JP2015165453A - 燃料電池の異常検知装置及びその方法並びに燃料電池システム - Google Patents

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卓磨 永井
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Abstract

【課題】燃料電池の異常検知精度を向上させることを目的とする。【解決手段】異常検知装置1は、複数のセルスタックを有する燃料電池カートリッジの所定の位置の温度を代表温度Tとして取得する温度取得部11と、燃料電池カートリッジの出力電流Ioutを検出する電流検出部12と、燃料電池カートリッジの出力電圧Voutを検出する電圧検出部13と、燃料電池カートリッジの代表温度Tに応じて設定された情報を用いて、電流検出部12によって検出された出力電流Ioutに対応する燃料電池カートリッジの電圧予測値Vrefを取得する電圧予測値取得部14と、電圧予測値Vrefと電圧検出部13によって検出された出力電圧Voutとを用いて異常判定を行う異常判定部15とを有する。【選択図】図3

Description

本発明は、燃料電池システムに係り、特に、燃料電池の異常検知を行う燃料電池の異常検知装置及びその方法に関するものである。
従来、固体酸化物形燃料電池(SOFC)の劣化検知方法として、例えば、特許文献1に開示される方法が提案されている。特許文献1には、燃料電池スタックの温度を検出し、この検出温度から平均温度を算出し、平均温度と検出温度との乖離温度を算出し、この乖離温度を考慮して燃料電池セルスタックの現時点の平均温度を算出し、算出した現時点の平均温度から現スタック内部抵抗を算出し、内部抵抗に基づいて燃料電池セルスタックの理論上のスタック電圧を算出し、算出した理論スタック電圧と検出電圧とに基づいて、燃料電池セルスタックの劣化指標を算出することが開示されている。
特開2011−210682号公報
燃料電池セルスタックには、その形状や、配置位置により温度分布が発生している。したがって、上記特許文献1に開示されているように、初期状態からの乖離温度を考慮して平均温度を算出する方法では、十分な精度の理論上のスタック電圧が得られない可能性がある。理論上のスタック電圧の精度低下は、劣化検知や異常検知の精度低下を招く。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、燃料電池の異常検知精度を向上させることのできる異常検知装置及びその方法並びに燃料電池システムを提供することを目的とする。
本発明の第1態様は、複数のセルスタックを有する燃料電池カートリッジの所定の位置の温度を代表温度として取得する温度取得手段と、前記燃料電池カートリッジの出力電流を検出する電流検出手段と、前記燃料電池カートリッジの出力電圧を検出する電圧検出手段と、前記燃料電池カートリッジの代表温度に応じて設定された情報を用いて、前記電流検出手段によって検出された前記燃料電池カートリッジの出力電流に対応する前記燃料電池カートリッジの電圧予測値を取得する電圧予測値取得手段と、前記電圧予測値取得手段によって取得された前記燃料電池カートリッジの電圧予測値と前記電圧検出手段によって検出された前記燃料電池カートリッジの出力電圧とを用いて異常判定を行う異常判定手段とを具備する燃料電池の異常検知装置である。
上記燃料電池の異常検知装置によれば、燃料電池カートリッジの代表温度に応じて設定された情報を用いて、温度取得手段によって取得された燃料電池カートリッジの代表温度及び電流検出手段によって検出された燃料電池カートリッジの出力電流に対応する燃料電池カートリッジ電圧予測値が取得される。このように、燃料電池カートリッジの代表温度に応じて設定された情報を用いることにより、温度分布を考慮した電圧予測値を取得することが可能となる。そして、温度分布を考慮した電圧予測値を用いて異常判定を行うので、異常判定の精度を向上させることが可能となる。
ここで、上記「情報」は、燃料電池カートリッジの代表温度及び出力電流をパラメータとして含み、該代表温度と出力電流とから電圧予測値を一意的に特定する情報(例えば、テーブル、関数等)である。例えば、燃料電池カートリッジの代表温度毎に、燃料電池カートリッジの出力電流と燃料電池カートリッジの電圧予測値とを関連付けたテーブルまたは関数を前記情報として備えており、燃料電池カートリッジの代表温度に対応するテーブルまたは関数を用いて、電流検出手段によって検出された出力電流により特定される電圧予測値を得ることとしてもよい。
上記燃料電池の異常検知装置において、前記温度取得手段は、前記燃料電池カートリッジの外面の空気温度を計測する複数の温度計測手段を備え、前記温度計測手段は前記セルスタックの軸方向の温度分布において最も高温となる領域に設置されていることが好ましい。
このように、セルスタックの軸方向の温度分布において、最も高温となる領域、換言すると、温度変化が最も大きい領域に温度計測手段を設けるので、温度の計測感度の比較的高い位置に温度計測手段を設けることが可能となる。これにより、比較的高い精度で温度を計測することが可能となり、電圧予測値の精度を向上させることが可能となる。上記「温度計測手段は前記セルスタックの軸方向の温度分布において最も高温となる領域」とは、例えば、セルスタックの軸方向の温度分布においてピーク値をとる位置を中心として設定される所定の範囲をいう。
上記燃料電池の異常検知装置において、前記温度取得手段は、前記燃料電池カートリッジの外面の空気温度を計測する温度計測手段と、前記温度計測手段によって検出された空気温度から前記セルスタックの表面温度を推定し、推定した前記表面温度を前記代表温度とする温度推定手段とを備えていてもよい。
このようにすることで、空気温度からセルスタックの表面温度を容易に得ることが可能となる。
上記燃料電池の異常検知装置において、前記温度推定手段は、前記電流検出手段によって検出された出力電流に応じた補正値を用いて、前記表面温度を推定することとしてもよい。
出力電流に応じて空気温度とセルスタックの表面温度との差が変化するので、出力電流に応じた補正を行うことで、セルスタックの表面温度の推定精度向上が期待できる。
上記燃料電池の異常検知装置において、前記電圧予測値は、例えば、前記セルスタックの軸方向に沿って複数の区分に分割したときの各区分における区分代表温度と前記出力電流値とから各区分における電圧予測値を取得し、取得した電圧予測値を足し合わせた値に設定されている。
より具体的には、上記燃料電池の異常検知装置において、所定の代表温度と所定の出力電流とで特定される電圧予測値は、例えば、前記所定の代表温度及び前記所定の出力電流値に設定したときの前記燃料電池カートリッジの温度分布を取得し、前記温度分布を前記セルスタックの軸方向に沿って複数の区分に分割したときの各区分における区分代表温度と前記出力電流値とから各区分における電圧予測値を取得し、取得した電圧予測値を足し合わせた値に設定されている。
上記区分代表温度は、例えば、実機値またはシミュレーションで得た温度を用いることが可能である。
本発明の第2態様は、上記燃料電池の異常検知装置を備える燃料電池システムである。
上記燃料電池システムにおいて、発電負荷の上昇時において、前記燃料電池の異常検知装置によって異常判定がされた場合に、前記発電負荷の上昇速度を基準より遅くするまたは前記発電負荷の上昇を一時停止し、前記電圧予測値と前記出力電圧との差が許容範囲内となった場合に、前記発電負荷の上昇速度を基準より速くするまたは前記発電負荷の上昇を再開させることとしてもよい。
このように発電負荷の上昇速度を制御することにより、燃料電池を劣化・損傷させることなく、所望の負荷まで負荷を上昇させることが可能となる。
本発明の第3態様は、複数のセルスタックを有する燃料電池カートリッジの所定の位置の温度を代表温度として取得する温度取得工程と、前記燃料電池カートリッジの出力電流を検出する電流検出工程と、前記燃料電池カートリッジの出力電圧を検出する電圧検出工程と、前記燃料電池カートリッジの代表温度と前記燃料電池カートリッジの出力電流とから前記燃料電池カートリッジの電圧予測値を一意的に特定するための情報を予め記憶する工程と、前記温度取得工程において取得された前記燃料電池カートリッジの代表温度及び前記電流検出工程において検出された前記燃料電池カートリッジの出力電流に対応する前記燃料電池カートリッジの電圧予測値を前記情報を用いて取得する電圧予測値取得工程と、前記電圧予測値取得工程において取得された前記燃料電池カートリッジの電圧予測値と前記電圧検出工程によって検出された前記燃料電池カートリッジの出力電圧とを用いて異常判定を行う異常判定工程とを有する燃料電池の異常検知方法である。
本発明によれば、燃料電池の異常検知精度を向上させることができるという効果を奏する。
本発明の一実施形態に係るSOFCモジュールを示す図である。 本発明の一実施形態に係るSOFCカートリッジの断面図を示した図である。 本発明の一実施形態に係る異常検知装置の概略構成を示した図である。 図3に示した温度計測部の設置位置の一例を示した図である。 SOFCカートリッジの温度分布について説明するための図である。 温度分布考慮形IV特性の一例を示した図である。 セルスタック単体について示した図である。 セルスタック単体の温度毎のIV特性の一例を示した図である。 温度分布考慮形IV特性の作成手順を説明するための図である。 温度分布考慮形IV特性の作成手順を説明するための図である。 表示画面例を示した図である。
以下、本発明の一実施形態に係る燃料電池の異常検知装置及びその方法並びに燃料電池システムについて、図を参照して説明する。また、以下においては、説明の便宜上、紙面を基準として「上」及び「下」の表現を用いて各構成要素の位置関係を特定するが、鉛直方向に対して必ずしもこの限りである必要はない。例えば、紙面における上方向が鉛直方向における下方向に対応してもよい。また、紙面における上下方向が鉛直方向に直行する水平方向に対応してもよい。
まず、本実施形態に係る燃料電池システムの構成要素であるSOFCモジュール及びSOFCカートリッジについて図1及び図2を参照して説明する。なお、本実施形態では、円筒形のセルスタックを例示して説明するが、セルスタックの形状はこの限りでなく、例えば平板形のセルスタック等であってもよい。図1は、本実施形態に係るSOFCモジュールを示す図であり、図2は、本実施形態に係るSOFCカートリッジの断面図を示す図である。
図1に示すように、SOFCモジュール201は、例えば、複数のSOFCカートリッジ203、これら複数のSOFCカートリッジ203を収納する圧力容器205、燃料ガス供給管207、複数の燃料ガス供給枝管207a、燃料ガス排出管209、複数の燃料ガス排出枝管209a、酸化性ガス供給管(不図示)、酸化性ガス供給枝管(不図示)、酸化性ガス排出管(不図示)、及び複数の酸化性ガス排出枝管(不図示)を備える。
燃料ガス供給管207は、不図示の燃料ガス供給部から供給される所定流量の燃料ガスを複数の燃料ガス供給枝管207aに分岐して導くものである。燃料ガス供給部は、例えば、圧力容器205の外部に設けられ、SOFCモジュール201の発電量に対応して所定ガス組成と所定流量の燃料ガスを供給する。燃料ガス供給枝管207aは、燃料ガス供給管207から供給される燃料ガスを複数のSOFCカートリッジ203に略均等の流量で導き、複数のSOFCカートリッジ203の発電性能を略均一化させる。
燃料ガス排出枝管209aは、SOFCカートリッジ203から排出される排燃料ガスを燃料ガス排出管209に導くものである。燃料ガス排出管209は、一部が圧力容器205の外部に配置されており、燃料ガス排出枝管209aから略均等の流量で導出される排燃料ガスを圧力容器205の外部に導く。
圧力容器205は、例えば、内部の圧力が0.1MPa以上約1MPa以下、内部の温度が大気温度以上約550℃以下で運用され、耐力性と酸化性ガス中に含まれる酸素などの酸化剤に対する耐食性を保有する材質が利用される。例えば、SUS304などのステンレス系材が好適である。
図1では、複数のSOFCカートリッジ203が集合化されて圧力容器205に収納される態様について示しているが、この例に限られず、例えば、SOFCカートリッジ203が集合化されずに圧力容器205内に収納される態様としてもよい。
SOFCカートリッジ203は、図2に示すように、複数のセルスタック101、発電室215、燃料ガス供給室217、燃料ガス排出室219、酸化性ガス供給室221、酸化性ガス排出室223、上部管板225a、下部管板225b、上部断熱体227a、及び下部断熱体227bを有する。なお、本実施形態においては、SOFCカートリッジ203は、燃料ガス供給室217と燃料ガス排出室219と酸化性ガス供給室221と酸化性ガス排出室223とが図2のように配置されることで、燃料ガスと酸化性ガスとがセルスタック101の内側と外側とを対向して流れる構造とされているが、必ずしもこの限りでなく、例えば、セルスタック101の内側と外側とを平行して流れる、または酸化性ガスがセルスタック101の軸方向(長手方向)と直交する方向へ流れるようにしてもよい。
発電室215は、上部断熱体227aと下部断熱体227bとの間に形成された領域である。この発電室215は、セルスタック101の燃料電池セル105が配置され、燃料ガスと酸化性ガスとを電気化学的に反応させて発電を行う領域である。
燃料ガス供給室217は、SOFCカートリッジ203の上部ケーシング229aと上部管板225aとに囲まれた領域である。また、燃料ガス供給室217は、上部ケーシング229aに備えられた燃料ガス供給孔231aによって、図示しない燃料ガス供給枝管207aと連通されている。また、燃料ガス供給室217には、セルスタック101の一方の端部101aが、セルスタック101の基体管103の内部が燃料ガス排出室219に対して開放されるように配置されている。この燃料ガス供給室217は、燃料ガス供給管枝207aから燃料ガス供給孔231aを介して供給される燃料ガスを、複数のセルスタック101の基体管103の内部に略均一流量で導き、複数のセルスタック101の発電性能を略均一化させるものである。
燃料ガス排出室219は、SOFCカートリッジ203の下部ケーシング229bと下部管板225bとに囲まれた領域である。燃料ガス排出室219は、下部ケーシング229bに備えられた燃料ガス排出孔231bによって、図示しない燃料ガス排出枝管209aと連通されている。燃料ガス排出室219には、セルスタック101の他方の端部101bが、セルスタック101の基体管103の内部が燃料ガス排出室219に対して開放して配置されている。燃料ガス排出室219は、複数のセルスタック101の基体管103の内部を通過して燃料ガス排出室219に供給される排燃料ガスを集約して、燃料ガス排出孔231bを介して図示しない燃料ガス排出枝管209aに導くものである。
酸化性ガス供給室221は、SOFCモジュール201の発電量に対応して所定ガス組成と所定流量の酸化性ガスを酸化性ガス供給枝管へと分岐して、複数のSOFCカートリッジ203へ供給する。酸化性ガス供給室221は、SOFCカートリッジ203の下部ケーシング229bと下部管板225bと下部支持体227bとに囲まれた領域である。酸化性ガス供給室221は、下部ケーシング229bに備えられた酸化性ガス供給孔233aによって、図示しない酸化性ガス供給枝管と連通されており、不図示の酸化性ガス供給枝管から酸化性ガス供給孔233aを介して供給される所定流量の酸化性ガスを、後述する酸化性ガス供給隙間235aを介して発電室215に導く。
酸化性ガス排出室223は、SOFCカートリッジ203の上部ケーシング229aと上部管板225aと上部断熱体227aとに囲まれた領域である。酸化性ガス排出室223は、上部ケーシング229aに備えられた酸化性ガス排出孔233bによって、不図示の酸化性ガス排出枝管と連通されており、発電室215から後述する酸化性ガス排出隙間235bを介して燃料ガス排出室223に供給される排酸化性ガスを、酸化性ガス排出孔233bを介して図示しない第3酸化性ガス排出枝管209bに導くものである。
上部管板225aは、上部ケーシング229aの天板と上部断熱体227aとの間に、上部管板225aと上部ケーシング229aの天板と上部断熱体227aとが略平行になるように、上部ケーシング229aの側板に固定されている。上部管板225aは、SOFCカートリッジ203に備えられるセルスタック101の本数に対応した複数の孔を有し、該孔にはセルスタック101が夫々挿入されている。この上部管板225aは、複数のセルスタック101の一方の端部101aをシール部材及び接着部材のいずれか一方又は両方を介して気密に支持すると共に、燃料ガス供給室217と酸化性ガス排出室223とを隔離するものである。
下部管板225bは、下部ケーシング229bの底板と下部断熱体227bとの間に、下部管板225bと下部ケーシング229bの底板と下部断熱体227bとが略平行になるように下部ケーシング229bの側板に固定されている。また下部管板225bは、SOFCカートリッジ203に備えられるセルスタック101の本数に対応した複数の孔を有し、該孔にはセルスタック101が夫々挿入されている。この下部管板225bは、複数のセルスタック101の他方の端部101bをシール部材及び接着部材のいずれか一方又は両方を介して気密に支持すると共に、燃料ガス排出室219と酸化性ガス供給室221とを隔離するものである。
上部断熱体227aは、上部ケーシング229aの下端部に、上部断熱体227aと上部ケーシング229aの天板と上部管板225aとが略平行になるように配置され、上部ケーシング229aの側板に固定されている。また、上部断熱体227aには、SOFCカートリッジ203に備えられるセルスタック101の本数に対応して、複数の孔が設けられている。この孔の直径はセルスタック101の外径よりも大きく設定されている。上部断熱体227aは、この孔の内面と、上部断熱体227aに挿通されたセルスタック101の外面との間に形成された酸化性ガス排出隙間235bを有する。
上部断熱体227aは、発電室215と酸化性ガス排出室223とを仕切るものであり、上部管板225aの周囲の雰囲気が高温化し強度低下や酸化性ガス中に含まれる酸化剤による腐食が増加することを抑制する。上部管板225a等はインコネルなどの高温耐久性のある金属材料から成るが、上部管板225a等が発電室215内の高温に晒されて上部管板225a等内の温度差が大きくなることで熱変形することを防ぐものである。また、上部断熱体227aは、発電室215を通過して高温に晒された排酸化性ガスを、酸化性ガス排出隙間235bを通過させて酸化性ガス排出室223に導くものである。
上述のように、本実施形態に係るSOFCカートリッジ203は、燃料ガスと酸化性ガスとがセルスタック101の内側と外側とを対向して流れるものとなっている。これにより、排酸化性ガスは、基体管103の内部を通って発電室215に供給される燃料ガスとの間で熱交換がなされ、金属材料からなる上部管板225a等が座屈などの変形をしない温度に冷却されて酸化性ガス排出室223に供給される。また、燃料ガスは、発電室215から排出される排酸化性ガスとの熱交換により昇温され、発電室215に供給される。その結果、ヒーター等を用いることなく発電に適した温度に予熱昇温された燃料ガスを発電室215に供給することができる。
下部断熱体227bは、下部ケーシング229bの上端部に、下部断熱体227bと下部ケーシング229bの底板と下部管板225bとが略平行になるように配置され、上部ケーシング227aの側板に固定されている。また、下部断熱体227bには、SOFCカートリッジ203に備えられるセルスタック101の本数に対応して、複数の孔が設けられている。この孔の直径はセルスタック101の外径よりも大きく設定されている。下部断熱体227bは、この孔の内面と、下部断熱体227bに挿通されたセルスタック101の外面との間に形成された酸化性ガス供給隙間235aを有する。
この下部断熱体227bは、発電室215と酸化性ガス供給室221とを仕切るものであり、下部管板225bの周囲の雰囲気が高温化し強度低下や酸化性ガス中に含まれる酸化剤による腐食が増加することを抑制する。下部管板225b等はインコネルなどの高温耐久性のある金属材料から成るが、下部管板225b等が高温に晒されて下部管板225b等内の温度差が大きくなることで熱変形することを防ぐものである。また、下部断熱体227bは、酸化性ガス供給室233に供給される酸化性ガスを、酸化性ガス供給隙間235aを通過させて発電室215に導くものである。
上述したSOFCカートリッジ203の構造によれば、燃料ガスと酸化性ガスとがセルスタック101の内側と外側とを対向して流れるものとなっている。このことにより、基体管103の内部を通って発電室215を通過した排燃料ガスは、発電室215に供給される酸化性ガスとの間で熱交換がなされ、金属材料から成る下部管板225b等が座屈などの変形をしない温度に冷却されて燃料ガス排出室219に供給される。また、酸化性ガスは排燃料ガスとの熱交換により昇温され、発電室215に供給される。その結果、ヒーター等を用いることなく発電に必要な温度に昇温された酸化性ガスを発電室215に供給することができる。
発電室215で発電された直流電力は、複数の燃料電池セル105に設けたNi/YSZ等からなるリード膜117によりセルスタック101の端部付近まで導出した後に、SOFCカートリッジ203の集電棒(不図示)に集電板(不図示)を介して集電して、各SOFCカートリッジ203の外部へと取り出される。前記集電棒によってSOFCカートリッジ203の外部に導出された電力は、各SOFCカートリッジ203の発電電力を所定の直列数および並列数へと相互に接続され、SOFCモジュール201の外部へと導出されて、図示しないインバータなどにより所定の交流電力へと変換されて、電力負荷へと供給される。
次に、本実施形態に係る燃料電池スタックの異常検知装置について、図3〜図11を参照して説明する。
図3は、本実施形態に係る異常検知装置の概略構成を示した図である。図3に示すように、異常検知装置1は、温度取得部11、電流検出部12、電圧検出部13、電圧予測値取得部14、及び異常判定部15を主な構成として備えている。
温度取得部11は、SOFCカートリッジ203の所定の位置の温度を代表温度として取得する。例えば、温度取得部11は、SOFCカートリッジ203の外面の空気温度Taを計測する複数の温度計測部21と、温度計測部21によって計測された空気温度Taから平均空気温度Ta_aveを算出する平均空気温度算出部22と、平均空気温度Ta_aveをセルスタックの表面温度に変換して代表温度Tを得る温度推定部23とを備えている。温度計測部21は、例えば、空気温度Taとして空気流路壁面温度を計測することとしてもよい。
ここで、各温度計測部21は、図4に示すように、SOFCカートリッジ203を構成するセルスタックの軸方向(燃料ガスの主流流れ方向)において、図2における端部101aと101bの中間部に設置されることが好ましい。これは、図5に示すように、SOFCカートリッジ203は、セルスタック101の軸方向において温度分布を有しているため、軸方向において異なる位置に温度計測部21を設置してしまうと、温度分布の影響を受けて電圧計測精度が低下するからである。また、図5に示す温度分布から中間部がセルスタック101の軸方向の温度分布で最も高温になる領域だからであり、後述する電圧計測精度を向上させることができるからである。
温度推定部23は、電流検出部12によって検出された出力電流Ioutに応じた補正値を用いて空気温度を補正することにより、セルスタックの表面温度を推定し、代表温度Tを得る。例えば、温度推定部23は、出力電流Ioutが所定値以下の場合には、平均空気温度Ta_aveをセルスタックの表面温度とみなし、平均空気温度Ta_aveを代表温度Tとする。また、出力電流Ioutが所定値を超える場合には、平均空気温度Ta_aveに所定の補正値を加えた値を代表温度Tとする。なお、補正値については、出力電流、セルスタック表面温度、空気温度の関係をシミュレーションなどを行うことにより取得し、この結果から適宜決定すればよい。
電流検出部12は、SOFCカートリッジ203の出力電流Ioutを検出する。電圧検出部13は、SOFCカートリッジ203の出力電圧Voutを検出する。
電圧予測値取得部14は、SOFCカートリッジ203を構成するセルスタック101の軸線方向における温度分布を考慮して作成された温度分布考慮形IV特性を有している。具体的には、図6に示すように、温度分布考慮形IV特性は、出力電流Ioutと電圧予測値Vrefとが関連付けられた情報であり、代表温度Tの温度区分に対応付けられて複数設けられている。図6においてT1、T2、T3、T4は温度区分の代表温度であり、各温度の高低はT1<T2<T3<T4である。図6では、代表温度Tについて3つの温度区分に区分された場合を例示しているが、区分数については特に限定されず、より細かい区分に分けてもよい。図6において、横軸は出力電流Iout、縦軸は電圧予測値Vrefである。温度分布考慮形IV特性は、例えば、出力電流をパラメータとする関数として表される。このとき、SOFCカートリッジ203の燃料利用率、空気利用率は所定の一定値を用いて求めたものである。また、出力電流Iが変化すれば代表温度Tも変化するが、その影響は少ないものとしてIV特性を求める。
電圧予測値取得部14は、複数の温度分布考慮形IV特性の中から、温度取得部11によって取得された代表温度Tに対応する温度分布考慮形IV特性を用いて、出力電流検出部12によって検出された出力電流Ioutに対応する電圧予測値Vrefを取得する。例えば、温度取得部11によって取得された代表温度TがT3≦T<T4であり、出力電流Ioutの値がαであった場合、図6に示すように電圧予測値βを取得する。
なお、温度分布考慮形IV特性の作成方法については、後述する。
異常判定部15は、電圧予測値取得部14によって取得された電圧予測値Vrefと、電圧検出部14によって検出された出力電圧Voutとを比較することにより異常判定を行う。例えば、電圧予測値Vrefと出力電圧Voutとの差が予め設定されている許容範囲外である場合に異常と判定して、その旨を出力する。
次に、上記温度考慮形IV特性の作成手順について説明する。
まず、図7に示すようなセルスタック単体について、温度毎のIV特性を得る。このとき、セルスタック101の軸線方向における温度は均一とする。図8に、セルスタック単体の温度毎のIV特性の一例を示す。上記温度毎のIV特性は、試験を行うことにより取得してもよいし、シミュレーションにより取得してもよい。
次に、SOFCカートリッジ203の温度分布を得る。具体的には、セルスタックの軸方向における所定位置の温度である代表温度(例えば、セルスタック中間部の温度)と出力電流との組み合わせを複数の組み合わせに変化させたときの温度分布を取得する。例えば、出力電流をI=I1、I2、I3、・・・Inと変化させ、代表温度をT1、T2、T3・・・Tnと変化させたときのそれぞれの組み合わせにおける温度分布を取得する。ここで、セルスタックの軸方向における温度分布は、実機を用いた代表温度と出力電流が近い条件にある試験により計測して実測値を取得してもよいし、シミュレーションにより取得することとしてもよい。
次に、各温度分布について予測電圧値を取得する。まず、図9に示すように、温度分布をセルスタックの軸方向において複数の区分S1〜Snに分割する。このとき、セルスタック101を構成する燃料電池セル105の位置に対応するように区分してもよい。
次に、各区分における区分代表温度を得る。これは、例えば、前述の実測値やシミュレーションによる温度分布を用いて取得することができる。区分代表温度は、例えば、各区分に対応する最高温度でもよいし、平均温度でもよい。
次に、各区分における区分代表温度と、当該温度分布が得られた時の出力電流とから決定される電圧予測値を、事前に得ておいたセルスタック単体の温度毎のIV特性(図8参照)から取得する。具体的には、区分代表温度に対応するIV特性を用いて、出力電流に対応する電圧予測値を取得する。これにより、各区分における電圧予測値を得ることができる。そして、各区分における電圧予測値を足し合わせることで、当該温度分布に対する電圧予測値が得られる。換言すると、当該温度分布が得られたときの代表温度および出力電流に対応する電圧予測値が得られる。
このようにして、各温度分布について電圧予測値が求まると、図10に示すように、同じ代表温度のときの出力電流と電圧予測値との関係を電流−電圧座標にプロットし、このプロットを近似曲線で結ぶことによりIV特性を得る。この作業を代表温度毎に行うことで、各代表温度に対応する温度分布考慮形IV特性が作成される。ここで、図6の説明にて記述したように、出力電流IがImに変化すると代表温度Tも変化するが、変化後の代表温度Tmもほぼ代表温度Tに近いとしてIV特性を得る。
次に、本実施形態に係る燃料電池の異常検知装置及びその方法における異常検知の処理手順について、図3を参照して説明する。
複数の温度計測部21によりSOFCカートリッジ203の外面の空気温度Taが計測され、この平均空気温度Ta_aveが平均空気温度算出部22により算出される。平均空気温度Ta_aveは、温度推定部23においてセル表面の温度に変換され、代表温度Tとして電圧予測値取得部14に出力される。電圧予測値取得部14では、代表温度Tに対応する温度分布考慮形IV特性を用いて、出力電流検出部12によって検出された出力電流Ioutに対応する電圧予測値Vrefが取得される。電圧予測値Vrefは異常判定部15に出力され、電圧検出部13によって検出された出力電圧との比較により、異常判定が行われる。
異常判定部15によって異常であると判定された場合には、例えば、燃料電池システムにおいて、警告を出したり、負荷を低下させたりする制御が行われる。また、起動時などの負荷上げ時においては、基準となる負荷上げ速度より速めると、出力電圧Vと電圧予測値Vrefとが乖離してしまうという現象が生ずる。したがって、例えば、燃料電池システムの起動時においては、出力電圧Vと電圧予測値Vrefとの差が予め設定されている許容範囲内となるように、負荷上げの速度を調整するとよい。例えば、出力電圧Vと電圧予測値Vrefとの差が許容範囲を外れた場合には、負荷上げ速度を遅くしたり、負荷上げを一旦停止したりする。そして、出力電圧Vと電圧予測値Vrefとの差が許容範囲内となった場合に、負荷上げ速度を速めたり、負荷上げを再開させたりする。このような制御を行うことにより、燃料電池セル105を劣化・損傷させることなく、安全にかつ速やかに定格負荷まで負荷を上昇させることが可能となる。ここで基準となる負荷上げ速度は、セルスタックの温度分布が所定の温度範囲内になるように設定された速度であって、セルスタックの形状により最適な速度が設定されることが望ましい。
以上説明したように、本実施形態に係る燃料電池の異常検知装置及びその方法並びに燃料電池システムによれば、セルスタックの軸方向における温度分布を考慮して作成された温度分布考慮形IV特性を用いて、温度取得部11により取得された燃料電池カートリッジ203の代表温度T及び電流検出部12により検出された燃料電池カートリッジ203の出力電流Ioutから電圧予測値Vrefが得られる。このように、予めセルスタックの軸方向における温度分布が考慮された温度分布考慮形IV特性を用いて電圧予測値Vrefを取得するので、電圧予測値の精度を向上させることができ、異常判定の精度を向上させることが可能となる。
また、本実施形態に係る燃料電池システムは、表示部を更に有していてもよい。具体的には、図11に示すように、上記温度取得部11によって取得された代表温度Tに対応する温度分布考慮形IV特性と、電圧検出部13によって検出された出力電圧とが同一グラフ上に表示された表示画面を表示部に表示させる。このような構成によれば、表示部に現在の出力電圧と電圧予測値とが比較されて表示されるので、作業員は、電圧予測値に対する現在の出力電圧の状況を容易に把握することが可能となる。
本発明は、上述の実施形態のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々変形実施が可能である。
1 異常検知装置
11 温度取得部
12 電流検出部
13 電圧検出部
14 電圧予測値取得部
15 異常判定部
21 温度計測部
22 平均空気温度算出部
23 温度推定部
101 セルスタック
105 燃料電池セル
203 SOFCカートリッジ(燃料電池カートリッジ)

Claims (9)

  1. 複数のセルスタックを有する燃料電池カートリッジの所定の位置の温度を代表温度として取得する温度取得手段と、
    前記燃料電池カートリッジの出力電流を検出する電流検出手段と、
    前記燃料電池カートリッジの出力電圧を検出する電圧検出手段と、
    前記燃料電池カートリッジの代表温度に応じて設定された情報を用いて、前記電流検出手段によって検出された前記燃料電池カートリッジの出力電流に対応する前記燃料電池カートリッジの電圧予測値を取得する電圧予測値取得手段と、
    前記電圧予測値取得手段によって取得された前記燃料電池カートリッジの電圧予測値と前記電圧検出手段によって検出された前記燃料電池カートリッジの出力電圧とを用いて異常判定を行う異常判定手段と
    を具備する燃料電池の異常検知装置。
  2. 前記温度取得手段は、前記燃料電池カートリッジの外面の空気温度を計測する複数の温度計測手段を備え、前記温度計測手段は前記セルスタックの軸方向の温度分布において最も高温となる領域に設置されている請求項1に記載の燃料電池の異常検知装置。
  3. 前記温度取得手段は、
    前記燃料電池カートリッジの外面の空気温度を計測する温度計測手段と、
    前記温度計測手段によって検出された空気温度から前記セルスタックの表面温度を推定し、推定した前記表面温度を前記代表温度とする温度推定手段と
    を備える請求項1に記載の燃料電池の異常検知装置。
  4. 前記温度推定手段は、前記電流検出手段によって検出された出力電流に応じた補正値を用いて、前記表面温度を推定する請求項3に記載の燃料電池の異常検知装置。
  5. 前記電圧予測値は、
    前記セルスタックの軸方向に沿って複数の区分に分割したときの各区分における区分代表温度と前記出力電流値とから各区分における電圧予測値を取得し、
    取得した電圧予測値を足し合わせた値に設定されている請求項1から請求項4のいずれかに記載の燃料電池の異常検知装置。
  6. 前記区分代表温度は、実機値またはシミュレーションで得た温度を用いる請求項5に記載の燃料電池の異常検知装置。
  7. 請求項1から請求項6のいずれかに記載の燃料電池の異常検知装置を備える燃料電池システム。
  8. 発電負荷の上昇時において、前記燃料電池の異常検知装置によって異常判定がされた場合に、前記発電負荷の上昇速度を基準より遅くするまたは前記発電負荷の上昇を一時停止し、前記電圧予測値と前記出力電圧との差が許容範囲内となった場合に、前記発電負荷の上昇速度を基準より速くするまたは前記発電負荷の上昇を再開させる請求項7に記載の燃料電池システム。
  9. 複数のセルスタックを有する燃料電池カートリッジの所定の位置の温度を代表温度として取得する温度取得工程と、
    前記燃料電池カートリッジの出力電流を検出する電流検出工程と、
    前記燃料電池カートリッジの出力電圧を検出する電圧検出工程と、
    前記燃料電池カートリッジの代表温度と前記燃料電池カートリッジの出力電流とから前記燃料電池カートリッジの電圧予測値を一意的に特定するための情報を予め記憶する工程と、
    前記温度取得工程において取得された前記燃料電池カートリッジの代表温度及び前記電流検出工程において検出された前記燃料電池カートリッジの出力電流に対応する前記燃料電池カートリッジの電圧予測値を前記情報を用いて取得する電圧予測値取得工程と、
    前記電圧予測値取得工程において取得された前記燃料電池カートリッジの電圧予測値と前記電圧検出工程によって検出された前記燃料電池カートリッジの出力電圧とを用いて異常判定を行う異常判定工程と
    を有する燃料電池の異常検知方法。
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