JP2015166489A - ニッケル粉の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 硫酸ニッケルアンミン錯体を含有する溶液に、その溶液に不溶な不溶性固体を加えて、混合スラリーを形成する混合工程と、その混合スラリーを反応槽内に装入した後、反応槽内の混合スラリー内に水素ガスを吹き込み、混合スラリーに含まれるニッケル錯イオンを還元して、不溶性固体表面にニッケル析出物を形成する還元・析出工程と、不溶性固体表面のニッケル析出物を、不溶性固体表面から分離してニッケル粉を形成する分離工程を順に経てニッケル粉を作製することを特徴とするニッケル粉の製造方法。
【選択図】 図1
Description
しかし、これらの方法は高価な試薬類や多量のエネルギーを必要とするため、経済的とは言えない。
以下、本発明のニッケル粉の製造方法を、図1に示す製造フロー図を参照して説明する。
本発明に用いる硫酸ニッケルアンミン錯体溶液は、特に限定はされないが、ニッケルおよびコバルト混合硫化物、粗硫酸ニッケル、酸化ニッケル、水酸化ニッケル、炭酸ニッケル、ニッケル粉などから選ばれる一種、または複数の混合物から成る工業中間物などのニッケル含有物を、硫酸あるいはアンモニアにより溶解して得られるニッケル浸出液(ニッケルを含む溶液)を、溶媒抽出法、イオン交換法、中和などの浄液工程を施すことにより溶液中の不純物元素を除去して得られる溶液に、アンモニアを添加し、硫酸ニッケルアンミン錯体溶液としたもの等が適し、ニッケルはニッケル錯イオンの形で含まれている。
この工程では、上記で作製された硫酸ニッケルアンミン錯体溶液に、先ず分散剤を添加するが、分散剤の添加を省略して硫酸ニッケルアミン錯体溶液に、下記の不溶性固体の添加を行っても良い。
ここで用いる分散剤としては、スルホン酸塩を有するものであれば特に限定されないが、工業的に安価に入手できるものとしてリグニンスルホン酸塩が好適である。
また、溶液中の硫酸アンモニウム濃度は10〜500g/Lの範囲とすることが好ましい。500g/L以上では溶解度を超えてしまい結晶が析出する。また、反応により硫酸アンモニウムが新たに生成するため、10g/L未満を達成するのは困難である。
上記で作製された硫酸ニッケルアンミン錯体溶液、又は分散剤を添加、調整された硫酸ニッケルアンミン錯体溶液に、その錯体溶液に不溶であり、析出の母体となる不溶性固体を添加する。
ここで添加する不溶性固体は、硫酸ニッケルアンミン錯体溶液、硫酸アンモニウム水溶液或いはアルカリ溶液に対して不溶、若しくは溶解度が小さいものであれば、特に限定はされず、例えば、ニッケル粉、鉄粉、アルミナ粉、ジルコニア粉、シリカ粉などを用いることができる。
形状や大きさも特に限定はしないが、後述するように互いに衝突させたり、振動を与えたりして表面に析出したニッケル粉は分離することがあるので、衝撃や摩擦に耐える強度を有し、ニッケル粉が効果的に分離できるように表面がなだらかな形状であるものが適している。
また、不溶性固体とニッケル粉との効果的な分離を考えると、実操業では例えば直径0.1〜3mm程度の球状もしくは楕円形等の角が無い形状であるものが使いやすい。
また、ニッケル粉を分離した後の不溶性固体は、必要に応じて洗浄等の前処理を行った後で再び繰り返して使用することもできる。
次に、この工程は前工程において分散剤及び不溶性固体を添加して形成したスラリーを、耐高圧高温容器の反応槽内に装入し、その反応槽内に貯留されたスラリー内に水素ガスを吹き込み、そのスラリー中のニッケル錯イオンを還元し、含まれる不溶性固体上にニッケルを析出させるものである。
このときの混合スラリーの温度、即ち反応温度は、150〜200℃の範囲が好ましい。150℃未満では還元効率が低下し、200℃以上にしても反応への影響はなく、むしろ熱エネルギー等のロスが増加するので適さない。
この工程では、生成したニッケル析出物が、不溶性固体上にくっついた状態であり、その状態では利用できないので、表面に形成されたニッケル析出物を不溶性固体と分離、ニッケル粉として回収するものである。
[混合工程]
ニッケル75g(硫酸ニッケル溶液)、硫酸アンモニウム330gを含む溶液に、25%アンモニア水を191ml、分散剤のリグニンスルホン酸ナトリウム20gを添加し、合計の液量が1000mlになるように調整して、分散剤を含み、且つ硫酸ニッケルアンミン錯体を含有する溶液を作製した。
この溶液に、析出母体となる不溶性固体として、平均粒径(D50)が125μmのニッケル粉300gを添加、攪拌し、所望の混合スラリーを作製した。
次いで、作製した混合スラリーをオートクレーブの内筒缶に装入し、その混合スラリーを撹拌しながら185℃に昇温、保持した状態で、混合スラリー中に水素ガスを吹き込み、さらにオートクレーブの内筒缶内の圧力を3.5MPaに維持するように水素ガスを供給した。水素ガスの供給から140分が経過した後に、水素ガスの供給を停止し、内筒缶を冷却した。
冷却後、内筒缶内の混合スラリーを濾過して表面にニッケルの析出物を生成した不溶体固体を取り出し、次いで目開きが100μmの湿式篩に不溶性固体を入れ、振動を加えて母体の不溶性固体と析出したニッケル粉とを分離した。
回収したニッケル粉を観察したところ、図2に示すように微細なニッケル粉が生成していることを確認した。
[混合工程]
ニッケル75g(硫酸ニッケル溶液)、硫酸アンモニウム330gを含む溶液に25%アンモニア水を191ml、分散剤としてリグニンスルホン酸ナトリウム10gを添加し、合計の液量が1000mlになるように調整して、分散剤を含み、且つ硫酸ニッケルアンミン錯体を含有する溶液を作製した。この溶液に、析出母体となる不溶性固体として直径1mmのジルコニアボール75gを添加して混合スラリーを作製した。
次いで、その混合スラリーをオートクレーブの内筒缶内に装入後、撹拌しながら185℃に昇温、保持した状態で、混合スラリー中に水素ガスを吹き込み、オートクレーブの内筒缶内の圧力を3.5MPaに維持するように水素ガスを供給した。水素ガスの供給から65分が経過した後に水素ガスの供給を停止し、内筒缶を冷却した。
冷却後、内筒缶内の混合スラリーを濾過して表面にニッケルの析出物を生成した不溶体固体を取り出し、次いで目開きが500μmの湿式篩に取り出した不溶性固体を入れ、振動を加えて母体の不溶性固体と析出したニッケル粉とを分離した。
回収したニッケル粉を観察したところ、図3に示すように微細なニッケル粉が生成していることを確認した。
作製した溶液をオートクレーブの内筒缶内に装入後、撹拌しながら185℃に昇温、保持した状態で、水素ガスを吹き込み、オートクレーブの内筒缶内の圧力を3.5MPaに維持するように水素ガスを供給した。水素ガスの供給から60分が経過した後に水素ガスの供給を停止し、内筒缶を冷却した。
冷却後、内筒缶内の溶液を濾過したが、ニッケル粉は回収できず、内筒缶内の側壁や攪拌機に板状のニッケルのスケーリングが生成した。
[混合工程]
ニッケル75g(硫酸ニッケル溶液)、硫酸アンモニウム330gを含む溶液に25%アンモニア水を13ml添加し、合計の液量が1000mlになるように調整して硫酸ニッケルアンミン錯体を含有する溶液を作製した。この溶液に、析出母体として電解鉄粉5gを添加して混合スラリーを作製した。
次いで、その混合スラリーをオートクレーブの内筒缶内に装入後、撹拌しながら185℃に昇温、保持した状態で、水素ガスを混合スラリー内に流量0.2L/minで10分間吹き込んだ。この反応中のオートクレーブの内筒缶内の圧力は1.0MPaを示していた。その後、水素ガスの供給を停止し、内筒缶を冷却した。
冷却後、内筒缶内のスラリーを濾過して表面にニッケルの析出物を生成した不溶体固体を取り出して参考例1と同様の方法でニッケル粉を回収した。
その回収した粉を観察したところ、図4に示すように微細なニッケル粉が生成していることを確認した。なお、分散剤を添加した場合の図2と比較するとニッケル粉の形状がやや不均一で荒れている様子がうかがえるが実用上、問題はない。
[混合工程]
ニッケル75g(硫酸ニッケル溶液)、硫酸アンモニウム330gを含む溶液に25%アンモニア水を191ml、分散剤にリグニンスルホン酸ナトリウム5gを添加し、合計の液量が1000mlになるように調整して硫酸ニッケルアンミン錯体を含有する溶液を作製した。この溶液に、析出母体となる不溶性固体として200メッシュのアルミナ粉75gを添加して混合スラリーを作製した。
次いで、その混合スラリーをオートクレーブの内筒缶内に装入後、撹拌しながら185℃に昇温、保持した状態で、水素ガスを吹き込み、オートクレーブの内筒缶内の圧力を3.5MPaに維持するように水素ガスを供給した。水素ガスの供給から90分が経過した後に水素ガスの供給を停止し、内筒缶を冷却した。
冷却後、内筒缶内のスラリーを濾過して表面にニッケルの析出物を生成した不溶体固体を取り出して参考例1と同様の方法でニッケル粉を回収した。
その回収した粉を観察したところ、図5に示すように微細なニッケル粉が母体のアルミナ上に生成していたことを確認した。(生成していた箇所を丸で囲み示した。)
[混合工程]
ニッケル75g(硫酸ニッケル溶液)、硫酸アンモニウム330gを含む溶液に25%アンモニア水を191ml、分散剤にリグニンスルホン酸ナトリウム5gを添加し、合計の液量が1000mlになるように調整して硫酸ニッケルアンミン錯体を含有する溶液を作製した。この溶液に、析出母体となる不溶性固体としてD50=38μmのシリカ粉75gを添加して混合スラリーを作製した。
次いで、その混合スラリーをオートクレーブの内筒缶内に装入後、撹拌しながら185℃に昇温、保持した状態で、水素ガスを吹き込み、オートクレーブの内筒缶内の圧力を3.5MPaに維持するように水素ガスを供給した。水素ガスの供給から90分が経過した後に水素ガスの供給を停止し、内筒缶を冷却した。
冷却後、内筒缶内のスラリーを濾過して表面にニッケルの析出物を生成した不溶体固体を取り出して参考例1と同様の方法でニッケル粉を回収した。
その回収した粉を観察したところ、図6に示すように微細なニッケル粉が生成していることを確認した。
Claims (5)
- 硫酸ニッケルアンミン錯体を含有する溶液に、前記溶液に不溶な不溶性固体を加えて、混合スラリーを形成する混合工程と、
前記混合スラリーを反応槽内に装入した後、前記混合スラリー内に水素ガスを吹き込んで、前記混合スラリーに含まれるニッケル錯イオンを還元して、前記不溶性固体表面にニッケル析出物を形成する還元・析出工程と、
前記不溶性固体表面のニッケル析出物を、前記不溶性固体表面から分離してニッケル粉を形成する分離工程を、
順に経てニッケル粉を作製することを特徴とするニッケル粉の製造方法。 - 前記硫酸ニッケルアンミン錯体を含有する溶液中の硫酸アンモニウム濃度が、10〜500g/Lの範囲であることを特徴とする請求項1に記載のニッケル粉の製造方法。
- 前記還元工程における水素ガスを吹き込む際の混合スラリーの温度が、150〜200℃であることを特徴とする請求項1又は2に記載のニッケル粉の製造方法。
- 前記還元工程における水素ガスを吹き込む際の反応槽内気相部の圧力が、1.0〜4.0MPaの範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のニッケル粉の製造方法。
- 前記不溶性固体が、ニッケル、アルミナ、ジルコニア、鉄、シリカの中から選択される1種もしくは2種以上を組み合わせたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のニッケル粉の製造方法。
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