JP2015151732A - 周方向プレストレス導入方法及び装置、並びに鉄筋コンクリート体 - Google Patents
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Abstract
Description
例えば特許文献1では、螺旋状のフープ筋(剪断補強筋)を自然状態よりも大径になるように捩り力を付与した状態でコンクリートを打設し、コンクリートの硬化後に捩り力を解除している。これによって、コンクリートに外側から内側へのプレストレスが導入される。
非特許文献1の工法は、鋼製型枠が重いため、大掛かりな重機が必要である。また、鋼製型枠の加工が容易でなく、突発的な計画変更に柔軟に対応するのが困難である。さらに、コンクリートの打設面に引っ張り装置のボルト用のボルト孔が残ってしまう。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、コンクリート打設型枠が大掛かりにならず、コンクリート打設面に影響を与えることがなく、更に好ましくは種々の鉄筋コンクリート体に柔軟に適用できる周方向プレストレス導入工法を提供することを目的とする。
前記主筋と同方向に延びる反力受け部材を前記鉄筋コンクリート体の内側部に当たる位置に配置し、
前記反力受け部材と交差する内外方向に伸長可能に延びる押し部材の内端部を前記反力受け部材に当て、かつ前記押し部材の外端部を前記剪断補強筋に当て、さらに前記押し部材を伸長させることによって前記剪断補強筋を外方向に押して前記剪断補強筋を緊張させ、
この緊張状態で、前記コンクリートを打設し、
その後、前記反力受け部材を前記同方向に引き抜いて撤去することを特徴とする。
撤去によって押し部材の内端部が解放される。これによって、コンクリートの周方向にプレストレスを導入することができる。
前記コンクリートの内側部には、前記主筋と同方向に延びる空洞又は充填剤からなる反力受け跡が形成され、
かつ前記コンクリートには、前記反力受け跡と交差する内外方向に延びるとともに前記コンクリートが無ければ前記内外方向に伸縮可能な押し部材が埋設され、前記押し部材の内端部が前記反力受け跡に臨み、かつ前記押し部材の外端部が前記剪断補強筋に当てられ、
前記剪断補強筋が、前記押し部材との当たりによって引張応力を付与されていることを特徴とする。
これによって、コンクリートの周方向にプレストレスを導入することができる。
前記コンクリートの内側部に前記主筋と同方向に延びるように配置されるとともに、前記同方向に引き抜き可能な直線状の剛性材からなる反力受け部材と、
前記反力受け部材から放射状に延びる複数の押し部材と、
を備え、各押し部材は、内端部が前記反力受け部材に当たり、かつ外端部が前記剪断補強筋に当たり、かつ伸長可能であることを特徴とする。
各押し部材を伸長させることによって、剪断補強筋に引張応力(緊張力)を付与できる。そして、コンクリートを打設、硬化後、反力受け部材を引き抜いて撤去することで、コンクリートの周方向にプレストレスを導入することができる。当該周方向プレストレス導入装置は、鉄筋コンクリート体の内側部から剪断補強筋を緊張させるものであるから、コンクリート打設用型枠には上記緊張用の装置を設ける必要が無く、コンクリート打設用型枠を簡易に構成できる。また、コンクリートの打設面に緊張用のボルト孔等が出来ることもない。
これによって、周方向プレストレス導入装置を簡易に構成できる。例えば、押し軸として、ねじ鉄筋を用いることができる。ねじ鉄筋を適宜な大きさに切断することによって、所要長さの押し軸を得ることができる。
各保持部材における前記中心孔を挟んで180°対向する位置には一対の筒部が設けられ、かつ各筒部の筒軸が、これら筒部の対向方向に向けられており、各筒部に、対応する1の押し部材の内端部がスライド可能に保持されていることが好ましい。
これによって、一組の押し部材を一直線に配置するとともに、他の一組の押し部材を一直線に配置し、かつこれら二組の押し部材どうしの角度を調節することができる。これによって、鉄筋コンクリート体の種々の縦横寸法比に柔軟に対応することができる。
これによって、一対の保持部材を分離可能かつ角度調節可能に嵌合させることができる。
図1〜図8は、本発明の第1実施形態を示したものである。図1及び図2に示すように、鉄筋コンクリート体1は、例えばビル等の鉄筋コンクリート構造物の柱を構成している。鉄筋コンクリート体1は、コンクリート10と、このコンクリート10に埋設された複数の主筋11,11…及び複数の剪断補強筋12,12…を含み、鉛直方向(図1の紙面と直交する方向)に延びている。主筋11,11…は、それぞれ鉛直に延びるとともに、互いに鉄筋コンクリート体1の周方向に間隔を置いて平行に並べられている。剪断補強筋12,12…は、それぞれ四角形の環状に形成されて複数の主筋11,11…と交差するとともに、互いに鉛直方向に間隔を置いて並べられている。各剪断補強筋12は、4つの直線部12aと、4つの折曲部12cとを含む。
なお、鉄筋コンクリート体1は、プレキャストであってもよく、場所打ちにて構成されていてもよい。
なお、周方向プレストレス導入部材4は、鉄筋コンクリート体1における必ずしもすべての剪断補強筋12ごとに設けられている必要はなく、一部の剪断補強筋12とだけ対応するように設けられていてもよい。
なお、保持穴32aの断面形状が全周に亘る円形状であってもよい。
なお、保持穴42aの断面形状が全周に亘る円形状であってもよい。
<反力受け部材建て込み工程>
鉄筋コンクリート体1の内側部(好ましくは水平断面内の中央部)に当たる位置に反力受け部材3を鉛直に設置する。
また、一対の保持部材30,40どうしを嵌め合わせる。すなわち、上側保持部材30の係止凸部33を下側保持部材40の切り欠き部44に差し入れた後、保持部材30,40どうしを相対回転させて、係止凸部33を案内溝43aに挿入する。これによって、係止凸部33と案内リム43とが引っ掛かることで、保持部材30,40どうしの分離が阻止される。この保持部材30,40の中心孔31c,41cに反力受け部材3を挿通することで、保持部材30,40を反力受け部材3の外周に取り付ける。この保持部材取付作業は、反力受け部材3の建て込み前に予め行なってもよく、反力受け部材3の建て込み後に行なってもよい。
さらに、各筒部32,42の連通穴32b,42cに当接軸24を挿入するとともに、各筒部32,42の保持穴32a,42aに押し軸21の内端部を嵌め込む。押し軸21は、ねじ鉄筋を所定の長さに切断することで簡易に作製できる。保持部材30,40への当接軸24及び押し軸21の取り付けは、施工性を考慮して、保持部材30,40を反力受け部材3に設置した後に行なうことが好ましいが、保持部材30,40を反力受け部材3に設置する前に行ってもよい。
次いで、各押し部材20の押し当て部22bの先端部を、対応する主筋11と剪断補強筋12の折曲部12cとの間に挿し入れ、押し当て部22bを剪断補強筋12に当接する。
続いて、4つの押し部材20について、それぞれナット23を締め付けて、当接部22を押し軸21の外端方向へ押し動かす。これによって、各押し部材20の全長が伸長し、剪断補強筋12の折曲部12cが外方向へ強く押されることによって、剪断補強筋12が緊張され、剪断補強筋12に引張応力が付与される。このとき、押し軸21の内端部が当接軸24を介して反力受け部材3に突き当たることによって、剪断補強筋12の外方向への押し力に対する反力を得ることができる。ナット23の締め付けによって、主筋11に影響を与えることなく、剪断補強筋12のみを押し拡げることができるから、トルク管理を容易に行なうことができる。
以上の作業を複数の剪断補強筋12の各々に対して行なう。
上記のように各剪断補強筋12を周方向プレストレス導入装置2にて緊張させた状態で、コンクリート10を打設する。コンクリート打設用の型枠としては、通常程度の剛性があればよく、一般的な堰板にて構成することができる。したがって、型枠の施工が煩雑化することはない。
コンクリート10が硬化した後、反力受け部材3を鉛直上方に引き抜いて撤去する。これによって、反力受け跡13が形成されるとともに、当接軸24が反力受け跡13に臨む。ひいては、押し軸21の内端部が解放されて、上記剪断補強筋12の緊張力に対する反力が解除される。これによって、コンクリート10に周方向プレストレスを導入できる。この結果、鉄筋コンクリート体1の曲げ耐力及び剪断耐力を向上できる。さらに、周方向プレストレス導入装置2は鉄筋コンクリート体1の内側部から剪断補強筋12を緊張させるものであるから、コンクリート10の打設面は通常のRC構造の打設面と変わらず、打設面に緊張用のボルト孔等の余計な孔が出来ることもない。
<充填工程>
図9に示すように、反力受け部材3の撤去工程の後、撤去によって形成された空洞13を充填剤で埋めてもよい。充填剤としては、モルタルを用いることができる。したがって、この場合、充填剤によって反力受け跡14が構成される。押し軸21の内端部は、当接軸24を介して充填剤からなる反力受け跡14に臨む。
例えば、当接部が、押し軸の内端部に内外方向へ移動可能に設けられ、反力受け部材に当たっていてもよい。この当接部をナットによって押し軸の内端側へ押し動かすことで、押し部材を伸長させることにしてもよい。
周方向プレストレス導入装置2の押し部材20の数は、4つに限られず、2つ又は3つでもよく、5つ以上でもよい。
押し部材20の外端部が、剪断補強筋12の折曲部12cにではなく直線部12aに当接していてもよい。
押し部材20の当接部とナットが一体になっていてもよい。
押し部材20が伸縮ロッドを含んでいてもよい。
押し軸21の内端部が直接的に反力受け部材3に当たるようにしてもよい。したがって、押し軸21の内端部が直接的に反力受け跡13,14に臨むようにしてもよく、当接軸24を省略してもよい。
複数の押し部材20の内端部が互いに1つの保持部材にて保持されていてもよい。保持部材30,40が一体になっていてもよい。
鉄筋コンクリート体1は、鉄筋コンクリート構造物の柱に限られず、梁であってもよい。鉄筋コンクリート体1の断面形状ひいては剪断補強筋12の断面形状は、四角形に限られず、円形、その他の形状であってもよい。本発明の周方向プレストレス導入装置によれば、鉄筋コンクリート体の種々の断面形状に柔軟に対応することができる。
2 周方向プレストレス導入装置
3 反力受け部材
4 周方向プレストレス導入部材
5 内端保持手段
10 コンクリート
11 主筋
12 剪断補強筋
13,14 反力受け跡
20 押し部材
21 押し軸
21a 雄ネジ部
22 当接部
23 ナット
30 上側の保持部材
31c 中心孔
32 筒部
33 係止凸部
40 下側の保持部材
41c 中心孔
42 筒部
43 案内リム
Claims (6)
- 複数の主筋と、これら主筋と交差する環状の剪断補強筋と、コンクリートを含む鉄筋コンクリート体の周方向にプレストレスを導入する周方向プレストレス導入方法であって、
前記主筋と同方向に延びる反力受け部材を前記鉄筋コンクリート体の内側部に当たる位置に配置し、
前記反力受け部材と交差する内外方向に伸長可能に延びる押し部材の内端部を前記反力受け部材に当て、かつ前記押し部材の外端部を前記剪断補強筋に当て、さらに前記押し部材を伸長させることによって前記剪断補強筋を外方向に押して前記剪断補強筋を緊張させ、
この緊張状態で、前記コンクリートを打設し、
その後、前記反力受け部材を前記同方向に引き抜いて撤去することを特徴とする鉄筋コンクリート体の周方向プレストレス導入方法。 - 複数の主筋と、これら主筋と交差する環状の剪断補強筋と、コンクリートを含む鉄筋コンクリート体であって、
前記コンクリートの内側部には、前記主筋と同方向に延びる空洞又は充填剤からなる反力受け跡が形成され、
かつ前記コンクリートには、前記反力受け跡と交差する内外方向に延びるとともに前記コンクリートが無ければ前記内外方向に伸縮可能な押し部材が埋設され、前記押し部材の内端部が前記反力受け跡に臨み、かつ前記押し部材の外端部が前記剪断補強筋に当てられ、
前記剪断補強筋が、前記押し部材との当たりによって引張応力を付与されていることを特徴とする鉄筋コンクリート体。 - 複数の主筋と、これら主筋と交差する環状の剪断補強筋と、コンクリートを含む鉄筋コンクリート体の周方向にプレストレスを導入する周方向プレストレス導入装置であって、
前記コンクリートの内側部に前記主筋と同方向に延びるように配置されるとともに、前記同方向に引き抜き可能な直線状の剛性材からなる反力受け部材と、
前記反力受け部材から放射状に延びる複数の押し部材と、
を備え、各押し部材は、内端部が前記反力受け部材に当たり、かつ外端部が前記剪断補強筋に当たり、かつ伸長可能であることを特徴とする周方向プレストレス導入装置。 - 前記押し部材が、外周に雄ネジ部を有して前記反力受け部材と交差する内外方向に延びる押し軸と、前記押し軸の外端部又は内端部に前記内外方向へ移動可能に設けられるとともに前記剪断補強筋又は前記反力受け部材に当たる当接部と、前記雄ネジ部に螺合されて前記当接部を前記内外方向に押し動かすナットとを備えたことを特徴とする請求項3に記載の周方向プレストレス導入装置。
- 前記反力受け部材を通す中心孔を有して前記同方向に重ねられるとともに互いに周方向に角度調節可能に嵌め合わされた一対の環状の保持部材を、更に備え、
各保持部材における前記中心孔を挟んで180°対向する位置には一対の筒部が設けられ、かつ各筒部の筒軸が、これら筒部の対向方向に向けられており、各筒部に、対応する1の押し部材の内端部がスライド可能に保持されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の周方向プレストレス導入装置。 - 一方の保持部材における一対の筒部には、それぞれ係止凸部が設けられ、
他方の保持部材における一対の筒部を挟んで両側の外縁には、それぞれL字状の断面を有して前記外縁に沿って延びる案内リムが形成され、
前記係止凸部が、対応する案内リムに着脱可能かつ保持部材の周方向へスライド可能に引っ掛けられることを特徴とする請求項5に記載の周方向プレストレス導入装置。
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渡部 洋ほか: "鉄筋コンクリート柱の損傷に及ぼす横方向プレストレスの影響", コンクリート工学年次論文集, vol. V0l.25, No.2, JPN6017042231, 2003, pages 193 - 198 * |
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