JP2015127451A - 走査型電気めっき法による高密着性めっき被膜の製造方法 - Google Patents

走査型電気めっき法による高密着性めっき被膜の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 適切な前処理を行わないと十分な密着性を得られないステンレス鋼基材などに対して、前処理なしで強固な密着性を有する複合めっき被膜を形成する手法およびその高密着性めっき被膜を提供する。【解決手段】 高電流密度部を走査しながらめっき処理を行い、めっき浴にクエン酸を加え、高電流めっき処理により基材表面の酸化膜層を除去しながらめっき被膜を形成し、難めっき材料に対して非常に強固に密着性した高密着性複合めっき被膜を形成する。【選択図】図1

Description

本発明は、高密着性複合めっき被膜およびその製造方法に関するものである。より詳細には、めっき浴組成の改善と新しいめっき手法である走査型めっき法により、基材表面の酸化膜層を除去しながらめっき被膜を形成し、難めっき材料に対して非常に強固に密着性した高密着性複合めっき被膜およびその製造方法に関する。
めっき被膜の形成において、基材との密着性を向上させることは非常に重要である。摺動部材においては耐摩耗性、潤滑性、電着砥石などへの応用においては砥粒保持力や機械的強度を付与するために形成されためっき被膜の機能が恒常的に作用するためには、密着性を向上させ、剥離を避けなればならない。
特許文献1、特許文献2、特許文献3によれば、ステンレス鋼など難めっき材料に対して、密着性を有するめっき被膜を得るためには、通常、酸処理を含む多段階に渡る洗浄工程の後に、ストライクめっき処理を施し、本めっき処理を行う。高密着性めっき被膜を得るためのこれらのプロセスの煩雑さが課題となっている。また、既存技術で十分な密着性を得ているとは言い難い状況である。
めっきおよび前処理プロセスの多段化は、めっき処理装置の大型化、さらには廃液処理量が多くなるという大きなデメリットが生じる。これらを解決するために、環境面、経済面を考慮しても、めっき処理のプロセスをできるだけシンプルにすることが課題となっている。
特許文献4によれば、高電流めっきによって、アルミニウム基板に対して高い密着性を実現する手法が提示されているが、高電流密度部が固定されており、めっき焼けを防ぐために、電流値をそれほど高くすることができないというめっき条件の面での制約が課題となっている。
以上のように、前処理を排除し、めっき被膜を直接基板上に形成するめっき手法において、高密着性を有するめっき被膜を形成する新しい手法が求められている。
特開2011−99128号公報 特開2002−12954号公報 特開2006−117983号公報 特開平6−293992号公報
難めっき材であるステンレス鋼基材などに対して、前処理なしに、強固な密着性を有するめっき被膜、およびそのめっき被膜を形成する手法を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するため、請求項1記載の走査型電気めっき法は、電気めっきにおいて、めっき被膜を形成する陰極の基板に対して、相対的に陽極を走査し、陰極と陽極が最も接近し、最も電流が流れる高電流密度部を移動させることを特徴とする。
請求項2記載の走査型電気めっき法は、前記高電流密度部において発生する水素ガスの還元作用を用いて、陰極表面の酸化被膜を除去しながらめっき被膜を形成し、めっき被膜と陰極基板との間に高い密着性を付与することを特徴とする。
請求項3記載の走査型電気めっき法は、クエン酸を加えたニッケルめっき浴を用いることを特徴とする。
請求項4記載の走査型電気めっき法は、前記高電流密度部が陰極基板上で点状であり、点状の高電流密度部を走査することを特徴とする。
請求項5記載の走査型電気めっき法は、前記高電流密度部が陰極基板上で線状であり、線状の高電流密度部を走査することを特徴とする。
請求項6記載の走査型電気めっき法は、前記陽極のうち、めっき液に接し、陰極基板に90度未満の範囲で対向する陽極面の面積で電流を除した平均電流密度が20A/dm以上であることを特徴とする。
請求項7記載の走査型電気めっき法は、微粒子を添加しためっき浴を用い、音響放射力により前記微粒子を前記高電流密度部に集めながら、微粒子を含む複合めっき被膜を形成することを特徴とする。
請求項8記載の走査型電気めっき法は、めっき被膜を形成する基板と超音波音源を、前記微粒子を分散させためっき浴に浸漬させ、超音波音源によって母材表面に定在波音場を形成し、前記高電流密度部に定在波音場の節部を合わせ、音響放射力によって前記微粒子を前記高電流密度部に集め、母材表面からめっき被膜を成長させることを特徴とする。
請求項9記載の走査型電気めっき法は、前記超音波音源が振動板であり、前記定在波音場が、めっき基板面の上方にある振動板と反射板の組あるいは2つの振動板の組でめっき基板面に形成されるものであり、振動板の振動面、反射板の反射面および母材のめっき基板面が平面であり、めっき形成部の中心点を通る振動面の法線1とめっき基板面のなす交差角度がθであり、振動面と対をなすもう一つの振動面または反射面の法線2とめっき基板面となす交差角度がθであり、法線1と法線2が異なり、法線1と法線2が同一平面上にあり、2つの振動面から励振される平面波または1つの振動面から励振される平面波と平面反射板から反射される平面波によって、振動面とめっき基板面の交線方向へ直線状の節部を形成し、音響放射力をこの節部に向かわせることにより、節部に微粒子を直線上に配列させながら、母材表面からめっき被膜を形成させることを特徴とし、この節部に高電流密度部を存在するように、ロッド状の陽極を、前記陽極の軸と直線状の節部の軸が平行になるように配置することを特徴とする。
請求項10記載の走査型電気めっき法は、前記微粒子が超砥粒であり、めっき浴がクエン酸を加えたスルファミン酸ニッケル浴であり、陰極基板がステンレス鋼であることを特徴とする。
請求項11記載の走査型電気めっき法は、前記微粒子が超砥粒とカーボンナノ材料であることを特徴とする。
請求項12記載のめっき被膜は、前記走査型電気めっき法により形成した、めっき被膜と基板の間の酸化皮膜が極めて薄く、高い密着性を示すめっき被膜であることを特徴とする。
請求項1記載の発明によれば、電気めっきにおいて、めっき被膜を形成する陰極の基板に対して、相対的に陽極を走査し、陰極と陽極が最も接近し、最も電流が流れる高電流密度部を移動させることにより、高電流密度部が固定された場合に発生するめっき焼けを防止することができ、高電流密度での局所的な高速成膜が可能となるという効果がある。
請求項2記載の発明によれば、前記高電流密度部において発生する水素ガスの還元作用を用いて、陰極表面の酸化被膜を除去しながらめっき被膜を形成し、めっき被膜と陰極基板との間に高い密着性を付与することができるという効果がある。
請求項3記載の発明によれば、クエン酸やホウ酸はニッケルめっき浴のpH緩衝剤として加えられるが、ここでは、陰極表面の酸化被膜除去能力において、クエン酸を加えたニッケルめっき浴は、ホウ酸を加えたニッケルめっき浴に比べて、秀でており、走査型電気めっき法とクエン酸添加の組み合わせにより、高い陰極表面の酸化被膜除去能力が得られ、高い密着性を有するめっき被膜を形成できるという効果がある。
請求項4記載の発明によれば、前記高電流密度部が陰極基板上で点状であり、点状の高電流密度部を走査することにより、平面あるいは自由曲面上にその走査軌跡により、任意のめっき被膜を形成することができ、3次元的な造形も可能になるという効果がある。
請求項5記載の発明によれば、前記高電流密度部が陰極基板上で線状であり、線状の高電流密度部を走査することにより、たとえばロッド上の長い陽極を用いて、平面基板を走査することにより、大面積に対して効率よく密着性の高いめっき被膜を形成できるという効果がある。
請求項6記載の発明によれば、前記陽極のうち、めっき液に接し、陰極基板に90度未満の範囲で対向する陽極面の面積で電流を除した平均電流密度が20A/dm以上であることで、陽極の直下で陽極に対向する陰極表面では、この平均電流密度以上の高電流密度部を形成できるという効果がある。
請求項7記載の発明によれば、微粒子を添加しためっき浴を用い、音響放射力により前記微粒子を前記高電流密度部に集めながら、微粒子を含む複合めっき被膜を形成することにより、高速めっきによる複合めっきの形成において課題となる微粒子の含有量の減少を改善でき、さらに超音波の強度によって微粒子含有量の制御が可能となるという効果がある。
請求項8記載の発明によれば、めっき被膜を形成する基板と超音波音源を、前記微粒子を分散させためっき浴に浸漬させ、超音波音源によって母材表面に定在波音場を形成し、前記高電流密度部に定在波音場の節部を合わせ、音響放射力によって前記微粒子を前記高電流密度部に集め、母材表面からめっき被膜を成長させる。定在波音場の形成方法としては、他に基板を振動させる方法もあるが、請求項7記載の発明のように、外部超音波音源を用いた方が設計の自由度が高いという効果がある。さらに、外部音源の配置および形状により、定在波音場を点状あるいは線状に形成できるという効果がある。
請求項9記載の発明によれば、線状に形成した音場の節部と線状の高電流密度部を一致させるために、振動板、反射板、そして陽極、陰極を互いに干渉の少ない状態で配置でき、さらに大面積平面基板上に高速に、かつ密着性の良い複合めっき被膜を形成できるという効果がある。
請求項10記載の発明によれば、前記微粒子が超砥粒であり、めっき浴がクエン酸を加えたスルファミン酸ニッケル浴であり、陰極基板がステンレス鋼であることにより、ストライクめっきや酸洗浄などの前処理なしで、ステンレス鋼の表面に直接、超砥粒を含む高密着性のニッケルめっき被膜を形成できる効果がある。これは超砥粒を含む電着砥石を形成するために非常に有用である。
請求項11記載の発明によれば、前記微粒子が超砥粒とカーボンナノ材料であることにより、超砥粒を保持するニッケル母相をカーボンナノ材料で強化および機能化することができ、複合めっき被膜およびそれを用いて形成した砥石において、耐久性あるいは表面のトライボロジー特性の改善に効果がある。さらに、超音波音場を用いためっき法の場合、カーボンナノチューブなどの凝集しやすいナノ微粒子を複合するときに、定在波音場の腹部においてナノ微粒子の分散性を改善できるという効果がある。
請求項12記載の発明によれば、前記走査型電気めっき法により形成することにより、めっき被膜と基板の間の酸化皮膜が極めて薄く、高い密着性を示すめっき被膜を提供できるため、たとえば電着砥石や耐摩耗部材へ応用した場合、基材からの剥離を防止できるという効果がある。
以上、発明の効果をまとめると以下のようになる。
通常、ホウ酸をpH緩衝剤として用いるスルファミン酸ニッケル浴において、ホウ酸の代わりにクエン酸を用いること、そして、高電流密度めっきを行うために、めっき形成箇所を走査しながらめっきを行う本発明で提案する走査型めっき法を用いることにより、基材表面の酸化膜層を除去しながらめっき被膜を形成することができるため、めっき被膜と基材表面の界面には酸化膜層が、通常のめっき被膜に比べて十分に薄く、密着性の高いめっき被膜を提供することができる効果がある。さらに、従来技術で煩雑であった洗浄などの前処理工程は全く不要となる効果がある。
複合めっきの場合、粒子の分散状態、含有量の制御が課題となるため、必要に応じて超音波援用めっき法を併用することで、たとえばカーボンナノチューブなどの凝集しやすいナノ微粒子を複合されるときに、超音波援用することで分散性が良い状態で、上記の効果である高密着性を有する複合めっき被膜を形成することが可能となる。さらに、同じく超音波を援用し、その節部とめっき形成箇所を同期させて走査することで、複合化される微粒子の含有量を制御することが可能となるという効果がある。
以下、図を参照して本発明を説明する。この図および説明は単なる一例に過ぎず、本発明の全般的な概念を制限するものではない。
ロッド状電極を用いて、直線状の高電流密度部を走査する場合の本発明の走査型電気めっき法の概念図(走査前、めっき被膜形成前) ロッド状電極を用いて、直線状の高電流密度部を走査する場合の本発明の走査型電気めっき法の概念図(走査後、めっき被膜形成後) ロッド状電極を用いて直線状の高電流密度部を走査し、振動板と反射板を用いて線状の音圧の節部を形成し、微粒子を高電流密度部に集中させながら複合めっきを行う本発明の走査型電気めっき法の概念断面図(走査前、めっき被膜形成前) ロッド状電極を用いて直線状の高電流密度部を走査し、振動板と反射板を用いて線状の音圧の節部を形成し、微粒子を高電流密度部に集中させながら複合めっきを行う本発明の走査型電気めっき法の概念断面図(走査後、めっき被膜形成後) 本発明のめっき被膜の密着性評価後の写真である。 従来のめっき被膜の密着性評価後の写真である。 本発明のめっき被膜のアルゴンスパッタ時間ごとのFe2p3/2のスペクトルの変化である。 従来のめっき被膜のアルゴンスパッタ時間ごとのFe2p3/2のスペクトルの変化である。 アルゴンスパッタ時間[min]に対するXPSの測定結果における鉄ピークに対する酸化鉄ピークの推移(ステンレス基板上に形成した本発明のニッケルめっき被膜と従来のニッケルめっき被膜の酸化被膜厚さの比較)である。 超音波を援用した複合めっき法の構成・配置図および音圧分布の有限要素法解析結果の一例である。 図10の超音波を援用した走査型電気めっき法を用いて形成しためっき被膜の比重およびダイヤモンド砥粒濃度の超音波強度依存性である。
以下、本発明の好ましい実施例を、添付した図面を参照して詳細に説明する。
走査型電気めっき法の実施例を示す。図1において、ロッド状の陽極1を平板状の陰極(基板)3に対向させて配置する。このとき、ロッド軸が基板面の法線と直交するように配置することで、直線状の高電流密度部5が陰極(基板)3上に形成される。このような陽極と陰極の関係を保ちながら、ロッド状の陽極1をロッド軸と垂直な走査方向4に基板面に沿って走査することで、連続的に高電流密度部5になった箇所を中心にめっき被膜2が形成されていき、図2のように、走査した基板面上にめっき被膜2を形成することができる。基板面に対して何度か走査することによって厚膜化が可能である。また、陽極と陰極の距離はできるだけ接近させることが望ましく、数ミリメートル以下が望ましい。高電流密度部5の走査速度、電流密度、走査回数によってめっき被膜2の膜厚を制御できる。
走査型電気めっき法による複合めっき被膜の形成の実施例を示す。図3において、ロッド状の陽極1を平板状の陰極(基板)3に対向させて配置する。このとき、ロッド軸が基板面の法線と直交するように配置することで、一様な高電流密度部5が陰極(基板)3上に形成される。さらに、このとき振動板11と反射板12を用いて、超音波の進行波9、反射波10を調整し、高電流密度部5の周辺を音圧の節部8とする。このとき、音圧の節部に向かって音響放射力6が働き、微粒子7を集めることができる。この線状の高電流密度部5と音圧の節部8を同期させて走査し、陽極と陰極の関係および振動板と反射板の関係を保ちながら、ロッド状の陽極1をロッド軸と垂直な走査方向4に基板面に沿って走査することで、連続的に高電流密度部5になった箇所を中心に微粒子7を含むめっき被膜2が形成されていき、図4のように、走査した基板面上に複合めっき被膜2を形成することができる。超音波の強度によって、微粒子7の含有量を制御することができる。高電流密度部5を点状に形成する場合は、点収束音場を用いることで、同様な複合めっき被膜の形成が可能である。
図5と図6にそれぞれ本発明のめっき被膜と従来のめっき被膜の密着性評価結果を示す。いずれのめっき被膜も、全く前処理を行っていないステンレス鋼基板にカーボンナノチューブ複合ニッケルめっき被膜を形成したものである。
本発明のめっき被膜は、以下のめっき条件で形成した。クエン酸を添加したスルファミン酸ニッケル(浴組成:Ni(NHSO・4HO:500g/L、C:33g/L)に多層カーボンナノチューブ(Nanocyl製NC7000、直径9.5nm、平均長さ1.5μm)を1g/L添加しためっき浴を用い、陽極を直径3mmのニッケルロッド、陰極基板をステンレス鋼(SUS304)とし、ロッド中心と基板との距離を3mmとし、図1に示すように直線状の高電流密度部を走査速度800μm/secで走査しながら、電圧6.5Vの定電圧制御で、めっき温度55℃でめっき処理を行った。めっき領域は、40mm□とした。
このとき、陰極基板表面の電流密度は、陽極であるニッケルロッドの直下において最も高くなり、ロッドから離れるに連れて急激に低下する。電流密度が分布を持ってしまうため、高電流めっきの領域を定量化するために、陽極における「平均電流密度」の概念を導入する。すなわち、陽極のうち、めっき液に接し、陰極基板に90度未満の範囲で対向する陽極面の面積で電流を除した電流密度を「平均電流密度」と定義する。陽極の直下で陽極に対向する陰極表面では、この平均電流密度以上の高電流密度部を形成されることになる。
前記めっき条件では、前記平均電流密度が150A/dm以上である。
一方、従来のめっき被膜は、以下のめっき条件で形成した。ホウ酸を添加したスルファミン酸ニッケル(浴組成:Ni(NHSO・4HO:500g/L、NiCl・6HO:4g/L、HBO:33g/L)に多層カーボンナノチューブ(Nanocyl製NC7000、直径9.5nm、平均長さ1.5μm)を1g/L添加しためっき浴を用い、陽極を直径3mmのニッケルロッド、陰極基板をステンレス鋼(SUS304)とし、ロッド中心と基板との距離を3mmとし、走査せずに、電流密度5A/dmの定電流制御で、めっき温度55℃でめっき処理を行った。めっき領域は、40mm□とした。
図5に示すように、クエン酸および走査型電気めっき法により作製した本発明のめっき被膜は、付着性−碁盤目試験JIS K5400−8.5(JIS D0202)を行ったところ、格子状に1mm□にカットしためっき被膜10×10の100マスのうち剥がれためっき被膜は存在しなかった。なお,前記平均電流密度が20A/dm以上で,密着性の改善効果が確認できた。
一方、図6に示すように、ホウ酸および従来めっき法で形成した従来のめっき被膜は、本評価法を用いるまでもなく、剥離してしまった。
図7と図8にそれぞれ前記条件で形成した本発明のめっき被膜と従来のめっき被膜のアルゴンスパッタ時間ごとのFe2p3/2のスペクトルの変化を示す。いずれもニッケルめっき被膜とステンレス基板の界面近傍のスペクトルである。アルゴンスパッタによって、徐々に界面の酸化鉄(Fe)のピークが減少し、鉄(Fe)のピークが増加することがわかる。この酸化鉄(Fe)のピークの減少率から酸化被膜層の厚みを比較することができる。
図9に、アルゴンスパッタ時間に対する鉄(Fe)のピークに対する酸化鉄(Fe)のピークの比率の推移を示す。従来のめっき被膜に比べて、本発明のめっき被膜とステンレス基板の界面の酸化鉄(Fe)のピークの減少率は大きく、従来のめっき被膜に比べて酸化被膜層が薄いことがわかる。
以上のように、本発明の走査型電気めっき被膜を用いることにより、界面の酸化被膜を薄くし、前処理なしに、非常に密着性の高いめっき被膜を形成できる。
図10に、超音波を援用した複合めっき法における、超音波ホーン、反射板、Ni電極棒(φ3mm)、めっき基板の配置および有限要素法(FEM)により解析した音圧分布を示す。ホーン端面(振動面:100×31.9mm)と反射板は、Ni電極棒の中心を通り、めっき基板面に垂直な中心線に対して線対称で角度45度となるように配置した。図10の音圧分布から分かるように、振動面から照射された平面波は、めっき基板面にて角度45度で反射し、反射板で180度反射することで、進行波と反射波によって定在波音場を形成する。Ni電極棒は超音波の効果を妨げない音圧の節に、電極棒の中心が基板から4mmの位置に設置した。この場合、電極棒の中心で最も電流密度が高く、めっき膜厚が厚くなる。電流密度が高くなる電極棒の中心位置では、音圧の節となるため、砥粒が固着しやすい状態が形成できる。高濃度スルファミン酸ニッケル浴(日本化学産業CAS No.13770−89−3)に、2g/Lのチタン被覆ダイヤモンド砥粒(Diamond Inovations製MBM−Ti,10−20μm)を添加し、実験に供した。めっき基板であるSUS304製平板(めっき形成面:外径70mm、内径30mm)を走査速度0.8mm/secで上下に走査しながらめっき処理を行った。ステンレス製の超音波ホーンは、共振周波数20kHzのボルト締めランジュバン型振動子(BLT:本多電子製HEC−4020P4B)により駆動した。このとき前述平均電流密度は150A/dm以上とした。
図11に、超音波を援用した走査型電気めっき法を用いて、超音波振動子への入力電力0W,1.5W,26Wの条件で形成したダイヤモンド複合ニッケルめっき被膜の比重およびダイヤモンド砥粒の濃度(vol%)を示す。密度はアレキメデス法により測定し、含有率はニッケルおよびダイヤモンド砥粒の比重をそれぞれ8.90,3.53とし、測定した比重から計算した。強力超音波を援用して形成した複合ニッケルめっき被膜の比重は、超音波なしで形成したものに比べて、小さくなり、ダイヤモンドの濃度は増加した。さらに,超音波入力電力が高い条件でその傾向は顕著となった。以上より、超音波の強度によって、砥粒集中度(めっき被膜中のダイヤモンド砥粒の濃度)を制御できることが示された。
本発明は、特に小径電着砥石、薄型砥石、電着ワイヤーなどにおいて有効である。半導体基板(SiC、サファイア等)や太陽光パネルなど微細加工、切断加工において、高負荷加工に耐えうる高性能な電着砥石、電着ワイヤーが求められていることから、今後、再生可能エネルギーの需要増加により拍車がかかると推測される太陽光パネルとともに市場規模の拡大が見込まれる。本発明は従来技術と比較して前処理が不要で、密着性に優れるめっき被膜を提供できることから、多くの産業界において性能面、コスト面で優位性があり、実用化が期待できる。
1 陽極
2 めっき被膜
3 陰極(基板)
4 走査方向
5 高電流密度部
6 音響放射力
7 微粒子
8 音圧の節部
9 超音波(進行波)
10 超音波(反射波)
11 振動板
12 反射板
13 密着性評価痕

Claims (12)

  1. 電気めっきにおいて、めっき被膜を形成する陰極の基板に対して、相対的に陽極を走査し、陰極と陽極が最も接近し、最も電流が流れる高電流密度部を移動させることを特徴とする走査型電気めっき法
  2. 前記高電流密度部において発生する水素ガスの還元作用を用いて、陰極表面の酸化被膜を除去しながらめっき被膜を形成し、めっき被膜と陰極基板との間に高い密着性を付与することを特徴とする請求項1記載の走査型電気めっき法
  3. クエン酸を加えたニッケルめっき浴を用いることを特徴とする請求項1または請求項2いずれかに記載の走査型電気めっき法
  4. 前記高電流密度部が陰極基板上で点状であり、点状の高電流密度部を走査することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の走査型電気めっき法
  5. 前記高電流密度部が陰極基板上で線状であり、線状の高電流密度部を走査することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の走査型電気めっき法
  6. 前記陽極のうち,めっき液に接し,陰極基板に90度未満の範囲で対向する陽極面の面積で電流を除した平均電流密度が20A/dm以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の走査型電気めっき法
  7. 微粒子を添加しためっき浴を用い、音響放射力により前記微粒子を前記高電流密度部に集めながら、微粒子を含む複合めっき被膜を形成することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の走査型電気めっき法
  8. めっき被膜を形成する基板と超音波音源を、前記微粒子を分散させためっき浴に浸漬させ、超音波音源によって母材表面に定在波音場を形成し、前記高電流密度部に定在波音場の節部を合わせ、音響放射力によって前記微粒子を前記高電流密度部に集め、母材表面からめっき被膜を成長させることを特徴とする請求項7に記載の走査型電気めっき法
  9. 前記超音波音源が振動板であり、前記定在波音場が、めっき基板面の上方にある振動板と反射板の組あるいは2つの振動板の組でめっき基板面に形成されるものであり、振動板の振動面、反射板の反射面および母材のめっき基板面が平面であり、めっき形成部の中心点を通る振動面の法線1とめっき基板面のなす交差角度がθであり、振動面と対をなすもう一つの振動面または反射面の法線2とめっき基板面となす交差角度がθであり、法線1と法線2が異なり、法線1と法線2が同一平面上にあり、2つの振動面から励振される平面波または1つの振動面から励振される平面波と平面反射板から反射される平面波によって、振動面とめっき基板面の交線方向へ直線状の節部を形成し、音響放射力をこの節部に向かわせることにより、節部に微粒子を直線上に配列させながら、母材表面からめっき被膜を形成させることを特徴とし、この節部に高電流密度部を存在するように、ロッド状の陽極を、前記陽極の軸と直線状の節部の軸が平行になるように配置することを特徴とする請求項7または請求項8いずれかに記載の走査型電気めっき法
  10. 前記微粒子が超砥粒であり、めっき浴がクエン酸を加えたスルファミン酸ニッケル浴であり、陰極基板がステンレス鋼であることを特徴とする請求項7ないし請求項9のいずれかに記載の走査型電気めっき法
  11. 前記微粒子が超砥粒とカーボンナノ材料であることを特徴とする請求項7ないし請求項10のいずれかに記載の走査型電気めっき法
  12. 請求項1ないし請求項11のいずれかに記載の走査型電気めっき法により形成した、めっき被膜と基板の間の酸化皮膜が極めて薄く、高い密着性を示すことを特徴とするめっき被膜
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