返し回数が削減される可能性が高まる。この場合の制御部111は、図12(b)の制御部111eの構成に、さらに繰り返し最適化部225を備える。
以下、繰り返し回数を減らす場合の処理フローを、図17を用いて説明する。本図に示すように、この場合の処理の流れは、図13に示す処理において、初期設定のステップS1301およびS2102の後、上記の体動安定期間決定処理(ステップS2300)を行い、決定された体動安定期間を用いて、図13のその後の処理(ステップS2103〜ステップS1310)を行う。
以上の様に、生体信号を用いた繰り返し最適化法は、変動が小さい条件で計測されたMR信号を用いて計測精度を確認し、更に導出された計測精度を指標に、異なる条件(心電波形や呼吸波形の遅れ時間の差異)で計測した信号を活用することができる。この処理は、計測精度を保持しつつ、計測時間を短縮することを可能にする。
なお、以上の説明では計測精度を判断する指標として平均値と分散とを例に用いたが、これに限定されない。各種の統計値、その他を用いることができる。また、繰り返し計測を行う代表例としてMRSを例に用いたが、本発明の実施形態はMRSに限定されるものではない。また、トリガ信号を利用しているが、計測シーケンスは生体信号と同期撮像に限定されない。
以上説明したように、上記各実施形態によれば、繰り返し計測中の精度の低いデータを除去することが可能となり、計測精度の向上の効果が得られる。或いは、計測精度を精査して条件を満たすデータを追加することにより、計測時間の短縮が期待できる。