JP2015119235A - 波長多重光通信システム、光送信器、及び波長多重光通信方法 - Google Patents

波長多重光通信システム、光送信器、及び波長多重光通信方法 Download PDF

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Abstract

【課題】WDM/TDM−PONに映像系サービスを導入した場合の誘導ラマン散乱による影響を受け難い波長多重通信システム、光送信器、及び波長多重光通信方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る波長多重光通信方法は、1台のOLTと少なくとも1台のONUとが光ファイバ伝送路で接続された波長多重光通信システムにおいて、光ファイバ中の非線形効果による誘導ラマン散乱を発生させる第1光信号を伝送する際に、前記誘導ラマン散乱の影響を受ける、前記第1光信号の波長と異なる複数の波長の第2光信号を前記光ファイバを同じ距離だけ伝搬させる場合に、長波長側より短波長側にある前記第2光信号の光強度を強くする。
【選択図】図3

Description

本発明は複数波長を用いた波長多重通信光通信システムにおける誘導ラマン散乱の影響を緩和する波長多重光通信システム、光送信器、及び波長多重光通信方法に関する。
近年、急速な普及を遂げているFiber To The Home(FTTH)サービスを支える光アクセスシステムとして、Passive Optical Network(PON)システムの導入が世界各国で進められている。PONシステムは、光ファイバ伝送路中に設置された光スプリッタを介して、収容局に設置された1台の終端装置(OLT:Optical Line Terminal)が、複数の加入者宅に設置された宅内装置(ONU:Optical Network Unit)を収容することで、光ファイバ伝送路、光スプリッタ、およびOLTを複数の加入者間で共有することで、高い経済性を実現した光アクセスシステムである。
現在、日本では主に1Gb/sの伝送量を有するGE−PON(Gigabit Ethernet(登録商標)−PON)システムが商用導入されている。また、さらなる高速化を実現する次世代光アクセスシステムとし、10Gb/s級の総伝送容量を有する、10G−EPONおよびXG−PONの標準化が完了し、世界各国で研究開発が進められている。
このような伝送速度の高速化を背景に、10Gb/s級PONの後継システムとしてNG−PON2の議論が、標準化団体であるFSAN(Full Service Access Network)においてされている。NG−PON2では従来PONシステムからの高速化に加えて、アクセスネットワークの高度化を目指し、これまでのPONシステムで用いられてきた時間軸の多重(TDM:Time Division Multiplexing)に加えて、光の特性を生かした波長軸の多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)を利用することで、収容効率や保守管理などの効率化を図ることが可能となる、WDM/TDM−PONシステムが検討されている(例えば、非特許文献1を参照。)。
現在、標準化で検討されているWDM/TDM−PONの波長配置は、GE−PON、10G−EPON、映像系サービス、保守管理機能波長帯などとの共存を見込み、既存光アクセスシステムにおいて使用されていないC帯(1520〜1540nm付近)、およびL帯(1590〜16010nm付近)の使用が検討されている。これにより、WDM/TDM−PONは従来のサービスとの共存が可能となり、複数世代の共存や、新しいシステムへの移行(マイグレーション)が円滑に行える。
H. Nakamura, K. Taguchi, S. Tamaki, T. Mizuno, Y. Hashizume, T. Yamada, M. Ito, H. Takahashi, S. Kimura, and N. Yoshimoto, "40Gbit/s−class−λ−tunable WDM/TDM−PON using λ−selectable B−Tx and 4 x M cyclic AWG router for flexible photonic aggregation networks", OSA Optics Express, Vol. 21, No.1, pp−463−468, January 2013.
映像系サービスは1550nmに波長が規定されており、主に欧米ではAM(Amplitude Modulation)変復調、日本ではFM(Frequency Modulation)変復調技術を用いてサービスされている。これら映像系サービスは、高出力光信号を用いており、WDM/TDM−PONと映像系サービスとの共存を検討した場合、1550nmに配置された高出力映像信号が起因となり、非線形効果による誘導ラマン散乱が発生する。
WDM/TDM−PONの上り光信号は、映像系信号に対して短波長側にあたるため、上り信号パワーが誘導ラマン増幅効果により映像系信号に重畳され、光ファイバ伝送中に上り信号パワーが減衰する。一方、映像系信号は増幅作用を受ける。このため、上り光信号は映像系信号に起因する誘導ラマン効果の影響による減衰でONUが受信不能となる恐れという課題がある。
一方、WDM/TDM−PONの下り信号は映像系信号に対して長波長側にあたるため、映像系信号は誘導ラマン増幅項により下り光信号に重畳され、光ファイバ伝送中に下り信号パワーが増幅される。一方、映像系信号は減衰作用を受ける。このため、下り光信号は映像系信号に起因する誘導ラマン効果の影響による増幅で、下り信号パワーが近距離ONU受信時に過負荷限界を超える恐れという課題がある。
そこで本発明は、上記課題を解決するために、WDM/TDM−PONに映像系サービスを導入した場合の誘導ラマン散乱による影響を受け難い波長多重通信システム、光送信器、及び波長多重光通信方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、誘導ラマン散乱によるスペクトルチルトの影響を考慮して、上りおよび下り光信号を出力際の光強度を決定することとした。
具体的には、本発明に係る波長多重通信システムは、1台のOLTと少なくとも1台のONUとが光ファイバ伝送路で接続された波長多重光通信システムであって、
前記OLT及び前記ONUは、
光ファイバ中の非線形効果による誘導ラマン散乱を発生させる第1光信号を出力する第1光送信器と、
前記誘導ラマン散乱の影響を受ける、前記第1光信号の波長と異なる複数の波長の第2光信号を出力する第2光送信器と、
を備えており、
前記第2光送信器は、前記第2光信号を前記光ファイバを同じ距離だけ伝搬させる場合に、長波長側より短波長側にある前記第2光信号の光強度を強くすることを特徴とする。
また、本発明に係る光送信器は、上記第2光送信器である。
さらに、本発明に係る波長多重通信方法は、1台のOLTと少なくとも1台のONUとが光ファイバ伝送路で接続された波長多重光通信システムにおいて、光ファイバ中の非線形効果による誘導ラマン散乱を発生させる第1光信号を伝送する際に、
前記誘導ラマン散乱の影響を受ける、前記第1光信号の波長と異なる複数の波長の第2光信号を前記光ファイバを同じ距離だけ伝搬させる場合に、長波長側より短波長側にある前記第2光信号の光強度を強くすることを特徴とする。
光ファイバの伝搬距離が同じであれば、映像系光信号の信号パワーに起因する誘導ラマン散乱で、通常のPON信号のうち映像信号より長波長の光信号は長波長ほど光強度が増し、映像信号より短波長の光信号は短波長ほど光信号が減少する。この現象をスペクトルチルトと呼ぶ。従って、本波長多重通信システムは、スペクトルチルトの発生を考慮し、映像信号より長波長の光信号の出力を長波長ほど小さくし、映像信号より短波長の光信号の出力を短波長ほど大きくする。このように波長毎に光信号の光強度を変更することでスペクトルチルトの傾き(波長間の光強度差)を低減することができる。
従って、本発明は、WDM/TDM−PONに映像系サービスを導入した場合の誘導ラマン散乱による影響を受け難い波長多重通信システム、光送信器、及び波長多重光通信方法を提供することができる。
特に、本発明の前記第2光送信器は、前記第2光信号を前記光ファイバを同じ距離だけ伝搬させる場合に、前記第2光信号を受信する光受信器で各波長の光強度が等しくなるような光強度の前記第2光信号を出力することが望ましい。
本発明に係る波長多重光通信システムの前記第2光送信器は、前記光ファイバを伝搬する距離に応じて前記第2光信号が受ける前記誘導ラマン散乱による増幅量もしくは減衰量に基づき、前記第2光信号を受信する光受信器に設定されている受信可能光強度範囲に収まる光強度の前記第2光信号を出力することを特徴とする。
本発明に係る波長多重光通信方法は、前記光ファイバを伝搬する距離に応じて前記第2光信号が受ける前記誘導ラマン散乱による増幅量もしくは減衰量に基づき、前記第2光信号を受信する光受信器に設定されている受信可能光強度範囲に収まるように送信側で前記第2光信号の光強度を決定することを特徴とする。
PONシステムではONU毎にOLTとの距離は異なるため、光信号が受ける誘導ラマン散乱の影響の大きさは、通信先のONU毎に異なることになる。このため、光信号が光ファイバを伝送する距離によっては、光受信器が受信できる光強度の許容範囲を超過又は未達となることがある。従って、本発明では、光信号の光ファイバを伝送する距離に基づき、光信号の送信先で前記許容範囲に収まる光強度となるように光信号の出力光強度を設定する。誘導ラマン散乱の発生で通信不能になることを回避できる。
波長毎に光信号の出力光強度を変更する具体的構成は次の通りである。
本発明に係る波長多重光通信システムの1の前記第2光送信器は、動的波長帯域割当機能で取得したレンジング情報に基づいて、前記光ファイバを伝搬する距離に応じて前記第2光信号が受ける前記誘導ラマン散乱による増幅量もしくは減衰量を判断し、光を変調する光変調部への駆動電流を調整することを特徴とする。
本発明に係る波長多重光通信システムの他の前記第2光送信器は、動的波長帯域割当機能で取得したレンジング情報に基づいて、前記光ファイバを伝搬する距離に応じて前記第2光信号が受ける前記誘導ラマン散乱による増幅量もしくは減衰量を判断し、光を変調する光変調部から出力を光減衰器で調整することを特徴とする。
本発明は、WDM/TDM−PONに映像系サービスを導入した場合の誘導ラマン散乱による影響を受け難い波長多重通信システム、光送信器、及び波長多重光通信方法を提供することができる。
WDM/TDM−PONの構成を説明する図である。 誘導ラマン散乱の影響を説明する図である。 本発明に係る波長多重光通信システムが誘導ラマン散乱の影響を低減する手法を説明する図である。 誘導ラマン散乱の影響を説明する図である。 本発明に係る波長多重光通信システムが誘導ラマン散乱の影響を低減する手法を説明する図である。 誘導ラマン散乱の影響を説明する図である。 本発明に係る波長多重光通信システムが誘導ラマン散乱の影響を低減する手法を説明する図である。 誘導ラマン散乱の影響を説明する図である。 本発明に係る波長多重光通信システムが誘導ラマン散乱の影響を低減する手法を説明する図である。 本発明に係る光通信器の構成を説明する図である。 本発明に係る光通信器の構成を説明する図である。 本発明に係る光通信器の構成を説明する図である。
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
(関連技術)
図1は、スプリッタ網を用いたWDM/TDM−PONの代表的な構成を説明する図である。WDM/TDM−PONは波長可変ONU11、λ1からλmの各波長に対応したOLT−port22およびMAC(Media Access Controller)21から構成されるOLT12、光ファイバ伝送路13、及び光スプリッタ14から構成される。また、スプリッタ網以外にも光合分派器(AWG:Arrayed Waveguide Grating)などを用いた形態も報告されている。スプリッタ網に適用するONU11は波長可変送受信器を備えており、波長可変バースト送受信が可能である。
一方、OLT12は各波長に対応した送受信器を備え、バースト送受信を行う。MAC21に実装されたDWBA(Dynamic Wavelength and Bandwidth Allocation)機能により、TDM領域における帯域、およびWDM領域における波長を有効に使うことで、ユーザ間の帯域公平制御を実現する。また、システムの波長可変性を活用することで、OLT12の高信頼化および省電力化、システムの段階的なアップグレード、並びにONUに用いる送受信器の単品種(カラーレス)化が可能となる。
これら、WDM/TDM−PONシステムの波長は、既存のGE−PONやG−PON、映像用波長帯、および標準化が完了している10GE−PONやXG−PONとの共存を可能とするため、光アクセスシステムにおいて未使用波長帯である上り信号にC帯(1520〜1550nm付近)、および下り信号にL帯(1590〜1605nm付近)を割り当てることが標準化で議論されている。
将来のサービス提供形態を考えた場合、図1にあるようにWDM/TDM−PONと映像系サービスが同一のネットワークで提供されることが考えられる。この様な条件においては、WDM/TDM−PONの上り下り信号(C/L帯)と映像信号波長帯(1550nm)が狭い波長領域に設置されることとなる。このため、非常に強い光出力パワーを用いて各ONUに映像サービスを分配している映像用光信号は、WDM/TDM−PONの上り下り信号と誘導ラマン散乱による非線形光学効果を誘発し、WDM/TDM−PONの上り下り信号共にシステムペナルティが発生する恐れがある。
なお、このような問題は、従来のGE−PONや10GE−PONなどでは上り波長帯(1300nm付近)と映像系波長帯(1550nm付近)の波長間隔が広く、誘導ラマン散乱が発生しないため、問題とならなかった。
(実施形態1)
図2は、映像系光信号による誘導ラマン散乱効果の影響によって、下り信号が受ける影響を説明する図である。なお、下り信号は無調整時に置いて全てのOLT−portから、同一パワーが出力されると仮定する。また、図2は、スプリッタ網のある点(ONU手前等)を通過する光信号の強度を説明している。
このような条件下では、L帯に配置されるWDM/TDM−PONの下り信号は、映像用信号波長から見て長波長側に位置する。このため、誘導ラマン散乱効果によって、映像信号のパワーが長波長側のWDM/TDM−PON上り信号に重畳される。これにより、誘導ラマン散乱発生後の光パワーの関係は、映像信号は減衰し、上り信号は短波長から長波長に向かうにつれて光パワーが増加し、光パワーレベルが波長によって不均一になってしまう。この現象をスペクトルチルトと呼ぶ。
これら誘導ラマン散乱によるスペクトルチルトが下り信号に発生すると、波長ごとに下り信号伝送距離やロスバジェットが異なる事態となり、ネットワーク設計上大きな支障をきたす。
図3は、誘導ラマン散乱によるスペクトルチルトを低減する手法を説明する図である。本実施形態の波長多重光通信方法は、1台のOLTと少なくとも1台のONUとが光ファイバ伝送路で接続された波長多重光通信システムにおいて、光ファイバ中の非線形効果による誘導ラマン散乱を発生させる第1光信号を伝送する際に、
前記誘導ラマン散乱の影響を受ける、前記第1光信号の波長と異なる複数の波長の第2光信号を前記光ファイバを同じ距離だけ伝搬させる場合に、長波長側より短波長側にある前記第2光信号の光強度を強くすることを特徴とする。
上記波長多重光伝送方法を実現するため、本実施形態の波長多重光通信システムは、1台のOLTと少なくとも1台のONUとが光ファイバ伝送路で接続された波長多重光通信システムであって、
前記OLT及び前記ONUは、
光ファイバ中の非線形効果による誘導ラマン散乱を発生させる第1光信号を出力する第1光送信器と、
前記誘導ラマン散乱の影響を受ける、前記第1光信号の波長と異なる複数の波長の第2光信号を出力する第2光送信器と、
を備えており、
前記第2光送信器は、前記第2光信号を前記光ファイバを同じ距離だけ伝搬させる場合に、長波長側より短波長側にある前記第2光信号の光強度を強くすることを特徴とする。
ここで、第1光信号が映像信号であり、第2光信号がPONの上り信号及び下り信号である。
また、前記第2光送信器は、前記第2光信号を前記光ファイバを同じ距離だけ伝搬させる場合に、前記第2光信号を受信する光受信器で各波長の光強度が等しくなるような光強度の前記第2光信号を出力することが好ましい。
前述のように、WDM/TDM−PONの下り信号においては、長波長側の信号ほど誘導ラマン散乱の影響が大きく、信号の増幅度が大きくなる。このため、これら誘導ラマン散乱による信号の増幅度を考慮し、予め各OLT−portから出力時に、短波長から長波長に向かうにつれて徐々に送信パワーを小さくするように設定することで、誘導ラマン効果の影響を受けた下り伝送信号は、波長に依らず一定の光パワーの下りWDM信号となる。
本手法により、映像サービスとWDM/TDM−PONが混在時における、WDM/TDM−PON下り信号のスペクトルチルトが抑圧でき、柔軟なネットワーク設計によるサービス展開が期待できる。
(実施形態2)
図4は、ONUが下り信号を受信する際における誘導ラマン散乱の影響を説明する図である。ONU1、2、3はそれぞれ、近距離、遠距離、中距離に収容されるとし、下り信号はこれら3つのONU分のフレームから構成されるとする。下り信号は誘導ラマン散乱によって信号パワーが強くなるため、ONUが受信する際の下り信号パワーが、受信器の過負荷限界(最大許容入力パワー)以上になってしまう恐れがある。受信器の過負荷限界は、光信号の過入力による受信器の破損を防止するために規定されており、すなわち下り信号の誘導ラマン散乱によってONU故障を引きおこす恐れがあることを意味する。
このようなONU故障を回避するため、本実施形態の波長多重光通信方法は、前記光ファイバを伝搬する距離に応じて前記第2光信号が受ける前記誘導ラマン散乱による増幅量もしくは減衰量に基づき、前記第2光信号を受信する光受信器に設定されている受信可能光強度範囲に収まるように送信側で前記第2光信号の光強度を決定することを特徴とする。また、本実施形態の波長多重光通信システムの前記第2光送信器は、前記光ファイバを伝搬する距離に応じて前記第2光信号が受ける前記誘導ラマン散乱による増幅量もしくは減衰量に基づき、前記第2光信号を受信する光受信器に設定されている受信可能光強度範囲に収まる光強度の前記第2光信号を出力する。
図5は、本実施形態での下り信号フレームを説明する図である。本実施形態では、下り信号の誘導ラマン散乱によるONU故障を防止するため、DWBAのレンジング情報を用いたOLT−port出力設定を行う。PONシステムにおいてはスプリッタで合波される上りバースト信号の衝突を防ぐため、ONU収容位置探知(レンジング)機能が用いられている。OLTは各ONUの収容位置を把握し、DWBA機能によって波長と帯域を割り振って通信を行う。
本手法では、レンジング機能動作時に把握した各ONUの位置情報をもとに、各ONUまでの下り信号伝送距離に応じて、誘導ラマン散乱によって増幅された下り信号が各ONUで過負荷限界を超えないよう、OLT−port出力を制御する。
本手法により、映像サービスとWDM/TDM−PONが混在時における、誘導ラマン散乱によるONU故障を未然に防ぐことが可能となり、柔軟なネットワーク設計によるサービス展開が期待できる。
(実施形態3)
図6は、映像系光信号による誘導ラマン散乱効果の影響によって、上り信号が受ける影響を説明する図である。なお、上り信号は無調整時に置いて全てのONUから、同一パワーが出力されると仮定する。また、図6は、同一のONUが出力した上り信号がスプリッタ網のある点(OLT手前等)を通過するときの強度を説明している。
このような条件下では、C帯に配置されるWDM/TDM−PONの上り信号は、映像用信号波長から見て短波長側に位置する。このため、誘導ラマン散乱効果によって、短波長側のWDM/TDM−PON上り信号パワーが映像信号パワーに重畳される。これにより、誘導ラマン散乱発生後の光パワーの関係は、映像信号は増幅し、上り信号は長波長側から短波長側に向かうにつれて光パワーが減少し、光パワーレベルが波長によって不均一になってしまう、スペクトルチルトが発生する。
これら誘導ラマン散乱によるスペクトルチルトが上り信号に発生すると、波長ごとに上り信号伝送距離やロスバジェットが異なる事態となり、ネットワーク設計上大きな支障をきたす。
図7は、誘導ラマン散乱による上り信号のスペクトルチルトを低減する手法を説明する図である。本実施形態の波長多重光通信方法は、実施形態1で説明した手法と同じである。実施形態1の波長多重光通信システムは、本実施形態の波長多重光伝送方法を実現することができる。
前述のように、WDM/TDM−PONの上り信号においては、短波長側の信号ほど誘導ラマン散乱の影響が大きく、信号の減衰量が大きくなる。このため、これら誘導ラマン散乱による信号の減衰量を考慮し、予め各ONU出力時に、長波長側から短波長側に向かうにつれて徐々に送信パワーを大きくするように設定することで、誘導ラマン効果の影響を受けた上り伝送信号は、波長に依らず一定の光パワーの上りWDM信号となる。
本手法により、映像サービスとWDM/TDM−PONが混在時における、WDM/TDM−PON下り信号のスペクトルチルトが抑圧でき、柔軟なネットワーク設計によるサービス展開が期待できる。
(実施形態4)
図8は、各OLT−portが上りバースト信号を受信する際における誘導ラマン散乱の影響を説明する図である。ONU1、2、3はそれぞれ、近距離、遠距離、中距離に収容されるとし、上りバースト信号はこれら3つのONUから出力されたバースト信号から構成されるとする。上り信号は誘導ラマン散乱によって信号パワーが減衰するため、OLT−portが受信する上りバースト信号パワーが受信器の最小受信感度以下になってしまう恐れがある。すなわち誘導ラマン散乱によって、遠距離に収容されたONUからの上りバースト信号を受信できない恐れがある。
実施形態1で説明した波長多重光通信システム及び波長多重光通信方法は、このような不具合も回避できる。図9は、本実施形態での上り信号フレームを説明する図である。本実施形態では、これら上りバースト信号の誘導ラマン散乱による影響を解消するため、DWBAのレンジング情報を用いてONU出力を設定する。
本実施形態では、レンジング機能動作時に把握した各ONUの位置情報をもとに、各ONUからOLT−portまでの上りバースト信号伝送距離に応じて、誘導ラマン散乱によって減衰された上りバースト信号が各OLT−portで受信される際に最小受信感度以下にならないよう、ONU出力を制御する。
本手法により、映像サービスとWDM/TDM−PONが混在時における、誘導ラマン散乱による上りバースト信号への影響を防ぐことが可能となり、柔軟なネットワーク設計によるサービス展開が期待できる。
(実施形態5)
図10は、実施形態1から4で説明した波長多重光通信方法を実現する光送信器30を説明する図である。光送信器30は、動的波長帯域割当機能で取得したレンジング情報に基づいて、前記光ファイバを伝搬する距離に応じて前記第2光信号が受ける前記誘導ラマン散乱による増幅量もしくは減衰量を判断し、光を変調する光変調部への駆動電流を調整する。
光送信器30は、制御部31、電流印加部32、光送信部33、外部変調器駆動部34、および外部変調部35を有する。外部変調部35は外部変調器駆動部34で駆動され、光信号(PON信号)が生成される。PON信号の送信波長、バースト状態、及び出力パワーは、それぞれ制御部31に入力される信号波長情報、バースト制御情報、及びレンジング情報をもとに決定される。なお、制御部31は、予めPON信号の出力パワーとレンジング情報との関係を記憶しており、PON信号の出力パワーを入力されるレンジング情報をもとに決定する。
制御部31は、バースト信号波長情報とレンジング情報をもとに、電流印加部32から光送信部33の光源へ印加する電流量を決定する。また、制御部31は、信号波長情報をもとに光送信部33が出力する信号波長を制御する。光送信器30は、レンジング情報を用いて、出力信号パワーを決定することにより、実施形態1から4に示した、誘導ラマン散乱による上り下り信号の実施形態に適用することが可能である。本送信部構成は、ONUとOLTの光送信器のどちらにも適用できる。
(実施形態6)
図11は、実施形態1から4で説明した波長多重光通信方法を実現する光送信器30aを説明する図である。
光送信器30aは、制御部31、駆動電流印加部36、および光送信部33を有する。光送信器30aは、光源自体を直接変調することでPON信号を生成する。また、PON信号の送信波長、バースト状態、及び出力パワーは、それぞれ制御部31に入力される信号波長情報、バースト制御情報、及びレンジング情報をもとに決定される。
制御部31は、バースト信号波長情報とレンジング情報をもとに、駆動電流印加部36から光送信部33の光源へ印加する電流量を決定する。また、制御部31は、信号波長情報をもとに光送信部33が出力する信号波長を制御する。光送信器30aは、レンジング情報を用いて、出力信号パワーを決定することにより、実施形態1から4に示した、誘導ラマン散乱による上り下り信号の実施形態に適用することが可能である。本送信部構成は、ONUとOLTの光送信器のどちらにも適用できる。
(実施形態7)
図12は、実施形態1から4で説明した波長多重光通信方法を実現する光送信器30bを説明する図である。光送信器30bは、動的波長帯域割当機能で取得したレンジング情報に基づいて、前記光ファイバを伝搬する距離に応じて前記第2光信号が受ける前記誘導ラマン散乱による増幅量もしくは減衰量を判断し、光を変調する光変調部から出力を光減衰器で調整する。
光送信器30bは、制御部31、電流印加部32、光送信部33、外部変調器駆動部34、外部変調部35、光減衰部制御部37、および光減衰部38を有する。光送信器30bは、外部変調器35を外部変調器駆動部34で駆動し、PON信号を生成する。PON信号の送信波長、バースト状態は、それぞれ制御部31に入力される信号波長情報、バースト制御情報をもとに決定される。また、光減衰部制御部37は、予めPON信号の出力パワーとレンジング情報との関係を記憶しており、PON信号の出力パワーを入力されるレンジング情報をもとに決定する。
光送信器30bは、電流印加部32が一定電流を光送信部33の光源へ印加し、光送信部33からは連続光が出力され、外部変調部35を高速制御することにより、PON信号のバースト状態及び出力パワーレベルを制御する。光減衰部制御部37は、レンジング情報をもとに、光減衰部38により制御される出力パワーレベルを決定する。光送信器30bは、レンジング情報を用いて、出力信号パワーを決定することにより、実施形態1から4に示した、誘導ラマン散乱による上り下り信号の実施形態に適用することが可能である。本送信部構成は、ONUとOLTの光送信器のどちらにも適用できる。
(他の実施形態)
上述した波長多重光通信システムは、映像系サービスの光信号(第1光信号)の有無を判断し、PON信号(第2光信号)の光強度を補正するもしくは補正しないを判断する。上記実施形態1〜7の説明は、映像系サービスの光信号が存在する場合の通信方法である。映像系サービスの光信号が存在しない場合、PON信号は誘導ラマン散乱の影響を受けないため、第2光信号を光ファイバを同じ距離だけ伝搬させる場合に、長波長側より短波長側にある第2光信号の光強度を強くすること、及び光ファイバを伝搬する距離に応じて第2光信号が受ける誘導ラマン散乱による増幅量もしくは減衰量に基づき、第2光信号を受信する光受信器に設定されている受信可能光強度範囲に収まる光強度の第2光信号を出力することが不要である。例えば、OLTは、映像系サービスの光信号(第1光信号)を出力する光送信器が稼働しているか否かを判断し、PON信号を出力する光送信器へその旨を通知するとともに、ONUの光送信器へも通知する。図10の光送信器30、図11の光送信器30a、又は図12の光送信器30bの制御部31がその通知を受け取り、出力する光信号の強度を調整するか否かを判断する。本実施形態の波長多重光通信システムは、映像系サービスの有無でPON信号の受信不能が発生したり受信器の過負荷限界を超えることを防止することができる。
[付記]
以下は、本実施形態の波長多重光通信システム及び光送信器を説明したものである。
本発明では、WDM/TDM−PONに映像系サービスを導入した場合に影響が懸念される、誘導ラマン散乱による信号波長ごとの信号パワー変動を抑圧するため、信号波長およびONUの収容距離に応じて各信号パワーを最適値に制御する、波長多重通信システムを提案する。
(1):
上り下り信号に複数の光信号波長を用いて通信を行う波長多重光アクセスシステムであって、誘導ラマン散乱によるスペクトルチルトの影響を考慮して、上りおよび下り信号の状態を決定することを特徴とする光通信システム。
(2):
上記(1)に記載の波長多重光通信システムにおいて、光アクセスシステムにおける映像系サービス信号によって誘発される誘導ラマン散乱によって、下り信号に発生するスペクトルチルトを緩和し、下り信号がONUで受信される際に各信号波長の光パワーが平坦になるように、OLT出力を波長に応じて長波長に向かうにつれて弱くすることを特徴とする、波長多重光通信システム。
(3):
上記(2)に記載の波長多重光通信システムにおいて、下り信号がONUで受信される際に光パワーが受信器の過負荷限界を超えないよう、動的波長帯域割当機能のレンジング機能によって計測される各ONUの収容距離情報に基づいて、近距離のONUに送信される下り信号を制御することを特徴とする、光送信器。
(4):
上記(1)に記載の波長多重光通信システムにおいて、光アクセスシステムにおける映像系サービス信号によって誘発される誘導ラマン散乱によって、上り信号に発生するスペクトルチルトを緩和し、上り信号がOLTで受信される際に各波長の光パワーが、波長に依らず一定になるように、ONU出力を波長に応じて短波長に向かうにつれて強くすることを特徴とする、波長多重光通信システム。
(5):
上記(4)に記載の波長多重光通信システムにおいて、上り信号がOLTで受信される際に光パワーが受信器の最小受信感度を下回らないよう、動的波長帯域割当機能のレンジング機能によって計測される各ONUの収容距離情報に基づいて、遠距離のONUから送信される上り信号パワーを制御することを特徴とする、光送信器。
(6):
上記(3)又は(5)に記載の光送信器において、動的波長帯域割当機能のレンジング機能によって計測される各ONUの収容距離情報に基づいて、光送信器の駆動電流を調節することで、各信号波長の送信パワーを制御することを特徴とする、光送信器。
(7):
上記(3)又は(5)に記載の光送信器において、動的波長帯域割当機能のレンジング機能によって計測される各ONUの収容距離情報に基づいて、光送信器出力を高速可変減衰器を用いて、各信号波長の送信パワーを制御することを特徴とする、光送信器。
上記発明は、図1から図8で説明される。
図1に、スプリッタ網を用いた関連技術のWDM/TDM−PONの構成を示す。
図2に、映像系信号によるラマン散乱によって関連技術のWDM/TDM−PONの下り信号に誘発されるスペクトルチルトの影響を示す。
図3に、ラマン散乱によるスペクトルチルトを緩和するWDM/TDM−PONの下り信号パワー構成を示す(上記(2))。
図4に、誘導ラマン散乱による下り信号の増幅により、遠距離ONUが下り信号を受信する際に、ONU受信器の最大許容入力パワーを超える光信号が入力された場合の、遠距離ONU下り信号受信時のフレーム構成を示す(関連技術)。
図5に、DBA機能によるレンジング情報をもとに、下り信号が受けるラマン効果の影響を考慮して、遠距離ONU受信時に受信器の最大許容入力パワーを超えないようにOLT出力を制御する場合における、遠距離ONU下り信号受信時のフレームパワー構成を示す(上記(3))。
図6に、映像系信号によるラマン散乱によってWDM/TDM−PONの上り信号に誘発されるスペクトルチルトの影響を示す(関連技術)。
図7に、ラマン散乱によるスペクトルチルトを緩和するWDM/TDM−PONの上り信号パワー構成を示す(上記(4))。
図8に、誘導ラマン散乱による上り信号の減衰により、OLTが遠距離ONUからの上り信号を受信する際に、受信器の受信感度以下の信号が入力された場合の、遠距離ONU上り信号受信時のフレーム構成を示す(関連技術)。
図9に、DBA機能によるレンジング情報をもとに、上り信号が受けるラマン効果の影響を考慮して、OLTが遠距離ONUからの上り信号受信時に、信号パワーが受信器の受信感度以下にならないように、ONU出力を制御する場合における、遠距離ONU上り信号受信時のフレームパワー構成を示す(上記(5))。
図10に、レンジング情報を用いて光送信部への印可電流を制御する、外部変調器型波長可変光送信部の構成を示す(上記(5))。
図11に、レンジング情報を用いて光送信部への駆動電流を制御する、直接変調型波長可変光送信部の構成を示す(上記(6))。
図12に、レンジング情報を用いて光送信部出力に設置された光減衰部を制御する、波長可変光送信部の構成を示す(上記(7))。
11:ONU
12:OLT
13:光ファイバ伝送路
14:光スプリッタ
21:MAC
22:OLT−port
23:映像系サービスの送受信器
30、30a、30b:光送信器
31:制御部
32:電流印加部
33:光送信部
34:外部変調器駆動部
35:外部変調部
36:駆動電流印加部
37:光減衰部制御部
38:光減衰部

Claims (8)

  1. 1台の終端装置(OLT:Optical Line Terminal)と少なくとも1台の宅内装置(ONU:Optical Network Unit)とが光ファイバ伝送路で接続された波長多重光通信システムであって、
    前記OLT及び前記ONUは、
    光ファイバ中の非線形効果による誘導ラマン散乱を発生させる第1光信号を出力する第1光送信器と、
    前記誘導ラマン散乱の影響を受ける、前記第1光信号の波長と異なる複数の波長の第2光信号を出力する第2光送信器と、
    を備えており、
    前記第2光送信器は、前記第2光信号を前記光ファイバを同じ距離だけ伝搬させる場合に、長波長側より短波長側にある前記第2光信号の光強度を強くすることを特徴とする波長多重光通信システム。
  2. 前記第2光送信器は、前記第2光信号を前記光ファイバを同じ距離だけ伝搬させる場合に、前記第2光信号を受信する光受信器で各波長の光強度が等しくなるような光強度の前記第2光信号を出力することを特徴とする請求項1に記載の波長多重光通信システム。
  3. 前記第2光送信器は、前記光ファイバを伝搬する距離に応じて前記第2光信号が受ける前記誘導ラマン散乱による増幅量もしくは減衰量に基づき、前記第2光信号を受信する光受信器に設定されている受信可能光強度範囲に収まる光強度の前記第2光信号を出力することを特徴とする請求項1又は2に記載の波長多重光通信システム。
  4. 前記第2光送信器は、動的波長帯域割当機能で取得したレンジング情報に基づいて、前記光ファイバを伝搬する距離に応じて前記第2光信号が受ける前記誘導ラマン散乱による増幅量もしくは減衰量を判断し、光を変調する光変調部への駆動電流を調整することを特徴とする請求項3に記載の波長多重光通信システム。
  5. 前記第2光送信器は、動的波長帯域割当機能で取得したレンジング情報に基づいて、前記光ファイバを伝搬する距離に応じて前記第2光信号が受ける前記誘導ラマン散乱による増幅量もしくは減衰量を判断し、光を変調する光変調部から出力を光減衰器で調整することを特徴とする請求項3に記載の波長多重光通信システム。
  6. 請求項1から5のいずれかに記載の波長多重光通信システムの前記OLT及び前記ONUが備える前記第2光送信器である光送信器。
  7. 1台のOLTと少なくとも1台のONUとが光ファイバ伝送路で接続された波長多重光通信システムにおいて、光ファイバ中の非線形効果による誘導ラマン散乱を発生させる第1光信号を伝送する際に、
    前記誘導ラマン散乱の影響を受ける、前記第1光信号の波長と異なる複数の波長の第2光信号を前記光ファイバを同じ距離だけ伝搬させる場合に、長波長側より短波長側にある前記第2光信号の光強度を強くすることを特徴とする波長多重光通信方法。
  8. 前記光ファイバを伝搬する距離に応じて前記第2光信号が受ける前記誘導ラマン散乱による増幅量もしくは減衰量に基づき、前記第2光信号を受信する光受信器に設定されている受信可能光強度範囲に収まるように送信側で前記第2光信号の光強度を決定することを特徴とする請求項7に記載の波長多重光通信方法。
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