以下、本発明の実施の形態による電磁式サスペンション装置を、4輪自動車に適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
図1ないし図5は、第1の実施の形態を示している。図1において、電磁式サスペンション装置1は、車両を構成する車体(ばね上)と車輪(ばね下)との間に設けられた懸架ばね(図示せず)と、該懸架ばねと並列関係をなして車体と車輪との間に介装されたリニア電磁式アクチュエータ2(以下、アクチュエータ2という)と、該アクチュエータ2への通電を制御する制御手段としてのインバータ3とを備えて構成されている。なお、図1中では、1組のアクチュエータ2とインバータ3を模式的に図示しているが、これらアクチュエータ2とインバータ3は、例えば4つの車輪(左前輪、右前輪、左後輪、右後輪)と車体との間に個別に独立して合計4組設けられるものである。
インバータ3は、直流電力線4を介して蓄電装置等の車両の電源5と接続されると共に、それぞれがケーブルとしてのU相動力線6A、V相動力線6B、W相動力線6Cを介してアクチュエータ2のコイル部材15と接続されている。即ち、インバータ3のU相出力部3A、V相出力部3B,W相出力部3Cは、それぞれU相動力線6A、V相動力線6B、W相動力線6Cを介して、コイル部材15を構成するU相コイル15A、V相コイル15B、W相コイル15Cと接続されている。
インバータ3は、例えばトランジスタ、電界効果トランジスタ(FET)、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)等からなる複数のスイッチング素子を含んで構成され、各スイッチング素子は、その開・閉が演算部7からの電流指令に基づいて制御される。インバータ3は、アクチュエータ2の駆動時には、直流電力線4の直流電力から3相(U相、V相、W相)の交流電力を生成し、動力線6A,6B,6Cを介してアクチュエータ2(のコイル部材15)に供給する。
即ち、インバータ3は、電源5より直流電力線4を介して電力の供給を受けると共に、演算部7からの電流指令に基づいてアクチュエータ2(のコイル部材15)に動力線6A,6B,6Cを介して交流電流を流す。これにより、インバータ3は、アクチュエータ2に減衰力となる推力を発生させ、車体の乗り心地と操縦安定性を向上する制御を行う。この制御は、車両に取付けられた車両センサ8の検出情報に基づいて、アクチュエータ2で発生すべき減衰力(目標減衰力)に対応する電流指令を演算部7で演算し、その電流指令をインバータ3に出力することにより行われる。
車両センサ8は、例えば、加速度センサ、車輪速センサ、舵角センサ等の車両の各種状態量を検出するセンサ(検出器)により構成され、センサ線9を介して演算部7に接続されている。車両センサ8は、演算部7に対して車両情報となるセンサ信号を出力する。演算部7は、例えばマイクロコンピュータ等を用いて構成され、指令線10を介してインバータ3に接続されている。演算部7は、車両センサ8の検出情報に基づいて、インバータ3に対する指令(電流指令、制御ON/OFF指令)を出力する。
ここで、演算部7は、乗り心地向上と操縦安定性向上の制御指令となる電流指令をインバータ3に出力することに加えて、乗り心地向上と操縦安定性向上の制御を行うか否かの指令となる制御ON/OFF指令をインバータ3に出力する。制御ON/OFF指令は、インバータ3からアクチュエータ2(のコイル部材15)に対して通電を許可するか否か、即ち、アクチュエータ2の減衰力の制御をアクティブに行うか否か決定する指令となるものである。
演算部7からインバータ3に制御ON指令が出力されると、インバータ3は、インバータ3とアクチュエータ2間を接続してよいか否か、即ち、後述するリレー27,28によりインバータ3とアクチュエータ2間を導通させてよいか否かを、インバータ3(の制御部)に組込まれた規則を基に判定する。そして、導通させてよいと判定されると、インバータ3(の制御部)からリレー27,28に対し、インバータ3とアクチュエータ2(のコイル部材15)とを導通する旨のリレー信号が、リレー信号線3Dを通じて出力される。
これにより、図1および後述する図5の右最上段の回路図(正常、制御ON)に示すように、リレー27,28は、インバータ3とアクチュエータ2(のコイル部材15)とを導通する。この状態で、インバータ3は、演算部7からの電流指令に基づいてアクチュエータ2(のコイル部材15)への通電を行い、コイル部材15と後述の永久磁石26(図2参照)との間に生じる電磁力によってアクチュエータ2に減衰力となる推進力を発生させる。このとき、インバータ3は、演算部7からの電流指令に基づいてアクチュエータ2の推進力(減衰力)を可変に調整することにより、乗り心地向上と操縦安定性向上の制御を行うことができる。
一方、演算部7からインバータ3に制御OFF指令が出力されると、インバータ3は、インバータ3とアクチュエータ2間を非接続としてよいか否か、即ち、リレー27,28によりインバータ3とアクチュエータ2間を非導通としてよいか否かを、インバータ3(の制御部)に組込まれた規則を基に判定する。そして、非導通にしてよいと判定されると、インバータ3(の制御部)からリレー27,28に対し、インバータ3とアクチュエータ2(のコイル部材15)とを非導通とする旨のリレー信号が、リレー信号線3Dを通じて出力される。
これにより、後述する図5の左最上段の回路図(正常、制御OFF)に示すように、リレー27,28は、インバータ3とアクチュエータ2(のコイル部材15)とを非導通とする。このとき、リレー27,28は、後述するように、アクチュエータ2の動力線6A,6B,6C同士、即ち、コイル部材15の各コイル15A,15B,15C同士を短絡する接続位置に切換わり、閉回路が形成される。この場合、アクチュエータ2は、コイル部材15と永久磁石26との相対変位(ストローク)によりコイル部材15の各コイル15A,15B,15Cに生じる起電力によって、減衰力となる抵抗力を発生させることができる。即ち、アクチュエータ2は、外部からの電力の供給を受けずに、ストローク速度に応じた減衰力を発生し、車両の走行を可能とすることができる。
次に、アクチュエータ2の構成について、図2を参照しつつ説明する。
アクチュエータ2は、車体側に配置される固定子11と、車輪側に配置される可動子12とを有し、これら固定子11(のコイル部材15)と可動子12(の永久磁石26)とにより3相リニア同期モータを構成している。即ち、アクチュエータ2は、車体(ばね上部材)と車輪(ばね下部材)との間に介装され、相対変位可能な同軸状の内筒と外筒とのうちの内筒に対応するロッド16にコア14を介して設けられたコイル部材15(コイル15A,15B,15C)と、外筒に対応するアウタチューブ22に設けられコイル部材15と対向する磁性部材としての永久磁石26とからなる筒状リニア電磁式アクチュエータとして構成されている。なお、図示は省略するが、アクチュエータ2は、径方向内側に配置される内筒と径方向外側に配置される外筒とのうちの外筒にコイル部材(コイル)を設け、内筒に磁性部材(永久磁石)を設ける構成としてもよい。
車体側に配置される固定子11は、電機子13とロッド16とにより大略構成されている。電機子13は、磁性体からなるコア14と、該コア14に設けられコイル部材15を構成する複数のコイル15A,15B,15C(U相コイル15A,V相コイル15B,W相コイル15C)とにより構成されている。
コア14は、例えば圧粉磁心や積層された電磁鋼板、磁性体片より切削加工等によって形成され、その形状は、全体として略円筒状となっている。一方、各コイル15A,15B,15Cは、それぞれ所定の方向に巻かれてコア14の外周面側に収容され、可動子12(の永久磁石26)の内周面と対向して配置されている。
具体的には、コイル15A,15B,15Cは、略筒状のコア14の外周面側に位置して該コア14の周方向に配置されると共に、該コア14の軸方向の6箇所位置に軸方向に離間して配置されている。コイル15A,15B,15Cには、動力線6A,6B,6Cが接続され、インバータ3から後述するリレー27,28を介して電力が供給される。
なお、コイル15A,15B,15Cの個数は、図示したものに限らず、3個や9個、12個等、設計仕様等に応じて適宜設定することができる。また、軸方向に隣合う6個のコイル15A,15B,15Cは、例えば電気角でそれぞれ120°ずつの位相差をもつように配置される。各コイル15A,15B,15C間の配線方法も、例えば電源5側の電圧や電流仕様に応じて適宜選択することができる。コア14の形状に関しても、図示したものに限らず、例えばコイル保護用の凸部や推力脈動低減用の曲線部等を設ける構成としてもよい。
一方、内筒としてのロッド16は、略円筒状に形成され、ストローク方向となる軸方向(図2の左,右方向)に延び、基端側(図2の右端側)がコア14の内側に固定(嵌着)されている。ロッド16の先端側(図2の左端側)は、後述するアウタチューブ22の軸受取付部22Cから突出し、その突出端には、例えば車両のばね上部材(車体側)に取付けられるねじ部16Aが設けられている。ロッド16の内側には、可動子12の案内ロッド23が挿入され、ロッド16の基端側の内周面には、案内ロッド23の外周面と摺接する軸受、スリーブ等の摺動部材からなる第1軸受17が設けられている。
ロッド16の外周面のうち電機子13よりも一端側(図2の左端側)には、ストッパ部材18と、後述するリレー27,28が組込まれたリレー組立体33とが取付けられている。ストッパ部材18は、アウタチューブ(ヨーク)22の伸びきり時に該アウタチューブ22の軸受取付部22Cと当接するもので、例えばポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ゴム等の弾性材料により円筒状に形成されている。ストッパ部材18は、アウタチューブ22の軸受取付部22Cと当接するときの衝撃を緩和するものである。
一方、ロッド16内には、コイル15A,15B,15Cと接続される3本の動力線6A,6B,6Cと、例えば、MRセンサ、ホールICセンサ等の磁気センサ(図示せず)にそれぞれ接続される2本の磁気センサ線19(図3参照)と、温度センサ20に接続される2本の温度センサ線21とが配設されている。温度センサ20は、任意のコイル15A,15B,15Cの温度を検出するもので、コイル15A,15B,15Cの内周側に設けられ(貼付され)ている。本実施の形態では、温度センサ線21は2本としているが、温度センサ線21の本数は任意の数でよい。一方、磁気センサは、後述する永久磁石26の磁極位置(延いては、アクチュエータ2のストローク位置)を検出するためのものである。図示は省略するが、磁気センサは、例えば、ロッド16の外周側で例えばリレー組立体33よりも電機子13側(リレー組立体33と電機子13の間)に設けられている。各動力線6A,6B,6Cおよび各センサ線19,21は、ロッド16を通じて外部に引き出されている。
車輪側に配置される可動子12は、界磁を構成するもので、ストローク方向となる軸方向の相対変位を可能に固定子11に組み付けられている。可動子12は、電機子13(コア14およびコイル15A,15B,15C)の外周側に配置される外筒としてのアウタチューブ(ヨーク)22と、該アウタチューブ22の内側に位置してストローク方向に延びる案内ロッド23と、アウタチューブ22に設けられコイル15A,15B,15Cに対し径方向に隙間をもって対向する磁性部材としての複数の永久磁石26とにより構成されている。
アウタチューブ22は、例えば、磁場の中に置くと磁路を形成する磁性体、例えば機械構造用炭素鋼鋼管(STKM12A)等を用いて有底円筒状に形成され、ストローク方向となる軸方向に延びている。即ち、アウタチューブ22は、磁性体とすることにより、アクチュエータ22の磁気回路を形成すると共に、後述する永久磁石26の磁束を外部に漏らさないためのカバーとしての役目を有している。
ここで、アウタチューブ22は、軸方向に延びる筒部22Aと、該筒部22Aの他端側(図2の右端側)を閉塞する底部22Bと、筒部22Aの開口側(一端側)に位置して固定子11のロッド16側に向けて径方向内側に全周にわたって突出する軸受取付部22Cとにより構成されている。筒部22Aの内側には、永久磁石26が軸方向に並んで配置されている。
底部22Bには、筒部22Aの内側に位置して底部22Bから電機子13の内側(ロッド16の内側)に延びる案内ロッド23が設けられている。案内ロッド23の外周面は、ロッド16内に設けられた第1軸受17が摺動する。なお、案内ロッド23は、アウタチューブ22の底部22Bに該アウタチューブ22と一体に形成する構成や、アウタチューブ22とは別体の案内ロッド23を底部22Bにねじやボルト等を用いて固定する構成を採用することができる。
また、アウタチューブ22の底部22Bのうち案内ロッド23とは反対側には、車両のばね下部材(車輪側)に取付けられる取付ブラケット22Dが設けられている。一方、軸受取付部22Cの内周面には、ロッド16の外周面と摺接する軸受、スリーブ等の摺動部材からなる第2軸受24が設けられている。また、軸受取付部22Cの内周側で、第2軸受24よりも一端側(図2の左端側)には、外部から水や埃が入るのを阻止するシール25が設けられている。
アウタチューブ22の筒部22Aの内周面側には、磁場を生じさせる部材である磁性部材としての複数の円環状の永久磁石26が軸方向に沿って並んで配置されている。この場合、軸方向に隣合う各永久磁石26は、例えば互いに逆極性になっている。例えば、アウタチューブ22の一端側(右側または左側)から数えて奇数個目の永久磁石26を、内周面側がN極で外周面側がS極のものとしたならば、一端側から数えて偶数個目の永久磁石26は、内周面側がS極で外周面側がN極のものとなっている。
この場合、各永久磁石26は、例えば、円筒状に一体に形成されたリング磁石や、円弧状の複数の磁石素子を周方向に並べることにより円環状に構成した分割型のセグメント磁石とすることができる。なお、永久磁石26の個数は、図示の例に限るものではない。即ち、図示の例では、永久磁石26の数とコイル15A,15B,15Cの数は、11極6スロット構成であるが、例えば4極6スロット構成や、8極6スロット構成としてもよい。
なお、アウタチューブ(ヨーク)22は磁気回路や磁気漏洩の観点から磁性体が好ましいが、第2軸受24と軸受取付部22Cのうちの少なくとも一方は、非磁性体が好ましい。この理由は、次の通りである。即ち、永久磁石26から出る磁束は、電機子13と対向する側(内周面側)では、内周面がN極の永久磁石26から電機子13のコア14を介して内周面がS極の永久磁石26に向かう径路(磁路)となる。
一方、電機子13と対向しない側(外周面側)では、外周面がN極の永久磁石26からアウタチューブ22の筒部22Aを介して外周面がS極の永久磁石26に向かう径路(磁路)となる。ここで、例えば第2軸受24と軸受取付部22Cとの両方を磁性体とした場合、アウタチューブ22の最も一端側(左端側)の永久磁石26の外周面から出る磁束は、該永久磁石26の外周面からアウタチューブ22の筒部22A、軸受取付部22C、第2軸受24、ロッド16、電機子13のコア14を介して、永久磁石26の内周面に戻る径路(磁路)となる。
この場合、電磁式サスペンション装置1の使用時に、路面からの鉄粉や砂鉄が、磁気を帯びた軸受取付部22C、第2軸受24、ロッド16に付着するおそれがある。このように付着した鉄粉や砂鉄は、容易に剥がすことができず、第2軸受24とロッド16との摺動部位に噛み込まれるおそれがある。そこで、第2軸受24と軸受取付部22Cとのうちの少なくとも一方を非磁性体とすることにより、磁気回路を遮断すれば、鉄粉や砂鉄が付着しても容易に剥がすことが可能になり、第2軸受24とロッド16とを安定して摺動させることができる。
次に、アクチュエータ2による制御を行う「制御ON(制御)」の状態と制御を行わない「制御OFF(短絡、閉回路)」の状態とを切換えるためのリレー27,28について説明する。
上述したようにインバータ3の各相の出力部3A,3B,3Cとコイル部材15の各相のコイル15A,15B,15Cとは、それぞれ独立のケーブルとなるU相動力線6A、V相動力線6B、W相動力線6Cにより接続されている。リレー27,28は、インバータ3とコイル部材15(コイル15A,15B,15C)との間に設けられた3相の独立のケーブルのうちの2相のケーブル、本実施の形態では、U相動力線6AとV相動力線6Bにそれぞれ設けられている。即ち、実施の形態では、リレー27,28が設けられる2相のケーブルをU相動力線6AとV相動力線6Bとし、リレー27,28が設けられないケーブルをW相動力線6Cとしている。
ここで、各リレー27,28のうち、U相動力線6Aに設けられた一方のリレー27を第1のリレー27とし、V相動力線6Bに設けられた他方のリレー28を第2のリレー28とする。なお、第1のリレー27、第2のリレー28は、3相のうちの2相に設けるもので、U相動力線6AとV相動力線6Bに設ける構成の他、例えば、U相動力線6AとW相動力線6Cとに設ける構成、または、V相動力線6BとW相動力線6Cとに設ける構成とすることもできる。
第1のリレー27および第2のリレー28は、いずれも、制御接点29と短絡接点30との2つの接点(後述する固定接点34)と、これら制御接点29と短絡接点30の何れかしか接続できない可動接点31とを有している。第1のリレー27の制御接点29は、U相コイル15Aと該U相コイル15Aに対応するインバータ3のU相出力部3Aとを接続し、該U相のコイル15Aにインバータ3からの電流を流す接点となるものである。一方、第1のリレー27の短絡接点30は、U相コイル15AとV相コイル15Bとを接続すると共にリレー27,28が設けられないW相動力線6Cに接続し、3相のコイル15A,15B,15C間で電流を流す接点となるものである。このために、第1のリレー27の短絡接点30とW相動力線6Cは、該W相動力線6Cから分岐する分岐動力線6C1を介して接続されている。
第2のリレー28の制御接点29は、V相コイル15Bと該V相コイル15Bに対応するインバータ3のV相出力部3Bとを接続し、該V相のコイル15Bにインバータ3からの電流を流す接点となるものである。一方、第2のリレー28の短絡接点30は、V相コイル15BとU相コイル15Aとを接続すると共にリレー27,28が設けられないW相動力線6Cに接続し、3相のコイル15A,15B,15C間で電流を流す接点となるものである。このために、第2のリレー28の短絡接点30とW相動力線6Cも、第1のリレー27の短絡接点30と同様に、W相動力線6Cから分岐する分岐動力線6C1を介して接続されている。
第1のリレー27の可動接点31および第2のリレー28の可動接点31は、インバータ3からのリレー信号に応じて、制御接点29に接続(接触)した状態と短絡接点30に接続(接触)した状態との何れかに切換わるものである。これにより、第1のリレー27および第2のリレー28は、制御接点29と短絡接点30の何れかしか接続できない構造としている。
即ち、図1および図5の「正常」かつ「制御ON」の欄に示すように、演算部7からインバータ3(の制御部)を介して第1のリレー27および第2のリレー28に制御ONのリレー信号が出力されると、第1のリレー27および第2のリレー28は、それぞれ可動接点31が制御接点29に接続(接触)された状態となる。この場合は、演算部7からの電流指令に基づいてインバータ3からアクチュエータ2(のコイル部材15)への通電が行われる。このようなコイル部材15の通電時は、永久磁石26との間に生じる電磁力によって推進力(減衰力)を得ることができ、乗り心地向上と操縦安定性向上の制御を行うことができる。
一方、図5の「正常」かつ「制御OFF」の欄に示すように、演算部7からインバータ3(の制御部)を介して第1のリレー27および第2のリレー28に制御OFFのリレー信号が出力されると、第1のリレー27および第2のリレー28は、可動接点31が短絡接点30に接続(接触)された状態となる。この場合は、動力線6A,6B,6C同士(コイル部材15の各コイル15A,15B,15C同士)が短絡し(閉回路が形成され)、インバータ3からコイル部材15への通電は行われない。このような非通電時は、コイル部材15および永久磁石26の相対変位によりコイル部材15に生じる起電力によって抵抗力(減衰力)を得ることができる(コイル部材15と永久磁石26とのストローク速度に応じた減衰力を発生させることができる)。
ここで、例えばU相の接点がON故障(第1のリレー27の制御接点29が溶着故障)した場合を検討する。この場合、図5の「U相ON故障」の欄に示すように、「制御OFF」のときは、U相が制御接点29に接続しているため、U相コイル15Aはインバータ3のU相出力部3Aと接続されたままとなる。このとき、V相コイル15BとW相コイル15Cは短絡接点30を介して導通しているため、V相コイル15BとW相コイル15C間で発生する逆起電力による減衰力で車両の走行を可能とすることができる。一方、「制御ON」のときは、三相共にインバータ3と導通するため、乗り心地と操縦安定性を向上させる制御を行うことができる。これにより、リレー27の故障時の安全性を確保することができる。
また、U相接点がOFF故障(第1のリレー27の短絡接点30が溶着故障、または、後述する操作コイル38の断線故障)した場合を検討する。この場合、図5の「U相OFF故障」の欄に示すように、「制御OFF」のときは、三相のコイル15A,15B,15Cが短絡しているため、逆起電力による減衰力を発生させることができる。一方、「制御ON」のときは、U相が短絡接点30と接続したまま分岐動力線6C1を介してW相とも接続された状態となる。このとき、インバータ3とアクチュエータ2間は、V相とW+U相とが接続されたとみなされ、インバータ3の指令通りにアクチュエータ2に電流が流れないことから、インバータ3に設けられた電流センサ等のセンサにより異常を検知することができる。また、この状態で、アクチュエータ2のコイル15A,15B,15Cを介して通電される(インバータ3の出力部3A,3B,3C同士が接続されない)ため、過電流による発熱を阻止することができる。これにより、この面からも、リレー27の故障時の安全性を確保することができる。
即ち、図5に示すように、本実施の形態では、第1のリレー27や第2のリレー28の制御接点29や短絡接点30の溶着故障が発生したときにも、例えばU相動力線6A、V相動力線6B、W相動力線6Cのそれぞれに合計3個のリレーを設けた構成と同等の安全性を確保することができる。この場合、本実施の形態では、リレー27,28の故障が発生しても過電流による発熱に至らない構成となっており、安全性を向上することができる。しかも、本実施の形態では、3相分の動力線6A,6B,6Cの制御と短絡の切換えを2つのリレー27,28で行うことが可能であり、3個のリレーを設けた構成と比較して、小型化と部品点数の削減によるコスト低減、故障の低減、信頼性の向上を図ることができる。
次に、各リレー27,28の具体的な構造について説明する。
図2および図3に示すように、各リレー27,28は、円筒状のリレーケース32内に収容され、該リレーケース32と共にリレー組立体33を構成している。リレー組立体33は、アクチュエータ2の固定子11を構成するロッド16に取付けられている。これにより、各リレー27,28は、アクチュエータ2に内蔵する構成となっている。
図3に示すように、リレーケース32内には、コイル部材15の各相コイル15A,15B,15Cからマグネットワイヤとなる3本の動力線6A,6B,6Cが引込まれ、このうちの、U相動力線6Aが第1のリレー27(の可動接点31)に接続され、V相動力線6Bが第2のリレー28(の可動接点31)に接続されている。一方、リレーケース32内からは、インバータ3の各相の出力部3A,3B,3Cに向けて、ハーネスとなる3本の動力線6A,6B,6Cが引き出されている。また、リレーケース32内からは、リレー27,28に接続されたリレー信号線3Dも、インバータ3に向けて引き出されている。
円筒状のリレーケース32の内周面には、該内周面から径方向外側に凹む凹部32Aが、周方向に離間して3個所位置に設けられている。これら各凹部32Aは、リレー27,28と直接関係のない配線を逃がすための逃げ溝となるもので、それぞれの凹部32A内には、磁気センサ(図示せず)に接続される磁気センサ線19と温度センサ20に接続される温度センサ線21が挿通されている(通過している)。
一方、リレーケース32内に収容される各リレー27,28は、図4に示すように、制御接点29と短絡接点30とからなる固定接点34と、制御接点29と短絡接点30との何れかしか接続できない可動接点31とを備えている。なお、図4では、第1のリレー27と第2のリレー28の合計2個のリレーのうちの1個のみを示しているが、リレーケース32内には、図4に示す1個のリレーが2個収容されている。ここで、リレー27,28は、リレー固定子35と、リレー可動子36と、ばね37と、操作コイル38と、磁性体40とを含んで構成されている。
リレー固定子35は、基部35Aと、該基部35Aから突出して設けられた一対の接点支持部35Bと、基部35Aのうち各接点支持部35Bとは操作コイル38を挟んで反対側に位置して基部35Aから突出して設けらればね37の一端が取り付けられるばね取付部35Cとにより構成されている。基部35Aのうち一対の接点支持部35Bの間には、制御接点29と短絡接点30とが導通するのを阻止する絶縁体35Dが設けられている。基部35Aのうち操作コイル38と接点支持部35Bの間には、制御接点29と操作コイル38とが導通するのを阻止する絶縁体35Eが設けられている。
一対の接点支持部35Bのうち操作コイル38に近い側となる一方の接点支持部35Bには、制御接点29が設けられている。一方、操作コイル38から遠い側となる他方の接点支持部35Bには、短絡接点30が設けられている。これにより、固定接点34となる制御接点29と短絡接点30とが離間して設けられる構成となっている。
リレー可動子36は、リレー固定子35の接点支持部35Bの間に配置される接点支持部36Aと、ばね37と操作コイル38の間に位置してばね37の他端が取付けられるばね取付部36Bと、接点支持部36Aとばね取付部36Bとの間を連結する連結部36Cとにより構成されている。接点支持部36Aには、可動接点31が設けられ、これにより、可動接点31を制御接点29と短絡接点30との間に設ける構成となっている。一方、ばね取付部35Cのうちばね37とは反対側には、操作コイル38と対向して磁性体40が設けられている。
ばね37は、リレー固定子35のばね取付部35Cとリレー可動子36のばね取付部36Bとの間に設けられ、ばね取付部35C,36B同士に互いに離れる方向の弾性力を付与するものである。即ち、ばね37は、リレー可動子36を、可動接点31と短絡接点30とが接続する方向に押付ける(付勢する)ものである。
操作コイル38は、リレー固定子35の基部35Aのうち制御接点29とばね取付部35Cとの間に設けられている。操作コイル38は、通電による起磁力とヨーク39に発生した磁力により、リレー可動子36を、ばね37のばね力に打ち勝って可動接点31と制御接点29とが接続(接触)する方向に変位させる(動かす)ものである。このために、リレー可動子36に設けられる磁性体40は、例えば、操作コイル38の通電に伴ってヨーク39に発生する磁力と反発する磁力を有するものとすることができる。これにより、可動接点31は、操作コイル38への通電時に磁性体40に導かれることにより制御接点29と接触し、非通電時にはばね37のばね力により短絡接点30と接触する構成となっている。
ここで、リレー27,28が故障した場合の状況について検討する。
例えば、操作コイル38への通電時に、インバータ3とアクチュエータ2間に大電流が流れて制御接点29が溶着した場合(制御接点29と可動接点31が固着した場合)、制御ON時は、制御接点29の溶着によりインバータ3とアクチュエータ2間で通電は可能となる。一方、制御接点29の溶着時に制御OFF(操作コイル38を非通電)とした場合は、可動接点31が制御接点29から短絡接点30に変化しないため、リレー27,28が故障した相は短絡できず、アクチュエータ2の三相のうちの二相の減衰力で車両の走行を可能とする。
一方、操作コイル38の非通電時に、アクチュエータ2の逆起電力が大きく発生し、短絡接点30が溶着した場合(短絡接点30と可動接点31が固着した場合)、制御OFF時(操作コイル38を非通電時)は、短絡接点30を経由しアクチュエータ2が発生する逆起電力に応じた減衰力が発生可能である。一方、操作コイル38の通電時は、短絡接点30で溶着したことにより制御接点29への導通が不可能となる。このため、接点溶着した場合に、インバータ3の出力部3A,3B,3Cを短絡した故障状態を回避することができ、過電流による発熱を回避することができる。
このような実施の形態では、操作コイル38の通電・非通電を切換えることにより、制御接点29と短絡接点30を切換えることが可能となる。しかも、制御接点29と短絡接点30の同時接続、または、制御接点29と短絡接点30の両方に非接続という状況が構造的に発生しないようにできる。また、一度故障が発生した場合、機械的にその故障状態を保持することができる。この結果、アクチュエータ2やインバータ3を含めた電磁式サスペンション装置1全体の安全性と信頼性を向上することができる。なお、リレーケース32内には、例えばリレー27,28の接点切換時に発生するアークを防止等するために、水素ガスや冷却ガス、絶縁ガス等を封入してもよい。
本実施の形態による電磁式サスペンション装置1は、上述のような構成を有するもので、次にその作動について説明する。
例えば、電磁式サスペンション装置1のアクチュエータ2を、車両のばね上部材(車体側)とばね下部材(車輪側)との間に上,下方向に縦置き状態で介在させた場合には、車両が上,下方向に振動すると、アクチュエータ2にはストローク方向(軸方向)に力が作用する。この力に応じて、固定子11と可動子12とが相対移動する。このとき、コイル15A,15B,15Cには、各永久磁石26の位置に応じて所定の電流を流すことにより、電磁式サスペンション装置1の減衰力を調整することができ、車両の乗り心地や操縦安定性を向上させることができる。
ここで、本実施の形態では、アクチュエータ2による制御を行う制御ONの状態と制御を行わない制御OFFの状態とを切換えるための2個のリレー27,28を、アクチュエータ2とインバータ3との間に設けている。この場合、各リレー27,28は、インバータ3の出力部3A,3B,3Cと3相のコイル15A,15B,15Cを接続するための制御接点29と3相のコイル15A,15B,15Cを短絡させるための短絡接点30の何れかしか接続できない構成としている。
このため、各リレー27,28は、制御接点29または短絡接点30に切換えることにより、インバータ3と3相のコイル15A,15B,15C間で、導通・非導通の切換えが可能となる。これにより、例えばリレー27,28の制御接点29または短絡接点30が溶着故障した場合や操作コイル38が断線したときにおけるリレー動作不能状態においても、インバータ3の出力部3A,3B,3C同士が短絡することを阻止できる。この結果、リレー動作不能状態でも、過電流による発熱等のリスクを低減することができ、電磁式サスペンション装置1の安全性、信頼性を向上することができる。
しかも、リレー動作不能状態では、インバータ3の指令通りの電気角で3相のコイル15A,15B,15Cに電流が流れないことを、例えばインバータ3に設けられた電流センサにより検知することができる。このため、リレー27,28の動作確認用に新たなセンサやロジックを追加して設ける必要がなくなりコストを低減できることに加えて、インバータ3やアクチュエータ2の信頼性を向上することができる。さらに、3相分の動力線6A,6B,6Cの制御と短絡の切換えを2つのリレー27,28で行うことが可能となり、例えば3つのリレーを有する構成と比較して、電磁式サスペンション装置1全体の小型化と部品点数の削減によるコスト低減、故障の低減、信頼性の向上が可能となる。
一方、各リレー27,28の可動接点31は、操作コイル38への通電時に該操作コイル28が発生する磁力に基づいて固定接点34となる制御接点29と接触し、非通電時にばね37のばね力に基づいて固定接点34となる短絡接点30と接触する。このため、操作コイル38の非通電時は、3相の動力線6A,6B,6Cが短絡(3相のコイル15A,15B,15Cが短絡)し、アクチュエータ2の発電力によって発生する減衰力(抵抗力)によって車両の走行を可能とすることができる。操作コイル38の通電時は、3相コイル15A,15B,15Cとインバータ3との間が接続され、インバータ3によりアクチュエータ2への通電を制御することにより、車両の乗り心地と操縦安定性を向上させる制御を行うことができる。
しかも、リレー27,28が故障した場合、例えば、制御接点29が溶着した場合は、操作コイル38を非通電にしても、3相のうちの2相の減衰力で車両の走行が可能となる。一方、短絡接点30が溶着した場合は、インバータ3による制御を行う制御ONの状態にしても、インバータ3の出力部3A,3B,3Cを短絡した故障状態を回避することができ、過電流による発熱を抑制することができる。これにより、リレー27,28が故障した場合にも、安全性、信頼性を確保することができる。
実施の形態によれば、リレー27,28をアクチュエータ2に内蔵する構成としている。このため、インバータ3とアクチュエータ2との間で動力線6A,6B,6Cが断線した場合にも、アクチュエータ2に内蔵されたリレー27,28の操作コイル38を非通電とすることにより3相の動力線6A,6B,6Cを短絡させ、アクチュエータ2に減衰力(抵抗力)を発生させることができる。これにより、この面からも、電磁式サスペンション装置1の安全性、信頼性を向上することができる。
次に、図6は第2の実施の形態を示している。第2の実施の形態の特徴は、リレーの操作コイルの通電に伴ってヨークと磁性体との間に吸引力を発生する構成としたことにある。なお、第2の実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
リレー27,28は、リレー固定子41と、リレー可動子42と、ばね43と、操作コイル44と、磁性体46とを含んで構成されている。なお、図6も、図4と同様に、第1のリレー27と第2のリレー28の合計2個のリレーのうちの1個のみを示しているが、リレーケース32内には、図6に示す1個のリレーが2個収容されている。
リレー固定子41は、基部41Aと、該基部41Aから突出して設けられた一対の接点支持部41Bと、基部41Aのうち各接点支持部41Bとは操作コイル38を挟んで反対側に位置して基部41Aから突出して設けらればね43の一端が取り付けられるばね取付部41Cと、該ばね取付部41Cと接点支持部41Bとの間に突出して設けられ操作コイル44の非通電時に磁性体46と当接してリレー可動子42の変位を阻止するストッパ部41Dとにより構成されている。基部41Aのうち一対の接点支持部41Bの間、および、ストッパ部41Dと接点支持部41Bの間には、それぞれ絶縁体41E,41Fが設けられている。
一対の接点支持部41Bのうち操作コイル44に近い側となる一方の接点支持部41Bには、制御接点29が設けられている。一方、操作コイル44から遠い側となる他方の接点支持部41Bには、短絡接点30が設けられている。これにより、固定接点34となる制御接点29と短絡接点30とが離間して設けられる構成となっている。
リレー可動子42は、リレー固定子41の接点支持部41Bの間に配置される接点支持部42Aと、ばね43とストッパ部41Dとの間に位置してばね43の他端が取付けられると共に磁性体46が設けられるばね取付部42Bと、接点支持部42Aとばね取付部42Bとの間を連結する連結部42Cとにより構成されている。接点支持部42Aには、可動接点31が設けられ、これにより、可動接点31を制御接点29と短絡接点30との間に設ける構成となっている。
ばね43は、リレー固定子41のばね取付部41Cとリレー可動子42のばね取付部42Bとの間に設けられ、ばね取付部41C,42B同士に互いに離れる方向の弾性力を付与するものである。即ち、ばね43は、リレー可動子42を、可動接点31と短絡接点30とが接続する方向に押付ける(付勢する)ものである。
操作コイル44は、リレー固定子41の基部41Aのうちばね取付部41Cとストッパ部41Dとの間に設けられている。操作コイル44は、通電による起磁力とヨーク45に発生した磁力により、リレー可動子42を、ばね43のばね力に打ち勝って可動接点31と制御接点29とが接続(接触)する方向に変位させる(動かす)ものである。即ち、操作コイル44の通電に伴ってヨーク45に発生する磁力により磁性体46が吸引される構成となっている。これにより、可動接点31は、操作コイル44への通電時に磁性体46に導かれることにより制御接点29と接触し、非通電時にはばね43のばね力により短絡接点30と接触する構成となっている。
第2の実施の形態は、上述の如き操作コイル44への通電に基づいて磁性体46を吸引する(吸引力を発生させる)ことにより可動接点31と制御接点29とを接続する(制御ONとする)もので、その基本的作用については、上述した第1の実施の形態によるものと格別差異はない。
特に、第2の実施の形態では、操作コイル44への通電に基づいて操作コイル44(のヨーク45)と磁性体46との間に吸引力が発生する構成としているため、この吸引力に基づいて接点(制御接点29、短絡接点30)の切換えを安定して行うことができる。
次に、図7は第3の実施の形態を示している。第3の実施の形態の特徴は、制御接点の容量を短絡接点の容量よりも大きくしたことにある。なお、第3の実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図7において、51は制御接点を示し、52は短絡接点を示している。この場合、制御接点51の容量は、短絡接点52の容量よりも大きくしている。逆に言えば、短絡接点52の容量を制御接点51の容量よりも小さくしている。これにより、必要容量よりも大きな接点をもつことによるコストの増大を抑え、接点の容量の適正化を図っている。
即ち、制御接点51は、インバータ3からアクチュエータ2(のコイル部材15)に対して乗り心地向上、操縦安定性向上の制御に必要な電量を流す必要がある。このような制御ON時においては、操縦安定性向上の制御等を行っているときに、アクチュエータ2がほぼ固定状態となる場合がある。この場合、特定の相のコイル15A,15B,15Cに集中して電流が流れる状況があるため、制御接点51は、それらを考慮した接点容量とする必要がある。
一方、短絡接点52は、アクチュエータ2の逆起電力による電流のみであり、アクチュエータ2がストロークした場合に逆起電力で発生する電流であることから、正負に繰り返す電流となる。また、制御ON時(通電制御時)とは異なり、特定の相のコイル15A,15B,15Cに集中して電流が流れる状況がない。即ち、アクチュエータ2の固定状態では逆起電力が発生しないため、特定の相のコイル15A,15B,15Cに集中して電流は流れない。そこで、本実施の形態では、制御接点51を短絡接点52よりも大きな接点容量としている。
第3の実施の形態は、上述の如き容量の大きな制御接点51と容量の小さな短絡接点52とを有する構成としたもので、その基本的作用については、上述した第1の実施の形態によるものと格別差異はない。
特に、第3の実施の形態では、制御接点51の容量を、短絡接点52の容量よりも大きい構成としている。このため、短絡時と比較して大きな電流を流す制御時の制御接点51による損失が減り、また、制御接点51が故障するリスクを低減することができる。これにより、リレー27,28の安全性、信頼性を向上することができる。また、制御接点51と短絡接点52の容量を適正化することができ、リレー27,28のコストの低減を図ることができる。
次に、図8および図9は第4の実施の形態を示している。第4の実施の形態の特徴は、リレーの接点切換えを行うときに各相のコイルに流れる電流を零アンペアにすることにある。なお、第4の実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
リレー27,28は、ON/OFFするタイミング、即ち、可動接点31と制御接点29とが接触するタイミングまたは非接触となるタイミングによって、リレー27,28の寿命を縮める、または、溶着するおそれがある。具体的には、リレーをON/OFFするとき(切換えるとき)に、そのタイミングによっては(そのときの電流によっては)、制御接点29でアーク放電が発生するおそれがある。交流電流が流れている場合は、電流が正負に変動するため、電流値が零近傍でアーク放電は消失する。しかし、直流が流れている場合、アーク放電が消滅するまでの接点間距離を確保するまでアーク放電が続き、その間に接点を損傷するおそれがある。
電磁式サスペンション装置1の場合、走行条件や制御規則によっては、アクチュエータ2の特定の相のコイル15A,15B,15Cに電流を集中して流す場合があり、この場合は、リレー27,28にとって直流電流が連続して流れる状態と同視することができる。この場合に、リレー27,28のON/OFF(切換え)と重なると、リレー27,28の損傷を早め、寿命を縮めるおそれがある。そこで、本実施の形態では、リレー27,28の接点切換えを行うとき、即ち、可動接点31が制御接点29と接触するとき(接触し始めるとき)、および、非接触となるとき(離間し始めるとき)は、各相のコイル15A,15B,15Cに流れる電流を零アンペア(0A)にする構成としている。
ここで、図8は、電流指令のブロック図である。演算部7からインバータ3(の制御部)に出力される電流指令を補正前の電流指令とすると、インバータ3(の制御部)では、図8に示す補正部61により、ゲインKを用いてアクチュエータ2(のコイル部材15)に実際に通電する電流指令、即ち、補正後の電流指令をつくる。図9は、制御ON/OFF信号と、ゲインKと、補正前の電流指令と、補正後の電流指令と、リレー27,28の状態との時間変化の一例を示す特性線図(時刻歴波形)である。図9に示すように、補正前の電流指令は、制御ON/OFFに拘わらず、演算部7からインバータ3に出力される。また、制御OFF時は、ゲインKは零固定であり、補正後の電流指令は零となる。
ここで、制御ON/OFF信号がOFFからONに変わると、各リレー27,28を短絡接点30から制御接点29に切換え、ゲインKをΔtの間に零から1にする。これにより、短絡接点30から制御接点29に切換えるときの電流を零アンペア(0A)にすることができ、接点切換え後の電流通電を緩やかにすることが可能となる。これにより、接点切換え時のリレー27,28の接点負荷を最小とすることができ、接点の長寿命化、信頼性向上を図ることができる。
ゲインKは、制御OFF時は必ず零とし、リレー27,28を短絡から制御に切換えた後、ゲインKを零から1にする。本実施の形態では、ゲインKを零から1に直線的に(線形で)変化させた場合を例に挙げたが、これに限らず、例えば、別の関数や規則性をもたせてもよい。
一方、制御ON/OFF信号がONからOFFに変わると、ゲインKを1から零に落し、リレー27,28を制御接点29から短絡接点30へと切換える。特に、制御接点29は、特定の相のコイル15A,15B,15Cに集中して電流が流れる場合があり、この場合、リレー27,28にとっては、直流電流が連続して流れる状態と同等となる。このとき、リレー27,28を制御接点29から短絡接点30に切換えた場合、アーク放電が長時間続くおそれがある。これに対し、本実施の形態では、制御ON/OFF信号がONからOFFに変わると、ゲインKを瞬時に零とし、ゲインKを零とした後、リレー27,28を制御接点29から短絡接点30に切換える。これにより、制御接点29から短絡接点30に切換えるときの電流を零アンペアにすることができ、接点の保護、長寿命化、信頼性向上を図ることができる。
第4の実施の形態は、上述の如き補正部61により電流が零アンペアの状態で接点29,30の切換えを行う構成としたもので、その基本的作用については、上述した第1の実施の形態によるものと格別差異はない。
特に、第4の実施の形態では、リレー27,28の接点切換えを行うときは、各相のコイル15A,15B,15Cに流れる電流を零アンペア(0A)にする構成としている。このため、リレー27,28の接点29,30を切換えるときに、リレー27,28に電流が流れないようにでき、リレー27,28の接点29,30,31への負荷を最小限にすることができる。これにより、リレー27,28の長寿命化、信頼性の向上を図ることができる。
なお、上述した第4の実施の形態では、制御ON/OFF信号がOFFとなった場合に、ゲインKを零としてからリレー27,28を制御接点29から短絡接点30に切換える構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、演算部7やさらに上位の車両側の制御装置(ECU、コントロールユニット)から非常停止信号や緊急停止信号等の異常信号を受信した場合や、瞬時にインバータ3からアクチュエータ2への通電を遮断する信号等を受信した場合に、ゲインKを零としてからリレー27,28を制御接点29から短絡接点30に切換える構成としてもよい。
上述した第4の実施の形態では、電流指令にゲインKを乗算する補正計算を、インバータ3(の制御部)で行う(補正部61をインバータ3に設ける)構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、演算部7で補正計算を行う(演算部7に補正部61を設ける)構成としてもよい。また、インバータ3は、演算部7から制御ON/OFF信号を受信後にインバータ3(の制御部)で演算してもよいか否かの判定基準を設け、その判定基準に沿ってリレー27,28の切換えを行う構成としてもよい。
上述した第1の実施の形態では、固定接点34側(制御接点29および短絡接点30側)となるリレー固定子35に操作コイル38を設け、可動接点31側となるリレー可動子36に磁性体40を設ける構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、固定接点側(制御接点および短絡接点側)となるリレー固定子に磁性体を設け、可動接点側となるリレー可動子に操作コイルを設ける構成としてもよい。このことは、他の実施の形態についても同様である。
上述した各実施の形態では、リニア電磁式アクチュエータ2を、内筒に対応するロッド16に設けられたコイル部材15(コイル15A,15B,15C)と、外筒に対応するアウタチューブ22に設けられた永久磁石26(磁性部材)とにより構成した場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、外筒に設けられたコイル(コイル部材)と、内筒に設けられた永久磁石(磁性部材)とによりリニア電磁式アクチュエータを構成してもよい。即ち、リニア電磁式アクチュエータは、内筒または外筒の一方の部材に設けられたコイル部材と、他方の部材に設けられた磁性部材とにより構成することができる。
上述した各実施の形態では、固定子11を車両のばね上部材(例えば車体側)に取付けると共に、可動子12を車両のばね下部材(例えば車輪側)に取付ける構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、固定子を車両のばね下部材に取付けると共に、可動子を車両のばね上部材に取付ける構成としてもよい。
上述した各実施の形態では、電磁式サスペンション装置1を縦置き状態で自動車等の車両に取付ける構成とした場合を例に挙げて説明したが、これに限らず、例えば、電磁式サスペンション装置を横置き状態で鉄道車両等の車両に取付ける構成としてもよい。
上述した各実施の形態では、電磁式サスペンション装置1を車両に取付ける構成とした場合を例に挙げて説明したが、これに限らず、例えば、振動源となる種々の機械、建築物等に用いる電磁式サスペンション装置に用いてもよい。
さらに、上述した各実施の形態では、横断面形状が円形のリニアモータ、即ち、固定子11および可動子12を円筒状に形成した場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、横断面形状がI字状(平板状)や矩形状、H字状のリニアモータ等、横断面形状が円形以外の筒状のリニアモータにより構成してもよい。
以上の実施の形態によれば、電磁式サスペンション装置の安全性、信頼性を向上することができる。
即ち、実施の形態によれば、各リレーは、制御手段(インバータ)の出力部と接続する制御接点と3相のコイルを短絡させる短絡接点の何れかしか接続できない構成としている。このため、各リレーは、制御接点または短絡接点に切換えることにより、制御手段と3相コイル間で、導通・非導通の切換えが可能となる。これにより、例えばリレーの制御接点または短絡接点が溶着故障した場合や操作コイルが断線したときにおけるリレー動作不能状態においても、制御手段の出力部同士が短絡することを阻止できる。この結果、リレー動作不能状態でも、過電流による発熱等のリスクを低減することができ、電磁式サスペンション装置の安全性、信頼性を向上することができる。
しかも、リレー動作不能状態では、制御手段の指令通りの電気角で3相のコイルに電流が流れないことを、制御手段(例えば制御手段に設けられたセンサ)で検知することができる。このため、リレーの動作確認用に新たなセンサやロジックを追加して設ける必要がなくなりコストを低減できることに加えて、制御手段やリニア電磁式アクチュエータの信頼性を向上することができる。さらに、3相分の動力線の制御と短絡の切換えを2つのリレーで行うことが可能となり、例えば3つのリレーを有する構成と比較して、電磁式サスペンション装置全体の小型化と部品点数の削減によるコスト低減、故障の低減、信頼性の向上が可能となる。
一方、各リレーの可動接点は、操作コイルへの通電時に該操作コイルが発生する磁力に基づいて固定接点となる制御接点と接触し、非通電時にばねのばね力に基づいて固定接点となる短絡接点と接触する。このため、操作コイルの非通電時は、3相の動力線が短絡(3相のコイルが短絡)し、リニア電磁式アクチュエータの発電力によって発生する減衰力(抵抗力)によって車両の走行を可能とすることができる。操作コイルの通電時は、3相コイルと制御手段との間が接続され、制御手段によりリニア電磁式アクチュエータへの通電を制御することにより、車両の乗り心地と操縦安定性を向上させる制御を行うことができる。
ここで、リレーが故障した場合を考える。例えば、操作コイルの通電時に制御手段(インバータ)とリニア電磁式アクチュエータ(のコイル)との間に大電流が流れることにより制御接点が溶着した場合を考える。この場合は、制御手段による制御を行うときの通電は可能である。一方、操作コイルを非通電とすると、可動接点が制御接点から短絡接点に変化しないため、リレーが故障した相は短絡することができない。しかし、この場合は、3相のうちの2相の減衰力で車両の走行が可能となる。これにより、リレーが故障した場合(制御接点が溶着した場合)にも、安全性、信頼性を確保することができる。
次に、操作コイル非通電時にリニア電磁式アクチュエータ(のコイル)の逆起電力が大きく発生することにより短絡接点が溶着した場合、または、リレーの操作コイルの断線、故障に伴う短絡接点維持状態の場合を考える。この場合は、制御手段(インバータ)による制御を行わない制御OFFのときは、短絡接点を経由するリニア電磁式アクチュエータの逆起電力に応じた減衰力の発生は可能である。一方、制御手段による制御を行う制御ONのときは、可動接点が短絡接点から制御接点に変化しないため、制御接点への導通が不可能になる。しかし、この場合は、制御手段の出力部を短絡した故障状態を回避することができるため、過電流による発熱を抑制することができる。これにより、リレーが故障した場合(短絡接点が溶着した場合、短絡接点維持状態の場合)にも、安全性、信頼性を確保することができる。
実施の形態によれば、リレーは、リニア電磁式アクチュエータに内蔵する構成としている。このため、制御手段とリニア電磁式アクチュエータとの間でケーブルが断線した場合にも、リニア電磁式アクチュエータに内蔵されたリレーの操作コイルを非通電とすることにより3相のケーブルを短絡させ、リニア電磁式アクチュエータに減衰力(抵抗力)を発生させることができる。これにより、この面からも、電磁式サスペンション装置の安全性、信頼性を向上することができる。
実施の形態によれば、制御接点の容量は、短絡接点の容量よりも大きい構成としている。このため、短絡時と比較して大きな電流を流す制御時の制御接点による損失が減り、また、制御接点が故障するリスクを低減することができる。これにより、リレーの安全性、信頼性を向上することができる。また、制御接点と短絡接点の容量を適正化することができ、リレーのコストの低減を図ることができる。
実施の形態によれば、リレーの接点切換えを行うときは、各相のコイルに流れる電流を零アンペアにする構成としている。このため、リレーの接点を切換えるときに、リレーに電流が流れないようにでき、リレーの接点への負荷を最小限にすることができる。これにより、リレーの長寿命化、信頼性の向上を図ることができる。