JP2015158424A - トリチウム水の処分方法および処分施設 - Google Patents
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Abstract
【課題】トリチウム水を迅速かつ経済的に安定化処理することのできるトリチウム水の処分方法および処分施設を提供する。【解決手段】トリチウム水をハイドレート化してステップS1、海底(水中または海中)に定置処分する方法であるステップS2。また、水中または海中に設けられ、トリチウム水のハイドレートを圧力5MPa以上、かつ、温度10℃以下として定置させる処分施設である。【選択図】図1
Description
本発明は、放射性物質であるトリチウムを含有するトリチウム水の処分方法および処分施設に関し、特に、トリチウム水を困難な分離処理などによらずして、そのまま安定化処理して処分することのできるトリチウム水の処分方法および処分施設に関するものである。
従来、放射性物質であるトリチウムを含有するトリチウム水(HTO、T2O)は、水(H2O)との分離処理を迅速に行うことは困難であった(例えば、特許文献1を参照)。また、トリチウム水を安定化処理するために、凝固点以下に冷却して固体化する方法があるが、凝固点以下(すなわち氷点以下)に維持するためには多大な冷却エネルギーを必要とする。
一方、不測の事故等によって、原子力発電所などの原子力施設から多量のトリチウム水が継続的に発生する場合がある。このような場合には、環境保全などの見地から、現実的で実効性のある迅速な対応が強く求められ、迅速性が確保できない分離処理や、多大な冷却エネルギーを必要とする固体化処理によらずして、トリチウム水を迅速かつ経済的に安定化処理できる方法を適用することが望ましい。このため、トリチウム水を迅速かつ経済的に安定化処理することのできる技術が求められていた。
他方、水は様々な物質(例えば、メタン、炭酸ガスなど)とガスハイドレートを形成し、氷点以上においても一定の圧力下であれば、安定的に存在することが知られている。また、このことを利用した地球温暖化対策技術として、水に炭酸ガスを混ぜ炭酸ガスを安定的に貯留する技術が知られている。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、トリチウム水を迅速かつ経済的に安定化処理することのできるトリチウム水の処分方法および処分施設を提供することを目的とする。
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るトリチウム水の処分方法は、トリチウム水を処分する方法であって、トリチウム水をハイドレート化して、水中または海中に定置処分することを特徴とする。
また、本発明に係る他のトリチウム水の処分方法は、上述した発明において、トリチウム水とガスを混合してなる混合物をハイドレート化して、これにより得られるガスハイドレートを、該ガスハイドレートが固体として存在可能な所定の圧力範囲および温度範囲の水中または海中に定置処分することを特徴とする。
また、本発明に係る他のトリチウム水の処分方法は、上述した発明において、トリチウム水と炭酸ガスを混合してなる混合物をハイドレート化して、これにより得られるガスハイドレートを、圧力5MPa以上、かつ、温度10℃以下の水中または海中に定置処分することを特徴とする。
また、本発明に係るトリチウム水の処分施設は、トリチウム水の処分施設であって、水中または海中に設けられ、ハイドレート化したトリチウム水が定置されてなることを特徴とする。
また、本発明に係る他のトリチウム水の処分施設は、上述した発明において、トリチウム水とガスを混合してなる混合物をハイドレート化して得られるガスハイドレートが固体として存在可能な所定の圧力範囲および温度範囲の水中または海中に定置されてなることを特徴とする。
また、本発明に係る他のトリチウム水の処分施設は、上述した発明において、トリチウム水と炭酸ガスを混合してなる混合物をハイドレート化して得られるガスハイドレートが圧力5MPa以上、かつ、温度10℃以下の水中または海中に定置されてなることを特徴とする。
本発明に係るトリチウム水の処分方法によれば、トリチウム水を処分する方法であって、トリチウム水をハイドレート化して、水中または海中に定置処分するので、トリチウム水を迅速性が確保できない分離処理や、多大な冷却エネルギーを必要とする固体化処理によらずして、ハイドレート化により固形状態に迅速かつ経済的に安定化処理することで、トリチウム水を固体として水中または海中に貯蔵処分することができるという効果を奏する。
また、本発明に係る他のトリチウム水の処分方法によれば、トリチウム水とガスを混合してなる混合物をハイドレート化して、これにより得られるガスハイドレートを、該ガスハイドレートが固体として存在可能な所定の圧力範囲および温度範囲の水中または海中に定置処分するので、ハイドレート化したトリチウム水を、水中または海中において安定的に固体として存在させることができる。このため、トリチウム水を固体のガスハイドレートとして水中または海中で安定的に貯蔵処分することができるという効果を奏する。
また、本発明に係る他のトリチウム水の処分方法によれば、トリチウム水と炭酸ガスを混合してなる混合物をハイドレート化して、これにより得られるガスハイドレートを、圧力5MPa以上、かつ、温度10℃以下の水中または海中に定置処分するので、炭酸ガスを混合してハイドレート化したトリチウム水を、水中または海中において安定的に固体として存在させることができる。このため、トリチウム水を固体のガスハイドレートとして水中または海中で安定的に貯蔵処分することができるという効果を奏する。
また、本発明に係るトリチウム水の処分施設によれば、トリチウム水の処分施設であって、水中または海中に設けられ、ハイドレート化したトリチウム水が定置されてなるので、迅速性が確保できない分離処理や、多大な冷却エネルギーを必要とする固体化処理によらずして、ハイドレート化により固形状態に迅速かつ経済的に安定化処理したトリチウム水を、固体として水中または海中に貯蔵処分することができるという効果を奏する。
また、本発明に係る他のトリチウム水の処分施設によれば、トリチウム水とガスを混合してなる混合物をハイドレート化して得られるガスハイドレートが固体として存在可能な所定の圧力範囲および温度範囲の水中または海中に定置されてなるので、ハイドレート化したトリチウム水を、水中または海中において安定的に固体として存在させることができる。このため、トリチウム水を固体のガスハイドレートとして水中または海中で安定的に貯蔵処分することができるという効果を奏する。
また、本発明に係る他のトリチウム水の処分施設によれば、トリチウム水と炭酸ガスを混合してなる混合物をハイドレート化して得られるガスハイドレートが圧力5MPa以上、かつ、温度10℃以下の水中または海中に定置されてなるので、炭酸ガスを混合してハイドレート化したトリチウム水を、水中または海中において安定的に固体として存在させることができる。このため、トリチウム水を固体のガスハイドレートとして水中または海中で安定的に貯蔵処分することができるという効果を奏する。
以下に、本発明に係るトリチウム水の処分方法および処分施設の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
図1に示すように、本発明に係るトリチウム水の処分方法は、トリチウム水を処分する方法であって、トリチウム水をハイドレート化して(ステップS1)、海底(水中または海中)に定置処分するものである(ステップS2)。
この方法によって、本発明に係るトリチウム水の処分施設を構築することが可能である。その概略手順について説明すると、例えば図2に示すように、地上1に立地する原子力施設2から発生するトリチウム水を、地上1に設けた図示しない処理設備においてハイドレート化して固形物とした後、この固形物を船舶3に積載して沖合の海域4に運搬し、海中5に投入することによって海域4の海底6に本発明の処分施設10を構築する。
ここで、トリチウム水をハイドレート化する方法としては、トリチウム水をガス(例えば炭酸ガス)と混合し、この混合物に対して圧縮処理と微冷却処理(例えば凍らない程度の温度5℃程度に冷却)とを施すことにより、トリチウム水をハイドレート化する方法を適用することができる。なお、この方法は、従来の水に炭酸ガスを混ぜ炭酸ガスを安定的に貯留するという地球温暖化対策技術を応用している。すなわち、この方法では固定化したい物質を炭酸ガスではなく、トリチウム水としている。このような方法によってトリチウム水を含有するガスハイドレート(クラスレートあるいは気体包摂化合物ともいう)が得られる。
ガスハイドレートは、内部の空隙にゲスト分子を閉じ込めた水分子の大小のかごからなる結晶体であり、例えば図3の(1)〜(3)に例示される結晶構造のものが知られている。なお、図3の(1)は5角形12面体のかご、(2)は5角形12面+6角形2面の14面体のかごの例である。ガスハイドレートの構造は、主にかごの中に閉じ込められたゲスト分子の種類によって変化する。二酸化炭素やメタンなどの小さい分子から作られるハイドレートは、図3(3)に示すような構造をとる。図3(3)における○は水分子の酸素原子を表し、水素結合によってかごが構成される。このかごの中に、ハッチングで示した大きい○のゲスト分子が閉じ込められる。
このガスハイドレートは、低温、高圧の条件下で固体(固形状物)として存在することが知られている。したがって、ガスハイドレートの温度および圧力を維持するように管理すれば、固体の状態を安定的に保持することができる。
図4は、ガスハイドレートの安定領域を模式的に示したものである。図中、相平衡曲線の左上側の斜線部で示される領域が、ガスハイドレートが固体の状態で安定して存在する安定領域である。点Q1は水の固液相境界を通り、点Q2は炭化水素あるいは二酸化炭素の気液相境界を通る。
表1に、各種ガスによって作られるガスハイドレートの特性値(点Q1とQ2の温度・圧力・分子量)を示す。表1において、TQ1、PQ1はそれぞれ図4の点Q1に対応する温度、圧力を示しており、TQ2、PQ2はそれぞれ図4の点Q2に対応する温度、圧力を示している。
図4に示すように、点Q2よりも高圧かつ低温であれば、ハイドレートとして存在できることがわかる。例えば、炭酸ガス(CO2)をハイドレート化する場合には、表1によれば、およそ4.5MPa以上の圧力、かつ、10℃以下の温度であれば安定的なハイドレートを得られることがわかる。また、表1によれば、エタン(C2H6)の方が炭酸ガス(CO2)よりも高温かつ低圧であるが、エタンは可燃性ガスであるため取り扱いが難しく、不燃性ガスの炭酸ガスを用いるのが安定化処理のための媒体として好適である。炭酸ガスを用いる場合には、飽和以上の状態下でトリチウム水に混合してハイドレート化し、これにより得られるハイドレートを高圧の状態(例えば5MPa以上)に保持すればよい。
炭酸ガスは、石炭火力発電所などの二酸化炭素排出源を供給源として用いることが望ましい。このようにすることで、トリチウム水の安定化処理と、温室効果ガスである二酸化炭素の排出量削減という2つの課題を同時に解決することができる。
一方、トリチウム水と炭酸ガスによるハイドレートの密度は約1.13g/cm3となっており、平均的な海水の密度(1.03g/cm3)よりも大幅に大きい。このことから、5MPaで10℃以下の水または海水の中では、トリチウム水と炭酸ガスによるハイドレートは沈降して存在する。したがって、本発明によれば、トリチウム水に含まれるトリチウムを水中または海中に固体として存在させ、これを安定的に水中または海中に貯蔵処分することができる。
図5は、一般的な海水温度と水深の関係を示したものである。図5に示すように、我が国が位置する低緯度海域においては、上部漸深海帯(水深0〜1300m程度)では水温が急激に降下し、下部漸深海帯(水深1300m程度〜)ではさらにゆるやかに下降する。深海帯では水温はほとんど変化せず、水深3000m以深では水温は1.5℃程度で一定になる。なお、低緯度海域では水深200〜1000m付近で水温が急激に変化する温度躍層が存在し、中緯度海域では暑い時期にだけ発生する。高緯度海域では存在しない。
図5の水深と水温の関係によれば、低緯度海域において海水温10℃を下回るには1000m以深の水深であることが求められる。水深1000mの水圧は10MPaであるので、この水深は炭酸ガスのガスハイドレートが固体として存在するのに必要な圧力(4.5MPa以上)を満たしている。したがって、ガスハイドレートを1000m以深の10MPa以上の被圧空間に移送すれば、海水との密度差によりガスハイドレートは海中を沈降し、海底まで落下してより深い方へと堆積していく。こうすることで、トリチウム水を含むガスハイドレートを固体として海溝部や海盆部に安定的に貯蔵処分することができる。
このように、本発明によれば、不測の事故等により原子力施設などで継続的に発生する大量のトリチウム水をハイドレート化し、所定の圧力以上、かつ、所定の温度以下の水中または海中などの被圧空間に保持することで、これを安定的な状態で貯蔵保管することが可能である。また、本発明によれば、トリチウム水を迅速性が確保できない分離処理や、多大な冷却エネルギーを必要とする固体化処理に比べて、迅速かつ経済的に安定化処理することができる。
以上説明したように、本発明に係るトリチウム水の処分方法によれば、トリチウム水を処分する方法であって、トリチウム水をハイドレート化して、水中または海中に定置処分するので、トリチウム水を迅速性が確保できない分離処理や、多大な冷却エネルギーを必要とする固体化処理によらずして、ハイドレート化により固形状態に迅速かつ経済的に安定化処理することで、トリチウム水を固体として水中または海中に貯蔵処分することができる。
また、本発明に係る他のトリチウム水の処分方法によれば、トリチウム水とガスを混合してなる混合物をハイドレート化して、これにより得られるガスハイドレートを、該ガスハイドレートが固体として存在可能な所定の圧力範囲および温度範囲の水中または海中に定置処分するので、ハイドレート化したトリチウム水を、水中または海中において安定的に固体として存在させることができる。このため、トリチウム水を固体のガスハイドレートとして水中または海中で安定的に貯蔵処分することができる。
また、本発明に係る他のトリチウム水の処分方法によれば、トリチウム水と炭酸ガスを混合してなる混合物をハイドレート化して、これにより得られるガスハイドレートを、圧力5MPa以上、かつ、温度10℃以下の水中または海中に定置処分するので、炭酸ガスを混合してハイドレート化したトリチウム水を、水中または海中において安定的に固体として存在させることができる。このため、トリチウム水を固体のガスハイドレートとして水中または海中で安定的に貯蔵処分することができる。
また、本発明に係るトリチウム水の処分施設によれば、トリチウム水の処分施設であって、水中または海中に設けられ、ハイドレート化したトリチウム水が定置されてなるので、迅速性が確保できない分離処理や、多大な冷却エネルギーを必要とする固体化処理によらずして、ハイドレート化により固形状態に迅速かつ経済的に安定化処理したトリチウム水を、固体として水中または海中に貯蔵処分することができる。
また、本発明に係る他のトリチウム水の処分施設によれば、トリチウム水とガスを混合してなる混合物をハイドレート化して得られるガスハイドレートが固体として存在可能な所定の圧力範囲および温度範囲の水中または海中に定置されてなるので、ハイドレート化したトリチウム水を、水中または海中において安定的に固体として存在させることができる。このため、トリチウム水を固体のガスハイドレートとして水中または海中で安定的に貯蔵処分することができる。
また、本発明に係る他のトリチウム水の処分施設によれば、トリチウム水と炭酸ガスを混合してなる混合物をハイドレート化して得られるガスハイドレートが圧力5MPa以上、かつ、温度10℃以下の水中または海中に定置されてなるので、炭酸ガスを混合してハイドレート化したトリチウム水を、水中または海中において安定的に固体として存在させることができる。このため、トリチウム水を固体のガスハイドレートとして水中または海中で安定的に貯蔵処分することができる。
以上のように、本発明に係るトリチウム水の処分方法および処分施設は、放射性物質であるトリチウムを含有するトリチウム水の処分に有用であり、特に、迅速性が確保できない分離処理や、多大な冷却エネルギーを必要とする固体化処理によらずして、トリチウム水を迅速かつ経済的に安定化処理して処分するのに適している。
1 地上
2 原子力施設
3 船舶
4 海域
5 海中
6 海底
10 トリチウム水の処分施設
2 原子力施設
3 船舶
4 海域
5 海中
6 海底
10 トリチウム水の処分施設
Claims (6)
- トリチウム水を処分する方法であって、
トリチウム水をハイドレート化して、水中または海中に定置処分することを特徴とするトリチウム水の処分方法。 - トリチウム水とガスを混合してなる混合物をハイドレート化して、これにより得られるガスハイドレートを、該ガスハイドレートが固体として存在可能な所定の圧力範囲および温度範囲の水中または海中に定置処分することを特徴とする請求項1に記載のトリチウム水の処分方法。
- トリチウム水と炭酸ガスを混合してなる混合物をハイドレート化して、これにより得られるガスハイドレートを、圧力5MPa以上、かつ、温度10℃以下の水中または海中に定置処分することを特徴とする請求項2に記載のトリチウム水の処分方法。
- トリチウム水の処分施設であって、
水中または海中に設けられ、ハイドレート化したトリチウム水が定置されてなることを特徴とするトリチウム水の処分施設。 - トリチウム水とガスを混合してなる混合物をハイドレート化して得られるガスハイドレートが固体として存在可能な所定の圧力範囲および温度範囲の水中または海中に定置されてなることを特徴とする請求項4に記載のトリチウム水の処分施設。
- トリチウム水と炭酸ガスを混合してなる混合物をハイドレート化して得られるガスハイドレートが圧力5MPa以上、かつ、温度10℃以下の水中または海中に定置されてなることを特徴とする請求項5に記載のトリチウム水の処分施設。
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