JP2015124266A - ダウンホールツールまたはダウンホールツール部材及び分解性樹脂組成物、並びに炭化水素資源の回収方法 - Google Patents

ダウンホールツールまたはダウンホールツール部材及び分解性樹脂組成物、並びに炭化水素資源の回収方法 Download PDF

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【課題】高深度化など炭化水素資源回収の採掘条件が過酷かつ多様となるもと、機械的特性に優れ、諸部材との接触や衝突によっても損傷しにくい高い耐衝撃性を有し、かつ、必要に応じて除去を容易に行うことができ、坑井掘削の経費節減及び工程短縮に寄与する、ダウンホールツールまたはその部材、及び樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】分解性樹脂及び有機繊維強化材を含有する分解性樹脂組成物から形成され、該分解性樹脂組成物のアイゾット衝撃強さ(ノッチ有り)40J/m以上及び引張伸度7%以上である、好ましくはボールシーラー、ボールシート、フラックプラグまたはブリッジプラグであるダウンホールツールまたはその部材;分解性樹脂70〜97質量%及び有機繊維強化材3〜30質量%(分解性樹脂及び有機繊維強化材の合計100質量%)を含有するダウンホールツール(部材)用分解性樹脂組成物;並びに該ダウンホールツール(部材)を使用する炭化水素資源の回収方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、石油または天然ガス等の炭化水素資源を産出し、炭化水素を回収するためのダウンホールツールまたはダウンホールツール部材及びダウンホールツールまたはダウンホールツール部材用分解性樹脂組成物、並びに炭化水素資源の回収方法に関する。
石油(シェールオイルを含む。)または天然ガス(シェールガスを含む。)等の炭化水素資源は、多孔質で浸透性の地下層を有する井戸(油井またはガス井。総称して「坑井」ということがある。)を通じて採掘され生産されてきた。エネルギー消費の増大に伴い、坑井の高深度化が進み、世界では深度9000mを超える掘削の記録もあり、日本においても6000mを超える高深度坑井がある。採掘が続けられる坑井において、時間経過とともに浸透性が低下してきた地下層や、さらには元々浸透性が十分ではない地下層から、継続して炭化水素資源を効率よく採掘するために、生産層を刺激(stimulate)することが行われ、刺激方法としては、酸処理や破砕方法が知られている(特許文献1)。酸処理は、塩酸やフッ酸等の酸を生産層に注入し、岩盤の反応成分(炭酸塩、粘土鉱物、ケイ酸塩等)を溶解させることによって、生産層の浸透性を増加させる方法であるが、強酸の使用に伴う諸問題が指摘され、また種々の対策を含めてコストの増大が指摘されている。そこで、流体圧を利用して生産層に、細孔を形成させる穿孔(perforation)や、亀裂(フラクチャ、fracture)を形成させる水圧破砕法(「フラクチャリング(fracturing)」ということもある。)が注目されている。
水圧破砕法は、水圧等の流体圧(以下、単に「水圧」ということがある。)により生産層に穿孔や亀裂を発生させる方法であり、一般に、垂直な孔を掘削し、続けて、垂直な孔を曲げて、地下数千mの地層内に水平な孔を掘削した後、それらの坑井孔(坑井を形成するために設ける孔を意味し、「ダウンホール」ということもある。)内にフラクチャリング流体等の流体を高圧で送り込み、高深度地下の生産層(石油または天然ガス等の炭化水素資源を産出する層)に水圧によって亀裂(フラクチャ)等を生じさせ、該フラクチャ等を通して炭化水素資源を採取・回収するための生産層の刺激方法である。水圧破砕法は、いわゆるシェールオイル(頁岩中で熟成した油)、シェールガス等の非在来型資源の開発においても、有効性が注目されている。
水圧等の流体圧によって形成された亀裂(フラクチャ)等は、水圧がなくなれば直ちに地層圧により閉塞されてしまう。亀裂(フラクチャ)の閉塞を防ぐために、高圧で送り込まれるフラクチャリング流体(すなわち、フラクチャリングに使用する坑井処理流体)にプロパント(proppant)を含有させて、坑井孔内に送り込み、亀裂(フラクチャ)にプロパントを配置することが行われている。フラクチャリング流体に含有させるプロパントとしては、無機または有機材料が使用されるが、できるだけ長期間、高温高圧の高深度地下の環境内で、フラクチャの閉塞を防ぐことが可能であることから、従来、シリカ、アルミナその他の無機物粒子が使用され、砂粒、例えば20/40メッシュの砂などが汎用されている。
フラクチャリング流体等の高圧で送り込まれる坑井処理流体としては、水ベース、油ベース、エマルジョンの各種のタイプが用いられる。坑井処理流体には、プロパントを、坑井孔内のフラクチャを生じさせる場所まで運搬し得る機能が求められるので、通常は所定の粘度を有し、プロパントの分散性が良好であるとともに、後処理の容易性、環境負荷の小ささなどが求められる。また、フラクチャリング流体には、プロパントの間に、シェールオイル、シェールガス等が通過できる流路を形成することを目的として、チャネラント(channelant)を含有させることもある。したがって、坑井処理流体には、プロパントのほかに、チャネラント、ゲル化剤、スケール防止剤、岩石等を溶解するための酸、摩擦低減剤など、種々の添加剤が使用される。
高圧で送り込まれる流体を使用して、高深度地下の生産層(シェールオイル等の石油またはシェールガス等の天然ガスなどの炭化水素資源を産出する層)に水圧によって亀裂や穿孔を生じさせるためには、通常、以下の方法が採用されている。すなわち、地下数千mの地層内に掘削した坑井孔(ダウンホール)に対して、坑井孔の先端部から順次、目止めをしながら、所定区画を部分的に閉塞し、その閉塞した区画内に流体を高圧で送入して、生産層に亀裂や穿孔を生じさせる。次いで、次の所定区画(通常は、先行する区画より手前、すなわち地上側の区画)を閉塞して亀裂や穿孔を生じさせる。以下、この工程を必要な目止めと、亀裂や穿孔の形成が完了するまで繰り返し実施する。
新たな坑井の掘削にとどまらず、既に形成された坑井孔の所望の区画について、再度生産層の刺激を行うこともある。その際も同様に、坑井孔の閉塞とフラクチャリングなどの操作を繰り返すことがある。また、坑井の仕上げを行うために、坑井孔を閉塞して下部からの流体を遮断し、その上部の仕上げを行った後、閉塞の解除を行うこともある。これら新たに形成する坑井孔や既に形成された坑井孔の内部において、所要の操作を行うために種々のツールが使用され、これらのツールは総称して「ダウンホールツール(downhole tool)」といわれる。ダウンホールツールは、広義には、坑井の更なる掘削を行うための掘削装置やその動力源、更には、諸ツールの位置や掘削情報を取得し交換するセンサや通信装置を含む概念として使われるとともに、例えば、後述するプラグやプラグの部材または部品等のダウンホールツール部材を含む概念としても使われる。
例えば、特許文献2及び特許文献3には、坑井孔の閉塞や固定を行うために使用するダウンホールツールであるプラグ(「フラックプラグ」、「ブリッジプラグ」または「パッカー」等と称することもある。)が開示されている。
特許文献2には、坑井掘削用のプラグ(「ダウンホールプラグ」ということもある。)が開示されており、具体的には、軸方向に中空部を有するマンドレル(本体)、マンドレルの軸方向と直交する外周面上に、軸方向に沿って、リングまたは環状部材(annular member)、第1の円錐状部材(conical member)及びスリップ(slip)、エラストマーまたはゴム等から形成される可鍛性要素(malleable element)、第2の円錐状部材及びスリップ、並びに、回り止め機構(anti-rotation feature)を備えるプラグが開示されている。この坑井掘削用のプラグによる坑井孔の封鎖は、以下のとおりである。すなわち、マンドレルをその軸方向に移動することにより、リングまたは環状部材と回り止め機構との間隙が縮小することに伴い、スリップが円錐状部材の傾斜面に当接し、円錐状部材に沿って進むことで、外方に放射状に拡大して坑井孔の内壁に当接して坑井孔に固定されること、及び、可鍛性要素が拡径変形して坑井孔の内壁に当接して坑井孔を封鎖することによる。マンドレルには、軸方向の中空部が存在し、これにボール(「ボールシーラー」ということもある。また、ボールは、ダウンホールツールまたはダウンホールツール部材の概念に含まれる。)をセットすることにより、坑井孔を封鎖することができる。プラグを形成する材料(材料のそれぞれは、ダウンホールツール部材の概念に含まれる。)として、金属材料(アルミニウム、スチール、ステンレス鋼等)、繊維、木、複合材及びプラスチックなどが広く例示され、好ましくは、炭素繊維等の強化材を含有する複合材、特に、エポキシ樹脂やフェノール樹脂等の重合体複合材であること、マンドレルがアルミニウムまたは複合材料で形成されることが記載されている。一方、ボールについては、先に説明した材料のほかに、温度、圧力、pH(酸、塩基)等により分解する材料を使用できることが記載されている。
特許文献3には、坑井内の環境に曝されるときに分解する生分解性材料を含有する使い捨て型のダウンホールツールまたはその部材(a downhole tool or a component thereof)が開示されており、生分解性材料として、ポリ乳酸等の脂肪族ポリエステルなど分解性重合体が開示されている。さらに、特許文献3には、軸方向に流通孔(flow bore)を有する円筒状本体部品(tubular body element)と、該円筒状本体部品の軸方向と直交する外周面上に、軸方向に沿って、上部シーリング要素、中心シーリング要素及び下部シーリング要素から成るパッカー要素集合体(packer element assembly)と、スリップ及び機械的スリップ本体(mechanical slip body)との組み合わせが記載されている。また、円筒状本体部品の流通孔には、ボールをセットすることにより、流体の一方向のみの流れを許容するようにすることが開示されている。
坑井掘削に使用されるプラグやシーラーその他のダウンホールツールまたはダウンホールツール部材(以下、「ダウンホールツールまたはその部材」ということがある。)は、坑井が完成するまで順次坑井内に配置されるが、シェールオイル等の石油またはシェールガス等の天然ガス(以下、総称して「石油や天然ガス」または「石油または天然ガス」ということがある。)などの生産が開始される段階では、これらを除去する必要がある。プラグ等のダウンホールツールまたはその部材は、通常、使用後に閉塞を解除して回収できるように設計されていないため、破砕、ドリル空け(drill out)その他の方法で、破壊されたり、小片化されたりすることによって除去されるが、破砕やドリル空け等には多くの経費と時間を費やす必要があった。また、使用後に回収できるように特殊に設計されたプラグ(retrievable plug)もあるが、プラグは高深度地下に置かれたものであるため、そのすべてを回収するには多くの経費と時間を要していた。そこで、ダウンホールツールまたはその部材として分解性材料を使用するに当たっての改良が広く試みられるようになっている。
特許文献4には、ダウンホール内に設けたケーシング内の穿孔を塞ぐ分解可能なボールシーラー(ダウンホールツールまたはその部材に相当する。)が開示されている。特許文献4には、具体的には、坑井流体中で実質的に不溶性であり、地下層の温度の水の存在下でオリゴマーに分解して、地下層の流体に可溶となるポリ乳酸、乳酸・グリコール酸共重合体等のポリエステルから構成されるボールシーラーが記載されている。
さらに、特許文献5には、炭化水素類及び地層熱の存在下で経時的に、分解し、溶解し、剥離し、またはその物理的特性が著しく劣化するボール用組成物が開示されている。特許文献5には、更に具体的には、管内において第1の位置と第2の位置との間をスライド可能なスリーブ内に置かれた、65.6℃(150°Fに相当する。)を超える温度で分解する材料を含むボール(ダウンホールツールまたはその部材に相当する。)とボールの直径より小径の開口を有するボールシート(ダウンホールツールまたはその部材に相当する。)との組み合わせ、並びに、ボールの65.6℃を超える温度で分解する材料が熱硬化性ポリマー、熱可塑性ポリマーやエラストマー等であること、及び、更にアラミド、ガラス、炭素、ボロン、ポリエステル、コットン及びセラミックスの繊維または粒子を含んでもよいことが記載されている。
以上のように、エネルギー資源の確保及び環境保護等の要求の高まりのもと、特に、非在来型資源の採掘が広がる中で、高深度化など採掘条件がますます過酷なものとなり、また、採掘条件の多様化、例えば、温度条件としては深度の多様化等に付随して60℃未満から200℃程度までと多様化が進んでいる。すなわち、フラックプラグ、ブリッジプラグまたはパッカー等のプラグ類やボール(ボールシーラー)またはボールシートなどのダウンホールツールまたはその部材としては、数千mの深度地下に部材を移送することができる機械強度(引張強伸度や圧縮強伸度等)、高深度地下のダウンホールの高温かつ高湿度の環境下で、回収対象である炭化水素資源と接触しても機械強度等が維持される耐油性、耐水性及び耐熱性、穿孔やフラクチャリングを実施するためにダウンホールを閉塞するときに、高圧の水圧によっても閉塞を維持することができるシール性能や機械強度などの諸特性が求められる。加えて、炭化水素資源回収用の坑井が完成した段階では、その坑井の環境条件下(先に説明したように、深度の多様化等に付随し温度条件その他において多様な環境がある。)において、容易に除去することができるという特性を併せ有することが求められるようになっている。
現在実用化が求められている、分解性を有する炭化水素資源回収用ダウンホールツールまたはダウンホールツール部材(以下、「分解性ダウンホールツールまたはその部材」ということがある。)には、更に加えて、分解性ダウンホールツールまたはその部材が使用されるのが、高深度その他の多様な環境における坑井処理工程であること、及び、ダウンホール内には、金属を始めとして種々の材料から形成される様々な他の諸部材が用いられていることなどから、使用環境によっては、分解性ダウンホールツールまたはその部材とこれらの他の諸部材等とが衝突や接触などを起こし、その際の衝撃で分解性ダウンホールツールまたはその部材の破砕、破壊や欠けなどが発生するおそれがあることが分かった。そのため、使用環境やツールの種類によっては、耐衝撃性を有する分解性ダウンホールツールまたはその部材が求められるようになり、該ダウンホールツールまたはその部材を形成するダウンホールツールまたはその部材用樹脂組成物としては、耐衝撃性を含む優れた機械的特性と分解性とを併せて有する材料が求められるようになってきた。
すなわち、高深度化など採掘条件がますます過酷かつ多様なものとなるもとで、十分な機械強度(引張強伸度や圧縮強伸度等)を損なうことなく、坑井掘削に使用する諸部材と接触や衝突しても損傷しにくい耐衝撃性を有し、かつ必要に応じて、多様な坑井の環境条件下で、その除去を容易に行うことができ、坑井掘削の経費節減及び工程短縮に寄与する、炭化水素資源の回収方法に使用するダウンホールツールまたはその部材、及びダウンホールツールまたはその部材用樹脂組成物が求められていた。
特表2003−533619号公報 米国特許出願公開2011/0277989号明細書 米国特許出願公開2005/0205266号明細書 米国特許第4716964号明細書 米国特許出願公開2012/0181032号明細書
本発明の課題は、高深度化など採掘条件が過酷かつ多様なものとなるもとで、十分な機械強度(引張強伸度や圧縮強伸度等)を損なうことなく、坑井掘削に使用する諸部材と接触や衝突しても損傷しにくい高い耐衝撃性を有し、かつ必要に応じて、多様な坑井の環境条件下で、その除去を容易に行うことができ、坑井掘削の経費節減及び工程短縮に寄与する、炭化水素資源の回収方法に使用するダウンホールツールまたはその部材を提供することにある。さらに、本発明の課題は、該ダウンホールツールまたはその部材を容易に得ることができるダウンホールツールまたはその部材用樹脂組成物を提供すること、及び、該ダウンホールツールまたはその部材を使用する炭化水素資源の回収方法を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究した結果、分解性樹脂に有機繊維強化材を含有させて、所定の機械的特性を有する分解性樹脂組成物から形成されるダウンホールツールまたはその部材とすることにより、課題を解決することができることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明によれば、分解性樹脂及び有機繊維強化材を含有する分解性樹脂組成物から形成されるダウンホールツールまたはその部材であって、
該分解性樹脂組成物は、アイゾット衝撃強さ(ノッチ有り)が40J/m以上、及び引張伸度が7%以上であることを特徴とする前記のダウンホールツールまたはその部材が提供される。
本発明によれば、発明の具体的な態様として、以下(1)及び(2)のダウンホールツールまたはその部材が提供される。
(1)分解性樹脂及び有機繊維強化材の合計を100質量%とするときに、分解性樹脂70〜97質量%及び有機繊維強化材3〜30質量%を含有する分解性樹脂組成物から形成される前記のダウンホールツールまたはその部材。
(2)ボールシーラー、ボールシート、フラックプラグ及びブリッジプラグからなる群より選ばれる前記のダウンホールツールまたはその部材。
また、本発明によれば、分解性樹脂及び有機繊維強化材の合計を100質量%とするときに、分解性樹脂70〜97質量%及び有機繊維強化材3〜30質量%を含有するダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物であって、
アイゾット衝撃強さ(ノッチ有り)が40J/m以上、及び引張伸度が7%以上であることを特徴とする前記のダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物が提供される。
そして、本発明によれば、前記のダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物の発明の具体的な態様として、以下(i)〜(iii)のダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物が提供される。
(i)分解性樹脂が、脂肪族ポリエステルである前記のダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物。
(ii)分解性樹脂が、ポリグリコール酸である前記のダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物。
(iii)有機繊維強化材が、アラミド繊維またはポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維である前記のダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物。
更にまた、本発明によれば、前記のダウンホールツールまたはその部材を使用する炭化水素資源の回収方法が提供される。
本発明によれば、分解性樹脂及び有機繊維強化材を含有する分解性樹脂組成物から形成されるダウンホールツールまたはその部材であって、
該分解性樹脂組成物は、アイゾット衝撃強さ(ノッチ有り)が40J/m以上、及び引張伸度が7%以上であることを特徴とする前記のダウンホールツールまたはその部材であることによって、高深度化など採掘条件が過酷かつ多様なものとなるもとで、十分な機械強度(引張強伸度や圧縮強伸度等)を損なうことなく、坑井掘削に使用する諸部材と接触や衝突しても損傷しにくい高い耐衝撃性を有し、かつ必要に応じて、多様な坑井の環境条件下で、その除去を容易に行うことができ、坑井掘削の経費節減及び工程短縮に寄与する、炭化水素資源の回収方法に使用するダウンホールツールまたはその部材を提供することができるという効果が奏される。
また、本発明によれば、分解性樹脂及び有機繊維強化材の合計を100質量%とするときに、分解性樹脂70〜97質量%及び有機繊維強化材3〜30質量%を含有するダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物であって、
アイゾット衝撃強さ(ノッチ有り)が40J/m以上、及び引張伸度が7%以上であることを特徴とする前記のダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物であることにより、前記のダウンホールツールまたはその部材を容易に得ることができるダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物が提供されるという効果が奏される。
更にまた、本発明によれば、前記のダウンホールツールまたはその部材を使用する炭化水素資源の回収方法であることにより、高深度化など採掘条件が過酷かつ多様なものとなるもとで、十分な機械強度(引張強伸度や圧縮強伸度等)を損なうことなく、坑井掘削に使用する諸部材と接触や衝突しても損傷しにくい高い耐衝撃性を有し、かつ必要に応じて、多様な坑井の環境条件下で、その除去を容易に行うことができ、坑井掘削の経費節減及び工程短縮に寄与する、炭化水素資源の回収方法に使用する炭化水素資源の回収方法が提供されるという効果が奏される。
本発明のダウンホールツールの具体例を示す模式図である。
I.ダウンホールツールまたはダウンホールツール部材
本発明のダウンホールツールまたはその部材は、分解性樹脂及び有機繊維強化材を含有する分解性樹脂組成物から形成されるダウンホールツールまたはその部材であって、該分解性樹脂組成物は、アイゾット衝撃強さ(ノッチ有り)が40J/m以上、及び引張伸度が7%以上であることを特徴とする前記のダウンホールツールまたはその部材である。
1.分解性樹脂
本発明のダウンホールツールまたはその部材を形成する分解性樹脂組成物に含有される分解性樹脂とは、例えば、フラクチャリング流体等が使用される土壌中の微生物によって分解される生分解性、または、フラクチャリング流体等の溶媒、特に、水によって、更に所望により酸またはアルカリによって分解する加水分解性を有する分解性樹脂などがあり、更に他の何らかの方法によって、例えば、所定温度以上の加熱条件によって化学的に分解することができる分解性樹脂でもよい。好ましくは、所定温度以上の水によって分解する加水分解性樹脂である。なお、重合度の低下等により樹脂が本来有する強度が低下して脆くなる結果、極めて小さい機械的力を加えることにより簡単に崩壊して形状を失う(以下、「崩壊性」ということがある。)樹脂も、分解性樹脂に該当する。
本発明のダウンホールツールまたはその部材は、例えば、高深度地下の高温高圧の環境など、過酷かつ多様な環境のもとにおいて、耐衝撃性を含む優れた機械的特性を有すると同時に、分解性に優れることが求められる。したがって、その観点から、分解性樹脂としては、例えば、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ−ε−カプロラクトン(PCL)等の脂肪族ポリエステルやポリビニルアルコール(ケン化度80〜95モル%程度の部分ケン化ポリビニルアルコールなど)などが挙げられるが、より好ましくは脂肪族ポリエステルである。また、分解性樹脂としての性質を失わない限り、テレフタル酸等の芳香族ポリエステルを形成する成分を組み合わせて使用することもできる。分解性樹脂は、単独でまたは2種以上をブレンド等により組み合わせて使用することもできる。
ダウンホールツールまたはその部材に求められる耐衝撃性を含む優れた機械的特性と分解性の観点から、脂肪族ポリエステルが、PGA、PLA及びグリコール酸・乳酸共重合体(PGLA)からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが最も好ましく、PGAが更に好ましい。すなわち最も好ましくは、分解性樹脂がPGAである。なお、PGAとしては、グリコール酸の単独重合体のほかに、グリコール酸繰り返し単位を50質量%以上、好ましくは75質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上、最も好ましくは99質量%以上であり、とりわけ好ましくは99.5質量%以上有する共重合体を包含する。また、PLAとしては、L−乳酸またはD−乳酸の単独重合体のほかに、L−乳酸またはD−乳酸の繰り返し単位を50質量%以上、好ましくは75質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上有する共重合体を包含する。PGLAとしては、グリコール酸繰り返し単位と乳酸繰り返し単位の比率(質量比)が、99:1〜1:99、好ましくは90:10〜10:90、より好ましくは80:20〜20:80である共重合体を使用することができる。
ダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物における分解性樹脂の含有量は、ダウンホールツールまたはその部材に要求される耐衝撃性や引張特性、及び、坑井掘削後に必要に応じて行う除去の容易さ等を勘案して適宜定めることができるが、分解性樹脂及び有機繊維強化材の合計を100質量%とするときに、通常70〜97質量%、好ましくは73〜96質量%、より好ましくは76〜95.5質量%、更に好ましくは79〜95質量%である。
2.有機繊維強化材
本発明のダウンホールツールまたはその部材を形成する分解性樹脂組成物に含有される有機繊維強化材としては、従来、ダウンホールツールまたはその部材を形成する分解性樹脂組成物において、強化材または充填剤として使用されている有機繊維強化材を使用することができる。本発明のダウンホールツールまたはその部材を形成する分解性樹脂組成物は、分解性樹脂とともに有機繊維強化材を、好ましくは所定の割合で、含有することにより、十分な機械強度を損なうことなく、坑井掘削に使用する諸部材との接触や衝突によっても損傷しにくい高い耐衝撃性を有し、かつ、必要に応じて除去を容易に行うことができるダウンホールツールまたはその部材を提供することができる。
有機繊維強化材として具体的には、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂等から形成される高融点有機質繊維が挙げられるが、ダウンホールツールまたはその部材を形成する分解性樹脂組成物の機械強度や耐衝撃性の観点及び分解性の観点から、高強度、耐摩耗性、耐熱性等を有する、いわゆる高性能・高機能繊維またはスーパー繊維に属する有機繊維強化材が好ましく挙げられる。より具体的には、ケブラー(登録商標)、トワロン(登録商標)、テクノーラ(登録商標)、ノーメックス(登録商標)等のアラミド繊維(全芳香族ポリアミド繊維);ザイロン(登録商標)等のポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維;ベクトラン(登録商標)等のポリアリレート繊維(ポリエステル);トヨフロン(登録商標)、テフロン(登録商標)等のテトラフルオロエチレン繊維;ダイニーマ(登録商標)等の超高分子量ポリエチレン繊維;などが挙げられる。特に好ましくは、アラミド繊維またはポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維である。
有機繊維強化材の繊維径や繊維長は、ダウンホールツールまたはその部材に要求される耐衝撃性や引張特性、及び、坑井掘削後に必要に応じて行う除去の容易さ等を勘案して適宜定めることができるが、繊維径としては、0.5〜100μmが好ましく、1〜80μmがより好ましく、3〜50μmが更に好ましく、繊維長としては、10mm以下であることが好ましく、0.5〜9mmがより好ましく、1〜8mmが更に好ましい。繊維径または繊維長が小さすぎると、ダウンホールツールまたはその部材に要求される機械強度や耐衝撃性が得られないことがある。繊維径または繊維長が大きすぎると、分解性が低下したり、成形性が悪くなったりすることがある。
有機繊維強化材は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。有機繊維強化材は、必要に応じて、集束剤または表面処理剤により処理されていてもよい。集束剤または表面処理剤としては、例えば、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物の官能性化合物が挙げられる。これらの化合物は、強化材に対して予め表面処理または集束処理を施して用いるか、あるいはダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物の調製の際に同時に添加してもよい。
ダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物における有機繊維強化材の含有量は、ダウンホールツールまたはその部材に要求される耐衝撃性や引張特性、及び、坑井掘削後に必要に応じて行う除去の容易さ等を勘案して適宜定めることができるが、分解性樹脂及び有機繊維強化材の合計を100質量%とするときに、通常3〜30質量%、好ましくは4〜27質量%、より好ましくは4.5〜24質量%、更に好ましくは5〜21質量%である。
3.他の配合成分
本発明のダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で、他の配合成分として、他の強化材、鎖延長剤、安定剤、分解促進剤または分解抑制剤等の各種添加剤や、更に他の樹脂材料を含有させてもよい。例えば、分解性樹脂組成物が、更に鎖延長剤を含有することにより、分解性樹脂の分子量が大きくなり、耐衝撃性、具体的には、アイゾット衝撃強さや機械強度が向上することがある。
〔他の強化材〕
本発明のダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物において、有機繊維強化材とともに、含有させることができる他の強化材としては、従来、機械的強度や耐熱性の向上を目的として樹脂材料等の強化材として使用されている材料を使用することができ、無機繊維強化材や、粒子状または粉末状強化材を使用することが挙げられる。
例えば、無機繊維強化材としては、ガラス繊維、炭素繊維、アスベスト繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化珪素繊維、硼素繊維、チタン酸カリ繊維等の無機繊維;ステンレス、アルミニウム、チタン、鋼、真鍮等の合金繊維または金属繊維;などが挙げられる。無機繊維強化材は、長さが通常10mm以下、好ましくは1〜6mm、より好ましくは1.5〜4mmの短繊維であり、ガラス繊維が特に好ましい。
粒子状または粉末状強化材としては、マイカ、シリカ、タルク、アルミナ、カオリン、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、フェライト、クレー、ガラス粉(ミルドファイバー等)、酸化亜鉛、炭酸ニッケル、酸化鉄、石英粉末、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム等を用いることができる。粒子状または粉末状強化材は、粒径が通常0.01μm〜1000μm、好ましくは0.05〜500μm、より好ましくは0.1〜200μmである。
他の強化材は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。強化材は、必要に応じて、先に説明した集束剤または表面処理剤により処理されていてもよい。
本発明のダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物が、有機繊維強化材に加えて、更に他の強化材を含有する場合、他の強化材の含有量は、有機繊維強化材の含有量に対して、1/2以下であることが好ましく、1/3以下がより好ましく、1/4以下が更に好ましい。
〔鎖延長剤〕
鎖延長剤としては、従来、分解性樹脂の鎖延長剤として使用されていた化合物を使用することができ、例えば、オキサゾリン化合物、イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、カルボジイミド変性イソシアネート化合物、脂肪酸ビスアミド化合物、アルキル置換型脂肪酸モノアミド化合物、トリアジン骨格を有する1〜3官能グリシジル変性化合物、エポキシ化合物、酸無水物、オキサジン化合物、ケテン化合物等が挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて含有させることができる。靱性向上の効果、具体的にはアイゾット衝撃強さ(ノッチ無し)の向上による高い耐衝撃性を実現でき、かつ、十分な引張特性及び分解性をバランス良く改善できる観点から、オキサゾリン化合物及びイソシアネート化合物が好ましい。
本発明のダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物が、更に鎖延長剤を含有する場合、鎖延長剤の含有量は、分解性樹脂100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、8質量部以下がより好ましく、6質量部以下が更に好ましい。
〔その他の各種添加剤など〕
本発明のダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物において、有機繊維強化材とともに含有させることができるその他の各種添加剤などとしては、例えば、各種ゴム材料またはエラストマー材料等の弾性材料、具体的には、コア−シェル構造を有するアクリルゴム含有メタクリレート樹脂等の熱可塑性エラストマー、分解性のゴム材料またはエラストマー材料等が挙げられ、より具体的には、例えば、脂肪族ポリエステルゴム、ポリウレタンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム等のほか、加水分解性を有する官能基を有するゴム材料またはエラストマー材料などが挙げられ、これらを含有させることにより、ダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物の靱性が向上し、耐衝撃性が更に改善されることがある。他の配合成分は、形状としては、繊維状、粒子状または粉末状のものを含有させることができ、また、1種または複数種を含有させることができる。その
他の配合成分の含有量は、適宜定めることができるが、分解性樹脂及び有機繊維強化材の合計量を100質量部とするときに、通常10質量部以下、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。
4.分解性樹脂組成物及び分解性樹脂組成物の機械的特性
本発明のダウンホールツールまたはその部材を形成するダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物は、分解性樹脂及び有機繊維強化材の合計を100質量%とするときに、分解性樹脂70〜97質量%及び有機繊維強化材3〜30質量%を含有するダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物であって、アイゾット衝撃強さ(ノッチ有り)が40J/m以上、及び引張伸度が7%以上であることを特徴とするダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物である。本発明のダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物は、上記の組成並びに所定範囲のアイゾット衝撃強さ(ノッチ有り)及び引張伸度を有することによって、高深度化など炭化水素資源回収のための採掘条件が過酷かつ多様となるもとで、十分な機械強度を損なうことなく、坑井掘削に使用する諸部材との接触や衝突によっても損傷しにくい高い耐衝撃性を有し、かつ、必要に応じて除去を容易に行うことができ、坑井掘削の経費節減及び工程短縮に寄与する、ダウンホールツールまたはその部材を容易に得ることができる。なお、ダウンホールツールまたはその部材の種類及び使用態様によっては、引張特性(引張強伸度)に代えて、圧縮特性(圧縮強伸度)によって、機械的特性を評価することができる。以下、機械的特性の測定方法及び評価方法を更に説明する。
〔アイゾット衝撃強さ(ノッチ有り)〕
本発明のダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物は、アイゾット衝撃強さ(ノッチ有り)が、40J/m以上である。アイゾット衝撃強さ(ノッチ有り)は、ASTM D256(ISO180に対応)に準拠して、ノッチ有り試験片について次のとおりにして測定する。すなわち、一軸のフルフライトスクリューを有する射出成形機を使用して、分解性樹脂が結晶性である場合はその融点以上に加熱し、結晶化温度近傍の温度に設定した金型で成形・冷却することにより成形を行った後、ノッチ加工して、ASTM D256に規定される縦63.5mm、横12.7mm及び厚み3.0mmの直方体形状の試験片(ノッチ有り)を調製する。また、分解性樹脂が非晶性である場合はそのガラス転移温度以上に加熱し、ガラス転移温度以下の温度に設定した金型で成形・冷却することにより、上記形状の試験片を調製する。いずれも、ゲートは試験片の長手方向に対する端部とする。調製された試験片について、振り子式衝撃試験機を使用して、常温(温度23℃±1℃)においてノッチ有り試験片の破壊時に吸収される衝撃エネルギーを測定してアイゾット衝撃強さ(n=5の平均値。単位:J/m)を算出する。ダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物のアイゾット衝撃強さ(ノッチ有り)が、40J/m未満であると、靱性が不足し、ダウンホールツールまたはその部材が、坑井掘削に使用する諸部材と接触や衝突した場合に、破砕、破壊や欠けが生じるおそれがある。すなわち、例えば、i)高速での移動中にボール等のダウンホールツールまたはその部材が破壊される、または傷(ノッチ)が発生する、ii)ボールの移動中またはボールをボールシート(ダウンホールツール部材)にセットするときに他の部材等から衝撃を受け、ボールが破壊する〔その際、i)においてノッチが発生していると、この段階での衝撃強さが、ノッチ無しの衝撃強さより有意に小さいノッチ有の衝撃強さとなる結果、更に破壊されやすくなる。〕、または、iii)ボールをボールシートにセットして圧力をかけた際に、傷や欠けがあることによって該圧力でボールが、破砕や破壊したりするおそれがある。ダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物のアイゾット衝撃強さ(ノッチ有り)は、好ましくは42J/m以上、より好ましくは44J/m以上であり、分解性樹脂及び有機繊維強化材の選択及び組成によっては、50J/m以上とすることができる。ダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物のアイゾット衝撃強さ(ノッチ有り)は、特に上限値がないが、概ね200J/m以下である。
〔アイゾット衝撃強さ(ノッチ無し)〕
なお、本発明のダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物は、高速でのローディングにおける破壊防止の観点から、アイゾット衝撃強さ(ノッチ無し)が、370J/m以上であることが好ましい。アイゾット衝撃強さ(ノッチ無し)は、ASTM D256(ISO180に対応)に準拠して、ノッチ無し試験片について測定するものである。すなわち、先にアイゾット衝撃強さ(ノッチ有り)について詳細に説明した方法により、ASTM D256の規定に従って調製した前記の形状の試験片(ノッチ無し)について、振り子式衝撃試験機を使用して、常温(温度23℃±1℃)においてノッチ無し試験片の破壊時に吸収される衝撃エネルギーを測定して算出したアイゾット衝撃強さ(n=5の平均値。単位:J/m)を、ダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物のアイゾット衝撃強さ(ノッチ無し)とする。前記のアイゾット衝撃強さ(ノッチ無し)は、372J/m以上が好ましく、375J/m以上がより好ましく、分解性樹脂及び有機繊維強化材の選択及び組成によっては、380J/m以上とすることができる。ダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物のアイゾット衝撃強さ(ノッチ無し)は、特に上限値がないが、概ね1000J/m以下である。
〔引張伸度〕
本発明のダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物は、引張伸度が7%以上である。引張伸度は、JIS K7113に準拠して測定することができる。すなわち、衝撃強さの測定に用いた試験片の調製と同様の条件で射出成形することにより調製した、JIS K7113に規定される形状の試験片(1号試験片)について、常温(温度23℃±1℃)において、速度50mm/分で引張試験を行い、試験片が破断したときの伸びを測定して算出する(n=5の平均値。単位:%)。ダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物の引張伸度が7%未満であると、ダウンホールツールまたはその部材を、高深度地下の高温環境にある坑井孔内に配置したり、穿孔やフラクチャリングを行ったりするときなどにおいて、ダウンホールツールまたはその部材が破砕したり、破壊や欠けが生じるおそれがある。ダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物の引張伸度は、上記の機能発現の観点から、8%以上が好ましく、9%以上がより好ましい。ダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物の引張伸度は、特に上限値がないが、概ね30%以下である。
〔引張強度〕
なお、本発明のダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物は、例えばフラックプラグ用マンドレルにおける作動時の引張や、ボールシーラーにおける目止め時に耐圧性を十分なものとする等の引張強度の観点から、引張強度100MPa以上であることが好ましく、110MPa以上がより好ましい。引張強度は、JIS K7113に準拠して測定することができる。すなわち、先に引張伸度について説明した方法により、JIS K7113の規定に従って調製した試験片(1号試験片)について、常温(温度23℃±1℃)において、速度50mm/分で引張試験を行い、試験片が破断したときの引張応力を測定して算出する(n=5の平均値。単位:MPa)。ダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物の引張強度は、特に上限値がないが、概ね200MPa以下である。
本発明のダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物は、有機繊維強化材を含有しない分解性樹脂組成物が有する引張強度が損なわれることなく、引張伸度が向上することから、バランスの良い引張特性を有する。すなわち、引張伸度(単位:%)と引張強度(単位:MPa)との比が、0.05以上、好ましくは0.06以上であり、分解性樹脂と有機繊維強化材との組み合わせによっては、0.07以上とすることができる。前記の比の上限は特にないが、通常0.2程度である。
5.ダウンホールツールまたはダウンホールツール部材
本発明のダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物から形成されるダウンホールツールまたはその部材は、高深度化など採掘条件が過酷かつ多様なものとなるもとで、十分な引張特性を有するとともに、高いアイゾット衝撃強さ(ノッチ無し)に現れている靱性に由来して、坑井掘削に使用する諸部材と接触や衝突しても損傷しにくい高い耐衝撃性を有し、かつ必要に応じて、多様な坑井の環境条件下で、その除去を容易に行うことができ、坑井掘削の経費節減及び工程短縮に寄与することができる。本発明のダウンホールツールまたはその部材としては、例えば、図1の模式図に示すプラグ(フラックプラグまたはブリッジプラグ等)のほかに、プラグに備えられる部材またはプラグとともに使用される部材、例えば、ボールシーラー(単に、「ボール」ということがある。)やボールシートなどが挙げられる。なお、先に説明したように、ダウンホールツールとダウンホールツール部材とは相対的な概念であって、その境界を厳格に定めることができないことがある。例えば、ボールシーラーは、単独でダウンホールツールといわれることもあるし、フラックプラグとともに、またはスリーブ内において、ボールシートと組み合わせて使用されることからダウンホールツール部材といわれることもある。
ダウンホールツールまたはその部材の具体例として、図1の模式図に示すプラグについて説明する。プラグは、マンドレル1、拡径可能な環状のゴム部材2、スリップ3、3’、ウエッジ4、4’、1対のリング5、5’を備えるプラグである。更に、マンドレル1の中空部hに、ボールシーラー10と中心部に円形状の空隙を有する略円環状のボールシート12とが備えられている。以下に、図1に模式的に示したプラグを使用するフラクチャリングを実施する場合について、説明する。
1対のリング5,5’は、マンドレル1の外周面上においてマンドレル1の軸方向に沿って摺動が可能で、相互の間隔を変更することができるように構成されており、かつ、拡径可能な環状のゴム部材2、及び、スリップ3、3’とウエッジ4、4’との組み合わせの軸方向に沿う端部に、直接または間接的に当接することにより、これらにマンドレル1の軸方向の力を加えることができるように構成されている。拡径可能な環状のゴム部材2は、マンドレル1の軸方向に直交する方向に拡径して、ダウンホールの内壁Hと当接し、プラグとダウンホールとの間の空間を閉塞(シール)し、次いで穿孔やフラクチャリングが遂行されている間、ダウンホールの内壁Hとの当接状態を維持することができ、プラグとダウンホールとのシールを維持する機能を有する。また、ウエッジ4、4’に、マンドレル1の軸方向の力が加えられることにより、スリップ3、3’が、ウエッジ4、4’の斜面の上面を摺動する結果、マンドレル1の軸方向と直交する外方に移動し、ダウンホールの内壁Hに当接して、プラグとダウンホールの内壁Hとの固定を行う。
また、マンドレル1の中空部hに備えられるボールシーラー10及びボールシート12は、いずれもマンドレル1の中空部hの内部においてにマンドレル1の軸方向に沿って移動が可能であり、ボールシート12の円形状の空隙にボールシーラー10が当接しまたは離隔することにより、流体の流れ方向を調節することができる。
なお、本発明のダウンホールツールまたはその部材であるプラグ(フラックプラグまたはブリッジプラグ等)としては、図1の模式図に示した構造に限られるものではない。また、本発明のダウンホールツールまたはその部材としては、ボールシーラー、ボールシート、フラックプラグ及びブリッジプラグからなる群より選ばれるダウンホールツールまたはその部材が挙げられるが、その他のダウンホールツールまたはその部材でもよい。
6.分解性樹脂組成物から形成されるダウンホールツールまたはダウンホールツール部材
本発明の分解性樹脂及び有機繊維強化材を含有する分解性樹脂組成物から形成されるダウンホールツールまたはその部材とは、i)該分解性樹脂組成物からなるダウンホールツールまたはその部材、例えば、該分解性樹脂組成物からなるボールシーラーや該分解性樹脂組成物からなるボールシートと、ii)該分解性樹脂組成物からなる部材を備えるダウンホールツールまたはその部材、例えば、該分解性樹脂組成物からなるマンドレルを備えるプラグ(フラックプラグまたはブリッジプラグ等)や該分解性樹脂組成物からなるリングを備えるプラグとの両方を意味するものである。
II.ダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物及びダウンホールツールまたはその部材の製造方法
本発明の分解性樹脂組成物及びダウンホールツールまたはその部材の製造方法は、特に限定されない。すなわち、分解性樹脂及び有機繊維強化材、及び必要に応じて更に含有させる他の配合成分を、有機繊維強化材が分解性樹脂中に均一分散している混合状態となるように、必要に応じて予め定法に従って混合した後に、各種の成形方法を実施する成形機に供給することによって、成形品であるダウンホールツールまたはその部材、或いは、ダウンホールツールまたはその部材を製造するための予備成形品を製造することができる。成形方法としては、例えば、注型成形、圧縮成形、射出成形、押出成形、固化押出成形、遠心成形その他の公知の成形方法を挙げることができる。ダウンホールツールまたはその部材を製造するための予備成形品としては、例えば、固化押出成形によって得られる棒状、中空状または板状等の形状の予備成形品が挙げられ、得られた予備成形品を、必要に応じて切削加工や穿孔等の機械加工をすることにより、ボール状のダウンホールツールまたはその部材や、異形断面を有する棒状体、中空体または板状体(例えば、長さ方向に外径及び/または内径が異なる部分を有する棒状体や中空体など)であるダウンホールツールまたはその部材を製造することができる。さらに、これらの製造方法によって得られた成形品を、それ自体公知の方法によって組み合わせることにより、ダウンホールツールまたはその部材を製造してもよい。
III.炭化水素資源の回収方法
本発明の炭化水素資源の回収方法は、前記した本発明のダウンホールツールまたはその部材を使用する炭化水素資源の回収方法である限り、特に限定されない。本発明のダウンホールツールまたはその部材を使用することにより、高深度化など採掘条件が過酷かつ多様なものとなるもとで、十分な引張特性を有するとともに、高いアイゾット衝撃強さ(ノッチ有り)に現れている靱性に由来して、坑井掘削に使用する諸部材と接触や衝突しても損傷しにくいという優れた靱性を有し、必要に応じてその除去を容易に行うことができ、坑井掘削の経費節減及び工程短縮に寄与する、炭化水素資源の回収方法が提供される。
例えば、本発明の炭化水素資源の回収方法は、ボールシーラー、ボールシート、フラックプラグ及びブリッジプラグから選ばれる本発明のダウンホールツールまたはその部材を使用して、ダウンホールの穿孔やフラクチャリングを行う方法である。本発明のダウンホールツールまたはその部材を使用することにより、該ダウンホールツールまたはその部材は、十分な引張特性を有するとともに、高いアイゾット衝撃強さ(ノッチ有り)に現れている靱性に由来して、坑井掘削に使用する諸部材と接触や衝突しても損傷しにくい高い耐衝撃性を有するので、坑井の掘削に要する経費節減や工程短縮の効果が奏される炭化水素資源の回収方法が提供される。さらに、本発明のダウンホールツールまたはその部材を使用することにより、必要に応じて、多様な坑井の環境条件下で、分解性樹脂を生分解、加水分解またはその他の方法によって分解させることにより、ダウンホールツールまたはその部材の除去を容易に行うことができることからも、坑井の掘削に要する経費節減や工程短縮の効果が奏される炭化水素資源の回収方法が提供される。
以下に実施例及び比較例を示して本発明を更に説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例におけるダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物に含有される材料及び分解性樹脂組成物の物性及び特性の測定方法は、以下のとおりである。
〔溶融粘度〕
ダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物に含有される分解性樹脂の溶融粘度は、キャピログラフ〔株式会社東洋精機製作所製キャピロ1A〕を使用して、温度270℃、剪断速度122sec-1で測定した(単位:Pa・s)。
〔アイゾット衝撃強さ(ノッチ有り)及びアイゾット衝撃強さ(ノッチ無し)〕
ダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物のアイゾット衝撃強さ(ノッチ有り)は、先に説明した方法により調製した試験片を使用して、振り子式衝撃試験機(株式会社上島製作所製、ハンマー質量40kg)を使用して、ASTM D256に準拠して、常温においてノッチ有り試験片について測定して、アイゾット衝撃強さ(ノッチ有り)を算出した(n=5の平均値。単位:J/m)。また、アイゾット衝撃強さ(ノッチ無し)は、振り子式衝撃試験機(株式会社東洋精機製作所製、ハンマー質量120kg)を使用して、同様にしてASTM D256に準拠して、常温においてノッチ無し試験片について測定を行うことにより、算出した。
〔引張伸度及び引張強度〕
ダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物の引張伸度及び引張強度は、先に説明した方法により調製した試験片を使用して、株式会社島津製作所製の2tオートグラフAG−2000Eを使用して、JIS K7113に準拠して、常温において、速度50mm/分で測定し、算出した(n=5の平均値。それぞれの単位:%及びMPa)。
[実施例1]
以下の材料;
分解性樹脂:PGA(株式会社クレハ製、溶融粘度900Pa・s)92質量%及び有機繊維強化材:アラミド繊維〔帝人株式会社社製のテクノーラ(登録商標)ZCFT322EH。繊維径10〜11μm、繊維長3mm。以下、「アラミド」と表記することがある。〕8質量%(分解性樹脂及び有機繊維強化材の合計は100質量%である。)を、L/D=25の23mmφ二軸押出機(株式会社東洋精機製作所製2D25S)を使用して、温度230〜250℃において5分間混合した後、射出成形機を使用して、物性及び特性測定用の試料を作製し、ダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物を得た。得られた分解性樹脂組成物について、アイゾット衝撃強さ(ノッチ有り)、アイゾット衝撃強さ(ノッチ無し)、引張伸度及び引張強度(以下、総称して「靱性及び引張特性」ということがある。)を測定・算出した。結果を分解性樹脂組成物の組成とともに表1に示す。
[実施例2]
分解性樹脂組成物の組成を、PGA88質量%及び有機繊維強化材12質量%(分解性樹脂及び有機繊維強化材の合計は100質量%である。)に変更したことを除いて、実施例1と同様にして、ダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物を得た。得られた分解性樹脂組成物について、靱性及び引張特性を測定・算出した。結果を分解性樹脂組成物の組成とともに表1に示す。
[実施例3]
分解性樹脂組成物の組成を、PGA80質量%及び有機繊維強化材20質量%(分解性樹脂及び有機繊維強化材の合計は100質量%である。)に変更したことを除いて、実施例1と同様にして、ダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物を得た。得られた分解性樹脂組成物について、靱性及び引張特性を測定・算出した。結果を分解性樹脂組成物の組成とともに表1に示す。
[実施例4]
分解性樹脂組成物の組成を、PGA95質量%及び有機繊維強化材:PBO繊維〔東洋紡績株式会社製のザイロン(登録商標)H12WD。1.7dtex、繊維長1mm。以下、「PBO」と表記することがある。〕5質量%(分解性樹脂及び有機繊維強化材の合計は100質量%である。)に変更したことを除いて、実施例1と同様にして、ダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物を得た。得られた分解性樹脂組成物について、靱性及び引張特性を測定・算出した。結果を分解性樹脂組成物の組成とともに表1に示す。
[比較例1]
分解性樹脂組成物の組成を、PGA100質量%からなるものに変更した(有機繊維強化材を含有しない。)ことを除いて、実施例1と同様にして、分解性樹脂組成物を得た。得られた分解性樹脂組成物について、靱性及び引張特性を測定・算出した。結果を分解性樹脂組成物の組成とともに表1に示す。
Figure 2015124266
表1から、実施例1〜4のダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物は、分解性樹脂及び有機繊維強化材の合計を100質量%とするときに、分解性樹脂70〜97質量%及び有機繊維強化材3〜30質量%を含有するダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物であって、アイゾット衝撃強さ(ノッチ有り)が40J/m以上、及び引張伸度が7%以上であることが確認された。また、実施例1〜4のダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物は、引張伸度(単位:%)と引張強度(単位:MPa)との比は、0.067〜0.085であり、バランスの良い引張特性を有するものであることが分かった。実施例1〜4のダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物によれば、本発明の分解性樹脂及び有機繊維強化材を含有する分解性樹脂組成物から形成されるダウンホールツールまたはその部材であって、該分解性樹脂組成物は、アイゾット衝撃強さ(ノッチ有り)が40J/m以上、及び引張伸度が7%以上であることを特徴とする前記のダウンホールツールまたはその部材を得ることができるので、高深度化など採掘条件が過酷かつ多様なものとなるもとで、十分な引張特性を有するとともに、高いアイゾット衝撃強さ(ノッチ有り)に現れている靱性に由来して、坑井掘削に使用する諸部材と接触や衝突しても損傷しにくい高い耐衝撃性を有し、かつ必要に応じて、多様な坑井の環境条件下で、その除去を容易に行うことができ、坑井掘削の経費節減及び工程短縮に寄与する効果が奏されることが推察された。
これに対し、有機繊維強化材を含有しない比較例1の分解性樹脂組成物は、アイゾット衝撃強さ(ノッチ有り)が25J/mであり、引張伸度が5%であり、また前記の引張伸度と引張強度との比が0.042であることから、実施例1〜4のダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物は、アイゾット衝撃強さ(ノッチ有り)が大幅に向上し、また、引張伸度が向上し、引張特性が改善されているものであることが分かった。さらに、有機繊維強化材を含有しない比較例1の分解性樹脂組成物は、アイゾット衝撃強さ(ノッチ無し)が360J/mであり、引張強度が120MPaであることから、実施例1〜4のダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物は、引張強度が低下したりすることがなく、アイゾット衝撃強さ(ノッチ無し)についても向上が窺われるものであることが分かった。
本発明は、分解性樹脂及び有機繊維強化材を含有する分解性樹脂組成物から形成されるダウンホールツールまたはその部材であって、該分解性樹脂組成物は、アイゾット衝撃強さ(ノッチ有り)が40J/m以上、及び引張伸度が7%以上であることを特徴とする前記のダウンホールツールまたはその部材であることによって、高深度化など採掘条件がますます過酷かつ多様なものとなるもとで、十分な引張特性を有するとともに、高いアイゾット衝撃強さ(ノッチ有り)に現れている靱性に由来して、坑井掘削に使用する諸部材と接触や衝突しても損傷しにくい高い耐衝撃性を有し、かつ必要に応じて、多様な坑井の環境条件下で、その除去を容易に行うことができ、坑井掘削の経費節減及び工程短縮に寄与する、炭化水素資源の回収方法に使用するダウンホールツールまたはその部材を提供することができるので、産業上の利用可能性が高い。
また、本発明は、分解性樹脂及び有機繊維強化材の合計を100質量%とするときに、分解性樹脂70〜97質量%及び有機繊維強化材3〜30質量%を含有するダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物であって、アイゾット衝撃強さ(ノッチ有り)が40J/m以上、及び引張伸度が7%以上であることを特徴とする前記のダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物であることにより、前記のダウンホールツールまたはその部材を容易に得ることができるダウンホールツールまたはその部材用分解性樹脂組成物を提供することができるので、産業上の利用可能性が高い。
更にまた、本発明は、前記のダウンホールツールまたはその部材を使用する炭化水素資源の回収方法であることにより、高深度化など採掘条件が過酷かつ多様なものとなるもとで、十分な引張特性を有するとともに、アイゾット衝撃強さ(ノッチ有り)に現れている靱性の顕著な改良効果に由来して、坑井掘削に使用する諸部材と接触や衝突しても損傷しにくい高い耐衝撃性を有し、かつ必要に応じて、多様な坑井の環境条件下で、その除去を容易に行うことができ、坑井掘削の経費節減及び工程短縮に寄与する、炭化水素資源の回収方法を提供することができるので、産業上の利用可能性が高い。
1 : マンドレル
2 : 拡径可能な環状のゴム部材
3、3’ : スリップ
4、4’ : ウエッジ
5、5’ : リング
10 : ボール(ボールシーラー)
12 : ボールシート
H : ダウンホールの内壁
h : マンドレルの中空部

Claims (8)

  1. 分解性樹脂及び有機繊維強化材を含有する分解性樹脂組成物から形成されるダウンホールツールまたはダウンホールツール部材であって、
    該分解性樹脂組成物は、アイゾット衝撃強さ(ノッチ有り)が40J/m以上、及び引張伸度が7%以上であることを特徴とする前記のダウンホールツールまたはダウンホールツール部材。
  2. 分解性樹脂及び有機繊維強化材の合計を100質量%とするときに、分解性樹脂70〜97質量%及び有機繊維強化材3〜30質量%を含有する分解性樹脂組成物から形成される請求項1記載のダウンホールツールまたはダウンホールツール部材。
  3. ボールシーラー、ボールシート、フラックプラグ及びブリッジプラグからなる群より選ばれる請求項1または2記載のダウンホールツールまたはダウンホールツール部材。
  4. 分解性樹脂及び有機繊維強化材の合計を100質量%とするときに、分解性樹脂70〜97質量%及び有機繊維強化材3〜30質量%を含有するダウンホールツールまたはダウンホールツール部材用分解性樹脂組成物であって、
    アイゾット衝撃強さ(ノッチ有り)が40J/m以上、及び引張伸度が7%以上であることを特徴とする前記のダウンホールツールまたはダウンホールツール部材用分解性樹脂組成物。
  5. 分解性樹脂が、脂肪族ポリエステルである請求項4記載のダウンホールツールまたはダウンホールツール部材用分解性樹脂組成物。
  6. 分解性樹脂が、ポリグリコール酸である請求項4または5記載のダウンホールツールまたはダウンホールツール部材用分解性樹脂組成物。
  7. 有機繊維強化材が、アラミド繊維またはポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維である請求項4乃至6のいずれか1項に記載のダウンホールツールまたはダウンホールツール部材用分解性樹脂組成物。
  8. 請求項1乃至3のいずれか1項に記載のダウンホールツールまたはダウンホールツール部材を使用する炭化水素資源の回収方法。
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