JP2015137361A - 多糖類、多糖類を含む組成物、及び免疫賦活剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】医薬品や健康食品、畜産用や水産用の飼料添加物として、低コストで高い免疫賦活効果を示す組成物の提供。【解決手段】ヒトデ由来で免疫賦活作用を有する構成糖として、少なくともN-アセチル-D-ガラクトサミン、N-アセチル-D-グルコサミン、L-フコース、D-アラビノース、D-マンノース、D-グルコース、及びD-ガラクトースからなる群から選択される1又は複数を含む多糖類、及び、該多糖類を含有する組成物、さらに該多糖類を有効成分とする免疫賦活剤。【選択図】なし
Description
本発明は、ヒトデ由来で免疫賦活作用を有する多糖類、該多糖類を含む組成物、及び該多糖類を有効成分とする免疫賦活剤に関する。
これまで、免疫賦活作用を有する多糖類が多数見出されている。免疫賦活作用を有する多糖に関する技術としては、例えば、酸性ムコ多糖(特許文献1参照)、リポ多糖及びβグルカン(特許文献2参照)、ガゴメ由来の粘性多糖類(特許文献3参照)、L−フコースおよびD−キシロースの他にD−グルクロン酸を主な構成成分とする硫酸化多糖であるアスコフィラン(特許文献4参照)、β−1,3−結合を有するマンナン(特許文献5参照)等が存在する。しかし、免疫賦活作用を有する多糖の多くは、菌類由来又は植物由来であり、動物由来のものは見出されていなかった。
棘皮動物に分類されるヒトデ(ヒトデ綱、及びクモヒトデ綱に属する種を含む。)は、食用には適さない一方で、漁業の邪魔となったり養殖貝やサンゴ等への食害が発生したりという問題があり、有効な活用法が求められてきた。例えば、ヒトデ抽出物を有効成分とする抗原虫組成物(特許文献6参照)、ヒトデ由来の新規トリプシン(特許文献7参照)、ヒトデの抽出物を含有する植物生育促進剤(特許文献8参照)、ヒトデ綱に属する生物からの抽出物に含有されるステロイド配糖体(特許文献9参照)等が挙げられる。
また、本願発明らは、サンゴへの食害が問題となっているオニヒトデ(Acanthaster planci)とマダイとを同じ水槽で飼育することで、マダイの病気が抑制されたことから、オニヒトデが分泌する粘液に動物の免疫を活性化させる成分が含まれていることを見出した(共同通信社、2009年)。
これまでの免疫賦活作用を有する多糖類は、医薬品や健康食品、畜産用や水産用の飼料添加物として応用されているが、十分な免疫賦活効果を示すものは少なかった。そこで、低コストで高い免疫賦活効果を示す組成物の開発が求められていた。また、ヒトデにはさまざまな有用物質が含まれていると考えられたが、免疫賦活作用を有する物質がどのような性状かは明らかになっておらず、有効に利用されていなかった。
本発明は、ヒトデ由来で免疫賦活作用を有する多糖類である。より好ましい態様では、ヒトデは、アカヒトデ科に属するオニヒトデである。
本発明の別の多糖類は、構成糖として、少なくともN-アセチル-D-ガラクトサミン、N-アセチル-D-グルコサミン、L-フコース、D-アラビノース、D-マンノース、D-グルコース、及びD-ガラクトースからなる群から選択される1又は複数を含む。
また、本発明の別の多糖類は、耐熱性又は高温高圧耐性を有する。
さらに、本発明の別の多糖類の平均分子量は約5.0×104〜約1.8×105である。
また、本発明の別の多糖類の免疫賦活作用はToll-like Receptor 4を介したものである。
別の本発明は、ヒトデ由来で免疫賦活作用を有する多糖類を含有する組成物である。本発明の組成物は、トデ乾燥粉末、ヒトデ粘液乾燥粉末、又はそれらのアルコール不溶性画分であり得る。
さらに別の本発明は、ヒトデ由来で免疫賦活作用を有する多糖類を有効成分とした免疫賦活剤を提供する。
本発明は、ヒトデに由来する免疫賦活作用を有する多糖類、該多糖類を含む組成物、及び該多糖類を有効成分とする免疫賦活剤である。本発明を、ヒトや畜産動物、水産動物、愛玩動物等に投与することにより、高い免疫賦活作用が得られる。また、本発明は、ヒトデを利用した免疫賦活作用を有する健康食品や、免疫賦活作用を有する畜産用又は水産用の飼料原料として使用される。
本発明は、ヒトデ由来で且つ免疫賦活作用を有する多糖類と、多糖類を含む組成物、及び多糖類を有効成分とする免疫賦活剤を提供する。
本発明の多糖類はヒトデ由来であり、より具体的にはヒトデが分泌する粘液由来である。発明者らは、オニヒトデ(Acanthaster planci)が分泌する粘液が免疫賦活作用を有する多糖類を含有していることを見出し、本発明に到達した。さらに、非常に広い範囲の種に属するヒトデが免疫賦活作用を有する多糖を含有していると考えられる。免疫賦活作用を有する多糖類を含有するヒトデであれば、本発明に利用することができる。
ヒトデは、動物界の中で棘皮動物門(Echinodermata)に属し、ヒトデ綱(Asteroidea)及びクモヒトデ綱 (Ophiuroidea)に分類される生物の総称である。ヒトデ綱は、ホウキボシ科、イトマキヒトデ科、オニヒトデ科、モミジガイ科、スナヒトデ科、タコヒトデ科、キヒトデ科、及びニチリンヒトデ科等に分類される。
ヒトデと呼ばれる生物種は、具体的には、アカヒトデ(Certonardoa semiregularis)、イトマキヒトデ(Asterinapectinifera)、オニヒトデ (Acanthaster planci)、トゲモミジガイ(Astropecpten polyacanthus)、スナヒトデ( Luidiaquinaria)、ヤツデスナヒトデ (Luidia maculata)、タコヒトデ( Plazaster borealis)、キヒトデ(ヒトデ・マヒトデ)(Asteriasamurensis)、ヤツデヒトデ (Coscinasterias acutispina)、フサトゲニチリンヒトデ(Crossaster papposus)、クモヒトデ(Ophioplocusjaponicus)等が挙げられる。
本発明におけるヒトデの種類は限定されず、免疫賦活作用を有する多糖類を含有するヒトデ、又は免疫賦活作用を有する多糖類を含有する粘液を分泌するヒトデであれば本発明に利用することができる。
本発明に利用されるヒトデは、オニヒトデ(Acanthaster planci)であることが好ましい。オニヒトデとは、オニヒトデ科に属する生物であり、サンゴを好んで食する。大発生した場合にはサンゴ礁が破壊されるため世界中で問題となっているが、駆除されたオニヒトデの有効利用法は確立されていなかった。本発明者らは、オニヒトデが分泌する粘液が強い免疫賦活作用を有することを見出し、本発明に到達した。
また、本発明の多糖類の平均分子量は限定されないが、好ましくは、約1.0×104〜約1.0×108であり、より好ましくは、約2.0×104〜約2.0×106であり、さらに好ましくは、約5.0×104〜約1.8×105である。
本発明の多糖類は、構成糖として、単糖及びその誘導体を含む。以下、本発明の多糖類に含まれ得る単糖及びその誘導体について詳細に説明する。
単糖は、中性糖とも呼ばれ、アルドースとケトースに分類され、含まれる炭素の数によって、三炭糖(トリオース)、四炭糖(テトロース)、五炭糖(ペントース)、六炭糖(ヘキソース)、七炭糖(ヘプトース)、八炭糖(オクツロース)等と呼ばれる。三炭糖の具体例として、グリセルアルデヒド、ジヒドロキシアセトン等が挙げられる。四炭糖の具体例として、エリトロース、トレオース、エリトルロース等が挙げられる。五炭糖の具体例として、リボース、リキソース、キシロース、アラビノース、アビオース、リブロース、キシルロース等が挙げられる。六炭糖の具体例として、アロース、タロース、グロース、グルコース、アルトロース、マンノース、ガラクトース、イドース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース等が挙げられる。七炭糖の具体例として、セドヘプツロース、コリオース等が挙げられる。
さらに、糖の誘導体としては、デオキシ糖、ウロン酸、アルドン酸、アルダル酸、アミノ糖等が挙げられる。デオキシ糖の具体例として、デオキシリボース、デオキシグルコース、キノボース、テベトース、ラムノース、ラムヌロース、フコース、ジギノース、ジギタロース、ジギトキソース、シマロース、アベクオース、アスカリロース、コリトース、パラトース、チベロース等が挙げられる。また、ウロン酸の具体例として、グルクロン酸、グルロン酸、マンヌロン酸、ガラクツロン酸、イズロン酸等が挙げられる。また、アルドン酸の具体例として、グロン酸、グルコン酸等が挙げられる。また、アルダル酸の具体例として、グルカル酸、ガラクタル酸、マンナル酸等が挙げられる。また、アミノ糖の具体例として、グルコサミン、ガラクトサミン、シアル酸、アミノウロン酸、ムラミン酸等が挙げられる。ウロン酸、アルドン酸、又はアルダル酸を多く含む多糖類は酸性を示し、酸性多糖類と呼ばれる。
また、上記の単糖及びその誘導体は光学異性体を持つ場合がある。かかる場合、単糖及びその誘導体はD型、L型どちらの光学異性体でも構わない。
本発明の多糖類は、構成糖として、単糖(中性糖)、アミノ糖、ウロン酸、アルドン酸、アルダル酸、デオキシ糖を含み得る。より具体的には、本発明の多糖類は、N-アセチル-D-ガラクトサミン(D-GalNAc)、N-アセチル-D-グルコサミン(D-GlcNAc)、L-フコース(L-Fuc)、D-アラビノース(D-Ara)、D-マンノース(D-Man)、D-グルコース(D-Glu)、及びD-ガラクトース(D-Gal)からなる群から含まれる1又は複数を含むことが好ましい。
多糖類の構成糖の分析は、ガスマスクロマトグラフィ質量分析計を用いて行われる。ガスマスクロマトグラフィ質量分析計により得られたトータルイオンクロマトグラムのピーク面積と標準品とを比較して、構成糖の含有量及び含有率を算出することができる。具体的には、トリフルオロ酢酸(TFA)等により多糖類を加水分解し、誘導体化し、乾固させ、ガスクロマトグラフィ質量分析計(GC/MS)で分析することで、トータルイオンクロマトグラムを得ることができる。ここでの誘導体化は、アセチル化を施す方法や、ジエチルジチオアセタール化及びトリメチルシリル化を施す方法が公知となっている。
本発明の多糖類は、ガスマスクロマトグラフィ質量分析計を用いて得られたトータルイオンクロマトグラムにより解析される構成糖のモル比が、N-アセチル-D-ガラクトサミン(D-GalNAc)が約40%〜約50%、N-アセチル-D-グルコサミン(D-GlcNAc)が約5%〜約15%、L-フコース(L-Fuc)が約1%〜約10%、D-アラビノース(D-Ara)が約1%〜約10%、D-マンノース(D-Man)が約5%〜約15%、D-グルコース(D-Glu)が約1%〜約10%、及びD-ガラクトース(D-Gal)が約30%〜約40%であることが好ましい。
また、本発明の多糖類は、耐熱性を有していることが好ましい。多糖類が耐熱性を有している場合には、多糖類が熱処理されても、その免疫賦活作用が保持される。熱処理の温度は限定されないが、例えば、80℃〜300℃であり、好ましくは90℃〜200℃であり、より好ましくは100℃〜150℃である。また、熱処理の時間は限定されないが、1分間〜2時間であり、好ましくは、5分間〜30分間である。本発明の多糖類は、少なくとも、120℃・20分間の熱処理で免疫賦活作用が失われない。
また、本発明の多糖類は、高温高圧耐性を有していることが好ましい。多糖類が高温高圧耐性を有している場合には、多糖類が高温高圧処理されてもその免疫賦活作用は失われない。高温高圧処理とは、高温且つ高圧の処理をいう。高温高圧処理の圧力は限定されないが、例えば、0.1MPa〜1000MPaであり、好ましくは0.2Mpa〜100Mpaである。高温高圧処理の温度は限定されないが、例えば、80℃〜300℃であり、好ましくは90℃〜200℃であり、より好ましくは100℃〜150℃である。
高温高圧処理はエクストルーダによる処理が含まれる。エクストルーダは混練押出機とも呼ばれ、食品や飼料の加工に用いられる。本発明の多糖類は、エクストルーダによる処理でも免疫賦活作用を失わないものであることが好ましい。エクストルーダは、1軸型又は多軸型のスクリュを備える。具体的には、本発明の多糖類を含有する組成物やその他の原料がエクストルーダ内でスクリュによって混練され、高温高圧処理を施されながら、ダイから押し出される。
また、本発明は、ヒトデ由来で免疫賦活作用を有する多糖類を含有する組成物を提供する。本発明の組成物は、免疫賦活作用を有する多糖を含有するヒトデ又は該ヒトデが分泌する粘液から製造される。本発明の組成物は、ヒトデ又は該ヒトデが分泌する粘液を原料とし、濃縮処理、熱処理、高温高圧処理、乾燥処理、粉砕処理等の処理を施して製造することができる。
本発明の組成物は、好ましくは、ヒトデ又はヒトデが分泌する粘液を乾燥処理及び粉砕処理して得られた乾燥粉末である。粉末であることがより好ましい。本発明の組成物を乾燥粉末とすることで、本発明の組成物を供与したヒト又は動物における多糖類の吸収が促進されると同時にその保存が容易となる。
また、別の本発明の組成物は、ヒトデ又はヒトデが分泌する粘液から免疫賦活作用を有する多糖類を抽出する処理を施して製造される。本発明の多糖類は水に可溶であるため、多糖類の抽出には水が溶媒として用いられる。抽出の温度、圧力は限定されず、加熱抽出や、減圧抽出・加圧抽出でも構わない。すなわち、本発明の組成物は、ヒトデ又はヒトデが分泌する粘液からの抽出物、好ましくは水抽出物である。該抽出物には免疫賦活作用を有する多糖類が含有される。
また、本発明の組成物に含まれる多糖類は、水に可溶であり、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、ヘキサン等の極性の低い溶媒には不溶である。したがって、本発明の組成物は、ヒトデ又はヒトデが分泌する粘液に含まれる夾雑物を極性の低い溶媒を用いて除去して得られたものであることが好ましい。すなわち、本発明の組成物は、ヒトデ又はヒトデが分泌する粘液から調整された多糖類不溶性溶媒に対する不溶性固形物であり得る。
具体的には、ヒトデ又はヒトデが分泌する粘液の乾燥粉末を多糖類不溶性溶媒と混合し、遠心分離や吸引濾過等の手段によって多糖類不溶性溶媒を取り除くことによって不溶性固形物を得ることができる。多糖類不溶性溶媒とは、多糖類が不溶である溶媒をいい、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、ヘキサン、酢酸エチル、それらの混合溶媒等、極性が低い溶媒が挙げられる。本工程は1回でも構わないが、複数回繰り返すことで、組成物中の多糖類の含有率を高めることができる。
多糖類不溶性溶媒としては、アルコール、又はアルコール水溶液が好ましく用いられる。アルコール水溶液は、約50容量%以上、具体的には、約60容量%以上、約70容量%以上、約80容量%以上、約90容量%以上のものを用いることができる。すなわち、本発明の組成物は、ヒトデ又はヒトデが分泌する粘液の乾燥粉末から調整されたアルコール不溶性固形物であり得る。
本発明の組成物は、免疫賦活組成物として用いることができる。すなわち、上述の多糖を有効成分とする免疫賦活剤として、医薬品や健康食品、機能食品、動物用医薬品、飼料、飼料添加剤、飼料原料、水質改善剤として提供され、ヒトだけでなく、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ等の畜産、イヌ、ネコ等の愛玩動物、マダイ、ブリ、カンパチ、ハタ、フグ、マグロ、ウナギ、エビ、カニ等の水産養殖に利用することができる。
また、本発明は、該ヒトデから分泌される粘液に含まれる多糖類が飼育水中に存在することによって水生生物の免疫を賦活する飼育方法を包含する。本飼育方法においては、ヒトデと水生生物とを同一の水槽で飼育してもよく、ヒトデと水生生物とを別々の水槽で飼育して飼育水を共有してもよく、多糖類が含まれるヒトデの粘液を水生生物の飼育水に添加してもよい。水生生物とは、具体的にはマダイ、ブリ、カンパチ、ハタ、フグ、マグロ、ウナギ、エビ、カニ等の水産養殖種や、コイ、キンギョ、熱帯魚等の観賞魚等が挙げられる。
さらに、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
1.オニヒトデに含まれる免疫賦活作用を有する物質の同定
オニヒトデ(Acanthaster planci)が含有し、免疫賦活作用を有する物質の同定を行った。海水中にオニヒトデが分泌した粘液を回収し、ロータリエバポレータを用いて減圧濃縮を行い、酢酸エチルを添加して水層(A)及び酢酸エチル層(B)に分画した。
オニヒトデ(Acanthaster planci)が含有し、免疫賦活作用を有する物質の同定を行った。海水中にオニヒトデが分泌した粘液を回収し、ロータリエバポレータを用いて減圧濃縮を行い、酢酸エチルを添加して水層(A)及び酢酸エチル層(B)に分画した。
マウスマクロファージ細胞株(RAW264細胞)の培養液に水層(A)及び酢酸エチル層(B)を添加し、産出される一酸化窒素量を測定した。活性化したマクロファージは、一酸化窒素を産出することが知られており、これを免疫賦活の指標として用いた。また、ポジティブコントロールとして、免疫賦活作用を有することが知られているリポ多糖(LPS)を用いた。水層(A)に免疫賦活作用がみられ、酢酸エチル層(B)に免疫賦活作用がみられなかったことから、免疫賦活作用を有する物質は既知のサポニンではないことがわかった。
また、水層を、限外ろ過膜を用いて分子量3.0×103で分画し、免疫賦活作用を測定した。図1に示すように分子量3.0×103より大きい物質が含まれる分画でのみ免疫賦活作用が認められたため、免疫賦活作用を有する物質は分子量3.0×103より大きいであることがわかった。
さらに、水層(A)をタンパク質分解酵素であるプロテイナーゼKで処理した場合に、その免疫賦活作用が保持されるかどうかを調べた。図2に示すように、37℃、及び55℃の処理でタンパク質がプロテイナーゼK処理によりで分解されたことがSDS-PAGEで確認された。一方、マクロファージの一酸化窒素の産出量は変化しなかったため、免疫賦活作用を有する物質はタンパク質ではないことがわかった。
海水中にオニヒトデが分泌した粘液を回収し、ロータリエバポレータを用いて減圧濃縮を行い、濃縮画分(C)を得た。濃縮画分(C)に4倍量のメタノールを添加して撹拌し、遠心して沈殿物として得られたアルコール(メタノール)不溶性固形物に対して水抽出を行い、水抽出画分(D)を得、濃縮画分(C)及び水抽出画分(D)の免疫賦活作用を測定した。図3に示すように、濃縮画分(C)及び水抽出画分(D)で強い免疫賦活作用が認められたため、免疫賦活作用を有する物質はアルコール(メタノール)に不溶であり、多糖類であると考えられた。
水抽出画分(D)を、ゲルろ過クロマトグラフィを用いて分画した。カラムにはSephacryl-S500カラム(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を用いた。各溶出画分に含まれる全糖量はフェノール硫酸法によって測定した。また、溶出画分を希釈し、マウスマクロファージ細胞株による一酸化窒素の産出を指標として、各溶出画分の免疫賦活作用を調べた。図4に示すように、複数の免疫賦活作用を示す物質が含まれていると考えられた。
ゲルろ過クロマトグラフィによる画分のうち、分子量が大きい画分について、DEAE sepharose陰イオン交換カラム(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を用いて0Mから1Mの塩化ナトリウム水溶液で溶出を行った。各溶出画分に含まれる全糖量はフェノール硫酸法によって測定した。また、溶出画分を希釈し、マウスマクロファージ細胞株による一酸化窒素の産出を指標として、各溶出画分の免疫賦活作用を調べた。図5に示すように、0.2 Mの塩化ナトリウム水溶液溶出画分に強い免疫賦活作用を示した。陰イオン交換カラムに吸着し、0.2 M 塩化ナトリウム水溶液で溶出したため、免疫賦活作用を有する物質は酸性であることがわかった。
ゲル濾過クロマトグラフィで免疫賦活作用が認められた溶出画分を高速液体クロマトグラフィにかけ、分子量を測定した。カラムには分画範囲が5億から1万のShowdex(登録商標) SB-807 HQ(昭和電工株式会社製)を用いた。図6に示すように、免疫賦活作用を有する物質は、分子量約1.81×105の多糖類であることがわかった。
さらに、精製された多糖類を2 Mのトリフルオロ酢酸(TFA)100℃、16時間の条件で加水分解し、加水分解で得られた単糖及びその誘導体をアセチル化し、さらに窒素を吹き付けて乾固して水に溶解させ、ヘキサンで抽出した。HP-5カラム(アジレントテクノロジー株式会社製)を用いてガスクロマトグラフィ質量分析計(GC/MS)を用いて上記の多糖の構成糖を分析したところ、図7に示されるパターンのトータルイオンクロマトグラム(TIC)が得られた。トータルイオンクロマトグラムのピークに対応する単糖及びその誘導体の面積比を算出し、さらに標準品を用いて単糖及びその誘導体の重量比と構成比(モル%)を算出した。構成比(モル%)を表1に示す。
以上の結果から、多糖類は、オニヒトデが分泌する粘液に含まれ、水に可溶であり、約80容量%のメタノール水溶液に不溶であり、酸性多糖類であり、さらに平均分子量が約1.81×105であり、少なくとも、構成糖として、N-アセチル-D-ガラクトサミン、N-アセチル-D-グルコサミン、L-フコース、D-アラビノース、D-マンノース、D-グルコース、及びD-ガラクトースからなる群から含まれる1又は複数を含むことが明らかとなった。
2.本発明の多糖類による免疫賦活の作用機序の解析
本発明の多糖類の有する免疫賦活作用が、動物のマクロファージのどの受容体を介して起こるかを調べた。Toll-like Receptor 2に対する抗体(anti-mTLR2)、又はToll-like Receptor 4に対する抗体(anti-mTLR4)でマクロファージを処理し、ウリミバエ由来多糖、又はLPSを1ng/mLになるように添加し、一酸化窒素の産出量を測定した。結果を図8に示す。Toll-like Receptor 4に対する抗体で処理したマクロファージで一酸化窒素の産出量が有意に低下したため、本発明の多糖類による免疫賦活作用は、少なくともToll-like Receptor 4を介していることが示された。
本発明の多糖類の有する免疫賦活作用が、動物のマクロファージのどの受容体を介して起こるかを調べた。Toll-like Receptor 2に対する抗体(anti-mTLR2)、又はToll-like Receptor 4に対する抗体(anti-mTLR4)でマクロファージを処理し、ウリミバエ由来多糖、又はLPSを1ng/mLになるように添加し、一酸化窒素の産出量を測定した。結果を図8に示す。Toll-like Receptor 4に対する抗体で処理したマクロファージで一酸化窒素の産出量が有意に低下したため、本発明の多糖類による免疫賦活作用は、少なくともToll-like Receptor 4を介していることが示された。
3.本発明の多糖類を含む飼料によるマダイ飼育試験
本発明の多糖類を含有する組成物によりマダイの耐病性が向上するかどうかを調べた。本発明の組成物として海水中にオニヒトデが分泌した粘液を回収して得られた海水抽出液(実施例1)を得た。さらに、ロータリエバポレータを用いて減圧濃縮し、アルコールを添加して得られたアルコール不溶性の水抽出画分(実施例2)を得た。マダイは尾叉長約10cm、魚体重約25gの個体を、各12尾ずつ水槽に収容した。実施例1又は実施例2を含有する飼料を作製し、マダイに供与した。4週間飼育した後に、マダイの腹腔内にエドワジエラ症を引き起こすグラム陰性菌であるEdwardsiellatardaを5.0×105 cellを接種して強制感染させ、生存数を計測した。結果を図9に示す。本実施例の組成物を供与した群は、対照群に比べていずれも生存率が高かった。したがって、オニヒトデ由来の多糖類の有する免疫賦活作用により、マダイがEdwardsiella tardaに対する耐病性を獲得したと考えられた。
本発明の多糖類を含有する組成物によりマダイの耐病性が向上するかどうかを調べた。本発明の組成物として海水中にオニヒトデが分泌した粘液を回収して得られた海水抽出液(実施例1)を得た。さらに、ロータリエバポレータを用いて減圧濃縮し、アルコールを添加して得られたアルコール不溶性の水抽出画分(実施例2)を得た。マダイは尾叉長約10cm、魚体重約25gの個体を、各12尾ずつ水槽に収容した。実施例1又は実施例2を含有する飼料を作製し、マダイに供与した。4週間飼育した後に、マダイの腹腔内にエドワジエラ症を引き起こすグラム陰性菌であるEdwardsiellatardaを5.0×105 cellを接種して強制感染させ、生存数を計測した。結果を図9に示す。本実施例の組成物を供与した群は、対照群に比べていずれも生存率が高かった。したがって、オニヒトデ由来の多糖類の有する免疫賦活作用により、マダイがEdwardsiella tardaに対する耐病性を獲得したと考えられた。
Claims (11)
- ヒトデ由来で免疫賦活作用を有する多糖類。
- 前記ヒトデが、アカヒトデ科に属するヒトデである、請求項1に記載の多糖類。
- 前記ヒトデが、オニヒトデである、請求項1又は請求項2に記載の多糖類。
- 構成糖として、少なくともN-アセチル-D-ガラクトサミン、N-アセチル-D-グルコサミン、L-フコース、D-アラビノース、D-マンノース、D-グルコース、及びD-ガラクトースからなる群から選択される1又は複数を含む、請求項1〜請求項3いずれか一項に記載の多糖類。
- 耐熱性を有する、請求項1〜請求項4いずれか一項に記載の多糖類。
- 高温高圧耐性を有する、請求項1〜請求項5いずれか一項に記載の多糖類。
- 平均分子量が約5.0×104〜約1.8×105である、請求項1〜請求項6いずれか一項に記載の多糖類。
- 前記免疫賦活作用がToll-like Receptor 4を介したものである、請求項1〜請求項7いずれか一項に記載の多糖類。
- 請求項1〜請求項8いずれか一項に記載の多糖類を含有する組成物。
- 前記組成物が、ヒトデ乾燥粉末、ヒトデ粘液乾燥粉末、又はそれらのアルコール不溶性画分である、請求項9に記載の組成物。
- 前記多糖類を有効成分とし、請求項9又は請求項10に記載の組成物を含有する免疫賦活剤。
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JP2014011874A JP2015137361A (ja) | 2014-01-24 | 2014-01-24 | 多糖類、多糖類を含む組成物、及び免疫賦活剤 |
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WO2021143392A1 (zh) * | 2020-01-13 | 2021-07-22 | 深圳元健生命科技有限公司 | 调节免疫功能或治疗免疫相关疾病的药物 |
CN115232225A (zh) * | 2022-08-17 | 2022-10-25 | 漳州卫生职业学院 | 一种熟地黄均一多糖及其制备方法和应用 |
CN116284470A (zh) * | 2023-02-15 | 2023-06-23 | 广西中医药大学 | 一种海蛇尾多糖硫酸酯衍生物的制备方法及应用 |
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2014
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CN109705229B (zh) * | 2018-12-14 | 2021-06-04 | 浙江中医药大学 | 一种三叶青多糖及其在制备免疫调节剂中的应用 |
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